JP2023062509A - プレス加工用の支援システム、及びプレス作業の支援方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】プレス加工の加工量を選定する作業を支援するプレス加工用の支援システムを提供すること。【解決手段】被加工材59にプレス加工を施した後の製品5の寸法である加工寸法を予測するための支援システム1は、被加工材59に施したプレス加工の加工量及びプレス加工後の加工寸法に基づき、所定の変更量の分だけ加工量を変更した場合の加工寸法あるいは加工寸法の変化量の予測値を求めるための学習モデルを含み、学習モデルは、被加工材59に実際に施したプレス加工の加工量及びプレス加工後の加工寸法を含む学習データを、教師データとして学習したモデルである。【選択図】図1
Description
本発明は、プレス加工を施した際の加工後の寸法を予測するためのプレス加工用の支援システムに関する。
従来、金属材などの被加工材を成形するための加工技術として、プレス加工が広く利用されている(例えば下記の特許文献1参照。)。プレス加工は、被加工材を金型に圧着することで金型の形状に変形等させる加工方法である。プレス加工は、同じ形状仕様の製品や部品の大量生産に適しており、金属材などの被加工材を効率高く成形できる。
プレス加工では、被加工材の形状や材料組成等のばらつきや、加工条件の僅かな違いや、金型の寸法誤差、等に起因して、プレス加工後の加工寸法にばらつきが生じることがある。それ故、形状精度が要求される製品の場合、予め定められた規格に加工寸法が収まるよう、トライアル加工を繰り返し実施してプレス加工の加工量を選定する必要がある。
しかしながら、プレス加工の加工量の選定は難易度が非常に高く、熟練の技術者であっても複数回のトライアル加工が必要となるうえ、トライアル加工の間、製品や部品の生産を中断する必要があるという実情がある。
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、プレス加工の加工量を選定する作業を支援するプレス加工用の支援システムを提供しようとするものである。
本発明の一態様は、被加工材にプレス加工を施した後の製品の寸法である加工寸法を予測するための支援システムであって、
被加工材に施したプレス加工の加工量及び当該プレス加工後の加工寸法に基づき、所定の変更量の分だけ加工量を変更した場合の加工寸法あるいは加工寸法の変化量の予測値を求めるための学習モデルを含み、
当該学習モデルは、被加工材に実際に施したプレス加工の加工量及び当該プレス加工後の加工寸法を含む学習データを、教師データとして学習したモデルであるプレス加工用の支援システムにある。
被加工材に施したプレス加工の加工量及び当該プレス加工後の加工寸法に基づき、所定の変更量の分だけ加工量を変更した場合の加工寸法あるいは加工寸法の変化量の予測値を求めるための学習モデルを含み、
当該学習モデルは、被加工材に実際に施したプレス加工の加工量及び当該プレス加工後の加工寸法を含む学習データを、教師データとして学習したモデルであるプレス加工用の支援システムにある。
本発明の一態様は、被加工材にプレス加工を施した後の製品あるいは部品の寸法である加工寸法を予測することによりプレス作業を支援する方法であって、
被加工材に実際に施したプレス加工の加工量及び当該プレス加工後の加工寸法を含む学習データを、教師データとして学習した学習モデルを利用し、
被加工材に施したプレス加工の加工量及び当該プレス加工後の加工寸法に基づき、所定の変更量の分だけ加工量を変更した場合の加工寸法あるいは加工寸法の変化量の予測値を求めるプレス作業の支援方法にある。
被加工材に実際に施したプレス加工の加工量及び当該プレス加工後の加工寸法を含む学習データを、教師データとして学習した学習モデルを利用し、
被加工材に施したプレス加工の加工量及び当該プレス加工後の加工寸法に基づき、所定の変更量の分だけ加工量を変更した場合の加工寸法あるいは加工寸法の変化量の予測値を求めるプレス作業の支援方法にある。
