JP2023059600A - 電極構造体、電解セル、電解槽、電解槽の製造方法 - Google Patents

電極構造体、電解セル、電解槽、電解槽の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】既存電極における触媒層の減耗を抑制し、長期的に電解性能を維持できる、電極構造体等を提供する。【解決手段】陽極と、当該陽極上に配された電解用電極と、を備える電極構造体であって、前記電解用電極が、導電性基材と、当該導電性基材の少なくとも1面上に配される触媒層と、を備え、前記電解用電極の厚みが、150μm以上1000μm以下であり、前記電解用電極のBET比表面積が、200mm2/mm2以上5000mm2/mm2以下であり、前記電解用電極の通気抵抗が、0.005kPa・g/m以上0.350kPa・g/m以下である、電極構造体。【選択図】なし

Description

本発明は、電極構造体、電解セル、電解槽、電解槽の製造方法に関する。
食塩水等のアルカリ金属塩化物水溶液の電気分解、水の電気分解(以下、併せて「電解」という。)では、隔膜、より具体的にはイオン交換膜や微多孔膜を備えた電解槽を用いた方法が利用されている。この電解槽は、多くの場合その内部に多数直列に接続された電解セルを備える。各電解セルの間に隔膜を介在させて電解が行われる。電解セルでは、陰極を有する陰極室と、陽極を有する陽極室とが、隔壁(背面板)を介して、あるいはプレス圧力、ボルト締め等による押し付けを介して、背中合わせに配置されている。
従来、これら電解槽に使用される陽極、陰極は、それぞれ電解セルの陽極室、陰極室に溶接、折り込み等の方法により固定され、その後、保管、顧客先へ輸送される。一方、隔膜はそれ自体単独で塩化ビニル製のパイプ等に巻いた状態で保管、顧客先へ輸送される。顧客先では電解セルを電解槽のフレーム上に並べ、隔膜を電解セルの間に挟んで電解槽を組み立てる。このようにして電解セルの製造および顧客先での電解槽の組立が実施されている。
電解運転をスタートし、継続していくと様々な要因で各部品は劣化し、それに伴って電解性能も低下するため、ある時点で各部品を交換することになる。従来、電解セルに固定された陽極や陰極が劣化した場合は、電解槽から電解セルを取り出し、専用の工場まで搬出して、溶接等の固定を外して古い電極を剥ぎ取った後、新しい電極を電解セル内に設置し、溶接等の方法で固定し、電解工場に運搬し、電解槽に戻す、といった作業が行われており、非常に煩雑なものとなっている。かかる事情に鑑み、例えば、特許文献1においては、単位面積当たりの質量が小さく、イオン交換膜及び微多孔膜などの隔膜や劣化した電極と弱い力で接着できる電極を用いることが提案されている。特許文献1において提案されている電極は、具体的には、水の表面張力のような弱い力で隔膜や劣化した電極と接着でき、既存の電解セルにおける部材を維持したまま劣化した電極の性能を新品と同様あるいはそれ以上の水準まで向上させることができるとされている。
なお、本明細書中、既存電極を除去することなく既存電極の性能を新品と同様あるいはそれ以上の水準まで向上させる操作を「更新」という。また、本明細書中、「既存電極」とは、「既に電解運転に供した電解セルにおける電極」を想定しており、電解セル組み立て時の電極(新品時の電極)が発現し得る電解性能を基準として電解性能に劣るものをいう。
国際公開第2018/174199号
特許文献1に記載の電極を、例えば、陽極の更新のために用いる場合、すなわち、電解セルに固定された既存電極(既存陽極)上に、特許文献1に記載の電極を新たな電極として配置して電解運転を続けたとき、当該新たな電極の劣化だけでなく、既存電極の劣化も進行する。このようにして既存電極の劣化が過度に進行すると、特許文献1に記載の電極を再度新品に交換したとしても電解性能が完全には回復しないという問題がある。ここで、既存電極の劣化は、主に、当該既存電極における触媒層の減耗によるものと考えられる。すなわち、既存電極における触媒層の減耗を抑制し、より長期的に電解性能を維持する観点から、特許文献1に記載の技術には依然として改善の余地がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、既存電極における触媒層の減耗を抑制し、長期的に電解性能を維持できる、電極構造体等を提供することを目的とする。
本発明者らは、電解用電極の厚み、通気抵抗及びBET比表面積を各々所定の範囲とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1]
陽極と、当該陽極上に配された電解用電極と、を備える電極構造体であって、
前記電解用電極が、導電性基材と、当該導電性基材の少なくとも1面上に配される触媒層と、を備え、
前記電解用電極の厚みが、150μm以上1000μm以下であり、
前記電解用電極のBET比表面積が、200mm2/mm2以上5000mm2/mm2以下であり、
前記電解用電極の通気抵抗が、0.005kPa・g/m以上0.350kPa・g/m以下である、電極構造体。
[2]
前記触媒層の触媒担持量が、0.050mol/m2以上2.000mol/m2以下である、[1]に記載の電極構造体。
[3]
前記触媒層が、白金族元素を含む、[1]又は[2]に記載の電極構造体。
