JP2023067401A - 積層フィルム、積層体および包装材料 - Google Patents

積層フィルム、積層体および包装材料 Download PDF

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Abstract

【課題】 レトルト処理した後も酸素、水蒸気のバリア性に優れ、レトルト処理後に層間剥離の起こらない密着性を有した積層フィルムを提供すること。【解決手段】 表面層(C)、基材層(A)、表面層(B)をこの順に積層した基材フィルムの表面層(B)上に、アンカーコート層、無機薄膜層を、他の層を介して又は介さずにこの順に積層した積層フィルムであって、前記表面層(B)が2種以上の樹脂を含む樹脂組成物からなり、かつ前記アンカーコート層の付着量が0.50g/m2未満であり、かつ前記積層フィルムの含水率が0.2質量%以下であることを特徴とする、積層フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、いわゆるボイル殺菌やレトルト殺菌のような湿熱処理を施した後もガスバリア性や接着強度に優れる包装材料に関する。また、マテリアルリサイクル適性に優れる積層体、並びにそれを用いた包装材料に関するものである。
食品、医薬品等に用いられる包装材料は、蛋白質、油脂の酸化抑制、味、鮮度の保持、医薬品の効能維持のために、酸素、水蒸気などのガスを遮断する性質、すなわちガスバリア性を備えることが求められている。また、太陽電池や、有機ELなどの電子デバイスや、電子部品などで使用されるガスバリア性材料は、食品包材以上に高いガスバリア性を必要とする。
従来より、プラスチックからなる基材フィルムの表面にアルミニウムなどの金属薄膜、酸化ケイ素や酸化アルミニウムなどの無機酸化物の薄膜を形成したガスバリア性積層フィルムは、水蒸気や酸素などの各種ガスの遮断を必要とする食品用途において一般的に用いられている。中でも、酸化ケイ素や酸化アルミニウム、これらの混合物などの無機酸化物の薄膜を形成したものは、透明であり内容物の確認が可能であることから広く使用されている。
しかしながら、上記のガスバリア性積層フィルムは、形成工程において局部的に高温となり、基材に損傷を生じたり、低分子量部或いは可塑剤などの添加剤部などの分解、脱ガスなどを起因とする無機薄膜層中に欠陥、ピンホール等を発生し、ガスバリア性が低下する場合がある。さらに、印刷、ラミネート、製袋など包装材料の後加工の際に、無機薄膜層がひび割れてクラックが発生し、ガスバリア性が低下する問題がある。特に、上述の工程により無機薄膜層がダメージを受けると、その後のレトルト処理によりガスバリア性が大幅に低下し、また無機薄膜とそれに接する樹脂間の層間接着強度が低下して内容物が漏れ出たりする問題がある。
無機薄膜を形成したガスバリア性積層フィルムの劣化を改善する方法として、ポリエステル基材フイルムと、例えば蒸着法により形成した無機薄膜層との間に各種水性ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、またはポリウレタンとポリエステルの混合物からなる被覆層を設ける方法が知られている(例えば、特許文献1)。
また、上記ガスバリア性積層フィルムの他に、基材フィルムの上に樹脂組成物をコートすることによるガスバリア性フィルムも多く提案されている。特にそれ自体高い酸素バリア性を持つポリビニルアルコールやエチレン-ビニルアルコール共重合体を用いたコート剤が実用化されている。
さらに、上記ビニルアルコール系樹脂にモンモリロナイトなどの無機層状化合物を配合したガスバリア性を有する層をプラスチックからなる基材フィルムにコートしたガスバリア性フィルムも提案されている。例えば、基材フィルム上にポリビニルアルコール、架橋剤、無機層状化合物で構成されたガスバリア性を有する層を設ける例、基材フィルム上にエチレン-ビニルアルコール系共重合体、水溶性ジルコニウム系架橋剤、無機層状化合物からなるガスバリア性を有する層を設ける例(例えば、特許文献2、3参照)が挙げられる。これらのガスバリア性フィルムは樹脂を架橋しているため、耐湿性や、ボイル程度の耐水性には耐えられるものの、レトルト用に用いた場合には120~130℃の加圧下で行われるレトルト処理後のガスバリア性、ラミネート強度が十分満足できるものではなかった。
特開平2-50837号公報 特開2005-349769号公報 特開2008-297527号公報
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものであり、その目的は、レトルト処理した後も酸素、水蒸気のバリア性に優れ、レトルト処理後に層間剥離の起こらない密着性を有した積層フィルムを提供することにある。
本発明者らは、要求される性能に合わせた所定の積層フィルムを設計することで、レトルト処理に供された場合にも良好なガスバリア性および接着性を維持するフィルムを提供できることを見出して本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、以下の構成からなる。
1.表面層(C)、基材層(A)、表面層(B)をこの順に積層した基材フィルムの表面層(B)上に、アンカーコート層、無機薄膜層を、他の層を介して又は介さずにこの順に積層した積層フィルムであって、前記表面層(B)が2種以上の樹脂を含む樹脂組成物からなり、かつ前記アンカーコート層の付着量が0.50g/m未満であり、かつ前記積層フィルムの含水率が0.2質量%以下であることを特徴とする、積層フィルム。
2.前記アンカーコート層が、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂のうち、少なくとも1種以上を含むことを特徴とする、1.に記載の積層フィルム。
3.前記無機薄膜層が金属酸化物からなることを特徴とする、1.または2.のいずれかに記載の積層フィルム。
4.前記基材層(A)がポリオレフィンを主成分とする樹脂からなることを特徴とする、1.~3.のいずれかに記載の積層フィルムまたは積層フィルム。
5.前記1.~4.のいずれかに記載の積層フィルムに、前記表面層(C)とは反対の面にオレフィン系シーラント層を積層していることを特徴とする、積層体。
6.前記積層体のラミネート強度が2.0N/15mm以上であることを特徴とする、5.に記載の積層体。
7.前記積層体を23℃×65%RH条件下で測定した酸素透過度の値を(A)とし、温度130℃の加圧熱水中に保持するレトルト処理を30分間施した後に、23℃×65%RH条件下で測定した酸素透過度の値を(B)としたときに、下記式で表される湿熱処理後のバリア値悪化率が150%以下であることを特徴とする、5.または6.に記載の積層体。
湿熱処理後のバリア値悪化率(%)= (B/A)×100 ・・・式(1)
8.前記1.~4.のいずれかに記載の積層フィルム、または5.~7.に記載の積層体を、少なくとも1層含む包装材料。
本発明者らは、かかる技術によって、レトルト処理した後も包装材料に求められるバリア性や接着性等の必要性能を有するための、積層体を提供することが可能となった。
以下、本発明について詳細に説明する。
表面層(C)、基材層(A)、表面層(B)をこの順に積層した基材フィルムの表面層(B)上に、アンカーコート層、無機薄膜層を、他の層を介して又は介さずにこの順に積層した積層フィルムであって、前記表面層(B)が2種以上の樹脂を含む樹脂組成物からなり、かつ前記アンカーコート層の付着量が0.50g/m未満であり、かつ前記積層フィルムの含水率が0.2質量%以下であることを特徴とする、積層フィルムである。
以下、積層体の各層に関して説明する。
[基材フィルム層]
(1)基材層(A)
本発明の基材層には、ポリプロピレンやポリエチレン樹脂等のポリオレフィンを主成分とすることが、積層フィルム中の含水率を、0.20質量%以下とする点で好ましい。なお、「主成分」とは、特定の成分が全成分中に占める割合が50質量%以上であることを意味し、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。また、該層に用いるポリプロピレンは、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンを0.5モル%以下で共重合したポリプロピレンも用いることができる。このような共重合ポリプロピレンも本発明のポリプロピレン(以下、ポリプロピレン)に含まれるものとする。共重合成分は0.3モル%以下が好ましく、0.1モル%以下がより好ましく、共重合成分を含まない完全ホモポリプロピレンが最も好ましい。
エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンは、0.5モル%を超えて共重合すると、結晶性や剛性が低下し過ぎて、高温での熱収縮率が大きくなることがある。この様な樹脂をブレンドして用いても良い。
本発明の積層フィルムの基材層(A)を構成するポリプロピレンの立体規則性の指標である13C-NMRで測定されるメソペンタッド分率([mmmm]%)は、98~99.5%であることが好ましい。より好ましくは、98.1%以上であり、さらに好ましくは98.2%以上である。ポリプロピレンのメソペンタッド率が小さいと、弾性率が低くなり、耐熱性が不充分となるおそれがある。99.5%が現実的な上限である。
本発明の積層フィルムの基材層(A)を構成するポリプロピレンの質量平均分子量(Mw)は、180,000~500,000が好ましい。
180,000より小さいと、溶融粘度が低いため、キャスト時に安定せず、製膜性が悪くなることがある。Mwが500,000を超えると、分子量10万以下の成分の量が35質量%となり、耐熱性が悪化する。
より好ましいMwの下限は190,000、さらに好ましくは200,000であり、より好ましいMwの上限は320,000、さらに好ましくは300,000、特に好ましくは250,000である。
