JP2023086600A - 乗用車用空気入りラジアルタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、キャンバ角の変化時の接地形状の悪化を抑制しつつ、偏摩耗を抑制することのできる、乗用車用空気入りラジアルタイヤを提供することを目的とする。【解決手段】本発明の乗用車用空気入りラジアルタイヤは、タイヤの断面幅SWとタイヤの外径ODとが所定の関係を満たし、トレッドの踏面に、タイヤ周方向に延びる周方向主溝を2本のみ有し、前記周方向主溝の重心は、車両装着時外側である、タイヤ赤道面を境界とするトレッド幅方向の一方側の半部に設けられている。そして、落ち高(あるいは、接地長の関係、あるいはトレッドのゲージの関係)を所定のものとしている。【選択図】図2

Description

本発明は、乗用車用空気入りラジアルタイヤに関するものである。
低燃費性を向上させた乗用車用空気入りラジアルタイヤとして、本出願人により、タイヤの断面幅SWとタイヤ外径ODとの関係を所定の関係とした、狭幅・大径の乗用車用空気入りラジアルタイヤが提案されている(例えば、特許文献1)。
国際公開第2011/135774号パンフレット
近年、パーソナルモビリティ用の車両の開発が進んでおり、上記のような狭幅・大径の乗用車用空気入りラジアルタイヤの中でも特にタイヤの断面幅SWが小さいものを用いることが考えられる。
しかしながら、タイヤの断面幅SWが小さい場合、特にキャンバ角の変化により接地形状が悪化してしまうおそれがあった。また、車両装着時内側(特にネガティブキャンバにおいて)の陸部の荷重負担が大きくなって偏摩耗を生じるおそれもあった。
そこで、本発明は、キャンバ角の変化時の接地形状の悪化を抑制しつつ、偏摩耗を抑制することのできる、乗用車用空気入りラジアルタイヤを提供することを目的とする。
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)トレッドを備えた、乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、
前記タイヤの断面幅SWが165(mm)未満であり、
前記タイヤの断面幅SWと外径ODとの比SW/ODは、0.26以下であり、又は、前記タイヤの断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)が、関係式、OD(mm)≧-0.0187×SW(mm)+9.15×SW(mm)-380(mm)を満たし、
前記タイヤをリムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態におけるタイヤ幅方向断面にて、タイヤ赤道面におけるトレッド表面上の点を通りタイヤ幅方向に平行な直線をm1とし、接地端Eを通りタイヤ幅方向に平行な直線をm2として、直線m1と直線m2とのタイヤ径方向の距離を落ち高LCRとし、前記タイヤのトレッド幅をTWとするとき、比LCR/TWが0.045超であり、
前記トレッドの踏面に、タイヤ周方向に延びる周方向主溝を2本のみ有し、
前記2本の周方向主溝の重心が、車両装着時外側である、タイヤ赤道面を境界とするトレッド幅方向の一方側の半部に位置することを特徴とする、乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
ここで、「接地端」とは、タイヤをリムに装着し、規定内圧を充填し、最大負荷荷重を負荷した際の接地面のタイヤ幅方向両端をいう。
また、「トレッド幅」とは、タイヤをリムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態における、上記接地端間のタイヤ幅方向距離をいう。
また、「トレッドの踏面」とは、タイヤをリムに装着し、規定内圧を充填し、最大負荷荷重を負荷した際に路面と接地することとなるタイヤ周方向全周にわたる面をいう。
また、「周方向主溝」とは、タイヤ周方向に延び、溝幅(開口幅)が2mm以上のものをいう。
また、「重心が車両装着時外側に位置する」とは、トレッド展開視において、2本の周方向主溝のそれぞれの溝中心線の中点を結んだ仮想中心線がタイヤ赤道面よりも車両装着外側に位置することをいう。ただし、周方向主溝が湾曲している場合等、仮想中心線の一部がタイヤ赤道面を交差する場合には、仮想中心線の延在長さの50%超がタイヤ赤道面よりも車両装着外側に位置することをいう。
また、タイヤ赤道面上に周方向主溝が配置されている場合、上記直線m1は、当該周方向主溝が無いとした場合の仮想線により上記直線m1を引くものとする。
上記「リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す(即ち、上記の「ホイール」の「リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含む。「将来的に記載されるサイズ」の例としては、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズを挙げることができる。)が、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。
