JP2023088026A - 水系インクジェットインク、および画像形成方法 - Google Patents

水系インクジェットインク、および画像形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】フィルターを複数回通過した水系インクジェットインクを、インクジェットヘッドのノズルから吐出する画像形成方法において、上記フィルターの目詰まりを抑制することができ、かつ、インクの保存安定性、および吐出安定性を向上させることができる水系インクジェットインクを提供すること。【解決手段】上記水系インクジェットインクは、フィルターを複数回通過したインクを、インクジェットヘッドのノズルから吐出する画像形成方法に用いられる水系インクジェットインクであって、前記インクジェットインクは、顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤と、を有し、条件(a)および条件(b)を満たす。条件(a) 前記顔料分散剤は、SP値の水素結合成分が8(MPa)1/2以上23(MPa)1/2以下である条件(b) 前記有機溶剤は、SP値の水素結合成分が18(MPa)1/2以下である溶媒を含む【選択図】図1

Description

本発明は、水系インクジェットインク、および画像形成方法に関する。
版を用いないデジタル印刷を可能とするインクジェット法は、簡易かつ安価に画像を形成できることから、各種印刷分野で用いられている。
インクジェット法に用いられるインクには、水と少量の有機溶剤から構成される水系インク、有機溶剤を含むが実質的に水を含まない非水系インク、室温では固体のインクを加熱溶融して印字するホットメルトインク、印字後に活性線を照射されることにより硬化する活性線硬化性インク等、複数の種類があり、これらのインクは用途に応じて使い分けられている。この中で、水系インクは一般に臭気が少なく安全性が高い。
水系インクに着色剤として顔料を用いるとき、インク中で顔料粒子が凝集して、インクの保存安定性や吐出安定性が低下することがある。上記保存安定性の低下や吐出安定性の低下を抑制するために、顔料分散剤をインクに含ませることが知られている。
例えば、特許文献1には、有機溶剤を、インク全量に対して、1.0質量%以上、13.0質量%以下で含有し、上記有機溶剤は、標準沸点が150.0℃以上、280.0℃以下である有機溶剤を含み、標準沸点が280.0℃を超える有機溶剤の含有量が、インク全量に対して、3.0質量%以下である水系インク組成物が開示されている。特許文献1では、上記の有機溶剤に加え、顔料と、水溶性のスチレンアクリル樹脂である顔料分散剤を含ませた水系インク組成物を、記録ヘッド内における循環流路内で循環させながら、画像形成を行うことで、画像の堅牢性、および吐出安定性を向上させることができたとされている。
特開2020-121523号公報
特許文献1のように、顔料と顔料分散剤とを含むインクが知られている。
ところで、インクジェット法による画像形成を行う際に用いる画像形成装置において、インク中に含まれる気泡や異物を捕集するために、フィルターが設置されることがある。上記フィルターは、通常、インクジェットヘッド内や、インクが流通する流路内に設置される。
そして、本発明者らの検討によると、特許文献1に記載の水系インク組成物を、吐出性の悪化を抑制するために記録ヘッド内における循環流路内で循環させながら画像形成を行うと、フィルターに目詰まりが生じやすかった。同様の目詰まりは、インクタンクからインクジェットヘッドにインクを供給するインク流路に、複数個のフィルターを設けたときにもみられることから、特許文献1に記載のような水系インク組成物を、フィルターを複数回通過させて画像形成を行うときに、上記フィルターに目詰まりが生じやすくなるものと考えられる。
また、特許文献1に記載された水系インクは、吐出安定性が高まっているとされているが、本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載された水系インクでも、吐出安定性が十分に高まってはいなかった。また、顔料の凝集等を抑制し、水系インクの保存安定性をより高めたいという要望が存在する。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、フィルターを複数回通過した水系インクジェットインクを、インクジェットヘッドのノズルから吐出する画像形成方法において、上記フィルターの目詰まりを抑制することができ、かつ、インクの保存安定性、および吐出安定性を向上させることができる水系インクジェットインク、および画像形成方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る水系インクジェットインクは、フィルターを複数回通過したインクを、インクジェットヘッドのノズルから吐出する画像形成方法に用いられる水系インクジェットインクであって、前記水系インクジェットインクは、顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤と、を有し、条件(a)および条件(b)を満たす。
条件(a) 前記顔料分散剤は、SP値の水素結合成分が8(MPa)1/2以上23(MPa)1/2以下である
条件(b) 前記有機溶剤は、SP値の水素結合成分が18(MPa)1/2以下である溶媒を含む
また、上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る画像形成方法は、フィルターを複数回通過した水系インクジェットインクを、インクジェットヘッドのノズルから吐出する画像形成方法であって、上記水系インクジェットインクを、前記インクジェットヘッドの前記ノズルから吐出する工程を有する。
本発明により、フィルターを複数回通過した水系インクジェットインクを、インクジェットヘッドのノズルから吐出する画像形成方法において、上記フィルターの目詰まりを抑制することができ、かつ、インクの保存安定性、および吐出安定性を向上させることができる水系インクジェットインク、および画像形成方法が提供される。
図1は、本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の構成を示した模式図である。 図2は、上記画像形成装置に用いられるインクジェットヘッドの概要を示す分解斜視図である。 図3は、上記インクジェットヘッドの断面図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
本明細書において、「フィルターを複数回通過したインクを吐出する」とは、吐出されるインクの少なくとも一部がフィルターを複数回通過していればよいことを意味する。
上述のように、循環流路を有する画像形成装置において、循環流路内にフィルターが設置されている場合、循環流路を流通するインクは、フィルターを複数回通過し、フィルターを通過したインクの一部がインクジェットヘッドのノズルから吐出される。
また、循環流路を有さなくても、インクが流通するインク流路や、インクジェットヘッド内部にフィルターが複数個設置されている場合、インクは、複数回フィルターを通過した後、インクジェットヘッドのノズルから吐出される。
これらのように、フィルターを複数回通過したインクを、インクジェットヘッドのノズルから吐出させる画像形成方法において、顔料と顔料分散剤とを含む水系インクを用いたとき、上記フィルターに目詰まりが生じてしまうことがわかった。フィルターに目詰まりが生じることにより、インクジェットヘッドのノズルから、所望の流量でインクを吐出できないという問題が生じることがあった。
本発明者らは、上記問題について、水系インク中における顔料の凝集により、フィルターの目詰まりが生じていると考えた。そこで、顔料の凝集を抑制すべく、SP値の水素結合成分(δ)が特定の範囲にある顔料分散剤を用いることを検討した。上記δは、親水性、疎水性の程度を示す指標であるため、疎水性である顔料に付着しやすいような顔料分散剤をδの値によって選択しようとしたのである。
