JP2023069455A - 流体センサおよび流体センサの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】樹脂の充填量の管理を容易にして樹脂の平坦性のばらつきを低減し、流体センサによる流速の計測精度の低下を抑制する。【解決手段】流体センサは、基板上に搭載され、表面上を流れる流体を検出するセンサチップと、前記センサチップの周囲を囲って前記基板上に配置される第1筐体と、前記センサチップと前記第1筐体との間の凹部に充填された、フィラーを含む1液タイプの樹脂と、前記第1筐体上に配置される第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体との間に設けられ、前記センサチップの表面を流れる流体の流路と、を有する。【選択図】図1
Description
本発明は、流体センサおよび流体センサの製造方法に関する。
気体の流速を計測する流体センサにおいて、感温素子として機能する抵抗素子をヒータの両側に配置し、気流に応じて変化する抵抗素子の抵抗値の差に応じて流速を測定する手法が知られている。この種の流体センサは、基板上に搭載されるセンサチップの周囲と筐体との間の凹部に、センサチップの高さに合わせて樹脂を充填することで、流体センサの外部からセンサチップ上に流れ込む気流に乱流が発生することを抑制している(例えば、特許文献1参照)。
充填する樹脂が凹部内に十分に回り込まず、凹部内で基板が露出する場合、または、樹脂がセンサチップの側壁または筐体の側壁と十分に密着されない場合、水分が基板に侵入し、基板上の端子等を腐食させるおそれがある。例えば、粘度が一液タイプよりも低い二液タイプの樹脂を使用することで、樹脂の回り込みを良くすることができる。しかしながら、二液タイプの樹脂は、時間とともに粘度が高くなるため、樹脂の充填量を管理しにくく、作業性が悪いという問題がある。また、樹脂の充填量がばらつくことで、センサチップの周囲に凹状または凸状の段差が生じた場合、流体センサによる流速の計測精度が低下してしまう。
開示の技術は、樹脂の充填量の管理を容易にして樹脂の平坦性のばらつきを低減し、流体センサによる流速の計測精度の低下を抑制することを目的とする。
上記技術的課題を解決するため、本発明の一形態の流体センサは、基板上に搭載され、表面上を流れる流体を検出するセンサチップと、前記センサチップの周囲を囲って前記基板上に配置される第1筐体と、前記センサチップと前記第1筐体との間の凹部に充填された、フィラーを含む1液タイプの樹脂と、前記第1筐体上に配置される第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体との間に設けられ、前記センサチップの表面を流れる流体の流路と、を有する。
樹脂の充填量の管理を容易にして樹脂の平坦性のばらつきを低減し、流体センサによる流速の計測精度の低下を抑制することができる。
以下、図面を参照して実施の形態の説明を行う。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
(流体センサの構造)
図1は、本発明の一実施形態に係る流体センサの一例を示す図である。以下の説明では、Z方向を示す矢印の矢じり側を上側とも称し、矢じり側と反対側を下側とも称する。図1に示す流体センサ100は、センサチップ110、基板120、下筐体130および上筐体140を有する。特に限定されないが、流体センサ100は、風速計として屋外に設置されてもよく、あるいは、屋内での風の動きを検出するためにクリーンルーム等の屋内に設置されてもよい。下筐体130は、第1筐体の一例であり、上筐体140は、第2筐体の一例である。
図1は、本発明の一実施形態に係る流体センサの一例を示す図である。以下の説明では、Z方向を示す矢印の矢じり側を上側とも称し、矢じり側と反対側を下側とも称する。図1に示す流体センサ100は、センサチップ110、基板120、下筐体130および上筐体140を有する。特に限定されないが、流体センサ100は、風速計として屋外に設置されてもよく、あるいは、屋内での風の動きを検出するためにクリーンルーム等の屋内に設置されてもよい。下筐体130は、第1筐体の一例であり、上筐体140は、第2筐体の一例である。
センサチップ110は、例えば、矩形状の基板120上のほぼ中央に搭載され、流体センサ100に流れ込む流体(例えば、空気)の風速および風向を検出する。センサチップ110は、ボンディングワイヤ121を介して基板120に電気的に接続される。センサチップ110の例は、図2に示される。