本発明の積層フィルムの基材層(A)を構成するポリプロピレンの数平均分子量(Mn)は、20,000~200,000が好ましい。
20,000より小さいと、溶融粘度が低いため、キャスト時に安定せず、製膜性が悪くなることがある。200,000を超えると、耐熱性が悪化する。
より好ましいMnの下限は30,000、さらに好ましくは40,000、特に好ましくは50,000であり、より好ましいMnの上限は80,000、さらに好ましくは70,000、特に好ましくは60,000である。
また、分子量分布の指標であるMw/Mnは、基材層(A)を構成するポリプロピレンでは2.8~10が好ましい。より好ましくは2.8~8、さらに好ましくは2.8~6であり、特に好ましくは2.8~5.4である。また、下限は3以上が好ましく、3.3以上がより好ましい。
なお、ポリプロピレンの分子量分布は、異なる分子量の成分を多段階に一連のプラントで重合したり、異なる分子量の成分をオフラインで混錬機でブレンドしたり、異なる性能をもつ触媒をブレンドして重合したり、所望の分子量分布を実現できる触媒を用いたりすることで調整することが可能である。
本発明の積層フィルムの基材層(A)を構成するポリプロピレンは、Mw/Mnが2.8~5.4の範囲の場合は、メルトフローレート(MFR;230℃、2.16kgf)が2g/10分~20g/10分であることが好ましい。
基材層(A)のポリプロピレンのMFRの下限は、3g/10分であることがより好ましく、4g/10分であることがさらに好ましく、5g/10分であることが特に好ましい。基材層(A)を構成するポリプロピレンのMFRの上限は、15g/10分であることがより好ましく、12g/10分であることがさらに好ましい。
基材層(A)を構成するポリプロピレンのMw/Mn及びMFRが、この範囲であると、熱水処理にも耐えうることができる、また、冷却ロールへの密着性も良好で製膜性に優れる。
(2)表面層(B)
本発明の表面層(B)は、ポリプロピレンやポリエチレン樹脂等のポリオレフィンを主成分とすることが、積層フィルム中の含水率を、0.20質量%以下とする点で好ましい。なお、「主成分」とは、特定の成分が全成分中に占める割合が50質量%以上であることを意味し、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。以下、ポリプロピレンを例に挙げて説明する。
本発明の積層フィルムの表面層(B)を構成するポリプロピレン樹脂組成物は、2種以上の樹脂を含む樹脂組成物からなり、MFRが1.0g/10分~10.0g/10分であることが好ましい。表面層(B)を構成するポリプロピレン樹脂組成物のMFRの下限は、2.0g/10分であることがより好ましく、3.0g/10分であることがさらに好ましく、4.0g/10分であることが特に好ましい。表面層(B)を構成するポリプロピレン樹脂組成物のMFRの上限は、9.0g/10分であることがより好ましく、8.0g/10分であることがさらに好ましく、5.5g/10分であることが特に好ましい。この範囲であると製膜性も良好で、外観にも優れる。表面層(B)を構成するポリプロピレン樹脂組成物のMFRが1.0g/10分より小さいと、基材層(A)を構成するポリプロピレンのMFRが大きい場合に基材層(A)と表面層(B)の粘度差が大きくなるので、製膜の際にムラ(原反ムラ)が発生しやすくなる。表面層(B)を構成するポリプロピレン樹脂組成物のMFRが10g/10分を超えると、冷却ロールへの密着性が悪くなって、空気を巻き込み、平滑性が悪く、それが起点となる欠点が多くなるおそれがある。
MFRが小さい方のポリプロピレン系樹脂としては、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンを共重合したポリプロピレンも用いることができる。炭素数4以上のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル・1-ペンテン、1-オクテンなどが挙げられる。また、その他の共重合成分として極性を有するマレイン酸等を使用しても良い。
エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィン、その他の共重合成分は合計で8.0モル%以下であることが好ましい。8.0モル%を超えて共重合すると、フィルムが白化して外観不良となったり、粘着性が生じて製膜が困難となったりする場合がある。
また、ブレンドする個々の樹脂は8.0モル%を超えて共重合されたものであっても良いが、ブレンド物はモノマー単位でプロピレン以外のモノマーは8.0モル%以下であることが好ましい。
また、MFRが大きい方のポリプロピレン系樹脂としては、上記共重合ポリプロピレンを用いることも出来るし、ホモポリプロピレン樹脂を使用することも出来る。
本発明の積層フィルムの表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物は、結晶性の異なる樹脂組成物を混合することが好ましい。結晶性の異なるポリプロピレン系樹脂組成物を混合することで、フィルム表面において部分的に結晶化度を変えることができ、フィルムの表面粗さをコントロールすることができる。また、表面の硬度も所望の範囲にコントロールでき、これらの効果によって、ボイルやレトルト処理を施した後も密着性を保持することができると推測している。
アンチブロッキング剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、ゼオライト等の無機系の粒子やアクリル系、ポリメタクリル系、ポリスチレン系等の有機系の粒子の中から、適宜選択して使用することができる。これらの中でも、シリカやポリメタクリル系の粒子を用いるのが特に好ましい。アンチブロッキング剤の好ましい平均粒子径は1.0~3.0μmであり、より好ましくは1.0~2.7μmである。ここでいう平均粒径の測定法は、走査電子顕微鏡で写真撮影し、イメージアナライザー装置を用いて水平方向のフェレ径を測定し、その平均値で表示したものである。
アンチブロッキング剤の添加量は、ヘイズ、動摩擦係数、中心面平均粗さ(SRa)、空気抜け時間が既定の範囲内になるように、表面層(B)、表面層(C)への添加量を調整すれば、特に制限はない。
本発明の積層フィルムの表面層(B)の表面の濡れ張力が38mN/m以上であることが好ましい。濡れ張力は、フィルム表面をぬらすと判定された混合液試薬の表面張力(mN/m)の数値を表わし、印刷インキや接着剤の濡れやすさと関係するものである。濡れ張力は38mN/m以上であると、蒸着膜やコーティング膜、他部材フィルムとのラミネートに使用する接着剤との密着性が向上する。濡れ張力を38mN/m以上とするには、帯電防止剤や界面活性剤などの添加剤を使用することが通常行われているが、これらの方法では、表面抵抗値を下げる効果があるため、コロナ処理、加熱処理などの物理化学的な表面処理を行うことが好ましい。
例えば、コロナ処理では、予熱ロール、処理ロールを用い、空中で放電を行うことが好ましい。
(3)表面層(C)
本発明の積層フィルムは基材層(A)の、表面層(B)とは反対の面に、表面層(C)を有してもよい。本発明の表面層(C)は、ポリプロピレンやポリエチレン樹脂等のポリオレフィンを主成分とすることが、積層フィルム中の含水率を、0.20質量%以下とする点で好ましい。なお、「主成分」とは、特定の成分が全成分中に占める割合が50質量%以上であることを意味し、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。
また、該層に用いるポリプロピレンは、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンを0.5モル%以下で共重合したポリプロピレンも用いることができる。このような共重合ポリプロピレンも本発明のポリプロピレン(以下、ポリプロピレン)に含まれるものとする。共重合成分は0.3モル%以下が好ましく、0.1モル%以下がより好ましく、共重合成分を含まない完全ホモポリプロピレンが最も好ましい。
エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンは、0.5モル%を超えて共重合すると、結晶性や剛性が低下し過ぎて、高温での熱収縮率が大きくなることがある。この様な樹脂をブレンドして用いても良い。
表面層(C)は、表面の3次元粗さ計による中心面平均粗さ(SRa)が0.020μm以上であることが好ましい。表面層(C)の表面の中心面平均粗さ(SRa)は0.022μm以上がより好ましく、0.025μm以上がさらに好ましく、0.028μm以上が特に好ましい。表面層(C)の表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.020μm未満では、表面凹凸が小さく、フィルムの滑り性やフィルム同士での空気抜け時間、耐ブロッキング性が悪くなる。表面層(C)の表面の中心面平均粗さ(SRa)を規定の範囲内とする方法はいくつかあるが、アンチブロッキング剤の平均粒径や添加量で調整することが可能である。
本発明の積層体の表面層(C)の表面の3次元粗さ計による中心面平均粗さ(SRa)がは0.040μm以下であることが好ましい。
本発明で用いるポリプロピレン樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒等の公知の触媒を用いて、原料のプロピレンを重合させることにより得られる。中でも、異種結合をなくすためにはチーグラー・ナッタ触媒を用い、立体規則性の高い重合が可能な触媒を用いることが好ましい。
原料のプロピレンを重合する方法としては、公知の方法を採用すればよく、例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性溶剤中で重合する方法、液状のモノマー中で重合する方法、気体のモノマーに触媒を添加し、気相状態で重合する方法、または、これらを組み合わせて重合する方法等が挙げられる。
