JP2023062603A - 音響誘導型半導体素子及び音響素子集積回路 - Google Patents

音響誘導型半導体素子及び音響素子集積回路 Download PDF

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Abstract

【課題】素子のサイズを微細にした場合であっても高感度化が可能な音響誘導型半導体素子及び音響素子集積回路を提供する。【解決手段】p型のチャネル形成領域14と、チャネル形成領域14の表面に設けられたn型の第1及び第2主電極領域15b,15aと、第1及び第2主電極領域に挟まれたチャネル形成領域14の上のゲート絶縁膜(12,16)と、ゲート絶縁膜の上に浮遊状態として設けられた主浮遊電極17cと、主浮遊電極17cと隣接して配置され、第1電位に設定された固定電位電極17oと、第1及び固定電位電極に振動空洞を介して対向した振動膜23と、振動膜23の上面に接し、且つ第1及び固定電位電極に振動空洞を介して対向し、第2電位に設定された振動電極25cを備える。【選択図】図3

Description

本発明は、音響信号で半導体の表面電位を制御する音響誘導型半導体素子及びこの音響誘導型半導体素子を共通基体上に少なくとも一部の単位セルとして集積化した音響素子集積回路に関する。
医療目的の超音波探触子では、従来は圧電性の音響素子が用いられていた。しかし、圧電性の場合、音響素子の振動子と人体との音響インピーダンスの違いが大きいため、音響インピーダンスの整合の問題が、ボトルネックとなっていた。近年、微小電気機械システム(MEMS)技術を利用して、振動空洞を有する容量型音響素子が開発された。この容量型音響素子は、「容量性マイクロマシン超音波トランスデューサ(cMUT)」と呼ばれているが、人体との音響インピーダンスが近い特徴がある。cMUTは、シリコン(Si)基板上に厚さ数百nmの振動空洞を設け、振動空洞の上に上部電極、振動空洞の下に下部電極を設けた音響素子である。超音波送信時には振動空洞間に電界を印加することにより、静電気力が発生し、振動空洞上の振動膜が励振される。超音波受信時は、振動膜が機械的に振動することにより、上部電極と下部電極の間の静電容量が変化し、この静電容量の変化を電圧変化として電気信号を検出するものである。更に、圧電性の音響素子に比べ容量型音響素子は人体に害を及ぼす物質が使用されていないので医療目的の超音波探触子として好適である。
しかし、図28に示すように、上部電極25B、及びその下の振動膜23は超音波の音圧により、下部電極17との平行関係を維持して一様に下部電極17Bに近づくのではなく、上部電極25Bと下部電極17Bの中央のみが互いに近接するので、中央を除けば、平行平板型コンデンサにはなっていない。したがって、平行平板型コンデンサとしての容量変化が十分に利用できず、従来のcMUTは受信感度が低いという問題点があった。
このような事情を鑑み、本発明者の内の一人は、既に上部電極の下に設けられた振動膜の下面に振動空洞に向かって突き出た複数の突起を設け、更に突起の上方の上部電極に、突起のパターンの配列に合わせた開口部を設けた構造を提案した(特許文献1の図14および図15参照。)。特許文献1に記載の発明によれば、振動膜の下面が下部電極の上面を覆う下部絶縁膜に接触する程の電圧を上部電極と下部電極に印加した場合でも、突起が支柱となり、振動膜の下面全面が下部電極を覆う下部絶縁膜へ接触することを防止できる。このため、cMUTの動作信頼性を向上させることができるという効果を奏するものである。
しかしながら、特許文献1に記載の発明によって動作信頼性を向上させても、上部電極と下部電極の中央付近のみが互いに近接する状況は改善されず、平行平板型コンデンサとしての容量が十分に利用できるわけではないので、受信感度を向上させることはできないという問題点は、依然として改善されていない。
特に、従来の容量型音響素子は示量変数である電荷の変化を検出していたため、素子サイズの微細化により1素子あたりの検出値が小さくなる問題点を、本質的及び原理的に有している。仮に従来の容量型音響素子のサイズ(セルサイズ)を微細化しても1素子あたりの検出値が小さくなるため、複数の素子からの信号を集計しなくてはならない。このため、従来の容量型音響素子では実質的なセルサイズの微細化が困難で、高精細撮像を実現するための有効なセルサイズの微細化ができないという問題があった。又、複数の素子からの信号を集計する場合は、受信回路実装上の困難さがつきまとうという問題もあった。
特開2007-74263号公報
上述した問題を鑑み、本発明は従来の容量型の音響素子に代替え可能な、素子のサイズを微細にした場合であっても高感度化が可能な音響誘導型半導体素子、及びこの音響誘導型半導体素子を共通基体上に少なくとも一部の単位セルとして高集積密度に集積化し、高精細撮像が可能な音響素子集積回路を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の第1態様は、(a)第1導電型の半導体領域からなり、第1電位に設定されたチャネル形成領域と、(b)このチャネル形成領域の表面に互いに対向し且つ離間して設けられた第2導電型の第1及び第2主電極領域と、(c)チャネル形成領域の上面に振動空洞を介して対向し、第2電位に設定された振動電極と、(d)チャネル形成領域と振動電極の間に、振動空洞を密閉空間として設けるように振動空洞を囲む空洞形成絶縁膜を備える音響誘導型半導体素子であることを要旨とする。本発明の第1態様に係る音響誘導型半導体素子においては、振動電極の超音波による変位を、第1及び第2主電極領域の間を流れる電流の変化として検知する。
本発明の第2態様は、発明の第1態様に係る音響誘導型半導体素子を共通基体上に少なくとも一部の単位セルとして集積化した音響素子集積回路であることを要旨とする。
本発明によれば、素子のサイズを微細にした場合であっても高感度化が可能な音響誘導型半導体素子、及びこの音響誘導型半導体素子を共通基体上に少なくとも一部の単位セルとして高集積密度に集積化し、高精細撮像が可能な音響素子集積回路を提供することができる。
本発明の第1実施形態に係る音響素子集積回路の、音響誘導型半導体素子を配列した素子アレイの平面パターンの概略を示す平面図である。 図1に示した素子アレイの内の第i列-第j行目のセル(音響誘導型半導体素子)に着目して拡大して示す平面図である。 図2のIII-III方向から見た第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子の断面図である。 ソースフォロアの形式で出力を取り出す場合の第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子の等価回路図である ドレイン領域側から電流信号を取り出す場合の第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子の等価回路図である 図3に示した第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子の一部として集積化されている絶縁ゲート型半導体素子の物理的構造に対比して、素子の内部容量を説明する大信号用等価回路図である。 第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子に超音波が入力した場合の振動電極と振動膜の撓み形状のプロファイルを説明する断面図である。 第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子に超音波が入力した場合の振動電極と振動膜の理想的な撓み形状を説明する断面図である。 図5Bに示すような理想的な撓み形状のプロファイルに近づけるための種々の容量型音響素子の改善対策と、それによる効果を従来技術の場合と対比してシミュレーションした結果を、複数の曲線でそれぞれ説明する図である。 図6Aに示すシミュレーションした結果から、現実には理想的な平行平板構造は実現できないことを鑑み、下部電極側を曲面とした場合の曲面同士のキャパシタ構造を示す断面図である。 第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子の構造を説明する断面図である。 図6Cに示した第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子の製造方法を説明する工程断面図である。 図7Aに続く工程を説明する第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子の製造方法を説明する工程断面図である。 図7Bに続く工程を説明する第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子の製造方法を説明する工程断面図である。 図7Cに続く工程を説明する第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子の製造方法を説明する工程断面図である。 図7Dに続く工程を説明する第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子の製造方法を説明する工程断面図である。 図7Eに続く工程を説明する第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子の製造方法を説明する工程断面図である。 図7Fに続く工程を説明する第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子の製造方法を説明する工程断面図である。 図7Gに続く工程を説明する第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子の製造方法を説明する工程断面図である。 図7Hに続く工程を説明する第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子の製造方法を説明する工程断面図である。 図7Iに続く工程を説明する第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子の製造方法を説明する工程断面図である。 図7Jに続く工程を説明する第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子の製造方法を説明する工程断面図である。 図7Kに続く工程を説明する第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子の製造方法を説明する工程断面図である。 図7Lに続く工程を説明する第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子の製造方法を説明する工程断面図である。 図7Mに続く工程を説明する第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子の製造方法を説明する工程断面図である。 図7Nに続く工程を説明する第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子の製造方法を説明する工程断面図である。 図7Oに続く工程を説明する第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子の製造方法を説明する工程断面図である。 図7Pに続く工程を説明する第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子の製造方法を説明する工程断面図である。 図7Qに続く工程を説明する第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子の製造方法を説明する工程断面図である。 第1実施形態の第1変形例に係る音響誘導型半導体素子の構造を説明する断面図である。 第1実施形態の第2変形例に係る音響素子集積回路の二次元レイアウトを説明する平面図である。 第1実施形態の第2変形例に係る音響素子集積回路の応用例として、ハイドロフォンの構造の概略を例示する模式図である。 送信素子と受信素子を分けて配列した第1実施形態の第3変形例に係る音響素子集積回路の二次元レイアウトを説明する平面図である。 第1実施形態の第3変形例に係る音響素子集積回路の受信素子が、ソースフォロアの形式で出力を取り出す場合の等価回路図である。 本発明の第2実施形態に係る音響誘導型半導体素子の平面図である。 図13のXIV-XIV方向から見た第2実施形態に係る音響誘導型半導体素子の断面図である。 図13のXV-XV方向から見た第2実施形態に係る音響誘導型半導体素子の断面図である。 本発明の第3実施形態に係る音響誘導型半導体素子の平面図である。 図16のXVII-XVII方向から見た第3実施形態に係る音響誘導型半導体素子の断面図である。 ドレイン領域側から電流信号を取り出す場合の第3実施形態に係る音響誘導型半導体素子の等価回路図である 図19A(a)は振動電極の上にエポキシ樹脂からなる保護膜が塗布されていない場合、図19A(b)は振動電極の上にエポキシ樹脂からなる保護膜が一様に全面に塗布されている場合について、下部電極が分割された構造と下部電極が一様な平板である場合について感度特性を示す図である。 図19B(a)は接地抵抗となる遅延抵抗の値を変えた場合の感度特性を示す図で、図19B(b)は、超音波から電気へのエネルギ変換効率の周波数依存性を示す図である。 電気機械音響類似による第3実施形態の係る音響誘導型半導体素子の等価回路である。 本発明の第3実施形態の第1変型例に係る音響誘導型半導体素子の平面図である。 図20B(a)は、第3実施形態の第1変型例に係る音響誘導型半導体素子の等価回路図、図20B(b)は、第3実施形態の第2変型例に係る音響誘導型半導体素子の等価回路図、図20B(c)は、第3実施形態の第1変型例に係る音響誘導型半導体素子の等価回路図である。 本発明の第3実施形態の第4変型例に係る音響誘導型半導体素子の平面図である。 第3実施形態の第5変型例に係る音響誘導型半導体素子の等価回路図である。 本発明の第4実施形態に係る音響誘導型半導体素子の断面図である。 第4実施形態の第1形例に係る音響誘導型半導体素子の平面図である。 図22AをXXIIB-XXIIB方向からみた第4実施形態の第1形例に係る音響誘導型半導体素子の断面図である。 第4実施形態の第2変形例に係る音響誘導型半導体素子の断面図である。 第4実施形態の第3変形例に係る音響誘導型半導体素子の断面図である。 第4実施形態の第4変形例に係る音響誘導型半導体素子の断面図である。 バネ定数kをh3で除した値(k/h3)を縦軸、Y/(1-σ2)の値を横軸として、さまざまな材料について平板の曲げ剛性をプロットした図である。 本発明のその他の実施形態に係る音響誘導型半導体素子の断面図である。 従来の容量型音響素子の振動膜の振動プロファイルを説明する模式図である。
以下において、図面を参照して、本発明の第1~第4実施形態を説明することにより、本発明を例示的に説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部材の大きさの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な厚み、寸法、大きさ等は以下の説明から理解できる技術的思想の趣旨を参酌してより多様に判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
本明細書の音響誘導型半導体素子の基本を構成する絶縁ゲート型半導体素子の「第1主電極領域」とは、電界効果トランジスタ(FET)や静電誘導トランジスタ(SIT)若しくはこれらに等価な新たなトランジスタ構造においてソース領域又はドレイン領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)若しくはIGBTに等価な新たな構造の半導体素子においてはエミッタ領域又はコレクタ領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。又、MIS制御静電誘導サイリスタ(SIサイリスタ)等の絶縁ゲート型サイリスタ若しくは絶縁ゲート型サイリスタに等価な新たな構造の半導体素子においては、アノード領域又はカソード領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。「第2主電極領域15a」とは、FETやSIT等においては上記第1主電極領域とはならないソース領域又はドレイン領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。IGBT等においては上記第1主電極領域とはならないエミッタ領域又はコレクタ領域のいずれか一方となる領域を意味する。MIS制御SIサイリスタ等においては上記第1主電極領域とはならないアノード領域又はカソード領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。
このように、「第1主電極領域」がソース領域であれば、「第2主電極領域15a」はドレイン領域を意味し、第1主電極領域と第2主電極領域15aの間を「主電流」が流れる。「第1主電極領域」がエミッタ領域であれば、「第2主電極領域15a」はコレクタ領域を意味する。「第1主電極領域」がアノード領域であれば、「第2主電極領域15a」はカソード領域を意味する。バイアス関係を交換すれば、MISFET等の場合、「第1主電極領域」の機能と「第2主電極領域15a」の機能を交換可能の場合がある。更に、本明細書において単に「主電極領域」と記載する場合は、技術的に適切な第1主電極領域又は第2主電極領域15aのいずれか一方を意味する包括的な表現である。
また、以下の説明における「上部」、「下部」、「上」、「下」等の語、更には「上」や「下」の語を用いた方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を90°回転して観察すれば上下は左右に変換して読まれ、180°回転して観察すれば上下は反転して読まれることは勿論である。また以下の説明では、第1導電型がp型、第2導電型がn型の場合について例示的に説明する。しかし、導電型を逆の関係に選択して、第1導電型をn型、第2導電型をp型としても構わない。また、「n」や「p」に付す「+」や「-」は、「+」及び「-」が付記されていない半導体領域に比して、それぞれ相対的に不純物密度が高い又は低い半導体領域であることを意味する。更に図23及び図24等に示したように、「p」に付した「++」は、固溶限濃度に近い、非常に高い不純物密度にp型不純物が添加された半導体領域であることを意味する。但し、同じ「+」と「-」とが付された半導体領域あるいは、「+」や「-」が付されていない半導体領域であっても、それぞれの半導体領域の不純物密度が厳密に同じであることを意味するものではない。
又、以下に示す第1~第4実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための方法及びその方法に用いる装置等を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等、方法の手順等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、第1~第4実施形態で記載された内容に限定されず、特許請求の範囲に記載された請求項の発明特定事項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る音響素子集積回路は、図1に示すように、素子アレイ部に、六角形の単位セルX(i-1),(j+2),…,X(i-1),(j+1),Xi,(j+1),X(i+1),(j+1),…,X(i-1),j,Xi,j,X(i+1),j,…,Xi,(j-1),X(i+1),(j-1),…等を、同一平面上(同一曲面上)において配列して二次元マトリクスを構成した平面レイアウトである。単独の単位セルXi,jに着目して包括的に表現すると、単位セルXi,jのそれぞれが、本明細書にて新たな動作原理を紹介する「音響誘導型半導体素子」に対応する。図3及び図6C等を参照して後述するように、第1実施形態に係る音響素子集積回路を構成する六角形の単位セルX(i-1),(j+2),…,X(i-1),(j+1),Xi,(j+1),X(i+1),(j+1),…,X(i-1),j,Xi,j,X(i+1),j,…,Xi,(j-1),X(i+1),(j-1),…のそれぞれは、半導体基板からなる平坦な主面を有する共通基体11の表面(主面)及び、この表面の上の構造として構成されている。
なお、「同一平面」とは、ガウス曲率及び平均曲率が共にゼロ(曲率半径無限大)の曲面を意味するが、より一般には、円筒面、球面、楕円面、放物面等の同一曲面であっても構わない。図2以降の第1実施形態に係る音響素子集積回路の説明では、単位セルXi,jに着目した説明を主に行う。又、図1では、単位セルXi,j等の平面パターンが六角形の場合を例示しているが、単位セルXi,j等の平面パターンは、六角形に限定されず、矩形や八角形等種々の平面パターンが採用可能である。
図3及び図6C等を参照して後述するように、第1実施形態に係る音響素子集積回路を構成する六角形の単位セルX(i-1),(j+2),…,X(i-1),(j+1),Xi,(j+1),X(i+1),(j+1),…,X(i-1),j,Xi,j,X(i+1),j,…,Xi,(j-1),X(i+1),(j-1),…のそれぞれは、共通基体11の上部を、素子分離絶縁膜13で互いに電気的に独立したチャネル形成領域14に分離し、このチャネル形成領域14を基礎として二次元配列されている。更に、チャネル形成領域14のそれぞれの上に、振動空洞28を一体構造として備えて容量型の音響素子と同様な音響誘導型半導体素子の筐体構造を構成している。チャネル形成領域14をp型の半導体領域とすると、チャネル形成領域14は通常の半導体集積回路のpウェルに対応する構造と機能を有する部材である。図3等の断面図に示すように第1導電型のチャネル形成領域14の表面には、第2導電型の第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aが配置され、絶縁ゲート型半導体素子が構成されている。
従来の容量型音響素子の技術的思想では、上部電極と下部電極の間の静電容量に誘導される電荷の変化を検出していた。しかし、図6A等を用いて後述するように、従来の上部電極と下部電極の間の静電容量に蓄積される電荷の変化を検出する容量型音響素子の手法には、検出感度の向上の限界がある。このため、本発明者の発明者らは従来の静電容量に誘導される電荷の変化を検出する容量型音響素子の手法から脱却し、絶縁ゲート型半導体素子を、音響誘導型半導体素子の内部構造として集積化した。即ち、絶縁ゲート型半導体素子を内蔵することにより、超音波入力による静電容量の変化を、ガウスの定理によって半導体の表面に誘導される電荷及び、この電荷に伴う電位の変化に着目したものである。即ち、半導体の表面に誘導される電荷により、半導体の表面ポテンシャルの高さを制御している。超音波入力による静電容量の変化が、電流の流れるチャネルの電位障壁の高さを制御し、これにより超音波入力を電流の変化として検出する新たな半導体素子の構造及び動作原理を、第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子及び音響素子集積回路として提案するものである。
図1の平面図では符号15a,15bが省略されているが、それぞれの六角形の内部に隠れ線で示した2つの長方形が、それぞれ絶縁ゲート型半導体素子を構成する第1及び第2主電極領域を示している。互いに対向する2つの長方形は、外側のドーナツ状の六角形(六角環)から内側の六角形の内部に食い込むように、六角形の単位セルX(i-1),(j+2),…,X(i-1),(j+1),Xi,(j+1),X(i+1),(j+1),…,X(i-1),j,Xi,j,X(i+1),j,…,Xi,(j-1),X(i+1),(j-1),…のそれぞれに配置されている。第1実施形態に係る音響素子集積回路においては、第1主電極領域15bと第2主電極領域15aの間を流れる電流によって、静電容量の変化を電流の変化として検出する。
二次元配列された絶縁ゲート型半導体素子のそれぞれに対し、第1主電極領域15b又は第2主電極領域15aから電流信号を取り出すため、各セルに垂直出力信号線R(i-1),Ri,R(i+1),…が接続されている。垂直出力信号線R(i-1),Ri,R(i+1),…が六角形の各セルの左側の辺又は右側の辺に設けられた第1コンタクトプラグに接続されている。例えば、第(i-1)列目を偶数列として、第(i-1)列目の垂直出力信号線R(i-1)が、第(i-1)列目の単位セルX(i-1),(j+1),X(i-1),j,X(i-1),(j-1),…の六角形の左側の辺に設けられた第1コンタクトプラグにそれぞれ接続される。同様に偶数列となる第(i+1)列目の垂直出力信号線Ri+1は、第(i+1)列目の単位セルX(i+1),(j+1),X(i+1),j,X(i+1),(j-1),…の六角形の左側の辺に設けられた第1コンタクトプラグにそれぞれ接続される。
偶数列の配列に対し、奇数列となる第i列目の垂直出力信号線Riは、第i列目の単位セルXi,(j+1),Xi,j,Xi,(j-1),……の六角形の右側の辺に設けられた第1コンタクトプラグにそれぞれ接続される。セルの図示を省略しているが、第(i-2)列目の垂直出力信号線Ri-2も、六角形の右側の辺に設けられたの第1コンタクトプラグにそれぞれ接続されている。図1では音響誘導型半導体素子の一部の構造として組み込まれた絶縁ゲート型半導体素子の第1主電極領域(ソース領域)15bからソース抵抗RSを用いたソースフォロアの形式で電流信号を取り出す場合を例示しているが、これに限定されるものではない。例えば、図4Bに示すようにソース領域を接地し(第1電位とし)、第2主電極領域(ドレイン領域)15a側から電流信号を取り出す構成でも構わない。
図4Aは、ソースフォロアの形式の場合の等価回路、図4Bはドレイン領域側から電流信号を取り出す場合の等価回路図である。図1では、垂直出力信号線Riの出力が増幅器81に入力され、増幅器81の出力がAD変換器82に入力され、AD変換器82の出力がタイミング調整回路83に入力され、タイミング調整回路83の出力が画像処理回路84に入力される場合が例示されている。図示を省略しているが、他の垂直出力信号線R(i-1),R(i+1),…についても、同様な回路が接続される。
各セルのチャネル形成領域14にそれぞれ設けられた絶縁ゲート型半導体素子を駆動するために、絶縁ゲート型半導体素子の第2主電極領域15aに電源配線VDDが接続される。電源配線VDDは、図1に示すように、六角形の各セルの右側の辺又は左側の辺に設けられた第2コンタクトプラグに接続されている。例えば、偶数列の第(i-1)列目の電源配線VDDが、第(i-1)列目の単位セルX(i-1),(j+1),X(i-1),j,X(i-1),(j-1),…の六角形の右側の辺に設けられた第2コンタクトプラグにそれぞれ接続される。この偶数列の第(i-1)列目の電源配線VDDは、奇数列の第i列目の電源配線VDDと共用の電源配線となっており、共用の電源配線が、奇数列の第i列目の単位セルXi,(j+1),Xi,j,Xi,(j-1),……の六角形の左側の辺に設けられたの第2コンタクトプラグにそれぞれ接続されている。
同様に偶数列の第(i+1)列目の電源配線VDDは、第(i+1)列目の単位セルX(i+1),(j+1),X(i+1),j,X(i+1),(j-1),…の六角形の右側の辺に設けられた第2コンタクトプラグにそれぞれ接続される。図示を省略しているが、偶数列の第(i+1)列目の電源配線VDDは、奇数列の第(i+2)列目の電源配線VDDと共用の電源配線となっており、共用の電源配線が、奇数列の第(i+2)列目のセルの六角形の左側の辺に設けられたの第2コンタクトプラグにもそれぞれ接続されている。なお、第1実施形態に係る音響素子集積回路を構成する各セルは、送受信可能な双方向性の音響素子のため、受信時には電源配線VDDから動作電圧VDDが供給されるが、送信時には電源配線VDDは第1電位に固定(接地)される。
なお六角形のセルの形状に依存して図1では、第i列目の垂直出力信号線Riや第i列目の電源配線VDD等が、左下がりの斜め方向に走行する配線のレイアウトが示されているが例示に過ぎない。例えば、例示した垂直出力信号線Riや電源配線VDD等は、走行方向にそれぞれ交差する各行のセル毎に、その走行方向を順次反転して、ジグザクに蛇行するトポロジを採用してもよい。或いは、六角形の辺に沿って斜行と垂直行を繰り返してジグザクに蛇行するトポロジ等、図1とは異なる種々の配線が可能なことは勿論である。ジグザクに走行する場合、蛇行の折曲部の包絡線となる全体の方向としては、垂直方向に走行する配線のレイアウト等が実現できる。
双方向性の音響素子として、送信モードの動作を可能とするために、高周波信号線VRF(j+2),VRF(j+1),VRFj,VRF(j-1) ,…が、六角形の各セルの左下の斜辺に設けられた第3コンタクトプラグにそれぞれ接続される。即ち、第(j+2)行目の高周波信号線VRF(j+2)は第(j+2)行目の単位セルX(i-1),(j+2),…の第3コンタクトプラグに接続され、第(j+1)行目の高周波信号線VRF(j+1)は第(j+1)行目の単位セルX(i-1),(j+1),Xi,(j+1),X(i+1),(j+1),…の第3コンタクトプラグにそれぞれ接続される。又、第j行目の高周波信号線VRFjは、第j行目の単位セルX(i-1),j,Xi,j,X(i+1),j,…の第3コンタクトプラグにそれぞれ接続される。更に、第(j-1)行目の高周波信号線VRF(j-1)は第(j-1)行目の単位セルXi,(j-1),X(i+1),(j-1),…の第3コンタクトプラグにそれぞれ接続される。
一方、双方向性の音響素子として、受信モードの動作を可能とするために、各セルの振動電極と固定電位電極の間に第2電位の直流バイアスVbiasを供給する直流バイアス供給線Vbiasが、六角形の各セルの右上の斜辺に設けられた第4コンタクトプラグにそれぞれ接続される。即ち、第(j+2)行目の直流バイアス供給線Vbiasは第(j+2)行目の単位セルX(i-1),(j+2),…の第4コンタクトプラグに接続され、第(j+1)行目の直流バイアス供給線Vbiasは第(j+1)行目の単位セルX(i-1),(j+1),Xi,(j+1),X(i+1),(j+1),…の第4コンタクトプラグにそれぞれ接続される。又、第j行目の直流バイアス供給線Vbiasは、第j行目の単位セルX(i-1),j,Xi,j,X(i+1),j,…の第4コンタクトプラグにそれぞれ接続される。更に、第(j-1)行目の直流バイアス供給線Vbiasは第(j-1)行目の単位セルXi,(j-1),X(i+1),(j-1),…の第4コンタクトプラグにそれぞれ接続されている。
図2は、図1に示した第1実施形態に係る音響素子集積回路の二次元配列の内の第i列、第j行目の単位セルXi,jに着目し、単位セルXi,jの平面パターンを拡大して示す平面図である。第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子である単位セルXi,jは、穴あき六角形(六角環)の固定電位電極17oと、固定電位電極17oの中央に設けられた六角形の開口部の内部に、固定電位電極17oとは離間して同心状に配置された六角形の浮遊電極17cを備えている。固定電位電極17oと浮遊電極17cによって、容量型音響素子である単位セルXi,jの下部電極(17c,17o)を構成しているが、浮遊電極17cは電気的に浮遊状態であり、固定電位電極17oは第1電位(接地電位)に接続されている。なお、図1及び図2では固定電位電極17oと浮遊電極17cとが同心六角形の形状に分割された構造を例示しているが、下部電極(17c,17o)を、固定電位電極17oと浮遊電極17cに分割するトポロジは、図1及び図2に例示したパターンに限定されるものではない。
例えば、六角形の中心を通る対角線で六角形を2分割し、互いに対向する一方を固定電位電極17oとし、他方を浮遊電極17cとして機能させるようにしても構わない。この場合、浮遊電極17cの固定電位電極17oに対向する側の辺の中心近傍に凹部(切り込みパターン)を設け、この凹部に対し、固定電位電極17oの対向辺の中心近傍に設けられた突部が挿入されるようなトポロジも採用可能である。更に3分割以上の多数の領域に下部電極を分割して、分割された下部電極のそれぞれを固定電位電極17oと浮遊電極17cのいずれかとして機能させるように分類し、同一機能の領域を互いに電気的に接続してもよい。多数の領域に下部電極を分割した場合にも、固定電位電極17oとして機能させる領域はそれぞれ第1電位(接地電位)に接続され、浮遊電極17cとして機能させる領域は、電気的に浮遊状態に設定される。
ただし、第3実施形態で図19A(a)及び(b)を用いて後述するように、浮遊電極17cと固定電位電極17oが同心状に配置されるトポロジの方が、感度特性において好ましい。図19A(a)及び(b)のシミュレーションの結果を考慮すれば、分割パターンとする場合も、対角線で六角形を互いに対向する2つの固定電位電極17oとするトポロジが好ましい。そして、互いに対向する固定電位電極17oのそれぞれの対向辺の中心近傍に凹部を設け、対向する凹部によって開口部のパターンを形成し、この開口部のパターンの内部に、浮遊電極17cを挿入されるような同心状のトポロジにすればよい。
第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子としての単位セルXi,jにおいては、分割電極のトポロジを有する下部電極(17c,17o)が、図3に示すように振動空洞28を介して振動電極に対向している。下部電極(17c,17o)を構成する固定電位電極17oと振動電極との間の電界が、単位セルXi,jの送信時及び受信時の主なる電圧を維持する。一方、図2に隠れ線の長方形で示すように、絶縁ゲート型半導体素子の第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aが、互いに短辺を対向させ、且つ離間して設けられている。下部電極(17c,17o)を構成するフローティング状態の浮遊電極17cは、第1主電極領域15bと第2主電極領域15aの間のチャネル形成領域14の表面に形成されるチャネル領域の電位を、浮遊電極17cに誘起された電荷による電位で静電的に制御するように機能する。
六角環をなす固定電位電極17oの外周には、平面パターンとして2つの矩形のリセス(切り込み)が設けられ、2つのリセスのそれぞれに第1及び第2コンタクトプラグが配置されている。即ち、固定電位電極17oの外周を構成する六角形の平面パターンの右側の縦辺に設けられたリセスの内部に第1コンタクトプラグ24bが、左側の縦辺に設けられたリセスの内部に第2コンタクトプラグ24aが配置されている。更に、固定電位電極17oの外周を構成する六角形の左下の斜辺に第3コンタクトプラグが、右上の斜辺に第4コンタクトプラグが配置されている。
図2に示すように、第1コンタクトプラグ24bは、単位セルXi,jの絶縁ゲート型半導体素子を構成する第1主電極領域15bから電流信号を取り出すため、第1主電極領域15bに接続されている。図1と同様に、第1主電極領域15b(ソース領域)15bからソースフォロアの形式で電流信号を取り出す場合を例示しているが、ソース領域を接地し第2主電極領域15a(ドレイン領域)15a側から電流信号を取り出す構成でも構わない。第2コンタクトプラグ24aは、電源配線VDDから電源電圧VDDを、単位セルXi,jの絶縁ゲート型半導体素子を構成する第2主電極領域15aに供給するために、第2主電極領域15aに接続されている。左下の斜辺に配置された第3コンタクトプラグは、双方向性の音響素子が送信モードの動作をする場合において、高周波信号線VRFjを振動電極に供給する。右上の斜辺に配置された第4コンタクトプラグは、双方向性の音響素子が受信モードの動作をする場合において、直流バイアス供給線Vbiasから振動電極に直流バイアスVbiasを供給し、振動電極(上部電極)と下部電極の間に所望の電位を印加する。
図3に示すように、第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子は、第1導電型(p型)の半導体領域からなり、第1電位(=接地電位GND)に設定されたチャネル形成領域14と、このチャネル形成領域14の表面に互いに対向し且つ離間して設けられた第2導電型(n型)の第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aを備えている。更に、第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子は、第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aの上、及び第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aに挟まれたチャネル形成領域14の上に設けられたゲート絶縁膜(12,16)と、第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aに挟まれたチャネル形成領域14の上方において、ゲート絶縁膜(12,16)の上に、電気的な浮遊状態として設けられた導電体層からなる浮遊電極17cを備えて絶縁ゲート型半導体素子を構成している。浮遊電極17cに用いる導電体層には、不純物添加多結晶シリコン(ドープド・ポリシリコン:DOPOS)膜等の低比抵抗の導電体材料が採用可能である。ゲート絶縁膜(12,16)は、下層側の第1ゲート絶縁膜12と上層側の第2ゲート絶縁膜16の2層構造を例示しているが、図3に示す構造に限定されるものではない。
そして、図3に示すように、ゲート絶縁膜(12,16)の上には、浮遊電極17cと隣接し、且つ浮遊電極17cと離間して配置され、第1電位GNDに設定された導電体層からなる固定電位電極17oが更に設けられている。固定電位電極17oには浮遊電極17cと同一の導電体材料、例えば低比抵抗のDOPOS膜等が採用できる。浮遊電極17cと固定電位電極17oの分割構造の下部電極(17c,17o)を構成している。即ち、浮遊電極17cと固定電位電極17oからなる下部電極(17c,17o)に対し、振動空洞を介して対向した絶縁膜からなる振動膜23と、この振動膜23の上面に接し、且つ浮遊電極17c及び固定電位電極17oに振動空洞を介して対向し、第2電位Vbiasに設定された振動電極25cを備えて音響誘導型半導体素子を構成している。図3に示すように、下部電極(17c,17o)と振動電極25cの間に、振動空洞を密閉空間として設けるように振動空洞を囲む空洞形成絶縁膜20が設けられている。第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子においては、超音波Φによる振動電極25cの変位を、第1主電極領域15bと第2主電極領域15aの間を流れる電流の変化として検知することができる。図3では振動電極25cに重ねて表示した白抜きの両矢印が振動電極25cの変位を意味している。
図3に示すように、振動膜23の上面には振動電極25cの他に第1表面配線層25b及び第2表面配線層25が設けられている。第1表面配線層25bと第1主電領域15bの間には、振動膜23、空洞形成絶縁膜20、第2ゲート絶縁膜16及び第1ゲート絶縁膜12を貫通する第1コンタクトプラグ24bが設けられている。同様に第2表面配線層25aと第2主電領域15aの間には、振動膜23、空洞形成絶縁膜20、第2ゲート絶縁膜16及び第1ゲート絶縁膜12を貫通する第2コンタクトプラグ24aが設けられている。即ち、第1コンタクトプラグ24bの上端は第1表面配線層25bに金属学的に接続され、第1コンタクトプラグ24bの下端は第1主電領域15bと電気的に接続されるので、第1コンタクトプラグ24bによって第1表面配線層25bと第1主電領域15bが電気的に接続される。
同様に、第2コンタクトプラグ24aの上端は第2表面配線層25aに金属学的に接続され、第2コンタクトプラグ24aの下端は第2主電領域15bと電気的に接続されるので、第2コンタクトプラグ24aによって第2表面配線層25aと第2主電領域15aが電気的に接続されている。第1表面配線層25bは図2に示した第i列目の垂直出力信号線Riに対応する。一方、第2表面配線層25aは図2に示した第j行目の電源配線VDDに対応する。振動膜23の上には、振動電極25c、第1表面配線層25b及び第2表面配線層25を覆うようにシリコン酸化膜等の振動電極保護膜(第1振動電極保護膜)26が被覆されている。更に、第1振動電極保護膜26の上にはポリイミド膜等の第2振動電極保護膜34が積層されている。第2振動電極保護膜34は、振動空洞28を形成する工程の際に、犠牲層をウェットエッチングで選択的に溶解して除去するための除去液を導入する液導入孔27を塞いでいる。液導入孔27は、第1振動電極保護膜26及び振動膜23を貫通して振動空洞28に到達している。液導入孔27を塞ぐことにより、振動空洞28の内部は不活性ガスの減圧雰囲気に維持されている。
図3では振動空洞28の中央付近における振動電極25cと浮遊状態の浮遊電極17cの間で構成する容量をC1として示している。容量C1の容量値は、振動電極25cの変位に依存して変化するので、図4A及び図4Bに示すように可変容量である。又、容量C1の周辺において容量C1を図2に示すように六角環状に囲む振動電極25cと接地電位(第1電位)GNDの固定電位電極17oの間で構成する電極間容量をC2として表現している。容量C2の容量値も、振動電極25cの変位に依存して変化するので、図4A及び図4Bに示すように可変容量である。二つの可変容量を区別するため、以後「第1可変容量C1」及び「第2可変容量C2」と呼ぶこととする。第2可変容量C2は、従来の容量型音響素子における上部電極と下部電極との間に構成される容量と等価の役割を有する容量で、第1可変容量C1は第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子に固有の絶縁ゲート型半導体素子を駆動するに必要な電荷を誘導する容量である。更に、浮遊電極17cと第1主電極領域15bの間にはゲート・ソース間容量Cgsが、浮遊電極17cと第2主電極領域15aの間にはゲート・ドレイン間容量Cgdが、浮遊電極17cとチャネル形成領域14の間には絶縁膜容量COXが示されている。
図3に示した第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子を構成している絶縁ゲート型半導体素子、浮遊電極17c及び振動電極25cの周りの電気的状態を、等価的な電気回路で表現すると、図4A及び図4Bに示すような等価回路で表現できる。図4A及び図4Bにおいて紙面の上方に示した水平線は、図1及び図2に示した第2電位の電圧を供給する直流バイアス供給線Vbiasに対応する。図4Aの右側には、直流バイアス供給線Vbiasに一端が接続された第1可変容量C1とnチャネルMOSFET(以下において「nMOSFET」という。)との直列回路が示されているが、nMOSFETは例示に過ぎず、[発明を実施するための形態]の項の冒頭部で説明した種々の絶縁ゲート型半導体素子が採用可能である。[発明を実施するための形態]の項の冒頭部で説明した絶縁ゲート型半導体素子以外にも高電子移動度トランジスタ(HEMT)等更に他の絶縁ゲート型半導体素子を用いてもよい。図4Aは、ソースフォロアの形式で出力を取り出す場合の等価回路図であるので、nMOSFETのソース端子はソース抵抗RSを介して第1電位(接地電位)に接続され、ソース端子からの電流出力が増幅器81に導かれている。
図4Bの右側には、図4Aと同様に第2電位の直流バイアス供給線Vbiasに一端が接続された第1可変容量C1とnMOSFETとの直列回路が示されているが、nMOSFETは例示に過ぎない。。図4Bは、ドレイン領域側から電流信号を取り出す場合の等価回路図であるので、nMOSFETのドレイン端子はドレイン抵抗RDを介して電源VDDに接続され、ドレイン端子からの電流出力が増幅器81に導かれている。図4A及び図4Bのいずれも、第2電位の直流バイアス供給線Vbiasと第1電位(接地電位)の間に接続された第2可変容量C2と、この第2可変容量C2に並列接続された第1可変容量C1及とnMOSFETとの直列回路で構成されている。
図4Cに説明するように、nMOSFETである絶縁ゲート型半導体素子では、浮遊電極17cの周りにはゲート・ソース間容量Cgs、ゲート・ドレイン間容量Cgd、絶縁膜容量COXが分布している。大雑把な考え方として、浮遊電極17cの周りの容量C3=COXであるとして近似すると、図4A及び図4Bの等価回路では、容量C3を用いて表現できる。第1可変容量C1及び第2可変容量C2に対し、絶縁膜容量COXで近似できる容量C3の値は、振動電極25cが変位しても変化しないので固定容量である。よって以後容量C3を「固定容量C3」と呼ぶこととする。簡単化のために、固定容量C3は図4Cに示すゲート基板間容量であるとする。
先ず、図4A及び図4Bの等価回路に示す第1可変容量C1と固定容量C3の直列回路おいて、固定容量C3の両端にどのくらいの電圧が印加されるか検討してみる。第1可変容量C1に誘導される電荷をq1、第1可変容量C1の両端の電圧をV1、固定容量C3に誘導される電荷をq3、固定容量C3の両端の電圧をV3とすると、直列回路ではq1=q3=qとなるので、第1可変容量C1と固定容量C3の直列回路の両端の電圧Vbiasは、
Figure 2023062603000002

