JP2023095192A - ジオポリマー組成物用強度増進助材及びジオポリマー組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ジオポリマー組成物の硬化物に、高い初期強度と長期強度を付与することができるジオポリマー組成物用強度増進助材を提供する。【解決手段】アルカリ土類金属酸化物、無機カルシウム塩類、無機アルミニウム塩類、(亜)硝酸塩類及び有機系強度増進成分からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含むジオポリマー組成物用強度増進助材。【選択図】なし

Description

本発明は、ジオポリマー組成物用強度増進助材及び前記ジオポリマー組成物用強度増進助材を含むジオポリマー組成物に関する。
脱炭素社会の実現に向けて、近年、建設物の分野についても、二酸化炭素の排出量を低減させることが要求されてきている。建設物に多く使用されるコンクリート組成物やモルタル組成物等の水硬化性組成物は、製造過程において多量の二酸化炭素を排出するセメントが多量に配合されている。このため、建設物の分野において、二酸化炭素の排出量を減少させるには、セメントに代わる水硬化性組成物の開発が要求されている。
そこで、セメントを用いずに硬化させることができる、ジオポリマー組成物が提案されている。ジオポリマーとは、アルミナ及びケイ酸を含有する活性フィラーとアルカリ活性剤とが重縮合した物質である。活性フィラーとして用いる化合物及びアルカリ活性剤として用いる化合物については、現在、種々の検討がなされている。例えば、廃棄物の有効利用による環境負荷低減の点から、活性フィラーとして、フライアッシュ等の石炭灰や各種飛灰、高炉スラグ微粉末、シリカフューム等が利用されることがある。
そこで、セメントを全く使用しない硬化組成物として、結合材として高炉スラグ微粉末、消石灰、必要に応じてフライアッシュやシリカフュームを用い、この結合材に、ポリカルボン酸系などの高性能AE 減水剤を必要に応じてカルシウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、アルカリ金属イオンなどの複数の無機化合物を主成分とした水溶性の混和剤及び清水を配合した硬化組成物が提案されている(特許文献1)。特許文献1では、所望の初期強度及び耐久性を得ることができ、特にポーラスコンクリート等に適用可能としている。
しかしながら、特許文献1の硬化組成物では、一般のコンクリート硬化体に要求され、型枠の脱型時期に影響する、材令1日程度の初期強度に改善の余地があった。
また、ジオポリマー組成物は、急速に硬化が進むために、流動性の保持時間が短いという問題があった。そこで、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、水ガラスを含有するアルカリ溶液、骨材に、さらに正リン酸塩を配合したジオポリマー組成物が提案されている(特許文献2)。特許文献2では、流動性保持時間を30分~60分程度まで延長することができるとしている。
しかし、ジオポリマー組成物が、従来のセメントコンクリートに代わって広く適用されるためには、正リン酸塩を配合したジオポリマー組成物では、流動性保持時間の延長に改善の余地があった。また、ジオポリマー組成物が一般のセメントコンクリートと同様に広く利用されるためには、添加剤等を配合する際に、ジオポリマー組成物への容易な添加(例えば、液体で添加することが望ましい)が好ましく、更には、ジオポリマー組成物の取り扱いを容易にする、ジオポリマー組成物の粘性の低さや分離の抑制、又は、硬化後の収縮抑制といった要求性能を有することが好ましい。
特開2012-171855号公報 特開2020-026357号公報
上記事情に鑑み、本発明は、ジオポリマー組成物の硬化物に、高い初期強度と長期強度を付与することができるジオポリマー組成物用強度増進助材、及びフレッシュな性状においては長い流動性保持時間を有しつつ、硬化性状においては高い初期強度と長期強度を有するジオポリマー組成物を提供することを目的とする。
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1]アルカリ土類金属酸化物、無機カルシウム塩類、無機アルミニウム塩類、硝酸塩類及び有機系強度増進成分からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含むジオポリマー組成物用強度増進助材。
[2]前記アルカリ土類金属酸化物が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム及び酸化バリウムからなる群から選択された少なくとも1種である[1]に記載のジオポリマー組成物用強度増進助材。
[3]前記無機カルシウム塩類が、水酸化カルシウム、石膏、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルミン酸カルシウム及び塩化カルシウムからなる群から選択された少なくとも1種である[1]または[2]に記載のジオポリマー組成物用強度増進助材。
[4]前記無機アルミニウム塩類が、アルミン酸ナトリウム及び硫酸アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種である[1]乃至[3]のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物用強度増進助材。
[5]前記硝酸塩類が、アルカリ土類金属の硝酸塩及びアルカリ土類金属の亜硝酸塩からなる群から選択された少なくとも1種である[1]乃至[4]のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物用強度増進助材。
[6]前記有機系強度増進成分が、グリセリン類及びアルカノールアミンからなる群から選択された少なくとも1種である[1]乃至[5]のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物用強度増進助材。
[7]活性フィラー、アルカリ活性剤、縮合物系分散剤、[1]乃至[6]のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物用強度増進助材を含むジオポリマー組成物。
[8]前記活性フィラーが、フライアッシュ及び高炉スラグからなる群から選択された少なくとも1種を含む[7]に記載のジオポリマー組成物。
[9]前記アルカリ活性剤が、珪酸アルカリ及び水酸化アルカリからなる群から選択された少なくとも1種を含む[7]または[8]に記載のジオポリマー組成物。
[10]前記縮合物系分散剤が、ベータナフタレンホルムアルデヒド縮合物、ポリアリルエーテル構造を有する縮合物、及び少なくとも下記構成単位A)、B)、C)及びD)を含む縮合物からなる群から選択された少なくとも1種を含み、
前記縮合物系分散剤の含有量が、前記活性フィラー100質量部に対して、0.5質量部以上1.5質量部以下である、[7]乃至[9]のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物。
A)下記式(I)のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル
Figure 2023095192000001
[式中、mは、3~280の整数である]
B)少なくとも1つの水酸基を持つ環式化合物及びその誘導体
C)フェノール、エチレンオキサイドの繰り返し数が1若しくは2のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、またはフォスフェート若しくはフォスホネートを含むフェノキシエチル誘導体
D)アルデヒド類。
[11]前記ジオポリマー組成物用強度増進助材が、前記アルカリ土類金属酸化物を含む[7]乃至[10]のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物。
[12]前記アルカリ土類金属酸化物の含有量が、前記活性フィラー100質量部に対して、1.0質量部以上15質量部以下である[11]に記載のジオポリマー組成物。
[13]前記活性フィラー100質量%中におけるシリカフュームの含有量が、20質量%以下である[7]乃至[12]のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物。
[14]前記活性フィラー100質量%中におけるシリカフュームの含有量が、5.0質量%以下である[7]乃至[13]のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物。
[15]前記活性フィラーが、シリカヒュームを含まない[7]乃至[14]のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物。
[16]さらに、増粘剤及び/またはブリーディング抑制剤を含む[7]乃至[15]のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物。
本発明のジオポリマー組成物用強度増進助材の態様によれば、アルカリ土類金属酸化物、無機カルシウム塩類、無機アルミニウム塩類、硝酸塩類及び有機系強度増進成分からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含むことにより、ジオポリマー組成物の硬化物に、高い初期強度と長期強度を付与することができる。
本発明のジオポリマー組成物用強度増進助材の態様によれば、前記アルカリ土類金属酸化物が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム及び酸化バリウムからなる群から選択された少なくとも1種であることにより、ジオポリマー組成物の硬化物に、高い初期強度と長期強度を確実に付与することができる。
本発明のジオポリマー組成物の態様によれば、活性フィラー、アルカリ活性剤、縮合物系分散剤、前記ジオポリマー組成物用強度増進助材を含むことにより、フレッシュな性状においては長い流動性保持時間を有ししつつ、硬化性状においては高い初期強度と長期強度を有するジオポリマー組成物を得ることができる。従って、本発明のジオポリマー組成物では、フレッシュ性状においては、流動性の高い保持時間を長期間にわたって有しているので、長時間の運搬とポンプ圧送が可能となり、現場での打設における取扱い性が向上する。また、本発明のジオポリマー組成物では、硬化性状においては、十分な初期強度及び長期強度を有するので、早期な型枠の脱型及び長期間の構造体強度を確保することが可能となる。
本発明のジオポリマー組成物の態様によれば、前記活性フィラーがフライアッシュ及び高炉スラグからなる群から選択された少なくとも1種を含むことにより、廃棄物の有効利用による環境負荷の低減をすることができ、また、容易にジオポリマー組成物を製造することができる。
本発明のジオポリマー組成物の態様によれば、前記アルカリ活性剤が珪酸アルカリ及び水酸化アルカリからなる群から選択された少なくとも1種を含むことにより、アルミナ及びケイ酸を含有する活性フィラーとアルカリ活性剤との重縮合物を容易に且つ確実に得ることができる。