本発明の積層フィルムの基材層(A)および/または表面層(B)および/または表面層(C)には、添加剤やその他の樹脂を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、造核剤、粘着剤、防曇剤、難燃剤、無機または有機の充填剤等が挙げられる。その他の樹脂としては、本発明で用いられるポリプロピレン樹脂以外のポリプロピレン樹脂、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体であるランダムコポリマーや、各種エラストマー等が挙げられる。これらは、多段の反応器を用いて逐次重合するか、ポリプロピレン樹脂とヘンシェルミキサーでブレンドするか、事前に溶融混錬機を用いて作製したマスターペレットを所定の濃度になるようにポリプロピレンで希釈するか、予め全量を溶融混練して使用してもよい。さらに、本発明の目的を損なわない限りにおいて、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、表面粗面化処理が施されてもよく、また、公知のアンカーコート処理、印刷、装飾などが施されてもよい。
本発明の基材フィルムの作製方法としては、二軸配向フィルムであることが好ましく、基材層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物と表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物、表面層(C)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物を別々の押出機により溶融押し出し、ダイスから共押出しして、冷却ロールで冷却して、未延伸シートを形成し、その未延伸シートを縦方向(MD)及び横方向(TD)に延伸した後、熱固定処理することによって得ることができる。
溶融押出し温度は200~280℃程度が好ましく、この温度範囲内で層を乱さずに良好な外観の積層体を得るには、基材層(A)用ポリプロピレン原料と表面層(B)用ポリプロピレン原料の粘度差(MFR差)が6.0g/10分以下となるようにすることが好ましい。粘度差が6g/10分より大きいと、層が乱れて外観不良となりやすい。粘度差はより好ましくは5.5g/10分以下、さらに好ましくは5.0g/10分以下である。また、冷却ロール表面温度は25~35℃が好ましく、27~33℃がより好ましい。
縦方向(MD)の延伸倍率の下限は、好ましくは3倍であり、より好ましくは3.5倍である。上記未満であると膜厚ムラとなることがある。MDの延伸倍率の上限は好ましくは8倍であり、より好ましくは7倍である。上記を超えると引き続き行うTD延伸がしにくくなることがある。MDの延伸温度の下限は好ましくは120℃であり、より好ましくは125℃であり、さらに好ましくは130℃である。上記未満であると機械的負荷が大きくなったり、厚みムラが大きくなったり、フィルムの表面荒れが起こることがある。MDの延伸温度の上限は好ましくは160℃であり、より好ましくは155℃であり、さらに好ましくは150℃である。温度が高い方が、湿熱処理時の寸法変化が小さくなり、バリア性や密着性の悪化を低減できるため好ましいが、ロールに付着し延伸できなくなることや、表面荒れが起こることがある。
幅方向(TD)の延伸倍率の下限は好ましくは4倍であり、より好ましくは5倍であり、さらに好ましくは6倍である。上記未満であると厚みムラとなることがある。TD延伸倍率の上限は好ましくは20倍であり、より好ましくは17倍であり、さらに好ましくは15倍であり、特に好ましくは12倍である。上記を超えると熱収縮率が高くなったり、延伸時に破断したりすることがある。TD延伸での予熱温度は速やかに延伸温度付近にフィルム温度を上げるため、好ましくは延伸温度より5~15℃高く設定する。TDの延伸温度の下限は好ましくは150℃であり、より好ましくは155℃であり、さらに好ましくは158℃、特に好ましくは160℃である。上記未満であると充分に軟化せずに破断したり、湿熱処理時に寸法変化が大きく、バリア性や密着性が悪化したりすることがある。TD延伸温度の上限は好ましくは170℃であり、より好ましくは168℃であり、さらに好ましくは165℃である。寸法変化を低くするためには温度は高い方が好ましいが、上記を超えると低分子成分が融解、再結晶化して配向が低下するだけでなく、表面荒れやフィルムが白化することがある。
延伸後のフィルムは熱固定される。熱固定温度の下限は好ましくは163℃であり、より好ましくは165℃である。上記未満であると、湿熱処理時に寸法変化が大きく、バリア性や密着性が悪化することがある。また、寸法変化を低くするために長時間の処理が必要になり、生産性が劣ることがある。熱固定温度の上限は好ましくは176℃であり、より好ましくは175℃である。上記を超えると低分子成分が融解、再結晶化して表面荒れやフィルムが白化することがある。
熱固定時には緩和(リラックス)させることが好ましい。リラックス率の下限は好ましくは2%であり、より好ましくは3%である。上記未満であると湿熱処理時に寸法変化が大きく、バリア性や密着性が悪化することがある。リラックス率の上限は好ましくは10%であり、より好ましくは8%である。上記を超えると厚みムラが大きくなることがある。
さらに、寸法変化を低下させるために、上記の工程で製造されたフィルムを一旦ロール状に巻き取った後、オフラインでアニールさせることもできる。
こうして得られた二軸配向ポリプロピレン系積層体に、必要に応じて、コロナ放電、プラズマ処理、火炎処理等を施した後、ワインダーで巻き取ることにより本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムロールを得ることができる。
[アンカーコート層]
本発明においては、前記表面層(B)の上にアンカーコート層を有する。アンカーコート層を有することにより、ポリプロピレン樹脂からのオリゴマーやアンチブロッキング材の表出を抑制することができる。さらに、アンカーコート層の上に他の層を積層する際に、層間の密着力を高めることもできる。特に、無機薄膜層の形成においては密着力だけでなく、表面凹凸による突起部分で薄膜形成が出来ず、バリア性などが不良となる問題もある。加えて、アンカーコート層そのものにもガスバリア性を持つ材料を使用することで、積層体のガスバリア性能も大きく向上させることができる。さらに、耐水性のあるアンカーコート層を積層することにより熱水の侵入を防ぐため、結果としてボイルやレトルト処理後のバリア性や密着性などの不良も軽減することができる。アンカーコート層は、必要な密着力を確保するために極性基等を有する樹脂成分を導入するので、含水率が高い材料により構成される場合が多い。本発明者らは、積層フィルム全体の含水率を所定量に制御することにより前記の湿熱処理後の不良を改良できることを新たに見出した。積層フィルムの含水率を後述する好適な範囲内に制御するには、下記の少ない付着量のアンカーコート層において密着力やバリア性を発現する組成物および/または加工条件を採用する必要がある。
本発明においては、アンカーコート層の付着量を0.01~0.50g/mとすることが好ましい。これにより、塗工においてアンカーコート層を均一に制御することができるため、結果としてコートムラや欠陥の少ない膜となる。アンカーコート層の付着量は、好ましくは0.05g/m以上、より好ましくは0.10g/m以上であり、好ましくは0.47g/m以下、より好ましくは0.45g/m以下である。アンカーコート層の付着量が0.50g/mを超えると、ガスバリア性は向上するが、膜厚が厚いことで積層フィルム中の含水率が高くなる虜がある。また、加工性という点では膜厚が厚いことでブロッキングが発生するおそれもある。さらには、フィルムのリサイクル性や製造コストの面においても悪影響を及ぼす懸念がある。一方、保護層の膜厚が0.01g/m未満であると、充分なガスバリア性および層間密着性が得られないおそれがある。
本発明のアンカーコート層に用いる樹脂組成物としては、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、チタン系、イソシアネート系、イミン系、ポリブタジエン系等の樹脂に、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系等の硬化剤を添加したものが挙げられる。さらにケイ素系架橋剤、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物等の架橋剤を含むことができる。
特にウレタン樹脂の含有は、ウレタン結合自体の高い凝集性によるバリア性能に加え、極性基が無機薄膜層と相互作用するとともに、非晶部分の存在により柔軟性をも有するため、湿熱処理による負荷がかかった際にもダメージを抑えることができるため好ましい。また、ポリエステル樹脂も同様の効果が期待できるため、好適である。本発明においては、ポリエステル+イソシアネートを構成成分としたポリウレタンを含有するのが好ましく、さらに、耐水接着性を向上させることができるという観点から、ケイ素系架橋剤を添加するとより好ましい。
(1)ウレタン樹脂
本発明で用いるウレタン樹脂は、凝集力によるバリア性向上の観点から、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上であることが好ましく、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。ただし、密着力を発現させるために、柔軟性に優れるTg100℃以下の柔軟樹脂を混合して用いてもよい。その場合、前記柔軟樹脂の添加比率は0~80%の範囲内であるのが好ましい。より好ましくは10~70%の範囲内、さらに好ましくは20~60%の範囲内である。添加比率が上記範囲内であると、凝集力と柔軟性を両立させることができ、バリア性と密着性が良好となる。なお、添加比率が80%を超えると、膜が柔らかくなりすぎ、バリア性能の低下を招くがある。
