JP2023093318A - 骨接合部材セット - Google Patents

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健 小野瀬
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Abstract

【課題】患者の骨折箇所を確実に固定可能であるとともに、施術者にとって操作性が良好な骨接合部材セットを提供する。【解決手段】骨接合部材セットは、軸部と、ネジ山と、軸孔218を有し、髄内釘に挿通される骨接合部材201と、骨内注入剤を骨内に注入可能な注入具301と、を有する。骨接合部材201は、ネジ山の360°の一周分を単位ネジ山としたときに、該単位ネジ山を挟んで隣り合う一対のネジ溝の内部空間が臨むように単位ネジ山に設けられた欠損部と、欠損部に連通するように軸部に設けられた孔部215と、骨接合部材側位置決め部212Aと、を有し、注入具301は、骨接合部材201の軸孔218に挿入可能な注入ノズル304と、注入ノズル304の先端部に設けられた一つの注入口305と、注入具側位置決め部309と、を有する。【選択図】図9

Description

本発明は、骨の接合で用いられる骨接合部材セットに関する。
従来、大腿骨および上腕骨等の骨頭を備える骨の骨頭近傍における骨折を治療する方法として、骨の軸方向に沿って、その内部に挿入される髄内釘(ネイル)と、この髄内釘に挿通される骨固定要素(ラグスクリュー)とを備えた手術器具(骨固定用装置)を用いることが提案されている。そして、骨固定要素は、ねじ山のような骨係合構造を含む遠位部を有する。また、遠位部は、内部に延在するチャネルに対して開かれ、埋め込み後の骨内への材料(例えば骨強化材料)の注入を可能にするために使用される開口部を有する(例えば、特許文献1参照)。そして、開口部は、隣接するねじ山の間のねじ溝に設けられる。開口部から押し出される骨強化材料は、ねじ溝に沿って流れていく。
特許第5931924号公報
特許文献1の骨固定用装置では、骨強化材料等の材料は、ねじ溝を埋めつつ、遠位部の周囲に広がった状態で硬化する。この際、骨固定要素は、硬化した材料により拘束されて固定される。
しかしながら、何らかの要因で硬化した材料の一部が破損して、骨固定要素の遠位部と硬化した材料の間に隙間ができると、骨固定要素の拘束状態は弱いものとなり、骨固定要素は、患者の動作に起因した振動により容易に回転してしまう。結果、骨固定要素は、患者の骨折部を十分に固定できない状態となる。
また、骨固定要素を取り外す場合、硬化した材料により強固に拘束されていると、骨固定要素に大きな回転力を加える必要があるが、あまりに大きな回転力を加え過ぎると骨を破壊してしまうおそれがあり、取り外しは容易ではない。
本発明は、斯かる実情に鑑み、患者の骨折箇所を確実に固定可能であるとともに、施術者にとって操作性が良好な骨接合部材セットを提供しようとするものである。
本発明の骨接合部材セットは、軸部と、該軸部の周面に螺旋状に周回するネジ山と、該軸部の内部を軸方向に延びる軸孔とを有し、髄内釘に挿通される骨接合部材と、骨内注入剤を骨内に注入可能な注入具と、を備えた骨接合部材セットであって、前記骨接合部材は、前記ネジ山の360°の一周分を単位ネジ山としたときに、該単位ネジ山を挟んで隣り合う一対のネジ溝の内部空間が臨むように該単位ネジ山に設けられた欠損部と、前記欠損部に連通するように前記軸部に設けられた孔部と、骨接合部材側位置決め部と、を有し、前記注入具は、前記骨接合部材の前記軸孔に挿入可能な注入ノズルと、前記注入ノズルの先端部に設けられた一つの注入口と、注入具側位置決め部と、を有し、前記骨接合部材側位置決め部と前記注入具側位置決め部とにより前記注入具を前記骨接合部材に対して位置決めすることで前記注入口を前記孔部に対応させることが可能である、ことを特徴とする。
本発明の骨接合部材セットによれば、患者の骨折箇所を確実に固定可能であるとともに、施術者にとって操作性が良好な骨接合部材セットを提供できるという優れた効果を奏し得る。
(A)は、本発明の第一実施形態における骨接合具を患者の骨折箇所に取り付けた様子を示す斜視図である。(B)は、(A)の断面図である。 (A)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材を示す図である。(B)は、骨接合部材を軸方向に沿って切った断面図である。 (A)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材のネジ係合部を含む領域の拡大平面図である。(B)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材のネジ係合部を含む領域の斜視図である。(C)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の欠損部を含む領域の拡大平面の略図である。(D)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の欠損部を含む領域の拡大断面の略図である。 (A)~(C)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の欠損部の変形例の欠損部を含む領域の拡大断面の略図である。 (A)~(C)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の孔部の変形例を含む領域の拡大平面の略図である。(D)は、(C)のD-D矢視断面の略図である。 (A)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材のネジ係合部を含む領域の拡大平面図である。(B)は、(A)のF-F矢視断面図である。 (A)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の平面図である。(B)は、左側から順に、本発明の第一実施形態における骨接合部材の左側面図、正面図、右側面図である。(C)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の底面図である。(D)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の背面図である。