下筐体130は、円筒状の外枠131と、外枠131の上端から内側に向けて突出するリング状の突出部132とを有する。例えば、突出部132の厚さは、センサチップ110の厚さと同じに設計される。
上筐体140は、円盤状の蓋部141と複数の支柱142と肉厚部143とを有する。蓋部141は、下筐体130の外枠131の外径とほぼ同じ外径を有する。複数の支柱142は、例えば、横断面が円形状であり、蓋部141の下面の周辺部に等間隔で設けられる。肉厚部143は、蓋部141の中心部においてセンサチップ110に対向して設けられ、円錐台状を有する。
そして、各支柱142の下端が樹脂201を介して外枠131の上端に接着されることで、上筐体140は下筐体130に固定される。また、複数の支柱142により蓋部141が外枠131で支持されることにより、蓋部141と突出部132との間の空間に流体の流路150が形成される。
図1では、流路150がセンサチップ110の周囲(X方向およびY方向)の全体に形成されるため、センサチップ110は、流体の風向にかかわらず風速を検出することができる。また、肉厚部143により、センサチップ110上の流路を、支柱142が配置される領域の流路より狭くすることで、センサチップ110による風速の検知感度を高くすることができる。
基板120は、基板120の上面の外周部が突出部132の下面に接した状態で、基板120の周囲に配置される樹脂202により突出部132の下面と接着される。基板120の下面には、抵抗、コンデンサ、インダクタ等の複数の電子部品161が搭載される。基板120の下面の外周部には、ピン状の複数の外部端子162が固定される。例えば、複数の外部端子162は、流体センサ100が搭載される図示しないメイン基板のスルーホール等にはんだ付けされる。
基板120の中央部は、センサチップ110の下側の空間まで貫通する貫通穴120aを有する。貫通穴120aは、センサチップ110を基板120に実装するときの熱(例えば、接着剤の熱硬化時の熱)によりセンサチップ110の下側の空間の圧力が高くなることを抑制することができる。この結果、センサチップ110が基板120に対して傾いて接着されること抑制することができる。
下筐体130の環状の突出部132の内壁と、センサチップ110の外周と、基板120の上面とに囲まれる環状の凹部170には、樹脂203が充填される。また、突出部132の上面と、センサチップ110の上面と、樹脂203の上面とは、例えば、フッ素系の撥水コート剤の塗布により形成された防水性および防湿性を有する保護膜180により覆われる。
保護膜180によりセンサチップ110、センサチップ110と樹脂203との界面、および突出部132と樹脂203との界面に水分が侵入することを抑制することができる。これにより、例えば、センサチップ110上に設けられるパッドとボンディングワイヤ121との接続部の腐食を抑制することができる。
なお、下筐体130の内壁とセンサチップ110との距離(凹部170の幅に相当)は、樹脂203の表面の凹みを少なくするために、センサチップ110の高さ(チップ厚)の2倍程度以下にすることが好ましい。また、凹部170の幅は、チップ厚の2倍程度にすることが好ましい。これにより、センサチップ110の基板120上での搭載位置と下筐体130の基板120上での接着位置との一方または両方がずれた場合にも、ボンディングワイヤ121を基板120上の端子に確実に接続可能な空間を凹部170に確保することができる。
なお、ボンディングワイヤ121を所望の湾曲形状にして基板120上の端子に確実に接続するために、センサチップ110上のパッドと基板120上の端子との平面視(Z方向から見た状態)の距離は、センサチップ110の高さ程度に設定されることが好ましい。
(センサチップの構造)
図2は、図1のセンサチップ110の一例を示す図である。図2(A)は、センサチップ110の平面図を示し、図2(B)は、図2(A)のA-A'線に沿う断面図を示す。例えば、センサチップ110は、半導体製造技術を使用して形成される。
図2は、図1のセンサチップ110の一例を示す図である。図2(A)は、センサチップ110の平面図を示し、図2(B)は、図2(A)のA-A'線に沿う断面図を示す。例えば、センサチップ110は、半導体製造技術を使用して形成される。
センサチップ110は、ヒータとして機能するヒータ抵抗Rhと感温素子Ru(Ru(1)、Ru(2))、Rd(Rd(1)、Rd(2))とを有する。例えば、ヒータ抵抗Rhは、白金(Pt)、ニクロム(NiCr)、ケイ化モリブデン(MoSi2)、ケイ化タングステン(WSi2)またはポリシリコーン等により形成される。例えば、感温素子Ru、Rdは、温度変化により抵抗値が変化する酸化バナジウム膜を有する抵抗素子が使用される。