前記ウレタン樹脂は、ガスバリア性向上の面から、芳香族または芳香脂肪族ジイソシアネート成分を主な構成成分として含有するウレタン樹脂を用いることがより好ましい。
その中でも、メタキシリレンジイソシアネート成分を含有することが特に好ましい。上記樹脂を用いることで、芳香環同士のスタッキング効果によりウレタン結合の凝集力を一層高めることができ、結果として良好なガスバリア性が得られる。
本発明においては、ウレタン樹脂中の芳香族または芳香脂肪族ジイソシアネートの割合を、ポリイソシアネート成分(F)100モル%中、50モル%以上(50~100モル%)の範囲とすることが好ましい。芳香族または芳香脂肪族ジイソシアネートの合計量の割合は、60~100モル%が好ましく、より好ましくは70~100モル%、さらに好ましくは80~100モル%である。芳香族または芳香脂肪族ジイソシアネートの合計量の割合が50モル%未満であると、良好なガスバリア性が得られない可能性がある。
(2)ケイ素系架橋剤
本発明で用いるウレタン樹脂には、膜の凝集力向上および耐湿熱接着性を向上させる目的で、ガスバリア性を損なわない範囲で、各種の架橋剤を配合してもよい。架橋剤としては、例えば、ケイ素系架橋剤、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物等が例示できる。その中でも、ケイ素系架橋剤を配合することにより、特に無機薄膜層との耐水接着性を向上させることができるという観点から、ケイ素系架橋剤が特に好ましい。その他に架橋剤として、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物等を併用してもよい。
ケイ素系架橋剤としては、無機物と有機物との架橋という観点から、シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤としては、加水分解性アルコキシシラン化合物、例えば、ハロゲン含有アルコキシシラン(2-クロロエチルトリメトキシシラン、2-クロロエチルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロC2‐4アルキルトリC1‐4アルコキシシランなど)、エポキシ基を有するアルコキシシラン[2-グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシジルオキシエチルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジルオキシC2-4アルキルトリC1‐4アルコキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン等のグリシジルオキシジC2‐4アルキルジC1‐4アルコキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン等の(エポキシシクロアルキル)C2‐4アルキルトリC1‐4アルコキシシラン等]、アミノ基を有するアルコキシシラン[2-アミノエチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノC2‐4アルキルトリC1‐4アルコキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン等のアミノジC2‐4アルキルジC1‐4アルコシシラン、2-[N-(2-アミノエチル)アミノ]エチルトリメトキシシラン、3-[N-(2-アミノエチル)アミノ]プロピルトリメトキシシラン、3-[N-(2-アミノエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシラン等の(2-アミノC2‐4アルキル)アミノC2‐4アルキルトリC1‐4アルコキシシラン、3-[N-(2-アミノエチル)アミノ]プロピルメチルジメトキシシラン、3-[N-(2-アミノエチル)アミノ]プロピルメチルジエトキシシラン等の(アミノC2‐4アルキル)アミノジC2‐4アルキルジC1‐4アルコキシシラン等]、メルカプト基を有するアルコキシシラン(2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトC2‐4アルキルトリC1-4アルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプトジC2‐4アルキルジC1‐4アルコキシシラン等)、ビニル基を有するアルコキシシラン(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルトリC1‐4アルコキシシラン等)、エチレン性不飽和結合基を有するアルコキシシラン[2-(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシC2‐4アルキルトリC1-4アルコキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシジC2‐4アルキルジC1‐4アルコキシシラン等)等が例示できる。これらのシランカップリング剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのシランカップリング剤のうち、アミノ基を有するシランカップリング剤が好ましい。
ケイ素系架橋剤は被覆層中に、0.05~4.00質量%添加することが好ましく、より好ましくは0.10~3.50質量%、さらに好ましくは0.15~3.00質量%である。シランカップリング剤の添加により、膜の硬化が進み凝集力が向上、結果として耐水接着性に優れた膜になり、さらにオリゴマーの表出を防ぐ効果も期待できる。添加量が3.00質量%を超えると、膜の硬化が進み凝集力が向上するが、一部未反応部分も生じ、層間の接着性は低下するおそれがある。一方、添加量が0.05質量%未満であると、十分な凝集力が得られないおそれがある。
(3)ポリエステル樹脂
本発明で用いるポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分と、多価アルコール成分を重縮合することにより製造される。ポリエステルの分子量としては、コーティング材として十分な膜の靭性や塗工適性、溶媒溶解性が付与できるのであれば特に制限はないが数平均分子量で1000~50000、さらに好ましくは、1500~30000である。ポリエステル末端の官能基としても特に制限はなく、アルコール末端でも、カルボン酸末端でも、これらの両方を持っていても良い。但し、イソシアネート系硬化剤を併用する場合には、アルコール末端が主体であるポリエステルポリオールとする必要がある。
本発明で用いるポリエステルのTgは15℃以上であることが好ましい。これ以上温度が低いと、樹脂がコーティング操作後に粘着性を持ち、ブロッキングを生じやすくなり、コーティング後の巻き取り操作がしにくくなるためである。Tgが15℃以下になるとブロッキング防止材の添加によっても巻き芯付近の圧力が高い状況下でもブロッキング防止対応が困難になるためである。Tgのより好ましい温度は18℃以上、さらに好ましくは25℃以上である。
本発明で用いるポリエステルは、多価カルボン酸成分と、多価アルコール成分とを重縮合して用いる。
[多価カルボン酸成分]
本発明で用いるポリエステルの多価カルボン酸成分は、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の少なくとも1種を含むことに特徴を有する。オルト配向にすることで溶剤への溶解性が向上し、樹脂に対して均一にコーティングをすることが可能となる。均一にコートされた保護層はバリア性能のばらつきが小さくなり、結果的にオリゴ白化抑制に寄与する。 また、オルト配向にすることで柔軟性に優れた膜となり界面接着力が向上するため、湿熱処理による樹脂へのダメージを軽減でき、オリゴマーの抑制につながる。カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸又はその無水物としては、オルトフタル酸又はその無水物、ナフタレン2,3-ジカルボン酸又はその無水物、ナフタレン1,2-ジカルボン酸又はその無水物、アントラキノン2,3-ジカルボン酸又はその無水物、及び2,3-アントラセンカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。これらの化合物は、芳香環の任意の炭素原子に置換基を有していてもよい。該置換基としては、クロロ基、ブロモ基、メチル基、エチル基、i-プロピル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルボキシル基、カルバモイル基、N-エチルカルバモイル基、フェニル基又はナフチル基等が挙げられる。また、これらのポリカルボン酸全成分100モル%に対する含有率が70~100モル%であるポリエステルポリオールであると、バリア性の向上効果が高い上に、コーティング材として必須の溶媒溶解性に優れることから特に好ましい。
