JP2023072265A - 結晶格子歪解析方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】走査透過電子顕微鏡によって、10―4nmオーダー以下の局所的な結晶格子歪を解析できる技術を提供する。
【解決手段】走査透過電子顕微鏡によって結晶格子歪を解析する方法であって、一原子を起点として、所定の方向に配列したn番目の原子までの距離Lnsが等しい領域を参照領域とし、参照領域における距離Lnsと、参照領域とは異なる領域である評価領域において、一原子を起点として、所定の方向と平行な方向に配列したn番目の原子までの距離Lnと、を測長する、測長工程と、距離Lnsおよび距離Lnから、10―4nmオーダー以下の結晶格子歪を解析する、結晶格子歪解析工程と、を有する、結晶格子歪解析方法。
【選択図】図1
【解決手段】走査透過電子顕微鏡によって結晶格子歪を解析する方法であって、一原子を起点として、所定の方向に配列したn番目の原子までの距離Lnsが等しい領域を参照領域とし、参照領域における距離Lnsと、参照領域とは異なる領域である評価領域において、一原子を起点として、所定の方向と平行な方向に配列したn番目の原子までの距離Lnと、を測長する、測長工程と、距離Lnsおよび距離Lnから、10―4nmオーダー以下の結晶格子歪を解析する、結晶格子歪解析工程と、を有する、結晶格子歪解析方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、走査透過電子顕微鏡による結晶格子歪解析方法に関する。
材料開発において、材料の物性を詳細に解析することは、特性発現メカニズムを理解する上で重要である。例えば、結晶試料では、結晶格子歪の評価が材料特性を考慮する上で特に重要である。結晶試料の特性は、結晶中の歪量だけではなく歪が発生している場所とも密接に関係する場合が多い。
結晶格子歪を測定する手法としては、一般的にはX線回折装置を用いたリートベルト解析法やラマン分光法、走査透過電子顕微鏡(以下、STEMともいう)を用いた電子回折法等がある。
また、例えば、特許文献1には、球面収差補正STEMによってデフォーカス量を変化させながら取得された原子分解能像を読み込み、原子分機能像の複数の領域のコントラスト値から歪量を算出する技術が開示されている。
本発明の目的は、STEMによって、10―4nmオーダー以下の局所的な結晶格子歪を解析できる技術を提供することである。
本発明の第1の態様は、
走査透過電子顕微鏡によって結晶格子歪を解析する方法であって、
一原子を起点として、所定の方向に配列したn番目の原子までの距離Lnsが等しい領域を参照領域とし、前記参照領域における前記距離Lnsを測長する、参照領域測長工程と、
前記参照領域とは異なる領域である評価領域において、一原子を起点として、前記所定の方向と平行な方向に配列したn番目の原子までの距離Lnを測長する、評価領域測長工程と、
前記距離Lnsおよび前記距離Lnから、10―4nmオーダー以下の結晶格子歪を解析する、結晶格子歪解析工程と、を有する、結晶格子歪解析方法である。
走査透過電子顕微鏡によって結晶格子歪を解析する方法であって、
一原子を起点として、所定の方向に配列したn番目の原子までの距離Lnsが等しい領域を参照領域とし、前記参照領域における前記距離Lnsを測長する、参照領域測長工程と、
前記参照領域とは異なる領域である評価領域において、一原子を起点として、前記所定の方向と平行な方向に配列したn番目の原子までの距離Lnを測長する、評価領域測長工程と、
前記距離Lnsおよび前記距離Lnから、10―4nmオーダー以下の結晶格子歪を解析する、結晶格子歪解析工程と、を有する、結晶格子歪解析方法である。
本発明の第2の態様は、
前記測長工程では、前記参照領域と前記評価領域とが同一視野内に存在するように、前記参照領域および前記評価領域を設定する、上記第1の態様に記載の結晶格子歪解析方法である。
