JP2023064182A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】オーステナイト系ステンレス鋼、Ni基合金、Ti基合金等の高速切削加工でも優れた耐久性を有する被覆工具を提供する【解決手段】平均厚さが1.0~8.0μmの被覆層が、下層、中間層、上層を有し、平均厚さが0.1~5.0μmの下層は、組成を(Al1-a-bTiaCrb)Nで表したとき、aが0.20~0.60、bが0.01~0.10の平均組成で、平均厚さが0.1~3.0μmの上層は、組成を(Zr1-p-qA1pCrq)Nで表したとき、pが0.15~0.35、qが0.01~0.05の平均組成で、平均厚さが0.1~5.0μmの中間層は下層と同じ平均組成の上部積層単位層と上層と同じ平均組成の下部積層単位層の2層からなる積層単位層を1以上有した表面被覆切削工具。【選択図】図1

Description

本発明は表面被覆切削工具(以下、被覆工具ということがある)に関する。
従来、切削工具の寿命を向上させるために、炭化タングステン(以下、WCという)基超硬合金等の基体の表面に、被覆層を形成した被覆工具があり、この被覆工具は耐摩耗性等が向上している。
そして、被覆工具のより一層の切削性能を向上させるために、被覆層の組成や構造について、種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、被覆層を構成する層Aと層Bの個別の層厚さが1~30nmであり、前記層AがZr1-xAlN(式中、0<x<1)から成り、かつ前記層BがTiNから成る、A/B/A/B/A…の連続体を形成する交互の層と、切削作業に用いられる領域では、前記交互の層AおよびBのそれぞれからの1種以上の金属元素を含む中間層Cを前記交互の層A及びBの間に形成して、A/C/B/C/A/C/B…の連続体である層を有する被覆切削工具が記載され、前記被覆工具の被覆層は熱安定性が上昇し、1100℃にさらされても高い硬度を有するとされている。
また、例えば、特許文献2には、被覆層が、AlまたはCrのいずれか一方または両方の元素と、Zrと、炭素、窒素、酸素およびホウ素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とにより構成される化合物を含む被覆工具が記載され、該被覆工具は耐摩耗性と耐酸化特性に優れるとされている。
さらに、例えば、特許文献3には、被覆層が、TiZrAl(1-x-y)Nからなる層を含み、0<x≦0.3、0.4≦y≦0.8、及び0.1≦(1-x-y)<0.6であり、前記被覆層が前記TiZrAl(1-x-y)N層からなるか、又は、Ti、TiN、Cr、CrN、又は任意の他の遷移金属もしくは遷移金属窒化物の層である接着層と前記接着層上部の前記TiZrAl(1-x-y)N層からなる被覆工具が記載され、該被覆工具の被覆層は高温で安定な組成物を有するとされている。
加えて、例えば、特許文献4には、Ala Tib Crc 〔但し、a、b、cはそれぞれ原子比で、0.3≦a≦0.7、0≦b≦0.5、0≦c≦0.7、且つa+b+c=1〕の窒化物または炭窒化物から成るI層と、CrAlNから成る窒化物相とBN相とが三次元的に混じり合う複合膜であるII層と、を有し、工具母材の表面上に前記I層が設けられるとともに前記II層が最表層となるように、該I層および該II層が交互に2層以上積層された硬質被膜が構成されている一方、前記I層および前記II層の層厚は何れも50nmを超えており、被膜全体の総膜厚は0.1μm~20μmの範囲内である被覆工具が記載され、該被覆工具は優れた耐熱性、高温での化学的安定性、耐摩耗性、耐溶着性等の性能が適切に得られるとされている。
そのほかに、例えば、特許文献5には、基体表面に結晶構造がbcc構造からなるW改質相を有し、該W改質相は、Ti、Zr、Hf、NbおよびTaから選択される1種以上の金属のイオン照射によって該基体のWCがWとCとの分解を経て形成されたWであり、該W改質相の直上にTi、Zr、Hf、NbおよびTaから選択される1種以上の金属の炭化物相を有し、該炭化物相の直上に硬質皮膜を有する被覆工具が記載され、該被覆工具は耐久性に優れ長寿命であるとされている。
特許第6161639号公報 特開2006-82209号公報 特許第6842233号公報 特開2013-52477号公報 特許第5098726号公報
本発明は、前記事情や前記提案を鑑みてなされたものであって、オーステナイト系ステンレス鋼、Ni基合金、Ti基合金等の難削材の高速切削加工に供しても優れた耐久性を有する被覆工具を提供することを目的とする。