本発明のジオポリマー組成物の態様によれば、前記縮合物系分散剤が、ベータナフタレンホルムアルデヒド縮合物、ポリアリルエーテル構造を有する縮合物、及び少なくとも下記構成単位A)、B)、C)及びD)
A)下記式(I)のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル
Figure 2023095192000002
[式中、mは、3~280の整数である]
B)少なくとも1つの水酸基を持つ環式化合物及びその誘導体
C)フェノール、エチレンオキサイドの繰り返し数が1若しくは2のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、またはフォスフェート若しくはフォスホネートを含むフェノキシエチル誘導体
D)アルデヒド類
を含む縮合物からなる群から選択された少なくとも1種を含み、前記縮合物系分散剤の含有量が前記活性フィラー100質量部に対して0.5質量部以上1.5質量部以下であることにより、フレッシュな性状におけるジオポリマー組成物の粘度が確実に低減するので、長い流動性保持時間を確実に有することができる。
本発明のジオポリマー組成物の態様によれば、前記ジオポリマー組成物用強度増進助材が前記アルカリ土類金属酸化物を含み、前記アルカリ土類金属酸化物の含有量が前記活性フィラー100質量部に対して1.0質量部以上15質量部以下であることにより、ジオポリマー組成物の強度が確実に増進しつつ、長い流動性保持時間を確実に得ることができる。
本発明のジオポリマー組成物の態様によれば、前記活性フィラーがシリカヒュームを含まないことにより、長い流動性保持時間を確実に得つつ、ジオポリマー組成物の製造コストを低減することができる。
以下に、本発明のジオポリマー組成物用強度増進助材及び本発明のジオポリマー組成物について、詳細を説明する。先ずは、本発明のジオポリマー組成物用強度増進助材について、詳細を説明する。
<ジオポリマー組成物用強度増進助材>
本発明のジオポリマー組成物用強度増進助材は、ジオポリマー組成物に添加され、ジオポリマー組成物の初期強度及び/又は長期強度を補助的に向上させるものであって、アルカリ土類金属酸化物、無機カルシウム塩類、無機アルミニウム塩類、硝酸塩類及び有機系強度増進成分からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。本発明のジオポリマー組成物用強度増進助材では、アルカリ土類金属酸化物、無機カルシウム塩類、無機アルミニウム塩類、硝酸塩類及び有機系強度増進成分からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含むことにより、ジオポリマー組成物に配合されることで、ジオポリマー組成物の硬化物に高い初期強度と長期強度を付与することができる。なお、本明細書において、「初期強度」とは、ジオポリマー組成物の調製から24時間経過後におけるジオポリマー組成物の硬化物の強度を意味し、「長期強度」とは、ジオポリマー組成物の調製から28日経過後におけるジオポリマー組成物の硬化物の強度を意味する。また、本発明のジオポリマー組成物用強度増進助材は、ジオポリマー組成物への添加の容易性、ジオポリマー組成物の取り扱い容易性を有している。また、本発明のジオポリマー組成物用強度増進助材を添加したジオポリマー組成物では、粘性の適度な低さ、ジオポリマー組成物の構成成分の分離の抑制、硬化後の収縮抑制等の一般的に要求される性能を有している。
アルカリ土類金属酸化物
アルカリ土類金属酸化物は、後述する本発明のジオポリマー組成物に配合される活性フィラーとあいまって、ジオポリマー組成物の初期強度と長期強度を向上させることができる。ジオポリマー組成物用強度増進助材として使用されるアルカリ土類金属酸化物は、特に限定されないが、ジオポリマー組成物の硬化物に高い初期強度と長期強度を確実に付与することができる点から、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)及び酸化バリウム(BaO)からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましく、ジオポリマー組成物の硬化物に高い初期強度を確実に付与しつつ、取り扱い性に優れる点から、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)がより好ましく、酸化カルシウム(CaO)が特に好ましい。これらのアルカリ土類金属酸化物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
アルカリ土類金属酸化物のジオポリマー組成物への含有量は、特に限定されないが、その下限値は、ジオポリマー組成物の強度が確実に増進する点から、ジオポリマー組成物に配合される活性フィラー100質量部(固形分、以下同じ。)に対して、1.0質量部が好ましく、1.5質量部がより好ましく、2.0質量部が特に好ましい。一方で、アルカリ土類金属酸化物のジオポリマー組成物への含有量の上限値は、活性フィラーの反応を阻害して強度増進効果が低下するのを確実に防止し、長い流動性保持時間を確実に得る点から、ジオポリマー組成物に配合される活性フィラー100質量部に対して、15質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、5.0質量部がさらに好ましく、ジオポリマー組成物の硬化前の性状における高温化を確実に防止してジオポリマー組成物の硬化物に亀裂が発生することを確実に防止し、また、添加や計量の容易さとコスト削減の点から、3.0質量部が特に好ましい。
無機カルシウム塩類
無機カルシウム塩類は、後述する本発明のジオポリマー組成物に配合される活性フィラーとあいまって、ジオポリマー組成物の初期強度と長期強度を向上させることができる。ジオポリマー組成物用強度増進助材として使用される無機カルシウム塩類は、特に限定されないが、ジオポリマー組成物の硬化物に高い初期強度と長期強度を確実に付与することができる点から、水酸化カルシウム、石膏、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルミン酸カルシウム及び塩化カルシウムからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましく、取り扱い性に優れる点から、水酸化カルシウム、石膏、炭酸カルシウム、塩化カルシウムがより好ましく、水酸化カルシウム、石膏が特に好ましい。これらの無機カルシウム塩類は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
無機カルシウム塩類のジオポリマー組成物への含有量は、特に限定されないが、その下限値は、ジオポリマー組成物の強度が確実に増進する点から、ジオポリマー組成物に配合される活性フィラー100質量部に対して、1.0質量部が好ましく、1.5質量部がより好ましく、2.0質量部が特に好ましい。一方で、無機カルシウム塩類のジオポリマー組成物への含有量の上限値は、長い流動性保持時間を確実に得る点から、ジオポリマー組成物に配合される活性フィラー100質量部に対して、15質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、5.0質量部が特に好ましい。
無機アルミニウム塩類
無機アルミニウム塩類は、後述する本発明のジオポリマー組成物に配合される活性フィラーとあいまって、ジオポリマー組成物の初期強度と長期強度を向上させることができる。ジオポリマー組成物用強度増進助材として使用される無機アルミニウム塩類は、特に限定されないが、ジオポリマー組成物の硬化物に高い初期強度と長期強度を確実に付与することができる点から、アルミン酸ナトリウム及び硫酸アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。無機アルミニウム塩類は、無水物でも水和物でもよい。また、無機アルミニウム塩類は、少量の鉄イオンを含有してもよく、錯体を形成していてもよい。これらの無機アルミニウム塩類は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
無機アルミニウム塩類のジオポリマー組成物への含有量は、特に限定されないが、その下限値は、ジオポリマー組成物の強度が確実に増進する点から、ジオポリマー組成物に配合される活性フィラー100質量部に対して、1.0質量部が好ましく、1.5質量部がより好ましく、2.0質量部が特に好ましい。一方で、無機アルミニウム塩類のジオポリマー組成物への含有量の上限値は、長い流動性保持時間を確実に得る点から、ジオポリマー組成物に配合される活性フィラー100質量部に対して、20質量部が好ましく、15質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましく、5.0質量部が特に好ましい。
硝酸塩類
硝酸塩類は、後述する本発明のジオポリマー組成物に配合される活性フィラーとあいまって、ジオポリマー組成物の初期強度と長期強度を向上させることができる。ジオポリマー組成物用強度増進助材として使用される硝酸塩類は、特に限定されないが、ジオポリマー組成物の硬化物に高い初期強度と長期強度を確実に付与することができる点から、アルカリ土類金属の硝酸塩及びアルカリ土類金属の亜硝酸塩からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましく、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウムが特に好ましい。硝酸塩類は、無水物でも水和物でもよい。これらの硝酸塩類は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、硝酸塩類は、ジオポリマー組成物用強度増進助材として単独で使用してもよいが、アルカリ土類金属酸化物、無機カルシウム塩類及び/または無機アルミニウム塩類と併用することが好ましい。
硝酸塩類のジオポリマー組成物への含有量は、特に限定されないが、その下限値は、ジオポリマー組成物の強度が確実に増進することに寄与する点から、ジオポリマー組成物に配合される活性フィラー100質量部に対して、1.0質量部が好ましく、1.5質量部がより好ましく、2.0質量部が特に好ましい。一方で、硝酸塩類のジオポリマー組成物への含有量の上限値は、長い流動性保持時間を確実に得る点から、ジオポリマー組成物に配合される活性フィラー100質量部に対して、10質量部が好ましく、5.0質量部が特に好ましい。
有機系強度増進成分
有機系強度増進成分は、後述する本発明のジオポリマー組成物に配合される活性フィラーとあいまって、ジオポリマー組成物の初期強度と長期強度を向上させることができる。ジオポリマー組成物用強度増進助材として使用される有機系強度増進成分は、特に限定されないが、ジオポリマー組成物の硬化物に高い初期強度と長期強度を確実に付与することができる点から、グリセリン類及びアルカノールアミンからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。グリセリン類としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、これらのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。また、アルカノールアミンとしては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンが挙げられる。これらの有機系強度増進成分は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、有機系強度増進成分は、ジオポリマー組成物用強度増進助材として単独で使用してもよいが、アルカリ土類金属酸化物、無機カルシウム塩類及び/または無機アルミニウム塩類と併用することが好ましい。
