JP2023087635A - 中性子発生装置用のターゲット、および、その製造方法 - Google Patents

中性子発生装置用のターゲット、および、その製造方法 Download PDF

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朋弘 米本
Tomohiro Yonemoto
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Abstract

【課題】陽子線が照射されて中性子を発生させるターゲット材と周囲との伝熱性および接合性が向上する中性子発生装置用のターゲット、および、その製造方法を提供する。【解決手段】中性子発生装置用のターゲットは、陽子線が照射されて中性子を発生させるターゲット材51と、ターゲット材51を保持する凹部110が設けられた基板50と、凹部110に保持されたターゲット材51を密封する金属箔52とを備え、ターゲット材51は、リチウムの一部または全部が合金化したリチウム合金材であり、ターゲット材51と基板50が、互いに合金化して接合されている。ターゲットの製造方法は、凹部110に金属リチウムまたはリチウム合金からなる前駆体を配置し、基板50および前駆体を加熱して前駆体を溶融させた後、前駆体を凝固させて、前駆体と基板50とを互いに合金化させて接合し、前駆体が接合された基板50上に金属箔52を接合するものである。【選択図】図2

Description

本発明は、7Li(p,n)7Be反応により中性子を発生させる中性子発生装置用のターゲット、および、その製造方法に関する。
がんを治療する放射線療法の一種に、ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy;BNCT)がある。ホウ素中性子捕捉療法は、腫瘍細胞に選択的に蓄積させたホウ素化合物に中性子を照射し、10B(n,α)Liで表される核反応でα粒子やリチウム原子核を生成させて腫瘍細胞を破壊する治療法である。α粒子やリチウム原子核の飛程は、細胞の大きさと同程度であるため、BNCTによると、正常細胞を大きく損傷すること無く、腫瘍細胞のみを選択的に破壊することができる。
BNCTでは、ホウ素10(10B)を含むホウ素化合物を患者に予め投与し、ホウ素化合物が集積された腫瘍細胞に中性子線を照射する。中性子のエネルギが低いほど、反応断面積が大きくなり、正常細胞の損傷を回避できる一方で、患者の組織の深部に到達する程度の高エネルギも必要とされる。そのため、治療に用いる中性子線は、熱外中性子の強度が高く、高速中性子の混入率が低く、且つ、熱外中性子束に対する熱中性子束の比率が低いことが要求される。
国際原子力機関(International Atomic Energy Agency;IAEA)は、ホウ素中性子捕捉療法に用いる中性子線について設計目標値を設定している。例えば、熱外中性子強度については、治療を短時間に効果的に行う観点から、1×10[n・cm-2・s-1]以上を推奨している。また、高速中性子混入率については、正常細胞の損傷を避ける観点から、2×10-13[Gy・cm]以下を推奨している。
近年、ホウ素中性子捕捉療法に用いられる中性子発生装置は、研究用原子炉等から加速器を利用するものに移行しつつある。中性子源が発生させた高速の中性子線は、熱外領域以下まで減速されて治療に用いられる。加速器を利用する中性子発生装置は、一般に、荷電粒子線を発生させる加速器と、荷電粒子線が照射されて中性子線を発生するターゲットと、ターゲットが発生した中性子線を減速させて被照射体に照射する減速照射装置と、を備えている。
ターゲットは、冷却機構が設けられた基板に、中性子源として機能するターゲット材を保持している。ターゲット材は、荷電粒子線の照射によって中性子発生反応を起こす材料である。ターゲット材としては、Li(p,n)Beの反応を生じるリチウムや、Be(p,n)B、Be(p,xn)の反応を生じるベリリウムや、核破砕反応を生じるタンタル、タングステン等の重金属について検討されている。
ターゲット材として、リチウムやベリリウムを用いると、重金属による核破砕反応と比較して、ガンマ線の発生が少なくて済む。そのため、患者に対する遮蔽が容易となり、治療の安全性も高くなる。また、リチウムを用いると、ベリリウムの場合と比較して、低い入射陽子エネルギで中性子を発生させることができる。すなわち、発生する中性子線のエネルギだけでなく、二次放射線の発生も低く抑えることができる。
入射陽子エネルギの閾値は、Be(p,n)Bの反応では、約2.06MeVであるのに対し、Li(p,n)Beの反応では、約1.88MeVである。また、リチウムとベリリウムとを比較すると、巨視的断面積についてはリチウムの方が入射陽子エネルギの全般にわたって大きい。そのため、リチウムは、中性子発生装置を、低放射化、小型化ないし軽量化するのに適したターゲット材としても有望視されている。ターゲット材としてリチウムを用いると、不要な中性子や放射化した装置が放出する放射線が抑制されるため、患者等の被曝を低く抑えることができる。
非特許文献1には、銅で形成された基板上にリチウムを蒸着させたターゲットにおいて、ブリスタリングによる影響を解析した結果が記載されている。陽子線の照射によって金属内で生成した水素が、銅基板の表面にブリスタリングを生じるが、中性子収率への影響は小さいことが示されている。リチウムの蒸着膜と銅基板との界面には、陽子線の照射によって、アモルファス状の銅やリチウム銅合金の層が形成されたことが開示されている。
Timofey Bykov et al., Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B, Vol. 481, 15 October 2020, p.62-81
中性子を発生させるターゲット材としてリチウムを用いる場合、リチウムの融点が180℃程度と低く、ターゲット材が溶融し易い一方で、入射陽子エネルギ密度としては数MW/mを超える高エネルギ密度が必要になる。そのため、中性子発生装置用のターゲットには、熱負荷を効率的に除熱でする構造が必要とされる。
基板上に保持させたターゲット材を除熱する方法としては、基板に対して冷却材を循環させて、基板と冷却材との間で熱交換を行う方法がある。このような方法で高い冷却効率を得るには、ターゲット自体に優れた伝熱性が必要とされる。ターゲットを構成する基板等に熱伝導率が高い材料を用いるだけでなく、ターゲット材と基板との間等についても、優れた伝熱性、すなわち、低い熱抵抗を確保する必要がある。
また、中性子を発生させるターゲットに陽子を照射すると、ターゲットの内部で陽子が一定の深さで停止するためにターゲット基板に亀裂を生成される(ブリスタリングが生じる)可能性がある。ブリスタリングは、ターゲットの内部で集中して蓄積される水素により水素ガスによる膨れが生じ、基板材等の内部に気泡状の空間を形成する現象である。このようなブリスタリングを生じると、ターゲット材と基板との間で熱抵抗が増大したり、水素脆化が起こったりするため、ブリスタリングへの対策が必要とされる。
ブリスタリングへの対策としては、入射陽子エネルギを高くしてターゲット材に入射する陽子の飛程を長くする方法や、バッキング基板として耐ブリスタリング性が高いタンタル等を用いる方法がある。しかし、入射陽子エネルギを高くする方法では、ターゲット材から発生する中性子も高エネルギとなるため、減速体系や被曝対策等への影響が大きいという問題がある。また、バッキング基板を用いる方法では、基板の材質が限定されるため、熱伝導率が高い材料や熱抵抗が低い構造の採用が妨げられるという問題がある。
また、中性子を発生させるターゲット材としてリチウムを用いる場合、リチウムと空気中の酸素、窒素、水分等とが反応し易く、また、陽子線が照射された場合にリチウムが溶融する虞があるため、リチウムを密封する構造が必要とされる。ターゲット材として固体状のリチウムを用いる場合、基板上に保持させたターゲット材は、金属箔で覆うことによって密封することができる。しかし、このような構造において、金属箔には大きな熱負荷や加熱されたターゲット材からの圧力が加わるため、高い伝熱性や接合性が確保されていなければならない。
例えば、ターゲット材と金属箔との間で伝熱性が低いと、基板側に流される冷却材によって金属箔が除熱され難くなるため、金属箔が焼損する虞がある。また、ターゲット材と金属箔との接合性が低いと、熱膨張や熱収縮或いは外力が加わった場合に、ターゲット材と金属箔との間に隙間を生じ易くなり、ターゲット材と金属箔との間で熱抵抗が増大したり、ターゲット材が溶融した場合に偏りを生じたりする。
非特許文献1には、ターゲット材であるリチウムの蒸着膜と銅基板との界面に、アモルファス状の銅やリチウム銅合金の層が形成されており、リチウム層と銅表面との接着性が改善されることが開示されている。しかし、これらの層は、蒸着膜の場合に陽子線の照射時に形成されたものであり、銅基板のエロージョンを伴っているため、信頼性が高い構造であるとはいえない。ターゲット材とターゲット材の周囲の基板や金属箔との間で、高い伝熱性や接合性が得られる構造が求められている。
そこで、本発明は、陽子線が照射されて中性子を発生させるターゲット材と周囲との伝熱性および接合性が向上する中性子発生装置用のターゲット、および、その製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために本発明に係る中性子発生装置用のターゲットは、Li(p,n)Be反応により中性子を発生させる中性子発生装置用のターゲットであって、陽子線が照射されて中性子を発生させるターゲット材と、前記ターゲット材を保持する凹部が設けられた基板と、前記凹部に保持された前記ターゲット材を密封する金属箔と、を備え、前記ターゲット材は、リチウムの一部または全部が合金化したリチウム合金材であり、前記ターゲット材と前記基板とが、互いに合金化して接合されている。