本発明は、プレス加工の加工量を変更した場合の加工寸法に係る予測値を求めるための学習モデルを含むシステムあるいは方法である。この学習モデルは、被加工材に施したプレス加工の加工量及びプレス加工後の加工寸法、を含む教師データを学習したモデルである。この学習モデルによれば、被加工材にプレス加工を施した場合の加工寸法に係る予測値を精度高く求めることができる。
本発明の支援システム及び支援方法は、被加工材にプレス加工して得られる加工寸法等を予測可能な優れた特性のシステムあるいは支援方法であり、プレス加工の加工量を選定する作業を支援できる。
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、金属材料である被加工材にプレス加工を施した際の加工寸法(加工後の寸法)を予測するための支援システム1及びプレス作業の支援方法に関する例である。この内容について、図1~図9を用いて説明する。
(実施例1)
本例は、金属材料である被加工材にプレス加工を施した際の加工寸法(加工後の寸法)を予測するための支援システム1及びプレス作業の支援方法に関する例である。この内容について、図1~図9を用いて説明する。
本例の支援システム1(図1)は、金属板を被加工材としてプレス加工を施し、製品を作製する工程を支援するシステムである。本例で例示する工程は、帯状の金属板が巻回されたコイル材21から被加工材59を巻き出すアンコイラー22、被加工材59の反りなどを矯正する精密レベラー23、プレス加工を担うプレス機3、を含む加工設備1Sにより実現される工程である。
本例の製品5(図2)は、略短冊状の板状の部品である。製品5では、両端部51に対して張り出す中間部53が折り曲げ加工により形成されていると共に、一方の端部51及び中間部53にそれぞれ矩形状の貫通孔50が打ち抜き加工されている。さらに、他方の端部51(同図中の手前側の端部)には、切断加工により櫛歯形状が設けられている。この製品5は、被加工材59を元にしてプレス機3(図1)によるプレス加工によって作製される。櫛歯形状などの複雑形状を含む製品は、プレス加工の難易度が高く、加工寸法の管理が難しい加工品と言える。
製品5では、加工寸法を計測するための複数の計測箇所A~E(図3)が予め設定されている。計測箇所A~Eについては、目標寸法の範囲である規格が設定されている。本例の支援システム1では、計測箇所A~Eの加工寸法が規格に収まるよう、製品5を作製する際のプレス加工の加工量が選定される。
曲げ加工には、例えば、下型(ダイ)と上型(パンチ)とを含む金型(図示略)が利用される。金型によれば、被加工材(図1参照。)を挟み込んで所定形状の製品5を加工できる。特に、本例の金型は、加工量の調整を可能とする機構を有し、複数の調整箇所において加工量の調整が可能な高機能の金型である。
ここで、プレス加工の対象物である被加工材59は、コイル材21(図1)から巻き出した後、精密レベラー23で反りなどが矯正された金属板である。コイル材21の外周と内周とでは巻き出した金属板の湾曲の度合いに大きな違いがある。そのため、精密レベラー23による矯正後であっても、被加工材59の反り具合に違いが生じ得る。プレス加工による加工量が同じである場合、コイル材21の外周と内周とで、プレス加工後の製品5の寸法(加工寸法)に差が生じてくる。また、同じ仕様のコイル材21であっても、材料組成のばらつき等に起因して、加工性に違いが生じることがある。被加工材59の加工性に違いが有れば、プレス加工による加工量が同じであっても、加工後の製品5の寸法(加工寸法)に差が生じる。
そのため、アンコイラー22(図1参照。)に新たなコイル材21がセットされた際には、その都度、プレス加工による加工量を調整する必要がある。また、上記のごとくコイル材21の外周と内周とでは、被加工材59の反り等に違いがあるので、コイル材21からの被加工材59の巻出しの開始時点に加えて、中間的な途中の時点において、製品5の寸法計測や加工量の調整等が必要となる。さらに、製品5の不良発生を未然に回避するため、コイル材21からの被加工材59の巻出しの終わりの時点で、製品5の寸法を計測して加工寸法を確認する必要がある。
