JP2023085205A - トリアジニル基を有する多環芳香族化合物を用いた有機電界発光素子 - Google Patents

トリアジニル基を有する多環芳香族化合物を用いた有機電界発光素子 Download PDF

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Takuji Hatakeyama
瑛治 清水
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英史 大森
Hidefumi Omori
勝也 増田
Katsuya Masuda
絢子 森
Ayako Mori
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Abstract

【課題】新規な多環芳香族化合物およびそれを用いた有機EL素子を提供する。【解決手段】電子輸送層および電子注入層の少なくとも1つが下記一般式(1)で表される多環芳香族化合物を含む、有機電界発光素子。TIFF2023085205000126.tif47167A環、B環、およびC環は置換されていてもよいアリール環であり、Y1はB(ホウ素)等であり、R21~R23は、水素やアリール等であり、Lは、単結合やアリーレン等であり、mが1の場合、nは1または2であり、mが2の場合、nは1であり、Lは、mおよびnの数に応じて、A環、B環、およびC環の1つまたは2つの環と結合すると共に、R21~R23における1つまたは2つの位置で結合する。【選択図】なし

Description

本発明は、トリアジニル基を有する多環芳香族化合物と、これを用いた有機電界発光素子、並びに、表示装置および照明装置に関する。なお、本明細書中で「有機電界発光素子」のことを「有機EL素子」または単に「素子」と表記することがある。
従来、電界発光する発光素子を用いた表示装置は、省電力化や薄型化が可能なことから、種々研究され、さらに、有機材料から成る有機電界発光素子は、軽量化や大型化が容易なことから活発に検討されてきた。特に、光の三原色の一つである青色などの発光特性を有する有機材料の開発、および正孔、電子などの電荷輸送能(半導体や超電導体となる可能性を有する)を備えた有機材料の開発については、高分子化合物、低分子化合物を問わずこれまで活発に研究されてきた。
有機EL素子は、陽極および陰極からなる一対の電極と、当該一対の電極間に配置され、有機化合物を含む一層または複数の層とからなる構造を有する。有機化合物を含む層には、発光層や、正孔、電子などの電荷を輸送または注入する電荷輸送/注入層などがあるが、これらの層に適当な種々の有機材料が開発されている。
例えば、有機EL素子や有機薄膜太陽電池に使用する材料としてトリフェニルアミン誘導体を改良した材料も報告されている(国際公開第2012/118164号公報)。この材料は既に実用化されていたN,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD)を参考にして、トリフェニルアミンを構成する芳香環同士を連結することで、窒素を環構造の中心に配置しながらその平面性を高めたことを特徴とする材料である。この文献では例えばNO連結系化合物(63頁の化合物1)の電荷輸送特性が評価されているが、NO連結系化合物以外の材料の製造方法については記載されておらず、また、連結する元素が異なれば化合物全体の電子状態が異なるため、NO連結系化合物以外の材料から得られる特性も知られていなかった。
このような状況において、近年ではホウ素などを中心原子として複数の芳香族環を縮合した化合物も報告されている(国際公開第2015/102118号公報)。この文献では発光層用材料を始め、電子などの電荷輸送層用材料として当該複数の芳香族環を縮合した化合物を用いた有機EL素子が評価されている。また、このような化合物をさらに多量化した例(国際公開第2018/212169号公報)や、分子内において連結基により共役系を拡張した例が報告されている(韓国公開特許第10-2020-0121228号、国際公開第2020/217229号公報)。
国際公開第2012/118164号公報 国際公開第2015/102118号公報 国際公開第2018/212169号公報 韓国公開特許第10-2020-0121228号 国際公開第2020/217229号公報
特許文献1~5で報告するように、有機EL素子に用いられる材料としては種々の材料が開発されているが、有機EL素子用材料の選択肢を増やすために、従来とは異なる化合物からなる材料の開発が望まれている。特に、窒素を環構造の中心に配置したNO連結系化合物以外の材料から得られる有機EL特性やその製造方法を模索することは有益である。
また、特許文献2~5では、ホウ素を含む多環芳香族化合物とそれを用いた有機EL素子が報告されているが、当該文献には極めて多数の化合物が開示されており、更に素子特性を向上させるべく、発光効率や素子寿命などの有機EL特性を向上させることができる電荷輸送層用材料、特に電子輸送層用材料や電子注入層用材料などを模索することは有益である。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、新規な構造を有する多環芳香族化合物を含有する層を一対の電極間に配置して例えば有機EL素子を構成することにより、優れた有機EL素子が得られることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は、以下のようなトリアジニル基を有する多環芳香族化合物を用いた有機EL素子を提供する。
なお、本明細書において化学構造や置換基を炭素数で表すことがあるが、化学構造に置換基が置換した場合や、置換基にさらに置換基が置換した場合などにおける炭素数は、化学構造や置換基それぞれの炭素数を意味し、化学構造と置換基の合計の炭素数や、置換基と置換基の合計の炭素数を意味するものではない。例えば、「炭素数Xの置換基Aで置換された炭素数Yの置換基B」とは、「炭素数Yの置換基B」に「炭素数Xの置換基A」が置換することを意味し、炭素数Yは置換基Aおよび置換基Bの合計の炭素数ではない。また例えば、「置換基Aで置換された炭素数Yの置換基B」とは、「炭素数Yの置換基B」に「(炭素数限定がない)置換基A」が置換することを意味し、炭素数Yは置換基Aおよび置換基Bの合計の炭素数ではない。
項1.
陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置される発光層と、前記陰極と前記発光層との間に配置される電子輸送層および電子注入層の少なくとも1つとを有する有機電界発光素子であって、前記電子輸送層および電子注入層の少なくとも1つが下記一般式(1)で表される多環芳香族化合物を含む、有機電界発光素子。
Figure 2023085205000001
上記式(1)中、
A環、B環、およびC環は、アリール環であり、この環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
は、>B-、>P-、>P(=O)-、または>P(=S)-であり、
21~R23は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
Lは、それぞれ独立して、単結合、アルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、アリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
mが1の場合、nは1または2であり、
mが2の場合、nは1であり、
Lは、mおよびnの数に応じて、A環、B環、およびC環の1つまたは2つの環と結合すると共に、R21~R23における1つまたは2つの位置で結合し、そして、
式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、重水素、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい。
項2.
上記式(1)中、
A環、B環、およびC環は、アリール環であり、この環における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオ、または置換シリルで置換されていてもよく、これらの基における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
は、>B-、>P-、>P(=O)-、または>P(=S)-であり、
21~R23は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
Lは、それぞれ独立して、単結合、アルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、アリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
mが1の場合、nは1または2であり、
mが2の場合、nは1であり、
Lは、mおよびnの数に応じて、A環、B環、およびC環の1つまたは2つの環と結合すると共に、R21~R23における1つまたは2つの位置で結合し、そして、
式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、重水素、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい、
項1に記載する有機電界発光素子。
項3.
上記一般式(1)が下記一般式(2)で表される、項1に記載する有機電界発光素子。
Figure 2023085205000002
上記式(2)中、
~R11は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオ、トリアリールシリル、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、またはアルキルジシクロアルキルシリルであり、R~R11における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
また、R~R、R~R、およびR~R11のうちの隣接する基同士が結合して、それぞれa環、b環、およびc環と共に、アリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオ、トリアリールシリル、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、またはアルキルジシクロアルキルシリルで置換されていてもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
は、>B-、>P-、>P(=O)-、または>P(=S)-であり、
21~R23は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
Lは、それぞれ独立して、単結合、アルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、アリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
mが1の場合、nは1または2であり、
mが2の場合、nは1であり、
Lは、mおよびnの数に応じて、R~R11における1つまたは2つの位置で結合すると共に、R21~R23における1つまたは2つの位置で結合し、そして、
式(2)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、重水素、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい。
項4.
上記式(2)中、
~R11は、それぞれ独立して、水素、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、ジヘテロアリールアミノ(ただしヘテロアリールは炭素数2~15のヘテロアリール)、アリールヘテロアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール、ヘテロアリールは炭素数2~15のヘテロアリール)、ジアリールボリル(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、炭素数1~24のアルキル、炭素数3~24のシクロアルキル、炭素数1~24のアルケニル、炭素数1~24のアルコキシ、炭素数6~30のアリールオキシ、炭素数6~30のアリールチオ、トリアリールシリル(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、トリアルキルシリル(ただしアルキルは炭素数1~12のアルキル)、トリシクロアルキルシリル(ただしシクロアルキルは炭素数3~12のシクロアルキル)、ジアルキルシクロアルキルシリル(ただしアルキルは炭素数1~12のアルキル、シクロアルキルは炭素数3~12のシクロアルキル)、またはアルキルジシクロアルキルシリル(ただしアルキルは炭素数1~12のアルキル、シクロアルキルは炭素数3~12のシクロアルキル)であり、R~R11における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、炭素数6~12のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、炭素数1~6のアルキル、または炭素数3~14のシクロアルキルで置換されていてもよく、
また、R~R、R~R、およびR~R11のうちの隣接する基同士が結合して、それぞれa環、b環、およびc環と共に、炭素数9~16のアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、ジヘテロアリールアミノ(ただしヘテロアリールは炭素数2~15のヘテロアリール)、アリールヘテロアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール、ヘテロアリールは炭素数2~15のヘテロアリール)、ジアリールボリル(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、炭素数1~24のアルキル、炭素数3~24のシクロアルキル、炭素数1~24のアルケニル、炭素数1~24のアルコキシ、炭素数6~30のアリールオキシ、炭素数6~30のアリールチオ、トリアリールシリル(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、トリアルキルシリル(ただしアルキルは炭素数1~12のアルキル)、トリシクロアルキルシリル(ただしシクロアルキルは炭素数3~12のシクロアルキル)、ジアルキルシクロアルキルシリル(ただしアルキルは炭素数1~12のアルキル、シクロアルキルは炭素数3~12のシクロアルキル)、またはアルキルジシクロアルキルシリル(ただしアルキルは炭素数1~12のアルキル、シクロアルキルは炭素数3~12のシクロアルキル)で置換されていてもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、炭素数6~12のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、炭素数1~6のアルキル、または炭素数3~14のシクロアルキルで置換されていてもよく、
は、>B-、>P-、>P(=O)-、または>P(=S)-であり、
21~R23は、それぞれ独立して、水素、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~24のアルキル、または炭素数3~24のシクロアルキルであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~24のアルキル、または炭素数3~24のシクロアルキルで置換されていてもよく、
Lは、それぞれ独立して、単結合、炭素数1~24のアルキレン、炭素数6~30のアリーレン、または炭素数2~30のヘテロアリーレンであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、炭素数6~12のアリール、炭素数1~6のアルキル、または炭素数3~14のシクロアルキルで置換されていてもよく、
mは1であり、nは1または2であり、
Lは、nの数に応じて、R~R11における1つまたは2つの位置で結合すると共に、R21~R23における1つの位置で結合し、そして、
式(2)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、重水素、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい、
項3に記載する有機電界発光素子。
項5.
上記式(2)中、
~R11は、それぞれ独立して、水素、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、ジヘテロアリールアミノ(ただしヘテロアリールは炭素数2~15のヘテロアリール)、炭素数1~24のアルキル、炭素数3~24のシクロアルキル、炭素数1~24のアルコキシ、炭素数6~30のアリールオキシ、または炭素数6~30のアリールチオであり、R~R11における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、炭素数6~12のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、炭素数1~6のアルキル、または炭素数3~14のシクロアルキルで置換されていてもよく、
また、R~R、R~R、およびR~R11のうちの隣接する基同士が結合して、それぞれa環、b環、およびc環と共に、炭素数9~16のアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、ジヘテロアリールアミノ(ただしヘテロアリールは炭素数2~15のヘテロアリール)、炭素数1~24のアルキル、炭素数3~24のシクロアルキル、炭素数1~24のアルコキシ、炭素数6~30のアリールオキシ、または炭素数6~30のアリールチオで置換されていてもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、炭素数6~12のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、炭素数1~6のアルキル、または炭素数3~14のシクロアルキルで置換されていてもよく、
は、>B-、>P-、>P(=O)-、または>P(=S)-であり、
21~R23は、それぞれ独立して、水素、炭素数6~20のアリール、炭素数2~20のヘテロアリール、炭素数1~12のアルキル、または炭素数3~12のシクロアルキルであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、炭素数6~20のアリール、炭素数2~20のヘテロアリール、炭素数1~12のアルキル、または炭素数3~12のシクロアルキルで置換されていてもよく、
Lは、それぞれ独立して、単結合、炭素数1~6のアルキレン、炭素数6~16のアリーレン、または炭素数2~15のヘテロアリーレンであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、炭素数6~12のアリール、炭素数1~6のアルキル、または炭素数5~10のシクロアルキルで置換されていてもよく、
mは1であり、nは1または2であり、
Lは、nの数に応じて、R~R11における1つまたは2つの位置で結合すると共に、R21~R23における1つの位置で結合し、そして、
式(2)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、重水素、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい、
項3に記載する有機電界発光素子。
項6.
前記一般式(1)で表される多環芳香族化合物が下記いずれかの構造式で表される化合物である、項1に記載する有機電界発光素子。
Figure 2023085205000003
Figure 2023085205000004
項7.
項1~6のいずれかに記載する有機電界発光素子を備えた表示装置または照明装置。
項8.
一般式(1)で表される多環芳香族化合物。
Figure 2023085205000005
上記式(1)中、
A環、B環、およびC環は、アリール環であり、この環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
は、>B-、>P-、>P(=O)-、または>P(=S)-であり、
21~R23は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
Lは、それぞれ独立して、フェニレンまたはナフチレンであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、アリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
mが1の場合、nは1または2であり、
mが2の場合、nは1であり、
Lは、mおよびnの数に応じて、A環、B環、およびC環の1つまたは2つの環と結合すると共に、R21~R23における1つまたは2つの位置で結合し、そして、
式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、重水素、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい。
項9.
下記いずれかの構造式で表される化合物である、項8に記載する多環芳香族化合物。
Figure 2023085205000006
Figure 2023085205000007
項10.
一般式(1)で表される多環芳香族化合物。
Figure 2023085205000008
上記式(1)中、
A環、B環、およびC環は、アリール環であり、この環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
は、>B-、>P-、>P(=O)-、または>P(=S)-であり、
21~R23は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
Lは単結合であり、
mが1の場合、nは1または2であり、
mが2の場合、nは1であり、
Lは、mおよびnの数に応じて、A環、B環、およびC環の1つまたは2つの環と結合すると共に、R21~R23における1つまたは2つの位置で結合し、
式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、重水素、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよく、
ただし、A環への置換基、B環への置換基、C環への置換基、R21、R22、およびR23における少なくとも1つは、シアノ、ヘテロアリール(トリアジニル基を除く)、シアノで置換されたアリール、およびヘテロアリール(トリアジニル基を除く)で置換されたアリールからなる群から選択される少なくとも1つである。
項11.
下記いずれかの構造式で表される化合物である、項10に記載する多環芳香族化合物。
Figure 2023085205000009
本発明の好ましい態様によれば、有機EL素子用材料として用いることができる、新規な構造を有する多環芳香族化合物を提供することができ、この多環芳香族化合物を用いることで、駆動電圧、発光効率、および素子寿命が優れた有機EL素子を提供することができる。
本実施形態に係る有機EL素子を示す概略断面図である。
1.トリアジニル基を有する多環芳香族化合物
<化合物の全体構造の説明>
本発明は、下記一般式(1)で表される多環芳香族化合物であり、好ましくは、下記一般式(2)で表される多環芳香族化合物であり、多環芳香族部位、連結部位L、およびトリアジン部位(トリアジニル基)を有することを特徴とする。なお、下記構造式中の符号の定義は上述した定義と同じであり、さらに、この段落以降で示すすべての構造式中の符号の定義も上述した定義と同じである。
Figure 2023085205000010
Figure 2023085205000011
式(1)中の多環芳香族部位は、縮合2環構造にA環、B環、およびC環が縮合した構造を有し、式(2)中の多環芳香族部位は、縮合2環構造にa環、b環、およびc環が縮合した構造を有する。縮合2環構造とは、2個の6員飽和炭化水素環同士が縮合した構造のことであり、上記構造式中では、Yと2つの-O-(酸素)とを含んで構成されるデカヒドロナフタレン型構造のことである。
式(1)および式(2)共にトリアジン部位は、連結部位Lを介して多環芳香族部位に結合するトリアジニル基であり、R21~R23基を有する。このトリアジニル基の詳細については後述する。
式(1)および式(2)共に、m個(m=1または2)の多環芳香族部位とn個(n=1または2)のトリアジニル基が連結部位Lを介して結合している(好ましくはmおよびnが共に2の場合は含まない)。mが1の場合、nは1または2であり、mが2の場合、nは1であり、連結部位Lは、mおよびnの数に応じて、多環芳香族部位のA環、B環、およびC環(またはa環、b環、およびc環)の1つまたは2つの環と結合すると共に、トリアジン部位のR21~R23における1つまたは2つの位置で結合する。
<化合物中の環構造およびその置換基の説明>
式(1)中のA環、B環、およびC環は、アリール環であり、この環における少なくとも1つの水素は置換基で置換されていてもよい。この置換基は、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいジアリールアミノ、置換されていてもよいジヘテロアリールアミノ、置換されていてもよいアリールヘテロアリールアミノ(アリールとヘテロアリールを有するアミノ基)、置換されていてもよいジアリールボリル、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいアリールチオ、または置換シリルが好ましい。これらの置換基がさらに置換基を有する場合には、その置換基としては、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオ、または置換シリルが挙げられ、好ましくは、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルが挙げられる。なお、ここで列挙した環や置換基の詳細についてはまとめて後述する。
式(1)の説明における、上記ジアリールアミノの2つのアリールは連結基を介して結合していてもよく、上記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは連結基を介して結合していてもよく、上記アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは連結基を介して結合していてもよく、上記ジアリールボリルの2つのアリールは連結基を介して結合していてもよい。この連結基や結合した形態の詳細についてはまとめて後述する。
式(2)中のR~R11は、水素または置換基であり、具体的には、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいジアリールアミノ、置換されていてもよいジヘテロアリールアミノ、置換されていてもよいアリールヘテロアリールアミノ(アリールとヘテロアリールを有するアミノ基)、置換されていてもよいジアリールボリル、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいアリールチオ、または置換シリルが好ましい。これらの置換基がさらに置換基を有する場合には、その置換基としては、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオ、または置換シリルが挙げられ、好ましくは、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルが挙げられる。なお、ここで列挙した置換基の詳細についてはまとめて後述する。
式(2)の説明における、上記ジアリールアミノの2つのアリールは連結基を介して結合していてもよく、上記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは連結基を介して結合していてもよく、上記アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは連結基を介して結合していてもよく、上記ジアリールボリルの2つのアリールは連結基を介して結合していてもよい。この連結基や結合した形態の詳細についてはまとめて後述する。
式(2)中のR~R11の具体例は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオ、トリアリールシリル、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、またはアルキルジシクロアルキルシリルであり、当該R~R11における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよい。なお、ここで列挙した置換基の詳細についてはまとめて後述する。
式(1)中のA環、B環、およびC環としてのアリール環は、上述した縮合2環構造と結合を共有する5員環または6員環を有することが好ましい。
ここで、「縮合2環構造と結合を共有する6員環」とは、例えば式(2)で示すように縮合2環構造に縮合した、a環、b環、およびc環(ベンゼン環(6員環))を意味する。また、「(A環、B環、およびC環である)アリール環がこの6員環を有する」とは、この6員環だけでA環、B環、およびC環が形成されるか、または、この6員環にさらに他の環などが縮合することで、この6員環を含むようにA環、B環、およびC環が形成されることを意味する。言い換えれば、ここで言う「6員環を有する(A環、B環、およびC環である)アリール環」とは、A環、B環、およびC環の全部または一部を構成する6員環が、縮合2環構造に縮合していることを意味する。また、「5員環」についても同様の説明が当てはまる。
式(1)中のA環、B環、およびC環は、それぞれ、式(2)中のa環とその置換基R~R、b環とその置換基R~R、およびc環とその置換基R~R11に対応する。すなわち、式(2)は、式(1)のA環、B環、およびC環として「(ベンゼン環である)6員環を有するA環、B環、およびC環」が選択された構造に対応する。その意味で、式(2)における各環を小文字の「a」、「b」、および「c」で表した。
<置換基同士の結合による環構造の変化の説明>
式(2)中、a環の置換基R~Rのうちの隣接する基同士、b環の置換基R~Rのうちの隣接する基同士、およびc環の置換基R~R11のうちの隣接する基同士は、結合して、それぞれ、a環、b環、またはc環と共に、アリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオ、トリアリールシリル、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、またはアルキルジシクロアルキルシリルで置換されていてもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよい。なお、ここで列挙した環や置換基の詳細についてはまとめて後述する。
式(2)の説明における、上記ジアリールアミノの2つのアリールは連結基を介して結合していてもよく、上記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは連結基を介して結合していてもよく、上記アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは連結基を介して結合していてもよく、上記ジアリールボリルの2つのアリールは連結基を介して結合していてもよい。この連結基や結合した形態の詳細についてはまとめて後述する。
したがって、式(2)中の多環芳香族部位は、a環、b環、およびc環における置換基の相互の結合形態によって、下記式(2-fr1)~式(2-fr3)に示すように、化合物を構成する環構造が変化する。各式中のA’環およびB’環は、式(1)におけるそれぞれA環およびB環に対応する。なお、下記式では示していないが、c環も同様に環構造が変化してC’環になってもよく、式(1)におけるC環に対応する。
Figure 2023085205000012
上記式(2-fr1)~式(2-fr3)中のA’環およびB’環は、式(2)で説明すれば、a環の置換基R~Rのうちの隣接する基同士、またはb環の置換基R~Rのうちの隣接する基同士が結合して、それぞれa環およびb環と共に形成したアリール環を示す(a環またはb環に他の環構造が縮合してできた縮合環ともいえる)。c環の置換基R~R11のうちの隣接する基同士も同様に結合して、c環と共にアリール環を形成してもよく、形成された環はC’環(c環に他の環構造が縮合してできた縮合環ともいえる)になる。また、上記式から分かるように、例えば、a環の置換基Rとb環の置換基R、b環の置換基Rとc環の置換基R、およびc環の置換基R11とa環の置換基Rは「隣接する基同士」には該当せず、これらが結合することはない。すなわち、「隣接する基」とは同一環上で隣接する基を意味する。