また、本発明に係る中性子発生装置用のターゲットの製造方法は、Li(p,n)Be反応により中性子を発生させる中性子発生装置用のターゲットの製造方法であって、基板に設けられた凹部に金属リチウムまたはリチウム合金からなる前駆体を配置し、前記基板および前記前駆体を加熱して前記前駆体を溶融させた後、前記前駆体を凝固させて、前記前駆体と前記基板とを互いに合金化させて接合し、前記前駆体が接合された前記基板上に金属箔を接合する。
本発明によると、陽子線が照射されて中性子を発生させるターゲット材と周囲との伝熱性および接合性が向上する中性子発生装置用のターゲット、および、その製造方法を提供することができる。
ターゲットを備えた中性子発生装置の概略構成を示す図である。 本発明の実施形態に係る中性子発生装置用ターゲットの一例を示す斜視図である。 中性子発生装置用ターゲットの横断面図である。 中性子発生装置用ターゲットの縦断面図である。 合金化されたターゲット材の構造例を模式的に示す図である。 合金化されたターゲット材の構造例を模式的に示す図である。 合金化されたターゲット材の構造例を模式的に示す図である。 本発明の実施形態に係る中性子発生装置用ターゲットの製造方法の一例を示す図である。 中性子発生装置用ターゲットにおける陽子線のエネルギ損失を示す図である。 Cuコート有り金属箔を用いた中性子発生装置用ターゲットの電子線照射前および電子線照射後の外観を示す写真画像である。 Cuコート有り金属箔を用いた中性子発生装置用ターゲットの電子線照射中の赤外線写真画像である。 Cuコート有り金属箔を用いた中性子発生装置用ターゲットの電子線照射中の電流値の時間変化および真空度の時間変化を示す図である。 Cuコート有り金属箔を用いた中性子発生装置用ターゲットの電子線照射中の入熱密度の時間変化を示す図である。 Cuコート無し金属箔を用いた中性子発生装置用ターゲットの電子線照射前および電子線照射後の外観を示す写真画像である。 Cuコート無し金属箔を用いた中性子発生装置用ターゲットの電子線照射中の赤外線写真画像である。 Cuコート無し金属箔を用いた中性子発生装置用ターゲットの電子線照射中の電流値の時間変化および真空度の時間変化を示す図である。 Cuコート無し金属箔を用いた中性子発生装置用ターゲットの電子線照射中の入熱密度の時間変化を示す図である。 Cuコート有り金属箔を用いた中性子発生装置用ターゲットの陽子線照射前および陽子線照射後の外観を示す写真画像である。 Cuコート有り金属箔を用いた中性子発生装置用ターゲットの陽子線照射中の赤外線写真画像である。
以下、本発明の一実施形態に係る中性子発生装置用のターゲット、および、その製造方法について、図を参照しながら説明する。
<中性子発生装置>
図1は、ターゲットを備えた中性子発生装置の概略構成を示す図である。
図1に示すように、中性子発生装置100は、陽子線発生装置1と、中性子減速照射装置2と、導管4と、中性子発生装置用ターゲット5と、を備えている。符号3は被照射体、符号6は陽子線、符号7は磁気集束レンズ、符号9は中性子線を示す。
中性子発生装置100は、中性子特性が制御された中性子線を発生させる装置である。中性子発生装置100では、中性子の発生に固体のリチウムが用いられる。また、核反応を起こす荷電粒子線の線源として加速器が用いられる。中性子発生装置100は、Li(p,n)Beで表される核反応によって中性子を発生させて、熱外中性子のエネルギ帯域に制御された中性子線を標的の被照射体3に照射する。
中性子発生装置100は、例えば、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)における中性子源として用いることができる。BNCTの用途において、陽子線発生装置1や中性子減速照射装置2は、例えば、病院内、治療施設内等に設置することができる。中性子発生装置100は、頭頸部等にがんを持つ悪性腫瘍患者等の治療に用いることができる。
中性子発生装置100の運転時において、陽子線発生装置1は、所定のエネルギの陽子線6を発生させる。陽子線6は、導管4を通じてターゲット5に照射される。ターゲット5は、所定のエネルギの陽子線6が入射すると、Li(p,n)Beで表される核反応を起こして中性子線を発生させる。中性子減速照射装置2は、ターゲット5が出射した中性子を所定のエネルギ帯域まで減速させて、整形された中性子線9を出射する。
中性子減速照射装置2から出射された中性子線9は、標的の被照射体3に照射される。被照射体3は、例えば、悪性腫瘍患者の患部組織等である。BNCTによる治療を受ける患者には、腫瘍細胞等の標的に集積するホウ素化合物が予め投与される。ホウ素10(10B)が集積した細胞に中性子線9を照射すると、10B(n,α)Liで表される核反応によってα粒子やリチウム原子核が生成する。これらの核種の照射によって、患部組織中の腫瘍細胞等を損傷させて、悪性腫瘍等を治療することができる。
BNCTの用途において、被照射体3に照射される中性子線9の熱外中性子束は、治療を短時間に効果的に行う観点から、1×10[n/cm/s]以上が推奨される。また、中性子線9の高速中性子混入率は、正常細胞の損傷を避ける観点から、2×10-13[Gy/cm]以下が推奨される。また、中性子減速照射装置2から出射される中性子線9については、高速中性子線やガンマ線の混入も防止する必要がある。
そのため、中性子減速照射装置2では、適切な種類の減速材や、適切に構成された減速体系を用いて、ターゲット5が発生した中性子を熱外中性子のエネルギ帯域まで減速させる。また、適切な種類の減速材、遮蔽材等や、適切に構成された減速体系、コリメータ等を用いて、ターゲット5が発生した中性子線に混入している速中性子線やガンマ線等の成分を遮蔽し、必要な中性子特性の中性子線を被照射体3に向けて照射する。
図1に示すように、陽子線発生装置1は、陽子を発生させるイオン源1aと、陽子を加速する加速器1bと、を備えている。イオン源1aとしては、例えば、電子サイクロトロン共鳴(Electron Cyclotron Resonance;ECR)イオン源が用いられる。加速器1bとしては、例えば、静電型加速器が用いられるが、線形加速器等を用いてもよい。
ECRイオン源は、強磁場下のチャンバ内に水素ガスを導入し、高周波を印加して電子サイクロトロン共鳴を生じさせて、高密度の水素のプラズマを生成する。チャンバ内に生成した水素イオン()は、多重極の磁気ミラーが作る磁場下で他のイオン種から選別され、電極によってチャンバ内から引き出される。ECRイオン源は、無電極放電によるため、長時間にわたって安定に運転することができる利点がある。
静電型加速器は、電極間に直流高電圧を印加し、一定した静電界の下で荷電粒子を加速する。静電型加速器によると、連続した陽子線6を発生させることができる。静電型加速器としては、例えば、ダイナミトロン型加速器、コッククロフトウォルトン型加速器、バンデグラフ型加速器等を用いることができる。線形加速器は、筒電極内に交流電場を印加し、高周波の交流電場中で荷電粒子を加速する。線形加速器としては、例えば、RFQ(Radio-Frequency Quadrupole)ライナック等が挙げられる。
導管4は、陽子線発生装置1とターゲット5との間を接続しており、陽子線発生装置1が発生させた陽子をターゲット5に導く高真空度の経路を形成している。導管4の中間部には、陽子線6が幅方向に発散するのを抑制するための磁気集束レンズ7が設置されている。導管4の末端には、陽子線6を集束させるためのコリメータが設置されている。
磁気集束レンズ7は、例えば、複数の四重極電磁石によって構成することができる。四重極電磁石は、それぞれの極性を反転させて、陽子線6の照射方向に沿って導管4上に配置することができる。コリメータは、例えば、所定のビーム径に対応した貫通孔を有する形状に設けることができる。このような形状のコリメータで、照射方向の外側の陽子線6を遮蔽して、ターゲット5に照射される陽子線6を絞り込む。
なお、導管4は、図1に示すような直線状の経路に限定されるものではない。導管4は、中性子発生装置100が設置される場所等に応じて、曲線部を有する任意の形状の経路に設けることができる。導管4の曲線部には、陽子線6を偏向させる偏向電磁石等を配置することができる。例えば、陽子線発生装置1を病院や治療施設等の機械室に設置し、中性子減速照射装置2やターゲット5を治療室に設置して、治療室内の被照射体3に中性子線9を照射することができる。
ターゲット5は、導管4の末端に配置されるターゲットホルダに支持される。ターゲット5は、固体状のターゲット材を保持しており、陽子線6が照射されると、Li(p,n)Beで表される核反応によって中性子を発生させる。ターゲット5には、陽子線6による入熱で熱負荷がかかるため、ターゲット5やターゲットホルダには、冷却機構が設けられる。冷却機構としては、冷却材をターゲット5に対して循環させて熱交換によって除熱する機構を備えることができる。
Li(p,n)Beで表される核反応は、中性子を発生させるエネルギの閾値が、約1.88MeVである。一方、ターゲット5に対する入射陽子エネルギが高すぎると、高エネルギの中性子が発生するため、高エネルギの中性子を減速させるために、大型の減速体や、患者の被曝を避けるための高度な遮蔽が必要になる。そのため、陽子線発生装置1では、この閾値以上であり、且つ、高エネルギの中性子の発生が抑制される程度の低いエネルギを持つ陽子線6を生成する。