[4]
前記導電性基材が、チタンを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の電極構造体。
[5]
前記導電性基材が、繊維状金属を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の電極構造体。
[6]
前記繊維状金属の線径が、10μm以上150μm以下である、[5]に記載の電極構造体。
[7]
前記導電性基材の空隙率が、40%以上90%以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の電極構造体。
[8]
[1]~[7]のいずれかに記載の電極構造体と、
前記陽極に対向する陰極と、
を備える電解セルであって、
前記電解用電極が陽極電極として機能する、電解セル。
[9]
[8]に記載の電解セルと、
前記陽極と前記陰極との間に配される隔膜と、
を備える、電解槽。
[10]
陽極と、前記陽極に対向する陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配される隔膜と、を備える既存電解槽から、新たな電解槽を製造するための方法であって、
前記既存電解槽において、陽極上に電解用電極を配する工程(A)を含み、
前記電解用電極が、導電性基材と、前記導電性基材の少なくとも1面上に配される触媒層と、を備え、
前記電解用電極の厚みが、150μm以上1000μm以下であり、
前記電解用電極のBET比表面積が、200mm2/mm2以上5000mm2/mm2以下であり、
前記電解用電極の通気抵抗が、0.005kPa・g/m以上0.350kPa・g/m以下であり、
前記電解用電極が陽極電極として機能し、
前記電解用電極と前記陽極とが、電気的に接続されている、電解槽の製造方法。
本発明によれば、既存電極における触媒層の減耗を抑制し、長期的に電解性能を維持できる電極構造体等を提供することができる。
エキスパンドメタルの開口部の例を示す説明図である。 本実施形態の電解槽の断面の一例を示す模式図である。 参考例において観測された電圧上昇値とRu量との関係を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
[電極構造体]
本実施形態の電極構造体は、陽極と、当該陽極上に配された電解用電極と、を備える電極構造体であって、前記電解用電極が、導電性基材と、当該導電性基材の少なくとも1面上に配される触媒層と、を備え、前記電解用電極の厚みが、150μm以上1000μm以下であり、前記電解用電極のBET比表面積が、200mm2/mm2以上5000mm2/mm2以下であり、前記電解用電極の通気抵抗が、0.005kPa・g/m以上0.350kPa・g/m以下である。本実施形態の電極構造体は、このように構成されているため、既存電極における触媒層の減耗を抑制し、長期的に電解性能を維持することができる。本実施形態の電極構造体は、とりわけ後述する更新を実施する際に既存電極における触媒層の減耗を抑制する電極構造体ということができ、それによって長期的に電解性能を維持することに寄与する。
(導電性基材)
導電性基材は、飽和に近い高濃度の食塩水中で、塩素ガス発生雰囲気で用いられる。そのため、該導電性基材の材質としては、耐食性のあるバルブ金属が好ましい。バルブ金属としては、以下に限定されないが、例えば、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム等が挙げられる。該バルブ金属の中でも、経済性及び触媒層との親和性の観点からチタンが好ましい。
導電性基材の形状としては、孔を有する平坦状のものであることが好ましく、例えば、不織布、メッシュ、エキスパンドメタル、パンチングメタル等の形状が挙げられる。ここで、メッシュは金属の線材を織り込んで網状とした金網を意味し、エキスパンドメタルは、金属板をエキスパンド製造機によって千鳥状に切れ目を入れながら押し広げ、その切れ目を菱形や亀甲形に成形したメッシュ状の金属板を意味する。本実施形態においては不織布、メッシュ等の繊維状金属で構成される形状を有することがより好ましく、さらに好ましくは不織布である。導電性基材が繊維状金属を含む場合、繊維状金属の線径は、表面積と強度の観点から、10μm以上150μm以下であることが好ましく、より好ましくは15μm以上100μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上50μm以下である。
繊維状金属の線径は、導電性基材を製品として準備する場合は既知の値をそのまま採用してもよく、例えば、光学顕微鏡等により測定することもできる。
導電性基材の厚みとしては、電解用電極の厚みが、150μm以上1000μm以下となるような値であれば特に限定されないが、長期的な電解性能の維持と更新の容易性を確保する観点から、160μm以上800μm以下であることが好ましく、より好ましくは180μm以上700μm以下であり、さらに好ましくは200μm以上500μm以下である。
導電性基材の厚みは、例えば、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。
(触媒層)