前記測長工程では、前記参照領域と前記評価領域とが同一視野内に存在するように、前記参照領域および前記評価領域を設定する、上記第1の態様に記載の結晶格子歪解析方法である。
本発明の第3の態様は、
前記測長工程では、前記距離Lnsおよび前記距離Lnを測長する際の原子数nを、10以上50以下とする、上記第1または第2の態様に記載の結晶格子歪解析方法である。
前記測長工程では、前記距離Lnsおよび前記距離Lnを測長する際の原子数nを、10以上50以下とする、上記第1または第2の態様に記載の結晶格子歪解析方法である。
本発明の第4の態様は、
前記走査透過電子顕微鏡は、原子分解能電子顕微鏡である、上記第1から第3のいずれか1つの態様に記載の結晶格子歪解析方法である。
前記走査透過電子顕微鏡は、原子分解能電子顕微鏡である、上記第1から第3のいずれか1つの態様に記載の結晶格子歪解析方法である。
本発明の第5の態様は、
前記原子分解能電子顕微鏡により、前記参照領域および前記評価領域を含む原子分解能像を取得する、撮像工程をさらに有する、上記第4の態様に記載の結晶格子歪解析方法である。
前記原子分解能電子顕微鏡により、前記参照領域および前記評価領域を含む原子分解能像を取得する、撮像工程をさらに有する、上記第4の態様に記載の結晶格子歪解析方法である。
本発明の第6の態様は、
前記撮像工程では、前記原子分解能像として、高角度環状暗視野-走査透過電子顕微鏡像を取得する、上記第5の態様に記載の結晶格子歪解析方法である。
前記撮像工程では、前記原子分解能像として、高角度環状暗視野-走査透過電子顕微鏡像を取得する、上記第5の態様に記載の結晶格子歪解析方法である。
本発明の第7の態様は、
前記撮像工程では、前記原子分解能像として、角度制御環状明視野-走査透過電子顕微鏡像を取得する、上記第5の態様に記載の結晶格子歪解析方法である。
前記撮像工程では、前記原子分解能像として、角度制御環状明視野-走査透過電子顕微鏡像を取得する、上記第5の態様に記載の結晶格子歪解析方法である。
本発明の第8の態様は、
前記撮像工程では、観察試料を支持膜付グリッドメッシュで担持して、前記原子分解能像を取得する、上記第5から第7のいずれか1つの態様に記載の結晶格子歪解析方法である。
前記撮像工程では、観察試料を支持膜付グリッドメッシュで担持して、前記原子分解能像を取得する、上記第5から第7のいずれか1つの態様に記載の結晶格子歪解析方法である。
本発明の第9の態様は、
前記撮像工程では、観察試料をイオンミリング法により薄片加工して、前記原子分解能像を取得する、上記第5から第8のいずれか1つの態様に記載の結晶格子歪解析方法である。
前記撮像工程では、観察試料をイオンミリング法により薄片加工して、前記原子分解能像を取得する、上記第5から第8のいずれか1つの態様に記載の結晶格子歪解析方法である。
本発明によれば、STEMによって、10―4nmオーダー以下の局所的な結晶格子歪を解析できる。
[本発明の実施形態の説明]
<発明者の得た知見>
まず、発明者が得た知見について説明する。
<発明者の得た知見>
まず、発明者が得た知見について説明する。
例えば、電子材料において、異元素をドープしてわずかな歪を導入した結晶を用いることがある。このような作為的に作った結晶において、10―4nmオーダー以下の局所的な結晶格子歪の存在と、電気的な材料特性とは、密接な関係がある。したがって、10―4nmオーダー以下の局所的な結晶格子歪を解析することは重要である。なお、本明細書において、10―4nmオーダー以下の結晶格子歪とは、10―3nm未満の結晶格子歪を意味する。
X線回折装置を用いたリートベルト解析法は、試料にX線を照射し、物質の原子・分子の配列状態によってX線が散乱され、得られた物質特有の回折パターンを解析することで結晶性物質の同定、結晶性・配向性の評価、歪量・応力の評価等が可能である。結晶格子歪については、10-4nmから10-5nmオーダーまでの解析ができる。ただし、X線の特性上、表面から数μm程度の深さの平均的な情報が得られるため、例えば、表面から数nmの深さのみに局所的に発生している結晶格子歪については、他の正常な結晶の情報に隠れてしまい正確な結晶格子歪を評価することはできない可能性がある。
