JP2023070947A - 電子デバイスの製造方法、電子デバイス用インク、及びインクセット - Google Patents

電子デバイスの製造方法、電子デバイス用インク、及びインクセット Download PDF

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Abstract

【課題】密着性及び電磁波シールド性に優れ、かつ、熱サイクル試験後の密着性及び電磁波シールド性に優れる電子デバイスの製造方法、並びに、上記電子デバイスを製造することができる電子デバイス用インク及びインクセットを提供する。【解決手段】基板と電子部品とを備える電子基板を準備する工程と、電子部品上に絶縁層形成用インクを付与し、電子部品を被覆する絶縁層を形成する工程と、導電層形成工程と、を含み、絶縁層形成用インクは、N-ビニル化合物と、チオールと、N-ビニル化合物以外の重合性モノマーと、を含み、N-ビニル化合物以外の重合性モノマーは、環を含む環含有重合性モノマー、及び環化重合性モノマーからなる群より選択される少なくとも1種の重合性モノマーAを含み、アシルホスフィン系重合開始剤の含有量が、絶縁層形成用インクの全量に対して、0.1質量%以下である、電子デバイスの製造方法及びその応用。【選択図】図1

Description

本開示は、電子デバイスの製造方法、電子デバイス用インク、及びインクセットに関する。
電子部品は、他の電子機器からの電磁波によって干渉されないように遮蔽されている必要があり、一般に、シールド缶で被覆されている。シールド缶は、膜厚が厚く、重く、かつ、設計の自由度が小さいといった問題があり、シールド缶に代わる技術が求められている。シールド缶に代わる技術として、インクを用いて層を形成する方法が知られている。
例えば、特許文献1には、アクリル化合物(A)及び光重合開始剤(B)を含み、周波数が100kHzである場合の硬化物の比誘電率が3.0以下であり、インクジェット法で成形される紫外線硬化性樹脂組成物が記載されている。
また、特許文献2には、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、及びブラックインク組成物を含む着色インク組成物と、ホワイトインク組成物と、を含み、各インク組成物は、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤と、を含有し、ラジカル重合性化合物として、N-ビニル化合物及びサイクリックトリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレートを含有し、ホワイトインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をX、マゼンタインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をYとしたとき、0.1≦Y/X<1を満たす複層形成用インクセットが記載されている。
特許第6854431号公報 特開2013-57042号公報
絶縁層と導電層とを備える電子デバイスにおいて、密着性及び電磁波シールド性の向上と共に、繰り返し使用した後にも上記性能が維持されることが要求されている。
本開示はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、密着性及び電磁波シールド性に優れ、かつ、熱サイクル試験後の密着性及び電磁波シールド性に優れる電子デバイスの製造方法を提供することにある。
本発明の別の実施形態が解決しようとする課題は、密着性及び電磁波シールド性に優れ、かつ、熱サイクル試験後の密着性及び電磁波シールド性に優れる電子デバイスを製造することができる電子デバイス用インク及びインクセットを提供することにある。
本開示は以下の態様を含む。
<1>基板と、基板上に配置されている電子部品と、を備える電子基板を準備する工程と、電子部品上に絶縁層形成用インクを付与し、電子部品を被覆する絶縁層を形成する工程と、絶縁層上に導電層形成用インクを付与し、絶縁層を被覆する導電層を形成する工程と、を含み、絶縁層形成用インクは、N-ビニル化合物と、チオールと、N-ビニル化合物以外の重合性モノマーと、を含み、N-ビニル化合物以外の重合性モノマーは、環を含む環含有重合性モノマー、及び環化重合性モノマーからなる群より選択される少なくとも1種の重合性モノマーAを含み、アシルホスフィン系重合開始剤の含有量が、絶縁層形成用インクの全量に対して、0.1質量%以下である、電子デバイスの製造方法。
<2>絶縁層形成用インクに含まれる全ての重合性モノマーに占める、重合性モノマーAの割合は、35質量%以上である、<1>に記載の電子デバイスの製造方法。
<3>環含有重合性モノマーは、重合性基を1つ有する環含有単官能重合性モノマーを含む、<1>又は<2>に記載の電子デバイスの製造方法。
<4>環含有単官能重合性モノマーは、環と重合性基とが直接結合している、<3>に記載の電子デバイスの製造方法。
<5>環は、イソボルニル環、ジシクロペンタニル環、又はジシクロペンテニル環である、<4>に記載の電子デバイスの製造方法。
<6>環含有重合性モノマーは、さらに、重合性基を2つ有する環含有2官能重合性モノマーを含む、<3>~<5>のいずれか1つに記載の電子デバイスの製造方法。
<7>環含有2官能重合性モノマーの含有量は、絶縁層形成用インクの全量に対して、5質量%~25質量%である、<6>に記載の電子デバイスの製造方法。
<8>環含有2官能重合性モノマーは、ジシクロペンタニル環又はビスフェノール骨格を含む、<6>又は<7>に記載の電子デバイスの製造方法。
<9>環含有2官能重合性モノマーの含有量に対する、N-ビニル化合物の含有量の質量比率は、0.5~2である、<6>~<8>のいずれか1つに記載の電子デバイスの製造方法。
<10>環化重合性モノマーは、α-アリルオキシメチルアクリル酸エステルである、<1>~<9>のいずれか1つに記載の電子デバイスの製造方法。
<11>絶縁層形成用インクに含まれる全ての重合性モノマーに占める、N-ビニル化合物の割合は、10質量%~25質量%である、<1>~<10>のいずれか1つの電子デバイスの製造方法。
<12>絶縁層形成用インクは、界面活性剤の含有量が、絶縁層形成用インクの全量に対して、0.1質量%以下である、<1>~<11>のいずれか1つに記載の電子デバイスの製造方法。
<13>導電層形成用インクは、銀塩又は銀錯体を含む、<1>~<12>のいずれか1つに記載の電子デバイスの製造方法。
<14>絶縁層を形成する工程は、電子部品上に絶縁層形成用インクをインクジェット記録方式で付与する工程と、付与された絶縁層形成用インクに対して活性エネルギー線を照射する工程と、を含み、導電層を形成する工程は、絶縁層上に導電層形成用インクをインクジェット記録方式で付与する工程を含む、<1>~<13>のいずれか1つに記載の電子デバイスの製造方法。
<15>N-ビニル化合物と、チオールと、N-ビニル化合物以外の重合性モノマーと、を含み、N-ビニル化合物以外の重合性モノマーは、環を含む環含有重合性モノマー、及び環化重合性モノマーからなる群より選択される少なくとも1種の重合性モノマーAを含み、アシルホスフィン系重合開始剤の含有量が、インクの全量に対して、0.1質量%以下である、電子デバイス用インク。
<16><15>に記載の電子デバイス用インクである第1インクと、銀塩又は銀錯体を含む電子デバイス用インクである第2インクと、を備えるインクセット。
本発明の一実施形態によれば、密着性及び電磁波シールド性に優れ、かつ、熱サイクル試験後の密着性及び電磁波シールド性に優れる電子デバイスの製造方法が提供される。
また、本発明の別の実施形態によれば、密着性及び電磁波シールド性に優れ、かつ、熱サイクル試験後の密着性及び電磁波シールド性に優れる電子デバイスを製造することができる電子デバイス用インク及びインクセットが提供される。
図1は、準備工程で準備する電子基板の概略平面図である。 図2は、図1のA-A線断面図である。 図3は、図1のA-A線断面図において絶縁層が形成された状態を示す図である。 図4は、図1のA-A線断面図において導電層が形成された状態を示す図である。
以下、本開示の電子デバイスの製造方法、電子デバイス用インク、及びインクセットについて詳細に説明する。
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、「工程」という語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、「画像」とは、膜全般を意味し、「画像記録」とは、画像(すなわち、膜)の形成を意味する。また、本明細書における「画像」の概念には、ベタ画像(solid image)も包含される。
[電子デバイスの製造方法]
本開示の電子デバイスの製造方法は、基板と、基板上に配置されている電子部品と、を備える電子基板を準備する工程と、電子部品上に絶縁層形成用インクを付与し、電子部品を被覆する絶縁層を形成する工程と、絶縁層上に導電層形成用インクを付与し、絶縁層を被覆する導電層を形成する工程と、を含み、絶縁層形成用インクは、N-ビニル化合物と、チオールと、N-ビニル化合物以外の重合性モノマーと、を含み、N-ビニル化合物以外の重合性モノマーは、環を含む環含有重合性モノマー、及び環化重合性モノマーからなる群より選択される少なくとも1種の重合性モノマーAを含み、アシルホスフィン系重合開始剤の含有量が、絶縁層形成用インクの全量に対して、0.1質量%以下である。
本開示の電子デバイスの製造方法によれば、密着性及び電磁波シールド性に優れ、かつ、熱サイクル試験後の密着性及び電磁波シールド性に優れる電子デバイスを製造することができる。この理由は、以下のように推測される。
本開示の電子デバイスの製造方法では、絶縁層形成用インクがN-ビニル化合物を含む。絶縁層形成用インクにN-ビニル化合物が含まれていると、絶縁層の表面硬化性が向上する。絶縁層の表面が硬化されることにより、絶縁層上に付与される導電層形成用インクへの絶縁層形成用インクの移行(言い換えると、絶縁層形成用インクのマイグレーション)が抑制され、導電層形成用インクの硬化膜である導電層の電磁波シールド性が向上する。
また、本開示の電子デバイスの製造方法では、絶縁層形成用インクがチオールを含む。絶縁層形成用インクにチオールが含まれていると、チオールが重合性モノマー間に入って架橋することで、架橋密度が低下する。重合によって得られるポリマーの自由度が高く、応力緩和につながり、絶縁層と導電層との密着性が向上する。
また、本開示の電子デバイスの製造方法では、アシルホスフィン系重合開始剤の含有量が、絶縁層形成用インクの全量に対して、0.1質量%以下である。アシルホスフィン系重合開始剤は、導電層形成用インクに混入した場合に、電磁波シールド性を低下させる傾向があることが分かった。したがって、絶縁層形成用インクにおけるアシルホスフィン系重合開始剤の含有量が0.1質量%以下であると、電磁波シールド性が向上する。
本開示の電子デバイスの製造方法では、絶縁層形成用インクが、環を含む環含有重合性モノマー、及び環化重合性モノマーからなる群より選択される少なくとも1種の重合性モノマーAを含む。絶縁層形成用インクに重合性モノマーAが含まれていると、重合によって環構造を含むポリマーが形成されるため、外力に対する強度が高まり、耐久性(すなわち、熱サイクル試験後の密着性及び電磁波シールド性)が向上する。
一方、特許文献1及び特許文献2には、N-ビニル化合物、チオール、及び重合性モノマーAの組み合わせに着目した記載はない。
以下、本開示の実施形態に係る電子デバイスの製造方法の一例について、図面を参照しながら説明する。但し、本開示の実施形態に係る電子デバイスの製造方法は、以下の一例には限定されない。
以下の説明において、実質的に同一の要素(例えば部品又は部分)については、同一の符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
本開示の電子デバイスの製造方法は、基板と、基板上に配置されている電子部品と、を備える電子基板を準備する工程(以下、「準備工程」ともいう)と、電子部品上に絶縁層形成用インクを付与し、電子部品を被覆する絶縁層を形成する工程(以下、「絶縁層形成工程」ともいう)と、絶縁層上に導電層形成用インクを付与し、絶縁層を被覆する導電層を形成する工程(以下、「導電層形成工程」ともいう)と、を含む。
〔準備工程〕
図1は、準備工程で準備する電子基板の概略平面図である。図2は、図1のA-A線断面図である。
図1及び図2に示すように、準備工程では、配線基板11と、配線基板11上に配置されている電子部品12(12A、12B)と、グランド電極13と、を備える電子基板10を準備する。
準備工程は、予め製造された電子基板10を単に準備するだけの工程であってもよく、電子基板10を製造する工程であってもよい。
電子基板10の製造方法は、公知の製造方法を参照することができる。
電子基板10としては、例えば、フレキシブルプリント基板、リジッドプリント基板、及びリジッドフレキシルブル基板が挙げられる。
配線基板とは、基板上及び基板内部の少なくとも一方に配線が施されたものをいう。
配線基板11を構成する基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、セラミックス基板、ポリイミド基板、及びポリエチレンテレフタレート基板が挙げられる。基板は、単層構造であってもよく、多層構造であってもよい。
配線基板11に設けられている配線(図示せず)は、銅配線であることが好ましい。例えば、配線の一端は、外部電源に接続され、他端は電子部品12の端子に接続されている。
電子部品12としては、例えば、半導体チップ、コンデンサ、及びトランジスタが挙げられる。配線基板11上に配置される電子部品12の数は特に限定されない。図1では、電子部品12Aが6個、電子部品12Bが2個配置された例を示す。
グランド電極13は、グランド(GND)電位が印加される電極である。図1において、グランド電極13は、電子部品12A、12Bを囲み、平面視において非連続的な枠状に形成されているが、グランド電極の位置及び形状はこれに限られない。例えば、グランド電極は、平面視において連続的な枠状に形成されていてもよく、電子部品12Aと電子部品12Bの間に形成されていてもよい。
また、図1において、グランド電極13は、配線基板10に対し、グランド電極13の厚さ方向の一部が埋め込まれる形で形成されているが、本開示におけるグランド電極は、この一例には限定されない。例えば、グランド電極は、配線基板10に埋め込まれず、配線基板11の表面に形成されていてもよい。また、グランド電極は、配線基板11を貫通するパターンとして形成されていてもよい。
〔絶縁層形成工程〕
絶縁層形成工程では、電子部品上に絶縁層形成用インクを付与し、電子部品を被覆する絶縁層を形成する。
<絶縁層形成用インク>
本開示の電子デバイスの製造方法では、絶縁層形成用インクは、N-ビニル化合物と、チオールと、N-ビニル化合物以外の重合性モノマーと、を含み、N-ビニル化合物以外の重合性モノマーは、環を含む環含有重合性モノマー、及び環化重合性モノマーからなる群より選択される少なくとも1種の重合性モノマーAを含み、アシルホスフィン系重合開始剤の含有量が、絶縁層形成用インクの全量に対して、0.1質量%以下である。
