JP2023090091A - 波面計測装置及び波面計測方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ダイナミックレンジの拡大と空間分解能の向上とを両立できる波面計測装置及び波面計測方法を提供する。【解決手段】波面計測装置1は、入射光L0が入射する空間光変調器7を有する位相変調部2と、空間光変調器7に入力される位相パターン11を生成するパターン生成部3と、空間光変調器7によって変調された入射光L0の一部を計測光L1として撮像する撮像領域14を有する撮像部4と、撮像部4での撮像結果に基づいて入射光L1の波面を解析する解析部5と、を備え、パターン生成部3は、空間光変調器7によって変調された計測光L1の集光スポット16が撮像領域14の異なる位置に経時的にずれるように、計測用仮想パターン12が互いに異なる位置にずれた複数の位相パターン11を生成する。【選択図】図5
Description
本開示は、波面計測装置及び波面計測方法に関する。
従来、光源からの光の空間的な分布を電気的に制御して変調するデバイスとして、空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)が知られている。空間光変調器は、光波形成形、光パルス成形、光計測、光演算といった様々な用途を有している。また、空間光変調器は、レーザ加工などの分野を念頭に、光波面計測への応用も期待されている。
例えば非特許文献1に記載の技術では、デュアルマイクロレンズアレイパターンを表示した空間光変調器を用いてビームを変調し、各マイクロレンズでそれぞれ集光した線形スポット及び集光スポットにおける基準位置からの変位量をカメラによって取得している。線形スポット及び集光スポットの変位量に応じて検出領域をシフトさせ、各検出領域内の2×2の集光スポットの変位量を取得することで、ビーム断面内の位相勾配を計測している。
また、例えば非特許文献2に記載の技術では、マイクロホログラムアレイパターンを表示した空間光変調器を用いてビームを変調し、任意の多点スポットにおける基準位置からの変位量をカメラによって取得している。非特許文献2では、任意の多点スポットの変位量に基づいて、ビーム断面内の位相勾配を計測することで、隣り合う検出領域に集光点が重なった場合でも基準位置からの変位量を認識できるようになっている。
"Shack-Hartmannwavefront sensor with large dynamic range by adaptive spot search method" Hironobu Shinto et al., Applied Optics Vol. 55, Issue 20, pp. 5413-5418(2016)
「機能性位相変調パターンの光学的応用に関する研究」最田裕介著、神戸大学大学院システム情報学研究科、学位論文甲第6649号、公開日2017年3月1日
ビームの波面計測においては、ダイナミックレンジの拡大と空間分解能の向上とを両立することが技術的な課題となっている。非特許文献1に記載の技術では、曲率の大きい波面がマイクロレンズパターン或いは非点収差マイクロレンズパターンによって変調されると、線形スポット及び集光スポットの形状が歪んでしまうという問題が生じ得る。歪みによってスポット形状が認識されない場合には、パターンマッチングが失敗するため、ダイナミックレンジの確保が難しくなると考えられる。
また、非特許文献2に記載の技術では、良好な再生像を得られるマイクロホログラムの生成に一定の画素数を要するという問題が挙げられる。このため、空間分解能は、使用する空間光変調器の画素数に依存してしまうという問題がある。
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、ダイナミックレンジの拡大と空間分解能の向上とを両立できる波面計測装置及び波面計測方法を提供することを目的とする。
本開示の一側面に係る波面計測装置は、入射光を変調する空間光変調器を有する位相変調部と、空間光変調器に入力される位相パターンを生成するパターン生成部と、空間光変調器によって変調された入射光の少なくとも一部を計測光として撮像する撮像領域を有する撮像部と、撮像部での撮像結果に基づいて入射光の波面を解析する解析部と、を備え、パターン生成部は、空間光変調器によって変調された計測光の集光スポットが撮像領域の異なる位置に経時的にずれるように、計測用仮想パターンが互いに異なる位置にずれた複数の位相パターンを生成する。
この波面計測装置では、空間光変調器に入力される複数の位相パターンにおいて、計測用仮想パターンが互いに異なる位置にずれており、空間光変調器によって変調された計測光の集光スポットが撮像領域の異なる位置に経時的にずれるようになっている。これにより、複数の位相パターンにおいて、計測用仮想パターンのピッチ(中心間距離)を大きくすることが可能となり、撮像領域における集光スポットの配列ピッチを大きくすることができる。集光スポットの配列ピッチを大きくすることで、集光スポット1単位当たりの検出可能範囲を広くできるため、ダイナミックレンジの拡大が可能となる。また、集光スポットを経時的にずらしていくことで、ダイナミックレンジを拡大した状態で空間分解能を向上できる。すなわち、複数の位相パターンを用いた撮像の際に集光スポットの配列ピッチを大きくした状態で撮像し、複数の位相パターンによって集光スポットをずらして撮像した撮像結果を重ね合わせることで、空間分解能の向上が図られる。したがって、この波面計測装置では、ダイナミックレンジの拡大と空間分解能の向上とを両立できる。
パターン生成部は、複数の位相パターンのそれぞれにおいて、複数の計測用仮想パターンを形成してもよい。この場合、1回の撮像によって得られる画像の空間分解能を向上できるため、集光スポットをずらす回数(撮像回数)を削減できる。したがって、計測用仮想パターンによる入射光の断面内のスキャン時間を短縮できる。