ラマン分光法では、ラマン散乱光が歪のない結晶に対し、引張応力に起因する歪は低波数側に、圧縮応力に起因する歪は高波数側にシフトすることを利用して結晶格子歪を評価することができる。しかしながら、ラマン分光法では、103nm(1μm)オーダー程度の領域を対象としているため、10―4nmオーダー以下の結晶格子歪の解析は困難である。
STEMを用いた電子回折法は、歪が生成している部分にnmオーダーの電子線を照射し、試料内で散乱した電子線が結像した電子回折図形(図8参照)を解析することで10-2nmオーダーの原子間の距離を測定することができる。しかしながら、材料特性に影響する結晶格子歪は10-4nmオーダー以下であることが多く、この方法を用いても10―4nmオーダー以下の結晶格子歪の解析は困難である。
上述のように、既存の方法では、10―4nmオーダー以下の局所的な結晶格子歪を解析することは困難である。しかしながら、発明者の鋭意検討の結果、STEMによって撮像した高角度環状暗視野―STEM像または角度制御環状明視野-STEM像から、10-4nmオーダーの局所的な結晶格子歪を精度良く解析できることがわかった。
次に、本発明の一実施形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
<本発明の第1実施形態>
(1)結晶格子歪解析方法
本実施形態の結晶格子歪解析方法について説明する。
(1)結晶格子歪解析方法
本実施形態の結晶格子歪解析方法について説明する。
図1は、本実施形態の結晶格子歪解析方法の一例を示すフローチャートである。図1に示すように、本実施形態の結晶格子歪解析方法は、例えば、撮像工程S101と、測長工程S102と、結晶格子歪解析工程S103と、を有している。
(撮像工程S101)
撮像工程S101は、例えば、STEMにより、結晶格子歪のない領域である参照領域Z1、および、参照領域Z1とは異なる領域(結晶格子歪が発生している領域)である評価領域Z2を含む原子分解能像を取得する工程である。本明細書において、原子分解能像とは、評価対象の原子が判別できる画像を意味する。参照領域Z1および評価領域Z2については、詳細を後述する。
撮像工程S101は、例えば、STEMにより、結晶格子歪のない領域である参照領域Z1、および、参照領域Z1とは異なる領域(結晶格子歪が発生している領域)である評価領域Z2を含む原子分解能像を取得する工程である。本明細書において、原子分解能像とは、評価対象の原子が判別できる画像を意味する。参照領域Z1および評価領域Z2については、詳細を後述する。
撮像工程S101では、例えば、倍率100万倍以上の原子分解能像を取得することが好ましい。これにより、参照領域Z1および評価領域Z2内の原子ひとつひとつを正確に認識することができる。また、撮像工程S101では、例えば、倍率1000万倍以上の原子分解能像を取得することがより好ましい。これにより、後述の測長工程S102において、起点となる原子から所定の方向に配列したn番目の原子までの距離を正確に測長することが可能となる。
撮像工程S101では、例えば、STEMの一種である原子分解能電子顕微鏡を用いて、原子分解能像を取得することが好ましい。原子分解能電子顕微鏡は球面収差補正STEMと呼ばれることもあり、球面収差補正をすることにより、高輝度、かつ高集束度の電子プローブを観察試料に照射して高分解能像を得ることができる。原子分解能電子顕微鏡では容易に倍率が1000万倍以上の像が得られ、STEMより原子の中心が正確に把握できるため、起点となる原子から所定の方向に配列したn番目の原子までの距離を正確に測長することが可能となる。
