JP2023093403A - 動物筋組織抽出物を用いた細胞の培養方法 - Google Patents

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Katsuhisa Sakaguchi
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達也 清水
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Kumiko Yamanaka
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Abstract

【課題】細胞培養にかかる費用を低減した、細胞の新規な培養方法などの提供。【解決手段】ウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、ニワトリ筋組織抽出物、及び白身魚筋組織抽出物からなる群から選択される1つ以上の抽出物を含み、血清を含まない培地で細胞を培養する工程を含む、細胞の培養方法。【選択図】なし

Description

本発明は、ウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、ニワトリ筋組織抽出物、及び白身魚筋組織抽出物からなる群から選択される1つ以上の抽出物を含み、血清を含まない培地で細胞を培養する工程を含む、細胞の培養方法等に関する。
地球の人口増加や気候変動の影響などにより、2030年頃には世界の食料需給がひっ迫する可能性があることが指摘されている。特に、食肉に関しては、新興国などの所得増加等に伴って、その需要が増大している。その一方で、家畜の飼料となる穀物価格の高騰や、飼育場所確保の問題等から、食肉の供給量を増やすことは困難であり、食肉の生産が追いつかなくなる虞がある。このような食肉供給量の問題の解決策の一つとして、近年、培養肉(人工食肉)が注目されている。
培養肉は、培養により増殖させた骨格筋細胞を用いて、組織を形成することで製造される。該培養肉は、実験室内等で生産可能なことから気候変動に左右されない生産が可能であり、また従来の畜産と比較し温室効果ガス排出量が少なく、環境負荷も小さいという利点があるが、製造コストが莫大になる等の問題がある。
上記問題に対して、例えば、魚肉の酵素分解物又は魚肉抽出物を含む培地を用いて、細胞に所望のタンパク質をより高い収量で産生させることなどが検討されている(特許文献1)。また、培養肉の製造に関する研究ではないが、牛肉抽出物のマウス骨格筋由来の細胞に与える影響についても報告されている(非特許文献1)。しかしながら、食用の培養肉に関する製造コストや安全性等の観点からの条件検討等は未だ不十分であり、実用性の高い培養肉の製造方法の開発が望まれていた。
国際公開第06/073073号
European Journal of Nutrition (2020) 59:3735-3743
本発明は、細胞培養にかかる費用を低減した、細胞の新規な培養方法を提供することを課題とする。また、かかる方法により、培養肉の製造コストを低減させ、継続的な培養肉の生産を可能とし、培養肉の産業利用を加速させることも課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた。その結果、驚くべきことにウシ筋組織抽出物を含む培地で細胞を培養することで、該細胞の増殖率が向上することを見出した。また、さらに検討を進め、細胞培養にウシ筋組織抽出物を用いることで、今まで使用されてきた高価な添加物である血清や血清代替物、増殖因子等を用いなくとも、効率良く細胞を増殖し得ることも見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、ウシ筋組織抽出物に関する本発明を完成するに至った。
また、ウシ以外の動物種の筋組織についても検討を進めたところ、驚くべきことに、ブタ、ニワトリ、タラの筋組織抽出物についても、上述のウシ筋組織抽出物同様、今まで使用されてきた高価な添加物である血清や血清代替物、増殖因子等を用いなくとも、効率良く細胞を増殖し得ることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいて研究を推し進めた結果、ブタ、ニワトリ、タラ筋組織抽出物に関する本発明も完成するに至った。
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]
ウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、ニワトリ筋組織抽出物、及び白身魚筋組織抽出物からなる群から選択される1つ以上の抽出物を含み、血清を含まない培地で細胞を培養する工程を含む、細胞の培養方法。
[2]
前記1つ以上の抽出物が、少なくともウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、又はニワトリ筋組織抽出物を含む、[1]に記載の培養方法。
[3]
前記培地が、血清代替物を含まない、[1]又は[2]に記載の培養方法。
[4]
前記細胞が、筋芽細胞である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の培養方法。
[5]
前記細胞が、ウシ細胞である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の培養方法。
[6]
ラミニンの存在下で行う、[1]~[5]のいずれか1つに記載の培養方法。
[7]