本発明の実施形態に係る表面被覆切削工具は、
基体と該基体に設けられた被覆層を有し、
1)前記被覆層は、その平均厚さが1.0~8.0μmであって、前記基体の側から工具表面に向かって、順に、下層、中間層、上層からなり、
2)前記下層は、その平均厚さが0.1~5.0μmであって、AlとTiとCrとの複合窒化物であり、(Al1-a-bTiCr)N(ただし、aおよびbが0.05以上、(1-a-b)が0.40~0.80である)の平均組成を有し、
3)前記上層は、その平均厚さが0.1~3.0μmであって、ZrとAlとCrとの複合窒化物であり、(Zr1-p-qAlCr)N(ただし、pが0.15~0.35、qが0.01~0.05である)の平均組成を有し、
4)前記中間層は、その平均厚さが0.1~5.0μmであって、前記下層と同じ平均組成を有する上部積層単位層と前記上層と同じ平均組成を有する下部積層単位層の2層からなる積層単位層を1または2以上有した層である。
さらに、前記実施形態に係る表面被覆工具は、次の各事項を満足してもよい。
(1)前記基体は、WC基超硬合金であって、
前記基体の表面からその内部へ10~500nmのW層、前記基体の表面の直上の金属炭化物層、該金属炭化物層上の金属炭窒化物層を含む下地層を有し、
前記金属炭化物層は、5~500nmの平均厚さを有するTi、Cr、Zr、Hf、NbおよびTaの1または2以上を含む炭化物から構成され、
前記金属炭窒化物層は、5~300nmの平均厚さを有するTi、Cr、Zr、Hf、NbおよびTaの1または2以上を含む炭窒化物から構成されるものであること。
前記によれば、オーステナイト系ステンレス鋼、Ni基合金、Ti基合金等の難削材の高速切削加工において、優れた耐久性を有する表面被覆切削工具を得ることができる。
本発明の一実施形態に係る被覆層の縦断面(基体の表面に垂直な断面)を模式的に示す図である。 本発明の他の実施形態に係る被覆層の縦断面を模式的に示す図である。
本発明者は、高熱発生を伴い、切刃に対して大きな熱的、機械的負荷が作用するオーステナイト系ステンレス鋼、Ni基合金、Ti基合金等の難削材の高速切削加工(例えば、旋削用インサートによる、切削速度が200m/min以上の領域におけるオーステナイト系ステンレス鋼の湿式連続加工、エンドミルによる、切削速度が45m/min以上の領域におけるNi基合金の側面切削加工、旋削用インサートによる、切削速度が100m/min以上の領域におけるTi基合金の湿式連続加工)であっても、長期の使用にわたり優れた切削性を発揮する耐久性を有する被覆工具について、鋭意検討した。
その結果、AlとTiとCrとの複合窒化物層(以下、(AlTiCr)N層ということがある)と、ZrとAlとCrとの複合窒化物層(以下、(ZrAlCr)N層ということがある)とを所定の態様で組合わせて、被覆層を構成すると、(AlTiCr)N層が高温硬さ、耐熱亀裂性を向上させ、(ZrAlCr)N層が耐溶着性、耐酸化性を向上させて、被覆層全体としてみると耐欠損性、耐摩耗性が向上するという新規な知見を得た。
以下では、本発明の実施形態の被覆工具について詳細に説明する。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、数値範囲を「L~M」(L、Mは共に数値)で表現するときは、その範囲は上限値(M)および下限値(L)を含んでおり、上限値のみに単位が記載されているとき上限値(M)と下限値(L)の単位は同じである。
I.図1に示す実施形態
図1は、本発明の一実施形態に係る被覆工具の被覆層の縦断面(基体の表面に垂直な断面)を模式的に示した図である。図1について簡単に説明すると、基体(1)に被覆層(2)が設けられており、該被覆層(2)は、基体(1)から工具表面に向かって下層(3)、積層単位層(41)を有する中間層(4)、上層(5)を有している。以下、この図1に示す実施形態について説明する。
1.被覆層
本実施形態に係る被覆層は、その平均厚さが1.0~8.0μmが好ましく、基体の側から工具表面に向かって、順に、下層、中間層、上層を有することが好ましい。
ここで、前記範囲の平均厚さが好ましい理由は、1.0μm未満では長期の使用にわたって優れた耐摩耗性を発揮することができず、一方、8.0μmを超えると、上層がチッピング、欠損、剥離等の異常損傷を発生しやすくなるためである。
(1)下層
下層は、その平均厚さが0.1~5.0μmの(AlTiCr)N層であることが好ましい。
平均厚さとして前記範囲が好ましい理由は、0.1μm未満では下層の耐摩耗性および耐欠損性が十分ではなく、一方、5.0μmを超えると下層の内部歪が大きくなって下層自体が自壊しやすくなるためである。より好ましい平均厚さは1.0~4.0μmである。