遷移元素のような重元素で形成されている結晶格子歪を解析する場合、撮像工程S101では、例えば、原子分解能像として、高角度環状暗視野-STEM像を取得することが好ましい。高角度環状暗視野-STEM像を得るための高角度環状暗視野-STEM法は、高角度に散乱された電子を捉える方法で、重元素を優先的に観察することができる。一方、軽元素で形成されている結晶格子歪を解析する場合、撮像工程S101では、例えば、原子分解能像として、角度制御環状明視野-STEM像を取得することが好ましい。角度制御環状明視野-STEM像を得るための角度制御環状明視野-STEM法は、低角度に散乱された電子を環状の検出器で捉える方法で、高角度環状暗視野-STEM法では認識できない水素やリチウム等の軽元素を観察することができる。したがって、撮像工程S101では、観察試料の形態や観察する元素により、高角度環状暗視野-STEM法、または角度制御環状明視野-STEM法を選択する(高角度環状暗視野-STEM像、または角度制御環状明視野-STEM像を取得する)ことが好ましい。
観察試料が10nm程度の微粉末の場合、撮像工程S101では、例えば、観察試料をSTEM用の支持膜付グリッドメッシュで担持して、原子分解能像を取得することが好ましい。支持膜としては、例えば、カーボン膜を用いることができる。また、観察試料が100nm程度以上の粉末、塊状物、または積層基板等の場合、撮像工程S101では、例えば、観察試料をエポキシ樹脂等で包埋したものを薄片加工して、原子分解能像を取得することが好ましい。観察試料を薄片加工する手法としては、ミクロトーム法、FIB法、イオンミリング法等を用いることができる。薄片加工の際に結晶格子歪を形成させないようにする観点からは、観察試料に対してダメージが少ない手法がよく、低エネルギーのアルゴンイオンを用いるイオンミリング法が好適である。イオンミリング法の中でも液体窒素で冷却しながら薄片加工をするクライオイオンミリング法は、熱による変形も抑えることができるためより好適である。また、観察試料が1000nm(1μm)程度以上の粉末、塊状物、または積層基板等の場合、撮像工程S101では、例えば、観察試料をミクロトーム法またはFIB法等で荒加工した後、イオンミリング法またはクライオイオンミリング法で仕上げ加工を行って、原子分解能像を取得することが好ましい。
撮像工程S101では、例えば、支持膜付グリッドメッシュで担持した観察試料、イオンミリング法またはクライオイオンミリング法により薄片加工した観察試料を原子分解能電子顕微鏡にセットし、観察試料の形態や観察したい元素により、高角度環状暗視野-STEM法または角度制御環状明視野-STEM法を選択し、原子ひとつひとつを認識することができる倍率(例えば、100万倍以上、好ましくは1000万倍以上)で、参照領域Z1および評価領域Z2を含む原子分解能像を取得する。なお、撮像工程S101では、参照領域Z1および評価領域Z2を含むひとつの原子分解能像を取得してもよいし、参照領域Z1を含む原子分解能像と、評価領域Z2を含む原子分解能像とを別々に取得してもよい。
(測長工程S102)
測長工程S102は、例えば、参照領域Z1内の一原子を起点として、所定の方向に配列したn番目の原子までの距離Lnsと、評価領域Z2内の一原子を起点として、所定の方向(距離Lnsを測長する際と平行な方向)に配列したn番目の原子までの距離Lnと、を測長する工程である。
測長工程S102は、例えば、参照領域Z1内の一原子を起点として、所定の方向に配列したn番目の原子までの距離Lnsと、評価領域Z2内の一原子を起点として、所定の方向(距離Lnsを測長する際と平行な方向)に配列したn番目の原子までの距離Lnと、を測長する工程である。
測長工程S102では、まず、撮像工程S101で得られた原子分解能像(高角度環状暗視野-STEM像、または角度制御環状明視野-STEM像)から、参照領域Z1および評価領域Z2を設定する。