本例の支援システム1は、コイル材21からの被加工材59の巻出しの開始時点および途中の時点で実施される加工量の調整作業を支援するシステムの例である。支援システム1を利用すれば、プレス加工の適切な加工量を選定する作業の効率を向上でき、製品5の生産効率を高めることが可能である。
支援システム1は、図4のごとく、製品5(図3参照。)の寸法(加工寸法)を自動計測する機能を備えるプレス機3と、このプレス機3と通信可能なコンピュータ装置10と、を含めて構成されている。プレス機3は、各調整箇所の加工量を金型に設定する制御ユニット38、及び製品5の寸法(加工寸法)を自動計測する計測ユニット39を備えている。計測ユニット39は、製品5の各計測箇所の加工寸法を表す実測データを出力可能である。
なお、金型の調整箇所と、製品5の計測箇所(例えば、図3中のA~Eの箇所。)と、は同じ位置であっても良いが、異なる位置であっても良い。また、金型における加工量の調整は、制御ユニット38による自動制御に代えて、作業者が行っても良い。さらに、製品5の寸法の計測は、計測ユニット39による自動計測に代えて、マニュアル計測であっても良い。さらに、計測ユニット39は、プレス機3に組み込むことも良い。すなわち、寸法の計測機能を備えるプレス機を採用することも良い。
コンピュータ装置10(図4)は、金型の複数の調整箇所の加工量等を表す加工データや、プレス機3(計測ユニット39)による実測データ、等に基づいて各種の演算処理を実行する回路を備えている。コンピュータ装置10による演算処理の結果は、液晶ディスプレイ等の表示装置を利用して出力されるほか、図示しないプリンタによる印字出力も可能である。
以上のように構成された支援システム1が加工量の選定作業を支援する処理の大まかな流れについて、図5を参照して説明する。同図の処理は、図4のコンピュータ装置10が実行する処理である。プレス機3がトライアル加工としてのプレス加工を実施すると、コンピュータ装置10は、金型の各調整箇所の加工量等を表す加工データを読み出すと共に、製品5について予め設定された複数の計測箇所(例えば、図3中のA~Eの箇所。)の加工寸法(トライアル加工による加工寸法)を表す実測データをプレス機3から取り込む(S101)。そして、コンピュータ装置10は、製品5の各計測箇所の加工寸法が、予め定められた規格(目標寸法の範囲)内に収まっているか否かを判断する(S102)。なお、上記のステップS101において、オペレータが、加工量や加工寸法をコンピュータ装置10に入力することも良い。
複数の計測箇所について、トライアル加工による各加工寸法が規格内であれば(S102:YES)、コンピュータ装置10は、そのまま処理を終了させ、加工量の選定作業を終了させる。この場合には、その後、トライアル加工の加工量が設定され、製品5を生産するモードに移行し、プレス機3によるプレス加工が繰り返し実行され、製品5が生産される。
一方、いずれかの計測箇所について、トライアル加工による加工寸法が規格から外れている場合には(S102:NO)、コンピュータ装置10は、トライアル加工による加工量を変更した場合の寸法変化量(加工寸法の変化量の予測値の一例。)を予測する処理を実行する(S103)。なお、寸法変化量を予測する処理については、後で詳しく説明する。
コンピュータ装置10は、金型の複数の調整箇所について、推奨加工量を選定する(S104)。コンピュータ装置10は、各調整箇所の推奨加工量と共に、加工寸法の予測値である予測寸法を、例えば液晶ディスプレイの表示画面に表示する(S105)。
次に、プレス加工の加工量を変更した場合の(1)寸法変化量を予測する処理(図5中のステップS103の処理)、及び(2)推奨加工量を選定する処理(同図中のステップS104の処理)、の内容について説明する。これらの処理は、いずれも、コンピュータ装置10(図4)が実行する処理である。