また、(AlTiCr)N層は、(Al1-a-bTiCr)Nで表したとき、aおよびbが0.05以上、(1-a-b)が0.40~0.80である平均組成を有することが好ましい。
その理由は、次のとおりである。
aおよびbが0.05未満では、異なる格子定数の窒化物を組合せることによる靭性向上の効果が発揮されず、また、(1-a-b)が、0.40未満では、下層の高温硬さおよび高温耐酸化性が低下し、一方、0.80を超えると、六方晶構造の結晶粒が形成されやすくなり、下層の硬度が低下し十分な耐摩耗性を得ることができなくなるためである。
ここで、(AlTiCr)とNとの比は、1:1となるように製造されるが、不可避的に(意図せずに)1:1とならないものが存在することがある。このことは、以下で述べる他の金属の窒化物にも当てはまる。
なお、本実施形態における基体の表面とは、エネルギー分散型X線分析法(EDS)を用いた元素マッピングを実施することによって下層と基体の界面を定め、こうして得られた下層と基体との界面の粗さ曲線について、平均線を算術的に求め、これを基体表面とする。この決定方法は、基体が曲面の表面を有する場合であっても、被覆層の層厚に対して工具径が十分に大きければ、被覆層と基体の界面は平面と扱うことできるため同様に行うことができる。
(2)上層
上層は、その平均厚さが0.1~3.0μmの(ZrAlCr)N層であることが好ましい。
平均厚さとして前記範囲が好ましい理由は、0.1μm未満では上層の耐摩耗性が低下し、一方、3.0μmを超えると上層のチッピング、欠損が発生しやすくなるためである。より好ましい平均厚さは0.1~1.5μmである。
また、(ZrAlCr)N層は(Zr1-p-qAlCr)Nで表したとき、pが0.15~0.35、qが0.01~0.05である平均組成を有することが好ましい。
その理由は、次のとおりである。
pが、0.15未満であると被覆工具の耐溶着性、耐酸化性が低下し、一方、0.35を超えると六方晶構造のAlNが生成するようになって硬さが低下するためである。qが、0.01未満であると被覆層内の格子定数差が大きくなり被覆工具の耐欠損性が低下し、一方、0.05を超えると上層が軟質化し、耐摩耗性が低下するためである。
(3)中間層
中間層は、その平均厚さが0.1~5.0μmであって、前記下層と同じ平均組成を有する上部積層単位層と前記上層と同じ平均組成を有する下部積層単位層の2層からなる積層単位層を1または2以上有した層である。
ここで、上部積層単位層と下部積層単位層のそれぞれの平均厚さは等しく、積層単位層の平均厚さは5~20nmが好ましい。また、積層単位層を5~1000層にわたって積層することが好ましい。その理由は、これらの範囲を満足すると、下層と上層の密着性が向上し、被覆層内で亀裂が発生せず、耐チッピング性が向上するためである。
2.基体
(1)材質
本実施形態に使用する基体は、従来公知の基体の材質であれば、本発明の目的を達成することを阻害するものでない限り、いずれのものも使用可能である。一例をあげるならば、超硬合金(WC基超硬合金、WCの他、Coを含み、さらに、Ti、Ta、Nb等の炭窒化物を添加したものも含むもの等)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの等)、セラミックス(炭化チタン、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなど)、cBN焼結体、またはダイヤモンド焼結体のいずれかであることが好ましく、WC基超硬合金がより一層好ましい。
(2)形状
基体の形状は、切削工具として用いられる形状であれば特段の制約はなく、インサートの形状、エンドミルの形状が例示できる。
3.製造方法
本実施形態の被覆層は、例えば、次のようなPVD法により製造できる。
すなわち、AIP(Arc Ion Plating)装置内を窒素雰囲気とし、Al-Ti-Cr合金ターゲットとアノード電極との間にアーク放電を発生させて所定の平均厚さの下層を形成する。次に、同じく窒素雰囲気でZr-Al-Cr合金ターゲットとアノード電極との間にアーク放電を発生させて、所定の平均厚さの下部積層単位層を成膜し、続いて、Al-Ti-Cr合金ターゲットとアノード電極との間にアーク放電を発生させて、所定の平均厚さの上部積層単位層を成膜し、積層単位層を形成する。この積層単位層を所定数成膜した後、窒素雰囲気でZr-Al-Cr合金ターゲットとアノード電極との間にアーク放電を発生させて、所定の平均厚さの上層を成膜する。
