JP2023078067A - 自動車のサイドシル構造 - Google Patents
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Abstract
Description
また、特許文献2、3には、サイドシル内部を縦通する仕切部材を備え、この仕切部材によりサイドシル内の閉断面空間が車両幅方向で2つの閉断面空間に仕切られた構造において、サイドシル内の閉断面空間に車両幅方向に沿った複数のバルクヘッドを配設し、このバルクヘッドと仕切部材との組合せにより、側面衝突時のサイドシルの断面崩れを防止する技術が開示されている。これらの技術において、仕切部材は、側面衝突時にサイドシルが上下方向に開いて断面崩壊するのを防止するために設けられている。特許文献2では、バルクヘッドは、サイドシル内の閉断面空間において仕切部材を挟んだ一方の空間のみに配設される。一方、特許文献3では、バルクヘッドは、サイドシル内の閉断面空間において仕切部材を挟んだ両側に配設される。
また、特許文献5には、サイドシル内の閉断面空間に、車両幅方向に沿う稜線部を互いに間隔を空けて複数保有し、車体の前後方向に沿って上下する波形状を有する衝撃吸収部材を配置することで、衝撃吸収能力を保持しつつ局部的な変形を抑制する技術が開示されている。
また、特許文献6には、車両フレーム内の空洞を補強するためのシステムとして、複数の横断リブに相互接続された複数の長手リブを含み、空洞壁内に構造補強をもたらす剛体キャリアと、スチフナに相当する挿入部材と、空洞壁とキャリアとを接合する接合材料とで構成される構造補強システム(図2)が開示されている。
また、特許文献2、3のように、仕切部材を有するサイドシルにおいて、サイドシル内の閉断面空間にバルクヘッドを配設した場合も十分な衝突エネルギー吸収特性が得られない。ここで、特許文献2に開示された技術は、バルクヘッドが仕切部材を挟んだ一方の閉断面空間のみに配設されるため、その一方の閉断面空間の断面形状を維持する機能しか持たず、十分な衝突エネルギー吸収特性が得られない。また、特許文献3に開示された技術のように、仕切部材を挟んだ両方の空間にバルクヘッドが配設される場合も、得られる衝突エネルギー吸収特性は十分なものではない。
また、特許文献4のように、仕切部材を有するサイドシルにおいて、単に仕切部材の両側(仕切部材の内側及び外側)にハット断面形状の衝撃吸収部材を配置しただけでは、十分な衝突エネルギー吸収特性が得られない。
また、特許文献5に開示された技術は、側面衝突時の衝撃荷重を、車幅方向に垂直な断面に分散して一様に伝達できるので、高い衝突エネルギー吸収特性が得られるが、車両前後方向に一定な断面を持つサイドシル内補強材では、補強する必要のない部位にも補強部材が存在するため重量が過剰になる可能性がある。
また、特許文献6に開示された技術は、横断リブおよび長手リブの厚さおよび間隔について、厚さが2~8mm、間隔が20~40mmとしており、特許文献5と同様に補強する必要のない部位にも補強部材が存在するため重量が過剰になる可能性がある。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
閉断面空間(3a),(3b)内において、仕切部材(2)を両側から挟んだ状態で仕切部材(2)に接合され、仕切部材(2)との間でそれぞれ閉断面空間(5a),(5b)を形成する1対の断面溝形部材(4a),(4b)と、
各閉断面空間(5a),(5b)内に車両幅方向に沿って設けられることで閉断面空間(5a),(5b)を仕切る部材であって、閉断面空間(5a),(5b)内の車両前後方向で間隔をおいた複数箇所に設けられるバルクヘッド(6)により構成される衝撃吸収構造体(A)を有し、
該衝撃吸収構造体(A)において、閉断面空間(5a)内のバルクヘッド(6)と閉断面空間(5b)内のバルクヘッド(6)は、仕切部材(2)を挟んで車両幅方向で対向して設けられるとともに、各バルクヘッド(6)は少なくとも断面溝形部材(4a)または断面溝形部材(4b)に接合されることを特徴とする自動車のサイドシル構造。