本発明では発明の効果を損なわない範囲において、他の多価カルボン酸成分を共重合させてもよい。具体的には、脂肪族多価カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等を、不飽和結合含有多価カルボン酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等を、脂環族多価カルボン酸としては1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等を、芳香族多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェン酸及びその無水物、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物或いはエステル形成性誘導体;p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の多塩基酸を単独で或いは二種以上の混合物で使用することができる。中でも、有機溶剤溶解性とガスバリア性の観点からコハク酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタル酸、ジフェン酸が好ましい。
[多価アルコール成分]
本発明で用いるポリエステルの多価アルコール成分はガスバリア補填の性能を示すポリエステルを合成することができれば特に限定されないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、及び1,3-ビスヒドロキシエチルベンゼンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む多価アルコール成分を含有することが好ましい。中でも、酸素原子間の炭素原子数が少ないほど、分子鎖が過剰に柔軟にならずに、酸素透過しにくいと推定されることから、エチレングリコールを主成分として使用することが最も好ましい。
本発明では前述の多価アルコール成分を用いることが好ましいが、このほか、本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価アルコール成分を共重合させてもよい。具体的には、ジオールとしては1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールが、三価以上のアルコールとしては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,2,4-ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスルトール等があげられる。特に、三価のアルコールの内、グリセロール及び、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを併用したポリエステルは、分岐構造に由来して架橋密度も適度に高いことにより有機溶媒溶解性が良好な上、バリア機能も優れており、特に好ましく用いられる。
本発明のポリエステルを得る反応に用いられる触媒としては、モノブチル酸化錫、ジブチル酸化錫等錫系触媒、テトラ-イソプロピル-チタネート、テトラ-ブチル-チタネート等のチタン系触媒、テトラ-ブチル-ジルコネート等のジルコニア系触媒等の酸触媒が挙げられる。エステル反応に対する活性が高い、テトラ-イソプロピル-チタネート、テトラ-ブチル-チタネート等の上記チタン系触媒と上記ジルコニア触媒を組み合わせて用いることが好ましい。前記触媒量は、使用する反応原料全質量に対して1~1000ppm用いられ、より好ましくは10~100ppmである。1ppmを下回ると触媒としての効果が得られにくく、1000ppmを上回るとイソシアネート硬化剤を用いる場合にウレタン化反応を阻害する問題が生じる場合がある。
(4)イソシアネート系硬化剤
本発明では、アンカーコート層を構成するコーティング剤の主剤としてポリエステル樹脂を用いる場合、硬化剤としてはイソシアネート系のものを用いて、ウレタン樹脂とすることが好ましい。この場合、コーティング層が架橋系になるため耐熱性や、耐摩耗性、剛性が向上する利点がある。従って、ボイルやレトルト包装にも使用しやすい。その一方で硬化剤を混合した後では液を再利用できない、塗工後に硬化(エージング)工程が必須になる問題点もある。利点として単純なオーバーコートワニスとして例えば、塗工液の増粘の恐れがなく塗工製造の管理が容易、コーティング液を希釈再利用可能であり、加えて硬化工程(いわゆるエージング工程)が不要である点が例示できる。このとき、使用するポリエステルの末端は、ポリオールでもポリカルボン酸でも、この両者の混合物であっても問題なく用いることができる。その一方で、コーティング層の樹脂が直鎖であるため耐熱性や、耐摩耗性が十分ではない場合や、ボイルやレトルト包装に使用しにくい問題が生じる場合がある。
コーティング層に硬化剤を用いる場合にはフィルムへのコーティングであるためフィルムの耐熱性の観点からイソシアネート硬化系が好ましく、この場合にはコーティング材の樹脂成分がポリエステルポリオールである必要がある。一方、エポキシ系化合物を硬化剤として用いる場合にはポリエステルポリカルボン酸である必要がある。これらの場合ではコーティング層が架橋系になるため耐熱性や、耐摩耗性、剛性が向上する利点がある。従って、ボイルやレトルト包装にも使用しやすい。その一方で硬化剤を混合した後では液を再利用できない、塗工後に硬化(エージング)工程が必須になる問題点もある。
本発明で用いられるポリイソシアネート化合物は、ポリエステルが水酸基を有する場合、少なくとも一部が反応し、ウレタン構造を作ることで樹脂成分として高極性化し、ポリマー鎖間を凝集させることでガスバリア機能を更に強化できる。また、コーティング材の樹脂が直鎖型の樹脂である場合に、3価以上のポリイソシアネートで架橋することで、耐熱性や、耐摩耗性を付与することができる。本発明で用いられるポリイソシアネート化合物としてはジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネート、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよいが、骨格の一部に芳香族環、または脂肪族環を含有するとガスバリア向上機能の観点から好ましい。たとえば、芳香族環を持つイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、脂肪族環を持つイソシアネートとしては、水素化キシリレンジイソシアネート、水素化トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルンジイソシアネート、あるいはこれらのイソシアネート化合物の3量体、およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低分子活性水素化合物または各種ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などと反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物が挙げられる。
アンカーコート層用樹脂組成物の塗工方式は、フィルム表面に塗工して層を形成させる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、グラビアコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、ダイコーティング等の通常のコーティング方法を採用することができる。
アンカーコート層を形成する際には、アンカーコート層用樹脂組成物を塗布した後、加熱乾燥することが好ましく、その際の乾燥温度は90~180℃が好ましく、より好ましくは100~170℃、さらに好ましくは110~160℃である。乾燥温度が90℃未満であると、アンカーコート層に乾燥不足が生じたり、アンカーコート層の造膜が進行せず凝集力および耐水接着性が低下し、結果としてバリア性や手切れ性が低下するおそれがある。一方、乾燥温度が180℃を超えると、フィルムに熱がかかりすぎてしまいフィルムが脆くなり突刺し強度が低下したり、収縮して加工性が悪くなったりする虞がある。特に、100℃以上好ましくは110℃以上で乾燥することにより、アンカーコート層の造膜が効果的に進行し、耐水接着性を向上することができる。また、乾燥とは別に、できるだけ低温領域で追加の熱処理を加えることも、アンカーコート層の造膜を進行させるうえで、さらに効果的である。
また、低温領域で追加の熱処理を加えることで、積層フィルム中の含水率を所定量に制御することができる。熱処理の好ましい温度条件は、25℃~80℃が好ましく、より好ましくは30℃~70℃、さらに好ましくは35℃~60℃である。熱処理の温度が20℃以下であると、熱処理としての効果が小さく、含水率を制御することが難しくなる。一方、熱処理の温度が80℃を超えると、積層フィルムに熱がかかりすぎてしまい、シワ等の外観不良の原因となる。さらに、熱処理の好ましい時間は、アンカーコート層の付着量や温度によっても変わるが、例えば40℃で処理する場合、24時間以上が好ましく、より好ましくは48時間以上、さらに好ましくは72時間以上である。
本発明の積層フィルムでは、アンカーコート層の全反射赤外吸収スペクトルにおける1250±50cm-1の領域に吸収極大を持つピーク強度(P1)と1070±10cm-1の領域に吸収極大を持つピーク強度(P2)の比(P1/P2)が、1.0以上10.0以下の範囲内であることが好ましい。好ましくは1.2以上9.0以下の範囲であり、より好ましくは1.5以上8.0以下の範囲である。1250±50cm-1のピークは、芳香族や不飽和脂肪族骨格に由来するC-O-C構造由来のピークであり、ポリエステルまたはポリウレタン骨格の架橋度を示す指標となる。また、1070±10cm-1のピークはC-OH由来のピークであり、アンカーコート層中のポリエステルまたはポリウレタン骨格由来の水酸基量を示す指標となる。(P1/P2)はポリエステルまたはポリウレタン骨格における水酸基の比率を表しており、本比率が上記範囲にあることで、含水率を所定量に制御しながらも膜が高極性化し、アンカーコート層と無機薄膜層の密着力が高まり、結果として湿熱処理を施した後もガスバリア性能や密着性が最大限発揮される。(P1/P2)が1.0未満であると、アンカーコート層中の水酸基量が多く、無機薄膜層との結合力は強まるが、アンカーコート層中の架橋が進まずに造膜性が低下して脆くなったり、アンカーコート層中に極性基が多く残存することで含水率が高くなる虜がある。一方、(P1/P2)が10.0を超えると、アンカーコート層中の水酸基量が少なく、無機薄膜層の膜形成が疎になり、ガスバリア性や密着性が得られ難くなる場合がある。アンカーコート層の(P1/P2)の値を前記の所定の数値範囲とするには、前述の材料を使用して前述の所定の付着量とし、さらには材料の配合比を前述の適性範囲とし、前述の乾燥・熱処理条件と組み合わせることが必要である。
