JP2023089871A - 樹脂組成物、成形体、および、電磁波吸収体 - Google Patents

樹脂組成物、成形体、および、電磁波吸収体 Download PDF

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Abstract

【課題】 電磁波の吸収率が高く、電磁波の反射率や吸収率が低く、かつ、耐ヒートショック性に優れた樹脂組成物、成形体、および、電磁波吸収体の提供。【解決手段】 熱可塑性樹脂と、導電性物質と、エラストマーおよび/またはシリコーン化合物を含む樹脂組成物あって、エラストマーおよびシリコーン化合物の合計含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対して、5~40.0質量部であり、樹脂組成物を2mm厚に成形したときの、周波数76.5GHzにおける式(A)に従って求められる吸収率が50~100%である、樹脂組成物。【選択図】 図1

Description

本発明は、樹脂組成物、成形体、および、電磁波吸収体に関する。
ミリ波レーダーは、30~300GHz、特に、60~90GHzの周波数の、1~10mmの波長を持つミリ波帯の電波を発信し、対象物に衝突して戻ってくる反射波を受信することによって障害物の存在や、対象物との距離や相対速度を検知するものである。ミリ波レーダーとしては、自動車の衝突防止用センサー、自動運転システム、道路情報提供システム、セキュリティシステム、医療・介護デバイス等幅広い分野の利用が検討されている。
かかるミリ波レーダー用の樹脂組成物として、特許文献1に記載のものが知られている。また、特許文献2には、電磁干渉遮蔽用または無線周波数干渉遮蔽用として用いられうる多機能性樹脂組成物が開示されている。
特開2019-197048号公報 特開2010-155993号公報
ここで、ミリ波レーダーにおいては、透過する電磁波が誤作動の最も大きな原因となる。そのため、電磁波の吸収率が高く、電磁波の反射率や吸収率が低い樹脂組成物が求められている。一方、かかる電磁波特性に優れた樹脂組成物にも、用途によっては、耐ヒートショック性が求められる。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、電磁波の吸収率が高く、電磁波の反射率や吸収率が低く、かつ、耐ヒートショック性に優れた樹脂組成物、成形体、および、電磁波吸収体を提供することを目的とする。
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、熱可塑性樹脂に導電性物質を配合し、さらに、エラストマーおよび/またはシリコーン化合物を配合しつつ、電磁波吸収率が所定の値以下となるように調整することにより上記課題は解決された。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>熱可塑性樹脂と、導電性物質と、エラストマーおよび/またはシリコーン化合物を含む樹脂組成物あって、前記エラストマーおよびシリコーン化合物の合計含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対して、3~40.0質量部であり、前記樹脂組成物を2mm厚に成形したときの、周波数76.5GHzにおける式(A)に従って求められる吸収率が50~100%である、樹脂組成物。
式(A)
Figure 2023089871000002
(上記式(A)中、Rはフリースペース法によって測定される反射減衰量を表し、Tはフリースペース法によって測定される透過減衰量を表す。)
<2>前記導電性物質が、カーボンナノチューブを含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記熱可塑性樹脂が、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>さらに、強化材を樹脂組成物中、5.0~60.0質量%の割合で含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>さらに、反応性化合物を樹脂組成物中、0.1~10.0質量%の割合で含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記熱可塑性樹脂の一部は、前記導電性物質のマスターバッチに由来する、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>前記樹脂組成物を2mm厚に成形したときの、周波数76.5GHzにおける式(B)に従って求められる反射率が40%以下である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
式(B)
Figure 2023089871000003
(上記式(B)中、Rは、フリースペース法によって測定される反射減衰量を表す。)
<8>前記樹脂組成物を2mm厚に成形したときの、周波数76.5GHzにおける式(C)に従って求められる透過率が25%以下である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
式(C)
Figure 2023089871000004
(上記式(C)中、Tはフリースペース法によって測定させる透過減衰量を表す。)
<9>前記樹脂組成物が、少なくとも前記エラストマーを含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10>電磁波吸収体用である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<11><1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形体。
<12><1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された電磁波吸収体。
本発明により、電磁波の吸収率が高く、電磁波の反射率や吸収率が低く、かつ、耐ヒートショック性に優れた樹脂組成物、成形体、および、電磁波吸収体を提供可能になった。
実施例における耐ヒートショック性の評価のために用いた直方体形状の鉄製インサート物の模式図である。 インサート物が支持ピンで支えられた金型キャビティーの断面説明図である。 支持ピン跡に2つのウエルドラインが発生しているインサート成形体の模式図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法により測定したポリスチレン換算値である。
本明細書において、反射減衰量および透過減衰量の単位は「dB」(デシベル)である。
本明細書で示す規格が年度によって、測定方法等が異なる場合、特に述べない限り、2021年1月1日時点における規格に基づくものとする。
本実施形態の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、導電性物質と、エラストマーおよび/またはシリコーン化合物を含む樹脂組成物あって、前記エラストマーおよびシリコーン化合物の合計含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対して、5~40.0質量部であり、前記樹脂組成物を2mm厚に成形したときの、周波数76.5GHzにおける式(A)に従って求められる吸収率が50~100%であることを特徴とする。このような構成とすることにより、電磁波の吸収率が高く、電磁波の反射率や吸収率が低く、かつ、耐ヒートショック性に優れた樹脂組成物が得られる。
式(A)
Figure 2023089871000005
(上記式(A)中、Rはフリースペース法によって測定される反射減衰量を表し、Tはフリースペース法によって測定される透過減衰量を表す。)
この理由は以下の通りであると推定される。熱可塑性樹脂に導電性物質(例えば、カーボンナノチューブ)を配合することによって、電磁波吸収性が一定レベルで達成される。また、エラストマーおよび/またはシリコーン化合物を配合することにより、耐ヒートショック性が達成される。さらに、本実施形態では、エラストマーおよび/またはシリコーン化合物を配合することにより、導電性物質が、エラストマーおよび/またはシリコーン化合物よりも、熱可塑性樹脂に相溶しやすい傾向にあることから、熱可塑性樹脂中で導電性物質をより効果的に分散させることができ、得られる樹脂組成物の吸収率をより高くできたと推測される。
<熱可塑性樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含む。ただし、後述するエラストマーにも該当する場合は、本明細書においては、エラストマーとして扱うものとする。
本実施形態で用いる熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂(熱可塑性ポリエステル樹脂);ポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状シクロオレフィン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリメタクリレート樹脂;等が好ましく例示される。
本実施形態の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
本実施形態においては、熱可塑性樹脂(例えば、ポリエステル樹脂(熱可塑性ポリエステル樹脂)、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリフェニレンエーテル樹脂)は直鎖ポリマーであってもよいし、分岐構造を有する分岐ポリマーであってもよい。本実施形態において、熱可塑性樹脂は、分岐構造が少ないことが好ましい。例えば、本実施形態で用いる熱可塑性樹脂は、分岐度DB(degree of branching)が、好ましくは10%未満、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下である。ここで分岐度は、DB(%)=100×(T+Z)/(T+Z+L)と規定され、前記式中、Tは、末端結合したモノマー単位の平均数であり、Zは、分岐を形成するモノマー単位の平均数であり、Lは、線状に結合したモノマー単位の平均数である(各物質のマクロ分子内において)。
本実施形態の樹脂組成物における熱可塑性樹脂の実施形態Aは、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂およびポリスチレン系樹脂の少なくとも1種を含むことであり、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリスチレン系樹脂から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、少なくともポリエステル樹脂を含むことがより好ましく、少なくともポリブチレンテレフタレート樹脂を含むことがさらに好ましい。