有機系強度増進成分のジオポリマー組成物への含有量は、特に限定されないが、その下限値は、ジオポリマー組成物の強度が確実に増進することに寄与する点から、ジオポリマー組成物に配合される活性フィラー100質量部に対して、0.010質量部が好ましく、0.015質量部がより好ましく、0.020質量部が特に好ましい。一方で、有機系強度増進成分のジオポリマー組成物への含有量の上限値は、長い流動性保持時間を確実に得る点から、ジオポリマー組成物に配合される活性フィラー100質量部に対して、5.0質量部が好ましく、3.0質量部がより好ましく、1.0質量部が特に好ましい。
<ジオポリマー組成物>
次に、本発明のジオポリマー組成物について、詳細を説明する。本発明のジオポリマー組成物は、活性フィラー、アルカリ活性剤、縮合物系分散剤、上記したジオポリマー組成物用強度増進助材を含む。本発明のジオポリマー組成物では、活性フィラー、アルカリ活性剤、縮合物系分散剤、上記した本発明のジオポリマー組成物用強度増進助材含むことにより、フレッシュな性状においては長い流動性保持時間を有ししつつ、硬化性状においては高い初期強度と長期強度を有するジオポリマー組成物を得ることができる。従って、本発明のジオポリマー組成物では、フレッシュ性状においては、流動性の高い保持時間を長期間にわたって有しているので、長時間の運搬とポンプ圧送が可能となり、現場での打設における取扱い性が向上する。また、本発明のジオポリマー組成物では、硬化性状においては、十分な初期強度及び長期強度を有するので、早期に型枠からジオポリマー組成物の硬化物を取り出すことができ、また、長期間にわたって構造体強度を確保することが可能となる。
本発明のジオポリマー組成物の各構成成分について、以下に説明する。
活性フィラー
活性フィラーは、後述するアルカリ活性剤と接すると、活性フィラーから溶出した金属イオンと、活性フィラーのシリカ構造とが架橋して脱水縮重合する。活性フィラーは、ジオポリマー組成物のバインダーとして機能する。活性フィラーは、上記のような反応を行うことができれば、特に限定されず、例えば、フライアッシュ、ボトムアッシュ、もみ殻灰、油ヤシの搾りかすを焼成したパームアッシュ、廃ガラス、都市ごみ焼却灰、下水道汚泥の焼却灰、高炉スラグ微粉末、メタカオリン(粘土鉱物の焼成物)、シリカフューム、粉末状シリカ等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、廃棄物の有効利用による環境負荷の低減をすることができ、また、容易にジオポリマー組成物を製造することができる点、及び入手容易性と取り扱い容易性の点から、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末が好ましい。
活性フィラーには、シリカフュームは含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。すなわち、本発明のジオポリマー組成物には、シリカフュームは含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。活性フィラーにシリカフュームが含まれていない、すなわち、本発明のジオポリマー組成物にシリカフュームが含まれていないことにより、長い流動性保持時間を確実に得つつ、ジオポリマー組成物の製造コストを低減できる。
活性フィラーにシリカフュームが含まれている場合には、活性フィラー100質量%(固形分、以下同じ。)中におけるシリカフュームの含有量の上限値は、ジオポリマー組成物の粘度上昇を防止してフレッシュな性状におけるハンドリング性をより確実に得る点から、20質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、ジオポリマー組成物の流動性の低下を確実に防止する点とコスト低減の点から、5.0質量%が特に好ましい。一方で、活性フィラー100質量%中におけるシリカフュームの含有量の下限値は、ジオポリマー組成物の流動性の低下を確実に防止する点から、1.0質量%が好ましく、2.0質量%が特に好ましい。シリカフュームは、他の活性フィラーと併用して、粉末状またはスラリー状でジオポリマー組成物に添加することが好ましい。シリカヒューム及び粉末状シリカは、シリカ成分が90%以上であることが好ましい。
活性フィラーは、二酸化炭素削減効果及び高い初期強度と長期強度を確実に得る点から、セメントクリンカを含まないことが好ましい。
フライアッシュ(FA)
フライアッシュは、石炭火力発電所において発生する産業廃棄物である。フライアッシュは、シリカ(SiO)、及びアルミナ(Al)を多く含む。本発明のジオポリマー組成物では、フライアッシュは、どの品質でも使用することができ、JIS規格に規定されていても、JIS規格に規定されていなくてもよい。本発明のジオポリマー組成物に使用されるフライアッシュとしては、4種類の品質(フライアッシュI種~IV種)でJISに規定されているものが好ましく、硬化物の強度をさらに高める点から、II種のフライアッシュ(JIS II種灰)が特に好ましい。また、本発明のジオポリマー組成物に使用されるフライアッシュとしては、ASTM規格のタイプF、タイプCが好ましい。
フライアッシュの含有量は、特に限定されないが、その下限値は、ジオポリマーモルタルの硬化の円滑化の点から、100kg/mが好ましく、200kg/mが特に好ましい。一方で、フライアッシュの含有量の上限値は、フレッシュな性状のジオポリマー組成物の粘度上昇を防止して、優れたハンドリング性を得る点から、700kg/mが好ましく、500kg/mが特に好ましい。
高炉スラグ微粉末(BS)
高炉スラグは、鉄鉱石から銑鉄を製造する工程において、鉄鉱石に含まれる鉄以外の成分と、副原料の石灰石及びコークス中の灰をあわせて回収したもの(副産物)である。高炉スラグ微粉末は、高炉スラグを粉砕処理等することにより、粒度調整を行ったものである。高炉スラグ微粉末は、通常のジオポリマー組成物に用いられるものであれば、特に限定されず、使用条件等に応じて適宜選択することができる。高炉スラグ微粉末としては、例えば、JIS R 5211「高炉セメント」において使用される高炉スラグ微粉末、JIS A 6206「コンクリート用高炉スラグ微粉末」に適合する高炉スラグ微粉末等が挙げられる。
高炉スラグ微粉末の含有量は、特に限定されないが、その下限値は、フレッシュな性状のジオポリマー組成物に優れた流動性を付与する点から、50kg/mが好ましく、100kg/mが特に好ましい。一方で、高炉スラグ微粉末の含有量の上限値は、長い流動性保持時間を確実に得る点から、400kg/mが好ましく、350kg/mが特に好ましい。
活性フィラーがフライアッシュと高炉スラグ微粉末を含む場合、活性フィラー中のフライアッシュ:高炉スラグ微粉末の質量比は、特に限定されないが、アルカリ活性剤による脱水縮重合反応の円滑化の点から、5:1~1:5が好ましく、3:1~1:1が特に好ましい。また、活性フィラーがフライアッシュと高炉スラグ微粉末を含む場合、ジオポリマー組成物の硬化の円滑化の点から、フライアッシュと高炉スラグ微粉末の合計量が、90質量%以上であることが好ましい。
アルカリ活性剤
アルカリ活性剤は、活性フィラーから金属イオンを溶出させて、活性フィラーのシリカ構造と溶出させた金属元素とを架橋させて活性フィラーを脱水縮重合する機能を有する。アルカリ活性剤は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)等のアルカリ金属を含む溶液である。また、必要に応じて、さらにその他の成分を含有してもよい。アルカリ活性剤としては、アルミナ及びケイ酸を含有する活性フィラーとアルカリ活性剤との重縮合物を容易に且つ確実に得ることができ、また、入手が容易である点から、珪酸アルカリ、水酸化アルカリが好ましい。
アルカリ活性剤の含有量は、特に限定されないが、その下限値は、活性フィラーを円滑に脱水縮重合する点から、活性フィラー100質量部に対して、3.0質量部が好ましく、4.0質量部が特に好ましい。一方で、アルカリ活性剤の含有量の上限値は、ジオポリマー組成物の硬化の円滑化の点から、活性フィラー100質量部に対して、6.0質量部が好ましく、5.0質量部が特に好ましい。
縮合物系分散剤
縮合物系分散剤は、本発明のジオポリマー組成物の粘度を低下させて、フレッシュな性状において長い流動性保持時間を付与する機能を有する。縮合物系分散剤としては、例えば、フレッシュな性状におけるジオポリマー組成物の粘度を確実に低減して、長い流動性保持時間を確実に付与することができる点から、ベータナフタレンホルムアルデヒド縮合物、ポリアリルエーテル構造を有する縮合物が好ましい。
また、他の縮合物系分散剤としては、例えば、フレッシュな性状におけるジオポリマー組成物の粘度を確実に低減して、長い流動性保持時間を確実に付与することができる点から、少なくとも下記構成単位A)、B)、C)及びD)
A)下記式(I)のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル
Figure 2023095192000003
[式中、mは、3~280の整数である]
B)少なくとも1つの水酸基を持つ環式化合物及びその誘導体
C)フェノール、エチレンオキサイドの繰り返し数が1若しくは2のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、またはフォスフェート若しくはフォスホネートを含むフェノキシエチル誘導体
D)アルデヒド類
を含む縮合物が好ましい。
構成単位Bは、少なくとも1つの水酸基を持つ環式化合物及びその誘導体である。構成単位Bの具体例としては、ベンゼン-1,2-ジオール、ベンゼン-1,2,3-トリオール、2-ヒドロキシ安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシフタル酸、2,3-ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、3,4-ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、1,2-ジヒドロキシナフタレン-5-スルホン酸、1,2-ジヒドロキシナフタレン-6-スルホン酸、2,3-ジヒドロキシナフタレン-5-スルホン酸、2,3-ジヒドロキシナフタレン-6-スルホン酸、並びにそれらの混合物からなる群から選択された、少なくとも1種の芳香族化合物が挙げられる。