上記式(2-fr1)~式(2-fr3)の具体例としては、a環またはb環であるベンゼン環に対して、例えば、ベンゼン環またはナフタレン環などが縮合して形成されたA’環またはB’環を有する構造が挙げられ、形成された縮合環A’または縮合環B’は、ナフタレン環またはフェナントレン環などである。また、c環であるベンゼン環についても同様の説明ができる。
例えば、式(2-fr1)~式(2-fr3)のより具体的な例を以下に示す。
Figure 2023085205000013
上記式(2-fr1-ex)は、式(2-fr1)の具体例であり、式(2)のa環における隣接するRおよびRが結合して、a環(ベンゼン環)と共に、A’で示すアリール環(ナフタレン環)が形成された例である。形成されたアリール環は上述した縮合2環構造と結合を共有する6員環(ベンゼン環a)を有している。なお、アリール環A’(式(1)のA環)への任意の置換基をRの他にn個のRで示しており、nの上限は置換可能な最大数である。
上記式(2-fr2-ex)は、式(2-fr2)の具体例であり、式(2)のb環における隣接するRおよびRが結合して、b環(ベンゼン環)と共に、B’で示すアリール環(ナフタレン環)が形成された例である。形成されたアリール環は上述した縮合2環構造と結合を共有する6員環(ベンゼン環b)を有している。なお、アリール環B’(式(1)のB環)への任意の置換基をRおよびRの他にn個のRで示しており、nの上限は置換可能な最大数である。
上記式(2-fr3-ex)は、式(2-fr3)の具体例であり、式(2)のa環における隣接するRおよびRが結合して、a環(ベンゼン環)と共に、A’で示すアリール環(フェナントレン環)が形成され、b環における隣接するRおよびRが結合して、b環(ベンゼン環)と共に、B’で示すアリール環(ナフタレン環)が形成された例である。形成されたアリール環は上述した縮合2環構造と結合を共有する6員環(ベンゼン環aおよびベンゼン環b)を有している。なお、アリール環A’(式(1)のA環)およびアリール環B’(式(1)のB環)への任意の置換基をR、R、およびRの他にn個のRで示しており、nの上限は置換可能な最大数である。
以上の説明は、c環の置換基R~R11のうちの隣接する基同士が同様に結合して、環構造が変化してC’環になった場合にも適用でき、また上述した具体例以外のあらゆる形態にも同様に適用できる。
<化合物中の中心元素Y の説明>
式(1)および式(2)中のYは、>B-、>P-、>P(=O)-、または>P(=S)-である。>P(=O)-または>P(=S)-の場合には、A環(a環)、B環(b環)、およびC環(c環)と結合する原子は、Pである。Yは、>B-または>P-が好ましく、>B-が特に好ましい。
<トリアジン部位(トリアジニル基)の説明>
トリアジン部位は、連結部位Lを介して多環芳香族部位に結合するトリアジニル基であり、R21~R23基を有する。R21~R23は、それぞれ独立して、水素または置換基であり、好ましくはR21~R23のすべてが水素であることはない。
置換基としては、具体的には、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルであり、当該置換基における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよい。置換基としては、より具体的には、アリールまたはアルキルであり、例えばフェニル、ビフェニリル、ナフチル、フェナントレニル、メチル、エチル、t-ブチルなどが好ましく、フェニルがより好ましい。なお、ここで列挙した置換基の詳細についてはまとめて後述する。
<連結部位Lの説明>
Lは、それぞれ独立して、単結合、アルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、アリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよい。好ましくは、単結合およびアリーレンであり、例えば単結合、フェニレン(例えば1,4-フェニレン、1,3-フェニレンなど)などが好ましい。なお、ここで列挙した連結基や置換基の詳細についてはまとめて後述する。
<多環芳香族部位とトリアジン部位との結合形態>
式(1)および式(2)共に、m個(m=1または2)の多環芳香族部位とn個(n=1または2)のトリアジニル基が連結部位Lを介して結合している(好ましくはmおよびnが共に2の場合は含まない)。mが1の場合、nは1または2であり、これは1つの多環芳香族部位に1つまたは2つのトリアジン部位が結合した形態である。mが2の場合、nは1であり、これは1つのトリアジン部位に2つの多環芳香族部位が結合した形態である。好ましくは、mが1で、nは1または2であり、より好ましくは、mおよびnが共に1である。
連結部位Lは、mおよびnの数に応じて、多環芳香族部位のA環、B環、およびC環(またはa環、b環、およびc環)の1つまたは2つの環と結合すると共に、トリアジン部位のR21~R23における1つまたは2つの位置で結合する。A環、B環、およびC環と結合するとは、アリール環であるA環、B環、およびC環における1つまたは2つの水素が、連結部位Lで置換された形態である。a環、b環、およびc環と結合するとは、式(2)中のR~R11における1つまたは2つの位置で結合した形態(すなわち、R~R11における1つまたは2つが連結部位Lになった形態)である。トリアジン部位のR21~R23における1つまたは2つの位置で結合するとは、トリアジン部位のR21~R23における1つまたは2つが連結部位Lになった形態である。
<環や置換基の具体的な説明>
次に、これまでの説明の中で列挙した環や置換基(第1置換基に加えて、第1置換基にさらに置換する第2置換基も含む)の詳細についてはまとめて説明する。
「アリール環」は、例えば炭素数6~30のアリール環であり、好ましくは、炭素数6~20のアリール環、炭素数6~16のアリール環、炭素数6~12のアリール環、または炭素数6~10のアリール環などである。
なお、式(1)におけるA環、B環、およびC環としての「アリール環」は、式(2)で規定された「R~R、R~R、およびR~R11のうちの隣接する基同士が結合して、それぞれa環、b環、およびc環と共に形成されたアリール環」に対応するが、この「形成されたアリール環」については、a環、b環、またはc環がすでに炭素数6のベンゼン環で構成されているため、このベンゼン環に最小の5員環が縮合した縮合環の合計炭素数9が下限の炭素数となる。
具体的な「アリール環」は、例えば、単環系であるベンゼン環、縮合二環系であるナフタレン環、もしくはインデン環、縮合三環系である、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環、アントラセン環、もしくは9,10-ジヒドロアントラセン環、縮合四環系である、トリフェニレン環、ピレン環、もしくはナフタセン環、または、縮合五環系であるペリレン環もしくはペンタセン環などである。
なお、「アリール環」には、当該アリール環における少なくとも1つの水素が、フェニルなどのアリール(具体例は後述する基)、メチルなどのアルキル(具体例は後述する基)、またはシクロヘキシルもしくはアダマンチルなどのシクロアルキル(具体例は後述する基)で置換された構造も、含まれる。
例えば、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、およびインデン環における、メチレン基の2つの水素がメチルで置換された、ジメチルフルオレン環、ジメチルベンゾフルオレン環、およびジメチルインデン環も、アリール環に含まれる。また、9,10-ジヒドロアントラセン環における、2つのメチレン基の4つの水素がメチルで置換された、9,9,10,10-テトラメチル-9,10-ジヒドロアントラセン環も、アリール環に含まれる。
「アリール」は、例えば炭素数6~30のアリールであり、好ましくは、炭素数6~20のアリール、炭素数6~18のアリール、炭素数6~16のアリール、炭素数6~12のアリール、または炭素数6~10のアリールなどである。
具体的な「アリール」は、例えば、単環系であるフェニル、二環系であるビフェニリル(2-ビフェニリル、3-ビフェニリル、もしくは4-ビフェニリル)、縮合二環系であるナフチル(1-ナフチルもしくは2-ナフチル)、もしくはインデニル(2-インデニル、3-インデニル、4-インデニル、5-インデニル、6-インデニルもしくは7-インデニル)、三環系であるテルフェニリル(m-テルフェニル-2’-イル、m-テルフェニル-4’-イル、m-テルフェニル-5’-イル、o-テルフェニル-3’-イル、o-テルフェニル-4’-イル、p-テルフェニル-2’-イル、m-テルフェニル-2-イル、m-テルフェニル-3-イル、m-テルフェニル-4-イル、o-テルフェニル-2-イル、o-テルフェニル-3-イル、o-テルフェニル-4-イル、p-テルフェニル-2-イル、p-テルフェニル-3-イル、もしくはp-テルフェニル-4-イル)、縮合三環系である、アセナフチレン-(1-、3-、4-、もしくは5-)イル、フルオレン-(1-、2-、3-、4-、もしくは9-)イル、フェナレン-(1-もしくは2-)イル、フェナントレン-(1-、2-、3-、4-、もしくは9-)イル、もしくは9,10-ジヒドロアントラセン-(1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-もしくは8-)イル、四環系であるクアテルフェニリル(5’-フェニル-m-テルフェニル-2-イル、5’-フェニル-m-テルフェニル-3-イル、5’-フェニル-m-テルフェニル-4-イル、もしくはm-クアテルフェニル)、縮合四環系である、トリフェニレン-(1-もしくは2-)イル、ピレン-(1-、2-、もしくは4-)イル、もしくはナフタセン-(1-、2-、もしくは5-)イル、または、縮合五環系である、ペリレン-(1-、2-、もしくは3-)イル、もしくはペンタセン-(1-、2-、5-、もしくは6-)イルなどである。
なお、「アリール」には、当該アリールにおける少なくとも1つの水素が、フェニルなどのアリール(具体例は上述した基)、メチルなどのアルキル(具体例は後述する基)、またはシクロヘキシルもしくはアダマンチルなどのシクロアルキル(具体例は後述する基)で置換された構造も、含まれる。
例えば、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、およびインデニルにおける、メチレン基の2つの水素がメチルで置換された、ジメチルフルオレニル、ジメチルベンゾフルオレニル、およびジメチルインデニルも、アリールに含まれる。また、9,10-ジヒドロアントラセニルにおける、2つのメチレン基の4つの水素がメチルで置換された、9,9,10,10-テトラメチル-9,10-ジヒドロアントラセニルも、アリールに含まれる。
「アリーレン(環)」は、例えば炭素数6~30のアリーレンであり、好ましくは、炭素数6~20のアリーレン、炭素数6~16のアリーレン、炭素数6~12のアリーレン、または炭素数6~10のアリーレンなどである。
具体的な「アリーレン」は、例えば、上述した「アリール」(一価の基)から1つの水素を除いて二価の基にした構造が挙げられる。
「ヘテロアリール」は、例えば炭素数2~30のヘテロアリールであり、好ましくは、炭素数2~25のヘテロアリール、炭素数2~20のヘテロアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、または炭素数2~10のヘテロアリールなどである。また、「ヘテロアリール」は、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄、および窒素から選ばれるヘテロ原子を1~5個含有する複素環などの一価の基である。
具体的な「ヘテロアリール」としては、例えば、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリル、イソインドリル、1H-インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H-ベンゾトリアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フェナントロリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェナザシリニル、インドリジニル、フラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、ナフトベンゾフラニル、キサンテニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、ジベンゾチオフェニル、ナフトベンゾチオフェニル、チオキサンテニル、ベンゾホスホリル、ジベンゾホスホリル、ベンゾホスホールオキシド環の1価の基、ジベンゾホスホールオキシド環の1価の基、フラザニル、チアントレニル、インドロカルバゾリル、ベンゾインドロカルバゾリル、ベンゾベンゾインドロカルバゾリル、イミダゾリニル、オキサゾリニル、またはジベンゾシラシクロペンタジエニルなどである。
なお、「ヘテロアリール」には、当該ヘテロアリールにおける少なくとも1つの水素が、フェニルなどのアリール(具体例は上述した基)、メチルなどのアルキル(具体例は後述する基)、またはシクロヘキシルもしくはアダマンチルなどのシクロアルキル(具体例は後述する基)で置換された構造も含まれる。
例えば、カルバゾリルの9位における水素が、フェニル、メチル、シクロヘキシル、またはアダマンチルで置換された、9-(フェニル、メチル、シクロヘキシル、またはアダマンチル)カルバゾリルも、ヘテロアリールに含まれる。また、アクリジニル、キサンテニル、またはチオキサンテニルにおける、メチレン基の2つの水素がメチルで置換された、ジメチルジヒドロアクリジニル、ジメチルキサンテニル、ジメチルチオキサンテニルも、ヘテロアリールに含まれる。
ただし、本発明の化合物は、トリアジニル基(トリアジン部位)を有することを特徴とするため、第1置換基及び第2置換基としてのヘテロアリールの定義からは、トリアジニル基が除かれることが好ましい。
「ヘテロアリーレン(環)」は、例えば炭素数2~30のヘテロアリーレンであり、好ましくは、炭素数2~25のヘテロアリーレン、炭素数2~20のヘテロアリーレン、炭素数2~15のヘテロアリーレン、または炭素数2~10のヘテロアリーレンなどである。また、「ヘテロアリーレン」は、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄、および窒素から選ばれるヘテロ原子を1~5個含有する複素環などの二価の基である。
具体的な「ヘテロアリーレン」は、例えば、上述した「ヘテロアリール」(一価の基)から1つの水素を除いて二価の基にした構造が挙げられる。
「ジアリールアミノ」は、2つのアリールが置換したアミノ基であり、このアリールの詳細については上述した「アリール」の説明を引用できる。
「ジヘテロアリールアミノ」は、2つのヘテロアリールが置換したアミノ基であり、このヘテロアリールの詳細については上述した「ヘテロアリール」の説明を引用できる。
「アリールヘテロアリールアミノ」は、アリールおよびヘテロアリールが置換したアミノ基であり、このアリールおよびヘテロアリールの詳細については上述した「アリール」および「ヘテロアリール」の説明を引用できる。
「ジアリールアミノ」の2つのアリールは連結基を介して結合していてもよく、「ジヘテロアリールアミノ」の2つのヘテロアリールは連結基を介して結合していてもよく、「アリールヘテロアリールアミノ」のアリールとヘテロアリールは連結基を介して結合していてもよい。この連結基としては、単結合、-CH-CH-、-CHR-CHR-、-CR-CR-、-CH=CH-、-CR=CR-、-C≡C-、-N(-R)-、-O-、-S-、-C(-R)-、-Si(-R)-、または-Se-が挙げられる。なお、前記「-CHR-CHR-」のR、「-CR-CR-」のR、「-CR=CR-」のR、「-N(-R)-」のR、「-C(-R)-」のR、および「-Si(-R)-」のRは、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはシクロアルキルであり、当該Rにおける少なくとも1つの水素はアルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよい。また、「-CHR-CHR-」、「-CR-CR-」、「-CR=CR-」、「-C(-R)-」、および「-Si(-R)-」における隣接する2つのR同士が結合して、シクロアルキレン環、アリーレン環、およびヘテロアリーレン環を形成していてもよい。ここで列挙した置換基や環の詳細については、上述した「アリール」、「アリーレン」、「ヘテロアリール」、および「ヘテロアリーレン」の説明、ならびに、後述する「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「シクロアルキル」、および「シクロアルキレン」の説明を引用できる。
「ジアリールボリル」は、2つのアリールが置換したボリル基であり、このアリールの詳細については上述した「アリール」の説明を引用できる。
「ジアリールボリル」の2つのアリールは連結基を介して結合していてもよい。この連結基としては、単結合、-CH-CH-、-CHR-CHR-、-CR-CR-、-CH=CH-、-CR=CR-、-C≡C-、-N(-R)-、-O-、-S-、-C(-R)-、-Si(-R)-、または-Se-が挙げられる。なお、前記「-CHR-CHR-」のR、「-CR-CR-」のR、「-CR=CR-」のR、「-N(-R)-」のR、「-C(-R)-」のR、および「-Si(-R)-」のRは、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはシクロアルキルであり、当該Rにおける少なくとも1つの水素はアルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよい。また、「-CHR-CHR-」、「-CR-CR-」、「-CR=CR-」、「-C(-R)-」、および「-Si(-R)-」における隣接する2つのR同士が結合して、シクロアルキレン環、アリーレン環、およびヘテロアリーレン環を形成していてもよい。ここで列挙した置換基や環の詳細については、上述した「アリール」、「アリーレン」、「ヘテロアリール」、および「ヘテロアリーレン」の説明、ならびに、後述する「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「シクロアルキル」、および「シクロアルキレン」の説明を引用できる。
「アルキル」は、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば炭素数1~24の直鎖アルキルまたは炭素数3~24の分岐鎖アルキルであり、好ましくは、炭素数1~18のアルキル(炭素数3~18の分岐鎖アルキル)、炭素数1~12のアルキル(炭素数3~12の分岐鎖アルキル)、炭素数1~6のアルキル(炭素数3~6の分岐鎖アルキル)、炭素数1~5のアルキル(炭素数3~5の分岐鎖アルキル)、炭素数1~4のアルキル(炭素数3~4の分岐鎖アルキル)などである。
具体的な「アルキル」は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1,1-ジエチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,1,2,2-テトラメチルプロピル、1-エチル-1,2,2-トリメチルプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-エチルブチル、1,1-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,1-ジエチルブチル、1-エチル-1-メチルブチル、1-プロピル-1-メチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、1-エチル-1,3-ジメチルブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t-ペンチル(t-アミル)、1-メチルペンチル、2-プロピルペンチル、1,1-ジメチルペンチル、1-エチル-1-メチルペンチル、1-プロピル-1-メチルペンチル、1-ブチル-1-メチルペンチル、1,1,4-トリメチルペンチル、n-ヘキシル、1-メチルヘキシル、2-エチルヘキシル、1,1-ジメチルヘキシル、1-エチル-1-メチルヘキシル、1,1,5-トリメチルヘキシル、3,5,5-トリメチルヘキシル、n-ヘプチル、1-メチルヘプチル、1-ヘキシルヘプチル、1,1-ジメチルヘプチル、2,2-ジメチルヘプチル、2,6-ジメチル-4-ヘプチル、n-オクチル、t-オクチル(1,1,3,3-テトラメチルブチル)、1,1-ジメチルオクチル、n-ノニル、n-デシル、1-メチルデシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、またはn-エイコシルなどである。
「アルキレン」は、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば炭素数1~24の直鎖アルキレンまたは炭素数3~24の分岐鎖アルキレンであり、好ましくは、炭素数1~18のアルキレン(炭素数3~18の分岐鎖アルキレン)、炭素数1~12のアルキレン(炭素数3~12の分岐鎖アルキレン)、炭素数1~6のアルキレン(炭素数3~6の分岐鎖アルキレン)、炭素数1~5のアルキレン(炭素数3~5の分岐鎖アルキレン)、炭素数1~4のアルキレン(炭素数3~4の分岐鎖アルキレン)などである。
具体的な「アルキレン」は、例えば、上述した「アルキル」(一価の基)から1つの水素を除いて二価の基にした構造が挙げられる。
「アルケニル」については、上述した「アルキル」の説明を参考にすることができ、「アルキル」の構造中のC-C単結合をC=C二重結合に置換した基であり、1つだけでなく2つ以上の単結合が二重結合に置換された基(アルカジエン-イルやアルカトリエン-イルとも呼ばれる)も含める。
「アルキニル」については、上述した「アルキル」の説明を参考にすることができ、「アルキル」の構造中のC-C単結合をC≡C三重結合に置換した基であり、1つだけでなく2つ以上の単結合が三重結合に置換された基(アルカジイン-イルやアルカトリイン-イルとも呼ばれる)も含める。
「シクロアルキル」は、例えば炭素数3~24のシクロアルキルであり、好ましくは、炭素数3~20のシクロアルキル、炭素数3~16のシクロアルキル、炭素数3~14のシクロアルキル、炭素数3~12のシクロアルキル、炭素数5~10のシクロアルキル、炭素数5~8のシクロアルキル、炭素数5~6のシクロアルキル、または炭素数5のシクロアルキルなどである。
具体的な「シクロアルキル」は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、もしくはこれらの炭素数1~5や炭素数1~4のアルキル(特にメチル)置換体、ノルボルネニル、ビシクロ[1.1.0]ブチル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、ジアマンチル、デカヒドロナフタレニル、またはデカヒドロアズレニルなどである。
「シクロアルキレン(環)」は、例えば炭素数3~24のシクロアルキレンであり、好ましくは、炭素数3~20のシクロアルキレン、炭素数3~16のシクロアルキレン、炭素数3~14のシクロアルキレン、炭素数3~12のシクロアルキレン、炭素数5~10のシクロアルキレン、炭素数5~8のシクロアルキレン、炭素数5~6のシクロアルキレン、または炭素数5のシクロアルキレンなどである。
具体的な「シクロアルキレン」は、例えば、上述した「シクロアルキル」(一価の基)から1つの水素を除いて二価の基にした構造が挙げられる。
「アルコキシ」は、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば炭素数1~24の直鎖アルコキシまたは炭素数3~24の分岐鎖アルコキシであり、好ましくは、炭素数1~18のアルコキシ(炭素数3~18の分岐鎖アルコキシ)、炭素数1~12のアルコキシ(炭素数3~12の分岐鎖アルコキシ)、炭素数1~6のアルコキシ(炭素数3~6の分岐鎖アルコキシ)、炭素数1~5のアルコキシ(炭素数3~5の分岐鎖アルコキシ)、炭素数1~4のアルコキシ(炭素数3~4の分岐鎖アルコキシ)などである。
具体的な「アルコキシ」は、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、1-エチル-1-メチルプロポキシ、1,1-ジエチルプロポキシ、1,1,2-トリメチルプロポキシ、1,1,2,2-テトラメチルプロポキシ、1-エチル-1,2,2-トリメチルプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、2-エチルブトキシ、1,1-ジメチルブトキシ、3,3-ジメチルブトキシ、1,1-ジエチルブトキシ、1-エチル-1-メチルブトキシ、1-プロピル-1-メチルブトキシ、1,1,3-トリメチルブトキシ、1-エチル-1,3-ジメチルブトキシ、n-ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、t-ペンチルオキシ(t-アミルオキシ)、1-メチルペンチルオキシ、2-プロピルペンチルオキシ、1,1-ジメチルペンチルオキシ、1-エチル-1-メチルペンチルオキシ、1-プロピル-1-メチルペンチルオキシ、1-ブチル-1-メチルペンチルオキシ、1,1,4-トリメチルペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ、1-メチルヘキシルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、1,1-ジメチルヘキシルオキシ、1-エチル-1-メチルヘキシルオキシ、1,1,5-トリメチルヘキシルオキシ、3,5,5-トリメチルヘキシルオキシ、n-ヘプチルオキシ、1-メチルヘプチルオキシ、1-ヘキシルヘプチルオキシ、1,1-ジメチルヘプチルオキシ、2,2-ジメチルヘプチルオキシ、2,6-ジメチル-4-ヘプチルオキシ、n-オクチルオキシ、t-オクチルオキシ(1,1,3,3-テトラメチルブチルオキシ)、1,1-ジメチルオクチルオキシ、n-ノニルオキシ、n-デシルオキシ、1-メチルデシルオキシ、n-ウンデシルオキシ、n-ドデシルオキシ、n-トリデシルオキシ、n-テトラデシルオキシ、n-ペンタデシルオキシ、n-ヘキサデシルオキシ、n-ヘプタデシルオキシ、n-オクタデシルオキシ、またはn-エイコシルオキシなどである。
「アリールオキシ」は、「Ar-O-(Arはアリール基)」で表される基であり、このアリールの詳細については上述した「アリール」の説明を引用できる。
「アリールチオ」は、「Ar-S-(Arはアリール基)」で表される基であり、このアリールの詳細については上述した「アリール」の説明を引用できる。
「置換シリル」は、例えば、アリール、アルキル、およびシクロアルキルの少なくとも1つで置換されたシリルであり、好ましくは、トリアリールシリル、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、またはアルキルジシクロアルキルシリルである。
「トリアリールシリル」は、3つのアリールで置換されたシリル基であり、このアリールの詳細については上述した「アリール」の説明を引用できる。
具体的な「トリアリールシリル」は、例えば、トリフェニルシリル、ジフェニルモノナフチルシリル、モノフェニルジナフチルシリル、またはトリナフチルシリルなどである。
「トリアルキルシリル」は、3つのアルキルで置換されたシリル基であり、このアルキルの詳細については上述した「アルキル」の説明を引用できる。
具体的な「トリアルキルシリル」は、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリn-プロピルシリル、トリイソプロピルシリル、トリn-ブチルシリル、トリイソブチルシリル、トリs-ブチルシリル、トリt-ブチルシリル、エチルジメチルシリル、n-プロピルジメチルシリル、イソプロピルジメチルシリル、n-ブチルジメチルシリル、イソブチルジメチルシリル、s-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、メチルジエチルシリル、n-プロピルジエチルシリル、イソプロピルジエチルシリル、n-ブチルジエチルシリル、s-ブチルジエチルシリル、t-ブチルジエチルシリル、メチルジn-プロピルシリル、エチルジn-プロピルシリル、n-ブチルジn-プロピルシリル、s-ブチルジn-プロピルシリル、t-ブチルジn-プロピルシリル、メチルジイソプロピルシリル、エチルジイソプロピルシリル、n-ブチルジイソプロピルシリル、s-ブチルジイソプロピルシリル、またはt-ブチルジイソプロピルシリルなどである。
「トリシクロアルキルシリル」は、3つのシクロアルキルで置換されたシリル基であり、このシクロアルキルの詳細については上述した「シクロアルキル」の説明を引用できる。
具体的な「トリシクロアルキルシリル」は、例えば、トリシクロペンチルシリルまたはトリシクロヘキシルシリルなどである。
「ジアルキルシクロアルキルシリル」は、2つのアルキルおよび1つのシクロアルキルで置換されたシリル基であり、このアルキルおよびシクロアルキルの詳細については上述した「アルキル」および「シクロアルキル」の説明を引用できる。
「アルキルジシクロアルキルシリル」は、1つのアルキルおよび2つのシクロアルキルで置換されたシリル基であり、このアルキルおよびシクロアルキルの詳細については上述した「アルキル」および「シクロアルキル」の説明を引用できる。
置換基(第1置換基および第2置換基を含む)は、その構造が有する立体障害性、電子供与性、および電子求引性により、多環芳香族化合物の発光波長に影響を与えるため、置換基の選択により発光波長を調整することができる。好ましくは以下の構造式で表される基であり、より好ましくは、メチル、t-ブチル、ビシクロオクチル、シクロヘキシル、アダマンチル、フェニル、o-トリル、p-トリル、2,4-キシリル、2,5-キシリル、2,6-キシリル、2,4,6-メシチル、ジフェニルアミノ、ジ-p-トリルアミノ、ビス(p-(t-ブチル)フェニル)アミノ、ジフェニルボリル、ジメシチルボリル、ジベンゾオキサボリニニル、フェニルジベンゾジボリニニル、カルバゾリル、3,6-ジメチルカルバゾリル、3,6-ジ-t-ブチルカルバゾリルおよびフェノキシであり、さらに好ましくは、メチル、t-ブチル、フェニル、o-トリル、2,6-キシリル、2,4,6-メシチル、ジフェニルアミノ、ジ-p-トリルアミノ、ビス(p-(t-ブチル)フェニル)アミノ、カルバゾリル、3,6-ジメチルカルバゾリル、3,6-ジ-t-ブチルカルバゾリル、およびトリベンゾアゼピニルである。合成の容易さの観点からは、立体障害が大きい方が選択的な合成のために好ましく、具体的には、t-ブチル、o-トリル、p-トリル、2,4-キシリル、2,5-キシリル、2,6-キシリル、2,4,6-メシチル、ジ-p-トリルアミノ、ビス(p-(t-ブチル)フェニル)アミノ、3,6-ジメチルカルバゾリルおよび3,6-ジ-t-ブチルカルバゾリルが好ましい。
下記構造式において、「Me」はメチル、「tBu」はt-ブチル、「tAm」はt-アミル、「tOct」はt-オクチルを表し、*は結合位置を表す。
Figure 2023085205000014
Figure 2023085205000015
Figure 2023085205000016
Figure 2023085205000017
Figure 2023085205000018
Figure 2023085205000019
Figure 2023085205000020
Figure 2023085205000021
Figure 2023085205000022
Figure 2023085205000023
Figure 2023085205000024
Figure 2023085205000025
Figure 2023085205000026
Figure 2023085205000027
Figure 2023085205000028
Figure 2023085205000029
Figure 2023085205000030
Figure 2023085205000031
Figure 2023085205000032
<重水素、シアノ、またはハロゲンによる置換の説明>
本発明の多環芳香族化合物における少なくとも1つの水素は、重水素、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であり、フッ素、塩素、または臭素が好ましく、フッ素または塩素がより好ましい。