(1)寸法変化量を予測する処理
本例の支援システム1は、図6に例示するニューラルネットワークモデル(NNモデル)を利用し、トライアル加工としてのプレス加工の加工量を変更したときの加工寸法の変化量である寸法変化量(予測値の一例)を求める。同図のNNモデルは、トライアル加工としての実際のプレス加工の加工量及び加工寸法(実測データ)に基づき、加工量を変更した場合に予測される寸法変化量を出力する学習モデルの一例である。NNモデルの入力データは、トライアル加工の加工量や加工寸法、及びトライアル加工の加工量からの変更量(変更加工量)である。加工量及び変更加工量は、金型に設定された複数の調整箇所(例えばNo.1~5の箇所。)に適用される加工量である。加工寸法は、製品5に設定された複数の計測箇所(例えば図3中のA~Eの箇所。)の寸法の実測データである。NNモデルの出力データは、製品5に設定された複数の計測箇所(例えば図3中のA~Eの箇所。)の寸法変化量、すなわちトライアル加工による加工寸法からの変化量の予測値である。
本例の支援システム1は、図6に例示するニューラルネットワークモデル(NNモデル)を利用し、トライアル加工としてのプレス加工の加工量を変更したときの加工寸法の変化量である寸法変化量(予測値の一例)を求める。同図のNNモデルは、トライアル加工としての実際のプレス加工の加工量及び加工寸法(実測データ)に基づき、加工量を変更した場合に予測される寸法変化量を出力する学習モデルの一例である。NNモデルの入力データは、トライアル加工の加工量や加工寸法、及びトライアル加工の加工量からの変更量(変更加工量)である。加工量及び変更加工量は、金型に設定された複数の調整箇所(例えばNo.1~5の箇所。)に適用される加工量である。加工寸法は、製品5に設定された複数の計測箇所(例えば図3中のA~Eの箇所。)の寸法の実測データである。NNモデルの出力データは、製品5に設定された複数の計測箇所(例えば図3中のA~Eの箇所。)の寸法変化量、すなわちトライアル加工による加工寸法からの変化量の予測値である。
なお、支援システム1が利用するNNモデルは、実際に行われたプレス加工のデータを教師データ(学習データ)として予め学習したモデルである。実際のプレス加工のデータには、基準となるプレス加工による加工量及び加工寸法、基準となるプレス加工による加工量からの変更量である変更加工量、加工量を変更したときの寸法変化量が含まれる。
本例では、学習済みの図6のNNモデルに対して、トライアル加工による加工量及び加工寸法(実測データ)と共に、各調整箇所(例えばNo.1~5の箇所)の変更加工量を入力することにより、寸法変化量の予測値を求めている。トライアル加工としての実際のプレス加工による加工量のデータは、金型に設定された複数の調整箇所(例えばNo.1~5)に設定された加工量である。また、トライアル加工の加工寸法(実測データ)は、製品5に予め設定された複数の計測箇所(例えば、図3中のA~Eの箇所。)で実測された加工寸法である。変更加工量は、金型の複数の調整箇所における変更加工量の組合せである。変更加工量の組合せは、基本的には、各調整箇所に設定された探索範囲に属する変更加工量の総当たりの組合せである。例えば図7は、調整箇所No.1~5の変更加工量の組合せの一部の例として、○、□、×、△を例示している。
なお、NNモデルの学習データとしては、上記の構成に代えて、実際に行われたプレス加工の加工量及び加工寸法(実測データ)を含む一方、変更加工量や寸法変化量を含まない学習データであっても良い。いずれかのプレス加工のデータ(加工量及び加工寸法)を基準データとしたときの他のプレス加工のデータとの間の加工量の差を、変更加工量として取り扱うことができ、学習データの一部として利用できる。さらに、基準データに係る加工寸法と、他のプレス加工のデータに係る加工寸法との差を、寸法変化量として取り扱うことができ、学習データの一部として利用できる。このような取り扱いによれば、実際のプレス加工の加工量及び加工寸法のみを学習データとして準備すれば良く、図6に例示するNNモデルの学習が容易になる。