パターン生成部は、複数の位相パターンのそれぞれにおいて、単一の計測用仮想パターンを形成してもよい。この場合、計測光の集光スポット1単位当たりの検出可能範囲を十分に確保できる。したがって、ダイナミックレンジの更なる拡大が可能となる。
パターン生成部は、複数の位相パターンを経時的に重ねた場合に、計測用仮想パターン同士が重ならないように各位相パターンを生成してもよい。この場合、計測用仮想パターン同士の一部が重なるように複数の位相パターンを生成する場合と比べて、最小限のスキャンで空間光変調器の全変調領域における波面計測を実施できる。
パターン生成部は、複数の位相パターンを経時的に重ねた場合に、計測用仮想パターンの一部同士が重なるように各位相パターンを生成してもよい。この場合、撮像領域における集光スポットの配列ピッチを小さくできるため、空間分解能の更なる向上が図られる。
パターン生成部は、複数の位相パターンのそれぞれに含まれる計測用仮想パターンが空間光変調器における変調可能領域の一部のみを占めるように各位相パターンを生成してもよい。この場合、計測用仮想パターンにて変調された計測光と、計測用仮想パターン以外の部分にて変調された光とを同時に生成できる。したがって、計測光によって入射光の波面計測を実施しつつ、計測光以外の光を出力光として外部に取り出すことが可能となる。
パターン生成部は、複数の位相パターンを経時的に重ねた場合に、計測用仮想パターンが空間光変調器における入射光の入射領域の全体と重なるように各位相パターンを生成してもよい。この場合、入射光の入射領域全体で波面計測を実施できる。
パターン生成部は、解析部での解析結果に基づいて入射光に対する波面変調パターンを生成及び更新してもよい。これにより、入射光の波面計測を行いつつ、入射光の波面変調を実施できる。
入射光のうち、計測用仮想パターンにて変調された計測光の焦点距離と、計測用仮想パターン以外の部分にて変調された光の焦点距離とが互いに異なっていてもよい。この場合、入射光の波面計測を行いつつ、計測用仮想パターン以外の部分にて変調された光を出力光として取り出したとしても、撮像部の撮像領域に出力光が集光することを防止でき、且つ出力光の取り出し先に計測光が集光することを防止できる。
本開示の一側面に係る波面計測方法は、空間光変調器に位相パターンを入力するパターン入力ステップと、位相パターンが入力された空間光変調器に入射光を入射させ、入射光を位相変調する位相変調ステップと、空間光変調器によって変調された入射光の一部を計測光として撮像部の撮像領域で撮像する撮像ステップと、撮像ステップでの撮像結果に基づいて入射光の波面を解析する解析ステップと、を備え、パターン入力ステップでは、空間光変調器によって変調された計測光が撮像領域の異なる位置に集光するように、計測用仮想パターンが互いに異なる位置にずれた複数の位相パターンを入力する。
この波面計測方法では、空間光変調器に入力される複数の位相パターンにおいて、計測用仮想パターンを互いに異なる位置にずらすことにより、空間光変調器によって変調された計測光の集光スポットを撮像領域の異なる位置に経時的にずらしている。これにより、複数の位相パターンにおいて、計測用仮想パターンのピッチ(中心間距離)を大きくすることが可能となり、撮像領域における集光スポットの配列ピッチを大きくすることができる。集光スポットの配列ピッチを大きくすることで、集光スポット1単位当たりの検出可能範囲を広くできるため、ダイナミックレンジの拡大が可能となる。また、集光スポットを経時的にずらしていくことで、ダイナミックレンジを拡大した状態で空間分解能を向上できる。すなわち、複数の位相パターンを用いた撮像の際に集光スポットの配列ピッチを大きくした状態で撮像し、複数の位相パターンによって集光スポットをずらして撮像した撮像結果を重ね合わせることで、空間分解能の向上が図られる。したがって、この波面計測方法では、ダイナミックレンジの拡大と空間分解能の向上とを両立できる。
本開示によれば、ダイナミックレンジの拡大と空間分解能の向上とを両立できる。
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る波面計測装置及び波面計測方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
[空間光変調器を用いた一般的な波面計測の原理]
[空間光変調器を用いた一般的な波面計測の原理]
図1は、空間光変調器を用いた一般的な波面計測の原理図である。同図に示すように、空間光変調器を用いた一般的な波面計測では、位相パターン111が空間光変調器107の変調可能領域113に入力される。位相パターン111には、例えばマイクロレンズ状の計測用仮想パターン112がマトリクス状に配置されている。位相パターン111が入力された空間光変調器107に入射光L100が入射すると、計測用仮想パターン112によって入射光L100が変調され、計測光L101が生成される。そして、計測光L101による複数の集光スポット116が撮像部の撮像領域114に形成される。
図2(a)に示すように、入射光L100の波面に歪みがない領域では、集光スポット116は、撮像領域114上において計測用仮想パターン112の光軸と一致する基準位置K0に集光する。一方、入射光L100の波面に歪みがある領域では、集光スポット116は、基準位置K0から(Δx,Δy)だけ変位した変位位置K1に集光する。集光スポット116毎の基準位置K0からの変位量を検出することで、当該集光スポット116に対応する計測用仮想パターン112に入射した断面領域での入射光L100の波面の歪みを検出できる。