陽子線発生装置1が発生させる陽子線6のエネルギは、好ましくは3.0MeV以下、より好ましくは2.9MeV以下である。また、好ましくは2.5MeV以上、より好ましくは2.7MeV以上である。また、陽子線発生装置1で用いられる電流値は、10mA以上100mA以下であり、ターゲット5に対する熱負荷を抑制する観点からは、好ましくは10mA以上20mA以下とする。
図1に示すように、中性子減速照射装置2は、中性子を減速させる減速体2aと、中性子線を整形するコリメータ2bと、を備えている。中性子減速照射装置2は、ターゲット5が発生させた中性子を、主として熱外中性子のエネルギ帯域まで減速させると共に、ターゲット5から全方向に拡散する中性子を一つの照射方向に集束させて、被照射体3に整形された中性子線9を出射する。
なお、図1において、中性子減速照射装置2の形状や構造は、模式的に示されている。中性子減速照射装置2は、中性子を減速させる機能、中性子線を整形ないし照射する機能等が妨げられない限り、適宜の形状や構造に設けることができる。減速体2aやコリメータ2bは、中性子を減速させる減速材、中性子を反射する反射材、中性子を吸収する吸収材、中性子やガンマ線を遮蔽する遮蔽材等が、適切な配置で組み合わされて構成される。
減速体2aは、ターゲット5の側方および後方(陽子線6の照射方向における下流側)を囲むように配置することができる。減速体2aは、ターゲット5が発生させた速中性子等を、主として熱外中性子のエネルギ帯域まで減速させる。また、減速体2aは、ターゲット5が発生させた中性子の漏洩を防ぎつつ、ターゲット5から拡散する中性子をコリメータ2bに向けて反射・散乱させる。
図1に示すように、減速体2aにおいて、ターゲット5の前方(陽子線6の照射方向における上流側)には、ターゲット5への陽子線6の入射路が設けられている。陽子線6の入射路には、減速材や反射材が配置されてなく、その末端には、ターゲット5を保持するターゲットホルダが配置される。ターゲット5の後方には、中性子を減速させる減速材や、熱中性子やガンマ線を遮蔽する遮蔽材が配置される。ターゲット5と減速体2aとの間には、中性子を増幅させる増幅材を配置してもよい。
また、ターゲット5の側方には、ターゲット5の周囲を囲むように減速材が配置される。減速材の外側には、陽子線6の入射路とターゲット5の後方を除いて、中性子を反射させる反射材や、中性子を吸収する吸収材が配置される。ターゲット5の側方に配置される減速材は、陽子線6の照射方向における上流側の端部が、ターゲット5よりも上流側に位置するように配置されることが好ましい。このような配置によると、上流側に拡散した中性子を減速させつつ、コリメータ2bに向けて反射・散乱させることができる。そのため、中性子減速照射装置2から出射される熱外中性子束を高めることができる。
減速材としては、フッ化マグネシウム(MgF)、または、フッ化カルシウム(CaF)を用いることが好ましい。フッ化マグネシウムやフッ化カルシウムとしては、単結晶体または単結晶同士が焼結した焼結体を用いることができる。フッ化マグネシウムやフッ化カルシウムは、ターゲット5への入射陽子エネルギが10MeV以下である場合に、中性子をより効率的に減速させる。そのため、フッ化マグネシウムやフッ化カルシウムを用いると、ターゲット5が発生させた中性子を熱外中性子のエネルギ帯域まで効率的に減速し、速中性子については大半を吸収させることができる。
反射材としては、例えば、鉛(Pb)、黒鉛(C)、鉄(Fe)、ベリリウム(Be)、ビスマス(Bi)等を用いることができる。反射材としては、中性子の散乱断面積が大きく、熱外中性子の吸収が少なく、ガンマ線の遮蔽能が高い点等から、鉛、または、鉛-錫合金、鉛-アンチモン合金、鉛-ビスマス合金等の鉛合金が好ましい。
吸収材としては、例えば、ホウ素-ポリエチレン、フッ化リチウム-ポリエチレン、パラフィン、炭化ホウ素等のホウ素化合物等を用いることができる。
遮蔽材としては、例えば、カドミウム(Cd)、インジウム(In)、ハフニウム(Hf)、ガドリニウム(Gd)、ビスマス(Bi)、鉄(Fe)、鉛(Pb)、フッ化鉛(PbF)、炭化ホウ素等のホウ素化合物、パラフィン、水、フッ化リチウム-ポリエチレン、ホウ素-ポリエチレン等を用いることができる。
コリメータ2bは、減速体2aの後方(陽子線6の照射方向における下流側)に配置される。コリメータ2bは、減速体2aによって減速された中性子線を所定のビーム径に集束させると共に、中性子減速照射装置2から出射される中性子線9に混入している熱中性子線やガンマ線等を遮蔽し、これらの放射線が被照射体3に向けて照射されないようにする。
図1に示すように、コリメータ2bの中央には、ターゲット5からの中性子線9の出射路が設けられている。中性子線9の出射路は、減速材が配置されてなく、中性子線9が集束しつつ直進するように空気層や遮蔽材のシールドで構成されている。中性子線9の出射路の側方には、出射路を囲むように反射材等が配置される。中性子線9の出射路の側面に配置される反射材は、コリメータ2bの後方に向けてテーパ状に縮径する形状に設けることができる。コリメータ2bの後部には、被曝を低減する観点から、中性子を吸収する吸収材や、中性子やガンマ線を遮蔽する遮蔽材を配置することが好ましい。
図1に示すように、コリメータ2bの後方には、装置の外側に突出するように延長コリメータを設けることができる。延長コリメータは、中性子線9の出射路の周縁部から後方(陽子線6の照射方向における下流側)に向かって突出しており、後方に向かうに連れてテーパ状に縮径して円錐台形状を呈している。延長コリメータは、反射材、吸収材、遮蔽材等が、適切な配置で組み合わされて構成されている。
延長コリメータの中央には、コリメータ2bと同様に、中性子線9の出射路が設けられている。中性子線9の出射路は、空気層や遮蔽材のシールドで構成することができる。中性子線9の出射路の側方には、出射路を囲むように反射材等が配置される。中性子線9の出射路の側面に配置される反射材は延長コリメータの後方に向けてテーパ状に縮径する形状に設けることができる。反射材の外側には、例えば、吸収材を配置することができる。
このような延長コリメータを設けると、頭頚部に対するBNCT等の場合に、治療の標的の患部組織に対し、より直接的に中性子線9を照射することができる。患者と装置との干渉を低減することができるため、患者に無理な体勢を強いることなく、患部組織に所定の中性子線9を精密に照射することができる。そのため、高強度の熱外中性子線によって短時間に被曝を抑制して治療を行うことができる。但し、延長コリメータの設置は、省略されてもよい。
次に、中性子発生装置100の中性子源として用いられる中性子発生装置用ターゲット5の詳細について、図を参照しながら説明する。このターゲット5は、中性子を発生させるターゲット材として、リチウムの一部または全部が合金化したリチウム合金材を用いることを一つの特徴としている。ターゲット材は、ターゲット材を保持する基板等に対して、原子の拡散によって合金化されて接合される。
<中性子発生装置用ターゲット>
図2は、本発明の実施形態に係る中性子発生装置用ターゲットの一例を示す斜視図である。図3は、中性子発生装置用ターゲットの横断面図である。図4は、中性子発生装置用ターゲットの縦断面図である。図3は、図2のI-I線における断面図を示す。図4は、図3のII-II線における断面図を示す。図2、図3および図4には、中性子発生装置100の中性子源として用いられる中性子発生装置用ターゲット5の一例として、平面視で矩形状に設けられた例を示す。
図2、図3および図4に示すように、中性子発生装置用ターゲット5は、基板50と、ターゲット材51と、金属箔52と、を備えている。中性子発生装置用ターゲット5の長さおよび幅は、例えば、5mm以上15mm以下に設けることができる。但し、中性子発生装置用ターゲット5の大きさや形状は、所定の中性子を発生させる限り、特に制限されるものではない。
基板50は、ターゲット5の本体を構成しており、ターゲット材51を保持している。図2、図3および図4において、基板50は、平面視で矩形状に設けられており、保持板50Aと裏板50Bとが重ね合わされて形成されている。保持板50Aおよび裏板50Bは、平面視で矩形状に設けられており、長さや幅が互いに同等とされている。ターゲット材51は、保持板50Aの表側の主面上に保持されている。
中性子発生装置100において、基板50は、ターゲット5を陽子線6の照射位置に固定するために、所定のターゲットホルダに装着される。ターゲットホルダは、例えば、導管4の末端のコリメータと一体的に結合させて配置することができる。ターゲットホルダには、陽子線6が入射するターゲット材51等を除熱するために冷却機構を備えることができる。冷却機構としては、例えば、ターゲット材51等を熱交換によって冷却する冷却材をターゲット5に対して循環させる機構が挙げられる。
中性子発生装置100において、保持板50Aは、ターゲット5のうち陽子線6が入射する側、すなわち、図1における導管4の側に配置される。一方、裏板50Bは、ターゲット5のうち中性子線が出射する側、すなわち、図1における減速体2aの側に配置される。Li(p,n)Beで表される核反応を起こすための陽子線6は、保持板50Aの中央付近に照射される。
図2に示すように、保持板50Aは、表側の主面が外縁部を残して減肉された形状とされており、枠状の外縁部の内側に凹部110を有している。凹部110は、平面視で矩形状を呈しており、一様の厚さで減肉された直方体状の空間を形成している。凹部110は、ターゲット材51を密閉的に保持するための部位となる。
ターゲット材51を凹部110に保持する構造によると、凹部110内のターゲット材51を金属箔52で確実に密封することができる。そのため、ターゲット材51中のリチウムと空気中の酸素、窒素、水分等との反応を適切に防止することができる。また、ターゲット材51が陽子線6による入熱で溶融したとしても、ターゲット材51の漏洩を防止することができる。