以下、絶縁層形成用インクに含まれる各成分の詳細について、説明する。
(N-ビニル化合物)
絶縁層形成用インクは、N-ビニル化合物を含む。絶縁層形成用インクに含まれるN-ビニル化合物は1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
N-ビニル化合物は絶縁層形成用インク中で空気界面に存在しやすい。また、N-ビニル化合物は、酸素による重合阻害を抑制する作用があり、絶縁層形成用インクにN-ビニル化合物が含まれていると、絶縁層の表面硬化性が向上する。絶縁層の表面が硬化されることにより、絶縁層形成用インクのマイグレーションが抑制され、導電層形成用インクの硬化膜である導電層の電磁波シールド性が向上する。
N-ビニル化合物としては、例えば、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン、N-ビニルオキサゾリジノン、及びN-ビニル-5-メチルオキサゾリジノンが挙げられる。中でも、N-ビニル化合物は、N-ビニルカプロラクタムであることが好ましい。
N-ビニル化合物の含有量は、電磁波シールド性をより向上させる観点から、絶縁層形成用インクの全量に対して、5質量%~25質量%であることが好ましく、10質量%~20質量%であることがより好ましい。
また、絶縁層形成用インクに含まれる全ての重合性モノマーに占める、N-ビニル化合物の割合は、10質量%~25質量%であることが好ましい。上記割合が10質量%以上であると、電磁波シールド性が向上する。一方、上記割合が25質量%以下であると、耐久性が向上する。
(チオール)
絶縁層形成用インクは、チオールを含む。絶縁層形成用インクに含まれるチオールは1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
絶縁層形成用インクにチオールが含まれていると、チオールが重合性モノマー間に入って架橋することで、架橋密度が低下する。重合によって得られるポリマーの自由度が高く、応力緩和につながり、絶縁層と導電層との密着性が向上する
チオールは、1分子中に1個のチオール基を有する単官能チオールであってもよく、1分子中に2個以上のチオール基を有する多官能チオールであってもよい。
単官能チオールとしては、例えば、ヘキサンチオール、1-ヘプタンチオール、1-オクタンチオール、1-ノナンチオール、1-デカンチオール、3-メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸トリデシル、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート、及びn-オクチル-3-メルカプトプロピオネートが挙げられる。
多官能性チオールとしては、例えば、ヘキサン-1,6-ジチオール、デカン-1,10-ジチオール、ジメルカプトジエチルエーテル、ジメルカプトジエチルスルフィド等の脂肪族チオール;
キシリレンジメルカプタン、4,4′-ジメルカプトジフェニルスルフィド、1,4-ベンゼンジチオール等の芳香族チオール;
エチレングリコールビス(メルカプトアセテート)、ポリエチレングリコールビス(メルカプトアセテート)、プロピレングリコールビス(メルカプトアセテート)、グリセリントリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(メルカプトアセテート)等の多価アルコールのポリ(メルカプトアセテート);
エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ポリエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、プロピレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、グリセリントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)等の多価アルコールのポリ(3-メルカプトプロピオネート);及び、
トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)等のポリ(メルカプトブチレート)が挙げられる。
中でも、密着性を向上させる観点から、チオールは、多官能チオールであることが好ましく、1分子中に2個~4個のチオール基を有する多官能チオールであることがより好ましく、1分子中に2個~4個のチオール基を有するポリ(メルカプトブチレート)であることがさらに好ましい。
チオールの含有量は、密着性をより向上させる観点から、絶縁層形成用インクの全量に対して、5質量%~30質量%であることが好ましく、15質量%~25質量%であることがより好ましい。
(重合性モノマーA)
絶縁層形成用インクは、N-ビニル化合物以外の重合性モノマーとして、環を含む環含有重合性モノマー、及び環化重合性モノマーからなる群より選択される少なくとも1種の重合性モノマーAを含む。
絶縁層形成用インクに重合性モノマーAが含まれていると、重合によって環構造を含むポリマーが形成されるため、外力に対する強度が高まり、耐久性が向上する。
-環含有重合性モノマー-
本開示において、環含有重合性モノマーとは、分子内に環構造を含む重合性モノマーのことをいう。
本開示において、「重合性モノマー」とは、重合性基を有するモノマーのことをいう。 本開示において、「モノマー」とは分子量が1000以下の化合物のことをいう。分子量は、化合物を構成する元素の種類及び数から算出することができる
環含有重合性モノマーが有する環は、脂肪族環であってもよく、芳香環であってもよい。また、環は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。また、環には、ヘテロ原子が含まれていてもよい。環は1つであってもよく、2つ以上であってもよい。環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、及びアルコキシ基が挙げられる。
脂肪族環としては、例えば、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、ピナン環、ノルピナン環、ノルボルニル環、イソボルニル環、ビシクロオクタン環、ビシクロノナン環、ホモブレダン環、アダマンタン環、ジシクロペンタニル環(トリシクロデカン環)、ジシクロペンテニル環、トリシクロウンデカン環、及びテトラシクロドデカン環等の脂肪族炭化水素環;オキソラン環、オキサン環、ピぺリジン環、及びピペラジン環等の脂肪族複素環が挙げられる。
芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環等の芳香族炭化水素環;チオフェン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、及びピリジン環等の芳香族複素環が挙げられる。
また、環含有重合性モノマーが有する重合性基は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。すなわち、環含有重合性モノマーは、重合性基を1つ有する環含有単官能重合性モノマーであってもよく、重合性基を2つ有する環含有2官能重合性モノマーであってもよい。
中でも、耐久性をより向上させる観点から、環含有重合性モノマーは、重合性基を1つ有する環含有単官能重合性モノマーを含むことが好ましい。
重合性基としては、例えば、不飽和二重結合を有する基が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、及びビニルエーテル基が挙げられる。
また、耐久性をより向上させる観点から、環含有単官能重合性モノマーは、環と重合性基とが直接結合していることが好ましい。環と重合性基とが直接結合していると、環含有単官能重合性モノマーが重合してポリマーとなった際に、外力に対して変形しにくいため、耐久性に優れる。
重合性基と環とが直接結合している環含有単官能重合性モノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、4-ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5-テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4-クロロフェニル(メタ)アクリレート等の環含有(メタ)アクリレート;シクロヘキシルビニルエーテル、ジシクロペンタジエンビニルエーテル、トリシクロデカンビニルエーテル等の環含有ビニルエーテル;スチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、3-プロピルスチレン、4-プロピルスチレン、3-ブチルスチレン、4-ブチルスチレン、3-ヘキシルスチレン、4-ヘキシルスチレン、3-オクチルスチレン、4-オクチルスチレン、3-(2-エチルヘキシル)スチレン、4-(2-エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4-t-ブトキシカルボニルスチレン及び4-t-ブトキシスチレン等のスチレン系化合物が挙げられる。
硬化性の観点から、環含有単官能重合性モノマーは、下記式1で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2023070947000002
式1中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Xは環を表す。Rはそれぞれ独立に、1価の置換基を表し、nは、0~nの整数を表す。ここで、nは1価の置換基であるRがXに置換可能な最大の整数を表す。
Xで表される環としては、脂肪族環及び芳香環が挙げられ、脂肪族環が好ましい。
は、水素原子が好ましい。
で表される1価の置換基としては、例えば、アルキル基が挙げられる。
は、1~5が好ましく、1~4がより好ましく、1がさらに好ましい。
耐久性をより向上させる観点から、環含有単官能重合性モノマーが有する環(式1の場合には、Xで表される環)は、イソボルニル環、ジシクロペンタニル環、又はジシクロペンテニル環であることが好ましい。
中でも、環含有単官能重合性モノマーは、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、又はジシクロペンテニル(メタ)アクリレートであることが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、又はジシクロペンテニル(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
環含有単官能重合性モノマーの含有量は、絶縁層形成用インクの全量に対して、5質量%~40質量%であることが好ましい。
耐久性をさらに向上させる観点から、環含有重合性モノマーは、重合性基を1つ有する環含有単官能重合性モノマーに加えて、さらに、重合性基を2つ有する環含有2官能重合性モノマーを含むことが好ましい。
環含有2官能重合性モノマーとしては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンジ(メタ)アクリレート等の環含有ジ(メタ)アクリレート;1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテル等の環含有ビニルエーテルが挙げられる。
耐久性をより向上させる観点から、環含有2官能重合性モノマーは、ジシクロペンタニル環又はビスフェノール骨格を含むことが好ましい。
具体的には、環含有2官能重合性モノマーは、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、又は9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンジ(メタ)アクリレートであることが好ましく、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、又はプロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
環含有2官能重合性モノマーの含有量は、絶縁層形成用インクの全量に対して、5質量%~25質量%であることが好ましい。
また、環含有2官能重合性モノマーの含有量に対する、N-ビニル化合物の含有量の質量比率は、0.5~2であることが好ましい。上記質量比率が0.5以上であると、電磁波シールド性が向上する。一方、上記質量比率が2以下であると、密着性が向上する。
-環化重合性モノマー-
本開示において、環化重合性モノマーとは、重合中に、分子内で環化反応が生じ得る重合性モノマーのことをいう。
環化重合性モノマーは、耐久性をより向上させる観点から、α-アリルオキシメチルアクリル酸エステルであることが好ましい。
