JP2023084758A - エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む樹脂組成物、その製造方法及びそれからなるペレット - Google Patents

エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む樹脂組成物、その製造方法及びそれからなるペレット Download PDF

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Abstract

Figure 2023084758000001
【課題】安定に溶融成形することができ、溶融成形後の成形品中の欠陥を抑制することができる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エチレン単位含有量20~60モル%、ケン化度99モル%以上のエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む樹脂組成物であって;前記樹脂組成物5質量部を1-プロパノール/水混合溶媒(1-プロパノール含有量60質量%)95質量部に溶解させた溶液の光線透過率T1が95%以上であり、かつ前記樹脂組成物5質量部を1-プロパノール/水混合溶媒(1-プロパノール含有量40質量%)95質量部に溶解させた溶液の光線透過率T2が95%以上である樹脂組成物。
【選択図】図1

Description

本発明は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む樹脂組成物及びその製造方法に関する。また、当該樹脂組成物からなるペレット及びその製造方法に関する。さらに、当該樹脂組成物からなる層を有する多層構造体に関する。
エチレン-ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと称すことがある)はガスバリア性、燃料バリア性、耐薬品性、耐汚染性、非帯電性、機械強度等に優れた熱可塑性樹脂である。そのような特徴を生かして、EVOHは、フィルム、シート、ボトル、カップ、チューブ、パイプなどの形態に成形され、包装容器をはじめ、様々な用途に用いられている。
EVOHは、通常以下のようにして製造される。まず、メタノールなどの溶液中でエチレンと酢酸ビニルを共重合することによって、エチレン-酢酸ビニル共重合体が合成される。次いで、得られたエチレン-酢酸ビニル共重合体を溶液中でケン化することによってEVOHの溶液が得られる。そして、得られたEVOH溶液から溶媒を除き、その後切断し乾燥することによって、EVOHのペレットが製造され、それが溶融成形に供される。このとき、溶融成形後の成形品中の欠陥を抑制し、安定に溶融成形するために、EVOHペレットの製造工程において各種の改良が提案されている。
特許文献1には、エチレンと酢酸ビニルとをメタノール溶液中で共重合させてエチレン-酢酸ビニル共重合体とし、当該共重合体をメタノール溶液中でケン化し、ケン化した前記共重合体を含むメタノール溶液に水を加えて混合溶液を調製し、当該混合溶液から不溶物を除去し、当該不溶物を除去した混合溶液からエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物を得ることを特徴とするエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物の製造方法が記載されている。その実施例では、メタノール/水の重量比が49/51~70/30の混合溶液を目開き60μmのフィルターで濾過することにより、不溶物であるポリビニルアルコールを除去したことが記載されている。そして、濾過後の溶液をストランド状に凝固させ、切断し乾燥して得られたEVOHペレットを用いて240℃で溶融成形して得られたフィルムのフィッシュアイが少なかったことも記載されている。しかしながら、このような濾過方法では、溶融成形後の成形品中の欠陥の抑制が不十分となる場合があった。
特許文献2には、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物の溶液を、アルミニウム化合物、ガラス化合物、熱硬化性樹脂のいずれか1つの材質からなるノズルから凝固液中にストランド状に押し出し、次いで当該ストランドを切断することを特徴とするエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレットの製造方法が記載されている。ノズルの材質を選択することにより、従来使用されているステンレス製ノズルを用いた時と比べて、ストランドが切れにくくなり、均一な寸法のEVOHペレットが得られ、しかも押出機の仕込み変動や負荷変動が抑制できるとされている。その実施例では、ガラス、アルミニウム-シリコン系合金及びケイ素樹脂からなるノズルが用いられているが、これらの素材からなるノズルは、ステンレス製ノズルに比べて強度や耐久性が不十分であり、工業的に使用するのは困難であった。
特開2002-12618号公報 特開平11-77672号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、溶融成形後の成形品中の欠陥を抑制することのできるEVOH樹脂組成物及びその製造方法を提供することを目的とするものである。また、そのようなEVOH樹脂組成物からなる、安定に溶融成形できるペレット及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
上記課題は、エチレン単位含有量20~60モル%、ケン化度99モル%以上のエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む樹脂組成物であって;前記樹脂組成物5質量部を1-プロパノール/水混合溶媒(1-プロパノール含有量60質量%)95質量部に溶解させた溶液の光線透過率T1が95%以上であり、かつ前記樹脂組成物5質量部を1-プロパノール/水合溶媒(1-プロパノール含有量40質量%)95質量部に溶解させた溶液の光線透過率T2が95%以上である樹脂組成物を提供することによって解決される。
このとき、前記樹脂組成物が、カルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有することが好ましい。