II.図2に示す実施形態
図2は、本発明の一実施形態に係る被覆工具の被覆層の縦断面を模式的に示した図である。この図2に示す実施形態について説明する。図1に示す実施形態と説明が重複する箇所の説明は省略して図2を説明すると、下地層(6)は、基体(1)から工具表面に向かって、該基体の上部のW層(61)、金属炭化物層(62)、金属炭窒化物層(63)を順に有している。
本実施形態は、被覆層は図1に示す実施形態と同じとし、基体をWC基超硬合金に限定し、かつ、下地層を設けたものである。
1.下地層
下地層は、WC基超硬合金である基体の表面から、該基体の内部へ平均厚さが10~500nmのW層と、該W層の上の金属炭化物層、該金属炭化物層の上の金属炭窒化物層を含む層である。
なお、本実施形態における基体の表面とは、EDSを用いた元素マッピングを実施することによって下地層と基体の界面を定め、こうして得られた下地層と基体との界面の粗さ曲線について、平均線を算術的に求め、これを基体表面とする。この決定方法は、基体が曲面の表面を有する場合であっても、被覆層の層厚に対して工具径が十分に大きければ、被覆層と基体の界面は平面と扱うことできるため同様に行うことができる。
(1)W層と金属炭化物層
下地層に含まれるW層と金属炭化物層は、基体を構成するWC基超硬合金を金属イオンボンバード処理によって形成される層である。すなわち、Ti、Cr、Zr、Hf、NbおよびTaの1または2以上を含む金属イオン(特に、TiとCrの金属イオンが好ましい)をWC基超硬合金に対してボンバード処理することにより、WC基超硬合金に含まれるWCがWとCに分解され、W層が形成される。そして、この分解されて生じたCと前記金属イオンとが反応して、これらの金属の炭化物(複合炭化物を含み、化学量論的組成に限られない)層を形成する。
W層の平均厚さは10~500nmが好ましい。その理由は、10nm未満では、直上の金属炭窒化物層が十分に形成されず、基体と被覆層との十分な密着強度が得られず、一方、500nmを超えると、基体表面の脆化によって、被覆層が剥離しやすくなるためである。より好ましいW層の平均厚さは20~300nmである。
金属炭化物層の平均厚さは、5~500nmであることが好ましい。その理由は、5nm未満ではW層の厚さも薄くなりすぎて基体と被覆層との密着性向上が期待できず、一方、500nmを超えると、基体表面の脆化を招くためである。より好ましい金属炭窒化物層の平均厚さは10~300nmである。
なお、前述の金属イオンボンバード処理において、下地層を形成する際の反応過程で部分的にW粒子が金属炭化物層内に残留する場合があるが、その場合においても下部層の密着力向上効果は発揮される。
(2)金属炭窒化物層
金属炭化物層の表面に金属炭窒化物層を形成することが好ましい。この金属炭窒化物層は、前記金属窒化物層に含まれる金属元素と同じTi、Cr、Zr、Hf、NbおよびTaの1または2以上の金属の炭窒化物(複合炭窒化物を含み、化学量論的組成に限らない)層であることが好ましい。なお、この金属炭窒化物層に含まれる金属元素は、前述の金属炭化物層に含まれる金属元素と同じである。
この金属炭窒化物層は、金属炭化物層との密着強度に優れると同時に、金属炭窒化物層の表面に形成される被覆層、特に、AlとTiとCrとの複合窒化物層からなる下層との密着性に優れるため、高熱発生を伴い、しかも、切刃に対して大きな熱的負荷、機械的負荷がかかる難削材の高速切削加工における被覆層の剥離を抑制する。
金属炭窒化物層の炭素と窒素の比は限定されるものではない(化学量論的組成に限定されない)が、好ましくは炭素と窒素の原子濃度の合計に対する窒素の原子濃度の割合が金属炭窒化物層内の平均で0.1~0.9である。
金属炭窒化物層の平均厚さは5~300nmであることが好ましい。その理由は、5nm未満では上記の金属炭化物層および下層との密着性が充分に発揮されず、一方、300nmを超えると、同層内の歪が大きくなり、かえって密着力の低下を招くためである。より好ましい金属炭窒化物層の平均厚さは10~200nmである。
前記W層および金属炭化物層、金属炭窒化物層は基体上に層状に形成されることが好ましいが、例えば、WC粒子上に優先的に島状に形成される場合もあり、この場合も基体と硬質被覆層の密着強度改善の効果を得ることができる。この場合は、この島状の部分の厚さの平均が平均厚さとなる。
2.基体
本実施形態では、基体は、その材質はWC基超硬合金に限られるが、形状については切削工具として用いられる形状であれば特段の制約はない。
3.製造方法