α-アリルオキシメチルアクリル酸エステルとしては、例えば、α-アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-プロピル、α-アリルオキシメチルアクリル酸i-プロピル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-ブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸s-ブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸t-ブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-ヘキシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸2-エチルヘキシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエトキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエトキシエトキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸3-メトキシブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸エトキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸エトキシエトキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエトキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ヒドロキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ヒドロキシプロピル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ヒドロキシブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ジメチルアミノエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ジエチルアミノエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸アセトアミドエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸N-メチルアセトアミドエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸プロピオアミドエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ピロリドニルエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸イソボルニル、α-アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリル、α-アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリルオキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリルオキシエトキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロピラニル、α-アリルオキシメチルアクリル酸(5-メチル-5-m-ジオキサニル)メチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸フェニル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ベンジル、及びα-アリルオキシメチルアクリル酸ナフチルが挙げられる。中でも、入手容易性の観点から、α-アリルオキシメチルアクリル酸エステルは、α-アリルオキシメチルアクリル酸メチルであることがより好ましい。インクにα-アリルオキシメチルアクリル酸エステルが含まれていると、重合によって、主鎖にテトラヒドロフラン環を有するポリマーが形成される。
環化重合性モノマーの含有量は、絶縁層形成用インクの全量に対して、5質量%~40質量%であることが好ましく、10質量%~25質量%であることがより好ましい。
(その他の重合性モノマー)
絶縁層形成用インクは、N-ビニル化合物及び重合性モノマーA以外の重合性モノマー(以下、「その他の重合性モノマー」ともいう)を含有していてもよい。
その他の重合性モノマーは、重合性基を1つ有する単官能重合性モノマーであってもよく、重合性基を2つ以上有する多官能重合性モノマーであってもよい。
単官能重合性モノマーは、重合性基を1つ有するモノマーであれば特に限定されない。単官能重合性モノマーは、硬化性の観点から、単官能のラジカル重合性モノマーであることが好ましく、単官能エチレン性不飽和モノマーであることがより好ましい。
単官能エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、単官能(メタ)アクリレート、単官能(メタ)アクリルアミド、単官能芳香族ビニル化合物、単官能ビニルエーテル及び単官能N-ビニル化合物が挙げられる。
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert-オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-n-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-クロロエチル(メタ)アクリレート、4-ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-(2-メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2-テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシヘキサヒドロフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、EO変性-2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(3-エチル-3-オキセタニルメチル)(メタ)アクリレート、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、及び2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネートが挙げられる。
単官能(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。
単官能ビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、n-ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、4-ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、及びクロルエトキシエチルビニルエーテルが挙げられる。
多官能重合性モノマーは、重合性基を2つ以上有するモノマーであれば特に限定されない。多官能重合性モノマーは、硬化性の観点から、多官能のラジカル重合性モノマーであることが好ましく、多官能エチレン性不飽和モノマーであることがより好ましい。
多官能エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、多官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能ビニルエーテルが挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート及びトリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートが挙げられる。
多官能ビニルエーテルとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、EO付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、PO付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、EO付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、PO付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、EO付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、PO付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、EO付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル及びPO付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルが挙げられる。
絶縁層形成用インクに含まれる全ての重合性モノマーに占める、重合性モノマーAの割合は、35質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。上記割合が35質量%以上であると、密着性に優れ、かつ、熱サイクル試験後の密着性に優れる。上記割合の上限値は、50質量%であることが好ましい。
(重合開始剤)
絶縁層形成用インクは、少なくとも1種の重合開始剤を含むことが好ましい。
重合開始剤としては、例えば、オキシム化合物、アルキルフェノン化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオキサントン化合物、ヘキサアリールビスイミダゾール化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、チタノセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミンが挙げられる。
中でも、電磁波シールド性をより向上させる観点から、重合開始剤は、アルキルフェノン化合物及びチオキサントン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、アルキルフェノン化合物とチオキサントン化合物との併用がより好ましい。
アルキルフェノン化合物としては、例えば、α-ヒドロキシアルキルフェノン化合物、α-アミノアルキルフェノン化合物、及びベンジルケタールアルキルフェノン化合物が挙げられる。
α-ヒドロキシアルキルフェノン化合物としては、例えば、2,2’-ジヒドロキシ-2,2’-ジメチル-1,1’-[メチレンビス(4,1-フェニレン)]ビス(プロパン-1-オン)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-2-ヒドロキシ-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、及び1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが挙げられる。
α-アミノアルキルフェノン化合物としては、例えば、2-メチル-1-フェニル-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(ヘキシル)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-エチル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、及び2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-ブタン-1-オンが挙げられる。
ベンジルケタールアルキルフェノン化合物としては、例えば、アルキルフェノン化合物は、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンが挙げられる。
アルキルフェノン化合物の市販品としては、例えば、Omnirad 651、Omnirad 184、Omnirad 1173、Omnirad 2959、Omnirad 127、Omnirad 907、Omnirad 369、Omnirad 369E、及びOmnirad 379(IGM Resins B.V.社製)が挙げられる。
チオキサントン化合物としては、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-ドデシルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-メトキシカルボニルチオキサントン、2-エトキシカルボニルチオキサントン、3-(2-メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4-ブトキシカルボニルチオキサントン、3-ブトキシカルボニル-7-メチルチオキサントン、1-シアノ-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-エトキシチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-アミノチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-フェニルスルフリルチオキサントン、3,4-ジ[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]チオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-(1-メチル-1-モルホリノエチル)チオキサントン、2-メチル-6-ジメトキシメチルチオキサントン、2-メチル-6-(1,1-ジメトキシベンジル)チオキサントン、2-モルホリノメチルチオキサントン、2-メチル-6-モルホリノメチルチオキサントン、n-アリルチオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、n-オクチルチオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、N-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)チオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、1-フェノキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-2-メトキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-2-メチルチオキサントン、チオキサントン-2-ポリエチレングリコールエステル、及び2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサントン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロリドが挙げられる。
チオキサントン化合物は、市販品であってもよい。市販品としては、Lambson社製のSPEEDCUREシリーズ(例:SPEEDCURE 7010、SPEEDCURE CPTX、SPEEDCURE ITX等)が挙げられる。
重合開始剤の含有量は、絶縁層形成用インクの全量に対して、0.5質量%~20質量%であることが好ましく、5質量%~15質量%であることがより好ましい。
また、アシルホスフィン系重合開始剤の含有量は、絶縁層形成用インクの全量に対して、0.1質量%以下であり、0.05質量%以下であることが好ましい。アシルホスフィン系重合開始剤は、絶縁層形成用インクに含まれないことがより好ましい。
(重合禁止剤)
絶縁層形成用インクは、少なくとも1種の重合禁止剤を含有してもよい。
重合禁止剤としては、p-メトキシフェノール、キノン類(例えば、ハイドロキノン、ベンゾキノン、メトキシベンゾキノン等)、フェノチアジン、カテコール類、アルキルフェノール類(例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)等)、アルキルビスフェノール類、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、サリチル酸銅、チオジプロピオン酸エステル類、メルカプトベンズイミダゾール、ホスファイト類、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシル(TEMPOL)、及びトリス(N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミン)アルミニウム塩(別名:クペロンAl)が挙げられる。