となる。
図3において、浮遊電極17cの面積をS1、第1可変容量C1を構成する振動電極25cと浮遊電極17cの間の電極間距離をd、固定容量C3を構成するゲート絶縁膜(12,16)の厚さtOX(=TOX1+TOX2=)とする。又、真空の誘電率ε0とし、シリコン酸化膜の比誘電率εrとすると、

1=ε01/d ………(2)
3=ε0εr1/tOX ………(3)

であるので、第1可変容量C1と固定容量C3の直列回路で容量分割により、固定容量C3の両端に発生する電圧V3は、
Figure 2023062603000003

となる。
例えばd=10nm、tOX=10nm、シリコン酸化膜の比誘電率εr=4.0と仮定すると、式(4)から固定容量C3の両端の電圧をV3には、直流バイアス電圧Vbiasの1/5が印加されことが分かる。又、振動電極25cと浮遊電極17cの間の電極間距離d=10/4nm=2.5nmに設定すれば、式(4)から固定容量C3の両端の電圧をV3には、直流バイアス電圧Vbiasの1/2が印加されることが分かる。よって、直流バイアス電圧Vbiasを所定の値に選択し、式(4)のd(εr/tOX)の値を調整するように第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子の構造を選べば、nMOSFETが線形領域で動作するようにnMOSFETのゲート電圧が選択できる。
問題は、超音波が印加されて振動電極25cが微少に変位したとき、nMOSFETのゲート電圧が、振動電極25cの微少な変位Δdに対応したゲート電圧の変化ΔV3が得られるかである。式(2)から振動電極25cと浮遊電極17cの間の電極間距離をdがΔdだけ変位したとき、第1可変容量C1の容量値の変化ΔC1は、

1+ΔC1=ε01/(d-Δd) ………(5)

と表現できる。一方、式(4)は、
Figure 2023062603000004
と書き換えることができる。式(6)の多変数関数を∂dで偏微分すると、
Figure 2023062603000005
となることが分かる。式(7)は、変数d及び変数tOX等を有する多変数関数である。
変数dに着目したとき、振動電極25cと浮遊電極17cの間の電極間距離dがΔdだけ変位したときの、nMOSFETのゲート電圧の変化ΔV3は、以下の式(8)の形式で表現できることが分かる。
Figure 2023062603000006
式(8)から、電極間距離dがΔdだけ変位したときのゲート電圧の変化ΔV3を大きくするためには、ゲート絶縁膜の比誘電率εrを大きくし、ゲート絶縁膜の膜厚tOXを薄く且つ電極間距離dを薄くすること、更に第2電位である直流バイアス電圧Vbiasを大きくすることが望ましいことが分かる。従来型の容量型音響素子は示量変数である電荷の変化を検出していた。しかし、示量変数である電荷は素子微細化により1素子あたりの値が小さくなるので,高精細撮像を実現するために各素子のサイズを微細化すると、受信回路実装上の困難さがつきまとう。
一方、図3に例示した第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子によれば、浮遊電極17cに式(8)に示すように生じる示強変数である電圧の変化を検出しているので、素子を微細化しても値が小さくならない。式(8)は多変数関数であるので、εr/tOXの値を変数として着目すると、式(8)の絶対値はεr/tOX=1/dのとき最大値を有する上に凸の関数である。即ちゲート絶縁膜の膜厚tOXが、電極間距離dを比誘電率(εr)倍した値となるとき、式(8)の絶対値を示す関数値は最大になるので、ゲート絶縁膜の膜厚tOXの膜厚も電極間距離dに合わせて薄くするのがよい。しかし、ゲート絶縁膜の膜厚tOXや電極間距離dを薄くすることは製造技術上や物性上の限界がある。式(8)を考慮すると、Δdの変化に対するゲート電圧の変化ΔV3を大きくするためには、直流バイアス電圧Vbiasを大きくすることが有効であることが分かる。
既に、式(4)を用いて、第2電位である直流バイアス電圧Vbiasの選択によりnMOSFETを、線形領域で動作するようにゲート電圧の動作ポイントが選択できることを説明した。式(8)の要請から直流バイアス電圧Vbiasを大きくしすぎると、動作ポイントが線形領域から外れてしまう。三極管型のドレイン電圧―ドレイン電流特性を示すMOSSITやMISSIT等の絶縁ゲート型SITは、すべての動作領域が線形領域であるので、第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子に用いる絶縁ゲート型半導体素子として好ましいことがわかる。
MOSFETの相互コンダクタンスgを用いると、ドレイン電流Idsの変化ΔIdsは、
Figure 2023062603000007
と表現できる。即ち、第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子によれば、各素子で式(8)に示されるように受信される電圧の変化ΔV3を、各素子に内蔵された絶縁ゲート型半導体素子のゲート電圧の変化として用いることにより、絶縁ゲート型半導体素子の増幅機能を利用して、大きな電流変化として検出できる。したがって、検出感度の高い音響誘導型半導体素子を微細な単位セルとして配列することにより、高精細撮像が実現できる。
nMOSFET等の絶縁ゲート型半導体素子を、第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子の要素として組み込むことにより、浮遊電極17cに容量分割で生成される電圧で絶縁ゲート型半導体素子を駆動し、電流変化ΔIdsとして振動電極25cの変位を検出できることが分かる。式(7)で示されるnMOSFETのゲート電圧の変化ΔV3の値は、振動電極25cと浮遊電極17cの間の電極間距離dが増大すると暫減する関数であるので、電極間距離dは小さい方が好ましい。一方、既に説明したとおり、ゲート絶縁膜の厚さtOXを変数として着目して検討すると、式(7)の絶対値を示す関数は上に凸の曲線形状を示し、極大値を有する。
したがって、厚さtOXを変数としたときのゲート電圧の変化ΔV3の絶対値を示す多変数関数の曲線形状を考慮すると、ゲート絶縁膜の厚さtOXには、電極間距離dに依存した最適値が存在する。電極間距離dを小さくして、最適値としてのゲート絶縁膜の厚さtOXが小さくなると、ゲート絶縁膜の耐圧が小さくなる。そこで、ゲート絶縁膜の厚さtOXの電極間距離dに依存した最適値の存在について説明する。このため、ゲート絶縁膜の比誘電率εrで規格化したゲート絶縁膜の厚さtOXの逆数(εr/tOX)=xとすると、式(7)の多変数関数は、
Figure 2023062603000008
と書き換えることができる。
式(10)でf(x)=x、g(x)=(1+dx)である。f(x)のxによる微分の導関数をfx(x)、g(x)のxによる微分の導関数をgx(x)で表すと、

x(x)=1 ………(11)
x(x)=2d+2d2x=2d(1+dx) ………(12)

となる。したがって、

x(x)g(x)-f(x)gx(x)=(1+dx)-2xd(1+dx)
=1―d ………(13)

となる。
式(13)を用いると、式(7)の多変数関数を、変数xで偏微分した結果は、
Figure 2023062603000009

となることが分かる。即ち式(7)及び式(10)で示されるゲート電圧の変化ΔV3の絶対値を示す多変数関数は、変数xに着目した場合、d=1で最大値を有することが分かる。
式(14)の値をゼロにするd=1とは、dx=1と等価である。よって、式(7)及び式(10)で示されるゲート電圧の変化ΔV3の絶対値を示す多変数関数は、

d/ε0=tOX/ε0εr ………(15)

のとき最大値になることを意味する。即ち、それぞれの誘電率で規格化した第1可変容量C1の電極間距離と固定容量C3の電極間距離が互いに等しいとき、ゲート電圧の変化ΔV3の絶対値が最大値になる。このことは、式(2)及び式(3)から分かるように第1可変容量C1の値と固定容量C3の値が等しいとき、式(7)で示されるnMOSFETのゲート電圧の変化ΔV3の絶対値を示す関数が、最大値になることを意味する。
図4Cは、図3に示したp型チャネル形成領域14の表面にn型のソース領域(第1主電極領域)15bとn型のドレイン領域(第2主電極領域)15aをチャネル形成領域14の表面を挟んで対向させた構造を、一般的なnMOSFETに対比した大信号用等価回路を示す。図3に示した構造に対比させ、図4Cにおいても、ソース領域15bとドレイン領域15aのチャネル領域の上には、厚さTOX2の第1ゲート絶縁膜12と厚さTOX1の第2ゲート絶縁膜16からなる二層のゲート絶縁膜(12,16)を介してゲート電極となる浮遊電極17cが設けられた構造としている。ソース領域15bにはソース電極Sが、ドレイン領域15aの上にはドレイン電極Dがそれぞれ接続される。
一般的なnMOSFETと同様に、ゲート電極となる浮遊電極17cと第1主電極領域15bの間には図4Cに示すようにゲート・ソース間容量Cgsが、浮遊電極17cと第2主電極領域15aの間にはゲート・ドレイン間容量Cgdが、浮遊電極17cとチャネル形成領域14の間にはゲート・基板間容量COXが存在する。更に、第1主電極領域15bとチャネル形成領域14の間にはソース・基板間容量CBsが、第2主電極領域15aとチャネル形成領域14の間にはドレイン・基板間容量CBdが存在する。
図5Aは、第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子に超音波Φが入力した場合の振動電極25cと振動膜23の撓み形状のプロファイルを示す。既に図28を用いて説明した通り、音響誘導型半導体素子の構造においては、振動膜23の撓みは一様ではないので、振動空洞28の中心の近傍の範囲でしか振動電極25cと浮遊電極17cが近接しない。このため、図5Aに示すように、浮遊電極17cの周辺の位置における振動電極25cと固定電位電極17oの電極間距離は、振動空洞28の中央付近における振動電極25cと浮遊電極17cの電極間距離よりも大きい。
図5Aに示す構造では、振動空洞28の中央付近における振動電極25cと浮遊状態の浮遊電極17cの間で構成する容量をC1として示している。そして第1可変容量C1の周辺において第1可変容量C1を、図2に示すように六角環状に囲む、第2電位の振動電極25cと接地電位(第1電位)GNDの固定電位電極17oの間で構成する電極間容量がC2として示されている。超音波Φが入力している状態において、振動膜23及び振動電極25cの撓みは一様ではなく下に凸となる形状であるので、第1可変容量C1の電極間距離は、第2可変容量C2の電極間距離よりも狭い。図3で説明したとおり、第2可変容量C2は、従来の容量型音響素子における上部電極と下部電極との間に構成される容量と等価の役割を有する容量である。これに対し、第1可変容量C1は第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子に固有の絶縁ゲート型半導体素子を駆動するに必要な電荷を誘導する容量である。図5Aに示すような電極間距離の関係になる場合は、超音波Φが入力している際の第1可変容量C1と第2可変容量C2の大きさの比は、浮遊電極17cと固定電位電極17oの面積比だけでは決められない。
図5Aに示す現実的な音響誘導型半導体素子の構造に対し、図5Bは、第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子に超音波が入力した場合の振動電極25cと振動膜23の理想的な撓み形状を表現している。図5Bにおいては、振動膜23が平坦に変位するため、浮遊電極17cの周辺の位置における振動電極25cの一部と固定電位電極17oの電極間距離と、振動空洞28の中央付近における振動電極25cと浮遊電極17cの電極間距離は等しくなっている。図5Bにおいては、振動空洞28の両端に、比誘電率が高いシリコン窒化膜からなる電界強化層19が挿入されている。更に、剛性の強いシリコン窒化膜からなる剛性強化蓋部31cが振動電極保護膜26の上に配置された構造である。しかし、以下の図6Aにシミュレーション結果を示すように、図5Bに例示的に採用した電界強化層19や剛性強化蓋部31c等の手法によっては、理想的な平坦な平行平板型容量の形状は得られないことが分かる。
図6Aは各種構造の容量型音響素子の振動膜の変形(撓み)の形状をシミュレーションしたプロファイルを示す。シミュレーションにおいては、図6Aの横軸の中央を振動膜が変形する空間である振動空洞の中心に対応させている。即ち、横軸の中心(=振動空洞の中心)をゼロとして、±方向に振動空洞内における空間的な位置座標の変化を2μm単位の目盛りでシミュレーション結果を示している。図6Aの縦軸は振動膜の変位量を、縦軸の上端に決めたゼロ(無変位)から下に向かい、最大変位の-1の位置までの相対値を示している。このような条件で、横軸に示す振動空洞の中心から左右に10μm広がった領域において振動膜の撓み形状がどのようなプロファイルになるか示している。
図6Aの破線は従来の振動膜の撓み形状をシミュレーションした結果であり、既に図28を用いて説明した通り、振動空洞の中心の左右に0.7μm程度の範囲でしか上部電極と下部電極が近接しないことを示している。図28は、図6Aの破線で示した撓み形状のシミュレーション・プロファイルと同一の曲率で、振動電極保護膜26と振動膜23の間に挟まれた上部電極25Bが下に凸となるプロファイルで、平坦な下部電極17B及びその上の空洞底部絶縁膜18の上面に向かって、振動空洞28内で撓んでいることを示している。図28の下部電極17B下には第2ゲート絶縁膜16が示されている。
図6Aの一点鎖線は、第1改善策による振動膜の撓み形状のシミュレーション・プロファイルを示している。第1改善策においては、図3に示した振動空洞28を密閉空間として囲む空洞形成絶縁膜20に、シリコン酸化膜の比誘電率εr=3.9~4.5よりも比誘電率が高いシリコン窒化膜(εr=7.0~7.8)を、図6Cに示すような電界強化層19として挿入している。即ち、図6Aの一点鎖線は、第1改善策により振動空洞28の側壁近傍の電界強度を高めた構造(周辺部電界強化構造)の場合の、振動膜の撓み形状のシミュレーション・プロファイルを示している。後述する図6Cに示す構造は、図6Aに示すシミュレーション結果を踏まえて、第1改善策による電界強化層19が空洞側壁上部絶縁膜21oと空洞底部絶縁膜18の間に挟まれた構造を採用したものである。図6Aの上側の横軸の両側に示した両矢印は、振動空洞の両側において、振動空洞の端から3.125μmの範囲に周辺部電界強化構造を採用したことを示している。破線で示す従来構造のプロファイルに比し、第1改善策を採用することにより、下に凸となる曲線の曲率が、若干小さくなった傾向が見られる。
図6Aの細い実線は、第2改善策による振動膜の撓み形状のシミュレーション・プロファイルを示している。第2改善策のシミュレーションでは、剛性の強い高剛性絶縁膜としてシリコン窒化膜を選択し、このシリコン窒化膜で、図6Cに示すように振動電極保護膜26の上に剛性強化蓋部31cを構成し、更に振動電極25cの直下の振動膜23にもシリコン窒化膜を用いた剛性強化構造について検討している。シリコン酸化膜のヤング率(縦弾性係数)Y=66~68GPa程度に対し、シリコン窒化膜のヤング率Y=210~310GPa程度である。図6Aの上側の横軸の中央に示す両矢印は、振動空洞の中心から±5μmの範囲に幅10μmの剛性強化蓋部31cを配置したことを示している。なお、細い実線で示す第2改善策のプロファイルにおいては、周辺部電界強化構造は採用していない。破線で示した従来構造のプロファイル及び一点鎖線で示した周辺部電界強化構造に比し、第2改善策の採用により下に凸となる曲線の曲率が、更に小さくなったことが認められる。特に図6Aの上側の横軸の中央に示す両矢印で示した剛性強化蓋部31cの配置位置の両端において、下に凸となる曲線の曲率が変化する変曲点が存在することが分かる。
「断面2次モーメントI」は、断面を無数の微小断面積dAに分割し、その各々について、ある回転軸からの距離の2乗y2を掛けてそれらを全て足し合わせて(I=Σ(y2dA)計算され、長さの4乗の次元を持つ。「ある回転軸」とは、棒が曲がるときその断面はわずかに回転するが、その時の中心軸を意味する。この断面2次モーメントは曲げに関して、幾何学的意味での変形しにくさを表していることになる。周知のように、幅b、厚さhの直方体の断面形状を有する材料の断面2次モーメントは

