JP2023102902A - エンジン装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】所定始動制御の際に、エンジンから早めにトルクを出力することとトルクショックの発生を抑制することとの両立を図る。【解決手段】エンジンの燃料カットおよびクラッチの解放を行なっている状態からエンジンの燃料噴射および点火を再開してその後にクラッチを係合するようにエンジンとクラッチとを制御する所定始動制御の際に、点火回数が所定回数未満の場合、次に点火の対象となる対象気筒について、吸気バルブを閉成したときのインテークマニホールドの圧力である閉成時インマニ圧が低いほど進角側となるように点火時期を設定する。【選択図】図3
Description
本発明は、エンジン装置に関し、詳しくは、エンジンとエンジンの出力軸にクラッチを介して接続されたモータとを備えるエンジン装置に関する。
従来、膨張行程にある気筒に供給された燃料に点火を行なうことによりエンジンを始動させる始動装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この始動装置では、エンジンの始動前に、水温とクランクの停止位置とに基づいて、膨張行程にある気筒の初爆でのクランク作動量を予測し、初爆のみでは後続気筒のピストンが圧縮上死点を超えないと判断される場合、初爆によりクランクが作動した後にスタータを作動させる。
エンジンとエンジンの出力軸にクラッチを介して接続されたモータとを備えるエンジン装置では、エンジンの燃料カットおよびクラッチの解放を行なっている状態からエンジンの燃料噴射および点火を再開してその後にクラッチを係合する所定始動制御の際において、エンジンの回転数をモータの回転数に接近させるためにエンジンから早めにトルクを出力することと、トルクショックの発生を抑制することと、の両立を図ることが求められている。
本発明のエンジン装置は、所定始動制御の際に、エンジンから早めにトルクを出力することとトルクショックの発生を抑制することとの両立を図ることを主目的とする。
本発明のエンジン装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明のエンジン装置は、
エンジンと、前記エンジンの出力軸にクラッチを介して接続されたモータと、前記エンジンと前記モータと前記クラッチとを制御する制御装置と、を備えるエンジン装置であって、
前記制御装置は、前記エンジンの燃料カットおよび前記クラッチの解放を行なっている状態から前記エンジンの燃料噴射および点火を再開してその後に前記クラッチを係合するように前記エンジンと前記クラッチとを制御する所定始動制御の際に、点火回数が所定回数未満の場合、次に点火の対象となる対象気筒について、吸気バルブを閉成したときのインテークマニホールドの圧力である閉成時インマニ圧が低いほど進角側となるように点火時期を設定する、
ことを要旨とする。
エンジンと、前記エンジンの出力軸にクラッチを介して接続されたモータと、前記エンジンと前記モータと前記クラッチとを制御する制御装置と、を備えるエンジン装置であって、
前記制御装置は、前記エンジンの燃料カットおよび前記クラッチの解放を行なっている状態から前記エンジンの燃料噴射および点火を再開してその後に前記クラッチを係合するように前記エンジンと前記クラッチとを制御する所定始動制御の際に、点火回数が所定回数未満の場合、次に点火の対象となる対象気筒について、吸気バルブを閉成したときのインテークマニホールドの圧力である閉成時インマニ圧が低いほど進角側となるように点火時期を設定する、
ことを要旨とする。
本発明のエンジン装置では、エンジンの燃料カットおよびクラッチの解放を行なっている状態からエンジンの燃料噴射および点火を再開してその後にクラッチを係合するようにエンジンとクラッチとを制御する所定始動制御の際に、点火回数が所定回数未満の場合、次に点火の対象となる対象気筒について、吸気バルブを閉成したときのインテークマニホールドの圧力である閉成時インマニ圧が低いほど進角側となるように点火時期を設定する。閉成時インマニ圧が低いほど対象気筒の筒内の空気量が少なく、エンジンからトルクが出力されにくい。したがって、対象気筒について、閉成時インマニ圧が低いほど点火時期を進角側とすることにより、閉成時インマニ圧が低いときには、エンジンからトルクを出力しやすくすることができ、閉成時インマニ圧が高いときには、エンジンから大きなトルクが出力されるのを抑制してトルクショックの発生を抑制することができる。これにより、所定始動制御の際に、エンジンから早めに(閉成時インマニ圧が比較的低いときから)トルクを出力することと、閉成時インマニ圧が比較的高くなったときにトルクショックの発生を抑制することと、の両立を図ることができる。