[無機薄膜層]
本発明の積層体は、無機薄膜層を有する。無機薄膜層は、金属酸化物層であることが好ましい。金属酸化物層を形成する材料は、薄膜にできるものなら特に制限はないが、ガスバリア性の観点から、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合物等の無機酸化物が好ましく挙げられる。この複合酸化物において、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合比は、金属分の質量比でAlが20~70質量%の範囲であることが好ましい。Al濃度が20質量%未満であると、水蒸気バリア性が低くなる場合がある。一方、70質量%を超えると、金属酸化物層が硬くなる傾向があり、湿熱処理後に膜が破壊されてガスバリア性が低下する虞がある。また、Al濃度が100質量%の場合、水蒸気バリア性能は良好となるが、単一材料であることから表面が平滑な傾向があり、滑り性が悪く加工上の不具合(シワ・ニキビ等)が生じやすくなる。なお、ここでいう酸化ケイ素とはSiOやSiO等の各種珪素酸化物又はそれらの混合物であり、酸化アルミニウムとは、AlOやAl等の各種アルミニウム酸化物又はそれらの混合物である。
この混合物における酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合比は、蛍光X線を使った組成を測定するモニターにより行なうことができる。被測定物にX線を照射して被測定物が含む原子から発生する特性X線の強度を測定して組成に換算し値を出力するものである。換算は既知の膜厚組成の被測定物を測定し、得られた蛍光X線との関係により作成した検量線による。
プラスチック基材フィルムが、無機薄膜層が含む原子と同一の原子を含む場合、例えば無機薄膜層としてSiOx、プラスチックフィルム中に滑剤としてシリカの粉体が含まれている場合Si原子を共通に含んでいる場合は、予め同一濃度の該原子を含むプラスチック基材フィルム上に異なる既知の膜厚の無機薄膜層を形成したフィルム作成し該モニターで測定する。得られた蛍光X線強度と膜厚の関係式を求めて作成した検量線により未知の無機薄膜層膜厚を得ることができる。
無機薄膜層の膜厚は、通常1~100nm、好ましくは5~50nmである。無機薄膜層の膜厚が1nm未満であると、満足のいくガスバリア性が得られ難くなる場合があり、一方、100nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性の向上効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点でかえって不利となる。
無機薄膜層を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD法)、あるいは化学蒸着法(CVD法)等、公知の蒸着法を適宜採用すればよい。以下、無機薄膜層を形成する典型的な方法を、酸化ケイ素・酸化アルミニウム系薄膜を例に説明する。例えば、真空蒸着法を採用する場合は、蒸着原料としてSiOとAlの混合物、あるいはSiOとAlの混合物等が好ましく用いられる。これら蒸着原料としては通常粒子が用いられるが、その際、各粒子の大きさは蒸着時の圧力が変化しない程度の大きさであることが望ましく、好ましい粒子径は1mm~7mmである。加熱には、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱、レーザー加熱などの方式を採用することができる。また、反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を採用することも可能である。さらに、被蒸着体(蒸着に供する積層体)にバイアスを印加したり、被蒸着体を加熱もしくは冷却するなど、成膜条件も任意に変更することができる。このような蒸着材料、反応ガス、被蒸着体のバイアス、加熱・冷却等は、スパッタリング法やCVD法を採用する場合にも同様に変更可能である。
[積層フィルム]
本発明の積層フィルムの、含水率は0.20質量%以下となることが好ましい。より好ましくは0.18質量%以下、さらに好ましくは0.15質量%以下であり、0.12質量%以下が特に好ましい。好ましい下限は、0.01質量%以上である。含水率が0.20質量%よりも大きいと、湿熱処理をした際の水分の侵入が多く、無機薄膜が割れてガスバリア性や密着性が低下する傾向がある。
また、ここでいう含水率とは、加熱乾燥式水分率計によって測定されるものである。詳細な測定方法は、実施例に記載した通りであるが、要するに、含水率とは、(試料から出てきた水分量[g])/(試料重量[g])なる式から算出されるものである。
[保護層]
本発明においては、さらにガスバリア性能が必要な場合や印刷等の加工が必要な場合において、前記無機薄膜層の上に保護層を有することもできる。無機薄膜層は完全に密な膜ではなく、微小な欠損部分が点在している。無機薄膜層上に後述する特定の保護層用樹脂組成物を塗工して保護層を形成することにより、無機薄膜層の欠損部分に保護層用樹脂組成物中の樹脂が浸透し、結果としてガスバリア性が安定するという効果が得られる。加えて、保護層そのものにもガスバリア性を持つ材料を使用することで、積層体のガスバリア性能も大きく向上することになる。ただし、保護層を設けることで工程が増えることによるコストアップや使用材料によっては環境への負荷が生じることに留意する必要がある。また、保護層により表面粗さ等の物性値が変化することにも留意する必要がある。
[積層体]
本発明の積層体には、シーラントと呼ばれるヒートシール性樹脂が用いられる。ヒートシール性樹脂層は通常、アンカーコート層または無機薄膜層側に設けられるが、樹脂フィルム層の外側(無機薄膜形成面の反対側の面)に設けることもある。ヒートシール性樹脂層の形成は、通常押出しラミネート法あるいはドライラミネート法によりなされる。ヒートシール性樹脂層を形成する熱可塑性重合体としては、シーラント接着性が充分に発現できるものであればよいが、オレフィン系のHDPE、LDPE、LLDPEなどのポリエチレン樹脂類、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂等を使用できる。この中でも耐久性、シール強度、価格、モノマテリアル化の観点から汎用性が高いLLDPEまたはポリプロピレン樹脂が特に好ましい。シーラント層の厚みは20~100μmが好ましく、さらに好ましくは30~90μm、より好ましくは40~80μmである。厚みが20μmより薄いと十分なシール強度が得られないことや、腰感がなく取り扱いづらい可能性がある。一方、厚みが100μmを超えると腰感が強く袋としての取り扱い性が低下する他、価格も高額になる恐れがある。
本発明の積層体全体の厚みは9μm以上、200m以下が好ましく、10μm以上、170μm以下がより好ましく、12μm以上、150μm以下がさらに好ましく、15μm以上、120μm以下が特に好ましい。
本発明の積層体のヘイズは、5%以下が好ましく、0.2%以上、5.0%以下がより好ましく、0.3%以上、4.5%以下がさらに好ましく、0.4%以上、4.0%以下が特に好ましい。上記範囲であると透明が要求される用途で使いやすくなることがある。ヘイズは例えば延伸温度、熱固定温度が高すぎる場合、冷却ロール温度が高く未延伸(原反)シートの冷却速度が遅い場合、低分子量成分が多すぎる場合に悪くなる傾向があり、これらを調節することで上記の範囲内とすることが出来る。
本発明の積層体の、23℃×65%RH条件下における酸素透過度が25cc/m/d/atm以下となることが好ましい。より好ましくは20cc/m/d/atm以下、さらに好ましくは15cc/m/d/atm以下である。酸素透過度の好ましい下限は、0.1cc/m/d/atm以上である。また、40℃×90%RH条件下における水蒸気透過度が3.0g/m/d以下であることが好ましい。さらに好ましくは2.5g/m/d以下、より好ましくは2.0g/m/d以下である。水蒸気透過度の好ましい下限は、0.1g/m/d以上である。
また、本発明の積層体の、式(1)で表される湿熱処理後のバリア値悪化率が150%以下であるが好ましい。より好ましくは140%以下、さらに好ましくは130%以下である。
本発明の積層体は、23℃×65%RH条件下におけるラミネート強度が後述のドライと水付けのいずれの評価においても、2.0N/15mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.3N/15mm以上、さらに好ましくは2.6N/15mm以上である。ラミネート強度が2.0N/15mm未満であると、湿熱処理時に生じる負荷によって剥離が生じ、バリア性が劣化したり、内容物が漏れ出たりするおそれがある。さらに、手切れ性が悪化するおそれもある。
[接着剤層]