[3]上記[1]または[2]のサイドシル構造において、バルクヘッド(6)は、車両前後方向におけるフロアクロスメンバの幅内となる領域に設けられるバルクヘッド(6x)と、フロアクロスメンバの幅外となる領域に設けられるバルクヘッド(6y)とからなり、
車両前後方向において、
フロアクロスメンバの幅内となる領域の2箇所以上にバルクヘッド(6x)が設けられるとともに、フロアクロスメンバの幅外となる領域の1箇所以上にバルクヘッド(6y)が設けられ、
隣り合う2つのバルクヘッド(6x)の間隔をw1、バルクヘッド(6x)とこれと隣り合うバルクヘッド(6y)との間隔をw2とした場合、w1<w2とすることを特徴とする自動車のサイドシル構造。
[5]上記[3]または[4]のサイドシル構造において、間隔w2が254mm以下であることを特徴とする自動車のサイドシル構造。
[6]上記[1]~[5]のいずれかのサイドシル構造において、各断面溝形部材(4a),(4b)の縦方向面部(40)と、これと相対するサイドシル(1)の縦方向面部(100)とが、(i)直に接合または当接している、(ii)他の部材を介して接合または当接している、(iii)接合または当接することなく、所定の間隙を空けて対向している、のいずれかであることを特徴とする自動車のサイドシル構造。
[8]上記[1]~[7]のいずれかのサイドシル構造において、衝撃吸収構造体(A)を構成する金属板の引張強度が500MPa級以上であることを特徴とする自動車のサイドシル構造。
[9]上記[1]~[8]のいずれかのサイドシル構造において、バルクヘッド(6)にビード(60)が形成されていることを特徴とする自動車のサイドシル構造。
[10]上記[1]~[9]のいずれかのサイドシル構造において、衝撃吸収構造体(A)は、仕切部材(2)を挟んだインナ側部分とアウタ側部分のうちの一方が他方よりも車両高さ方向に延在していることを特徴とする自動車のサイドシル構造。
[11]上記[1]~[9]のいずれかのサイドシル構造において、衝撃吸収構造体(A)に、サイドシル(1)の内面と相対して凹陥部(c)が形成されていることを特徴とする自動車のサイドシル構造。
サイドシル1は、断面溝形形状のサイドシルアウタ1aとサイドシルインナ1bが間に仕切部材2を挟んだ状態で接合されることで構成されている。したがって、このサイドシル構造は、サイドシル1内の閉断面空間3を仕切部材2が縦通し、この仕切部材2により閉断面空間3が車両幅方向で2つの閉断面空間3a,3bに仕切られた構造となっている。このサイドシル構造の詳細については後述する。
仕切部材2も金属板で構成され、完全な平板ではなく、平板を曲げ成形したものを用いてもよい。
仕切部材2は、その上下端部がサイドシル本体の上下端(サイドシルアウタ1aとサイドシルインナ1bのフランジ部102)に接合されているため、側面衝突時にサイドシル1の断面が上下に開いて崩壊するのを抑制(断面崩壊の抑制)する高い耐力が得られ、衝突特性を高めるのに寄与する。
以上のようなサイドシル構造において、本発明では、サイドシル1内の閉断面空間3を縦通する仕切部材2を利用し、その閉断面空間3内に特定の構造の衝撃吸収構造体Aを設けること、すなわち、「仕切部材2を両側から挟んで接合される1対の断面溝形部材4a,4bと、これら断面溝形部材4a,4bと仕切部材2との間で形成される2つの閉断面空間内5a,5bに所定の条件で設けられる複数のバルクヘッド6とで構成され、それらが構造上一体化された衝撃吸収構造体A」を設けることが特徴である。これにより、少ない衝突変形量で高い衝突エネルギー吸収特性が得られるサイドシル構造とすることができる。また、衝撃吸収構造体Aは、必要最小限の構成部材(特に最小限のバルクヘッド設置数)で高い曲げ剛性が得られるため、構成部材による車体の重量増加も抑えることができる。