構成単位Cは、フェノール、エチレンオキサイドの繰り返し数が1若しくは2のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、またはフォスフェート若しくはフォスホネートを含むフェノキシエチル誘導体である。構成単位Cの具体例としては、フェノール、2-フェノキシエタノール、2-フェノキシエチルホスフェート、2-フェノキシエチルホスホネート、2-フェノキシ酢酸、2-(2-フェノキシエトキシ)エタノール、2-(2-フェノキシエトキシ)エチルホスフェート、2-(2-フェノキシエトキシ)エチルホスホネート、2-[-(2-ヒドロキシエトキシ)フェノキシ]エチルホスフェート、2-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェノキシ]エチルホスホネート、2-[4-(2-ホスホナトオキシエトキシ)フェノキシ]エチルホスフェート、2-[4-(2-ホスホナトオキシエトキシ)フェノキシ]エチルホスホネート、メトキシフェノール並びにそれらの混合物からなる群から選択された、少なくとも1種の他の芳香族化合物が挙げられる。
構成単位Dは、アルデヒド類である。構成単位Dの具体例としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキシル酸、ベンズアルデヒド、ベンズアルデヒドスルホン酸、ベンズアルデヒドジスルホン酸、バニリン及びイソバニリン、並びにそれらの混合物からなる群から選択された、少なくとも1種のアルデヒドなどが挙げられる。
上記した縮合物系分散剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。縮合物系分散剤の含有量は、特に限定されないが、その下限値は、フレッシュな性状におけるジオポリマー組成物の粘度を確実に低減して、長い流動性保持時間を確実に付与ることができる点から、活性フィラー100質量部に対して、0.5質量部が好ましく、0.7質量部が特に好ましい。一方で、縮合物系分散剤の含有量の上限値は、凝結遅延を確実に防止し、また優れた初期強度を確実に得る点から、1.5質量部が好ましく、1.3質量部が特に好ましい。
ジオポリマー組成物用強度増進助材
本発明のジオポリマー組成物では、上記の通り、アルカリ土類金属酸化物、無機カルシウム塩類、無機アルミニウム塩類、硝酸塩類及び有機系強度増進成分からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含むジオポリマー組成物用強度増進助材が配合されている。本発明のジオポリマー組成物に配合されるジオポリマー組成物用強度増進助材の詳細は、上記の通りである。
その他の成分
本発明のジオポリマー組成物では、その他の成分として、必要に応じて、通常のコンクリート組成物に用いられる成分を、使用条件等に応じて適宜配合することができる。その他の成分としては、例えば、細骨材、粗骨材、繊維、水、増粘剤、ブリーディング抑制剤、AE剤、遅延剤等が挙げられる。
増粘剤としては、例えば、粘土やタルク等の無機系誘導体、アクリル系またはアクリルアミド系(コ)ポリマー、セルロース類やガム類等の天然多糖類、多糖類誘導体等の増粘効果を有する化合物を挙げることができる。ブリーディング抑制剤としては、例えば、前記増粘剤に加え、ポリアルキレンオキサイド、高吸水性高分子やアミン塩類等を挙げることができる。
増粘剤は、水の分離を抑えることができる効果も発揮する。ジオポリマー組成物中における増粘剤の含有量の下限値は、水の分離を確実に抑える点から、0.001質量%が好ましい。一方で、ジオポリマー組成物中における増粘剤の含有量の上限値は、ジオポリマー組成物の粘度上昇によるハンドリング性の低下を確実に防止する点から、1.0質量%が好ましい。
水(W)と活性フィラー(P)との質量比(以下、「W/P」と表記することがある。)の下限値は、ジオポリマー組成物の粘度上昇によるハンドリング性の低下を確実に防止する点から、20%が好ましく、25%が特に好ましい。一方で、W/Pの上限値は、ジオポリマー組成物の硬化の円滑化の点から、40%が好ましく、35%が特に好ましい。なお、Wとは、前記の添加する水、アルカリ活性剤に含まれる水及び骨材の表面水などを含む、ジオポリマー組成物中に含まれる全ての水の質量を意味し、Pとはジオポリマー組成物中に含まれる全ての活性フィラーの質量を意味する。すなわち、W/Pとは、ジオポリマー組成物中に含まれる全ての水の質量をジオポリマー組成物中に含まれる全ての活性フィラーの質量で除した質量比を意味する。
<ジオポリマー組成物の製造方法>
本発明のジオポリマー組成物の製造方法は、特に限定されず、通常のジオポリマー組成物の製造方法で製造することができる。また、ジオポリマー組成物の製造に用いる装置についても、通常のジオポリマー組成物の製造に用いる装置を用いることができる。
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<縮合物系分散剤の合成>
撹拌機と計量供給ポンプとを備えた加熱可能な反応器に、2-フェノキシエタノール621.8部を20℃で窒素下に充填した。次いで、冷却下にポリリン酸449.7部を、温度が35℃を上回らないようにして100分間にわたって添加した。計量供給後、この反応混合物を約70℃でさらに15分間撹拌し、凝固前に移し換え、2-フェノキシエチルホスフェートを得た。
撹拌機と計量供給ポンプとを備えた加熱可能な反応器に、ポリ(エチレンオキシド)モノフェニルエーテル(平均分子量2000g/モル)300部、3,4-ジヒドロキシ安息香酸46.2部、2-フェノキシエチルホスフェート33部、及びパラホルムアルデヒド19.9部を、90℃で窒素下に充填した。この反応混合物を撹拌下に110℃に加熱し、次いでメタンスルホン酸(70%)41部を、反応温度が115℃を上回らないようにして25分間以内で添加した。計量供給後、この反応混合物を110℃でさらに2.5時間撹拌した。その後、冷却し、水350部と混合し、30分間100℃に加熱し、50%苛性ソーダ液で中和してpH値を約7.0にし、固形分20質量%のポリマー1を得た。
<ジオポリマー組成物の配合>
実施例、参考例及び比較例のジオポリマー組成物の配合成分について、下記表1に示す。
Figure 2023095192000004
表1に示す配合成分を用いて、実施例、参考例及び比較例のジオポリマー組成物を製造した。具体的には、容器に細骨材の半量、活性フィラー、強度増進助材(ジオポリマー組成物用強度増進助材)、細骨材の半量の順に入れ、20秒間練り混ぜを行った。その後、縮合物系分散剤、水及びアルカリ活性剤を入れ、60秒間練り混ぜを行い、掻き落とし(壁面に付着した粉体を容器の中央に入れる作業)を行い、120秒間練り混ぜを行って、ジオポリマー組成物を得た。ジオポリマー組成物に配合した各成分の配合量を下記表2に示す。なお、参考例とは、強度増進助材(ジオポリマー組成物用強度増進助材)として、酸化カルシウムに代えて、従来から使用されているシリカヒュームを配合した試料である。
Figure 2023095192000005
表2中の配合量の数値は、ジオポリマー組成物1m中に占める配合量をkg単位で示したものである。ただし、酸化カルシウムの添加量は、固形分の活性フィラー100質量部に対する酸化カルシウムの質量部である。また、アルカリ活性剤及び縮合物系分散剤の添加量は、固形分の活性フィラー100質量部に対する質量部である。
評価項目は以下の通りである。
(1)フロー値(mm)
JIS R 5201に準拠して測定した。ただし、15打のタンピングを行わないフロー値とした。
(2)圧縮強度(MPa)
JIS A 1108に準拠して測定した、供試体サイズはφ5x10の円柱とした。1日経過後の圧縮強度は、5.0MPa以上を早期に型枠の脱型が可能と評価して合格と判定した。また、28日経過後の圧縮強度は、50.0MPa以上を長期間の構造体強度を確保することが可能と評価して合格と判定した。
実施例、参考例及び比較例のジオポリマー組成物のフロー値及び圧縮強度の測定結果を下記表3に示す。
Figure 2023095192000006
上記表3に示すように、ジオポリマー組成物用強度増進助材としてシリカヒュームを配合せずに酸化カルシウムを配合した実施例1、2のジオポリマー組成物では、1日経過後の圧縮強度は5.0MPa以上、28日経過後の圧縮強度は50.0MPa以上であり、高い長期強度だけではなく、高い初期強度も得ることができた。従って、実施例1、2では、参考例1である従来のジオポリマー組成物よりも製造コストを低減して、従来と同等の初期強度と長期強度を得ることができた。また、縮合物系分散剤を配合した実施例1、2のジオポリマー組成物では、練混直後から120分後までのフロー値が300mmであり、フレッシュ性状において流動性の高い保持時間を長期間にわたって有していた。実施例1、2のジオポリマー組成物では、従来のジオポリマー組成物よりも練混直後から120分後までのフロー値が優れていた。
一方で、ジオポリマー組成物用強度増進助材である酸化カルシウムを配合しなかった比較例1のジオポリマー組成物では、1日経過後でもジオポリマー組成物の硬化物の強度が弱いことから型枠の脱型ができず、圧縮強度が測定できなかった。従って、比較例1では、高い初期強度を得ることができなかった。
本発明のジオポリマー組成物用強度増進助材は、ジオポリマー組成物の硬化物に高い初期強度と長期強度を付与することができ、本発明のジオポリマー組成物は、フレッシュな性状においては長い流動性保持時間を有しつつ、硬化性状においては高い初期強度と長期強度を有するので、建設物の分野で利用価値が高い。
本発明は、ジオポリマー組成物用強度増進助材及び前記ジオポリマー組成物用強度増進助材を含むジオポリマー組成物に関する。
脱炭素社会の実現に向けて、近年、建設物の分野についても、二酸化炭素の排出量を低減させることが要求されてきている。建設物に多く使用されるコンクリート組成物やモルタル組成物等の水硬化性組成物は、製造過程において多量の二酸化炭素を排出するセメントが多量に配合されている。このため、建設物の分野において、二酸化炭素の排出量を減少させるには、セメントに代わる水硬化性組成物の開発が要求されている。
そこで、セメントを用いずに硬化させることができる、ジオポリマー組成物が提案されている。ジオポリマーとは、アルミナ及びケイ酸を含有する活性フィラーとアルカリ活性剤とが重縮合した物質である。活性フィラーとして用いる化合物及びアルカリ活性剤として用いる化合物については、現在、種々の検討がなされている。例えば、廃棄物の有効利用による環境負荷低減の点から、活性フィラーとして、フライアッシュ等の石炭灰や各種飛灰、高炉スラグ微粉末、シリカフューム等が利用されることがある。
そこで、セメントを全く使用しない硬化組成物として、結合材として高炉スラグ微粉末、消石灰、必要に応じてフライアッシュやシリカフュームを用い、この結合材に、ポリカルボン酸系などの高性能AE 減水剤を必要に応じてカルシウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、アルカリ金属イオンなどの複数の無機化合物を主成分とした水溶性の混和剤及び清水を配合した硬化組成物が提案されている(特許文献1)。特許文献1では、所望の初期強度及び耐久性を得ることができ、特にポーラスコンクリート等に適用可能としている。
しかしながら、特許文献1の硬化組成物では、一般のコンクリート硬化体に要求され、型枠の脱型時期に影響する、材令1日程度の初期強度に改善の余地があった。