<好ましい多環芳香族化合物(1)>
好ましい多環芳香族化合物においては、Lは、それぞれ独立して、フェニレンまたはナフチレンに限定され、これらの基における少なくとも1つの水素は、アリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよい。なお、ここで列挙した連結基や置換基の詳細については上述した説明を引用できる。例えば以下の化合物があげられる。
Figure 2023085205000033
<好ましい多環芳香族化合物(2)>
好ましい多環芳香族化合物においては、Lは単結合であり、A環への置換基(R~R)、B環への置換基(R~R)、C環への置換基(R~R11)、R21、R22、およびR23における少なくとも1つは、シアノ、ヘテロアリール(トリアジニル基を除く)、シアノで置換されたアリール、およびヘテロアリール(トリアジニル基を除く)で置換されたアリールからなる群から選択される少なくとも1つである。なお、ここで列挙した置換基の詳細については上述した説明を引用できる
好ましくは、Lは単結合であり、A環への置換基(R~R)、B環への置換基(R~R)、C環への置換基(R~R11)、R21、R22、およびR23における少なくとも1つは、シアノで置換されたアリール、およびヘテロアリール(トリアジニル基を除く)で置換されたアリールからなる群から選択される少なくとも1つであり、以下の化合物は除かれる。なお、ここで列挙した置換基の詳細については上述した説明を引用できる。
Figure 2023085205000034
より好ましくは、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 2023085205000035
<本発明の多環芳香族化合物の具体例の説明>
多環芳香族化合物の具体的な例としては、以下の構造式で表される化合物が挙げられる。なお、下記構造式中の「Me」はメチル基、「D」は重水素、「CN」はシアノ基を示す。
Figure 2023085205000036
Figure 2023085205000037
Figure 2023085205000038
Figure 2023085205000039
Figure 2023085205000040
Figure 2023085205000041
Figure 2023085205000042
Figure 2023085205000043
Figure 2023085205000044
Figure 2023085205000045
Figure 2023085205000046
Figure 2023085205000047
Figure 2023085205000048
2.一般式(1)または一般式(2)で表される多環芳香族化合物の製造方法
一般式(1)または一般式(2)で表される多環芳香族化合物は、国際公開第2015/102118号公報を始めとする多くの公知文献に記載されている方法に従って製造することができる。
基本的には、まずA環(a環)と、B環(b環)およびC環(c環)とを酸素(-O-)で結合させることで中間体を製造し(第1反応)、その後に、A環(a環)、B環(b環)、およびC環(c環)を中心元素Yを含む基で結合させることで最終生成物を製造することができる(第2反応)。第1反応では、求核置換反応、ウルマン反応といった一般的なエーテル化反応が利用できる。また、第2反応では、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応(連続的な芳香族求電子置換反応、以下同様)が利用できる。
また、これらの反応工程のどこかで、連結部位Lとトリアジニル基(トリアジン部位)を有する原料を用いたり、これらを導入する工程を追加したりすることで、所望の位置に連結部位Lを介してトリアジニル基(トリアジン部位)が結合した化合物を製造することができる。また、これらの反応工程のどこかで、重水素化、シアノ化、またはハロゲン化された原料を用いたり、重水素化、シアノ化、またはハロゲン化の工程を追加したりすることで、所望の位置が重水素化、シアノ化、またはハロゲン化された化合物を製造することができる。
第2反応は、下記スキーム(1)および(2)に示すように、A環(a環)、B環(b環)、およびC環(c環)を結合する中心元素Yを導入する反応である。まず、2つの酸素(-O-)の間の水素原子をn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、またはt-ブチルリチウム等でオルトメタル化する。次いで、三塩化ホウ素や三臭化ホウ素等を加え、リチウム-ホウ素の金属交換を行った後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン等のブレンステッド塩基を加えることで、タンデムボラフリーデルクラフツ反応させ、目的物を得ることができる。第2反応においては反応を促進させるために三塩化アルミニウム等のルイス酸を加えてもよい。
Figure 2023085205000049
以上の反応で用いられる溶媒の具体例は、t-ブチルベンゼンやキシレンなどである。
また、オルトメタル化試薬としては、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム等のアルキルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムテトラメチルピペリジド、リチウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジドなどの有機アルカリ化合物が挙げられる。
また、メタル-Yの金属交換試薬としては、Yの三フッ化物、Yの三塩化物、Yの三臭化物、Yの三ヨウ化物などのYのハロゲン化物、CIPN(NEtなどのYのアミノ化ハロゲン化物、Yのアルコキシ化物、Yのアリールオキシ化物などが挙げられる。
また、ブレンステッド塩基としては、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルトルイジン、2,6-ルチジン、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸カリウム、トリフェニルボラン、テトラフェニルシラン、ArBNa、ArBK、ArB、ArSi(なお、Arはフェニルなどのアリール)などが挙げられる。
また、ルイス酸としては、AlCl、AlBr、AlF、BF・OEt、BCl、BBr、BI、GaCl、GaBr、InCl、InBr、In(OTf)、SnCl、SnBr、AgOTf、ScCl、Sc(OTf)、ZnCl、ZnBr、Zn(OTf)、MgCl、MgBr、Mg(OTf)、LiOTf、NaOTf、KOTf、MeSiOTf、Cu(OTf)、CuCl、YCl、Y(OTf)、TiCl、TiBr、ZrCl、ZrBr、FeCl、FeBr、CoCl、CoBrなどが挙げられる。
上記各スキームでは、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応の促進のためにブレンステッド塩基またはルイス酸を使用してもよい。ただし、Yの三フッ化物、Yの三塩化物、Yの三臭化物、Yの三ヨウ化物などのYのハロゲン化物を用いた場合は、芳香族求電子置換反応の進行とともに、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素といった酸が生成するため、酸を捕捉するブレンステッド塩基の使用が効果的である。一方、Yのアミノ化ハロゲン化物、Yのアルコキシ化物を用いた場合は、芳香族求電子置換反応の進行とともに、アミン、アルコールが生成するために、多くの場合、ブレンステッド塩基を使用する必要はないが、アミノ基やアルコキシ基の脱離能が低いために、その脱離を促進するルイス酸の使用が効果的である。
3.有機電界発光素子
本発明に係る多環芳香族化合物は、例えば、有機電界発光素子の材料として用いることができる。以下に、本実施形態に係る有機EL素子について図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る有機EL素子を示す概略断面図である。
<有機電界発光素子の構造>
図1に示された有機EL素子100は、基板101と、基板101上に設けられた陽極102と、陽極102の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた陰極108とを有する。
なお、有機EL素子100は、作製順序を逆にして、例えば、基板101と、基板101上に設けられた陰極108と、陰極108の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた陽極102とを有する構成としてもよい。
上記各層すべてがなくてはならないわけではなく、最小構成単位を陽極102と発光層105と陰極108とからなる構成として、正孔注入層103、正孔輸送層104、電子輸送層106、電子注入層107は任意に設けられる層である。また、上記各層は、それぞれ単一層からなってもよいし、複数層からなってもよい。
有機EL素子を構成する層の態様としては、上述する「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」の構成態様の他に、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子注入層/陰極」の構成態様であってもよい。
<有機電界発光素子における基板>
基板101は、有機EL素子100の支持体であり、通常、石英、ガラス、金属、プラスチックなどが用いられる。基板101は、目的に応じて板状、フィルム状、またはシート状に形成され、例えば、ガラス板、金属板、金属箔、プラスチックフィルム、プラスチックシートなどが用いられる。なかでも、ガラス板、および、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂製の板が好ましい。ガラス基板であれば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどが用いられ、また、厚みも機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよいので、例えば、0.2mm以上あればよい。厚さの上限値としては、例えば、2mm以下、好ましくは1mm以下である。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましいが、SiOなどのバリアコートを施したソーダライムガラスも市販されているのでこれを使用することができる。また、基板101には、ガスバリア性を高めるために、少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜などのガスバリア膜を設けてもよく、特にガスバリア性が低い合成樹脂製の板、フィルムまたはシートを基板101として用いる場合にはガスバリア膜を設けるのが好ましい。
<有機電界発光素子における陽極>
陽極102は、発光層105へ正孔を注入する役割を果たす。なお、陽極102と発光層105との間に正孔注入層103および正孔輸送層104の少なくとも1つの層が設けられている場合には、これらを介して発光層105へ正孔を注入することになる。
陽極102を形成する材料としては、無機化合物および有機化合物が挙げられる。無機化合物としては、例えば、金属(アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、クロムなど)、金属酸化物(インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)など)、ハロゲン化金属(ヨウ化銅など)、硫化銅、カーボンブラック、ITOガラスやネサガラスなどが挙げられる。有機化合物としては、例えば、ポリ(3-メチルチオフェン)などのポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなどが挙げられる。その他、有機EL素子の陽極として用いられている物質の中から適宜選択して用いることができる。
透明電極の抵抗は、発光素子の発光に十分な電流が供給できればよいので限定されないが、発光素子の消費電力の観点からは低抵抗であることが望ましい。例えば、300Ω/□以下のITO基板であれば素子電極として機能するが、現在では10Ω/□程度の基板の供給も可能になっていることから、例えば100~5Ω/□、好ましくは50~5Ω/□の低抵抗品を使用することが特に望ましい。ITOの厚みは抵抗値に合わせて任意に選ぶ事ができるが、通常50~300nmの間で用いられることが多い。
<有機電界発光素子における正孔注入層、正孔輸送層>
正孔注入層103は、陽極102から移動してくる正孔を、効率よく発光層105内または正孔輸送層104内に注入する役割を果たす。正孔輸送層104は、陽極102から注入された正孔または陽極102から正孔注入層103を介して注入された正孔を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たす。正孔注入層103および正孔輸送層104は、それぞれ、正孔注入・輸送材料の一種または二種以上を積層、混合するか、正孔注入・輸送材料と高分子結着剤の混合物により形成される。また、正孔注入・輸送材料に塩化鉄(III)のような無機塩を添加して層を形成してもよい。
正孔注入・輸送性物質としては電界を与えられた電極間において正極からの正孔を効率よく注入・輸送することが必要で、正孔注入効率が高く、注入された正孔を効率よく輸送することが望ましい。そのためにはイオン化ポテンシャルが小さく、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。
正孔注入層103および正孔輸送層104を形成する材料(正孔輸送材料)としては、光導電材料において、正孔の電荷輸送材料として従来から慣用されている化合物、p型半導体、有機EL素子の正孔注入層および正孔輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意の化合物を選択して用いることができる。
それらの具体例は、カルバゾール誘導体(N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなど)、ビス(N-アリールカルバゾール)またはビス(N-アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体(芳香族第3級アミノを主鎖または側鎖に持つポリマー、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(3-メチルフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジナフチル-4,4’-ジアミノビフェニル、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(3-メチルフェニル)-4,4’-ジフェニル-1,1’-ジアミン、N,N’-ジナフチル-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジフェニル-1,1’-ジアミン、N,N4’-ジフェニル-N,N4’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン、N,N,N4’,N4’-テトラ([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン、4,4’,4”-トリス(3-メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミンなどのトリフェニルアミン誘導体、スターバーストアミン誘導体など)、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体(無金属、銅フタロシアニンなど)、ピラゾリン誘導体、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体やチオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、キノキサリン誘導体(例えば、1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリルなど)、ポルフィリン誘導体などの複素環化合物、ポリシランなどである。ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリビニルカルバゾールおよびポリシランなどが好ましいが、発光素子の作製に必要な薄膜を形成し、陽極から正孔が注入できて、さらに正孔を輸送できる化合物であれば特に限定されない。
また、有機半導体の導電性は、そのドーピングにより、強い影響を受けることも知られている。このような有機半導体マトリックス物質は、電子供与性の良好な化合物、または、電子受容性の良好な化合物から構成されている。電子供与物質のドーピングのために、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)または2,3,5,6-テトラフルオロテトラシアノ-1,4-ベンゾキノンジメタン(F4TCNQ)などの強い電子受容体が知られている(例えば、文献「M.Pfeiffer,A.Beyer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(22),3202-3204(1998)」および文献「J.Blochwitz,M.Pheiffer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(6),729-731(1998)」を参照)。これらは、電子供与型ベース物質(正孔輸送物質)における電子移動プロセスによって、いわゆる正孔を生成する。正孔の数および移動度によって、ベース物質の伝導性が、かなり大きく変化する。正孔輸送特性を有するマトリックス物質としては、例えばベンジジン誘導体(TPDなど)またはスターバーストアミン誘導体(TDATAなど)、または特定の金属フタロシアニン(特に、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)など)が知られている(特開2005-167175号公報)。
<有機電界発光素子における発光層>
発光層105は、電界を与えられた電極間において、陽極102から注入された正孔と、陰極108から注入された電子とを再結合させることにより発光する層である。発光層105を形成する材料としては、正孔と電子との再結合によって励起されて発光する化合物(発光性化合物)であればよく、安定な薄膜形状を形成することができ、かつ、固体状態で強い発光(蛍光)効率を示す化合物であるのが好ましい。
発光層は単一層でも複数層からなってもどちらでもよく、それぞれ発光層用材料(ホスト材料、ドーパント材料)により形成される。ホスト材料とドーパント材料は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。また、ホスト材料には、正孔輸送層用材料または電子輸送層用材料を混合してもよく、それらの組み合わせでもよい。ドーパント材料はホスト材料の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれであってもよい。ドーピング方法としては、ホスト材料との共蒸着法によって形成することができるが、ホスト材料と予め混合してから同時に蒸着したり、有機溶媒と共にホスト材料と予め混合してから湿式成膜法により製膜したりしてもよい。
ホスト材料の使用量はホスト材料の種類によって異なり、そのホスト材料の特性に合わせて決めればよい。ホスト材料の使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の50~99.999重量%であり、より好ましくは80~99.95重量%であり、さらに好ましくは90~99.9重量%である。
ドーパント材料の使用量はドーパント材料の種類によって異なり、そのドーパント材料の特性に合わせて決めればよい。ドーパントの使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の0.001~50重量%であり、より好ましくは0.05~20重量%であり、さらに好ましくは0.1~10重量%である。上記の範囲であれば、例えば、濃度消光現象を防止できるという点で好ましい。また、耐久性の観点から、ドーパント材料の水素原子は一部または全部が重水素化されていることも好ましい。
一方、熱活性型遅延蛍光ドーパント材料を用いた有機EL素子においては、ドーパント材料の使用量は低濃度である方が濃度消光現象を防止できるという点で好ましいが、ドーパント材料の使用量が高濃度である方が熱活性型遅延蛍光機構の効率の点からは好ましい。さらには、熱活性型遅延蛍光アシストドーパント材料を用いた有機EL素子においては、アシストドーパント材料の熱活性型遅延蛍光機構の効率の点からは、アシストドーパント材料の使用量に比べてドーパント材料の使用量が低濃度である方が好ましい。本発明の多環芳香族化合物は、熱活性型遅延蛍光アシストドーパント材料を用いた有機EL素子においてはドーパント(エミッティングドーパントともいう)として利用することができる。
アシストドーパント材料が使用される場合における、ホスト材料、アシストドーパント材料およびドーパント材料の使用量の目安は、それぞれ、発光層用材料全体の40~99.999重量%、59~1重量%および20~0.001重量%であり、好ましくは、それぞれ、60~99.99重量%、39~5重量%および10~0.01重量%であり、より好ましくは、70~99.95重量%、29~10重量%および5~0.05重量%である。
ホスト材料としては、以前から発光体として知られていたアントラセン、ピレン、ジベンゾクリセンまたはフルオレンなどの縮合環誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、シクロペンタジエン誘導体などが挙げられる。特に、アントラセン系化合物、フルオレン系化合物またはジベンゾクリセン系化合物が好ましい。また、耐久性の観点から、ホスト材料の水素原子は一部または全部が重水素化されていることも好ましい。さらに、一部または全部の水素原子が重水素化されたホスト化合物と、一部または全部の水素原子が重水素化されたドーパント化合物とを組み合わせて発光層を構成することも好ましい。
ホスト材料の三重項エネルギーは、発光層内でのTADFの発生を阻害せず促進させる観点から、発光層内において最も高い三重項エネルギーを有するドーパントまたはアシストドーパントの三重項エネルギーに比べて高い方が好ましく、具体的には、ホスト材料の三重項エネルギーは、0.01eV以上が好ましく、0.03eV以上がより好ましく、0.1eV以上がさらに好ましい。また、ホスト材料にTADF活性な化合物を用いてもよい。
ホスト材料としては、例えば、下記一般式(H1)で表される化合物、下記一般式(H2)で表される化合物、下記一般式(H4)で表される構造を含む化合物、下記一般式(H5)で表される化合物、下記一般式(H6)で表される化合物、および下記一般式(H8)で表される化合物が挙げられる。好ましくは一般式(H1)で表される化合物である。
Figure 2023085205000050
<一般式(H1)で表される化合物>
Figure 2023085205000051
上記式(H1)中、Lは炭素数6~30のアリーレンまたは炭素数2~30のヘテロアリーレンであり、炭素数6~24のアリーレンが好ましく、炭素数6~16のアリーレンがより好ましく、炭素数6~12のアリーレンがさらに好ましく、炭素数6~10のアリーレンが特に好ましく、また、炭素数2~25のヘテロアリーレンが好ましく、炭素数2~20のヘテロアリーレンがより好ましく、炭素数2~15のヘテロアリーレンがさらに好ましく、炭素数2~10のヘテロアリーレンが特に好ましい。アリーレンとして具体的には、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、テルフェニル環、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、ナフタセン環、ペリレン環およびペンタセン環などの二価の基が挙げられる。また、ヘテロアリーレンとして具体的には、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、1H-インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H-ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、フェナザシリン環、インドリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、フラザン環、チアントレン環、インドロカルバゾール環、ベンゾインドロカルバゾール環、ベンゾベンゾインドロカルバゾール環およびナフトベンゾフラン環などの二価の基が挙げられる。
式(H1)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、炭素数1~6のアルキル、炭素数3~14のシクロアルキル、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
<一般式(H2)で表される化合物>
Figure 2023085205000052
上記式(H2)中、LおよびLは、それぞれ独立して、炭素数6~30のアリールまたは炭素数2~30のヘテロアリールであり、Lは、水素、炭素数6~30のアリール、または炭素数2~30のヘテロアリールである。アリールとしては、炭素数6~24のアリールが好ましく、炭素数6~16のアリールがより好ましく、炭素数6~12のアリールがさらに好ましく、炭素数6~10のアリールが特に好ましく、具体的には、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、テルフェニル環、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、ナフタセン環、ペリレン環およびペンタセン環などの一価の基が挙げられる。ヘテロアリールとしては、炭素数2~25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2~20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2~15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2~10のヘテロアリールが特に好ましく、具体的には、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、1H-インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H-ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、フェナザシリン環、インドリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、フラザン環、チアントレン環、インドロカルバゾール環、ベンゾインドロカルバゾール環、ベンゾベンゾインドロカルバゾール環およびナフトベンゾフラン環などの一価の基が挙げられる。
式(H2)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、炭素数1~6のアルキル、炭素数3~14のシクロアルキル、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
<一般式(H4)で表される構造を含む化合物>
当該化合物は下記式(H4)で表される構造を含む化合物であり、当該構造を複数個、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個、さらに好ましくは1~2個、最も好ましくは1個含み、複数個含む場合には当該構造同士が直接単結合で結合されたり、特定の連結基で結合される。
Figure 2023085205000053
上記一般式(H4)中、Gはそれぞれ独立して「=C(-H)-」または「=N-」であり、前記「=C(-H)-」中のHは置換基または他の式(H4)で表される構造で置換されていてもよい。
一般式(H4)で表される構造を含む化合物は、例えば、国際公開第2012/153780号および国際公開第2013/038650号等に記載の化合物を用いることができ、前記文献中に記載の方法にしたがって製造することができる。
Gである「=C(-H)-」中のHが置換される場合の置換基の例は、例えば以下のとおりであるが、これらに限定されない。
置換基である「アリール基」の具体例としては、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、フェナントリル、ピレニル、クリセニル、ベンゾ[c]フェナントリル、ベンゾ[g]クリセニル、ベンゾアントリル、トリフェニレニル、フルオレニル、9,9-ジメチルフルオレニル、ベンゾフルオレニル、ジベンゾフルオレニル、ビフェニリル、テルフェニリル、クアテルフェニリル、フルオランテニル等が挙げられ、好ましくはフェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、クアテルフェニリル、ナフチル、トリフェニレニルおよびフルオレニル等を挙げることができる。置換基を有するアリール基としては、トリル、キシリルおよび9,9-ジメチルフルオレニル等を挙げることができる。具体例が示すように、アリール基は、縮合アリール基および非縮合アリール基の両方を含む。
置換基である「ヘテロアリール基」の具体例としては、ピロリル、ピラゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピリジル、トリアジニル、インドリル、イソインドリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、フリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、アザジベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチエニル、ジベンゾチエニル、アザジベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、カルバゾリル、アザカルバゾリル、フェナントリジニル、アクリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、ベンズオキサゾリル、チエニル、チアゾリル、チアジアゾリル、ベンズチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル等が挙げられ、好ましくは、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、カルバゾリル、ピリジル、ピリミジニル、トリアジニル、アザジベンゾフラニルおよびアザジベンゾチエニル等を挙げることができる。ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、アザジベンゾフラニルまたはアザジベンゾチエニルがさらに好ましい。
置換基である「置換シリル基」は、置換または無置換のトリアルキルシリル基、置換または無置換のアリールアルキルシリル基、および置換または無置換のトリアリールシリル基からなる群から選択される基であることも好ましい。
置換または無置換のトリアルキルシリル基の具体例としては、トリメチルシリルおよびトリエチルシリルを挙げることができる。置換または無置換のアリールアルキルシリル基の具体例としては、ジフェニルメチルシリル、ジトリルメチルシリルおよびフェニルジメチルシリル等を挙げることができる。置換または無置換のトリアリールシリル基の具体例としては、トリフェニルシリルおよびトリトリルシリル等を挙げることができる。
置換基である「置換ホスフィンオキシド基」は、置換または無置換のジアリールホスフィンオキシド基であることも好ましい。置換または無置換のジアリールホスフィンオキシド基の具体例としては、ジフェニルホスフィンオキシドおよびジトリルホスフィンオキシド等を挙げることができる。
置換基である「置換カルボキシ基」としては、例えば、ベンゾイルオキシ等が挙げられる。
式(H4)で表される構造を複数個結合する連結基としては、上述したアリールやヘテロアリールの2~4価、2~3価、または2価の誘導体が挙げられる。
一般式(H4)で表される構造を含む化合物の具体例を以下に示す。
Figure 2023085205000054
Figure 2023085205000055
<一般式(H5)で表される化合物>
Figure 2023085205000056
上記式(H5)において、