(E)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の斜視図である。 本発明の第一実施形態における骨接合具セットの骨内注入剤挿入具を示す概略図である。 (A)は、本発明の第一実施形態における骨内注入剤挿入具を骨接合部材に挿入する直前の概略図である。(B)は、本発明の第一実施形態における骨内注入剤挿入具を骨接合部材に挿入した際の概略図である。 (A)~(C)は、本発明の第一実施形態における骨内注入剤挿入具から押し出された骨内注入剤が孔部を通じて軸部の表面に広がり始める様子を時系列に並べた拡大平面の略図である。 (A)~(C)は、本発明の第一実施形態における骨内注入剤挿入具から押し出された骨内注入剤が孔部を通じて軸部の表面に広がり始める様子を時系列に並べた拡大断面の略図である。 (A)~(D)は、本発明の第一実施形態における骨内注入剤挿入具から押し出された骨内注入剤が孔部を通じて軸部の表面に広がり始める様子を時系列に並べた拡大正面図である。 (A)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の欠損部、及び孔部を含む領域において骨内注入剤が充填された様子を示す拡大平面の略図である。(B)は、(A)におけるB-B矢視断面の略図である。(C)は、(A)と同様の状態において骨内注入剤と骨接合部材との間に隙間が生じた様子を示す拡大平面の略図である。(D)は、(B)と同様の状態において骨内注入剤と骨接合部材との間に隙間が生じた様子を示す拡大断面の略図である。 (A)は、従来の骨接合部材の孔部を含む領域において骨内注入剤が充填された様子を示す拡大平面の略図である。(B)は、(A)におけるB-B矢視断面の略図である。(C)は、(A)と同様の状態において骨内注入剤と骨接合部材との間に隙間が生じた様子を示す拡大平面図である。(D)は、(B)と同様の状態において骨内注入剤と骨接合部材との間に隙間が生じた様子を示す拡大断面の略図である。 本発明の第一実施形態における骨接合部材の変形例として、隣接する単位ネジ山において、欠損部が3つ連続して設けられた骨接合部材の拡大平面図である。 (A)は、本発明の第二実施形態における骨接合部材の平面図である。(B)は、本発明の第二実施形態における骨接合部材の正面図である。(C)は、本発明の第二実施形態における骨接合部材の底面図である。(D)は、本発明の第二実施形態における骨接合部材の背面図である。 (A)は、本発明の第三実施形態における骨接合部材の平面図である。(B)は、本発明の第三実施形態における骨接合部材の変形例の正面図である。 本発明の第四実施形態における骨接合部材を示す略図である。 (A)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の右側面図である。(B)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の正面図である。(C)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の左側面図である。(D)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の背面図である。(E)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の平面図である。(F)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の底面図である。 (A)の左側図は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の右側面図であり、真ん中図は左側図のA-A矢視断面図であり、右側図は左側図のA-A矢視断面拡大図である。(B)の左側図は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の正面図であり、真ん中図は左側図のB-B矢視断面図であり、右側図は左側図のB-B矢視断面拡大図である。(C)の左側図は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の左側面図であり、真ん中図は左側図のC-C矢視断面図であり、右側図は左側図のC-C矢視断面拡大図である。(D)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の背面図であり、真ん中図は左側図のD-D矢視断面図であり、右側図は左側図のD-D矢視断面拡大図である。 (A)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の底面図である。(B)は、(A)のA-A矢視断面図である。(C)は、(A)のB-B矢視断面図である。 (A)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の右側面図である。(B)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の正面図である。(C)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の左側面図である。(D)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の背面図である。(E)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の平面図である。(F)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の底面図である。なお、本発明について、別途、部分意匠として意匠登録を受けようとする場合、ここではその部分を実線で、それ以外の部分を破線で表している。図面中表れる一点鎖線は、部分意匠として登録を受けようとする部分とそれ以外の部分の境界のみを表している。 (A)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の底面図である。(B)は、(A)のA-A矢視断面図である。(C)は、(A)のB-B矢視断面図である。なお、本発明について、別途、部分意匠として意匠登録を受けようとする場合、ここではその部分を実線で、それ以外の部分を破線で表している。 (A)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の右側面図である。(B)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の正面図である。(C)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の左側面図である。(D)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の背面図である。(E)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の平面図である。(F)は、本発明の第一実施形態における骨接合部材の底面図である。なお、本発明について、別途、部分意匠として意匠登録を受けようとする場合、ここではその部分を実線で、それ以外の部分を破線で表している。図面中表れる一点鎖線は、部分意匠として登録を受けようとする部分とそれ以外の部分の境界のみを表している。 (A)は、図25(C)の先端側の拡大図である。(B)は、(A)のB-B矢視断面図である。(C)は、(A)のA-A矢視断面図である。
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。以下の各図において、同一の符号を付した部分は同一物を表わす。また、各図においては一部の構成を適宜省略して図面を簡略化し、部材の大きさ、形状、厚み等を適宜誇張して表現する。
<第一実施形態>
まず、図1を参照して本発明の第一実施形態の骨接合具100の全体構成について説明する。図1は、骨接合具100によって患者の大腿骨500の骨折部位を固定した状態を示す概要図であり、図1(A)が一部を透視して示す外観の斜視図であり、図1(B)が骨接合具100の一部を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、特に断らない限り、骨接合具100で患者の大腿骨500の骨折部位を固定した状態を基本として方向を特定する。すなわち、患者の腹側を「前」、背側を「後」といい、患者の頭側を「上」、患者の脚側を「下」という。図1は一例として左足の大腿骨500を示す。
図1(A)に示すように、本実施形態の骨接合具100は、例えば、髄内釘(ネイル)101と、骨接合部材(ラグスクリュー)201と、髄内釘補助具10を有する。本実施形態の髄内釘補助具10は、例えば、従来既知の髄内釘101に選択的に取り付け可能である。すなわち本実施形態において、髄内釘101および骨接合部材201は既知のものが採用できる。髄内釘補助具10は、その全体形状が軸状をなす棒状部材である髄内釘101の軸AX1方向の一端(上端T(基端)側)に取り付けられる。図1において、髄内釘101の軸AX1方向は図示上下方向である。
<髄内釘(ネイル)>
図1(B)を参照し、髄内釘101について説明する。なお、図1(B)では髄内釘補助具10の図示を省略している。
髄内釘101は、大腿骨500の髄腔(内腔)に挿入して用いられる。髄内釘101は、軸AX1方向の基端(上端T)側となる近位部102と、先端(下端)側に位置する遠位部103とを有する。髄内釘101は、近位部102および遠位部103に連通して、その軸AX1方向に伸び、かつ、その両端で開口する軸孔105を有している。軸孔105の近位部102(上端T)側の開口近傍には、その内壁(内面)に雌ネジ106が形成されている。なお、軸孔105は、髄内釘101の近位部102側にのみ設け、遠位部103にまで連通させなくてもよい。すなわち、遠位部103は、中実体であってもよい。
髄内釘101は、軸孔105と交差する方向に延びる横孔104を有している。横孔104は、骨接合部材(ラグスクリュー)201が挿通される孔である。軸孔105は、髄内釘101の上下両端で開口する途中で、横孔104に開口しており、この位置で、軸孔105と横孔104とは、互いに連通している。この連接部分、詳細には横孔104の上方の軸孔105内には、骨接合部材201の固定具であるセットスクリュー451が挿入されている。
図1(B)に示す断面視において、横孔104は、髄内釘101の軸AX1方向に対して傾斜した軸AX2を有するように、髄内釘101を斜めに貫通している。以下、横孔104の軸AX2方向を横孔軸方向ともいう。
横孔104(その軸AX2)の図1(B)における傾斜角度は、骨接合具100の適用部位(骨の状態や骨折の状態など)に応じ、髄内釘101を大腿骨500の髄腔に挿入した際に骨接合部材201により大腿骨500の骨頭502近傍の骨折部位を固定し得るように適宜設定される。本実施形態では一例として、当該傾斜角度は、大腿骨500の軸方向(図示上下方向)と大腿骨500から骨頭502が突出する方向とのなす角度とほぼ一致するように設定されている。
また、この例では、髄内釘101は、遠位部103を貫通し、その両端が遠位部103の外周面の両方において開口した固定具挿通孔108を有している。なお、固定具挿通孔108は遠位部103の軸AX1方向とほぼ直交する方向に貫通して形成されている。固定具挿通孔108にはスクリュー601などが挿通され、これにより遠位部103においても髄内釘101と大腿骨500とが固定される。
<骨接合部材(ラグスクリュー)>
図1~図7を参照して、本実施形態に係る骨接合部材(ラグスクリュー)201について詳細に説明する。図1(B)に示すように、骨接合部材(ラグスクリュー)201は、その全体形状が軸状をなす棒状部材であり、髄内釘101の横孔104に挿通される。すなわち、骨接合部材201の軸AX2方向は、横孔104の軸AX2方向(横孔軸方向)と一致する。
図2(A)に示すように、骨接合部材201は、軸部211と、軸部211の先端側の所定の区間に設けられるネジ係合部221と、を有する。図1(B)に示すように、軸部211と共にネジ係合部221を骨頭502に捩じ込むことで、骨頭502の近傍の骨折部位を固定する。なお、軸部211の先端側とは、骨頭502に捩じ込まれる側を指す。軸部211の基端側は、軸部211の先端側とは反対側の端部側を指す。
<軸部>
図1及び図2を参照して、軸部211について以下説明する。図1(B)に示すように、軸部211は、横孔104に挿通される棒状の筒状体である。そして、図2(A)に示すように、本実施形態において軸部211は、軸AX2方向における区間毎に外径(最大外径)又は、断面積が異なり、軸部211の基端側区間S1に大径部212、軸部211の中間区間S2にテーパー部213、軸部211の先端側区間S3に小径部214、を有する。大径部212、テーパー部213、小径部214は、軸AX2方向に沿って順に連続して繋がる。