I=bh3/12 ………(16)

と厚さhの3乗に反比例する形式で表される。一方、ヤング率Yは力学的な意味での変形のしにくさを表している。
梁の場合の撓み(曲げ)は、中立面半径ρを使って計算することにより求められる。中立面半径が大きいと撓みは小さくなるので、YIが大きいほど撓みにくい梁であることを意味する。そのためYIは梁の曲げ剛性Kとも呼ばれる。

K=YI=Ybh3/12 ………(17)

となる。平板の変形は撓み(曲げ)、伸び(圧縮)及びせん断(ねじり)に分類される。平板の場合の曲げ剛性Kも、ポアソン比σを用いて、

K=YI=Yh3/12(1-σ2) ………(18)

と表されるので、曲げ荷重に対する剛性Kは、ヤング率Yと板厚の3乗(h3)の積に比例することが分かる。
そこで、図26では、上部電極(振動電極)と下部電極(固定電位電極)の間に直流バイアス電圧Vbiasを印加時の最大電界×電荷/最大変位から求められるバネ定数kをh3で除した値(k/h3)を縦軸、Y/(1-σ2)の値を横軸として、さまざまな材料についてプロットしている。αを比例定数とすると、種々の材料について、

k/h3=α(Y/(1-σ2)) ………(19)