撮像領域114における複数の集光スポット116の配列ピッチは、計測用仮想パターン112の配列ピッチ(計測用仮想パターン112の中心間距離)によって定まる。集光スポット116の配列ピッチにより、集光スポット116における1単位当たりの検出可能範囲Rの大きさが定まる。図2(b)に示すように、検出可能範囲R内に集光スポット116が存在しない場合(右下の検出可能範囲R)、1つの検出可能範囲Rに集光スポット116が2点以上存在する場合(右上の検出可能範囲R)、或いは隣り合う検出可能範囲R,Rの境界上に集光スポット116が存在する場合、当該集光スポット116がいずれの検出可能範囲Rの基準位置K0から変位したかを検出することが困難となる。検出可能な集光スポット116の変位量の上限は、検出可能範囲R内に制限される。
したがって、入射光L100の波面計測のダイナミックレンジは、検出可能範囲Rの大きさ、すなわち、計測用仮想パターン112の配列ピッチに依存する。計測用仮想パターン112の配列ピッチが大きいほど撮像領域114における集光スポット116の間隔が疎となり、検出可能範囲Rが大きくなることで、波面計測のダイナミックレンジが大きくなる。計測用仮想パターン112の配列ピッチが小さいほど撮像領域114における集光スポット116の間隔が密となり、検出可能範囲Rが小さくなることで、波面計測のダイナミックレンジが小さくなる。
一方、図1に示した一般的な波面計測では、入射光L100の波面計測の空間分解能は、計測用仮想パターン112の配列ピッチに依存する。例えば図3の形態では、図1の形態に比べて計測用仮想パターン112の配列ピッチが大きくなっている。計測用仮想パターン112の配列ピッチが小さいほど撮像領域114における集光スポット116の間隔が密となり、波面計測の空間分解能が高くなる。計測用仮想パターン112の配列ピッチが大きいほど撮像領域114における集光スポット116の間隔が疎となり、波面計測の空間分解能が低くなる。したがって、空間光変調器107を用いた一般的な波面計測では、ダイナミックレンジと空間分解能とがトレードオフの関係にあると言える。
[本実施形態に係る波面計測装置]
[本実施形態に係る波面計測装置]
上記課題に対し、本実施形態に係る波面計測装置は、ダイナミックレンジの拡大と空間分解能の向上とを両立することを目的としている。図4は、本実施形態に係る波面計測装置の原理図である。同図に示すように、本実施形態に係る波面計測装置1では、空間光変調器7に入力される複数の位相パターン11において、計測用仮想パターン12が互いに異なる位置にずれている。波面計測装置1では、複数の位相パターン11が空間光変調器7に順次入力されることで、空間光変調器7の変調可能領域13における計測用仮想パターン12が経時的に変位する。これにより、空間光変調器7によって変調された計測光L1の集光スポット16及び集光スポット16の1単位当たりの検出可能範囲Rが撮像領域14の異なる位置に経時的にずれるようになっている。
以下、上述した波面計測装置1の構成について詳述する。図5は、本開示の一実施形態に係る波面計測装置の構成を示す概略図である。同図に示すように、波面計測装置1は、位相変調部2と、パターン生成部3と、撮像部4と、解析部5と、出力部6とを含んで構成されている。図5の例では、波面計測装置1は、レーザ加工装置として構成されている。レーザ加工装置としての波面計測装置1は、位相変調部2によって波面が補正された出力光L2を照射することによって加工対象物Pを加工する。
位相変調部2は、入射光L0が入射する空間光変調器7(図4参照)を有している。空間光変調器7は、光源からの光の空間的な分布を電気的に制御して変調するデバイスである。入射光L0は、計測光L1及び出力光L2の元となる光である。ここでは、入射光L0のうち、後述の計測用仮想パターン12にて変調された部分が計測光L1となり、計測用仮想パターン12以外の部分にて変調された部分が出力光L2となる。入射光L0を出力する光源(不図示)としては、例えばファイバーレーザ、固体レーザなどが挙げられる。レーザ光の発振形態としては、パルス発振、連続発振のいずれであってもよい。
パターン生成部3は、空間光変調器7に入力される位相パターンを生成する部分である。パターン生成部3は、物理的には、RAM、ROM等のメモリ、及びCPU等のプロセッサ(演算回路)、通信インターフェイス、ハードディスク等の格納部を備えたコンピュータシステムである。かかるコンピュータシステムとしては、例えばパーソナルコンピュータ、クラウドサーバ、スマートデバイス(スマートフォン、タブレット端末など)、マイクロコンピュータ、FPGA(field-programmable gate array)などが挙げられる。パターン生成部3は、メモリに格納されるプログラムをコンピュータシステムのCPUで実行することにより、空間光変調器7のコントローラとして機能する。
図6(a)~図6(d)は、パターン生成部で生成される位相パターンの一例を示す概略図である。図6(a)~図6(d)に示すように、パターン生成部3は、計測用仮想パターン12が互いに異なる位置にずれた複数の位相パターン11A~11Dをこの順に繰り返し生成する。ここでは、パターン生成部3は、位相パターン11A~11Dのそれぞれにおいて、複数の計測用仮想パターン群12A~12Dを形成する。
図6(a)~図6(d)の例では、位相パターン11A~11Dのそれぞれに含まれる計測用仮想パターン群12A~12Dは、空間光変調器7における変調可能領域13の一部のみを占めるように形成されている。すなわち、位相パターン11A~11Dが空間光変調器7に入力された際、空間光変調器7の変調可能領域13には、計測用仮想パターン12が形成されない領域が存在する。
同図の例では、位相パターン11A~11Dにおいて、計測用仮想パターン群12A~12Dは、3×3のマトリクス状に計9つの計測用仮想パターン12によって構成されている。計測用仮想パターン12は、例えば正方形状のマイクロレンズ状のパターンである。隣り合う計測用仮想パターン12,12同士は、計測用仮想パターン12の1つ分の間隔をもって離間している。すなわち、図6(a)~図6(d)の例では、計測用仮想パターン12の配列ピッチ(隣り合う計測用仮想パターン12,12の中心間距離)は、正方形状である計測用仮想パターン12の一辺の長さの2倍と等しくなっている。これにより、位相パターン11A~11Dを経時的に重ねた場合に、計測用仮想パターン群12A~12D同士が重ならないようになっている。