本発明のエンジン装置において、前記制御装置は、前記所定始動制御の際に、前記点火回数が前記所定回数未満の場合、前記対象気筒について、前記閉成時インマニ圧が圧力閾値以下のときに最適点火時期を前記点火時期に設定するものとしてもよい。こうすれば、閉成時インマニ圧が圧力閾値以下のときに、エンジンからトルクをより出力しやすくすることができる。この場合、前記制御装置は、前記所定始動制御の際に、前記点火回数が前記所定回数未満の場合、前記対象気筒について、前記閉成時インマニ圧が低いほど仮点火時期が進角側となるように予め定めたマップを用いて得られる前記仮点火時期を前記最適点火時期でガードして前記点火時期を設定するものとしてもよい。
本発明のエンジン装置において、前記制御装置は、前記所定始動制御の際に、前記点火回数が前記所定回数未満の場合、前記対象気筒について、前記エンジンの回転数が低いほど遅角側となるように前記点火時期を設定するものとしてもよい。
本発明のエンジン装置において、前記制御装置は、前記所定始動制御の際に、前記点火回数が前記所定回数以上の場合、前記対象気筒について、前記モータの回転数と前記エンジンの回転数とに基づいて前記点火時期を設定するものとしてもよい。この場合、前記制御装置は、前記所定始動制御の際に、前記点火回数が前記所定回数以上の場合、前記対象気筒について、前記モータの回転数が高いほど進角側となるように前記点火時期を設定するものとしてもよい。また、前記制御装置は、前記所定始動制御の際に、前記点火回数が前記所定回数以上の場合、前記対象気筒について、前記エンジンの回転数に基づく遅角限界の範囲内で前記点火時期を設定するものとしてもよい。これらのようにすれば、エンジンの回転数をモータの回転数に迅速に接近させることができる。
本発明のエンジン装置において、前記クラッチを係合する条件は、前記モータの回転数と前記エンジンの回転数との差回転数が所定回転数未満である条件を含むものとしてもよい。
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例としてのエンジン装置を搭載するハイブリッド車20の構成の概略を示す構成図である。図2は、ハイブリッド車20が搭載するエンジン22の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド車20は、図1に示すように、エンジン22と、モータ30と、インバータ32と、クラッチK0と、自動変速装置40と、高電圧バッテリ60と、低電圧バッテリ62と、DC/DCコンバータ64と、ハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「HVECU」という)70とを備える。
エンジン22は、例えばガソリンや軽油などの燃料を用いて吸気、圧縮、膨張(爆発燃焼)、排気の4行程により動力を出力する6気筒の内燃機関として構成されている。図2に示すように、エンジン22は、吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射弁126と、筒内に燃料を噴射する筒内噴射弁127とを有する。エンジン22は、ポート噴射弁126と筒内噴射弁127とを有することにより、ポート噴射モードと筒内噴射モードと共用噴射モードとのうちの何れかで運転可能となっている。ポート噴射モードでは、エアクリーナ122により清浄された空気を吸気管123に吸入してスロットルバルブ124やサージタンク125を通過させると共に、吸気管123のサージタンク125よりも下流側のポート噴射弁126から燃料を噴射し、空気と燃料とを混合する。そして、この混合気を吸気バルブ128を介して燃焼室129に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、シリンダボア内でそのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト23の回転運動に変換する。筒内噴射モードでは、ポート噴射モードと同様に空気を燃焼室129に吸入し、吸気行程や圧縮行程において筒内噴射弁127から燃料を噴射し、点火プラグ130による電気火花により爆発燃焼させてクランクシャフト23の回転運動を得る。共用噴射モードでは、空気を燃焼室129に吸入する際にポート噴射弁126から燃料を噴射すると共に吸気行程や圧縮行程において筒内噴射弁127から燃料を噴射し、点火プラグ130による電気火花により爆発燃焼させてクランクシャフト23の回転運動を得る。これらの噴射モードは、エンジン22の運転状態に基づいて切り替えられる。燃焼室129から排気バルブ133を介して排気管134に排出される排気は、浄化装置135およびPMフィルタ136を介して外気に排出される。浄化装置135は、排気中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化触媒(三元触媒)135aを有する。PMフィルタ136は、セラミックスやステンレスなどにより多孔質フィルタとして形成されており、排気中の煤などの粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集する。なお、PMフィルタ136に代えて、三元触媒の浄化機能と粒子状物質に対する捕集機能とを組み合わせた四元触媒が用いられるものとしてもよい。