が成立し、式(19)の左辺と右辺は比例関係にあることを図26は示している。即ち、振動電極側のバネ定数kの主体は、式(18)に示す曲げ剛性であることを示している。ポアソン比σは理論的には0.5以下の値しかとりえない。表1に一部を例示するように、多くの材料のポアソン比σは、0.3~0.4程度の範囲に収まっており、ポアソン比σを2乗(σ2)すると0.09~0.16程度となる。
このため、図26の横軸に対する(1-σ2)のファクタの寄与は、ヤング率Yに比して相対的に小さい。したがって、ヤング率Yの大きな材料が、図26の右上に位置している。図26から、ヤング率Yの大きなシリコン窒化膜(Si34膜)が、平板の高い曲げ剛性Kを有していることが分かる。
Figure 2023062603000010
図6Aの太い実線は、第3改善策による振動膜の撓み形状のシミュレーション・プロファイルを示している。一点鎖線で示した第1改善策の周辺部電界強化構造と、細い実線で示した第2改善策の剛性強化構造の両方を同時に併用した場合の振動膜の撓み形状のシミュレーション・プロファイルである。細い実線で示した第2改善策の剛性強化構造のみの場合に比し、第3改善策の採用により、下に凸となる曲線の曲率が、更に小さくなったことが分かる。第3改善策の場合においても、振動空洞の中心から±5μmの位置となる剛性強化蓋部31cの両端の位置が、曲率が変化する変曲点になっていることが分かる。
図6Aに示すシミュレーションした結果は、現実には図5Bに示すような理想的な平行平板構造は実現できないことが分かる。図6Bは、図6Aに示すシミュレーションした結果を鑑み、下部電極側を曲面とし、曲面同士でキャパシタ構造を実現する場合を説明する断面図である。図6Bの振動膜23や振動電極25cの撓みを示す曲線の縦軸は、図6Aに示した曲率の縦軸より縮小されている。縦方向が、縮小されてはいるが、図6Aの太い実線で示した第3改善策の撓み形状のシミュレーション・プロファイルと同一の曲率で、振動膜23と振動電極25cが、振動空洞28内で下に凸となるプロファイルで撓んでいることを図6Bは示している。
図5A及び5Bに示した構造とは異なり、図6Bでは浮遊電極17cと固定電位電極17oは、振動電極25cの撓みに合わせて曲面上に配置されている。浮遊電極17cと固定電位電極17oを埋め込んでいる空洞底部絶縁膜10の上面形状も、図6Aに太い実線で示した第3改善策の撓み形状のシミュレーション・プロファイルと同一の曲率で下に凸となるプロファイルで撓んでいる。図6Bでは振動空洞28の中央付近における振動電極25cと浮遊状態の浮遊電極17cの間で構成する容量がC1であり、第1可変容量C1の両側において、中央の第1可変容量C1を囲む、第2電位の振動電極25cと接地電位(第1電位)GNDの固定電位電極17oの間の電極間容量がC2である。図6Bに示す構造においても、第2可変容量C2は、従来の容量型音響素子における上部電極と下部電極との間に構成される容量と等価の役割を有する容量である。これに対し、第1可変容量C1は第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子に固有の絶縁ゲート型半導体素子を駆動するに必要な電荷を誘導する容量である。図6Bに示す構造では、第1可変容量C1と第2可変容量C2の電極間距離は等しくなっているので、浮遊電極17cと固定電位電極17oの面積比が第1可変容量C1と第2可変容量C2の大きさを決める。
しかし、現在の微細加工の技術レベルを考慮すると、図6Bに示すような空洞底部絶縁膜10や固定電位電極17oの配置構造を実現するのは現実には困難である。よって、従来の容量型音響素子が採用していた上部電極と下部電極の間の静電容量に蓄積される電荷の変化を電圧の変化として検出する場合においては、検出感度の向上には限界があることが分かる。このため、第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子及び音響素子集積回路においては、従来の静電容量の変化を電圧の変化として検出する手法から脱却し、絶縁ゲート型半導体素子を内部構造として集積化することにより、静電容量の変化を電流の変化として検出する新たな手法を提案するものである。
図6Cは、図6Aで説明した第3改善策を採用した第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子を説明する断面図である。図6Cに示すように、第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子は、第1導電型(p型)の半導体領域からなり、第1電位(=接地電位GND)に設定されたチャネル形成領域14と、このチャネル形成領域14の表面に互いに対向し且つ離間して設けられた第2導電型(n型)の第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aを備えている。更に、分割電極のトポロジを有する下部電極(17c,17o)が、図6Cに示すように振動空洞28を介して振動電極25cに対向している。下部電極(17c,17o)を構成する固定電位電極17oと振動電極25cとの間の電界が、音響誘導型半導体素子の送信時及び受信時の主なる電圧を維持する。
下部電極(17c,17o)を構成するフローティング状態の浮遊電極17cは、第1主電極領域15bと第2主電極領域15aの間のチャネル形成領域14の表面に形成されるチャネル領域に形成される電位障壁の高さを、浮遊電極17cに誘起された電荷による電位で静電的に制御するように機能する。電位障壁の高さが変化することにより、第1主電極領域15bと第2主電極領域15aの間を流れる電流Idsが変化する。したがって、第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子においては、振動電極25cに印加される超音波による部電極25cの変位を、第1主電極領域15bと第2主電極領域15aの間を流れる電流Idsの変化として検知することができる。
図3に示した構造と同様に、第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子は、第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aの上、及び第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aに挟まれたチャネル形成領域14の上に設けられたゲート絶縁膜(12,16)と、第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aに挟まれたチャネル形成領域14の上方において、ゲート絶縁膜(12,16)の上に、電気的な浮遊状態として設けられた導電体層からなる浮遊電極17cを備えて絶縁ゲート型半導体素子を構成している。ゲート絶縁膜(12,16)は、第1ゲート絶縁膜12と第2ゲート絶縁膜16の2層構造を例示しているが、ゲート絶縁膜は図6Cに示す構造に限定されるものではないことは図3と同様である。
そして、図6Cに示すように、ゲート絶縁膜(12,16)の上には、浮遊電極17cと隣接し、且つ浮遊電極17cと離間して配置され、第1電位GNDに設定されたDOPOS膜等の導電体層からなる固定電位電極17oが更に設けられている。浮遊電極17cと固定電位電極17oの分割構造の下部電極(17c,17o)を構成している。即ち、浮遊電極17cと固定電位電極17oからなる下部電極(17c,17o)に対し、振動空洞28を介して対向した絶縁膜からなる振動膜23と、この振動膜23の上面に接し、且つ浮遊電極17c及び固定電位電極17oに振動空洞28を介して対向し、第2電位Vbiasに設定された振動電極25cを備えて音響誘導型半導体素子を構成している。浮遊電極17cと固定電位電極17oを覆うように、空洞底部絶縁膜18が第2ゲート絶縁膜16の上に積層されている。
図6Cに示すように、下部電極(17c,17o)と振動電極25cの間に、振動空洞28を密閉空間として設けるように空洞形成絶縁膜(19o,21o)が筒状に設けられている。空洞形成絶縁膜(19o,21o)は、空洞底部絶縁膜18の上に振動空洞28の領域を開口部として囲むように六角環状に設けられた電界強化層19oと、この電界強化層19o上に設けられた六角環状の空洞側壁上部絶縁膜21oから構成されている。電界強化層19oは、第1改善策で説明したシリコン酸化膜の比誘電率εr=3.9~4.5よりも比誘電率が高い絶縁膜であり、シリコン窒化膜の他に比誘電率εr=9程度のアルミナ(Al23)が採用可能である。更に比誘電率εr=11程度のケイ酸ハウニウム(HfSix)、比誘電率εr=21程度の酸化ランタン(La23)、比誘電率εr=25程度のジルコニア(ZrO2)、比誘電率εr=26程度のハフニア(HfO2)等を採用してもよい。
図6Cに示すように、振動膜23の上面には振動電極25cの他に第1表面配線層25b及び第2表面配線層25が設けられている。第1表面配線層25bと第1主電領域15bの間には、振動膜23、空洞形成絶縁膜(19o,21o)、空洞底部絶縁膜18、第2ゲート絶縁膜16及び第1ゲート絶縁膜12を貫通する第1コンタクトプラグ24bが設けられている。同様に第2表面配線層25aと第2主電領域15aの間には、振動膜23、空洞形成絶縁膜(19o,21o)、空洞底部絶縁膜18、第2ゲート絶縁膜16及び第1ゲート絶縁膜12を貫通する第2コンタクトプラグ24aが設けられている。即ち、第1コンタクトプラグ24bの上端は第1表面配線層25bに金属学的に接続され、第1コンタクトプラグ24bの下端は第1主電領域15bと電気的に接続される。即ち、第1コンタクトプラグ24bによって、第1表面配線層25bと第1主電領域15bが電気的に接続される。
同様に、第2コンタクトプラグ24aの上端は第2表面配線層25aに金属学的に接続され、第2コンタクトプラグ24aの下端は第2主電領域15bと電気的に接続される。こうして、第2コンタクトプラグ24aによって第2表面配線層25aと第2主電領域15aが電気的に接続されている。第1表面配線層25bは図2に示した第i列目の垂直出力信号線Riに対応する。一方、第2表面配線層25aは図2に示した第j行目の電源配線VDDに対応する。振動膜23の上には、振動電極25c、第1表面配線層25b及び第2表面配線層25を覆うようにシリコン酸化膜等の振動電極保護膜26が被覆されている。
更に、振動電極保護膜26の上には図6Aのシミュレーションにおける第2及び第3改善策として説明した剛性強化蓋部31cが6角錐台の形状で局所的に設けられて振動膜23を裏打ちしている。剛性強化蓋部31cに用いる剛性の強い高剛性絶縁膜としては、図6Aのシミュレーションで用いたシリコン窒化膜の他、ヤング率Y=320GPa程度の窒化アルミニウム(AlN)、ヤング率Y=360GPa程度のアルミナ、ヤング率Y=440GPa程度の炭化ケイ素(SiC)、ヤング率Y=440GPa程度のサーメット(TiC-TiN)、ヤング率Y=470GPa程度のサファイア、ヤング率Y=340~1050GPa程度のダイアモンド等を採用してもよい。更に、これらの高剛性絶縁膜は、剛性強化蓋部31cとして用いて振動膜23を裏打ちするだけでなく、振動膜23の材料として用い、振動膜23そのものの剛性を強化してもよい。
振動膜23の剛性を強化するだけでなく、振動電極25c自身の剛性を強化する方法もある。振動電極25c自身の剛性を強化する改善策としては、振動電極25cの材料として剛性の強い金属であるタングステン(W)、モリブデン(Mo)や窒化チタン(TiN)を用いてもよい。通常の音響誘導型半導体素子に多く使われているアルミニウム(Al)のヤング率Y=80GPa程度であるのに対して、Wのヤング率Y=403GPa程度、Moのヤング率Y=327GPa程度、TiNのヤング率Y=350GPa程度である。図26はWが、平板としての高い曲げ剛性を有していることを示している。
図6Cに示すように、振動電極保護膜26の上には円錐形の真空栓31dが設けられている。振動空洞28を形成する工程の際には、犠牲層をウェットエッチングで選択的に溶解するための除去液(エッチング液)の導入が必要である。真空栓31dは、除去液を導入するために開孔した液導入孔27を塞いでいる。液導入孔27は、振動電極保護膜26及び振動膜23を貫通して振動空洞28に到達している。液導入孔27を塞ぐことにより、振動空洞28の内部は不活性ガスの減圧雰囲気に維持されている。
剛性強化蓋部31cの上には、図7Qに示す工程で剛性強化蓋部31pをパターニングする際にエッチングマスクとして用いた、シリコン酸化膜からなる真空栓上部パターン32aが庇状に残留している。真空栓31dの上にもエッチングマスクとして用いたシリコン酸化膜が存在していたが、図7P~7Rに示すようにシリコン窒化膜をウェットエッチする際に、真空栓31dのパターンが厚みに比して小さいため、消失している。なお、図6Cでは、液導入孔27と真空栓31dが第1コンタクトプラグ24bと第2コンタクトプラグ24aと同一断面上にあるかのように表現しているが、実際には、液導入孔27と真空栓31dは第1コンタクトプラグ24bと第2コンタクトプラグ24aと同一断面上には存在しない。
図6Cでは振動空洞28の中央付近における振動電極25cと浮遊状態の浮遊電極17cの間で構成するコンデンサの容量を、C1として示している。又、第1可変容量C1を挟んで、その両側の振動電極25cと接地電位(第1電位)GNDの固定電位電極17oの間で構成するコンデンサの容量を、C2として表現している。図6Cの振動空洞28の両側に示した2つの第2可変容量C2は、従来の容量型音響素子における上部電極と下部電極との間に構成される容量と等価の役割を有する容量である。図2に示す六角環の平面パターンから分かるように、両側の2つの第2可変容量C2は、実際には連続した同一の容量である。これに対し、振動空洞28の中央の第1可変容量C1は、第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子に固有の等価回路的な容量である。
即ち、振動空洞28の中央の第1可変容量C1は、音響誘導型半導体素子に組み込まれた絶縁ゲート型半導体素子を静電的に駆動するに必要な電荷を、浮遊電極17cに静電的に誘導する容量である。図6Cの中央の第1可変容量C1は、図2に示す六角環の平面パターンの窓部に収納された真ん中の六角形が構成する等価回路的な容量である。図4Cに示したように、浮遊電極17cと第1主電極領域15bの間にゲート・ソース間容量Cgs、浮遊電極17cと第2主電極領域15aの間にゲート・ドレイン間容量Cgd、浮遊電極17cとチャネル形成領域14の間に絶縁膜容量COXが分布して存在するが、図6Cではこれらを纏めて固定容量C3として表現している。第1可変容量C1に直列接続される固定容量C3も、第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子に固有の等価回路的な容量である。直列接続固定容量C3は、第1主電極領域15bと第2主電極領域15aの間において、チャネル形成領域14の表面に形成されるチャネル領域の電位を静電的に制御する容量である。
図6Cに示す構造によれば、MOSトランジスタ等の増幅機能を有する絶縁ゲート型半導体素子を備えている。このため、式(9)に示したように、浮遊電極17cに容量分割で生成される電圧で絶縁ゲート型半導体素子を駆動し、絶縁ゲート型半導体素子の電流変化ΔIdsとして振動電極25cの変位を検出できる。特に、示量変数である電荷は素子微細化により1素子あたりの値が小さくなるので,従来型の容量型音響素子は,各素子受信による高精細撮像を実現する場合,受信回路実装上の困難さがつきまとう。一方、第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子によれば、浮遊電極17cに発生する示強変数である電圧の変化を検出しているので、素子を微細化しても値が小さくならない。このため、第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子によれば、各素子で受信される電圧を、各素子に内蔵された絶縁ゲート型半導体素子のゲート電圧の変化として用いることにより、絶縁ゲート型半導体素子の増幅機能を利用して、大きな電流変化として検出できる。したがって、検出感度の高い音響誘導型半導体素子を微細な単位セルとして配列することにより、高精細撮像が実現できる。
=音響誘導型半導体素子の製造方法=
図6Cに例示した第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子の製造方法を、図7A~図7Rを用いて説明する。なお、以下に述べる音響誘導型半導体素子の製造方法は、一例であり、特許請求の範囲に記載した構造が実現できるのであれば、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により、実現可能であることは勿論である。又、以下の説明で用いている「第1フォトレジスト膜」等の序数を冠した名称は、単に他のフォトレジスト膜と峻別するための修辞学上の要請に依拠した名称であって、実際の工程で用いられる一番目のフォトレジスト膜等を意味するものではない。
(a)先ず、0.1~3Ωcm程度の(100)面を主表面とするn型シリコン基板からなる共通基体11を用意する。共通基体11を熱酸化してシリコン酸化膜からなるバッファ膜を約50nm程度の厚さに形成する。このバッファ膜の上に化学気相成長法(CVD法)等の堆積方法によってシリコン窒化膜(Si34膜)を50~200nm程度形成し、SiO2/Si34の2層構造の分離領域形成用絶縁膜を形成する。そして、この分離領域形成用絶縁膜の上に、第1フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用い、第1フォトレジスト膜をパターニングする。具体的には、単位セルXi(j-1),Xij,Xi(j+1),…のそれぞれの素子分離領域のパターンの位置が、共通基体11の主面上に二次元状に定義されるように、第1フォトレジスト膜を露光・現像し、素子分離領域のパターンを形成する。第1フォトレジスト膜を第1エッチングマスクとして用い、分離領域形成用絶縁膜をエッチングし、更に共通基体11の表面を0.8~1.1μm程度エッチングし、素子分離溝を形成する。
第1フォトレジスト膜及び分離領域形成用絶縁膜を除去後、素子分離溝の内部を含めた共通基体11の表面の全面を熱酸化してシリコン酸化膜からなる第1ゲート絶縁膜12を15~25nm程度形成する。次いで、シリコン酸化膜等の素子分離絶縁膜13を0.9~1.2μm程度の厚さにCVD法等の堆積方法により堆積することによって、素子分離溝を素子分離絶縁膜13で埋め込む。この素子分離絶縁膜13の上にCVD法等の堆積方法によってシリコン窒化膜を40~60nm程度の厚さに形成し、シリコン窒化膜からなるストッパ絶縁膜を形成する。そして、このストッパ絶縁膜の上に、第2フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用い第2フォトレジスト膜をマスク合わせによりパターニングする。
即ち、単位セルXi(j-1),Xij,Xi(j+1),…の素子分離領域で囲まれた活性領域のパターンを、共通基体11の主面上に定義された二次元状に合わせるように、第2フォトレジスト膜を露光・現像し、活性領域のパターンを形成する。第2フォトレジスト膜を第2エッチングマスクとして、ストッパ絶縁膜を選択エッチし、活性領域の上面をストッパ絶縁膜で保護する。次いで、化学的機械的研磨(CMP)法によりストッパ絶縁膜をストッパにして平坦化を行う。平坦化の後、ストッパ絶縁膜を熱リン酸(H3PO4)で選択エッチすると、図7Aに示すような活性領域の上に第1ゲート絶縁膜12が形成され、活性領域の周辺が、側壁の第1ゲート絶縁膜12を介して素子分離絶縁膜13で囲まれた構造となる断面形状を得る。
(b)次いで、第1ゲート絶縁膜12及び素子分離絶縁膜13の上に、第3フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用いパターニングする。即ち、第3フォトレジスト膜の中に活性領域のパターンが露出するように、第3フォトレジスト膜を露光・現像し、活性領域の上面を開口する第1イオン注入用マスクを形成する。第3フォトレジスト膜を第1イオン注入用マスクとして用い、図7Bに示すように、49BF 等のp型の導電性を呈するイオンを、所定の加速エネルギでイオン注入する。p型の導電性を呈するイオンの注入後、第3フォトレジスト膜を除去して熱処理すれば、図7Cに示すような、p型のチャネル形成領域14が共通基体11の上部に形成される。なお、イオン注入直後の熱処理を省略してもよいが、この場合は、図7Cに示すようなチャネル形成領域14は未だ形成されていない。「p型のチャネル形成領域14」は、通常の半導体集積回路におけるpウェルと等価な構造と機能を有する。
(c)49BF のイオン注入後の熱処理を省略する場合であっても、第3フォトレジスト膜を除去後、第1ゲート絶縁膜12及び素子分離絶縁膜13の上に、第4フォトレジスト膜を塗布する。そして、フォトリソグラフィー技術を用い、第4フォトレジスト膜を露光・現像し、ソース/ドレイン領域形成用の第2イオン注入用マスクを形成する。第4フォトレジスト膜を第2イオン注入用マスクと用い75As等のn型の導電性を呈するイオンを、所定の加速エネルギでイオン注入する。第4フォトレジスト膜を除去後熱処理すれば、図7Dに示すようなp型のチャネル形成領域14の上部に第1主電領域15b及び第2主電領域15bが、互いに対向して形成された断面構造が実現される。第1主電領域15b及び第2主電領域15bの平面パターンの例は、例えば図2に示したような長方形のパターンである。この後、MOSFETの閾値制御用のイオン注入の工程を必要に応じて追加してもよい。
(d)その後、第1ゲート絶縁膜12の上にシリコン酸化膜等の第2ゲート絶縁膜16を、180~250nm程度の厚さにCVD法等の堆積方法により堆積する。更に、図7Eに示すように、第2ゲート絶縁膜16の上にDOPOS膜等の導電体層からなる第1導電体膜17pを、80~200nm程度の厚さにCVD法等の堆積方法により全面に堆積する。第1導電体膜17pの上に、第5フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用い、第5フォトレジスト膜を露光・現像し、固定電位電極パターニング用の第3エッチングマスクを形成する。第3エッチングマスクを用い、反応性イオンエッチング(RIE)等のドライエッチング技術を用いて、図7Fに示すように第1導電体膜17pを選択エッチングして、固定電位電極17oと浮遊電極17cのパターンを形成する。既に図2を用いて説明した通り、例えば、六角形の浮遊電極17cのパターンが、中央に六角形の穴の開いた六角形の固定電位電極17oの内部に収納された平面形状に形成される。
(e)その後、CVD法等の堆積方法を用いて、固定電位電極17oの上及び浮遊電極17c浮遊電極17cの上を、それぞれ完全に覆うように、第2ゲート絶縁膜16の上に空洞底部絶縁膜18を堆積する。空洞底部絶縁膜18は、例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)膜等を40~60nm程度の厚さに堆積する。必要に応じて、CMP法等の研磨方法を用いて、空洞底部絶縁膜18の上面を平坦化する。更に、空洞底部絶縁膜18の上にシリコン窒化膜やアルミナ膜(Al23膜)等のシリコン酸化膜よりも比誘電率εrの大きな高誘電率層19pを40~60nm程度の厚さに堆積する。更に、図7Gに示すように、高誘電率層19pの上にCVD法等の堆積方法を用いて、シリコン酸化膜等の空洞絶縁膜21pを40~60nm程度の厚さに堆積する。
(f)そして、空洞絶縁膜21pの上に、第6フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用い、第6フォトレジスト膜を露光・現像し、振動空洞上部形成用の第4エッチングマスクを形成する。第4エッチングマスクを用いて、空洞絶縁膜21pを選択エッチングして、空洞絶縁膜21pに開口された窓部の底に高誘電率層19pを露出させる。第6フォトレジスト膜を除去後、空洞絶縁膜21pの上及び空洞絶縁膜21pの窓部の底に露出した高誘電率層19pの上に、第7フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用い、第7フォトレジスト膜を露光・現像し、振動空洞底部形成用の第5エッチングマスクを形成する。第5エッチングマスクを用いて、空洞絶縁膜21pの窓部の底に露出した高誘電率層19pの一部を選択エッチングして、図7Hに示すような断面構造を得る。振動空洞底部を囲むように電界強化層19oが形成され、電界強化層19oの上に、振動空洞上部を囲むように空洞側壁上部絶縁膜21oが形成された、段差を有する断面形状になっている。
(g)そして、スパッタリング法、真空蒸着法又はCVD法等の堆積方法を用いてタングステン(W)等の犠牲材料膜層を全面に堆積する。そしてCMP法等により平坦化して図7Iに示すように犠牲層22を振動空洞底部及び振動空洞上部に段差形状で埋め込む。更にCVD法等の堆積方法を用いて、図7Jに示すように犠牲層22及びこの犠牲層22を囲む空洞側壁上部絶縁膜21oの上に、剛性の強い誘電体膜からなる振動膜23を全面に堆積する。剛性の強い誘電体膜としてはシリコン窒化膜等が採用可能である。
(h)その後、振動膜23の上に第8フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用い、第1主電領域15b及び第2主電領域15bのパターンの位置に到達するようにマスク合わせをして、ビアホール形成用のパターンを形成する。第8フォトレジスト膜を第6エッチングマスクとして用いて、振動膜23、空洞側壁上部絶縁膜21o、電界強化層19o、空洞底部絶縁膜18、第2ゲート絶縁膜16及び第1ゲート絶縁膜12を貫通し、第1主電領域15bの表面に到達する第1ビアホールをRIE等の手法で開孔する。同時に、振動膜23、空洞側壁上部絶縁膜21o、電界強化層19o、空洞底部絶縁膜18、第2ゲート絶縁膜16及び第1ゲート絶縁膜12を貫通し、第2主電領域15bの表面に到達する第2ビアホールも、第1ビアホールと同一工程で開孔する。
その後、W、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)等の高融点金属を第2導電体膜として、振動膜23の上に、減圧CVD法等のステップカバレッジの良好な堆積方法を用いて堆積する。そして第2導電体膜をエッチバックして、ビアホールの内部に第2導電体膜を埋め込み、図7Kに示すように、第1主電領域15bに到達する第1コンタクトプラグ24b及び第2主電領域15bに到達する第2コンタクトプラグ24bを形成する。第2導電体膜は種類の異なる金属層を多層に構成して、第1コンタクトプラグ24bと第2コンタクトプラグ24bを多層同心円柱状の金属柱を形成してもよい。第1コンタクトプラグ24bと第2コンタクトプラグ24bの埋め込みに際し、必要に応じてCMP法を用いてもよい。
(i)そして、振動膜23の上に、スパッタリング法、真空蒸着法若しくはCVD法等の堆積方法を用いて、アルミニウム(Al)若しくはアルミニウム合金等の第3導電体膜を全面に堆積する。更に、第3導電体膜の上に第9フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用い、振動電極形成用のパターンを形成する。第9フォトレジスト膜を第7エッチングマスクとして用いて、第3導電体膜を選択的にエッチングして、図7Lに示すような、振動電極25c、第1表面配線層25b及び第2表面配線層25のパターンを形成する。振動電極25cの平面パターンは、例えば、図2に示した固定電位電極17oの形状と大きさに対応した六角形の形状と寸法に選ぶのが好ましい。一方、第1表面配線層25bは第1コンタクトプラグ24bに金属学的に接続され、第2表面配線層25aは第2コンタクトプラグ24aに金属学的に接続されるパターンにレイアウトされる。
なお、振動電極25cの剛性を強化するために、剛性の強い金属であるWを第3導電体膜として採用可能である。Wを振動電極25cに用いる場合は、ダマシン工程でW膜をパターニングする。ダマシン工程を実施するためには、先ず、CVD法等の堆積方法を用いて、振動膜23の上にシリコン酸化膜等のダマシン用絶縁膜を堆積する。そして、フォトリソグラフィー技術とダマシン用絶縁膜の選択エッチングにより、振動電極25cのパターンの溝をダマシン用絶縁膜の上部に形成し、この溝にW膜を埋め込みパターニングする。実際のW膜埋め込みのダマシン工程においてはCMP等を用いてもよい。
(j)次に、振動膜23の上に、振動電極25c、第1表面配線層25b及び第2表面配線層25のパターンを覆うように、CVD法等の堆積方法を用いて、図7Mに示すようシリコン酸化膜等の振動電極保護膜26を堆積する。更に、振動電極保護膜26の上に第10フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用い、除去液導入用のパターンを形成する。第10フォトレジスト膜を第8エッチングマスクとして用いて、振動電極保護膜26及び振動膜23を貫通し犠牲層22に到達する液導入孔27を図7Nのように形成する。図7Nは、第8エッチングマスクとしての第10フォトレジスト膜を除去した後の断面形状を示している。
(k)そして、例えば、加熱した過酸化水素水(H22)を、犠牲層22に対して液導入孔27から導入する。加熱した過酸化水素水が液導入孔27から導入されると、犠牲層22は、ウェットエッチングで選択的に溶解する。犠牲層22が溶解すると、図7Oに示すように、固定電位電極17oの上方の位置に振動空洞28が形成される。この後、CVD法等の堆積方法を用いて、シリコン窒化膜等の剛性の強い高剛性絶縁膜31pを、振動電極保護膜26の上に厚さ400~600nm程度に堆積して、液導入孔27を閉じる。液導入孔27を塞ぐこの工程の際に、主成分をヘリウム(He)ガス等の不活性ガスとして、1kPa程度の減圧雰囲気中で処理することで、振動空洞28の内部は、不活性ガスが主成分となる、ほぼ真空と見なせる減圧状態となる。
(l)更に、高剛性絶縁膜31pの上に、CVD法等の堆積方法を用いて、シリコン酸化膜等のパターニング用絶縁膜32pを厚さ45~55nm程度で全面に堆積する。そして、パターニング用絶縁膜32pの上に第11フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用い、剛性強化蓋部形成用のパターン33a及び33bを形成する。第11フォトレジスト膜のパターン33a及び33bを第9エッチングマスクとして用いて、パターニング用絶縁膜32pを図7Pのようにパターニングして、真空栓上部パターン32aと、空洞上方パターン32bを形成する。第11フォトレジスト膜のパターン33a及び33bを除去後、真空栓上部パターン32aと、空洞上方パターン32bを第10エッチングマスクとして用いて高剛性絶縁膜31pをエッチングすると、図7Rに示すように液導入孔27の上に円錐形の真空栓31dが残留する。一方、振動電極25cの上方には六角錐台形状の剛性強化蓋部31cが形成される。高剛性絶縁膜31pがシリコン窒化膜の場合は、熱リン酸でウェットエッチすれば、図7Rに示すような第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子の面形状が得られる。
<<第1実施形態の第1変形例>>
図5Bに例示したような振動電極25cが下部電極(17c,17o)に平行平板コンデンサをなす理想的な撓み形状を実現するためには、図6Aに示した検討を考慮すれば、振動電極25cや振動膜23等の剛性は、振動電極25cの領域を局所的に強化するのが好ましい。したがって、従来の一般的な容量型音響素子のようなポリイミド膜からなる膜厚が一様な保護膜は、剛性の平面分布を局在化し、剛性を非一様にする目的のためには、図6Cに示すように用いないことが好ましい。しかしながら、第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子によれば、絶縁ゲート型半導体素子を内蔵しているので、式(9)に示したように、浮遊電極17cに容量分割で生成される電圧で絶縁ゲート型半導体素子を駆動して電流変化ΔIdsとして振動電極25cの変位を効率良く検出できる。したがって、ポリイミド膜からなる一様の厚さの保護膜を、振動電極25cの上方に用いない構成は必須ではない。
つまり、図3に示したように、第1振動電極保護膜26の上にはポリイミド膜等の第2振動電極保護膜34が積層しても構わない。図8に示す第1実施形態の変形例(第1変形例)に係る音響誘導型半導体素子は、図3に示した構成と同様に、図6Cに示した振動電極保護膜(第1振動電極保護膜)26の上にはポリイミド膜等の第2振動電極保護膜33を一様に積層している。第1実施形態の第1変形例に係る音響誘導型半導体素子の第2振動電極保護膜33以外の構造は、図6Cに示した構成と同様なので重複した説明を省略する。
<<第1実施形態の第2変形例>>
図1では二次元配列された音響誘導型半導体素子を列単位で駆動する場合を例示したが、マトリクス状に配列された音響誘導型半導体素子をそれぞれ個別に駆動しても構わない。第1実施形態の第2変形例に係る音響素子集積回路では、図9に示すように、素子アレイ部の上辺部の上側には、列ドライバ1が配置され、素子アレイ部の右辺部の左側には、行ドライバ2が配置されている。更に、素子アレイ部の下辺部の下側には、出力バッファ回路3が配置されている。素子アレイ部に二次元マトリクス状に多数の単位セルXij(i=1~m,j=1~n;m,nはそれぞれ2以上の正の整数である。)を配列して、所定の形状の出射・撮像領域を構成して、二次元フェーズド・アレイ動作を可能にしている。
行ドライバ2から出力されるワード線Wj+2,Wj+1,Wj,Wj-1…によって素子アレイ部内の各セル行が、セル行単位で走査される。即ち、第(j+1)行目のワード線Wj+1によって、第(j+1)行目の単位セルX(i-1),(j+1),Xi,(j+1),X(i+1),(j+1),X(i+2),(j+1),X(i+3),(j+1),…が走査される。又、第j行目のワード線Wjによって第j行目の単位セルX(i-1),j,Xi,j,X(i+1),j,X(i+2),j,X(i+3),j,…が走査され、第(j-1)行目のワード線Wj-1によって第(j-1)行目の単位セルX(i-1),(j-1),Xi,(j-1),X(i+1),(j-1),X(i+2),(j-1),X(i+3),(j-1),…が走査される。更に、第i行目のワード線Wiによって第i行目の単位セルXi1,Xi2,Xi3,………,Xi(j-1),Xij,Xi(j+1),………が走査される。
一方、列ドライバ1から出力されるビット線B(i-1),Bi,B(i+1),B(i+2),B(i+3),…によって素子アレイ部内の各セル列が、セル列単位で、順次走査される。例えば、第(i-1)列目のビット線B(i-1)によって第(i-1)列目の単位セルX(i-1),(j+1),X(i-1),j,X(i-1),(j-1),…が走査される。又、第i列目のビット線Biによって第i列目の単位セルXi,(j+1),Xi,j,Xi,(j-1),…が走査され、第(i+1)列目のビット線Bi+1によって第(i+1)列目の単位セルX(i+1),(j+1),X(i+1),j,X(i+1),(j-1),…が走査される。更に、第(i+2)列目のビット線Bi+2によって第(i+2)列目の単位セルX(i+2),(j+1),X(i+2),j,X(i+2),(j-1),…が走査され、第(i+3)列目のビット線Bi+3によって第(i+1)列目の単位セルX(i-1),(j+1),X(i-1),j,X(i-1),(j-1),…が走査される。
このように、第1実施形態の第2変形例に係る音響素子集積回路においては、ワード線Wj+2,Wj+1,Wj,Wj-1…によって素子アレイ部内の各セル行が、セル行単位で走査され、ビット線B(i-1),Bi,B(i+1),B(i+2),B(i+3),…によって各セル列が、セル列単位で順次走査されて、超音波信号の二次元アレイ放射やセル信号の読み出し動作が実行される。即ち、第1実施形態の第2変形例に係る音響素子集積回路では、素子アレイ部を各セル行の単位セルX(i-1),(j+1),Xi,(j+1),X(i+1),(j+1),X(i+2),(j+1),X(i+3),(j+1),…,X(i-1),j,Xi,j,X(i+1),j,X(i+2),j,X(i+3),j,…,X(i-1),(j-1),Xi,(j-1),X(i+1),(j-1),X(i+2),(j-1),X(i+3),(j-1),…Xi1,Xi2,Xi3,………,Xi(j-1),Xij,Xi(j+1),………単位で、順次垂直方向に沿って走査することにより、各セル行の単位セルX(i-1),(j+1),Xi,(j+1),X(i+1),(j+1),X(i+2),(j+1),X(i+3),(j+1),…,X(i-1),j,Xi,j,X(i+1),j,X(i+2),j,X(i+3),j,…,X(i-1),(j-1),Xi,(j-1),X(i+1),(j-1),X(i+2),(j-1),X(i+3),(j-1),…Xi1,Xi2,Xi3,………,Xi(j-1),Xij,Xi(j+1),…のセル信号を各セル列の単位セルX(i-1),(j+1),X(i-1),j,X(i-1),(j-1),…,Xi,(j+1),Xi,j,Xi,(j-1),…,X(i+1),(j+1),X(i+1),j,X(i+1),(j-1),…,X(i+2),(j+1),X(i+2),j,X(i+2),(j-1),…,X(i-1),(j+1),X(i-1),j,X(i-1),(j-1),…毎に設けられた垂直出力信号線R(i-2),R(i-1),Ri,R(i+1),R(i+2),R(i+3),…によって読み出す構成となっている。
第1実施形態の第2変形例に係る音響素子集積回路は、医療用への応用の他、音響インピーダンスの観点から、水中用のハイドロフォン等の他の用途に用いることもできる。即ち、第1実施形態の第2変形例で説明した音響素子集積回路は、音響インピーダンスが水の固有インピーダンスに近く優れたパルス応答特性を示し、音響誘導型半導体素子では従来の容量型音響素子と同様に、バッキングが不要となり、且つ高感度、広帯域、低出力インピーダンス特性を有するため、ハイドロフォンとしての応用に好適である。
図10の左側に円錐台の形状として示した樹脂製ホーン部の先端には、第1実施形態の第2変形例に係る音響集積回路7が固定されている。左側の樹脂製ホーン部の先端とは反対側の径が太い側には、樹脂製円柱状部71が連続している。図10に示すように樹脂製ホーン部と、この樹脂製ホーン部に連続した樹脂製円柱状部71と、樹脂製円柱状部71を内部に収納する筒状筐体72とが一体となることによりハイドロフォンの本体(71,72)が構成されている。図10に示すハイドロフォンは、音響集積回路7は、非検査対象から反射してきた超音波Φを検出すると共に、超音波Φを非検査対象に向かって出射して、その非検査対象からの反射波である超音波Φを生成する。
図10に示すハイドロフォンの筒状筐体72は、軸方向先端側と反対側の端部側に外部端子74を有する。外部端子74は、図示を省略した観測機器に同軸ケーブル等の伝送線路を介して接続するコネクタである。音響集積回路7と外部端子74の間はリード線73によって接続されているので、音響集積回路7の出力は外部端子74に導かれている。本体(71,72)の他方の端部側の外部端子74に接続された伝送線路と、伝送線路に接続された観測機器を備えることにより、非検査対象から反射してきた超音波Φの2次元の信号を観測することができる。水中用の場合、水圧の影響を防ぐための圧力バランス構造が必要となるので、使用周波数に合わせた振動膜の厚みや振動空洞の大きさの最適化がより重要となる。また、水中用は、医療用と比べて低周波数の超音波を用いるので、振動空洞の大きさや電極間距離がより広くなり、より大きなバイアス電圧が必要になる。
<<第1実施形態の第3変形例>>
本発明の第1実施形態の第3変形例に係る音響素子集積回路は、受信専用の音響誘導型半導体素子と、受信専用の音響誘導型半導体素子とは独立に配置された送信専用の容量型音響素子を備えることを特徴とする。図11に示すように、グレイ表示の受信用第(j+1)列目の受信用セルX(i-1),(j+1),Xi,(j+1),X(i+1),(j+1),…と受信用第j列目の受信用セルX(i-1),j,Xi,j,X(i+1),j,…の間に、白抜きセルとして示した送信用第(j-1)列目の送信用セルY(i-1), (j-1),Yi,(j-1),Y(i+1),(j-1),…が配列されている。又、グレイ表示の受信用第j列目の受信用セルX(i-1),j,Xi,j,X(i+1),j,…と受信用第(j-1)列目の受信用セルXi,(j-1),X(i+1),(j-1),…の間に、白抜きセルとして示した送信用第j列目の送信用セルY(i-1),j,Yi,j,Y(i+1),j,…が配列されている。
図11では、受信用セルXi,j及び送信用セルYi,j等の平面パターンが六角形の場合を例示しているが、受信用セルXi,j及び送信用セルYi,j等の平面パターンは、六角形に限定されず、矩形や八角形等種々の平面パターンが採用可能である。第1実施形態の第3変形例に係る音響素子集積回路の送信用セルY(i-1), (j-1),Yi,(j-1),Y(i+1),(j-1),…;Y(i-1),j,Yi,j,Y(i+1),j,…は、従来の容量型音響素子と同一の構造を備えている。送信用セルとは独立に配置された受信用セルX(i-1),(j+1),Xi,(j+1),X(i+1),(j+1),…;X(i-1),j,Xi,j,X(i+1),j,…;Xi,(j-1),X(i+1),(j-1),…のそれぞれは、既に図3等を参照して説明したのと同様に、素子分離絶縁膜で互いに電気的に独立したチャネル形成領域として分離形成されて、共通基体の上部に二次元配列されている。そして、図3等の断面図に示した構成と同様に、チャネル形成領域の表面には、第1及び第2主電極領域を有する絶縁ゲート型半導体素子が配置されているが、絶縁ゲート型半導体素子のそれぞれの上方には振動空洞が備えられている。
図11の平面図では符号15a,15bが省略されているが、それぞれのグレイ表示の六角形の内部に隠れ線で示した2つの長方形が、それぞれ受信用セルの絶縁ゲート型半導体素子を構成する第1及び第2主電極領域を示している。互いに対向する左下がりの斜辺を長辺とする2つの長方形は、外側の六角環から内側の六角形の内部に食い込むように、グレイ表示の六角形である受信用セルX(i-1),(j+1),Xi,(j+1),X(i+1),(j+1),…;X(i-1),j,Xi,j,X(i+1),j,…;Xi,(j-1),X(i+1),(j-1),…のそれぞれに配置されている。第1実施形態の第3変形例に係る音響素子集積回路の受信用セルにおいては、静電容量の変化を式(9)に示したような第1主電極領域と第2主電極領域の間を流れる電流の変化として検出する。
二次元配列された受信用セルの絶縁ゲート型半導体素子のそれぞれに対し、第1又は第2主電極領域から電流信号を取り出すため、各受信用セルに垂直出力信号線Rj-1,Ri,Rj+1,…が接続されている。垂直出力信号線Rj-1,Ri,Rj+1,…が六角形の各受信用セルの左側の垂直辺に設けられた第1コンタクトプラグに接続されている。例えば、受信用の第(j-1)列目の垂直出力信号線Rj-1が、受信用の第(j-1)列目の受信用セルX(i-1),(j-1),Xi, (j-1),X(i+1),(j-1),…の六角形の左側の垂直辺に設けられた第1コンタクトプラグにそれぞれ接続される。又、受信用の第j列目の垂直出力信号線Rjが、受信用の第j列目の受信用セルX(i-1),j,Xi, j,X(i+1),j,…の六角形の左側の垂直辺に設けられた第1コンタクトプラグにそれぞれ接続される。同様に受信用の第(j+1)列目の垂直出力信号線Ri+1は、受信用の第(j+1)列目の受信用セルX(i-1),(j+1),Xi, (j+1),X(i+1), (j+1),…の六角形の左側の垂直辺に設けられた第1コンタクトプラグにそれぞれ接続される。
各受信用セルのチャネル形成領域14にそれぞれ設けられた絶縁ゲート型半導体素子を駆動するために、絶縁ゲート型半導体素子の第2主電極領域に電源配線VDDが接続される。電源配線VDDは、図11に示すように、六角形の各受信用セルの右側の垂直辺に設けられた第2コンタクトプラグに接続されている。例えば、受信用の第(j-1)列目の電源配線VDDが、受信用の第(j-1)列目の受信用セルX(i-1),(j-1),Xi,j,X(i+1),(j-1),…の六角形の右側の垂直辺に設けられた第2コンタクトプラグにそれぞれ接続される。又、受信用の第j列目の電源配線VDDが、受信用の第j列目の受信用セルX(i-1),j,Xi,j,X(i+1),j,…の六角形の右側の垂直辺に設けられた第2コンタクトプラグにそれぞれ接続される。更に、受信用の第(j+1)列目の電源配線VDDは、受信用の第(j+1)列目の受信用セルX(i-1),(j+1),Xi, (j+1),X(i+1), (j+1),…の六角形の右側の垂直辺に設けられた第2コンタクトプラグにそれぞれ接続される。
一方、受信用セルが受信動作をするために、各受信用セルの振動電極と固定電位電極の間に、第2電位である直流バイアスVbiasを供給する直流バイアス供給線Vbiasが、六角形の各受信用セルの下側の水平辺に設けられた第3コンタクトプラグにそれぞれ接続される。即ち、受信用第(j+1)列目の直流バイアス供給線Vbiasは第(j+1)列目の受信用セルX(i-1),(j+1),Xi,(j+1),X(i+1),(j+1),…の第3コンタクトプラグにそれぞれ接続される。又、受信用第j列目の直流バイアス供給線Vbiasは、第j列目の受信用セルX(i-1),j,Xi,j,X(i+1),j,…の第3コンタクトプラグにそれぞれ接続される。更に、受信用第(j-1)列目の直流バイアス供給線Vbiasは第(j-1)列目の受信用セルXi,(j-1),X(i+1),(j-1),…の第3コンタクトプラグにそれぞれ接続されている。
一方、受信用セルとは独立に配置された送信用セルが送信動作をするために、高周波信号線が、六角形の各送信専用セルの下側の水平辺に設けられた送信セルコンタクトプラグにそれぞれ接続される。即ち、送信用第(j-1)列目の高周波信号線は送信用第(j-1)列目の送信用セルY(i-1), (j-1),Yi,(j-1),Y(i+1),(j-1),…の送信セルコンタクトプラグにそれぞれ接続される。又、送信用第j列目の高周波信号線VRFjは、送信用第j列目の送信用セルY(i-1),j,Yi,j,Y(i+1),j,…の送信セルコンタクトプラグにそれぞれ接続される。
第1実施形態の第3変形例に係る音響素子集積回路は、受信専用の音響誘導型半導体素子の単位セルと、受信専用の単位セルとは独立に配置された送信専用の容量型音響素子からなる単位セルを備えているので、図11に示すように、電源配線VDDに第2主電極領域が直接、接続されている。図11に示した回路構成は、図4Aに示した切り替えスイッチを介して電源配線VDDに第2主電極領域が接続された回路構成とは異なる。即ち、図1等に示したような第1実施形態に係る音響素子集積回路を構成する各セルは、送受信可能な双方向性の音響素子を前提としていたため、受信時には電源配線VDDから動作電圧VDDが供給されるが、送信時には電源配線VDDは第1電位(接地電位)に接続されるように切り替えスイッチを用いていた。これに対し、第1実施形態の第3変形例に係る音響素子集積回路では、図11に示すように、受信用セルXi,jと送信用セルYi,jを別個に備える構成としたことにより、図4Aに示した切り替えスイッチが不要になっている。
(第2実施形態)
第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子及びその改良構造等において、第1ゲート絶縁膜12と第2ゲート絶縁膜16からなるゲート絶縁膜(12,16)が、浮遊電極17cの直下で一様な厚さを有していたが、図3及び図6C等に示した構造は例示に過ぎない。浮遊電極17cの直下のゲート絶縁膜の厚さは、図13~図15に示す本発明の第2実施形態に係る音響誘導型半導体素子のように非一様であっても構わない。更に図1及び図2では六角環の固定電位電極17oと、固定電位電極17oの中央に設けられた六角形の開口部の内部に、六角形の浮遊電極17cが収納された平面パターンを例示したが、例示したトポロジに限定されるものではない。例えば、図13に示すように「エ」の字型の括れを有するパターンに浮遊電極17qを構成し、エの字の縦棒に相当する箇所の幅がゲート長、縦棒に相当する箇所の高さがゲート幅を規定するように構成してもよい。即ち、エの字の縦棒に相当する浮遊電極17qの括れ箇所が「実効ゲート電極」を構成している。
図13に示す平面パターンでは、浮遊電極17qの領域を上下から挟むように上側の固定電位電極17p及び下側の固定電位電極17rが配置されている。更に、実効ゲート電極を挟むように、絶縁ゲート型半導体素子の第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aが配置されるので、図4Cに示す等価回路で示したゲート・ソース間容量Cgs及びゲート・ドレイン間容量Cgdを小さくできる。図14に示すゲート幅方向に沿った断面図から分かるように浮遊電極17qの実効ゲート電極の直下に定義される「実効ゲート領域」には膜厚の薄い第1ゲート絶縁膜12のみが存在する。
そして、実効ゲート領域から離れた場所に厚い第2ゲート絶縁膜16が配置され、実効ゲート領域から延在して伸びる第1ゲート絶縁膜12が第2ゲート絶縁膜16の上を被覆している。なお、第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子とは逆に、第2実施形態に係る音響誘導型半導体素子では、第1ゲート絶縁膜12が上層ゲート絶縁膜、第2ゲート絶縁膜16が下層ゲート絶縁膜になっている。そして、第2ゲート絶縁膜16はフィールド絶縁膜として機能している。同様に、図15に示すゲート長方向に沿った断面図にも、浮遊電極17qの直下の実効ゲート領域に、膜厚の薄い第1ゲート絶縁膜12のみが存在することが示されている。図15に示す方向の断面図においても、実効ゲート領域から離れた場所に第2ゲート絶縁膜16が配置され、実効ゲート領域から伸びる第1ゲート絶縁膜12が第2ゲート絶縁膜16の上を被覆している。なお、図14及び図15では、浮遊電極17q等の上に振動空洞を密閉空間として構成する空洞形成絶縁膜等の図示が省略されているが、図3と同様に空洞形成絶縁膜20等が備えられていることは勿論である。
図15に示す構成では、振動電極25cと浮遊状態の浮遊電極17qの間で第1可変容量C1が構成される。この際、浮遊電極17qは、ゲート幅方向に沿って翼型に中央が凹こんだ形状であるため、中央の実効ゲート領域において、チャネル形成領域14の間に主容量C31が構成される。図14及び図15に示す中央の凹こんだ翼型の断面構造は、図6Aに示した振動電極25cの撓み形状のプロファイルを考慮すると、撓み形状に沿った凹部を構成しているので好都合である。図14及び図15に示す断面構造では、中央の凹こんだ実効ゲート領域を囲むゲート幅方向の両側の位置となる翼の突部の補助浮遊電極部において、浮遊電極17とチャネル形成領域14の間にも補助容量C32が構成され、主容量C31と補助容量C32が並列接続された分布容量になる。
又、第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子と同様に、第2電位の振動電極25cと接地電位(第1電位)GNDの固定電位電極17rの間に第2可変容量C2が構成される。固定電位電極17rとチャネル形成領域14の間及び固定電位電極17pとチャネル形成領域14の間には、周辺部容量C33が定義できるが、周辺部容量C33は、チャネル形成領域14が接地電位(第1電位)であればゼロである。図6Aに示した振動電極25cの撓み形状のプロファイルを考慮すると、振動電極25cの周辺部と固定電位電極17p,17rとの電極間距離は、図14に示す翼型の断面形状における中央の凹こんだ領域における電極間距離よりも大きい。図14においても、振動電極25cと浮遊電極17qの間に第1可変容量C1が構成され、浮遊電極17qの主浮遊電極部とチャネル形成領域14の間に、主容量C31が構成されることが示されている。
第2ゲート絶縁膜16の膜厚TOX1=700nmとし、図13において主浮遊電極部を構成する実効ゲート電極を両側から挟む2つの長方形の補助浮遊電極部となる浮遊電極17qの寸法をそれぞれ30μm×15μmとすると、補助容量C32=44fFとなる。同一面積で、第2ゲート絶縁膜16の膜厚TOX1=800nmとすれば補助容量C32=39fFとなる。更に、図13に示した中央の実効ゲート電極(主浮遊電極)の寸法を4μm×4μmとし、実効ゲート領域中に定義される実効チャネル長Leff=2μm、第1ゲート絶縁膜12の膜厚TOX2=100nmとすると、実効チャネル長Leffの部分の活性領域での主容量C31=2.8fFとなる。実効チャネル長Leffの部分を囲む周辺の部分の実効ゲート電極の幅を4μmまで考慮すると、主容量C31=3.4fFとなる。
ここで、第1可変容量C1の両端の電圧をV1、主容量C31と補助容量C32の並列接続回路の両端の電圧をV3とすると、