例えば、感温素子Ru、Rdを形成する酸化バナジウム膜のサイズおよび膜厚のそれぞれは、互いに等しく、感温素子Ru、Rdの抵抗値は、互いに等しい。感温素子Ru、Rdは、ヒータ抵抗Rhの発熱等による周囲温度の変化に応じて抵抗値がそれぞれ変化し、感温素子Ru、Rdを流れる電流が変化する。
例えば、ヒータ抵抗Rhは、平面視(上面視)で正方形状のセンサチップ110の中央に設けられる。感温素子Ru(1)、Rd(1)は、センサチップ110のX方向の両側に設けられる。感温素子Ru(2)、Rd(2)は、センサチップ110のY方向の両側に設けられる。すなわち、センサチップ110は、感温素子Ru(1)、Rd(1)の配列の向きと、感温素子Ru(2)、Rd(2)の配列の向きとが異なる2つ感温素子対を有する。
感温素子Ru(1)、Rd(1)、Ru(2)、Rd(2)の各々とヒータ抵抗Rhとの距離は、互いに同じである。また、センサチップ110上には、細長い配線を蛇行させることで形成された温度センサTSNSが設けられる。
センサチップ110は、平面視でセンサチップ110の外周部に設けられる半導体基板SUBと、半導体基板SUB上に設けられるメンブレンMEMB(薄膜)とを有する。例えば、半導体基板SUBは、シリコーン基板またはSOI(Silicon On Insulator)基板である。メンブレンMEMBは、多層配線構造を有してもよい。センサチップ110の中央部において、メンブレンMEMBの半導体基板SUB側の裏面は、空間SPが設けられる。ヒータ抵抗Rhおよび感温素子Ru、Rdは、空間SPに対向するメンブレンMEMB上に配置される。メンブレンMEMB上には、ヒータ抵抗Rhおよび感温素子Ru、Rdを覆って保護膜PASFが設けられる。保護膜PASF上には、保護膜PASFから露出するパッドPADが設けられる。
ヒータ抵抗Rhは、細長い配線を蛇行させた正方形状を有する。このため、感温素子Ru(1)、Rd(1)、Ru(2)、Rd(2)とヒータ抵抗Rhとの相対的な位置関係とをすべて同じにすることができる。この結果、例えば、センサチップ110とともにメイン基板に搭載されるCPU(Central Processing Unit)等の制御部は、感温素子対Ru、Rd毎に、抵抗値の変化に基づいて、ヒータ抵抗Rh上の風速を算出することができる。
例えば、制御部は、感温素子Ru(1)、Rd(1)の抵抗値の変化に基づいて、X方向の風速を算出し、感温素子Ru(2)、Rd(2)の抵抗値の変化に基づいて、Y方向の風速を算出することができる。さらに、制御部は、2つの感温素子対Ru、Rdの抵抗値の変化に基づいて算出した2つの風速から気流の方向(風向)を算出することができる。
ヒータ抵抗Rh、感温素子Ru(1)、Rd(1)、Ru(2)、Rd(2)および温度センサTSNSの各々の両端は、配線Wを介してセンサチップ110の外周部に設けられるパッドPADにそれぞれ接続される。各パッドPADは、図1に示したように、ボンディングワイヤ121を介して基板120に設けられる端子に接続され、さらに、外部端子162を介して図示しないメイン基板に接続される。
パッドPDに接続されない2本の配線は、ダミー配線DMYである。ダミー配線DMYを設けることにより、ヒータ抵抗Rhおよび感温素子Ru、Rdの周囲の配線のレイアウトを対称にすることができる。これにより、センサチップ110の半導体製造工程において、感温素子Ru、Rdの形状のばらつきを抑制することができ、感温素子Ru、Rdの電気的特性のずれを抑制することができる。
(流体センサの製造方法)
図3および図4は、図1の流体センサ100の製造方法の一例を示す図である。例えば、まず、センサチップ110、電子部品161および外部端子162が基板120に搭載される。次に、センサチップ110のパッドPADと基板120の端子120bとが、ボンディングワイヤ121により接続され、図3(A)に示すセンサ本体部101が形成される。そして、基板120上に下筐体130が被せられ、突出部132が基板120の上面に配置される。
図3および図4は、図1の流体センサ100の製造方法の一例を示す図である。例えば、まず、センサチップ110、電子部品161および外部端子162が基板120に搭載される。次に、センサチップ110のパッドPADと基板120の端子120bとが、ボンディングワイヤ121により接続され、図3(A)に示すセンサ本体部101が形成される。そして、基板120上に下筐体130が被せられ、突出部132が基板120の上面に配置される。
