JP2023078087A - 組成物、硬化膜およびその製造方法ならびにそれを備えた部材、電子部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い屈折率を有し、クラック無く厚膜の透明性の高い硬化膜を形成することが可能な組成物を提供すること。【解決手段】(A)Ti、ZnおよびZrからなる群より選ばれる金属原子と酸素原子との繰り返し構造を含み、重量平均分子量が5万1000以上200万以下であるメタロキサン、および(B)脂肪族多官能チオール化合物を含有する組成物。【選択図】なし
Description
本発明は、組成物、硬化膜およびその製造方法ならびにそれを備えた部材、電子部品に関する。
近年、携帯電話やタブレット機器内蔵カメラ等の急速な発展に伴い、固体撮像素子の小型化、高画素化が要求されている。固体撮像素子の小型化は感度の低下を招くため、集光効率の向上により感度の低下を防ぐ工夫がなされている。具体的には、カラーフィルター上部に集光用のマイクロレンズを配置する方法がとられており、マイクロレンズは集光効率の観点から、高い屈折率と透明性が求められている。
高い屈折率と透明性を有する硬化膜を得る方法として、例えば、金属アルコキシドを加水分解し、それを重縮合することでメタロキサンとし、それを塗布、硬化することで高屈折率な透明膜を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。
特許文献1に記載された技術は、アルコキシ基を選択的に加水分解し、凝集を抑制することで高分子量のメタロキサンを得るものであり、硬化収縮が小さいことでクラックが生じにくい均質な硬化膜が形成可能である。しかしながら、さらなる厚膜化には限度があり、クラックが生じるため、用途が限定されるという問題があった。
特許文献2に記載された技術では、チタノキサン、チオール化合物および芳香族化合物を配合することで屈折率の高い硬化物を得ることができるが、特許文献2に開示されたチタノキサンとチオール化合物のみでは薄膜を形成することができなかった。
特許文献3に記載された技術では、高屈折率な厚膜の形成が可能であるが、着色しやすい有機成分が多く、高温処理を行うと透明性が低下するという問題があった。
本発明は、係る従来技術の欠点に鑑み創案されたもので、その目的とするところは、高温処理後においてもクラックが発生しない、厚膜で、屈折率と透明性が高い硬化膜を形成することが可能な組成物を提供することにある。
本発明は、(A)Ti、ZnおよびZrからなる群より選ばれる金属原子と酸素原子との繰り返し構造を含むメタロキサン(以下「(A)メタロキサン」と称する)、および(B)脂肪族多官能チオール化合物を含有し、前記(A)メタロキサンの重量平均分子量が5万1000以上200万以下である組成物である。
また本発明は、(A)メタロキサン、および(B)脂肪族多官能チオール化合物を含有し、前記(B)脂肪族多官能チオール化合物が(B1)下記一般式(1)で表される構造を3個以上10個以下有する脂肪族多官能チオール化合物である組成物である。
R1は、炭素数1~8のアルキレン基または炭素数5~12の脂環式アルキレン基である。複数存在するR1はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
本発明の組成物によれば、高温処理後においてもクラックが発生しない、厚膜で、屈折率と透明性が高い硬化膜を得ることが可能となる。
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る組成物は、Ti、ZnおよびZrからなる群より選ばれる金属原子と酸素原子との繰り返し構造を含むメタロキサン(以下「(A)メタロキサン」と称する)、および(B)脂肪族多官能チオール化合物を含有する。そして、(A)メタロキサンの重量平均分子量が5万1000以上200万以下である。
本発明の実施の形態1に係る組成物は、Ti、ZnおよびZrからなる群より選ばれる金属原子と酸素原子との繰り返し構造を含むメタロキサン(以下「(A)メタロキサン」と称する)、および(B)脂肪族多官能チオール化合物を含有する。そして、(A)メタロキサンの重量平均分子量が5万1000以上200万以下である。
[(A)メタロキサン]
メタロキサンとは、金属-酸素-金属結合を主鎖とする高分子である。本発明における(A)メタロキサンを構成する金属原子は、Ti、ZnおよびZrからなる群より選ばれる。(A)メタロキサンがこれらの金属原子を含むことにより、本発明の実施の形態に係る組成物を硬化してなる膜(以下、単に「硬化膜」と称する)の屈折率と透明性を高めることができる。(A)メタロキサンに含まれる金属原子は、1種類であっても複数種類であってもよい。硬化膜の屈折率をより向上させることができることから、(A)メタロキサンはTiを含むことが好ましい。
メタロキサンとは、金属-酸素-金属結合を主鎖とする高分子である。本発明における(A)メタロキサンを構成する金属原子は、Ti、ZnおよびZrからなる群より選ばれる。(A)メタロキサンがこれらの金属原子を含むことにより、本発明の実施の形態に係る組成物を硬化してなる膜(以下、単に「硬化膜」と称する)の屈折率と透明性を高めることができる。(A)メタロキサンに含まれる金属原子は、1種類であっても複数種類であってもよい。硬化膜の屈折率をより向上させることができることから、(A)メタロキサンはTiを含むことが好ましい。
本実施の形態1に係る組成物において、(A)メタロキサンの重量平均分子量は、下限値としては5万1000以上であり、好ましくは10万以上である。また上限値としては200万以下であり、好ましくは150万以下であり、より好ましくは100万以下である。メタロキサンの重量平均分子量が下限値より小さいと、熱処理工程におけるポリマーの収縮率が大きく、硬化膜のクラック耐性が不十分である。また、分子量が上限値以下であることで、メタロキサンの溶媒への溶解性が向上し、基板上へムラ無く塗布可能となり、面内均一性の高い硬化膜が得られる。
本発明における重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の値をいう。メタロキサンの重量平均分子量は、以下の方法により求められる。メタロキサンを0.2wt%となるように展開溶媒に溶解させ、試料溶液とする。次いで、試料溶液を多孔質ゲルおよび展開溶媒が充填されたカラムに注入する。カラム溶出物を示差屈折率検出器により検出し、溶出時間を解析することにより、重量平均分子量が求められる。なお、展開溶媒としてはメタロキサンを0.2wt%の濃度で溶解させることができるものを選ぶが、メタロキサンが0.02mol/dm3の塩化リチウム N-メチル-2-ピロリドン溶液に溶解する場合はこれを用いる。
(A)メタロキサンは、下記一般式(4)で表される構造単位を有することが好ましい。
R3は、水素原子または炭素数1~12のアルキル基である。R4は、ヒドロキシ基、炭素数1~12のアルキル基、炭素数5~12の脂環式アルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数6~30のフェノキシ基、炭素数10~30のナフトキシ基、炭素数7~13のアラルキル基、(R5