参照領域Z1とは、結晶格子歪のない領域であり、具体的には、例えば、一原子を起点として、所定の方向に配列したn番目の原子までの距離Lnsが等しい領域である。本明細書において、距離Lnsが等しいとは、参照領域Z1内において、どの原子を起点としたとしても、距離Lnsが±0.1%以内に収まる(特に好ましくは完全一致する)ことを意味する。例えば、原子数nを10として、ある領域の距離Lnsを測長した場合に、距離Lnsが4.995nm以上5.005nm以下(5.000nmの±0.1%以内)に収まっていれば、距離Lnsが等しいと判断し、該領域を参照領域Z1として設定してもよい。
一方、評価領域Z2とは、結晶格子歪が発生している領域であり、具体的には、例えば、一原子を起点として、所定の方向(距離Lnsを測長する際と平行な方向)に配列したn番目の原子までの距離Lnが、距離Lnsの±0.1%以内に収まらない領域である。評価領域Z2は、観察試料の特徴を把握すれば比較的容易に捜索することができる。例えば、積層基板では歪が生じやすい異種の材料が接している界面付近や、結晶構造が崩れやすい表面付近を捜索すればよい。特徴の少ない観察試料の場合は、XRD法、ラマン法またはSTEMを用いた電子回折法等で、結晶格子歪が発生している領域を絞り込んで捜索してもよい。
測長工程S102では、例えば、参照領域Z1と評価領域Z2とが同一視野内に存在するように、参照領域Z1および評価領域Z2を設定することが好ましい。これにより、距離Lnsを測長する際と、距離Lnを測長する際とで、観察視野を切り替えたり、別の原子分解能像に切り替えたりする必要がなくなり、結晶格子歪の解析をより精度よく行うことが可能となる。また、超高倍率(例えば、1000万倍程度)の原子分解能像においては、ドリフト現象(温度変化等によって観察中の試料がゆっくり動いて見える現象)が顕著に観察されてしまう可能性があるが、参照領域Z1と評価領域Z2とが同一視野内に存在するように、参照領域Z1および評価領域Z2を設定した場合、このようなドリフト現象を抑えることができる。これにより、後述の結晶格子歪率を精度よく算出することが可能となる。
測長工程S102では、例えば、参照領域Z1および評価領域Z2を設定したら、参照領域Z1内の一原子を起点として、所定の方向に配列したn番目の原子までの距離Lnsと、評価領域Z2内の一原子を起点として、所定の方向(距離Lnsを測長する際と平行な方向)に配列したn番目の原子までの距離Lnを測長する。この際、参照領域Z1内の任意の一原子を起点として、測長した結果を距離Lnsとして採用して構わない。
測長工程S102では、例えば、距離Lnsおよび距離Lnを測長する際の原子数nを、10以上50以下とすることが好ましい。原子数nが10未満では、結晶格子歪を解析する際の誤差が大きくなってしまう可能性がある。これに対し、原子数nを10以上とすることで、結晶格子歪を解析する際の誤差を低減することができる。一方、原子数nが50を超えると、原子分解能像を高倍率(例えば、1000万倍以上)とした場合、観察視野内に測定する原子が収まりきらない可能性がある。これに対し、原子数nを50以下とすることで、原子分解能像を高倍率とした場合でも、観察視野内に測定する原子を収めることができる。
図2は、本実施形態の原子分解能像の一例を示す模式図である。図2に示すように、測長工程S102では、例えば、起点なる原子を選び、結晶格子歪を測定したい方向にn原子分(図2に示す例では10原子分)の距離を測長する。この際、起点となる原子の中心から終点となる原子の中心までの距離を測長することが好ましい。後述する図4、図5、または図6に示すような輝度強度プロファイルの各ピークの頂点を原子の頂点とすることで、距離Lnsおよび距離Lnを測長しやすくなる。
(結晶格子歪解析工程S103)
結晶格子歪解析工程S103は、例えば、測長工程S102にて測長した距離Lnsおよび距離Lnを比較することにより、10―4nmオーダー以下の結晶格子歪を解析する工程である。
結晶格子歪解析工程S103は、例えば、測長工程S102にて測長した距離Lnsおよび距離Lnを比較することにより、10―4nmオーダー以下の結晶格子歪を解析する工程である。