(2)推奨加工量を選定する処理
本例の支援システム1では、金型に設定される複数の調整箇所(例えばNo.1~5の箇所。)について、それぞれ探索範囲が設定されて、その探索範囲の中から変更加工量が選択的に設定される。そして、この支援システム1では、複数の調整箇所に設定された変更加工量の組合せ毎に寸法変化量(予測値の一例)が求められ、推奨する変更加工量の組合せが推奨加工量として選定される。ここで、変更加工量は、トライアル加工としての実際のプレス加工による加工量からの変更量である。
本例の支援システム1では、金型に設定される複数の調整箇所(例えばNo.1~5の箇所。)について、それぞれ探索範囲が設定されて、その探索範囲の中から変更加工量が選択的に設定される。そして、この支援システム1では、複数の調整箇所に設定された変更加工量の組合せ毎に寸法変化量(予測値の一例)が求められ、推奨する変更加工量の組合せが推奨加工量として選定される。ここで、変更加工量は、トライアル加工としての実際のプレス加工による加工量からの変更量である。
各調整箇所(例えばNo.1~5)の探索範囲としては、各調整箇所における加工量の許容範囲であって、かつ、NNモデル(図6)が実際のデータを学習した範囲が、手入力あるいは自動入力により設定される。このように探索範囲を設定すれば、非現実的であって有り得ない範囲や、教師データを学習していない未学習の範囲等、での無用な探索処理を未然に回避でき、演算処理に要する時間を短縮できる。また、未学習の範囲では、NNモデルによる予測性能を十分に確保できない可能性が高い。未学習の範囲を探索範囲から除外することで、高い予測性能を確保できる。
また、本例の支援システム1では、異なる調整箇所(例えばNo.1の調整箇所とNo.3の調整箇所など。)間の加工量の差分について許容範囲が設定されている。支援システム1では、異なる調整箇所の変更加工量の組合せについて、上記の差分の許容範囲に属しているか否かが判断される。異なる調整箇所の変更加工量の組合せが、上記の差分の許容範囲に属していれば、寸法変化量を求める処理が実行される。一方、異なる調整箇所の変更加工量の組合せが、上記の差分の許容範囲から外れている場合には、各変更加工量が上記の探索範囲に属するものであっても、NNモデルに入力する変更加工量の組合せから除外される。
つまり、本例の構成では、複数の調整箇所のうちの異なる調整箇所に設定される加工変更量の組合せが、当該異なる調整箇所の間で許容される加工量の差分の範囲に収まる組合せであることが、寸法変化量を求める処理の実行条件となっている。本例の構成では、このように物理的にあり得ない変更加工量の組合せを除外することで、無用な探索処理を未然に回避している。
コンピュータ装置10は、金型に設定された複数の調整箇所(例えばNo.1~5)の変更加工量の様々な組合せ(例えば、図7中の○、□、×、△の組合せ。)について、それぞれ、複数の計測箇所(図3中のA~Eの箇所。)の寸法変化量を求める。そして、コンピュータ装置10は、複数の調整箇所について、それぞれ、トライアル加工としての実際のプレス加工による加工寸法に、予測値の一例をなす寸法変化量を合算して加工後の予測寸法を求める。
図8に例示する表は、図7の変更加工量の組合せ○、□、×、△について、計測箇所A~E(図3参照。)における予測寸法の基準値からの偏差を例示する表である。目標寸法の一例をなす基準値としては、例えば、寸法の許容範囲である規格の中央値(規格中央値)を採用できる。同図中、破線で示す値は、規格の上限値及び下限値である。なお、計測箇所A~Eでは、規格の範囲の大きさ(上限値と下限値との差)が同じである。
コンピュータ装置10は、推奨加工量を選定するに当たって、まず、各調整箇所(例えばNo.1~5)の変更加工量の組合せ(例えば、図8中の○、□、×、△の組合せ。)の中から、規格から外れる予測寸法が含まれる組合せを除外する。例えば図8の場合には、規格から外れる予測寸法が含まれる△の組合せが除外される。