中でも、重合禁止剤は、p-メトキシフェノール、カテコール類、キノン類、アルキルフェノール類、TEMPO、TEMPOL、及びトリス(N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミン)アルミニウム塩から選ばれる少なくとも1種が好ましく、p-メトキシフェノール、ハイドロキノン、ベンゾキノン、BHT、TEMPO、TEMPOL、及びトリス(N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミン)アルミニウム塩から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
絶縁層形成用インクが重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量は、インクの全量に対し、0.01質量%~2.0質量%が好ましく、0.02質量%~1.0質量%がより好ましく、0.03質量%~0.5質量%が特に好ましい。
(界面活性剤)
絶縁層形成用インクは、少なくとも1種の界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62-173463号公報、及び特開昭62-183457号公報に記載されたものが挙げられる。また、界面活性剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、脂肪酸塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、アセチレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン性界面活性剤;及び、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。また、界面活性剤は、フッ素系界面活性剤又はシリコーン系界面活性剤であってもよい。
絶縁層形成用インクが界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、絶縁層形成用インクの全量に対して、0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましい。界面活性剤の含有量の下限値は特に限定されず、絶縁層形成用インクは界面活性剤を含有しないことが好ましい。
界面活性剤の含有量が0.1質量%以下であると、絶縁層形成用インクによって形成される絶縁層の表面エネルギーが高くなる。そのため、導電層形成用インクに界面活性剤を含有させることなく、導電層形成用インクを絶縁層上に濡れ拡がりやすくすることができる。界面活性剤の不存在により、導電層形成用インクの焼結がスムーズに進行するため、電磁波シールド性が向上する。
(有機溶剤)
絶縁層形成用インクは、少なくとも1種の有機溶剤を含有してもよい。
有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル;
エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル;
ジエチレングリコールアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールアセテート;
エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールジアセテート;
エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;
γ-ブチロラクトン等のラクトン;
酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸3-メトキシブチル(MBA)、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル;
テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;及び
ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミドが挙げられる。
絶縁層形成用インクが有機溶剤を含有する場合、有機溶剤の含有量は、絶縁層形成用インクの全量に対して、70質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。有機溶剤の含有量の下限値は特に限定されない。
(添加剤)
絶縁層形成用インクは、必要に応じて、共増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、塩基性化合物等の添加剤を含有してもよい。
-物性-
絶縁層形成用インクのpHは、インクジェット記録方式で付与する場合に吐出安定性を向上させる観点から、7~10であることが好ましく、7.5~9.5であることがより好ましい。pHは、pH計を用いて25℃で測定され、例えば、東亜DKK社製のpHメーター(型番「HM-31」)を用いて測定される。
絶縁層形成用インクの粘度は、0.5mPa・s~60mPa・sであることが好ましく、2mPa・s~40mPa・sであることがより好ましい。粘度は、粘度計を用いて25℃で測定され、例えば、東機産業社製のTV-22型粘度計を用いて測定される。
絶縁層形成用インクの表面張力は、60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m~50mN/mであることがより好ましく、25mN/m~45mN/mであることがさらに好ましい。表面張力は、表面張力計を用いて25℃で測定され、例えば、協和界面科学社製の自動表面張力計(製品名「CBVP-Z」)を用いて、プレート法によって測定される。
<絶縁層形成用インクの付与>
絶縁層形成工程では、電子部品上に絶縁層形成用インクを付与する。
絶縁層形成用インクは電子部品上に付与されればよく、電子部品以外の領域に付与されてもよい。電子部品上に絶縁層形成用インクを付与することにより、電子部品が絶縁層形成インクによって被覆される。
図3は、図1のA-A線断面図において絶縁層が形成された状態を示す図である。図3に示すように、例えば、電子部品12A及び12Bの外周、並びに、電子部品12A及び12Bの上面に、絶縁層31が形成される。
絶縁層形成用インクの付与方法は特に限定されず、例えば、塗布法、インクジェット記録方式等の公知の方法が挙げられる。中でも、少量を打滴して1回の付与によって形成される絶縁層の厚さを薄くできる観点から、絶縁層形成用インクをインクジェット記録方式で付与することが好ましい。
インクジェット記録方式は、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式のいずれであってもよい。
インクジェット記録方式としては、特に、特開昭54-59936号公報に記載の方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット記録方式を有効に利用することができる。
また、インクジェット記録方式については、特開2003-306623号公報の段落0093~0105に記載の方法も参照できる。
インクジェット記録方式に用いるインクジェットヘッドとしては、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを電子基板の幅方向に走査させながら記録を行うシャトルスキャン方式と、電子基板の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とが挙げられる。
インクジェットヘッドから吐出される絶縁層形成用インクの打滴量は、1pL(ピコリットル)~100pLであることが好ましく、3pL~80pLであることがより好ましく、3pL~20pLであることがさらに好ましい。
絶縁層形成工程は、電子部品上に絶縁層形成用インクをインクジェット記録方式で付与する工程(以下、「インク付与工程」ともいう)と、付与された絶縁層形成用インクに対して活性エネルギー線を照射する工程(以下、「活性エネルギー線照射工程」ともいう)と、を含むことが好ましい。
インク付与工程の詳細は、上記のとおりである。以下、活性エネルギー線照射工程について説明する。
活性エネルギー線照射工程において、活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線及び電子線が挙げられる。中でも、活性エネルギー線は、紫外線(以下、「UV」ともいう)が好ましい。
紫外線のピーク波長は、200nm~405nmであることが好ましく、250nm~400nmであることがより好ましく、300nm~400nmであることがさらに好ましい。
活性エネルギー線を照射する際の照度は、4W/cm以上であることが好ましく、8W/cm以上であることがより好ましく、10W/cm以上であることがさらに好ましい。照度の上限値は特に限定されないが、例えば、20W/cmである。
活性エネルギー線を照射する際の露光量は、0.1J/cm~10J/cmであることが好ましく、0.5J/cm~7.5J/cmであることがより好ましい。
紫外線照射用の光源としては、水銀ランプ、ガスレーザー及び固体レーザーが主に利用されており、水銀ランプ、メタルハライドランプ及び紫外線蛍光灯が広く知られている。また、UV-LED(発光ダイオード)及びUV-LD(レーザダイオード)は小型、高寿命、高効率、かつ、低コストであり、紫外線照射用の光源として期待されている。中でも、紫外線照射用の光源は、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ又はUV-LEDであることが好ましい。
本開示の電子デバイスの製造方法では、インク付与工程及び活性エネルギー線照射工程を1サイクルとして、これらの工程を繰り返し行うことが好ましい。これらの工程を繰り返し行うことにより、電子部品の高さに応じて絶縁層の厚さを調整し、絶縁層によって電子部品を被覆することができる。
〔導電層形成工程〕
導電層形成工程では、絶縁層上に導電層形成用インクを付与し、絶縁層を被覆する導電層を形成する。
<導電層形成用インク>
導電層形成用インクは、金属粒子を含むインク(以下、「金属粒子インク」ともいう)、金属錯体を含むインク(以下、「金属錯体インク」ともいう)、又は、金属塩を含むインク(以下、「金属塩インク」ともいう)であることが好ましく、金属塩インク又は金属錯体インクであることがより好ましい。
導電層形成用インクは、電磁波シールド性を向上させる観点から、銀を含むことが好ましく、銀塩又は銀錯体を含むことがより好ましい。
<<金属粒子インク>>
金属粒子インクは、例えば、金属粒子が分散媒中に分散したインク組成物である。
-金属粒子-
金属粒子を構成する金属としては、例えば、卑金属及び貴金属の粒子が挙げられる。卑金属としては、例えば、ニッケル、チタン、コバルト、銅、クロム、マンガン、鉄、ジルコニウム、スズ、タングステン、モリブデン、及びバナジウムが挙げられる。貴金属としては、例えば、金、銀、白金、パラジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム及びこれらの金属を含む合金が挙げられる。中でも、導電性の観点から、金属粒子を構成する金属は、銀、金、白金、ニッケル、パラジウム及び銅からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、銀を含むことがより好ましい。
金属粒子の平均粒径は特に限定されないが、10nm~500nmであることが好ましく、10nm~200nmであることがより好ましい。平均粒径が上記範囲であると、金属粒子の焼成温度が低下し、導電性インク膜作製のプロセス適性が高まる。特に、スプレー方式、又はインクジェット記録方式で金属粒子インクを付与する場合に、吐出性が向上し、パターン形成性、及び、導電性インク膜の膜厚の均一性が向上する傾向にある。ここでいう平均粒径は、金属粒子の一次粒径の平均値(平均一次粒径)を意味する。
金属粒子の平均粒径は、レーザー回折/散乱法により測定される。金属粒子の平均粒径は、例えば、50%体積累積径(D50)を3回測定して、3回測定した値の平均値として算出される値であり、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(製品名「LA-960」、堀場製作所製)を用いて測定することができる。
また、金属粒子インクには、必要に応じて、平均粒径が500nm以上の金属粒子が含まれていてもよい。平均粒径が500nm以上の金属粒子が含まれている場合には、nmサイズの金属粒子がμmサイズの金属粒子の周囲で融点降下することにより、金属粒子同士を接合できる。
金属粒子インク中、金属粒子の含有量は、金属粒子インクの全量に対して、10質量%~90質量%であることが好ましく、20質量%~50質量%であることがより好ましい。金属粒子の含有量は10質量%以上であると、表面抵抗率がより低下する。金属粒子の含有量が90質量%以下であると、インクジェット記録方式で金属粒子インクを付与する場合に、吐出性が向上する。
金属粒子インクには、金属粒子以外に、例えば、分散剤、樹脂、分散媒、増粘剤、及び表面張力調整剤が含まれていてもよい。
-分散剤-
金属粒子インクは、金属粒子の表面の少なくとも一部に付着する分散剤を含有していてもよい。分散剤は、金属粒子と共に、実質的に金属コロイド粒子を構成する。分散剤は、金属粒子を被覆して金属粒子の分散性を向上させ、凝集を防止する作用を有する。分散剤は、金属コロイド粒子を形成することが可能な有機化合物であることが好ましい。分散剤は、導電性及び分散安定性の観点から、アミン、カルボン酸、アルコール、又は樹脂分散剤であることが好ましい。
金属粒子インクに含まれる分散剤は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
アミンとしては、例えば、飽和又は不飽和の脂肪族アミンが挙げられる。中でも、アミンは、炭素数4~8の脂肪族アミンであることが好ましい。炭素数が4~8の脂肪族アミンは、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、環構造を有していてもよい。
脂肪族アミンとしては、例えば、ブチルアミン、ノルマルペンチルアミン、イソペンチルアミン、ヘキシルアミン、2-エチルヘキシルアミン、及びオクチルアミンが挙げられる。
脂環構造を有するアミンとしては、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン等のシクロアルキルアミンが挙げられる。
芳香族アミンとしては、アニリンが挙げられる。
アミンは、アミノ基以外の官能基を有していてもよい。アミノ基以外の官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、カルボニル基、エステル基、及びメルカプト基が挙げられる。