[1]~[6]のいずれか1つに記載の方法により細胞を培養する工程を含む、培養肉の製造方法。
[8]
ウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、ニワトリ筋組織抽出物、及び白身魚筋組織抽出物からなる群から選択される1つ以上の抽出物を含み、血清を含まない、細胞増殖用培地。
[9]
前記1つ以上の抽出物が、少なくともウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、又はニワトリ筋組織抽出物を含む、[8]に記載の細胞増殖用培地。
[10]
血清代替物を含まない、[8]又は[9]に記載の細胞増殖用培地。
[11]
前記細胞増殖用培地が、筋芽細胞増殖用培地である、[8]~[10]のいずれか1つに記載の細胞増殖用培地。
[12]
前記細胞増殖用培地が、ウシ細胞増殖用培地である、[8]~[11]のいずれか1つに記載の細胞増殖用培地。
本発明の培養方法では、従来よりも安価に、細胞を効率よく増殖させることができる。また、本発明の培養肉の製造方法では、本発明の培養方法を用いるため、従来よりも培養肉の製造コストを低減させることができ、継続的な培養肉の生産が可能となる。さらに、本発明の培養肉の製造方法は、従来よりも費用面で優れているため、より現実的な価格で培養肉を提供することができる。
図1は、ウシ筋組織抽出物とFBSとを含む培地を用いて筋芽細胞を培養した結果を示す。図1の上部は播種後1日目の結果を、図1の下部は播種後6日目の結果を示す。なお、図中の濃度(g/L)は、(抽出に使用した筋組織)/(培地量)である。 図2は、ウシ筋組織抽出物とFBSとを含む培地を用いて筋芽細胞を培養した場合の細胞増殖率の結果を示す。なお、結果は、初期播種数を1としたときの6日間の細胞増殖率である。 図3は、ウシ筋組織抽出物のみを含む培地を用いて筋芽細胞を培養した結果を示す。図3の上部は播種後1日目の結果を、図3の下部は播種後6日目の結果を示す。なお、図中の濃度(g/L)は、(抽出に使用した筋組織)/(培地量)である。 図4は、ウシ筋組織抽出物のみを含む培地を用いて筋芽細胞を培養した場合の細胞増殖率の結果を示す。なお、結果は、初期播種数を1としたときの6日間の細胞増殖率である。 図5は、ウシ筋組織を含む培地で培養した筋芽細胞の筋管への分化を示す。なお、図中の濃度(g/L)は、(抽出に使用した筋組織)/(培地量)である。 図6は、血清の代替としてウシ筋組織抽出物を用いた場合と、細胞成長因子(bFGF)の代替としてウシ筋組織抽出物を用いた場合の細胞増殖率の結果を示す。通常培地には、添加物としてFBSを、細胞成長因子含有通常培地には、添加物としてFBSとbFGFを、血清を含まない25g/L筋組織抽出物含有培地には、ウシ筋組織抽出物を、血清と25g/L筋組織抽出物含有培地には、FBSとウシ筋組織抽出物を含む。なお、結果は、初期播種数を1としたときの6日間の細胞増殖率である。 図7は、ラミニンコート(iMatrixコート)又はコートなしの培養皿上で、筋組織抽出液を用いてウシ筋芽細胞を培養した場合の、分化能の維持効果の確認のための概略図である。 図8は、ラミニンコート(iMatrixコート)又はコートなしの培養皿上で、筋組織抽出液を用いてウシ筋芽細胞を培養した場合の、細胞増殖率の確認の結果を示す。 図9は、ラミニンコート(iMatrixコート)又はコートなしの培養皿上で、筋組織抽出液を用いてウシ筋芽細胞を培養した場合の、分化能の維持効果の結果(細胞イメージング)を示す。 図10は、ブタ筋組織抽出物、ニワトリ筋組織抽出物、又は白身魚筋組織抽出物のみを含む培地を用いて筋芽細胞を培養した場合の細胞増殖率の結果を示す。なお、結果は、初期播種数を1としたときの5日間の細胞増殖率である。
1.細胞増殖用培地
本発明は、ウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、ニワトリ筋組織抽出物、及び白身魚筋組織抽出物からなる群から選択される1つ以上の抽出物を含み、血清を含まない、細胞増殖用培地(以下、「本発明の培地」と称することがある。)を提供する。上記1つ以上の抽出物は、好ましくは、少なくともウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、又はニワトリ筋組織抽出物を含む。本発明の培地は、後述する細胞の培養方法で用いる培地として適している。本発明の培地は、ウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、ニワトリ筋組織抽出物、及び白身魚筋組織抽出物からなる群から選択される1つ以上の抽出物を含み、血清を含まない水溶液であれば特に限定されない。
本明細書において、「ウシ筋組織」とは、ウシの骨格筋、心筋、又は平滑筋のいずれであってもよい。本発明の培地に添加するウシ筋組織抽出物は、上記のいずれの筋組織に由来してもよいが、好ましくは、骨格筋由来である。骨格筋は、例えば、頬部(頬肉)、こめかみ、頸部、背部、胸部、肩部、腰部、大腿部の筋組織である。
本明細書において、「ブタ筋組織」とは、ブタの骨格筋、心筋、又は平滑筋のいずれであってもよい。本発明の培地に添加するブタ筋組織抽出物は、上記のいずれの筋組織に由来してもよいが、好ましくは、骨格筋由来である。骨格筋は、例えば、頬部(頬肉)、こめかみ、頸部、背部、胸部、肩部、腰部、大腿部の筋組織である。
本明細書において、「ニワトリ筋組織」とは、ニワトリの骨格筋、心筋、又は平滑筋のいずれであってもよい。本発明の培地に添加するニワトリ筋組織抽出物は、上記のいずれの筋組織に由来してもよいが、好ましくは、骨格筋由来である。骨格筋は、例えば、頭部、頸部、背部、胸部、肩部、腰部、大腿部、翼(羽)部の筋組織である。