前記樹脂組成物からなるペレットが好適な実施態様である。このとき、当該ペレットの形状が円柱又は楕円体であって、当該ペレットの粒度分布の半値幅が0.7mm以下であることが好ましい。また、前記樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有する多層構造体も好適な実施態様である。
上記課題は、エチレン-ビニルエステル共重合体のメタノール溶液にアルカリ触媒を添加し該エチレン-ビニルエステル共重合体をケン化して、エチレン-ビニルアルコール共重合体のメタノール溶液を得る工程、ケン化後の溶液に水を添加してから1回目の濾過を行う工程、1回目の濾過後の溶液にメタノールを添加してから2回目の濾過を行う工程、及び2回目の濾過後の溶液から溶媒を除去する工程を有する、前記樹脂組成物の製造方法を提供することによっても解決される。
上記課題は、エチレン-ビニルエステル共重合体のメタノール溶液にアルカリ触媒を添加し該エチレン-ビニルエステル共重合体をケン化して、エチレン-ビニルアルコール共重合体のメタノール溶液を得る工程、ケン化後の溶液に水を添加してから1回目の濾過を行う工程、1回目の濾過後の溶液にさらに水を添加してから2回目の濾過を行う工程、及び2回目の濾過後の溶液から溶媒を除去する工程を有する、前記樹脂組成物の製造方法を提供することによっても解決される。
上記課題は、エチレン-ビニルエステル共重合体のメタノール溶液にアルカリ触媒を添加し該エチレン-ビニルエステル共重合体をケン化して、エチレン-ビニルアルコール共重合体のメタノール溶液を得る工程、ケン化後の溶液に水を添加してから1回目の濾過を行う工程、1回目の濾過後の溶液にメタノールを添加してから2回目の濾過を行う工程、2回目の濾過後の溶液から溶媒を除去する工程、切断工程、及び乾燥工程を有する、前記ペレットの製造方法を提供することによっても解決される。
また上記課題は、エチレン-ビニルエステル共重合体のメタノール溶液にアルカリ触媒を添加し該エチレン-ビニルエステル共重合体をケン化して、エチレン-ビニルアルコール共重合体のメタノール溶液を得る工程、ケン化後の溶液に水を添加してから1回目の濾過を行う工程、1回目の濾過後の溶液にさらに水を添加してから2回目の濾過を行う工程、2回目の濾過後の溶液から溶媒を除去する工程、切断工程、及び乾燥工程を有する、前記ペレットの製造方法を提供することによっても解決される。
これらのペレットの製造方法において、前記乾燥工程の後にふるい分け工程を有し、当該ふるい分け工程で大き過ぎるペレットと小さ過ぎるペレットを除去することが好ましい。
本発明のEVOH樹脂組成物によれば、溶融成形後の成形品中の欠陥を抑制することができる。また、本発明のペレットは、安定に溶融成形することができ、それによって欠陥の抑制された成形品を得ることができる。
実施例及び比較例で用いた二軸押出機の概略図である。
本発明の樹脂組成物は、エチレン単位含有量20~60モル%、ケン化度99モル%以上のエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む樹脂組成物であって;前記樹脂組成物5質量部を1-プロパノール/水混合溶媒(1-プロパノール含有量60質量%)95質量部に溶解させた溶液の光線透過率T1が95%以上であり、かつ前記樹脂組成物5質量部を1-プロパノール/水混合溶媒(1-プロパノール含有量40質量%)95質量部に溶解させた溶液の光線透過率T2が95%以上である樹脂組成物である。
1-プロパノール含有量が60質量%の1-プロパノール/水混合溶媒に溶解した時の光線透過率T1と、1-プロパノール含有量が40質量%の1-プロパノール/水混合溶媒に溶解した時の光線透過率T2のいずれもが、95%以上であることが大きな特徴である。このことは、本発明のEVOH樹脂組成物が、1-プロパノール含有量が60質量%の1-プロパノール/水混合溶媒に溶解した時も、1-プロパノール含有量が40質量%の1-プロパノール/水混合溶媒に溶解した時も、不溶解物が少ないものであることを意味する。
EVOHを溶解させることのできる溶媒は少なく、1-プロパノール/水混合溶媒は数少ない良溶媒の一つである。EVOHは、水にも1-プロパノールにも溶解しないが、水と1-プロパノールを適切な比率で混合した溶媒であれば溶解する。このとき、エチレン単位含有量が多いEVOHの場合には、1-プロパノールの含有量の多い混合溶媒に溶けやすく、ビニルアルコール単位含有量が多いEVOHの場合には、水の含有量の多い混合溶媒に溶けやすい。
EVOHはエチレン単位とビニルアルコール単位を含むランダム共重合体であるが、全ての分子鎖に均等にエチレン単位とビニルアルコール単位が含まれている訳ではない。エチレン単位の含有量が多い分子鎖も含まれているし、ビニルアルコール単位の含有量が多い分子鎖も含まれている。光線透過率T1及びT2のいずれもが95%以上であることによって、エチレン単位の含有量が多過ぎる分子鎖と、ビニルアルコール単位の含有量が多過ぎる分子鎖の両方が除かれたEVOH樹脂組成物とすることができる。
従来、EVOHの製造工程において、EVOHをメタノール/水混合溶媒に溶解させた溶液を濾過することによって不溶物を除去する方法が提案されていたが(特許文献1参照)、エチレン単位の含有量が多過ぎる分子鎖と、ビニルアルコール単位の含有量が多過ぎる分子鎖の両方を十分に除去することはできなかった。今回、組成の異なる混合溶媒を用いて複数回の濾過を行うことにより、不純物を効果的に除去することができ、溶融成形後の成形品中の欠陥を抑制することができることを見出した。特に、高温で溶融成形する場合において、ブツ、ストリーク、流れ斑を抑制し、長時間運転時のダイ内付着量を抑制することができることがわかった。
本発明の樹脂組成物5質量部を1-プロパノール/水混合溶媒(1-プロパノール含有量60質量%)95質量部に溶解させた溶液の光線透過率T1は95%以上である。光線透過率T1が95%未満の場合、ビニルアルコール単位の含有量が多過ぎる分子鎖を含む不純物を十分に除去することができておらず、溶融成形後の成形品中の欠陥を抑制することができない。光線透過率T1は、好適には97%以上であり、より好適には98%以上である。光線透過率T1は、波長350nmから600nmの25℃における光線透過率であり、EVOHが溶解していない溶剤のみを入れたセルを測定した時の光線透過率を100%としたときの相対的な光線透過率(%)である。