エンジン22は、エンジンECU24により運転制御されている。エンジンECU24は、図示しないが、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータを備える。エンジンECU24には、エンジン22を運転制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。エンジンECU24に入力される信号としては、例えば、エンジン22のクランクシャフト23の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランク角θcrや、エンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温Twを挙げることができる。吸気バルブ128を開閉するインテークカムシャフトの回転位置や排気バルブ133を開閉するエキゾーストカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカム角θci,θcoも挙げることができる。スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ124aからのスロットル開度THや、吸気管123のスロットルバルブ124よりも上流側に取り付けられたエアフローメータ123aからの吸入空気量Qa、吸気管123のスロットルバルブ124よりも上流側に取り付けられた温度センサ123tからの吸気温Ta、サージタンク125に取り付けられた圧力センサ125aからのサージ圧Psも挙げることができる。排気管134の浄化装置135よりも上流側に取り付けられたフロント空燃比センサ137からのフロント空燃比AF1や、排気管134の浄化装置135とPMフィルタ136との間に取り付けられたリヤ空燃比センサ138からのリヤ空燃比AF2、PMフィルタ136の前後の差圧(上流側と下流側との差圧)を検出する差圧センサ136aからの差圧ΔPも挙げることができる。
エンジンECU24からは、エンジン22を運転制御するための各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。エンジンECU24から出力される信号としては、例えば、スロットルバルブ124への制御信号や、ポート噴射弁126への制御信号、筒内噴射弁127への制御信号、点火プラグ130への制御信号を挙げることができる。
エンジンECU24は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのエンジン22のクランク角θcrに基づいて、エンジン22の回転数Neを演算したり、クランク角θcaが30度だけ回転するのに要した時間である30度回転所要時間T30を演算したりしている。また、エンジンECU24は、エアフローメータ123aからの吸入空気量Qaとエンジン22の回転数Neとに基づいて負荷率(エンジン22の1サイクルあたりの行程容積に対する1サイクルで実際に吸入される空気の容積の比)KLを演算している。さらに、エンジンECU24は、差圧センサ136aからの差圧ΔPに基づいてPMフィルタ136に堆積した粒子状物質の堆積量としてのPM堆積量Qpmを演算したり、エンジン22の回転数Neや負荷率KLに基づいてPMフィルタ136の温度としてのフィルタ温度Tfを演算したりしている。
図1に示すように、エンジン22のクランクシャフト23には、エンジン22をクランキングするためのスタータモータ25や、エンジン22からの動力を用いて発電するオルタネータ26が接続されている。スタータモータ25およびオルタネータ26は、低電圧バッテリ62と共に低電圧側電力ライン63に接続されており、HVECU70により制御される。
モータ30は、同期発電電動機として構成されており、回転子コアに永久磁石が埋め込まれた回転子と、固定子コアに三相コイルが巻回された固定子とを有する。このモータ30の回転子が固定された回転軸31は、クラッチK0を介してエンジン22のクランクシャフト23に接続されていると共に自動変速機45の入力軸41に接続されている。インバータ32は、モータ30の駆動に用いられると共に高電圧側電力ライン61に接続されている。モータ30は、モータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)34によってインバータ32の複数のスイッチング素子がスイッチング制御されることにより、回転駆動される。