これらの樹脂成分は、通常、樹脂組成物に含まれる樹脂の主成分となる。従って、実施形態Aの熱可塑性樹脂の含有量(2種以上含む場合は合計量)は、樹脂組成物に含まれる樹脂成分の50~100質量%であることが好ましく、60~99.9質量%であることがより好ましい。
また、本実施形態の樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の一部は導電性物質のマスターバッチに由来することも好ましい。導電性物質をマスターバッチ化することにより、導電性物質の樹脂組成物内(特に上記熱可塑性樹脂の実施形態A)における、導電性物質の分散性をより向上させることができ、得られる樹脂組成物ないし成形体の電磁波吸収率をより向上させることができる。
本実施形態の樹脂組成物における熱可塑性樹脂の実施形態Bは、導電性物質のマスターバッチに由来する樹脂として好ましく用いられる熱可塑性樹脂であり、具体的には、ポリエステル樹脂およびポリスチレン系樹脂から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。実施形態Bの熱可塑性樹脂の含有量(2種以上含む場合は合計量)は樹脂組成物に含まれる樹脂成分の50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下であることが一層好ましく、12質量%であることがさらに一層好ましい。また、実施形態Bの熱可塑性樹脂の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましく、2.0質量%以上であることがさらに好ましく、3.0質量%以上であることがより一層好ましい。
本実施形態の樹脂組成物における熱可塑性樹脂の実施形態Cは、シリコーン化合物を含む場合における、シリコーン化合物のマスターバッチに由来する樹脂として好ましく用いられる熱可塑性樹脂であり、ポリオレフィン樹脂が好ましい。実施形態Cの熱可塑性樹脂の含有量(2種以上含む場合は合計量)は樹脂組成物に含まれる樹脂成分の20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、8質量%以下であることが一層好ましい。また、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましく、2.0質量%以上であることがさらに好ましく、3.0質量%以上であることがより一層好ましい。
本実施形態の樹脂組成物に含まれる樹脂成分は、通常90質量%以上が、好ましくは95質量%以上が、より好ましくは99質量%以上が、熱可塑性樹脂の実施形態A、さらには、実施形態B、および/または実施形態Cで占められることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物における熱可塑性樹脂の合計含有量は、樹脂組成物中、30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、45質量%以上であることが一層好ましく、50質量%以上であることがより一層好ましく、53質量%以上であることがさらに好ましく、55質量%以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、射出成形時の流動性がより向上する傾向にある。また、前記熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂組成物中、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましく、75質量%以下であることが一層好ましく、70質量%以下であることがより一層好ましく、65質量%以下であることがさらに一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂の機械強度が向上する傾向にある。
<<ポリエステル樹脂>>
ポリエステル樹脂としては、公知の熱可塑性ポリエステル樹脂を用いることができ、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましく、少なくともポリブチレンテレフタレート樹脂を含むことがより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物に用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位および1,4-ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有するポリエステル樹脂であって、ポリブチレンテレフタレート樹脂(ホモポリマー)の他に、テレフタル酸単位および1,4-ブタンジオール単位以外の、他の共重合成分を含むポリブチレンテレフタレート共重合体や、ホモポリマーとポリブチレンテレフタレート共重合体との混合物を含む。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸以外のジカルボン酸単位を1種または2種以上含んでいてもよい。
他のジカルボン酸の具体例としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、ビフェニル-3,3’-ジカルボン酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ビス(4,4’-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、1,4-シクロへキサンジカルボン酸、4,4’-ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸類、および、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。
本実施形態で用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位が全ジカルボン酸単位の80モル%以上を占めることが好ましく、90モル%以上を占めることがより好ましい。
ジオール単位としては、1,4-ブタンジオールの外に1種または2種以上の他のジオール単位を含んでいてもよい。
他のジオール単位の具体例としては、炭素数2~20の脂肪族または脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類等が挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノ一ル、4,4’-ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’-ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加ジオール等が挙げられる。また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
本実施形態で用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、1,4-ブタンジオール単位が全ジオール単位の80モル%以上を占めることが好ましく、90モル%以上を占めることがより好ましい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、上記した通り、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールとを重縮合させたポリブチレンテレフタレート単独重合体が好ましい。また、カルボン酸単位として、前記のテレフタル酸以外のジカルボン酸1種以上および/またはジオール単位として、前記1,4-ブタンジオール以外のジオール1種以上を含むポリブチレンテレフタレート共重合体であってもよい。ポリブチレンテレフタレート樹脂が、共重合により変性したポリブチレンテレフタレート樹脂である場合、その具体的な好ましい共重合体としては、ポリアルキレングリコール類、特にはポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂や、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が挙げられる。中でも、ポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂を用いることが好ましい。
なお、これらの共重合体は、共重合量が、ポリブチレンテレフタレート樹脂全セグメント中の1モル%以上、50モル%未満のものをいう。中でも、共重合量が、好ましくは2モル%以上50モル%未満、より好ましくは3~40モル%、さらに好ましくは5~20モル%である。このような共重合割合とすることにより、流動性、靱性、耐トラッキング性が向上しやすい傾向にあり、好ましい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、末端カルボキシル基量は、適宜選択して決定すればよいが、通常、60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることが好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。上記上限値以下とすることにより、耐アルカリ性および耐加水分解性が向上する傾向にある。末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造の生産性を考慮し、通常、10eq/ton以上である。
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mLにポリブチレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lのベンジルアルコール溶液を用いて滴定により測定する値である。末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、0.5dL/g以上であることが好ましく、0.6dL/g以上であることがより好ましい。固有粘度を0.5dL/g以上とすることにより、得られる樹脂組成物の機械強度がより向上する傾向にある。前記固有粘度は、2.00dL/gであることが好ましく、1.50dL/g以下であることがより好ましく、1.30dL/g以下であることがさらに好ましく、1.25dL/g以下であることがより一層好ましく、1.23dL/g以下であることがさらに一層好ましく、さらには、1.19dL/g以下、1.17dL/g以下、1.15dL/g以下、1.13dL/g以下、1.07dL/g以下、1.05dL/g以下、1.00dL/g以下、0.97dL/g以下であってもよい。2.0dL/g以下とすることにより、樹脂組成物の流動性がより向上し、成形性が向上する傾向にある。特に、導電性物質(特に、カーボンナノチューブ)をポリブチレンテレフタレート樹脂でマスターバッチしたものを、ポリブチレンテレフタレート樹脂が熱可塑性樹脂のメイン成分(例えば、樹脂成分の80質量%以上)となる樹脂組成物に配合する場合、メイン成分となるポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度が低い方が、導電性物質が分散しやすくなる。結果として、より電磁波吸収特性が向上する傾向にある。