本明細書において、「白身魚」とは、100g当たりの色素タンパク質(ヘモグロビンとミオグロビン)の含有量が10mg未満である魚をいう。具体的には、例えば、具体的には、ナマズ目(アメリカナマズ・パンガシウス等)、サケ目(ギンザケ・ベニザケ等)、タラ目(スケトウダラ・ホキ・メルルーサ等)、ニシン目(カタクチイワシ・マイワシ等)、ダツ目(サンマ・トビウオ等)、キンメダイ目、タウナギ目(マゴチ・ギンダラ等)、スズキ目(マグロ・ブリ・ヒメジ・ナイルティラピア・スギ・アジ・タチウオ・ゴマサバ・カツオ・マダイ・イヨヨリダイ・グチ等)、カレイ目(ヒラメ・オヒョウ・カラスガレイ等)などが挙げられる。本発明では、白身魚に含まれる筋肉量や大きさ等から、適宜、使用する白身魚の種類を選択し得るが、好適には、例えば、タラ目(スケトウダラ・ホキ・メルルーサ等)に属する魚を使用し得る。
本明細書において、「白身魚筋組織」とは、白身魚の骨格筋、心筋、又は平滑筋のいずれであってもよい。本発明の培地に添加する白身魚筋組織抽出物は、上記のいずれの筋組織に由来してもよいが、好ましくは、骨格筋由来である。骨格筋は、例えば、頭部、頬部、背部、腹部、尾部の筋組織である。
本発明のウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、ニワトリ筋組織抽出物、及び白身魚筋組織抽出物からなる群から選択される1つ以上の抽出物を含む培地は、例えば、細胞の培養のために従来から用いられている培地(基礎培地)、水、あるいは生理食塩水等の中に、ウシ筋組織を添加し、該組織をホモジナイザーやソニケーター等で破砕した後、ろ過することで調製可能である。上記ろ過は、ウシ筋組織の不要な破砕物を除去し得る限り特に限定されないが、粗ろ過、精密ろ過、限外ろ過、ナノろ過、あるいはそれらの組み合わせにより行うことができる。
上記基礎培地としては、例えば、RPMI-1640培地、EagleのMEM培地、ダルベッコ改変MEM培地、Glasgow’s MEM培地、α-MEM培地、199培地、IMDM培地、DMEM培地、Hybridoma Serum free培地、Chemically Defined Hybridoma Serum Free培地、Ham’s Medium F-12、Ham’s Medium F-10、Ham’s Medium F12K、ATCC-CRCM30、DM-160、DM-201、BME、Fischer、McCoy’s 5A、Leibovitz’s L-15、RITC80-7、MCDB105、MCDB107、MCDB131、MCDB153、MCDB201、NCTC109、NCTC135、Waymouth’s MB752/1、CMRL-1066、Williams’ medium E、Brinster’s BMOC-3 Medium、E8 Medium(以上サーモフィッシャーサイエンティフィック社)、ReproFF2、Primate ES Cell Medium、ReproStem(以上リプロセル株式会社)、ProculAD(ロート製薬株式会社)、MSCBM-CD、MSCGM-CD(以上Lonza社)、EX-CELL302培地(SAFC社)又はEX-CELL-CD-CHO(SAFC社)、ReproMedTM iPSC Medium(リプロセル株式会社)、Cellartis MSC Xeno-Free Culture Medium(タカラバイオ株式会社)、TESR-E8 (株式会社ベリタス)、StemFit(登録商標)AK02N、AK03N(味の素株式会社)及びこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の培地におけるウシ筋組織の添加量(添加したウシ筋組織の総量(g)/全培地量(L))は、1~100g/L、好ましくは、5~50g/L、より好ましくは、10~25g/L(例:11g/L、12g/L、13g/L、14g/L、15g/L、16g/L、17g/L、18g/L、19g/L、20g/L、21g/L、22g/L、23g/L、24g/L)である。
本発明の培地におけるブタ筋組織の添加量(添加したブタ筋組織の総量(g)/全培地量(L))は、1~100g/L、好ましくは、5~50g/L、より好ましくは、10~25g/L(例:11g/L、12g/L、13g/L、14g/L、15g/L、16g/L、17g/L、18g/L、19g/L、20g/L、21g/L、22g/L、23g/L、24g/L)である。
本発明の培地におけるニワトリ筋組織の添加量(添加したニワトリ筋組織の総量(g)/全培地量(L))は、1~100g/L、好ましくは、5~50g/L、より好ましくは、10~25g/L(例:11g/L、12g/L、13g/L、14g/L、15g/L、16g/L、17g/L、18g/L、19g/L、20g/L、21g/L、22g/L、23g/L、24g/L)である。
本発明の培地における白身魚筋組織の添加量(添加した白身魚筋組織の総量(g)/全培地量(L))は、1~100g/L、好ましくは、5~50g/L、より好ましくは、10~25g/L(例:11g/L、12g/L、13g/L、14g/L、15g/L、16g/L、17g/L、18g/L、19g/L、20g/L、21g/L、22g/L、23g/L、24g/L)である。
ウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、ニワトリ筋組織抽出物、及び白身魚筋組織抽出物からなる群から選択される2つ以上の抽出物を本発明の培地に添加する場合、その添加量(ウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、ニワトリ筋組織抽出物、及び白身魚筋組織抽出物からなる群から選択される2つ以上の抽出物の総量(g)/全培地量(L))は、1~100g/L、好ましくは、5~50g/L、より好ましくは、10~25g/L(例:11g/L、12g/L、13g/L、14g/L、15g/L、16g/L、17g/L、18g/L、19g/L、20g/L、21g/L、22g/L、23g/L、24g/L)である。ウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、ニワトリ筋組織抽出物、及び白身魚筋組織抽出物からなる群から選択される2つ以上の抽出物の総量に対する各抽出物の割合は、所望する細胞を培養し得る限り、特に限定されない。
本発明の培地は、血清(例:ウシ胎児血清(FBS)、ヒト血清、ウマ血清)を含まない無血清培地である。無血清培地とは、無調整又は未精製の血清を含まない培地を意味する。無血清培地は、精製された血液由来成分や動物組織由来成分(例えば、増殖因子)を含有していてもよい。本発明の培地は、無血清(基礎)培地(例えば、上記の市販の培地)に、ウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、ニワトリ筋組織抽出物、及び白身魚筋組織抽出物からなる群から選択される1つ以上の抽出物を添加し、血清を添加することなく調製した培地である。
本発明の培地は、血清代替物を含んでもよいが、含まないほうが好ましい。血清代替物としては、例えば、アルブミン、脂質リッチアルブミン及び組換えアルブミン等のアルブミン代替物、植物デンプン、デキストラン、タンパク質加水分解物、トランスフェリン又は他の鉄輸送体、脂肪酸、インスリン、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール、3’-チオグリセロールあるいはこれらの均等物などが挙げられ得る。血清代替物の具体例として、例えば、国際公開第98/30679号記載の方法により調製されるものや、市販のknockout Serum Replacement[KSR](Life Technologies社)、Chemically-defined Lipid concentrated(Life Technologies社)およびGlutamax(Life Technologies社)などが挙げられる。また、生体由来因子としては、多血小板血漿(PRP)、ヒト間葉系幹細胞の培養上清成分が挙げられる。
また、本発明の培地には、細胞の生存又は増殖に必要な生理活性物質及び栄養因子等を添加しなくてもよいが、必要に応じて添加してもよい。これらの添加物は、培地に予め添加されていてもよく、細胞培養中に添加されてもよい。培養中に添加する方法は、1溶液又は2種以上の混合溶液等いかなる形態によってでもよく、連続的又は断続的な添加であってもよい。
生理活性物質としては、インシュリン、IGF-1、トランスフェリン、アルブミン、補酵素Q10、各種サイトカイン(インターロイキン類(IL-2、IL-7、IL-15等)、幹細胞因子(SCF)、アクチビン等)、各種ホルモン、各種増殖因子(白血病抑制因子(LIF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、TGF-β等)などが挙げられる。
栄養因子としては、糖、アミノ酸、ビタミン、加水分解物又は脂質などが挙げられる。
糖としては、グルコース、マンノース又はフルクトースなどが挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて用いられる。
アミノ酸としては、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-システイン、L-グルタミン酸、L-グルタミン、グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-スレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン又はL-バリンなどが挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて用いられる。
ビタミンとしては、D-ビオチン、D-パントテン酸、コリン、葉酸、myo-イノシトール、ナイアシンアミド、ピロドキサール、リボフラビン、チアミン、シアノコバラミン又はDL-α―トコフェロールなどが挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて用いられる。
加水分解物としては、大豆、小麦、米、えんどう豆、とうもろこし、綿実、酵母抽出物などを加水分解したものが挙げられる。
脂質としては、コレステロール、リノール酸又はリノレイン酸などが挙げられる。
さらに、培地には、カナマイシン、ストレプトマイシン、ペニシリン又はハイグロマイシンなどの抗生物質を必要に応じて添加してもよい。シアル酸等の酸性物質を培地に添加する場合には、培地のpHを細胞の成育に適した中性域であるpH5~9、好ましくはpH6~8に調整することが望ましい。
本発明の培地を使用し得る細胞は、該培地で増殖可能な細胞であれば特に限定されないが、具体的には、例えば、体細胞が挙げられる。ここで体細胞とは、生殖細胞以外の細胞のことをいう。体細胞は、浮遊性細胞であっても、接着性細胞であってもよいが、好ましくは、浮遊性細胞である。体細胞としては、例えば、組織を作る細胞(例:線維芽細胞、表皮細胞、乳腺細胞、脂肪細胞、筋芽細胞、骨芽細胞、肝細胞、心筋細胞、血管内皮細胞又はそれらの前駆細胞等)、免疫系の細胞(例:B細胞、T細胞、単球系の細胞等)、神経細胞又は幹細胞(例:多能性幹細胞、血球系幹細胞、間葉系幹細胞、神経幹細胞)等を使用できる。