位相パターン11Aの計測用仮想パターン群12Aの位置を基準位置とした場合、位相パターン11Bの計測用仮想パターン群12Bは、位相パターン11Aの計測用仮想パターン群12Aに対し、計測用仮想パターン12の1つ分だけ+x方向(紙面右方向)にずれている(図6(b)参照)。位相パターン11Cの計測用仮想パターン群12Cは、位相パターン11Bの計測用仮想パターン群12Bに対し、計測用仮想パターン12の1つ分だけ+y方向(紙面下方向)にずれている(図6(c)参照)。
位相パターン11Dの計測用仮想パターン群12Dは、位相パターン11Cの計測用仮想パターン群12Cに対し、計測用仮想パターン12の1つ分だけ-x方向(紙面左方向)にずれている(図6(d)参照)。位相パターン11Aの計測用仮想パターン群12Aは、位相パターン11Dの計測用仮想パターン群12Dに対し、計測用仮想パターン12の1つ分だけ-y方向(紙面上方向)にずれている(図6(a)参照)。これにより、位相パターン11A~11Dを経時的に重ねた場合に、位相パターン11A~11Dのそれぞれに含まれる計測用仮想パターン群12A~12Dが空間光変調器7における入射光L0の入射領域の全体と重なるようになっている。
撮像部4は、空間光変調器7によって変調された計測光L1を撮像する部分である。撮像部4を構成するデバイスとしては、例えばCCDカメラ、CMOSカメラなどを用いることができる。同図に示すように、撮像部4は、複数の画素(不図示)によって構成される二次元の撮像領域14(図7(a)~図7(d)参照)を有している。撮像領域14には、位相パターン11A~11Dに含まれる計測用仮想パターン群12A~12Dによって集光した計測光L1がこの順に繰り返し結像する。撮像部4は、計測用仮想パターン群12A~12Dによる集光スポット群16A~16Dの光像を順次撮像し、それぞれの画像データを解析部5に出力する。
図7(a)~図7(d)は、図6(a)~図6(d)に示した位相パターンを用いた場合に撮像部で撮像される集光スポットの一例を示す概略図である。ここでは、計測用仮想パターン12のずれと集光スポット16のずれとの関係を説明する便宜上、入射光L0に波面の歪みが無い場合の基準位置K0(図2参照)において集光スポット16を図示している。同図に示すように、集光スポット群16A~16Dは、図6(a)~図6(d)に示した位相パターン11A~11Dにおける計測用仮想パターン群12A~12Dのそれぞれに対応し、3×3のマトリクス状に計9つの集光スポット16によって構成されている。
集光スポット群16A~16Dを構成する各集光スポット16の径は、計測用仮想パターン12によって表されるマイクロレンズの口径(すなわち、計測用仮想パターン12のサイズ)に反比例する。隣り合う集光スポット16,16の基準位置K0,K0同士は、計測用仮想パターン12の配列ピッチに応じた間隔をもって離間している。計測用仮想パターン群12A~12Dによって形成される計測光L1の集光スポット16の1単位当たりの検出可能範囲Rは、計測用仮想パターン12の配列ピッチに応じて定まる。計測用仮想パターン12の配列ピッチが小さいほど、集光スポット16の1単位当たりの検出可能範囲Rは小さくなる。計測用仮想パターン12の配列ピッチが大きいほど、集光スポット16の1単位当たりの検出可能範囲Rは大きくなる。
計測用仮想パターン群12Aによって結像する集光スポット群16Aの位置を基準位置とした場合、集光スポット群16Bの位置は、集光スポット群16Aに対し、計測用仮想パターン12の配列ピッチの分だけ+x方向(紙面右方向)にずれる(図7(b)参照)。集光スポット群16Cの位置は、集光スポット群16Bに対し、計測用仮想パターン12の配列ピッチの分だけ+y方向(紙面下方向)にずれる(図7(c)参照)。
集光スポット群16Dの位置は、集光スポット群16Cに対し、計測用仮想パターン12の配列ピッチの分だけ-x方向(紙面左方向)にずれる(図7(d)参照)。集光スポット群16Aの位置は、集光スポット群16Dに対し、計測用仮想パターン12の配列ピッチの分だけ-y方向(紙面上方向)にずれる(図7(a)参照)。
解析部5は、撮像部4での撮像結果に基づいて入射光L0の波面を解析する部分である。解析部5は、物理的には、RAM、ROM等のメモリ、及びCPU等のプロセッサ(演算回路)、通信インターフェイス、ハードディスク等の格納部を備えたコンピュータシステムである。かかるコンピュータシステムとしては、例えばパーソナルコンピュータ、クラウドサーバ、スマートデバイス(スマートフォン、タブレット端末など)、マイクロコンピュータ、FPGA(field-programmable gate array)などが挙げられる。解析部5は、パターン生成部3と一体のシステムであってもよい。解析部5は、メモリに格納されるプログラムをコンピュータシステムのCPUで実行することにより、入射光L0の波面の解析を実行する。
解析部5は、空間光変調器7によって経時的にずらされた計測用仮想パターン群12A~12Dを用いて生成された集光スポット群16A~16Dのそれぞれの撮像結果である複数の画像データに基づいて、入射光L0の波面を解析する。解析部5は、撮像部4から受け取った画像データに基づき、集光スポット16の検出可能範囲R毎に集光スポット16の基準位置K0からの変位量(Δx,Δy)を検出する(図2参照)。解析部5は、各集光スポット16の基準位置K0からの変位量を検出することで、各集光スポット16に対応する計測用仮想パターン12に入射した断面領域での入射光L0の波面の歪みを検出する。