3SiO-)基、(R6R7NO-)基またはメタロキサン結合を有する基である。メタロキサン中の複数存在するR3およびR4は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
R5は、ヒドロキシ基、炭素数1~12のアルキル基、炭素数5~12の脂環式アルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~13のアラルキル基、シロキサン結合を有する基から基の中から任意に選ばれる。複数存在するR5は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
R6およびR7は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数5~12の脂環式アルキル基、炭素数6~12のアリール基または炭素数7~13のアラルキル基である。R6およびR7は炭素-炭素飽和結合または炭素-炭素不飽和結合を介して連結し、環構造を形成していてもよい。
MはTi、ZnおよびZrからなる群より選ばれる金属原子を示す。
mは金属原子Mの価数を示す整数であり、aは1~(m-2)の整数である。
R5は、ヒドロキシ基、炭素数1~12のアルキル基、炭素数5~12の脂環式アルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~13のアラルキル基、シロキサン結合を有する基から基の中から任意に選ばれる。複数存在するR5は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
R6およびR7は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数5~12の脂環式アルキル基、炭素数6~12のアリール基または炭素数7~13のアラルキル基である。R6およびR7は炭素-炭素飽和結合または炭素-炭素不飽和結合を介して連結し、環構造を形成していてもよい。
MはTi、ZnおよびZrからなる群より選ばれる金属原子を示す。
mは金属原子Mの価数を示す整数であり、aは1~(m-2)の整数である。
炭素数1~12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などが挙げられる。
炭素数5~12の脂環式アルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などが挙げられる。
炭素数1~12のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシロキシ基、ヘプトキシ基、オクトキシ基、2-エチルヘキシロキシ基、ノニル基、デシロキシ基などが挙げられる。
炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
炭素数7~13のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルペンチル基などが挙げられる。
(R5
3SiO-)基としては、トリヒドロキシシロキシ基、トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基、トリプロピルシロキシ基、トリイソプロピルシロキシ基、トリブチルシロキシ基、トリイソブチルシロキシ基、トリ-s-ブチルシロキシ基、トリ-t-ブチルシロキシ基、トリシクロヘキシルシロキシ基、トリメトキシシロキシ基、トリエトキシシロキシ基、トリプロポキシシロキシ基、トリイソプロポキシシロキシ基、トリブトキシシロキシ基、トリフェニルシロキシ基、ヒドロキシジフェニルシロキシ基、メチルジフェニルシロキシ基、エチルジフェニルシロキシ基、プロピルジフェニルシロキシ基、ジヒドロキシ(フェニル)シロキシ基、ジメチル(フェニル)シロキシ基、ジエチル(フェニル)シロキシ基、ジプロピル(フェニル)シロキシ基、トリナフチルシロキシ基、ヒドロキシジナフチルシロキシ基、メチルジナフチルシロキシ基、エチルジナフチルシロキシ基、プロピルジナフチルシロキシ基、ジヒドロキシ(ナフチル)シロキシ基、ジメチル(ナフチル)シロキシ基、ジエチル(ナフチル)シロキシ基、ジプロピル(ナフチル)シロキシ基などが挙げられる。
(R6R7NO-)基としては、ジエチルアミノオキシ基、ジベンジルアミノオキシ基、2-アザアダマンタニルオキシ基;ホルムアミド基、ホルムアニリド基、アセトアミド基、アセトアニリド基、トリフルオロアセトアミド基、2,2,2,2-トリフルオロアセトアニリド基、ベンズアミド基、ベンズアニリド基、ピロリドン基、ピペリドン基;N-アセトアミジルオキシ基、N-オクタンアミジルオキシ基、N-ベンズアミジルオキシ基、N-ベンゾイル-N-フェニルアミノオキシ基、N-ナフタレン-1-カルボキシアミジルオキシ基、N-サリチルアミジルオキシ基、α-(p-ブトキシフェニル)-N-アセトアミジルオキシ基、N-スクシンイミジルオキシ基、N-フタルイミジルオキシ基、N-(4-ニトロフタルイミジル)オキシ基、N-(5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミジル)オキシ基、N-オキシスルホスクシンイミドナトリウム基、N-( N'-ヒドロキシピロメリットイミジル)オキシ基、N-(1,8-ナフタルイミジル)オキシ基、N-(N’-ヒドロキシ-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸ジイミジル)オキシ基などが挙げられる。
メタロキサン結合を有する基である場合とは、酸素原子を介して他のメタロキサン分子と結合していることを指す。
シロキサン結合を有する基である場合とは、酸素原子を介して他のSiと結合していることを指す。
(A)メタロキサンが一般式(4)で表される構造単位を有することにより、電子密度の高い金属原子を主鎖に有する樹脂を主体とする硬化膜とすることができる。そのため、硬化膜中における金属原子の密度を高くすることができ、高い屈折率を得ることができるまた、その硬化膜は自由電子を有さない誘電体となることから、高い透明性および耐熱性を得ることができる。
(A)メタロキサンは、R4の少なくとも一つが、(R5
3SiO-)基、(R6R7NO-)基またはメタロキサン結合を有する基であるような上記一般式(4)で表される繰り返し構造単位を有することが好ましい。上記官能基を有することで、溶液中でのメタロキサンの安定性を向上させることができる。そのため、後述するメタロキサン合成時に析出することなく重合させることができるため、重量平均分子量5万1000以上200万以下のメタロキサンを容易に得ることができる。また、溶液中のメタロキサン変質による、硬化膜中の欠陥生成を抑制し、クラック耐性を向上させることができる。
また、透明性と熱処理時の脱離による緻密化の観点から、(A)メタロキサンは、R4の少なくとも一つが、(R5
3SiO-)基またはメタロキサン結合を有する基であるような上記一般式(4)で表される繰り返し構造単位を有することがさらに好ましい。