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分またはこれらのエステル誘導体と、1,4-ブタンジオールを主成分とするジオール成分を、回分式または連続式で溶融重合させて製造することができる。また、溶融重合で低分子量のポリブチレンテレフタレート樹脂を製造した後、さらに窒素気流下または減圧下固相重合させることにより、重合度(または分子量)を所望の値まで高めることもできる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4-ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、連続式で溶融重縮合する製造法で得られたものが好ましい。
エステル化反応を遂行する際に使用される触媒は、従来から知られているものであってよく、例えば、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等を挙げることができる。これらの中で特に好適なものは、チタン化合物である。エステル化触媒としてのチタン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等を挙げることができる。
ポリエステル樹脂としては、上記の他、特開2010-174223号公報の段落番号0013~0016の記載を参酌でき、その内容は本明細書に組み込まれる。
<<ポリスチレン系樹脂>>
ポリスチレン系樹脂としては、スチレン系単量体の単独重合体、スチレン系単量体とスチレン系単量体と共重合可能な単量体との共重合体等が挙げられる。スチレン系単量体とは、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、メチルスチレン、tert-ブチルスチレンが挙げられる。本実施形態におけるポリスチレン系樹脂は、単量体単位のうち、50モル%以上がスチレン系単量体である。
ポリスチレン系樹脂としては、より具体的には、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル-エチレンプロピレン系ゴム-スチレン共重合体(AES樹脂)、スチレン-IPN型ゴム共重合体等の樹脂等が挙げられる。
本実施形態では、ポリスチレン系樹脂が、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル-エチレンプロピレン系ゴム-スチレン共重合体(AES樹脂)、スチレン-IPN型ゴム共重合体であることが好ましく、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)であることがより好ましく、ブタジエンゴム含有ポリスチレンであることがさらに好ましい。
ポリスチレン系樹脂がゴム成分を含む場合、ポリスチレン系樹脂中のゴム成分の含有量は3~70質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましく、7~30質量%がさらに好ましい。ゴム成分の含有量を3質量%以上とすることにより、耐衝撃性が向上する傾向にあり、50質量%以下とすることにより、難燃性が向上する傾向となり好ましい。また、ゴム成分の平均粒子径は、0.05~10μmであることが好ましく、0.1~6μmであることがより好ましく、0.2~3μmであることがさらに好ましい。平均粒子径が0.05μm以上であると耐衝撃性が向上しやすい傾向にあり、10μm以下であると外観が向上する傾向にあり好ましい。
ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、通常、50,000以上であり、好ましくは100,000以上であり、より好ましくは150,000以上であり、また、通常、500,000以下であり、好ましくは400,000以下であり、より好ましくは300,000以下である。また、数平均分子量(Mn)は、通常、10,000以上であり、好ましくは30,000以上であり、より好ましくは50,000以上であり、また、好ましくは500,000以下であり、より好ましくは300,000以下である。
ポリスチレン系樹脂の、JIS K7210(温度200℃、荷重5kgf)に準拠して測定されるメルトフローレイト(MFR)は、0.1~30g/10分であることが好ましく、0.5~25g/10分であることがより好ましい。MFRが0.1g/10分以上であると流動性が向上する傾向にあり、30g/10分以下であると耐衝撃性が向上する傾向にある。
このようなポリスチレン系樹脂の製造方法としては、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法あるいは塊状重合法等の公知の方法が挙げられる。
<<ポリカーボネート樹脂>>
ポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲンまたは炭酸ジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい単独重合体または共重合体である。ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造したものを使用することができる。
原料のジヒドロキシ化合物としては、芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましく、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4-ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
ポリカーボネート樹脂としては、上述した中でも、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される芳香族ポリカーボネート樹脂、または、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導される芳香族ポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマーまたはオリゴマーとの共重合体等の、芳香族ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体であってもよい。さらには、上述したポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、例えば、m-およびp-メチルフェノール、m-およびp-プロピルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、13,000以上であることがさらに好ましい。粘度平均分子量が5,000以上のものを用いることにより、得られる樹脂組成物の機械的強度がより向上する傾向にある。また、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、60,000以下であることが好ましく、40,000以下であることがより好ましく、30,000以下であることがさらに好ましい。60,000以下のものを用いることにより、樹脂組成物の流動性が向上し、成形性が向上する傾向にある。
ポリカーボネート樹脂を2種以上含む場合、混合物が上記範囲を満たすことが好ましい(以下、分子量について、同様に考える。)。
なお、本実施形態において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ粘度計を用いて、20℃にて、ポリカーボネート樹脂のメチレンクロライド溶液の粘度を測定し固有粘度([η])を求め、次のSchnellの粘度式から算出される値を示す。
[η]=1.23×10-4Mv0.83
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)および溶融法(エステル交換法)のいずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、溶融法で製造したポリカーボネート樹脂に、末端のOH基量を調整する後処理を施したポリカーボネート樹脂も好ましい。
<<ポリフェニレンエーテル樹脂>>
本実施形態では、公知のポリフェニレンエーテル樹脂を用いることができ、例えば、下記式で表される構成単位を主鎖に有する重合体(好ましくは、下記式で表される構成単位が末端基を除く全構成単位の90モル%以上を占める重合体)が例示される。ポリフェニレンエーテル樹脂は、単独重合体または共重合体のいずれであってもよい。
Figure 2023089871000006
(式中、2つのRaは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、第1級もしくは第2級アルキル基、アリール基、アミノアルキル基、ハロゲン化アルキル基、炭化水素オキシ基、またはハロゲン化炭化水素オキシ基を表し、2つのRbは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、第1級もしくは第2級アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、炭化水素オキシ基、またはハロゲン化炭化水素オキシ基を表す。ただし、2つのRaがともに水素原子になることはない。)
aおよびRbとしては、それぞれ独立に、水素原子、第1級もしくは第2級アルキル基、アリール基が好ましい。第1級アルキル基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-アミル基、イソアミル基、2-メチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-、3-もしくは4-メチルペンチル基またはヘプチル基が挙げられる。第2級アルキル基の好適な例としては、例えば、イソプロピル基、sec-ブチル基または1-エチルプロピル基が挙げられる。特に、Raは第1級もしくは第2級の炭素数1~4のアルキル基またはフェニル基であることが好ましい。Rbは水素原子であることが好ましい。