そして、SP値の水素結合成分が8(MPa)1/2以上23(MPa)1/2以下である顔料分散剤を用いた結果、保存安定性および吐出安定性が高まったことから、上記顔料分散剤により顔料の凝集を抑制できることがわかった。これについては、上記δが8(MPa)1/2以上であると、分散剤が顔料に付着しやすくなり、顔料をインク中に分散させて吐出安定性を高めることができると考えられる。また、上記δが23(MPa)1/2以下であると、顔料分散剤とインク中の水との親和性が高すぎないため、顔料に付着した顔料分散剤が、経時的に顔料から分離することを抑制することができると考えられる。これにより、保存中の顔料の凝集を抑制して保存安定性を高めることができると考えられる。
このように、上記顔料分散剤を用いることで、顔料の凝集を抑制できることがわかったものの、それでも、フィルターに複数回インクを通液させたとき、フィルターに生じる目詰まりは十分に抑制されなかった。この原因について、本発明者らは再度検討したところ、以下のような原因が考えられる。
水系インク中に存在する顔料分散剤は、一定の割合で、顔料粒子の表面に付着し、インク中に顔料を分散させると考えられる。ただし、インクの調製時に添加した顔料分散剤のすべてが顔料に付着するわけではなく、一定の割合で、顔料に付着しない顔料分散剤がインク中に存在してしまう。一方で、顔料粒子に付着しない顔料分散剤は、水系インク中において、水との親和性が低い疎水性部位同士が集合して、ミセルを形成しやすいと考えられる。
顔料分散剤が付着した顔料と上記ミセルとを含む水系インクがフィルターを通過する際、フィルターからの剪断力が顔料に引加されて、顔料分散剤の一部が顔料の表面から離脱することがある。また、フィルターからの剪断力が上記ミセルに引加されて、ミセルが部分的に崩壊して、疎水性基が表面に露出した顔料分散剤の凝集体となることもある。そして、顔料分散剤の一部が離脱した顔料に、疎水性基が表面に露出した顔料分散剤の凝集体が付着することにより、粒径の大きな粒子がわずかに生じると考えられる。この状態でインクがフィルターをもう一度通過すると、前のフィルターの通過時に生じた凝集体に、顔料分散剤の一部が離脱した顔料または疎水性基が表面に露出した顔料分散剤の凝集体がさらに付着し、粒子のサイズが大きくなると考えられる。そのため、上述のフィルターの目詰まりは、顔料と顔料分散剤とを含むインクをフィルターに複数回通過させたことにより、サイズが大きくなった上記凝集体によるものであると考えられる。
そこで、本発明者らが鋭意検討したところ、SP値の水素結合成分(δ)が18(MPa)1/2以下である有機溶剤をインクに含ませることで、フィルターの目詰まりが生じにくくなることを見出した。
これについて、理由は定かではないが以下のように考えられる。
上記有機溶媒は、δが上述の顔料分散剤のδに近い値をとるため、上記有機溶媒に対する顔料分散剤の親和性は高い。そのため、上記有機溶媒は、顔料分散剤の疎水性部位の集合を抑制して、顔料分散剤の分散性を高めると考えられる。そのため、この有機溶剤は、インク中において、顔料分散剤によるミセルの形成を抑制すると考えられる。ミセルが形成しにくくなることで、上述したミセルと顔料との凝集によるフィルターの目詰まりが抑制されると考えられる。
これらの作用により、保存安定性および吐出安定性を高めつつ、フィルターの目詰まりを抑制することができると考えられる。
1.画像形成装置
図1は、本発明の一実施の形態に係るインクジェットインクを用いる画像形成方法を実施する際に用いることができる、画像形成装置100の構成を示した模式図である。
画像形成装置100は、インクジェットヘッド101と、インクタンク102、送液ポンプ103と、インク流路104と、搬送装置105と、を有する。
画像形成装置100では、インクタンク102に収容されたインクを、送液ポンプ103により、インク流路104を介してインクジェットヘッド101に供給する。そして、インクジェットヘッド101に供給されたインクを、搬送装置105により搬送された記録媒体Mに向けて吐出し、着弾させて、記録媒体M上に画像を形成する。
インクジェットヘッド101は、インク液滴を被印刷物である用紙などの記録媒体Mに射出するための複数のノズルを有する。
インクジェット法で使用するインクジェットヘッドの例には、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアモード型およびシェアードウォール型を含む電気-機械変換方式、ならびにサーマルインクジェット型およびバブルジェット(「バブルジェット」はキヤノン株式会社の登録商標)型を含む電気-熱変換方式等が含まれる。本実施の形態では、シェアモード型のインクジェットヘッドを用いている。
インクタンク102は、インクジェットヘッド101に供給するためのインクを貯留するタンクである。インクタンク102は、不図示の撹拌装置を有していてもよい。インクタンク102は、画像形成装置100の画像形成性能や大きさなどに応じて適宜に設定することができる。
送液ポンプ103は、インクタンク102に貯留されたインクを、インク流路104を介して、インクジェットヘッド101に送液するためのポンプである。
搬送装置105は、記録媒体Mを搬送するための装置である。搬送装置105は、たとえば、ベルトコンベア105aと、回転自在な送りローラー105bとを備える。
なお、本実施の形態において、画像形成装置100は、乾燥機106を有していてもよい。乾燥機106は、記録媒体Mに付与されたインクを乾燥させる装置である。乾燥機106は、公知のヒーターおよび赤外線ランプを照射する照射器などを、用いることができる。
1-1.インクジェットヘッド
図2は、画像形成装置100に用いられるインクジェットヘッド101の概要を示す分解斜視図である。また、図3は、インクジェットヘッド101の断面図である。図2に示すように、インクジェットヘッド101は、ヘッドチップ1と、共通インク室2と、保持部3と、フレキシブル配線基板4と、を有している。
ヘッドチップ1は、複数の基板を有する。例えば、ヘッドチップ1は、インクを吐出するノズル(不図示)が形成されたノズル基板11と、圧力室とノズルとを連通する連通孔(不図示)を有するスペーサー基板12と、圧力室(不図示)と、圧力室からノズルへ供給されるインクの一部を循環流路2dへ排出する排出流路(不図示)を有する圧力室基板13と、を有する。
共通インク室2は、中空の略直方体状に形成されており、保持部3と対向する一面が開口している。共通インク室2の上記開口と対向する一面には、インクを供給するためのインク供給口2aが設けられている。
共通インク室2は、ノズルに供給するインクを収容する。図3に示されるように、共通インク室2は、内部にフィルターFを有する。このフィルターFにより、共通インク室2は、第1インク室2bと、第2インク室2cとに区画される。ノズルに向かうインクが、フィルターFを通液することにより、インクに含まれる異物がフィルターに捕集される。
フィルターFの材料は、特に限定されないが、例えば、ナイロンなどの樹脂、SUSなどの金属、などである。これらは、レーザー加工や、エッチング処理されにより製造されたていてもよい。これらの材料のうち、耐久性の観点から、SUSであることが好ましい。
フィルターFの開口径は、1μm以上20μm以下であることが好ましく、3μm以上10μm以下であることが好ましく、5μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。上記開口径が20μm以下であることで、上述したミセルと顔料との凝集体がフィルターにより詰まりやすくなる。本実施の形態では、後述するインクを用いることで、開口径が上記範囲のフィルターについても、目詰まりを抑制することができる。また、1μm以上であることで、インクに含まれる顔料や樹脂などを通過させやすくすることができる。