コンピュータ装置10は、残った組合せである○、□、×の組合せについて、それぞれ、各計測箇所の予測寸法と基準値との差分の大きさの総和を求める(図9)。ここで、各計測箇所の予測寸法と基準値との差分の大きさの総和は、複数の計測箇所の予測寸法と、複数の計測箇所の基準値と、が乖離する度合いを表す指標の一例である。コンピュータ装置10は、差分の大きさの総和が最小である組合せを選択する。例えば図9の場合であれば、□の組合せに係る差分の大きさの総和が最小となっている。そのため、図7中の□の変更加工量の組合せが選択される。ここで、差分の大きさとは、予測寸法から基準値を差し引いた差分の値の絶対値を意味している。
コンピュータ装置10は、このようにして、上記の差分の大きさの総和が最小となる変更加工量の組合せを選択し、選択した組合せに係る変更加工量を、トライアル加工としての実際のプレス加工の加工量に合算することで推奨加工量を選定する。コンピュータ装置10は、選定した推奨加工量および変更加工量を、例えば、液晶ディスプレイ等の表示画面に表示すると共に、プレス機3にデータ入力する。
以上のように本例の支援システム1及びプレス作業の支援方法によれば、プレス加工時の加工量を効率良く選定できる有用なシステムである。この支援システム1を利用すれば、被加工材59にプレス加工(トライアル加工)を施したときの加工量と加工寸法(実測データ)とをNNモデル(図6)に入力することで、推奨加工量等の提示を受けることができる。NNモデルに入力する加工寸法は、規格から外れるものであっても良い。本例の支援システム1は、プレス加工(トライアル加工)により実際に得られた加工寸法等のデータに基づいて、規格に収まる加工量を選定して提示することが可能である。
なお、本例では、コンピュータ装置10が推奨加工量や変更加工量をプレス機3にデータ入力することにより金型の加工量が自動調整される構成を採用しているが、この構成に代えて、作業者が金型を調整することで加工量を調整する構成を採用しても良い。
なお、本例では、トライアル加工としての実際のプレス加工を実施した際の加工寸法が規格から外れる場合に、NNモデルによる加工量の選定を実施している。これに代えて、トライアル加工としての実際の加工寸法が規格に収まる場合にも、NNモデルによる推奨加工量の選定を実施しても良い。この場合には、よりベストに近い加工量の提示を受けることができる。
本例の構成では、規格範囲の中央値である規格中央値を、予測寸法と比較するための基準値(目標寸法)として利用している。これに代えて、規格中央値からオフセットさせた値を、基準値として設定することも良い。例えば、生産が進むに従って加工寸法が例えばプラス側に変動する等、加工寸法が変動する傾向が把握できている場合であれば、予測寸法の基準値を規格中央値からオフセットさせることも良い。例えば、被加工材59の出元がコイル材21の内周側に移行するに従って、加工寸法が次第に大きくなる傾向が把握されている場合であれば、予測寸法の基準値として、規格中央値よりも低い側にオフセットされた値を設定すると良い。この場合には、プレス加工の加工量を設定して生産を開始した後、加工寸法が規格から外れるまでの生産数を多くできる。
本例では、複数の調整箇所の変更加工量の組合せ毎に、基準値と予測寸法との差分の大きさの総和を求めている。差分としては、予測寸法から基準値を差し引いた値に代えて、規格の範囲の大きさによって正規化された値であっても良い。例えば、差分が2mmで、規格の範囲の大きさが10mmであれば、正規化された差分の値は、2mm÷10mm=0.2となる。この場合、コンピュータ装置10が備えるハードディスクやROMなどの回路が、複数の計測箇所毎の規格、すなわち目標寸法の範囲を記憶していると良い。このように差分の大きさを正規化すれば、計測箇所毎に規格の範囲の大きさが異なっていても、推奨加工量を適切に選定できるようになる。なお、正規化された差分の総和は、複数の計測箇所の予測寸法と、複数の計測箇所の基準値と、が乖離する度合いを表す指標の一例である。