好適なポリフェニレンエーテル樹脂の単独重合体としては、例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジプロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-エチル-6-メチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-プロピル-1,4-フェニレンエーテル)等の2,6-ジアルキルフェニレンエーテルの重合体が挙げられる。共重合体としては、2,6-ジメチルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノール共重合体、2,6-ジメチルフェノール/2,3,6-トリエチルフェノール共重合体、2,6-ジエチルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノール共重合体、2,6-ジプロピルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノール共重合体等の2,6-ジアルキルフェノール/2,3,6-トリアルキルフェノール共重合体、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)にスチレンをグラフト重合させたグラフト共重合体、2,6-ジメチルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノール共重合体にスチレンをグラフト重合させたグラフト共重合体等が挙げられる。
本実施形態におけるポリフェニレンエーテル樹脂としては、特に、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテル、2,6-ジメチルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノールランダム共重合体が好ましい。また、特開2005-344065号公報に記載されているような末端基数と銅含有率を規定したポリフェニレンエーテル樹脂も好適に使用できる。
ポリフェニレンエーテル樹脂は、クロロホルム中で測定した30℃の固有粘度が0.2~0.8dL/gのものが好ましく、0.3~0.6dL/gのものがより好ましい。固有粘度を0.2dL/g以上とすることにより、成形体の機械的強度がより向上する傾向にあり、0.8dL/g以下とすることにより、樹脂組成物の流動性がより向上し、成形加工がより容易になる傾向にある。また、固有粘度の異なる2種以上のポリフェニレンエーテル樹脂を併用して、この固有粘度の範囲としてもよい。
本実施形態に使用されるポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法に従って、例えば、2,6-ジメチルフェノール等のモノマーをアミン銅触媒の存在下、酸化重合する方法を採用することができ、その際、反応条件を選択することにより、固有粘度を所望の範囲に制御することができる。固有粘度の制御は、重合温度、重合時間、触媒量等の条件を選択することにより達成できる。
<<ポリアミド樹脂>>
ポリアミド樹脂としては、ラクタムの開環重合、アミノカルボン酸の重縮合、ジアミンと二塩基酸の重縮合により得られる酸アミドを構成単位とする高分子であり、脂肪族ポリアミド樹脂であっても、半芳香族ポリアミド樹脂であってもよい。
具体的には、ポリアミド6、11、12、46、66、610、612、6I、6/66、6T/6I、6/6T、66/6T、66/6T/6I、9T、10T、詳細を後述するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド、ポリビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド等が挙げられる。なお、上記「I」はイソフタル酸成分、「T」はテレフタル酸成分を示す。また、ポリアミド樹脂としては、特開2011-132550号公報の段落番号0011~0013の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が好ましい。キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジアミン由来の構成単位は、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上がメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンの少なくとも1種に由来する。キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジカルボン酸由来の構成単位は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上が、炭素数が4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。炭素数が4~20のα,ω-直鎖脂肪族二塩基酸は、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカン二酸などが好適に使用でき、アジピン酸およびセバシン酸がより好ましい。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジアミン成分として用いることができるメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2-メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4-アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
上記炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸といったナフタレンジカルボン酸類の異性体等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
<導電性物質>
本実施形態の樹脂組成物は、導電性物質を含む。導電性物質を含むことにより、樹脂組成物に電磁波吸収性を付与することができる。
本実施形態に用いる導電性物質は、金属、金属酸化物、導電性炭素化合物および導電性ポリマーが例示され、導電性炭素化合物が好ましい。
金属としては、銅、ニッケル、銀、ステンレスからなるものが例示され、金属フィラーやステンレス繊維、磁性フィラーが好ましい。金属酸化物としては、アルミナ、酸化亜鉛が例示され、アルミナ繊維、酸化亜鉛ナノチューブが好ましい。導電性炭素化合物としては、カーボンブラック、ケッチェンカーボン、グラフェン、黒鉛、フラーレン、カーボンナノコイル、カーボンナノチューブ、カーボンファイバーが好ましく、カーボンナノチューブがより好ましい。
また、金属や金属酸化物、導電性炭素化合物で被覆された繊維なども好ましい。例えば、カーボンでコートされたチタン酸カリウムウィスカー、金属被覆繊維などが例示される。
本実施形態における導電性物質は、繊維状、チューブ状、ウィスカー状など、比較的細くて長い形状のものが好ましい。
導電性物質の直径(数平均繊維径)は、0.5nm以上であることが好ましく、1nm以上であることがより好ましく、3nm以上であることがさらに好ましく、また、50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、500nm以下であることがさらに好ましく、100nm以下であることが一層好ましい。
導電性物質のアスペクト比としては、良好な電磁波吸収性を付与する観点から、5以上が好ましく、50以上がより好ましい。上限は特に定めるものではないが、例えば、500以下である。
本実施形態に用いる導電性物質は、カーボンナノチューブが好ましい。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブおよび/または多層カーボンナノチューブであり、少なくとも多層カーボンナノチューブを含むことが好ましい。また、部分的にカーボンナノチューブの構造を有している炭素材料も使用できる。また、カーボンナノチューブは、円筒形状に限らず、1μm以下のピッチでらせんが一周するコイル状形状を有していてもよい。
カーボンナノチューブは、市販品として入手可能であり、例えば、バイエルマテリアルサイエンス社製、ナノシル社製、昭和電工株式会社製、ハイペリオン・キャタリシス・インターナショナル社から入手可能なカーボンナノチューブが挙げられる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリル、カーボンフィブリル、カーボンナノストラクチャ、カーボンナノファイバなどと称されることもある。
本実施形態の樹脂組成物において、導電性物質は、熱可塑性樹脂(好ましくは、上記実施形態Bの熱可塑性樹脂)でマスターバッチ化して配合されることが好ましい。熱可塑性樹脂でマスターバッチ化することにより、主成分となる熱可塑性樹脂(好ましくは、上記実施形態Aの熱可塑性樹脂)中への導電性物質の分散性を効果的に向上させることができる。
マスターバッチにおける導電性物質の濃度は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることが好ましく、また、98質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下であることが一層好ましい。上記上限値以下および下限値以上の範囲とすることにより、導電性物質の熱可塑性樹脂への分散性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物中の導電性物質(好ましくはカーボンナノチューブ)の含有量(樹脂組成物中の導電性物質の濃度)は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、0.6質量%以上であることが一層好ましく、1.0質量%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、電磁波吸収性が効果的に発揮される。また、本実施形態の樹脂組成物中の導電性物質(好ましくはカーボンナノチューブ)の含有量は、10.0質量%以下であることが好ましく、8.0質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以下であることがさらに好ましく、4.0質量%以下であることが一層好ましく、3.2質量%以下であることがより一層好ましく、3.0質量%以下であることがさらに一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂の流動性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、導電性物質を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<エラストマーおよび/またはシリコーン化合物>