また、「規定内圧」とは、上記JATMA等に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)を指し、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、「規定内圧」は、タイヤを装着する車両毎に規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。
また、「最大負荷荷重」とは、上記最大負荷能力に対応する荷重をいうものとする。
(2)トレッドを備えた、乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、
前記タイヤの断面幅SWが165(mm)未満であり、
前記タイヤの断面幅SWと外径ODとの比SW/ODは、0.26以下であり、又は、前記タイヤの断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)が、関係式、OD(mm)≧-0.0187×SW(mm)+9.15×SW(mm)-380(mm)を満たし、
タイヤ赤道面上での接地長が、両接地端からタイヤ幅方向内側に接地幅の20%離間した位置における接地長の平均値よりも長く、
前記トレッドの踏面に、タイヤ周方向に延びる周方向主溝を2本のみ有し、
前記2本の周方向主溝の重心が、車両装着時外側である、タイヤ赤道面を境界とするトレッド幅方向の一方側の半部に位置することを特徴とする、乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
ここで、「接地長」とは、タイヤをリムに装着し、規定内圧を充填し、最大負荷荷重を負荷した際の接地面のタイヤ周方向長さをいい、「接地幅」とは、タイヤをリムに装着し、規定内圧を充填し、最大負荷荷重を負荷した際の接地面のタイヤ幅方向最大幅をいう。
なお、接地長を計測する位置の周方向主溝が配置されている場合は、当該周方向主溝が無いとした場合の仮想線により接地長を計測するものとする。
(3)トレッドを備えた、乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、
前記タイヤの断面幅SWが165(mm)未満であり、
前記タイヤの断面幅SWと外径ODとの比SW/ODは、0.26以下であり、又は、前記タイヤの断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)が、関係式、OD(mm)≧-0.0187×SW(mm)+9.15×SW(mm)-380(mm)を満たし、
タイヤ赤道面上における前記トレッドのゲージが、両接地端からタイヤ幅方向内側に接地幅の20%離間した位置における前記トレッドのゲージの平均値よりも大きく、
前記トレッドの踏面に、タイヤ周方向に延びる周方向主溝を2本のみ有し、
前記2本の周方向主溝の重心が、車両装着時外側である、タイヤ赤道面を境界とするトレッド幅方向の一方側の半部に位置することを特徴とする、乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
なお、「ゲージ」は、カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に配置された補強層のうち、タイヤ径方向最外側に位置する補強層からトレッド表面までのゲージをいい、上記基準状態において、トレッド表面に対する法線方向に計測するものとする。また、ゲージを計測する位置に上記周方向主溝を有する場合は、当該周方向主溝が無いとした場合の仮想線によりゲージを計測するものとする。
(4)前記周方向主溝とトレッド端とにより区画される車両装着時内側の陸部に、トレッド幅方向に延び又はトレッド幅方向に対して45°以下の角度で傾斜して延びる1本以上の幅方向サイプ、及び/又は、径が2mm以下の1つ以上の孔状サイプを設けている、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
ここで、「トレッド端」とは、上記の接地端を意味する。また、孔状サイプの「径」は、平面視での最大径を意味する。
(5)前記周方向主溝とトレッド端とにより区画される車両装着時外側の陸部に、トレッド幅方向に延び又はトレッド幅方向に対して45°以下の角度で傾斜して延びる1本以上の幅方向サイプ、及び/又は、径が2mm以下の1つ以上の孔状サイプを設けている、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
本発明によれば、キャンバ角の変化時の接地形状の悪化を抑制しつつ、偏摩耗を抑制することのできる、乗用車用空気入りラジアルタイヤを提供することができる。
