JP2023074343A - 消臭性樹脂組成物 - Google Patents

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耕治 岡田
Koji Okada
陽一郎 榊
Yoichiro Sakaki
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Abstract

【課題】消臭性能に優れた消臭性成形品を作製することができる消臭性樹脂組成物を提供する。【解決手段】JIS K7129-3:2019に準拠した40℃、90%RHで測定した水蒸気透過率が、20cc/m2・24h/atom以上である熱可塑性樹脂100重量部に対し、珈琲抽出残渣10~150質量部を含む消臭性樹脂組成物に関する。【選択図】 なし

Description

本発明は、消臭性樹脂組成物に関する。
近年、缶入り珈琲、珈琲自動販売機、インスタント珈琲等が大量に消費され、これらの製品の生産工場や、大手チェーンカフェ等において、珈琲抽出残渣が大量に発生している。該残渣は、これまで、埋め立て、焼却等によって廃棄処分されることが多いが、発生量の増大と環境問題に対する関心の高まりに伴い、このような方法による処分が困難になりつつある。珈琲抽出残渣の有効利用は環境問題の見地からも今後の重要な課題となっている。
珈琲抽出残渣は、保温性、防腐性、虫害防除性に優れ、また悪臭のマスキング剤としての特異な性質を有する。この特異な性質を利用して、従来存在しなかった有用な材料を開発しようとする試みがある。例えば、特許文献1には、天然有機物抽出残渣を含むオレフィン系樹脂からなる食品トレーが開示されている。しかしながら、ポリオレフィン樹脂を対象とし、実際には茶殻を使用するものであった。また、ポリオレフィン樹脂を使用したとしても、消臭効果は充分なものではなかった。
一方、ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性、塗装性などに優れた熱可塑性樹脂であり、電気、電子、機械、自動車、日用品などの分野に広く用いられている。また、ポリカーボネート樹脂にABS樹脂をブレンドしたポリマーアロイ組成物は、優れた成形性から、様々な分野に適用されている。最近では、消臭性を備えたインテリア材など多様な用途の商品への展開の要望が高いが、ポリカーボネート樹脂を利用した実用性の高い製品の供給はなされていないのが実情である。
特開2000-281917号公報
本発明は、消臭性能に優れた消臭性成形品を作製することができる消臭性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意検討を行った結果、使用する熱可塑性樹脂の水蒸気透過率が、珈琲抽出残渣の消臭性能を発揮させる大きな支配要因であって、水蒸気透過率を20cc/m・24h/atom以上とすれば、高い消臭性能を発揮することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、JIS K7129-3:2019に準拠した40℃、90%RHで測定した水蒸気透過率が、20cc/m・24h/atom以上である熱可塑性樹脂100重量部に対し、珈琲抽出残渣10~150質量部を含む消臭性樹脂組成物に関する。
前記熱可塑性樹脂が、芳香族ポリカーボネート樹脂40~100質量%およびゴム強化スチレン系樹脂0~60質量%を含むことが好ましい。
さらに、前記樹脂成分100質量部に対して酸化防止剤(D)を5質量部以下含有することが好ましい。
前記酸化防止剤(D)が、リン系酸化防止剤であることが好ましい。
また、本発明は、前記消臭性樹脂組成物からなる消臭性成形品に関する。
前記消臭性成形品は、インテリア用途であることが好ましい。
さらに、本発明は、JIS K7129-3:2019に準拠した40℃、90%RHで測定した水蒸気透過率が、20cc/m・24h/atom以上である熱可塑性樹脂100重量部に対し、水分量が30%未満の珈琲抽出残渣10~150質量部を溶融混練する工程を含む、前記消臭性樹脂組成物の製造方法に関する。
本発明の消臭性樹脂組成物によれば、高い消臭性を有する消臭性成形品を作製することができ、インテリア用途等に適用でき、工業的利用価値が極めて高い。
以下に、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者らは当業者が本発明を充分に理解するために以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
本発明の消臭性樹脂組成物は、JIS K7129-3:2019に準拠した40℃、90%RHで測定した水蒸気透過率が、20cc/m・24h/atom以上である熱可塑性樹脂100重量部に対し、珈琲抽出残渣10~150質量部を含むことを特徴とする。
熱可塑性樹脂のJIS K7129-3:2019に準拠した40℃、90%RH、厚み25μmで測定した水蒸気透過率は20cc/m・24h/atom以上であるが、30cc/m・24h/atom以上が好ましく、40cc/m・24h/atom以上がより好ましい。20cc/m・24h/atom未満では、充分な消臭性能を発現することはできない。
水蒸気透過率が20cc/m・24h/atom以上の熱可塑性樹脂としては、たとえば芳香族ポリカーボネート樹脂(44)、スチレン系樹脂(ポリスチレン樹脂(30)、ABS樹脂(33))、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH(38))、ナイロン6(47)、ポリアセタール(47)、ポリメチルメタクリレート(41)などが挙げられる。本発明では、ポリアクリロニトリル(6)、ポリエチレンテレフタレート(8)、ポリ塩化ビニル(7)、ポリテトラフルオロエチレン(1)、ポリエチレン(3)、ポリプロピレン(2)などは使用することができない。ここで、括弧内の数字は水蒸気透過率を示す。なかでも、ポリカーボネート、スチレン系樹脂が好ましく、生産性の点で、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂の混合物が好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-第三ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3、5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′-ジヒドロキシ-3,3′-ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′-ジヒドロキシ-3,3′-ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′-ジヒドロキシ-3,3′-ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