上記細胞は、好ましくは、ほ乳類動物、鳥類動物、は虫類動物、両生類動物、魚類動物等の脊椎動物に由来する。ほ乳類動物としては、ヒト、サル、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ラット、マウス等のほ乳類動物が挙げられる。鳥類動物としては、ダチョウ、ニワトリ、カモ、スズメ等が挙げられる。は虫類動物としては、ヘビ、ワニ、トカゲ、カメ等が挙げられる。両生類動物としては、カエル、イモリ、サンショウウオ等が挙げられる。魚類動物としては、タラ、サケ、マグロ、サメ、タイ、コイ等が挙げられる。
培養肉(人工食肉)の製造を企図する場合、上記細胞はヒト細胞以外の細胞であれば特に限定されないが、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ等の畜産のために飼育されるほ乳類動物に由来することが好ましく、ウシ由来であることがより好ましい。また、上記の場合、該細胞は、組織を作る細胞が好ましく、その中でも、筋芽細胞がより好ましい。
上記細胞は、自体公知の方法により作製することができる。例えば、筋芽細胞であれば、生体由来の筋組織を分解酵素(例:コラゲナーゼ)の処理を施して得られる初代筋芽細胞を使用することができる。初代筋芽細胞は、結合組織などの不純物を除去するために、フィルター処理を施してもよい。また、筋芽細胞の作製において、ES細胞、iPS細胞のような多能性を有する幹細胞や、筋芽細胞へ分化する能力を有する体性幹細胞から分化誘導した細胞を用いることもできる。
細胞は、相同組換え法、CRISPR/Cas9法等のゲノム編集の手法等により遺伝子改変をされた細胞又は遺伝子改変されていない細胞のいずれであってもよい。培養肉を食用とする場合の一態様においては、安全性や消費者の嗜好の観点から、細胞(例:筋芽細胞)は遺伝子改変されていない細胞(例:筋芽細胞)を用いることが好ましい。
本発明において、培養される細胞は、単一の細胞であってもよいが、典型的には、複数の細胞からなる細胞集団である。従って、本明細書において、特に断りのない限り、「細胞」には、「細胞集団」が含まれるものとする。細胞集団は、1種類の細胞から構成されていてもよく、2種類以上の細胞から構成されていてもよい。
2.細胞の培養方法
本発明は、ウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、ニワトリ筋組織抽出物、及び白身魚筋組織抽出物からなる群から選択される1つ以上の抽出物を含み、血清を含まない培地で細胞を培養する工程を含む、細胞の培養方法(以下、「本発明の培養方法」と称することがある。)を提供する。本発明の培養方法において、「血清を含まない培地で細胞を培養する」とは、無血清(基礎)培地(例えば、上記の市販の培地)にウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、ニワトリ筋組織抽出物、及び白身魚筋組織抽出物からなる群から選択される1つ以上の抽出物を添加して調製した培地中で、工程の全期間において、外部から血清を添加することなく、細胞を培養することを意味する。本発明の培養方法では、該培養の全工程において無血清培地を使用してもよく、特定の工程において血清を含む培地を使用してもよい。例えば、一態様では、培養容器に細胞を播種後、最初の培地交換までの間は血清を含む培地(ウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、ニワトリ筋組織抽出物、及び白身魚筋組織抽出物不含)を使用し、最初の培地交換後、培養した細胞の採取までの間は無血清培地(ウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、ニワトリ筋組織抽出物、及び白身魚筋組織抽出物からなる群から選択される1つ以上の抽出物含有)を使用するような培養方法であってもよい。また、本発明の培養方法において、細胞の培養は、所望する細胞が増殖し得る限り、浮遊培養、接着培養のいずれで行ってもよい。
本明細書において、「浮遊培養」とは、細胞又は細胞の凝集体が培養液に浮遊して存在する状態を維持する条件で行われる培養、すなわち細胞又は細胞の凝集体と培養容器及びフィーダー細胞(用いられる場合)との間に強固な細胞-基質間結合(cell-substratum junction)及び細胞-細胞間結合(cell-cell junction)を作らせない条件での培養を意味する。また、本明細書において、「接着培養」とは、細胞又は細胞の凝集体と培養器材等との間に強固な細胞-基質間結合を作らせる条件での培養をいう。
浮遊培養を行う際に用いられる培養容器は、「浮遊培養する」ことが可能なものであれば特に限定されず、当業者であれば適宜決定することが可能である。このような培養容器としては、例えば、フラスコ、組織培養用フラスコ、ディッシュ、ペトリデッシュ、組織培養用ディッシュ、マルチディッシュ、マイクロプレート、マイクロウェルプレート、マイクロポア、マルチプレート、マルチウェルプレート、チャンバースライド、シャーレ、チューブ、トレイ、培養バック、又はローラーボトルが挙げられる。さらに、浮遊培養用の容器としてバイオリアクターが例示される。これらの培養容器は、浮遊培養を可能とするために、細胞非接着性であることが好ましい。細胞非接着性の培養容器としては、培養容器の表面が、細胞との接着性を向上させる目的で人工的に処理(例:細胞外マトリクス等によるコーティング処理)されていないものなどを使用できる。