結晶格子歪解析工程S103では、例えば、10―4nmオーダー以下の結晶格子歪を解析しやすくするために、参照領域Z1における平均原子間距離(以下、参照領域平均原子間距離lnsともいう)と、評価領域Z2における平均原子間距離(以下、評価領域平均原子間距離lnともいう)とを算出することが好ましい。具体的には、参照領域平均原子間距離lnsは、距離Lnsを原子数nで除すことで、評価領域平均原子間距離lnは、距離Lnを原子数nで除すことで算出できる。距離Lnsおよび距離Lnの測長制度が10―3nmオーダーであったとしても、測長工程S102において、距離Lnsおよび距離Lnを測長する際の原子数nを10以上とし、距離Lnsおよび距離Lnを原子数nで除すことで、結晶格子歪の解析において、10―4nmオーダーの精度を確保することができる。
結晶格子歪解析工程S103では、例えば、参照領域平均原子間距離lnsおよび評価領域平均原子間距離lnとから結晶格子歪量Dを算出して、10―4nmオーダー以下の結晶格子歪を解析することが好ましい。結晶格子歪量Dは、以下の式(1)により算出することができる。なお、結晶格子歪量Dは、距離Lnsおよび距離Lnからも算出することができる。
参照領域Z1と評価領域Z2とが同一視野内に存在する場合、結晶格子歪解析工程S103では、例えば、結晶格子歪率D`(%)を算出してもよい。結晶格子歪率D`は、結晶格子歪量Dに100を乗じて算出することができる。
(2)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
(a)本実施形態の結晶格子歪解析方法は、距離Lnsおよび距離Ln(または、参照領域平均原子間距離lnsおよび評価領域平均原子間距離ln)から、10―4nmオーダー以下の結晶格子歪を解析する、結晶格子歪解析工程S103を有している。これにより、10―4nmオーダー以下の局所的な結晶格子歪を解析することが可能となる。
ここで、STEMによって結晶格子歪を解析する場合、原子間距離の文献値と比較して、結晶格子歪を解析する方法も考えられる。しかしながら、同じ元素からできている結晶でも、異元素のドープ等によって原子間距離は微妙に変わり、文献値も多く存在している。本実施形態の結晶格子歪解析方法では、結晶格子歪の発生していない参照領域Z1を設定し、参照領域Z1と評価領域Z2とを比較することにより、精度の高い解析が可能となる。
(b)本実施形態の測長工程S102では、参照領域Z1と評価領域Z2とが同一視野内に存在するように、参照領域Z1および評価領域Z2を設定することが好ましい。これにより、距離Lnsを測長する際と、距離Lnを測長する際とで、観察視野を切り替えたり、別の原子分解能像に切り替えたりする必要がなくなり、結晶格子歪の解析をより精度よく行うことが可能となる。また、超高倍率(例えば、1000万倍程度)の原子分解能像においては、ドリフト現象(温度変化等によって観察中の試料がゆっくり動いて見える現象)が顕著に観察されてしまう可能性があるが、参照領域Z1と評価領域Z2とが同一視野内に存在するように、参照領域Z1および評価領域Z2を設定した場合、このようなドリフト現象を抑えることができる。これにより、結晶格子歪率を精度よく算出することが可能となる。
(c)本実施形態の測長工程S102では、距離Lnsおよび距離Lnを測長する際の原子数nを、10以上50以下とすることが好ましい。原子数nが10未満では、結晶格子歪を解析する際の誤差が大きくなってしまう可能性がある。これに対し、原子数nを10以上とすることで、結晶格子歪を解析する際の誤差を低減することができる。一方、原子数nが50を超えると、原子分解能像を高倍率(例えば、1000万倍以上)とした場合、観察視野内に測定する原子が収まりきらない可能性がある。これに対し、原子数nを50以下とすることで、原子分解能像を高倍率とした場合でも、観察視野内に測定する原子を収めることができる。