~R11は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールへテロアリールアミノ、アルキルまたはシクロアルキル(以上、第1置換基)であり、当該R~R11における少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキルまたはシクロアルキル(以上、第2置換基)で置換されていてもよく、
~R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキルまたはシクロアルキル(以上、第1置換基)で置換されていてもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキルまたはシクロアルキル(以上、第2置換基)で置換されていてもよく、
a環、b環、およびc環における、任意の「-C(-R)=」(ここでRはR~R11である)は「-N=」に置き換わっていてもよく、
式(H5)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、ハロゲンまたは重水素で置換されてもよい。
式(H5)におけるa環、b環、およびc環中の任意の「-C(-R)=」(ここでRはR~R11である)は「-N=」に置き換わり、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、その他の含窒素ヘテロアリール環に変化してもよい。
好ましくは、上記式(H5)において、
~R11は、それぞれ独立して、水素、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~16のシクロアルキルであり、当該R~R11における少なくとも1つの水素はさらに炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~16のシクロアルキルで置換されていてもよく、
~R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共に炭素数9~16のアリール環または炭素数6~15のヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~16のシクロアルキルで置換されていてもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素はさらに炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~16のシクロアルキルで置換されていてもよい。
さらに好ましくは、上記式(H5)において、
~R11は、それぞれ独立して、水素、炭素数6~16のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~10のアリール)、炭素数1~6のアルキルまたは炭素数3~14のシクロアルキルであり、当該R~R11における少なくとも1つの水素はさらに炭素数6~16のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~10のアリール)、炭素数1~6のアルキルまたは炭素数3~14のシクロアルキルで置換されていてもよく、
~R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共に炭素数9~12のアリール環または炭素数6~12のヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、炭素数6~16のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~10のアリール)、炭素数1~6のアルキルまたは炭素数3~14のシクロアルキルで置換されていてもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素はさらに炭素数6~16のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~10のアリール)、炭素数1~6のアルキルまたは炭素数3~14のシクロアルキルで置換されていてもよい。
上記第1置換基および第2置換基において、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールへテロアリールアミノにおける「アリール」や「ヘテロアリール」としては、以下の例が挙げられる。
具体的な「アリール」としては、例えば、炭素数6~30のアリールが挙げられ、炭素数6~24のアリールが好ましく、炭素数6~20のアリールがより好ましく、炭素数6~16のアリールがさらに好ましく、炭素数6~12のアリールが特に好ましく、炭素数6~10のアリールが最も好ましい。例えば、単環系アリールであるフェニル、二環系アリールである(2-,3-,4-)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1-,2-)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m-テルフェニル-2’-イル、m-テルフェニル-4’-イル、m-テルフェニル-5’-イル、o-テルフェニル-3’-イル、o-テルフェニル-4’-イル、p-テルフェニル-2’-イル、m-テルフェニル-2-イル、m-テルフェニル-3-イル、m-テルフェニル-4-イル、o-テルフェニル-2-イル、o-テルフェニル-3-イル、o-テルフェニル-4-イル、p-テルフェニル-2-イル、p-テルフェニル-3-イル、p-テルフェニル-4-イル)、縮合三環系アリールである、アセナフチレン-(1-,3-,4-,5-)イル、フルオレン-(1-,2-,3-,4-,9-)イル、フェナレン-(1-,2-)イル、(1-,2-,3-,4-,9-)フェナントリル、四環系アリールであるクアテルフェニリル(5’-フェニル-m-テルフェニル-2-イル、5’-フェニル-m-テルフェニル-3-イル、5’-フェニル-m-テルフェニル-4-イル、m-クアテルフェニリル)、縮合四環系アリールであるトリフェニレン-(1-,2-)イル、ピレン-(1-,2-,4-)イル、ナフタセン-(1-,2-,5-)イル、縮合五環系アリールであるペリレン-(1-,2-,3-)イル、ペンタセン-(1-,2-,5-,6-)イルなどが挙げられる。
具体的な「ヘテロアリール」としては、例えば、炭素数2~30のヘテロアリールが挙げられ、炭素数2~25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2~20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2~15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2~10のヘテロアリールが特に好ましい。例えば、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリル、イソインドリル、1H-インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H-ベンゾトリアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェナザシリニル、インドリジニル、フラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、ナフトベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、ジベンゾチオフェニル、ナフトベンゾチオフェニル、ベンゾホスホリル、ジベンゾホスホリル、ベンゾホスホールオキシド環の1価の基、ジベンゾホスホールオキシド環の1価の基、フラザニル、チアントレニル、インドロカルバゾリル、ベンゾインドロカルバゾリルおよびベンゾベンゾインドロカルバゾリルなどが挙げられる。
上記第1置換基および第2置換基において、「アルキル」としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1~24の直鎖アルキルまたは炭素数3~24の分岐鎖アルキルが挙げられ、炭素数1~18のアルキル(炭素数3~18の分岐鎖アルキル)が好ましく、炭素数1~12のアルキル(炭素数3~12の分岐鎖アルキル)がより好ましく、炭素数1~6のアルキル(炭素数3~6の分岐鎖アルキル)がさらに好ましく、炭素数1~5のアルキル(炭素数3~5の分岐鎖アルキル)や炭素数1~4のアルキル(炭素数3~4の分岐鎖アルキル)が特に好ましく、メチルが最も好ましい。例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t-ペンチル(t-アミル)、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、n-オクチル、t-オクチル(1,1,3,3-テトラメチルブチル)、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、2,6-ジメチル-4-ヘプチル、3,5,5-トリメチルヘキシル、n-デシル、n-ウンデシル、1-メチルデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、1-ヘキシルヘプチル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-エイコシルなどが挙げられる。また、例えば、1-エチル-1-メチルプロピル、1,1-ジエチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1-エチル-1-メチルブチル、1,1,4-トリメチルペンチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,1-ジメチルオクチル、1,1-ジメチルペンチル、1,1-ジメチルヘプチル、1,1,5-トリメチルヘキシル、1-エチル-1-メチルヘキシル、1-エチル-1,3-ジメチルブチル、1,1,2,2-テトラメチルプロピル、1-ブチル-1-メチルペンチル、1,1-ジエチルブチル、1-エチル-1-メチルペンチル、1,1,3-トリメチルブチル、1-プロピル-1-メチルペンチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1,2,2-トリメチルプロピル、1-プロピル-1-メチルブチル、1,1-ジメチルヘキシルなどもあげられる。
上記第1置換基および第2置換基において、「シクロアルキル」としては、炭素数3~24のシクロアルキル、炭素数3~20のシクロアルキル、炭素数3~16のシクロアルキル、炭素数3~14のシクロアルキル、炭素数5~10のシクロアルキル、炭素数5~8のシクロアルキル、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数5のシクロアルキルなどが挙げられる。例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、およびこれらの炭素数1~4のアルキル(特にメチル)置換体や、ビシクロ[1.1.0]ブチル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、ジアマンチル、デカヒドロナフタレニル、デカヒドロアズレニルなどが挙げられる。
第1置換基がアリールの場合の置換位置は、R、R、R、R、R10およびR11が好ましく、例えば、RおよびRへの置換、RおよびR10への置換、RおよびR11への置換がより好ましく、アリールはフェニル基が好ましい。
第1置換基がヘテロアリールの場合の置換位置は、R、R、R、R、R、R、R、R10およびR11が好ましく、例えば、Rへの置換、Rへの置換、Rへの置換、RおよびRへの置換、RおよびR11への置換、RおよびR10への置換、RおよびRへの置換がより好ましく、ヘテロアリールはカルバゾリル基が好ましい。このヘテロアリール(例えばカルバゾリル)はフェニレン基を介して上記位置へ置換していてもよい。
式(H5)で表される化合物の具体的な例としては、例えば、下記構造式で表される化合物が挙げられる。なお、式中の「Me」はメチル基である。
Figure 2023085205000057
Figure 2023085205000058
式(H5)で表される化合物は、まずa~c環を結合基(-O-)で結合させることで中間体を製造し(第1反応)、その後に、a~c環をB(ホウ素)で結合させることで最終生成物を製造することができる(第2反応)。第1反応では、例えば求核置換反応やウルマン反応といった一般的エーテル化反応が利用できる。また、第2反応では、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応(連続的な芳香族求電子置換反応)が利用できる。第1および第2反応の詳細は、国際公開第2015/102118号公報に記載された説明を参考にすることができる。
<一般式(H6)で表される化合物>
Figure 2023085205000059
上記式(H6)において、
~R16は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールへテロアリールアミノ、アルキルまたはシクロアルキル(以上、第1置換基)であり、当該R~R16における少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキルまたはシクロアルキル(以上、第2置換基)で置換されていてもよく、
~R16のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環、c環、またはd環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキルまたはシクロアルキル(以上、第1置換基)で置換されていてもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキルまたはシクロアルキル(以上、第2置換基)で置換されていてもよく、
式(H6)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、ハロゲンまたは重水素で置換されてもよい。
好ましくは、上記式(H6)において、
~R16は、それぞれ独立して、水素、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~16のシクロアルキルであり、当該R~R16における少なくとも1つの水素はさらに炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~16のシクロアルキルで置換されていてもよく、
~R16のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環、c環、またはd環と共に炭素数9~16のアリール環または炭素数6~15のヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~16のシクロアルキルで置換されていてもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素はさらに炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~16のシクロアルキルで置換されていてもよい。
さらに好ましくは、上記式(H6)において、
~R16は、それぞれ独立して、水素、炭素数6~16のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~10のアリール)、炭素数1~6のアルキルまたは炭素数3~14のシクロアルキルであり、当該R~R16における少なくとも1つの水素はさらに炭素数6~16のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~10のアリール)、炭素数1~6のアルキルまたは炭素数3~14のシクロアルキルで置換されていてもよく、
~R16のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環、c環、またはd環と共に炭素数9~12のアリール環または炭素数6~12のヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、炭素数6~16のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~10のアリール)、炭素数1~6のアルキルまたは炭素数3~14のシクロアルキルで置換されていてもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素はさらに炭素数6~16のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~10のアリール)、炭素数1~6のアルキルまたは炭素数3~14のシクロアルキルで置換されていてもよい。
上記第1置換基および第2置換基において、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールへテロアリールアミノにおける「アリール」や「ヘテロアリール」としては、以下の例が挙げられる。
具体的な「アリール」としては、例えば、炭素数6~30のアリールが挙げられ、炭素数6~24のアリールが好ましく、炭素数6~20のアリールがより好ましく、炭素数6~16のアリールがさらに好ましく、炭素数6~12のアリールが特に好ましく、炭素数6~10のアリールが最も好ましい。例えば、単環系アリールであるフェニル、二環系アリールである(2-,3-,4-)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1-,2-)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m-テルフェニル-2’-イル、m-テルフェニル-4’-イル、m-テルフェニル-5’-イル、o-テルフェニル-3’-イル、o-テルフェニル-4’-イル、p-テルフェニル-2’-イル、m-テルフェニル-2-イル、m-テルフェニル-3-イル、m-テルフェニル-4-イル、o-テルフェニル-2-イル、o-テルフェニル-3-イル、o-テルフェニル-4-イル、p-テルフェニル-2-イル、p-テルフェニル-3-イル、p-テルフェニル-4-イル)、縮合三環系アリールである、アセナフチレン-(1-,3-,4-,5-)イル、フルオレン-(1-,2-,3-,4-,9-)イル、フェナレン-(1-,2-)イル、(1-,2-,3-,4-,9-)フェナントリル、四環系アリールであるクアテルフェニリル(5’-フェニル-m-テルフェニル-2-イル、5’-フェニル-m-テルフェニル-3-イル、5’-フェニル-m-テルフェニル-4-イル、m-クアテルフェニリル)、縮合四環系アリールであるトリフェニレン-(1-,2-)イル、ピレン-(1-,2-,4-)イル、ナフタセン-(1-,2-,5-)イル、縮合五環系アリールであるペリレン-(1-,2-,3-)イル、ペンタセン-(1-,2-,5-,6-)イルなどが挙げられる。
具体的な「ヘテロアリール」としては、例えば、炭素数2~30のヘテロアリールが挙げられ、炭素数2~25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2~20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2~15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2~10のヘテロアリールが特に好ましい。例えば、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリル、イソインドリル、1H-インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H-ベンゾトリアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェナザシリニル、インドリジニル、フラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、ナフトベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、ジベンゾチオフェニル、ナフトベンゾチオフェニル、ベンゾホスホリル、ジベンゾホスホリル、ベンゾホスホールオキシド環の1価の基、ジベンゾホスホールオキシド環の1価の基、フラザニル、チアントレニル、インドロカルバゾリル、ベンゾインドロカルバゾリルおよびベンゾベンゾインドロカルバゾリルなどが挙げられる。
上記第1置換基および第2置換基において、「アルキル」としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1~24の直鎖アルキルまたは炭素数3~24の分岐鎖アルキルが挙げられ、炭素数1~18のアルキル(炭素数3~18の分岐鎖アルキル)が好ましく、炭素数1~12のアルキル(炭素数3~12の分岐鎖アルキル)がより好ましく、炭素数1~6のアルキル(炭素数3~6の分岐鎖アルキル)がさらに好ましく、炭素数1~5のアルキル(炭素数3~5の分岐鎖アルキル)や炭素数1~4のアルキル(炭素数3~4の分岐鎖アルキル)が特に好ましく、メチルが最も好ましい。例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t-ペンチル(t-アミル)、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、n-オクチル、t-オクチル(1,1,3,3-テトラメチルブチル)、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、2,6-ジメチル-4-ヘプチル、3,5,5-トリメチルヘキシル、n-デシル、n-ウンデシル、1-メチルデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、1-ヘキシルヘプチル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-エイコシルなどが挙げられる。また、例えば、1-エチル-1-メチルプロピル、1,1-ジエチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1-エチル-1-メチルブチル、1,1,4-トリメチルペンチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,1-ジメチルオクチル、1,1-ジメチルペンチル、1,1-ジメチルヘプチル、1,1,5-トリメチルヘキシル、1-エチル-1-メチルヘキシル、1-エチル-1,3-ジメチルブチル、1,1,2,2-テトラメチルプロピル、1-ブチル-1-メチルペンチル、1,1-ジエチルブチル、1-エチル-1-メチルペンチル、1,1,3-トリメチルブチル、1-プロピル-1-メチルペンチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1,2,2-トリメチルプロピル、1-プロピル-1-メチルブチル、1,1-ジメチルヘキシルなどもあげられる。
上記第1置換基および第2置換基において、「シクロアルキル」としては、炭素数3~24のシクロアルキル、炭素数3~20のシクロアルキル、炭素数3~16のシクロアルキル、炭素数3~14のシクロアルキル、炭素数5~10のシクロアルキル、炭素数5~8のシクロアルキル、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数5のシクロアルキルなどが挙げられる。例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、およびこれらの炭素数1~4のアルキル(特にメチル)置換体や、ビシクロ[1.1.0]ブチル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、ジアマンチル、デカヒドロナフタレニル、デカヒドロアズレニルなどが挙げられる。
式(H6)で表される化合物は、国際公開第2014/042197号公報に記載された説明を参考にして製造することができる。
<一般式(H8)で表される化合物>
Figure 2023085205000060
上記式(H8)中、L、LおよびLは、それぞれ独立して、炭素数6~30のアリールまたは炭素数2~30のヘテロアリールである。アリールとしては、炭素数6~24のアリールが好ましく、炭素数6~16のアリールがより好ましく、炭素数6~12のアリールがさらに好ましく、炭素数6~10のアリールが特に好ましく、具体的には、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、テルフェニル環、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、ナフタセン環、ペリレン環およびペンタセン環などの一価の基が挙げられる。ヘテロアリールとしては、炭素数2~25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2~20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2~15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2~10のヘテロアリールが特に好ましく、具体的には、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、1H-インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H-ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、フェナザシリン環、インドリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、フラザン環、オキサジアゾール環、チアントレン環、インドロカルバゾール環、ベンゾインドロカルバゾール環、ベンゾベンゾインドロカルバゾール環およびナフトベンゾフラン環などの一価の基が挙げられる。
式(H8)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、炭素数1~6のアルキル、炭素数3~14のシクロアルキル、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
<ドーパント材料としての一般式(D1)の多環芳香族化合物>
ドーパント材料としては、下記一般式(D1)で表される多環芳香族化合物またはその多量体が挙げられ、好ましくは、下記一般式(D2)で表される多環芳香族化合物またはその多量体が挙げられる。なお、「多環芳香族化合物」およびその「多量体」をまとめて「多環芳香族化合物」や「化合物」と表記することがある。
Figure 2023085205000061
式(D1)の化合物は、縮合2環構造にA環、B環、およびC環が縮合した構造を有し、式(D2)の化合物は、縮合2環構造にa環、b環、およびc環が縮合した構造を有する。縮合2環構造とは、2個の6員飽和炭化水素環同士が縮合した構造のことであり、上記構造式中では、中心元素B(ホウ素)とXおよびXとを含んで構成されるデカヒドロナフタレン型構造のことである。
<化合物中の環構造およびその置換基の説明>
式(D1)中のA環、B環、およびC環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は置換基で置換されていてもよい。この置換基は、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいジアリールアミノ、置換されていてもよいジヘテロアリールアミノ、置換されていてもよいアリールヘテロアリールアミノ(アリールとヘテロアリールを有するアミノ基)、置換されていてもよいジアリールボリル、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいアリールチオ、または置換シリルが好ましい。これらの置換基がさらに置換基を有する場合には、その置換基としては、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオ、または置換シリルが挙げられ、好ましくは、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルが挙げられる。なお、ここで列挙した環や置換基の詳細については、上述した式(1)および式(2)での説明を引用できる。ただし、ヘテロアリール環については以下に説明する。
「ヘテロアリール環」は、例えば炭素数2~30のヘテロアリール環であり、好ましくは、炭素数2~25のヘテロアリール環、炭素数2~20のヘテロアリール環、炭素数2~15のヘテロアリール環、または炭素数2~10のヘテロアリール環などである。また、「ヘテロアリール環」は、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄、および窒素から選ばれるヘテロ原子を1~5個含有する複素環などである。
なお、式(1)におけるA環、B環、およびC環としての「ヘテロアリール環」は、式(2)で規定された「R~R、R~R、およびR~R11のうちの隣接する基同士が結合して、それぞれa環、b環、およびc環と共に形成されたヘテロアリール環」に対応するが、この「形成されたヘテロアリール環」については、a環、b環、またはc環がすでに炭素数6のベンゼン環で構成されているため、このベンゼン環に最小の5員環が縮合した縮合環の合計炭素数6が下限の炭素数となる。ただし、このベンゼン環である、a環、b環、およびc環は、上述するように含窒素ヘテロアリール環(6員環または5員環)または含酸素・硫黄ヘテロアリール環(5員環)等に変化してもよいため、この場合には、それに応じて下限の炭素数は変化する。
具体的な「ヘテロアリール環」は、例えば、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、1H-インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H-ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フェナントロリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、フェナザシリン環、インドリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、ナフトベンゾフラン環、キサンテン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、ナフトベンゾチオフェン環、チオキサンテン環、ベンゾホスホール環、ジベンゾホスホール環、ベンゾホスホールオキシド環、ジベンゾホスホールオキシド環、フラザン環、チアントレン環、インドロカルバゾール環、ベンゾインドロカルバゾール環、ベンゾベンゾインドロカルバゾール環、イミダゾリン環、またはオキサゾリン環などである。
なお、「ヘテロアリール環」には、当該ヘテロアリール環における少なくとも1つの水素が、フェニルなどのアリール(具体例は後述する基)、メチルなどのアルキル(具体例は後述する基)、またはシクロヘキシルもしくはアダマンチルなどのシクロアルキル(具体例は後述する基)で置換された構造も含まれる。
例えば、カルバゾール環の9位における水素が、フェニル、メチル、シクロヘキシル、またはアダマンチルで置換された、9-(フェニル、メチル、シクロヘキシル、またはアダマンチル)カルバゾール環も、ヘテロアリール環に含まれる。また、アクリジン環、キサンテン環、またはチオキサンテン環における、メチレン基の2つの水素がメチルで置換された、ジメチルジヒドロアクリジン環、ジメチルキサンテン環、ジメチルチオキサンテン環も、ヘテロアリール環に含まれる。
式(D1)の説明における、上記ジアリールアミノの2つのアリールは連結基を介して結合していてもよく、上記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは連結基を介して結合していてもよく、上記アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは連結基を介して結合していてもよく、上記ジアリールボリルの2つのアリールは連結基を介して結合していてもよい。この連結基や結合した形態の詳細についてはまとめて後述する。