複数の計測箇所の予測寸法と、複数の計測箇所の基準値と、が乖離する度合いを表す指標としては、例示した差分の総和に代えて、ユークリッド距離やマンハッタン距離などを採用することも良い。これらの指標の詳細な説明は省略するが、従来、機械学習アルゴリズムの分野において良く知られている。例えば、次式で示すユークリッド距離であれば、ユークリッド距離が大きいほど、乖離する度合いが大きいということになる。
本例では、トライアル加工としての実際のプレス加工の加工量を変更した際、トライアル加工による加工寸法からの変化量(寸法変化量)を予測値として出力するNNモデルを例示している(図6参照。)。これに代えて、各計測箇所の予測寸法を予測値として直接、出力するNNモデルを採用することも良い。
本例では、NNモデルによる変更加工量の探索範囲は、各調整箇所における加工量の許容範囲に包含され、かつ、教師データを学習した範囲に包含される範囲である。これに代えて、各調整箇所における加工量の許容範囲であること、及び教師データを学習した範囲であること、のうちのいずれか一方の条件のみを設定することも良い。また、本例の構成では、異なる調整箇所間の加工量の差分に許容範囲を設け、この許容範囲から外れる変更加工量の組合せを除外している。差分の許容範囲に関する条件は省略することも良い。さらに、各調整箇所における加工量の許容範囲や、教師データを学習した範囲、等の条件を省略し、異なる調整箇所間の加工量の差分の許容範囲に関する条件のみを設定することも良い。
本例では、推奨加工量を選定するに当たって、まず、各調整箇所の変更加工量の組合せの中から、規格外の予測寸法が含まれる組合せを除外している。このように規格外の予測寸法が含まれる組合せを除外することは必須の構成ではない。例えば、各計測箇所の予測寸法と基準値との差分の大きさの総和(乖離する度合いを表す指標の一例。)により、変更加工量の組合せをランキングして上位の組合せを推奨(レコメンド)することも良い。予測寸法が規格から外れている組合せが推奨されることが起こり得るが、このような場合には、予測寸法が規格から外れる組合せを別途、除外すれば良い。
また、本例では、1回の曲げ加工(プレス加工)の加工量を選定するための支援システム1を例示している。これに代えて、複数回に亘る曲げ加工により製品を加工する工程における2回目以降の曲げ加工に本例の支援システム1を適用することも良い。例えば、1回目の大まかな形状を形成するための曲げ加工の後、加工寸法を調整するための2回目の曲げ加工により所定の矯正量(加工量の一例)を与える工程に、本例の支援システム1を適用することも良い。この場合には、各調整箇所における矯正量の変更量である変更矯正量を、支援システム1を利用して効率良く選定できる。NNモデルの入力データとしては、2回目の曲げ加工(トライアル加工)時の矯正量及び加工寸法のデータ、および調整箇所毎の変更矯正量(変更加工量)を設定すると良い。このNNモデルについては、2回目の曲げ加工(トライアル加工)時のデータを含む学習データを、教師データとして学習させると良い。
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。
1 支援システム
10 コンピュータ装置
21 コイル材
22 アンコイラー
23 精密レベラー
3 プレス機
31 下型(ダイ)
33 上型(パンチ)
5 製品
59 被加工材
10 コンピュータ装置
21 コイル材
22 アンコイラー
23 精密レベラー
3 プレス機
31 下型(ダイ)
33 上型(パンチ)
5 製品
59 被加工材
Claims (9)
- 被加工材にプレス加工を施した後の製品あるいは部品の寸法である加工寸法を予測するための支援システムであって、
被加工材に施したプレス加工の加工量及び当該プレス加工後の加工寸法に基づき、所定の変更量の分だけ加工量を変更した場合の加工寸法あるいは加工寸法の変化量の予測値を求めるための学習モデルを含み、