次に、図3(B)に示すように、基板120の外周部と突出部132とが樹脂202により接着される。これにより、基板120の上面が突出部132の下面と密着した状態で、センサ本体部101が下筐体130に固定される。そして、突出部132の内壁と、センサチップ110の外周と、基板120の上面とに囲まれる環状の凹部170が形成される。
次に、図4(A)に示すように、凹部170に樹脂203が充填される。例えば、樹脂203は、所定の範囲の粒度を有するフィラー203aを所定量含むエポキシ樹脂である。例えば、フィラー203aは、ガラスであり、エポキシ樹脂は、一液タイプである。樹脂203の種類については、図6で説明される。樹脂203の充填は、センサ本体部101および下筐体130を温めた状態で、温めた樹脂203を凹部170に流し込むことで行われる。
樹脂203にエポキシ樹脂を使用することで、シリコーン樹脂を使用する場合に比べて、防湿性および防水性を確保することができ、基板120上の端子の腐食を抑制することができる。この結果、屋外環境に適した流体センサ100を形成することができる。また、樹脂203にフィラーを混ぜることで、二液タイプのエポキシ樹脂に比べて粘度が高い一液タイプのエポキシ樹脂でも濡れ性(樹脂の回り込み)を良くすることができる。さらに、樹脂203にフィラーを混ぜることで、樹脂203の硬化時の収縮量を小さくすることができる。樹脂203の濡れ性については、図6で説明される。
また、樹脂203にエポキシ樹脂を使用することで、シリコーン樹脂を使用する場合に比べて、熱硬化温度を低くすることができ、樹脂203の熱硬化時にセンサチップ110、基板120および下筐体130に掛かる温度を低くすることができる。これにより、例えば、基板120または下筐体130の材料の選択肢を広げることができる。
例えば、樹脂203は、凹部170の上面から盛り上がらないように、凹部170の上面近くまで充填される。この後、センサ本体部101および下筐体130が、樹脂203の硬化温度まで加熱され、樹脂203が硬化する。
樹脂203の上面を、センサチップ110の上面および突出部132の上面に揃えて平坦形状にすることで、樹脂203の上面を通ってセンサチップ110に流れ込む気流が、樹脂203の上面で乱れることを抑制することができる。これにより、流体センサ100による流速の計測精度が低下することを抑制することができる。
次に、撥水コート剤がセンサチップ110、突出部132および樹脂203の上面に塗布される。例えば、撥水コート剤は、センサチップ110上に滴下されるため、凹部170上に露出するボンディングワイヤ121にも塗布される。そして、加熱処理により、撥水コート剤が乾燥され、保護膜180が形成される。
次に、図4(B)に示すように、下筐体130の外枠131の上面に間隔を置いて樹脂201が塗布される。次に、上筐体140の支柱142を下筐体130の外枠131に塗布された樹脂201に合わせて、下筐体130上に上筐体140が載せられる。そして、各支柱142の下端が樹脂201を介して外枠131の上端に接着され、図1に示した流体センサ100が完成する。
(樹脂の充填量と平坦性との関係)
図5は、図1の凹部170に充填された樹脂203の硬化後の表面形状と、樹脂203上を通過する気流との例を示す図である。例えば、樹脂203の充填量が凹部170の体積の80%以上、100%以下の場合、樹脂203の表面の位置は、突出部132の上面およびセンサチップ110の上面とほぼ同じか、わずかに下になる。すなわち、樹脂203の表面と、突出部132の上面およびセンサチップ110の上面との平坦性を確保することができる。この場合、センサチップ110に向かって樹脂203上を通過する気流AFは、センサチップ110上に向かって真っ直ぐ流れる。この結果、流体センサ100に流入する気流の速度をセンサチップ110により精度良く検出することができる。
図5は、図1の凹部170に充填された樹脂203の硬化後の表面形状と、樹脂203上を通過する気流との例を示す図である。例えば、樹脂203の充填量が凹部170の体積の80%以上、100%以下の場合、樹脂203の表面の位置は、突出部132の上面およびセンサチップ110の上面とほぼ同じか、わずかに下になる。すなわち、樹脂203の表面と、突出部132の上面およびセンサチップ110の上面との平坦性を確保することができる。この場合、センサチップ110に向かって樹脂203上を通過する気流AFは、センサチップ110上に向かって真っ直ぐ流れる。この結果、流体センサ100に流入する気流の速度をセンサチップ110により精度良く検出することができる。