電解用電極において、上述の導電性基材の少なくとも1面上に触媒層が配される。
既存電極における触媒層は、電解用電極との競合によって減耗が進行していくものと考えられ、電解用電極における触媒層の塩素発生過電圧が低い方が、既存電極での電解反応が抑えられて長期的に電解性能を維持できる傾向にある。上記の観点から、触媒層は、白金族元素等の電極触媒物質を含むことが好ましい。白金族金属元素としてはルテニウム元素を含むことがより好ましい。電解時の電圧をより低く抑える観点から、ルテニウム元素が、酸化物の形態で触媒層に含まれることがより好ましい。
ルテニウム酸化物としては、以下に限定されないが、例えばRuO2等が挙げられる。
触媒層は、構成元素として、上述した電極触媒物質のみを含有していてもよいし、他の成分を含んでいてもよい。他の成分の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、イリジウム、チタン等が挙げられる。本実施形態における触媒層が、他の成分を含む場合、その含有割合は、ルテニウム元素1molに対して、イリジウム元素0.5~1.5mol、かつ、チタン元素1.5~2.5molであることが好ましい。
触媒層は、一層のみであってもよいし、二層以上であってもよい。いずれの場合であっても、本実施形態における触媒層の厚みとしては、電解用電極の厚みが、150μm以上1000μm以下となるような値であれば特に限定されないが、電解性能と経済性の観点から、0.1μm以上20μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上10μm以下である。ここで、触媒層の厚みとは、単一の繊維状金属の上に形成されている触媒層の厚みを指し、複数の繊維状金属にまたがるように形成されている触媒層の厚みは考慮しない。
触媒層の厚みは、走査型電子顕微鏡の断面像等により測定することができる。
電解用電極における触媒層の触媒担持量は、電解電圧を下げる観点と、電解性能を長期的に維持する観点から、0.050mol/m2以上2.000mol/m2以下であることが好ましい。触媒担持量が0.050mol/m2以上の場合、電解用電極に十分な量の触媒が担持されているため、電解用電極上で優先的に電気分解反応が進行し、既存電極表面での電気分解反応を抑制して、結果として既存電極における触媒コーティングの減耗を抑制できる傾向にある。触媒担持量が2.000mol/m2以下である場合、電解用電極の触媒層による目詰まり等がなく、電解によって発生するガスの脱離性が高く、また電解液の供給性が高いことから、更新後に電解電圧を下げることができる傾向にある。触媒担持量は、より好ましくは0.100mol/m2以上1.800mol/m2以下であり、さらに好ましくは0.160mol/m2以上1.650mol/m2以下である。ここで、触媒担持量(mol/m2)は、みかけ単位面積当たりの導電性基材上に担持された触媒金属元素の合計物質量を意味する。
触媒担持量は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。また、触媒担持量は、例えば、塗布液の濃度を調整することや、塗布、乾燥、焼成の一連のサイクルの回数を調整すること等により上述した範囲に調整することができる。
(電解用電極の厚み)
電解用電極は、既存の電解セルにおける電極(既存電極)上に配することにより電解性能を更新する目的で好ましく使用される。すなわち、本実施形態の電極構造体は、既存電極としての陽極上に電解用電極が配された電極構造体であることが好ましい。電解性能は電解電圧の高低によって評価でき、具体的には、後述する実施例に記載の方法等に基づいて評価することができる。本実施形態において、既存電極及び電解用電極は、典型的には、陽極として機能するものである。
電解用電極の厚みは、更新後も電解性能を長期的に維持する観点及び更新の容易性を確保する観点から、150μm以上1000μm以下である。
上記厚みが150μm以上であることにより、電解用電極表面における電気分解反応の反応場と既存電極との距離が十分に確保されることとなる。ここで、本発明者らの検討によれば、上記距離が小さいと、電解用電極の表面だけでなく既存電極表面でも電気分解反応が進行しやすく、結果として既存電極における触媒コーティングが減耗する傾向にあることが判明した。このような知見を踏まえ、本発明者らが検討を重ねたところ、上記のような触媒コーティングの減耗が進行するにつれて更新後の経時的な電圧上昇が顕在化する傾向にあることが判明した。したがって、電解用電極の厚みを150μm以上とすることで、更新後も電解性能の長期的な維持が可能となる。
また、上記厚みが1000μm以下であることにより、水の表面張力のような弱い力で隔膜や劣化した電極と接着しやすくなる傾向にあり、更新の容易性を確保することができる。
上述した観点から、上記厚みは160μm以上800μm以下であることが好ましく、より好ましくは180μm以上700μm以下であり、さらに好ましくは200μm以上500μm以下である。
上記厚みは、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。また、上記厚みは、使用する導電性基材の厚みを調整すること等により上述した範囲に調整することができる。