11=(C31+C32)V3 ………(20)

となる。第1可変容量C1が微小変化ΔC1したとき、第1可変容量C1の両端の電圧V1が変化しないで、主容量C31の両端の電圧V3が、ΔV3だけ微少変化すると仮定すると、

(C1+ΔC1)V1=(C31+C32)(V3+ΔV3)………(21)

なる。式(21)の仮定が維持できるとすれば、主容量C31の両端の電圧V3の微少変化ΔV3は、

ΔV3=ΔC11/(C31+C32) ………(22)

となる。
主容量C31(正確には主容量C31と補助容量C32の並列接続回路)と第1可変容量C1との直列回路の両端に、直流バイアス電圧Vbiasが印加されるとする。式(4)と同様に、第1可変容量C1の両端の電圧をV1は、

1=(C31+C32)/(C1+C31+C32) ………(23)

となる。式(22)に式(23)の第1可変容量C1の両端の電圧V1を代入すると、主容量C31の両端の電圧V3の微少変化ΔV3は、

ΔV3=ΔC1bias/(C1+C31+C32) ………(24)

となる。
式(4)の右辺2行目を、主容量C31と補助容量C32を用いて書き直すと、
Figure 2023062603000011
と表現できる。式(25)の多変数関数F(C1,C31)の一つの変数である第1可変容量C1の変化に関する感度は、
Figure 2023062603000012
と表現できる。式(26)の多変数関数が示す感度特性は、他方の変数である主容量C31の変化に着目すると、上に凸の曲線である。
したがって、式(26)の多変数関数を、主容量C31の値を変数として着目して、∂C31で偏微分すると、
Figure 2023062603000013
となる。式(27)で示される多変数関数は、主容量C31の値を変数とした偏微分の微分値がゼロの場合に、式(26)が示す感度が最大値となる。
式(27)の偏微分値をゼロとするのは、偏微分の変数としての主容量C31の値が、第1可変容量C1の値から補助容量C32の値を引いた値に等しいときである。即ち、

31=C1-C32 ………(28)

のとき、主容量C31の両端の電圧V3の微少変化ΔV3が、最大となることが分かる。式(28)の意味するところは、補助容量C32の値を大きし、C32≒C1としておけば、主容量C31の値は小さくてもよい(C31<<C32)ということである。つまり、図14及び図15等に示す第2実施形態に係る音響誘導型半導体素子の構造によれば、第1ゲート絶縁膜12の膜厚tOX1を厚くできるということである。ただし補助容量C32の値は、第1可変容量C1の値にほぼ等しくする必要があるので、補助容量C32の値を決める第2ゲート絶縁膜16の膜厚tOX2の値には限界がある。
第2ゲート絶縁膜16はフィールド絶縁膜として機能しているものの、膜厚tOX2の値を、第1可変容量C1の値を第1可変容量C1の値に関係なく、あまり厚くはできないので第2ゲート絶縁膜16の膜厚tOX2の値には限界がある。式(8)等が示すとおり、電極間距離dは小さい方がよいことが要請されている。したがって、第1可変容量C1の値は大きい方が好ましく、補助容量C32の値も、第1可変容量C1の値に近い大きな値にする必要があるからである。第1可変容量C1の値に合わせて補助容量C32の値を大きくしたいときは、第2ゲート絶縁膜16の少なくとも一部に、HfSix膜(εr=11),La23膜(εr=21)、ZrO2膜(εr=25)、HfO2膜(εr=26)等の高誘電率膜を用いればよい。
この際、第1ゲート絶縁膜12にはSi表面との界面特性が良好なSiO2膜を用いることにより、絶縁ゲート型半導体素子のキャリアの移動度を高くでき、相互コンダクタンスgmを改善できる。第2ゲート絶縁膜16の少なくとも一部に高誘電率膜を採用すると、振動空洞28の周辺近傍の電界強度が強まる。よって、図6Aに例示したような、振動電極25cの中央部のみが撓む形状のプロファイルが改善される効果が奏される。振動電極25cの撓み形状のプロファイルが改善されるという効果を考慮すると、図14及び図15等に示すような中央が凹こんだ翼型の断面形状ではなく、第1ゲート絶縁膜12の膜厚tOX1を、第2ゲート絶縁膜16の膜厚tOX2と同程度に厚くして、上面を平坦にした断面形状でもよい。第1ゲート絶縁膜12の膜厚tOX1を、厚くすることにより、第1ゲート絶縁膜12の絶縁耐圧が向上する。
ここで、振動電極25cと浮遊電極17qの間の電極間距離d=100nmとし、振動電極25cと浮遊電極17qの間の第1可変容量C1=79.6fF≒80fFと仮定する。更に、振動電極25cと浮遊電極17qの間の電極間距離がΔd=10nm変化して、第1可変容量C1の値がΔC1=10%変化したとすると、ΔC1≒8fFとなる。上述した補助容量C32=44fF、主容量C31=2.8fF≒3fFの値を式(24)に代入すると、

ΔV3=8/(44+3+80)Vbias=(8/127)Vbias ………(29)

となる。第2電位である直流バイアス電圧Vbias=10Vの場合、主容量C31の両端の電圧V3の微少変化ΔV3=Vgs=0.63Vとなる。
チャネル幅W、実効チャネル長Leff、半導体中の電子の移動度μn、MOSキャパシタの単位面積当たりの容量Coxを用いると、MOSFETの相互コンダクタンスgは、

=μnoxW/Leff ………(30)

と表せる。上述した寸法を有する第2実施形態に係る音響誘導型半導体素子の構造を考慮すると、式(30)から、例えばg=3.45×10-6程度の値が得られる。よって、第2実施形態に係る音響誘導型半導体素子によれば、ソース・ドレイン間電圧Vds=1Vでも、上記のゲート・ソース間電圧Vgs=0.65Vを用いて、Ids=2.17μAの変化が得られることが分かる。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る音響誘導型半導体素子では、図16~図18に示すように、第2実施形態に係る音響誘導型半導体素子の浮遊電極17qを、所定の値に選んだ遅延抵抗RGNDを介して第1電位(接地電位)に接続する構造について説明する。後述するように、第1可変容量C1=40~100fF程度であれば、1~10MHz程度の超音波の周波数に対して遅延抵抗RGND=0.3MΩ~1GΩ程度の範囲内に選択するのが好ましい。既に説明した式(7)で示されるnMOSFETのゲート電圧の変化ΔV3の値は、振動電極と浮遊電極の間の電極間距離dが増大すると暫減する関数であるので、電極間距離dは小さい方が好ましい。又、第1実施形態に係る音響誘導型半導体素子で示した構造に対しては、式(14)からゲート電圧V3の変化ΔV3を最大化するためには、ゲート絶縁膜の膜厚tOXの膜厚を電極間距離dに合わせて薄くするのがよいという要請が発生する。更に、第2実施形態に係る音響誘導型半導体素子で示した構造に対しては、式(28)で示したように、主容量C31の値を、第1可変容量C1の値から補助容量C32の値を引いた値に等しくして、主容量C31の両端の電圧V3の微少変化ΔV3が最大としたいという要請が発生する。
浮遊電極17cの面積をS1、第1可変容量C1を構成する振動電極25cと浮遊電極17qの間の電極間距離をd、主容量C31を構成するゲート絶縁膜の厚さをtOX1、補助容量C32を構成するゲート絶縁膜の厚さをtOX2とする。なお、図17の断面図では、浮遊電極17q等の上に振動空洞を密閉空間として構成する空洞形成絶縁膜等の図示が省略されているが、図3と同様に空洞形成絶縁膜20等が備えられていることは勿論である。主容量C31を構成する主浮遊電極部の面積をαS1、補助容量C32を構成する補助浮遊電極部の面積をβS1とする(α+β=1)と、式(7)の計算のときと同様に、

31=ε0εrαS1/tOX1 ………(31)
32=ε0εrβS1/tOX2 ………(32)

となる。式(31)及び(32)のαとβは、主容量C31を構成する主浮遊電極部の電極面積と補助容量C32を構成する補助浮遊電極部の電極面積の分配率を決めている(β=1-α)。
式(25)の右辺第1行目に式(2)、(31)、(32)を代入すると、
Figure 2023062603000014
と表現できる。式(33)は、
Figure 2023062603000015
と書き換えることができる。
式(34)を∂dで微分すると、
Figure 2023062603000016
となることが分かる。式(35)において、αεr/tOX1の値を変数として着目し、ゲート電圧の変化ΔV3を大きくするために必要な、実効ゲート領域におけるゲート絶縁膜の膜厚tOX1の最適膜厚を検討してみる。
式(35)は、式(26)と同じ形式の多変数関数である。よって、式(35)の∂tOX1による偏微分は、式(26)の多変数関数の∂C31でによる偏微分と等価になる。よって式(28)と同様に、
Figure 2023062603000017
のとき、式(35)は最大値となる。しかし、これらの要請を考慮すると、実効ゲート領域におけるゲート絶縁膜の厚さtOX1が所望の電圧V3に対して耐圧的に不十分な場合が発生する。このため、第1可変容量C1=40~100fFの場合は、0.3MΩ~1GΩ程度の遅延抵抗RGNDの値を選択し、遅延抵抗RGNDを介して浮遊電極17qを接地する。このように、高感度化を目的とする遅延抵抗RGNDの値は、後述する図20B(a)に例示したようなハイパスフィルタ(HPF)のRC時定数τが目的とする仕様の周波数に適合するように、信号用第1可変容量C1の容量値を考慮して決めればよい。後述の図19B(a)に示した感度曲線等から分かるように、RC時定数τとの関係から遅延抵抗RGNDは1MΩ~1GΩ程度に選択すればよい。信号用遅延抵抗RGNDは、例えばチャネル形成領域14の内部に埋め込んだ埋込層、チャネル形成領域14の表面側の上部に設けた表面拡散層(表面埋込層)、第1ゲート絶縁膜12の上等の表面に設けたDOPOS膜や金属薄膜等の表面配線層で形成できる。
超音波強度1W/mのとき、水の粒子速度vは、

v=(2×1W/m/(1.5×10kg/m/s)1/2
=1.16×10-3m/s
=1.16mm/s ………(37)

となる。式(37)の粒子速度vを、1MHzにおける変位Δdに変換すると、

Δd=1.16×10-3m/s/(2π×10/s)
=17×10-10
=0.17nm ………(38)

となる。式(7)や式(7)に対応する式(35)等は、変動Δdの変動による感度を高めるためには、振動電極25cと浮遊電極17qの間の電極間距離dは小さい方が好ましいことを説明している。ここではd=100nmとすると、式(38)は、0,17%の電極間距離dの変動Δdを意味する。
第2実施形態に係る音響誘導型半導体素子と同様に、電極間距離d=100nmで振動電極25cと浮遊電極17qの間に第1可変容量C1=79.6fFが形成されているとすると、Δd=0,17%の変動であるから、ΔC=0.136fFとなる。更に、第2実施形態に係る音響誘導型半導体素子と同様に、第2ゲート絶縁膜16の膜厚TOX1=700nm、実効ゲート電極を挟む浮遊電極17qの寸法30μm×15μm、第2ゲート絶縁膜16の膜厚TOX1=800nm、実効ゲート電極のゲート幅W=4μm、実効チャネル長Leff=2μm、第1ゲート絶縁膜12の膜厚TOX2=100nmとする。この場合、第1可変容量C1=80fF、補助容量C32=44fF、主容量C31=3fFとなる。したがって、式(18)から、ΔC=0.136fFの変動に対し、主容量C31の両端の電圧V3の変動ΔV3が、

ΔV3=0.136/(44+3+80)Vbias
=1.07×10-3bias ………(39)

と、第2電位である直流バイアス電圧Vbiasに依存した形式で示される。式(39)から、直流バイアス電圧Vbias =100Vとすると、主容量C31の両端の電圧V3の変動ΔV3=ΔVgs=0.11Vとなる。
式(25)の右辺第1行目から分かるように、主容量C31の両端の電圧V3は、直流バイアス電圧Vbiasに依存している。式(39)と同様に、第1可変容量C1=80fF、補助容量C32=44fF、主容量C31=3fFとすると、式(25)の右辺第1行目は、

3=80Vbias/(44+3+80)
=(80/127)Vbias ………(40)

と、直流バイアス電圧Vbiasに依存した形式で表現される。
式(40)は、直流バイアス電圧Vbias=100Vが主容量C31と第1可変容量C1との直列回路の両端に印加されたとき、絶縁ゲート型キャパシタを構成する主容量C31の両端の電圧V3=63Vになることを意味している。このため、絶縁ゲート型キャパシタを構成する第1ゲート絶縁膜12の膜厚TOX2=100nmの耐圧の問題が発生する。このような事情から、第3実施形態に係る音響誘導型半導体素子では、第1可変容量C1=40~100fF程度であれば、図16~図18に示すように、浮遊電極17qと固定電位電極17rとの間に0.3MΩ~1GΩ程度の抵抗値を有する遅延抵抗RGNDを接続する。固定電位電極17rは接地電位(第1電位)に設定されているので、浮遊電極17qは、0.3MΩ~1GΩ程度の遅延抵抗RGNDを介して第1電位(接地電位)に接続され、第1ゲート絶縁膜12の直流電圧に対する耐圧を担保している。
例えば、第1可変容量C1=100fFに対し1MΩ程度の遅延抵抗RGNDを浮遊電極17qに繋いだ場合は、RC時定数τ=1×10-7s程度となる。このときHPFの遮断周波数fcHP=1/(2πτ)=1.6MHzとなるので、浮遊電極17qにはMHzオーダー以下の低周波信号や直流信号は入力できない。よって、浮遊電極17qはMHzオーダー以下の低周波信号や直流信号に対しては高インピーダンスの擬浮遊状態となっている。なお、第3実施形態に係る音響誘導型半導体素子の説明等においては、対象とする周波数帯以下の低周波信号や直流信号に対して、高インピーダンス(擬似的な浮遊状態)になっている電気的な状態を「少なくとも擬浮遊状態」と呼ぶ。この「少なくとも擬浮遊状態」は、第1及び第2実施形態に係る音響誘導型半導体素子の説明等で用いた「電気的な浮遊状態」を包括的に含む概念である。即ち、「少なくとも擬浮遊状態」とは、完全な電気的浮遊状態、若しくは選択した遮断周波数で決まる遅延抵抗RGNDで第1電位に接続された状態を意味する。予め定められた目的仕様の周波数に対して基準遮断周波数frefcを決めると、擬浮遊状態を実現する最小遅延抵抗RGNDminが決定できる。最小遅延抵抗RGNDminが決定できると、所望の周波数帯、例えばMHzオーダー以上の高周波帯において、第1可変容量C1の容量変化ΔCにより、第1ゲート絶縁膜12の耐圧を維持しながら、主容量C31の両端の電圧V3が高感度に変化できる条件が決まる。例えば、直流バイアス電圧Vbias=100Vを、主容量C31と第1可変容量C1との直列回路の両端に印加した状態で、1MHzの超音波が強度1W/mで入力したとき、式(38)に示したようにΔd=0.17nm変位する。擬浮遊状態では直流的に浮遊電極17qが接地されることになり、浮遊電極17qと上部電極25bとの間に直流バイアス電圧Vbiasのすべてが印加されることになる。このため後述するように、遅延抵抗RGNDなし(完全な浮遊状態)のときに比べて、擬浮遊状態ではより良く上部電極25bが引き寄せられることになり、感度が向上する。
電極間距離d=100nmの振動電極25cと浮遊電極17qの間にV1=100Vが印加されているとき、振動電極25cと浮遊電極17qとがなす第1可変容量C1=80fFとすれば、Δd=0.17nmの変位による第1可変容量C1の電荷の変位Δqは、

Δq=ΔC1・V1
=80fF×0.17%×100V
=13.6fQ ………(41)