モータECU34は、図示しないが、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータを備える。モータECU34には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。モータECU34に入力される信号としては、例えば、モータ30の回転子(回転軸31)の回転位置を検出する回転位置センサ30aからの回転位置θmgや、モータ30の各相の相電流を検出する電流センサからの相電流Iu,Ivを挙げることができる。モータECU34からは、インバータ32への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。モータECU34は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。モータECU34は、回転位置センサ30aからのモータ30の回転子(回転軸31)の回転位置θmgに基づいてモータ30の回転数Nmgを演算している。
クラッチK0は、例えば油圧駆動の摩擦クラッチとして構成されており、HVECU70によって制御され、エンジン22のクランクシャフト23とモータ30の回転軸31との接続および接続の解除を行なう。
自動変速装置40は、トルクコンバータ43と、例えば6段変速の自動変速機45とを有する。トルクコンバータ43は、一般的な流体伝動装置として構成されており、モータ30の回転軸31に接続された入力軸41の動力を自動変速機45の入力軸である変速機入力軸44にトルクを増幅して伝達したり、トルクを増幅することなくそのまま伝達したりする。自動変速機45は、変速機入力軸44と、駆動輪49にデファレンシャルギヤ48を介して連結された出力軸42と、複数の遊星歯車と、油圧駆動の複数の摩擦係合要素(クラッチ,ブレーキ)とを有する。複数の摩擦係合要素は、何れも、ピストン、複数の摩擦係合プレート(摩擦プレートおよびセパレータプレート)、作動油が供給される油室などにより構成される油圧サーボを有する。自動変速機45は、複数の摩擦係合要素の係脱により、第1速から第6速までの前進段や後進段を形成して、変速機入力軸44と出力軸42との間で動力を伝達する。クラッチK0や自動変速機45には、図示しない油圧制御装置により、機械式オイルポンプや電動オイルポンプからの作動油の油圧が調圧されて供給される。油圧制御装置は、複数の油路が形成されたバルブボディや、複数のレギュレータバルブ、複数のリニアソレノイドバルブなどを有する。この油圧制御装置は、HVECU70により制御される。
高電圧バッテリ60は、例えば定格電圧が数百V程度のリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、インバータ32と共に高電圧側電力ライン61に接続されている。低電圧バッテリ62は、例えば定格電圧が12Vや14V程度の鉛蓄電池として構成されており、スタータモータ25やオルタネータ26と共に低電圧側電力ライン63に接続されている。DC/DCコンバータ64は、高電圧側電力ライン61と低電圧側電力ライン63とに接続されている。このDC/DCコンバータ64は、高電圧側電力ライン61の電力を低電圧側電力ライン63に電圧の降圧を伴って供給する。
HVECU70は、図示しないが、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータを備える。HVECU70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。HVECU70に入力される信号としては、例えば、自動変速装置40の入力軸41に取り付けられた回転数センサ41aからの回転数Ninや、自動変速装置40の変速機入力軸44に取り付けられた回転数センサ44aからの回転数Nmi、自動変速装置40の出力軸42に取り付けられた回転数センサ42aからの回転数Noutを挙げることができる。高電圧バッテリ60の端子間に取り付けられた電圧センサからの高電圧バッテリ60の電圧Vbhや、高電圧バッテリ60の出力端子に取り付けられた電流センサからの高電圧バッテリ60の電流Ibh、低電圧バッテリ62の端子間に取り付けられた電圧センサからの電圧Vblも挙げることができる。イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号や、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ87からの車速Vも挙げることができる。