(d)本実施形態の撮像工程S101では、原子分解能電子顕微鏡を用いることが好ましい。原子分解能電子顕微鏡では容易に倍率が1000万倍以上の像が得られ、STEMより原子の中心が正確に把握できるため、起点となる原子から所定の方向に配列したn番目の原子までの距離を正確に測長することが可能となる。また、原子分解能電子顕微鏡は分解能が高く、原子ひとつひとつがきれいに判別できるため、本実施形態の結晶格子歪解析工程S103では、所定の方向に配列した原子一ラインごとの局所的な結晶格子歪を精度よく解析することができる。
(e)本実施形態の撮像工程S101では、原子分解能電子顕微鏡により、参照領域Z1および評価領域Z2を含む原子分解能像を取得することが好ましい。これにより、結晶格子歪の開始場所の特定ができる。具体的には、例えば、参照領域Z1および評価領域Z2が隣り合っているところが結晶格子歪の開始場所と判定できる。
(f)遷移元素のような重元素で形成されている結晶格子歪を解析する場合、本実施形態の撮像工程S101では、原子分解能像として、高角度環状暗視野-STEM像を取得することが好ましい。これにより、重元素を優先的に観察することができる。
(g)軽元素で形成されている結晶格子歪を解析する場合、本実施形態の撮像工程S101では、原子分解能像として、角度制御環状明視野-STEM像を取得することが好ましい。これにより、高角度環状暗視野-STEM法では認識できない水素やリチウム等の軽元素を観察することができる。
(h)観察試料が10nm程度の微粉末の場合、本実施形態の撮像工程S101では、観察試料をSTEM用の支持膜付グリッドメッシュで担持して、原子分解能像を取得することが好ましい。これにより、原子分解能像を取得しやすくなる。
(i)観察試料が100nm程度以上の粉末、塊状物、または積層基板等の場合、本実施形態の撮像工程S101では、観察試料をエポキシ樹脂等で包埋したものをイオンミリング法により薄片加工して、原子分解能像を取得することが好ましい。これにより、観察試料へのダメージを低減しつつ、原子分解能像を取得することができる。
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
例えば、上述の実施形態では、距離Lnsおよび距離Lnを測長する際に、起点となる原子の中心から終点となる原子の中心までの距離を測長する場合について説明したが、距離Lnsおよび距離Lnを測長する際は、起点となる原子の外周から終点となる原子の外周までの距離を測長してもよい。
また、例えば、上述の実施形態では、参照領域Z1と評価領域Z2とが同一視野内に存在する場合について説明したが、参照領域Z1と評価領域Z2との設定の仕方は、上述の実施形態に限定されない。例えば、評価領域Z2の周辺に、結晶格子歪が発生していない領域が見つけられない場合、観察視野を切り替えて、参照領域Z1を設定してもよい。
次に、本発明に係る実施例を説明する。これらの実施例は本発明の一例であって、本発明はこれらの実施例により限定されない。
図3は、本実施例に係る原子分解能像の一例を示す図である。本実施例では、連続的に結晶格子歪を有する結晶性材料(以下、観察試料Aともいう)について、原子分解能電子顕微鏡(日本電子(株)製 JEM-ARM200F)を用いて、1000万倍で高角度環状暗視野-STEM像を取得した。なお、観察試料Aの高角度環状暗視野-STEM像は、観察試料Aをカーボン支持膜付グリッドメッシュ(応研商事(株)製 #10-1015 スーパーハイレゾカーボン SHR-C075 STEM Cu75Pグリッド仕様)に担持し、原子分解能電子顕微鏡により撮像した。
図3に示すLine1において、原子10個分の距離(起点となる原子の中心から終点となる原子の中心までの距離)は、5.060nmであった。図3において、Line1より左上の領域の原子10個分の距離は、5.055nm以上5.065nm以下の範囲内(5.060nmの±0.1%以内)に収まっていた。また、図3において、Line1の右下隣の原子10個分の距離は、5.053nmであったことから、Line1の左上の領域(Line1を含む)を参照領域Z1とした。また、図3に示すLine2およびLine3を評価領域Z2とした。