(電解用電極のBET比表面積)
電解用電極のBET比表面積は、更新後も電解性能を長期的に維持する観点及び電解電圧を十分に下げる観点から、200mm2/mm2以上5000mm2/mm2以下である。ここで、BET比表面積とは、電極のみかけ面積(mm2)あたりのBET細孔表面積(mm2)を意味する。
上記BET比表面積が200mm2/mm2未満であることは、電解用電極における表面積が十分でないことが示唆される。そのような電極を用いて更新を行った後、電解運転を実施すれば、既存電極表面でも電気分解反応が進行しやすく、既存電極における触媒コーティングの減耗が顕著となる。
上記BET比表面積が5000mm2/mm2超であることは、電解用電極において過度に小さい孔が多く存在していることが示唆される。そのような電極を用いて更新を行った後、電解運転を実施すれば、電解電圧が上昇する。
上述した観点から、上記BET比表面積は200mm2/mm2以上5000mm2/mm2であり、700mm2/mm2以上4500mm2/mm2以下であることが好ましく、より好ましくは1000mm2/mm2以上4000mm2/mm2以下である。
上記BET比表面積は、後述する方法に基づいて測定することができる。また、上記BET比表面積は、例えば、後述する好ましい製造方法を採用すること等により、上記範囲に調整することができる。
(電解用電極の通気抵抗)
電解用電極の通気抵抗は、電解中に発生するガスの滞留防止や、電解性能の長期的な維持の観点から、0.005kPa・g/m以上0.350kPa・g/m以下である。通気抵抗が0.005kPa・g/m以上である場合、電解用電極において過度に大きな孔が存在しないことがより強く示唆され、結果として更新後も既存電極における触媒コーティングの減耗をより抑制できる。また、通気抵抗が0.350kPa・g/m以下である場合、電解用電極において過度に小さい孔の割合が少ないことがより強く示唆され、結果として電解電圧の上昇をより防止できる。上記と同様の観点から、より好ましくは0.006kPa・g/m以上0.3kPa・g/m以下であり、さらに好ましくは0.01kPa・g/m以上0.1kPa・g/m以下である。
上記通気抵抗は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。また、上記通気抵抗は、例えば、後述する好ましい製造方法を採用すること等により、上記範囲に調整することができる。
(導電性基材の空隙率)
導電性基材の空隙率は、電解中に発生するガスの滞留防止の観点から、40%以上90%以下であることが好ましく、より好ましくは50%以上85%以下であり、さらに好ましくは60%以上80%以下である。
上記空隙率は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。また、上記空隙率は、例えば、後述する好ましい製造方法を採用すること等により、上記範囲に調整することができる。
なお、空隙率とは、単位体積あたりの空隙部の割合であり、本実施形態においては、みかけ体積に占める導電性基材の割合として、重量と密度を用いて以下の方法で算出した。すなわち、導電性基材のゲージ厚み、幅、長さの値からみかけ体積Vを算出し、更に重量Wを実測することにより、空隙率εを下記の式で算出する。
ε=(1-(W/(V×ρ))×100
ρは導電性基材の材質の密度(g/cm3)である。例えばニッケルの場合は8.908g/cm3、チタンの場合は4.506g/cm3である。
(陽極)
本実施形態の電極構造体における陽極は、陽極としての機能を有する限り特に限定されず、種々公知の電極を採用することができる。陽極における触媒層の触媒担持量としては、特に限定されないが、より長期的に電解性能を維持する観点から、0.032mol/m2以上0.167mol/m2以下が好ましく、0.035mol/m2以上0.167mol/m2以下がより好ましい。上記触媒担持量は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができ、例えば、塗布液の濃度を調整することや、塗布、乾燥、焼成の一連のサイクルの回数を調整すること等により上述した範囲に調整することができる。
[電極構造体の製造方法]
本実施形態に係る電極構造体の製造方法について、以下で説明する。
本実施形態に係る電極構造体は、本実施形態における電解用電極を陽極上に配することにより製造することができる。ここで、電解用電極の陽極上への固定方法としては特に限定されないが、より効率的な更新操作の観点から、水等の液体を介在させ、当該液体の表面張力等により固定することが好ましい。
本実施形態における電解用電極の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、所望とする形状の導電性基材を準備し、当該導電性基材上に、ルテニウム元素等の電極触媒物質を含む触媒層を形成すること等により製造することができる。
導電性基材としては、次のようにして製造することが好ましい。
すなわち、メッシュを導電性基材として採用する場合は、種々公知の方法により得られたメッシュ製造用の金属線を複数使用して織り込むことによって得ることができ、その際に、例えば、メッシュ製造用の金属線の線径や、メッシュの単位面積当たりに織り込む金属線の本数(メッシュ数)を適切に選択することにより、電解用電極のBET比表面積や通気抵抗等を適切な範囲に調整することができる。