図3に示されるように、共通インク室2は、循環流路2dを有する。循環流路2dは、上述した圧力室基板に形成された排出流路と連通しており、上記排出流路から排出されるインクを、再度共通インク室2(第1インク室2b)に供給するための流路である。
再度共通インク室2(第1インク室2b)に供給されたインクは、再びフィルターFを通液して、ノズルへ向かう。このようにして、フィルターFを複数回通過したインクは、フィルターFを通過後、インクジェットヘッド101のノズルから吐出される。なお、本実施の形態では、図3に示されるように、同一のフィルターを複数回通過したインクがノズルから吐出される。
保持部3は、略中央に開口部3aを有する略平板状に形成されており、共通インク室2の上記開口を覆うように配置されている。これにより、保持部3の一方の面には、開口部2aを覆うようにして共通インク室2が接続される。また、保持部3の他方の面には、開口部3aを覆うようにしてヘッドチップ1が接続される。保持部3は、開口部3aを介して、共通インク室2とヘッドチップ1とを連通させる。
保持部3の外周部には、挿通孔3bが設けられている。挿通孔3bには、フレキシブル配線基板4が挿通される。フレキシブル配線基板3は、その一方の端部が、後述するヘッドチップ1上の配線基板(不図示)に接続される。また、フレキシブル配線基板4は、その他方の端部が、保持部3に設けた挿通孔3bを保持部3の他方の面から挿通して、共通インク室2側に引き出される。
このように構成されたインクジェットヘッド101では、上述したヘッドチップ1の排出流路により、共通インク室2から圧力室を介してノズルの吐出口へ供給されるインクの一部を取り出し(分岐させ)、取り出したインクを共通インク室2内の循環流路2dへ排出(送液)させることができる。そして、循環流路2dへ排出(送液)されたインクを、再度、共通インク室2(第1インク室2b)に戻して循環させることができる。このように、インクを循環させることで、インク中の顔料粒子などが、沈降または凝集することによる、ノズル付近のインク粘度の上昇を抑制して、吐出安定性を高めやすくすることができる。
なお、本実施の形態において、画像形成装置100は、インクジェットヘッド101の内部でインクを循環させているが、この構成に限られるものではない。画像形成装置100は、例えば、インクジェットヘッド101に供給されたインクの一部を、インクジェットヘッド101の外部に排出し、排出されたインクを再度インクジェットヘッドに供給させる構成としてもよい。
また、画像形成装置100は、上述のようにインクを循環させる構成を有さなくてもよい。このとき、インク流路104中に、複数のフィルターを設けることで、フィルターを複数回通過したインクが吐出され、記録媒体M上に画像が形成される。
2.水系インクジェットインク
本実施の形態における画像形成方法に用いる水系インクジェットインクは、顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤と、を有し、条件(a)および条件(b)を満たす。
条件(a) 前記顔料分散剤は、SP値の水素結合成分が8(MPa)1/2以上23(MPa)1/2以下である
条件(b) 前記有機溶剤は、SP値の水素結合成分が18(MPa)1/2以下である溶媒を含む
2-1.水
本実施の形態において水系インクジェットインクは、水を含む。インクに含まれる水の種類は特に限定されない。水系インクジェットインクにおける水の含有量は、水系インクジェットインクの全質量に対して45質量%以上であることが好ましく、水系インクジェットインクにおける液体成分の全質量に対して、65質量%以上であることがより好ましい。
2-2.顔料
本実施の形態において水系インクジェットインクは、顔料を含む。顔料の例には、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料、ブラック顔料などが含まれる。
イエロー顔料の例には、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、同14、同15、同15:3、同17、同74、同93、同128、同94、同138、および同155(いずれも東京化成工業株式会社製)などが含まれる。
マゼンタ顔料の例には、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、同5、同6、同7、同15、同16、同48;1、同53;1、同57;1、同122、同123、同139、同144、同149、同150、同166、同177、同178、同184、同222、同238などが含まれる。
シアン顔料の例には、C.I.ピグメントブルー15、同15;2、同15;3、同15;4、同16、同60、同62、同66(いずれも東京化成工業株式会社製)などが含まれる。
ブラック顔料の例には、カーボンブラック、C.I.Pigment Black7、同26、同28などが含まれる。
顔料粒子の粒径は、特に限定されないが、インク中で顔料を長期間分散させる観点から、体積基準のメジアン径が、60nm以上200nm以下であることが好ましい。ここで、上記顔料粒子の粒径は、顔料分散剤が付着した状態の顔料粒子の粒径のことをいう。上記粒径は、動的光散乱法、電気泳動法を用いた公知の粒径測定機器により求めることができる。簡易的かつ高精度に測定する観点からは、動的光散乱法による測定が好ましい。
水系インクジェットインク中の顔料の含有量は、インクの全質量に対して、5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、7質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。上記含有量が5質量%以上であると、顔料濃度を高めて、少量のインクで色再現性の高い画像を形成しやすくすることができる。そのため、インクの使用量を低減することができ、また、インク中の固形分濃度が高くなるため水の割合が減少するため、乾燥時にかかる記録媒体への負荷(カールやコックリングなど)および乾燥に必要なエネルギーを低減することができる。他方、上記含有量が5質量%以上であるとき、顔料の量が増加することにより、顔料と、上述した顔料分散剤のミセルとの凝集や、顔料どうしの凝集がより起きやすくなり、フィルターの目詰まり、インクの保存安定性、および吐出安定性が低下しやすくなる。これに対して、本実施の形態では、上述の条件(a)および条件(b)を満たす水系インクジェットインクを用いることで、上記の問題を解決することができる。また、上記含有量が20質量%以下であると、水系インク中で顔料が凝集することをより抑制することができる。
2-3.顔料分散剤
本実施の形態において水系インクジェットインクは、顔料分散剤を含む。
上述のように、顔料分散剤のSP値の水素結合成分(δ)は、8(MPa)1/2以上23(MPa)1/2以下である。顔料に吸着しない顔料分散剤が、ミセルをより形成しにくくなるという観点から、顔料分散剤のδは、上述した有機溶剤に含まれる溶媒のδと近いことが好ましい。具体的には、両者のδの値の差が、1(MPa)1/2以上10(MPa)1/2以下、であることが好ましく、3(MPa)1/2以上7(MPa)1/2以下であることがより好ましい。顔料分散剤のδが、このような関係を満たすことで、顔料に吸着しない顔料分散剤が、インクに含まれる有機溶媒に対して、適度な親和性を有するため、インク中で分散しやすくなり、ミセルを形成しにくくなると考えられる。
顔料分散剤のδと上記溶媒のδとの差が、それぞれ上記範囲を満たしやすくなるという観点から、顔料分散剤のδは、8(MPa)1/2以上18(MPa)1/2以下であることがより好ましく、11(MPa)1/2以上18(MPa)1/2以下であることがさらに好ましい。
顔料分散剤のSP値の水素結合成分(δ)は、顔料分散剤の分子における親水性基(後述)の数を変更することで調整することができる。
顔料分散剤のδは、コンピュータソフトウェアであるHansen Solubility Parameters in Practice 5th Edition 5.0.13(HSPiP、テガラ株式会社製)を用いて測定することができる。