となる。第3実施形態に係る音響誘導型半導体素子においても、図14に示した構造と同様に、補助容量C32と主容量C31との並列コンデンサ(C31+C32)=47fFに、式(41)の電荷Δqが誘起される。このため、第3実施形態に係る音響誘導型半導体素子の図17に示すチャネル形成領域14の表面ポテンシャルがΔq/(C31+C32)=0.29Vだけ変化し、絶縁ゲート型半導体素子が動作する。
図19A(a)の実線は、浮遊電極と固定電位電極との同心円状に分離パターンの電圧検出感度をシミュレーションした結果をプロットした図である。同心円状に分離パターンを有する分割ゲート構造における浮遊電極の電圧変化を電圧検出感度として 図19A(a)の左側の縦軸に示し、横軸には周波数変化を示している。シミュレーションは、米国ワイドリンガー・アソシエイツ(Weidlinger Associates)社が最初に開発した「圧電波動解析ソフトウェアPZFlex」を用いた。シミュレーションにおいては超音波入力に伴う機械的な振動空洞の振動と、この機械的な振動による第1可変容量C1の変化に伴う電気的な振動との両方を考慮している。
図2に示したトポロジとほぼ同様な外側の固定電位電極の円形のパターンの中央に設けられた円形の開口部の内部に、固定電位電極とは離間して円形の浮遊電極が配置された同心分離パターンを対象として、シミュレーションした。円形の浮遊電極の直径は18.75μmΦ、外側の固定電位電極の直径は60μmΦである。固定電位電極の内径と浮遊電極の外径とは直径方向に1.875μm離れている。シミュレーションでは、中央の浮遊電極を1MΩの抵抗で接地した。図19A(a)の実線は、第3実施形態に係る音響誘導型半導体素子の絶縁ゲート型半導体素子の動作を考慮しない場合において、絶縁ゲート型半導体素子のゲート電極の電圧変化を電圧検出感度としてシミュレーションした結果を示す。
図19A(a)の破線は、第3実施形態に係る音響誘導型半導体素子のように分割ゲート構造を有しない一様な円板からなる単一パターンの場合における、固定電位電極の電圧変化を、電圧検出感度として左側の縦軸に対して示した図である。図19A(a)の破線は、第3実施形態に係る音響誘導型半導体素子の浮遊電極と固定電位電極との同心分離パターンにおいて、外側の固定電位電極のパターンを省略して、固定電位電極の面積相当分を含む全領域を一様な浮遊電極とした構造に対応する。図19A(a)の破線のプロット曲線のシミュレーションの対象とした固定電位電極は、実線で示した分割ゲート構造の場合よりも更に小さな200kΩの抵抗で第1電位(接地電位)に接続されている。図19A(a)の破線も、第3実施形態に係る音響誘導型半導体素子の絶縁ゲート型半導体素子の動作を考慮せず、且つ外側の固定電位電極のパターンが存在しない場合において、絶縁ゲート型半導体素子のゲート電極の電圧変化を電圧検出感度としてシミュレーションした結果を示す図である。
図19A(a)の一点鎖線は、実線及び破線のプロット曲線との比較のために、従来の手法である固定電位電極による電荷検出の感度を右側の縦軸に示し、横軸の周波数変化に対してプロットした図である。一点鎖線の曲線が示すシミュレーションにおいては、破線の曲線が示すシミュレーションと同様に、固定電位電極は、分割ゲート構造を有しない一様な単一パターンである。図19A(a)の実線、破線及び一点鎖線の曲線が示すシミュレーションにおいて振動空洞28の周辺の構造は、絶縁ゲート型半導体素子が設けられていないことを除けば、図6Cに示した第1実施形態の改良構造に係る音響誘導型半導体素子の構造とほぼ同様である。即ちSi基板の上には、絶縁ゲート型半導体素子の代わりに固定電位電極が振動空洞28の底部を射影するように振動空洞28と同じ半径でパターニングされている。
そして、固定電位電極及び固定電位電極の周辺のSi基板の上には、厚さ250nmのSiO2膜からなるゲート絶縁膜(12,16)が全面に積層されている。ゲート絶縁膜(12,16)の上には、図19A(a)の実線の場合は厚さ50nmのDOPOS膜からなる浮遊電極17qと固定電位電極17oのパターンが形成されている。図19A(a)の破線及び一点鎖線の場合は、厚さ50nmの一様なDOPOS膜からなる固定電位電極がゲート絶縁膜(12,16)の上に積層されている。固定電位電極17oの外側及び固定電位電極の外側は、固定電位電極と同じ厚さ50nmのDOPOS膜からなるダミー層が、ゲート絶縁膜(12,16)の上に積層されている。
図6Cに示した構造とは異なり、シミュレーションにおいてはSi34膜からなる電界強化層19は用いられず、図3に示した構造と同様に振動空洞28を囲む厚さ100nmのSiO2膜からなる空洞形成絶縁膜20が、DOPOS膜からなるダミー層の上に積層されている。したがって、振動空洞28の高さは100nmに設定されている。そして、振動空洞28の上及び振動空洞28を囲む空洞形成絶縁膜20の上には厚さ50nmのSi34膜からなる振動膜23が全面に設けられている。振動膜23の上には厚さ50nmのAl膜からなる振動電極25cが振動空洞28の直上を覆うように局在したパターンとして設けられている。シミュレーションの実際においては、振動電極25cが振動空洞28の高さの半分程度となる50~60nmまで浮遊電極17qに近づいた状態を中心に解析している。
局在パターンである振動電極25cの周辺を囲む領域には、振動電極25cと同じ厚さ50nmのSiO2膜が、振動電極25cを囲むドーナツ状のパターンとして振動膜23の上に設けられている。振動電極25cと振動電極25cを囲むドーナツ状のSiO2膜のパターンの上には、厚さ1155~1330nmのSi34膜からなる振動電極保護膜26が全面に積層されている。図6Cに示した構造とは異なり、Si34膜からなる局在パターンである剛性強化蓋部31cのパターンは、シミュレーションでは設けられていない。シミュレーションに際しては、振動電極保護膜26の上には、水の厚い層が更にあるとしている。又、振動電極25cと固定電位電極の間に、第2電位として130Vの直流バイアスVbiasを印加してシミュレーションしている。
図19A(a)の実線に示すシミュレーション結果から分かるように、浮遊電極と固定電位電極とに、固定電位電極を同心状のパターンに分離した分割ゲート構造の場合は、2~50MHzの周波数域にて,数μV/Pa~13μV/Paの感度が得られると予想できる。一方、図19A(a)の破線に示すように、固定電位電極が一様な平板である場合は、2~50MHzの周波数域にて,1μV/Pa~5μV/Paの感度が得られると予想できる。数μV/Paの感度は、現在最も広く使われている医療診断用圧電プローブと同程度の感度である。また,従来の電荷検出型cMUTに1pF程度の帰還容量の電荷増幅器を接続して電圧に変換した場合と同程度の感度であることがわかる。実際の超音波のパワーはkPa~MPa程度であるので、図19A(a)の実線や破線は数mVから数V若しくは10V以上の電圧変動が得られることを示している。
なお、図19A(a)のシミュレーションで得られた数μV/Paの感度は、絶縁ゲート型半導体素子の動作を考慮しない場合の結果であることに留意が必要である。第3実施形態に係る音響誘導型半導体素子は絶縁ゲート型半導体素子を備えているので、式(9)や式(30)に示したMOSFETの相互コンダクタンスg等の絶縁ゲート型半導体素子の増幅率を考慮する必要がある。絶縁ゲート型半導体素子の増幅率を考慮すると、第3実施形態に係る音響誘導型半導体素子は、従来の電荷検出型cMUTの電荷増幅器を接続した場合に比して、飛躍的に高い感度が得られることが分かる。
図19A(a)の実線のカーブと破線のカーブを比較すると、固定電位電極を同心状のパターンに分離した分割ゲート構造の方が、固定電位電極が一様な平板である場合に比して電圧検出感度が高いことを示している。分割ゲート構造の方が、電圧検出感度を高くできるということは、図6Aに示したような振動電極の撓み形状のプロファイルに依拠していると考えられる。上述したとおり、振動電極25cの中央付近が撓んで、50~60nmまで浮遊電極17qに近づいた状態でのシミュレーションである。振動電極25cの撓みが中央のみが深くなるため、電極間隔が一様ではなく、電界強度が強くなる振動電極25cと浮遊電極17q又は固定電位電極17oの有効位置が、浮遊電極17q側の中央付近に局在するように分布していることに起因していると考えられる。しかし、逆に考えると、感度は低くなるが、浮遊電極17qと固定電位電極17oとの同心分離パターンにおいて、外側の固定電位電極17oのパターンを省略してもよいことを意味している。即ち、本発明では、浮遊電極17と固定電位電極17oに分割する分割電極の構造は必須ではない、ということに留意が必要である。
図19A(a)の一点鎖線が示す曲線は、比較のために、従来の手法である電荷検出法の手法による感度の周波数依存性を示しているが、周波数12.5MHz付近に鋭い共振ピークを有している。電圧検出型である図19A(a)の実線からなる曲線も、周波数12.5MHz付近に共振ピークを有するが、電圧検出型のピークの半値幅は一点鎖線の電荷検出型に比して遙かに広い。図19A(a)の破線の曲線も電圧検出型であるが、周波数17.5MHz付近に共振ピークを有する。図19A(a)の破線が示す曲線が呈するピークの半値幅は、一点鎖線に比して遙かに広く、電圧検出型は電荷検出型に比して周波数帯域が広いことがわかる。
図19A(b)の実線、破線及び一点鎖線の曲線が示すシミュレーション結果は、図19A(a)に示した実線、破線及び一点鎖線の曲線と同じ線種の場合にそれぞれ対応している。図19A(b)のシミュレーションの対象とした構造は、図19A(a)のシミュレーションの対象とした構造と共通部分を有する。しかし、図19A(a)のシミュレーションの対象とした構造では、Si34膜からなる振動電極保護膜26が水の層に接していたのに対し、図19A(b)のシミュレーションが対象とした構造では、Si34膜からなる振動電極保護膜26の上に、図8に示した構造と同様に、厚さ4μmのエポキシ樹脂からなる第2振動電極保護膜33が一様に全面に塗布されている特徴が異なる。他は図19A(a)のシミュレーションで説明した構造と同一であるので重複した説明を省略する。そして、第2振動電極保護膜33が水の層に接している。振動電極25cと固定電位電極の間に、130Vの直流バイアスVbiasを印加してシミュレーションしている点は、図19A(a)に示した図19A(a)に示したと同様である。
図19A(b)の実線は、浮遊電極と固定電位電極との同心分離パターンを有する分割ゲート構造における浮遊電極の電圧変化を電圧検出感度として縦軸に示し、横軸の周波数変化に対してプロットした図である。シミュレーションでは、図19A(a)と同様に、中央の浮遊電極を1MΩの抵抗で接地した。図19A(b)の実線は、第3実施形態に係る音響誘導型半導体素子の絶縁ゲート型半導体素子の動作を考慮しない場合において、絶縁ゲート型半導体素子のゲート電極の電圧変化を電圧検出感度としてシミュレーションした結果を示す図である。
図19A(b)の破線は、分割ゲート構造を有しない一様な単一パターンの場合における、固定電位電極の電圧変化を、電圧検出感度として縦軸に示した図である。図19A(b)の破線のプロット曲線のシミュレーションの対象とした固定電位電極は200kΩの抵抗で第1電位(接地電位)に接続されている。図19A(b)の破線も、第3実施形態に係る音響誘導型半導体素子の絶縁ゲート型半導体素子の動作を考慮せず、且つ外側の固定電位電極のパターンが存在しない場合において、絶縁ゲート型半導体素子のゲート電極の電圧変化を電圧検出感度としてシミュレーションした結果を示す図である。図19A(b)の一点鎖線は、従来の手法である電荷検出の感度を右側の縦軸に示し、横軸の周波数変化に対してプロットした図である。一点鎖線の曲線が示すシミュレーションにおいては、破線の曲線が示すシミュレーションと同様に、固定電位電極は、分割ゲート構造を有しない一様な単一パターンを対象としている。
図19A(b)の実線に示すシミュレーション結果から分かるように、浮遊電極と固定電位電極とに、固定電位電極を同心状のパターンに分離した分割ゲート構造の場合は、2~50MHzの周波数域にて,0.5μV/Pa~6μV/Paの感度が得られると予想できるが、図19A(a)に比して感度が低い。一方、図19A(b)の破線に示すように、固定電位電極が一様な平板である場合は、2~50MHzの周波数域にて,1μV/Pa~5μV/Paの感度が得られると予想できるが、図19A(a)に比して感度が低い。図19A(b)のシミュレーションで得られた数μV/Paの感度は、絶縁ゲート型半導体素子の動作を考慮しない場合の結果である。絶縁ゲート型半導体素子の増幅率を考慮すると、第3実施形態に係る音響誘導型半導体素子は、エポキシ樹脂からなる第2振動電極保護膜33が一様に全面に塗布されている場合であっても、従来の電荷検出型に比して、飛躍的に高い感度が得られることが分かる。実際の超音波のパワーはkPa~MPa程度であることを鑑みれば、図19A(b)の実線や破線は数mVから数Vの電圧変動を得ることが可能であることを示している。
図19A(b)の実線からなる曲線と破線が示す曲線を比較すると、分割ゲート構造の方が、固定電位電極が一様な平板である場合に比して電圧検出感度が高いことが分かる。しかし、逆に考えると、感度は低くなるが、同心分離パターンにおいて、外側の固定電位電極のパターンを省略してもよいことを意味している。即ち、本発明では、浮遊電極と固定電位電極に分割する分割電極の構造は必須ではない。
図19A(b)の一点鎖線からなる曲線は、電荷検出法の手法による感度の周波数依存性を示しているが、3MHz以下の低周波側と、周波数11MHz付近に鋭い共振ピークを有している。電圧検出型である図19A(b)の実線が示す曲線も、図19A(a)とほぼ同じ周波数12.5MHz付近に共振ピークを有する。図19A(b)の実線が示す曲線が示す電圧検出型のピークの半値幅は、周波数11MHz付近の一点鎖線の曲線が示す電荷検出型のピークの半値幅より少し広い。図19A(b)の破線の曲線も電圧検出型であるが、図19A(a)の破線の曲線とほぼ同じ周波数17MHz付近に共振ピークを有する。図19A(b)の破線の曲線が呈するピークの半値幅は、一点鎖線に比して広く、電圧検出型は電荷検出型に比して周波数帯域が広いことがわかる。
第3実施形態に係る音響誘導型半導体素子に用いる遅延抵抗RGNDの値について説明するために、図19B(a)に、圧電波動解析ソフトウェアPZFlexによる浮遊電極の電圧検出感度の接地抵抗依存性のシミュレーション結果を示す。即ち、図19B(a)は、図19A(a)に実線で示した浮遊電極と固定電位電極との同心円状に分離パターンを有する分割ゲート構造において、浮遊電極の電圧変化を電圧検出感度として、接地抵抗となる遅延抵抗RGNDの値を変えた場合の変化を示す。図19A(a)の場合と同様に、内側の浮遊電極の直径は18.75μmΦ、外側の固定電位電極の直径は60μmΦとしたが、振動電極と浮遊電極の間の電極間距離d=134nmとしてシミュレーションしている。図19A(a)には、2~50MHzの周波数域において中央の浮遊電極を1MΩの遅延抵抗RGNDで接地した場合の電圧検出感度のシミュレーション結果を実線で示したが、図19B(a)は、そのうちの1~16MHzの周波数域に着目した感度曲線である。図19B(a)の感度曲線によれば、遅延抵抗RGND=500kΩ→400kΩ→300kΩ→200kΩ→100kΩと、浮遊電極を接地する遅延抵抗RGNDの値を減少させるに従い、電圧検出感度の周波数依存性に現れる共振ピークのピーク値が、遅延抵抗RGND=1MΩの場合の感度曲線に比し減少している。図19B(a)に示された一群の感度曲線から、遅延抵抗RGND=1MΩの場合が、第3実施形態に係る音響誘導型半導体素子で例示した構造に対する最小遅延抵抗RGNDminであると判断できる。
即ち、第1可変容量C1の値が40fF程度の場合は、浮遊電極を接地する最小遅延抵抗RGNDmin=1MΩ以下にするのは高感度化の目的には好ましくないと判断できる。又、遅延抵抗RGND=500kΩ→400kΩ→300kΩ→200kΩ→100kΩと遅延抵抗RGNDの値を減少させるに従い、周波数依存性に現れる共振ピークの中心周波数が最小遅延抵抗RGNDmin=1MΩの場合の8.3MHz程度の値から5MHz程度の低周波側に移動することも分かる。一方、図19B(a)の感度曲線は、遅延抵抗RGND=2MΩ→5MΩ→10MΩ→20MΩ→20MΩ→50MΩと遅延抵抗RGNDの抵抗値を増大させると、電圧検出感度の周波数依存性に現れる共振ピークのピーク値が、最小遅延抵抗RGNDmin=1MΩの場合に比し、増大することを示している。
ただし、電圧検出感度のピーク値の増大は遅延抵抗RGND=5MΩ程度から飽和の傾向を示し始めている。したがって、遅延抵抗RGNDの値は第1可変容量C1の値が40fF程度の場合においては、1~5MΩ程度以上あれば電圧検出感度を高い値に維持するために十分であることが分かる。浮遊電極を接地する遅延抵抗RGND=1MΩ程度以上という値は、予め設計仕様から定めた基準遮断周波数frefcに対応するRC時定数τを定義する抵抗値に比し、少し大きめの遅延抵抗RGNDの値に設定するのが好ましいということを意味する。又、遅延抵抗RGND=2MΩ→5MΩ→10MΩ→20MΩ→20MΩ→50MΩと増大した場合、周波数依存性に現れる共振ピークの中心周波数は、最小遅延抵抗RGNDmin=1MΩの場合の8.3MHz程度の値から8.7MHz程度までごく僅かに高周波側に移動することが分かる。遅延抵抗RGND=50MΩでは、8.7MHzにおいて40μV/Paの電圧検出感度が得られることが分かる。曲線が重なるため図示を省略しているが、遅延抵抗RGND=100MΩでは8.7MHzのピークにおいて40.05μV/Paの電圧検出感度で、遅延抵抗RGND=50MΩのピーク値に比し微増であり、ほぼ増大が飽和していると認められる。
更に、図19B(a)には、遅延抵抗RGND=∞のとき、即ち浮遊電極を接地しない場合の電圧検出感度の周波数依存性のシミュレーション結果を、破線の感度曲線で示した。浮遊電極を接地しない場合の感度曲線に現れる共振ピークのピーク値は6μV/Pa程度であり、遅延抵抗RGND=50kΩで浮遊電極を接地したときと同程度の小さな値である。これは、遅延抵抗RGND=5MΩで浮遊電極を接地した場合の36μV/Pa程度の値の約1/6になっている。又、浮遊電極を接地しない場合の感度曲線の共振ピークの中心周波数は10.8MHz程度であり、遅延抵抗RGND=5MΩで浮遊電極を接地した場合の共振ピークの中心周波数よりも約2MHz高周波側に移動している。
図19B(a)に示す浮遊電極を接地しない場合(遅延抵抗RGND=∞)の感度曲線と、遅延抵抗RGNDで浮遊電極を接地した場合の一群の感度曲線を比較すると、適切な値の遅延抵抗RGNDで浮遊電極を接地した方が、浮遊電極を接地しない場合に比して電圧検出感度が高くなることが分かる。図19B(a)は、適切な値の遅延抵抗RGNDで浮遊電極を接地した方が、振動電極を浮遊電極がしっかり引っ張ることができるようになり、高感度化できることを示している。図19Cには、機械・音響の力学的な振動系を交流電気回路理論で用いられる等価回路で統一的に取り扱う電気機械音響類似による等価回路のモデルを示している。図19Cにモデル的に表示した等価直列インダクタンスLmは、力学的振動系において振動している部分である振動電極や振動膜の質量に相当する。
図19Cに交流電気回路理論の記号を用いて表示した等価直列静電容量Cmは、機械的な運動における振動電極や振動膜の弾力に相当する容量型音響素子のコンプライアンスである。図19Cに表示した等価直列抵抗rmは、振動電極等の振動時の内部摩擦や容量型音響素子の振動空洞を囲む空洞絶縁膜等の支持系の機械的な損失や音響損失等の振動エネルギの損失成分である。図19Cに矩形の破線で囲って示した環振動空洞領域28eは、図3に示した断面図に対応させると、振動空洞28を上下に挟む振動電極(上部電極)25cと下部電極(17c,17o)、並びに振動空洞28を横から囲む空洞形成絶縁膜20等の領域を示している。
図19Cに矩形の破線で示した環振動空洞領域28eの部分の電気機械音響類似による等価回路は、水晶振動子の解析等の力学的振動系分野でも良く知られている等価回路である。交流電気回路理論のLCR共振回路と同様に、図19Cの等価回路の記号で表現すると、環振動空洞領域28eは、水晶振動子の場合と同様に、以下の式(42a)に示した直列共振周波数f及び式(42b)に示したような並列共振周波数(反共振周波数)fの2つ共振周波数を持っている共振回路である。並列共振周波数fは、環振動空洞領域28eの部分の等価回路のインピーダンスを無限大にする共振周波数であり、直列共振周波数fはインピーダンスを無限小にする共振周波数である。
Figure 2023062603000018
図19Cに示した振動電極や振動膜の弾力に相当するコンプライアンスCmの値が、第1可変容量C1の値より十分に小さいとき、即ち、

m << C1 ………(43)

であれば、式(42a)及び式(42b)から

< f………(44)

となることが分かる。即ち、遅延抵抗RGNDが大きい(インピーダンスが大きい)と高周波側の反共振周波数(並列共振周波数)fに近づき、遅延抵抗RGNDが小さい(インピーダンスが小さい)と低周波側の直列共振周波数fに近づくことを、図19B(a)に示したシミュレーションの結果は示している。図19B(a)に示した例では、5MHz程度の低周波側共振周波数f1と、8.7MHz程度の高周波側共振周波数f2があることが分かる。低周波側共振周波数f1は、直列共振周波数fに対応すると考えられる。図19B(a)では、更に高周波側の10.8MHz程度の周波数に破線で示したように、浮遊電極を接地しない場合(完全な浮遊状態の場合)の共振ピークが認められる。破線で示した完全な浮遊状態(オープン)の場合の共振ピークは、並列共振周波数fに対応すると考えられる。
図19B(a)は、広帯域遅延抵抗RWBGND=300kΩ~500kΩのときの電圧検出感度を示す感度曲線が、広帯域の拡がりを持って変化していることを示している。即ち、HPFの基準遮断周波数frefcと同等のRC時定数τを与える広帯域遅延抵抗RWBGND=300kΩ~500kΩの領域では、高周波側共振周波数f2と低周波側共振周波数f1の両方の寄与があるので、広帯域感度特性になっていると推定できる。一例をあげれば、基準遮断周波数frefcを、

=f1 < frefc < f2 < f………(45)

等のように、低周波側共振周波数f1又は高周波側共振周波数f2に近い値に定めればよい。式(45)に示した並列共振周波数fや直列共振周波数fの値は、図19Cに示した振動電極や振動膜の質量に相当する等価直列インダクタンスLm、振動電極や振動膜の弾力に相当する容量型音響素子のコンプライアンスCm及び第1可変容量C1の値に依存する。
図示を省略しているが、第1可変容量C1の値を小さくした場合もシミュレーションしている。即ち、内側の浮遊電極の直径12.5μmΦ、外側の固定電位電極の直径40μmΦ、固定電位電極と浮遊電極との直径方向ギャプ1.25μm、振動電極と浮遊電極の電極間距離d=180nmとした場合もシミュレーションした。第1可変容量C1の値を小さくすると、完全な浮遊状態(RGND=∞)の共振ピークが9.4MHzになり、並列共振周波数fが図19B(a)に示した10.8MHzから低周波側に移動するという結果が得られている。式(42b)における第1可変容量C1の値の減少の寄与と考えられる。高周波側共振周波数f2も7.5MHz程度と図19B(a)に示した場合より僅かに低周波に移動する(移動量は並列共振周波数fの変化よりも小さい)という結果が得られている。低周波側直列共振周波数f1は4.3MHz程度となり、図19B(a)に示した場合より低周波側に移動している。式(42a)を考慮すると、等価直列インダクタンスLmやコンプライアンスCmの変化の寄与があると思われる。又、広帯域感度特性を示す広帯域遅延抵抗RWBGND=1~2MkΩとなり、図19B(a)に示した場合よりも大きな値になっている。これは、RC時定数τを決める第1可変容量C1の値が小さくなった分を、広帯域遅延抵抗RWBGNDの増大による補償の寄与が、基準遮断周波数frefcの変化に対し相対的に大きくなっているためと推定できる。
並列共振周波数fは、電気機械結合が小さい場合における機械的共振周波数に対応し、高周波側共振周波数f2は、電気機械結合による正帰還が弱い場合における共振周波数に対応し、低周波側共振周波数f1(=f)は、電気機械結合による正帰還が働き振動電極等の弾力が柔らかく見える周波数に対応する。図示を省略しているが、低周波側に現れる直列共振周波数fは、直流バイアス電圧Vbiasを下げると、電気との結合のない高周波数側の共振周波数側に移動することがシミュレーションにより確認されている。例えば、遅延抵抗RGND=1kΩ及び5kΩの場合に認められる直列共振周波数fのそれぞれは、直流バイアス電圧Vbias=130V→127V→123V→116V→109V→82V→58Vと次第に下げると、直流バイアス電圧Vbias=130Vの場合の5MHzから13MHzの並列共振周波数f側に移動する。逆に言えば、直流バイアス電圧Vbiasを上げていくと,電気機械結合による正帰還が強くなるため低周波側の直列共振周波数f側へ移動するということになる。
図19B(b)は、超音波から電気へのエネルギ変換効率の周波数依存性を意味する変換効率曲線を示す。遅延抵抗RGND=100kΩのときの周波数5MHzでのエネルギ変換効率が0.5であり最も高いが、遅延抵抗RGND=200kΩ→300kΩ→400kΩ→500kΩ→1MΩと遅延抵抗RGNDの値を増大させると、変換効率曲線のピークの中心周波数は8.3MHzに向かって変化し、変換効率曲線のピーク値も減少している。更に遅延抵抗RGND=2MΩ→5MΩ→10MΩ→20MΩ→50MΩと増大させると、変換効率曲線のピークの中心周波数は8.7MHzに向かって変化しピーク値も減少している。図示を省略しているが、図19B(b)の遅延抵抗RGND=50MΩの変換効率曲線の下には、遅延抵抗RGND=50MΩの変換効率曲線のピーク値の約2/3のレベルで遅延抵抗RGND=100MΩの変換効率曲線が中心周波数を共通にして存在している。
しかし、遅延抵抗RGND=200kΩ→300kΩ→400kΩ→500kΩと増大させるに従い、変換効率曲線のピークの半値幅も広がっていることがわかる。図19B(b)から、広帯域遅延抵抗RWBGND=300kΩ~500kΩのエネルギ変換効率の変化を示す変換効率曲線が広帯域であることが分かる。即ち、変換効率曲線の占める面積の積分値は、遅延抵抗RGNDの値が広帯域遅延抵抗RWBGND=300kΩ~500kΩ程度のときが、他の遅延抵抗RGNDの場合よりも大きく、超音波から電気へのエネルギ変換効率が高い。広帯域遅延抵抗RWBGND=300kΩ~500kΩ程度のときは、リンギングの原因となる振動エネルギが電気エネルギとして吸収されるため、超音波-電気変換の帯域が広がることを示している。更に、遅延抵抗RGNDの値が最小遅延抵抗RGNDmin=1MΩ以上に大きくなると、超音波から電気へのエネルギ変換効率が下がっていることを図19B(b)は示している。
図19B(a)及び(b)から、第1可変容量C1=40~100fF程度を用いる場合であって、8MHz程度の超音波を検出する際には、