不織布を導電性基材として用いる場合は、種々公知の方法により得られた不織布製造用の金属線を使用することによって得ることができ、その際に、例えば、不織布製造用の金属線の線径や、不織布の単位面積当たりに使用する金属線の量(目付量)を適切に選択することにより、電解用電極のBET比表面積や通気抵抗等を適切な範囲に調整することができる。
パンチングメタル等の多孔板を導電性基材として採用する場合は、金属の平板に対して、パンチングプレスの金型で穴あけ加工を施して得ることができ、その際に、例えば、当該金型の形状や配置を適切に選択することや、用いる金属の平板の厚みを適切に選択することにより、電解用電極のBET比表面積や通気抵抗等を適切な範囲に調整することができる。
エキスパンドメタルを導電性基材として用いる場合は、金属製平板に上刃と下刃でスリットを入れながら押し広げることで得ることができ、その際に、例えば、金属製平板の厚みや、上刃のサイズ、上刃の押し込み量等を調整することによって、電解用電極のBET比表面積や通期抵抗等を適切な範囲に調整することができる。
とりわけ、エキスパンドメタルやパンチングメタルであれば、例えば、開口部の大きさや間隔を調整すること等により、電解用電極のBET比表面積や通期抵抗を上述した範囲に調整することができる。エキスパンドメタルの開口部の間隔とは、メッシュ短目方向の孔の中心間距離(SW)とメッシュ長目方向の孔の中心間距離(LW)である(図1参照)。パンチングメタルの開口部の間隔とは、最近接の孔の中心間距離を指す。
触媒層の形成は、例えば、次のようにして実施することができる。すなわち、触媒を含む塗布液を塗布する塗布工程、塗布液を乾燥する乾燥工程、熱分解を行う熱分解工程により、電解用電極基材上に触媒層を形成することができる。上記工程を繰り返すことにより、既存の触媒層の上に複数の新たな触媒層を形成してもよい。ここで、触媒による導電性基材の目詰まりを防止する観点、すなわち、当該目詰まりによって電解用電極のBET比表面積や通期抵抗に過度な影響を与えることを防止する観点から、塗布工程において用いる塗布液の濃度や、触媒層形成の回数を調整することにより、触媒の担持量を好適な範囲に調整することができる。
ここで熱分解とは、前駆体となる金属塩を加熱して、金属又は金属酸化物とガス状物質に分解することを意味する。用いる金属種、塩の種類、熱分解を行う雰囲気等により、分解生成物は異なるが、酸化性雰囲気では多くの金属は酸化物を形成しやすい傾向がある。電極の工業的な製造プロセスにおいて、熱分解は通常空気中で行われ、多くの場合、金属酸化物あるいは金属水酸化物が形成される。
[電解セル及び電解槽]
本実施形態の電解セルは、本実施形態の電極構造体を備えるものである。典型的には、本実施形態の電解セルは、本実施形態の電極構造体と、前記陽極に対向する陰極と、を備える電解セルであって、前記電解用電極が陽極電極として機能するものである。本実施形態において、上記の陽極及び陰極は、各々、既存電極と扱うことができ、本実施形態の電解セルにおいては、本実施形態における電解用電極が既存電極としての陽極上に配されることで、当該陽極に由来する電解性能が更新されたものと扱うことができる。
本実施形態の電解槽は、本実施形態の電解セルを備えるものである。典型的には、本実施形態の電解槽は、本実施形態の電解セルと、前記陽極と前記陰極との間に配される隔膜と、を備えるものである。本実施形態の電解槽の断面の一例を図2に模式的に示す。
電解槽200は、電解液210、電解液210を収容するための容器220、電解液210中に浸漬された電極230及び陰極240、イオン交換膜250、並びに電極230及び陰極240を電源に接続するための配線260を備える。図2に例示する電解槽200において、イオン交換膜250で区切られた陽極側の空間を陽極室とし、陰極側の空間を陰極室として区別する。本実施形態の電解槽は、種々の電解に使用できる。以下にはその代表例として、塩化アルカリ水溶液の電解に使用する場合について説明する。
本実施形態の電解槽に供給する電解液210としては、例えば、陽極室には、2.5~5.5規定(N)の塩化ナトリウム水溶液(食塩水)、塩化カリウム水溶液等の塩化アルカリ水溶液を、陰極室には、希釈した水酸化アルカリ水溶液(例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等)又は水を、それぞれ使用することができる。
電極230は、陽極として機能するものであり、本実施形態の電極構造体をここに適用することができる。すなわち、種々公知の陽極(既存陽極)と本実施形態における電解用電極との積層体を適用することができる。なお、本実施形態においては、1枚単独で電解用電極として機能し得る電極を本実施形態における電解用電極として用いることもできるし、別途、電解用電極の厚み、通気抵抗及び/又はBET比表面積を調整する観点から、そのような電極を水の表面張力等で2枚以上を一体化させたものを本実施形態における電解用電極として用いることもできる。後者の態様において、1枚単独で電解用電極として機能し得る電極を一体化する際の数としては特に限定されず、2つとしてもよく、3つとしてもよく、4つとしてもよく、それ以上としてもよい。このとき、これら複数の電極としては、その形状、材質、サイズ等において、各々同一であっても異なっていてもよい。