被覆層の製造方法は、図1に示す実施形態と同じであるため、下部層の製造方法についてのみ説明する。
Ti、Cr、Zr、Hf、NbおよびTaの1または2以上を含む金属イオンボンバード処理用のターゲットが設置されているAIP装置内に、WC基超硬合金の基体を載置して、高真空下でボンバード処理を行い、基体の表面から所定の厚さのW層を形成し、同時に前記金属の炭化物層する。その後、被覆層を構成する窒素が前記金属の炭化物層へ拡散して、金属炭窒化物層を形成する。
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
原料粉末として、いずれも0.5~5μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370~1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120408に規定するインサート形状をもったWC基超硬合金製の基体(インサート)1~4を製造した。
そして、基体(インサート)1~4のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥させた。
<<図1に示す実施形態に対応する実施例>>
AIP装置の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に、基体(インサート)を外周部にそって装着し、AIP装置の一方に所定組成のAl-Ti-Cr合金からなるターゲット(カソード電極)を、他方側に所定組成のZr-Al-Cr合金からなるターゲット(カソード電極)を配置した。装着する基体毎に、次に述べる成膜条件が異なるため、同時に装着する基体は同種のものであった。
ついで、AIP装置内を排気して真空(1×10-3Pa以下)に保持しながら、ヒータでAIP装置内を500℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転する前記基体(インサート)に-400Vの直流バイアス電圧を印加し、フィラメントからの熱電子放出によるイオン源により、15分間Arイオンボンバード処理を施した。
さらに、前記基体(インサート)1~4に対して、以下の工程で被覆層を形成し、図1の実施形態に対応する表面被覆インサート1~8(以下、実施例1~8という)をそれぞれ製造した。
被覆層の製造
次の1)~5)の工程により、表3に示す実施例の被覆層を製造した。
1)下層の成膜
装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して表2の下層の成膜成膜条件として示す窒素分圧とし、前記回転テーブル上で自転する前記基体(インサート)の温度を表2の同条件に示す温度に維持すると共に、表2の同条件に示す直流バイアス電圧を印加し、かつ前記Al-Ti-Cr合金ターゲットとアノード電極との間に150Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記基体の表面に、表3に示される組成および平均厚さの下層を蒸着形成した。
2)下部積層単位層の成膜
次に、表2の下部積層単位層の成膜条件として示す窒素分圧とし、前記回転テーブル上で自転する前記基体(インサート)の温度を表2の同条件に示す温度に維持すると共に、表2の同条件に示す直流バイアス電圧を印加し、かつ前記Zr-Al-Cr-合金ターゲットとアノード電極との間に150Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記基体(インサート)の表面に、表3に示される組成および平均厚さの下部積層単位層を蒸着形成した。
3)上部積層単位層の成膜
表2の上部積層単位層の成膜条件として示す窒素分圧とし、前記回転テーブル上で自転する前記基体(インサート)の温度を表2の同条件に示す温度に維持すると共に、表2の同条件に示す直流バイアス電圧を印加し、かつ前記Al-Ti-Cr合金ターゲットとアノード電極との間に150Aの電流を流してアーク放電を発生させ、表3に示される組成および平均厚さの上部積層単位層を蒸着形成した。
4)積層体層の成膜
前記2)および3)によって、積層単位層が形成されたので、この積層単位層を所定の積層数とすべく、前記2)と3)の操作を繰り返した。
5)上層の成膜
最後に、表2に示す上層の成膜条件で示す窒素分圧とし、前記回転テーブル上で自転しながら回転する前記基体(インサート)の温度を表2の同条件に示す温度に維持すると共に、表2の同条件に示す直流バイアス電圧を印加し、かつ前記Zr-Al-Cr合金ターゲットとアノード電極との間に150Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記基体(インサート)の表面に、表3に示される組成および平均厚さの上層を蒸着形成した。