HVECU70からは、各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。HVECU70から出力される信号としては、例えば、スタータモータ25への制御信号や、オルタネータ26への制御信号を挙げることができる。クラッチK0や自動変速装置40(油圧制御装置)への制御信号、DC/DCコンバータ64への制御信号も挙げることができる。HVECU70は、エンジンECU24やモータECU34と通信ポートを介して接続されている。HVECU70は、回転数センサ41aからの自動変速装置40の入力軸41の回転数Ninを回転数センサ42aからの自動変速装置40の出力軸42の回転数Noutで除して自動変速装置40の回転数比Gtを演算している。
なお、実施例では、エンジン装置としては、エンジン22と、クラッチK0と、モータ30と、HVECU70と、エンジンECU24と、モータECU34とが相当する。
こうして構成された実施例のハイブリッド車20では、HVECU70とエンジンECU24とモータECU34との協調制御により、ハイブリッド走行モード(HV走行モード)や電動走行モード(EV走行モード)で走行するように、エンジン22とクラッチK0とモータ30と自動変速装置40とを制御する。ここで、HV走行モードは、クラッチK0を係合状態としてエンジン22の動力を用いて走行するモードであり、EV走行モードは、クラッチK0を解放状態としてエンジン22の動力を用いずに走行するモードである。
HV走行モードやEV走行モードにおける自動変速装置40の制御では、HVECU70は、最初に、アクセル開度Accおよび車速Vに基づいて自動変速機45の目標変速段M*を設定する。そして、自動変速機45の変速段Mと目標変速段M*とが一致するときには、変速段Mが保持されるように自動変速機45を制御する。一方、変速段Mと目標変速段M*とが異なるときには、変速段Mが目標変速段M*に一致するように自動変速機45を制御する。
HV走行モードにおけるエンジン22およびモータ30の制御では、HVECU70は、最初に、アクセル開度Accおよび車速Vに基づいて走行に要求される(自動変速装置40の出力軸42に要求される)要求トルクTout*を設定する。続いて、出力軸42の要求トルクTout*を自動変速装置40の回転数比Gtで除した値を入力軸41の要求トルクTin*に設定する。こうして入力軸41の要求トルクTin*を設定すると、要求トルクTin*が入力軸41に出力されるようにエンジン22の目標トルクTe*やモータ30のトルク指令Tm*を設定し、エンジン22の目標トルクTe*をエンジンECU24に送信すると共にモータ30のトルク指令Tm*をモータECU34に送信する。エンジンECU24は、目標トルクTe*を受信すると、エンジン22が目標トルクTe*で運転されるようにエンジン22の運転制御(吸入空気量制御や燃料噴射制御、点火制御など)を行なう。モータECU34は、トルク指令Tm*を受信すると、モータ30がトルク指令Tm*で駆動されるようにインバータ32の複数のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
EV走行モードにおけるモータ30の制御では、HVECU70は、HV走行モードと同様に入力軸41の要求トルクTin*を設定し、要求トルクTin*が入力軸41に出力されるようにモータ30のトルク指令Tm*を設定してモータECU34に送信する。モータECU34は、トルク指令Tm*を受信すると、モータ30がトルク指令Tm*で駆動されるようにインバータ32の複数のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
また、実施例のハイブリッド車20では、HVECU70とエンジンECU24とモータECU34との協調制御により、HV走行モードで停止条件が成立すると、エンジン22からのトルクをモータ30からのトルクに置き換えて、その後に、エンジン22の燃料カットを行なうと共にエンジン22の回転数Neが閾値Neref1(例えば、600rpm~800rpm程度)未満のときにクラッチK0を解放する。そして、エンジン22の回転中に始動条件が成立すると、エンジン22の燃料カットからの復帰(燃料噴射および点火の再開)を伴うエンジン22の始動制御を行なう。停止条件としては、例えば、エンジン22の運転中に、入力軸41の要求トルクTin*が閾値Tinref未満である条件などを用いることができる。始動条件としては、例えば、エンジン22の間欠停止中に、要求トルクTin*が閾値Tinref以上である条件などを用いることができる。エンジン22の始動制御としては、例えば、FC(Fuel Cut)復帰制御や、自立COM(Change Of Mind)始動制御、COM始動制御などを挙げることができる。