(A)メタロキサンの合成方法に特に制限はないが、下記一般式(6)および/または一般式(7)で表される化合物を必要に応じて加水分解を行い、その後、部分縮合および重合させる工程を含むことが好ましい。ここで、部分縮合とは、加水分解物のM-OHを全て縮合させるのではなく、得られるメタロキサンに一部M-OHを残存させることを指す。後述する一般的な縮合条件であればM-OHが部分的に残存することが一般的である。残存させるM-OH量は制限されない。
また加水分解反応に用いる水の添加量を調整することにより、反応系内のM-ORの量を調節することができ、得られるメタロキサンの分子量を制御することができる。例えば、加水分解に用いる水の添加量が少ないと、アルコキシ基が残存した低分子量のメタロキサンが得られる。水の添加量が多いと、アルコキシ基が全て加水分解され、脱水縮合が促進されることで高分子量のメタロキサンが得られる。水の添加量は、アルコキシ基に対して0.5~2モルが好ましく、0.7~1.5モルがより好ましく、0.9~1.2モルがさらに好ましい。水の添加量が0.5モル以上であることでアルコキシ基の残存による硬化膜の着色を抑制することができる。また、2モル以下であることで加水分解や縮合過程における析出を抑制することができる。
R3、M、mおよびaは上記説明の通りである。
メタロキサンの合成のより具体的な方法としては、例えば国際公開第2019/188834号や国際公開第2019/188835号に記載の方法が挙げられる。
一般式(6)で表される化合物としては、特に制限はないが、国際公開第2017/90512号に記載された金属アルコキシドなどが挙げられる。
一般式(7)で表される化合物としては、特に制限はないが、同文献における一般式(2)で表される化合物として例示された化合物、国際公開第2019/188835号の一般式(4)で表される化合物として例示された化合物などが挙げられる。
メタロキサンの合成において、必要に応じて添加される触媒に特に制限はないが、塩基性触媒が好ましく用いられる。塩基触媒を用いることにより、特に高分子量のメタロキサンを得ることができる。塩基触媒のなかでも、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジンがより好ましい。
[(B)脂肪族多官能チオール化合物]
本発明において(B)脂肪族多官能チオール化合物(以下、単に「(B)チオール化合物」と称する)とは、チオール基を2個以上有する脂肪族化合物をいう。
本発明において(B)脂肪族多官能チオール化合物(以下、単に「(B)チオール化合物」と称する)とは、チオール基を2個以上有する脂肪族化合物をいう。
本実施の形態1に係る組成物は、(B)チオール化合物を含有することにより、(B)チオール化合物中の硫黄原子が(A)メタロキサンに含まれるチタン原子に配位するため、熱処理工程におけるメタロキサン分子同士のメタロキサン結合の形成速度を緩和させることができる。そのため、硬化膜形成時の収縮による応力集中を回避することができ、硬化膜のクラック耐性を向上させることができる。さらに、硬化膜中に(B)チオール化合物に由来する硫黄原子が残存することで、硬化膜の屈折率の向上に大きく寄与する。また、(B)チオール化合物が芳香環を含まない脂肪族化合物であることで、チタン原子へ配位したときの着色を抑制することができる。
(B)チオール化合物は、3個以上のチオール基を有する化合物であることが好ましい。この場合、3個以上のチオール基がチタン原子に配位するため、収縮応力を多点で緩和することができ、硬化膜のクラック耐性をより向上させることができる。
また、硬化膜のクラック耐性を向上させても屈折率が低下しにくいことから、(B)チオール化合物は、エーテル結合を含むことがより好ましい。ただし、本発明ではエステル基の一部として存在する-O-はエーテル基に含まれない。
(B)チオール化合物は、(B1)下記一般式(1)で表される構造を3個以上10個以下有する化合物であることがさらに好ましい。
一般式(1)中、R1は、炭素数1~8のアルキレン基または炭素数5~12の脂環式アルキレン基である。複数存在するR1はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
R1に使用される炭素数1~8のアルキレン基および炭素数5~12の脂環式アルキレン基は、直鎖であっても分岐していてもよい。炭素数1~8のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基などが挙げられる。炭素数5~12の脂環式アルキル基としては、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基などが挙げられる。これらの中でも立体障害が小さく、(A)メタロキサンとの相互作用を阻害しない観点から、メチレン基、エチレン基、プロピレン基およびブチレン基が好ましい。
(B)チオール化合物が一般式(1)で表される構造を3個以上有する場合、(A)メタロキサンとの相互作用をより強固とし、硬化膜のクラック耐性がより向上する。また、(B)チオール化合物中の一般式(1)で表される構造の数が10個以下である場合、硬化膜の膜密度を向上させることができる。(B)チオール化合物中の一般式(1)で表される構造の数は、好ましくは8個以下であり、より好ましくは6個以下である。
(B)チオール化合物は、下記一般式(2)および/または(3)で表される構造を有する化合物であることが特に好ましい。
一般式(2)および(3)中、R2は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~12の脂環式アルキル基または(-R1SH)基であり、R2のうち3個以上が(-R1SH)基である。
R2に使用される炭素数1~8のアルキル基および炭素数5~12の脂環式アルキル基は、直鎖であっても分岐していてもよい。炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基などが挙げられる。炭素数5~12の脂環式アルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などが挙げられる。これらの中でも立体障害が小さく、(A)メタロキサンとの相互作用を阻害しない観点から、水素原子、メチル基およびエチル基が好ましい。
(B)チオール化合物が一般式(2)および/または(3)で表される構造を有する場合、(A)メタロキサンとの相互作用および硬化収縮時の応力緩和をより強固とし、クラック耐性がより向上する。