なお、図2においては、凹部110内のターゲット材51の一部について、図示を省略している。しかし、ターゲット5の使用時には、凹部110の全体に略隙間なくターゲット材51が保持される。略隙間がない構造によると、ターゲット材51が陽子線6による入熱で溶融した場合に、凹部110内で偏りを生じるのを防止することができる。そのため、ターゲット5の繰り返し使用や、ターゲット5が発生させる中性子線9の線質の安定化が可能になる。
図3および図4に示すように、保持板50Aは、裏側の主面が溝状に減肉されており、凹部110の裏側に複数の条溝120を有している。各条溝120は、保持板50Aの平面視で細長の矩形状を呈している。また、所定の厚さおよび幅で減肉されており、横断面視で矩形状を呈している。各条溝120は、互いに平行に所定の間隔で並列しており、保持板50Aの裏面の一端から他端まで貫通するように設けられている。
保持板50Aおよび裏板50Bは、それぞれ、銅または銅合金で形成されることが好ましく、銅で形成されることが特に好ましい。このような熱伝導率が高い材料で形成すると、条溝120によって形成される冷却チャンネル130に冷却材を通流させた場合に、陽子線6による入熱で熱負荷がかかるターゲット材51等を効率的に除熱することができる。また、機械的強度や加工性に優れるため、所定の形状に成形された高強度な基板50を比較的低コストで得ることができる。また、陽子線6が照射されてもガンマ線が発生し難いため、二次的な放射線を抑制できる。
なお、ターゲット5に照射する陽子線6のエネルギを高くすると、陽子線6がターゲット材51を通過し易くなるため、ターゲット材51中でガンマ線が発生するのを抑制することができる。しかし、このような照射条件の場合、ターゲット材51の後方の基板50でブリスタリングが発生する虞がある。ブリスタリングが生じると、ターゲット材51が保持板50Aから剥離したり、ターゲット材51と保持板50Aとの間における熱抵抗が増大したりする。ブリスタリングを避けるためには、通常、バッキング基板として、耐ブリスタリング性が高いタンタル等を用いることが求められる。
これに対し、ターゲット5に照射する陽子線6のエネルギを従来よりも若干低くすると共に、ターゲット材51を250μm程度以上まで厚くし、陽子線6の飛程の終端がターゲット材51の内部に収まるような照射条件とすると、バッキング基板として耐ブリスタリング性が高い材料を用いることなく、ブリスタリングを抑制することができる。耐ブリスタリング性が高いが熱伝導率に劣る材料を用いる必要がなくなるため、保持板50Aや裏板50Bを、銅や銅合金等の熱伝導率が高い材料のみで形成することが可能になる。銅や銅合金等の熱伝導率が高い材料のみを用いると、ターゲット材51等の冷却効率を従来よりも向上させることができる。
図2および図3に示すように、保持板50Aと裏板50Bは、互いに重ね合わされた状態で接合される。接合法としては、例えば、圧接、拡散接合、溶接、ろう付け等の冶金的接合法や、ボルト、スクリュ、クランプ等を用いた機械的接合法等の各種の方法を用いることができる。保持板50Aと裏板50Bとの接合は、条溝120の周辺の接合面に水密性が確保されるように行うが、必要に応じてシール材等を用いてもよい。保持板50Aの加工は、フライス加工、放電加工、エッチング加工等によって行うことができる。
図2および図3に示すように、保持板50Aと裏板50Bとが、互いに重ね合わされると、保持板50Aに設けられた条溝120は、冷却チャンネル130を形成する。冷却チャンネル130は、基板50の横断面視で矩形状を呈し、互いに平行に所定の間隔で並列するように形成される。また、基板50の一端面から反対側の他端面まで貫通する構造として形成される。冷却チャンネル130は、ターゲット材51や基板50等を冷却するための冷却材が流される流路となる。
冷却チャンネル130は、基板50の一端面および反対側の他端面のそれぞれにおいて、基板50に対して冷却材を供給するための冷却材供給路や、基板50から冷却材を排出するための冷却材排出路と接続される。冷却材供給路や冷却材排出路は、基板50に取り付けられるマニホールド、ターゲットホルダに設けられるチャンネル、チューブやホース等の配管等によって形成することができる。
冷却チャンネル130に通流させる冷却材としては、例えば、水を用いることができる。冷却チャンネル130における冷却材の入口温度は、例えば、常温(20±15℃)とすることができる。また、冷却チャンネル130における冷却材の平均流速は、例えば、2m/s以上、好ましくは5m/s以上とする。互いに並列した冷却チャンネル130には、陽子線6がターゲット5に照射される間に、冷却材を並向流として流すことができる。図4の矢印は、冷却材の流れ方向を示す。
図4に示すように、冷却チャンネル130は、ターゲット材51が保持される側の壁面、すなわち、保持板50Aの裏側の主面から突出するように、複数のリブ56を有する構造に設けることができる。リブ56は、冷却チャンネル130の長手方向に沿った中心軸(図中に鎖線で示す)に対して左右の両側に設けられている。リブ56は、中心軸に対する左右の両側のそれぞれにおいて、冷却チャンネル130の長手方向に沿って所定の間隔を空けて配列している。リブ56同士の間隔は、左右の両側で互いに同等とされている。
リブ56は、冷却チャンネル130の中心軸に対する左右の両側の壁面から、それぞれ、中心軸の位置まで延在している。図3に示すように、冷却チャンネル130の横断面視において、リブ56は、中心軸に対する一方側の壁部から他方側の壁部にかけて略隙間なく延在している。リブ56は、条溝120が形成された保持板50Aの裏側の主面から、冷却チャンネル130の左右の横幅の1/5程度の高さで突出している。
図4に示すように、リブ56は、保持板50Aの平面視で平行四辺形状を呈している。左右の各リブ56は、冷却チャンネル130の中心軸の位置から左右の外側に向かうに連れて冷却材の流れ方向の下流側に位置するように傾斜して延びている。間隔を空けて配列している左右のリブ56は、冷却チャンネル130の中心軸を挟んで、冷却材の流れ方向に沿って互い違いに配列している。
このようなリブ56を設けると、冷却チャンネル130の表面積が拡大すると共に、冷却材の流れの乱流化が促進されるため、冷却材によるターゲット材51等の冷却効率が高められる。冷却材の流れは、リブ56に衝突して剥離し、下流側に配置されている次のリブ56に再付着する。また、リブ56に衝突してターゲット材51側に潜り込み、リブ56同士の間で、冷却チャンネル130の中心軸に垂直な回転軸を持つような渦状の二次的な循環流を生じる。そのため、冷却材の乱流化や、冷却材の衝突による蒸気膜の破壊が進み、熱伝達率が大きく向上する効果が得られる。
特に、リブ56が左右の外側に向かうに連れて冷却材の流れ方向の下流側に位置するように傾斜していると、リブ56に衝突した冷却材の流れが、左右方向の流れに積極的に変換されるため、左右方向に流れる旋回流や剪断流が発達する。また、左右のリブ56が冷却材の流れ方向に沿って互い違いに配列していると、左右方向に流れる旋回流や剪断流が交互に反対向きに発達する。そのため、これらの構造によると、冷却材の流れの乱流化を大きく促進させて冷却効率を高めることができる。
冷却チャンネル130のターゲット材51側の壁面には、微細な窪み状のマイクロピットを形成することが好ましい。マイクロピットは、冷却チャンネル130の壁面に略逆円錐台状に窪んだテーパ穴として設けることができる。このようなテーパ穴の底面は、球状底面、U字状底面等のいずれであってもよい。マイクロピットは、例えば、冷却チャンネル130のターゲット材51側の壁面、すなわち、保持板50Aの裏側の主面に、レーザ加工を施すことによって形成することができる。
マイクロピットは、冷却チャンネル130のターゲット材51側の壁面のうち、冷却チャンネル130の長手方向に沿って配列しているリブ56同士の間に設けることができる。マイクロピットは、格子配列、千鳥配列等の適宜の配列で、多数個を行列状に設けることが好ましい。特に、リブ56同士の間の冷却チャンネル130のターゲット材51側の壁面のうち、冷却材の流れの上流側に位置する半部の領域に設けることが好ましい。
このようなマイクロピットを設けると、冷却材の沸騰核として機能させることができる。陽子線6による入熱でターゲット材51が加熱されると、冷却チャンネル130を通流する冷却材が温度上昇して蒸気が発生する。ターゲット材51側で発生した蒸気は、マイクロピットの内側に捕捉されて成長し、膨張した気泡としてマイクロピットから放出される。そのため、核沸騰型の冷却を促進させて、冷却材による除熱効率を大きく高めることができる。
図2および図3に示すように、ターゲット材51は、保持板50Aに設けられた凹部110に略隙間なく保持される。ターゲット材51としては、周囲の部材に対して合金化によって接合されており、リチウムの一部または全部が合金化した固体状のリチウム合金材が備えられる。中性子発生装置100では、このような固体状のリチウム合金材に陽子線6を照射して、Li(p,n)Beで表される核反応によって中性子を発生させる。
図5A、図5Bおよび図5Cは、合金化されたターゲット材の構造例を模式的に示す図である。図5A、図5Bおよび図5Cは、ターゲット材51主要部の横断面に相当し、ターゲット5を構成する各層を、合金元素の濃度に応じて模式的に図示している。
図5A、図5Bおよび図5Cにおいて、符号51aは、リチウムと他の合金元素とが合金化された合金層を示す。網掛けが薄い領域は、リチウムの濃度が高く、リチウム以外の合金元素の濃度が低い領域である。網掛けが濃い領域は、リチウム以外の合金元素の濃度が高い領域である。