解析部5は、入射光L0の各断面領域における波面の歪みをマッピングし、入射光L0の波面を出力光L2の用途に応じた所望の波面に変調するための波面変調パターン18(図8参照)を生成してもよい。波面変調パターン18は、空間光変調器7に入射する入射光L0の波面を変調するパターンであり、計測用仮想パターン12とは別に生成される。解析部5で生成した設計情報をパターン生成部3に出力し、パターン生成部3で生成した波面変調パターン18を空間光変調器7に入力することで、出力光L2のビームパターンがトップハット型やガウシアン型といった様々な型となるように、入射光L0の波面を補正することが可能となる。
波面変調パターン18は、入射光L0の波面の歪みの検出結果に応じて随時更新される。波面変調パターン18を用いた入射光L0の変調により、加工対象物Pに照射される出力光L2の波面を所望の波面に維持できる。図8に示すように、空間光変調器7に位相パターン11A~11Dと波面変調パターン18とを重複して入力する場合、入射光L0の波面計測と入射光L0の波面変調とを同時に実施することが可能となる。
出力部6は、出力光L2を外部に出力する部分である。本実施形態では、図5に示すように、位相変調部2から撮像部4に向かう計測光L1及び出力光L2の光路上にビームスプリッタ19が配置されている。計測光L1は、ビームスプリッタ19を透過して撮像部4に向かい、出力光L2は、ビームスプリッタ19で反射して加工対象物Pに向かう。出力光L2は、集光レンズ20によって集光され、加工対象物Pの表面に照射される。ビームスプリッタ19は、光量調整のための素子であり、例えば透過率5%程度(反射率95%程度)となっている。図5では省略されているが、実際には、撮像部4に向かう光に出力光L2の一部が含まれることもあり、加工対象物Pに向かう光に計測光L1の一部が含まれることもある。
本実施形態では、計測光L1の焦点が撮像部4の撮像領域14に合うように調整され、出力光L2の焦点が加工対象物Pの表面に合うように調整されている。また、本実施形態では、計測用仮想パターン12にて変調された計測光L1の焦点距離と、計測用仮想パターン12以外の部分にて変調された光(出力光L2)の焦点距離とが互いに異なっている。空間光変調器7からビームスプリッタ19を透過して撮像部4の撮像領域14に結像する計測光L1の焦点距離をF1、空間光変調器7からビームスプリッタ19で反射して集光レンズ20を介して加工対象物Pの表面に結像する出力光L2の焦点距離をF2とした場合に、F1≠F2となっている。F1とF2との大小関係は、任意である。F1>F2であってもよく、F2>F1であってもよい。
図9は、図5に示した波面計測装置の動作の一例を示すフローチャートである。同図に示すように、波面計測装置1では、まず、空間光変調器7への入射光L0の入力及び加工対象物Pへの出力光L2の照射が行われる(ステップS01)。次に、空間光変調器7への複数の位相パターン11の入力がなされる(ステップS02:パターン入力ステップ)。ステップS02では、計測用仮想パターン群12A~12Dが互いに異なる位置にずれた位相パターン11A~11Dが空間光変調器7にこの順に繰り返し入力される。位相パターン11A~11Dが順次入力された空間光変調器7に入射光L0が入射することで入射光L0の位相変調がなされ、計測光L1が生成される(ステップS03:位相変調ステップ)。
次に、空間光変調器7によって変調された計測光L1の撮像がなされる(ステップS04:撮像ステップ)。ステップS04では、計測用仮想パターン群12A~12Dによる集光スポット群16A~16Dの光像が順次撮像される。すなわち、計測用仮想パターン群12A~12Dによって撮像領域14の異なる位置に経時的にずれる集光スポット群16A~16Dの光像の画像データを順次取得する。
画像データを取得した後、ステップS04での撮像結果に基づいて、入射光L0の波面の解析が行われる(ステップS05:解析ステップ)。ステップS05では、空間光変調器7によって経時的にずらされた計測用仮想パターン群12A~12Dを用いて生成された集光スポット群16A~16Dのそれぞれの撮像結果である複数の画像データに基づいて、入射光L0の波面の解析が行われる。ステップS05では、各集光スポット16の基準位置K0からの変位量を検出することで、各集光スポット16に対応する計測用仮想パターン12に入射した断面領域での入射光L0の波面の歪みが検出される。波面の歪みの検出の後、波面変調パターン18の生成が行われる(ステップS06)。既に波面変調パターン18が生成されている場合には、波面の新たな検出結果に基づく波面変調パターン18の更新が行われる。
次に、ステップS06で生成又は更新された波面変調パターン18が空間光変調器7に入力される(ステップS07)。波面変調パターン18は、位相パターン11A~11Dと重畳して空間光変調器7に入力され、入射光L0の波面の解析と加工対象物Pへの出力光L2の照射とが同時に実施される。その後、加工対象物Pの加工が終了したか否かが判断される(ステップS08)。ステップS08において加工対象物Pの加工が終了したと判断された場合、処理が終了する。ステップS08において加工対象物Pの加工が終了していないと判断された場合、ステップS02に戻り、ステップS02~ステップS08の処理が再び実行される。
以上説明したように、波面計測装置1では、空間光変調器7に入力される複数の位相パターン11A~11Dにおいて、計測用仮想パターン群12A~12Dが互いに異なる位置にずれており、空間光変調器7によって変調された計測光L1の集光スポット群16A~16Dが撮像領域14の異なる位置に経時的にずれるようになっている。これにより、複数の位相パターン11A~11Dにおいて、計測用仮想パターン群12A~12Dに含まれる計測用仮想パターン12のピッチ(中心間距離)を大きくすることが可能となり、撮像領域14における集光スポット群16A~16Dの集光スポット16の配列ピッチを大きくすることができる。集光スポット16の配列ピッチを大きくすることで、集光スポット16の1単位当たりの検出可能範囲Rを広くできるため、ダイナミックレンジの拡大が可能となる。また、集光スポット16を経時的にずらしていくことで、ダイナミックレンジを拡大した状態で空間分解能を向上できる。すなわち、複数の位相パターン11A~11Dを用いた撮像の際に集光スポット16の配列ピッチを大きくした状態で撮像し、複数の位相パターン11A~11Dによって集光スポット16をずらして撮像した撮像結果を重ね合わせることで、空間分解能の向上が図られる。したがって、波面計測装置1では、ダイナミックレンジの拡大と空間分解能の向上とを両立できる。