大径部212は、外径(最大外径)又は、断面積が小径部214よりも大きい部分であり、軸部211の基端を起点として軸部211の基端側区間S1を成す。なお、上記断面積とは、軸部211を軸AX2方向に直交する方向に切った断面の面積を指す。テーパー部213は、軸部211の基端側から先端側に向かうに従って外径が小さくなるよう構成され、大径部212との境界を起点として軸部211の中間区間S2を成す。小径部214は、テーパー部213との境界を起点として軸部211の先端側区間S3を成す。ちなみに、テーパー部213は、外径又は断面積の大きい基端側において大径部212に連続し、外径又は断面積の小さい先端側において小径部214に連続する。
また、図2(A),(B)に示すように、大径部212には、外周面を起点として軸部211の径方向Rに凹む溝部216が設けられる。溝部216は、軸部211の軸周りの周方向に間隔を空けて複数設けられる。本実施形態において溝部216は、軸部211の軸周りの周方向に等間隔(90度毎)に4つ設けられる。図1(B)に示すように、溝部216は、セットスクリュー451の先端451Aによって接触、嵌合、及び/又は、押圧されることで、骨接合部材201は横孔104に挿通された状態でその回動が防止されるとともに髄内釘101に固定される。
更に、図2(A),(B)に示すように、大径部212の基端には、軸部211を回転させる器具を嵌め込むための係合凹部212Aが設けられる。係合凹部212Aは、大径部212を構成する筒状の周壁212Bの基端部212Cを起点として軸AX2方向に凹む。係合凹部212Aは、大径部212の周方向に沿って間隔を空けて4箇所設けられる。本実施形態においてその間隔は、等間隔(90度毎)であることが好ましい。
なお、軸部211は、以上の構成に限定されるものではなく、全区間において径が同じであってもよいし、径が異なる区間がその他の態様で混在したものであってもよい。
また、図2(B)の断面図に示すように、軸部211は、軸AX2方向に延びる軸孔218を内部に有する。本実施形態において軸孔218は、軸部211(大径部212、テーパー部213、小径部214)を貫通するが、これに限定されるものではない。例えば、軸孔218は、軸部211の基端側の開口211Dから小径部214の途中まで延びるものであってもよい。軸孔218の直径は、軸部211の基端から先端まで略同一であるが、これに限定されるものではない。
また、小径部214は、軸孔218を取り囲む筒状の周壁214Aを有する。図2(B)に示すように、小径部214は、周壁214Aを貫通する孔部215を有する。孔部215は、後述する欠損部223の近傍に設けられることが好ましい。孔部215は、1箇所又は複数箇所に設けられる。本実施形態において孔部215は、軸部211の軸周りの周方向に等間隔(90度毎)に4箇所設けられる。つまり、軸孔218は、孔部215を通じて外部と連通する必要があることから、軸孔218の長さは、基端側の開口211Dから少なくとも孔部215が設けられる位置まで延びる。孔部215の詳細については後述する。
<ネジ係合部>
図2~図4を参照して、ネジ係合部221について以下説明する。図2(A)及び図3(A)、(B)に示すように、ネジ係合部221は、軸部211の軸回りの外周面を周回する複数の単位ネジ山222を、螺旋状に連なる状態で有している。結果、軸AX2方向において隣接する単位ネジ山222同士の間には、同じ螺旋状のネジ溝224が形成される。なお、単位ネジ山222とは、図2(B)に示す軸AX2方向に沿って切った断面のように、軸部211の表面211Aから軸部211の径方向Rの外側に向かって、幅が徐々に小さくなるテーパー状(鋸刃状)のネジ山が、軸部211の周面を螺旋状に一周(360度で旋回)したものである。図2(A)に示すように、本実施形態において単位ネジ山222は9個設けられる。このうち、軸部211の先端側から数えて4番目の単位ネジ山(以下、特定単位ネジ山と呼ぶ。)222Aは、欠損部223を有する。なお、特定単位ネジ山は、どの単位ネジ山222であってもよい。つまり、先端から数えてn番目の単位ねじ山を特定単位ねじ山と定義できる。
図3(A)~(C)に示すように、欠損部223は、特定単位ネジ山222Aの一部が欠損したものである。図3(C)の略図に示すように、特定単位ネジ山222Aを挟んで隣り合う一対のネジ溝224A,224Bの内部空間は、欠損部223を通じて互いに臨む(対向する)。言い換えると、一方のネジ溝224A側から、欠損部223を介して、5番目(n+1番目)の単位ネジ山222Dを臨むことができ、また、他方のネジ溝224B側から、欠損部223を介して、3番目(n-1番目)の単位ネジ山222Cを臨むことができる。また、図3(D)の略図に示すように、本実施形態において欠損部223は、4番目(n番目)となる特定単位ネジ山222Aの周回方向に沿った一区間(欠損区間)Aの少なくとも一部が欠損することで、切欠き状又は孔状となった第一欠損領域B1を有する。つまり、第一欠損領域B1は、欠損区間Aにおいて、特定単位ネジ山222Aの根本(ネジ溝の底部位置)から頂部222Bまでの領域の少なくとも一部に形成される。この第一欠損領域B1によって、一対のネジ溝224A,224Bの内部空間が軸方向に連通する。なお、周回方向とは、単位ネジ山が軸部211の周面において周回する方向(螺旋方向)を指す。
なお、欠損部223の欠損領域は、第一欠損領域B1の構成に限定されるものではなく、特定単位ネジ山222Aの欠損区間Aにおいて、その一部では特定単位ネジ山222Aの連続状態を維持しつつ、その残部が欠損するように構成されてもよい。例えば、図4(A)の欠損部223の第二欠損領域B2は、欠損区間Aにおいて、特定単位ネジ山222Aの根本(ネジ溝の底部位置)を起点として、特定単位ネジ山222Aの頂部221Bよりも手前までの一部(ネジ山の高さ方向Hの一部)となる。また例えば、図4(B)の欠損部223の第三欠損領域B3は、欠損区間Aにおいて、特定単位ネジ山222Aの頂部221Bを起点として根本(ネジ溝の底部位置)よりも手前までの一部となる。更に例えば図4(C)の欠損部223の第四欠損領域B4は、欠損区間Aにおいて、特定単位ネジ山222Aの頂部221Bよりも高さ方向Hの下方側を起点として、根本(ネジ溝の底部位置)よりも高さ方向Hの上方側までの間となる。更に、欠損部223は、以上の図4(A)~(C)の態様のものが混在して構成されてもよい。いずれの欠損部223においても、特定単位ネジ山222Aを挟んで隣り合う一対のネジ溝224A,224Bの内部空間が、欠損部223を通じて互いに臨む(対向する)。なお、第一欠損領域B1~第四欠損領域B4はいずれも四角形状(または部分扇形状)になっているが、これに限定されるものではなく、どのような形状であってもよい。