(B)チオール化合物の具体例としては、1,2-エタンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール、2,2-プロパンジチオール、1,2-ブタンジチオール、1,3-ブタンジチオール、1,4-ブタンジチオール、2,2-ブタンジチオール、2,3-ブタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,8-オクタンジチオール、1,9-ノナンジチオール、1,10-デカンジチオール、1,11-ウンデカンジチオール、1,16-ヘキサデカンジチオール、p-メンタン-2,9-ジチオール、1,3-ジメルカプト-2-プロパノール、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジオール、2,3-ジヒドロキシ-1,4-ブタンジチオール、ビス(2-メルカプトエチルエーテル)、1,2-ビス(2-メルカプトエトキシ)エタン、2-メルカプトエチルスルフィド、1,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、テトラ(エチレングリコール)ジチオール、ヘキサ(エチレングリコール)ジチオール、エチレンビスチオグリコラート、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオナート)、ビス(メルカプト酢酸)テトラメチレン、2,3-ジメルカプトこはく酸、6,8-ジメルカプト-n-オクタン酸、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、3,9-ビス(2-メルカプトエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,4-シクロヘキサンジメタンチオール、トリメチロールプロパンジプロパンチオール等の2官能チオール;3-メルカプト-2,2-ビス(メルカプトメチル)-1-プロパノール、2-エチル-2-(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジチオール、1,2,4-シクロヘキサントリエタンチオール、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-1,3-プロパンジオールトリス-(3-メルカプトプロピオネート)、トリス(メルカプト酢酸)1,2,3-プロパントリイル、ペンタエリスリトールトリプロパンチオール、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、1,3,5-トリス(2-(3-スルファニルブタノイルオキシ)エチル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン、1,3,5-トリス[-(2-メルカプトエチルスルファニル)プロピル]イソシアヌレート等の3官能チオール;2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジチオール、4,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、4,8-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、ペンタエリスリトールテトラキス(3-チオグリコラート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラプロパンチオール等の4官能チオール;およびジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサプロパンチオール等の6官能チオールが挙げられる。これらは1種類のみ使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
(B)チオール化合物の市販品としては、TMMP、TEMPIC、PEMP、DPMP、Multhiol Y-3またはMulthiol Y-4(SC有機化学(株)製)、カレンズMT(登録商標)PE1、NR1またはTPMB(昭和電工(株)製)等が挙げられる。
本発明の実施の形態に係る組成物において、(B)チオール化合物の含有量は、(A)メタロキサン100質量部に対し5~60質量部であることが好ましい。(B)チオール化合物の含有量が(A)メタロキサン100質量部に対し5質量部以上であることで、クラック耐性をより向上できる。(B)チオール化合物の含有量は、(A)メタロキサン100質量部に対し、より好ましくは10質量部以上であり、さらに好ましくは20質量部以上である。一方、(B)チオール化合物の含有量が(A)メタロキサン100質量部に対し60質量部以下であることで、硬化膜中の(A)メタロキサンの占める割合が増えるため、膜密度を向上させることができる。(B)チオール化合物の含有量は、(A)メタロキサン100質量部に対し、より好ましくは50質量部以下であり、さらに好ましくは40質量部以下である。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る組成物は、(A)Ti、ZnおよびZrからなる群より選ばれる金属原子と酸素原子との繰り返し構造を含むメタロキサン、および(B)脂肪族多官能チオール化合物を含有し、上記(B)脂肪族多官能チオール化合物が(B1)下記一般式(1)で表される構造を3個以上10個以下有する脂肪族多官能チオール化合物(以下、「(B1)チオール化合物」と称する)である組成物である。
本発明の実施の形態2に係る組成物は、(A)Ti、ZnおよびZrからなる群より選ばれる金属原子と酸素原子との繰り返し構造を含むメタロキサン、および(B)脂肪族多官能チオール化合物を含有し、上記(B)脂肪族多官能チオール化合物が(B1)下記一般式(1)で表される構造を3個以上10個以下有する脂肪族多官能チオール化合物(以下、「(B1)チオール化合物」と称する)である組成物である。
R1は、炭素数1~8のアルキレン基または炭素数5~12の脂環式アルキレン基である。複数存在するR1はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
[(A)メタロキサン]
本実施の形態2における(A)メタロキサンとしては、重量平均分子量の制限がないことを除いて、実施の形態1おける(A)メタロキサンと同様のものを用いることができる。なお、本実施の形態2における(A)メタロキサンの重量平均分子量は、500以上200万以下が好ましく、1000以上150万以下がより好ましい。
本実施の形態2における(A)メタロキサンとしては、重量平均分子量の制限がないことを除いて、実施の形態1おける(A)メタロキサンと同様のものを用いることができる。なお、本実施の形態2における(A)メタロキサンの重量平均分子量は、500以上200万以下が好ましく、1000以上150万以下がより好ましい。
[(B)チオール化合物]
本実施の形態2において、(B)チオール化合物は、(B1)チオール化合物である。(B1)チオール化合物は、熱処理工程におけるメタロキサン分子同士のメタロキサン結合の形成速度を大きく緩和するため、(A)メタロキサンの重量平均分子量が5万1000を下回る場合であっても、厚膜で、屈折率と透明性の高い硬化膜を得ることができる。(B1)チオール化合物としては、実施の形態1おけるものと同様のものを用いることができる。
本実施の形態2において、(B)チオール化合物は、(B1)チオール化合物である。(B1)チオール化合物は、熱処理工程におけるメタロキサン分子同士のメタロキサン結合の形成速度を大きく緩和するため、(A)メタロキサンの重量平均分子量が5万1000を下回る場合であっても、厚膜で、屈折率と透明性の高い硬化膜を得ることができる。(B1)チオール化合物としては、実施の形態1おけるものと同様のものを用いることができる。
(複数の実施形態に共通する要素)
[溶剤]