式(D2)中のR~R11は、水素または置換基であり、具体的には、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいジアリールアミノ、置換されていてもよいジヘテロアリールアミノ、置換されていてもよいアリールヘテロアリールアミノ(アリールとヘテロアリールを有するアミノ基)、置換されていてもよいジアリールボリル、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいアリールチオ、または置換シリルが好ましい。これらの置換基がさらに置換基を有する場合には、その置換基としては、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオ、または置換シリルが挙げられ、好ましくは、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルが挙げられる。なお、ここで列挙した置換基の詳細については、上述した式(1)および式(2)での説明を引用できる。
式(D2)の説明における、上記ジアリールアミノの2つのアリールは連結基を介して結合していてもよく、上記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは連結基を介して結合していてもよく、上記アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは連結基を介して結合していてもよく、上記ジアリールボリルの2つのアリールは連結基を介して結合していてもよい。この連結基や結合した形態の詳細についてはまとめて後述する。
式(D2)中のR~R11の具体例は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオ、トリアリールシリル、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、またはアルキルジシクロアルキルシリルであり、当該R~R11における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよい。なお、ここで列挙した置換基の詳細については、上述した式(1)および式(2)での説明を引用できる。
式(D1)中のA環、B環、およびC環としてのアリール環またはヘテロアリール環は、上述した縮合2環構造と結合を共有する5員環または6員環を有することが好ましい。
ここで、「縮合2環構造と結合を共有する6員環」とは、例えば式(D2)で示すように縮合2環構造に縮合した、a環、b環、およびc環(ベンゼン環(6員環))を意味する。また、「(A環、B環、およびC環である)アリール環またはヘテロアリール環がこの6員環を有する」とは、この6員環だけでA環、B環、およびC環が形成されるか、または、この6員環にさらに他の環などが縮合することで、この6員環を含むようにA環、B環、およびC環が形成されることを意味する。言い換えれば、ここで言う「6員環を有する(A環、B環、およびC環である)アリール環またはヘテロアリール環」とは、A環、B環、およびC環の全部または一部を構成する6員環が、縮合2環構造に縮合していることを意味する。また、「5員環」についても同様の説明が当てはまる。
式(D1)中のA環、B環、およびC環は、それぞれ、式(D2)中のa環とその置換基R~R、b環とその置換基R~R、およびc環とその置換基R~R11に対応する。すなわち、式(D2)は、式(D1)のA環、B環、およびC環として「(ベンゼン環である)6員環を有するA環、B環、およびC環」が選択された構造に対応する。その意味で、式(D2)における各環を小文字の「a」、「b」、および「c」で表した。
<置換基同士の結合による環構造の変化の説明>
式(D2)中、a環の置換基R~Rのうちの隣接する基同士、b環の置換基R~Rのうちの隣接する基同士、およびc環の置換基R~R11のうちの隣接する基同士は、結合して、それぞれ、a環、b環、またはc環と共に、アリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオ、トリアリールシリル、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、またはアルキルジシクロアルキルシリルで置換されていてもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよい。なお、ここで列挙した環や置換基の詳細については、上述した式(1)および式(2)での説明を引用できる。また、ヘテロアリール環についての説明は上述した説明を引用できる。
式(D2)の説明における、上記ジアリールアミノの2つのアリールは連結基を介して結合していてもよく、上記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは連結基を介して結合していてもよく、上記アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは連結基を介して結合していてもよく、上記ジアリールボリルの2つのアリールは連結基を介して結合していてもよい。この連結基や結合した形態の詳細についてはまとめて後述する。
したがって、式(D2)の多環芳香族化合物は、a環、b環、およびc環における置換基の相互の結合形態によって、下記式(D2-fr1)~式(D2-fr3)に示すように、化合物を構成する環構造が変化する。各式中のA’環およびB’環は、式(D1)におけるそれぞれA環およびB環に対応する。なお、下記式では示していないが、c環も同様に環構造が変化してC’環になってもよく、式(D1)におけるC環に対応する。
Figure 2023085205000062
上記式(D2-fr1)~式(D2-fr3)中のA’環およびB’環は、式(D2)で説明すれば、a環の置換基R~Rのうちの隣接する基同士、またはb環の置換基R~Rのうちの隣接する基同士が結合して、それぞれa環およびb環と共に形成したアリール環またはヘテロアリール環を示す(a環またはb環に他の環構造が縮合してできた縮合環ともいえる)。c環の置換基R~R11のうちの隣接する基同士も同様に結合して、c環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成してもよく、形成された環はC’環(c環に他の環構造が縮合してできた縮合環ともいえる)になる。また、上記式から分かるように、例えば、a環の置換基Rとb環の置換基R、b環の置換基Rとc環の置換基R、およびc環の置換基R11とa環の置換基Rは「隣接する基同士」には該当せず、これらが結合することはない。すなわち、「隣接する基」とは同一環上で隣接する基を意味する。
上記式(D2-fr1)~式(D2-fr3)の具体例としては、a環またはb環であるベンゼン環に対して、例えば、ベンゼン環、インドール環、ピロール環、ベンゾフラン環、またはベンゾチオフェン環などが縮合して形成されたA’環またはB’環を有する構造が挙げられ、形成された縮合環A’または縮合環B’は、それぞれ、ナフタレン環、カルバゾール環、インドール環、ジベンゾフラン環、またはジベンゾチオフェン環などである。また、c環であるベンゼン環についても同様の説明ができる。
例えば、式(D2-fr1)~式(D2-fr3)のより具体的な例を以下に示す。
Figure 2023085205000063
上記式(D2-fr1-ex)は、式(D2-fr1)の具体例であり、式(D2)のa環における隣接するRおよびRが結合して、a環(ベンゼン環)と共に、A’で示すアリール環(ナフタレン環)が形成された例である。形成されたアリール環は上述した縮合2環構造と結合を共有する6員環(ベンゼン環a)を有している。なお、アリール環A’(式(D1)のA環)への任意の置換基をRの他にn個のRで示しており、nの上限は置換可能な最大数である。
上記式(D2-fr2-ex)は、式(D2-fr2)の具体例であり、式(D2)のb環における隣接するRおよびRが結合して、b環(ベンゼン環)と共に、B’で示すヘテロアリール環(カルバゾール環)が形成された例である。形成されたヘテロアリール環は上述した縮合2環構造と結合を共有する6員環(ベンゼン環b)を有している。なお、アリール環B’(式(D1)のB環)への任意の置換基をRおよびRの他にn個のRで示しており、nの上限は置換可能な最大数である。
上記式(D2-fr3-ex)は、式(D2-fr3)の具体例であり、式(D2)のa環における隣接するRおよびRが結合して、a環(ベンゼン環)と共に、A’で示すヘテロアリール環(ジベンゾフラン環)が形成され、b環における隣接するRおよびRが結合して、b環(ベンゼン環)と共に、B’で示すアリール環(ナフタレン環)が形成された例である。形成されたヘテロアリール環およびアリール環は上述した縮合2環構造と結合を共有する6員環(ベンゼン環aおよびベンゼン環b)を有している。なお、ヘテロアリール環A’(式(D1)のA環)およびアリール環B’(式(D1)のB環)への任意の置換基をR、R、およびRの他にn個のRで示しており、nの上限は置換可能な最大数である。
以上の説明は、c環の置換基R~R11のうちの隣接する基同士が同様に結合して、環構造が変化してC’環になった場合にも適用でき、また上述した具体例以外のあらゆる形態にも同様に適用できる。
<化合物中の連結元素XおよびXの説明>
式(D1)および式(D2)中のXおよびXは、それぞれ独立して、>N-R、>O、または>C(-R)である。前記「>N-R」のR、および「>C(-R)」のRは、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいシクロアルキルであり、置換基としてはアルキルまたはシクロアルキルが好ましい。
およびXとしては、安定性の観点から、>N-Rまたは>Oが好ましく、>N-Rがより好ましい。また、短波長の発光の観点からは、>Oまたは>C(-R)が好ましい。
なお、ここで列挙した置換基の詳細については、上述した式(1)および式(2)での説明を引用できる。
また、XおよびXとしての前記「>C(-R)」の2つのR同士は、それぞれ独立して、連結基を介して結合していてもよい。この連結基としては、単結合、-CH-CH-、-CHR-CHR-、-CR-CR-、-CH=CH-、-CR=CR-、-C≡C-、-N(-R)-、-O-、-S-、-C(-R)-、-Si(-R)-、または-Se-が挙げられ、例えば以下の構造が挙げられる。なお、前記「-CHR-CHR-」のR、「-CR-CR-」のR、「-CR=CR-」のR、「-N(-R)-」のR、「-C(-R)-」のR、および「-Si(-R)-」のRは、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはシクロアルキルであり、当該Rにおける少なくとも1つの水素はアルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよい。また、「-CHR-CHR-」、「-CR-CR-」、「-CR=CR-」、「-C(-R)-」、および「-Si(-R)-」における隣接する2つのR同士が結合して、シクロアルキレン環、アリーレン環、およびヘテロアリーレン環を形成していてもよい(下記構造式中の最も右の構造式を参照)。なお、ここで列挙した置換基や環の詳細については、上述した式(1)および式(2)での説明を引用できる。
Figure 2023085205000064
連結基としては、単結合、-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、-S-、-C(-R)-、-Si(-R)-、および-Se-が好ましく、単結合、-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、-S-、および-C(-R)-がより好ましく、単結合、-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、および-S-がさらに好ましく、単結合および-CR=CR-が最も好ましい。
連結基を介して2つのRが結合する位置は、結合可能な位置であれば特に限定されないが、最も隣接する位置で結合することが好ましく、例えば2つのRがフェニル基である場合、フェニル基における「C」や「Si」の結合位置(1位)を基準としてオルト(2位)の位置同士で結合することが好ましい(上記構造式を参照)。
<XおよびXと環との結合による環構造の変化の説明>
式(D1)および式(D2)中のXとしての、前記「>N-R」のR、および「>C(-R)」のRは、それぞれ独立して、連結基を介してA環(a環)およびB環(b環)の少なくとも1つの環と結合していてもよく、Xとしての、前記「>N-R」のR、および「>C(-R)」のRは、それぞれ独立して、連結基を介してA環(a環)およびC環(c環)の少なくとも1つの環と結合していてもよい。
結合に関与し得るXおよびXとしては、>N-Rが好ましい。
結合する環としては、XについてはB環(b環)、XについてはC環(c環)が好ましい。
Rと環とを結合する連結基としては、単結合、-CH-CH-、-CHR-CHR-、-CR-CR-、-CH=CH-、-CR=CR-、-C≡C-、-N(-R)-、-O-、-S-、-C(-R)-、-Si(-R)-、および-Se-が挙げられ、単結合、-CH=CH-、-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、-S-、および-C(-R)-が好ましく、単結合、-CH=CH-、-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、および-S-がより好ましく、単結合、-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、および-S-がさらに好ましく、単結合および-CR=CR-が特に好ましい。なお、前記「-CHR-CHR-」のR、「-CR-CR-」のR、「-CR=CR-」のR、「-N(-R)-」のR、「-C(-R)-」のR、および「-Si(-R)-」のRは、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはシクロアルキルであり、当該Rにおける少なくとも1つの水素はアルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、また、隣接する2つのR同士が結合して、シクロアルキレン環、アリーレン環、およびヘテロアリーレン環を形成していてもよい。これらの環における少なくとも1つの水素もまた、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよい。
なお、ここで列挙した置換基や環の詳細については、上述した式(1)および式(2)での説明を引用できる。
式(D1)における「XおよびXとしての前記「>N-R」のR、および「>C(-R)」のRは、それぞれ独立して、A環、B環、およびC環の少なくとも1つの環と連結基を介して結合している」との規定は、式(D2)では「XおよびXとしての前記「>N-R」のR、および「>C(-R)」のRは、それぞれ独立して、a環、b環、およびc環の少なくとも1つの環と、単結合、-CH-CH-、-CHR-CHR-、-CR-CR-、-CH=CH-、-CR=CR-、-C≡C-、-N(-R)-、-O-、-S-、-C(-R)-、-Si(-R)-、および-Se-を介して結合している」との規定に対応する。
この規定は、例えば下記構造式で表現することができる。環構造が変化するa環およびb環における置換基を非表示としたが実際にはc環におけるR~R11と同様に存在する。なお、c環の環構造も同様に変化する。
Figure 2023085205000065
左の構造式は、式(D1)における、
の選択肢(>N-R、および>C(-R))におけるRが連結基を介してb環(ベンゼン環)と結合することで、Xを取り込みながらb環(ベンゼン環)に対して他の環が縮合してB’環が形成され、
の選択肢(>N-R、および>C(-R))におけるRが連結基を介してa環(ベンゼン環)と結合することで、Xを取り込みながらa環(ベンゼン環)に対して他の環が縮合してA’環が形成された、化合物を表している。
形成された縮合環B’および縮合環A’は、例えば、アゼピン構造を有する環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、カルバゾール環、またはアクリジン環などである。なお、上記構造式には含めていないが、c環が結合する例などもある。
右の構造式は、左の構造式のより具体的な例を表しており、
である>N-RのR(フェニル基)が、連結基である「-CR=CR-」(隣接する2つのR同士が結合してフェニレン環であるアリール環が形成されている)によりb環(ベンゼン環)と結合して、破線で囲んだ、アゼピン構造を有する環B’が形成され、
である>N-RのR(フェニル基)が、連結基である「-O-」によりa環(ベンゼン環)と結合して、破線で囲んだフェノキサジン環A’が形成された、化合物を表している。
以上の説明は、c環の環構造が同様に変化した場合にも適用でき、また上述した具体例以外のあらゆる形態にも同様に適用できる。
<a環、b環、およびc環の構造変化の説明>
これまでの説明では、基本的に、式(D2)におけるa環、b環、およびc環をベンゼン環として説明してきたが、以下、これらの環がベンゼン環ではない、5員環または6員環のアリール環またはヘテロアリール環に構造変化する例について説明する。なお、これまでの説明は、これらの環が以下の構造変化をした場合についても、同様に理解される。
<a環、b環、およびc環の構造変化(1)>
a環、b環、およびc環における、任意の「-C(-R)=」(ここでRはR~R11である)は「-N=」に置き換わっていてもよい。なお、以下の構造式は、a環、b環、またはc環とその周辺構造の一部だけを抜き出した式である。
Figure 2023085205000066
以上に示すように、式(D2)中でベンゼン環として表示されるa環、b環、またはc環は、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、その他の含窒素ヘテロアリール環に変化してもよい。また、a環、b環、またはc環上に隣接する基が存在する場合(上記構造式中では、a環上のRおよびR、b環上のRおよびR、c環上のRおよびR10)には、これらが結合してa環、b環、またはc環と共にヘテロアリール環(上記構造式中ではキノリン環)を形成し、形成された環がさらに置換されていてもよい(n個のRで示す)ことは、上述したとおりである。
その他の箇所が「-N=」に置き換わった場合や、隣接する置換基同士が結合して他のヘテロアリール環を形成した場合についても同じである。
<a環の構造変化(2)>
a環における、任意の「-C(-R)=C(-R)-」(ここでRはR~R)は、「-N(-R)-」、「-O-」、「-S-」、「-C(-R)-」、「-Si(-R)-」、または「-Se-」に置き換わっていてもよく、前記「-N(-R)-」のR、「-C(-R)-」のR、および「-Si(-R)-」のRは、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよい。なお、ここで列挙した置換基の詳細については、上述した式(1)および式(2)での説明を引用できる。
Figure 2023085205000067
以上の構造式は、a環とその周辺構造の一部だけを抜き出した式であり、煩雑さを避けるため、部分構造を示す波線は省略している。
以上に示すように、式(D2)中でベンゼン環として表示されるa環は、R置換のピロール環、フラン環、チオフェン環、その他の含窒素・酸素・硫黄・ケイ素・セレンのヘテロアリール環(5員環)やアリール環(5員環)に変化してもよい。
その他の箇所が「-N(-R)-」、「-O-」、「-S-」、「-C(-R)-」、「-Si(-R)-」、または「-Se-」に置き換わった場合についても同じである。
「-C(-R)-」の2つのR同士および「-Si(-R)-」の2つのR同士は、それぞれ独立して、連結基を介して結合していてもよい。この連結基としては、単結合、-CH-CH-、-CHR-CHR-、-CR-CR-、-CH=CH-、-CR=CR-、-C≡C-、-N(-R)-、-O-、-S-、-C(-R)-、-Si(-R)-、または-Se-が挙げられ、例えば以下の構造が挙げられる。なお、前記「-CHR-CHR-」のR、「-CR-CR-」のR、「-CR=CR-」のR、「-N(-R)-」のR、「-C(-R)-」のR、および「-Si(-R)-」のRは、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはシクロアルキルであり、当該Rにおける少なくとも1つの水素はアルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよい。また、「-CHR-CHR-」、「-CR-CR-」、「-CR=CR-」、「-C(-R)-」、および「-Si(-R)-」における隣接する2つのR同士が結合して、シクロアルキレン環、アリーレン環、およびヘテロアリーレン環を形成していてもよい(下記構造式中の最も右の構造式を参照)。なお、ここで列挙した置換基や環の詳細については、上述した式(1)および式(2)での説明を引用できる。
Figure 2023085205000068
連結基としては、単結合、-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、-S-、-C(-R)-、-Si(-R)-、および-Se-が好ましく、単結合、-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、-S-、および-C(-R)-がより好ましく、単結合、-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、および-S-がさらに好ましく、単結合および-CR=CR-が最も好ましい。
連結基を介して2つのRが結合する位置は、結合可能な位置であれば特に限定されないが、最も隣接する位置で結合することが好ましく、例えば2つのRがフェニル基である場合、フェニル基における「C」や「Si」の結合位置(1位)を基準としてオルト(2位)の位置同士で結合することが好ましい(上記構造式を参照)。
<b環およびc環の構造変化(2)>
b環およびc環における、任意の「-C(-R)=C(-R)-」は、「-N(-R)-」、「-O-」、「-S-」、「-C(-R)-」、「-Si(-R)-」、または「-Se-」に置き換わっていてもよく、前記「-N(-R)-」のR、「-C(-R)-」のR、および「-Si(-R)-」のRは、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよい。なお、ここで列挙した置換基の詳細については、上述した式(1)および式(2)での説明を引用できる。
Figure 2023085205000069
以上の構造式は、b環とその周辺構造の一部だけを抜き出した式である。c環についても同様に構造変化を説明できる。
以上に示すように、式(D2)中でベンゼン環として表示されるb環およびc環は、R置換のピロール環、フラン環、チオフェン環、その他の含窒素・酸素・硫黄・ケイ素・セレンのヘテロアリール環(5員環)やアリール環(5員環)に変化してもよい。また、b環上およびc環上に隣接する基が存在する場合(上記式中では残りの2つの隣接するRおよびR)には、これらが結合してb環およびc環と共にヘテロアリール環(上記式中ではR置換のインドール環、ベンゾフラン環、またはベンゾチオフェン環などの環)やアリール環(インデン環などの環)を形成し、形成された環がさらに置換されていてもよい(n個のRで示す)ことは、上述したとおりである。
その他、以下のような変形例もある。c環についても同様に構造変化を説明できる。
Figure 2023085205000070
その他の箇所が「-N(-R)-」、「-O-」、「-S-」、「-C(-R)-」、「-Si(-R)-」、または「-Se-」に置き換わった場合についても同じである。
上述するように、式(D2)中でベンゼン環として表示されるb環およびc環が変形したアリール環またはヘテロアリール環としては、インデン環、インドール環、ベンゾフラン環、またはベンゾチオフェン環が好ましく、ベンゾフラン環またはベンゾチオフェン環がより好ましく、ベンゾチオフェン環がさらに好ましい。
「-C(-R)-」の2つのR同士および「-Si(-R)-」の2つのR同士は、それぞれ独立して、連結基を介して結合していてもよい。この連結基としては、単結合、-CH-CH-、-CHR-CHR-、-CR-CR-、-CH=CH-、-CR=CR-、-C≡C-、-N(-R)-、-O-、-S-、-C(-R)-、-Si(-R)-、または-Se-が挙げられ、例えば以下の構造が挙げられる。なお、前記「-CHR-CHR-」のR、「-CR-CR-」のR、「-CR=CR-」のR、「-N(-R)-」のR、「-C(-R)-」のR、および「-Si(-R)-」のRは、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはシクロアルキルであり、当該Rにおける少なくとも1つの水素はアルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよい。また、「-CHR-CHR-」、「-CR-CR-」、「-CR=CR-」、「-C(-R)-」、および「-Si(-R)-」における隣接する2つのR同士が結合して、シクロアルキレン環、アリーレン環、およびヘテロアリーレン環を形成していてもよい(下記構造式中の最も右の構造式を参照)。なお、ここで列挙した置換基や環の詳細については、上述した式(1)および式(2)での説明を引用できる。
Figure 2023085205000071
連結基としては、単結合、-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、-S-、-C(-R)-、-Si(-R)-、および-Se-が好ましく、単結合、-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、-S-、および-C(-R)-がより好ましく、単結合、-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、および-S-がさらに好ましく、単結合および-CR=CR-が最も好ましい。
連結基を介して2つのRが結合する位置は、結合可能な位置であれば特に限定されないが、最も隣接する位置で結合することが好ましく、例えば2つのRがフェニル基である場合、フェニル基における「C」や「Si」の結合位置(1位)を基準としてオルト(2位)の位置同士で結合することが好ましい(上記構造式を参照)。
<B環およびC環の結合>
式(D1)におけるB環およびC環、式(D2)におけるb環およびc環は、連結基を介して結合していてもよい。この連結基としては、単結合、-CH-CH-、-CHR-CHR-、-CR-CR-、-CH=CH-、-CR=CR-、-C≡C-、-N(-R)-、-O-、-S-、-C(-R)-、-Si(-R)-、または-Se-が挙げられる。なお、前記「-CHR-CHR-」のR、「-CR-CR-」のR、「-CR=CR-」のR、「-N(-R)-」のR、「-C(-R)-」のR、および「-Si(-R)-」のRは、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはシクロアルキルであり、当該Rにおける少なくとも1つの水素はアルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよい。また、「-CHR-CHR-」、「-CR-CR-」、「-CR=CR-」、「-C(-R)-」、および「-Si(-R)-」における隣接する2つのR同士が結合して、シクロアルキレン環、アリーレン環、およびヘテロアリーレン環を形成していてもよい。なお、ここで列挙した置換基や環の詳細については、上述した式(1)および式(2)での説明を引用できる。
連結基としては、単結合、-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、-S-、-C(-R)-、-Si(-R)-、および-Se-が好ましく、単結合、-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、-S-、および-C(-R)-がより好ましく、単結合、-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、および-S-がさらに好ましく、単結合および-CR=CR-が最も好ましい。
連結基を介して2つの環が結合する位置は、結合可能な位置であれば特に限定されないが、最も隣接する位置で結合することが好ましく、例えば式(D2)の場合はb環のRとc環のRが結合することが好ましい。
<多環芳香族化合物の多量体の説明>
また、式(D1)または式(D2)の化合物には、式(D1)で表される単位構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体、および式(D2)で表される単位構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体が含まれる。多量体は、2~6量体が好ましく、2~3量体がより好ましく、2量体が特に好ましい。多量体は、1つの化合物の中に上記単位構造を複数有する形態であればよく、例えば、上記単位構造が単結合、炭素数1~3のアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基などの連結基で複数結合した形態(連結型多量体)に加えて、上記単位構造に含まれる任意の環(A環、B環またはC環、a環、b環またはc環)を複数の単位構造で共有するようにして結合した形態(環共有型多量体)であってもよく、また、上記単位構造に含まれる任意の環(A環、B環またはC環、a環、b環またはc環)同士が縮合するようにして結合した形態(環縮合型多量体)であってもよいが、環共有型多量体および環縮合型多量体が好ましく、環共有型多量体がより好ましい。
このような多量体としては、例えば、下記式(D2’-M1-1)、式(D2’-M1-2)、式(D2’-M2-1)~式(D2’-M2-4)、または式(D2’-M3)で表される多量体化合物が挙げられる。式(D2’-M1-1)または式(D2’-M1-2)で表される多量体化合物は、式(D2)で説明すれば、1つの化合物構造において、a環であるベンゼン環を共有するようにして、式(D2)で表される単位構造を複数有する多量体化合物(環共有型多量体)である。また、下記式(D2’-M2-1)~式(D2’-M2-4)で表される多量体化合物は、式(D2)で説明すれば、1つの化合物構造において、b環またはc環であるベンゼン環を共有するようにして、式(D2)で表される単位構造を複数有する多量体化合物(環共有型多量体)である。また、下記式(D2’-M3)で表される多量体化合物は、式(D2)で説明すれば、1つの化合物構造において、例えばある単位構造のb環(またはa環、c環)であるベンゼン環とある単位構造のb環(またはa環、c環)であるベンゼン環とが縮合するようにして、式(D2)で表される単位構造を複数有する多量体化合物(環縮合型多量体)である。
Figure 2023085205000072
多量体化合物は、式(D2’-M1-1)または式(D2’-M1-2)で表現される多量化形態と、式(D2’-M2-1)~式(D2’-M2-4)のいずれか、または式(D2’-M3)で表現される多量化形態とが組み合わさった多量体であってもよく、式(D2’-M2-1)~式(D2’-M2-4)のいずれかで表現される多量化形態と、式(D2’-M3)で表現される多量化形態とが組み合わさった多量体であってもよく、式(D2’-M1-1)または式(D2’-M1-2)で表現される多量化形態と式(D2’-M2-1)~式(D2’-M2-4)のいずれかで表現される多量化形態と式(D2’-M3)で表現される多量化形態とが組み合わさった多量体であってもよい。
<シクロアルカン縮合の説明>
また、多環芳香族化合物の化学構造中の芳香族環および複素芳香族環の少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよい。
例えば、A環、B環、およびC環であるアリール環およびヘテロアリール環、これらの環への第1置換基および第2置換基(第1置換基にさらに置換する置換基)としてのアリール基(アリール、ジアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル、アリールオキシ、アリールチオ、またはトリアリールシリルにおけるアリール基部分)およびヘテロアリール基(ヘテロアリール、ジヘテロアリールアミノまたはアリールヘテロアリールアミノにおけるヘテロアリール部分)、a環、b環、およびc環であるアリール環およびヘテロアリール環、a環、b環、およびc環における隣接する置換基同士が結合して形成されたアリール環またはヘテロアリール環、a環、b環、およびc環への第1置換基および第2置換基としてのアリール基(上記と同様)およびヘテロアリール基(上記と同様)、XおよびXである、「>N-R」のR、および「>C(-R)」のRとしてのアリール基またはヘテロアリール基のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよい。