この衝撃吸収構造体Aは、車両前後方向においてサイドシルの少なくともバッテリーケースサイドメンバ90に沿った部分に設けられる。
断面溝形部材4a,4bは、閉断面空間3a,3b内において車両前後方向(サイドシル長手方向)に沿って配置され、仕切部材2を両側から挟んだ状態で、それぞれのフランジ部42を介して仕切部材2に接合(通常、スポット溶接による接合)され、仕切部材2との間でそれぞれ閉断面空間5a,5bを形成する。
バルクヘッド6は、側面衝突時に仕切部材2と協働して断面溝形部材4a,4bの断面崩壊を抑えるとともに、バルクヘッド6自体が座屈して曲げ圧壊して、衝突エネルギーを吸収する。
閉断面空間5a内のバルクヘッド6と閉断面空間5b内のバルクヘッド6は、仕切部材2を挟んで車両幅方向で対向して(すなわち、車両前後方向で同じ位置に)設けられる。これにより、衝撃吸収構造体Aのアウタ側部分とインナ側部分の断面形状を維持する機能が適切に発揮でき、高い衝突エネルギー吸収特性を得ることができる。
バルクヘッド6は、閉断面空間5a,5b内の車両前後方向で等間隔に設けてもよいが、例えば、図2に示すように広い間隔と狭い間隔が交互になるよう設けてもよく、さらに、後述するように、車両前後方向の領域ごとに異なる間隔で設けるようにしてもよい。
また、衝撃吸収構造体Aおよび仕切部材2に用いる素材に、高張力鋼板を用いると、サイドシル1の内部に配置される衝撃吸収構造体Aおよび仕切部材2は、サイドシルのリンフォースとしても機能する。したがって、衝撃吸収構造体Aおよび仕切部材2に用いる金属板は、1180MPa級以上の高張力鋼板とするのが特に好ましい。
本発明のサイドシル構造が備える衝撃吸収構造体Aは、仕切部材2を両側から挟んで接合された断面溝形部材4a,4bと、この断面溝形部材4a,4b内部の閉断面空間5a,5bに設けられるバルクヘッド6とが、仕切部材2とともに一体化した構造を有する。換言すると、仕切部材2を介して設けられる断面溝形部材4a,4bがバルクヘッド6を内包し、これらが一体化した構造を有する。このような構造により、衝撃吸収構造体A全体が高い曲げ剛性(側面衝突荷重に対する曲げ変形抵抗)を有し、このため側面衝突荷重の入力箇所周辺での局所的な変形が抑制され、側面衝突時に衝撃吸収構造体A全体を変形させることにより、衝突エネルギー吸収(EA)を高めることができる。
図6は、車両前後方向におけるバルクヘッド6の他の配置形態例を示したものであり、バルクヘッド6を車両前後方向の領域ごとに異なる間隔で設けたものである。
これらの配置形態では、車両前後方向で間隔をおいた複数箇所に設けられるバルクヘッド6が、車両前後方向におけるフロアクロスメンバ8の幅wa内となる領域に設けられるバルクヘッド6xとそれ以外の領域(フロアクロスメンバ8の幅外となる領域)に設けられるバルクヘッド6yからなる。そして、車両前後方向において、フロアクロスメンバ8の幅wa内となる領域の2箇所以上(図6の実施形態では2箇所)にバルクヘッド6xが設けられるとともに、フロアクロスメンバ8の幅外となる領域の1箇所以上にバルクヘッド6yが設けられている。さらに、隣り合う2つのバルクヘッド6xどうしの間隔をw1、バルクヘッド6xとこれと隣り合うバルクヘッド6yとの間隔をw2とした場合、w1<w2としている。以上のようなバルクヘッド6の配置形態とするのは、フロアクロスメンバ8の幅wa内となる領域では、2箇所以上にバルクヘッド6xを設けてバルクヘッド6xどうしの間隔を小さくすることにより衝突特性を高めるとともに、それ以外の領域のバルクヘッド6yとバルクヘッド6xとの間隔を大きくすることにより、バルクヘッド6の設置数を抑え、重量軽減を図るためである。なお、フロアクロスメンバ8の幅外となる領域の2箇所以上にバルクヘッド6yを設ける場合、隣り合う2つのバルクヘッド6yどうしの間隔w3についてもw1<w3とすることが好ましい。