比較のために、前記基体(インサート)1~4のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、AIP装置の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着し実施例1~8と同様にボンバード処理を行い表2に示す成膜条件1’~6に従って、比較例の表面被覆インサート1’~6’(以下、比較例1’~6’という)をそれぞれ製造した。
前記で製造した実施例1~8および比較例1’~6’について、収束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)装置を用いて縦断面を切り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたEDS、オージェ電子分光法(Auger Electron Spectroscopy:AES)や電子線マイクロアナライザー(Electron Probe Micro Analyzer:EPMA)を用いた断面測定により、下層、および、上層の成分組成、各層厚を5箇所測定し、その平均値から平均組成および平均厚さを算出した。また、同様な方法で、中間層、積層単位層の平均厚さを算出した。さらに、積層単位層の層厚に対する中間層の層厚の比より積層数を算出した。
表3に、測定・算出したそれぞれの値を示す。
<<図2の実施形態に対応する実施例>>
乾燥させた前記基体(インサート)1~4に対して、以下の工程で下地層と被覆層を形成し、図2の実施形態に対応する表面被覆インサート11~18(以下、実施例11~18という)をそれぞれ製造した。
1)下地層の製造
AIP装置内を排気して真空に保持しながら、回転テーブル上で自転する基体(インサート)を、約500℃から表4に示す所定の温度(ボンバード処理中の基体温度)にまでヒータで順次加熱し、同じく表4に示すバイアス電圧を基体に印加し、基体と表4にボンバード金属種別と記載した金属イオンボンバード用ターゲットとの間に同じく表4に示すアーク電流を流し、同じく表4に示す処理時間、基体に金属イオンボンバード処理を施すことにより表5に示す下地層を形成した。
2)被覆層の製造
その後、前述の図1の実施形態に対応する実施例と同様の被覆層の製造方法により、被覆層を成膜した。
比較の目的で、前記基体(インサート)1~4のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、AIP装置の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着し、図2の実施形態に対応する実施例とは、ボンバード処理条件を変更した以外、図2の実施形態に対応する実施例と同様な方法で、表5に示す比較例の表面被覆インサート11’~16’(以下、比較例11’~16’という)をそれぞれ製造した。
具体的に言えば、次のとおりである。
比較例11’~ 15’については、表4の比較例条件α’~ε’に示されるように、AIP装置内を表4に示す炉内雰囲気、炉内圧力に維持しながら、ヒータで基体を表4に示す温度に加熱した後、回転テーブル上で自転する基体に表4に示す直流バイアス電圧を印加し、かつ、金属イオンボンバード用ターゲットとアノード電極との間に表4に示すアーク電流を流してアーク放電を発生させ、もって基体表面をボンバード処理した。
また、比較例16’については、表4の比較例条件ζ’に示されるようなボンバード処理を行ったが、比較例条件16’の処理は、前記特許文献1に開示される範囲内の条件である。
また、比較例11’~ 16’の被覆層は、前述の被覆層の製造方法により成膜した。
上記で製造した実施例11~18および比較例11’~ 16’について、図1に示す実施形態に対応する実施例と同様な方法で、下層、上層の平均組成および平均厚さを算出した。中間層、積層単位層においても、平均厚さを算出し、積層単位層の層厚に対する中間層の層厚の比より積層数を算出した。
下地層のW層、金属炭化物層および金属炭窒化物層においても、被覆層と同様の分析手法を用いた断面の平均測定より、各層の同定ならびに各層厚を算出した。下地層の各層の層厚を求める手法を具体的に述べれば次のとおりである。基体の縦断面に対して、基体表面の法線方向に対する組成の線分析を行う。これにより得られる成分含有量変化曲線をもとにして各層の境界を次に従って定義する。