また、図3(A),(C)に示すように、軸AX2方向において特定単位ネジ山222Aに隣り合う3番目(n-1番目)の単位ネジ山222Cと5番目(n+1番目)の単位ネジ山222Dは、4番目(n番目)の特定単位ネジ山222Aの欠損部223と対向する領域(対向領域)が欠損していない。なお、3番目(n-1番目)の単位ネジ山222Cと5番目(n+1番目)の単位ネジ山222Dは、上記対向領域以外の領域であれば、欠損していてもよい。
<欠損部と孔部の位置関係>
図4及び図5を参照して、欠損部223と孔部215の位置関係について説明する。図5(A)に示すように、本実施形態における孔部215は、一対のネジ溝224A,224B、及び欠損部223を跨る長孔領域228を含み、ここでは孔部215が、軸AX2方向が長手方向となる長孔そのものとなる。孔部215が長孔であることにより、少ない穴数・配置でも軸方向へ速やかに骨内注入剤を挿入でき、かつラグスクリューの強度を維持できる。図5(A)に示すように、軸部211の径方向R(紙面に垂直な方向)から欠損部223と孔部215を平面視した場合において、欠損部223に対応する領域を欠損部専有領域R1と定義し、ネジ溝224Aの欠損部専有領域R1に隣接する領域を第一ネジ溝領域R2と定義し、ネジ溝224Bの欠損部専有領域R1に隣接する領域を第二ネジ溝領域R3と定義する。この際、長孔領域228は、第一ネジ溝領域R2、欠損部専有領域R1、第二ネジ溝領域R3を跨る。なお、欠損部専有領域R1は、上記で説明した第一欠損領域B1~第四欠損領域B4のいずれか、又はその組み合わせのいずれかを含む。また、第一ネジ溝領域R2、第二ネジ溝領域R3は、軸AX2方向において欠損部専有領域R1の近傍に配置される。また、長孔領域228の延在方向(長手方向)は、軸AX2方向と略平行となることが好ましい。
なお、図5(A)のように、孔部215が長孔領域228となる場合、この長孔領域228は、図3(D)及び図4(A)に示す第一欠損領域B1又は第二欠損領域B2に連なる(連続する)構造となる。
なお、孔部215は、一対のネジ溝224A,224B、及び欠損部223を跨る長孔領域228を有しなくてもよい。例えば、図5(B)に示すように、孔部215は、欠損部専有領域R1に跨がらずに、第一ネジ溝領域R2と、第二ネジ溝領域R3のそれぞれに設けられる複数の孔から構成されてもよい。
また、図5(C)及び図5(D)に示すように、孔部215は、欠損部専有領域R1と第一ネジ溝領域R2に跨るものであってもよいし、欠損部専有領域R1と第二ネジ溝領域R3に跨るものであってもよい。この図5(C)及び図5(D)では、図4(B)に示す第三欠損領域B3の態様と組み合わされている。この場合、孔部215の欠損部専有領域R1の全体が外部に開放されるよう、特定単位ネジ山222Aには、その厚み方向E(軸AX2方向と略平行)に凹む凹面219を形成することが好ましい。凹面219は、図5(D)に示すように、軸部211の表面211Aを起点として第三欠損領域B3まで連なるように延在することが好ましい。このことは、第四欠損領域B4についても同様である。
<軸部における欠損部及び孔部>
図6及び図7を参照して、軸部211における欠損部223及び孔部215の配置態様について説明する。図6(A)は、骨接合部材(ラグスクリュー)201の小径部214に設けられたネジ係合部221の拡大図である。図6(B)は、図6(A)のF-F矢視断面図である。
図6(B)に示すように、本実施形態において欠損部223及び孔部215は、軸部211の周方向Cに間隔を空けて4つ設けられる。そして、欠損部223及び孔部215が設けられる間隔は等間隔であることが好ましい。本実施形態では、複数の欠損部223及び孔部215は、隣接する欠損部223及び孔部215同士が軸部211の周方向Cに90度の位相差を有するように設けられる。なお、周方向Cとは、軸部211の軸回り方向である。
なお、欠損部223及び孔部215の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。また、欠損部223及び孔部215の数が複数である場合、欠損部223及び孔部215は、軸部211の周方向Cに間隔を空けていれば、不等間隔であってもよいし、等間隔と不等間隔が混在してもよい。
更に、本実施形態において4つの欠損部223は、単一の特定単位ネジ山222Aに設けられる。そして、各孔部215は、各欠損部223に対応する位置に設けられる。このため、4つの欠損部223及び4つの孔部215は、軸AX2方向において略同位置に設けられる。なお、厳密には、単一の特定単位ネジ山222Aが軸部211に対して螺旋状に設けられるため、螺旋のリードによって、各欠損部223及び各孔部215の位置は、軸AX2方向において互いにずれる。
骨接合部材(ラグスクリュー)201が以上のように構成されると、骨接合部材(ラグスクリュー)201の六面図は、図7(A)~(E)に示すように表される。ちなみに、図7(A)は、骨接合部材(ラグスクリュー)201の平面図である。図7(B)は、左側から順に、骨接合部材(ラグスクリュー)201の左側面図、正面図、右側面図である。図7(C)は、骨接合部材(ラグスクリュー)201の底面図である。図7(D)は、骨接合部材(ラグスクリュー)201の背面図である。図7(E)は、骨接合部材(ラグスクリュー)201の斜視図である。
図7に示すように、骨接合部材201の4個の孔部215の周方向Cの配置は、軸部211の基端に形成される4つの係合凹部212Aの周方向Cの配置に対して45度の位相差となる。この相対関係を把握しておくことにより、この係合凹部212Aが、孔部215の配置の目印となる。
<骨接合具を用いた手術方法>