カルボン酸としては、例えば、ギ酸、シュウ酸、酢酸、ヘキサン酸、アクリル酸、オクチル酸、オレイン酸、チアンシ酸、リシノール酸、没食子酸、及びサリチル酸が挙げられる。カルボン酸の一部であるカルボキシ基は、金属イオンと塩を形成していてもよい。塩を形成する金属イオンは、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
カルボン酸は、カルボキシ基以外の官能基を有していてもよい。カルボキシ基以外の官能基としては、例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボニル基、エステル基、及びメルカプト基が挙げられる。
アルコールとしては、例えば、テルペン系アルコール、アリルアルコール、及びオレイルアルコールが挙げられる。アルコールは、金属粒子の表面に配位しやすく、金属粒子の凝集を抑制することができる。
樹脂分散剤としては、例えば、親水性基としてノニオン性基を有し、溶媒に均一溶解可能な分散剤が挙げられる。樹脂分散剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアリルアミン、及びポリビニルアルコール-ポリ酢酸ビニル共重合体が挙げられる。樹脂分散剤の分子量は、重量平均分子量が1000~50000であることが好ましく、1000~30000であることがより好ましい。
金属粒子インク中、分散剤の含有量は、金属粒子インクの全量に対して、0.5質量%~50質量%であることが好ましく、1質量%~30質量%であることがより好ましい。
-分散媒-
金属粒子インクは、分散媒を含むことが好ましい。分散媒の種類は特に限定されず、例えば、炭化水素、アルコール、及び水が挙げられる。
金属粒子インクに含まれる分散媒は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。金属粒子インクに含まれる分散媒は、揮発性であることが好ましい。分散媒の沸点は50℃~250℃であることが好ましく、70℃~220℃であることがより好ましく、80℃~200℃であることがさらに好ましい。分散媒の沸点が50℃~250℃であると、金属粒子インクの安定性と焼成性を両立できる傾向にある。
炭化水素としては、脂肪族炭化水素、及び芳香族炭化水素が挙げられる。
脂肪族炭化水素としては、例えば、テトラデカン、オクタデカン、ヘプタメチルノナン、テトラメチルペンタデカン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、トリデカン、メチルペンタン、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等の飽和脂肪族炭化水素又は不飽和脂肪族炭化水素が挙げられる。
芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン、及びキシレンが挙げられる。
アルコールとしては、脂肪族アルコール、及び脂環式アルコールが挙げられる。分散媒としてアルコールを使用する場合には、分散剤は、アミン又はカルボン酸であることが好ましい。
脂肪族アルコールとしては、例えば、ヘプタノール、オクタノール(例えば、1-オクタノール、2-オクタノール、3-オクタノール等)、デカノール(例えば、1-デカノール等)、ラウリルアルコール、テトラデシルアルコール、セチルアルコール、2-エチル-1-ヘキサノール、オクタデシルアルコール、ヘキサデセノール、オレイルアルコール等の飽和又は不飽和の鎖中にエーテル結合を含んでいてもよい炭素数6~20の脂肪族アルコールが挙げられる。
脂環式アルコールとしては、例えば、シクロヘキサノール等のシクロアルカノール;テルピネオール(α、β、γ異性体、又はこれらの任意の混合物を含む。)、ジヒドロテルピネオール等のテルペンアルコール;ミルテノール、ソブレロール、メントール、カルベオール、ペリリルアルコール、ピノカルベオール、ソブレロール、及びベルベノールが挙げられる。
分散媒は水であってもよい。粘度、表面張力、揮発性等の物性を調整する観点から、分散媒は、水と、他の溶媒との混合溶媒であってもよい。水と混合させる他の溶媒は、アルコールであることが好ましい。水と併用して用いられるアルコールは、水と混和可能な沸点130℃以下のアルコールであることが好ましい。アルコールとしては、例えば、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、1-ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。
金属粒子インク中、分散媒の含有量は、金属粒子インクの全量に対して、1質量%~50質量%であることが好ましい。分散媒の含有量が1質量%~50質量%であれば、導電性インクとして十分な導電性を得ることができる。分散媒の含有量は10質量%~45質量%であることがより好ましく、20質量%~40質量%であることがさらに好ましい。
-樹脂-
金属粒子インクは、樹脂を含有していてもよい。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、メラミン樹脂、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエーテル、及びテルペン樹脂が挙げられる。
金属粒子インクに含まれる樹脂は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
金属粒子インク中、樹脂の含有量は、金属粒子インクの全量に対して、0.1質量%~5質量%であることが好ましい。
-増粘剤-
金属粒子インクは、増粘剤を含有していてもよい。増粘剤としては、例えば、クレイ、ベントナイト、ヘクトライト等の粘土鉱物;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体;及び、キサンタンガム、グアーガム等の多糖類が挙げられる。
金属粒子インクに含まれる増粘剤は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
金属粒子インク中、増粘剤の含有量は、金属粒子インクの全量に対して、0.1質量%~5質量%であることが好ましい。
-界面活性剤-
金属粒子インクは、界面活性剤を含有していてもよい。金属粒子インクに界面活性剤が含まれていると、均一な導電性インク膜が形成されやすい。
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤のいずれであってもよい。中でも、少量の含有量で表面張力を調整することができるという観点から、界面活性剤は、フッ素系界面活性剤であることが好ましい。また、界面活性剤は、沸点が250℃を超える化合物であることが好ましい。
金属粒子インクの粘度は特に限定されず、0.01Pa・s~5000Pa・sであればよく、0.1Pa・s~100Pa・sであることが好ましい。金属粒子インクをスプレー法又はインクジェット記録方式で付与する場合には、金属粒子インクの粘度は、1mPa・s~100mPa・sであることが好ましく、2mPa・s~50mPa・sであることがより好ましく、3mPa・s~30mPa・sであることがさらに好ましい。
金属粒子インクの粘度は、粘度計を用い、25℃で測定される値である。粘度は、例えば、VISCOMETER TV-22型粘度計(東機産業社製)を用いて測定される。
金属粒子インクの表面張力は特に限定されず、20mN/m~45mN/mであることが好ましく、25mN/m~40mN/mであることがより好ましい。
表面張力は、表面張力計を用い、25℃で測定される値である。
金属粒子インクの表面張力は、表面張力計を用いて25℃で測定され、例えば、DY-700(協和界面科学社製)を用いて測定される。
-金属粒子の製造方法-
金属粒子は、市販品であってもよく、公知の方法により製造されたものであってもよい。金属粒子の製造方法としては、例えば、湿式還元法、気相法、及びプラズマ法が挙げられる。金属粒子の好ましい製造方法としては、平均粒径200nm以下の金属粒子を粒径分布が狭くなるように製造可能な湿式還元法が挙げられる。湿式還元法による金属粒子の製造方法は、例えば、特開2017-37761号公報、国際公開第2014-57633号等に記載の金属塩及び還元剤を混合して錯化反応液を得る工程と、錯化反応液を加熱して、錯化反応液中の金属イオンを還元し、金属ナノ粒子のスラリーを得る工程と、を含む方法が挙げられる。
金属粒子インクの製造において、金属粒子インクに含まれる各成分の含有量を所定の範囲に調整するために、加熱処理を行ってもよい。加熱処理は、減圧下で行ってもよく、常圧下で行ってもよい。また、常圧下で行う場合には、大気中で行ってもよく、不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
<<金属錯体インク>>
金属錯体インクは、例えば、金属錯体が溶媒中に溶解したインク組成物である。
-金属錯体-
金属錯体を構成する金属としては、例えば、銀、銅、金、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、モリブデン、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、スズ、銅、及び鉛が挙げられる。中でも、電磁波シールド性の観点から、金属錯体を構成する金属は、銀、金、白金、ニッケル、パラジウム及び銅からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、銀を含むことがより好ましい。
金属錯体インクに含まれる金属の含有量は、金属錯体インクの全量に対して、金属元素換算で1質量%~40質量%であることが好ましく、5質量%~30質量%であることがより好ましく、7質量%~20質量%であることがさらに好ましい。
金属錯体は、例えば、金属塩と、錯化剤とを反応させることにより得られる。金属錯体の製造方法としては、例えば、金属塩及び錯化剤を有機溶媒に加え、所定時間撹拌する方法が挙げられる。撹拌方法は特に限定されず、撹拌子、撹拌翼又はミキサーを用いて撹拌
させる方法、超音波を加える方法等の公知の方法から適宜選択することができる。
金属塩としては、金属の酸化物、チオシアン酸塩、硫化物、塩化物、シアン化物、シアン酸塩、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、アセチルアセトナート錯塩、及びカルボン酸塩が挙げられる。
錯化剤としては、アミン、アンモニウムカルバメート系化合物、アンモニウムカーボネート系化合物、アンモニウムバイカーボネート化合物、及びカルボン酸が挙げられる。中でも、電磁波シールド性及び金属錯体の安定性の観点から、錯化剤は、アンモニウムカルバメート系化合物、アンモニウムカーボネート系化合物、アミン、及び、炭素数8~20のカルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
金属錯体は、錯化剤に由来する構造を有しており、アンモニウムカルバメート系化合物、アンモニウムカーボネート系化合物、アミン、及び、炭素数8~20のカルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種に由来する構造を有する金属錯体であることが好ましい。
錯化剤であるアミンとしては、例えば、アンモニア、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、及びポリアミンが挙げられる。
直鎖状のアルキル基を有する第1級アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、1-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、n-デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、及びオクタデシルアミンが挙げられる。
分岐鎖状アルキル基を有する第1級アミンとしては、例えば、イソプロピルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、イソペンチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、及びtert-オクチルアミンが挙げられる。
脂環構造を有する第1級アミンとしては、例えば、シクロヘキシルアミン、及びジシクロヘキシルアミンが挙げられる。
ヒドロキシアルキル基を有する第1級アミンとしては、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、及びトリイソプロパノールアミンが挙げられる。
芳香環を有する第1級アミンとしては、例えば、ベンジルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、フェニルアミン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、アニリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、4-アミノピリジン、及び4-ジメチルアミノピリジンが挙げられる。
第二級アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジフェニルアミン、ジシクロペンチルアミン、及びメチルブチルアミンが挙げられる。
第三級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、及びトリフェニルアミンが挙げられる。
ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラメチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
アミンは、アルキルアミンであることが好ましく、炭素原子数が3~10のアルキルアミンであることが好ましく、炭素原子数が4~10の第1級アルキルアミンであることがより好ましい。
金属錯体を構成するアミンは1種であってもよく、2種以上であってもよい。
金属塩とアミンとを反応させる際、金属塩のモル量に対するアミンのモル量の比率は、1倍~15倍であることが好ましく、1.5倍~6倍であることがより好ましい。上記比率が上記範囲内であると、錯体形成反応が完結し、透明な溶液が得られる。
錯化剤であるアンモニウムカルバメート系化合物としては、アンモニウムカルバメート、メチルアンモニウムメチルカルバメート、エチルアンモニウムエチルカルバメート、1-プロピルアンモニウム1-プロピルカルバメート、イソプロピルアンモニウムイソプロピルカルバメート、ブチルアンモニウムブチルカルバメート、イソブチルアンモニウムイソブチルカルバメート、アミルアンモニウムアミルカルバメート、ヘキシルアンモニウムヘキシルカルバメート、ヘプチルアンモニウムヘプチルカルバメート、オクチルアンモニウムオクチルカルバメート、2-エチルヘキシルアンモニウム2-エチルヘキシルカルバメート、ノニルアンモニウムノニルカルバメート、及びデシルアンモニウムデシルカルバメートが挙げられる。