イオン交換膜250としては、例えば、イオン交換基を有するフッ素樹脂膜等を使用できる。イオン交換膜の中でも、イオン交換膜の陽極側表面にイオン交換膜を形成するポリマーからなる突出部(微小突起:デルタ形状)を形成させてなるイオン交換膜を、本実施形態に係る電解用電極と組み合わせて、電解槽として用いることが好ましい。その具体例として、例えば「Aciplex」(登録商標)F6801(旭化成株式会社製)等を挙げることができる。
デルタ形状を有するイオン交換膜を用いることにより、イオン交換膜と陽極の間への塩水供給が促進され、イオン交換膜の損傷と苛性ソーダ中の食塩濃度上昇を抑えられる傾向にある。デルタ形状を有するイオン交換膜と、本実施形態に係る電解用電極とを組み合わせることによって、安定した電解性能を維持することができる。突出部を形成するための方法としては、特に限定されないが、例えば、特許第4573715号明細書及び特許第4708133号明細書に記載の方法等により形成することができる。
陰極240としては、水素発生用の陰極であって、導電性基材上に触媒を塗工した電極等が用いられる。この陰極としては公知のものを採用でき、具体的には、例えば、ニッケル基材上に、ニッケル、酸化ニッケル、ニッケルとスズとの合金、活性炭と酸化物との組み合わせ、酸化ルテニウム、白金等をコーティングした陰極;ニッケル製の金網基材の上に酸化ルテニウムの被覆を形成した陰極等が挙げられる。
本実施形態の電解槽の構成は、特に限定されず、単極式でも複極式でもよい。電解槽を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、陽極室の材料としては、塩化アルカリ及び塩素に耐性があるチタン等が好ましく;陰極室の材料としては、水酸化アルカリ及び水素に耐性があるニッケル等が好ましい。
電解用電極(電極230)は、イオン交換膜250との間に適当な間隔を設けて配置してもよいし、イオン交換膜250と接触して配置されていても、何ら問題なく使用できる。陰極240は、イオン交換膜250と適当な間隔を設けて配置してもよいし、イオン交換膜250との間に間隔がない接触型の電解槽(ゼロギャップ式電解槽)であっても、何ら問題なく使用できる。
本実施形態の電解槽の電解条件については特に限定されず、公知の条件で運転することができる。例えば、電解温度を50~120℃、電流密度を0.5~10kA/m2に調整して、電解を実施することが好ましい。
[電解槽の製造方法]
本実施形態に係る電解槽の製造方法は、本実施形態における電極構造体を用いる限り特に限定されないが、次の方法を採用することが好ましい。すなわち、本実施形態に係る電解槽の好ましい製造方法は、陽極と、前記陽極に対向する陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配される隔膜と、を備える既存電解槽から、新たな電解槽を製造するための方法であって、前記既存電解槽において、陽極上に電解用電極を配する工程(A)を含み、前記電解用電極が、導電性基材と、前記導電性基材の少なくとも1面上に配される触媒層と、を備え、前記電解用電極の厚みが、150μm以上1000μm以下であり、前記電解用電極のBET比表面積が、200mm2/mm2以上5000mm2/mm2以下であり、前記電解用電極が陽極電極として機能し、前記電解用電極と前記陽極とが、電気的に接続されている。
本実施形態において、新たな電解槽は、既存電解槽において既に陽極及び陰極として機能している部材に加えて、本実施形態における電解用電極を更に備えるものである。すなわち、新たな電解槽の製造の際に配される「電解用電極」は、陽極として機能するものであり、既存電解槽における陽極とは別体である。本実施形態では、既存電解槽の運転に伴って陽極の電解性能が劣化した場合であっても、これらとは別体の電解用電極を配することで、陽極(すなわち既存陽極)の性能を更新することができる。
本実施形態において、既存電解槽は、「既に運転に供した電解槽」を想定しており、また、新たな電解槽は、「未だ運転に供していない電解槽」を想定している。すなわち、新たな電解槽として製造された電解槽をひとたび運転に供すると、「本実施形態における既存電解槽」となり、この既存電解槽にさらに本実施形態における電解用電極を配したものは「本実施形態における新たな電解槽」となる。
以下に、本実施形態を実施例に基づいて更に詳細に説明する。本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
[参考例]
次のようにして3枚の下地陽極(触媒層を有しないサンプルA;触媒層におけるRuの量が0.52g/m2であるサンプルB;触媒層におけるRuの量が1.16g/m2であるサンプルC)を作製した。なお、参考例における下地陽極は、触媒層の減耗が進行した既存陽極を再現する目的で、初期の触媒担持量をあえて小さく作製した陽極である。すなわち、導電性基材として、目開きの大きい方の寸法(LW)が6mm、目開きの小さい方の寸法(SW)が3mm、板厚1.0mmのチタン製のエキスパンドメタルを用いた。このエキスパンドメタルを、大気中540℃で4時間焼成し、表面に酸化被膜を形成させた後、25質量%硫酸中において85℃で4時間酸処理を行い、導電性基材の表面に細かい凹凸を設ける前処理を施してサンプルAを得た。別途同様に作製したサンプルAを次の処理に供し、サンプルB,Cを得た。