本実施形態の樹脂組成物は、エラストマーおよび/またはシリコーン化合物を熱可塑性樹脂100質量部に対して、合計で5~40.0質量部含む。エラストマーおよび/またはシリコーン化合物を含むことにより、耐ヒートショック性を向上させることができる。特に、本実施形態の樹脂組成物は、少なくともエラストマーを含むことが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物におけるエラストマーおよびシリコーン化合物の合計含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、5.0質量部以上であり、7.0質量部以上であることが好ましく9.0質量部以上であることがより好ましく、10.0質量部以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物ないし成形体の耐ヒートショック性がより向上する傾向にある。また、前記エラストマーおよびシリコーン化合物の合計含有量の上限値は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、40.0質量部以下であり、35.0質量部以下であることが好ましく、30.0質量部以下であることがより好ましく、26.0質量部以下であることがさらに好ましく、23.0質量部以下であることが一層好ましく、20.0質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物ないし成形体が本来的有する機械強度を高いレベルで維持できる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、エラストマーおよびシリコーン化合物のいずれか一方を含んでいてもよく、それぞれ、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<エラストマー>>
本実施形態の樹脂組成物に用いるエラストマーとしては、熱可塑性樹脂に配合してその耐衝撃性を改良するのに用いられている熱可塑性エラストマーを用いればよく、例えばゴム性重合体やゴム性重合体にこれと反応する化合物を共重合させたものを用いることができる。
エラストマーのガラス転移温度はISO-11357準拠し、DSCによって測定した値が、0℃以下、特に-20℃以下であることが好ましい。
また、本明細書において、エラストマーにも該当し、シリコーン化合物や反応性化合物当にも該当する化合物は、エラストマーに区分されるものとする。
エラストマーの具体例としては、例えば、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(エチレン-メタクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体等)、エチレンと脂肪族ビニル化合物との共重合体、エチレンとプロピレンと非共役ジエンとのターポリマー、アクリルゴム(ポリブチルアクリレート、ポリ(2-エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート-2-エチルヘキシルアクリレート共重合体等)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ジエン系共重合体(スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリル-ブタジエンゴム等)、エチレンと炭素数3以上のα-オレフィンとの共重合体(エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン・オクテン共重合体等)、シリコーン系ゴム(ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴム)等が挙げられ、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体が好ましい。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸を意味する。
また、エラストマーの他の例としては、ゴム性重合体に単量体化合物を重合した共重合体が挙げられる。この単量体化合物としては例えば、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物等が挙げられる。また、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β-不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)も挙げられる。これらの単量体化合物は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
エラストマーとしては、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体が好ましく、エチレン-アルキルアクリレート共重合体が好ましく、特にエチレン-ブチルアクリレート共重合体等が好ましい。ブチルアクリレートの含有量は、耐衝撃性改良、耐ヒートショック性改良の点から、10質量%以上が好ましく、中でも20質量%以上がより好ましく、60質量%以下が好ましい。また、エチレン-ブチルアクリレート共重合体のMFRは、流動性改良の点から10g/10分以上が好ましく、中でも20g/10分以上が好ましく、500g/10分以下が好ましい。MFRは、190℃、荷重2.16kgの条件で測定した値とする。
このようなエラストマーを使用することにより、耐衝撃性、流動性、耐ヒートショック性が良好となる傾向にあり好ましい。
本実施形態の樹脂組成物がエラストマーを含む場合、その含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、5.0質量部以上であることが好ましく、10.0質量部以上であることがより好ましく、15.0質量部以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、耐ヒートショック性がより向上する傾向にある。また、前記エラストマーの含有量の上限値は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、質量部以下であることが好ましく、35.0質量部以下であることがより好ましく、30.0質量部以下であることがさらに好ましく、25.0質量部以下であることが一層好ましく、23.0質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、耐熱老化性や剛性、さらには流動性、難燃性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、エラストマーを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<シリコーン化合物>>
本実施形態の樹脂組成物に用いるシリコーン化合物としては、特に定めるものでは無い。
本実施形態の樹脂組成物に用いるシリコーン化合物は、重量平均分子量が10,000~80,000であることが好ましい。また、本実施形態においては、重量平均分子量が10,000~80,000のシリコーン化合物と、熱可塑性樹脂とを含むマスターバッチを配合することがより好ましい。具体的には、シリコーン化合物を熱可塑性樹脂に分散させたペレットの形態のマスターバッチとして配合することが好ましい。ここで重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラム(GPC))に従って測定された値とする。
シリコーン化合物を液状で組成物に配合すると、成形体中に均一に微分散されることになるため、成形体表面でのシリコーン化合物の存在確率が低くなり、耐アルカリ性や耐加水分解性が低くなったり、表面にシリコーン化合物がブリードアウトしやすいため、表面外観が悪化する場合がある。一方、シリコーン化合物をマスターバッチとして樹脂組成物に配合すると、成形体の表面でのシリコーン化合物の存在確率が高くなり、耐加水分解性や耐アルカリ性が向上し、また金属と樹脂の複合体とした場合であっても、残留応力が大幅に低減するため、耐ヒートショックを飛躍的に向上させることができる。
本実施形態においては、上述の通り、重量平均分子量(Mw)が10,000~80,000のシリコーン化合物を使用することが好ましいが、より好ましくは20,000以上、さらに好ましくは30,000以上、一層好ましくは40,000以上であり、また、より好ましくは75,000以下、さらに好ましくは70,000以下、一層好ましくは65,000以下である。
本実施系形態のマスターバッチに使用されるシリコーン化合物は、シロキサン結合を骨格とし、そのケイ素に有機基などが直接結合した有機ケイ素化合物であることが好ましい。ケイ素に直接結合した有機基としては、メチル基、エチル基、フェニル基、ビニル基、トリフルオロプロピル基およびそれらを併用したものなどが知られているが、これらを有する公知のシロキサン化合物を特に制限なく使用できる。また有機基の一部がエポキシ基、アミノ基、ポリエーテル基、カルボキシル基、メルカプト基、エステル基、クロロアルキル基、炭素数3個以上のアルキル基、ヒドロキシル基などを有する置換基で置換されたシロキサン化合物も使用可能である。シロキサン化合物は、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
シロキサン化合物は、例えば、シリコーンオイル、シリコーンエラストマー、シリコーンレジンに分類される(要すれば、「シリコーン材料ハンドブック」東レ・ダウコーニング社編、1993年8月発行を参照)が、本実施形態においては、上記いずれも使用可能であるが、シリコーンレジンやシリコーンオイルが好ましい。
シリコーンオイルの具体例としては、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フロロシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪族エステル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボン酸変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイルなどのオイル状シリコーン類が挙げられる。
また、本実施形態のマスターバッチに使用される熱可塑性樹脂としては、樹脂成分の主成分となる熱可塑性樹脂と非相溶性の樹脂が好ましい。例えば、樹脂成分の主成分となる熱可塑性樹脂がポリブチレンテレフタレート樹脂である場合、マスターバッチとしてポリブチレンテレフタレート樹脂と非相溶の樹脂を使用することで、ポリブチレンテレフタレート中に分散した非相溶樹脂の中に高濃度でシリコーン化合物が存在することで、耐アルカリ性等の効果がより発現しやすくなる。この場合に使用できる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリメタクリレート樹脂等が例示される。本実施形態の種々の効果を発現させるためには、上記の中でも特にポリオレフィン樹脂が好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、各種のポリオレフィン樹脂が使用できるが、中でも、エチレンまたはプロピレンの単独重合体、エチレンと、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテンまたは酢酸ビニルとのエチレン系共重合体等のポリエチレン系樹脂、プロピレンと、ブテン、ヘキセン、またはオクテンとのプロピレン系共重合体等のポリプロピレン系樹脂が好ましく挙げられる。ポリエチレン系樹脂としては、具体的には高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等が好ましく挙げられる。ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体等が好ましく挙げられる。