本発明の実施の形態に係る組成物は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤を用いることにより、組成物を任意の粘度に調節することができる。それにより、組成物の塗膜性が良好となる。
[溶剤]
本発明の実施の形態に係る組成物は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤を用いることにより、組成物を任意の粘度に調節することができる。それにより、組成物の塗膜性が良好となる。
有機溶剤は、メタロキサンの製造で得られるメタロキサン溶液中の有機溶剤がそのまま用いられたものでも良いし、メタロキサン溶液に別の有機溶剤が追加されたものでも良い。
組成物に含まれる有機溶剤に特に制限はないが、メタロキサンの合成で用いた溶剤と同様のものが用いられることが好ましい。さらに好ましくは非プロトン極性溶剤である。非プロトン性極性溶剤を用いることにより、メタロキサンの安定性が向上する。それにより、長期保管時においても粘度の上昇が小さい、保存安定性に優れた組成物とすることができる。
非プロトン性極性溶剤の具体例として、例えば、アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ジメトキシエタン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラメチル尿素、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、炭酸プロピレン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素、N,N-ジメチルイソブチルアミド、2,6-ジメチル-4-ヘプタノンなどが挙げられる。
本発明の実施の形態に係る組成物の固形分濃度は、1質量%以上50質量%以下が好ましく、2質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。組成物の固形分濃度を上記範囲とすることで、後述する塗布工程における塗布膜を膜厚均一性のよいものとすることができる。組成物の固形分濃度は、アルミカップに組成物を1.0g秤取し、ホットプレートを用いて250℃で30分間加熱して液分を蒸発させ、加熱後のアルミカップに残った固形分を秤量することにより得られる。
メタロキサンおよび有機溶剤を含む組成物の25℃における粘度は、1mPa・s以上1000mPa・s以下であることが好ましく、1mPa・s以上500mPa・s以下であることがより好ましく、1mPa・s以上200mPa・s以下であることがさらに好ましい。組成物の粘度を上記範囲とすることにより、後述する塗布工程における塗布膜を膜厚均一性のよいものとすることができる。組成物の粘度は、組成物の温度25℃とし、E型粘度計を用いて、任意の回転数で測定することにより得られる。
[その他の成分]
本発明の組成物は、その他の成分を含有していても良い。その他の成分としては、無機粒子や、界面活性剤、シランカップリング剤、架橋剤、架橋促進剤などが挙げられる。
本発明の組成物は、その他の成分を含有していても良い。その他の成分としては、無機粒子や、界面活性剤、シランカップリング剤、架橋剤、架橋促進剤などが挙げられる。
(硬化膜)
本発明の実施の形態に係る組成物を基板上に塗布し加熱することにより、硬化膜とすることができる。加熱により、本発明の実施の形態に係る組成物に含まれるメタロキサン分子同士が結合してさらに高分子量化する。このようにして得られた硬化膜は、電子密度の高い金属原子を主鎖に有する樹脂を主体とする膜となるため、硬化膜中における金属原子の密度を高くすることができ、容易に高い膜密度を得ることができる。また、自由電子を有さない誘電体となることから、高い耐熱性を得ることができる。
本発明の実施の形態に係る組成物を基板上に塗布し加熱することにより、硬化膜とすることができる。加熱により、本発明の実施の形態に係る組成物に含まれるメタロキサン分子同士が結合してさらに高分子量化する。このようにして得られた硬化膜は、電子密度の高い金属原子を主鎖に有する樹脂を主体とする膜となるため、硬化膜中における金属原子の密度を高くすることができ、容易に高い膜密度を得ることができる。また、自由電子を有さない誘電体となることから、高い耐熱性を得ることができる。
硬化膜を形成する基板に特に制限はないが、シリコンウェハやサファイアウェハ、ガラス、光学フィルムなどが挙げられる。ガラスとしては、例えば、アルカリガラス、無アルカリガラス、熱強化ガラス又は化学強化ガラスが挙げられる。光学フィルムとしては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド又はシクロオレフィンポリマーからなるフィルムが挙げられる。無機固体物が形成された基板であってもよい。無機固体物とは、有機化合物以外の、非金属物質から構成される固体の総称である。無機固体物に特に制限はないが、酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ヒ素化ガリウム(GaAs)、リン化インジウム(InP)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化タンタル(TaN)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、窒化ホウ素(BN)、窒化チタン(TiN)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、酸化インジウム(InO3)、酸化スズ(SnO2)、硫化亜鉛(ZnS)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO3)および酸化モリブデン(MoO3)、シリコン(Si)からなる群より選ばれる1種以上の材料で構成されることが好ましく、SiO2、Si3N4およびSiからなる群より選ばれる1種以上の材料で構成されることがさらに好ましい。無機固体物は、複数の無機固体物からなる複合体であってもよい。
組成物を塗布する方法には公知の方法を用いることができる。塗布に用いる装置としては、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング若しくはスリットコーティング等の全面塗布装置又はスクリーン印刷、ロールコーティング、マイクログラビアコーティング若しくはインクジェット等の印刷装置が挙げられる。
塗布後、必要であれば、ホットプレート、オーブン等の加熱装置を用いて加熱(プリベーク)を行ってもよい。プリベークは、50℃以上150℃以下の温度範囲で30秒~30分間行い、プリベーク膜とすることが好ましい。プリベークを行うことにより、膜厚均一性のよいものとすることができる。プリベーク後の膜厚は0.1以上15μm以下が好ましい。
塗布膜、あるいはプリベーク膜を、ホットプレートあるいはオーブンなどの加熱装置を用いて100℃以上500℃以下、好ましくは150℃以上400℃以下、さらに好ましくは200℃以上300℃以下の温度範囲で30秒~10時間程度加熱(キュア)することにより、メタロキサンを含有する硬化膜を得ることができる。加熱温度を下限値以上とすることで、メタロキサンの硬化が進行し、硬化膜の膜密度が上昇する。加熱温度を上限値以下とすることで、基板や無機固体物、および周辺部材への加熱によるダメージを抑制することができる。この硬化膜の膜厚は0.1~15μmが好ましい。