次に、ルテニウムとチタンの元素比(モル比)が35:65になるように、塩化ルテニウム水溶液(田中貴金属製、ルテニウム濃度100g/L)をドライアイスで5℃以下に冷却及び撹拌しながら、四塩化チタン(和光純薬社製)を少量ずつ加えて、塗工液1を得た。
この塗工液1を液受けバット内に注入し、第一のEPDM製スポンジロールを回転させることにより塗工液1を吸い上げて含浸させた。第一のスポンジロールの上部に接するように第二のEPDM製スポジロールを配置した。さらに、第二のスポンジロールの上部に接するように、PVC製ロールを配置した。そして、第二のEPDM製スポンジロールと前記PVC製ロールとの間に、前処理を施した導電性基材を通して塗工した。その後、50℃において10分間乾燥した後、大気中、520℃において10分間、焼成を行った。
上記のロール塗工、乾燥、及び焼成から成るサイクルを、所望の触媒担持量に到達するまで繰り返すことで、導電性基材上に黒褐色の触媒層を形成し、サンプルB,Cを作製した。これらについて、後述する実施例1に記載の方法に基づいて触媒担持量を求めたところ、サンプルB,Cの触媒担持量は、それぞれ、0.015mol/m2及び0.033mol/m2であった。
上記のようにして得られた各種の下地陽極を用い、次のようにして電解槽を組み立てた。すなわち、電解セルとして、下地陽極を溶接によって陽極室のリブに固定したチタン製の陽極セル(陽極セル)と、陰極が設置されたニッケル製の陰極室(陰極セル)を有する陰極セルとを向い合せた。陽極セルの下地陽極上に、特許文献1に記載の電解用電極(実施例20)を積層した。セル間に一対のガスケットを配置し、一対のガスケット間にイオン交換膜を挟んだ。そして、陽極セル、ガスケット、イオン交換膜、ガスケット及び陰極セルを密着させて、電解セル及びイオン交換膜を含む電解槽を準備した。陰極としては、ニッケル製のメッシュ基材の上に、酸化ルテニウムと酸化セリウムから成る触媒被覆を行ったものを用いた。陰極室の集電体としては、ニッケル製エキスパンドメタルを使用した。金属弾性体としては、ニッケル細線で編んだマットレスを使用した。金属弾性体であるマットレスを集電体の上に置いた。その上に陰極を被せ、陰極の四隅を、テフロン(登録商標)で作製した紐で集電体に固定した。この電解セルにおいては、金属弾性体であるマットレスの反発力を利用して、ゼロギャップ構造になっている。ガスケットとしては、EPDM(エチレンプロピレンジエン)製のゴムガスケットを使用した。イオン交換膜としては「Aciplex」(登録商標)F6801(旭化成株式会社製)を使用した。
上記のようにして得られた電解槽を、電流密度6kA/m2で運転し、5時間経過時点における、電圧を測定した。なお、陽極室の塩水濃度(塩化ナトリウム濃度)は205g/Lに調整した。陰極室の水酸化ナトリウム濃度は32質量%に調整した。各電解セル内の温度が90℃になるように、陽極室及び陰極室の各温度を調節した。
サンプルCを用いた電解槽に対して測定された電圧の値を基準(電圧上昇値0mV)とし、そこからの電圧差をサンプルA,Bを用いた電解槽の電圧上昇値としてRu量との関係をプロットしたものを図3に示す。同図から、下地陽極のRu量が減少するにつれて電圧が上昇する傾向にあることがわかる。
(触媒層のRu量)
携帯型蛍光X線分析計(Rigaku社製、Niton XL3t800+PM)を用い、下地陽極における触媒層中のRu量を評価した。すなわち、下地陽極がセルに溶接された状態において、下地陽極の中央のイオン交換膜に近い方の面に対して分析計の検出部を押し当て、貴金属モードで20秒間測定した。2回の測定の平均値を下地陽極の触媒層中のRu量の測定値とした。
(電圧)
電解電圧として、陽極と陰極との間の電位差を測定した。すなわち、陽極と陰極の導電部分を、2本のテスタークリップで挟み込み、前記テスタークリップをデータロガー(KEYCENCE社製、TR-V1000)に接続することにより電解電圧を測定した。
[実施例1]
(導電性基材)
導電性基材として、線径20μmの純チタン線を用いて、不織布を得た。不織布製造の際、導電性基材の基材厚み200μm、目付量200g/m2を目標にチタン線をシート化した。実測の基材厚みとしては、デジマチックシックスネスゲージを用いて得られた不織布の面内を均一に3点測定した平均値を用いた。基材厚みは208μmであった。実測の目付量としては、得られた不織布を15.0cm×15.0cmに切り出し、電子天秤で重量を測定し、重量を面積で割ることにより得た。目付量は198.49g/m2であった。また、下記の方法により空隙率εを測定したところ、79%であった。
ε=(1-(W/(V×ρ))×100
ρは導電性基材の材質の密度(g/cm3)であり、本実施例においてチタンの数値4.506g/cm3を用いた。また、導電性基材のゲージ厚み、幅、長さの値からみかけ体積Vを算出し、更に重量Wを実測することにより、空隙率εを算出した。以下の空隙率も同様に算出した。なお、電解用電極が複数の導電性基材を含む場合は各導電性基材に対して測定される空隙率の平均値を採用した。