ターゲット材51は、図5Aおよび図5Bに示すように、リチウムの一部が合金化された構造であってもよいし、図5Cに示すように、リチウムの全部が合金化された構造であってもよい。また、図5Aに示すように、基板50に近接する側および金属箔52に近接する側の両方が合金化されてもよいし、図5Bに示すように、基板50に近接する側のみが合金化されてもよい。
図5Aでは、ターゲット材51の基板50に近接する一部や、ターゲット材51の金属箔52に近接する一部が、合金元素の濃度が高いリチウム合金で形成されており、ターゲット材51の基板50や金属箔52から離隔した残部が、合金元素の濃度が低いリチウム金属で形成されている。ターゲット材51と基板50、あるいは、ターゲット材51と金属箔52とは、原子が相互拡散した合金層51aを介して互いに一体的に接合されている。
図5Bでは、ターゲット材51の基板50に近接する一部が、合金元素の濃度が高いリチウム合金で形成されており、ターゲット材51の基板50から離隔した残部が、合金元素の濃度が低いリチウム金属で形成されている。ターゲット材51と基板50とは、原子が相互拡散した合金層51aを介して互いに一体的に接合されている。ターゲット材51と金属箔52とは、界面で密着するように設けられている。
図5Cでは、ターゲット材51の全部が、合金元素の濃度が高いリチウム合金で形成されている。ターゲット材51である合金層51aと基板50、あるいは、ターゲット材51である合金層51aと金属箔52とは、原子が相互拡散して互いに一体的に接合されている。合金層51aに含まれる合金元素は、基板50や金属箔52から拡散されてもよいし、ターゲット材51に予め含有されてもよい。
合金化されたターゲット材51は、リチウム金属等のターゲット材51の前駆体と、基板50や金属箔52とを、互いに密着させた後、これらを熱処理して原子を相互拡散させる方法によって形成することができる。リチウム金属等のターゲット材51の前駆体には、リチウム以外の合金元素を予め添加しておくこともできる。
例えば、基板50や金属箔52の材料として、リチウムと合金化する金属材料を用いて、ターゲット材51の前駆体と基板50や金属箔52とを密着させた状態で熱処理する方法や、ターゲット材51と金属箔52との間に金属層を形成して、ターゲット材51の前駆体と金属層とを密着させた状態で熱処理する方法や、ターゲット材51と基板50との間に金属箔を配置して、ターゲット材51の前駆体と金属箔とを密着させた状態で熱処理する方法等が挙げられる。
合金化されたターゲット材51は、主成分であるリチウム(Li)と、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)および亜鉛(Zn)のうちの一種以上と、を含むリチウム合金であることが好ましい。リチウム合金の具体例としては、リチウム-銅合金、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-亜鉛合金や、これらの元素のうちの三種以上を含む多元合金等が挙げられる。Cu量としては、20at%以下が好ましい。Al量としては、45at%以下が好ましい。Mg量としては、70at%以下が好ましい。
図2および図3に示すように、金属箔52は、凹部110に保持されたターゲット材51を密封するように備えられる。各図において、金属箔52の縦幅および横幅は、それぞれ、凹部110の縦幅および横幅よりも大きく設けられており、凹部110の全体が金属箔52で覆われている。
金属箔52の外縁側は、保持板50Aの表側の主面の外縁部に対し、圧接等によって接合してもよいし、加工によって設けた接合部150を介して接合してもよいし、圧接等によって接合した後に、加工によって接合部150を設けて接合してもよい。圧接等によって原子を相互拡散させて接合する場合、ターゲット材51と金属箔52との間に金属層を形成しておくことが好ましい。なお、図2において、接合部150は、金属箔52の外縁側に全周にわたって形成されている。接合部150は、電子ビーム溶接、レーザ溶接、圧接、拡散接合、クリンチング等の各種の方法によって形成することができる。接合部150を設けると、保持板50Aと金属箔52との隙間を閉塞して、凹部110内の気密性および液密性を確保することができる。
金属箔52の中央側は、ターゲット材51と密着している限り、ターゲット材51と合金化されて接合されてもよいし、ターゲット材51と接合されなくてもよい。金属箔52の中央側をターゲット材51と接合しない場合は、金属箔52の外縁側を保持板50Aに接合する必要がある。但し、部材間の伝熱性や接合性を確保する観点からは、金属箔52の中央側をターゲット材51と合金化させて接合すると共に、金属箔52の外縁側を保持板50Aに接合することが好ましい。
金属箔52としては、リチウム等のターゲット材5の材料と反応し難く、陽子の透過性や耐熱性が高い金属で形成された箔が用いられる。金属箔52としては、例えば、チタン、チタン合金、ベリリウム、ベリリウム合金、ステンレス鋼等を用いることができる。これらの金属によると、ターゲット材51を気密且つ液密に密封しつつ、ターゲット材51に照射される陽子線6の損失や、陽子線6による金属箔52の発熱を抑制することができる。
金属箔52の厚さは、ターゲット5に照射される陽子線6のエネルギ等にもよるが、チタンまたはチタン合金の場合、4μm以上20μm以下であることが好ましい。また、ベリリウムまたはベリリウム合金の場合、8μm以上16μm以下であることが好ましい。また、ステンレス鋼の場合、3μm以上6μm以下であることが好ましい。
なお、図2においては、基板50の凹部110に配置されたターゲット材51の一部や、凹部110を覆う金属箔52の一部について、図示を省略している。しかし、ターゲット5の使用時には、凹部110の全体にターゲット材51が充填された状態とされる。また、凹部110の全体が金属箔52によって覆われる。凹部110内のターゲット材51と金属箔52とは、合金化されて互いに接合されることが好ましいが、互いに接合されない場合であっても、略隙間なく密着するように設けられる。
金属箔52のターゲット材51側の表面には、リチウムと合金化する金属材料で形成された金属層が設けられてもよい。金属層の材料としては、銅、銅合金等を用いることができる。金属層は、金属箔52の表面に、スパッタリング法、真空蒸着法等によって形成することができる。金属層を設けると、ターゲット材51と金属層とを互いに合金化させて接合することができる。また、材料や接合法に応じて、基板50と金属箔52との接合性を向上させることができる。また、金属箔52の表面の酸化を防止できるため、介在物による接合強度の低下を防ぐことができる。
ターゲット材51の厚さは、陽子線6のエネルギが、1.88MeV以上2.8MeV以下であり、且つ、金属箔52の厚さが、チタンまたはチタン合金の場合に4μm以上、ベリリウムまたはベリリウム合金の場合に8μm以上、ステンレス鋼の場合に3μm以上であるとき、250μm以上であることが好ましい。また、ターゲット材51の厚さは、350μm以下であることが好ましい。なお、陽子線6のエネルギが、2.8MeV以上である場合には、ターゲット材51の厚さを、より厚くすることができる。
このようなターゲット材51の厚さが確保されていると、陽子線6の飛程の終端がターゲット材51の内部に収まる。陽子線6の飛程の終端がターゲット材51の内部であると、ターゲット材51と基板50との界面等で、ブリスタリングが発生する虞がある。また、熱伝導率が低い水素化リチウムが生成して、ターゲット材51の除熱効率が低下する虞がある。しかし、照射時間が50~100時間の耐用試験では、ターゲット材51の内部で発生した水素の影響が小さいことが確認されている。その一方で、陽子線6の飛程の終端がターゲット材51の後方であると、ターゲット材51の後方の基板50で、ブリスタリングによる剥離や、熱抵抗の増大や、水素脆化等が起こる虞がある。
陽子線6の飛程の終端がターゲット材51の内部であれば、ターゲット材51の内部で発生した水素の影響が小さくなると共に、ターゲット材51の後方の基板50で水素が発生し難くなるため、バッキング基板として耐ブリスタリング性が高いタンタル等を用いる必要をなくすことができる。保持板50Aや裏板50Bを、銅、銅合金等の熱伝導率が高い材料で形成することが可能になり、高い熱伝導率が得られるため、ターゲット材51等の冷却効率を従来よりも向上させることができる。
一般に、Li(p,n)Beで表される核反応を起こすターゲット材としては、主として、純リチウムが用いられている。しかし、ターゲット材として固体状の純リチウムを用いる場合、ターゲット材と基板や、ターゲット材と金属箔を、互いに密着させた状態に設けることが難しいという問題がある。
例えば、リチウムの溶湯を基板に設けた凹部に充填する場合、一般的な基板の材料に対するリチウムの濡れ性が低いため、ターゲット材を凹部内に隙間なく充填することが容易でない。このような場合、溶湯の凝固後において、ターゲット材と基板との間に空隙が形成され易くなるという問題がある。このような問題は、金属箔側においても起こり得る。
また、ターゲット材と基板の材料との間で、熱膨張係数が大きく異なる場合、溶湯の充填後の冷却や、ターゲットの繰り返し使用によって、熱膨張や熱収縮或いは外力が加わり、ターゲット材と基板とが互いに剥離し易くなる。このような場合、ターゲット材と基板との間に隙間が形成され易くなるという問題がある。このような問題は、金属箔側においても起こり得る。
このように、ターゲット材と基板とが互いに密着していないと、ターゲット材と基板との間の熱伝達性が悪化するため、ターゲットに陽子線を照射したとき、基板側に設けた冷却機構によるターゲット材の冷却効率が低くなる。ターゲット材の冷却効率が低くなると、焼損が起こったり、溶融したターゲット材が漏洩したりする。また、ターゲット材と基板とが互いに密着していないと、機械的な接合性が低くなり、耐久性が悪化することが問題となる。このような問題は、金属箔側においても起こり得る。