これらの中では、ポリエチレン系樹脂が好ましく、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)がより好ましく、特に低密度ポリエチレン(LDPE)が好ましい。
ポリオレフィン樹脂の製造方法や重合触媒に制限はなく、溶液法、バルク法、気相、高圧法等の各種公知の製法、また、ラジカル開始剤やチーグラー触媒、クロム系触媒、メタロセン系触媒等のいずれによるものであってもよい。
また、ポリオレフィン樹脂は、1種を単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
マスターバッチの製造方法は、従来公知の方法を採用することができ、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、短軸または多軸の押出機などを使用して混合する方法が挙げられるが、中でも、ヘンシェルミキサー、短軸または多軸の押出機を使用する方法が好ましく、特に、短軸または多軸の押出機を用い、溶融混練しペレット化する方法が好ましい。このようにマスターバッチ化した上で、製造時に溶融混練することで、成形体の機械的特性、摺動性がより良好になる傾向にある。
シリコーン化合物と熱可塑性樹脂を含むマスターバッチは、市販のものを使用することもでき、例えば、東レ・ダウコーニング社製、商品名「シリコーンコンセントレート」のシリーズ等の中から選択して使用することもできる。
シリコーン化合物と熱可塑性樹脂を含むマスターバッチ中の、シリコーン化合物の含有量は、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、また、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましく、50質量%以下であることが一層好ましく、40質量%以下であることがより一層好ましく、35質量%以下であることがさらに一層好ましく、30質量%以下であってもよい。
本実施形態の樹脂組成物がシリコーン化合物を含む場合、その含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.4質量部以上であることが好ましく、0.6質量部以上であることがより好ましく、0.8質量部以上であることがさらに好ましく、1.0質量部以上であることが一層好ましく、1.2質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、耐ヒートショック性がより向上する傾向にある。また、前記シリコーン化合物の含有量の上限値は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、3.0質量部以下であることが好ましく、2.5質量部以下であることがより好ましく、2.0質量部以下であることがさらに好ましく、1.8質量部以下であることが一層好ましく、1.5質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物を溶融混練により製造する場合の押出性や、成形加工性が向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、シリコーン化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<安定剤>
本実施形態の樹脂組成物は、安定剤を含んでいてもよい。安定剤は、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物、硫黄系安定剤等が例示される。これらの中でも、リン系化合物および硫黄系安定剤が好ましい。
安定剤としては、具体的には、特開2018-070722号公報の段落0046~0057の記載、特開2019-056035号公報の段落0030~0037の記載、国際公開第2017/038949号の段落0066~0078の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物は、安定剤を熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上含むことが好ましく、0.05質量部以上含むことがより好ましく、0.08質量部以上含むことがさらに好ましい。また、前記安定剤の含有量の上限値は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、3.0質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以下であることがより好ましく、1.0質量部以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、安定剤を1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<離型剤>
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を含むことが好ましい。
離型剤は、公知の離型剤を広く用いることができ、脂肪族カルボン酸のエステル化物、パラフィンワックスおよびポリエチレンワックスが好ましく、ポリエチレンワックスがより好ましい。
離型剤としては、具体的には、特開2013-007058号公報の段落0115~0120の記載、特開2018-070722号公報の段落0063~0077の記載、特開2019-123809号公報の段落0090~0098の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上含むことが好ましく、0.08質量部以上含むことがより好ましく、0.2質量部以上含むことがさらに好ましい。また、前記離型剤の含有量の上限値は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、5.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以下であることがより好ましく、1.0質量部以下であることがさらに好ましく、0.8質量部以下であることが一層好ましい。
樹脂組成物は、離型剤を1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<反応性化合物>
本実施形態の樹脂組成物は、反応性化合物を含んでいてもよく、反応性化合物を樹脂組成物中、0.1~10.0質量%の割合で含むことが好ましい。反応性化合物を含むことにより、成形体の機械的強度が向上し、また、耐加水分解性に優れた樹脂組成物が得られる。
本実施形態で用いる反応性化合物は、エポキシ基を有する化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン基を有する化合物およびオキサジン基を有する化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、エポキシ基を有する化合物を含むことがより好ましい。
<<エポキシ基を有する化合物(エポキシ樹脂)>>
エポキシ基を有する化合物は、一分子中に一個以上のエポキシ基を有する化合物であり、グリシジル化合物、エポキシ基を有する芳香族環含有化合物、エポキシ基を有する脂環式化合物などが挙げられ、エポキシ基を有する芳香族環含有化合物を少なくとも含むことが好ましい。
エポキシ基を有する化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物(ビスフェノールAジグリシジルエーテルを含む)、ビスフェノールF型エポキシ化合物(ビスフェノールFジグリシジルエーテルを含む)、ビフェニル型エポキシ化合物(ビス(グリシジルオキシ)ビフェニルを含む)、レゾルシン型エポキシ化合物(レゾルシノールジグリシジルエーテルを含む)、ノボラック型エポキシ化合物、安息香酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、オルトフタル酸ジグリシジルエステルなどの芳香族環を有するエポキシ化合物、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテルなどの(ジ)グリシジルエーテル類、ソルビン酸グリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油などのパラフィン系(例えば飽和脂肪酸系)またはオレフィン系(例えば不飽和脂肪酸系)の(ジ)グリシジルエステル類、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシドなどの脂環式エポキシ化合物類等が挙げられる。
中でも、側鎖にグリシジル基を含有するスチレン-アクリル共重合体、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物等が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ化合物がより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物における反応性化合物(好ましくは、エポキシ基を有する化合物(エポキシ樹脂))の含有量は、樹脂組成物中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.3質量%以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、耐加水分解性がより向上する傾向にある。また、前記反応性化合物(好ましくは、エポキシ基を有する化合物(エポキシ樹脂))の含有量は、樹脂組成物中、10.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることがさらに好ましく、2.0質量%以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、溶融粘度がより安定し、成形性が向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、反応性化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<強化材>
本実施形態の樹脂組成物は、強化材を含んでいてもよく、強化材を樹脂組成物中、5.0~60.0質量%の割合で含むことが好ましい。
本実施形態で用いることができる強化材は、その種類等、特に定めるものではなく、繊維、フィラー、ビーズ等のいずれであってもよいが、繊維が好ましい。
また、上記導電性物質にも該当し、強化材にも該当する物質については、本発明においては、導電性物質とする。
強化材が繊維である場合、短繊維であってもよいし、長繊維であってもよい。