本実施形態の骨接合具100は、例えば大腿骨の骨頭近傍における骨折(大腿骨頚部骨折)の治療に適用される。以下、骨接合具100を用いた手術方法(手技)の一例についてこれまでの各図、図8及び図9を参照して以下説明する。
まず、図1(B)に示すように、大腿骨500における骨頭502側の上方の端部501に、オウル等を用いてエントリーホールを形成する。その後、ドリルおよびリーマ等の穿孔具を用いてこのエントリーホールを拡掘して皮質骨に開口処理を施する。結果、端部501に開口が形成される。皮質骨の開口は、大腿骨500の髄腔まで連通させる。
次に、髄内釘101の先端を、端部501に形成された開口から導入することで、内部の髄腔に対して、髄内釘101を大腿骨500の軸線に沿って挿入する。
次に、不図示の髄内釘取付装置(ターゲットデバイス)を、大腿骨500から露出する髄内釘101の上端T(頂部、基端)に接続する。髄内釘取付装置の先端(保持部)を、髄内釘101の上端Tに設けられたノッチ部1012に係合させてから、特に図示しない固定ボルトを雌ネジ106に螺合させることで、髄内釘取付装置と髄内釘101を連結する。そして、髄内釘取付装置に予め設けられている案内(ガイド)に従って、体外から横孔104の軸線に沿うように、ガイドピン(図示せず)を挿入する。このガイドピンの先端は、骨折線505を横断して、骨頭502の皮質骨まで到達する。
次に、このガイドピンを利用して、ドリルおよびリーマ等の穿孔具を案内する。、この穿孔具によって、大腿骨500に対して横孔104の軸線に沿う骨孔503が作成される。
次に、穿孔具を抜き取った後、このガイドピンを利用して、骨接合部材(ラグスクリュー)201を案内する。結果、骨接合部材201は、横孔104を通過して、大腿骨500に形成された骨孔503に捩じ込まれる。この際、骨接合部材201のネジ係合部221が骨折線505を越えて骨頭502の皮質骨に到達する。
結果、骨接合部材201が骨頭502に固定され、さらに、骨接合部材201が髄内釘101側に牽引されるが、このときに、大腿骨500の骨折線505周辺を整合させて、骨折線505で当接する両側の骨折部位が互いに密着するように整復する。
この状態で、セットスクリュー451を髄内釘101の基端から軸孔105内で螺合して、セットスクリュー451の先端451Aを、骨接合部材201の溝部216に当接させる。これにより、骨接合部材201が髄内釘101に固定される。
次に、図8に示す注入具301を用い、骨接合部材(ラグスクリュー)201を通じて骨内注入剤を骨頭502に流し込む。なお、本発明において注入具301と骨接合具100を合わせたものを骨接合具セットと称することとする。また、骨内注入剤とは、骨の組織を補強したりするなど骨の治療において用いられる材料であり、ペースト状のものが好ましい。骨内注入剤として、例えば、リン酸カルシウム系の骨補填材やポリメチルメタクリレートから成る骨セメントが一例として挙げられる。
注入具301は、骨内注入剤を骨内に注入可能なものであり、図8に示すように、材料充填空間302Aを内部に有するシリンジ302と、プランジャ303と、シリンジ302に接続される注入ノズル304と、を備える。そして、注入ノズル304は、軸孔218に挿入可能な外径を有し、先端近傍に注入口305を有する。プランジャ303は、移動体306と、移動体306を押圧してシリンジ302の軸方向に移動体306を移動させる押圧部307と、を有する。
移動体306は、シリンジ302の内周面に移動体306の外周面が接触した状態で、シリンジ302の軸方向に移動可能にシリンジ302で保持される先端部306Aと、先端部306Aに連続する基端部306Bと、を有する。基端部306Bは、シリンジ302の軸方向において押圧部307に対向する。
押圧部307は、ネジ部307Aと、ネジ係合部307Bと、を有する。ネジ部307Aは、ネジ係合部307Bに螺合する。ネジ部307Aを順回転させると、ネジ部307Aは、シリンジ302の軸方向に沿って移動体306(基端部306B)に接近するように移動する。ネジ部307Aを逆回転させると、ネジ部307Aは、シリンジ302の軸方向に沿って移動体306(基端部306B)から離反するように移動する。
材料充填空間302Aに骨内注入剤が充填された状態でネジ部307Aを順回転させると、ネジ部307Aは、基端部306Bに接近する。ネジ部307Aが基端部306Bを押圧すると、基端部306Bと共に先端部306Aが骨内注入剤を押圧する方向に移動する。結果、骨内注入剤は、注入ノズル304に押し出され、注入口305を通じて外部に押し出される。
以上のように構成される注入具301を用いて骨内注入剤を骨頭502に流し込むには、図9(A)に示すように、まず、髄内釘101に固定された骨接合部材201の軸孔218に注入ノズル304を挿入する。なお、注入ノズル304の外径は、軸孔218の径と略同じかわずかに小さいことが好ましい。軸孔218と注入ノズル304の隙間に骨内注入剤が入り込み難くするためである。
そして、図9(B)に示すように、注入具301の全体を周方向Cに回転させて注入口305を骨接合部材201の孔部215に一致させる。なお、骨接合部材201の孔部215及び注入具301の注入口305の相対位置(周方向Cの相対位相差)が外部からでも認識できるように、骨接合部材201及び注入具301のそれぞれに目印を設けることが好ましい。本実施形態において、骨接合部材201の孔部215の目印は、図8及び図9(B)に示すように、軸部211の大径部212の係合凹部212Aである。一方、注入具301の目印は、図8及び図9(B)に示すように、注入ノズル304(またはシリンジ302)の外周面に設けられたマーキング309である。また、軸部211の内部には、先端近傍において注入ノズル304の先端に当接して注入ノズル304の軸AX方向の位置決めをするストッパ217を有してもよい。施術者が注入ノズル304をストッパ217に当たるまで挿入してから、隣接する一対の係合凹部212Aの中間位置(45度の位相差)にマーキング309が位置するように、注入具301を回転させて位置決めすると、骨接合部材201の孔部215の位置と注入口305の位置が一致する。この状態において骨内注入剤が充填されたシリンジ302をプランジャ303で押圧すると、骨内注入剤は、注入ノズル304、注入口305、孔部215を順に経由して骨頭502の内部に押し出される。この作業を、全ての孔部215に対して繰り返す。なお、図9(B)に示すように、注入具301側の目印として、骨接合部材201に対する孔部215の軸AX2方向の進入深さを示すマーキング310を設けることも好ましい。