また、ジオポリマー組成物は、急速に硬化が進むために、流動性の保持時間が短いという問題があった。そこで、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、水ガラスを含有するアルカリ溶液、骨材に、さらに正リン酸塩を配合したジオポリマー組成物が提案されている(特許文献2)。特許文献2では、流動性保持時間を30分~60分程度まで延長することができるとしている。
しかし、ジオポリマー組成物が、従来のセメントコンクリートに代わって広く適用されるためには、正リン酸塩を配合したジオポリマー組成物では、流動性保持時間の延長に改善の余地があった。また、ジオポリマー組成物が一般のセメントコンクリートと同様に広く利用されるためには、添加剤等を配合する際に、ジオポリマー組成物への容易な添加(例えば、液体で添加することが望ましい)が好ましく、更には、ジオポリマー組成物の取り扱いを容易にする、ジオポリマー組成物の粘性の低さや分離の抑制、又は、硬化後の収縮抑制といった要求性能を有することが好ましい。
特開2012-171855号公報 特開2020-026357号公報
上記事情に鑑み、本発明は、ジオポリマー組成物の硬化物に、高い初期強度と長期強度を付与することができるジオポリマー組成物用強度増進助材、及びフレッシュな性状においては長い流動性保持時間を有しつつ、硬化性状においては高い初期強度と長期強度を有するジオポリマー組成物を提供することを目的とする。
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1]アルカリ土類金属酸化物、無機カルシウム塩類、無機アルミニウム塩類、(亜)硝酸塩類及び有機系強度増進成分からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含むジオポリマー組成物用強度増進助材。
[2]前記アルカリ土類金属酸化物が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム及び酸化バリウムからなる群から選択された少なくとも1種である[1]に記載のジオポリマー組成物用強度増進助材。
[3]前記無機カルシウム塩類が、水酸化カルシウム、石膏、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルミン酸カルシウム及び塩化カルシウムからなる群から選択された少なくとも1種である[1]または[2]に記載のジオポリマー組成物用強度増進助材。
[4]前記無機アルミニウム塩類が、アルミン酸ナトリウム及び硫酸アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種である[1]乃至[3]のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物用強度増進助材。
[5]前記(亜)硝酸塩類が、アルカリ土類金属の硝酸塩及びアルカリ土類金属の亜硝酸塩からなる群から選択された少なくとも1種である[1]乃至[4]のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物用強度増進助材。
[6]前記有機系強度増進成分が、グリセリン類及びアルカノールアミンからなる群から選択された少なくとも1種である[1]乃至[5]のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物用強度増進助材。
[7]活性フィラー、アルカリ活性剤、縮合物系分散剤、[1]乃至[6]のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物用強度増進助材を含むジオポリマー組成物。
[8]前記活性フィラーが、フライアッシュ及び高炉スラグ微粉末からなる群から選択された少なくとも1種を含む[7]に記載のジオポリマー組成物。
[9]前記アルカリ活性剤が、珪酸アルカリ及び水酸化アルカリからなる群から選択された少なくとも1種を含む[7]または[8]に記載のジオポリマー組成物。
[10]前記縮合物系分散剤が、ベータナフタレンホルムアルデヒド縮合物、ポリアリルエーテル構造を有する縮合物、及び少なくとも下記構成単位A)、B)、C)及びD)を含む縮合物からなる群から選択された少なくとも1種を含み、
前記縮合物系分散剤の含有量が、前記活性フィラー100質量部に対して、0.5質量部以上1.5質量部以下である、[7]乃至[9]のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物。
A)下記式(I)のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル
Figure 2023095192000009
[式中、mは、3~280の整数である]
B)少なくとも1つの水酸基を持つ環式化合物及びその誘導体
C)フェノール、エチレンオキサイドの繰り返し数が1若しくは2のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、またはフォスフェート若しくはフォスホネートを含むフェノキシエチル誘導体
D)アルデヒド類。
[11]前記ジオポリマー組成物用強度増進助材が、前記アルカリ土類金属酸化物を含む[7]乃至[10]のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物。
[12]前記アルカリ土類金属酸化物の含有量が、前記活性フィラー100質量部に対して、1.0質量部以上15質量部以下である[11]に記載のジオポリマー組成物。
[13]前記活性フィラー100質量%中におけるシリカフュームの含有量が、20質量%以下である[7]乃至[12]のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物。
[14]前記活性フィラー100質量%中におけるシリカフュームの含有量が、5.0質量%以下である[7]乃至[13]のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物。
[15]前記活性フィラーが、シリカヒュームを含まない[7]乃至[14]のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物。
[16]さらに、増粘剤及び/またはブリーディング抑制剤を含む[7]乃至[15]のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物。
本発明のジオポリマー組成物用強度増進助材の態様によれば、アルカリ土類金属酸化物、無機カルシウム塩類、無機アルミニウム塩類、(亜)硝酸塩類及び有機系強度増進成分からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含むことにより、ジオポリマー組成物の硬化物に、高い初期強度と長期強度を付与することができる。
本発明のジオポリマー組成物用強度増進助材の態様によれば、前記アルカリ土類金属酸化物が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム及び酸化バリウムからなる群から選択された少なくとも1種であることにより、ジオポリマー組成物の硬化物に、高い初期強度と長期強度を確実に付与することができる。
本発明のジオポリマー組成物の態様によれば、活性フィラー、アルカリ活性剤、縮合物系分散剤、前記ジオポリマー組成物用強度増進助材を含むことにより、フレッシュな性状においては長い流動性保持時間を有ししつつ、硬化性状においては高い初期強度と長期強度を有するジオポリマー組成物を得ることができる。従って、本発明のジオポリマー組成物では、フレッシュ性状においては、流動性の高い保持時間を長期間にわたって有しているので、長時間の運搬とポンプ圧送が可能となり、現場での打設における取扱い性が向上する。また、本発明のジオポリマー組成物では、硬化性状においては、十分な初期強度及び長期強度を有するので、早期な型枠の脱型及び長期間の構造体強度を確保することが可能となる。
本発明のジオポリマー組成物の態様によれば、前記活性フィラーがフライアッシュ及び高炉スラグ微粉末からなる群から選択された少なくとも1種を含むことにより、廃棄物の有効利用による環境負荷の低減をすることができ、また、容易にジオポリマー組成物を製造することができる。
本発明のジオポリマー組成物の態様によれば、前記アルカリ活性剤が珪酸アルカリ及び水酸化アルカリからなる群から選択された少なくとも1種を含むことにより、アルミナ及びケイ酸を含有する活性フィラーとアルカリ活性剤との重縮合物を容易に且つ確実に得ることができる。
本発明のジオポリマー組成物の態様によれば、前記縮合物系分散剤が、ベータナフタレンホルムアルデヒド縮合物、ポリアリルエーテル構造を有する縮合物、及び少なくとも下記構成単位A)、B)、C)及びD)
A)下記式(I)のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル
Figure 2023095192000010
[式中、mは、3~280の整数である]
B)少なくとも1つの水酸基を持つ環式化合物及びその誘導体
C)フェノール、エチレンオキサイドの繰り返し数が1若しくは2のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、またはフォスフェート若しくはフォスホネートを含むフェノキシエチル誘導体
D)アルデヒド類
を含む縮合物からなる群から選択された少なくとも1種を含み、前記縮合物系分散剤の含有量が前記活性フィラー100質量部に対して0.5質量部以上1.5質量部以下であることにより、フレッシュな性状におけるジオポリマー組成物の粘度が確実に低減するので、長い流動性保持時間を確実に有することができる。
本発明のジオポリマー組成物の態様によれば、前記ジオポリマー組成物用強度増進助材が前記アルカリ土類金属酸化物を含み、前記アルカリ土類金属酸化物の含有量が前記活性フィラー100質量部に対して1.0質量部以上15質量部以下であることにより、ジオポリマー組成物の強度が確実に増進しつつ、長い流動性保持時間を確実に得ることができる。
本発明のジオポリマー組成物の態様によれば、前記活性フィラーがシリカヒュームを含まないことにより、長い流動性保持時間を確実に得つつ、ジオポリマー組成物の製造コストを低減することができる。
以下に、本発明のジオポリマー組成物用強度増進助材及び本発明のジオポリマー組成物について、詳細を説明する。先ずは、本発明のジオポリマー組成物用強度増進助材について、詳細を説明する。
<ジオポリマー組成物用強度増進助材>
本発明のジオポリマー組成物用強度増進助材は、ジオポリマー組成物に添加され、ジオポリマー組成物の初期強度及び/又は長期強度を補助的に向上させるものであって、アルカリ土類金属酸化物、無機カルシウム塩類、無機アルミニウム塩類、(亜)硝酸塩類及び有機系強度増進成分からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。本発明のジオポリマー組成物用強度増進助材では、アルカリ土類金属酸化物、無機カルシウム塩類、無機アルミニウム塩類、(亜)硝酸塩類及び有機系強度増進成分からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含むことにより、ジオポリマー組成物に配合されることで、ジオポリマー組成物の硬化物に高い初期強度と長期強度を付与することができる。なお、本明細書において、「初期強度」とは、ジオポリマー組成物の調製から24時間経過後におけるジオポリマー組成物の硬化物の強度を意味し、「長期強度」とは、ジオポリマー組成物の調製から28日経過後におけるジオポリマー組成物の硬化物の強度を意味する。また、本明細書において、「(亜)硝酸塩類」とは、硝酸塩類及び/または亜硝酸塩類を意味する。また、本発明のジオポリマー組成物用強度増進助材は、ジオポリマー組成物への添加の容易性、ジオポリマー組成物の取り扱い容易性を有している。また、本発明のジオポリマー組成物用強度増進助材を添加したジオポリマー組成物では、粘性の適度な低さ、ジオポリマー組成物の構成成分の分離の抑制、硬化後の収縮抑制等の一般的に要求される性能を有している。