(a)高感度化には最小遅延抵抗RGNDmin=1MΩ以上が好ましい;
(b)広帯域化には広帯域遅延抵抗RWBGND=300kΩ~500kΩ程度が好ましい、

ということが分かる。図19B(a)及び(b)に示した広帯域遅延抵抗RWBGND=300kΩ~500kΩの曲線が示す広帯域感度特性は、第3実施形態に係る音響誘導型半導体素子を、単位セルとして共通基体上に集積化した音響素子集積回路を医療目的等に用いる場合において、高精細な画像の撮像目的の仕様に対し極めて重要となる。
<<第3実施形態の第1変形例>>
本発明の第3実施形態の第1変形例に係る音響誘導型半導体素子は、図20A及び図20B(a)に示すように、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGと参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFが、固定電位電極17oを挟んで、並列に対称配置されている。信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGと参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFは、互いに同一寸法、同一構造、同一特性となるように設計されている。ただし図20B(a)の等価回路に示すように、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGのゲート電極には、第1可変容量C1が接続されているが、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFのゲート電極には、第1可変容量C1に対応する容量が接続されていないことが相違する。
図20Aでは図示を省略しているが、例えば、実効ゲート電極となる参照用主浮遊電極17q21及び参照用主浮遊電極17q21側から右方向に延在する矩形の参照用補助浮遊電極17q22の上方には第1電位(接地電位)に接続されたW等のシールド板が配置されている。これに対し、実効ゲート電極となる信号用主浮遊電極17q11及び信号用主浮遊電極17q11から左方向に延在する矩形の信号用補助浮遊電極17q12の上方には振動空洞が構成され、振動空洞のギャップが第1可変容量C1として機能している。図20Aに示すように、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFの参照用主浮遊電極17q21側から右方向に延在する参照用補助浮遊電極17q22の面積と、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGの信号用主浮遊電極17q11から左方向に延在する信号用補助浮遊電極17q12の面積を等しくすることにより、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFと信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGの容量特性が等しくなっている。
図20Aの左側に示した信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGを構成する信号用主浮遊電極17q11から左方向に延在する矩形の信号用補助浮遊電極17q12は、0.3MΩ~1GΩ程度の信号用遅延抵抗RGND1を介して第1電位(接地電位)に接続されている。即ち、図20B(a)の等価回路に示すように、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGのゲート電極への入力回路には、第1可変容量C1と信号用遅延抵抗RGND1からなるハイパスフィルタ(HPF)が接続されている。一方、図20Aの右側に示した参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFを構成する参照用主浮遊電極17q21から右方向に延在する参照用補助浮遊電極17q22は、1MΩ~1GΩ程度(以下において「1MΩ程度以上」と略記する。)の参照用遅延抵抗RGND2を介して第1電位(接地電位)に接続されている。式(40)で説明したとおり、例えば直流バイアス電圧Vbias=100Vを信号用主容量C31と信号用第1可変容量C1との直列回路の両端に印加するとすれば、絶縁ゲート型キャパシタを構成する信号用主容量C31の両端の電圧V3=63Vになる。
これに対し、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFのゲート電極には、等価回路として、第1可変容量C1に対応する容量が接続されていないので、絶縁ゲート型キャパシタを構成する参照用主容量C31の両端には電圧が静電誘導されない。更に、図20Aに示すように、信号用主浮遊電極17q11から左方向に延在する信号用補助浮遊電極17q12の右上のコーナと、信号用補助浮遊電極17q12を囲む固定電位電極17oの間に1MΩ程度以上の抵抗値を有する信号用遅延抵抗RGND1が接続されている。固定電位電極17oは、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGと参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFに挟まれる中央の帯状のパターンの他、中央の帯状のパターンに接続され、信号用補助浮遊電極17q12を囲むパターンとして、信号用補助浮遊電極17q12及び参照用補助浮遊電極17q22の周辺部に配置されている。
信号用遅延抵抗RGND1は、埋込層、表面拡散層、DOPOS膜や金属薄膜等の表面配線層で形成できる。信号用遅延抵抗RGND1は、信号用補助浮遊電極17q12の右上のコーナから信号用補助浮遊電極17q12の上辺、左辺及び下辺を囲んで、逆向きのコの字型に直角に曲がり、信号用補助浮遊電極17q12の右下のコーナ付近で固定電位電極17oに接続されている。又、参照用主浮遊電極17q21から延在する参照用補助浮遊電極17q22の左上のコーナと、参照用補助浮遊電極17q22を囲む固定電位電極17oの間に1MΩ程度以上の抵抗値を有する参照用遅延抵抗RGND2が接続されている。参照用遅延抵抗RGND2は、信号用遅延抵抗RGND1と同一不純物密度、同一深さの埋込層、同一不純物密度、同一深さの表面拡散層、同一不純物密度、同一厚さのDOPOS膜や同一材料、同一厚さ金属薄膜等の表面配線層等を同一長さにすることで形成できる。
参照用遅延抵抗RGND2は、参照用補助浮遊電極17q22の左上のコーナから参照用補助浮遊電極17q22の上辺、右辺及び下辺を囲んで、コの字型に直角に曲がり、参照用補助浮遊電極17q22の左下のコーナ付近で固定電位電極17oに接続されている。固定電位電極17oは接地電位(第1電位)に設定されているので、信号用主浮遊電極17q11及び参照用主浮遊電極17q21は、それぞれ、1MΩ程度以上の信号用遅延抵抗RGND1及び参照用遅延抵抗RGND2を介して第1電位(接地電位)に接続され、信号用第1ゲート絶縁膜及び参照用第1ゲート絶縁膜の直流電圧に対する耐圧を担保している。
HPFを構成するように、1MΩ程度の信号用遅延抵抗RGND1を信号用主浮遊電極17q11にT型に繋ぐことにより、図20B(a)のHPFは、RC時定数τ=1×10-7s程度以下に対応する低周波側の信号を遮断する。したがって、HPFによって、信号用主浮遊電極17q11にはMHzオーダー以上の高周波信号のみが入力し、高電圧である直流バイアスVbiasは信号用遅延抵抗RGND1によって接地される。同様に、1MΩ程度の参照用遅延抵抗RGND2を参照用主浮遊電極17q21に繋ぐことにより、RC時定数τ=1×10-7s程度の周波数特性となるので、参照用主浮遊電極17q21にはMHzオーダー以下の低周波信号や直流信号は入力できない。したがって、信号用主浮遊電極17q11は、MHzオーダー以下の低周波信号や直流信号に対しては擬浮遊状態となっている。即ち、MHzオーダーの信号用第1可変容量C1の容量変化ΔCにより、信号用第1ゲート絶縁膜の耐圧を維持しながら、信号用主容量C31の両端の電圧V3は変化できる。同様に、参照用主浮遊電極17q21はMHzオーダー以下の低周波信号や直流信号に対して擬浮遊状態となっている。参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFのゲート電極には第1可変容量C1に対応する容量が接続されていないので、絶縁ゲート型キャパシタを構成する参照用主容量C31の両端の電圧V3は変化しない。
第3実施形態の第1変形例に係る音響誘導型半導体素子においても、図14に示した構造と同様に、信号用補助容量C32と信号用主容量C31との並列コンデンサ(C31+C32)に、式(41)の電荷Δqが誘起される。このため、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGのチャネル形成領域14の表面ポテンシャルがΔq/(C31+C32)だけ変化し、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGが動作する。参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFのゲート電極には第1可変容量C1に対応する容量が接続されていないので、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFは初期設定された一定の動作状態を維持している。
図20B(a)に示すように、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGの第2主電極領域から出力抵抗RD1を介して電圧信号出力VSIGを取り出し、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFの第2主電極領域から出力抵抗RD2を介して参照信号VREFを取り出している。参照信号VREFは、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGが無負荷のとき、即ち、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGに超音波の信号が入力されていないときの電圧信号出力VSIGに対応する。常に無負荷状態に設定されている参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFから参照信号VREFを取り出すためには、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIG及び参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFのいずれも、同一特性のデプレッション型MOSFETとしておけばよい。
図20Aに示すように、同一特性、同一パターンの信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGと参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFを並列に鏡像対称に配置し、電圧信号出力VSIGと参照信号VREFを比較することにより、同相の雑音や絶縁ゲート型半導体素子の製造工程による特性のバラツキを打ち消すことができる。特に、第3実施形態の第1変形例に係る音響誘導型半導体素子によれば、振動電極25cの振動による電位変動の影響を打ち消すことができるので、振動電極25cへの印加電圧を上げることができる。振動による電位変動の影響を打ち消すことにより、振動空洞の高さを低くし、第1可変容量C1の容量値を増加させることもできる。第1可変容量C1の容量値が増加すると、式(22)に示したように主容量C31の両端の電圧V3の微少変化ΔV3が増大する。よって、第3実施形態の第1変形例に係る音響誘導型半導体素子によれば、第1可変容量C1の容量値を増加させることができるので、主容量C31に印加する電圧V3の微少変化ΔV3を増加して、検出感度を向上させることができる。
<<第3実施形態の第2変形例>>
本発明の第3実施形態の第2変形例に係る音響誘導型半導体素子は、図20Aに示した平面図と同様に、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGと参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFが近接して並列配置された構造が前提である。信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGのゲート電極に第1可変容量C1と信号用遅延抵抗RGND1からなるHPFが接続されている点では、図20B(a)に示した等価回路と同様である。しかしながら、図20B(b)に例示したように、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFのゲート電極には参照用遅延抵抗RGND2が接続されていない点が、図20B(a)に例示した等価回路とは異なる。
第3実施形態の第1変形例に係る音響誘導型半導体素子で述べたように、第2変形例に係る音響誘導型半導体素子において、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGと参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFを近接して並列配置した構成の目的は、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGの内部に発生する無負荷時(超音波信号が入っていないとき)の暗雑音や絶縁ゲート型半導体素子の製造工程による特性のバラツキを打ち消すことである。
第1変形例に係る音響誘導型半導体素子と同様に、第2変形例に係る音響誘導型半導体素子においても、参照用主浮遊電極17q21及び参照用補助浮遊電極17q22の上方には接地電位に接続されたW等のシールド板を配置している。即ち、第2変形例に係る音響誘導型半導体素子においても、参照用主浮遊電極17q21及び参照用補助浮遊電極17q22に対して、第1可変容量C1が機能しないようになっているので、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFのゲート絶縁膜の耐圧の問題はない。図20B(a)に示した第1変形例の等価回路では参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFのゲート電極に参照用遅延抵抗RGND2を介して接地電位(第1電位)に接続していたが、ゲート電極を接地電位にする目的であれば、参照用遅延抵抗RGND2も不要であるので、第2変形例では参照用遅延抵抗RGND2を削除し、回路構成を簡略化している。
<<第3実施形態の第3変形例>>
平面図の図示を省略しているが、図20B(c)に等価回路を示す本発明の第3実施形態の第3変形例に係る音響誘導型半導体素子も、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGと参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFが近接して並列配置されている。信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGの内部に発生する無負荷時のダーク雑音や絶縁ゲート型半導体素子の製造工程による特性のバラツキを打ち消すことを目的としていることは、第3実施形態の第1及び第2変形例に係る音響誘導型半導体素子と同様である。信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGのゲート電極に第1可変容量C1と信号用遅延抵抗RGND1からなるHPFが接続されている点では、図20B(a)に示した等価回路と同様である。
図示を省略しているが、第1及び第2変形例に係る音響誘導型半導体素子で述べたのと同様に、参照用主浮遊電極17q21及び参照用補助浮遊電極17q22の上方には接地電位に接続されたW等のシールド板を配置している。シールド板の配置により、第1可変容量C1が参照用主浮遊電極17q21及び参照用補助浮遊電極17q22に対して機能しないため、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFの実効ゲート領域には、高電圧は発生しない。図20B(b)に示した第2変形例の等価回路では、参照用遅延抵抗RGND2を削除してゲート電極を直接接地したが、図20B(c)に示した第3変形例の等価回路では、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFのゲート電極に所定の参照用ゲート電圧Vbrefを印加している。即ち、第1可変容量C1が信号用主浮遊電極17q11等に対して機能し、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGのゲート電極に発生する電圧と等価な電圧を、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFのゲート電極に印加できるようにしている。
図20B(c)に示したように第3実施形態の第3変形例に係る音響誘導型半導体素子では、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFのゲート電極に印加される電圧を電圧計でモニタしながら、参照用ゲート電圧Vbrefの値を調整できる。この結果、第3変形例に係る音響誘導型半導体素子においては、近接して並列配置された信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGと参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFのそれぞれのゲート電極に印加されるゲート電圧をほぼ同程度の値に制御し、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGと参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFの動作時の特性を合わせている。ゲート電圧をほぼ同程度に制御することにより、無負荷時のダーク雑音や絶縁ゲート型半導体素子の特性のバラツキを打ち消すことが、第1及び第2変形例に係る音響誘導型半導体素子に比して、より高精度に可能になる。
<<第3実施形態の第4変形例>>
第3実施形態の第1~第3変形例に係る音響誘導型半導体素子では、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGと参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFを並列に近接配置するために、参照用主浮遊電極17q21及び参照用補助浮遊電極17q22の上方には接地電位に接続されたW等のシールド板を配置して、超音波が入力しないような構成にした。図20Cに示す本発明の第3実施形態の第4変形例に係る音響誘導型半導体素子では、シールド板を配置する代わりに、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGのみを振動空洞に配置し、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFを振動空洞の外部に配置する構成を説明する。参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFを振動空洞の外部に配置することにより、振動電極25cの機械的振動が信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGに与える電位変動や特性変動の影響を、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFからの信号で打ち消すことができる。
信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGの製造工程における面内分布等による特性のバラツキを打ち消すことを目的とする場合には、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGと参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFはなるべく近い位置に配置するのが好ましい。信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGのみを振動空洞に配置し、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFを振動空洞の外部に配置する構成で、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGと参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFを近接配置するとすれば、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGは、振動空洞の周辺部に配置せざるを得ない。しかしながら、図6Aや図28等を引用して説明したとおり、容量型音響素子には振動電極の中央部分が深く撓む形状になる問題がある。図19A(a)等で説明したように、同心状のパターンに分離した中央に浮遊電極を配置する分割ゲート構造の方が、一様な平板である固定電位電極の場合に比して電圧検出感度が高いことは、振動電極側の撓む形状の不均一性に依拠している。
したがって、電圧検出感度を優先した平面パターンの設計をすると、図20Cに示すように、信号用主浮遊電極17q11の配置位置を振動空洞の中央に選択し、この中央から離れた位置に参照用主浮遊電極17q21が配置される構造を選択せざるを得ない。図20Cに示す信号用主浮遊電極17q11を振動空洞の中央に配置したレイアウトでは、信号用主浮遊電極17q11の左側に第1信号用補助浮遊電極17q12が延在し、信号用主浮遊電極17q11の右側に第2信号用補助浮遊電極17q13が延在する蝶型のパターンになっている。そして、参照用主浮遊電極17q21は、第2信号用補助浮遊電極17q13の右側の振動空洞の外部となる位置に配置されている。
ただし、図20Cに示す平面レイアウトは例示であるので、図20Cの例示に限定されるものではない。例えば、電圧検出感度を優先しないような設計仕様であれば、信号用主浮遊電極17q11を振動空洞の端部に配置し、振動空洞の外部となる位置に参照用主浮遊電極17q21を配置して、近接配置を実現してもよい。図20Cに例示した信号用主浮遊電極17q11が振動空洞の右端に配置されるレイアウトでは、信号用主浮遊電極17q11の左側にのみ、信号用補助浮遊電極17q12が延在する片羽の蝶型のパターンになる。信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGのゲート電極には第1可変容量C1と信号用遅延抵抗RGND1からなるHPFが接続されるのは、第3実施形態の第1~第3変形例に係る音響誘導型半導体素子と同様である。図20Cに示すように、振動空洞の外部に参照用主浮遊電極17q21が配置され、且つ参照用主浮遊電極17q21には参照用補助浮遊電極も接続されていないので、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFの実効ゲート領域には超音波による電圧は発生しない。
図20Cに示すように、固定電位電極17oは、第1信号用補助浮遊電極17q12、第2信号用補助浮遊電極17q13及び参照用遅延抵抗RGND2等を囲むパターンとして周辺部に配置されている。固定電位電極17oは第1信号用補助浮遊電極17q12と第2信号用補助浮遊電極17q13の配置領域に挟まれる中央帯状部、第2信号用補助浮遊電極17q13と参照用遅延抵抗RGND2の配置領域に挟まれる右側帯状部等を更に含んだ窓状のパターンである。信号用遅延抵抗RGND1は、信号用補助浮遊電極17q12の右上のコーナから信号用補助浮遊電極17q12の上辺、左辺及び下辺を囲んで、逆向きのコの字型に直角に曲がり、信号用補助浮遊電極17q12の右下のコーナ付近で固定電位電極17oに接続されている。
図20Cでは参照用主浮遊電極17q21から右側方向に向かい、参照用遅延抵抗RGND2が蛇行するメアンダラインとして例示的に示されている。参照用遅延抵抗RGND2は、信号用遅延抵抗RGND1とほぼ同じ長さとなるように、信号用遅延抵抗RGND1とほぼ同じ線幅で蛇行して配置されている。第3実施形態の第4変形例に係る音響誘導型半導体素子においても、第1可変容量C1=100fF程度を前提として1MΩ程度以上の信号用遅延抵抗RGND1を信号用主浮遊電極17q11に繋ぐことにより、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGのゲート電極にHPFが構成されている。HPFによって、信号用主浮遊電極17q11にはMHzオーダー以上の高周波信号のみが入力するが、高電圧である直流バイアスVbiasは信号用遅延抵抗RGND1によって接地される。即ち、MHzオーダーの信号となる信号用第1可変容量C1の容量変化ΔCにより信号用主容量C31の両端の電圧V3が変化し、且つ発生した電圧V3に対し信号用第1ゲート絶縁膜の耐圧が維持できる。
第3実施形態の第4変形例に係る音響誘導型半導体素子の参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFのゲート電極は振動空洞の外部にあるので、参照用主容量C31の両端には電圧V3は発生せず、電圧V3は超音波入力によって変化しない。図20Cに示したように、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFのゲート電極として機能する参照用主浮遊電極17q21には、参照用ゲート電圧Vbrefを外部回路から印加できる構成になっている。即ち、図20B(c)に示した等価回路と同様に、振動空洞内部の第1可変容量C1が信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGのゲート電極に発生させる電圧と等価なレベル、若しくは少し低めの直流電圧を、振動空洞外部の参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFのゲート電極に外部回路から印加できるようになっている。この際、図20B(c)に例示した構成のように参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFのゲート電極に印加される電圧を電圧計でモニタしながら、参照用ゲート電圧Vbrefの値を調整できるようにしてもよい。
このように、第3変形例と同様に、振動空洞の内外にそれぞれ配置された信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGと参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFのそれぞれのゲート電極に印加されるゲート電圧が互いにほぼ同程度のレベル、若しくは参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFが少し低めのレベルとなるように制御できる。信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGと参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFのそれぞれのゲート電極に印加されるゲート電圧のレベルをほぼ同程度にすれば、振動空洞内の信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGと振動空洞外の参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFの動作時の特性を合わせることができる。
図20Cに示すように、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGの第2主電極領域から出力抵抗RD1を介して電圧信号出力VSIGを取り出している。同様に、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFの第2主電極領域から出力抵抗RD2を介して参照信号VREFを取り出している。参照信号VREFは、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGが無負荷のとき、即ち信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGに超音波の信号が入力されていないときの電圧信号出力VSIGに対応する。振動空洞の外部に配置され、常に無負荷状態のゲート電極は、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGのゲート電圧と同程度の参照用ゲート電圧Vbrefにバイアスされている。
図20Cに示すように、同一特性、同一パターン、同一バイアスレベルの信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGと参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFを振動空洞の内外にそれぞれ配置し、電圧信号出力VSIGと参照信号VREFを比較することにより、同相の雑音を打ち消すことができる。特に、第3実施形態の第4変形例に係る音響誘導型半導体素子によれば、振動空洞の外に配置された参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFからの信号を用いることにより、振動電極25cの振動が信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGに与える電位変動の影響を打ち消すことができる。
そして、振動電極25cの振動が信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGに与える電位変動の影響が打ち消すことにより、振動電極25cの撓みをより深くできるので、振動電極25cへの印加電圧を上げることができる。振動による電位変動の影響を打ち消すことにより、振動電極25cと浮遊電極17cとの接近距離を更に小さくできるので、振動空洞の高さを低くし、第1可変容量C1の容量値を増加させることもできる。第1可変容量C1の容量値が増加すると、式(22)に示す主容量C31の両端の電圧V3の微少変化ΔV3が増大する。よって、第3実施形態の第4変形例に係る音響誘導型半導体素子によれば、主容量C31に印加する電圧V3の微少変化ΔV3を増加して、検出感度を向上させることができる。
図20Cでは参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFのゲート電極に参照用ゲート電圧Vbrefが外部回路から印加できる構成を示したが例示に過ぎない。参照用ゲート電圧Vbref=0Vとする構成、即ち、参照用遅延抵抗RGND2を介して接地電位に接続してもよい。ただし、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFのゲート電極を接地電位にする目的であれば、参照用遅延抵抗RGND2も不要であるので参照用遅延抵抗RGND2=0Ωとすればよい。よって、図20B(b)に例示した等価回路と同様に、参照用遅延抵抗RGND2を削除し、回路構成や平面レイアウトを簡略化してもよい。ゲート電極が接地されている参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFから参照信号VREFを取り出すためには、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFはデプレッション型MOSFETとしておけばよい。信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIG及び参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFを同一特性とするためには、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGもデプレッション型MOSFETとすればよい。
<<第3実施形態の第5変形例>>
図18及び図20B(a)~(c)に示した等価回路等では、遅延抵抗RGND又はRGND1を介してゲート電極を第1電位(接地電位)に接続してHPFを構成する例を示した。しかし、図20Dに示す本発明の第3実施形態の第5変形例に係る音響誘導型半導体素子の等価回路では、信号用遅延抵抗RGND1が、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGのゲート電極と信号用ゲート電圧Vbsig(第3電位)を印加する電圧源の間に接続されている。図20Dでは、第3電位となるゲート電圧Vbsig分の嵩上げがあるが、遮断周波数に関しては、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGのゲート電極に第1可変容量C1と信号用遅延抵抗RGND1を含む回路からなるHPFが接続された構成とほぼ等価になる。
信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGのゲート電極に信号用遅延抵抗RGND1を介して信号用ゲート電圧Vbsigを印加しているので、第1可変容量C1の変化により信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGのゲート電極に発生する電圧を、所望値に制御できる。図20Dに示したように、電圧計でモニタリングして信号用ゲート電圧Vbsigの値を調整できるようにしても良い。すなわち、第5変形例に係る音響誘導型半導体素子においては、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGのゲートバイアス電圧を適宜制御できるので、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGの動作時の特性や電流利得を最適化できる。したがって、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGのゲートバイアス電圧を制御することにより、信号利得を向上させることが可能になる。又、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGのゲートバイアス電圧が自由に選択できるので、デプレッション型、エンハスメント型等の絶縁ゲート型半導体素子の設計の自由度が増大する。
第3実施形態の第5変形例に係る音響誘導型半導体素子も、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGと参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFを並列配置した構成を採用可能である。ただし、図20Dに示した等価回路の構成は例示であり、必ずしも参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFを並列配置することは必須ではない。参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFが近接して並列配置すれば、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFからの出力を利用して、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGの内部に発生する無負荷時の雑音や絶縁ゲート型半導体素子の製造工程による特性のバラツキを打ち消すことができる。
第1~第3変形例に係る音響誘導型半導体素子と同様に、参照用主浮遊電極17q21等の上方にシールド板を配置、或いは第4変形例に係る音響誘導型半導体素子と同様に参照用主浮遊電極17q21等を振動空洞の外部に配置してもよい。シールド板による遮蔽もしくは振動空洞の外部に配置することにより、第1可変容量C1が参照用主浮遊電極17q21等に対して機能しないため、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFの実効ゲート領域には、高電圧は発生しない。しかし、図20Dに示した等価回路が示す第5変形例では、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFのゲート電極に所定の参照用ゲート電圧Vbrefを印加できる。即ち、信号用ゲート電圧Vbsigの値で嵩上げされてはいるが、第1可変容量C1の変化が信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGのゲート電極に発生させる電圧と等価な電圧を、参照用ゲート電圧Vbrefを調整して、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFのゲート電極に印加できるようにしている。
図20Dに示した参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFを並列配置した構成では、参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFのゲート電極に印加される電圧を電圧計でモニタしながら、参照用ゲート電圧Vbrefの値を調整できる。この結果、第5変形例に係る音響誘導型半導体素子においては、近接配置された信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGと参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFのそれぞれのゲート電極に印加するゲート電圧をほぼ同程度の値、若しくは所望の電圧比に制御し、信号用絶縁ゲート型半導体素子QSIGと参照用絶縁ゲート型半導体素子QREFの動作時の特性を合わせることができる。すなわち、QSIGとQREFを並列配置した構成を採用した場合は、QSIGとQREFのゲート電圧をほぼ同程度、若しくは所望の電圧比に制御することにより、無負荷時のダーク雑音や絶縁ゲート型半導体素子の特性のバラツキを打ち消す効果を、より高精度にすることが可能になる。
(第4実施形態)
上記の第1~第3実施形態では、超音波印加による第1可変容量C1の容量値の変化により浮遊電極17c,17qの電位を変化させ、浮遊電極17c,17q直下のゲート絶縁膜を介して、絶縁ゲート型半導体素子のチャネルに形成される電位障壁の高さを間接的に制御して電流出力を得る場合について説明した。本発明の第4実施形態に係る音響誘導型半導体素子は、図21に示すように、第1~第3実施形態で用いていた浮遊電極17c,17qや浮遊電極17c,17q直下のゲート絶縁膜が存在しない構造である。振動空洞28を構成する真空は誘電率ε0の絶縁体(誘電体)である。よって、振動空洞28を構成している真空は、誘電率ε0εrのSiO2膜等と等価なゲート絶縁膜としての機能が実現できる。
図21にその一部を示すように、第4実施形態に係る音響誘導型半導体素子は、p型の半導体基板41と、半導体基板41上に設けられたp型の半導体領域からなるチャネル形成領域14と、このチャネル形成領域14の表面に互いに対向し且つ離間して設けられたn型の第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aと、チャネル形成領域14の上面に振動空洞を介して対向し、第2電位に設定された振動電極25cを備える。p型のチャネル形成領域14の表面側の上部にn型の第1主電極領域15bとn型の第2主電極領域15aが離間して配置されることによりn-p-nのフック構造が構成されている。チャネル形成領域14と第1主電極領域15bのp-n接合界面から広がる空乏層とチャネル形成領域14と第2主電極領域15aのp-n接合界面から広がる空乏層の間に電子に対する電位障壁が形成されている。
半導体基板41は、第1電位(接地電位)に設定されているので、チャネル形成領域14も第1電位に設定されている。なお、図21では、図3に示したような、チャネル形成領域14と振動電極25cの間に、振動空洞を密閉空間として設けるように振動空洞を囲む空洞形成絶縁膜20の図示が省略されているが、図3と同様に空洞形成絶縁膜が備えられていることは勿論である。図示を省略した空洞形成絶縁膜で密閉空間を構成することによって、第4実施形態に係る音響誘導型半導体素子の振動空洞は、真空若しくは不活性ガスが充填された減圧状態に維持されている。気体放電を考慮して振動空洞に六フッ化硫黄(SF6)ガスを充填してもよい。ただし、振動電極25cと半導体基板41間の電極間距離dが小さい場合は、気体放電は抑制できる。図21に示す第4実施形態に係る音響誘導型半導体素子では、振動電極25cと半導体基板41間のゲート・基板間容量CgBを、第1~第3実施形態で説明した振動電極25cと浮遊電極17c,17p間の第1可変容量C1に対応させている。
第4実施形態に係る音響誘導型半導体素子は、式(4)や式(8)等で示されるような容量分割の電圧V3の変化ΔV3を利用しているのではなく、振動電極25cと半導体基板41間の直流バイアス電圧Vbiasは一定である。第4実施形態に係る音響誘導型半導体素子では、振動電極25cと半導体基板41間の電極間距離dがΔdだけ変位したときのゲート・基板間容量CgBの変化ΔCgBを利用して、第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aの間に誘起される電荷Δqの変化を利用している。電荷Δqの変化は、

Δq=ΔCgBbias ………(46)

で表現できる。
振動電極25cの面積をSとし、そのうちのゲート・基板間容量CgBに寄与できる有効面積をαSとする。即ち、CgB≒C1≒ε0(αS/d)と近似すると、電極間距離dのΔdだけの変位によるゲート・基板間容量CgBの変化ΔCgBは、
Figure 2023062603000019

となる。したがって、式(46)は

Δq≒-ε0(αS/d2)ΔdVbias ………(48)

と表現できる。式(48)で示される電荷Δqの変化により、第1主電極領域15bと第2主電極領域15aの間に、n-p-nのフック構造で生成される電子に対する電位障壁の高さが制御される。
振動電極25cに超音波が入力すると、超音波の圧力で振動電極25cの位置が変位する。振動電極25cの位置が変位すると、振動電極25cと半導体基板41間のゲート・基板間容量CgBが変化するので、第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aの間に生じるチャネルの表面電位が変化する。即ち、第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aの間のチャネルに発生する電子に対する電位障壁の高さが、ゲート・基板間容量CgBの変化で変わり、電流の変化になる。したがって、第4実施形態に係る音響誘導型半導体素子によれば、真空ゲート絶縁膜を有する絶縁ゲート型半導体素子(以下において「真空絶縁ゲート型半導体素子」という。)が構成され、振動電極25cの超音波による変位を、第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aの間を流れる電流の変化として検知することができる。
第4実施形態に係る音響誘導型半導体素子は、図21に示したように通常の誘電率ε0εrのゲート絶縁膜を用いたMISトランジスタに比し、誘電率ε0の真空をゲート絶縁膜として用いた真空絶縁ゲート型トランジスタである。このため、式(30)に示した通常のMOSFETの相互コンダクタンスgに対応させると、MOSキャパシタの単位面積当たりの容量Coxが(1/εr)Coxになる。比較のために、ゲート絶縁膜の比誘電率εrを用いて記載すると、真空絶縁ゲート型半導体素子の場合は、

=μnoxW/εreff ………(49)