これらは、単独または2種類以上混合して使用できるが、ハロゲンで置換されていない方が燃焼時に懸念される当該ハロゲンを含むガスの環境への排出防止の面から好ましい。これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′-ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ヘプテン、2,4,6-ジメチル-2,4,6-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ヘプタン、1,3,5-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ベンゾール、1,1,1-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-エタンおよび2,2-ビス-[4,4-(4,4′-ジヒドロキシジフェニル)-シクロヘキシル]-プロパンなどが挙げられる。
芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量には特に制限はないが、成形加工性、強度の面より通常10000~100000、より好ましくは15000~30000、さらに好ましくは17000~26000の範囲である。また、かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調整剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。上記粘度平均分子量の測定方法は、ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンを溶媒として0.5質量%の溶液とし、キャノンフェンスケ型粘度管を用い温度20℃で比粘度(ηsp)を測定し、濃度換算により極限粘度〔η〕を求め下記のSCHNELLの式から算出した。
〔η〕=1.23×10-4M0.83
本発明で使用するスチレン系樹脂としては、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、ハイインパクト・ポリスチレン樹脂(HIPS)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)などが挙げられる。好ましいスチレン系樹脂の例としては、ゴム質重合体の存在下に芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体成分がグラフト共重合したグラフト共重合体を含むものが挙げられ、さらに好ましくは塊状重合によって作られるABS樹脂が挙げられる。
スチレン系樹脂の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂およびスチレン系樹脂からなる樹脂成分100質量%中、0~60質量%が好ましく、1~60質量%がより好ましく、20~50質量%がさらに好ましい。スチレン系樹脂の配合量が1質量%未満の場合、成形加工性が不足し、60質量%を超えると、耐熱性が低下する可能性がある。
本発明で使用する珈琲抽出残渣は、珈琲豆をミルなどでパウダー状に粉砕したものを、珈琲として抽出したあとの残渣物である。珈琲抽出残渣は、カフェイン等アルカロイド類が含まれているため、防腐性及び殺虫性が高く、また珈琲特有の臭気とこれら多成分の複合作用により、悪臭に対する消臭剤としての作用を有する。珈琲抽出残渣としては、例えば、タリーズ製珈琲抽出残渣として入手することができる。また、珈琲抽出残渣は、多くの水分を含有しており、造粒時に樹脂の分解を引き起こす恐れがあることから、予め乾燥したものを用いる。乾燥方法としては、珈琲抽出残渣中の水分を取り除くものであれば特に制限は無いが、一般的な熱風循環式の乾燥設備などで、乾燥温度140~170℃、乾燥時間5~8時間程度である。より好ましくは、乾燥温度150~160℃、乾燥時間6~7時間である。
使用する珈琲抽出残渣の水分量は、30%未満が好ましく、10%未満がより好ましく、5%未満がさらに好ましい。30%以上では、成形加工性が不足する可能性がある。水分量は、乾燥前後の重量を測定することにより測定することができる。
珈琲抽出残渣は、混合してポリマー・バインダーで処理できる任意成分と併用してもよい。このような任意成分としては、例えば、木材チップまたはパウダー、炭酸カルシウム、タルクまたはセラミックス粉末、アルミニウム、銅などの金属粉末(静電気除去剤)、活性炭、ゼオライト粒子などの機能性材料などが挙げられる。
珈琲抽出残渣の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂およびスチレン系樹脂からなる樹脂成分100質量部に対して、10~150質量部であるが、15~100質量部が好ましく、20~70質量部がさらに好ましい。10質量部未満の場合、消臭性が不足する可能性があり、150質量部を超える場合、成形加工性が不足する可能性がある。
本発明の消臭性樹脂組成物は、酸化防止剤を含むことが好ましい。酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤および/またはフェノール系酸化防止剤などが挙げられるが、リン系酸化防止剤を含むことが好ましい。リン系酸化防止剤としては、下記亜リン酸エステル構造を有する亜リン酸エステル化合物が好ましく、例えば、下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表わされる化合物が挙げられる。
Figure 2023074343000001
一般式(1):
Figure 2023074343000002
(式中、Rは、炭素数1~20のアルキル基を示し、aは、0~3の整数を示す)
一般式(1)において、Rは、炭素数1~20のアルキル基であるが、さらには、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましい。
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、特にトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイトが好適であり、例えば、BASF社製のイルガフォス168(「イルガフォス」はビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの登録商標)として商業的に入手可能である。