本発明で用いられる接着剤層は、汎用的なラミネート用接着剤が使用できる。たとえば、ポリ(エステル)ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、エポキシ系、ポリ(メタ)アクリル系、ポリエチレンイミン系、エチレン-(メタ)アクリル酸系、ポリ酢酸ビニル系、(変性)ポリオレフィン系、ポリブタジェン系、ワックス系、カゼイン系等を主成分とする(無)溶剤型、水性型、熱溶融型の接着剤を使用することができる。この中でも、耐熱性と、各樹脂の寸法変化に追随できる柔軟性を考慮すると、ウレタン系またはポリエステル系が好ましい。上記接着剤層の積層方法としては、たとえば、ダイレクトグラビアコート法、リバースグラビアコート法、キスコート法、ダイコート法、ロールコート法、ディップコート法、ナイフコート法、スプレーコート法、フォンテンコート法、その他の方法で塗布することができ、十分な接着性を発現するため、乾燥後の塗工量は1~8g/mが好ましい。より好ましくは2~7g/m、さらに好ましくは3~6g/mである。塗工量が1g/m未満であると、全面で貼り合せることが困難になり、接着力が低下する。また、8g/m以上を超えると、膜の完全な硬化に時間がかかり、未反応物が残りやすく、接着力が低下する。
[印刷層]
さらに、本発明の積層体には、樹脂フィルム層とヒートシール性樹脂層との間またはその外側に、印刷層や他のプラスチック樹脂および/または紙樹脂を少なくとも1層以上積層してもよい。
印刷層を形成する印刷インクとしては、水性および溶媒系の樹脂含有印刷インクが好ましく使用できる。ここで印刷インクに使用される樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル共重合樹脂およびこれらの混合物が例示される。印刷インクには、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、潤滑剤、消泡剤、架橋剤、耐ブロッキング剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を含有させてもよい。印刷層を設けるための印刷方法としては、特に限定されず、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷方法が使用できる。印刷後の溶媒の乾燥には、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線乾燥等公知の乾燥方法が使用できる。
本発明により、レトルト処理後の酸素バリア性、水蒸気バリア性に優れ、かつ層間密着性が高くラミネート強度に優れた積層フィルムを得ることができる。
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。なお、フィルムの評価は次の測定法によって行った。
本発明で用いた評価方法は以下の通りである。
(1)積層体の作成
実施例、比較例で得られた積層フィルムの無機薄膜層の上に、ウレタン系2液硬化型接着剤(三井化学社製「タケラックA525S」と「タケネートA50」を13.5:1の割合で配合)を用いて、ドライラミネート法により熱接着性樹脂として厚み70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製、P1146)を貼り合わせ、40℃にて4日間エージングして実施例1~4、比較例1~2の積層体を得た。なお、接着層の厚みはいずれも乾燥後約4μmであった。
(2)厚み(μm)
各層の厚みは、本発明の積層体を変性ウレタン樹脂で固めたものの断面をミクロトームで切り出し、微分干渉顕微鏡で観察して、測定した。
(3)アンカーコート層の付着量
各実施例および比較例において、樹脂フィルム上にアンカーコート層を積層した段階で得られた各積層体を試料とし、この試料から100mm×100mmの試験片を切り出し、アセトンによるアンカーコート層の拭き取りを行い、拭き取り前後のフィルムの質量変化から付着量を算出した。
(4)無機薄膜層の組成・膜厚
各実施例および比較例において、無機薄膜層を積層した段階で得られた各積層体を試料とし、蛍光X線分析装置((株)リガク製「ZSX100e」)を用いて、予め作成した検量線により膜厚組成を測定した。なお、励起X線管の条件として50kV、70mAとした。
(5)含水率
加熱乾燥式水分率計(エー・アンド・デイ(株)社製「MS-70」)を用いて、各実施例および比較例で得られた積層体の含水率を測定した。
各実施例および比較例で得られた積層フィルムにおいて、約5gのサンプルを、25±2℃、相対湿度65±10%RHの環境下で72時間以上保管した後に、50×50mm角にカットし、測定皿にセットして重量を測定した。この時の試料重量[g]を(Wa)とした。その後、140℃まで加熱した後、重量変化が0.02%/秒以下となったときの試料重量を測定した。この時の試料重量[g]を(Wb)とした。この時に得られた重量から下記式(1)を用いて含水率を算出した。
(含水率[%])=(Wa-Wb)/(Wa)×100 ・・・式(1)
各サンプルをn=3で測定し、その平均値を含水率として採用した。
(6)ラミネート強度
上記(1)で作製した積層体を幅15mm、長さ200mmに切り出して試験片とし、温度23℃、相対湿度65%の条件下で、テンシロン万能材料試験機(東洋ボールドウイン社製「テンシロンUMT-II-500型」)を用いてラミネート強度を測定した。なお、ラミネート強度の測定は、引張速度を200mm/分とし、実施例および比較例で得られた各積層体の積層体層とヒートシール性樹脂層とを剥離角度90度で剥離させ、剥離部にスポイトで水を垂らした場合(wet)および垂らさない場合(dry)の強度をそれぞれ測定した。
他方、上記で作製した積層体に対して、温度130℃の加圧熱水中に保持するレトルト処理を30分間施した後、直ちに、得られたレトルト処理後のラミネート積層体から上記と同様にして試験片を切り出し、上記と同様にしてラミネート強度(レトルト処理後)を測定した。
(7)酸素透過度
上記(1)で作製した積層体において、JIS-K7126 B法に準じて、酸素透過度測定装置(MOCON社製「OX-TRAN(登録商標)1/50」)を用い、温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下で酸素透過度を測定した。なお、酸素透過度の測定は、表面層(C)側から酸素が透過する方向で行った。
他方、評価用積層体に対して、温度130℃の加圧熱水中に保持するレトルト処理を30分間施した後、40℃で24時間乾燥し、得られたレトルト処理後の積層体について、上記と同様にして酸素透過度(レトルト処理後)を測定した。
(8)水蒸気透過度
上記(1)で作製した積層体において、JIS-K7129 B法に準じて、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製「PERMATRAN-W 3/33MG」)を用い、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気下で水蒸気透過度を測定した。なお、水蒸気透過度の測定は、表面層(C)側から水蒸気が透過する方向で行った。
他方、評価用積層体に対して、温度130℃の加圧熱水中に保持するレトルト処理を30分間施した後、40℃で24時間乾燥し、得られたレトルト処理後の積層体について、上記と同様にして水蒸気透過度(レトルト処理後)を測定した。
(9)ラミネート強度悪化率
上記(6)で測定した値に対し、下記式(2)で表される値をラミネート強度悪化率とした。
ラミネート強度悪化率(%)=(レトルト処理前のラミネート強度‐レトルト処理後のラミネート強度)/(レトルト処理前のラミネート強度)×100 ・・・式(2)
(10)バリア値悪化率
(7)(8)で測定した値に対し、23℃×65%RH条件下で測定した酸素透過度の値を(A)とし、温度130℃の加圧熱水中に保持するレトルト処理を30分間施した後に、23℃×65%RH条件下で測定した酸素透過度の値を(B)としたときに、下記式(3)で表される湿熱処理後のバリア値悪化率が150%以下であることを特徴とする、請求項5または6に記載の積層フィルム。
湿熱処理後のバリア値悪化率(%)= (B/A)×100 ・・・式(3)
(11)アンカーコート層の全反射赤外吸収スペクトル
各実施例および比較例において、基材フィルム上にアンカーコート層を積層した段階で得られた各積層フィルム単体のアンカーコート層の面について、赤外分光計(BRUKER社性「ALPHA」)を用いて、全反射吸収赤外分光法で全反射赤外吸収スペクトルを測定し、1250±50cm-1の領域に吸収極大を持つピーク強度(P1)および1070±10cm-1の領域に吸収極大を持つピーク強度(P2)を求め、その強度比(P1/P2)を算出した。各ピーク強度の算出は、吸光度ゼロのベースラインと、各ピークトップを、垂直に結んだピーク高さから行った。
[基材フィルム層の作製]
下記基材フィルム作製で使用した樹脂原料の詳細、フィルム製膜条件、原料配合比率を表1~3に示す。
Figure 2023067401000001
Figure 2023067401000002
Figure 2023067401000003
(OPP-1)
基材層(A)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-2を100.0重量%用いた。また、表面層(B)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-2を43.2重量%、表1に示すエチレン共重合ポリプロピレン重合体PP-4を52.0重量%、アンチブロッキング剤含有マスターバッチFTX0627Gを4.8重量%の割合で配合したものを使用した。このとき、表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(g/10分)は5.1であった。
表面層(C)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-2を93.6重量%、アンチブロッキング剤含有マスターバッチFTX0627Gを6.4重量%の割合で配合したものを使用した。