具体的には、まず、15種類以上の有機溶剤を用意し、各有機溶剤9.95gと、顔料分散剤A0.05gとを混合し30分間振とうすることによって、濃度0.5質量%の組成物を上記有機溶剤の種類の数に応じた数だけ調製する。
上有機溶剤の化合物名と、それに対応する分類(良溶媒または貧溶媒)とを、コンピュータソフトウェアであるHansen Solubility Parameters in Practice 5th Edition 5.0.13(HSPiP、テガラ株式会社製)に入力することによって、顔料分散剤AのSP値の、分散項(δ)と極性項(δ)と水素結合項(水素結合成分δ)を計算することができる。なお、顔料分散剤が分散媒に分散しているときは、乾燥機を用いて130℃で乾固させ、固形分100%にした顔料分散剤に対して、同様の測定を行う。
本実施の形態において、顔料分散剤の種類は、条件(a)を満たせば特に限定されないが、親水性基と、疎水性基とを有するものが好ましい。顔料分散剤が疎水性基を有することで、顔料分散剤が顔料粒子に吸着しやすくなり、親水性基を有することで、水系インク中に顔料を分散させやすくすることができる。他方、顔料に吸着しない顔料分散剤が集合し、疎水性基を内側に、親水性基を外側にしたミセルを形成しやすくなるため、フィルターに上記ミセルと顔料との凝集体が詰まりやすくなる。これに対して、本実施の形態における水系インクジェットインクは、条件(a)および条件(b)を満たすため、上記問題を解決することができる。
上記親水性基の例には、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ケトン基、スルホン酸基、などが含まれる。
上記疎水性基の例には、アルキル基、フェニル基、ナフチル基などが含まれる。
顔料分散剤は、低分子分散剤であってもよいし、高分子分散剤であってもよい。立体的な反発効果により、より安定して顔料を分散させる観点から、高分子分散剤を用いることが好ましい。本明細書において、「高分子分散剤」とは、重量平均分子量(Mw)が2000以上30000以下である、顔料分散剤のことをいう。重量平均分子量(Mw)は、例えば、比較標準物質としてポリメチルメタクリレートを用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
高分子分散剤を構成する樹脂は、例えば、親水性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体である。本明細書において、「親水性モノマー」とは、25℃の水100mLに対する溶解度が10g以上のモノマーのことをいい、「疎水性モノマー」とは、25℃の水100mLに対する溶解度が10g以下のモノマーのことをいう。
親水性モノマーの例には、カルボキシル基または酸無水物基を含有するモノマー((メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、マレイン酸などの不飽和多価カルボン酸、ならびに無水マレイン酸など)、ならびにエチレンオキサイド変性(メタ)アクリル酸エステルモノマー(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリル酸アルキルエステルなど)などが含まれる。
疎水性モノマーの例には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリル酸エステルモノマー、側鎖に炭素数3以上6以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー、スチレン、α-メチルスチレンおよびビニルトルエンなどのスチレン系モノマー、エチレン、プロピレンおよび1-ブテンなどのα-オレフィン系モノマー、芳香環基を有するビニル系モノマーならびに、酢酸ビニルおよび酪酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル系モノマーなどが含まれる。
上記共重合体の例には、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-マレイン酸ハーフエステル共重合体などが含まれる。
上記共重合体には、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、などが含まれる。これらのうち、より顔料の分散性を高める観点から、上記共重合体は、親水性ブロックと疎水性ブロックとを有するブロック共重合体であることが好ましい。
ブロック共重合体は、2種類以上のモノマーの重合体であって、それぞれ同種のモノマーが単独重合してなる高分子鎖であってもよいし、2種類以上のモノマーが共重合してなる高分子鎖であってもよい。上記ブロック共重合体は、親水性ブロックと疎水性ブロックとを有する。本明細書において、「親水性ブロック」とは、共重合体を構成する各ブロックのうち水との親和性がより大きいブロックのことをいう。また、本明細書において、「疎水性ブロック」とは、水との親和性がより小さいブロックをいう。たとえば、親水性ブロックは、親水性モノマーのみから構成されるブロックであるか、または疎水性ブロックよりも親水性モノマーに由来する構成単位の割合(当該ブロックの分子量に対する親水性官能基のモル数の割合)が多いブロックである。また、疎水性ブロックは、親水性モノマーを含まず、疎水性モノマーのみから構成されるブロックであるか、または親水性ブロックよりも親水性モノマーに由来する構成単位の割合(当該ブロックの分子量に対する親水性官能基のモル数の割合)が少ないブロックである。典型的には、疎水性ブロックは、顔料に吸着する部位であり、親水性ブロックは、インクを構成する水との親和性を高める部位である。
本発明者らが検討したところ、インクに含ませる顔料分散剤が上記ブロック共重合体であるとき、よりフィルターの目詰まりが生じやすいことがわかった。上記ブロック共重合体は、一定の鎖長を有する疎水性ブロックおよび親水性ブロック、をそれぞれ有するため、高分子鎖がブロック状で集合しやすくなり、水系インク中で、疎水性ブロックを内側に、親水性ブロックを外側に向けたミセルをより形成しやすいと考えられる。そのため、ミセルと顔料との凝集がより生じやすくなり、フィルターの目詰まりがより生じやすくなると考えられる。これに対して、本実施の形態では、実施の形態では、上述の条件(a)および条件(b)を満たすインクジェットインクを用いることで、上記の問題を解決することができる。
上記親水性ブロックを構成する親水性モノマーは、上述した親水性モノマーのうち、親水性ブロックに適度な水溶性を付与する観点から、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチルであることが好ましい。
上記疎水性ブロックを構成する疎水性モノマーは、上述した疎水性モノマーのうち、顔料への吸着性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸ベンジル、芳香環基を有するビニル系モノマーであることが好ましい。
上記親水性ブロックをA、上記疎水性ブロックをBとすると、上記ブロック共重合体の構造の例には、AB型、ABA型、BAB型、ABAB型、ABABA型、BABAB型が含まれる。なお、ABA型、BAB型など複数のブロックA、Bを有する構造における複数のブロックAについて、これらを構成するモノマー種およびモノマーの構成比率は同じであってもよいし、モノマー種やモノマーの構成比率を変更することにより、それぞれのブロックAに異なる作用(例えば、顔料との親和性をより高める作用)を付与してもよい。同様に、ABA型、BAB型などにおける複数のブロックBについても、これらを構成するモノマー種およびモノマーの構成比率は同じであってもよいし、モノマー種やモノマーの構成比率を変更することにより、それぞれのブロックBに異なる作用を付与してもよい。これらのうち、顔料への吸着性、および保存安定性を向上させる観点から、AB型が好ましい。