接着培養を行う際に用いられる培養器としては、培養器の表面が、細胞との接着性を向上させる目的で人工的に処理(例:基底膜調製物、ラミニン(ラミニンの断片を含む。以下同様。)、エンタクチン、コラーゲン、ゼラチン、マトリゲル、シンセマックス、ビトロネクチン等の細胞外マトリクス若しくはその断片等、又は、ポリリジン、ポリオルニチン等の高分子等によるコーティング処理、又は、正電荷処理等の表面加工)されたものが挙げられる。
ラミニンとしては、ラミニン-111及びそのE8領域を含む断片、ラミニン-211及びそのE8領域を含む断片(例:iMatrix-211)、ラミニン-121又はそのE8領域を含む断片、ラミニン-221又はそのE8領域を含む断片、ラミニン-332又はそのE8領域を含む断片、ラミニン-3A11又はそのE8領域を含む断片、ラミニン-411又はそのE8領域を含む断片(例:iMatrix-411)、ラミニン-421又はそのE8領域を含む断片、ラミニン-511又はそのE8領域を含む断片(例:iMatrix-511、iMatrix-511 silk)、ラミニン-521又はそのE8領域を含む断片、ラミニン-213又はそのE8領域を含む断片、ラミニン-423又はそのE8領域を含む断片、ラミニン-523又はそのE8領域を含む断片、ラミニン-212/222又はそのE8領域を含む断片、ラミニン-522又はそのE8領域を含む断片などが挙げられる。なかでも、ラミニン-511又はそのE8領域を含む断片が好ましい。
浮遊培養は、例えば前記の各種容器に細胞を播種し、容器を適切な方法で搖動もしくは振とうするか、あるいは容器中の培地を撹拌して実施することができる。あるいは、浮遊培養は、バイオリアクターや自動培養装置などの培養装置を用いて行うこともできる。具体的には、細胞の培養は、機械的な制御下のもと閉鎖環境下で細胞播種、培地交換、細胞画像取得、培養細胞回収を自動で実行し、pH、温度、酸素濃度などを制御しながら、高密度での培養が可能なバイオリアクターや自動培養装置によって行うことができる。これら装置を用いて培養の途中に新しい培地を補給し、要求する物質を過不足なく細胞に供給する手法として、回分培養、連続培養(灌流培養)、流加培養があるが、いずれの手法も本発明の培養方法に用いることができる。また、バイオリアクターや自動培養装置に用いられる培養容器には、開閉が容易で外界との接触面積が大きい開放系培養容器(例:蓋を有する培養容器)と、開閉が容易ではなく外界との接触面積の小さい閉鎖系培養容器(例:カートリッジ型培養容器)があるが、いずれの培養容器も本発明の培養方法に用いることができる。
浮遊培養の容器として撹拌子を備えたバイオリアクターを用いる場合、回転数は適宜設定することができる。特に限定されないが、バイオリアクターの回転数としては10~100rpmが例示され、5mLバイオリアクターの回転数としては80~100rpm、100mLバイオリアクターの回転数としては30~50rpm、500mLバイオリアクターの回転数としては10~30rpmが例示される。
細胞の培養密度は、細胞が増殖できる限り特に限定されない。好ましくは1.0×10~1.0×10細胞/ml、より好ましくは1.0×10~1.0×10細胞/ml、さらにより好ましくは1.0×10~1.0×10細胞/ml、最も好ましくは3.0×10~1.0×10細胞/mlである。
温度、溶存CO濃度、溶存酸素濃度およびpHなどの培養条件は、動物組織に由来する細胞の培養に従来用いられている技術に基づいて適宜設定できる。例えば、培養温度は、特に限定されるものではないが30~40℃、好ましくは37℃であり得る。溶存CO濃度は、1~10%、好ましくは2~5%であり得る。酸素分圧は、1~10%であり得る。培養日数も、所望する細胞数を採取し得る限り特に限定されないが、通常2日以上、好ましくは3日以上、より好ましくは4日以上(例:5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日等)である。培養期間の上限も特に制限されないが、通常30日以下、好ましくは25日以下である。
本発明の培養方法で用いられる培地については、「1.細胞増殖用培地」の内容が全て援用される。
3.培養肉の製造方法
本発明は、ウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、ニワトリ筋組織抽出物、及び白身魚筋組織抽出物からなる群から選択される1つ以上の抽出物を含み、血清を含まない培地で細胞を培養する工程を含む、培養肉の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と称することがある。)を提供する。本発明の培養肉の製造方法では、本発明の培養方法と同様の方法で増殖させた細胞を自体公知の方法により組織を形成させる。また、該自体公知の方法により組織を形成させる際には、ウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、ニワトリ筋組織抽出物、及び白身魚筋組織抽出物を添加していない培地を用いてもよい。
本発明の製造方法において用いる細胞が筋芽細胞の場合、増殖させた筋芽細胞を、自体公知の方法により筋管へと分化誘導する。これにより筋芽細胞は周囲の細胞と細胞融合により多核化し、筋管が形成される。筋管はさらに成熟することで筋線維を形成する。筋芽細胞は栄養分が少なくなると、周囲の細胞を巻きこみ多核化を開始することが知られている。そのため、筋管への分化誘導に際して、ウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、ニワトリ筋組織抽出物、及び白身魚筋組織抽出物からなる群から選択される1つ以上の抽出物を添加する場合、該筋芽細胞の増殖培養で用いる培地よりも該筋組織抽出物の含有量を減らしてもよい。