また、本発明の樹脂組成物5質量部を1-プロパノール/水混合溶媒(1-プロパノール含有量40質量%)95質量部に溶解させた溶液の光線透過率T2も95%以上である。光線透過率T2が95%未満の場合、エチレン単位の含有量が多過ぎる分子鎖を含む不純物を十分に除去することができておらず、溶融成形後の成形品中の欠陥を抑制することができない。光線透過率T2は、好適には97%以上であり、より好適には98%以上である。光線透過率T2は、光線透過率T1と同様に測定されるものである。
本発明の樹脂組成物は、エチレン単位含有量20~60モル%、ケン化度99モル%以上のエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む。
本発明の樹脂組成物に含まれるEVOHは、エチレン-ビニルエステル共重合体をケン化して得られるものであり、中でも、エチレン-酢酸ビニル共重合体をケン化して得られるものが好ましい。エチレン単位含有量は20~60モル%である。エチレン単位含有量が20モル%未満の場合には、溶融成形性が不十分となる。一方、エチレン単位含有量が60モル%を超えるとガスバリア性が不十分となる。エチレン単位含有量は、好適には25モル%以上であり、より好適には30モル%以上である。また、エチレン単位含有量は、好適には55モル%以下であり、より好適には50モル%以下である。
また、EVOHのケン化度は99モル%以上である。ケン化度が99モル%未満では、バリア性及び溶融成形性が不十分である。より好ましくは99.3モル%以上である。特に溶融安定性に優れたロングラン性の良好なEVOH組成物を製造する場合に、ケン化度が高いことが重要である。
本発明の樹脂組成物は、EVOHに加えて、さらにカルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有することが好ましい。これにより、熱安定性などの品質を向上させることができる。
カルボン酸としては、シュウ酸、コハク酸、安息香酸、クエン酸、酢酸、乳酸などが例示される。これらの中でも、コスト、入手の容易さなどの面から、酢酸が好ましい。本発明の乾燥後のEVOH樹脂ペレット中のカルボン酸の含有量は、少な過ぎると溶融成形時に着色が発生することがあり、また、多過ぎると層間接着性が不充分となることがあるので、10~5000ppmが好ましい。カルボン酸の含有量は好適には30ppm以上であり、より好適には50ppm以上である。また、カルボン酸の含有量は好適には1000ppm以下であり、より好適には500ppm以下である。
ホウ素化合物としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。具体的には、ホウ酸類としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸などが挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチルなどが挙げられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂などが挙げられる。これらの化合物の中でもオルトホウ酸(以下、単にホウ酸と記す。)が好ましい。本発明の乾燥後のEVOH樹脂ペレット中のホウ素化合物の含有量は、少な過ぎると熱安定性の改善効果が少なく、また、多過ぎるとゲル化して成形性不良となることがあるので、ホウ素換算で10~2000ppmが好ましく、50~1000ppmがより好ましい。
リン酸化合物としては、リン酸、亜リン酸などの各種の酸やその塩などが例示される。リン酸塩としては第一リン酸塩、第二リン酸塩、第三リン酸塩のいずれの形で含まれていてもよく、そのカチオン種も特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩であることが好ましい。中でもリン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウムの形でリン酸化合物を添加することが好ましい。本発明の乾燥後のEVOH樹脂ペレット中のリン酸化合物の含有量はリン酸根換算で1~1000ppmであることが好ましい。このような範囲で添加することにより、成形物の着色およびゲル・ブツの発生を抑制することが可能である。リン酸化合物の含有量が1ppm未満の場合は、溶融成形時の着色が激しくなるおそれがある。また、1000ppmを超える場合は成形物のゲル・ブツが発生しやすくなるおそれがある。
アルカリ金属塩としては、一価金属の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、リン酸塩、金属錯体などが挙げられる。例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩などが挙げられる。中でも酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウムが好適である。本発明の乾燥後のEVOH樹脂ペレット中のアルカリ金属塩の含有量は、アルカリ金属元素換算で5~5000ppmが好ましい。より好ましくは20~1000ppm、さらにより好ましくは30~750ppmである。
アルカリ土類金属塩としては、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、ベリリウム塩などが挙げられ、特にマグネシウム塩とカルシウム塩が好適である。アルカリ土類金属塩のアニオン種は特に限定されるものではないが、酢酸塩やリン酸塩が好適である。本発明の乾燥後のEVOH樹脂ペレット中のアルカリ土類金属の含有量は金属換算で10~1000ppmが好適であり、より好適には20~500ppmである。アルカリ土類金属の含有量が10ppm未満の場合はロングラン性の改善効果が不充分となるおそれがある。また、1000ppmを超えると樹脂溶融時の着色が激しくなるおそれがある。
本発明のEVOH樹脂組成物を構成する樹脂成分のうちEVOHが占める割合は80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上であっても、実質的にEVOHのみからなっても、EVOHのみからなってもよい。また、本発明のEVOH樹脂組成物においてEVOHが占める割合は80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく。95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上であってもよい。