本発明の実施の形態に係る硬化膜は、波長400nmにおける膜厚1μmあたりの光透過率が90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。光透過率は、透明基板上に作成されたものであれば、以下の方法で測定することができる。まず、分光光度計を用いて、基板の紫外可視吸収スペクトルを測定し、これをリファレンスとする。次いで、透明基板上に作成した硬化膜の紫外可視吸収スペクトルを測定し、リファレンスとの差異により、硬化膜の紫外可視吸収スペクトルを算出する。得られた紫外可視吸収スペクトルと硬化膜の膜厚を用いて、マイクレンズの波長400nmにおける膜厚1μmあたりの光透過率を算出する。
得られる硬化膜は、波長633nmにおける屈折率が1.70以上2.20以下であることが好ましく、1.77以上2.10以下であることがより好ましい。
硬化膜の波長633nmにおける屈折率は、プリズムカプラを用いたプリズムカップリング法により、得ることができる。
(用途)
上述の硬化膜は屈折率や絶縁性に優れるため、固体撮像素子、ディスプレイ等の電子部品の部材として好適に用いられる。部材とは、電子部品を組み立てている部分品を指す。すなわち、本発明の実施の形態に係る部材は、上述したメタロキサンまたはその組成物を含有する硬化膜を具備するものである。本発明の実施の形態に係る電子部品は、このような硬化膜を具備するものである。例えば、固体撮像素子の部材として、集光用レンズや、集光用レンズと光センサー部とを繋ぐ光導波路、反射防止膜などが挙げられる。ディスプレイの部材として、インデックスマッチング材、平坦化材、絶縁保護材などが挙げられる。
上述の硬化膜は屈折率や絶縁性に優れるため、固体撮像素子、ディスプレイ等の電子部品の部材として好適に用いられる。部材とは、電子部品を組み立てている部分品を指す。すなわち、本発明の実施の形態に係る部材は、上述したメタロキサンまたはその組成物を含有する硬化膜を具備するものである。本発明の実施の形態に係る電子部品は、このような硬化膜を具備するものである。例えば、固体撮像素子の部材として、集光用レンズや、集光用レンズと光センサー部とを繋ぐ光導波路、反射防止膜などが挙げられる。ディスプレイの部材として、インデックスマッチング材、平坦化材、絶縁保護材などが挙げられる。
また、本発明の実施の形態に係る硬化膜は、多層型NANDフラッシュメモリにおける保護膜やドライエッチングレジスト、半導体装置のバッファコート、層間絶縁膜および各種保護膜として用いることもできる。
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
(重量平均分子量の測定)
重量平均分子量(Mw)は、以下の方法により求めた。展開溶媒として、N-メチル-2-ピロリドンに塩化リチウムを溶解し、0.02mol/dm3塩化リチウムN-メチル-2-ピロリドン溶液を作成した。展開溶媒にメタロキサンを0.2wt%となるように溶解し、これを試料溶液とした。展開溶媒を多孔質ゲルカラム(東ソー製TSKgel α-M、α-3000各1本)に流速0.5mL/minで充填し、ここに試料溶液を0.2mL注入した。カラム溶出物を示差屈折率検出器(昭和電工製RI-201型)により検出し、溶出時間を解析することにより、重量平均分子量(Mw)を求めた。
重量平均分子量(Mw)は、以下の方法により求めた。展開溶媒として、N-メチル-2-ピロリドンに塩化リチウムを溶解し、0.02mol/dm3塩化リチウムN-メチル-2-ピロリドン溶液を作成した。展開溶媒にメタロキサンを0.2wt%となるように溶解し、これを試料溶液とした。展開溶媒を多孔質ゲルカラム(東ソー製TSKgel α-M、α-3000各1本)に流速0.5mL/minで充填し、ここに試料溶液を0.2mL注入した。カラム溶出物を示差屈折率検出器(昭和電工製RI-201型)により検出し、溶出時間を解析することにより、重量平均分子量(Mw)を求めた。
(実施例及び比較例で用いた材料)
[(A)メタロキサン]
(合成例1)メタロキサン(A-1)の合成
トリ-n-ブトキシ(トリメチルシロキシ)チタンを35.6g(0.1mol)、および溶媒としてN,N-ジメチルイソブチルアミド(以下、DMIBと略す)を24.2g混合し、これを溶液1とした。また、水を5.4g(0.3mol)、水希釈溶媒としてイソプロピルアルコール(以下、IPAと略す)を49g、および重合触媒としてジシクロヘキシルを0.98g(0.005mol)混合し、これを溶液2とした。
[(A)メタロキサン]
(合成例1)メタロキサン(A-1)の合成
トリ-n-ブトキシ(トリメチルシロキシ)チタンを35.6g(0.1mol)、および溶媒としてN,N-ジメチルイソブチルアミド(以下、DMIBと略す)を24.2g混合し、これを溶液1とした。また、水を5.4g(0.3mol)、水希釈溶媒としてイソプロピルアルコール(以下、IPAと略す)を49g、および重合触媒としてジシクロヘキシルを0.98g(0.005mol)混合し、これを溶液2とした。
容量500mlの三口フラスコに、溶液1の全量を仕込み、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて30分間撹拌した。その後、加水分解を目的として溶液2の全量を滴下ロートに充填し、30分かけてフラスコ内に添加した。溶液2の添加中、フラスコ内溶液に析出は生じず、均一な無色透明溶液であった。その後、重縮合を目的として、オイルバスを30分間かけて140℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱撹拌した(内温は100~130℃)。反応中にIPA、副生成物であるブタノールおよび水が留出した。
加熱終了後、フラスコ内容液を室温まで冷却し、その後固形分濃度が25wt%となるようにDMIBを加えメタロキサン溶液(A-1)を得た。得られたメタロキサン溶液の外観は、淡黄色透明であった。重量平均分子量(Mw)は、108,000であった。
(合成例2~4)
溶剤および加水分解時の水とIPAを表1記載の量に変更した以外は、合成例1と同様の方法でメタロキサン溶液(A-2)~(A-4)を得た。いずれの溶液の外観も、淡黄色透明であった。重量平均分子量(Mw)は表1の通りである。
溶剤および加水分解時の水とIPAを表1記載の量に変更した以外は、合成例1と同様の方法でメタロキサン溶液(A-2)~(A-4)を得た。いずれの溶液の外観も、淡黄色透明であった。重量平均分子量(Mw)は表1の通りである。
(調合例)
テトラ-n-ブトキシチタン重合体(B-10)(日本曹達株式会社)を固形分濃度が25wt%になるように、2,6-ジメチル-4-ヘプタノンに溶解し、メタロキサン溶液(A-5)とした。
テトラ-n-ブトキシチタン重合体(B-10)(日本曹達株式会社)を固形分濃度が25wt%になるように、2,6-ジメチル-4-ヘプタノンに溶解し、メタロキサン溶液(A-5)とした。