これに対し、本実施形態に係る中性子発生装置用ターゲット5では、ターゲット材51と基板50との間や、ターゲット材51と金属箔52との間が、合金化されて接合されるため、部材間の伝熱性や接合性を向上させることができる。部材間の熱抵抗が抑制されるため、陽子線6からの入熱で加熱されたターゲット材51や金属箔52の熱を、基板50の冷却チャンネル130に向けて効率的に放熱させることができる。また、部材間の接合強度が高められるため、剥離や隙間の発生を低減することができる。
特に、ターゲット材51と基板50との間や、ターゲット材51と金属箔52との間が、合金化されて接合されていると、陽子線6が入射して水素が生成された場合であっても、界面に水素が濃化し難くなる。そのため、ターゲット材51等の熱膨張や熱収縮による剥離や隙間の発生だけでなく、ブリスタリングによる剥離や隙間の発生も低減される。また、ターゲット材51が周囲の部材と合金化されるため、部材間の線膨張係数差が小さくなり、熱膨張や熱収縮の影響が抑制される。そのため、使用時間に対して耐久性が高いターゲット5が得られる。
なお、ターゲット材51は、リチウムの一部が合金化された構造であってもよいし、リチウムの全部が合金化された構造であってもよいが、中性子を放出するリチウムの量を確保する観点からは、リチウムの一部が合金化された構造であることが好ましい。また、部材間の伝熱性や接合性を確保する観点からは、基板50に近接する側のみが合金化された構造と比較して、基板50に近接する側および金属箔52に近接する側の両方が合金化された構造が好ましい。金属箔52に近接する側においては、金属箔52の表面に形成された金属層とターゲット材51とが合金化されることが好ましい。
金属箔52の表面に形成される金属層の厚さは、陽子線6の損失を抑制して部材間の伝熱性や接合性を確保できる限り、特に限定されるものではない。金属層の厚さは、安定した膜厚に成膜する観点からは、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。また、部材間の伝熱性や接合性を確保しつつ、陽子線6の損失を抑制する観点からは、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。
次に、中性子発生装置100の中性子源として用いられる中性子発生装置用ターゲットの製造方法について説明する。
図6は、本発明の実施形態に係る中性子発生装置用ターゲットの製造方法の一例を示す図である。
図6に示すように、中性子発生装置用ターゲット5は、予備加熱工程S10と、ターゲット材配置工程S20と、1次加熱工程S30と、金属箔配置工程S40と、2次加熱工程S50と、封止工程S60と、を含む製造方法によって作製することができる。以下の説明では、基板として、予め加工された保持板50Aと裏板50Bとが接合されている基板50を用いて、基板50に近接する側および金属箔52に近接する側の両方を合金化させて接合させる場合を説明する。
予備加熱工程S10では、ターゲット5の作製に用いる基板50を予備加熱して、基板50に含まれる不純物のガスを放出させる。ターゲット5の作製に用いる基板50には、水素脆化等を引き起こす水素や、リチウムと反応する酸素、窒素、水分等が含まれている場合がある。そのため、基板50の凹部110にリチウムを含むターゲット材51の前駆体を配置する前に、これらのガスを加熱によって排除しておく。
予備加熱は、10-5Pa以上10-3Pa以下の高真空条件や、10-5Pa以下の超高真空条件で行うことができる。予備加熱の温度は、材料の最高到達温度で200℃以上が好ましい。予備加熱の時間は、材料の最高到達温度で1時間以上が好ましい。
予備加熱工程S10では、基板50だけでなく、金属箔52についても処理して、金属箔52に含まれる不純物のガスを放出させておくことが好ましい。金属箔52の予備加熱は、基板50の予備加熱と同様の条件で行うことができる。予備加熱を施した基板50や金属箔52は、以降の工程において、高真空条件や超高真空条件で取り扱うことが好ましい。
ターゲット材配置工程S20では、基板50に設けられた凹部110にターゲット材51の前駆体を配置する。ターゲット材51の前駆体としては、固体を配置してもよいし、加熱によって溶融させた溶湯等の液体を充填してもよい。ターゲット材51の前駆体としては、凝固時に凹部110の体積と同等の体積となる固体や液体を配置することが好ましい。
ターゲット材51の前駆体としては、純リチウム金属を配置してもよいし、リチウム合金を配置してもよい。リチウム合金としては、リチウム-銅合金、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-亜鉛合金や、これらの元素のうちの三種以上を含む多元合金等を用いることができる。ターゲット材51の前駆体と基板50との間には、濡れ性、接合性、熱膨張係数等の調整のために、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛等の金属箔を予め挟んだり、これらの金属で形成された金属層を予め成膜したりしてもよい。
1次加熱工程S30では、ターゲット材51の前駆体が凹部110に配置された基板50を加熱してターゲット材51の前駆体を溶融させた後、ターゲット材51の前駆体を凝固させて、ターゲット材51の前駆体と基板50とを互いに合金化させて接合する。
ターゲット材51の前駆体をリチウムの融点以上に加熱すると、前駆体に含まれる水素、酸素、窒素、水分等の不純物のガスが放出される。また、基板50との界面付近の原子の拡散が促進される。基板50に含まれる合金元素は、前駆体側に拡散して、ターゲット5の厚さ方向に濃度勾配を形成する。基板50との界面に近い領域では、多元系の固相線を下回り、リチウム合金の凝固が開始される。合金元素は、厚さ方向に更に拡散し、冷却温度に応じてリチウム合金として凝固する。このようにリチウムと合金元素とが合金化した合金層51aが形成されるため、ターゲット材51と基板50とを、合金層51aを介して互いに接合させることができる。
1次加熱は、10-5Pa以上10-3Pa以下の高真空条件や、10-5Pa以下の超高真空条件で行うことができる。1次加熱の温度は、材料の最高到達温度で純リチウムの融点(180℃)以上が好ましく、材料の最高到達温度で230℃以上がより好ましい。1次加熱の時間は、材料の最高到達温度に達した状態で1時間以上が好ましい。1次加熱後には、自然空冷、制御冷却等で冷却することができる。
金属箔配置工程S40では、ターゲット材51の前駆体が接合された基板50上に金属箔52を配置する。凹部110にターゲット材51の前駆体が収容された基板50の主面上に金属箔52を載せて、凹部110に収容されたターゲット材51の前駆体の表面を覆う。
金属箔52としては、縦幅および横幅が、それぞれ、凹部110の縦幅および横幅よりも大きく設けられており、不純物ガスが排除されているものが好ましい。金属箔52のターゲット材51側の表面には、リチウムとの密着性を向上させる銅、銅合金、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛等で形成された金属層が形成されていてもよい。金属箔52は、接合強度を確保する観点から、金属層を形成する前に、表面の酸化膜等が物理エッチング等で除去されて清浄化されていることが好ましい。
金属層を形成する方法としては、スパッタリング法、真空蒸着法等の物理気相成長法を用いることができる。金属層は、金属箔52の両面に形成してもよいが、ターゲット材51の前駆体と接する金属箔52の片面に形成することが好ましい。物理エッチングとしては、アルゴンガス等の不活性ガスを用いた逆スパッタによるイオンミリング、プラズマエッチング等を用いることができる。
2次加熱工程S50では、基板50、ターゲット材51の前駆体および金属箔52を加熱して、ターゲット材51の前駆体と金属箔52とを互いに合金化させて接合する。金属箔52の表面に金属層を形成している場合は、ターゲット材51の前駆体と金属層とを互いに合金化させて接合することができる。また、金属層の材料に応じて、ターゲット材51を保持する保持板50Aの表側の主面と金属層とを、原子の相互拡散によって互いに接合することができる。
ターゲット材51の前駆体をリチウムの融点以上に加熱すると、金属箔52や金属層との界面付近の原子の拡散が促進される。金属箔52や金属層に含まれる合金元素は、前駆体側に拡散して、ターゲット5の厚さ方向に濃度勾配を形成する。金属箔52や金属層との界面に近い領域では、多元系の固相線を下回り、リチウム合金の凝固が開始される。合金元素は、厚さ方向に更に拡散し、冷却温度に応じてリチウム合金として凝固する。このようにリチウムと合金元素とが合金化した合金層51aが形成されるため、ターゲット材51と金属箔52とを、合金層51aを介して互いに接合させることができる。
2次加熱は、10-5Pa以上10-3Pa以下の高真空条件や、10-5Pa以下の超高真空条件で行うことができる。2次加熱の温度は、材料の最高到達温度で純リチウムの融点(180℃)以上が好ましく、材料の最高到達温度で230℃以上がより好ましい。2次加熱の時間は、材料の最高到達温度に達した状態で1時間以上が好ましい。2次加熱後には、自然空冷、制御冷却等で冷却することができる。