アルカリ土類金属酸化物
アルカリ土類金属酸化物は、後述する本発明のジオポリマー組成物に配合される活性フィラーとあいまって、ジオポリマー組成物の初期強度と長期強度を向上させることができる。ジオポリマー組成物用強度増進助材として使用されるアルカリ土類金属酸化物は、特に限定されないが、ジオポリマー組成物の硬化物に高い初期強度と長期強度を確実に付与することができる点から、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)及び酸化バリウム(BaO)からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましく、ジオポリマー組成物の硬化物に高い初期強度を確実に付与しつつ、取り扱い性に優れる点から、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)がより好ましく、酸化カルシウム(CaO)が特に好ましい。これらのアルカリ土類金属酸化物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
アルカリ土類金属酸化物のジオポリマー組成物への含有量は、特に限定されないが、その下限値は、ジオポリマー組成物の強度が確実に増進する点から、ジオポリマー組成物に配合される活性フィラー100質量部(固形分、以下同じ。)に対して、1.0質量部が好ましく、1.5質量部がより好ましく、2.0質量部が特に好ましい。一方で、アルカリ土類金属酸化物のジオポリマー組成物への含有量の上限値は、活性フィラーの反応を阻害して強度増進効果が低下するのを確実に防止し、長い流動性保持時間を確実に得る点から、ジオポリマー組成物に配合される活性フィラー100質量部に対して、15質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、5.0質量部がさらに好ましく、ジオポリマー組成物の硬化前の性状における高温化を確実に防止してジオポリマー組成物の硬化物に亀裂が発生することを確実に防止し、また、添加や計量の容易さとコスト削減の点から、3.0質量部が特に好ましい。
無機カルシウム塩類
無機カルシウム塩類は、後述する本発明のジオポリマー組成物に配合される活性フィラーとあいまって、ジオポリマー組成物の初期強度と長期強度を向上させることができる。ジオポリマー組成物用強度増進助材として使用される無機カルシウム塩類は、特に限定されないが、ジオポリマー組成物の硬化物に高い初期強度と長期強度を確実に付与することができる点から、水酸化カルシウム、石膏、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルミン酸カルシウム及び塩化カルシウムからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましく、取り扱い性に優れる点から、水酸化カルシウム、石膏、炭酸カルシウム、塩化カルシウムがより好ましく、水酸化カルシウム、石膏が特に好ましい。これらの無機カルシウム塩類は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
無機カルシウム塩類のジオポリマー組成物への含有量は、特に限定されないが、その下限値は、ジオポリマー組成物の強度が確実に増進する点から、ジオポリマー組成物に配合される活性フィラー100質量部に対して、1.0質量部が好ましく、1.5質量部がより好ましく、2.0質量部が特に好ましい。一方で、無機カルシウム塩類のジオポリマー組成物への含有量の上限値は、長い流動性保持時間を確実に得る点から、ジオポリマー組成物に配合される活性フィラー100質量部に対して、15質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、5.0質量部が特に好ましい。
無機アルミニウム塩類
無機アルミニウム塩類は、後述する本発明のジオポリマー組成物に配合される活性フィラーとあいまって、ジオポリマー組成物の初期強度と長期強度を向上させることができる。ジオポリマー組成物用強度増進助材として使用される無機アルミニウム塩類は、特に限定されないが、ジオポリマー組成物の硬化物に高い初期強度と長期強度を確実に付与することができる点から、アルミン酸ナトリウム及び硫酸アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。無機アルミニウム塩類は、無水物でも水和物でもよい。また、無機アルミニウム塩類は、少量の鉄イオンを含有してもよく、錯体を形成していてもよい。これらの無機アルミニウム塩類は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
無機アルミニウム塩類のジオポリマー組成物への含有量は、特に限定されないが、その下限値は、ジオポリマー組成物の強度が確実に増進する点から、ジオポリマー組成物に配合される活性フィラー100質量部に対して、1.0質量部が好ましく、1.5質量部がより好ましく、2.0質量部が特に好ましい。一方で、無機アルミニウム塩類のジオポリマー組成物への含有量の上限値は、長い流動性保持時間を確実に得る点から、ジオポリマー組成物に配合される活性フィラー100質量部に対して、20質量部が好ましく、15質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましく、5.0質量部が特に好ましい。
(亜)硝酸塩類
(亜)硝酸塩類は、後述する本発明のジオポリマー組成物に配合される活性フィラーとあいまって、ジオポリマー組成物の初期強度と長期強度を向上させることができる。ジオポリマー組成物用強度増進助材として使用される(亜)硝酸塩類は、特に限定されないが、ジオポリマー組成物の硬化物に高い初期強度と長期強度を確実に付与することができる点から、アルカリ土類金属の硝酸塩及びアルカリ土類金属の亜硝酸塩からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましく、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウムが特に好ましい。(亜)硝酸塩類は、無水物でも水和物でもよい。これらの(亜)硝酸塩類は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、(亜)硝酸塩類は、ジオポリマー組成物用強度増進助材として単独で使用してもよいが、アルカリ土類金属酸化物、無機カルシウム塩類及び/または無機アルミニウム塩類と併用することが好ましい。
(亜)硝酸塩類のジオポリマー組成物への含有量は、特に限定されないが、その下限値は、ジオポリマー組成物の強度が確実に増進することに寄与する点から、ジオポリマー組成物に配合される活性フィラー100質量部に対して、1.0質量部が好ましく、1.5質量部がより好ましく、2.0質量部が特に好ましい。一方で、(亜)硝酸塩類のジオポリマー組成物への含有量の上限値は、長い流動性保持時間を確実に得る点から、ジオポリマー組成物に配合される活性フィラー100質量部に対して、10質量部が好ましく、5.0質量部が特に好ましい。
有機系強度増進成分
有機系強度増進成分は、後述する本発明のジオポリマー組成物に配合される活性フィラーとあいまって、ジオポリマー組成物の初期強度と長期強度を向上させることができる。ジオポリマー組成物用強度増進助材として使用される有機系強度増進成分は、特に限定されないが、ジオポリマー組成物の硬化物に高い初期強度と長期強度を確実に付与することができる点から、グリセリン類及びアルカノールアミンからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。グリセリン類としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、これらのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。また、アルカノールアミンとしては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンが挙げられる。これらの有機系強度増進成分は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、有機系強度増進成分は、ジオポリマー組成物用強度増進助材として単独で使用してもよいが、アルカリ土類金属酸化物、無機カルシウム塩類及び/または無機アルミニウム塩類と併用することが好ましい。
有機系強度増進成分のジオポリマー組成物への含有量は、特に限定されないが、その下限値は、ジオポリマー組成物の強度が確実に増進することに寄与する点から、ジオポリマー組成物に配合される活性フィラー100質量部に対して、0.010質量部が好ましく、0.015質量部がより好ましく、0.020質量部が特に好ましい。一方で、有機系強度増進成分のジオポリマー組成物への含有量の上限値は、長い流動性保持時間を確実に得る点から、ジオポリマー組成物に配合される活性フィラー100質量部に対して、5.0質量部が好ましく、3.0質量部がより好ましく、1.0質量部が特に好ましい。
<ジオポリマー組成物>
次に、本発明のジオポリマー組成物について、詳細を説明する。本発明のジオポリマー組成物は、活性フィラー、アルカリ活性剤、縮合物系分散剤、上記したジオポリマー組成物用強度増進助材を含む。本発明のジオポリマー組成物では、活性フィラー、アルカリ活性剤、縮合物系分散剤、上記した本発明のジオポリマー組成物用強度増進助材含むことにより、フレッシュな性状においては長い流動性保持時間を有ししつつ、硬化性状においては高い初期強度と長期強度を有するジオポリマー組成物を得ることができる。従って、本発明のジオポリマー組成物では、フレッシュ性状においては、流動性の高い保持時間を長期間にわたって有しているので、長時間の運搬とポンプ圧送が可能となり、現場での打設における取扱い性が向上する。また、本発明のジオポリマー組成物では、硬化性状においては、十分な初期強度及び長期強度を有するので、早期に型枠からジオポリマー組成物の硬化物を取り出すことができ、また、長期間にわたって構造体強度を確保することが可能となる。
本発明のジオポリマー組成物の各構成成分について、以下に説明する。
活性フィラー