本発明のEVOH樹脂組成物の好適なメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下で測定;但し、融点が190℃付近あるいは190℃を越えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、メルトフローレートを縦軸(対数)としてプロットし、190℃に外挿した値)は好適には0.1~200g/10分である。MFRは、より好適には0.2g/10分以上であり、さらに好適には0.5g/10分以上であり、特に好適には1g/10分以上である。また、MFRは、より好適に50g/10分以下であり、さらに好適には30g/10分以下であり、特に好適には15g/10分以下である。MFRが小さ過ぎる場合には、成形時に押出機のモーターのトルクが高くなりすぎて溶融押出が困難となるおそれがある。一方、MFRが大き過ぎる場合には、得られる成形物の機械強度が不足するおそれがある。
以下、本発明のEVOH樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明の樹脂組成物の好適な製造方法は、エチレン-ビニルエステル共重合体のメタノール溶液にアルカリ触媒を添加し該エチレン-ビニルエステル共重合体をケン化して、エチレン-ビニルアルコール共重合体のメタノール溶液を得る工程、ケン化後の溶液に水を添加してから1回目の濾過を行う工程、1回目の濾過後の溶液にメタノール又は水を添加してから2回目の濾過を行う工程、及び2回目の濾過後の溶液から溶媒を除去する工程を有するものである。
まず、ラジカル開始剤を触媒として用いて、エチレンとビニルエステルを共重合させて、エチレン-ビニルエステル共重合体を得る。好適には、ビニルエステルとして酢酸ビニルを用いて、エチレン-酢酸ビニル重合体を得る。このとき、メタノールを溶媒に用いて溶液重合を行う。連続式、回分式のいずれであってもよい。重合温度は、20~90℃、好ましくは40~70℃である。重合時間(連続式の場合は平均滞留時間)は、2~15時間、好ましくは3~11時間である。重合率は、仕込みビニルエステルに対して10~90%、好ましくは30~80%である。重合後の溶液中の樹脂分は、5~85%、好ましくは20~70%である。
用いられる触媒は、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス-(4-メチル-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス-(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス-(2-シクロプロピルプロピオニトリル)等のアゾニトリル系開始剤及びイソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエイト、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエイト、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
エチレンとビニルエステル以外にこれらと共重合し得る単量体、例えば、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン等のアルケン;3-アシロキシ-1-プロペン、3-アシロキシ-1-ブテン、4-アシロキシ-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-1-ブテン、3-アシロキシ-4-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-2-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-3-メチル-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-2-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-1-ペンテン、5-アシロキシ-1-ペンテン、4,5-ジアシロキシ-1-ペンテン、4-アシロキシ-1-ヘキセン、5-アシロキシ-1-ヘキセン、6-アシロキシ-1-ヘキセン、5,6-ジアシロキシ-1-ヘキセン、1,3-ジアセトキシ-2-メチレンプロパン等のエステル基を有するアルケン又はそのケン化物;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和酸又はその無水物、塩、又はモノ若しくはジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸又はその塩;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β-メトキシ-エトキシ)シラン、γ-メタクリルオキシプロピルメトキシシラン等ビニルシラン化合物;アルキルビニルエーテル類、ビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等を少量共存させて共重合させることも可能である。その場合の共重合量は、通常5モル%以下であり、実質的に含まないことが好ましい。
所定時間の重合後、所定の重合率に達した後、必要に応じて重合禁止剤を添加し、未反応のエチレンガスを蒸発除去した後、未反応ビニルエステルを追い出す。エチレンを蒸発除去したエチレン-ビニルエステル共重合体溶液から未反応のビニルエステルを追い出す方法としては、例えば、ラシヒリングを充填した塔の上部から該共重合体溶液を一定速度で連続的に供給し、塔下部よりメタノール蒸気を吹き込み塔頂部よりメタノールと未反応ビニルエステルの混合蒸気を留出させ、塔底部より未反応ビニルエステルを除去したエチレン-ビニルエステル共重合体溶液を取り出す方法などが採用される。
未反応ビニルエステルを除去したエチレン-ビニルエステル共重合体のメタノール溶液にアルカリ触媒を添加し、該共重合体中のビニルエステル成分をケン化して、エチレン-ビニルアルコール共重合体のメタノール溶液を得る。ケン化方法は連続式、回分式いずれも可能である。アルカリ触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属アルコラートなどが用いられる。ケン化条件は、以下の通りである。エチレン-ビニルエステル共重合体濃度は、好ましくは10~50質量%である。ケン化反応温度は、好ましくは30~150℃である。アルカリ触媒使用量は、好ましくは0.005~0.6当量(ビニルエステル単位当たり)である。またケン化時間(連続式の場合、平均滞留時間)は、好ましくは10分~6時間である。