FC復帰制御は、基本的に、始動条件が成立したときに、エンジン22の回転数Neが閾値Neref1以上の場合に行なわれる。FC復帰制御では、クラッチK0の係合を継続しつつエンジン22の燃料噴射や点火を再開する。
自立COM始動制御は、基本的に、始動条件が成立したときに、エンジン22の回転数Neが閾値Neref1未満で且つそれよりも低い(例えば、数百rpm程度低い)閾値Neref2以上の場合に行なわれる。自立COM始動制御では、クラッチK0の解放を継続しつつエンジン22の燃料噴射および点火を再開し、モータ30の回転数Nmgとエンジン22の回転数Neとの差回転数ΔNが小さくなるようにエンジン22を制御し、クラッチK0の係合条件が成立するとクラッチK0を係合する。
COM始動制御は、基本的に、始動条件が成立したときに、エンジン22の回転数Neが閾値Neref2未満の場合に行なわれる。COM始動制御では、クラッチK0を半係合(スリップ係合)してモータ30からのクランキングトルクを用いてエンジン22をクランキングしつつ燃料噴射および点火を再開し、差回転数ΔNが小さくなるようにエンジン22を制御しつつクラッチK0を解放し、クラッチK0の係合条件が成立するとクラッチK0を係合する。
自立COM始動制御やCOM始動制御の際のクラッチK0の係合条件としては、例えば、差回転数ΔNが閾値ΔNref(例えば、50rpm~150rpm程度)未満である条件などを用いることができる。また、FC復帰制御や自立COM始動制御、COM始動制御の際の燃料噴射制御は、筒内噴射モードで行なわれる。
次に、実施例のハイブリッド車20の動作、特に、自立COM始動制御の際のエンジン22の点火制御について説明する。図3は、エンジンECU24により実行される自立COM始動制御の際の点火制御の一例を示すフローチャートである。このルーチンは、自立COM始動制御の際に、次に点火(爆発燃焼)の対象となる対象気筒を切り替えながら繰り返し実行される。なお、自立COM始動制御の際には、クラッチK0の解放を継続しつつエンジン22の燃料噴射および点火を再開するから、エンジン22からのトルクによりモータ30の回転数Nmgとエンジン22の回転数Neとの差回転数ΔNを小さくする必要がある。このため、自立COM始動制御の際の吸入空気量制御や燃料噴射制御については、基本的に、COM始動制御の際に比してスロットル開度THを大きくしてインテークマニホールドの圧力(インマニ圧Pin)を高くしつつ、差回転数ΔNが小さくなるように、スロットルバルブ124の制御や筒内噴射弁127の制御が行なわれる。なお、インマニ圧Pinとしては、実施例では、サージ圧Psが用いられる。
図3の自立COM始動制御の際の点火制御では、エンジンECU24は、最初に、自立COM始動制御の開始からの点火回数Niを入力し(ステップS100)、入力した点火回数Niを閾値Nirefと比較する(ステップS110)。ここで、所定回数Nirefとしては、例えば、3回~6回程度を用いることができる。
ステップS110で点火回数Niが閾値Niref未満のときには、閉成時インマニ圧Pincやエンジン22の回転数Neなどのデータを入力し(ステップS120)、入力した閉成時インマニ圧Pincとエンジン22の回転数Neとに基づいて対象気筒の点火時期Tiを設定し(ステップS130)、設定した点火時期Tiを用いて点火プラグ130を制御して(ステップS160)、本ルーチンを終了する。
ここで、閉成時インマニ圧Pincは、対象気筒の吸気バルブ128を閉成したとき(タイミング)のインマニ圧Pinであり、実施例では、対象気筒の吸気バルブ128を閉成したときの圧力センサ125aからのサージ圧Psが入力される。エンジン22の回転数Neは、クランクポジションセンサ140からのエンジン22のクランク角θcrに基づいて演算された値が入力される。
対象気筒の点火時期Tiは、例えば、閉成時インマニ圧Pincとエンジン22の回転数Neとに基づく対象気筒の仮点火時期Titmpを最適点火時期で進角側ガードして設定することができる。対象気筒の仮点火時期Titmpは、例えば、閉成時インマニ圧Pincとエンジン22の回転数Neと対象気筒の仮点火時期Titmpとの関係を実験や解析、機械学習などにより予め定めて第1点火時期設定用マップとして記憶しておき、閉成時インマニ圧Pincとエンジン22の回転数Neとが与えられると、このマップから対応する仮点火時期Titmpを導出することにより設定することができる。図4は、第1点火時期設定用マップの一例を示す説明図である。図示するように、仮点火時期Titmpは、閉成時インマニ圧Pincが低いほど進角側となるように、且つ、エンジン22の回転数Neが低いほど遅角側となるように設定される。