フロアクロスメンバ8の幅wa内の複数箇所にバルクヘッド6xを配置する場合、隣り合う2つのバルクヘッド6xどうしの間隔w1が過度に小さいと、フロアクロスメンバ8の幅wa内での衝突特性を高める効果が低下したり、バルクヘッド6xの設置数がいたずらに増加したりすることにつながるので好ましくない。このためバルクヘッド6xは、間隔w1とフロアクロスメンバ4の幅waとの比w1/waが0.4以上1.0以下となるように配置することが好ましい。
また、図6(イ),(ウ)の配置形態は、隣り合うフロアクロスメンバ8間であってフロアクロスメンバ8の幅外となる領域の2~3箇所にバルクヘッド6yを設けた例であり、バルクヘッド6x,6yがw1<w2、w1<w3を満足する条件で設けられている。
また、図7(イ),(ウ)の配置形態は、隣り合うフロアクロスメンバ8間であってフロアクロスメンバ8の幅外となる領域の2~3箇所にバルクヘッド6y(2枚のバルクヘッドを1セットとするバルクヘッドセット)を設けた例であり、バルクヘッド6x,6yがw1<w2、w1<w3を満足する条件で設けられている。
なお、断面溝形部材4aと断面溝形部材4bの各横方向面部41A,41Bとサイドシル1(サイドシルアウタ1aとサイドシルインナ1bの各横方向面部101A,101B)の間隔(スペース)は、縦方向面部40とフロアクロスメンバ8およびバッテリーケース9との高さ方向の重なり代を調整し、フロアクロスメンバ8とバッテリーケース9に入力する荷重が適当なバランスとなるように、調整すればよい。
図11は、その場合の実施形態を模式的に示すものであり、サイドシルの車両幅方向での縦断面図である。図11(ア)は、座屈耐力を高くするためにバルクヘッド6の本体部(隔壁部)に車両幅方向に沿ったビード60を設けたものである。一方、図11(イ)は、逆に座屈耐力を低くするために、バルクヘッド6の本体部(隔壁部)に上下方向に沿ったビード60(クラッシュビード)を設けたものである。この図11(イ)のようなビード60を設ける理由は、先に説明した通りである。
図12(a)の実施形態は、衝撃吸収構造体Aの下部を、アウタ側部分がインナ側部分よりも下方向に延在した構造(すなわち下方向に長く形成した構造)としたものである。
衝撃吸収構造体Aの上部は、アウタ側部分とインナ側部分が仕切部材2を挟んで相対している。一方、衝撃吸収構造体Aの下部は、アウタ側部分がインナ側部分よりも下方向に延在し、部分eを構成している。そして、仕切部材2を挟んで部分eと相対するインナ側部分には、衝撃吸収構造体Aが占めない空間部s(閉断面空間3b内の空間部)が形成されている。
図12(a)の実施形態と同様、衝撃吸収構造体Aの上部は、アウタ側部分とインナ側部分が仕切部材2を挟んで相対している。一方、衝撃吸収構造体Aの下部は、インナ側部分がアウタ側部分よりも下方向に延在し、部分eを構成している。そして、仕切部材2を挟んで部分eと相対するアウタ側部分には、衝撃吸収構造体Aが占めない空間部s(閉断面空間3a内の空間部)が形成されている。
図14の実施形態は、衝撃吸収構造体Aのインナ側部分の下部領域に、サイドシル1(サイドシルインナ1b)の内面と相対して凹陥部cを形成したものである。この凹陥部cは、閉断面空間3b内において衝撃吸収構造体Aとサイドシル1(サイドシルインナ1b)間に車両幅方向で空間(凹陥部cによる空間)が確保されるように、サイドシルインナ1b(縦方向面部100および横方向面部101B)に面した衝撃吸収構造体Aのインナ側部分(断面溝形部材4b)の下部領域を段状に凹陥させることで形成されている。すなわち、この凹陥部cは、衝撃吸収構造体Aのインナ側部分の下部領域において、サイドシルインナ1bの縦方向面部100および横方向面部101Bに面して形成されている。なお、凹陥部cは、衝撃吸収構造体Aの下部領域と、それよりも上の領域を含むように形成する(すなわち、衝撃吸収構造体Aの高さ方向で下部を含む領域に形成する)こともできる。