こうして得られたEVOHのメタノール溶液に水を添加してから濾過を行う。濾過を行う好適な手法としては、1回目の濾過の際に水を添加し、2回目の濾過の際にメタノールを添加する方法と、1回目の濾過及び2回目の濾過の際にそれぞれ水を添加する方法が挙げられる。
1回目の濾過の際に水を添加し、2回目の濾過の際にメタノールを添加する場合には、まず、水を添加することにより、EVOH溶液中のメタノール/水混合溶媒中のメタノール含有量を50~70質量%とするのが好ましい。混合溶媒中のメタノール含有量をこの範囲にすることによって、EVOH中に含まれているエチレン単位の含有量が多過ぎる分子鎖に由来する不溶物のみを効果的に除去することができる。メタノール含有量はより好適には52質量%以上であり、さらに好適には54質量%以上である。一方メタノール含有量は、より好適には68質量%以下であり、さらに好適には66質量%以下であり、特に好適には64質量%以下である。
このとき用いられるフィルターの種類は、特に限定されないが、20~150μm程度の目開きを有するフィルターが好適に用いられる。フィルター前後の差圧は、0.1~0.7MPaであることが好ましい。差圧が0.1MPa未満である場合には、生産性が低下するおそれがある。差圧は、より好適には0.15MPa以上であることが好ましく、0.2MPa以上であることがさらに好ましい。一方、差圧が0.7MPaを超える場合には、不純物が十分に濾別できず、製品中に混入する恐れがある。差圧は、より好適には0.6MPa以下であることが好ましく、0.5MPa以下であることがさらに好ましい。
1回目の濾過後の溶液にメタノールを添加してから2回目の濾過を行う。このとき、メタノールを添加することにより、EVOH溶液中のメタノール/水混合溶媒中のメタノール含有量を70~90質量%とするのが好ましい。メタノール含有量をこの範囲にすることによって、EVOH中に含まれているビニルアルコール単位の含有量が多過ぎる分子鎖に由来する不溶物のみを効果的に除去することができる。メタノール含有量はより好適には72質量%以上であり、さらに好適には74質量%以上であり、特に好適には76質量%以上である。一方メタノール含有量は、より好適には88質量%以下であり、さらに好適には86質量%以下である。
このとき用いられるフィルターの種類は、特に限定されないが、20~100μmの目開きを有するフィルターが好適に用いられる。フィルター前後の差圧は、0.2~1.5MPaであることが好ましい。差圧が0.2MPa未満である場合には、生産性が低下するおそれがある。差圧は、より好適には0.3MPa以上であることが好ましく、0.4MPa以上であることがさらに好ましい。一方、差圧が1.5MPaを超える場合には、不純物が十分に濾別できず、製品中に混入する恐れがある。差圧は、より好適には1.2MPa以下であることが好ましく、1.0MPa以下であることがさらに好ましい。
1回目の濾過及び2回目の濾過の際にそれぞれ水を添加する場合には、まず、水を添加することにより、EVOH溶液中のメタノール/水混合溶媒中のメタノール含有量を70~90質量%とするのが好ましい。メタノール含有量をこの範囲にすることによって、EVOH中に含まれているビニルアルコール単位の含有量が多過ぎる分子鎖に由来する不溶物のみを効果的に除去することができる。メタノール含有量はより好適には72質量%以上であり、さらに好適には74質量%以上であり、特に好適には76質量%以上である。一方メタノール含有量は、より好適には88質量%以下であり、さらに好適には86質量%以下である。
このとき用いられるフィルターの種類は、特に限定されないが、20~100μmの目開きを有するフィルターが好適に用いられる。フィルター前後の差圧は、0.2~1.5MPaであることが好ましい。差圧が0.2MPa未満である場合には、生産性が低下するおそれがある。差圧は、より好適には0.3MPa以上であることが好ましく、0.4MPa以上であることがさらに好ましい。一方、差圧が1.5MPaを超える場合には、不純物が十分に濾別できず、製品中に混入する恐れがある。差圧は、より好適には1.2MPa以下であることが好ましく、1.0MPa以下であることがさらに好ましい。
1回目の濾過後の溶液にさらに水を添加してから2回目の濾過を行う。このとき、水を添加することにより、EVOH溶液中のメタノール/水混合溶媒中のメタノール含有量を50~70質量%とするのが好ましい。混合溶媒中のメタノール含有量をこの範囲にすることによって、EVOH中に含まれているエチレン単位の含有量が多過ぎる分子鎖に由来する不溶物のみを効果的に除去することができる。メタノール含有量はより好適には52質量%以上であり、さらに好適には54質量%以上である。一方メタノール含有量は、より好適には68質量%以下であり、さらに好適には66質量%以下であり、特に好適には64質量%以下である。
このとき用いられるフィルターの種類は、特に限定されないが、20~150μm程度の目開きを有するフィルターが好適に用いられる。フィルター前後の差圧は、0.1~0.7MPaであることが好ましい。差圧が0.1MPa未満である場合には、生産性が低下するおそれがある。差圧は、より好適には0.15MPa以上であることが好ましく、0.2MPa以上であることがさらに好ましい。一方、差圧が0.7MPaを超える場合には、不純物が十分に濾別できず、製品中に混入する恐れがある。差圧は、より好適には0.6MPa以下であることが好ましく、0.5MPa以下であることがさらに好ましい。
1回目の濾過時と2回目の濾過時のEVOH溶液中のメタノール含有量の差を10~30質量%とするのが好ましい。適当な差を設けることによって、異なる不純物を効果的に除去することができる。メタノール含有量の差は、より好適には12質量%以上であり、さらに好適には14質量%以上である。一方、メタノール含有量の差は、より好適には28質量%以下であり、さらに好適には26質量%以下である。
以上のように、工業的なEVOH製造プロセスでは、メタノール/水混合溶媒に溶解したEVOH溶液の濾過を行うが、本願発明では、1-プロパノール/水混合溶媒に溶解したEVOH溶液の光線透過率を用いてEVOH樹脂組成物の性能を評価している。これは、一旦乾燥して結晶化したEVOHペレットがメタノール/水混合溶媒には溶解しにくいのに対し、1-プロパノール/水混合溶媒であれば比較的容易に溶解させることができるからである。1-プロパノール/水混合溶媒中の1-プロパノールの含有量を、メタノールの含有量より少なくすれば、メタノール/水混合溶媒を用いた時と同様に溶解性を評価することができる。