当該学習モデルは、被加工材に実際に施したプレス加工の加工量及び当該プレス加工後の加工寸法を含む学習データを、教師データとして学習したモデルであるプレス加工用の支援システム。 - 請求項1において、前記変更量の範囲である探索範囲を設定する回路と、当該探索範囲に属する変更量について前記予測値を求める回路と、を有し、
前記探索範囲は、被加工材に適用可能な加工量の許容範囲、および前記学習モデルが前記教師データを学習した範囲のうち、少なくともいずれか一方の範囲に包含されるように設定されているプレス加工用の支援システム。 - 請求項1または2において、前記学習モデルは、プレス加工用の型に予め設定された複数の調整箇所について前記変更量が設定された場合に、製品に予め設定された複数の計測箇所における前記予測値を求めるモデルであり、
前記複数の調整箇所のうちの異なる調整箇所に設定される変更量の組合せのうち、当該異なる調整箇所の間で許容される加工量の差分の範囲から外れる変更量の組合せは、前記予測値を求める組合せから除外されるプレス加工用の支援システム。 - 請求項1~3のいずれか1項において、前記学習モデルは、プレス加工用の型に予め設定された複数の調整箇所について前記変更量が設定された場合に、製品に予め設定された複数の計測箇所における前記予測値を求めるモデルであり、
前記複数の計測箇所の加工後の目標寸法を記憶する回路と、
前記複数の計測箇所の予測値に基づく加工寸法と、前記複数の計測箇所の目標寸法と、が乖離する度合いの指標を求める回路と、
前記複数の調整箇所の変更量の組合せのうち、前記乖離する度合いが最も小さくなる変更量の組合せを選択する回路と、を有するプレス加工用の支援システム。 - 請求項4において、前記複数の計測箇所について前記目標寸法の範囲を記憶する回路を有し、
前記乖離する度合いを表す指標を求める回路は、前記予測値に基づく加工寸法と前記目標寸法との差分を前記複数の計測箇所毎に求め、当該複数の計測箇所毎の差分に基づいて前記乖離する度合いを表す指標を求めるように構成されており、前記差分の大きさは、前記目標寸法の範囲の大きさによって正規化された値であるプレス加工用の支援システム。 - 請求項1~5のいずれか1項において、被加工材は金属材料よりなるプレス加工用の支援システム。
- 被加工材にプレス加工を施した後の製品あるいは部品の寸法である加工寸法を予測することによりプレス作業を支援する方法であって、
被加工材に実際に施したプレス加工の加工量及び当該プレス加工後の加工寸法を含む学習データを、教師データとして学習した学習モデルを利用し、
被加工材に施したプレス加工の加工量及び当該プレス加工後の加工寸法に基づき、所定の変更量の分だけ加工量を変更した場合の加工寸法あるいは加工寸法の変化量の予測値を求めるプレス作業の支援方法。 - 請求項7において、前記学習モデルは、プレス加工用の型に予め設定された複数の調整箇所について前記変更量が設定された場合に、製品に予め設定された複数の計測箇所における前記予測値を求めるモデルであり、
前記複数の調整箇所のうちの異なる調整箇所に設定される変更量の組合せのうち、当該異なる調整箇所の間で許容される加工量の差分の範囲から外れる変更量の組合せは、前記予測値を求める組合せから除外されるプレス作業の支援方法。 - 請求項7または8において、前記学習モデルは、プレス加工用の型に予め設定された複数の調整箇所について前記変更量が設定された場合に、製品に予め設定された複数の計測箇所における前記予測値を求めるモデルであり、
前記複数の計測箇所の予測値に基づく加工寸法と、前記複数の計測箇所について予め記憶している目標寸法と、が乖離する度合いを表す指標を求め、
前記複数の調整箇所の変更量の組合せのうち、前記乖離する度合いが最も小さくなる変更量の組合せを選択するプレス作業の支援方法。
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