培養肉の製造方法に関する一態様では、本発明の培養方法と同様の方法で増殖させた筋芽細胞を、自体公知の方法(例:特開2020-141573)により、シート状の細胞を積層させて三次元筋組織である培養肉(人工食肉)を製造する。本発明の製造方法では、積層させるシート状の細胞の数を調整することで、ステーキのような厚みのある培養肉からハムのように薄い培養肉に至るまで、様々な培養肉(人工食肉)を製造することができる。
本発明の製造方法で用いられる培地、培養方法等については、「1.細胞増殖用培地」及び「2.細胞の培養方法」の内容が全て援用される。
以下、実施例等により、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1:ウシ筋組織抽出物を含む培地の調製
ウシ筋肉の重量を計測後、スカルペルで微塵切りにした。微塵切りにしたウシ筋肉をビーカーに入れ、100g/Lの濃度になるように基礎培地(Dulbecco's Modified Eagle Medium(DMEM))を加えた。DMEM中に入ったウシ筋肉をホモジナイザーでφ3 cmのジェネレーターシャフトを使用し、2000rpmで2分間粉砕した後、3000rpmで2分間粉砕した。粉砕した筋組織を含むDMEMを遠心管に移し、遠心機によって2000Gで10分間遠心することで、粉砕物を沈殿させた。遠心後、沈殿物以外の液体を40μmのフィルターに通した。フィルターを通したDMEMをさらに遠心機によって2000Gで10分間遠心した。遠心後、0.45μmのボトルトップフィルターを通した。フィルターを通した100g/Lの筋組織抽出物含有DMEMを通常DMEMと混合し、使用濃度に調整した。
実施例2:ウシ筋組織抽出物を含む培地等を用いた細胞増殖率の比較
ウシの筋肉より採取したウシ筋芽細胞を培養ディッシュに播種し、10%ウシ胎児血清(Fetal bovine serum(FBS))、1%抗生物質(antibiotic、以下「AB」と略記することがある。)を含むDMEMによって1日培養した。1日培養後、10% FBS、1%ABと筋組織抽出物含有のDMEM(5、10、25、50g/L)、又は血清を含まない、1% ABと筋組織抽出物含有のDMEM(5、10、25、50g/L)へ培地交換した。播種後3日目に培地交換を行い、播種後6日目に増殖した細胞のカウントを行った。
10% FBSと筋組織抽出物含有のDMEM(5、10、25、50g/L)でウシ筋芽細胞を6日間培養した結果、初期播種数を1とした増殖率は濃度の高さによって向上し、25g/mlの条件において最大の18.0±3.3倍の増殖率であった。これは10%FBSを含む通常DMEMで培養した場合の6.1±1.0倍に比べて有意に差があった(図2)。また、血清を含まない筋組織抽出物含有のDMEM(5、10、25、50g/L)でウシ筋芽細胞を培養した結果、いずれの条件においても平均で2倍以上の増殖率であり、25g/Lの条件において最大の4.3±0.9倍の増殖率であった(図4)。これは血清を含まない通常DMEMで培養した場合の0.4±0.2倍に比べて有意に差があった。
実施例3:増殖した細胞の筋管への分化の確認
10% FBSと筋組織抽出物含有のDMEM(5、10、25、50g/L)で増殖させたウシ筋芽細胞を培養ディッシュに播種し、培養1日後に筋組織抽出物を含まない分化誘導用培地(2% FBS, 1%AB含有DMEM)へ交換し、3日間培養した。
上記培養の結果、いずれの条件においても筋芽細胞が分化し、筋管を形成していることを確認した(図5)。
実施例4:増殖因子の有無による細胞増殖率の比較
(1)通常培地(DMEM、10% FBS、1% AB)、(2)細胞成長因子含有通常培地(DMEM、10% FBS、1% AB、10ng/ml bFGF)、(3)血清を含まない25g/L 筋組織抽出物含有培地(DMEM、1% AB)、(4)血清と25g/L 筋組織抽出物含有培地(DMEM、10% FBS、1% AB)の6日間の細胞増殖率を比較した(図6)。(1)通常培地の細胞増殖率が6.1±1.0倍、(3)血清を含まない25g/L 筋組織抽出物含有培地の細胞増殖率が4.3±0.9倍であることから、筋組織抽出物は血清の代替としての効果を有しているといえる。また、(2)細胞成長因子含有通常培地の細胞増殖率が20.5±6.3倍、(4)血清と25g/L 筋組織抽出物含有培地の細胞増殖率18.0±3.3倍であることから、筋組織抽出物は細胞成長因子の代替としての効果を有しているといえる。
実施例5:ラミニンを用いたウシ筋組織抽出液による分化能の維持効果の確認
(1)通常の培養ディッシュと通常培地(DMEM、10% FBS、1% AB)、(2)ラミニン(iMatrix)コートをした培養ディッシュと通常培地(DMEM、10% FBS、1% AB)、(3)通常の培養ディッシュと25g/Lの筋組織抽出物含有培地(DMEM、10% FBS、1% AB)、(4)ラミニン(iMatrix)コートをした培養ディッシュと25g/Lの筋組織抽出物含有培地(DMEM、10% FBS、1% AB)でウシ筋芽細胞を6日間培養し、継代を行った。これを3継代目まで行い、細胞増殖率(図8)と増殖した筋芽細胞の分化能(図9)の比較を行った。筋芽細胞の分化能の比較では、筋芽細胞の分化マーカーであるデスミン(Desmin)(図9における明灰色から暗灰色の繊維状部分)と核酸(図9における明灰色から暗灰色の粒状部分(Hoechst染色))を染色した。(2)、(3)の条件にて、増殖率の向上、分化能の維持効果を確認し、(4)のラミニンコート、筋組織抽出物含有培地の両方を用いた条件では、最も増殖率と分化能の維持効果が高かった。