タイヤの断面幅SW及び外径ODを示す概略図である。 本発明の一実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤのタイヤ幅方向断面図である。 本発明の一実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤのトレッドパターンを示す展開図である。 接地形状の変化について説明するための模式図である。 矩形率について説明するための模式図である。 トレッドパターンの他の例を示す展開図である。 トレッドパターンのさらに別の例を示す展開図である。 周方向主溝の配置の変形例を示す図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
図1は、タイヤの断面幅SW及び外径ODを示す概略図である。
本発明の一実施形態の乗用車用空気入りラジアルタイヤ(以下、単にタイヤとも称する)は、タイヤの断面幅SWが165(mm)未満であり、タイヤの断面幅SWと外径ODとの比SW/ODは、0.26以下であり、狭幅・大径の形状をなしている。タイヤの断面幅SWをタイヤの外径ODに比して狭くすることにより、空気抵抗を低減することができ、且つ、タイヤの外径ODをタイヤの断面幅SWに比して大きくすることにより、タイヤの接地面付近でのトレッドゴムの変形を抑制して、転がり抵抗を低減することができ、これらにより、タイヤの燃費性を向上させることができる。上記SW/ODは、0.25以下とすることが好ましく、0.24以下とすることがより好ましい。
上記比は、タイヤの内圧が200kPa以上である場合に満たされるものであることが好ましく、220kPa以上である場合に満たされるものであることがより好ましく、280kPa以上である場合に満たされるものであることがさらに好ましい。転がり抵抗を低減することができるからである。一方で、上記比は、タイヤの内圧が350kPa以下である場合に満たされるものであることが好ましい。乗り心地性を向上させることができるからである。
ここで、タイヤの断面幅SWは、105~145mmとすることが好ましく、115~135mmとすることがより好ましい。
また、タイヤの扁平率は、タイヤの断面幅SW及び外径ODが上記比を満たすとき、45~70とすることがより好ましく、45~65とすることがより好ましい。
具体的なタイヤサイズは、特に限定されるものではないが、一例として、105/50R16、115/50R17、125/55R20、125/60R18、125/65R19、135/45R21、135/55R20、135/60R17、135/60R18、135/60R19、135/65R19、145/45R21、145/55R20、145/60R16、145/60R17、145/60R18、145/60R19、145/65R19、155/45R18、155/45R21、155/55R18、155/55R19、155/55R21、155/60R17、155/65R18、155/70R17、155/70R19のいずれかとすることができる。
あるいは、タイヤは、タイヤの断面幅SWは、165mm未満であり、且つ、タイヤの断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)は、関係式、
OD(mm)≧-0.0187×SW(mm)+9.15×SW(mm)-380
を満たしており、狭幅・大径の形状をなしている。
上記の関係式を満たすことにより、空気抵抗を低減することができ、且つ、転がり抵抗を低減することができ、これらにより、タイヤの燃費性を向上させることができる。
なお、第3の態様において、タイヤの断面幅SW及び外径ODは、上記の関係式を満たした上で、比SW/ODが0.26以下であることが好ましく、0.25以下であることがより好ましく、0.24以下であることがさらに好ましい。タイヤの燃費性をさらに向上させることができるからである。
上記関係式及び/又は比は、タイヤの内圧が200kPa以上である場合に満たされるものであることが好ましく、220kPa以上である場合に満たされるものであることがより好ましく、280kPa以上である場合に満たされるものであることがさらに好ましい。転がり抵抗を低減することができるからである。一方で、上記関係式及び/又は比は、タイヤの内圧が350kPa以下である場合に満たされるものであることが好ましい。乗り心地性を向上させることができるからである。
ここで、タイヤの断面幅SWは、105~145mmとすることが好ましく、115~135mmとすることがより好ましい。
また、タイヤの扁平率は、タイヤの断面幅SW及び外径ODが上記関係式を満たすとき、45~70とすることがより好ましく、45~65とすることがより好ましい。