ブロック共重合体を合成する方法は、特に限定されないが、例えば、AB型のブロック共重合体は、以下のような方法で合成することができる。
(1)攪拌機、逆流コンデンサー、温度計、及び窒素導入管を取り付けたセパラブルフラスコ(反応装置)に、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2-アイオド-2-シアノプロパン、親水性モノマー、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、及びアイオドスクシンイミドを添加し、窒素を流しながら撹拌する。(2)上記の重合溶液に、疎水性モノマーとアゾビスイソブチロニトリルとの混合物を添加し、75℃で3時間重合させる。
上記ブロック共重合体である顔料分散剤の市販品の例には、DISPERBYK2010(いずれもビックケミー社製)、EFKA4585(BASF社製)、などが含まれる。
顔料分散剤がブロック共重合体であることは、例えば分子量分布(PDI)(ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw))/(ブロック共重合体の数平均分子量(Mn))が2.0以下である共重合体であることを確認することによって判断することができる。上記重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
顔料分散剤の含有量は。顔料の全質量に対して、20質量%以上50質量%以下であることが好ましく、25質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。上記含有量が20質量%以上であることで、インク中における顔料の分散性をより十分に高めることができる。25質量%以上であることで、顔料に吸着せずにインク中でミセルを形成する顔料分散剤の量が増加し、フィルターの目詰まりが生じやすくなる。これに対して、本実施の形態では、上述の条件(a)または条件(b)を満たす水系インクジェットインクを用いることで、上記の問題を解決することができる。
また、顔料分散剤の上記含有量が50質量%以下であることで、上記ミセルの量を減らして、フィルターの目詰まりをより生じさせにくくすることができる。
2-4.有機溶剤
本実施の形態において、インクジェットインクは有機溶剤を含む。
上述のように、前記有機溶剤は、SP値の水素結合成分(δ)が18(MPa)1/2以下である溶媒を含む。
顔料分散剤のδと上記溶媒のδとの差が、上述した範囲に含まれやすくする観点から、上記溶媒のδは、10(MPa)1/2以上18(MPa)1/2以下であることが好ましく、12(MPa)1/2以上18(MPa)1/2以下であることがより好ましい。
有機溶剤のδは、上述したコンピュータソフトウェアであるHansen Solubility Parameters in Practice 5th Edition 5.0.13(HSPiP、テガラ株式会社製)に収録された値を参照して得てもよいし、公知の文献値から得てもよい。
有機溶剤の例には、アルコール類、多価アルコール類、アミン類、アミド類、グリコールエーテル類などが含まれる。これらの有機溶剤は、1種類のみが含有されてもよく、2種類以上を組み合わせて含有されていてもよい。
上記アルコール類の例には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノールなどが含まれる。
上記多価アルコール類の例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレンオキサイド基の数が5以上のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、などが含まれる。
上記アミン類の例には、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミンおよびテトラメチルプロピレンジアミンなどが含まれる。
上記アミド類の例には、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどが含まれる。
上記SP値の水素結合成分(δ)が18(MPa)1/2以下である溶媒の例には、メチルエチルケトン(δ=5.1)、アセトニトリル(δ=6.1)、N-メチルピロリドン(δ=7.2)、テトラヒドロフラン(δ=8.0)、2-ピロリドン(δ=9.0)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(δ=9.1)、ジメチルホルムアミド(δ=11.3)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(δ=12.2)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(δ=12.5)、イソプロパノール(δ=16.4)、1,2-ヘキサンジオール(δ=17.3)、ジプロピレングリコール(δ=17.7)、などが含まれる。
有機溶剤の含有量は、インクジェットインクの全質量に対して、5質量%以上25質量%以下であることが好ましく、10質量%以上23質量%以下であることがより好ましい。上記含有量が5質量%以上であると、インクの、インクジェットヘッドのノズル表面に対する濡れ性を向上させて、吐出安定性をより向上させることができる。上記含有量が25質量%以下であると、有機溶剤の使用量を低減して、VOC排出量を低減することができる。
上記SP値の水素結合成分(δ)が18(MPa)1/2以下である溶媒の含有量は、インクジェットインクの全質量に対して、5質量%以上25質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。5質量%以上であると、顔料に付着しない顔料分散剤の水系インクに対する分散性をより高めて、より分散剤のミセル形成を抑制することができ、フィルターの目詰まりをより抑制することができる。25質量%以下であることで、水系インク全体のδが有機溶媒のδに近づきすぎることを抑制することができる。これにより、顔料に付着した顔料分散剤が、経時的に顔料から分離して水系インク中で分散することを抑制することができるため、顔料の分散性をより高めることができる。これにより保存安定性を向上させることができる。
本実施の形態において、インクの液体成分に占める、水と有機溶剤との合計質量の割合は、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましい。
2-5.その他
本実施の形態において、インクは、目的に応じて、定着樹脂、界面活性剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、油滴微粒子、蛍光増白剤、多糖類、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、酸化防止剤、防ばい剤、防錆剤などを含有してもよい。これらの成分は、1種類のみが含有されてもよく、2種類以上を組み合わせて含有されていてもよい。
定着樹脂は、顔料分散剤とは異なる樹脂であって、水溶性樹脂であっても水不溶性樹脂であってもよく、基材に着弾したインクを乾燥させた際に塗膜を形成する樹脂のことを指す。定着樹脂の例には、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン-アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミン樹脂、ポリビニルアルコール、および水分散性のラテックス樹脂などが含まれる。
これらの樹脂は、架橋性基を有していてもよい。架橋性基の例には、アミン基、ウレタン結合、ウレア結合、隣接する炭素分子が水酸基を有するポリオール、およびカルボキシル基などが含まれる。