好ましくは、A環、B環、およびC環であるアリール環およびヘテロアリール環、これらの環への第1置換基としてのアリール基(アリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、アリールオキシ、またはアリールチオにおけるアリール基部分)およびヘテロアリール基(ヘテロアリールまたはジヘテロアリールアミノにおけるヘテロアリール部分)、a環、b環、およびc環であるアリール環およびヘテロアリール環、a環、b環、およびc環における隣接する置換基同士が結合して形成されたアリール環またはヘテロアリール環、a環、b環、およびc環への第1置換基としてのアリール基(上記と同様)およびヘテロアリール基(上記と同様)、XおよびXである、「>N-R」のR、および「>C(-R)」のRとしてのアリール基またはヘテロアリール基のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよい。
より好ましくは、A環、B環、およびC環であるアリール環、この環への第1置換基としてのアリール基(アリールまたはジアリールアミノにおけるアリール基部分)およびヘテロアリール基(ヘテロアリールにおけるヘテロアリール部分)、a環、b環、およびc環であるアリール環、a環、b環、およびc環における隣接する置換基同士が結合して形成されたアリール環、a環、b環、およびc環への第1置換基としてのアリール基(上記と同様)およびヘテロアリール基(上記と同様)、XおよびXである「>N-R」のRとしてのアリール基のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよい。
さらに好ましくは、A環、B環、およびC環であるアリール環、この環への第1置換基としてのアリール基(アリールまたはジアリールアミノにおけるアリール基部分)、a環、b環、およびc環であるアリール環、a環、b環、およびc環への第1置換基としてのアリール基(上記と同様)、XおよびXである「>N-R」のRとしてのアリール基のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよい。
「シクロアルカン」としては、炭素数3~24のシクロアルカン、炭素数3~20のシクロアルカン、炭素数3~16のシクロアルカン、炭素数3~14のシクロアルカン、炭素数5~10のシクロアルカン、炭素数5~8のシクロアルカン、炭素数5~6のシクロアルカン、炭素数5のシクロアルカンなどがあげられる。
具体的なシクロアルカンとしては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、ノルボルネン、ビシクロ[1.1.0]ブタン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン、ビシクロ[2.1.0]ペンタン、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン、ビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、アダマンタン、ジアマンタン、デカヒドロナフタレンおよびデカヒドロアズレン、ならびに、これらの炭素数1~5のアルキル(特にメチル)置換体、ハロゲン(特にフッ素)置換体および重水素置換体などがあげられる。
これらの中でも、例えば下記構造式に示すような、シクロアルカンのα位の炭素(芳香族環または複素芳香族環に縮合するシクロアルキルにおいて、縮合部位の炭素に隣接する位置の炭素)における少なくとも1つの水素が置換された構造が好ましく、α位の炭素における2つの水素が置換された構造がより好ましく、2つのα位の炭素における合計4つの水素が置換された構造がさらに好ましい。この置換基としては、炭素数1~5のアルキル(特にメチル)置換体、ハロゲン(特にフッ素)置換体および重水素置換体などがあげられる。
Figure 2023085205000073
1つの芳香族環または複素芳香族環に縮合するシクロアルカンの数は、1~3個が好ましく、1個または2個がより好ましく、1個がさらに好ましい。例えば1つのベンゼン環(フェニル基)に1個または複数のシクロアルカンが縮合した例を以下に示す。各構造式における*は、ベンゼン環である場合には化合物の骨格構造に含まれるベンゼン環であることを意味し、フェニル基である場合には化合物の骨格構造に置換する結合手を意味する。式(Cy-1-4)および式(Cy-2-4)のように縮合したシクロアルカン同士が縮合してもよい。縮合される環(基)がベンゼン環(フェニル基)以外の他の芳香族環または複素芳香族環の場合であっても、縮合するシクロアルカンがシクロペンタンまたはシクロヘキサン以外の他のシクロアルカンの場合であっても、同様である。
Figure 2023085205000074
シクロアルカンにおける少なくとも1つの-CH-は-O-で置換されていてもよい。ただし複数の-CH-は-O-で置換される場合は、隣接する-CH-が-O-で置換されることはない。例えば1つのベンゼン環(フェニル基)に縮合したシクロアルカンにおける1個または複数の-CH-が-O-で置換された例を以下に示す。各構造式における*は、ベンゼン環である場合には化合物の骨格構造に含まれるベンゼン環であることを意味し、フェニル基である場合には化合物の骨格構造に置換する結合手を意味する。縮合される環(基)がベンゼン環(フェニル基)以外の他の芳香族環または複素芳香族環の場合であっても、縮合するシクロアルカンがシクロペンタンまたはシクロヘキサン以外の他のシクロアルカンの場合であっても、同様である。
Figure 2023085205000075
シクロアルカンにおける少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、この置換基としては、例えば、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオ、置換シリル、重水素、シアノまたはハロゲンがあげられ、当該ジアリールアミノの2つのアリールは連結基を介して結合していてもよく、当該ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは連結基を介して結合していてもよく、当該アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは連結基を介して結合していてもよく、当該ジアリールボリルの2つのアリールは連結基を介して結合していてもよく、これらの詳細は、上述した式(1)および式(2)での説明を引用することができる。これらの置換基の中でも、アルキル(例えば炭素数1~6のアルキル)、シクロアルキル(例えば炭素数3~14のシクロアルキル)、ハロゲン(例えばフッ素)および重水素などが好ましい。また、シクロアルキルが置換する場合はスピロ構造を形成する置換形態でもよく、例えば1つのベンゼン環(フェニル基)に縮合したシクロアルカンにスピロ構造が形成された例を以下に示す。各構造式における*は、ベンゼン環である場合には化合物の骨格構造に含まれるベンゼン環であることを意味し、フェニル基である場合には化合物の骨格構造に置換する結合手を意味する。
Figure 2023085205000076
シクロアルカン縮合の他の形態としては、式(D1)または式(D2)で表される多環芳香族化合物が、例えば、シクロアルカンで縮合されたジアリールアミノ基(このアリール基部分へ縮合)、シクロアルカンで縮合されたカルバゾリル基(このベンゼン環部分へ縮合)またはシクロアルカンで縮合されたベンゾカルバゾリル基(このベンゼン環部分へ縮合)で置換された例が挙げられる。「ジアリールアミノ基」については上述した式(1)および式(2)での説明を引用できる。
また、さらに具体的な例としては、式(D2)で表される多環芳香族化合物におけるR~R(特に、中心元素B(ホウ素)に対してパラ位のR)が、シクロアルカンで縮合されたジアリールアミノ基(このアリール基部分へ縮合)またはシクロアルカンで縮合されたカルバゾリル基(このベンゼン環部分へ縮合)である例が挙げられる。
<重水素、シアノ、またはハロゲンによる置換の説明>
多環芳香族化合物における少なくとも1つの水素は、重水素、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であり、フッ素、塩素、または臭素が好ましく、フッ素または塩素がより好ましい。
<多環芳香族化合物の製造方法>
一般式(D1)または一般式(D2)で表される多環芳香族化合物は、国際公開第2015/102118号公報を始めとする多くの公知文献に記載されている方法に従って製造することができる。
その他のドーパント材料としては、既知の化合物を用いることができ、所望の発光色に応じて様々な材料の中から選択することができる。具体的には、例えば、フェナンスレン、アントラセン、ピレン、テトラセン、ペンタセン、ペリレン、ナフトピレン、ジベンゾピレン、ルブレンおよびクリセンなどの縮合環誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン誘導体、チオフェン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体(特開平1-245087号公報)、ビススチリルアリーレン誘導体(特開平2-247278号公報)、ジアザインダセン誘導体、フラン誘導体、ベンゾフラン誘導体、フェニルイソベンゾフラン、ジメシチルイソベンゾフラン、ジ(2-メチルフェニル)イソベンゾフラン、ジ(2-トリフルオロメチルフェニル)イソベンゾフラン、フェニルイソベンゾフランなどのイソベンゾフラン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、7-ジアルキルアミノクマリン誘導体、7-ピペリジノクマリン誘導体、7-ヒドロキシクマリン誘導体、7-メトキシクマリン誘導体、7-アセトキシクマリン誘導体、3-ベンゾチアゾリルクマリン誘導体、3-ベンゾイミダゾリルクマリン誘導体、3-ベンゾオキサゾリルクマリン誘導体などのクマリン誘導体、ジシアノメチレンピラン誘導体、ジシアノメチレンチオピラン誘導体、ポリメチン誘導体、シアニン誘導体、オキソベンゾアントラセン誘導体、キサンテン誘導体、ローダミン誘導体、フルオレセイン誘導体、ピリリウム誘導体、カルボスチリル誘導体、アクリジン誘導体、オキサジン誘導体、フェニレンオキサイド誘導体、キナクリドン誘導体、キナゾリン誘導体、ピロロピリジン誘導体、フロピリジン誘導体、1,2,5-チアジアゾロピレン誘導体、ピロメテン誘導体、ペリノン誘導体、ピロロピロール誘導体、スクアリリウム誘導体、ビオラントロン誘導体、フェナジン誘導体、アクリドン誘導体、デアザフラビン誘導体、フルオレン誘導体およびベンゾフルオレン誘導体などが挙げられる。
発色光ごとに例示すると、青~青緑色ドーパント材料としては、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、トリフェニレン、ペリレン、フルオレン、インデン、クリセンなどの芳香族炭化水素化合物やその誘導体、フラン、ピロール、チオフェン、シロール、9-シラフルオレン、9,9’-スピロビシラフルオレン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、イミダゾピリジン、フェナントロリン、ピラジン、ナフチリジン、キノキサリン、ピロロピリジン、チオキサンテンなどの芳香族複素環化合物やその誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、スチルベン誘導体、アルダジン誘導体、クマリン誘導体、イミダゾール、チアゾール、チアジアゾール、カルバゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾールなどのアゾール誘導体およびその金属錯体およびN,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(3-メチルフェニル)-4,4’-ジフェニル-1,1’-ジアミンに代表される芳香族アミン誘導体などが挙げられる。
また、緑~黄色ドーパント材料としては、クマリン誘導体、フタルイミド誘導体、ナフタルイミド誘導体、ペリノン誘導体、ピロロピロール誘導体、シクロペンタジエン誘導体、アクリドン誘導体、キナクリドン誘導体およびルブレンなどのナフタセン誘導体などが挙げられ、さらに上記青~青緑色ドーパント材料として例示した化合物に、アリール、ヘテロアリール、アリールビニル、アミノ、シアノなど長波長化を可能とする置換基を導入した化合物も好適な例として挙げられる。
さらに、橙~赤色ドーパント材料としては、ビス(ジイソプロピルフェニル)ペリレンテトラカルボン酸イミドなどのナフタルイミド誘導体、ペリノン誘導体、アセチルアセトンやベンゾイルアセトンとフェナントロリンなどを配位子とするEu錯体などの希土類錯体、4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(p-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピランやその類縁体、マグネシウムフタロシアニン、アルミニウムクロロフタロシアニンなどの金属フタロシアニン誘導体、ローダミン化合物、デアザフラビン誘導体、クマリン誘導体、キナクリドン誘導体、フェノキサジン誘導体、オキサジン誘導体、キナゾリン誘導体、ピロロピリジン誘導体、スクアリリウム誘導体、ビオラントロン誘導体、フェナジン誘導体、フェノキサゾン誘導体およびチアジアゾロピレン誘導体など挙げられ、さらに上記青~青緑色および緑~黄色ドーパント材料として例示した化合物に、アリール、ヘテロアリール、アリールビニル、アミノ、シアノなど長波長化を可能とする置換基を導入した化合物も好適な例として挙げられる。
その他、ドーパントとしては、化学工業2004年6月号13頁、および、それに挙げられた参考文献などに記載された化合物などの中から適宜選択して用いることができる。
上述するドーパント材料の中でも、特にスチルベン構造を有するアミン、ペリレン誘導体、ボラン誘導体、芳香族アミン誘導体、クマリン誘導体、ピラン誘導体またはピレン誘導体が好ましい。
スチルベン構造を有するアミンは、例えば、下記式で表される。
Figure 2023085205000077
当該式中、Arは炭素数6~30のアリールに由来するm価の基であり、ArおよびArは、それぞれ独立して炭素数6~30のアリールであるが、Ar~Arの少なくとも1つはスチルベン構造を有し、Ar~Arは、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、トリ置換シリル(アリール、アルキルおよびシクロアルキルの少なくとも1つでトリ置換されたシリル)またはシアノで置換されていてもよく、そして、mは1~4の整数である。
スチルベン構造を有するアミンは、下記式で表されるジアミノスチルベンがより好ましい。
Figure 2023085205000078
当該式中、ArおよびArは、それぞれ独立して炭素数6~30のアリールであり、ArおよびArは、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、トリ置換シリル(アリール、アルキルおよびシクロアルキルの少なくとも1つでトリ置換されたシリル)またはシアノで置換されていてもよい。
炭素数6~30のアリールの具体例は、フェニル、ナフチル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニル、アントリル、フルオランテニル、トリフェニレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、ペリレニル、スチルベニル、ジスチリルフェニル、ジスチリルビフェニリル、ジスチリルフルオレニルなどが挙げられる。
スチルベン構造を有するアミンの具体例は、N,N,N’,N’-テトラ(4-ビフェニリル)-4,4’-ジアミノスチルベン、N,N,N’,N’-テトラ(1-ナフチル)-4,4’-ジアミノスチルベン、N,N,N’,N’-テトラ(2-ナフチル)-4,4’-ジアミノスチルベン、N,N’-ジ(2-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノスチルベン、N,N’-ジ(9-フェナントリル)-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノスチルベン、4,4’-ビス[4”-ビス(ジフェニルアミノ)スチリル]-ビフェニル、1,4-ビス[4’-ビス(ジフェニルアミノ)スチリル]-ベンゼン、2,7-ビス[4’-ビス(ジフェニルアミノ)スチリル]-9,9-ジメチルフルオレン、4,4’-ビス(9-エチル-3-カルバゾビニレン)-ビフェニル、4,4’-ビス(9-フェニル-3-カルバゾビニレン)-ビフェニルなどが挙げられる。
また、特開2003-347056号公報、および特開2001-307884号公報などに記載されたスチルベン構造を有するアミンを用いてもよい。
ペリレン誘導体としては、例えば、3,10-ビス(2,6-ジメチルフェニル)ペリレン、3,10-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)ペリレン、3,10-ジフェニルペリレン、3,4-ジフェニルペリレン、2,5,8,11-テトラ-t-ブチルペリレン、3,4,9,10-テトラフェニルペリレン、3-(1’-ピレニル)-8,11-ジ(t-ブチル)ペリレン、3-(9’-アントリル)-8,11-ジ(t-ブチル)ペリレン、3,3’-ビス(8,11-ジ(t-ブチル)ペリレニル)などが挙げられる。
また、特開平11-97178号公報、特開2000-133457号公報、特開2000-26324号公報、特開2001-267079号公報、特開2001-267078号公報、特開2001-267076号公報、特開2000-34234号公報、特開2001-267075号公報、および特開2001-217077号公報などに記載されたペリレン誘導体を用いてもよい。
ボラン誘導体としては、例えば、1,8-ジフェニル-10-(ジメシチルボリル)アントラセン、9-フェニル-10-(ジメシチルボリル)アントラセン、4-(9’-アントリル)ジメシチルボリルナフタレン、4-(10’-フェニル-9’-アントリル)ジメシチルボリルナフタレン、9-(ジメシチルボリル)アントラセン、9-(4’-ビフェニリル)-10-(ジメシチルボリル)アントラセン、9-(4’-(N-カルバゾリル)フェニル)-10-(ジメシチルボリル)アントラセンなどが挙げられる。
また、国際公開第2000/40586号パンフレットなどに記載されたボラン誘導体を用いてもよい。
芳香族アミン誘導体は、例えば、下記式で表される。
Figure 2023085205000079
当該式中、Arは炭素数6~30のアリールに由来するn価の基であり、ArおよびArはそれぞれ独立して炭素数6~30のアリールであり、Ar~Arは、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、トリ置換シリル(アリール、アルキルおよびシクロアルキルの少なくとも1つでトリ置換されたシリル)またはシアノで置換されていてもよく、そして、nは1~4の整数である。
特に、Arがアントラセン、クリセン、フルオレン、ベンゾフルオレンまたはピレンに由来する2価の基であり、ArおよびArがそれぞれ独立して炭素数6~30のアリールであり、Ar~Arは、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、トリ置換シリル(アリール、アルキルおよびシクロアルキルの少なくとも1つでトリ置換されたシリル)またはシアノで置換されていてもよく、そして、nは2である、芳香族アミン誘導体がより好ましい。
炭素数6~30のアリールの具体例は、フェニル、ナフチル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニル、アントリル、フルオランテニル、トリフェニレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、ペリレニル、ペンタセニルなどが挙げられる。
芳香族アミン誘導体としては、クリセン系としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラフェニルクリセン-6,12-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラ(p-トリル)クリセン-6,12-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラ(m-トリル)クリセン-6,12-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(4-イソプロピルフェニル)クリセン-6,12-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラ(ナフタレン-2-イル)クリセン-6,12-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(p-トリル)クリセン-6,12-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-エチルフェニル)クリセン-6,12-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-イソプロピルフェニル)クリセン-6,12-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-t-ブチルフェニル)クリセン-6,12-ジアミン、N,N’-ビス(4-イソプロピルフェニル)-N,N’-ジ(p-トリル)クリセン-6,12-ジアミンなどが挙げられる。
また、ピレン系としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラフェニルピレン-1,6-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラ(p-トリル)ピレン-1,6-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラ(m-トリル)ピレン-1,6-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(4-イソプロピルフェニル)ピレン-1,6-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(3,4-ジメチルフェニル)ピレン-1,6-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(p-トリル)ピレン-1,6-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-エチルフェニル)ピレン-1,6-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-イソプロピルフェニル)ピレン-1,6-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-t-ブチルフェニル)ピレン-1,6-ジアミン、N,N’-ビス(4-イソプロピルフェニル)-N,N’-ジ(p-トリル)ピレン-1,6-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(3,4-ジメチルフェニル)-3,8-ジフェニルピレン-1,6-ジアミン、N,N,N,N-テトラフェニルピレン-1,8-ジアミン、N,N’-ビス(ビフェニル-4-イル)-N,N’-ジフェニルピレン-1,8-ジアミン、N,N-ジフェニル-N,N-ビス-(4-トリメチルシラニル-フェニル)-1H,8H-ピレン-1,6-ジアミンなどが挙げられる。
また、アントラセン系としては、例えば、N,N,N,N-テトラフェニルアントラセン-9,10-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラ(p-トリル)アントラセン-9,10-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラ(m-トリル)アントラセン-9,10-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(4-イソプロピルフェニル)アントラセン-9,10-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(p-トリル)アントラセン-9,10-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)アントラセン-9,10-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-エチルフェニル)アントラセン-9,10-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-イソプロピルフェニル)アントラセン-9,10-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-t-ブチルフェニル)アントラセン-9,10-ジアミン、N,N’-ビス(4-イソプロピルフェニル)-N,N’-ジ(p-トリル)アントラセン-9,10-ジアミン、2,6-ジ-t-ブチル-N,N,N’,N’-テトラ(p-トリル)アントラセン-9,10-ジアミン、2,6-ジ-t-ブチル-N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-イソプロピルフェニル)アントラセン-9,10-ジアミン、2,6-ジ-t-ブチル-N,N’-ビス(4-イソプロピルフェニル)-N,N’-ジ(p-トリル)アントラセン-9,10-ジアミン、2,6-ジシクロヘキシル-N,N’-ビス(4-イソプロピルフェニル)-N,N’-ジ(p-トリル)アントラセン-9,10-ジアミン、2,6-ジシクロヘキシル-N,N’-ビス(4-イソプロピルフェニル)-N,N’-ビス(4-t-ブチルフェニル)アントラセン-9,10-ジアミン、9,10-ビス(4-ジフェニルアミノ-フェニル)アントラセン、9,10-ビス(4-ジ(1-ナフチルアミノ)フェニル)アントラセン、9,10-ビス(4-ジ(2-ナフチルアミノ)フェニル)アントラセン、10-ジ-p-トリルアミノ-9-(4-ジ-p-トリルアミノ-1-ナフチル)アントラセン、10-ジフェニルアミノ-9-(4-ジフェニルアミノ-1-ナフチル)アントラセン、10-ジフェニルアミノ-9-(6-ジフェニルアミノ-2-ナフチル)アントラセンなどが挙げられる。
また、他には、[4-(4-ジフェニルアミノ-フェニル)ナフタレン-1-イル]-ジフェニルアミン、[6-(4-ジフェニルアミノ-フェニル)ナフタレン-2-イル]-ジフェニルアミン、4,4’-ビス[4-ジフェニルアミノナフタレン-1-イル]ビフェニル、4,4’-ビス[6-ジフェニルアミノナフタレン-2-イル]ビフェニル、4,4”-ビス[4-ジフェニルアミノナフタレン-1-イル]-p-テルフェニル、4,4”-ビス[6-ジフェニルアミノナフタレン-2-イル]-p-テルフェニルなどが挙げられる。
また、特開2006-156888号公報などに記載された芳香族アミン誘導体を用いてもよい。
クマリン誘導体としては、クマリン-6、クマリン-334などが挙げられる。
また、特開2004-43646号公報、特開2001-76876号公報、および特開平6-298758号公報などに記載されたクマリン誘導体を用いてもよい。
ピラン誘導体としては、下記のDCM、DCJTBなどが挙げられる。
Figure 2023085205000080
また、特開2005-126399号公報、特開2005-097283号公報、特開2002-234892号公報、特開2001-220577号公報、特開2001-081090号公報、および特開2001-052869号公報などに記載されたピラン誘導体を用いてもよい。
<有機電界発光素子における電子注入層、電子輸送層>
電子注入層107は、陰極108から移動してくる電子を、効率よく発光層105内または電子輸送層106内に注入する役割を果たす。電子輸送層106は、陰極108から注入された電子または陰極108から電子注入層107を介して注入された電子を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たす。電子輸送層106および電子注入層107は、それぞれ、電子輸送・注入材料の一種または二種以上を積層、混合するか、電子輸送・注入材料と高分子結着剤の混合物により形成される。
電子注入・輸送層とは、陰極から電子が注入され、さらに電子を輸送することをつかさどる層であり、電子注入効率が高く、注入された電子を効率よく輸送することが望ましい。そのためには電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。しかしながら、正孔と電子の輸送バランスを考えた場合に、陽極からの正孔が再結合せずに陰極側へ流れるのを効率よく阻止できる役割を主に果たす場合には、電子輸送能力がそれ程高くなくても、発光効率を向上させる効果は電子輸送能力が高い材料と同等に有する。したがって、本実施形態における電子注入・輸送層は、正孔の移動を効率よく阻止できる層の機能も含まれてもよい。
電子輸送層106または電子注入層107を形成する材料(電子輸送材料)としては、光導電材料において電子伝達化合物として従来から慣用されている化合物、有機EL素子の電子注入層および電子輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意に選択して用いることができる。本発明では、この電子輸送材料として、上記一般式(1)または一般式(2)で表される多環芳香族化合物を用いることができる。
電子輸送層または電子注入層に用いられる材料としては、炭素、水素、酸素、硫黄、ケイ素およびリンの中から選ばれる一種以上の原子で構成される芳香族環または複素芳香族環からなる化合物、ピロール誘導体およびその縮合環誘導体および電子受容性窒素を有する金属錯体の中から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。具体的には、ナフタレン、アントラセンなどの縮合環系芳香族環誘導体、4,4’-ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香族環誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、リンオキサイド誘導体、カルバゾール誘導体およびインドール誘導体などが挙げられる。電子受容性窒素を有する金属錯体としては、例えば、ヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などが挙げられる。これらの材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
また、他の電子伝達化合物の具体例として、ピリジン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントロリン誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体(1,3-ビス[(4-t-ブチルフェニル)1,3,4-オキサジアゾリル]フェニレンなど)、チオフェン誘導体、トリアゾール誘導体(N-ナフチル-2,5-ジフェニル-1,3,4-トリアゾールなど)、チアジアゾール誘導体、オキシン誘導体の金属錯体、キノリノール系金属錯体、キノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体のポリマー、ベンザゾール類化合物、ガリウム錯体、ピラゾール誘導体、パーフルオロ化フェニレン誘導体、トリアジン誘導体、ピラジン誘導体、ベンゾキノリン誘導体(2,2’-ビス(ベンゾ[h]キノリン-2-イル)-9,9’-スピロビフルオレンなど)、イミダゾピリジン誘導体、ボラン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体(トリス(N-フェニルベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼンなど)、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、テルピリジンなどのオリゴピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、テルピリジン誘導体(1,3-ビス(4’-(2,2’:6’2”-テルピリジニル))ベンゼンなど)、ナフチリジン誘導体(ビス(1-ナフチル)-4-(1,8-ナフチリジン-2-イル)フェニルホスフィンオキサイドなど)、アルダジン誘導体、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、リンオキサイド誘導体、ビススチリル誘導体などが挙げられる。