活性フィラーは、後述するアルカリ活性剤と接すると、活性フィラーから溶出した金属イオンと、活性フィラーのシリカ構造とが架橋して脱水縮重合する。活性フィラーは、ジオポリマー組成物のバインダーとして機能する。活性フィラーは、上記のような反応を行うことができれば、特に限定されず、例えば、フライアッシュ、ボトムアッシュ、もみ殻灰、油ヤシの搾りかすを焼成したパームアッシュ、廃ガラス、都市ごみ焼却灰、下水道汚泥の焼却灰、高炉スラグ微粉末、メタカオリン(粘土鉱物の焼成物)、シリカフューム、粉末状シリカ等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、廃棄物の有効利用による環境負荷の低減をすることができ、また、容易にジオポリマー組成物を製造することができる点、及び入手容易性と取り扱い容易性の点から、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末が好ましい。
活性フィラーには、シリカフュームは含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。すなわち、本発明のジオポリマー組成物には、シリカフュームは含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。活性フィラーにシリカフュームが含まれていない、すなわち、本発明のジオポリマー組成物にシリカフュームが含まれていないことにより、長い流動性保持時間を確実に得つつ、ジオポリマー組成物の製造コストを低減できる。
活性フィラーにシリカフュームが含まれている場合には、活性フィラー100質量%(固形分、以下同じ。)中におけるシリカフュームの含有量の上限値は、ジオポリマー組成物の粘度上昇を防止してフレッシュな性状におけるハンドリング性をより確実に得る点から、20質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、ジオポリマー組成物の流動性の低下を確実に防止する点とコスト低減の点から、5.0質量%が特に好ましい。一方で、活性フィラー100質量%中におけるシリカフュームの含有量の下限値は、ジオポリマー組成物の流動性の低下を確実に防止する点から、1.0質量%が好ましく、2.0質量%が特に好ましい。シリカフュームは、他の活性フィラーと併用して、粉末状またはスラリー状でジオポリマー組成物に添加することが好ましい。シリカヒューム及び粉末状シリカは、シリカ成分が90%以上であることが好ましい。
活性フィラーは、二酸化炭素削減効果及び高い初期強度と長期強度を確実に得る点から、セメントクリンカを含まないことが好ましい。
フライアッシュ(FA)
フライアッシュは、石炭火力発電所において発生する産業廃棄物である。フライアッシュは、シリカ(SiO)、及びアルミナ(Al)を多く含む。本発明のジオポリマー組成物では、フライアッシュは、どの品質でも使用することができ、JIS規格に規定されていても、JIS規格に規定されていなくてもよい。本発明のジオポリマー組成物に使用されるフライアッシュとしては、4種類の品質(フライアッシュI種~IV種)で
JISに規定されているものが好ましく、硬化物の強度をさらに高める点から、II種のフライアッシュ(JIS II種灰)が特に好ましい。また、本発明のジオポリマー組成物に使用されるフライアッシュとしては、ASTM規格のタイプF、タイプCが好ましい。
フライアッシュの含有量は、特に限定されないが、その下限値は、ジオポリマーモルタルの硬化の円滑化の点から、100kg/mが好ましく、200kg/mが特に好ましい。一方で、フライアッシュの含有量の上限値は、フレッシュな性状のジオポリマー組成物の粘度上昇を防止して、優れたハンドリング性を得る点から、700kg/mが好ましく、500kg/mが特に好ましい。
高炉スラグ微粉末(BS)
高炉スラグ微粉末は、鉄鉱石から銑鉄を製造する工程において、鉄鉱石に含まれる鉄以外の成分と、副原料の石灰石及びコークス中の灰をあわせて回収したもの(副産物)である。高炉スラグ微粉末は、高炉スラグを粉砕処理等することにより、粒度調整を行ったものである。高炉スラグ微粉末は、通常のジオポリマー組成物に用いられるものであれば、特に限定されず、使用条件等に応じて適宜選択することができる。高炉スラグ微粉末としては、例えば、JIS R 5211「高炉セメント」において使用される高炉スラグ微粉末、JIS A 6206「コンクリート用高炉スラグ微粉末」に適合する高炉スラグ微粉末等が挙げられる。
高炉スラグ微粉末の含有量は、特に限定されないが、その下限値は、フレッシュな性状のジオポリマー組成物に優れた流動性を付与する点から、50kg/mが好ましく、100kg/mが特に好ましい。一方で、高炉スラグ微粉末の含有量の上限値は、長い流動性保持時間を確実に得る点から、400kg/mが好ましく、350kg/mが特に好ましい。
活性フィラーがフライアッシュと高炉スラグ微粉末を含む場合、活性フィラー中のフライアッシュ:高炉スラグ微粉末の質量比は、特に限定されないが、アルカリ活性剤による脱水縮重合反応の円滑化の点から、5:1~1:5が好ましく、3:1~1:1が特に好ましい。また、活性フィラーがフライアッシュと高炉スラグ微粉末を含む場合、ジオポリマー組成物の硬化の円滑化の点から、フライアッシュと高炉スラグ微粉末の合計量が、90質量%以上であることが好ましい。
アルカリ活性剤
アルカリ活性剤は、活性フィラーから金属イオンを溶出させて、活性フィラーのシリカ構造と溶出させた金属元素とを架橋させて活性フィラーを脱水縮重合する機能を有する。アルカリ活性剤は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)等のアルカリ金属を含む溶液である。また、必要に応じて、さらにその他の成分を含有してもよい。アルカリ活性剤としては、アルミナ及びケイ酸を含有する活性フィラーとアルカリ活性剤との重縮合物を容易に且つ確実に得ることができ、また、入手が容易である点から、珪酸アルカリ、水酸化アルカリが好ましい。
アルカリ活性剤の含有量は、特に限定されないが、その下限値は、活性フィラーを円滑に脱水縮重合する点から、活性フィラー100質量部に対して、3.0質量部が好ましく、4.0質量部が特に好ましい。一方で、アルカリ活性剤の含有量の上限値は、ジオポリマー組成物の硬化の円滑化の点から、活性フィラー100質量部に対して、6.0質量部が好ましく、5.0質量部が特に好ましい。
縮合物系分散剤
縮合物系分散剤は、本発明のジオポリマー組成物の粘度を低下させて、フレッシュな性状において長い流動性保持時間を付与する機能を有する。縮合物系分散剤としては、例えば、フレッシュな性状におけるジオポリマー組成物の粘度を確実に低減して、長い流動性保持時間を確実に付与することができる点から、ベータナフタレンホルムアルデヒド縮合物、ポリアリルエーテル構造を有する縮合物が好ましい。
また、他の縮合物系分散剤としては、例えば、フレッシュな性状におけるジオポリマー組成物の粘度を確実に低減して、長い流動性保持時間を確実に付与することができる点から、少なくとも下記構成単位A)、B)、C)及びD)
A)下記式(I)のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル
Figure 2023095192000011
[式中、mは、3~280の整数である]
B)少なくとも1つの水酸基を持つ環式化合物及びその誘導体
C)フェノール、エチレンオキサイドの繰り返し数が1若しくは2のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、またはフォスフェート若しくはフォスホネートを含むフェノキシエチル誘導体
D)アルデヒド類
を含む縮合物が好ましい。
構成単位Bは、少なくとも1つの水酸基を持つ環式化合物及びその誘導体である。構成単位Bの具体例としては、ベンゼン-1,2-ジオール、ベンゼン-1,2,3-トリオール、2-ヒドロキシ安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシフタル酸、2,3-ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、3,4-ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、1,2-ジヒドロキシナフタレン-5-スルホン酸、1,2-ジヒドロキシナフタレン-6-スルホン酸、2,3-ジヒドロキシナフタレン-5-スルホン酸、2,3-ジヒドロキシナフタレン-6-スルホン酸、並びにそれらの混合物からなる群から選択された、少なくとも1種の芳香族化合物が挙げられる。
構成単位Cは、フェノール、エチレンオキサイドの繰り返し数が1若しくは2のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、またはフォスフェート若しくはフォスホネートを含むフェノキシエチル誘導体である。構成単位Cの具体例としては、フェノール、2-フェノキシエタノール、2-フェノキシエチルホスフェート、2-フェノキシエチルホスホネート、2-フェノキシ酢酸、2-(2-フェノキシエトキシ)エタノール、2-(2-フェノキシエトキシ)エチルホスフェート、2-(2-フェノキシエトキシ)エチルホスホネート、2-[-(2-ヒドロキシエトキシ)フェノキシ]エチルホスフェート、2-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェノキシ]エチルホスホネート、2-[4-(2-ホスホナトオキシエトキシ)フェノキシ]エチルホスフェート、2-[4-(2-ホスホナトオキシエトキシ)フェノキシ]エチルホスホネート、メトキシフェノール並びにそれらの混合物からなる群から選択された、少なくとも1種の他の芳香族化合物が挙げられる。
構成単位Dは、アルデヒド類である。構成単位Dの具体例としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキシル酸、ベンズアルデヒド、ベンズアルデヒドスルホン酸、ベンズアルデヒドジスルホン酸、バニリン及びイソバニリン、並びにそれらの混合物からなる群から選択された、少なくとも1種のアルデヒドなどが挙げられる。
上記した縮合物系分散剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。縮合物系分散剤の含有量は、特に限定されないが、その下限値は、フレッシュな性状におけるジオポリマー組成物の粘度を確実に低減して、長い流動性保持時間を確実に付与ることができる点から、活性フィラー100質量部に対して、0.5質量部が好ましく、0.7質量部が特に好ましい。一方で、縮合物系分散剤の含有量の上限値は、凝結遅延を確実に防止し、また優れた初期強度を確実に得る点から、1.5質量部が好ましく、1.3質量部が特に好ましい。
ジオポリマー組成物用強度増進助材
本発明のジオポリマー組成物では、上記の通り、アルカリ土類金属酸化物、無機カルシウム塩類、無機アルミニウム塩類、(亜)硝酸塩類及び有機系強度増進成分からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含むジオポリマー組成物用強度増進助材が配合されている。本発明のジオポリマー組成物に配合されるジオポリマー組成物用強度増進助材の詳細は、上記の通りである。
その他の成分
本発明のジオポリマー組成物では、その他の成分として、必要に応じて、通常のコンクリート組成物に用いられる成分を、使用条件等に応じて適宜配合することができる。その他の成分としては、例えば、細骨材、粗骨材、繊維、水、増粘剤、ブリーディング抑制剤、AE剤、遅延剤等が挙げられる。