濾過を行った後に溶媒が除去される。溶媒の除去方法は、溶媒の含有率を下げることができる方法であればよく、特に限定されない。EVOH溶液を水などの貧溶媒中に押し出して凝固させることによって、溶媒の含有量を低下させて固化させることができる。また、押出機やニーダ中において、機械的に水を絞り出したり、ベントから水蒸気を蒸発させたりしてもよい。このようにして溶媒を除去した後で、切断される。切断してペレットを得る方法は特に限定されない。凝固させた含水状態のストランドをカッターで切断することもできるし、押出機やニーダ中で含水率を減少させたものを、流動状態のままでホットカッターやアンダーウォーターカッターで切断することもできる。
EVOH樹脂組成物ペレットが、カルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有する場合の、前記添加剤の添加方法は特に限定されない。含水状態のペレットを、前記添加剤を含有する水溶液に浸漬して含浸させる方法や、押出機などで含水かつ流動状態のEVOHに添加剤を含有する水溶液を注入して混練し、その後切断してペレットを製造する方法などが採用される。
EVOH樹脂組成物をペレット形状に切断した後で、乾燥する。乾燥方法は特に限定されず、熱風乾燥機などを使用することができる。乾燥機は流動式乾燥機であっても静置式乾燥機であっても良く、これらを組み合わせて使用してもよい。この中でも、初めに流動乾燥法で乾燥し、引き続いて静置乾燥法で乾燥する方法が好適である。乾燥温度は特に限定されないが、通常70~120℃程度の温度が採用され、乾燥が進むにつれて温度を上昇させることもできる。乾燥後の含水率は通常1重量%以下であり、好適には0.5重量%以下である。こうして得られた乾燥ペレットが、成形工程に供される。
得られるペレットの形状は特に限定されないが、好適には円柱又は楕円体である。ここで、楕円体には、直交する2軸の半径が等しい回転楕円体や、直交する3軸の半径が等しい球も含まれる。ストランドを形成してから切断した場合には円柱形状のペレットが得られる。また、ホットカッターやアンダーウォーターカッターで切断した場合には、楕円体、特に、少し扁平な回転楕円体のペレットが得られる。ここで、円柱又は楕円体という用語は、厳密な意味で用いられているのではなく、少し歪んでいても構わない。ペレットの平均粒径は、通常2~7mmである。ここでの平均粒径は、二次元的に観察したペレット画像の面積から求められる円相当径(直径)のことをいう。
本発明のEVOH樹脂組成物ペレットの粒度分布の半値幅が0.7mm以下であることが好ましい。半値幅が小さい、粒度の揃ったペレットとすることによって、溶融成形する際に、押出機中での圧力変動を抑制することができる。これによって、均質な溶融成形品を長時間にわたって連続的に得ることができる。粒度分布の半値幅は、二次元的に観察した多数のペレット画像の面積から、円相当径として得た直径の値の分布から求めることができる。具体的には、動的画像解析装置を用いて測定することができる。当該半値幅は、0.6mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがさらに好ましい。
このように、粒度が揃ったペレットを得る方法としては、切断方法を工夫する方法や、ふるい分けする方法が挙げられる。中でも、ふるい分けする方法が、確実かつ簡便に、粒度分布の半値幅を小さくすることができて好ましい。ふるい分けに際しては、少なくとも2種類の目開きのふるいを用い、大き過ぎるペレットと小さ過ぎるペレットを除くのが好ましい。
こうして得られた本発明のEVOH樹脂組成物ペレットを用いて、溶融成形することによりフィルム、シート、容器、パイプ、繊維等、各種の成形物が得られる。溶融成形法としては押出成形、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、射出成形等が可能である。溶融温度はEVOHの融点等により異なるが150~270℃程度が好ましい。
得られる成形物は、本発明のEVOH樹脂組成物のみの単層からなる成形物であってもよいが、EVOH樹脂組成物からなる少なくとも1層を含む多層構造体とすることが好適である。多層構造体の層構成としては、本発明の樹脂組成物をE、接着性樹脂をAd、それら以外の熱可塑性樹脂をTで表わすと、E/T、T/E/T、E/Ad/T、T/Ad/E/Ad/T等が挙げられるが、これに限定されない。ここで示されたそれぞれの層は単層であってもよいし、多層であってもよい。
上記多層構造体を製造する方法は特に限定されない。例えば、本発明のEVOH樹脂組成物と熱可塑性樹脂とを共押出又は共射出する方法、EVOH樹脂組成物からなる成形物(フィルム、シート等)上に熱可塑性樹脂を溶融押出する方法、逆に熱可塑性樹脂等の基材上にEVOH樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂とを共押出する方法、更には本発明のEVOH樹脂組成物より得られた成形物と他の基材のフィルム、シートとを公知の接着剤を用いてラミネートする方法等が挙げられる。なかでも、共押出又は共射出する方法が好適である。
このようにして得られた多層構造体は、フィルム、シート、容器など各種包装材料として用いることができる。バリア性及び成形性に優れているので、食品包装容器、燃料容器、薬品容器などとして好適である。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。実施例における評価方法は以下の通りである。
(1)光線透過率
1-プロパノールの含有量が60質量%で、水の含有量が40質量%である混合溶媒を調製し、これに試料のEVOH組成物ペレットを投入し、撹拌しながら80℃で6時間かけて溶解させて5質量%のEVOH溶液を調製した。ペレットが完全に溶解したEVOH溶液を冷却して測定セル(石英製:光路長10mm)に入れ、株式会社島津製作所製分光光度計UV-2450を用い、波長350nmから600nmの25℃における光線透過率を測定し、その平均値を光線透過率(T1)とした。また、1-プロパノールの含有量が40質量%で、水の含有量が60質量%である混合溶媒を用いた以外は、上記と同様にして光線透過率(T2)を測定した。T1、T2の測定に際しては、EVOHが溶解していない溶剤のみを入れたセルを測定した時の光線透過率を100%として、相対的な光線透過率(%)を求めた。