一方、硬化後の樹脂203の充填量が少ない場合、樹脂203の表面は、突出部132の上面およびセンサチップ110の上面に対して低くなり、凹状の段差が生じる。この場合、センサチップ110上に向かう気流AFは、樹脂203上を通過するときに段差に沿って下降した後に上昇し、センサチップ110から離れてしまう。あるいは、センサチップ110上に向かう気流AFにより、樹脂203上で渦流が発生してしまう。これにより、センサチップ110を通過する気流の流速が流体センサ100に流入する気流の速度と相違するため、センサチップ110による流速の検出精度は低下する。
また、硬化後の樹脂203の充填量が多く、充填量が凹部170の体積の100%を超えた場合、樹脂203の表面は、突出部132の上面およびセンサチップ110の上面に対して高くなり、凸状の段差が生じる。この場合、センサチップ110上に向かう気流AFは、樹脂203上を通過するときに段差に沿って上昇し、センサチップ110から離れてしまう。これにより、センサチップ110を通過する気流の流速が流体センサ100に流入する気流の速度と相違するため、センサチップ110による流速の検出精度は低下する。
(樹脂の違いによる濡れ性および作業性の評価)
図6は、図1の凹部170に充填される樹脂203の組成の例を示す図である。例えば、本発明者らは、4種類の樹脂203を凹部170に充填した流体センサ100を試作し、濡れ性および作業性を評価した。
図6は、図1の凹部170に充填される樹脂203の組成の例を示す図である。例えば、本発明者らは、4種類の樹脂203を凹部170に充填した流体センサ100を試作し、濡れ性および作業性を評価した。
仕様Aの樹脂203は、一液タイプのエポキシ樹脂(常温での粘性4Pa・s)に、粒径が1~4μmのフィラーを55%~65%(体積%)混ぜ込んだものであり、濡れ性および作業性は、ともに良好であった。なお、図4(A)に示したように、フィラーは、仕様の範囲で粒径が様々なものを含む。
ここで、濡れ性が良いとは、凹部170の隅々まで樹脂203が隙間なく回り込むことを示す。粘度が二液タイプのエポキシ樹脂より高い一液タイプのエポキシ樹脂においても、所定の粒径のフィラーを所定の割合でエポキシ樹脂に混ぜることで、濡れ性を良くすることができる。これにより、例えば、作業者の技量によらず、樹脂203を凹部170の隅々まで回り込ませることができ、作業性を向上することができる。この結果、樹脂203が凹部170内に十分回り込まないことにより発生するリペアの頻度を低減することができる。作業性が向上し、リペアの頻度が低減するため、流体センサ100の製造コストを低減することができる。
さらに、エポキシ樹脂にフィラーを混ぜることで、エポキシ樹脂の熱硬化時の収縮量を少なくすることができる。これにより、樹脂203の凹部170への充填後の樹脂203の表面の位置と、樹脂203の熱硬化後の表面の位置をほぼ同じにすることができる。したがって、熱硬化による樹脂203の凹みによる流体センサ100の流速の計測精度の低下を抑制することができる。
また、樹脂203を凹部170の隅々まで回り込ませることができるため、水分等が凹部170の底面に侵入することを抑制することができる。この結果、例えば、保護膜180を生成しない場合にも、基板120上の端子が腐食することを抑制することができ、ボンディングワイヤ121が端子から剥がれることを抑制することができる。これにより、流体センサ100の信頼性の低下を抑制することができる。
さらに、一液タイプのエポキシ樹脂は、二液タイプのエポキシ樹脂に比べて適度な粘度があるため、例えば、樹脂203の凹部170の充填時に樹脂203が凹部170の外に飛び散ることを抑制することができる。この結果、二液タイプのエポキシ樹脂に比べて、適正量の樹脂203を容易に凹部170に充填することができる。
仕様Bの樹脂203は、一液タイプのエポキシ樹脂(粘性10Pa・s)に、粒径が20~50μmのフィラーを35%~45%(体積%)混ぜ込んだものであり、濡れ性および作業性は、ともに良好であった。
仕様Cの樹脂203は、一液タイプのエポキシ樹脂(粘性25Pa・s)に、粒径が20~50μmのフィラーを35%~50%(体積%)混ぜ込んだものであり、濡れ性は悪いが作業性は良好であった。ここで、濡れ性が悪いとは、凹部170内の角部等に樹脂203が流れ込みにくく、凹部170内に気泡が残り、あるいは、凹部170の底面が露出することを示す。