と、(1/εr)だけ小さなgmで表現できる。
<<第4実施形態の第1変形例>>
図19A(a)及び図19A(b)に示したシミュレーションの結果によれば、ドーナツ型の固定電位電極の内部に浮遊電極を同心状に分離配置した分割ゲート構造の方が、一様な平板である固定電位電極の場合に比して電圧検出感度が高いことが分かる。即ち、図6Aや図28等に示したように、容量型音響素子には、振動電極の中央部分が深く撓む形状になる問題がある。図19A(a)及び図19A(b)に示したシミュレーションの結果を踏まえると、第4実施形態に係る音響誘導型半導体素子は、図22Aに示すように、金属等の導電体層で構成された固定電位(接地電位)の補助電極47oを更に備えるのが好ましい。或いは、補助電極47oに等価な高不純物密度半導体領域からなる不純物拡散層を、図22Aに示した平面パターンのように主ゲート領域の周辺部に設ける構造にするのが好ましい。不純物拡散層で補助電極47oを構成する場合は、第2主電極領域15aと同一深さ、同一不純物密度の領域として、第2主電極領域15aを延長形成してもよい。或いは金属シリサイド層等で補助電極47oのパターンを構成してもよい。
図22Aは、第4実施形態の第1変形例に係る音響素子集積回路を構成する六角形の単位セルXi,jの平面パターンの例を示す。第4実施形態の第1変形例に係る音響素子集積回路の単位セルXi,jを構成する真空絶縁ゲート型半導体素子は、図22Aに隠れ線の長方形で示す第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aが、互いに短辺を対向させ、且つ離間して設けられている。更に、第1主電極領域15bの2つの長辺の両側から、第2主電極領域15aの2つの長辺に向かい六角環の半弧をなすように、紙面の上側及び下側にそれぞれ分けて表示した2つの補助電極47oが、互いに鏡像対称で設けられている。
図22Aでは2つの半弧六角環状の補助電極47oと補助電極47oに挟まれた実効ゲート領域とで、概ね同心形状に分割された機能領域上面のパターンを例示している。しかし、機能領域上面のパターンを、補助電極47oと実効ゲート領域に分割するトポロジは、図22Aに例示した半弧六角環状のトポロジに限定されるものではない。ただし、図19A等を用いて説明したように、実効ゲート領域と補助電極47oが同心状に配置される機能領域上面のトポロジの方が、感度特性においては好ましい。
図22Bに示すように、第4実施形態の第1変形例に係る音響素子集積回路を構成する六角形の単位セルXi,jのそれぞれは、共通基体11の上部を、素子分離絶縁膜13で互いに電気的に独立したチャネル形成領域14に分離し、このチャネル形成領域14を基礎として二次元配列されている。更に、チャネル形成領域14のそれぞれの上に、振動空洞28を一体構造として備えているので、この点では従来の容量型音響素子と同様な筐体構造を構成している。図22Bの断面図に示すように第1導電型のチャネル形成領域14の表面には、第2導電型の第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aが配置され、真空絶縁ゲート型半導体素子が構成されている。
図22Aの紙面の上側及び下側にそれぞれ分離された2つの補助電極47oに挟まれた帯状の平面パターンの右側の端に第1コンタクトプラグ24bが、左側の端に第2コンタクトプラグ24aが配置されている。更に、紙面の下側に表示した補助電極47oの左下の斜辺に第3コンタクトプラグ24bが、紙面の上側に表示した補助電極47o右上の斜辺に第4コンタクトプラグ24aが配置されている。図22Aに示すように、第1コンタクトプラグ24bは、単位セルXi,jの真空絶縁ゲート型半導体素子を構成する第1主電極領域15bを第1電位(接地電位)に接続するように設けられている。第2コンタクトプラグ24aは、電源配線VDDから電源電圧VDDを、単位セルXi,jの真空絶縁ゲート型半導体素子を構成する第2主電極領域15aに供給し、且つ電流信号を取り出すために設けられている。
第4実施形態の第1変形例に係る音響誘導型半導体素子は、受信機能だけでなく、双方向性の音響素子として機能させることができる。図22Aに示した第4実施形態の第1変形例に係る音響誘導型半導体素子を双方向性の音響素子として機能させる場合、補助電極47oは送信モードにおいて有効に機能する。即ち、図22Aの紙面の下側に表示した補助電極47o側に配置された第3コンタクトプラグは、送信モードの動作をする場合において、振動電極25cと紙面の上側及び下側の補助電極47oのそれぞれの間に、高周波信号線をそれぞれ供給する。図22Aの紙面の上側の補助電極47o側に配置された第4コンタクトプラグは、双方向性の音響素子が受信モードの動作をする場合において、直流バイアス供給線Vbiasから振動電極25cに第2電位の直流バイアスVbiasを供給し、振動電極25cとチャネル形成領域14の間に所望の電位を印加する。
図22Bでは、チャネル形成領域14が第1電位(=接地電位GND)に接続されている場合を例示している。真空絶縁ゲート型半導体素子として機能させるため、第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aの上、及び第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aに挟まれたチャネル形成領域14の上面(表面)は、振動空洞28が呈する真空状態に露出している。第4実施形態の第1変形例に係る音響誘導型半導体素子においては、超音波Φによる振動電極25cの変位を、真空絶縁ゲート型半導体素子の第1主電極領域15bと第2主電極領域15aの間を流れる電流の変化として検知することができる。図22Bでは振動電極25cに重ねて表示した白抜きの両矢印が振動電極25cの変位を意味している。
図22Bに示すように、振動膜23の上面には振動電極25cの他に第1表面配線層25b及び第2表面配線層25が設けられている。第1表面配線層25bと第1主電領域15bの間には、振動膜23、空洞形成絶縁膜20を貫通する第1コンタクトプラグ24bが設けられている。同様に第2表面配線層25aと第2主電領域15aの間には、振動膜23、空洞形成絶縁膜20を貫通する第2コンタクトプラグ24aが設けられている。即ち、第1コンタクトプラグ24bの上端は第1表面配線層25bに金属学的に接続され、第1コンタクトプラグ24bの下端は第1主電領域15bと電気的に接続されるので、第1コンタクトプラグ24bによって第1表面配線層25bと第1主電領域15bが電気的に接続される。
同様に、第2コンタクトプラグ24aの上端は第2表面配線層25aに金属学的に接続され、第2コンタクトプラグ24aの下端は第2主電領域15bと電気的に接続されるので、第2コンタクトプラグ24aによって第2表面配線層25aと第2主電領域15aが電気的に接続されている。第1表面配線層25bは垂直出力信号線に対応する。一方、第2表面配線層25aは電源配線に対応する。振動膜23の上には、振動電極25c、第1表面配線層25b及び第2表面配線層25を覆うようにシリコン酸化膜等の第1振動電極保護膜26が被覆されている。更に、第1振動電極保護膜26の上にはポリイミド膜等の第2振動電極保護膜34が積層されている。第2振動電極保護膜34は、振動空洞28を形成する工程の際に、犠牲層を除去するための除去液を導入する液導入孔27を塞いでいる。液導入孔27は、第1振動電極保護膜26及び振動膜23を貫通して振動空洞28に到達している。液導入孔27を塞ぐことにより、振動空洞28の内部は不活性ガスの減圧雰囲気に維持されている。
図22Bでは振動空洞28の中央付近における振動電極25cと実効ゲート領域の間で構成する容量を第1可変容量C1として示している。第1可変容量C1の周辺には、第1可変容量C1を、図22Aに示すように、互いに対向する2つの半弧六角環状の補助電極47oのそれぞれと振動電極25cとの間で構成する第2可変容量C2が存在する。金属等の導電体層で図22Aに示したような補助電極47oのパターンを構成すると、導電体層の厚さ及び導電体層の下に設ける絶縁層の厚さの分、第1可変容量C1を構成する実効ゲート領域の上面より、水平レベルが高くなる。このため不純物拡散層で補助電極47oを構成した方が補助電極47oの上面と実効ゲート領域の上面の水平レベルを合わせ易くなる。
図22Bに示す真空絶縁ゲート型半導体素子の遮断状態においては、実効ゲート領域と接地電位間は、図19A(a)及び(b)のシミュレーションの条件とほぼ同様に、可変抵抗である遅延抵抗RGNDが接続された状態として等価回路的に示すことができる。第2可変容量C2は、従来の容量型音響素子における上部電極と下部電極との間に構成される容量と等価の役割を有する容量で、第1可変容量C1は第4実施形態の第1変形例に係る音響誘導型半導体素子に固有の真空絶縁ゲート型半導体素子を駆動するに必要な電荷を誘導する容量である。真空絶縁ゲート型半導体素子が、第1可変容量C1の容量変化によって、導通状態にターンオンすると、実効ゲート領域と接地電位間に接続された遅延抵抗RGNDは、急速に小さな値に変化し、電流が流れる。
<<第4実施形態の第2変形例>>
図23に主要部分の構成を示すように、第4実施形態の第2変形例に係る音響誘導型半導体素子は、p型の半導体基板41と、半導体基板41上に設けられたp-型(又はi型)の半導体領域からなるチャネル形成領域14と、このチャネル形成領域14の表面に互いに対向し且つ離間して設けられたn型の第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aと、チャネル形成領域14の上面に振動空洞を介して対向し、第2電位に設定された振動電極25cを備える。p-型(又はi型)のチャネル形成領域14の表面側の上部にn型の第1主電極領域15bとn型の第2主電極領域15aが離間して配置された構成は、図21に示した構成と類似しているが、n-p-(i)-nのフック構造が構成されている。チャネル形成領域14と第1主電極領域15bのp-(i)-n接合界面から広がる空乏層が図21に示した構成よりもより拡がり易くなっている。
同様に、チャネル形成領域14と第2主電極領域15aのp-(i)-n接合界面から広がる空乏層が図21に示した構成よりもより拡がり易くなっている。したがって、チャネル形成領域14と第1主電極領域15bのp-(i)-n接合界面から広がる空乏層と、チャネル形成領域14と第2主電極領域15aのp-(i)-n接合界面から広がる空乏層がピンチオフし、第1主電極領域15bと第2主電極領域15aの間が完全空乏化しているが、第1主電極領域15bと第2主電極領域15aの間にフック構造の電子に対する電位障壁が形成されている。電位障壁が形成されている位置の直下となるチャネル形成領域14と半導体基板41との界面にはp++型の電位障壁制御領域42が埋め込まれている。p++型の電位障壁制御領域42が埋め込まれていることにより、第1主電極領域15bと第2主電極領域15aの間の電位障壁が図21に示した構成よりも高く設定されている。
半導体基板41は、第1電位(接地電位)に設定されているので、チャネル形成領域14も第1電位に設定されている。なお、図23においても、図3や図22B等に示したような、チャネル形成領域14と振動電極25cの間に、振動空洞を密閉空間として設けるように振動空洞を囲む空洞形成絶縁膜20の図示が省略されているが、図22B等と同様に空洞形成絶縁膜が備えられていることは勿論である。空洞形成絶縁膜によって振動空洞は真空若しくは減圧状態に維持されている。図23に示す第4実施形態の第2変形例に係る音響誘導型半導体素子では、振動電極25cと電位障壁制御領域42間のゲート・基板間容量CgBを、第1~第3実施形態で説明した振動電極25cと浮遊電極17c,17p間の第1可変容量C1に対応させている。第1主電極領域15bと第2主電極領域15aの間が完全空乏化しているので、チャネル形成領域14の上部は絶縁体(誘電体)として機能している。したがって、振動電極25cと電位障壁制御領域42間のゲート・基板間容量CgBによって、完全空乏化したチャネル形成領域14の上部に電荷が誘導しやすくなっている。
振動電極25cに超音波が入力すると、超音波の圧力で振動電極25cの位置が変位する。振動電極25cの位置が変位すると、振動電極25cと半導体基板41間のゲート・基板間容量CgBが変化するので、第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aの間の完全空乏化したチャネルの表面電位が、MOS型のSITの動作原理と同様に変化する。即ち、第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aの間の完全空乏化したチャネルに発生する電子に対する電位障壁の高さが、ゲート・基板間容量CgBの変化で変わり、電流の変化になる。したがって、第4実施形態の第2変形例に係る音響誘導型半導体素子によれば、振動電極25cの超音波による変位を、第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aの間を流れる電流の変化として検知することができる。
<<第4実施形態の第3変形例>>
図24に主要部分の構成を示すように、第4実施形態の第3変形例に係る音響誘導型半導体素子は、p型の半導体基板41と、半導体基板41上に設けられたn-型(又はi型)の半導体領域からなるチャネル形成領域14と、このチャネル形成領域14の表面に互いに対向し且つ離間して設けられたp型の第1主電極領域15b及びn型の第2主電極領域15aと、チャネル形成領域14の上面に振動空洞を介して対向し、第2電位に設定された振動電極25cを備える。p型の第1主電極領域15bは、n型のバッファ領域43の内部に埋め込まれている。n-型(又はi型)のチャネル形成領域14の表面側の上部にp型の第1主電極領域15b、n型のバッファ領域43及びn型の第2主電極領域15aがて配置された構成により、n-n-(i)-n-pのSIサイリスタと同様なフック構造が構成されている。n型のバッファ領域43が構成されているので、第1主電極領域15b側からは空乏層が拡がりにくくなっている。
一方、チャネル形成領域14と第2主電極領域15aのn-(i)-n接合界面も空乏層化している。第1主電極領域15bとn型のバッファ領域43の間は真性半導体(i層)に近い不純物密度であるので、もともと空乏層に近い状態となっており、第1主電極領域15bと第2主電極領域15aの間にフック構造の電子に対する電位障壁が形成されている。電位障壁が形成されている位置の直下となるチャネル形成領域14と半導体基板41との界面には、図21と同様にp++型の電位障壁制御領域42が埋め込まれている。p++型の電位障壁制御領域42が埋め込まれていることにより、電位障壁制御領域42とチャネル形成領域14の間に空乏層が形成され、第1主電極領域15bとn型のバッファ領域43の間の電位障壁が図21に示した構成よりも高く設定できる。
半導体基板41は、第1電位(接地電位)に設定されているので、チャネル形成領域14も第1電位に設定されている。なお、図示が省略されているが、チャネル形成領域14の表面を露出する振動空洞は、図3や図22B等と同様に空洞形成絶縁膜によって囲まれていることは、図23等に関連して説明したのと同様な趣旨である。空洞形成絶縁膜によって振動空洞は真空若しくは減圧状態に維持されている。図24に示す第4実施形態の第3変形例に係る音響誘導型半導体素子では、振動電極25cと電位障壁制御領域42間のゲート・基板間容量CgBを、第1~第3実施形態で説明した振動電極25cと浮遊電極17c,17p間の第1可変容量C1に対応させることができる。第1主電極領域15bと第2主電極領域15aの間が完全空乏化しているので、チャネル形成領域14の上部は絶縁体(誘電体)として機能している。したがって、振動電極25cと電位障壁制御領域42間のゲート・基板間容量CgBによって、完全空乏化したチャネル形成領域14の上部に電荷が誘導しやすくなっている。
振動電極25cに超音波が入力すると、超音波の圧力で振動電極25cの位置が変位する。振動電極25cの位置が変位すると、振動電極25cと半導体基板41間のゲート・基板間容量CgBが変化するので、第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aの間の完全空乏化したチャネルの表面電位が変化する。即ち、第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aの間の完全空乏化したチャネルに発生する電子に対する電位障壁の高さが、ゲート・基板間容量CgBの変化で変わり、絶縁ゲート制御型SIサイリスタと同様にターンオン遷移が生じて、大量の電流が第1主電極領域(カソード領域)15bと第2主電極領域(アノード領域)15aの間に流れる。
サイリスタ動作であるのでターンオンすると、第1主電極領域15bから電子がチャネル形成領域14に注入されると共に、第2主電極領域15aから正孔がチャネル形成領域14に注入される。第2主電極領域15aを接地しておけば、電位障壁制御領域42と第2主電極領域15aは短絡され、注入された正孔は電位障壁制御領域42によって引き抜かれる。図24に示す第4実施形態の第3変形例に係る音響誘導型半導体素子によれば、振動電極25cの超音波による変位を、第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aの間を流れる電流の変化として検知することができる。
<<第4実施形態の第4変形例>>
図25に主要部分の構成を示すように、第4実施形態の第4変形例に係る音響誘導型半導体素子は、n型の第1主電極領域15bを構成する半導体基板と、第1主電極領域15bの上に設けられたp型の半導体領域からなるチャネル形成領域14と、このチャネル形成領域14の上に設けられたn型の第1主電極領域15bと、第1主電極領域15bを貫通し、チャネル形成領域14の一部まで掘り込んだ垂直な内側壁を有する凹部と、凹部の底面に設けられた固定電位電極17oと、凹部の内部を振動空洞として、凹部の内側壁に平行に移動する振動電極25vを備える。第1主電極領域15bは、第1電位(接地電位)に設定されているので、固定電位電極17oも第1電位に設定されている。したがって、第1電位の固定電位電極17oと第2電位の振動電極25vの底面との間に第2可変容量C2が構成されている。
図25に示すように振動電極25vの駆動部分は中空長方形の断面形状をなす筒型をなしている。中空長方形の筒型の上の部分は第1~第3実施形態に係る音響誘導型半導体素子の振動電極25cと同様な、所定のばね定数を有する板状の形状をなしている。垂直側壁を有する凹部の内側面と、中空長方形の筒型の振動電極25vの外側壁部が、振動空洞を介して対向し、第2電位に設定された振動電極25vが入力された超音波の圧力によって、所定のばね定数で上下に振動する。なお、図示が省略されているが、チャネル形成領域14の表面を露出する振動空洞は、図3や図22B等と同様に空洞形成絶縁膜によって囲まれていることは、図24等に関連して説明したのと同様な趣旨である。空洞形成絶縁膜によって振動空洞は真空若しくは減圧状態に維持されている。
凹部の内側面に露出したチャネル形成領域14と振動電極25vの外側壁との間の間隔が一定となるように、振動電極25vは凹部の内部を、超音波振動と共に上下に移動する。凹部の内側面と振動電極25vの外側壁との間隔を一定とするように、凹部の内部を上下に移動する中空長方形の筒型の部分の材料には、Wのような剛性の強い金属を用いることが好ましい。凹部の内側面に露出したチャネル形成領域14と振動電極25vの外側壁との間に、第1~第3実施形態で説明した第1可変容量C1に対応するゲート・チャネル間容量CGCが構成される。内側面と外側壁の間隔は一定なので、ゲート・チャネル間容量CGCは電極間隔ではなく、有効な容量として寄与できる部分の対向面積が振動電極25vの垂直移動に伴い変化する。この対向面積の変化により第1可変容量C1が変化する。図25に示すように、n型の第1主電極領域15bの上にp型のチャネル形成領域14が配置され、p型のチャネル形成領域14の上にn型の第1主電極領域15bが配置されることにより、垂直方向にn-p-nフック構造が凹部の内側面の方向に沿って構成されている。そして、n-p-nフック構造によって電子に対する電位障壁が構成されている。
チャネル形成領域14と第2主電極領域15aとのp-n接合界面から広がる空乏層と、チャネル形成領域14と第2主電極領域15aとのp-n接合界面から広がる空乏層により、第1主電極領域15bと第2主電極領域15aの間の電子に対する電位障壁が形成されている。第1主電極領域15bと第2主電極領域15aの間が完全空乏化しているので、凹部の内側面に露出したチャネル形成領域14の表面近傍は絶縁体(誘電体)として機能している。したがって、振動電極25vの外側壁と、振動空洞に内側面を露出したチャネル形成領域14の間のゲート・チャネル間容量CGCによって、完全空乏化したチャネル形成領域14の表面近傍に電荷が誘導しやすくなっている。
振動電極25vに超音波が入力すると、超音波の圧力で振動電極25vが、振動空洞を構成している凹部の内部で位置が変位する。振動電極25vの位置が変位すると、対向面積の変化により振動電極25vとチャネル形成領域14の間のゲート・チャネル間容量CGCが変化するので、第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aの間の完全空乏化したチャネルの表面電位が変化する。即ち、第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aの間の完全空乏化したチャネルに発生する電子に対する電位障壁の高さが、ゲート・チャネル間容量CGCの変化で変わり、電位障壁を超えて注入される電子による電流が変化する。したがって、第4実施形態の第4変形例に係る音響誘導型半導体素子によれば、振動電極25vの超音波による変位を、第1主電極領域15b及び第2主電極領域15aの間を流れる電流の変化として検知することができる。
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1~第4実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。たとえば、既に述べた第1~第4実施形態の説明においては、受信用の音響誘導型半導体素子及びこれを用いた受信用セルについて主に説明してきたが、図6Aを用いて説明した振動電極を固定電位電極に平行平板に近い撓み状態で近づける改善策は、送信用セルとしての容量型音響素子の単独の特性を向上させることも可能である。即ち、高電圧を印加しても、振動電極の中央のみが固定電位電極に近づくという問題がなくなるので、送信用の容量型音響素子から強度の大きな超音波を出力できる。
このような意味から、本発明は、上述の第1~第4実施形態で説明した技術的思想の一部を適宜組み合わせた技術に対しても適用可能である。既に述べた第1~第3実施形態等の説明においては、固定電位電極17oに接続される第1電位を接地電位とし、振動電極に接続される第2電位を接地電位よりも高電位の第2電位とする場合を例示的に説明したが、第1電位と第2電位の選択は第1~第3実施形態等の説明に限定されるものではない。
例えば、図27に示すように、振動電極25dに接続される第2電位を接地電位にし、固定電位電極17o及びチャネル形成領域14に接続される第1電位を高電位の直流バイアス電圧Vbiasにしてもよい。図27に示す構造では第1~第3実施形態で説明した振動電極25dの下に第2浮遊電極保護膜36を介して第2浮遊電極35を設けている。そして、振動電極25dの上に振動電極保護膜26dを介してSi34膜からなる剛性強化蓋部37cが配置されている。
図27に示す振動電極25d側を接地電位にする構造でも、振動空洞28を形成する工程の際には、犠牲層をウェットエッチングで選択的に溶解するための除去液(エッチング液)の導入が必要である。そのため、Si34膜からなる真空栓37dが、除去液を導入するために開孔した液導入孔34を塞いでいる。液導入孔34は、振動電極保護膜26d、第2浮遊電極保護膜36及び振動膜23を貫通して振動空洞28に到達している。剛性強化蓋部37cの上には剛性強化蓋部37cをパターニングする際にエッチングマスクとして用いたシリコン酸化膜からなる真空栓上部パターン38bが庇状に残留している。例えば、第2浮遊電極35、振動電極25d、下部電極(17c,17o)を同じ面積にする。ここで下部電極(17c,17o)の面積は、浮遊電極17cの面積と固定電位電極17oの面積の合計である。
第2浮遊電極保護膜36がSiO2膜からなり、第2浮遊電極35と振動電極25dとの間の第2浮遊電極保護膜36の厚さが10nmであるとする。更に、第2浮遊電極35と下部電極(17c,17o)の間が高さ10nmの真空であるとすると、第2浮遊電極35と第2浮遊電極35の間に定義される第3可変容量C5の両端には、振動電極25dと固定電位電極17oの間に印加される直流バイアス電圧Vbiasの4/5が印加される。一方、第2浮遊電極35と浮遊電極17cの間には、直流バイアス電圧Vbiasの1/5が印加される。これは、例えば、浮遊電極17cの面積は小さいとして、無視し、振動電極25dと固定電位電極17oの面積はほぼ同じと仮定すると、SiO2膜の比誘電率εr=4であるから、

5=4C6 ………(50)

となるからである。即ち図27に示す振動電極25dを接地電位とする構成の場合では、第3可変容量C5の両端には直流バイアス電圧Vbiasの4/5が印加され、第1可変容量C4の両端には直流バイアス電圧Vbiasの1/5が印加される。
このように、本発明は、上述の第1~第4実施形態の説明に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲の記載に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
12…ゲート絶縁膜(第1ゲート絶縁膜)、14…チャネル形成領域、15a…第2主電極領域、15b…第1主電極領域、16…ゲート絶縁膜(第2ゲート絶縁膜)、17c,17q…主浮遊電極17o,17p,17r…固定電位電極、23…振動膜、25c…振動電極

Claims (6)

  1. 第1導電型の半導体領域からなり、第1電位に設定されたチャネル形成領域と、
    該チャネル形成領域の表面に互いに対向し且つ離間して設けられた第2導電型の第1及び第2主電極領域と、
    前記チャネル形成領域の上面に振動空洞を介して対向し、第2電位に設定された振動電極と、
    前記チャネル形成領域と前記振動電極の間に、前記振動空洞を密閉空間として設けるように前記振動空洞を囲む空洞形成絶縁膜と、
    を備え、前記振動電極の超音波による変位を、前記第1及び第2主電極領域の間を流れる電流の変化として検知することを特徴とする音響誘導型半導体素子。
  2. 前記第1及び第2主電極領域の上、並びに前記第1及び第2主電極領域に挟まれた前記チャネル形成領域の上に設けられたゲート絶縁膜と、
    前記第1及び第2主電極領域に挟まれた前記チャネル形成領域の上方において、前記ゲート絶縁膜の上に、少なくとも擬浮遊状態となるように設けられた導電体層からなる浮遊電極と、
    を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の音響誘導型半導体素子。
  3. 前記ゲート絶縁膜の上に前記浮遊電極と隣接し、且つ前記浮遊電極と離間して配置され、前記第1電位に設定された導電体層からなる固定電位電極を更に備えることを特徴とする請求項2に記載の音響誘導型半導体素子。
  4. 前記浮遊電極に前記振動空洞を介して対向した絶縁膜からなる振動膜を更に備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の音響誘導型半導体素子。
  5. 遅延抵抗を更に備え、
    前記浮遊電極と前記振動電極の間の容量と、前記遅延抵抗とでハイパスフィルタを構成するように、前記遅延抵抗を介して前記浮遊電極が前記第1電位に接続されることを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の音響誘導型半導体素子。
  6. 第1導電型の半導体領域からなり、第1電位に設定されたチャネル形成領域と、
    該チャネル形成領域の表面に互いに対向し且つ離間して設けられた第2導電型の第1及び第2主電極領域と、
    前記チャネル形成領域の上面に振動空洞を介して対向し、第2電位に設定された振動電極と、
    前記チャネル形成領域と前記振動電極の間に、前記振動空洞を密閉空間として設けるように前記振動空洞を囲む空洞形成絶縁膜と、
    を備える単位セルを、共通基体上に少なくとも一部の素子として配列し、前記単位セルのそれぞれにおいて、前記振動電極の超音波による変位を、前記第1及び第2主電極領域の間を流れる電流の変化として検知することを特徴とする音響素子集積回路。
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