封止工程S60では、金属箔52の周囲に接合部150を設けて、金属箔52と、基板50の陽子線6の入射側の面、すなわち、保持板50Aの表側の主面とを、互いに接合させる。接合部150は、電子ビーム溶接、レーザ溶接、圧接、拡散接合、クリンチング等の各種の方法によって形成することができる。接合部150を設けると、リチウムと空気中の酸素、窒素、水分等との反応や、溶融したターゲット材51の漏出を防止できる。また、金属箔52と基板50側との接合強度を向上させることができる。
以上の工程を経ることにより、陽子線が照射されて中性子を発生させるターゲット材51として、リチウムの一部または全部が合金化したリチウム合金材が形成されており、ターゲット材51と基板50と、および、ターゲット材51と金属箔52とが、合金化されて互いに接合されている中性子発生装置用ターゲット5が得られる。中性子発生装置用ターゲット5は、金属箔52が、ターゲット材51の表面に接合されていると共に、保持板50Aの表側の主面の外縁部に対し、接合部150を介して接合されている状態として得られる。なお、ターゲット材51を保持する保持板50Aの表側の主面と、金属箔52に設けられた金属層とを、圧接等で原子の相互拡散によって互いに接合する場合、封止工程S60を省略することもできる。このような場合、金属箔52は、ターゲット材51の表面、および、保持板50Aの表側の主面の外縁部の両方に対し、融合した状態として得られる。
以上の実施形態に係る中性子発生装置用ターゲットの製造方法によると、中性子を発生させるターゲット材51として、リチウムの一部または全部が合金化したリチウム合金材を形成するため、ターゲット材51と基板50や、ターゲット材51と金属箔52を、互いに密着した状態として形成することができる。ターゲット材51が合金化されることにより、金属同士の密着性が高くなり、熱抵抗が低下すると共に、熱膨張係数の違いが縮小するため、ターゲット材51の基板50や金属箔52に対する伝熱性および接合性を向上させることができる。
特に、以上の実施形態に係る中性子発生装置用の製造方法によると、ターゲット材51の前駆体として、固体状の金属リチウムやリチウム合金を用いることができるため、リチウムの溶湯を用いる場合と比較して、真空度が高い減圧雰囲気における作業・操作を簡便に行うことができる。リチウムの濡れ性やリチウムの溶湯の充填性に影響され難いため、主に伝熱性や接合性の考慮に基づいて、基板を選定することが可能になる。また、金属箔52を圧接等による原子の相互拡散や接合部150で接合すると、金属箔52と基板50との接合強度が高められるため、ターゲット材51の確実な密封性を確保できる。
なお、ターゲット材51の基板50に近接する側のみを合金化させる場合(図5B参照)は、ターゲット材51の前駆体と基板50とを互いに合金化させて接合した後に、ターゲット材51の前駆体が接合された基板50上に金属箔52を配置する。そして、2次加熱工程S50を行うことなく、封止工程S60を行うことによって、金属箔52と基板50とを接合することができる。
また、リチウムの全部が合金化された構造を形成する場合(図5C参照)は、ターゲット材51の前駆体に添加する合金元素の添加量や、基板50、金属箔52、金属層等に含まれる合金元素の濃度や、1次加熱や2次加熱の温度や時間等を調節することによって、ターゲット材51と基板、あるいは、ターゲット材51と金属箔52とを、互いに接合させることができる。
また、以上の工程では、1次加熱工程S30と2次加熱工程S50とを行っているが、一段階の加熱工程を行ってもよい。一段階の加熱工程を行う場合、基板50上にターゲット材51の前駆体を配置すると共に、ターゲット材51の前駆体を覆うように基板50上に金属箔52を配置した後、基板50、ターゲット材51および金属箔52を加熱する。金属箔52の表面には、予め金属層が形成されていてもよい。一段階の加熱工程によっても、加熱によってターゲット材51の前駆体を溶融させた後、ターゲット材51の前駆体を凝固させて、ターゲット材51の前駆体と基板50や、ターゲット材51の前駆体と金属箔52や金属層を、互いに合金化させて接合できる。
以上、本発明について説明したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、本発明は、必ずしも前記の実施形態が備える全ての構成を備えるものに限定されない。或る実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えたり、或る実施形態の構成の一部を他の形態に追加したり、或る実施形態の構成の一部を省略したりすることができる。
例えば、前記のターゲット5において、基板50は、保持板50Aと裏板50Bとが、互いに重ね合わされて形成されているが、互いに重ね合わされる素材の厚さや、素材の枚数は、特に制限されるものではない。冷却チャンネル130の形成や、ターゲットホルダへの装着が適切に行われる限り、基板50は、一枚の素材や三枚以上の素材で形成されてもよい。
また、前記のターゲット5において、保持板50Aおよび裏板50Bは、平面視で矩形状に設けられており、長さや幅が互いに同等とされているが、長さや幅は特に限定されるものではない。例えば、基板50を一枚の素材で形成し、冷却チャンネル130の一壁面を閉じる裏板50Bとして、ターゲットホルダの一部を用いるような形態とすることもできる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
中性子発生装置用ターゲットを作製して、電子線照射による熱負荷試験、陽子線照射による熱負荷試験、および、レーザ誘起ブレークダウン分光(Laser-induced breakdown spectroscopy:LIBS)分析による元素分析を行った結果を示す。
中性子発生装置用ターゲットとしては、図2に示すように、矩形状であって、ターゲット材と基板、および、ターゲット材と金属箔が、互いに接合されているターゲットを作製した。中性子発生装置用ターゲットは、基板に設けられた凹部にターゲット材の前駆体を配置し、ターゲット材の前駆体を覆うように基板上に金属箔を配置した後、全体を熱処理することによって作製した。
ターゲット材の前駆体は、Liが99.8%以上である純リチウムとした。基板は、Cuが99.96%以上である無酸素銅とした。金属箔は、Tiが99.9%以上である純チタンとした。ターゲットは、110mm×110mm×10.5mmとした。凹部は、60mm×60mm×0.5mmとした。
一方のターゲットについては、Cuコート有り金属箔を用いた。Cuコート有り金属箔を用いたターゲットは、金属箔の片面にCuを蒸着させて予め金属層を形成してから、ターゲット材と金属層とを合金化させて作製した。金属層は、金属箔の片面をアルゴンガスで逆スパッタして表面の不動態皮膜を除去した後、純銅を蒸着させることによって作製した。
他方のターゲットについては、Cuコート無し金属箔を用いた。Cuコート無し金属箔を用いたターゲットは、金属箔の表面に純銅を蒸着させることなく、ターゲット材を配置した基板上に金属箔を接合させて作製した。
電子線照射による熱負荷試験は、Cuコート有り金属箔を用いたターゲット、および、Cuコート無し金属箔を用いたターゲットについて、電子銃装置を使用して行った。電子線は、金属箔で覆われたターゲット材の中心に向けて、ターゲット材の法線方向から照射した。電子線の照射領域は、水平半値幅を24.4mm、垂直半値幅を15.4mm、照射面積を約1190mmに調整した。
陽子線照射による熱負荷試験は、Cuコート有り金属箔を用いたターゲットについて、加速器を使用して行った。陽子線は、金属箔で覆われたターゲット材の中心に向けて、ターゲット材の法線方向から照射した。陽子線のエネルギは、1.8MeVとした。この条件は、ターゲット材に中性子を発生させない条件である。陽子線の電流値は、3.5mAとした。陽子線の照射面積は、約700mmとした。この時、ターゲットへの入熱密度は、約9.0MW/mと計算される。
図7は、中性子発生装置用ターゲットにおける陽子線のエネルギ損失を示す図である。図7において、横軸は、ターゲットの金属箔の表面からの厚さ(深さ)[μm]、縦軸は、陽子線の残存エネルギ[keV]を示す。
図7に示すように、陽子線照射による耐熱試験では、照射された陽子線のエネルギがターゲット材の内部で失われる条件を採用した。ターゲット材に対しては、Ti製の金属箔を透過した約1.6MeVの陽子線が入射する条件である。
図8は、Cuコート有り金属箔を用いた中性子発生装置用ターゲットの電子線照射前および電子線照射後の外観を示す写真画像である。図8の左図は、電子線照射前のTi箔側の外観、図8の右図は、電子線照射後のTi箔側の外観である。
図9は、Cuコート有り金属箔を用いた中性子発生装置用ターゲットの電子線照射中の赤外線写真画像である。各図は、電子線の電流値を40mAから約380mA以上まで増加させたときの各電流値におけるターゲットの表面の熱画像を示す。
図10は、Cuコート有り金属箔を用いた中性子発生装置用ターゲットの電子線照射中の電流値の時間変化および真空度の時間変化を示す図である。図10において、横軸は、時間[s]、左縦軸は、ターゲットに照射される電子線のビーム電流値[mA]、右縦軸は、ターゲットが置かれた雰囲気の真空度[Pa]を示す。
図10に示すように、電子線照射を続けると、5000s付近で真空度が若干回復した後に、5500sで真空度が急激に悪化すると共にビーム電流値が急激に低下した。真空度の回復は、金属箔のTiが蒸発して、Tiによるゲッタ効果が生じたためと考えられる。真空度の悪化やビーム電流値の低下は、Ti箔が高熱で焼損して、Li層中にあるボイド等に含まれるアウトガスが放出されたためと考えられる。
図11は、Cuコート有り金属箔を用いた中性子発生装置用ターゲットの電子線照射中の入熱密度の時間変化を示す図である。図11において、横軸は、時間[s]、縦軸は、ターゲットへの電子線による入熱密度[MW/m]を示す。