具体的なタイヤサイズは、特に限定されるものではないが、一例として、105/50R16、115/50R17、125/55R20、125/60R18、125/65R19、135/45R21、135/55R20、135/60R17、135/60R18、135/60R19、135/65R19、145/45R21、145/55R20、145/60R16、145/60R17、145/60R18、145/60R19、145/65R19、155/45R18、155/45R21、155/55R18、155/55R19、155/55R21、155/60R17、155/65R18、155/70R17、155/70R19のいずれかとすることができる。
本実施形態のタイヤは、乗用車用空気入りラジアルタイヤである。このタイヤは、特に、パーソナルモビリティ用の車両に装着するタイヤとして特に好適に用いられる。
図2は、本発明の一実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤのタイヤ幅方向断面図である。図2は、タイヤをリムに組み込み、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態でのタイヤの幅方向断面を示している。図2に示すように、このタイヤ1は、一対のビード部2間でトロイダル状に跨る、ラジアル配列コードのプライからなるカーカス3を備えている。また、このタイヤ1は、カーカス3のタイヤ径方向外側に、図示例で2層のベルト層4a、4bからなるベルト4及びトレッド5を順に備えている。
この例では、一対のビード部2には、ビードコア2aがそれぞれ埋設されている。本発明では、ビードコア2aの断面形状や材質は特に限定されず、乗用車用空気入りラジアルタイヤにおいて通常用いられる構成とすることができる。本発明では、ビードコア2aは、複数の小ビードコアに分割されたものとすることもできる。あるいは、本発明では、ビードコア2aを有しない構成とすることもできる。
図示例のタイヤ1は、ビードコア2aのタイヤ径方向外側に、断面略三角形状のビードフィラ2bを有している。ビードフィラ2bの断面形状は、この例に限定されるものではなく、材質も特に限定されない。あるいは、ビードフィラ2bを有しない構成としてタイヤを軽量化することもできる。
本実施形態では、タイヤ1は、リムガードを有する構造とすることもできる。また、本実施形態では、ビード部2には補強等を目的としてゴム層やコード層等の追加部材をさらに設けることもできる。このような追加部材はカーカス3やビードフィラ2bに対して様々な位置に設けることができる。
図2に示す例では、カーカス3は、1枚のカーカスプライからなる。一方で、本発明では、カーカスプライの枚数は特に限定されず、2枚以上とすることもできる。また、図2に示す例では、カーカス3は、一対のビード部2間をトロイダル状に跨るカーカス本体部3aと、該カーカス本体部3aからビードコア2a周りに折り返されてなる折り返し部3bと、を有している。一方で、本発明では、カーカス折り返し部3bは、ビードコア2aに巻き付けることもでき、あるいは、分割された複数の小ビードコアで挟みこむ構造とすることもできる。図示例では、カーカス折り返し部3bの端3cは、ビードフィラ2bのタイヤ径方向外側端よりタイヤ径方向外側、且つ、タイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向内側に位置している。これにより、サイドウォール部の剛性を確保しつつも、タイヤを軽量化することができる。一方で、本発明においては、カーカス折り返し部3bの端3cは、ビードフィラ2bのタイヤ径方向外側端よりタイヤ径方向内側に位置していても良く、あるいは、タイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向外側に位置していても良い。あるいは、カーカス折り返し部3bの端3cは、カーカス本体部2aとベルト4とのタイヤ径方向の間に位置するように、ベルト4の端(例えばベルト層4bの端)よりタイヤ幅方向内側に位置する、エンベロープ構造とすることもできる。さらに、カーカス3が複数枚のカーカスプライで構成される場合には、カーカスプライ間で、カーカス折り返し部3bの端3cの位置(例えばタイヤ径方向位置)を同じとすることも異ならせることもできる。カーカス3のコードの打ち込み数としては、特に限定されるものではないが、例えば、20~60本/50mmの範囲とすることができる。また、カーカスラインには様々な構造を採用することができる。例えば、タイヤ径方向において、カーカス最大幅位置をビード部2側に近づけることも、トレッド5側に近づけることもできる。例えば、カーカス最大幅位置は、ビードベースラインからタイヤ径方向外側に、タイヤ断面高さ対比で50%~90%の範囲に設けることができる。上記「ラジアル配列」は、タイヤ周方向に対して85°以上、好ましくはタイヤ周方向に対して90°である。