特に、閉成時インマニ圧Pincが、エンジン22の回転数Neが高いほど高くなる閾値Pincref1以下の領域(図4の領域A)では、最適進角時期またはそれよりも進角側の時期などが設定される。また、閉成時インマニ圧Pincが、閾値Pincref1よりも十分に高く且つエンジン22の回転数Neが低いほど低くなる閾値Pincref2以上の領域(図4の領域B)では、遅角限界時期やそれよりも若干進角側の時期などが設定される。閉成時インマニ圧Pincが低いほど対象気筒の筒内の空気量が少なく、エンジン22からトルクが出力されにくい。したがって、閉成時インマニ圧Pincが比較的低いときには、点火時期Tiを比較的進角側にすることにより、エンジン22からトルクを出力しやすくすることができる。特に、閉成時インマニ圧Pincが閾値Pincref以下の領域では、点火時期Tiを最適点火時期とすることにより、エンジン22からトルクをより出力しやすくすることができる。また、閉成時インマニ圧Pincが比較的高いときには、点火時期Tiを比較的遅角側にすることにより、エンジン22から大きなトルクが出力されるのを抑制してトルクショックの発生を抑制することができる。これらより、エンジン22から早めに(閉成時インマニ圧Pincが比較的低いときから)トルクを出力することと、閉成時インマニ圧Pincが比較的高くなったときにエンジン22でのトルクショックの発生を抑制することと、の両立を図ることができる。
ステップS110で点火回数Niが閾値Niref以上のときには、モータ30の回転数Nmgやエンジン22の回転数Neなどのデータを入力し(ステップS140)、入力したモータ30の回転数Nmgとエンジン22の回転数Neとに基づいて対象気筒の点火時期Tiを設定し(ステップS150)、設定した点火時期Tiを用いて点火プラグ130を制御して(ステップS160)、本ルーチンを終了する。
ここで、モータ30の回転数Nmgは、モータECU34により、回転位置センサ30aからのモータ30の回転位置θmgに基づいて演算された値がHVECU70を介して通信により入力される。エンジン22の回転数Neは、クランクポジションセンサ140からのエンジン22のクランク角θcrに基づいて演算された値が入力される。
対象気筒の点火時期Tiは、例えば、モータ30の回転数Nmgとエンジン22の回転数Neと点火時期Tiとの関係を実験や解析、機械学習などにより予め定めて第2点火時期設定用マップとして記憶しておき、モータ30の回転数Nmgとエンジン22の回転数Neとが与えられると、このマップから対応する点火時期Tiを導出することにより設定することができる。エンジン22の回転数Neをモータ30の回転数Nmgに迅速に接近させる必要性があるため、実施例では、モータ30の回転数Nmgが高いほど進角側となるように点火時期Tiを設定する。また、点火可能な遅角限界は、エンジン22の回転数Neと相関があるため、実施例では、エンジン22の回転数Neに基づく遅角限界の範囲内で点火時期Tiを設定する。これらより、エンジン22の回転数Neをモータ30の回転数Nmgに迅速に接近させることができる。
以上説明した実施例のハイブリッド車20が搭載するエンジン装置では、自立COM始動制御の際において、点火回数Niが閾値Niref未満のときには、対象気筒について、閉成時インマニ圧Pincが低いほど進角側となるように点火時期Tiを設定する。これにより、エンジン22から早めに(閉成時インマニ圧Pincが比較的低いときから)トルクを出力することと、閉成時インマニ圧Pincが比較的高くなったときにエンジン22でのトルクショックの発生を抑制することと、の両立を図ることができる。
実施例のハイブリッド車20が搭載するエンジン装置では、自立COM始動制御の際において、点火回数Niが閾値Niref未満のときには、対象気筒について、閉成時インマニ圧Pincとエンジン22の回転数Neとに基づいて点火時期Tiを設定するものとした。しかし、エンジン22の回転数Neを考慮せずに閉成時インマニ圧Pincだけに基づいて点火時期Tiを設定するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド車20が搭載するエンジン装置では、自立COM始動制御の際において、点火回数Niが閾値Niref未満のときには、対象気筒について、閉成時インマニ圧Pincが圧力閾値Pincrefの領域では点火時期Tiを最適点火時期とするものとした。しかし、閉成時インマニ圧Pincが圧力閾値Pincrefの領域でも、点火時期Tiを最適点火時期よりも若干遅角側の時期とするものとしてもよい。
実施例のハイブリッド車20では、6段変速の自動変速機45を備えるものとした。しかし、4段変速や5段変速、8段変速などの自動変速機を備えるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド車20では、エンジンECU24とモータECU34とHVECU70とを備えるものとした。しかし、これらのうちの少なくとも2つを一体に構成するものとしてもよい。