Line1、Line2、Line3の3箇所について、10原子分の輝度強度プロファイルを抽出した。Line1の結果を図4に、Line2の結果を図5に、Line3の結果を図6に示す。また、各プロファイルを重ねて表示したものを図7に示す。Line1の距離Lnsは5.060nm、Line2の距離Lnは5.040nm、Line3の距離Lnは4.962nmであった。したがって、Line1の参照領域平均原子間距離lnsは0.5060nm、Line2の評価領域平均原子間距離lnは0.5040nm、Line3の評価領域平均原子間距離lnは0.4962nmであった。
上述の式(1)を用いて、結晶格子歪量Dを算出すると、Line2の結晶格子歪量Dは-0.039、Line3の結晶格子歪量Dは-0.0194であった。つまり、Line2およびLine3においては、参照領域Z1に対して負の歪が生じていることを確認した。
本実施例においては、図3に示すように、参照領域Z1と評価領域Z2とが同一視野内に存在するため、結晶格子歪率D`を算出した。Line2の結晶格子歪率D`は-0.39%、Line3の結晶格子歪率D`は-1.93%であった。
以上より、図3に示す高角度環状暗視野-STEM像においては、右下に向かって結晶格子歪が大きくなっていることを確認した。また、参照領域Z1に対して、評価領域Z2に発生している10―4nmオーダー以下の局所的な結晶格子歪を解析できることを確認した。
S101 撮像工程
S102 測長工程
S103 結晶格子歪解析工程
S102 測長工程
S103 結晶格子歪解析工程
Claims (9)
- 走査透過電子顕微鏡によって結晶格子歪を解析する方法であって、
一原子を起点として、所定の方向に配列したn番目の原子までの距離Lnsが等しい領域を参照領域とし、前記参照領域における前記距離Lnsと、前記参照領域とは異なる領域である評価領域において、一原子を起点として、前記所定の方向と平行な方向に配列したn番目の原子までの距離Lnと、を測長する、測長工程と、
前記距離Lnsおよび前記距離Lnから、10―4nmオーダー以下の結晶格子歪を解析する、結晶格子歪解析工程と、を有する、結晶格子歪解析方法。 - 前記測長工程では、前記参照領域と前記評価領域とが同一視野内に存在するように、前記参照領域および前記評価領域を設定する、請求項1に記載の結晶格子歪解析方法。
- 前記測長工程では、前記距離Lnsおよび前記距離Lnを測長する際の原子数nを、10以上50以下とする、請求項1または請求項2に記載の結晶格子歪解析方法。
- 前記走査透過電子顕微鏡は、原子分解能電子顕微鏡である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の結晶格子歪解析方法。
- 前記原子分解能電子顕微鏡により、前記参照領域および前記評価領域を含む原子分解能像を取得する、撮像工程をさらに有する、請求項4に記載の結晶格子歪解析方法。
- 前記撮像工程では、前記原子分解能像として、高角度環状暗視野-走査透過電子顕微鏡像を取得する、請求項5に記載の結晶格子歪解析方法。
- 前記撮像工程では、前記原子分解能像として、角度制御環状明視野-走査透過電子顕微鏡像を取得する、請求項5に記載の結晶格子歪解析方法。
- 前記撮像工程では、観察試料を支持膜付グリッドメッシュで担持して、前記原子分解能像を取得する、請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の結晶格子歪解析方法。
- 前記撮像工程では、観察試料をイオンミリング法により薄片加工して、前記原子分解能像を取得する、請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の結晶格子歪解析方法。
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