仕様Dの樹脂203は、二液タイプのエポキシ樹脂(粘性1.2Pa・s)であり、濡れ性は良いが作業性は悪い。ここで、作業性が悪いとは、例えば、流体センサ100の製造工程において、複数の流体センサ100の凹部170に樹脂203を順次充填するときに、樹脂203の粘度が徐々に高くなり、充填量がばらつくことを示す。
図6に示す試作品の評価により、凹部170に充填する樹脂203の仕様は、以下の2つのいずれかが好適であることが分かった。
(1)一液タイプのエポキシ樹脂に粒径が1~4μmのフィラーを55%~65%混ぜ込んだもの。
(2)一液タイプのエポキシ樹脂に粒径が20~50μmのフィラーを35%~45%混ぜ込んだもの。
(1)一液タイプのエポキシ樹脂に粒径が1~4μmのフィラーを55%~65%混ぜ込んだもの。
(2)一液タイプのエポキシ樹脂に粒径が20~50μmのフィラーを35%~45%混ぜ込んだもの。
(流体センサの製造フロー)
図7は、図1の流体センサ100の製造方法の一例を示すフロー図である。なお、図7に示すフローでは、センサチップ110および各種電子部品161を基板120に搭載したセンサ本体部101が、予め製造されているとする。また、一液タイプのエポキシ樹脂にフィラーが予め混ぜ込まれているとする。
図7は、図1の流体センサ100の製造方法の一例を示すフロー図である。なお、図7に示すフローでは、センサチップ110および各種電子部品161を基板120に搭載したセンサ本体部101が、予め製造されているとする。また、一液タイプのエポキシ樹脂にフィラーが予め混ぜ込まれているとする。
まず、ステップS10において、センサ本体部101の基板120と下筐体130とが接着される。次に、ステップS20において、接着により一体化されたセンサ本体部101と下筐体130とが予熱され、図6の仕様Aまたは仕様Bの樹脂203とが予熱される。予熱の温度は、例えば、樹脂203の熱硬化温度が100~120℃の場合、50~60℃である。
次に、ステップS30において、センサ本体部101の凹部170に樹脂203が充填される。この後、樹脂203が凹部170に充填されたセンサ本体部101と下筐体130とが、熱硬化温度まで加熱され、樹脂203が硬化される。センサ本体部101および樹脂203を、樹脂203の熱硬化温度より低い温度に予熱しておくことで、樹脂203の粘度を下げることができ、樹脂203の濡れ性を良くすることができる。この結果、樹脂203の凹部170への充填時の作業性を向上することができる。
また、一液タイプのエポキシ樹脂は、二液タイプのエポキシ樹脂に比べて、時間が経過することによっておこる粘度の上昇は緩やかであり、また、加熱した場合においても粘度の上昇は緩やかである。このため、センサ本体部101および樹脂203を予熱しない場合に比べて、または、二液タイプのエポキシ樹脂を使用する場合に比べて、規定量の樹脂203を凹部170に充填するときの作業性を良くすることができる。さらに、予熱により樹脂203の粘度が下がるため、粘度の高い樹脂が使用可能になり、一液タイプのエポキシ樹脂の選択肢を広げることができる。
次に、ステップS40において、撥水コート剤がセンサチップ110、突出部132および樹脂203の上面に塗布され、乾燥される。
次に、ステップS50において、上筐体140と下筐体130とが接着され、図1に示した流体センサ100の組み立てが完了する。次に、ステップS60において、組み立てが完了した流体センサ100の最終的な特性の調整(トリミング)と最終確認試験とが実施され、不良品が除去されることで流体センサ100が完成する。
以上、この実施形態では、樹脂203がフィラーを混ぜた一液タイプのエポキシ樹脂であるため、二液タイプのエポキシ樹脂に比べて粘度が高い一液タイプのエポキシ樹脂でも濡れ性を良くすることができる。これにより、樹脂203の充填時に凹部170内に気泡が残ることを抑制することができ、あるいは、凹部170の底面(基板120)が露出することを抑制することができる。
この結果、樹脂203を凹部170に充填する作業の作業性を向上することができ、リペアの頻度を低減することができる。また、濡れ性の改善により、凹部170の底面が露出することを抑制することができるため、基板120上の端子の腐食を抑制することができる。この結果、屋外環境に適した流体センサ100を形成することができる。
例えば、一液タイプのエポキシ樹脂に粒径が1~4μmのフィラーを55%~65%混ぜ込んだ樹脂203を凹部170に充填することで、充填時の作業性を向上することができる。あるいは、一液タイプのエポキシ樹脂に粒径が20~50μmのフィラーを35%~45%混ぜ込んだ樹脂203を凹部170に充填することで、充填時の作業性を向上することができる。