[(B)脂肪族多官能チオール化合物]
(B-1)ペンタエリスリトールトリプロパンチオール(SC有機化学株式会社)
(B-2)テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学株式会社)
(B-3)トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学株式会社)
(B-4)ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学株式会社)
(B-5)ジペンタエリスリトール ヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学株式会社)
(B-6)トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート(SC有機化学株式会社)
(B-7)1,3,5-トリス(2-(3-スルファニルブタノイルオキシ)エチル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン(昭和電工株式会社)
(B-8)1-ペンタンチオール(東京化成工業株式会社)
(B-9)1,3,5-ベンゼントリチオール(東京化成工業株式会社)
(B-10)TEPIC-UC(日産化学株式会社)。
(B-1)ペンタエリスリトールトリプロパンチオール(SC有機化学株式会社)
(B-2)テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学株式会社)
(B-3)トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学株式会社)
(B-4)ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学株式会社)
(B-5)ジペンタエリスリトール ヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学株式会社)
(B-6)トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート(SC有機化学株式会社)
(B-7)1,3,5-トリス(2-(3-スルファニルブタノイルオキシ)エチル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン(昭和電工株式会社)
(B-8)1-ペンタンチオール(東京化成工業株式会社)
(B-9)1,3,5-ベンゼントリチオール(東京化成工業株式会社)
(B-10)TEPIC-UC(日産化学株式会社)。
[溶剤]
DMIB:N,N’-ジメチルイソブチルアミド(三菱ガス化学株式会社)
2,6-ジメチル-4-ヘプタノン(富士フイルム和光純薬株式会社)。
DMIB:N,N’-ジメチルイソブチルアミド(三菱ガス化学株式会社)
2,6-ジメチル-4-ヘプタノン(富士フイルム和光純薬株式会社)。
(実施例1)
まず、得られた25wt%のメタロキサン(A-1)溶液8.0gに対し、脂肪族多官能チオール化合物(B-1)を0.5g、DMIBと2,6-ジメチル-4-ヘプタノンの混合溶媒を1.5g添加し、撹拌することにより、組成物1を得た。
まず、得られた25wt%のメタロキサン(A-1)溶液8.0gに対し、脂肪族多官能チオール化合物(B-1)を0.5g、DMIBと2,6-ジメチル-4-ヘプタノンの混合溶媒を1.5g添加し、撹拌することにより、組成物1を得た。
組成物1を、4インチシリコンウェハにスピンコーター(ミカサ(株)製「1H-360S(商品名)」)を用いてスピンコートし、基板をホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製「SCW-636(商品名)」)を用いて100℃で3分間加熱し、プリベーク膜を作成し、ホットプレートを用いて230℃で5分間キュアして硬化膜を作成した。なお、膜厚は、光干渉式膜厚計(大日本スクリ-ン製造(株)製ラムダエ-スSTM602)を用いて、測定した。
(硬化膜の屈折率測定)
プリズムカプラ(メトリコン社製PC-2000)を用いて、プリズムカップリング法により、シリコンウェハ上に作成した硬化膜の波長633nmにおける屈折率を測定した。得られた屈折率について、それぞれ下記3段階で評価した。AおよびBを合格とした。
A : 1.83以上
B : 1.77以上1.83未満
C : 1.77未満。
プリズムカプラ(メトリコン社製PC-2000)を用いて、プリズムカップリング法により、シリコンウェハ上に作成した硬化膜の波長633nmにおける屈折率を測定した。得られた屈折率について、それぞれ下記3段階で評価した。AおよびBを合格とした。
A : 1.83以上
B : 1.77以上1.83未満
C : 1.77未満。
(硬化膜の形成可能膜厚評価)
得られた硬化膜のクラック耐性について、それぞれ下記3段階で評価した。AおよびBを合格とした。なお、表2中の形成可能膜厚の値は、膜厚を変えて硬化膜を作製したときの、クラックが観察されない最大膜厚の値である。
A : 光学顕微鏡(倍率:5倍)においてクラックが観察されない最大膜厚が、0.75μm以上である。
B : 光学顕微鏡(倍率:5倍)においてクラックが観察されない最大膜厚が、0.5μm以上0.75μm未満である。
C : 光学顕微鏡(倍率:5倍)においてクラックが観察されない最大膜厚が、0.5μm未満である。
得られた硬化膜のクラック耐性について、それぞれ下記3段階で評価した。AおよびBを合格とした。なお、表2中の形成可能膜厚の値は、膜厚を変えて硬化膜を作製したときの、クラックが観察されない最大膜厚の値である。
A : 光学顕微鏡(倍率:5倍)においてクラックが観察されない最大膜厚が、0.75μm以上である。
B : 光学顕微鏡(倍率:5倍)においてクラックが観察されない最大膜厚が、0.5μm以上0.75μm未満である。
C : 光学顕微鏡(倍率:5倍)においてクラックが観察されない最大膜厚が、0.5μm未満である。
(硬化膜の光透過率測定)
分光光度計(島津製作所製MultiSpec-1500)を用いて、テンパックスガラス板の紫外可視吸収スペクトルを測定し、これをリファレンスとした。次いで、テンパックスガラス板上に作成した硬化膜の紫外可視吸収スペクトルを測定し、リファレンスとの差異により、硬化膜の紫外可視吸収スペクトルを算出した。得られた紫外可視吸収スペクトルと膜厚を用いて、硬化膜の波長400nmにおける膜厚1μmあたりの光透過率を算出した。得られた透過率について、それぞれ下記3段階で評価した。AおよびBを合格とした。
A : 95%以上
B : 90%以上95%未満
C : 90%未満
屈折率、形成可能膜厚および透過率の評価結果を、表2に示す。
分光光度計(島津製作所製MultiSpec-1500)を用いて、テンパックスガラス板の紫外可視吸収スペクトルを測定し、これをリファレンスとした。次いで、テンパックスガラス板上に作成した硬化膜の紫外可視吸収スペクトルを測定し、リファレンスとの差異により、硬化膜の紫外可視吸収スペクトルを算出した。得られた紫外可視吸収スペクトルと膜厚を用いて、硬化膜の波長400nmにおける膜厚1μmあたりの光透過率を算出した。得られた透過率について、それぞれ下記3段階で評価した。AおよびBを合格とした。