一般式(2):
Figure 2023074343000003
(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基、炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基又はフェニル基を示す。Rは、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。Xは、単結合、硫黄原子又は式:-CHR-(ここで、Rは、水素原子、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数5~8のシクロアルキル基を示す)で表される基を示す。Aは、炭素数1~8のアルキレン基又は式:*-COR-(ここで、Rは、単結合又は炭素数1~8のアルキレン基を示し、*は、酸素側の結合手であることを示す)で表される基を示す。Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1~8のアルコキシ基又は炭素数7~12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。)
一般式(2)において、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基、炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基又はフェニル基を示す。
ここで、炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、t-ペンチル基、i-オクチル基、t-オクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。炭素数5~8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基としては、例えば、1-メチルシクロペンチル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-メチル-4-i-プロピルシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数7~12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α-メチルベンジル基、α,α-ジメチルベンジル基等が挙げられる。
、R及びRとしては、それぞれ独立して、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基又は炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基が好ましい。特に、R及びRとしては、それぞれ独立して、t-ブチル基、t-ペンチル基、t-オクチル基等のt-アルキル基、シクロヘキシル基又は1-メチルシクロヘキシル基が好ましい。特に、Rとしては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、t-ペンチル基等の炭素数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、t-ブチル基又はt-ペンチル基がより好ましい。
としては、水素原子、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数5~8のシクロアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、t-ペンチル基等の炭素数1~5のアルキル基がより好ましい。
一般式(2)において、Rは、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、前記R、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基が挙げられる。特に、Rとしては、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。
一般式(2)において、Xは、単結合、硫黄原子又は式:-CHR-で表される基を示す。ここで、式:-CHR-中のRは、水素原子、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数5~8のシクロアルキル基を示す。炭素数1~8のアルキル基及び炭素数5~8のシクロアルキル基としては、例えば、それぞれ前記R、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基及びシクロアルキル基が挙げられる。特に、Xとしては、単結合、メチレン基、又はメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基等で置換されたメチレン基が好ましく、単結合であることがより好ましい。
一般式(2)において、Aは、炭素数1~8のアルキレン基又は式:*-COR-で表される基を示す。炭素数1~8のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基等が挙げられ、好ましくはプロピレン基である。また、式:*-COR-におけるRは、単結合又は炭素数1~8のアルキレン基を示す。Rを示す炭素数1~8のアルキレン基としては、例えば、前記Aの説明にて例示したアルキレン基が挙げられる。Rは、単結合又はエチレン基であることが好ましい。また、式:*-COR-における*は、酸素側の結合手であり、カルボニル基がフォスファイト基の酸素原子と結合していることを示す。
一般式(2)において、Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1~8のアルコキシ基又は炭素数7~12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。炭素数1~8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t-ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。炭素数7~12のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、α-メチルベンジルオキシ基、α,α-ジメチルベンジルオキシ基等が挙げられる。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、前記R2、R3、R5及びR6の説明にて例示したアルキル基が挙げられる。