本実施形態では、パターン生成部3は、複数の位相パターン11A~11Dのそれぞれにおいて、複数の計測用仮想パターン(計測用仮想パターン群12A~12D)を形成している。これにより、1回の撮像によって得られる画像の空間分解能を向上できるため、集光スポット16をずらす回数(撮像回数)を削減できる。したがって、計測用仮想パターン12による入射光L0の断面内のスキャン時間を短縮できる。
本実施形態では、パターン生成部3は、複数の位相パターン11A~11Dを経時的に重ねた場合に、計測用仮想パターン群12A~12D同士が重ならないように各位相パターン11A~11Dを生成している。例えば計測用仮想パターン群12A~12Dでは、隣り合う計測用仮想パターン12,12同士は、計測用仮想パターン12の1つ分の間隔をもって離間している(図6(a)~図6(d)参照)。これにより、計測用仮想パターン群12A~12D同士の一部が重なるように各位相パターン11A~11Dを生成する場合と比べて、最小限のスキャンで空間光変調器7の全変調領域における波面計測を実施できる。
本実施形態では、パターン生成部3は、複数の位相パターン11A~11Dのそれぞれに含まれる計測用仮想パターン群12A~12Dが空間光変調器7における変調可能領域13の一部のみを占めるように各位相パターンを生成している。これにより、計測用仮想パターン群12A~12Dにて変調された計測光L1と、計測用仮想パターン群12A~12D以外の部分にて変調された光とを同時に生成できる。したがって、計測光L1によって入射光L0の波面計測を実施しつつ、計測光L1以外の光を出力光L2として外部に取り出すことが可能となる。
本実施形態では、パターン生成部3は、複数の位相パターン11A~11Dを経時的に重ねた場合に、計測用仮想パターン12が空間光変調器7における入射光L0の入射領域の全体と重なるように各位相パターン11A~11Dを生成している。これにより、入射光L0の入射領域全体で波面計測を実施できる。この結果、波面変調パターン18を出力光L2の断面全体に適用することが可能となり、出力光L2の波面を所望の波面に容易に近づけることができる。
本実施形態では、パターン生成部3は、解析部5での解析結果に基づいて入射光L0に対する波面変調パターン18を生成及び更新している。これにより、入射光L0の波面計測を行いつつ、入射光L0の波面変調を実施できる。また、本実施形態では、計測用仮想パターン12にて変調された計測光L1の焦点距離と、計測用仮想パターン12以外の部分にて変調された光(出力光L2)の焦点距離とが互いに異なっている。これにより、入射光L0の波面計測を行いつつ、計測用仮想パターン12以外の部分にて変調された光を出力光L2として取り出したとしても、撮像部4の撮像領域14に出力光L2が集光することを防止でき、且つ出力光L2の取り出し先である加工対象物Pに計測光L1が集光することを防止できる。
[変形例]
[変形例]
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。例えば図10に示す波面計測装置1Aのように、ビームスプリッタ19と撮像部4との間の計測光L1の光路に像転送レンズ系21が配置されていてもよい。像転送レンズ系21は、例えば一対の凸レンズ22,22によって構成することができる。この場合、計測光L1の集光スポット16を撮像部4の撮像領域14の直接結像させる必要が無くなるため、光学的な配置の自由度を高めることができる。また、上記実施形態では、空間光変調器7で入射光L0を反射させる態様となっているが、例えば図11に示す波面計測装置1Bのように、空間光変調器7に入射光L0を透過させる態様であってもよい。このような態様であっても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。
上記実施形態では、正方形状の計測用仮想パターン12を例示したが、撮像部4の撮像領域14において集光スポット16が形成可能である限り、計測用仮想パターン12の形状は、任意の形状であってよい。すなわち、計測用仮想パターン12は、正方形状に限られず、例えば円形、長方形、楕円形、三角形、多角形などの他の形状であってもよい。
上記実施形態では、3×3のマトリクス状に計測用仮想パターン12が配列された位相パターン11A~11Dを例示したが、計測用仮想パターン12の配列数及び配列ピッチは、任意に設定することができる。例えば図12(a)に示すように、4×4のマトリクス状に計測用仮想パターン12が配列された位相パターン11を用いてもよく、図12(b)に示すように2×2のマトリクス状に計測用仮想パターン12が配列された位相パターン11を用いてもよい。
計測用仮想パターン12のサイズを変えない場合、計測用仮想パターン12の配列数を多くするほど、隣り合う集光スポット16,16間の配列ピッチが小さくなる(図13(a)参照)。したがって、空間分解能の向上が図られる。空間分解能の向上により、一定の空間分解能を得るために必要な撮像回数を削減できるため、波面計測の速度の向上も図られる。また、計測用仮想パターン12のサイズを変えない場合、計測用仮想パターン12の配列数を多くするほど、空間光変調器7の変調可能領域13に対して計測用仮想パターン12が占める面積が大きくなる。したがって、入射光L0の入射領域全体の波面計測に要する位相パターン11のパターン数を削減でき、撮像回数も削減できるため、波面計測の速度を向上できる。