A : 95%以上
B : 90%以上95%未満
C : 90%未満
屈折率、形成可能膜厚および透過率の評価結果を、表2に示す。
(実施例2~4)
脂肪族多官能チオール化合物(B-1)の使用量を表2に記載の通りとなるよう変更したこと以外は実施例1と同様の方法で組成物を作製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
脂肪族多官能チオール化合物(B-1)の使用量を表2に記載の通りとなるよう変更したこと以外は実施例1と同様の方法で組成物を作製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
(実施例5~10)
脂肪族多官能チオール化合物の種類を(B-1)から(B-2)~(B-7)へそれぞれ変更したこと以外は実施例1と同様の方法で組成物を作製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
脂肪族多官能チオール化合物の種類を(B-1)から(B-2)~(B-7)へそれぞれ変更したこと以外は実施例1と同様の方法で組成物を作製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
(実施例11~12)
メタロキサンの種類を(A-1)から(A-2)、(A-3)へそれぞれ変更したこと以外は実施例6と同様の方法で組成物を作製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
メタロキサンの種類を(A-1)から(A-2)、(A-3)へそれぞれ変更したこと以外は実施例6と同様の方法で組成物を作製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
(実施例13)
メタロキサンの種類を(A-1)から(A-5)へ変更したこと以外は実施例1と同様の方法で組成物を作製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
メタロキサンの種類を(A-1)から(A-5)へ変更したこと以外は実施例1と同様の方法で組成物を作製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
(比較例1)
脂肪族多官能チオール化合物を使用しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で組成物を作製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
脂肪族多官能チオール化合物を使用しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で組成物を作製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
(比較例2~4)
脂肪族多官能チオール化合物の種類を(B-1)から(B-8)~(B-10)へそれぞれ変更したこと以外は実施例1と同様の方法で組成物を作製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
脂肪族多官能チオール化合物の種類を(B-1)から(B-8)~(B-10)へそれぞれ変更したこと以外は実施例1と同様の方法で組成物を作製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
(比較例5)
メタロキサンの種類を(A-1)から(A-4)へ変更したこと以外は実施例6と同様の方法で組成物を作製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
メタロキサンの種類を(A-1)から(A-4)へ変更したこと以外は実施例6と同様の方法で組成物を作製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
(比較例6)
メタロキサンの種類を(A-1)から(A-5)へ変更したこと以外は比較例1と同様の方法で組成物を作製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
メタロキサンの種類を(A-1)から(A-5)へ変更したこと以外は比較例1と同様の方法で組成物を作製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
Claims (14)
- (A)Ti、ZnおよびZrからなる群より選ばれる金属原子と酸素原子との繰り返し構造を含むメタロキサン(以下「(A)メタロキサン」と称する)、および(B)脂肪族多官能チオール化合物を含有し、前記(A)メタロキサンの重量平均分子量が5万1000以上200万以下である組成物。
- (B)脂肪族多官能チオール化合物が、3個以上のチオール基を有する化合物である、請求項1に記載の組成物。
- 前記チオール化合物が、さらにエーテル結合を含む化合物である、請求項2に記載の組成物。
- (B)脂肪族多官能チオール化合物の含有量が、(A)メタロキサン100質量部に対して5~60質量部である、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
- (A)メタロキサンが下記一般式(4)で表される構造単位を有するメタロキサンである、請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
R5は、ヒドロキシ基、炭素数1~12のアルキル基、炭素数5~12の脂環式アルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~13のアラルキル基、シロキサン結合を有する基から基の中から任意に選ばれる。複数存在するR5は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
R6およびR7は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数5~12の脂環式アルキル基、炭素数6~12のアリール基または炭素数7~13のアラルキル基である。R6およびR7は炭素-炭素飽和結合または炭素-炭素不飽和結合を介して連結し、環構造を形成していてもよい。
MはTi、ZnおよびZrからなる群より選ばれる金属原子を示す。
mは金属原子Mの価数を示す整数であり、aは1~(m-2)の整数である。) - 前記(A)メタロキサンに含まれる金属原子がTiである、請求項1~7のいずれかに記載の組成物。
- 請求項1~9のいずれかに記載の組成物を硬化させてなる硬化膜。
- 波長400nmにおける膜厚1μmあたりの光透過率が90%以上である、請求項10に記載の硬化膜。
- 請求項1~9のいずれかに記載の組成物を加熱する工程を含む硬化膜の製造方法。
- 請求項10または11に記載の硬化膜を具備する部材。
- 請求項13に記載の部材を具備する電子部品。
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