錯化剤であるアンモニウムカーボネート系化合物としては、アンモニウムカーボネート、メチルアンモニウムカーボネート、エチルアンモニウムカーボネート、1-プロピルアンモニウムカーボネート、イソプロピルアンモニウムカーボネート、ブチルアンモニウムカーボネート、イソブチルアンモニウムカーボネート、アミルアンモニウムカーボネート、ヘキシルアンモニウムカーボネート、ヘプチルアンモニウムカーボネート、オクチルアンモニウムカーボネート、2-エチルヘキシルアンモニウムカーボネート、ノニルアンモニウムカーボネート、及びデシルアンモニウムカーボネートが挙げられる。
錯化剤であるアンモニウムバイカーボネート系化合物としては、アンモニウムバイカーボネート、メチルアンモニウムバイカーボネート、エチルアンモニウムバイカーボネート、1-プロピルアンモニウムバイカーボネート、イソプロピルアンモニウムバイカーボネート、ブチルアンモニウムバイカーボネート、イソブチルアンモニウムバイカーボネート、アミルアンモニウムバイカーボネート、ヘキシルアンモニウムバイカーボネート、ヘプチルアンモニウムバイカーボネート、オクチルアンモニウムバイカーボネート、2-エチルヘキシルアンモニウムバイカーボネート、ノニルアンモニウムバイカーボネート、及びデシルアンモニウムバイカーボネートが挙げられる。
金属塩と、アンモニウムカルバメート系化合物、アンモニウムカーボネート系化合物、又はアンモニウムバイカーボネート系化合物とを反応させる際、金属塩のモル量に対する、アンモニウムカルバメート系化合物、アンモニウムカーボネート系化合物、又はアンモニウムバイカーボネート系化合物のモル量の比率は、0.01倍~1倍であることが好ましく、0.05倍~0.6倍であることがより好ましい。
錯化剤であるカルボン酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、2-エチルヘキサン酸、カプリン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、及
びリノレン酸が挙げられる。中でも、カルボン酸は、炭素数8~20のカルボン酸であることが好ましく、炭素数10~16のカルボン酸であることがより好ましい。
金属錯体インク中、金属錯体の含有量は、金属錯体インクの全量に対して、10質量%~90質量%であることが好ましく、10質量%~40質量%であることがより好ましい。金属錯体の含有量は10質量%以上であると、表面抵抗率がより低下する。金属錯体の含有量が90質量%以下であると、インクジェット記録方式を用いて金属錯体インクを付与する場合に、吐出性が向上する。
-溶媒-
金属錯体インクは、溶媒を含有することが好ましい。溶媒は、金属錯体等の金属錯体インクに含まれる成分を溶解することができれば特に限定されない。溶媒は、製造容易性の観点から、沸点が30℃~300℃であることが好ましく、50℃~200℃であることがより好ましく、50℃~150℃であることがより好ましい。
金属錯体インク中、溶媒の含有量は、金属錯体に対する金属イオンの濃度(金属錯体1gに対して遊離イオンとして存在する金属の量)が、0.01mmol/g~3.6mmol/gであることが好ましく、0.05mmol/g~2mmol/gであることがより好ましい。金属イオンの濃度が上記範囲内であると、金属錯体インクが流動性に優れ、かつ、電磁波シールド性を得ることができる。
溶媒としては、例えば、炭化水素、環状炭化水素、芳香族炭化水素、カルバメート、アルケン、アミド、エーテル、エステル、アルコール、チオール、チオエーテル、ホスフィン、及び水が挙げられる。金属錯体インクに含まれる溶媒は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
炭化水素は、炭素数6~20の直鎖状又は分枝状の炭化水素であることが好ましい。炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノナデカン及びイコサンが挙げられる。
環状炭化水素は、炭素数6~20の環状炭化水素であることが好ましい。環状炭化水素としては、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、及びデカリンを含むことができる。
芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びテトラリンが挙げられる。
エーテルは、直鎖状エーテル、分枝鎖状エーテル、及び環状エーテルのいずれであってもよい。エーテルとしては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジヒドロピラン、及び1,4-ジオキサンが挙げられる。
アルコールは、第1級アルコール、第2級アルコール、及び第3級アルコールのいずれであってもよい。
アルコールとしては、例えば、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、1-オクタノール、2-オクタノール、3-オクタノール、テトラヒドロフル
フリルアルコール、シクロペンタノール、テルピネオール、デカノール、イソデシルアルコール、ラウリルアルコール、イソラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、イソミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、イソセチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、イソオレイルアルコール、リノリルアルコール、イソリノリルアルコール、パルミチルアルコール、イソパルミチルアルコール、アイコシルアルコール、及びイソアイコシルアルコールが挙げられる。
ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノンが挙げられる。
エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸メトキシブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、及び3-メトキシブチルアセテートが挙げられる。
-還元剤-
金属錯体インクは、還元剤を含有していてもよい。金属錯体インクに還元剤が含まれていると、金属錯体から金属への還元が促進される。
還元剤としては、例えば、水素化ホウ素金属塩、水素化アルミニウム塩、アミン、アルコール、有機酸、還元糖、糖アルコール、亜硫酸ナトリウム、ヒドラジン化合物、デキストリン、ハイドロキノン、ヒドロキシルアミン、エチレングリコール、グルタチオン、及びオキシム化合物が挙げられる。
還元剤は、特表2014-516463号公報に記載のオキシム化合物であってもよい。オキシム化合物としては、例えば、アセトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、2-ブタノンオキシム、2,3-ブタンジオンモノオキシム、ジメチルグリオキシム、メチルアセトアセテートモノオキシム、メチルピルベートモノオキシム、ベンズアルデヒドオキシム、1-インダノンオキシム、2-アダマンタノンオキシム、2-メチルベンズアミドオキシム、3-メチルベンズアミドオキシム、4-メチルベンズアミドオキシム、3-アミノベンズアミドオキシム、4-アミノベンズアミドオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンズアミドオキシム、及びピナコロンオキシムが挙げられる。
金属錯体インクに含まれる還元剤は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
金属錯体インク中、還元剤の含有量は特に限定されないが、金属錯体インクの全量に対して、0.1質量%~20質量%であることが好ましく、0.3質量%~10質量%であることがより好ましく、1質量%~5質量%であることがさらに好ましい。
-樹脂-
金属錯体インクは、樹脂を含有していてもよい。金属錯体インクに樹脂が含まれていると、金属錯体インクの基材への密着性が向上する。
樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアミド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ロジン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニル系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスルフィド、ポリアミドイミド、ポリエーテル、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、及び尿素樹脂が挙げられる。
金属錯体インクに含まれる樹脂は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
-添加剤-
金属錯体インクは、本開示の効果を損なわない範囲で、さらに、無機塩、有機塩、シリカ等の無機酸化物;表面調整剤、湿潤剤、架橋剤、酸化防止剤、防錆剤、耐熱安定剤、界面活性剤、可塑剤、硬化剤、増粘剤、シランカップリング剤等の添加剤を含有してもよい。金属錯体インク中、添加剤の合計含有量は、金属錯体インクの全量に対して、20質量%以下であることが好ましい。
金属錯体インクの粘度は特に限定されず、0.01Pa・s~5000Pa・sであればよく、0.1Pa・s~100Pa・sであることが好ましい。金属錯体インクをスプレー法又はインクジェット記録方式を用いて付与する場合には、金属錯体インクの粘度は、1mPa・s~100mPa・sであることが好ましく、2mPa・s~50mPa・sであることがより好ましく、3mPa・s~30mPa・sであることがさらに好ましい。
金属錯体インクの粘度は、粘度計を用い、25℃で測定される値である。粘度は、例えば、VISCOMETER TV-22型粘度計(東機産業社製)を用いて測定される。
金属錯体インクの表面張力は特に限定されず、20mN/m~45mN/mであることが好ましく、25mN/m~35mN/mであることがより好ましい。表面張力は、表面張力計を用い、25℃で測定される値である。
金属錯体インクの表面張力は、例えば、DY-700(協和界面科学社製)を用いて測定される。
<<金属塩インク>>
金属塩インクは、例えば、金属塩が溶媒中に溶解したインク組成物である。
-金属塩-
金属塩を構成する金属としては、例えば、銀、銅、金、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、モリブデン、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、スズ、銅、及び鉛が挙げられる。中でも、電磁波シールド性の観点から、金属塩を構成する金属は、銀、金、白金、ニッケル、パラジウム及び銅からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、銀を含むことがより好ましい。
金属塩インクに含まれる金属の含有量は、金属塩インクの全量に対して、金属元素換算で1質量%~40質量%であることが好ましく、5質量%~30質量%であることがより好ましく、7質量%~20質量%であることがさらに好ましい。
金属塩インク中、金属塩の含有量は、金属塩インクの全量に対して、10質量%~90質量%であることが好ましく、10質量%~40質量%であることがより好ましい。金属
塩の含有量は10質量%以上であると、表面抵抗率がより低下する。金属塩の含有量が90質量%以下であると、スプレー方式、又はインクジェット記録方式を用いて金属粒子インクを付与する場合に、吐出性が向上する。
金属塩としては、例えば、金属の安息香酸塩、ハロゲン化物、炭酸塩、クエン酸塩、ヨウ素酸塩、亜硝酸塩、硝酸塩、酢酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硫化物、トリフルオロ酢酸塩、及びカルボン酸塩が挙げられる。なお、塩は、2種以上を組み合わせてもよい。
金属塩は、電磁波シールド性及び保存安定性の観点から、金属カルボン酸塩であることが好ましい。カルボン酸塩を形成するカルボン酸は、ギ酸及び炭素数1~30のカルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、炭素数8~20のカルボン酸であることがより好ましく、炭素数8~20の脂肪酸であることがさらに好ましい。脂肪酸は直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、置換基を有していてもよい。
直鎖脂肪酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、ベヘン酸、オレイン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、及びウンデカン酸が挙げられる。
分岐脂肪酸としては、例えば、イソ酪酸、イソ吉草酸、エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、ピバル酸、2-メチルペンタン酸、3-メチルペンタン酸、4-メチルペンタン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,3-ジメチルブタン酸、3,3-ジメチルブタン酸、及び2-エチルブタン酸が挙げられる。
置換基を有するカルボン酸としては、例えば、ヘキサフルオロアセチルアセトン酸、ヒドロアンゲリカ酸、3-ヒドロキシ酪酸、2-メチル-3-ヒドロキシ酪酸、3-メトキシ酪酸、アセトンジカルボン酸、3-ヒドロキシグルタル酸、2-メチル-3-ヒドロキシグルタル酸、及び2,2,4,4-ヒドロキシグルタル酸が挙げられる。
金属塩は市販品であってもよく、公知の方法により製造されたものであってもよい。銀塩は、例えば、以下の方法で製造される。
まず、エタノール等の有機溶媒中に、銀の供給源となる銀化合物(例えば酢酸銀)と、銀化合物のモル当量に対して等量のギ酸又は炭素数1~30の脂肪酸とを加える。所定時間、超音波撹拌機を用いて撹拌し、生成した沈殿物をエタノールで洗浄してデカンテーションする。これらの工程は全て室温(25℃)で行うことができる。銀化合物と、ギ酸又は炭素数1~30の脂肪酸との混合比は、モル比で1:2~2:1であることが好ましく、1:1であることがより好ましい。
-溶媒-
金属塩インクは、溶媒を含有することが好ましい。
溶媒の種類は、金属塩インクに含まれる金属塩を溶解することができれば特に限定されない。
溶媒の沸点は、製造容易性の観点から、30℃~300℃であることが好ましく、50℃~300℃であることがより好ましく、50℃~250℃であることがより好ましい。
金属塩インク中、溶媒の含有量は、金属塩に対する金属イオンの濃度(金属塩1gに対して遊離イオンとして存在する金属の量)が、0.01mmol/g~3.6mmol/gであることが好ましく、0.05mmol/g~2.6mmol/gであることがより
好ましい。金属イオンの濃度が上記範囲内であると、金属塩インクが流動性に優れ、かつ、電磁波シールド性を得ることができる。