増粘剤としては、例えば、粘土やタルク等の無機系誘導体、アクリル系またはアクリルアミド系(コ)ポリマー、セルロース類やガム類等の天然多糖類、多糖類誘導体等の増粘効果を有する化合物を挙げることができる。ブリーディング抑制剤としては、例えば、前記増粘剤に加え、ポリアルキレンオキサイド、高吸水性高分子やアミン塩類等を挙げることができる。
増粘剤は、水の分離を抑えることができる効果も発揮する。ジオポリマー組成物中における増粘剤の含有量の下限値は、水の分離を確実に抑える点から、0.001質量%が好ましい。一方で、ジオポリマー組成物中における増粘剤の含有量の上限値は、ジオポリマー組成物の粘度上昇によるハンドリング性の低下を確実に防止する点から、1.0質量%が好ましい。
水(W)と活性フィラー(P)との質量比(以下、「W/P」と表記することがある。)の下限値は、ジオポリマー組成物の粘度上昇によるハンドリング性の低下を確実に防止する点から、20%が好ましく、25%が特に好ましい。一方で、W/Pの上限値は、ジオポリマー組成物の硬化の円滑化の点から、40%が好ましく、35%が特に好ましい。なお、Wとは、前記の添加する水、アルカリ活性剤に含まれる水及び骨材の表面水などを含む、ジオポリマー組成物中に含まれる全ての水の質量を意味し、Pとはジオポリマー組成物中に含まれる全ての活性フィラーの質量を意味する。すなわ・BR>ソ、W/Pとは、ジオポリマー組成物中に含まれる全ての水の質量をジオポリマー組成物中に含まれる全ての活性フィラーの質量で除した質量比を意味する。
<ジオポリマー組成物の製造方法>
本発明のジオポリマー組成物の製造方法は、特に限定されず、通常のジオポリマー組成物の製造方法で製造することができる。また、ジオポリマー組成物の製造に用いる装置についても、通常のジオポリマー組成物の製造に用いる装置を用いることができる。
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<縮合物系分散剤の合成>
撹拌機と計量供給ポンプとを備えた加熱可能な反応器に、2-フェノキシエタノール621.8部を20℃で窒素下に充填した。次いで、冷却下にポリリン酸449.7部を、温度が35℃を上回らないようにして100分間にわたって添加した。計量供給後、この反応混合物を約70℃でさらに15分間撹拌し、凝固前に移し換え、2-フェノキシエチルホスフェートを得た。
撹拌機と計量供給ポンプとを備えた加熱可能な反応器に、ポリ(エチレンオキシド)モノフェニルエーテル(平均分子量2000g/モル)300部、3,4-ジヒドロキシ安息香酸46.2部、2-フェノキシエチルホスフェート33部、及びパラホルムアルデヒド19.9部を、90℃で窒素下に充填した。この反応混合物を撹拌下に110℃に加熱し、次いでメタンスルホン酸(70%)41部を、反応温度が115℃を上回らないようにして25分間以内で添加した。計量供給後、この反応混合物を110℃でさらに2.5時間撹拌した。その後、冷却し、水350部と混合し、30分間100℃に加熱し、50%苛性ソーダ液で中和してpH値を約7.0にし、固形分20質量%のポリマー1を得た。
<ジオポリマー組成物の配合>
実施例、参考例及び比較例のジオポリマー組成物の配合成分について、下記表1に示す。
Figure 2023095192000012
表1に示す配合成分を用いて、実施例、参考例及び比較例のジオポリマー組成物を製造した。具体的には、容器に細骨材の半量、活性フィラー、強度増進助材(ジオポリマー組成物用強度増進助材)、細骨材の半量の順に入れ、20秒間練り混ぜを行った。その後、縮合物系分散剤、水及びアルカリ活性剤を入れ、60秒間練り混ぜを行い、掻き落とし(壁面に付着した粉体を容器の中央に入れる作業)を行い、120秒間練り混ぜを行って、ジオポリマー組成物を得た。ジオポリマー組成物に配合した各成分の配合量を下記表2に示す。なお、参考例とは、強度増進助材(ジオポリマー組成物用強度増進助材)として、酸化カルシウムに代えて、従来から使用されているシリカヒュームを配合した試料である。
Figure 2023095192000013
表2中の配合量の数値は、ジオポリマー組成物1m中に占める配合量をkg単位で示したものである。ただし、酸化カルシウムの添加量は、固形分の活性フィラー100質量部に対する酸化カルシウムの質量部である。また、アルカリ活性剤及び縮合物系分散剤の添加量は、固形分の活性フィラー100質量部に対する質量部である。
評価項目は以下の通りである。
(1)フロー値(mm)
JIS R 5201に準拠して測定した。ただし、15打のタンピングを行わないフロー値とした。
(2)圧縮強度(MPa)
JIS A 1108に準拠して測定した、供試体サイズはφ5x10の円柱とした。1日経過後の圧縮強度は、5.0MPa以上を早期に型枠の脱型が可能と評価して合格と判定した。また、28日経過後の圧縮強度は、50.0MPa以上を長期間の構造体強度を確保することが可能と評価して合格と判定した。
実施例、参考例及び比較例のジオポリマー組成物のフロー値及び圧縮強度の測定結果を下記表3に示す。
Figure 2023095192000014
上記表3に示すように、ジオポリマー組成物用強度増進助材としてシリカヒュームを配合せずに酸化カルシウムを配合した実施例1、2のジオポリマー組成物では、1日経過後の圧縮強度は5.0MPa以上、28日経過後の圧縮強度は50.0MPa以上であり、高い長期強度だけではなく、高い初期強度も得ることができた。従って、実施例1、2では、参考例1である従来のジオポリマー組成物よりも製造コストを低減して、従来と同等の初期強度と長期強度を得ることができた。また、縮合物系分散剤を配合した実施例1、2のジオポリマー組成物では、練混直後から120分後までのフロー値が300mmであり、フレッシュ性状において流動性の高い保持時間を長期間にわたって有していた。実施例1、2のジオポリマー組成物では、従来のジオポリマー組成物よりも練混直後から120分後までのフロー値が優れていた。
一方で、ジオポリマー組成物用強度増進助材である酸化カルシウムを配合しなかった比較例1のジオポリマー組成物では、1日経過後でもジオポリマー組成物の硬化物の強度が弱いことから型枠の脱型ができず、圧縮強度が測定できなかった。従って、比較例1では、高い初期強度を得ることができなかった。
本発明のジオポリマー組成物用強度増進助材は、ジオポリマー組成物の硬化物に高い初期強度と長期強度を付与することができ、本発明のジオポリマー組成物は、フレッシュな性状においては長い流動性保持時間を有しつつ、硬化性状においては高い初期強度と長期強度を有するので、建設物の分野で利用価値が高い。

Claims (16)

  1. アルカリ土類金属酸化物、無機カルシウム塩類、無機アルミニウム塩類、硝酸塩類及び有機系強度増進成分からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含むジオポリマー組成物用強度増進助材。
  2. 前記アルカリ土類金属酸化物が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム及び酸化バリウムからなる群から選択された少なくとも1種である請求項1に記載のジオポリマー組成物用強度増進助材。
  3. 前記無機カルシウム塩類が、水酸化カルシウム、石膏、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルミン酸カルシウム及び塩化カルシウムからなる群から選択された少なくとも1種である請求項1または2に記載のジオポリマー組成物用強度増進助材。
  4. 前記無機アルミニウム塩類が、アルミン酸ナトリウム及び硫酸アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のジオポリマー組成物用強度増進助材。
  5. 前記硝酸塩類が、アルカリ土類金属の硝酸塩及びアルカリ土類金属の亜硝酸塩からなる群から選択された少なくとも1種である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のジオポリマー組成物用強度増進助材。
  6. 前記有機系強度増進成分が、グリセリン類及びアルカノールアミンからなる群から選択された少なくとも1種である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のジオポリマー組成物用強度増進助材。
  7. 活性フィラー、アルカリ活性剤、縮合物系分散剤、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のジオポリマー組成物用強度増進助材を含むジオポリマー組成物。
  8. 前記活性フィラーが、フライアッシュ及び高炉スラグからなる群から選択された少なくとも1種を含む請求項7に記載のジオポリマー組成物。
  9. 前記アルカリ活性剤が、珪酸アルカリ及び水酸化アルカリからなる群から選択された少なくとも1種を含む請求項7または8に記載のジオポリマー組成物。
  10. 前記縮合物系分散剤が、ベータナフタレンホルムアルデヒド縮合物、ポリアリルエーテル構造を有する縮合物、及び少なくとも下記構成単位A)、B)、C)及びD)を含む縮合物からなる群から選択された少なくとも1種を含み、
    前記縮合物系分散剤の含有量が、前記活性フィラー100質量部に対して、0.5質量部以上1.5質量部以下である、請求項7乃至9のいずれか1項に記載のジオポリマー組成物。
    A)下記式(I)のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル
    Figure 2023095192000007
    [式中、mは、3~280の整数である]
    B)少なくとも1つの水酸基を持つ環式化合物及びその誘導体
    C)フェノール、エチレンオキサイドの繰り返し数が1若しくは2のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、またはフォスフェート若しくはフォスホネートを含むフェノキシエチル誘導体
    D)アルデヒド類。
  11. 前記ジオポリマー組成物用強度増進助材が、前記アルカリ土類金属酸化物を含む請求項7乃至10のいずれか1項に記載のジオポリマー組成物。
  12. 前記アルカリ土類金属酸化物の含有量が、前記活性フィラー100質量部に対して、1.0質量部以上15質量部以下である請求項11に記載のジオポリマー組成物。
  13. 前記活性フィラー100質量%中におけるシリカフュームの含有量が、20質量%以下である請求項7乃至12のいずれか1項に記載のジオポリマー組成物。
  14. 前記活性フィラー100質量%中におけるシリカフュームの含有量が、5.0質量%以下である請求項7乃至13のいずれか1項に記載のジオポリマー組成物。
  15. 前記活性フィラーが、シリカヒュームを含まない請求項7乃至14のいずれか1項に記載のジオポリマー組成物。
  16. さらに、増粘剤及び/またはブリーディング抑制剤を含む請求項7乃至15のいずれか1項に記載のジオポリマー組成物。
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