計測用仮想パターン12のサイズを変えない場合、計測用仮想パターン12の配列数を少なくするほど、隣り合う集光スポット16,16間の配列ピッチが大きくなる(図13(b)参照)。したがって、集光スポット16の1単位当たりの検出可能範囲Rが大きくなり、ダイナミックレンジの向上が図られる。また、計測用仮想パターン12のサイズを変えない場合、計測用仮想パターン12の配列数を少なくするほど、空間光変調器7の変調可能領域13に対して計測用仮想パターン12が占める面積が小さくなる。このため、波面計測に使用される光の損失が抑えられ、出力光L2の強度を十分に維持した状態で入射光L0の波面計測が可能となる。
入射光L0の波面は、光源の自己発熱等の影響によって経時的に変化し得る。本実施形態のように加工対象物Pのレーザ加工を行う場合、リアルタイムに波面を計測して入射光L0(出力光L2)の波面の変調を行うことが有用となる。この場合、加工対象物Pへの出力光L2の照射前の段階では、計測用仮想パターン12の配列数を多くし、波面計測を高速で実施して波面変調パターン18を生成することが好適である。加工対象物Pへの出力光L2の照射中の段階では、計測用仮想パターン12のサイズを変えずに配列数を少なくし、又は計測用仮想パターンの配列数を変えずにサイズを小さくすることで、空間光変調器7の変調可能領域13に対して計測用仮想パターン12が占める面積を相対的に小さくし、出力光L2の強度を維持しながらリアルタイムで波面計測を実施する、といった態様とすることもできる。
計測用仮想パターン12のサイズも任意に調整可能である。例えば図14(a)に示すように、計測用仮想パターン12のサイズが図6(a)~図6(d)で示した計測用仮想パターン12の2倍程度となっていてもよい。また、例えば図14(b)に示すように、計測用仮想パターン12のサイズが図6(a)~図6(d)で示した計測用仮想パターン12の半分程度となっていてもよい。撮像領域14における集光スポット16の大きさは、計測用仮想パターン12のサイズによって変化する。図14(a)のように計測用仮想パターン12のサイズを大きくする場合、撮像領域14における集光スポット16の大きさが小さくなる(図15(a)参照)。図14(b)のように計測用仮想パターン12のサイズを小さくする場合、撮像領域14における集光スポット16の大きさが大きくなる(図15(b)参照)。
集光スポット16の大きさを小さくする場合、集光スポット16における光の強度が大きくなる。例えば入射光L0の強度がレーザ断面の中心部分において強く且つ周辺部分について弱いような場合、計測用仮想パターン12をずらす位置によって計測用仮想パターン12のサイズを変更することで、波面計測の精度の安定化が図られる。集光スポット16の大きさを大きくする場合、集光スポット16の強度分布を基にして中心演算をすることにより、集光スポット16の中心点を把握できる。このため、計測用仮想パターン12のサイズに関わらず、ダイナミックレンジの向上及び空間分解能の向上の両立が可能である。
上記実施形態では、複数の位相パターン11A~11Dのそれぞれにおいて、複数の計測用仮想パターン12が形成されているが、パターン生成部3は、複数の位相パターン11のそれぞれにおいて、単一の計測用仮想パターン12を形成してもよい。この場合も、単一の計測用仮想パターン12が互いに異なる位置にずれた複数の位相パターン11を生成することにより、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。また、単一の計測用仮想パターン12とする場合、計測光L1の集光スポット16の1単位当たりの検出可能範囲Rを十分に確保できる。例えば単一の計測用仮想パターン12とする場合、撮像領域14に単一の集光スポット16が形成されるため、撮像領域14の全領域を検出可能範囲Rとすることができる。したがって、ダイナミックレンジの更なる拡大が可能となる。
複数の位相パターン11による計測用仮想パターン12のずらし方(スキャン方向)は、任意に設定することができる。各位相パターン11に単一の計測用仮想パターン12が含まれる場合、例えば図16(a)に示すように、初期位置から-x方向(紙面左方向)及び+x方向(紙面右方向)に計測用仮想パターン12を往復動させ、-x方向及び+x方向の一回のスキャンごとに計測用仮想パターン12を+y方向にずらすようにしてもよい。
また、例えば図16(b)に示すように、初期位置から+y方向(紙面下方向)及び-y方向(紙面上方向)に計測用仮想パターン12を往復動させ、+y方向及び-y方向の一回のスキャンごとに計測用仮想パターン12を+x方向にずらすようにしてもよい。図16(a)と左右反転した方向に計測用仮想パターン12をずらしていってもよく、図16(b)と上下反転した方向に計測用仮想パターン12をずらしていってもよい。
各位相パターン11に複数の計測用仮想パターン12が含まれる場合、例えば図17(a)に示すように、初期位置から+x方向(紙面右方向)及び-x方向(紙面左方向)に計測用仮想パターン12のそれぞれを往復動させ、+x方向及び-x方向の一回のスキャンごとに計測用仮想パターン12を+y方向にずらすようにしてもよい。
また、例えば図17(b)に示すように、一対の計測用仮想パターン12,12のスキャン方向を互いに反転させる態様としてもよい。この場合、一方の計測用仮想パターン12については、初期位置から+x方向(紙面右方向)及び-x方向(紙面左方向)に往復動させ、+x方向及び-x方向の一回のスキャンごとに計測用仮想パターン12を+y方向にずらせばよい。他方の計測用仮想パターン12については、初期位置から-x方向(紙面左方向)及び+x方向(紙面右方向)に往復動させ、-x方向及び+x方向の一回のスキャンごとに計測用仮想パターン12を-y方向にずらせばよい。