図12の実施形態と同様、衝撃吸収構造体Aの上部は、アウタ側部分とインナ側部分が仕切部材2を挟んで相対している。
インナ側部分のバルクヘッド6は、凹陥部cが形成されたインナ側部分(断面溝形部材4b)の断面形状に合わせた形状に構成されている。
図16に基づいて、本発明のサイドシル構造の側面衝突時の衝突変形形態について説明する。図16は、本発明のサイドシル構造の水平断面において、側面ポール衝突時の変形の様子を段階的に示したものであり、tは衝突開始からの時間(秒数)を示している。
まず、サイドシル1自体の断面変形の形態を説明すると、最初に、サイドシルアウタ1aの上下の横方向面部101A,101B(エネルギー吸収部)が外側に広がるように曲げ圧壊して潰れて衝突エネルギーを吸収する(0.002sec~)。このサイドシルアウタ1aが圧壊する過程において、仕切部材2によってサイドシル1の断面が上下に開いて崩壊(断面崩壊)するのが抑えられるので、以降0.006~0.014secまで、サイドシルアウタ1aの横方向面部101A,101B(エネルギー吸収部)は曲げ変形を継続して、完全につぶれるまで衝突エネルギーを吸収し続ける。
上記のようなサイドシルアウタ1aの潰れ変形に伴い、サイドシル1のフランジ部102を介してサイドシルインナ1bに衝突荷重が伝達され、仕切部材2によって断面が上下方向に開いて崩壊することなく、0.004sec以降、サイドシルインナ1bの横方向面部101A、101B(エネルギー吸収部)のフランジ部側がサイドシル1の閉断面の内側に凸状に曲げ圧壊する。
衝突体:R127mm(直径254mm相当)の剛体ポール
衝突速度:30.9km/h
衝突エネルギー:32kJ
この試験では、衝撃吸収構造体Aのアウタ側部分(断面溝形部材4aとバルクヘッド6)が主に変形することで、衝突体侵入量が100mm以内で衝突エネルギー32kJを吸収可能であることが示されている。
したがって、本発明のサイドシル構造では、図3に示すように両サイドシル1間のフロアパネル7の下方にバッテリーモジュールを備えた自動車(特に電気自動車)において、衝撃吸収構造体Aが側面衝突時に車両幅方向から入力された荷重によって圧壊してエネルギー吸収しつつ、フロアクロスメンバ8やバッテリーケース9に荷重を伝達することで、バッテリーパック10に荷重が伝達しないようにし、衝突の衝撃から保護することができる。
[実施例1]
図19(a)~(e)に、発明例および比較例の試験体と試験条件を示す。図19(a)~(e)の各図において、左側の図はサイドシルの車両幅方向での断面図であり、右側の図はサイドシルの水平断面図であって、サイドシルに対する衝突体(ポール)の衝突位置とフロアクロスメンバの位置を示している。
この衝突試験では、車両側部構造のうちサイドシルおよび衝撃吸収部材(発明例では衝撃吸収構造体A)を試験体とし、衝突エネルギー吸収特性の評価を行った。また、サイドシルに隣接するフロアクロスメンバやバッテリーケースサイドメンバを試験体固定用の剛体治具とし、治具への伝達荷重を接触反力により評価した。
図19(c)に示す比較例1の試験体は、発明例2の衝撃吸収構造体Aの構造からバルクヘッド6を取り除いたものである。
図19(d)に示す比較例2の試験体は、サイドシルの内部にバルクヘッドのみを設けたものであり、フロアクロスメンバ模擬部の幅内となる領域の2箇所にバルクヘッドを設けたものである。
図19(e)に示す比較例3の試験体は、サイドシルの内部に仕切部材や衝撃吸収部材を配置せず、サイドシルのみの試験体としたものである。
衝突体のストロークは最大100mmであるところ、図20(a)に示す発明例1は、衝突体の最大侵入量100mmに到達する前(96mm)に衝突体が停止し、この発明例1のサイドシル構造による吸収エネルギーは32.0kJであった。
これに対して図20(b)~(e)に示す発明例2、比較例1~比較例3は、いずれも吸収エネルギー32.0kJ(発明例1の吸収エネルギー)に到達する前に、衝突体の最大ストローク100mmに到達した。