骨内注入剤は、図10(A)、図11(A)及び図12(A)に示すように、孔部215から押し出されると、長孔領域228から欠損部専有領域R1、第一ネジ溝領域R2、及び第二ネジ溝領域R3に広がっていく。そして、押圧が継続されると、骨内注入剤は、図10(B),(C)、図11(B),(C)及び図12(B)に示すように、第一ネジ溝領域R2、及び第二ネジ溝領域R3を超えて、ネジ溝224A及びネジ溝224Bに沿う方向に広がると共に、ネジ溝224A及びネジ溝224Bの高さ方向Hにも広がっていく。この際、図10(B),(C)に示すように、軸部211の径方向(紙面に垂直な方向)から欠損部223と孔部215を平面視した場合、骨内注入剤は、H字状に広がっていく。骨内注入剤がH字状に広がる際の粘性抵抗によって、骨内注入剤の圧力が高まっていく。
最終的に、図12(C)に示すように、ネジ溝224A及びネジ溝224Bが骨内注入剤で充填されると同時に、図12(D)に示すように、骨内注入剤は、更に、ネジ溝224A及びネジ溝224Bよりも径方向の外側に移動し、ネジ係合部221に隣接する骨頭502の内部に入り込む。そして、骨内注入剤は、(単位)ネジ溝224A及び(単位)ネジ溝224Bに沿って更に広がり、この(単位)ネジ溝224Aに対して軸AX2方向の先端側に連続する(単位)ネジ溝224Cや、ネジ溝224Bに対して基端側連続する(単位)ネジ溝224Dにも徐々に広がっていく。その他のネジ溝についても同様である。
しかも、特定単位ネジ山222Aに複数の孔部215及び欠損部223が集中しているため、骨内注入剤が無駄に拡散しないで済む。これにより、特定単位ネジ山222Aの周りを中心に、骨内注入剤が広がり、骨内注入剤が硬化することにより、骨接合部材201と骨頭が互いに強固に固定される。
なお、欠損部223に対応する領域(欠損部専有領域R1)に充填された骨内注入剤は、図13(A),(B)に示すように、骨接合部材201が周方向Cに回転する際、特定単位ネジ山222Aの欠損部223側を挟んで臨む(対向する)2つの面229に接触して骨接合部材201の回転を制限する。つまり、欠損部223に対応する領域(欠損部専有領域R1)に充填された骨内注入剤は、骨接合部材201の回転を制限する回転制限部として機能する。
<骨接合部材の利点>
比較事例となる図14(A),(B)に示すように、骨内注入剤が、ネジ溝224に設けられた孔部215を通じて押し出され、単位ネジ山222を横切ることはなく、ネジ溝224に沿って充填されて、骨頭との間で骨接合部材201を拘束する場合を検討する。この場合、図14(C),(D)に示すように、何らかの原因があって、骨内注入剤とネジ溝224の間や、骨内注入剤と軸部211の間に隙間領域900が生じると、骨接合部材201に対する拘束力が弱まる。結果、患者の動作に起因して骨接合部材201に振動が加わると、骨接合部材201が骨頭502に対して相対回転して、骨折部の固定力が弱まる。
一方、本実施形態の骨接合部材201によれば、図13(C),(D)に示すように、骨内注入剤とネジ溝224A,224Bの間や、骨内注入剤と軸部211の間に隙間領域900が生じても、欠損部223に対応する領域に充填された骨内注入剤が回転制限部として機能する。このため、患者の動作に起因して骨接合部材201に振動が加わっても、骨接合部材201と骨頭502の相対回転が制限され、骨折部の固定力は維持される。
更に、参考事例となる図14(A),(B)のように、骨内注入剤がネジ溝224に沿って充填されて骨頭との間で強固に固定されている状態にある場合、骨接合部材201を取り外そうとすると、ネジ溝224に沿って固化した骨内注入剤に対して摺動させるように、骨接合部材201を緩み方向に回転させる必要がある。この摩擦力によって、骨頭を破壊しかねない。
一方、図13(A),(B)に示すように、本実施形態の骨接合部材201を取り外そうとすると、骨接合部材201の回転によって、特定単位ネジ山222Aの面229が、欠損部223内で固化された骨内注入剤に局所的に強い圧力を与えることができるため、その部分を破壊できる。骨内注入剤の一部が破壊されると、その亀裂等が骨内注入剤の全体に広がるので、骨接合部材201を容易に回転させて、骨接合部材201を取り外すことができる。
また、本実施形態の変形例となる図15に示すように、特定単位ネジ山222Aに隣り合う特定単位ネジ山222F,222Gのそれぞれに、特定単位ネジ山222Aの欠損部223と同位相となる欠損部223を設けることも可能である。つまり、軸AX2方向に隣接する複数の欠損部223が、互いに対向する軸AX2方向に連続して設けられる。この場合、孔部215から押し出される骨内注入剤は、欠損部223の連続方向Pと、ネジ溝224に沿う方向の双方に流れていく。図13と比較して、骨内注入剤が広がる経路の数が多くなるため、骨内注入剤がネジ溝224から径方向外側(骨頭側)まで十分に拡散するのに、多くの液量と充填時間を要するが、軸方向AX2へ骨内注入剤の拡散が容易であるという利点もある。
一方、図12及び図13に示す骨接合部材201は、軸AX2方向において特定単位ネジ山222Aに隣り合う単位ネジ山222C,222Dにおいて、特定単位ネジ山222Aの欠損部223と対向する領域(対向領域)が欠損していない。つまり、骨内注入剤が拡散する経路を、一対のネジ溝224A,224Bに積極的に限定させている。結果、骨内注入剤は、骨接合部材201のネジ溝224A,224Bに沿って流れつつ、早期に、骨接合部材201が半径方向外側に向かって拡散し、周囲の骨頭の組織まで十分に行き届くという利点もある。骨頭の内部において、骨接合部材201が局所的に集中して固化するので、骨頭の強度も上昇させやすい。
<第二実施形態>
次に、図16を参照して、本発明の第二実施形態の骨接合具について説明する。本実施形態における骨接合具は、第一実施形態のものとは軸部211における欠損部223及び孔部215の配置態様が異なる。
図16(A)~(D)は、順に、本実施形態における骨接合部材(ラグスクリュー)201の変形例の平面図、本実施形態における骨接合部材(ラグスクリュー)201の正面図、本実施形態における骨接合部材(ラグスクリュー)201の底面図、本実施形態における骨接合部材(ラグスクリュー)201の背面図である。図16(A)~(D)に示す骨接合部材(ラグスクリュー)201では、各欠損部223は、それぞれ別々の特定単位ネジ山222Aに設けられる。なお、第一実施形態と同様に、複数の欠損部223は、軸方向に対向しない位置(周方向の位相がずれた位置)に配置されている。