定着樹脂が架橋性基を有するとき、インクは、架橋剤を含んでもよい。架橋剤の例には、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、シリル化合物、ヒドラジン化合物およびオキサゾリン化合物などが含まれる。
上記界面活性剤の例には、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類および脂肪酸塩類などのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類およびポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類などのノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類および第四級アンモニウム塩類などのカチオン性界面活性剤、ならびにシリコーン系やフッ素系の界面活性剤などが含まれる。
上記pH調整剤の例には、公知の酸、塩基およびバッファが含まれる。これらのうち、架橋樹脂と架橋剤との間の反応を阻害しにくいことから、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、メチルアミノエタノール、およびジメチルアミノエタノールならびにその塩が好ましい。
上記紫外線吸収剤の例には、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤が含まれる。
2-6.物性
インクのインクジェットヘッドのノズルからの吐出安定性を高める観点からは、インクの粘度は1cP以上100cP未満であることが好ましい。上記吐出安定性をより高める観点からは、インクの粘度は、1cP以上50cP以下であることが好ましく、1cP以上15cP以下であることがさらに好ましい。
インクのインクジェットヘッドのノズルからの吐出安定性を高める観点からは、インクの表面張力は20mN/m以上50mN/m以下であることが好ましい。基材に対する濡れ性を高めて、形成される画像をより高精細にする観点からは、インクの表面張力は20mN/m以上35mN/m以下であることがより好ましい。インクの表面張力は、前記界面活性剤および有機溶媒の種類または量を変更することで、上記範囲に調整することができる。
3.画像形成方法
本実施の形態に係る画像形成方法は、フィルターを複数回通過したインクジェットインクを、インクジェットヘッドのノズルから吐出する画像形成方法であって、上記インクジェットインクを、前記インクジェットヘッドの前記ノズルから吐出する工程を有する。本実施の形態において、上記画像形成方法は、画像形成装置100を用いて行うことができる。
本実施の形態では、上述のように、インクは、画像形成装置100のインクジェットヘッド101内で循環される。そのため、インクジェットヘッド101に供給されたインクは、同一のフィルターFを複数回通過する。
本実施の形態では、循環流量は、1g/分以上10g/分以下であることが好ましく、2g/分以上7g/分以下であることがより好ましい。1g/分以上であると、インク中の顔料粒子などが沈降または凝集することによる、ノズル付近のインク粘度の上昇をより抑制して、吐出安定性をより向上させることができる。また、10g/分以下であることで、インク吐出量が過剰に増大することを抑制することができる。ここで、インクジェットヘッドは、1つの供給口から供給されたインクを吐出する全てのノズルを合わせたものを1単位として扱う。なお、本明細書において、「循環流量」とは、インクジェットヘッド101において、循環流路2dを流通する水系インクの流量である。上記循環流量は、例えば、循環流路2dを流通するインクをジェットヘッド外部に排出する流路を設けた改造ヘッドを用い、上記画像形成を行ったときと同様にインク吐出量および送液ポンプの駆動条件を設定して、単位時間あたりにヘッドから排出されたインク量を測定して求めることができる。
本実施の形態では、上述したインクジェットインクを用いて画像形成を行う。これにより、フィルターFを複数回通過した際に生じる、フィルターの目詰まりを抑制することができ、さらに吐出安定性を向上させることができる。
(インクジェットインクを吐出する工程(工程S10))
本工程では、上述のインクジェットインクを、インクジェットヘッド101から吐出する。
インクジェットヘッド101からの、インクの吐出量は、インクジェットヘッド101の種類によって適宜設定されるが、例えば、5pLである。
本工程では、インクジェットヘッド101のノズルからインクを吐出して、記録媒体に付与させてもよいし、中間転写体に付与させてもよい。
記録媒体の種類は特に限定されない。記録媒体は、例えば、吸水性の高い紙基材でもよいし、フィルム、プラスチックボード(軟質塩化ビニル、硬質塩化ビニル、アクリル板、ポリオレフィン系など)、などの非吸水性の基材であってもよい。
(乾燥させる工程(工程S20))
本実施の形態に係る画像形成方法は、記録媒体に付与されたインクを乾燥させる工程(工程S20)を有していてもよい。
インクを乾燥させる方法は、特に限定されず、例えば、公知のヒーターや赤外線ランプなどを用いて行うことができる。
インクを乾燥させる温度は、定着性をより向上させる観点から、30℃以上であることが好ましく、省エネルギーで定着させる観点から、95℃以下であることが好ましい。
本実施の形態における、画像形成方法により、インクジェットヘッド101内のフィルターFをインクが複数回通過した際に生じる、フィルターの目詰まりを抑制し、吐出安定性を向上させることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.顔料分散剤の調製
(1)攪拌機、逆流コンデンサー、温度計、及び窒素導入管を取り付けたセパラブルフラスコ(反応装置)に、100質量部のジエチレングリコールジメチルエーテル、3質量部の2-アイオド-2-シアノプロパン部、35質量部のメタクリル酸メチル、20質量部のアクリル酸、2質量部のアゾビスイソブチロニトリル、および0.1質量部のアイオドスクシンイミドを添加し、窒素を流しながら撹拌した。反応温度を75℃として3時間重合させた。
(2)上記の重合溶液に、40質量部のメタクリル酸ベンジルと、0.4質量部のアゾビスイソブチロニトリルとの混合物を添加し、75℃で3時間重合させた。
(3)上記重合溶液に、ブロックポリマー中のカルボキシル基を中和する当量の水酸化カリウム水溶液を添加してカルボキシル基を中和した。その後、ブロックポリマー含有液を加熱し、揮発成分を除去して顔料分散剤Aを得た。
上記顔料分散剤Aの調製において、(1)におけるメタクリル酸メチルの添加量を65質量部、アクリル酸の添加量を35質量部、(2)におけるメタクリル酸ベンジルの添加量を19質量部に変更した以外は、上記と同様にして、顔料分散剤Bを得た。
上記顔料分散剤Aの調製において、(1)におけるメタクリル酸メチルの添加量を30質量部、アクリル酸の添加量を8質量部、(2)におけるメタクリル酸ベンジルの添加量を50質量部に変更した以外は、上記と同様にして、顔料分散剤Eを得た。
2.インクの作製
2-1.顔料分散液の調製
18.0質量部のシアン顔料(ピグメントブルー15:3、東京化成工業株式会社製)に、5.4質量部の顔料分散剤Aと、2.4質量部のプロピレングリコール(PG)と、17.6質量部の1,2-ヘキサンジオール(1,2-HD)と、56.6質量部のイオン交換水とを加え、混合した。その後、平均粒径が0.5mmであるジルコニアビーズを50体積%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、上記顔料の含有量が18.0質量%のシアン顔料分散液を調製した。調製した顔料分散液に含まれる顔料粒子の平均粒径は、109nmであった。上記顔料粒子の体積基準の平均粒径は、粒度分布測定機(ゼータナノサイザー1000HS、マルバーン社製)を用いて測定した。
顔料分散液の調製に用いる有機溶剤は、後述する水系インクの調製に用いる有機溶剤の種類およびその比率に合わせて適宜変更した。