実施例5では、ウシ筋組織抽出液による分化能の維持効果の確認を行うにあたり、10% FBSを含有する培養液を用いたが、実施例4の結果(特に、筋組織抽出物は血清の代替としての効果を有していること)等を考慮すると、10% FBSを含有する培養液の代わりに、FBSを添加しない培養液を用いたとしても、本実施例で確認されたようなラミニン(iMatrix)コートの効果を発揮し得ると考えられる。
実施例6:各種(ブタ、ニワトリ、白身魚)筋組織抽出物を含む培地の調製
ブタ肉(ブタ筋肉)、トリ肉(ニワトリ筋肉)、及び魚肉(白身魚(タラ)筋肉)の重量を計測後、スカルペルで微塵切りにした。微塵切りにした各種筋肉をビーカーに入れ、100g/Lの濃度になるように基礎培地(Dulbecco's Modified Eagle Medium(DMEM))を加えた。DMEM中に入った上記の各種筋肉をホモジナイザーでφ3 cmのジェネレーターシャフトを使用し、2000rpmで2分間粉砕した後、3000rpmで2分間粉砕した。粉砕した各種筋組織を含むDMEMを遠心管に移し、遠心機によって2000Gで10分間遠心することで、粉砕物を沈殿させた。遠心後、沈殿物以外の液体を40μmのフィルターに通した。フィルターを通したDMEMをさらに遠心機によって2000Gで10分間遠心した。遠心後、0.45μmのボトルトップフィルターを通した。フィルターを通した100g/Lの各種筋組織抽出物含有DMEMを通常DMEMと混合し、使用濃度に調整した。
実施例7:各種(ブタ、ニワトリ、白身魚)筋組織抽出物を含む培地等を用いた細胞増殖率の比較
ウシの筋肉より採取したウシ筋芽細胞を培養ディッシュに播種し、10%ウシ胎児血清(Fetal bovine serum(FBS))、1%抗生物質(antibiotic、以下「AB」と略記することがある。)を含むDMEMによって1日培養した。1日培養後、血清を含まない、1% ABと各種筋組織抽出物含有のDMEM(10、25g/L)へ培地交換した。播種後3日目に培地交換を行い、播種後5日目に増殖した細胞のカウントを行った。
血清を含まないブタ又はニワトリ筋組織抽出物含有のDMEM(10、25g/L)での5日間の培養後、ウシ筋芽細胞が増殖していることを確認した(n=2)(図10)。初期播種数を1とした増殖率は、25g/Lの条件において最大の3.9±0.2倍(ブタ筋組織抽出物含有(Pork))、及び16.4±2.4倍(ニワトリ筋組織抽出物含有(Chicken))の増殖率であった(図10)。いずれの増殖率も、血清を含まない通常DMEMで培養した場合に比べて高かった。また、血清を含まない白身魚(タラ)筋組織抽出物含有DMEM(10、25g/L)での培養(n=1)では、増殖率が1以上の値にはならなかったが、DMEMのみ(FBS(-))の場合に比べて細胞が生存してディッシュ上に残っており、細胞の生存を維持する効果を有していることが確認された(図10)。これらの結果から、ブタ、ニワトリ、及び白身魚筋組織抽出物についても、ウシ筋組織抽出物と同様の細胞増殖効果を期待し得ることが理解される。
本発明により、従来よりも安価に、細胞を効率よく増殖させることが可能となる。また、本発明により、従来よりも培養肉の製造コストを低減させることができるため、より現実的な価格で培養肉を提供することができ、ひいては継続的な培養肉の生産が可能となる。

Claims (12)

  1. ウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、ニワトリ筋組織抽出物、及び白身魚筋組織抽出物からなる群から選択される1つ以上の抽出物を含み、血清を含まない培地で細胞を培養する工程を含む、細胞の培養方法。
  2. 前記1つ以上の抽出物が、少なくともウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、又はニワトリ筋組織抽出物を含む、請求項1に記載の培養方法。
  3. 前記培地が、血清代替物を含まない、請求項1に記載の培養方法。
  4. 前記細胞が、筋芽細胞である、請求項1に記載の培養方法。
  5. 前記細胞が、ウシ細胞である、請求項1に記載の培養方法。
  6. ラミニンの存在下で行う、請求項1に記載の培養方法。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載の方法により細胞を培養する工程を含む、培養肉の製造方法。
  8. ウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、ニワトリ筋組織抽出物、及び白身魚筋組織抽出物からなる群から選択される1つ以上の抽出物を含み、血清を含まない、細胞増殖用培地。
  9. 前記1つ以上の抽出物が、少なくともウシ筋組織抽出物、ブタ筋組織抽出物、又はニワトリ筋組織抽出物を含む、請求項8に記載の細胞増殖用培地。
  10. 血清代替物を含まない、請求項8に記載の細胞増殖用培地。
  11. 前記細胞増殖用培地が、筋芽細胞増殖用培地である、請求項8に記載の細胞増殖用培地。
  12. 前記細胞増殖用培地が、ウシ細胞増殖用培地である、請求項8に記載の細胞増殖用培地。


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