強化材が短繊維やフィラー、ビーズ等の場合、本実施形態の樹脂組成物は、ペレット、前記ペレットを粉末化したもの、および前記ペレットから成形されるフィルム等が例示される。
強化材の原料は、ガラス、炭素(炭素繊維等)、アルミナ、ボロン、セラミック、金属(スチール等)等の無機物、および、植物(ケナフ(Kenaf)、竹等を含む)、アラミド、ポリオキシメチレン、芳香族ポリアミド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、超高分子量ポリエチレン等の有機物などが挙げられ、ガラスが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、強化材として、ガラス繊維を含むことが好ましい。
ガラス繊維は、Aガラス、Cガラス、Eガラス、Rガラス、Dガラス、Mガラス、Sガラスなどのガラス組成から選択され、特に、Eガラス(無アルカリガラス)が好ましい。
ガラス繊維は、長さ方向に直角に切断した断面形状が真円状または多角形状の繊維状の材料をいう。ガラス繊維は、単繊維の数平均繊維径が通常1~25μm、好ましくは5~17μmである。数平均繊維径を1μm以上とすることにより、樹脂組成物の成形加工性がより向上する傾向にある。数平均繊維径を25μm以下とすることにより、得られる成形体の外観が向上し、補強効果も向上する傾向にある。ガラス繊維は、単繊維または単繊維を複数本撚り合わせたものであってもよい。
ガラス繊維の形態は、単繊維や複数本撚り合わせたものを連続的に巻き取ったガラスロービング、長さ1~10mmに切りそろえたチョップドストランド(すなわち、数平均繊維長1~10mmのガラス繊維)、長さ10~500μm程度に粉砕したミルドファイバー(すなわち、数平均繊維長10~500μmのガラス繊維)などのいずれであってもよいが、長さ1~10mmに切りそろえたチョップドストランドが好ましい。ガラス繊維は、形態が異なるものを併用することもできる。
また、ガラス繊維としては、異形断面形状を有するものも好ましい。この異形断面形状とは、繊維の長さ方向に直角な断面の長径/短径比で示される扁平率が、例えば、1.5~10であり、中でも2.5~10、さらには2.5~8、特に2.5~5であることが好ましい。
ガラス繊維は、本実施形態の樹脂組成物の特性を大きく損なわない限り、樹脂成分との親和性を向上させるために、例えば、シラン系化合物、エポキシ系化合物、ウレタン系化合物などで表面処理したもの、酸化処理したものであってもよい。
本実施形態の樹脂組成物は、強化材(好ましくはガラス繊維)を含む場合、その含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、10.0質量部以上であることが好ましく、20.0質量部以上であることがより好ましく、30.0質量部以上であることがさらに好ましく、40.0質量部以上であることが一層好ましく、45.0質量部以上であることがより一層好ましく、50.0質量部以上であることがさらに一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形体の機械的強度がより上昇する傾向にある。また、前記強化材(好ましくはガラス繊維)の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、100.0質量部以下であることが好ましく、90.0質量部以下であることがより好ましく、85.0質量部以下であることがさらに好ましく、80.0質量部以下であることが一層好ましく、75.0質量部以下であることがより一層好ましく、70.0質量部以下であることがさらに一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形体外観が向上し、かつ、樹脂組成物の流動性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物が強化材(好ましくはガラス繊維)を含む場合、その含有量は、樹脂組成物中、5.0質量%以上であることが好ましく、15.0質量%以上であることがより好ましく、20.0質量%以上であることがさらに好ましく、25.0質量%以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形体の機械的強度がより向上する傾向にある。また、前記強化材(好ましくはガラス繊維)の含有量は、樹脂組成物中、60.0質量%以下であることがより好ましく、45.0質量%以下であることがさらに好ましく、40.0質量%以下であることがさらに好ましく、35.0質量%以下であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、機械的強度がより上昇する傾向にある。また、前記上限値以下とすることにより、成形体の外観が向上し、かつ、樹脂組成物の溶融時の流動性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は強化材(好ましくはガラス繊維)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記したもの以外に他の成分を含有していてもよい。他の成分の例を挙げると、各種樹脂添加剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。
具体的には、上述した安定剤および離型剤の他、着色剤(導電性物質に該当するものを除く)、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、導電性物質、エラストマーおよび/またはシリコーン化合物、ならびに、選択的に配合される他の成分の合計が100質量%となるように調整される。本実施形態の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、導電性物質、エラストマーおよび/またはシリコーン化合物、ならびに、必要に応じ配合される強化材の合計が樹脂組成物の95質量%以上を占めることが好ましい。また、本実施形態の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、導電性物質、エラストマーおよび/またはシリコーン化合物、強化材、安定剤、離型剤、および、反応性化合物の合計が樹脂組成物の99質量%以上を占めることが好ましい。
<樹脂組成物の物性>
本実施形態の樹脂組成物は、電磁波の吸収率が高いことが好ましい。
具体的には、本実施形態の樹脂組成物は、2mm厚(好ましくは、100mm×100mm×2mm厚さ)に成形したときの、周波数76.5GHzにおける式(A)に従って求められる吸収率が50~100%である。
式(A)
Figure 2023089871000007
(上記式(A)中、Rはフリースペース法によって測定される反射減衰量を表し、Tはフリースペース法によって測定させる透過減衰量を表す。)
前記吸収率の達成手段としては、導電性物質の種類や配合量を選択すること、熱可塑性樹脂に加え、エラストマーおよび/またはシリコーン化合物を用いること等によって達成される。
前記吸収率は、53%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましく、58%以上であることがさらに好ましく、60%以上であることが一層好ましく、65%以上であることがさらに一層好ましい。上限は、100%が理想であるが、90%以下であっても十分に要求性能を満たすものである。
本実施形態の樹脂組成物は、電磁波の反射率が低いことが好ましい。
具体的には、本実施形態の樹脂組成物は、2mm厚(好ましくは、100mm×100mm×2mm厚さ)に成形したときの、周波数76.5GHzにおける式(B)に従って求められる反射率が40%以下であることが好ましい。
式(B)
Figure 2023089871000008
(上記式(B)中、Rは、フリースペース法によって測定される反射減衰量を表す。)
前記反射率は、35%以下であることが好ましく、33%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましく、27%以下であることが一層好ましく、20%以下であってもよい。下限は、0%が理想であるが、5%以上であっても十分に要求性能を満たすものである。
さらに、本実施形態の樹脂組成物は、65.0GHz~85.0GHzにおける最も高い反射率と、最も低い反射率の差(Δ反射率)が小さい方が好ましい。具体的には、Δ反射率は、15%以下であることが好ましく、12%以下であることがより好ましく、11%以下であることがさらに好ましく、9%以下であることがさらに好ましく、8%以下であることが一層好ましい。Δ反射率の下限は0%が理想であるが、1%以上以上でも要求性能を満たすものである。
本実施形態の樹脂組成物は、透過率が低いことが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、2mm厚(好ましくは、100mm×100mm×2mm厚さ)に成形したときの、周波数76.5GHzにおける式(C)に従って求められる透過率が25%以下であることが好ましい。
式(C)
Figure 2023089871000009
(上記式(C)中、Tはフリースペース法によって測定させる透過減衰量を表す。)
前記透過率は、23%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、15%以下、さらには、10%以下であってもよい。下限は、0%が理想であるが、1%以上であっても十分に要求性能を満たすものである。
本実施形態の樹脂組成物は、上記式(A)に従って求められる吸収率、上記式(B)に従って求められる反射率、および、上記式(C)に従って求められる透過率のいずれをも満たすことが好ましい。さらに加えて、上記Δ反射率も満たすことが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、また、2mm厚(好ましくは、100mm×100mm×2mm厚さ)に成形したときのIEC60093に準拠した表面抵抗が1.0×108Ω以上であることが好ましく、1.0×109Ω以上であることがより好ましく、1.0×1010Ω以上であることがさらに好ましく、1.0×1011Ω以上であることが一層好ましく、1.0×1012Ω以上であることがより一層好ましく、1.0×1013Ω以上であることがさらに一層好ましく、1.0×1014Ω以上であることが特に一層好ましく、また、1.0×1016Ω以下であることが好ましく、1.0×1015Ω以下であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、得られる成形体の電磁波吸収率がより高くなる傾向にある。