基材層(A)は45mm押出機、表面層(B)は25mm押出機、表面層(C)は20mm押出機を用いて、それぞれ原料樹脂を250℃で溶融し、Tダイからシート状に共押し出しし、30℃の冷却ロールに表面層(B)が接触するよう冷却固化した後、125℃で縦方向(MD)に4.5倍に延伸した。次いでテンター内で、フィルム幅方向(TD)両端をクリップで挟み、168℃で予熱後、155℃で幅方向(TD)に8.2倍に延伸し、幅方向(TD)に6.7%緩和させながら、165℃で熱固定した。このときの製膜条件を製膜条件aとした。
こうして、表面層(B)/基材層(A)/表面層(C)の構成の二軸配向ポリプロピレン系フィルムを得た。
二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(B)の表面を、ソフタル・コロナ・アンド・プラズマGmbH社製のコロナ処理機を用いて、印加電流値:0.75Aの条件で、コロナ処理を施した後、ワインダーで巻き取った。得られたフィルムの厚みは20μm(表面層(B)/基材層(A)/表面層(C)の厚みが1.3μm/17.7μm/1.0μm)であった。
(OPP-2)
基材層(A)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を用いた。
また、表面層(B)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-2を43.2重量%、表1に示すエチレン共重合ポリプロピレン重合体PP-4を52.0重量%、アンチブロッキング剤含有マスターバッチFTX0627Gを4.8重量%の割合で配合したものを使用した。表面層(C)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を93.6重量%、アンチブロッキング剤含有マスターバッチFTX0627Gを6.4重量%の割合で配合したものを使用した。
基材層(A)は45mm押出機、表面層(B)は25mm押出機、表面層(C)は20mm押出機を用いて、それぞれ原料樹脂を250℃で溶融し、Tダイからシート状に共押し出しし、30℃の冷却ロールに表面層(B)が接触するよう冷却固化した後、135℃で縦方向(MD)に4.5倍に延伸した。次いでテンター内で、フィルム幅方向(TD)両端をクリップで挟み、173℃で予熱後、164℃で幅方向(TD)に8.2倍に延伸し、幅方向(TD)に6.7%緩和させながら、171℃で熱固定した。このときの製膜条件を製膜条件bとした。
こうして、表面層(B)/基材層(A)/表面層(C)の構成の二軸配向ポリプロピレン系フィルムを得た。
二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(B)の表面を、ソフタル・コロナ・アンド・プラズマGmbH社製のコロナ処理機を用いて、印加電流値:0.75Aの条件で、コロナ処理を施した後、ワインダーで巻き取った。得られたフィルムの厚みは20μm(表面層(B)/基材層(A)/表面層(C)の厚みが1.3μm/17.7μm/1.0μm)であった。
(PET)
東洋紡株式会社製エステルフィルムE5100、厚み12μmのフィルムを用いた。
[アンカーコート層の作製]
以下に各実施例及び比較例で使用したアンカーコート層の作製方法を記す。
[塗工液1]
シランカップリング剤;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製「KBM-603」)0.25質量部をアセトン1.48質量部溶解した溶液に、イソシアネート;メタキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(三井化学社製「タケネートD-110N」:固形分75%)を4.07質量部混合させ、10分間マグネチックスターラ―を用いて撹拌した。得られた調合液をメチルエチルケトン69.55質量部および1-メトキシ-2-プロパノール(以下PGM)14.03質量部で希釈し、さらにポリエステル樹脂(DIC社製;DF-COAT GEC-004C:固形分30%)を10.62質量部添加し、目的の塗工液1を得た。
[塗工液2]
精製水42.83質量部およびイソプロパノール20.00質量部の混合液に、市販のメタキシリレン基含有ウレタン樹脂のディスパージョン(三井化学社製「タケラック(登録商標)WPB341」;固形分30%)を6.67質量部、および市販のポリエステルウレタン樹脂のディスパージョン(DIC社製「ハイドラン(登録商標)AP-80」;固形分25%)を28.00質量部加え、10分間マグネチックスターラ―を用いて撹拌した。得られた調合液に、さらに、カルボジイミド系架橋剤(日清紡ケミカル社製「カルボジライトSV-02」;固形分40%)を2.50質量部加えて、目的の塗工液2を得た。
[塗工液3]
精製水90質量部に、完全けん化ポリビニルアルコール樹脂(日本合成化学社製、商品名:GポリマーOKS8049Q、(けん化度99.0%以上、平均重合度450)、10質量部を加え、攪拌しながら80℃に加温し、その後約1時間攪拌させた。その後、常温になるまで冷却し、これにより固形分10%のほぼ透明なポリビニルアルコール溶液(PVA溶液)を得た。精製水35.00質量部と2-プロパノール15.00質量部との混合溶液に、上記のPVA溶液を50.00質量部混合させ、目的の塗布液2を得た。
[無機薄膜層の形成]
以下に各実施例及び比較例で使用した無機薄膜層の作製方法を記す。
アンカーコート層上に、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物層を電子ビーム蒸着法で形成した。蒸着源としては、3mm~5mm程度の粒子状SiO(純度99.9%)とA1(純度99.9%)とを用いた。このようにして得られたフィルム(無機薄膜層/アンカーコート層含有フィルム)における無機薄膜層(SiO/A1複合酸化物層)の膜厚は13nmであった。またこの複合酸化物層の組成は、A1/SiO(質量比)=30/70であった。
(実施例1)
基材フィルムにOPP-1、アンカーコート層に塗工液1を用いて、グラビアロールコート法によって、樹脂フィルムの表面層(B)上に塗布し、130℃で10秒間乾燥させた。この時のアンカーコート層の付着量は0.40g/mであった。その後、40℃2日間の後加熱処理を施した後、無機薄膜層を上述した方法で積層し、目的の積層フィルムを得た。
(実施例2)
樹脂フィルムをOPP-2に変更した以外は、実施例1と同じ条件で目的の積層フィルムを得た。
(実施例3)
アンカーコート層の付着量を0.20g/mに変更した以外は、実施例1と同じ条件で目的の積層フィルムを得た。
(実施例4)
無機薄膜層の組成を、A1/SiO(質量比)=40/60に変更した以外は、実施例1と同じ条件で目的の積層フィルムを得た。
(実施例5)
アンカーコート層に塗工液2を用いた以外は、実施例1と同じ条件で目的の積層フィルムを得た。
(比較例1)
アンカーコート層に塗工液3を用いた以外は、実施例1と同じ条件で目的の積層フィルムを得た。
(比較例2)
基材フィルムをPETに変更した以外は、実施例1と同じ条件で目的の積層フィルムを得た。
以上のようにして、積層フィルムを作製した。さらに、得られた積層フィルムに上記(1)で示した通りに積層体を作製し、積層フィルムおよび積層体について、構成および各種評価を実施した結果を表4に示す。
Figure 2023067401000004
Figure 2023067401000005
本願発明によれば、レトルト処理した後も酸素、水蒸気のバリア性に優れ、レトルト処理後に層間剥離の起こらない密着性を有した積層フィルムを提供することが可能となった。

Claims (8)

  1. 表面層(C)、基材層(A)、表面層(B)をこの順に積層した基材フィルムの表面層(B)上に、アンカーコート層、無機薄膜層を、他の層を介して又は介さずにこの順に積層した積層フィルムであって、前記表面層(B)が2種以上の樹脂を含む樹脂組成物からなり、かつ前記アンカーコート層の付着量が0.50g/m未満であり、かつ前記積層フィルムの含水率が0.2質量%以下であることを特徴とする、積層フィルム。
  2. 前記アンカーコート層が、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂のうち、少なくとも1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 前記無機薄膜層が金属酸化物からなることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の積層フィルム。
  4. 前記基材層(A)がポリオレフィンを主成分とする樹脂からなることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の積層フィルムまたは積層フィルム。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載の積層フィルムに、前記表面層(C)とは反対の面にオレフィン系シーラント層を積層していることを特徴とする、積層体。
  6. 前記積層体のラミネート強度が2.0N/15mm以上であることを特徴とする、請求項5に記載の積層体。
  7. 前記積層体を23℃×65%RH条件下で測定した酸素透過度の値を(A)とし、温度130℃の加圧熱水中に保持するレトルト処理を30分間施した後に、23℃×65%RH条件下で測定した酸素透過度の値を(B)としたときに、下記式で表される湿熱処理後のバリア値悪化率が150%以下であることを特徴とする、請求項5または6に記載の積層体。
    湿熱処理後のバリア値悪化率(%)= (B/A)×100 ・・・式(1)
  8. 請求項1~4のいずれかに記載の積層フィルム、または請求項5~7に記載の積層体を、少なくとも1層含む包装材料。
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