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-〔3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン、6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ]-4,8-ジ-t-ブチル-2,10-ジメチル-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-4,8-ジ-t-ブチル-2,10-ジメチル-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン等が挙げられる。これらの中でも、特に光学特性が求められる分野にポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合には、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-〔3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンが好適であり、例えば、住友化学(株)製のスミライザーGP(「スミライザー」は登録商標)として商業的に入手可能である。
一般式(3):
Figure 2023074343000004
(式中、R及びR10は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、b及びcは、それぞれ独立して、0~3の整数を示す。)
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジフォスファイト等が挙げられる。ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトは、(株)ADEKA製のアデカスタブPEP-36(「アデカスタブ」は登録商標)が商業的に入手可能である。
一般式(4):
Figure 2023074343000005
(式中、R11~R18は、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基またはアルケニル基を示す。R11とR12、R13とR14、R15とR16、R17とR18とは、互いに結合して環を形成していても良い。R19~R22は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を示す。d~gは、それぞれ独立して、0~5の整数である。X~Xは、それぞれ独立に、単結合または炭素原子を示す。X~Xが単結合である場合、R11~R22のうち、当該単結合に繋がった官能基は一般式(4)から除外される)
一般式(4)で表される化合物の具体例としては、例えばビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトが挙げられる。これは、Dover Chemical社製、商品名「Doverphos(登録商標) S-9228」、ADEKA社製、商品名「アデカスタブPEP-45」(ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト)として商業的に入手可能である。
また、上記一般式(1)~(4)で表される化合物に代えて、あるいは、上記一般式(1)~(4)で表される何れかの化合物に加えて、下記一般式(5)で表される化合物を使用しても良い。
一般式(5):
Figure 2023074343000006
(式中、R23~R26は炭素数1~20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を示す。)
一般式(5)で表される化合物の具体例としては、例えば、[1,1´-ビフェニル]-4,4-ジイルビス[ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェノキシ)フォスフィン] 等が挙げられ、例えば、BASF社製のイルガフォスP-EPQ(商品名)、クラリアントジャパン(株)製のサンドスタブP-EPQ(商品名)が商業的に入手可能である。
酸化防止剤の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂およびスチレン系樹脂からなる樹脂成分100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、1質量部以下よりが好ましく、0.02~0.8質量部がさらに好ましい。酸化防止剤の配合量が5質量部を超えると、衝撃強度が低下する可能性がある。また、酸化防止剤の配合量が0.02質量部未満では、色相の向上効果が不十分となる可能性がある。
また、本発明に係る樹脂組成物には、リン系酸化防止剤に代えて、または、リン系酸化防止剤とともに、フェノール系酸化防止剤を配合しても良い。
フェノール系酸化防止剤としては、下記一般式(6)で表される化合物を挙げることができる。
一般式(6):
Figure 2023074343000007
(一般式6において、R23は炭素数1~20のアルキル基、又はアルキル基で置換されてもよいアリール基を示す。)
その他のフェノール系酸化防止剤としては、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、2-tert-ブチル-6-(3’-tert-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-ジメチレン-ビス(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-ブチリデン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、1,6-へキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル6-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1,-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’-ジ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-トリ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2-チオジエチレンビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス2[3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、及びテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。これらはいずれも入手容易である。上記フェノール系酸化防止剤は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