本実施形態のタイヤは、タイヤ周方向に対して傾斜して延びるコードのゴム引き層からなる1層以上の傾斜ベルト層を有することが好ましく、軽量化と接地面形状の歪みの抑制との兼ね合いから2層とすることが最も好ましい。なお、軽量化の観点からはベルト層を1層とすることもでき、接地面形状の歪みを抑制する観点からは3層以上とすることもできる。図2に示す例では、2層のベルト層4a、4bのうち、タイヤ径方向外側のベルト層4bのタイヤ幅方向の幅は、タイヤ径方向内側のベルト層4aのタイヤ幅方向の幅より小さい。一方で、タイヤ径方向外側のベルト層4bのタイヤ幅方向の幅は、タイヤ径方向内側のベルト層4aのタイヤ幅方向の幅より大きくすることもでき、同じとすることもできる。タイヤ幅方向の幅が最も大きいベルト層(図示例ではベルト層4a)のタイヤ幅方向の幅は、接地幅の90~115%であることが好ましく、接地幅の100~105%であることが特に好ましい。なお、「接地幅」とは、上記接地端E間のタイヤ幅方向の距離をいう。
本実施形態において、ベルト層4a、4bのベルトコードとしては、金属コード、特にスチールコードを用いるのが最も好ましいが、非金属、例えば有機繊維コード(例えばケブラー(登録商標)等)を用いることもできる。スチールコードはスチールを主成分とし、炭素、マンガン、ケイ素、リン、硫黄、銅、クロムなど種々の微量含有物を含むことができる。本実施形態において、ベルト層4a、4bのベルトコードはモノフィラメントコードや、複数のフィラメントを引き揃えたコード、複数のフィラメントを撚り合せたコードを用いることができる。撚り構造も種々のものを採用することができ、断面構造、撚りピッチ、撚り方向、隣接するフィラメント同士の距離も様々なものとすることができる。さらには異なる材質のフィラメントを撚り合せたコードを用いることもでき、断面構造としても特に限定されず、単撚り、層撚り、複撚りなど様々な撚り構造を取ることができる。
本実施形態では、ベルト層4a、4bのベルトコードの傾斜角度は、タイヤ周方向に対して10°以上とすることが好ましい。本実施形態では、ベルト層4a、4bのベルトコードの傾斜角度を高角度、具体的にはタイヤ周方向に対して20°以上、好ましくは35°以上、特にタイヤ周方向に対して55°~85°の範囲とすることが好ましい。傾斜角度を20°以上(好ましくは35°以上)とすることにより、タイヤ幅方向に対する剛性を高め、特にコーナリング時の操縦安定性能を向上させることができるからである。また、層間ゴムのせん断変形を減少させて、転がり抵抗を低減することができるからである。
図示例では、トレッド5を構成するトレッドゴムは、1層からなる。一方で、本実施形態では、トレッド5を構成するトレッドゴムは、異なる複数のゴム層がタイヤ径方向に積層されて形成されていても良い。上記の複数のゴム層としては正接損失、モジュラス、硬度、ガラス転移温度、材質等が異なっているものを用いることができる。また、複数のゴム層のタイヤ径方向の厚さの比率は、タイヤ幅方向に変化していてもよく、また周方向主溝底のみ等をその周辺と異なるゴム層とすることもできる。また、トレッド5を構成するトレッドゴムは、タイヤ幅方向に異なる複数のゴム層で形成されていても良い。上記の複数のゴム層としては正接損失、モジュラス、硬度、ガラス転移温度、材質等が異なっているものを使用することができる。また、複数のゴム層のタイヤ幅方向の幅の比率は、タイヤ径方向に変化していてもよく、また周方向主溝近傍のみ、接地端近傍のみ、ショルダー陸部のみ、センター陸部のみといった限定された一部の領域のみをその周囲とは異なるゴム層とすることもできる。
図3は、本発明の一実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤのトレッドパターンを示す展開図である。
図2、図3に示すように、本例において、タイヤ1は、トレッド5の踏面に、タイヤ周方向に延びる周方向主溝6を2本のみ有している。本例では、周方向主溝6は、タイヤ周方向に真っすぐ延びているが、ジグザグ状や屈曲状に延びていても良い。周方向主溝6の溝幅(開口幅)は、特に限定しないが、例えば2mm~5mmとすることができる。周方向主溝6の溝深さ(最大深さ)は、特に限定しないが、例えば3~6mmとすることができる。ここで、本実施形態において、2本の周方向主溝6の重心は、車両装着時外側である、タイヤ赤道面CLを境界とするトレッド幅方向の一方側の半部に位置している。図示例では、1本の周方向主溝6aが、タイヤ幅方向一方側(車両装着時外側)に設けられ、他の1本の周方向主溝6bが、タイヤ幅方向他方側(車両装着時内側)に設けられている。周方向主溝6aと周方向主溝6bとは、溝幅が同じであり、周方向主溝6aとタイヤ赤道面とのタイヤ幅方向の離間距離は、他の1本の周方向主溝6bとタイヤ赤道面とのタイヤ幅方向の離間距離よりも大きいため、2本の周方向主溝6の重心は、車両装着時外側に位置している。
図示例では、タイヤ1は、トレッド5の踏面にタイヤ幅方向に延びる幅方向溝を有していないが、1本以上の幅方向溝を有していても良い。