発明例1の吸収エネルギーは、サイドシルのみの比較例3の6.7倍であり、また、バルクヘッドのない比較例1の3.0倍、バルクヘッドのみの比較例2の3.4倍であり、比較例1と比較例2の合計20.1kJに対しても、その約1.6倍となった。
また、発明例2は、発明例1よりも車両前後方向のバルクヘッドの設置数が少ないので、発明例1よりも吸収エネルギーは低下(▼19%)するものの、比較例3の6.0倍であり、また、比較例1の2.4倍、比較例2の2.7倍であり、比較例1と比較例2の合計の約1.3倍となった。
さらに、発明例1と発明例2の結果から、車両前後方向において、フロアクロスメンバの幅内の領域だけでなく、そのほかの領域にも複数のバルクヘッドを配置することにより、衝突特性がさらに向上することが確認できた。
試験体として、上述した[実施例1]の試験体の衝撃吸収構造体Aの車両幅方向での縦断面の形状を、図22(a)~(о)(発明例3~発明例17)に示す形状に変更したものを用いた。試験条件は[実施例1]と同一とし、衝突吸収エネルギーを評価した。
図22(a)に示す発明例3の試験体は、[実施例1]における発明例1の試験体の仕切部材2が垂直であるのに対して、仕切部材2を車両高さ方向で傾斜させたものである。また、図22(b)、(c)に示す発明例4および発明例5の試験体は、衝撃吸収構造体Aの高さを発明例3の試験体よりも小さくしたものであり、それぞれ発明例3の試験体の75%(発明例4、図22(b)、サイドシル1の高さの66%)、50%(発明例5、図22(c)、サイドシル1の高さの43%)としたものである。
図22(d)~(f)に示す発明例6~8の試験体は、衝撃吸収構造体Aの車両幅方向の長さ(幅)を発明例3の試験体よりも小さくし、サイドシル1と衝撃吸収構造体Aとの間に間隙を設けたものである。発明例6および発明例7の試験体は、インナ側部分の車両幅方向の長さ(幅)を、発明例3の試験体よりもそれぞれ35%(発明例6、図22(d))、24%(発明例7、図22(e))短くしたものである。また、発明例8(図22(f))は、アウタ側部分の車両幅方向の長さ(幅)を発明例3の試験体よりも31%短くしたものである。
発明例9および発明例10の試験体は、衝撃吸収構造体Aのインナ側部分の高さを発明例3の試験体よりも小さくしたものであり、それぞれ発明例3の試験体の75%(発明例9、図22(g)、サイドシル1の高さの66%)、50%(発明例10、図22(h)、サイドシル1の高さの43%)としたものである。発明例11(図22(i))および発明例12(図22(j))の試験体は、衝撃吸収構造体Aのアウタ側部分の高さを発明例3の試験体よりも小さくしたものであり、それぞれ発明例3の試験体の50%(サイドシル1の高さの43%)としたものである。発明例11と発明例12の試験体は、インナ側部分が延在する方向が異なっているので、インナ側部分に対するアウタ側部分の車両高さ方向での位置が異なっている。
図23に、発明例3~17における衝突吸収エネルギーを示す。なお、比較のため、[実施例1]の発明例1、比較例1~3の衝突吸収エネルギーも併せて示す。図23の結果から、発明例3~173のいずれも、比較例1~3よりも衝突特性が向上することが確認できた。
1a サイドシルアウタ
1b サイドシルインナ
2 仕切部材
3,3a,3b 閉断面空間
4a,4b 断面溝形部材
5a,5b 閉断面空間
6,6x,6y バルクヘッド
7 フロアパネル
8 フロアクロスメンバ
9 バッテリーケース
10 バッテリーパック
11 固定用ボルト
12 接合部
13 接着剤
40 縦方向面部
41A,41B 横方向面部
42 フランジ部
60 ビード
61 フランジ部
70 フランジ部
90 バッテリーケースサイドメンバ
91 バッテリーケース底板
92 取付用フランジ
100 縦方向面部
101A,101B 横方向面部
102 フランジ部
A 衝撃吸収構造体
e 部分
c 凹陥部