(2)ペレットの粒度分布における半値幅
実施例及び比較例で得られた乾燥ペレットの粒度分布は、ペレット500gを試料とし、ヴァーダー・サイエンティフィック社の「CAMSIZER XT」を用い、ISO 13322-2(2006年)に準拠した動的画像解析法によって算出された円相当径(直径)から求めた。当該円相当径は、二次元的に観察したペレット画像の面積から求められる円相当径(直径)のことをいう。得られた粒度分布から、半値幅(mm)を求めた。
(3)フィルム中のブツ
実施例及び比較例で得られた乾燥ペレットを用いて単層製膜試験を行った。下記仕様の押出機及びTダイを使用して、厚さ20μmのフィルムを得た。
・押出機:株式会社プラスチック工学研究所製「GT-40-A」
・形式:単軸押出機(ノンベントタイプ)
・L/D:26
・CR:2.8
・口径:40mmφ
・スクリュー:ダブルフライトタイプ
・回転数:40rpm
・駆動機:住友重機株式会社製直流式電動機「SCR-DC218B」
・モーター容量:DC7.5KW(定格45A)
・押出機ヒーター:3分割タイプ
・C1/C2/C3=190℃/240℃/260℃
・樹脂圧力計は等間隔でシリンダーに10本設置
・ダイ幅:550mm
・ダイ内樹脂温度:260℃
・引取り速度:10m/分
製膜開始から1時間後のフィルム中のブツ(肉眼で確認できる直径約100μm以上のもの)を数え、1.0mあたりの個数に換算した。当該個数により以下のように判定した。
A:20個未満
B:20個以上100個未満
C:100個以上500個未満
D:500個以上
(4)フィルム中のストリーク
(3)と同様にして単層製膜試験を行い、製膜開始から1時間後のフィルム中のストリーク(肉眼で確認できる幅約100μm以上のもの)を数え、1.0mあたりに換算した。当該本数により、フィルムの外観を以下のように判定した。
A:2本未満
B:2本以上6本未満
C:6本以上21本未満
D:21本以上
(5)フィルム中の流れ斑
(3)と同様にして単層製膜試験を行い、製膜開始から1時間後のフィルム中の流れ斑(フィルムを蛍光灯にかざし、屈折率の変化を肉眼で確認できる幅約1cm以上のもの)を数え、1.0mあたりに換算した。当該個数により、フィルムの外観を以下のように判定した。
A:1か所未満
B:1か所以上3か所未満
C:3か所以上10か所未満
D:10か所以上
(6)ダイ内付着量
(3)と同様にして単層製膜試験を行い、製膜開始から8時間後に、MFR(190℃、2160g荷重)が1g/10分の低密度ポリエチレン(LDPE)で押出機内のEVOH樹脂組成物を10分かけて置換した後、ダイ内部に付着したEVOHが熱劣化した樹脂の質量を測定し、以下の基準で評価した。
A:3g未満
B:3g以上5g未満
C:5g以上10g未満
D:10g以上
ここで、ダイ内付着量は、EVOH樹脂組成物を用いた溶融成形におけるロングラン性を示す指標である。ダイ付着物は、溶融成形が開始された後に連続的に金属の表面に堆積し、成形時間の経過とともに熱劣化が進行してダイ内に付着したものである。当該付着物は熱劣化を受けていることから着色や架橋が進行していて、成形加工品に混入した場合に外観不良の原因となる。ダイ内付着量は一定時間経過後のダイ付着物を定量したものであり、ロングラン性を評価する指標である。ダイ内付着量はダイ内部における溶融樹脂のせん断速度に依存しており、1~30(1/S)の低せん断領域における滞留物の堆積を示すものである。
(7)圧力変動
(3)と同様にして単層製膜試験を行い、製膜開始1時間後から7時間後までの6時間の連続製膜において、押出機先端(10番目)の圧力計で測定される樹脂圧力P10で最大の圧力PMAXと最小の圧力PMINの差ΔPを以下の基準で評価した。
A:ΔP≦0.3
B:0.3<ΔP≦0.6
C:0.6<ΔP≦1.0
D:1.0<ΔP
実施例1
エチレン単位含有率32モル%のエチレン-酢酸ビニル共重合体100質量部およびメタノール400質量部をケン化反応器に仕込み、さらに水酸化ナトリウムのメタノール溶液(80g/L)0.16質量部(水酸化ナトリウム/酢酸ビニル単位=0.4/1(モル比))を仕込んだ。この反応器内に窒素ガスを吹き込み、副生する酢酸メチルをメタノールとともに系外に除去しながら、60℃で4時間反応させた。その後、酢酸で中和して反応を停止させ、EVOH57質量部、メタノール75質量部からなるEVOHのメタノール溶液を得た。このEVOHのケン化度は99.95モル%であった。
次に、EVOHのメタノール溶液に水を添加し、EVOH溶液中の溶媒の質量比(メタノール/水)を60/40とした。このEVOH溶液を60℃にした状態で上記反応器の底部からギアポンプで抜き取ってバケット型の第1濾過器へ供給した(第1濾過工程)。第1濾過器の入圧と吐出圧の差圧を0.3MPaとし、濾過部には目開き100μmの金属製エレメントを配置した。濾過後、EVOH溶液にメタノールを添加し、EVOH溶液中の溶媒の質量比(メタノール/水)を80/20とした。このEVOH溶液を60℃に保ちギアポンプでバケット型の第2濾過器へ供給した(第2濾過工程)。第2濾過器の入圧と吐出圧の差圧を0.5MPaとし、濾過部には目開き60μmの金属製エレメントを配置した。
第1濾過工程1と、第2濾過工程2を通過したEVOH溶液を、円形の開口部を有する金板から水中に押し出してストランド状に凝固させ、切断して直径約3mm、長さ約5mmのペレットを得た。ペレットは遠心分離機で脱液し、さらに大量の水を加え脱液する操作を繰り返した。
こうして得られたEVOHペレット(エチレン単位含有率32モル%、ケン化度99.95モル%、含水率26質量%)を、図1に示される二軸押出機20の原料供給部1からシリンダーバレル10内に投入した。流動状態の含水EVOHを、フルフライトスクリュー部2で前方に向けて送り、逆フライトスクリュー部3で混練し、ベント7で過剰の水分を脱離させて水分調整した。その後、フルフライトスクリュー部4で前方に向けて送り、添加剤注入部8から酢酸/ホウ酸/酢酸ナトリウム/酢酸マグネシウム/リン酸二水素カリウム水溶液を注入した。その後、逆フライトスクリュー部5で混練し、フルフライトスクリュー部6を通過させて吐出口11から吐出した。吐出口近傍に設けられた温度センサー9で測定された樹脂組成物の温度は100℃であった。