実施例のエンジン装置では、ハイブリッド車20に搭載されるものとしたが、車両以外の移動体に搭載されるものとしたり、移動しない設備に組み込まれるものとしてよい。
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「エンジン」に相当し、クラッチK0が「クラッチ」に相当し、モータ30が「モータ」に相当し、HVECU70とエンジンECU24とモータECU34とが「制御装置」に相当する。
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明は、エンジン装置の製造産業などに利用可能である。
20 ハイブリッド車、22 エンジン、23 クランクシャフト、24 エンジンECU、25 スタータモータ、26 オルタネータ、30 モータ、30a 回転位置センサ、31 回転軸、32 インバータ、34 モータECU、40 自動変速装置、41 入力軸、41a 回転数センサ、42 出力軸、42a 回転数センサ、43 トルクコンバータ、44 変速機入力軸、44a 回転数センサ、45 自動変速機、48 デファレンシャルギヤ、49 駆動輪、60 高電圧バッテリ、61 高電圧側電力ライン、62 低電圧バッテリ、63 低電圧側電力ライン、64 DC/DCコンバータ、70 HVECU、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、87 車速センサ、122 エアクリーナ、123 吸気管、123a エアフローメータ、123t 温度センサ、124 スロットルバルブ、124a スロットルバルブポジションセンサ、125 サージタンク、125a 圧力センサ、126 ポート噴射弁、127 筒内噴射弁、128 吸気バルブ、129 燃焼室、130 点火プラグ、132 ピストン、133 排気バルブ、134 排気管、135 浄化装置、135a 浄化触媒、136 PMフィルタ、136a 差圧センサ、137 フロント空燃比センサ、138 リヤ空燃比センサ、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、144 カムポジションセンサ。
Claims (5)
- エンジンと、前記エンジンの出力軸にクラッチを介して接続されたモータと、前記エンジンと前記モータと前記クラッチとを制御する制御装置と、を備えるエンジン装置であって、
前記制御装置は、前記エンジンの燃料カットおよび前記クラッチの解放を行なっている状態から前記エンジンの燃料噴射および点火を再開してその後に前記クラッチを係合するように前記エンジンと前記クラッチとを制御する所定始動制御の際に、点火回数が所定回数未満の場合、次に点火の対象となる対象気筒について、吸気バルブを閉成したときのインテークマニホールドの圧力である閉成時インマニ圧が低いほど進角側となるように点火時期を設定する、
エンジン装置。 - 請求項1記載のエンジン装置であって、
前記制御装置は、前記所定始動制御の際に、前記点火回数が前記所定回数未満の場合、前記対象気筒について、前記閉成時インマニ圧が圧力閾値以下のときに最適点火時期を前記点火時期に設定する、
エンジン装置。 - 請求項2記載のエンジン装置であって、
前記制御装置は、前記所定始動制御の際に、前記点火回数が前記所定回数未満の場合、前記対象気筒について、前記閉成時インマニ圧が低いほど仮点火時期が進角側となるように予め定めたマップを用いて得られる前記仮点火時期を前記最適点火時期でガードして前記点火時期を設定する、
エンジン装置。 - 請求項1ないし3のうちの何れか1つの請求項に記載のエンジン装置であって、
前記制御装置は、前記所定始動制御の際に、前記点火回数が前記所定回数未満の場合、前記対象気筒について、前記エンジンの回転数が低いほど遅角側となるように前記点火時期を設定する、
エンジン装置。 - 請求項1ないし4のうちの何れか1つの請求項に記載のエンジン装置であって、
前記制御装置は、前記所定始動制御の際に、前記点火回数が前記所定回数以上の場合、前記対象気筒について、前記モータの回転数と前記エンジンの回転数とに基づいて前記点火時期を設定する、
エンジン装置。
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2022
- 2022-01-13 JP JP2022003645A patent/JP2023102902A/ja active Pending
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