本実施形態のタイヤ1は、タイヤの内面7(単に、タイヤ内面7ともいう)にインナーライナー8を有している。インナーライナー8の厚さは、1.5mm~2.8mm程度とすることが好ましい。80~100Hzの車内騒音を効果的に低減することができるからである。インナーライナー8を構成するゴム組成物の空気透過係数は、1.0×10-14cc・cm/(cm・s・cmHg)以上、6.5×10-10cc・cm/(cm・s・cmHg)以下とすることが好ましい。
図2に示すように、本実施形態では、上記基準状態におけるタイヤ幅方向断面にて、タイヤ赤道面CLにおけるトレッド表面上の点を通りタイヤ幅方向に平行な直線をm1とし、接地端Eを通りタイヤ幅方向に平行な直線をm2として、直線m1と直線m2とのタイヤ径方向の距離を落ち高LCRとし、タイヤ1のトレッド幅をTWとするとき、比LCR/TWが0.045超である(構成1)。
以下、本実施形態の乗用車用空気入りラジアルタイヤの作用効果について説明する。
本実施形態の乗用車用空気入りラジアルタイヤは、タイヤの断面幅SWとタイヤの外径とが、上記の関係式を満たす、狭幅・大径のタイヤの中でも、断面幅SWが165(mm)未満の狭幅のものである。このようなタイヤによれば、特に空気抵抗を低減することができ、また、転がり抵抗も低減することができるため、タイヤの燃費性を向上させることができる。
一方で、図4において矢印左側に模式的に示すように、このようなタイヤでは、コーナリング時等、キャンバ角の変化時において、接地形状が細長くなり過ぎ、接地形状が悪化してしまい、操縦安定性等が低下してしまうおそれがある。
これに対し、まず、本実施形態のタイヤでは、上記比LCR/TWを0.045超としている。これにより、クラウン形状が比較的丸いタイヤとなるため、接地形状をショルダー部の接地長がセンター部対比で短い、丸い形状にすることができる。これにより、図4に矢印右側に模式的に示したように、キャンバ角の変化時に接地形状が細長くなり過ぎないようにして、接地形状の悪化を抑制することができる。
さらに、上記のような狭幅のタイヤでは、タイヤ側方への排水に優れているため、周方向主溝6を2本のみ有する場合であっても、十分に排水性を確保することができる。そして、そのような2本の周方向主溝6の重心が、車両装着時外側である、タイヤ赤道面CLを境界とするトレッド幅方向の一方側の半部に設けられているため、車両装着時内側の陸部の幅を十分に確保して荷重負担を軽減し、当該陸部が局所的に摩耗することによる偏摩耗を抑制することができる。また、車両装着時外側に周方向主溝を有することにより、横力発生時のゴムの流動性(逃げ場)を確保して、バックリングの発生を抑制する効果もある。
上記比LCR/TWが0.05以上であることがより好ましい。接地形状の悪化をより一層抑制することができるからである。一方で、転がり抵抗を低減する観点からは、上記比LCR/TWは0.1以下であることが好ましい。
また、周方向主溝6の溝幅(開口幅)は、接地幅の20%以下とすることが好ましく、15%以下とすることがより好ましい。陸部の面積を確保することができるからである。同様の理由により、トレッドの踏面全体のネガティブ率は、20%以下とすることが好ましく、15%以下とすることがより好ましい。
「ネガティブ率」とは、トレッド展開視における、トレッドの踏面の面積に対する、溝幅が2mm以上の溝(周方向主溝や幅方向溝)の面積の比をいう。
また、車両装着外側において、トレッド端と周方向主溝6とによって区画される陸部のタイヤ幅方向の幅は、接地幅の20%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましい。操縦安定性を向上させることができるからである。また、周方向主溝6近傍のバックリングも抑制することができ、接地性を向上させる効果もある。
図5は、接地形状について説明するための模式図である。他の態様としては、タイヤ赤道面CL上での接地長L1が、両接地端Eからタイヤ幅方向内側に接地幅の20%離間したタイヤ幅方向位置P1、P2における接地長L2、L3の平均値((L2+L3)/2)よりも長い(構成2)。この場合でも、接地形状をショルダー部の接地長がセンター部対比で短い、丸い形状にすることができる。これにより、図4に矢印右側に模式的に示したように、キャンバ角の変化時に接地形状が細長くなり過ぎないようにして、接地形状の悪化を抑制することができる。好ましくは、接地長L1は、接地長L2、L3の平均値の1.1倍以上であることが好ましい。一方で、偏摩耗性能の観点からは、接地長L1は、接地長L2、L3の平均値の1.5倍以下であることが好ましい。