図17(a)及び図17(b)の例においては、各計測用仮想パターン12のスキャン領域が互いに重ならないようになっている。これにより、入射光L0の入射領域全体の波面計測に要する位相パターン11のパターン数を削減でき、撮像回数も削減できるため、波面計測の速度を向上できる。図16(a)及び図16(b)の場合と同様に、図17(a)と左右反転した方向に各計測用仮想パターン12をずらしていってもよく、図17(b)と上下反転した方向に各計測用仮想パターン12をずらしていってもよい。位相パターン11に含まれる計測用仮想パターン12の数が更に多い場合でも、図17(a)及び図17(b)に示したずらし方を各計測用仮想パターン12に適用してもよい。
上記実施形態では、位相パターン11A~11Dにおいて隣り合う計測用仮想パターン12,12同士が計測用仮想パターン12の1つ分の間隔をもって離間しており、複数の位相パターン11を経時的に重ねた場合に、計測用仮想パターン12同士が重ならないようになっている。しかしながら、計測用仮想パターン12のずらし方はこれに限られない。例えばパターン生成部3は、図18に示すように、複数の位相パターン11を経時的に重ねた場合に、計測用仮想パターン12,12の一部同士が重なるように各位相パターン11を生成してもよい。
このような構成によれば、各位相パターン11における計測用仮想パターン12の配置数を少なくした場合であっても、撮像領域14における集光スポット16の配列ピッチを小さくできる。したがって、空間分解能の更なる向上が図られる。計測用仮想パターン12,12の一部同士の重なり幅に特に制限はない。計測用仮想パターン12,12の半分以上の領域が重なっていてもよく、計測用仮想パターン12,12の半分未満の領域が重なっていてもよい。
上記実施形態では、計測用仮想パターン12としてマイクロレンズ状のパターンを例示したが、計測用仮想パターン12の態様はこれに限られない。計測用仮想パターン12は、例えば回折格子状のパターンであってもよく、ホログラムアレイ状のパターンであってもよい。また、例えば図19(a)に示す10×10のマイクロレンズ状の計測用仮想パターン12に、図19(b)に示す10×10の光渦状の計測用仮想パターン12を重畳したものを用いてもよい。この場合、図19(c)に示すように、撮像領域14上の集光スポット16は、10×10の多点光渦ビームによって形成される。このような態様においても、計測用仮想パターン12を経時的にずらしていくことで、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。
1,1A,1B…波面計測装置、2…位相変調部、3…パターン生成部、4…撮像部、5…解析部、7…空間光変調器、11…位相パターン、12…計測用仮想パターン、13…変調可能領域、14…撮像領域、16…集光スポット、18…波面変調パターン、L0…入射光、L1…計測光。
Claims (10)
- 入射光を変調する空間光変調器を有する位相変調部と、
前記空間光変調器に入力される位相パターンを生成するパターン生成部と、
前記空間光変調器によって変調された前記入射光の少なくとも一部を計測光として撮像する撮像領域を有する撮像部と、
前記撮像部での撮像結果に基づいて前記入射光の波面を解析する解析部と、を備え、
前記パターン生成部は、前記空間光変調器によって変調された前記計測光の集光スポットが前記撮像領域の異なる位置に経時的にずれるように、計測用仮想パターンが互いに異なる位置にずれた複数の位相パターンを生成する波面計測装置。 - 前記パターン生成部は、前記複数の位相パターンのそれぞれにおいて、複数の計測用仮想パターンを形成する請求項1記載の波面計測装置。
- 前記パターン生成部は、前記複数の位相パターンのそれぞれにおいて、単一の計測用仮想パターンを形成する請求項1記載の波面計測装置。
- 前記パターン生成部は、前記複数の位相パターンを経時的に重ねた場合に、前記計測用仮想パターン同士が重ならないように各位相パターンを生成する請求項1~3のいずれか一項記載の波面計測装置。
- 前記パターン生成部は、前記複数の位相パターンを経時的に重ねた場合に、前記計測用仮想パターンの一部同士が重なるように各位相パターンを生成する請求項1~3のいずれか一項記載の波面計測装置。
- 前記パターン生成部は、前記複数の位相パターンのそれぞれに含まれる前記計測用仮想パターンが前記空間光変調器における変調可能領域の一部のみを占めるように各位相パターンを生成する請求項1~5のいずれか一項記載の波面計測装置。
- 前記パターン生成部は、前記複数の位相パターンを経時的に重ねた場合に、前記計測用仮想パターンが前記空間光変調器における前記入射光の入射領域の全体と重なるように各位相パターンを生成する請求項1~6のいずれか一項記載の波面計測装置。
- 前記パターン生成部は、前記解析部での解析結果に基づいて前記入射光に対する波面変調パターンを生成及び更新する請求項1~7のいずれか一項記載の波面計測装置。
- 前記入射光のうち、前記計測用仮想パターンにて変調された前記計測光の焦点距離と、前記計測用仮想パターン以外の部分にて変調された光の焦点距離とが互いに異なっている請求項1~8のいずれか一項記載の波面計測装置。
- 空間光変調器に位相パターンを入力するパターン入力ステップと、
前記位相パターンが入力された前記空間光変調器に入射光を入射させ、前記入射光を位相変調する位相変調ステップと、
前記空間光変調器によって変調された前記入射光の一部を計測光として撮像部の撮像領域で撮像する撮像ステップと、
前記撮像ステップでの撮像結果に基づいて前記入射光の波面を解析する解析ステップと、を備え、
前記パターン入力ステップでは、前記空間光変調器によって変調された前記計測光の集光スポットが前記撮像領域の異なる位置に経時的にずれるように、計測用仮想パターンが互いに異なる位置にずれた複数の位相パターンを入力する波面計測方法。
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