EVOHの単位時間当たりの投入量は10kg/hr(含有される水の質量を含む)、添加剤の単位時間当たりの投入量は0.65L/hrであり、添加剤の組成は酢酸を4.3g/L、ホウ酸を15g/L、酢酸ナトリウムを4.6g/L、酢酸マグネシウムを3.0g/L、リン酸二水素カリウムを1.4g/L含有する水溶液であった。
二軸押出機20の仕様は以下の通りである。
・L/D:45.5
・口径:30mmφ
・スクリュー:同方向完全噛合型
・回転数:300rpm
・モーター容量:DC22kW
・ヒーター:13分割タイプ
吐出口11から導出されたEVOH樹脂組成物を、3mmφの孔が6個開いたダイスから吐出した。このときのダイス内のEVOH樹脂組成物の温度は105℃であった。吐出させたEVOH樹脂組成物を、流動状態のままセンターホットカッターで切断した。カッターの刃の回転数は2700rpmであった。
得られたEVOH樹脂組成物ペレットの含水率は、17質量%であった。このペレットを、流動乾燥機を用いて100℃で15時間乾燥し、引き続き静置乾燥機を用いて100℃で15時間乾燥した結果、含水率は0.3質量%であった。乾燥後のEVOH樹脂組成物ペレット中の酢酸の含有量は300ppm、ホウ素化合物の含有量はホウ素換算で270ppm、リン酸化合物の含有量はリン酸根換算で100ppm、アルカリ金属塩の含有量はカリウムが金属換算で40ppm、ナトリウムが金属換算で130ppmであり、アルカリ土類金属塩の含有量はマグネシウムが金属換算で50ppmであった。また、MFR(190℃、2160g荷重)は1.5g/10分であった。
その後、乾燥後のEVOH樹脂組成物ペレットを6.5メッシュ、7メッシュ及び8メッシュの順で重ねたふるいに10分かけ、8メッシュ上に残ったペレットを収集することによって、成形用のペレットを得た。得られたペレットは、少し扁平な回転楕円体であり、長手方向長さが3.2mmで、短手方向長さが2.1mmであった。得られたペレットについて、前記評価方法に従って評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例2~8、比較例1~3
合成したEVOHのエチレン単位含有量、濾過条件及びふるい分け条件を表1に示す通り変更した以外は実施例1と同様の方法で樹脂組成物ペレットを作製し評価を行った。評価結果を表1にまとめて示す。ここで、実施例2~7及び比較例1~3では、実施例1と同様にEVOHを合成した。実施例8で合成したEVOHは、エチレン単位含有率が44モル%で、ケン化度が99.7モル%で、MFR(190℃、2160g荷重)が4g/10分であった。比較例1では、実施例1における1回目の濾過工程を割愛した。また、比較例2では、実施例1における2回目の濾過工程を割愛した。
Figure 2023084758000002
1 原料供給部
2,4,6 フルフライトスクリュー部
3,5 逆フライトスクリュー部
7 ベント
8 添加剤注入部
9 温度センサー
10 シリンダーバレル
11 吐出口
20 二軸押出機

Claims (10)

  1. エチレン単位含有量20~60モル%、ケン化度99モル%以上のエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む樹脂組成物であって;
    前記樹脂組成物5質量部を1-プロパノール/水混合溶媒(1-プロパノール含有量60質量%)95質量部に溶解させた溶液の光線透過率T1が95%以上であり、かつ
    前記樹脂組成物5質量部を1-プロパノール/水混合溶媒(1-プロパノール含有量40質量%)95質量部に溶解させた溶液の光線透過率T2が95%以上である樹脂組成物。
  2. カルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有する請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の樹脂組成物からなるペレット。
  4. 前記ペレットの形状が円柱又は楕円体であって、前記ペレットの粒度分布の半値幅が0.7mm以下である、請求項3に記載のペレット。
  5. 請求項1又は2に記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有する多層構造体。
  6. エチレン-ビニルエステル共重合体のメタノール溶液にアルカリ触媒を添加し該エチレン-ビニルエステル共重合体をケン化して、エチレン-ビニルアルコール共重合体のメタノール溶液を得る工程、ケン化後の溶液に水を添加してから1回目の濾過を行う工程、1回目の濾過後の溶液にメタノールを添加してから2回目の濾過を行う工程、及び2回目の濾過後の溶液から溶媒を除去する工程を有する、請求項1又は2に記載の樹脂組成物の製造方法。
  7. エチレン-ビニルエステル共重合体のメタノール溶液にアルカリ触媒を添加し該エチレン-ビニルエステル共重合体をケン化して、エチレン-ビニルアルコール共重合体のメタノール溶液を得る工程、ケン化後の溶液に水を添加してから1回目の濾過を行う工程、1回目の濾過後の溶液にさらに水を添加してから2回目の濾過を行う工程、及び2回目の濾過後の溶液から溶媒を除去する工程を有する、請求項1又は2に記載の樹脂組成物の製造方法。
  8. エチレン-ビニルエステル共重合体のメタノール溶液にアルカリ触媒を添加し該エチレン-ビニルエステル共重合体をケン化して、エチレン-ビニルアルコール共重合体のメタノール溶液を得る工程、ケン化後の溶液に水を添加してから1回目の濾過を行う工程、1回目の濾過後の溶液にメタノールを添加してから2回目の濾過を行う工程、2回目の濾過後の溶液から溶媒を除去する工程、切断工程、及び乾燥工程を有する、請求項3又は4に記載のペレットの製造方法。
  9. エチレン-ビニルエステル共重合体のメタノール溶液にアルカリ触媒を添加し該エチレン-ビニルエステル共重合体をケン化して、エチレン-ビニルアルコール共重合体のメタノール溶液を得る工程、ケン化後の溶液に水を添加してから1回目の濾過を行う工程、1回目の濾過後の溶液にさらに水を添加してから2回目の濾過を行う工程、2回目の濾過後の溶液から溶媒を除去する工程、切断工程、及び乾燥工程を有する、請求項3又は4に記載のペレットの製造方法。
  10. 前記乾燥工程の後にふるい分け工程を有し、当該ふるい分け工程で大き過ぎるペレットと小さ過ぎるペレットを除去する、請求項8又は9に記載のペレットの製造方法。
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