また、別の態様としては、図2に示すように、タイヤ赤道面上におけるトレッドのゲージG1が、両接地端Eからタイヤ幅方向内側に接地幅の20%離間した位置P1、P2におけるトレッドのゲージG2、G3の平均値((G2+G3)/2)よりも大きい(構成3)。これにより、クラウン形状が比較的丸いタイヤとなるため、接地形状をショルダー部の接地長がセンター部対比で短い、丸い形状にすることができる。これにより、図4に矢印右側に模式的に示したように、キャンバ角の変化時に接地形状が細長くなり過ぎないようにして、接地形状の悪化を抑制することができる。さらには、位置P1、P2でのゲージが薄いことにより、当該位置でのトレッドの剛性が高く、旋回時の操縦安定性の向上に有利である。好ましくは、ゲージG1は、ゲージG2、G3の平均値の1.1倍以上であることが好ましい。一方で、偏摩耗性能の観点からは、ゲージG1は、ゲージG2、G3の平均値の1.5倍以下であることが好ましい。
本開示において、上記の構成1~構成3は、いずれか1つ以上を満たしていればよく、いずれか2つ又は3つ全てを満たしていても良い。
図6は、トレッドパターンの他の例を示す展開図である。他の例において、周方向主溝6とトレッド端とにより区画される車両装着時内側の陸部に、トレッド幅方向に延び又はトレッド幅方向に対して45°以下の角度で傾斜して延びる1本以上の幅方向サイプ9(9a)、及び/又は、径が2mm以下の1つ以上の孔状サイプを設けている(図示例では、幅方向サイプ9(9a)が設けられている)。
このような構成によれば、当該陸部の圧縮剛性を適度に低下させて、接地圧を均一化させることができる。
ここで、幅方向サイプの「サイプ」とは、サイプ幅(開口幅)が2mm未満のものをいう。
図7は、トレッドパターンのさらに別の例を示す展開図である。さらに別の例において、周方向主溝6とトレッド端とにより区画される車両装着時外側の陸部に、トレッド幅方向に延び又はトレッド幅方向に対して45°以下の角度で傾斜して延びる1本以上の幅方向サイプ9(9b)、及び/又は、径が2mm以下の1つ以上の孔状サイプを設けている(図示例では、幅方向サイプ9(9b)が設けられている)。
このような構成によれば、路面凹凸からの入力を緩和し、NVH性能を向上させることができる。
幅方向サイプ9a、9bや孔状サイプのサイプ深さ(最大深さ)は、特には限定されないが、例えば2~6mmとすることができる。幅方向サイプ9a、9bのタイヤ周方向のピッチ間隔は、特には限定されないが、例えば10~40mmとすることができる。
図8は、周方向主溝の配置の変形例を示す図である。図8に示す例では、2本の周方向主溝6a、6bが、共にタイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向一方側の半部(車両装着時外側)に設けられている。このような場合、2本の周方向主溝の重心が、車両装着時外側に位置することはいうまでもない。
なお、さらなる変形例として、いずれか1本の周方向主溝がタイヤ赤道面上に位置していても良い。この場合、他の周方向主溝が、タイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向一方側の半部(車両装着時外側)に設けることにより、2本の周方向主溝の重心を、車両装着時外側に位置させることができる。
<タイヤ・リム組立体>
ここでのタイヤ・リム組立体は、上記の乗用車用空気入りラジアルタイヤをリムに組み込んでなるものである。当該タイヤ・リム組立体によれば、上記乗用車用空気入りラジアルタイヤについて説明したのと同様の作用効果を得ることができる。このとき、タイヤ・リム組立体の内圧は、200kPa以上であることが好ましく、220kPa以上であることがより好ましく、280kPa以上であることがさらに好ましい。高内圧とすることで転がり抵抗をより低減することができるからである。一方で、タイヤ・リム組立体の内圧は、350kPa以下であることが好ましい。乗り心地性を向上させることができるからである。
<乗用車用空気入りラジアルタイヤの使用方法>
ここでの乗用車用空気入りラジアルタイヤの使用方法は、上記乗用車用空気入りラジアルタイヤを使用する。当該乗用車用空気入りラジアルタイヤの使用方法によれば、上記乗用車用空気入りラジアルタイヤについて説明したのと同様の作用効果を得ることができる。このとき、内圧を200kPa以上として使用することが好ましく、220kPa以上として使用することがより好ましく、280kPa以上として使用することがさらに好ましい。高内圧とすることで転がり抵抗をより低減することができるからである。一方で、内圧を350kPa以下として使用することが好ましい。乗り心地性を向上させることができるからである。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記の例では、いずれも周方向主溝の配置を除いては、タイヤ赤道面CLを境界として対称な構成としているが、非対称な部分を有していても良い。例えば、上記接地長L2、L3は、互いに異なっていても良い。また、例えば、上記ゲージG2、G3も、互いに異なっていても良い。上記の例では、2本の周方向主溝の溝幅を同じとしていたが、2本の周方向主溝の重心が車両装着時外側に位置するのであれば、溝幅を異ならせることもできる。他にも種々の変更、変形が可能である。
1:乗用車用空気入りラジアルタイヤ(タイヤ)、