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物の常法の製法によって製造できる。例えば、熱可塑性樹脂と導電性物質とエラストマーおよび/またはシリコーン化合物と、必要により配合される他の成分を溶融混練することによって得られる。導電性物質は熱可塑性樹脂でマスターバッチ化して配合することが好ましい。導電性物質を熱可塑性樹脂でマスターバッチ化することにより、熱可塑性樹脂中への導電性物質の分散性を効果的に向上させることができる。マスターバッチにける導電性物質の濃度は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることが好ましく、また、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下であることが一層好ましい。上記上限値以下および下限値以上の範囲とすることにより、導電性物質の熱可塑性樹脂への分散性がより向上する傾向にある。
押出機には、各成分をあらかじめ混合して一度に供給してもよいし、各成分を予め混合することなく、ないしはその一部のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給してもよい。押出機は、一軸押出機であっても、二軸押出機であってもよい。
また、強化材(例えば、ガラス繊維)を配合する場合、押出機のシリンダー途中のサイドフィーダーから供給することが好ましい。
溶融混練に際しての加熱温度は、通常、170~350℃の範囲から適宜選ぶことができる。
<成形体の製造方法>
成形体、特に、電磁波吸収体は、本実施形態の樹脂組成物から形成される。
本実施形態における成形体の製造方法は、特に限定されず、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられ、中でも射出成形法が好ましい。
<用途>
本実施形態の電磁波吸収体は、本実施形態の樹脂組成物から形成される。すなわち、本実施形態の樹脂組成物は、電磁波吸収体用(電磁波吸収部材用ともいう)であることが好ましく、少なくとも周波数60~90GHzの電磁波吸収体用であることがより好ましく、少なくとも周波数70~80GHzの電磁波吸収体用であることがさらに好ましい。このような電磁波吸収体は、好ましくは、レーダー用途に用いられる。具体的には、ミリ波レーダー用の筐体、カバー等に用いられる。
本実施形態の電磁波吸収体は、ブレーキ自動制御装置、車間距離制御装置、歩行者事故低減ステアリング装置、誤発信抑制制御装置、ペダル踏み間違い時加速抑制装置、接近車両注意喚起装置、車線維持支援装置、被追突防止警報装置、駐車支援装置、車両周辺障害物注意喚起装置などに用いられる車載用ミリ波レーダー;ホーム監視/踏切障害物検知装置、電車内コンテンツ伝送装置、路面電車/鉄道衝突防止装置、滑走路内異物検知装置などに用いられる鉄道・航空用ミリ波レーダー;交差点監視装置、エレベータ監視装置などの交通インフラ向けミリ波レーダー;各種セキュリティ装置向けミリ波レーダー;子供、高齢者見守りシステムなどの医療・介護用ミリ波レーダー;各種情報コンテンツ伝送用ミリ波レーダー;等に好適に利用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
1.原料
以下の原料を用いた。下記表1において、PBTはポリブチレンテレフタレート樹脂を、CNTはカーボンナノチューブをそれぞれ意味している。
Figure 2023089871000010
実施例1~4、比較例1~3
<樹脂組成物(ペレット)の製造>
表2に示すように、強化材以外の表1に記載の各成分(各成分の割合は質量部である)をステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合した。得られた混合物を、噛み合い型同方向二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX-30α」、スクリュー径32mm、L/D=42)にメインフィード口から供給した。第一混練部のバレル設定温度を260℃に設定して可塑化し、強化材(ガラス繊維)は表2に示す割合でサイドフィーダーより供給し、強化材を添加した後のバレル温度を250℃に設定し、吐出量40kg/h、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練し、ノズル数4穴(円形(φ4mm)、長さ1.5cm)の条件でストランドとして押出した。押出したストランドを水槽に導入して冷却し、ペレタイザーに挿入してカットすることで樹脂組成物(ペレット)を得た。
<耐ヒートショック性>
上記で得られたペレットを120℃で6時間乾燥後、日本製鋼所社製の射出成形機「J50ADS」を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度80℃で、図1に示す形状の鉄片1(SUS、8mm×80mm×厚さ1mm)を、樹脂で包含するように図2に示すように、射出成形し、インサート成形品を作製した。図1、図2における尺度は正確ではない。図1において、1は鉄片を、図2において、2は支持ピンを、3は金属内にインサートされた鉄片を、4はキャビティーをそれぞれ示している。
このインサート成形品は、図3に示すようにエッジ部分(長円形で示した部分)を有しており、この辺に沿ってウェルドを形成する。図3の5は支持ピン跡であり、6はゲート位置を示している。このインサート成形体を用いて、エスペック社製、熱衝撃試験装置「TSA-103ES」により、耐ヒートショック試験を行った。
耐ヒートショック試験の条件は、-40℃、1時間の環境下に静置した後、150℃、1時間の環境下に静置することを1サイクル(cycle)とし、ヒートショック試験機にかけ、3個の金属インサート成形体のエッジ部分に割れが発生するまでのサイクル数の平均値(単位:cycle)で表示した。
<76.5GHz電磁波吸収率、反射率、透過率>
上記で得られたペレットを用い、射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX80」)にて、シリンダー設定温度260℃、金型温度80℃で射出成形し、100mm×100mm×2mm厚の試験片を得た。得られた試験片を用いて、周波数76.5GHzにおける、式(A)に従って求められる吸収率、式(B)に従って求められる反射率、および、式(C)に従って求められる透過率を以下の通り測定した。
また、Δ反射率は周波数65.0GHz~85.0GHzにおける反射率の最も高い値と、最も低い値の差である。
測定に際し、キーサイト社製のネットワークアナライザ「N5252A」を用いた。
なお、射出成形体のTD(トランスバースディレクション)方向が、電場方向と平行になる向きに試験片を設置して測定した。
式(A)
Figure 2023089871000011
(上記式(A)中、Rはフリースペース法によって測定される反射減衰量を表し、Tはフリースペース法によって測定させる透過減衰量を表す。)
式(B)
Figure 2023089871000012
(上記式(B)中、Rは、フリースペース法によって測定される反射減衰量を表す。)
式(C)
Figure 2023089871000013
(上記式(C)中、Tはフリースペース法によって測定させる透過減衰量を表す。)
Figure 2023089871000014
上記結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物は、耐ヒートショック性に優れ、かつ、電磁波特性に優れていた(実施例1~4)。特に、耐ヒートショック性を落とさずに、高い電磁波特性を達成できる点で価値が高い。
これに対し、エラストマーおよび/またはシリコーン化合物を含まない場合(比較例1)、耐ヒートショック性が劣っていた。また、導電性物質として、カーボンブラックを用いた場合(比較例2、3)、電磁波吸収率が低くなってしまった。さらに、電磁波透過率も高かった。
1 鉄片
2 支持ピン
3 金型内にインサートされた鉄片
4 キャビティー
5 支持ピン跡
6 ゲート位置

Claims (12)

  1. 熱可塑性樹脂と、導電性物質と、エラストマーおよび/またはシリコーン化合物を含む樹脂組成物あって、
    前記エラストマーおよびシリコーン化合物の合計含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対して、5~40.0質量部であり、
    前記樹脂組成物を2mm厚に成形したときの、周波数76.5GHzにおける式(A)に従って求められる吸収率が50~100%である、
    樹脂組成物。
    式(A)
    Figure 2023089871000015
    (上記式(A)中、Rはフリースペース法によって測定される反射減衰量を表し、Tはフリースペース法によって測定される透過減衰量を表す。)
  2. 前記導電性物質が、カーボンナノチューブを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記熱可塑性樹脂が、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. さらに、強化材を樹脂組成物中、5.0~60.0質量%の割合で含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. さらに、反応性化合物を樹脂組成物中、0.1~10.0質量%の割合で含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. 前記熱可塑性樹脂の一部は、前記導電性物質のマスターバッチに由来する、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. 前記樹脂組成物を2mm厚に成形したときの、周波数76.5GHzにおける式(B)に従って求められる反射率が40%以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
    式(B)
    Figure 2023089871000016
    (上記式(B)中、Rは、フリースペース法によって測定される反射減衰量を表す。)
  8. 前記樹脂組成物を2mm厚に成形したときの、周波数76.5GHzにおける式(C)に従って求められる透過率が25%以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
    式(C)
    Figure 2023089871000017
    (上記式(C)中、Tはフリースペース法によって測定させる透過減衰量を表す。)
  9. 前記樹脂組成物が、少なくとも前記エラストマーを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  10. 電磁波吸収体用である、請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  11. 請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された成形体。
  12. 請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された電磁波吸収体。
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