まず、WCとW層の境界を、W含有量の増加開始位置とする。また、W層と金属炭化物層の境界を、Wの含有量変化を示す曲線と金属炭化物層を構成する金属成分の含有量変化を示す曲線との交点とする。さらに、金属炭化物層と金属炭窒化物層の境界を、N含有量の増加開始位置とする。そして、金属炭窒化物層と下層の境界を、金属炭窒化物層を構成する金属成分と下層を構成する金属成分の含有量変化を示す曲線との交点とする。ここから、W層の深さおよび金属炭化物層の層厚および金属炭窒化物層の層厚を、前記W含有量、N含有量の増加開始位置あるいは各曲線の交点を基準として求める。
そして、この測定を基体の縦断面において5箇所で繰り返し、その平均値を下地層の各層の平均厚さとした。
表5に、測定・算出したそれぞれの値を示す。
Figure 2023064182000002
Figure 2023064182000003
Figure 2023064182000004
Figure 2023064182000005
Figure 2023064182000006
次に、前記実施例1~8および11~18並びに比較例1’~6’および11’~16’について、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、下記の条件(切削条件1という)によるオーステナイト系ステンレス鋼の湿式連続切削加工試験を実施し、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
<切削条件1>
被削材:Ni基耐熱合金(Cr19質量%-Fe19質量%-Mo3質量%-Ti0.9質量%-Al0.5質量%-Ni残部)の丸棒、
切削速度:100 m/min.、
切り込み:0.5 mm、
送り:0.15 mm/rev.、
切削時間:10 分、
切削油:水溶性クーラント
表6、7に、それぞれ、実施例1~8と比較例1’~6’切削試験の結果、実施例11~18と比較例11’~16’の切削試験1の結果を示す。
Figure 2023064182000007
Figure 2023064182000008
表6および表7に示される結果から、実施例1~8および11~18は、難削材の高速切削加工であっても、被覆層の剥離、溶着、チッピングや摩耗がなく、優れた耐久性を有することがわかる。
これに対して、比較例1’~6’および11’~16’は、高速切削加工時の熱的負荷、機械的負荷により被覆層の剥離、溶着、チッピングや摩耗が発生し、短時間の工具寿命であった。
1 基体
2 被覆層
3 下層
4 中間層
41 積層単位
5 上層
6 下地層
61 W層
62 金属炭化物層
63 金属炭窒化物層

Claims (2)

  1. 基体と該基体に設けられた被覆層を有する表面被覆切削工具であって、
    1)前記被覆層は、その平均厚さが1.0~8.0μmであって、前記基体の側から工具表面に向かって、順に、下層、中間層、上層からなり、
    2)前記下層は、その平均厚さが0.1~5.0μmであって、AlとTiとCrとの複合窒化物であり、(Al1-a-bTiCr)N(ただし、aおよびbが0.05以上、(1-a-b)が0.40~0.80である)の平均組成を有し、
    3)前記上層は、その平均厚さが0.1~3.0μmであって、ZrとAlとCrとの複合窒化物であり、(Zr1-p-qAlCr)N(ただし、pが0.15~0.35、qが0.01~0.05である)の平均組成を有し、
    4)前記中間層は、その平均厚さが0.1~5.0μmであって、前記下層と同じ平均組成を有する上部積層単位層と前記上層と同じ平均組成を有する下部積層単位層の2層からなる積層単位層を1または2以上有した層である
    ことを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記基体は、WC基超硬合金であって、
    前記基体の表面からその内部へ10~500nmのW層、前記基体の表面直上の金属炭化物層、該金属炭化物層上の金属炭窒化物層を含む下地層を有し、
    前記金属炭化物層は、5~500nmの平均厚さを有するTi、Cr、Zr、Hf、NbおよびTaの1または2以上を含む炭化物であり、
    前記金属炭窒化物層は、5~300nmの平均厚さを有するTi、Cr、Zr、Hf、NbおよびTaの1または2以上を含む炭窒化物であること
    を特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
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