図11に示すように、真空度が若干回復する5000s付近(図10参照)において、ターゲットへの入熱密度は、約11MW/mである。真空度が若干回復する前は、Ti箔の焼損や蒸発が実質的にないため、ターゲットが健全であるといえる。よって、Cuコート有り金属箔を用いた中性子発生装置用ターゲットは、熱負荷に対する耐性が約11MW/mまで向上したといえる。
図12は、Cuコート無し金属箔を用いた中性子発生装置用ターゲットの電子線照射前および電子線照射後の外観を示す写真画像である。図12の左図は、電子線照射前のTi箔側の外観、図12の右図は、電子線照射後のTi箔側の外観である。
図13は、Cuコート無し金属箔を用いた中性子発生装置用ターゲットの電子線照射中の赤外線写真画像である。各図は、電子線の電流値を40mAから約100mA以上まで増加させたときの各電流値におけるターゲットの表面の熱画像を示す。
図13に示すように、電子線の照射領域には、円状の輝点が生じている。円状の輝点は、Li層中のボイドを示すと考えられる。ボイドが存在する領域では、ターゲット材とTi箔とが接合されてなく、空隙が形成されているため、除熱効率の低下によって高温化が進んでいる。ボイドは、電流値の増加に伴って、面積が拡大している。一方、ターゲット材の周囲では、ターゲット材とTi箔とが接合されてなく、低い除熱効率が原因で高温化している。
図14は、Cuコート無し金属箔を用いた中性子発生装置用ターゲットの電子線照射中の電流値の時間変化および真空度の時間変化を示す図である。図14において、横軸は、時間[s]、左縦軸は、ターゲットに照射される電子線のビーム電流値[mA]、右縦軸は、ターゲットが置かれた雰囲気の真空度[Pa]を示す。
図14に示すように、電子線照射を続けると、2000s付近で真空度が上昇した後に、真空度が急激に悪化すると共にビーム電流値が急激に低下した。真空度の悪化やビーム電流値の低下は、Ti箔が高熱で焼損して、Li層中にあるボイド等に含まれるアウトガスが放出されたためと考えられる。
図15は、Cuコート無し金属箔を用いた中性子発生装置用ターゲットの電子線照射中の入熱密度の時間変化を示す図である。図15において、横軸は、時間[s]、縦軸は、ターゲットへの電子線による入熱密度[MW/m]を示す。
図15に示すように、真空度が上昇する2000s付近(図14参照)において、ターゲットへの入熱密度は、約2MW/mである。真空度が上昇する前は、Ti箔の焼損や蒸発が実質的にないため、ターゲットが健全であるといえる。よって、Cuコート無し金属箔を用いた中性子発生装置用ターゲットは、約11MW/mの入熱密度に耐えたCuコート有り金属箔を用いたターゲットと比較すると、熱負荷に対する耐性が低いといえる。
図16は、Cuコート有り金属箔を用いた中性子発生装置用ターゲットの陽子線照射前および陽子線照射後の外観を示す写真画像である。図16の左図は、陽子線照射前のTi箔側の外観、図16の右図は、陽子線照射後のTi箔側の外観である。
図16に示すように、この照射条件では、Ti箔の変色が認められたが、大きな焼損等は認められなかった。
図17は、Cuコート有り金属箔を用いた中性子発生装置用ターゲットの陽子線照射中の赤外線写真画像である。各図は、陽子線を照射したときの各照射時間におけるターゲットの表面の熱画像を示す。
図17に示すように、陽子線の照射領域の中心には、照射初期に不定形状の輝点が生じた。不定形状の輝点は、Li層中のボイドを示すと考えられる。ボイドが存在する領域は、照射時間の経過に伴って、増加すると共に移動している。照射領域の中心側は、照射初期にボイドが存在していたが、照射時間が経過すると、均一性高い低温を示している。ボイドが存在していた領域では、ターゲット材やTi箔の温度が上昇し、LiとCuとの合金化が進行したと考えられる。合金化によって、ターゲット材とTi箔との密着性が向上し、除熱効率の向上によって低温化したと考えられる。
以上の電子線照射による熱負荷試験によると、Cuコート有り金属箔を用いた場合は、Cuコート無し金属箔を用いた場合と比較して、冷却チャンネルによる除熱性能が向上しており、約5倍である約11MW/mの入熱密度に耐える高い熱負荷耐性が得られるといえる。また、以上の陽子線照射による熱負荷試験によると、陽子線のエネルギが1.8MeV、陽子線の電流値が3.5mA、ターゲットへの入熱密度が約9.0MW/mの条件において、26時間の陽子線の照射に耐える高い耐久性が得られるといえる。
100 中性子発生装置
1 陽子線発生装置
1a イオン源
1b 加速器
2 中性子減速照射装置
2a 減速体
2b コリメータ
3 被照射体
4 導管
5 ターゲット
6 陽子線
7 集束レンズ
9 中性子線
50 基板
50A 保持板
50B 裏板
51 ターゲット材
51a 合金層
52 金属箔
56 リブ
110 凹部
120 条溝
130 冷却チャンネル

Claims (12)

  1. Li(p,n)Be反応により中性子を発生させる中性子発生装置用のターゲットであって、
    陽子線が照射されて中性子を発生させるターゲット材と、
    前記ターゲット材を保持する凹部が設けられた基板と、
    前記凹部に保持された前記ターゲット材を密封する金属箔と、を備え、
    前記ターゲット材は、リチウムの一部または全部が合金化したリチウム合金材であり、
    前記ターゲット材と前記基板とが、互いに合金化して接合されている中性子発生装置用のターゲット。
  2. 請求項1に記載の中性子発生装置用のターゲットであって、
    前記ターゲット材と前記基板と、および、前記ターゲット材と前記金属箔とが、互いに合金化して接合されている中性子発生装置用のターゲット。
  3. 請求項1に記載の中性子発生装置用のターゲットであって、
    前記ターゲット材は、リチウムと、銅、アルミニウム、マグネシウムおよび亜鉛のうちの一種以上と、を含むリチウム合金材である中性子発生装置用のターゲット。
  4. 請求項1に記載の中性子発生装置用のターゲットであって、
    前記金属箔は、チタン、チタン合金、ベリリウム、ベリリウム合金またはステンレス鋼であり、
    前記基板は、銅または銅合金である中性子発生装置用のターゲット。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の中性子発生装置用のターゲットであって、
    前記金属箔と前記基板の前記陽子線の入射側の面とを互いに接合させる接合部が設けられている中性子発生装置用のターゲット。
  6. 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の中性子発生装置用のターゲットであって、
    前記陽子線のエネルギが、1.88MeV以上2.8MeV以下であり、
    前記金属箔が、チタン、チタン合金、ベリリウム、ベリリウム合金またはステンレス鋼であり、
    前記金属箔の厚さが、チタンまたはチタン合金の場合に4μm以上、ベリリウムまたはベリリウム合金の場合に8μm以上、ステンレス鋼の場合に3μm以上であり、
    前記ターゲット材の厚さは、250μm以上である中性子発生装置用のターゲット。
  7. Li(p,n)Be反応により中性子を発生させる中性子発生装置用のターゲットの製造方法であって、
    前記ターゲットは、陽子線が照射されて中性子を発生させるターゲット材と、前記ターゲット材を保持する凹部が設けられた基板と、前記凹部に保持された前記ターゲット材を密封する金属箔と、を備え、
    基板に設けられた凹部に金属リチウムまたはリチウム合金からなる前記ターゲット材の前駆体を配置し、
    前記基板および前記前駆体を加熱して前記前駆体を溶融させた後、前記前駆体を凝固させて、前記前駆体と前記基板とを互いに合金化させて接合し、
    前記前駆体が接合された前記基板上に金属箔を接合する中性子発生装置用のターゲットの製造方法。
  8. 請求項7に記載の中性子発生装置用のターゲットの製造方法であって、
    前記前駆体と前記基板とを互いに合金化させて接合した後に、前記前駆体が接合された前記基板上に金属箔を配置し、
    前記基板、前記前駆体および前記金属箔を加熱して、前記前駆体と前記金属箔とを互いに合金化させて接合する中性子発生装置用のターゲットの製造方法。
  9. 請求項8に記載の中性子発生装置用のターゲットの製造方法であって、
    前記凹部に前記前駆体を配置する前に、前記基板を予備加熱して、前記基板中のガスを放出させると共に、前記基板上に前記金属箔を配置する前に、前記金属箔を予備加熱して、前記金属箔中のガスを放出させる中性子発生装置用のターゲットの製造方法。
  10. 請求項8に記載の中性子発生装置用のターゲットの製造方法であって、
    前記前駆体と前記金属箔とを互いに合金化させて接合した後に、前記金属箔と前記基板の陽子線の入射側の面とを互いに接合させる中性子発生装置用のターゲットの製造方法。
  11. 請求項7に記載の中性子発生装置用のターゲットの製造方法であって、
    前記基板上に前記金属箔を接合する前に、前記金属箔の表面に金属層を形成して、前記前駆体と前記金属層とを互いに合金化させて接合する中性子発生装置用のターゲットの製造方法。
  12. 請求項11に記載の中性子発生装置用のターゲットの製造方法であって、
    前記金属箔は、チタン、チタン合金、ベリリウム、ベリリウム合金またはステンレス鋼であり、
    前記金属層は、銅で形成されており、
    前記金属箔は、前記金属層を形成する前に、物理エッチングによって清浄化される中性子発生装置用のターゲットの製造方法。
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