また、電子受容性窒素を有する金属錯体を用いることもでき、例えば、キノリノール系金属錯体やヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などが挙げられる。
上述した材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
上述した材料の中でも、特開2021-14446号公報に記載されている、ボラン誘導体、ピリジン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ピリミジン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、およびキノリノール系金属錯体が好ましい。
電子輸送層または電子注入層には、さらに、電子輸送層または電子注入層を形成する材料を還元できる物質を含んでいてもよい。この還元性物質は、一定の還元性を有する物質であれば、様々な物質が用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも1つを好適に使用することができる。
好ましい還元性物質としては、Na(仕事関数2.36eV)、K(同2.28eV)、Rb(同2.16eV)またはCs(同1.95eV)などのアルカリ金属や、Ca(同2.9eV)、Sr(同2.0~2.5eV)またはBa(同2.52eV)などのアルカリ土類金属が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下の物質が特に好ましい。これらのうち、より好ましい還元性物質は、K、RbまたはCsのアルカリ金属であり、さらに好ましくはRbまたはCsであり、最も好ましいのはCsである。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。また、仕事関数が2.9eV以下の還元性物質として、これら2種以上のアルカリ金属の組み合わせも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRb、またはCsとNaとKとの組み合わせが好ましい。Csを含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
<有機電界発光素子における陰極>
陰極108は、電子注入層107および電子輸送層106を介して、発光層105に電子を注入する役割を果たす。
陰極108を形成する材料としては、電子を有機層に効率よく注入できる物質であれば特に限定されないが、陽極102を形成する材料と同様の材料を用いることができる。なかでも、スズ、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金、鉄、亜鉛、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびマグネシウムなどの金属またはそれらの合金(マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、フッ化リチウム/アルミニウムなどのアルミニウム-リチウム合金など)などが好ましい。電子注入効率を上げて素子特性を向上させるためには、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウムまたはこれら低仕事関数金属を含む合金が有効である。しかしながら、これらの低仕事関数金属は一般に大気中で不安定であることが多い。この点を改善するために、例えば、有機層に微量のリチウム、セシウムやマグネシウムをドーピングして、安定性の高い電極を使用する方法が知られている。その他のドーパントとしては、フッ化リチウム、フッ化セシウム、酸化リチウムおよび酸化セシウムのような無機塩も使用することができる。ただし、これらに限定されない。
さらに、電極保護のために白金、金、銀、銅、鉄、スズ、アルミニウムおよびインジウムなどの金属、またはこれら金属を用いた合金、そしてシリカ、チタニアおよび窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、炭化水素系高分子化合物などを積層することが、好ましい例として挙げられる。これらの電極の作製法も、抵抗加熱、電子ビーム蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングおよびコーティングなど、導通を取ることができれば特に制限されない。
<各層で用いてもよい結着剤>
以上の正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層に用いられる材料は単独で各層を形成することができるが、高分子結着剤としてポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂などの溶剤可溶性樹脂や、フェノール樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの硬化性樹脂などに分散させて用いることも可能である。
<有機電界発光素子の作製方法>
有機EL素子を構成する各層は、各層を構成すべき材料を蒸着法、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、印刷法、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法などの方法で薄膜とすることにより、形成することができる。このようにして形成された各層の膜厚については特に限定はなく、材料の性質に応じて適宜設定することができるが、通常2nm~5000nmの範囲である。膜厚は通常、水晶発振式膜厚測定装置などで測定できる。蒸着法を用いて薄膜化する場合、その蒸着条件は、材料の種類、膜の目的とする結晶構造および会合構造などにより異なる。蒸着条件は一般的に、ボート加熱温度+50~+400℃、真空度10-6~10-3Pa、蒸着速度0.01~50nm/秒、基板温度-150~+300℃、膜厚2nm~5μmの範囲で適宜設定することが好ましい。
このようにして得られた有機EL素子に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を-の極性として印加すればよく、電圧2~40V程度を印加すると、透明または半透明の電極側(陽極または陰極、および両方)より発光が観測できる。また、この有機EL素子は、パルス電流や交流電流を印加した場合にも発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
次に、有機EL素子を作製する方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト材料とドーパント材料からなる発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の作製法について説明する。
<蒸着法>
適当な基板上に、陽極材料の薄膜を蒸着法などにより形成させて陽極を作製した後、この陽極上に正孔注入層および正孔輸送層の薄膜を形成させる。この上にホスト材料とドーパント材料を共蒸着し薄膜を形成させて発光層とし、この発光層の上に電子輸送層、電子注入層を形成させ、さらに陰極用物質からなる薄膜を蒸着法などにより形成させて陰極とすることにより、目的の有機EL素子が得られる。なお、上述の有機EL素子の作製においては、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
<湿式成膜法>
湿式成膜法は、有機EL素子の各有機層を形成し得る低分子化合物を液状の有機層形成用組成物として準備し、これを用いることによって実施される。この低分子化合物を溶解する適当な有機溶媒がない場合には、当該低分子化合物に反応性置換基を置換させた反応性化合物として溶解性機能を有する他のモノマーや主鎖型高分子と共に高分子化させた高分子化合物などから有機層形成用組成物を準備してもよい。
湿式成膜法は、一般的には、基板に有機層形成用組成物を塗布する塗布工程および塗布された有機層形成用組成物から溶媒を取り除く乾燥工程を経ることで塗膜を形成する。上記高分子化合物が架橋性置換基を有する場合(これを架橋性高分子化合物ともいう)には、この乾燥工程によりさらに架橋して高分子架橋体が形成される。塗布工程の違いにより、スピンコーターを用いる方法をスピンコート法、スリットコーターを用いる方法をスリットコート法、版を用いる方法をグラビア、オフセット、リバースオフセット、フレキソ印刷法、インクジェットプリンタを用いる方法をインクジェット法、霧状に吹付ける方法をスプレー法と呼ぶ。乾燥工程には、風乾、加熱、減圧乾燥などの方法がある。乾燥工程は1回のみ行なってもよく、異なる方法や条件を用いて複数回行なってもよい。また、例えば、減圧下での焼成のように、異なる方法を併用してもよい。
湿式成膜法とは溶液を用いた成膜法であり、例えば、一部の印刷法(インクジェット法)、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法などである。湿式成膜法は真空蒸着法と異なり高価な真空蒸着装置を用いる必要が無く、大気圧下で成膜することができる。加えて、湿式成膜法は大面積化や連続生産が可能であり、製造コストの低減につながる。
一方で、真空蒸着法と比較した場合には、湿式成膜法は積層化が難しい場合がある。湿式成膜法を用いて積層膜を作製する場合、上層の組成物による下層の溶解を防ぐ必要があり、溶解性を制御した組成物、下層の架橋および直交溶媒(Orthogonal solvent、互いに溶解し合わない溶媒)などが駆使される。しかしながら、それらの技術を用いても、全ての膜の塗布に湿式成膜法を用いるのは難しい場合がある。
そこで、一般的には、幾つかの層だけを湿式成膜法を用い、残りを真空蒸着法で有機EL素子を作製するという方法が採用される。
例えば、湿式成膜法を一部適用し有機EL素子を作製する手順を以下に示す。
(手順1)陽極の真空蒸着法による成膜
(手順2)正孔注入層用材料を含む正孔注入層形成用組成物の湿式成膜法による成膜
(手順3)正孔輸送層用材料を含む正孔輸送層形成用組成物の湿式成膜法による成膜
(手順4)ホスト材料とドーパント材料を含む発光層形成用組成物の湿式成膜法による成膜
(手順5)電子輸送層の真空蒸着法による成膜
(手順6)電子注入層の真空蒸着法による成膜
(手順7)陰極の真空蒸着法による成膜
この手順を経ることで、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト材料とドーパント材料からなる発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子が得られる。
もちろん、下層の発光層の溶解を防ぐ手段があったり、また上記手順とは逆に陰極側から成膜する手段などを用いることで、電子輸送層用材料や電子注入層用材料を含む層形成用組成物として準備して、それらを湿式成膜法により成膜できる。
<その他の成膜法>
有機層形成用組成物の成膜化には、レーザー加熱描画法(LITI)を用いることができる。LITIとは基材に付着させた化合物をレーザーで加熱蒸着する方法で、基材へ塗布される材料に有機層形成用組成物を用いることができる。
<任意の工程>
成膜の各工程の前後に、適切な処理工程、洗浄工程および乾燥工程を適宜入れてもよい。処理工程としては、例えば、露光処理、プラズマ表面処理、超音波処理、オゾン処理、適切な溶媒を用いた洗浄処理および加熱処理等が挙げられる。さらには、バンクを作製する一連の工程も挙げられる。
バンクの作製にはフォトリソグラフィ技術を用いることができる。フォトリソグラフィの利用可能なバンク材としては、ポジ型レジスト材料およびネガ型レジスト材料を用いることができる。また、インクジェット法、グラビアオフセット印刷、リバースオフセット印刷、スクリーン印刷などのパターン可能な印刷法も用いることができる。その際には永久レジスト材料を用いることもできる。
バンクに用いられる材料としては、多糖類およびその誘導体、ヒドロキシルを有するエチレン性モノマーの単独重合体および共重合体、生体高分子化合物、ポリアクリロイル化合物、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリフェニレン、ポリフェニルエーテル、ポリウレタン、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合ポリマー(ABS)、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリアセテート、ポリノルボルネン、合成ゴム、ポリフルオロビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ化ポリマー、フルオロオレフィン-ヒドロカーボンオレフィンの共重合ポリマー、フルオロカーボンポリマーが挙げられるが、それだけに限定されない。
<湿式成膜法に使用される有機層形成用組成物>
有機層形成用組成物は、有機EL素子の各有機層を形成し得る低分子化合物、または当該低分子化合物を高分子化させた高分子化合物を有機溶媒に溶解させて得られる。例えば、発光層形成用組成物は、第1成分として少なくとも1種のドーパント材料である多環芳香族化合物(またはその高分子化合物)と、第2成分として少なくとも1種のホスト材料と、第3成分として少なくとも1種の有機溶媒とを含有する。第1成分は、該組成物から得られる発光層のドーパント成分として機能し、第2成分は発光層のホスト成分として機能する。第3成分は、組成物中の第1成分と第2成分を溶解する溶媒として機能し、塗布時には第3成分自身の制御された蒸発速度により平滑で均一な表面形状を与える。
<有機溶媒>
有機層形成用組成物は少なくとも一種の有機溶媒を含む。成膜時に有機溶媒の蒸発速度を制御することで、成膜性および塗膜の欠陥の有無、表面粗さ、平滑性を制御および改善することができる。また、インクジェット法を用いた成膜時は、インクジェットヘッドのピンホールでのメニスカス安定性を制御し、吐出性を制御・改善することができる。加えて、膜の乾燥速度および誘導体分子の配向を制御することで、該有機層形成用組成物より得られる有機層を有する有機EL素子の電気特性、発光特性、効率、および寿命を改善することができる。
(1)有機溶媒の物性
少なくとも1種の有機溶媒の沸点は、130℃~300℃であり、140℃~270℃がより好ましく、150℃~250℃がさらに好ましい。沸点が130℃より高い場合、インクジェットの吐出性の観点から好ましい。また、沸点が300℃より低い場合、塗膜の欠陥、表面粗さ、残留溶媒および平滑性の観点から好ましい。有機溶媒は、良好なインクジェットの吐出性、成膜性、平滑性および低い残留溶媒の観点から、2種以上の有機溶媒を含む構成がより好ましい。一方で、場合によっては、運搬性などを考慮し、有機層形成用組成物中から溶媒を除去することで固形状態とした組成物であってもよい。
さらに、有機溶媒が溶質の少なくとも1種に対する良溶媒(GS)と貧溶媒(PS)とを含み、良溶媒(GS)の沸点(BPGS)が貧溶媒(PS)の沸点(BPPS)よりも低い、構成が特に好ましい。
高沸点の貧溶媒を加えることで成膜時に低沸点の良溶媒が先に揮発し、組成物中の含有物の濃度と貧溶媒の濃度が増加し速やかな成膜が促される。これにより、欠陥が少なく、表面粗さが小さい、平滑性の高い塗膜が得られる。
溶解度の差(SGS-SPS)は、1%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、5%以上であることがさらに好ましい。沸点の差(BPPS-BPGS)は、10℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。
有機溶媒は、成膜後に、真空、減圧、加熱などの乾燥工程により塗膜より取り除かれる。加熱を行う場合、塗布成膜性改善の観点からは、溶質の少なくとも1種のガラス転移温度(Tg)+30℃以下で行うことが好ましい。また、残留溶媒の削減の観点からは、溶質の少なくとも1種のガラス転移点(Tg)-30℃以上で加熱することが好ましい。加熱温度が有機溶媒の沸点より低くても膜が薄いために、有機溶媒は十分に取り除かれる。また、異なる温度で複数回乾燥を行ってもよく、複数の乾燥方法を併用してもよい。
(2)有機溶媒の具体例
有機層形成用組成物に用いられる有機溶媒としては、アルキルベンゼン系溶媒、フェニルエーテル系溶媒、アルキルエーテル系溶媒、環状ケトン系溶媒、脂肪族ケトン系溶媒、単環性ケトン系溶媒、ジエステル骨格を有する溶媒および含フッ素系溶媒などが挙げられ、具体例として、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサン-2-オール、ヘプタン-2-オール、オクタン-2-オール、デカン-2-オール、ドデカン-2-オール、シクロヘキサノール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール、δ-テルピネオール、テルピネオール(混合物)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、p-キシレン、m-キシレン、o-キシレン、2,6-ルチジン、2-フルオロ-m-キシレン、3-フルオロ-o-キシレン、2-クロロベンゾ三フッ化物、クメン、トルエン、2-クロロ-6-フルオロトルエン、2-フルオロアニソール、アニソール、2,3-ジメチルピラジン、ブロモベンゼン、4-フルオロアニソール、3-フルオロアニソール、3-トリフルオロメチルアニソール、メシチレン、1,2,4-トリメチルベンゼン、t-ブチルベンゼン、2-メチルアニソール、フェネトール、ベンゾジオキソール、4-メチルアニソール、s-ブチルベンゼン、3-メチルアニソール、4-フルオロ-3-メチルアニソール、シメン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、2-フルオロベンゾニトリル、4-フルオロベラトロール、2,6-ジメチルアニソール、n-ブチルベンゼン、3-フルオロベンゾニトリル、デカリン(デカヒドロナフタレン)、ネオペンチルベンゼン、2,5-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール、ベンゾニトリル、3,5-ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル、1-フルオロ-3,5-ジメトキシベンゼン、安息香酸メチル、イソペンチルベンゼン、3,4-ジメチルアニソール、o-トルニトリル、n-アミルベンゼン、ベラトロール、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、安息香酸エチル、n-ヘキシルベンゼン、安息香酸プロピル、シクロヘキシルベンゼン、1-メチルナフタレン、安息香酸ブチル、2-メチルビフェニル、3-フェノキシトルエン、2,2’-ビトリル、ドデシルベンゼン、ジペンチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、トリメトキシベンゼン、トリメトキシトルエン、2,3-ジヒドロベンゾフラン、1-メチル-4-(プロポキシメチル)ベンゼン、1-メチル-4-(ブチルオキシメチル)ベンゼン、1-メチル-4-(ペンチルオキシメチル)ベンゼン、1-メチル-4-(ヘキシルオキシメチル)ベンゼン、1-メチル-4-(ヘプチルオキシメチル)ベンゼンベンジルブチルエーテル、ベンジルペンチルエーテル、ベンジルヘキシルエーテル、ベンジルヘプチルエーテル、ベンジルオクチルエーテルなどが挙げられるが、それだけに限定されない。また、溶媒は単一で用いてもよく、混合してもよい。
<任意成分>
有機層形成用組成物は、その性質を損なわない範囲で、任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、バインダーおよび界面活性剤等が挙げられる。
(1)バインダー
有機層形成用組成物は、バインダーを含有していてもよい。バインダーは、成膜時には膜を形成するとともに、得られた膜を基板と接合する。また、該有機層形成用組成物中で他の成分を溶解および分散および結着させる役割を果たす。
有機層形成用組成物に用いられるバインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、アクリロニトリル-エチレン-スチレン共重合体(AES)樹脂、アイオノマー、塩素化ポリエーテル、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、テフロン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、および、上記樹脂およびポリマーの共重合体、が挙げられるが、それだけに限定されない。
有機層形成用組成物に用いられるバインダーは、1種のみであってもよく複数種を混合して用いてもよい。
(2)界面活性剤
有機層形成用組成物は、例えば、有機層形成用組成物の膜面均一性、膜表面の親溶媒性および撥液性の制御のために界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、親水性基の構造からイオン性および非イオン性に分類され、さらに、疎水性基の構造からアルキル系およびシリコン系およびフッ素系に分類される。また、分子の構造から、分子量が比較的小さく単純な構造を有する単分子系および分子量が大きく側鎖や枝分かれを有する高分子系に分類される。また、組成から、単一系、二種以上の界面活性剤および基材を混合した混合系に分類される。該有機層形成用組成物に用いることのできる界面活性剤としては、全ての種類の界面活性剤を用いることができる。
界面活性剤としては、例えば、ポリフローNo.45、ポリフローKL-245、ポリフローNo.75、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95(商品名、共栄社化学工業(株)製)、ディスパーベイク(Disperbyk)161、ディスパーベイク162、ディスパーベイク163、ディスパーベイク164、ディスパーベイク166、ディスパーベイク170、ディスパーベイク180、ディスパーベイク181、ディスパーベイク182、BYK300、BYK306、BYK310、BYK320、BYK330、BYK342、BYK344、BYK346(商品名、ビックケミー・ジャパン(株)製)、KP-341、KP-358、KP-368、KF-96-50CS、KF-50-100CS(商品名、信越化学工業(株)製)、サーフロンSC-101、サーフロンKH-40(商品名、セイミケミカル(株)製)、フタージェント222F、フタージェント251、FTX-218(商品名、(株)ネオス製)、EFTOP EF-351、EFTOP EF-352、EFTOP EF-601、EFTOP EF-801、EFTOP EF-802(商品名、三菱マテリアル(株)製)、メガファックF-470、メガファックF-471、メガファックF-475、メガファックR-08、メガファックF-477、メガファックF-479、メガファックF-553、メガファックF-554(商品名、DIC(株)製)、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオルアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩およびアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩を挙げることができる。
また、界面活性剤は1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<有機層形成用組成物の組成および物性>
有機層形成用組成物における各成分の含有量は、有機層形成用組成物中の各成分の良好な溶解性、保存安定性および成膜性、ならびに、該有機層形成用組成物から得られる塗膜の良質な膜質、また、インクジェット法を用いた場合の良好な吐出性、該組成物を用いて作製された有機層を有する有機EL素子の、良好な電気特性、発光特性、効率、寿命の観点を考慮して決定される。例えば、発光層形成用組成物の場合には、第1成分が発光層形成用組成物の全重量に対して、0.0001重量%~2.0重量%、第2成分が発光層形成用組成物の全重量に対して、0.0999重量%~8.0重量%、第3成分が発光層形成用組成物の全重量に対して、90.0重量%~99.9重量%が好ましい。
より好ましくは、第1成分が発光層形成用組成物の全重量に対して、0.005重量%~1.0重量%、第2成分が発光層形成用組成物の全重量に対して、0.095重量%~4.0重量%、第3成分が発光層形成用組成物の全重量に対して、95.0重量%~99.9重量%である。さらに好ましくは、第1成分が発光層形成用組成物の全重量に対して、0.05重量%~0.5重量%、第2成分が発光層形成用組成物の全重量に対して、0.25重量%~2.5重量%、第3成分が発光層形成用組成物の全重量に対して、97.0重量%~99.7重量%である。
有機層形成用組成物は、上述した成分を、公知の方法で攪拌、混合、加熱、冷却、溶解、分散等を適宜選択して行うことによって製造できる。また、調製後に、ろ過、脱ガス(デガスとも言う)、イオン交換処理および不活性ガス置換・封入処理等を適宜選択して行ってもよい。
有機層形成用組成物の粘度としては、高粘度である方が、良好な成膜性とインクジェット法を用いた場合の良好な吐出性が得られる。一方、低粘度である方が薄い膜を作りやすい。このことから、該有機層形成用組成物の粘度は、25℃における粘度が0.3~3mPa・sであることが好ましく、1~3mPa・sであることがより好ましい。本発明において、粘度は円錐平板型回転粘度計(コーンプレートタイプ)を用いて測定した値である。
有機層形成用組成物の表面張力としては、低い方が良好な成膜性および欠陥のない塗膜が得られる。一方、高い方が良好なインクジェット吐出性を得られる。このことから、該有機層形成用組成物の表面張力は、25℃における表面張力が20~40mN/mであることが好ましく、20~30mN/mであることがより好ましい。本発明において、表面張力は懸滴法を用いて測定した値である。
<有機電界発光素子の応用例>
また、本発明は、有機EL素子を備えた表示装置または有機EL素子を備えた照明装置などにも応用することができる。
有機EL素子を備えた表示装置または照明装置は、本実施形態にかかる有機EL素子と公知の駆動装置とを接続するなど公知の方法によって製造することができ、直流駆動、パルス駆動、交流駆動など公知の駆動方法を適宜用いて駆動することができる。
表示装置としては、例えば、カラーフラットパネルディスプレイなどのパネルディスプレイ、フレキシブルカラー有機電界発光(EL)ディスプレイなどのフレキシブルディスプレイなどが挙げられる(例えば、特開平10-335066号公報、特開2003-321546号公報、特開2004-281086号公報など参照)。また、ディスプレイの表示方式としては、例えば、マトリクスおよびセグメント方式などが挙げられる。なお、マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
マトリクスでは、表示のための画素が格子状やモザイク状など二次元的に配置されており、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状やサイズは用途によって決まる。例えば、パソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられ、また、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法としては、線順次駆動方法やアクティブマトリックスのどちらでもよい。線順次駆動の方が構造が簡単であるという利点があるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリックスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
セグメント方式(タイプ)では、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、決められた領域を発光させることになる。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示および自動車のパネル表示などが挙げられる。
照明装置としては、例えば、室内照明などの照明装置、液晶表示装置のバックライトなどが挙げられる(例えば、特開2003-257621号公報、特開2003-277741号公報、特開2004-119211号公報など参照)。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ装置、自動車パネル、表示板および標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が課題となっているパソコン用途のバックライトとしては、従来方式が蛍光灯や導光板からなっているため薄型化が困難であることを考えると、本実施形態に係る発光素子を用いたバックライトは薄型で軽量が特徴になる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明していくが、本発明はこれらに限定されない。まず、多環芳香族化合物の合成例について、以下に説明する。
合成例(1):化合物(1-1)の合成
窒素雰囲気下、中間体(X-1)(4.0g)、中間体(X-2)(4.4g)、リン酸カリウム(12.2g)、酢酸パラジウム(0.13g)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(SPhos、0.47g)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB、1.4g)、トルエン(120ml)、および水(25ml)を加え、加熱還流下で7時間攪拌した。反応終了後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。その後、有機層を濃縮して得た粗生成物をシリカゲルショートカラム(溶離液:クロロベンゼン)で精製し、さらにトルエンで洗浄することで、化合物(1-1)を得た(5.1g)。
Figure 2023085205000081
NMR測定により得られた化合物の構造を確認した。
H-NMR(CDCl):δ=8.86(dd,4H)、8.74(d,2H)、78.66(s,2H)、7.79-7.75(m,2H)、7.66-7.60(m,8H)、7.46-7.42(m,2H).
合成例(2):化合物(1-42)の合成
Figure 2023085205000082
窒素雰囲気下、中間体(X-3)(25.0g)、中間体(X-4)(10.2g)、炭酸カリウム(25.8g)、TBAB(6.3g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(5.4g)、トルエン(250ml)、および水(50ml)をフラスコに入れ、80℃で5時間加熱した。反応終了後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。その後、有機層を濃縮して得た粗生成物をシリカゲルショートカラム(溶離液:トルエン)で精製することで、中間体(X-5)を得た(32.1g)。
Figure 2023085205000083
窒素雰囲気下、中間体(X-5)(9.7g)、中間体(X-6)(8.6g)、酢酸カリウム(9.9g)、炭酸カリウム(5.8g)、ジクロロビス[(ジ-t-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィノ]パラジウム(II)(Pd-132、0.3g)、およびトルエン(300ml)をフラスコに入れ、110℃で2時間加熱した。反応終了後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。その後、有機層を濃縮して得た粗生成物をシリカゲルショートカラム(溶離液:トルエン)で精製することで、中間体(X-7)を得た(8.7g)。
Figure 2023085205000084
窒素雰囲気下、中間体(X-7)(4.0g)、中間体(X-2)(2.2g)、リン酸カリウム(6.2g)、酢酸パラジウム(0.07g)、SPhos(0.24g)、TBAB(0.7g)、トルエン(160ml)、および水(25ml)を加え、加熱還流下で7時間攪拌した。反応終了後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。その後、有機層を濃縮して得た粗生成物をシリカゲルショートカラム(溶離液:クロロベンゼン)で精製し、さらにトルエンで洗浄することで、化合物(1-42)を得た(2.9g)。
Figure 2023085205000085
NMR測定により得られた化合物の構造を確認した。
H-NMR(CDCl):δ=9.15-9.14(m,1H)、8.86(d,1H)、8.83-8.81(m,4H)、8.73(d,2H)、8.00(d,1H)、7.76-7.72(m,3H)、7.65-7.59(m,10H)、7.42(t,2H).