濡れ性の改善および作業性の改善により、樹脂203の上面が凹状または凸状になることを抑制することができる。これにより、樹脂203の上面を通ってセンサチップ110に流れ込む気流が、樹脂203の上面で乱れることを抑制することができる。この結果、流体センサ100による流速の計測精度が低下することを抑制することができる。
すなわち、樹脂203の充填量の管理を容易にして樹脂203の平坦性のばらつきを低減し、流体センサ100による流速の計測精度の低下を抑制することができる。例えば、樹脂203の充填を凹部170の体積の80%以上、100%以下に管理することで、樹脂203の表面と、突出部132の上面およびセンサチップ110の上面との平坦性を確保することができる。
センサ本体部101および樹脂203を、樹脂203の熱硬化温度より低い温度に予熱しておくことで、粘度を下げた状態で樹脂203を凹部170に充填することができ、作業性をさらに向上することができる。
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
100…流体センサ、101…センサ本体部、110…センサチップ、120…基板、120a…貫通穴、121…ボンディングワイヤ、130…下筐体、131…外枠、132…突出部、140…上筐体、141…蓋部、142…支柱、143…肉厚部、150…流路、161…電子部品、170…凹部、180…保護膜、201、202、203…樹脂、203a…フィラー、DMY…ダミー配線、MEMB…メンブレン、PAD…パッド、PASF…保護膜、Rd…感温素子、Rh…ヒータ抵抗、Ru…感温素子、SP…空間、SUB…半導体基板、TSNS…温度センサ、W…配線
Claims (8)
- 基板上に搭載され、表面上を流れる流体を検出するセンサチップと、
前記センサチップの周囲を囲って前記基板上に配置される第1筐体と、
前記センサチップと前記第1筐体との間の凹部に充填された、フィラーを含む1液タイプの樹脂と、
前記第1筐体上に配置される第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体との間に設けられ、前記センサチップの表面を流れる流体の流路と、を有する
流体センサ。 - 前記樹脂は、粘度が4Pa・sであり、粒径が1~4μmのフィラーを55%~65%(体積%)含む
請求項1に記載の流体センサ。 - 前記樹脂は、粘度が10Pa・sであり、粒径が20~50μmのフィラーを35%~45%(体積%)含む
請求項1に記載の流体センサ。 - 前記フィラーを含む前記樹脂の前記凹部への充填量は、前記凹部の体積の80%以上、100%以下である
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の流体センサ。 - 前記凹部に位置する前記基板上に設けられ、前記センサチップのパッドに接続されるボンディングワイヤが接続される端子を有する
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の流体センサ。 - 前記樹脂は、エポキシ樹脂からなる
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の流体センサ。 - 基板上に搭載され、表面上を流れる流体を検出するセンサチップを有する流体センサの製造方法であって、
前記センサチップが搭載された前記基板上に、前記センサチップの周囲を囲って第1筐体を配置し、
前記センサチップと前記第1筐体との間の凹部に、フィラーを含む1液タイプのエポキシ樹脂を充填し、
前記エポキシ樹脂を硬化し、
前記第1筐体上に第2筐体を配置して、前記センサチップの表面を流れる流体の流路を形成する
流体センサの製造方法。 - 前記凹部に前記エポキシ樹脂を充填する前に、前記エポキシ樹脂と、前記基板、前記センサチップおよび前記第1筐体とを、前記エポキシ樹脂の硬化温度より低い温度で予熱する
請求項7に記載の流体センサの製造方法。
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JP2021181309A JP2023069455A (ja) | 2021-11-05 | 2021-11-05 | 流体センサおよび流体センサの製造方法 |
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