s 空間部
f,g コーナーR部
Claims (10)
- サイドシル(1)内の閉断面空間(3)を縦通する仕切部材(2)を備え、該仕切部材(2)により閉断面空間(3)が車両幅方向で2つの閉断面空間(3a),(3b)に仕切られたサイドシル構造において、
閉断面空間(3a),(3b)内において、仕切部材(2)を両側から挟んだ状態で仕切部材(2)に接合され、仕切部材(2)との間でそれぞれ閉断面空間(5a),(5b)を形成する1対の断面溝形部材(4a),(4b)と、
各閉断面空間(5a),(5b)内に車両幅方向に沿って設けられることで閉断面空間(5a),(5b)を仕切る部材であって、閉断面空間(5a),(5b)内の車両前後方向で間隔をおいた複数箇所に設けられるバルクヘッド(6)とで構成される衝撃吸収構造体(A)を有し、
該衝撃吸収構造体(A)において、閉断面空間(5a)内のバルクヘッド(6)と閉断面空間(5b)内のバルクヘッド(6)は、仕切部材(2)を挟んで車両幅方向で対向して設けられるとともに、各バルクヘッド(6)は少なくとも断面溝形部材(4a)または断面溝形部材(4b)に接合されることを特徴とする自動車のサイドシル構造。 - 各バルクヘッド(6)は、断面溝形部材(4a)または断面溝形部材(4b)と仕切部材(2)にそれぞれ接合されることを特徴とする請求項1に記載の自動車のサイドシル構造。
- バルクヘッド(6)は、車両前後方向におけるフロアクロスメンバの幅内となる領域に設けられるバルクヘッド(6x)と、フロアクロスメンバの幅外となる領域に設けられるバルクヘッド(6y)とからなり、
車両前後方向において、
フロアクロスメンバの幅内となる領域の2箇所以上にバルクヘッド(6x)が設けられるとともに、フロアクロスメンバの幅外となる領域の1箇所以上にバルクヘッド(6y)が設けられ、
隣り合う2つのバルクヘッド(6x)の間隔をw1、バルクヘッド(6x)とこれと隣り合うバルクヘッド(6y)との間隔をw2とした場合、w1<w2とすることを特徴とする請求項1に記載の自動車のサイドシル構造。 - 少なくとも一部のバルクヘッド(6y)が、隣接して設けられる2つ以上のバルクヘッドで構成されるバルクヘッドセットからなることを特徴とする請求項3に記載の自動車のサイドシル構造。
- 間隔w2が254mm以下であることを特徴とする請求項3に記載の自動車のサイドシル構造。
- 各断面溝形部材(4a),(4b)の縦方向面部(40)と、これと相対するサイドシル(1)の縦方向面部(100)とが、(i)直に接合または当接している、(ii)他の部材を介して接合または当接している、(iii)接合または当接することなく、所定の間隙を空けて対向している、のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の自動車のサイドシル構造。
- 衝撃吸収構造体(A)を構成する金属板は、降伏強度がフロアクロスメンバを構成する金属板の降伏強度以下であり、引張強度が500MPa級以上であること特徴とする請求項1に記載の自動車のサイドシル構造。
- バルクヘッド(6)にビード(60)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車のサイドシル構造。
- 衝撃吸収構造体(A)は、仕切部材(2)を挟んだインナ側部分とアウタ側部分のうちの一方が他方よりも車両高さ方向に延在していることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の自動車のサイドシル構造。
- 衝撃吸収構造体(A)に、サイドシル(1)の内面と相対して凹陥部(c)が形成されていることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の自動車のサイドシル構造。
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