2-2.水系インクジェットインクの調製
55.6質量部のシアン顔料分散液を撹拌させながら、1.1質量部のプロピレングリコールと、7.8質量部の1,2-ヘキサンジオールと、0.5質量部のシリコーン系界面活性剤(KF-351A、信越化学工業株式会社製)と、5.0質量部(固形分)の樹脂粒子(MD-2000、東洋紡)を添加し、全体が100質量部となるようにイオン交換水をさらに添加してインク組成物を作製した。上記インク組成物を0.8μmのフィルターで濾過して、インク1を得た。
インク中における顔料分散剤の種類および含有量、有機溶剤の種類および含有量、および顔料濃度を表1、2に示した組成となるように顔料分散液の配合、および水系インクの配合を適宜変更した以外は、インク1と同様にしてインク2~18を得た。なお、表1における質量%は、インク全体の質量に対する値である。
表1、2における、顔料分散剤A~Eは、以下に示したものを用いた。なお、表1、2における顔料分散剤の含有量は、固形分量を示す。顔料分散剤A~Eはいずれも、親水性基(ブロック構造を有するときは親水性ブロック)と、疎水性基(ブロック構造を有するときは疎水性ブロック)と、を有するものである。また、以下に示した顔料分散剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定した値である。
顔料分散剤A (SP値(δ)=10、重量平均分子量(Mw):5000、ブロック構造)
顔料分散剤B (SP値(δ)=15、重量平均分子量(Mw):6500、ブロック構造)
顔料分散剤C (BYKJET-9151、ビックケミー社製、SP値(δ)=20、重量平均分子量(Mw):3、900、ランダム構造)
顔料分散剤D (EFKA4585、BASF社製、SP値(δ)=25、重量平均分子量(Mw):4、500、ブロック構造)
顔料分散剤E (SP値(δ)=9、重量平均分子量(Mw):5500、ブロック構造)
上記顔料分散剤A~Eが、ブロック共重合体であるか否かは、分子量分布PDIが2.0以下であることにより確認した。上記分子量分布PDIは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定装置(RID-6A、株式会社島津製作所製(カラム:TSK-GEL、東ソー株式会社製))を用いて、ポリスチレン標準試料で作成した検量線から、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、MwをMnで除することで求めた。
上記顔料分散剤A~EのSP値(δ)は、以下のように求めた。
表3に示す25種類の有機溶剤を用意し、各有機溶剤9.95gと、顔料分散剤A0.05gとを混合し30分間振とうすることによって、濃度0.5質量%の組成物を25種類調製した。次に、上記組成物を、25℃の環境下に24時間静置した。24時間経過後、上記組成物を目視で確認した際に、沈殿物がまったく確認できなかった組成物に含まれる有機溶剤を「良溶媒」に分類し、沈殿物が確認できたものを「貧溶媒」に分類した。
前記25種類の有機溶剤の化合物名と、それに対応する上記分類(良溶媒または貧溶媒)とを、コンピュータソフトウェアであるHansen Solubility Parameters in Practice 5th Edition 5.0.13(HSPiP、テガラ株式会社製)に入力することによって、顔料分散剤AのSP値の、分散項(δ)と極性項(δ)と水素結合項(δ)を計算した。
顔料分散剤B~Eについても、顔料分散剤Aと同様にして、SP値(δ)を求めた。なお、顔料分散剤が分散媒に分散しているときは、乾燥機を用いて130℃で乾固させ、固形分100%にした顔料分散剤に対して、同様の測定を行った。
有機溶剤AのSP値(δ)は、上記ソフトウェアに記録された各有機溶剤の値を用いて、上記ソフトウェアにより計算された値を用いた。有機溶剤BのSP値(δ)は、上記ソフトウェアに記録された各有機溶剤の値を用いた。
Figure 2023088026000002
Figure 2023088026000003
Figure 2023088026000004
2.評価
以下に示した評価を行うため、インク1~18を用いて、実験1~19を行った。
2-1.保存安定性
(実験1~19)
得られたインク1~18の各インクを、温度50℃の環境下(恒温槽)で7日間保管した。保管前のインク粘度に対する、保管後のインク粘度の割合(増粘比)を測定し、以下の基準に沿って、インクの保存安定性を評価し、A、Bを合格とした。
A 増粘比が1.1以下
B 増粘比が1.1超1.3以下
C 増粘比が1.3超1.5以下
D 増粘比が1.5超
2-2.吐出安定性
(実験1~18)
図3に示した循環機構を持つピエゾ型インクジェット(360dpi、吐出量6pL、コニカミノルタ株式会社製ヘッド改造機)の独立駆動ヘッド二つをノズルが互い違いになるように配置して、720dpi×720dpiのヘッドモジュールを作製した。次いで、ステージ搬送機上に、搬送方向にノズル列が直交するように設置した。ヘッドモジュールのインクジェットヘッドに、得られたインク1を充填し、ステージ搬送機によって搬送されるコート紙(OK トップコート+73.3gsm、王子製紙株式会社製)上にシングルパス方式でベタ画像を記録できるようにインクジェット記録装置を構成した。
上記インクジェット記録装置を温度25℃、相対湿度50%の環境下、循環流量2g/分で1時間放置した後、印字幅100nm×100nm、解像度720dpi×720dpiの条件で、上記コート紙上にベタ画像を連続で100枚形成した。同様の操作をインク2~15についても同様にして行った。
上記ベタ画像形成後、液滴量3.5pL、液滴速度7.0m/s、射出周波数40kHz、および印字率100%となる条件で、インクジェットヘッドを連続駆動させ、欠ノズルが生じた数を計測し、以下の基準に沿って、吐出安定性を評価し、A、Bを合格とした。
A:欠ノズルが生じたものは確認されなかった。
B:欠ノズル数が1~3であった
C:欠ノズル数が4~6であった
D:欠ノズル数が7以上であった
(実験19)
用いたインクジェットヘッドを、循環流路を持たないインクジェットヘッド(コニカミノルタ株式会社製ヘッド改造機 フィルター通過回数1回)に変更した以外は、実験9と同様にして吐出安定性を評価した。
2-3.循環シェアリング凝集
(実験1~18)
図3に示した循環機構を持つピエゾ型インクジェット記録装置を用いインク1と上記コート紙複数枚とを用いて、画像の形成を1日に8時間行った。画像を形成しない時間は、インクを循環させた状態で待機した。待機中の循環流量は2g/分とした。上記循環流量は、循環流路2dを流通するインクをジェットヘッド外部に排出する流路を設けた改造ヘッドを用い、上記画像形成を行ったときと同様にインク吐出量および送液ポンプの駆動条件を設定して、単位時間あたりにヘッドから排出されたインク量を測定して求めた。これを1か月間繰り返し、1か月後、ヘッド内部に設けられたフィルター(材質:SUS303、開口径10μm)を観察した。同様の操作をインク2~18についても行った。観察結果を基に、以下の基準に沿って評価を行い、A、Bを合格とした。
A フィルターに固形分状の異物が見えない
B フィルターに固形分状の異物が若干見える
C フィルターに固形分状の異物がかなり見える
(実験19)
用いたインクジェットヘッドを、循環流路を持たないインクジェットヘッド(コニカミノルタ株式会社製、フィルター通過回数1回)に変更した以外は、実験9と同様にして循環シェアリング評価を行った。
(インク使用量低減)
実験1~19の吐出安定性評価において形成した画像について、以下の基準に沿って、インク使用量低減評価を行った。
○ 観察により、基準となる画像濃度を確保できたと確認できた画像を、5μL未満のインクで形成できた
△ 観察により、基準となる画像濃度を確保できたと確認できた画像を、5μL以上10μL未満のインクで形成できた