溶媒としては、例えば、炭化水素、環状炭化水素、芳香族炭化水素、カルバメート、アルケン、アミド、エーテル、エステル、アルコール、チオール、チオエーテル、ホスフィン、及び水が挙げられる。
金属塩インクに含まれる溶媒は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
溶媒は、芳香族炭化水素を含むことが好ましい。
芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、t-ブチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、テトラリン、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、及び安息香酸ブチルが挙げられる。
芳香族炭化水素における芳香族環の数は、他成分との相溶性の観点から、1つ又は2つが好ましく、1つがより好ましい。
芳香族炭化水素の沸点は、製造容易性の観点から、50℃~300℃であることが好ましく、60℃~250℃であることがより好ましく、80℃~200℃であることがより好ましい。
溶媒は、芳香族炭化水素と、芳香族炭化水素以外の炭化水素と、を含んでもよい。
芳香族炭化水素以外の炭化水素としては、炭素数6~20の直鎖状炭化水素、炭素数6~20の分枝状炭化水素、炭素数6~20の脂環式炭化水素が挙げられる。
芳香族炭化水素以外の炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノナデカン、デカリン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、デセン、テルペン系化合物及びイコサンが挙げられる。
芳香族炭化水素以外の炭化水素は不飽和結合を含むことが好ましい。
不飽和結合を含む芳香族炭化水素以外の炭化水素としては、テルペン系化合物が挙げられる。
テルペン系化合物は、テルペン系化合物を構成するイソプレン単位の数に応じ、例えば、ヘミテルペン、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、セステルテルペン、トリテルペン、セスクアルテルペン、及びテトラテルペンに分類される。
溶媒としてのテルペン系化合物は、上記のいずれでもよいが、モノテルペンが好ましい。
モノテルペンとしては、例えば、ピネン(α-ピネン、β-ピネン)、テルピネオール(α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール)、ミルセン、カンフェン、リモネン(d-リモネン、l-リモネン、ジペンテン)、オシメン(α-オシメン、β-オシメン)、アロオシメン、フェランドレン(α-フェランドレン、β-フェランドレン)、テルピネン(α-テルピネン、γ-テルピネン)、テルピノーレン(α-テルピノーレン、β-テルピノーレン、γ-テルピノーレン、δ-テルピノーレン)、1,8-シネオール、1,4-シネオール、サビネン、パラメンタジエン、カレン(δ-3-カレン)が挙げられる。
モノテルペンとしては、環式モノテルペンが好ましく、ピネン、テルピネオール、又はカレンがより好ましい。
エーテルは、直鎖状エーテル、分枝鎖状エーテル、及び環状エーテルのいずれであってもよい。エーテルとしては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジ
ヒドロピラン、及び1,4-ジオキサンが挙げられる。
アルコールは、第1級アルコール、第2級アルコール、及び第3級アルコールのいずれであってもよい。
アルコールとしては、例えば、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、1-オクタノール、2-オクタノール、3-オクタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、シクロペンタノール、テルピネオール、デカノール、イソデシルアルコール、ラウリルアルコール、イソラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、イソミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、イソセチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、イソオレイルアルコール、リノリルアルコール、イソリノリルアルコール、パルミチルアルコール、イソパルミチルアルコール、アイコシルアルコール、及びイソアイコシルアルコールが挙げられる。
ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノンが挙げられる。
エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸メトキシブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、及び3-メトキシブチルアセテートが挙げられる。
金属塩インクの粘度は特に限定されず、0.01Pa・s~5000Pa・sであればよく、0.1Pa・s~100Pa・sであることが好ましい。金属塩インクをスプレー法又はインクジェット記録方式を用いて付与する場合には、金属塩インクの粘度は、1mPa・s~100mPa・sであることが好ましく、2mPa・s~50mPa・sであることがより好ましく、3mPa・s~30mPa・sであることがさらに好ましい。
金属塩インクの粘度は、粘度計を用い、25℃で測定される値である。粘度は、例えば、VISCOMETER TV-22型粘度計(東機産業社製)を用いて測定される。
金属塩インクの表面張力は特に限定されず、20mN/m~45mN/mであることが好ましく、25mN/m~35mN/mであることがより好ましい。表面張力は、表面張力計を用い、25℃で測定される値である。
金属塩インクの表面張力は、例えば、DY-700(協和界面科学社製)を用いて測定される。
<導電層形成用インクの付与>
導電層形成工程では、絶縁層上に導電層形成用インクを付与する。
導電層形成用インクは絶縁層上に付与されればよく、絶縁層以外の領域に付与されてもよい。絶縁層上に導電層形成用インクを付与することにより、絶縁層が導電層形成インクによって被覆される。
図4は、図1のA-A線断面図において導電層が形成された状態を示す図である。図4に示すように、例えば、絶縁層31上に導電層32が形成される。
導電層形成用インクの付与方法は特に限定されず、例えば、塗布法、インクジェット記録方式等の公知の方法が挙げられる。中でも、少量を打滴して1回の付与によって形成される導電層の厚さを薄くできる観点から、導電層形成用インクを、インクジェット記録方式で付与することが好ましい。
インクジェット記録方式の好ましい態様は、絶縁層形成用インクの付与におけるインクジェット記録方式の好ましい態様と同様である。
導電層形成工程は、絶縁層上に導電層形成用インクをインクジェット記録方式で付与する工程を含むことが好ましい。
導電層形成工程では、導電層形成用インクを付与する前に、絶縁層が形成された電子基板をあらかじめ加温しておくことが好ましい。導電層形成用インクを付与する際の電子基板の温度は、20℃~120℃であることが好ましく、40℃~100℃であることがより好ましい。
また、導電層形成工程では、絶縁層上に、導電層形成用インクを付与した後、熱又は光を用いて、導電層形成用インクを硬化させることが好ましい。
熱を用いて硬化させる場合に、焼成温度は250℃以下であり、かつ、焼成時間は1分~120分であることが好ましい。焼成温度及び焼成時間が上記範囲であると、電子基板へのダメージが抑制される。
焼成温度は、80℃~250℃であることがより好ましく、100℃~200℃であることがさらに好ましい。また、焼成時間は、1分~60分であることがより好ましい。
焼成方法は特に限定されず、通常公知の方法により行うことができる。
導電層形成用インクの付与が終了した時点から、焼成を開始する時点までの時間は60秒以下であることが好ましい。上記時間の下限値は特に限定されないが、例えば、20秒である。上記時間が60秒以下であると、導電性が向上する。
なお、「導電インクの付与が終了した時点」とは、導電インクの全てのインク滴が絶縁層上に着弾した時点をいう。
光を用いて硬化させる場合に、光としては、例えば、紫外線及び赤外線が挙げられる。
紫外線のピーク波長は、200nm~405nmであることが好ましく、250nm~400nmであることがより好ましく、300nm~400nmであることがさらに好ましい。
光の照射における露光量は、100mJ/cm~10000mJ/cmであることが好ましく、500mJ/cm~7500mJ/cmであることがより好ましい。
[電子デバイス用インク]
本開示の電子デバイス用インクは、N-ビニル化合物と、チオールと、N-ビニル化合物以外の重合性モノマーと、を含み、N-ビニル化合物以外の重合性モノマーは、環を含む環含有重合性モノマー、及び環化重合性モノマーからなる群より選択される少なくとも1種の重合性モノマーAを含み、アシルホスフィン系重合開始剤の含有量が、インクの全量に対して、0.1質量%以下である。
上記電子デバイス用インクは、例えば、基板と、基板上に配置されている電子部品と、を備える電子基板において、電子部品上に絶縁層を形成するための絶縁層形成用インクとして好適である。本開示の電子デバイス用インクによれば、密着性及び電磁波シールド性に優れ、かつ、熱サイクル試験後の密着性及び電磁波シールド性に優れる電子デバイスを製造することができる。
電子デバイス用インクに含まれる各成分の詳細は、電子デバイスの製造方法における絶縁層形成用インクの欄で説明したとおりである。
[インクセット]
本開示のインクセットは、本開示の電子デバイス用インクである第1インクと、銀塩又は銀錯体を含む電子デバイス用インクである第2インクと、を含む。
本開示のインクセットの第1インクは、例えば、基板と、基板上に配置されている電子部品と、を備える電子基板において、電子部品上に絶縁層を形成するための絶縁層形成用インクとして好適である。本開示のインクセットの第2インクは、例えば、基板と、基板上に配置されている電子部品と、を備える電子基板において、電子部品上に形成された絶縁層上に導電層を形成するための導電層形成用インクとして好適である。本開示のインクセットによれば、密着性及び電磁波シールド性に優れ、かつ、熱サイクル試験後の密着性及び電磁波シールド性に優れる電子デバイスを製造することができる。
第2インクの詳細は、電子デバイスの製造方法における導電層形成用インクの欄で説明したとおりである。
以下、本開示を実施例によりさらに具体的に説明するが、本開示はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
まず、絶縁層形成用インク及び導電層形成用インクを調製した。
<絶縁層形成用インクの調製>
表1~表4に記載の各成分を含む混合物を、ミキサー(製品名「L4R」、シルバーソン社製)を用いて、25℃で5000回転/分の条件で20分間撹拌し、絶縁層形成用インクを得た。なお、絶縁層形成用インクの調製には、Speedcure7010L(Lambson社製)を用いた。Speedcure7010Lは、Speedcure7010とEOTMPTAとの混合物であり、混合比は質量基準で1:1である。表中、重合開始剤の欄にSpeedcure7010を記載し、重合性モノマーの欄にEOTMPTAを記載した。
絶縁層形成用インクに含まれる各成分の詳細は、以下のとおりである。
(重合性モノマー)
-N-ビニル化合物-
・NVC:N-ビニルカプロラクタム(富士フイルム和光純薬社製)
-重合性モノマーA(環含有単官能重合性モノマー)-
・TBCHA:t-ブチルシクロヘキシルアクリレート(製品コードB6059、東京化成工業株式会社製)
・IBOA:イソボルニルアクリレート(製品名「SR506D」、サートマー社製)
・DCPTeA:ジシクロペンテニルアクリレート(製品名「FA-511AS」、昭和電工マテリアルズ社製)
・DCPTaA:ジシクロペンタニルアクリレート(製品名「FA-513AS」、昭和電工マテリアルズ社製)
-重合性モノマーA(環含有2官能重合性モノマー)-
・TCDDMDA:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(製品名「SR833S」、サートマー社製)
・EOBPDA:エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(製品名「ABE-300」、新中村化学工業社製)
-重合性モノマーA(環化重合性モノマー)-
・AOMA:α-アリルオキシメチルアクリル酸メチル(製品名「AOMA」、日本触媒社製)
-その他の重合性モノマー-
・HDDA:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(製品名「SR238」、サートマー社製)
・3MPDDA:3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート(製品名「SR341」、サートマー社製)
・EOTMPTA:トリメチロールプロパンEO付加トリアクリレート、製品名「Speedcure7010L」(Lambson社製)に含まれる50質量%分
(チオール)
・PEMB:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(製品名「カレンズMT PE1)
・TMPMB:トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)(製品名「カレンズMT TPMB)
・BDMB:1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン(製品名「カレンズMT BD1)
(重合開始剤)
・379:2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン(製品名「Omnirad 379」、IGM Resins B.V.社製)
・ITX:2-イソプロピルチオキサントン(製品名「SPEEDCURE ITX」、LAMBSON社製)
・7010:1,3-ジ({α-[1-クロロ-9-オキソ-9H-チオキサンテン-4-イル)オキシ]アセチルポリ[オキシ(1-メチルエチレン)]}オキシ)-2,2-ビス({α- [1-メチルエチレン)]}オキシメチル)プロパン、製品名「Speedcure7010L」(Lambson社製)に含まれる50質量%分
・4-PBZ:4-フェニルベンゾフェノン(製品名「Omnirad 4-PBZ」、IGM Resins B.V.社製)
・907:2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(製品名「Omnirad 907」、IGM Resins B.V.社製)
・819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(製品名「Omnirad 819」、IGM Resins B.V.社製;アシルホスフィン系重合開始剤)
・TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(製品名「Omnirad TPO H」、IGM Resins B.V.社製;アシルホスフィン系重合開始剤)
(界面活性剤)
・BYK-307(ビックケミー社製):シリコーン系界面活性剤
・TEGO WET 500(エボニック社製):ノニオン性界面活性剤
(重合禁止剤)
・MEHQ:p-メトキシフェノール
<導電層形成用インクの調製>
200mLの3口フラスコに、ネオデカン酸銀40gを加えた。次に、トリメチルベンゼン30.0g、及びテルピネオール30.0gを加え、撹拌し、銀塩を含む溶液を得た。この溶液を、孔径0.45μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製メンブレンフィルターを使用してろ過し、導電層形成用インクを得た。
<電子基板の準備>
電子基板として、図1及び図2に示す電子基板を準備した。以下、電子基板の寸法を示す。
グランド電極13の幅:900μm
グランド電極13の高さ(配線基板11上に突出した部分の高さ):25μm
グランド電極13で囲まれる領域:20mm×18mm
電子部品12Aの高さ:200μm
電子部品12Bの高さ:500μm
電子部品12Bとグランド電極との距離:200μm
<絶縁層の形成>
絶縁層形成用インクを、インクジェット記録装置(製品名「DMP-2850」、FUJIFILM DIMATIX社製)のインクカートリッジ(10ピコリットル用)に充填した。画像記録条件は、打滴量を1ドット当たり10ピコリットルとした。
まず、図1における電子部品12A及び電子部品12Bが配置されていない領域Aに対して、絶縁層形成用インクを付与し、紫外線を照射するというサイクルを2回繰り返した。次に、上記領域Aに加えて、図1における電子部品12Aが配置されている領域Bに対して、絶縁層形成用インクを付与し、紫外線を照射するというサイクルを3回繰り返した。さらに、上記領域A及び領域Bに加えて、図1における電子部品12Bが配置されている領域Cに対して、絶縁層形成用インクを付与し、紫外線を照射するというサイクルを2回繰り返した。
配線基板の表面を基準とした絶縁層の厚さの最大値が700μm、電子部品12B上の絶縁層の厚さが200μmとなった。紫外線の照射は、インクジェットヘッドの横に設置した、紫外線照射装置(製品名「UVスポットキュア OmniCure S2000」、LumenDynamics社製)を用いて行った。紫外線の照度は12W/cmとし、インクジェッ記録装置の解像度と周波数を調整し、1サイクル当たりの露光量は1.8J/cmとした。また、絶縁層形成用インクが付与された時点から紫外線の照射開始までの時間を0.2秒とした。
-導電層の形成-
導電層形成用インクを、インクジェット記録装置(製品名「DMP-2850」、FUJIFILM DIMATIX社製)のインクカートリッジ(10ピコリットル用)に充填した。画像記録条件は、解像度を1270dpi(dots per inch)、打滴量を1ドット当たり10ピコリットルとした。絶縁層が形成された電子基板をあらかじめ60℃まで加温した。導電層形成用インクを付与し、オーブンを用いて160℃で60分間加熱するというサイクルを8回繰り返した。金属光沢のある厚さ3.2μmの導電層が形成され、電子デバイスを得た。
作製した電子デバイスを用いて、初期の電磁波シールド性及び密着性、並びに、熱サイクル試験後の電磁波シールド性及び密着性の評価を行った。
<初期の電磁波シールド性>
各電子デバイスを100個ずつ作製し、短絡が生じたか否かの評価を行った。評価基準は以下のとおりである。
4:全て短絡なし。
3:短絡が生じたものが1個であった。
2:短絡が生じたものが2個~4個であった。
1:短絡が生じたものが5個以上であった。
<初期の密着性>
電子デバイスを作製後、25℃で1時間放置した。1時間経過後、導電層上にセロテープ(登録商標、No.405、ニチバン社製、幅12mm、以下、単に「テープ」ともいう。)のテープ片を貼り付けた。次に、テープ片を導電層から剥離することにより、絶縁層と導電層との密着性を評価した。
テープの貼り付け及び剥離は、具体的には、下記の方法により行った。
一定の速度でテープを取り出し、約75mmの長さにカットし、テープ片を得た。
得られたテープ片を作成した電子デバイス上の導電層上に重ね、テープ片の中央部の幅12mm、長さ25mmの領域を指で貼り付け、指先でしっかりこすった。
テープ片を貼り付けた後、テープ片の端をつかみ、できるだけ60°に近い角度で0.5秒~1.0秒で剥離した。
剥離したテープ片における付着物の有無と、電子デバイスにおける導電層の剥がれの有無と、を目視で観察した。下記評価基準に従い、絶縁層と導電層との密着性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
4:テープ片に付着物が認められず、導電層の剥がれも認められない。
3:テープ片に若干の付着物が認められたが、導電層の剥がれは認められない。
2:テープ片に若干の付着物が認められ、導電層に若干の剥がれが認められるが、実用上許容できる範囲内である。
1:テープ片に付着物が認められ、導電層に剥がれも認められ、実用上許容できる範囲を超えている。
<熱サイクル試験後の電磁波シールド性及び密着性>
得られた電子デバイスを恒温槽(製品名「PL-1J」、エスペック社製)に入れた。下記工程1~工程5を1サイクルとして、200サイクル行った。
工程1:25℃から90℃まで4分で昇温した。
工程2:90℃で1時間放置した。
工程3:90℃から-30℃まで8分で降温した。
工程4:-30℃で1時間放置した。
工程5:-30℃から25℃まで4分で昇温した。
200サイクル終了後に、初期の電磁波シールド性及び初期の密着性の評価方法と同様の方法で、電磁波シールド性及び密着性の評価を行い、温度の高低変化の影響を評価した。評価基準は、初期の電磁波シールド性及び初期の密着性と同じとした。
表1~表5に、評価結果を示す。表1~表5中、NVC以外の重合性モノマーに関して、官能基数を記載した。重合性モノマーに環が含まれる場合には「環含有」と記載し、重合性モノマーが環化重合性モノマーである場合には「環化」と記載した。「重合性モノマーAの比率」は、インクに含まれる全ての重合性モノマーに占める重合性モノマーAの割合(質量%)を意味する。「N-ビニル化合物」は、インクに含まれる全ての重合性モノマーに占めるN-ビニル化合物の割合(質量%)を意味する。「N-ビニル化合物/環含有2官能重合性モノマー」は、環含有2官能重合性モノマーの含有量に対する、N-ビニル化合物の含有量の質量比率を意味する。
Figure 2023070947000003
Figure 2023070947000004
Figure 2023070947000005
Figure 2023070947000006
Figure 2023070947000007
表1~表4に示すように、実施例1~実施例36では、基板と、基板上に配置されている電子部品と、を備える電子基板を準備する工程と、電子部品上に絶縁層形成用インクを付与し、電子部品を被覆する絶縁層を形成する工程と、絶縁層上に導電層形成用インクを付与し、絶縁層を被覆する導電層を形成する工程と、を含み、絶縁層形成用インクは、N-ビニル化合物と、チオールと、N-ビニル化合物以外の重合性モノマーと、を含み、N-ビニル化合物以外の重合性モノマーは、環を含む環含有重合性モノマー、及び環化重合性モノマーからなる群より選択される少なくとも1種の重合性モノマーAを含み、アシルホスフィン系重合開始剤の含有量が、絶縁層形成用インクの全量に対して、0.1質量%以下であるため、密着性及び電磁波シールド性に優れ、かつ、熱サイクル試験後の密着性及び電磁波シールド性に優れる
一方、比較例1では、絶縁層形成用インクにN-ビニル化合物が含まれていないため、電磁波シールド性に劣ることが分かった。
比較例2及び比較例3では、絶縁層形成用インクにおけるアシルホスフィン系重合開始剤の含有量が、絶縁層形成用インクの全量に対して、0.1質量%超であるため、電磁波シールド性に劣ることが分かった。
比較例4では、絶縁層形成用インクにチオールが含まれていないため、密着性に劣ることが分かった。
比較例5では、絶縁層形成用インクに重合性モノマーAが含まれていないため、熱サイクル試験後の電磁波シールド性及び密着性に劣ることが分かった。
実施例1では、絶縁層形成用インクに含まれる全ての重合性モノマーに占める、重合性モノマーAの割合が35質量%以上であるため、実施例8と比較して、密着性に優れることが分かった。
実施例1では、絶縁層形成用インクに環含有単官能重合性モノマーが含まれるため、実施例2と比較して、密着性に優れることが分かった。
実施例4では、絶縁層形成用インクに、環含有単官能重合性モノマー及び環含有2官能重合性モノマーが含まれるため、実施例5と比較して、密着性に優れることが分かった。
実施例10では、環含有2官能重合性モノマーの含有量が、絶縁層形成用インクの全量に対して、5質量%以上であるため、実施例11と比較して、熱サイクル試験後の電磁波シールド性及び密着性に優れることが分かった。実施例12では、環含有2官能重合性モノマーの含有量が、絶縁層形成用インクの全量に対して、25質量%以下であるため、実施例13と比較して、密着性に優れ、かつ、熱サイクル試験後の電磁波シールド性及び密着性に優れることが分かった。
実施例15では、環含有2官能重合性モノマーの含有量に対する、N-ビニル化合物の含有量の質量比率が0.5以上であるため、実施例14と比較して、電磁波シールド性に優れることが分かった。実施例6では、環含有2官能重合性モノマーの含有量に対する、N-ビニル化合物の含有量の質量比率が2以下であるため、実施例7と比較して、電磁波シールド性に優れることが分かった。
実施例15では、絶縁層形成用インクに含まれる全ての重合性モノマーに占める、N-ビニル化合物の割合が10質量%以上であるため、実施例14と比較して、電磁波シールド性に優れることが分かった。実施例16では、絶縁層形成用インクに含まれる全ての重合性モノマーに占める、N-ビニル化合物の割合が25質量%以下であるため、実施例17と比較して、電磁波シールド性に優れることが分かった。
実施例18では、界面活性剤の含有量が、絶縁層形成用インクの全量に対して、0.1質量%以下であるため、実施例19及び実施例20と比較して、電磁波シールド性に優れることが分かった。
10 電子基板
11 配線基板
12、12A、12B 電子部品
13 グランド電極
31 絶縁層
32 導電層

Claims (16)

  1. 基板と、前記基板上に配置されている電子部品と、を備える電子基板を準備する工程と、
    前記電子部品上に絶縁層形成用インクを付与し、前記電子部品を被覆する絶縁層を形成する工程と、
    前記絶縁層上に導電層形成用インクを付与し、前記絶縁層を被覆する導電層を形成する工程と、
    を含み、
    前記絶縁層形成用インクは、N-ビニル化合物と、チオールと、前記N-ビニル化合物以外の重合性モノマーと、を含み、
    前記N-ビニル化合物以外の重合性モノマーは、環を含む環含有重合性モノマー、及び環化重合性モノマーからなる群より選択される少なくとも1種の重合性モノマーAを含み、
    アシルホスフィン系重合開始剤の含有量が、前記絶縁層形成用インクの全量に対して、0.1質量%以下である、電子デバイスの製造方法。
  2. 前記絶縁層形成用インクに含まれる全ての重合性モノマーに占める、前記重合性モノマーAの割合は、35質量%以上である、請求項1に記載の電子デバイスの製造方法。
  3. 前記環含有重合性モノマーは、重合性基を1つ有する環含有単官能重合性モノマーを含む、請求項1又は請求項2に記載の電子デバイスの製造方法。
  4. 前記環含有単官能重合性モノマーは、前記環と前記重合性基とが直接結合している、請求項3に記載の電子デバイスの製造方法。
  5. 前記環は、イソボルニル環、ジシクロペンタニル環、又はジシクロペンテニル環である、請求項4に記載の電子デバイスの製造方法。
  6. 前記環含有重合性モノマーは、さらに、重合性基を2つ有する環含有2官能重合性モノマーを含む、請求項3~請求項5のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
  7. 前記環含有2官能重合性モノマーの含有量は、前記絶縁層形成用インクの全量に対して、5質量%~25質量%である、請求項6に記載の電子デバイスの製造方法。
  8. 前記環含有2官能重合性モノマーは、ジシクロペンタニル環又はビスフェノール骨格を含む、請求項6又は請求項7に記載の電子デバイスの製造方法。
  9. 前記環含有2官能重合性モノマーの含有量に対する、前記N-ビニル化合物の含有量の質量比率は、0.5~2である、請求項6~請求項8のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
  10. 前記環化重合性モノマーは、α-アリルオキシメチルアクリル酸エステルである、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
  11. 前記絶縁層形成用インクに含まれる全ての重合性モノマーに占める、前記N-ビニル化合物の割合は、10質量%~25質量%である、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
  12. 前記絶縁層形成用インクは、界面活性剤の含有量が、前記絶縁層形成用インクの全量に対して、0.1質量%以下である、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
  13. 前記導電層形成用インクは、銀塩又は銀錯体を含む、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
  14. 前記絶縁層を形成する工程は、前記電子部品上に前記絶縁層形成用インクをインクジェット記録方式で付与する工程と、付与された前記絶縁層形成用インクに対して活性エネルギー線を照射する工程と、を含み、
    前記導電層を形成する工程は、前記絶縁層上に前記導電層形成用インクをインクジェット記録方式で付与する工程を含む、請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
  15. N-ビニル化合物と、
    チオールと、
    前記N-ビニル化合物以外の重合性モノマーと、を含み、
    前記N-ビニル化合物以外の重合性モノマーは、環を含む環含有重合性モノマー、及び環化重合性モノマーからなる群より選択される少なくとも1種の重合性モノマーAを含み、
    アシルホスフィン系重合開始剤の含有量が、インクの全量に対して、0.1質量%以下である、電子デバイス用インク。
  16. 請求項15に記載の電子デバイス用インクである第1インクと、
    銀塩又は銀錯体を含む電子デバイス用インクである第2インクと、
    を備えるインクセット。
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