合成例(3):化合物(1-54)の合成
窒素雰囲気下、中間体(X-7)(4.0g)、中間体(X-8)(2.4g)、リン酸カリウム(6.0g)、酢酸パラジウム(0.06g)、SPhos(0.24g)、TBAB(0.7g)、トルエン(150ml)、および水(20ml)を加え、加熱還流下で7時間攪拌した。反応終了後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。その後、有機層を濃縮して得た粗生成物をシリカゲルショートカラム(溶離液:クロロベンゼン)で精製し、さらにトルエンで洗浄することで、化合物(1-54)を得た(3.2g)。
Figure 2023085205000086
LC-MSによりm/z(M+H)=578に目的物である化合物(1-54)を確認した。
合成例(4):化合物(1-35)の合成
窒素雰囲気下、中間体(X-9)(5.0g)、中間体(X-2)(4.3g)、リン酸カリウム(12.0g)、酢酸パラジウム(0.13g)、SPhos(0.47g)、TBAB(1.3g)、トルエン(160ml)、および水(25ml)を加え、加熱還流下で7時間攪拌した。反応終了後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。その後、有機層を濃縮して得た粗生成物をシリカゲルショートカラム(溶離液:クロロベンゼン)で精製し、さらにトルエンで洗浄することで、化合物(1-35)を得た(4.1g)。
Figure 2023085205000087
LC-MSによりm/z(M+H)=578に目的物である化合物(1-35)を確認した。
合成例(5):化合物(1-16)の合成
窒素雰囲気下、中間体(X-1)(4.0g)、中間体(X-8)(4.4g)、リン酸カリウム(12.2g)、酢酸パラジウム(0.13g)、SPhos(0.47g)、TBAB(1.4g)、トルエン(120ml)、および水(25ml)を加え、加熱還流下で7時間攪拌した。反応終了後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。その後、有機層を濃縮して得た粗生成物をシリカゲルショートカラム(溶離液:クロロベンゼン)で精製し、さらにトルエンで洗浄することで、化合物(1-16)を得た(3.9g)。
Figure 2023085205000088
LC-MSによりm/z(M+H)=502に目的物である化合物(1-16)を確認した。
合成例(6):化合物(1-39)の合成
窒素雰囲気下、中間体(X-10)(3.5g)、中間体(X-2)(2.5g)、リン酸カリウム(6.9g)、酢酸パラジウム(0.07g)、SPhos(0.27g)、TBAB(0.79g)、トルエン(130ml)、および水(20ml)を加え、加熱還流下で7時間攪拌した。反応終了後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。その後、有機層を濃縮して得た粗生成物をシリカゲルショートカラム(溶離液:クロロベンゼン)で精製し、さらにトルエンで洗浄することで、化合物(1-39)を得た(3.9g)。
Figure 2023085205000089
LC-MSによりm/z(M+H)=654に目的物である化合物(1-39)を確認した。
合成例(7):化合物(1-50)の合成
Figure 2023085205000090
窒素雰囲気下、中間体(X-11)(4.5g)、中間体(X-12)(6.7g)、炭酸カリウム(4.7g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.78g)、TBAB(1.64g)、トルエン(200ml)、および水(30ml)を加え、加熱還流下で3時間攪拌した。反応終了後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。その後、有機層を濃縮して得た粗生成物をシリカゲルショートカラム(溶離液:トルエン)で精製し、さらにトルエンで洗浄することで、中間体(X-13)を得た(6.0g)。
Figure 2023085205000091
窒素雰囲気下、中間体(X-1)(3.5g)、中間体(X-13)(5.8g)、リン酸カリウム(10.7g)、酢酸パラジウム(0.11g)、SPhos(0.41g)、TBAB(1.2g)、トルエン(100ml)、および水(15ml)を加え、加熱還流下で7時間攪拌した。反応終了後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。その後、有機層を濃縮して得た粗生成物をシリカゲルショートカラム(溶離液:クロロベンゼン)で精製し、さらにトルエンで洗浄することで、化合物(1-50)を得た(4.5g)。
Figure 2023085205000092
LC-MSによりm/z(M+H)=654に目的物である化合物(1-50)を確認した。
合成例(8):化合物(1-77)の合成
窒素雰囲気下、中間体(X-14)(2.3g)、中間体(X-15)(2.0g)、リン酸カリウム(5.3g)、酢酸パラジウム(0.06g)、SPhos(0.21g)、TBAB(0.61g)、トルエン(100ml)、および水(10ml)を加え、加熱還流下で5時間攪拌した。反応終了後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。その後、有機層を濃縮して得た粗生成物をシリカゲルショートカラム(溶離液:クロロベンゼン)で精製し、さらにトルエンで洗浄することで、化合物(1-77)を得た(1.9g)。
Figure 2023085205000093
LC-MSによりm/z(M+H)=602に目的物である化合物(1-77)を確認した。
合成例(9):化合物(1-100)の合成
合成例(8)と同様の手順で化合物(1-100)を合成した。
Figure 2023085205000094
EI-MSによりM/Z=578に目的物である化合物(1-100)を確認した。
合成例(10):化合物(1-101)の合成
合成例(8)と同様の手順で化合物(1-101)を合成した。
Figure 2023085205000095
EI-MSによりM/Z=906に目的物である化合物(1-101)を確認した。
合成例(11):化合物(1-102)の合成
合成例(8)と同様の手順で化合物(1-102)を合成した。
Figure 2023085205000096
EI-MSによりM/Z=955に目的物である化合物(1-102)を確認した。
合成例(12):化合物(1-103)の合成
合成例(8)と同様の手順で化合物(1-103)を合成した。
Figure 2023085205000097
EI-MSによりM/Z=857に目的物である化合物(1-103)を確認した。
合成例(13):化合物(1-110)の合成
合成例(8)と同様の手順で化合物(1-110)を合成した。
Figure 2023085205000098
EI-MSによりM/Z=703に目的物である化合物(1-110)を確認した。
合成例(14):化合物(1-114)の合成
合成例(8)と同様の手順で化合物(1-114)を合成した。
Figure 2023085205000099
EI-MSによりM/Z=755に目的物である化合物(1-114)を確認した。
合成例(15):化合物(1-115)の合成
合成例(8)と同様の手順で化合物(1-115)を合成した。
Figure 2023085205000100
EI-MSによりM/Z=743に目的物である化合物(1-115)を確認した。
合成例(16):化合物(1-116)の合成
合成例(8)と同様の手順で化合物(1-116)を合成した。
Figure 2023085205000101
EI-MSによりM/Z=805に目的物である化合物(1-116)を確認した。
合成例(17):化合物(1-127)の合成
合成例(8)と同様の手順で化合物(1-127)を合成した。
Figure 2023085205000102
EI-MSによりM/Z=578に目的物である化合物(1-127)を確認した。
合成例(18):化合物(1-133)の合成
合成例(8)と同様の手順で化合物(1-133)を合成した。
Figure 2023085205000103
EI-MSによりM/Z=578に目的物である化合物(1-133)を確認した。
合成例(19):化合物(1-136)の合成
合成例(8)と同様の手順で化合物(1-136)を合成した。
Figure 2023085205000104
EI-MSによりM/Z=578に目的物である化合物(1-136)を確認した。
合成例(20):化合物(1-138)の合成
合成例(8)と同様の手順で化合物(1-138)を合成した。
Figure 2023085205000105
EI-MSによりM/Z=654に目的物である化合物(1-138)を確認した。
合成例(21):化合物(1-153)の合成
合成例(8)と同様の手順で化合物(1-153)を合成した。
Figure 2023085205000106
EI-MSによりM/Z=654に目的物である化合物(1-153)を確認した。
合成例(22):化合物(1-163)の合成
合成例(8)と同様の手順で化合物(1-163)を合成した。
Figure 2023085205000107
EI-MSによりM/Z=654に目的物である化合物(1-163)を確認した。
合成例(23):化合物(1-173)の合成
合成例(8)と同様の手順で化合物(1-173)を合成した。
Figure 2023085205000108
EI-MSによりM/Z=654に目的物である化合物(1-173)を確認した。
原料の化合物を適宜変更することにより、上述した合成例に準じた方法で、本発明の他の化合物を合成することができる。
次に、本発明の化合物を用いた有機EL素子の作製と評価について記載する。ただし、本発明の化合物の適用は以下に示した例に限定されず、各層の膜厚や構成材料は本発明の化合物の基礎物性によって適宜変更することができる。
<蒸着型有機EL特性の評価>
実施例1~16、実施例17~23、および比較例1~11に係る有機EL素子を作製し、1000cd/m発光時の特性である駆動電圧(V)および外部量子効率(%)と測定し、次に10mA/cmの電流密度で定電流駆動した際に初期輝度の90%以上の輝度を保持する時間を測定した。
発光素子の量子効率には、内部量子効率と外部量子効率とがあるが、内部量子効率は、発光素子の発光層に電子(または正孔)として注入される外部エネルギーが純粋に光子に変換される割合を示している。一方、外部量子効率は、この光子が発光素子の外部にまで放出された量に基づいて算出され、発光層において発生した光子は、その一部が発光素子の内部で吸収されたりまたは反射され続けたりして、発光素子の外部に放出されないため、外部量子効率は内部量子効率よりも低くなる。
外部量子効率の測定方法は次の通りである。アドバンテスト社製電圧/電流発生器R6144を用いて、素子の輝度が1000cd/mになる電圧を印加して素子を発光させる。TOPCON社製分光放射輝度計SR-3ARを用いて、発光面に対して垂直方向から可視光領域の分光放射輝度を測定した。発光面が完全拡散面であると仮定して、測定した各波長成分の分光放射輝度の値を波長エネルギーで割ってπを掛けた数値が各波長におけるフォトン数である。次いで、観測した全波長領域でフォトン数を積算し、素子から放出された全フォトン数とした。印加電流値を素電荷で割った数値を素子へ注入したキャリア数として、素子から放出された全フォトン数を素子へ注入したキャリア数で割った数値が外部量子効率である。
作製した実施例1~16、実施例17~23、および比較例1~11に係る有機EL素子における各層の材料構成、およびEL特性データを下記表に示す。なお、電子輸送層2は表中に記載した化合物とLiqとを重量比1/1となるように共蒸着し、形成している。
Figure 2023085205000109
Figure 2023085205000110
Figure 2023085205000111
Figure 2023085205000112
Figure 2023085205000113
Figure 2023085205000114
上記各表中の、「HI」、「IL」、「HT-1」、「HT-2」、「BH-1」、「BD-1」、「ET-1」、および「Liq」の化学構造を以下に示す。
Figure 2023085205000115
上記各表中の比較化合物(1)~(11)の化学構造を以下に示す。
Figure 2023085205000116
<実施例1>
スパッタリングにより180nmの厚さに製膜したITOを150nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス製)を透明支持基板とした。この透明支持基板を市販の蒸着装置(長州産業(株)製)の基板ホルダーに固定し、HI、IL、HT-1、HT-2、BH-1、BD-1、ET-1、および化合物(1-1)をそれぞれ入れたタンタル製蒸着用ボート、Liq、Mg、およびAgをそれぞれ入れた窒化アルミニウム製蒸着用ボートを装着した。
透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成した。真空槽を5×10-4Paまで減圧し、まず、HIを加熱して膜厚40nmになるように蒸着し、次に、ILを加熱して膜厚5nmになるように蒸着し、次に、HT-1を加熱して膜厚15nmになるように蒸着し、次に、HT-2を加熱して膜厚10nmになるように蒸着して、4層からなる正孔層を形成した。次に、BH-1とBD-1を同時に加熱して膜厚25nmになるように蒸着して発光層を形成した。BH-1とBD-1の重量比がおよそ98対2になるように蒸着速度を調節した。そして、ET-1を加熱して膜厚5nmになるように蒸着して電子輸送層1を形成した。さらに化合物(1-1)とLiqを同時に加熱して膜厚25nmになるように蒸着して電子輸送層2を形成した。化合物(1-1)とLiqの重量比がおよそ50対50になるように蒸着速度を調節した。各層の蒸着速度は0.01~1nm/秒であった。その後、Liqを加熱して膜厚1nmになるように0.01~0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、マグネシウムと銀を同時に加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を得た。このとき、マグネシウムと銀の原子数比が10対1となるように0.1nm~10nm/秒の間で蒸着速度を調節した。
ITO電極を陽極、マグネシウム/銀電極を陰極として直流電圧を印加することでEL特性を測定した。
<実施例2~16、実施例17~23、および比較例1~11>
電子輸送層2の材料を上記各表中に記載の各材料に替えた以外は実施例1に準じた方法で実施例2~16、実施例17~23、および比較例1~11の有機EL素子を得た。また、ITO電極を陽極、マグネシウム/銀電極を陰極として直流電圧を印加することで各EL特性を測定した。
以上、本発明に係る化合物の一部について、有機EL素子用材料としての評価を行い、優れた材料であること示したが、評価を行っていない他の化合物も同じ基本骨格を有し、全体としても類似の構造を有する化合物であり、当業者においては同様に優れた有機EL素子用材料であることを理解できる。
本発明の多環芳香族化合物は、有機電界発光素子の電子輸送層・電子注入層を形成するための材料として有用である。本発明の多環芳香族化合物を電子層用材料として用いることで、長寿命、低駆動電圧および高効率発光、特に寿命および高効率発光の有機電界発光素子が得られる。
100 有機電界発光素子
101 基板
102 陽極
103 正孔注入層
104 正孔輸送層
105 発光層
106 電子輸送層
107 電子注入層
108 陰極

Claims (11)

  1. 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置される発光層と、前記陰極と前記発光層との間に配置される電子輸送層および電子注入層の少なくとも1つとを有する有機電界発光素子であって、前記電子輸送層および電子注入層の少なくとも1つが下記一般式(1)で表される多環芳香族化合物を含む、有機電界発光素子。
    Figure 2023085205000117
    上記式(1)中、
    A環、B環、およびC環は、アリール環であり、この環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
    は、>B-、>P-、>P(=O)-、または>P(=S)-であり、
    21~R23は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
    Lは、それぞれ独立して、単結合、アルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、アリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
    mが1の場合、nは1または2であり、
    mが2の場合、nは1であり、
    Lは、mおよびnの数に応じて、A環、B環、およびC環の1つまたは2つの環と結合すると共に、R21~R23における1つまたは2つの位置で結合し、そして、
    式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、重水素、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい。
  2. 上記式(1)中、
    A環、B環、およびC環は、アリール環であり、この環における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオ、または置換シリルで置換されていてもよく、これらの基における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
    は、>B-、>P-、>P(=O)-、または>P(=S)-であり、
    21~R23は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
    Lは、それぞれ独立して、単結合、アルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、アリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
    mが1の場合、nは1または2であり、
    mが2の場合、nは1であり、
    Lは、mおよびnの数に応じて、A環、B環、およびC環の1つまたは2つの環と結合すると共に、R21~R23における1つまたは2つの位置で結合し、そして、
    式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、重水素、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい、
    請求項1に記載する有機電界発光素子。
  3. 上記一般式(1)が下記一般式(2)で表される、請求項1に記載する有機電界発光素子。
    Figure 2023085205000118
    上記式(2)中、
    ~R11は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオ、トリアリールシリル、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、またはアルキルジシクロアルキルシリルであり、R~R11における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
    また、R~R、R~R、およびR~R11のうちの隣接する基同士が結合して、それぞれa環、b環、およびc環と共に、アリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオ、トリアリールシリル、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、またはアルキルジシクロアルキルシリルで置換されていてもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
    は、>B-、>P-、>P(=O)-、または>P(=S)-であり、
    21~R23は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
    Lは、それぞれ独立して、単結合、アルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、アリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
    mが1の場合、nは1または2であり、
    mが2の場合、nは1であり、
    Lは、mおよびnの数に応じて、R~R11における1つまたは2つの位置で結合すると共に、R21~R23における1つまたは2つの位置で結合し、そして、
    式(2)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、重水素、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい。
  4. 上記式(2)中、
    ~R11は、それぞれ独立して、水素、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、ジヘテロアリールアミノ(ただしヘテロアリールは炭素数2~15のヘテロアリール)、アリールヘテロアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール、ヘテロアリールは炭素数2~15のヘテロアリール)、ジアリールボリル(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、炭素数1~24のアルキル、炭素数3~24のシクロアルキル、炭素数1~24のアルケニル、炭素数1~24のアルコキシ、炭素数6~30のアリールオキシ、炭素数6~30のアリールチオ、トリアリールシリル(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、トリアルキルシリル(ただしアルキルは炭素数1~12のアルキル)、トリシクロアルキルシリル(ただしシクロアルキルは炭素数3~12のシクロアルキル)、ジアルキルシクロアルキルシリル(ただしアルキルは炭素数1~12のアルキル、シクロアルキルは炭素数3~12のシクロアルキル)、またはアルキルジシクロアルキルシリル(ただしアルキルは炭素数1~12のアルキル、シクロアルキルは炭素数3~12のシクロアルキル)であり、R~R11における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、炭素数6~12のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、炭素数1~6のアルキル、または炭素数3~14のシクロアルキルで置換されていてもよく、
    また、R~R、R~R、およびR~R11のうちの隣接する基同士が結合して、それぞれa環、b環、およびc環と共に、炭素数9~16のアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、ジヘテロアリールアミノ(ただしヘテロアリールは炭素数2~15のヘテロアリール)、アリールヘテロアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール、ヘテロアリールは炭素数2~15のヘテロアリール)、ジアリールボリル(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、炭素数1~24のアルキル、炭素数3~24のシクロアルキル、炭素数1~24のアルケニル、炭素数1~24のアルコキシ、炭素数6~30のアリールオキシ、炭素数6~30のアリールチオ、トリアリールシリル(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、トリアルキルシリル(ただしアルキルは炭素数1~12のアルキル)、トリシクロアルキルシリル(ただしシクロアルキルは炭素数3~12のシクロアルキル)、ジアルキルシクロアルキルシリル(ただしアルキルは炭素数1~12のアルキル、シクロアルキルは炭素数3~12のシクロアルキル)、またはアルキルジシクロアルキルシリル(ただしアルキルは炭素数1~12のアルキル、シクロアルキルは炭素数3~12のシクロアルキル)で置換されていてもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、炭素数6~12のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、炭素数1~6のアルキル、または炭素数3~14のシクロアルキルで置換されていてもよく、
    は、>B-、>P-、>P(=O)-、または>P(=S)-であり、
    21~R23は、それぞれ独立して、水素、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~24のアルキル、または炭素数3~24のシクロアルキルであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~24のアルキル、または炭素数3~24のシクロアルキルで置換されていてもよく、
    Lは、それぞれ独立して、単結合、炭素数1~24のアルキレン、炭素数6~30のアリーレン、または炭素数2~30のヘテロアリーレンであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、炭素数6~12のアリール、炭素数1~6のアルキル、または炭素数3~14のシクロアルキルで置換されていてもよく、
    mは1であり、nは1または2であり、
    Lは、nの数に応じて、R~R11における1つまたは2つの位置で結合すると共に、R21~R23における1つの位置で結合し、そして、
    式(2)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、重水素、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい、
    請求項3に記載する有機電界発光素子。
  5. 上記式(2)中、
    ~R11は、それぞれ独立して、水素、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、ジヘテロアリールアミノ(ただしヘテロアリールは炭素数2~15のヘテロアリール)、炭素数1~24のアルキル、炭素数3~24のシクロアルキル、炭素数1~24のアルコキシ、炭素数6~30のアリールオキシ、または炭素数6~30のアリールチオであり、R~R11における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、炭素数6~12のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、炭素数1~6のアルキル、または炭素数3~14のシクロアルキルで置換されていてもよく、
    また、R~R、R~R、およびR~R11のうちの隣接する基同士が結合して、それぞれa環、b環、およびc環と共に、炭素数9~16のアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、ジヘテロアリールアミノ(ただしヘテロアリールは炭素数2~15のヘテロアリール)、炭素数1~24のアルキル、炭素数3~24のシクロアルキル、炭素数1~24のアルコキシ、炭素数6~30のアリールオキシ、または炭素数6~30のアリールチオで置換されていてもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、炭素数6~12のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、炭素数1~6のアルキル、または炭素数3~14のシクロアルキルで置換されていてもよく、
    は、>B-、>P-、>P(=O)-、または>P(=S)-であり、
    21~R23は、それぞれ独立して、水素、炭素数6~20のアリール、炭素数2~20のヘテロアリール、炭素数1~12のアルキル、または炭素数3~12のシクロアルキルであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、炭素数6~20のアリール、炭素数2~20のヘテロアリール、炭素数1~12のアルキル、または炭素数3~12のシクロアルキルで置換されていてもよく、
    Lは、それぞれ独立して、単結合、炭素数1~6のアルキレン、炭素数6~16のアリーレン、または炭素数2~15のヘテロアリーレンであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、炭素数6~12のアリール、炭素数1~6のアルキル、または炭素数5~10のシクロアルキルで置換されていてもよく、
    mは1であり、nは1または2であり、
    Lは、nの数に応じて、R~R11における1つまたは2つの位置で結合すると共に、R21~R23における1つの位置で結合し、そして、
    式(2)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、重水素、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい、
    請求項3に記載する有機電界発光素子。
  6. 前記一般式(1)で表される多環芳香族化合物が下記いずれかの構造式で表される化合物である、請求項1に記載する有機電界発光素子。
    Figure 2023085205000119
    Figure 2023085205000120
  7. 請求項1~6のいずれかに記載する有機電界発光素子を備えた表示装置または照明装置。
  8. 一般式(1)で表される多環芳香族化合物。
    Figure 2023085205000121
    上記式(1)中、
    A環、B環、およびC環は、アリール環であり、この環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
    は、>B-、>P-、>P(=O)-、または>P(=S)-であり、
    21~R23は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
    Lは、それぞれ独立して、フェニレンまたはナフチレンであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、アリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
    mが1の場合、nは1または2であり、
    mが2の場合、nは1であり、
    Lは、mおよびnの数に応じて、A環、B環、およびC環の1つまたは2つの環と結合すると共に、R21~R23における1つまたは2つの位置で結合し、そして、
    式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、重水素、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい。
  9. 下記いずれかの構造式で表される化合物である、請求項8に記載する多環芳香族化合物。
    Figure 2023085205000122
    Figure 2023085205000123
  10. 一般式(1)で表される多環芳香族化合物。
    Figure 2023085205000124
    上記式(1)中、
    A環、B環、およびC環は、アリール環であり、この環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
    は、>B-、>P-、>P(=O)-、または>P(=S)-であり、
    21~R23は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルであって、これらの基における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
    Lは単結合であり、
    mが1の場合、nは1または2であり、
    mが2の場合、nは1であり、
    Lは、mおよびnの数に応じて、A環、B環、およびC環の1つまたは2つの環と結合すると共に、R21~R23における1つまたは2つの位置で結合し、
    式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、重水素、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよく、
    ただし、A環への置換基、B環への置換基、C環への置換基、R21、R22、およびR23における少なくとも1つは、シアノ、ヘテロアリール(トリアジニル基を除く)、シアノで置換されたアリール、およびヘテロアリール(トリアジニル基を除く)で置換されたアリールからなる群から選択される少なくとも1つである。
  11. 下記いずれかの構造式で表される化合物である、請求項10に記載する多環芳香族化合物。
    Figure 2023085205000125
JP2022167658A 2021-12-08 2022-10-19 トリアジニル基を有する多環芳香族化合物を用いた有機電界発光素子 Pending JP2023085205A (ja)

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