× 観察により、基準となる画像濃度を確保できたと確認できた画像を、10μL以上のインクで形成できた
(VOC低減)
インク1~18を、それぞれ30mlのビーカーに採取して、ビーカーごとアウトガス捕集装置の容器に入れ、捕集装置の温度を50℃に設定し、高純度Nガスを容器内に通気して排出されるガスを吸着管で捕集を行った。捕集後の吸着管をパージ&トラップGC/MSによりVOC測定を行った。
以下の基準に沿って、評価を行った。
◎ 測定結果が30ppm未満
○ 測定結果が30ppm以上50ppm未満
△ 測定結果が50ppm以上80ppm未満
× 測定結果が80ppm以上
(総合評価)
以下の基準に沿って、総合評価を行った。
◎ 保存安定性、吐出安定性、およびシェアリング評価がいずれもAであり、かつ、インク使用量低減評価が○、VOC低減評価が◎か○である
○ 保存安定性、吐出安定性、およびシェアリング評価のうち一つ以上がBである、または、インク使用量低減評価が△である、またはVOC評価が△である
× 保存安定性、吐出安定性、およびシェアリング評価のうち、合格基準を満たさない評価が一つ以上ある
これらの評価結果をまとめたものを表4に示した。
Figure 2023088026000005
上述した条件(a)および条件(b)を満たす水系インクを用いた実験1~8では、実験9~18よりも保存安定性、吐出安定性、およびシェアリング凝集の評価がいずれも良好であった。条件(a)を満たす顔料分散剤により、顔料の分散性を高めて保存安定性および吐出安定性を向上させつつ、条件(b)を満たす溶媒により、顔料に付着しない顔料分散剤の分散性を高めてミセルを形成しにくくしたことで、フィルターの目詰まりを抑制できたものと考えられる。
特に、顔料分散剤のδと、有機溶剤のδとの差がより小さい実験2~4では、実験1よりもフィルターの目詰まりが抑制された。両者のδの差が小さくなることで、顔料に付着しなかった顔料分散剤の分散性をより高めることができ、ミセルが形成しにくくなったためであると考えられる。
また、実験2では、実験5よりもフィルターの目詰まりを抑制でき、実験6よりも保存安定性を良好にすることができた。実験2では、実験5よりも条件(b)を満たす溶媒の含有量が多いため、上記溶媒によるミセル形成抑制の効果がより表れたものと考えられる。また、実験2では、実験6よりも上記溶媒量が適度に少ないため、顔料に付着した顔料分散剤が経時的に顔料から分離して、保存中に顔料が凝集することをより抑制することができたものと考えられる。
実験9、16では、分散剤を、ブロック構造を有するものとしたときに、フィルターの目詰まりがより生じた。ブロック共重合体である分散剤は、ブロック状のまとまった高分子鎖を有するため、よりミセルを形成しやすくなったためであると考えられる。これに対して、実験2、7では、分散剤をブロック共重合体としても、フィルターの目詰まり抑制の効果を維持することができた。これは、δが条件(a)を満たす分散剤に対して、よりδが近い(条件(b)を満たす)溶媒を用いたことで、ミセル形成を抑制できたことによるものと考えられる。
実験10、18では、顔料の質量に対する顔料分散剤の含有量を25質量%以上とすることで、顔料の分散性をより高めて、保存安定性および吐出安定性を高めることができた一方で、フィルターの目詰まりがより生じた。顔料分散剤の量が増えたことで、ミセルがより形成されやすくなったためであると考えられる。これに対して、実験2、8では、同様に顔料の質量に対する顔料分散剤の含有量を25%以上としたとき、保存安定性および吐出安定性を高めつつ、フィルターの目詰まり抑制の効果を維持することができた。条件(a)を満たす顔料分散剤に対して、分散剤のδにより近い溶媒(条件(b)を満たす溶媒)を用いたことで、顔料分散剤の量が増えてもミセル形成を抑制できたものと考えられる。
実験16、17では、顔料濃度が増加することで、フィルターの目詰まりがより生じた。顔料分散剤によるミセルと凝集し得る顔料が増加したためであると考えられる。これに対して、実験2~4では、顔料濃度を5質量%から10質量%まで増加させてもフィルターの目詰まりを抑制する効果を維持することができた。条件(a)、(b)を満たすことで、顔料と凝集し得るミセルを形成しづらくしたためであると考えられる。
条件(a)、(b)を満たさない実験9~18では、保存安定性、吐出安定性、およびシェアリング凝集の評価の少なくともいずれかが低下した。実験10、12、14では、フィルターの目詰まりをある程度抑制できたものの、保存安定性を良好にできなかった。δが高い顔料分散剤の、インク中の水との親和性によりミセルが形成されにくくなったものの、顔料に付着した顔料分散剤が保存中に分離して、顔料の凝集が生じてしまったものと考えられる。
実験19では、インクをフィルターに1回しか通過させていないため、フィルターの目詰まりは生じなかった。
本発明の水系インクジェットインクを用いることにより、フィルターを複数回通過した水系インクジェットインクを、インクジェットヘッドのノズルから吐出する画像形成方法において、上記フィルターの目詰まりを抑制することができ、かつ、インクの保存安定性、および吐出安定性を向上させることができる。そのため、本発明は、例えば、循環流路を用いた画像形成方法において有用である。
100 画像形成装置
101 インクジェットヘッド
102 インクタンク
103 送液ポンプ
104 インク流路
105 搬送装置
106 乾燥機
M 記録媒体

Claims (8)

  1. フィルターを複数回通過したインクを、インクジェットヘッドのノズルから吐出する画像形成方法に用いられる水系インクジェットインクであって、
    前記水系インクジェットインクは、顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤と、を有し、
    条件(a)および条件(b)を満たす、
    水系インクジェットインク。
    条件(a) 前記顔料分散剤は、SP値の水素結合成分が8(MPa)1/2以上23(MPa)1/2以下である
    条件(b) 前記有機溶剤は、SP値の水素結合成分が18(MPa)1/2以下である溶媒を含む
  2. 前記画像形成方法において、前記水系インクジェットインクは、同一のフィルターを複数回通過する、請求項1に記載の水系インクジェットインク。
  3. 前記顔料分散剤は、親水性ブロックと、疎水性ブロックと、を有するブロック共重合体である、請求項1または2に記載の水系インクジェットインク。
  4. 前記顔料の含有量は、前記水系インクジェットインクの全質量に対して、5質量%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水系インクジェットインク。
  5. 前記顔料分散剤の含有量は、前記顔料の全質量に対して、25質量%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の水系インクジェットインク。
  6. 前記有機溶剤の含有量は、前記水系インクジェットインクの全質量に対して、5質量%以上25質量%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の水系インクジェットインク。
  7. SP値の水素結合成分が18(MPa)1/2以下である前記溶媒の含有量は、前記水系インクジェットインクの全質量に対して、5質量%以上25質量%以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の水系インクジェットインク。
  8. フィルターを複数回通過した水系インクジェットインクを、インクジェットヘッドのノズルから吐出する画像形成方法であって、
    請求項1~7のいずれか一項に記載の水系インクジェットインクを、前記インクジェットヘッドの前記ノズルから吐出する工程を有する、
    画像形成方法。
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