2:ビード部、 2a:ビードコア、 2b:ビードフィラ、 3:カーカス、
4:ベルト、 4a、4b:ベルト層、 5:トレッド、
6:周方向主溝、 7:タイヤ内面、 8:インナーライナー、
9:幅方向サイプ、 CL:タイヤ赤道面

Claims (5)

  1. トレッドを備えた、乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、
    前記タイヤの断面幅SWが165(mm)未満であり、
    前記タイヤの断面幅SWと外径ODとの比SW/ODは、0.26以下であり、又は、前記タイヤの断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)が、関係式、OD(mm)≧-0.0187×SW(mm)+9.15×SW(mm)-380(mm)を満たし、
    前記タイヤをリムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態におけるタイヤ幅方向断面にて、タイヤ赤道面におけるトレッド表面上の点を通りタイヤ幅方向に平行な直線をm1とし、接地端Eを通りタイヤ幅方向に平行な直線をm2として、直線m1と直線m2とのタイヤ径方向の距離を落ち高LCRとし、前記タイヤのトレッド幅をTWとするとき、比LCR/TWが0.045超であり、
    前記トレッドの踏面に、タイヤ周方向に延びる周方向主溝を2本のみ有し、
    前記2本の周方向主溝の重心が、車両装着時外側である、タイヤ赤道面を境界とするトレッド幅方向の一方側の半部に位置することを特徴とする、乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
  2. トレッドを備えた、乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、
    前記タイヤの断面幅SWが165(mm)未満であり、
    前記タイヤの断面幅SWと外径ODとの比SW/ODは、0.26以下であり、又は、前記タイヤの断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)が、関係式、OD(mm)≧-0.0187×SW(mm)+9.15×SW(mm)-380(mm)を満たし、
    タイヤ赤道面上での接地長が、両接地端からタイヤ幅方向内側に接地幅の20%離間した位置における接地長の平均値よりも長く、
    前記トレッドの踏面に、タイヤ周方向に延びる周方向主溝を2本のみ有し、
    前記2本の周方向主溝の重心が、車両装着時外側である、タイヤ赤道面を境界とするトレッド幅方向の一方側の半部に位置することを特徴とする、乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
  3. トレッドを備えた、乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、
    前記タイヤの断面幅SWが165(mm)未満であり、
    前記タイヤの断面幅SWと外径ODとの比SW/ODは、0.26以下であり、又は、前記タイヤの断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)が、関係式、OD(mm)≧-0.0187×SW(mm)+9.15×SW(mm)-380(mm)を満たし、
    タイヤ赤道面上における前記トレッドのゲージが、両接地端からタイヤ幅方向内側に接地幅の20%離間した位置における前記トレッドのゲージの平均値よりも大きく、
    前記トレッドの踏面に、タイヤ周方向に延びる周方向主溝を2本のみ有し、
    前記2本の周方向主溝の重心が、車両装着時外側である、タイヤ赤道面を境界とするトレッド幅方向の一方側の半部に位置することを特徴とする、乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
  4. 前記周方向主溝とトレッド端とにより区画される車両装着時内側の陸部に、トレッド幅方向に延び又はトレッド幅方向に対して45°以下の角度で傾斜して延びる1本以上の幅方向サイプ、及び/又は、径が2mm以下の1つ以上の孔状サイプを設けている、請求項1~3のいずれか一項に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
  5. 前記周方向主溝とトレッド端とにより区画される車両装着時外側の陸部に、トレッド幅方向に延び又はトレッド幅方向に対して45°以下の角度で傾斜して延びる1本以上の幅方向サイプ、及び/又は、径が2mm以下の1つ以上の孔状サイプを設けている、請求項1~4のいずれか一項に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
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