この骨接合部材(ラグスクリュー)201のように、各欠損部223および孔部215が、それぞれ別々の特定単位ネジ山222Aに設けられる場合、軸部211及びその周囲のネジ係合部221の強度を、軸AX2方向に均質化できるという利点がある。
なお、第二実施形態では、各々の特定単位ネジ山222Aに対して1つの欠損部223及び孔部215を設ける場合を例示したが、欠損部223及び孔部215の数は、特に限定されない。
<第三実施形態>
次に、図17を参照して、本発明の第三実施形態の骨接合具について説明する。本実施形態における骨接合具は、第一実施形態のものとは欠損部223及び孔部215の態様が異なる。本実施形態において、複数の孔部215及び欠損部223は、図17(A)に示すように、互いに周方向に同位相となる位置、且つ、軸AX2方向に離れた位置に配置される。直列に並ぶ2つの孔部215及び対応する欠損部223が1組となって、軸部211の周方向に間隔を空けて設けられる。
なお、図17(A)に示すように、周方向に同位相となる2つの欠損部223(及び孔部215)の間には、2つの欠損部223と同位相領域が欠損していない単位ネジ山222が少なくとも1つ介在している。図17(A)では、2つの欠損部223と対向する領域が欠損していない単位ネジ山222は、1つだけであるが、図17(B)に示すように、複数の単位ネジ山222が介在してもよい。また、図17(A)と比較して、図17(B)では、孔部215及び欠損部223の軸部211の周方向における幅(周方向幅)が大きく設定されているが、この幅は特に限定はない。なお、一つの欠損部223が周方向に占める領域(位相幅)は、40度以下が好ましく、望ましくは30度以下、より望ましくは20度以下とする。
<第四実施形態>
次に、図18を参照して、本発明の第四実施形態の骨接合具について説明する。本実施形態における骨接合具では、軸AX2方向に隣接する複数の(ここでは3つ)特定単位ネジ山222A,222C,222Dのそれぞれに対して、孔部215及び欠損部223が形成される。特定単位ネジ山222(222C,222D)に形成される欠損部223は、中間の特定単位ネジ山222Aの欠損部223と対向する領域から周回方向にずれた領域に位置する。
特定単位ネジ山222Aに形成される孔部215は、ネジ溝224A(第一ネジ溝領域R2),224B(第二ネジ溝領域R3)及び、特定単位ネジ山222Aに対応する欠損部専有領域R1に跨る。また、特定単位ネジ山222Cに形成される孔部215は、ネジ溝224C(第三ネジ溝領域R4),224A(第一ネジ溝領域R2)及び、特定単位ネジ山222Cに対応する欠損部専有領域R1に跨る。また、特定単位ネジ山222Dに形成される孔部215は、ネジ溝224D(第四ネジ溝領域R5),224B(第二ネジ溝領域R3)及び、特定単位ネジ山222Dに対応する欠損部専有領域R1に跨る。このようにすると、隣接する複数(ここでは3つ)の特定単位ネジ山222A,222C,222Dに対して、いわゆるラビリンス状に複数の欠損部223が形成される。
なお、本発明の骨接合具では、ネジ係合部221が一条ネジの場合を例示するが、本発明はこれに限定されず、二条ネジ以上の多条ネジに適用することもできる。
また、本発明の骨接合具は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、各実施形態の各構成要素の様々な組み合わせも本発明の範囲に含まれる。
10 髄内釘補助具
100 骨接合具
101 髄内釘(ネイル)
104 横孔
201 骨接合部材(ラグスクリュー)
211 軸部
212A 係合凹部
215 孔部
216 溝部
218 軸孔
221 ネジ係合部
222,222C,222D 単位ネジ山
222A,222E 特定単位ネジ山
223 欠損部
224,224A~224D ネジ溝
228 長孔領域
301 注入具
302 シリンジ
303 プランジャ
304 注入ノズル
305 注入口

Claims (5)

  1. 軸部と、該軸部の周面に螺旋状に周回するネジ山と、該軸部の内部を軸方向に延びる軸孔とを有し、髄内釘に挿通される骨接合部材と、
    骨内注入剤を骨内に注入可能な注入具と、を備えた骨接合部材セットであって、
    前記骨接合部材は、
    前記ネジ山の360°の一周分を単位ネジ山としたときに、該単位ネジ山を挟んで隣り合う一対のネジ溝の内部空間が臨むように該単位ネジ山に設けられた欠損部と、
    前記欠損部に連通するように前記軸部に設けられた孔部と、
    骨接合部材側位置決め部と、を有し、
    前記注入具は、
    前記骨接合部材の前記軸孔に挿入可能な注入ノズルと、
    前記注入ノズルの先端部に設けられた一つの注入口と、
    注入具側位置決め部と、を有し、
    前記骨接合部材側位置決め部と前記注入具側位置決め部とにより前記注入具を前記骨接合部材に対して位置決めすることで前記注入口を前記孔部に対応させることが可能である、
    ことを特徴とする骨接合部材セット。
  2. 前記孔部は前記軸部の周方向に複数箇所に設けられ、
    前記骨接合部材側位置決め部は、前記軸部の周方向において前記孔部に対応する複数箇所に設けられている、
    ことを特徴とする請求項1に記載の骨接合部材セット。
  3. 前記孔部は前記単位ネジ山に沿って前記軸部の軸周りにほぼ90°の間隔で4か所に設けられている、
    ことを特徴とする請求項2に記載の骨接合部材セット。
  4. 前記骨接合部材は前記軸部の基端部に、前記骨接合部材を回転させる器具を嵌め込む係合凹部を有し、前記係合凹部は前記骨接合部材側位置決め部として機能する、
    ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の骨接合部材セット。
  5. 前記注入口は前記孔部をカバーするように前記注入ノズルの軸方向に延在する長孔である、
    ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の骨接合部材セット。
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