なかでも、上記一般式(6)で表される化合物であるn-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好適であり、例えば、ADEKA社製、商品名「アデカスタブAO-50」として商業的に入手可能である。
フェノール系酸化防止剤の量は、芳香族ポリカーボネート樹脂およびスチレン系樹脂からなる樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以下が好ましい。
本発明の消臭性樹脂組成物には、効果を損なわない範囲で、前述した成分以外の熱安定剤、着色剤、離型剤、軟化剤、帯電防止剤、衝撃性改良剤、紫外線吸収剤、顔料、充填剤、流動改良剤等の添加剤を配合しても良い。
本発明の消臭性樹脂組成物を用いて、射出成形や押出成形により、消臭性成形品を作製することができる。消臭性成形品の用途は特に限定されないが、インテリア用途、ペット、室内およびトイレ向け消臭剤などが挙げられる。また射出成形や押出成形する前のペレットを前述の用途へも適用することができる。
本発明の消臭性樹脂組成物の製造方法は、JIS K7129-3:2019に準拠した40℃、90%RHで測定した水蒸気透過率が、20cc/m・24h/atom以上である熱可塑性樹脂100重量部に対し、水分量が30%未満の珈琲抽出残渣10~150質量部を溶融混練する工程を含むことを特徴とする。
本発明にて使用される各種配合成分の配合方法は特に制限はなく、任意の混合機、例えばタンブラー、リボンブレンダー、高速ミキサー等によりこれらを混合し、通常の一軸または二軸押出機で容易に溶融混練することができる。また、これらの配合順序についても特に制限はない。
使用する珈琲抽出残渣には多量の水分を含有しているため、水分量が30%を超える場合には、ミキサ式乾燥機、熱風循環式乾燥機、箱形乾燥機等により予め水分量を低減させた後に、溶融混練する。水分量は10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。水分量が30%を超えると、成形加工性が低下し、造粒ができなくなる。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特にことわりがない限り、「部」及び「%」はそれぞれ質量基準である。
原料として以下のものを使用した。
1.ポリカーボネート樹脂:水蒸気透過度50cc/m・24h/atom
ビスフェノールAとホスゲンから合成されたポリカーボネート樹脂
(住化ポリカーボネート株式会社製 SDポリカ200-20、以下PCと略記)
2.ゴム強化スチレン系樹脂:水蒸気透過度40cc/m・24h/atom
塊状重合法ABS樹脂
(日本エイアンドエル株式会社製 サンタックAT-05、以下ABSと略記)
3.ポリプロピレン樹脂:水蒸気透過度2cc/m・24h/atm
(日本ポリプロ株式会社製のBC03C(商品名)、以下PPと略記)
4.珈琲抽出残渣
(タリーズ製珈琲抽出残渣、以下消臭剤と略記)
5.リン系酸化防止剤(E):
以下の式で表される、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト
Figure 2023074343000008
(BASF社製のイルガフォス168(商品名)、以下(B1)と略記)
実施例1~5及び比較例1~2
表1に示す配合成分および配合比率にて、各種配合成分をタンブラーで混合し、37mm径の二軸押出機(芝浦機械株式会社製TEM37SS)を用いて、シリンダー温度210℃にて溶融混練し、各種ペレットを得た。以下に示す方法で評価した。評価結果を表1に示す。
各種ペレットを、熱風循環式棚式オーブンで90℃、4時間以上乾燥し、株式会社神藤金属工業所製プレス加工機を用いて240℃にて、縦100mm、横100mm、厚み1mmの平板を作成し、消臭試験を行った。
<消臭性試験>
ISO 17299に準拠して、以下に示す方法でアンモニアを用いた消臭試験を行った。
試験方法:ペレット状の試料10gを5リットルのテドラーバッグに入れ、規定濃度のガス3リットルを注入し、経時毎にガス検知管で濃度を測定した。
24時間後のアンモニア濃度40%未満であれば良好な消臭性を示す。
<生産性>
二軸押出機で溶融混練し、ペレット作成までの工程において、押出機先端から出てくるストランドの状態を目視にて確認し、以下の基準で評価した。
〇:ストランドは安定しており、ペレット作成が可能である。
△:ストランドの乱れや切れが発生することが時々あるものの、ペレット作成は可能である。
×:ストランドの乱れや切れが頻発し、ペレット作成が困難である。
Figure 2023074343000009
表1に示したように、実施例1~5の消臭性樹脂組成物は、アンモニアに対する消臭性効果が高く、生産性に優れることを確認できた。一方、比較例1~2の消臭性樹脂組成物は、生産性は問題ないものの、消臭効果はほとんどなかった。
本発明の消臭性樹脂組成物により、消臭性能に優れた消臭性成形品を作製することができ、工業的利用価値が極めて高い。

Claims (7)

  1. JIS K7129-3:2019に準拠した40℃、90%RHで測定した水蒸気透過率が、20cc/m・24h/atom以上である熱可塑性樹脂100重量部に対し、珈琲抽出残渣10~150質量部を含む消臭性樹脂組成物。
  2. 前記熱可塑性樹脂が、芳香族ポリカーボネート樹脂40~100質量%およびスチレン系樹脂0~60質量%を含む請求項1に記載の消臭性樹脂組成物。
  3. さらに、前記樹脂成分100質量部に対して酸化防止剤(D)を5質量部以下含有する請求項1または2に記載の消臭性樹脂組成物。
  4. 前記酸化防止剤(D)が、リン系酸化防止剤である請求項3に記載の消臭性樹脂組成物。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の消臭性樹脂組成物からなる消臭性成形品。
  6. インテリア用途である、請求項5に記載の消臭性成形品。
  7. JIS K7129-3:2019に準拠した40℃、90%RHで測定した水蒸気透過率が、20cc/m・24h/atom以上である熱可塑性樹脂100重量部に対し、水分量が30%未満の珈琲抽出残渣10~150質量部を溶融混練する工程を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の消臭性樹脂組成物の製造方法。
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