(触媒層)
ルテニウムとイリジウムとチタンの元素比(モル比)が25:25:50になるように、塩化ルテニウム水溶液(田中貴金属製、ルテニウム濃度100g/L) をドライアイスで5℃以下に冷却及び撹拌しながら、四塩化チタン(和光純薬社製)を少量ずつ加えた後、さらに塩化イリジウム水溶液(田中貴金属社製、イリジウム濃度100g/L)を加えて、総金属濃度が100g/Lの水溶液である塗工液2を得た。
上記の不織布に対して、塗工液2を用いて参考例と同様の方法で塗工した。その後、50℃において10分間乾燥した後、大気中、440℃において10分間、焼成を行った。上記のロール塗工、乾燥、及び焼成から成るサイクルを、焼成温度を475℃に昇温して更に2回繰り返し行い、最後に520℃における1時間の焼成を更に行うことにより、導電性基材上に黒褐色の触媒層を形成した。この触媒層の上に、更に塗工液1を用いて、参考例と同様の方法で触媒層を形成することにより得られた電極を、実施例1の電解用電極とした。
塗布後の重量から塗布前の重量を引くことで、担持された触媒の重量(g)を求めた。さらに、触媒の組成から、担持された触媒金属元素の合計の物質量(mol)を求めた。前記物質量を、電解用電極のみかけ面積で割ることで、触媒担持量(mol/m2)を求めた。塗工液2と塗工液1から成る触媒層の触媒担持量は、0.400mol/m2であった。なお、電解用電極が複数の触媒層を含む場合は各触媒層に対して測定される触媒担持量の合計値を採用した。
かかる電解用電極を用い、次のようにして電解試験を実施した。
(電解試験)
電解セルとして、下地陽極が設置された陽極室を有するチタン製の陽極セル(陽極セル)と、陰極が設置されたニッケル製の陰極室(陰極セル)を有する陰極セルとを向い合せた。陽極セルの下地陽極上に、電解用電極を積層した。セル間に一対のガスケットを配置し、一対のガスケット間にイオン交換膜を挟んだ。そして、陽極セル、ガスケット、イオン交換膜、ガスケット及び陰極セルを密着させて、電解セル及びイオン交換膜を含む電解槽を準備した。
下地陽極としては、参考例で用いた下地陽極と同様の導電性基材、同様の塗工液1を用いて、同様の方法を用いて作製した。この下地陽極自体を後述する測定に供したところ、厚みは1.004mmであり、BET比表面積は82mm2/mm2であった。触媒層におけるRuの量は4.06g/m2であった。触媒担持量は0.115mol/m2であった。
下地陽極は、溶接により陽極室に固定した。
電解用電極は下地陽極に溶接をせずに水の表面張力によって積層させた。陰極としては、ニッケル製のメッシュ基材の上に酸化ルテニウムの触媒被覆を行ったものを用いた。陰極室の集電体としては、ニッケル製エキスパンドメタルを使用した。金属弾性体としては、ニッケル細線で編んだマットレスを使用した。金属弾性体であるマットレスを集電体の上に置いた。その上に陰極を被せ、陰極の四隅を、テフロン(登録商標)で作製した紐で集電体に固定した。この電解セルにおいては、金属弾性体であるマットレスの反発力を利用して、ゼロギャップ構造になっている。ガスケットとしては、EPDM(エチレンプロピレンジエン)製のゴムガスケットを使用した。イオン交換膜としては「Aciplex」(登録商標)F6801(旭化成株式会社製)を使用した。
上記電解セルを用いて食塩の電解を行った。陽極室の塩水濃度(塩化ナトリウム濃度)は205g/Lに調整した。陰極室の水酸化ナトリウム濃度は32質量%に調整した。各電解セル内の温度が90℃になるように、陽極室及び陰極室の各温度を調節した。電流密度10kA/m2で7日間の食塩電解を実施した。
(電解用電極の厚み)
電解用電極を36mm×49mmのサイズに切り出した。デジマチックシックスネスゲージ(株式会社ミツトヨ製、最少表示0.001mm)用いて面内を均一に3点測定した平均値を算出した。これを電解用電極の厚み(ゲージ厚み)とした。
(電解用電極のBET比表面積)
電解用電極のBET比表面積の測定としては、JIS Z 8830:2001 気体吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法に基づき多点法BET法を実施した。吸着ガスとしてクリプトンを用いた。多点法BET法による測定は、当該JISの「6.手順」に基づき実施した。比表面積の導出は、「7.2.多点法」に従った。
具体的には、試料として各例で得られた電解用電極(約1g)をガラス管に入れ、約100mTorrの減圧下において18時間かけて真空脱気した。その後、多検体高性能比表面積・細孔分布測定装置(商品名:3Flex、マイクロメリティックス社製)により、吸着ガスとしてクリプトンガスを用いて-196℃における吸着等温線を測定し、多点BETプロットから比表面積を求めた。
BETプロットは、クリプトン相対圧(p/p0)が0.05<(p/p0)<0.2の圧力範囲で行った。BETプロットは、測定点7点以上を用い、フィッティング直線の相関係数が0.999以上となるような条件で実施した。クリプトンガスの占有断面積は0.210nm2の値を用いて計算した。
得られたBET比表面積(m2/g)に対して、次の計算によって単位を(mm2/mm2)へと変換した。
BET比表面積(mm2/mm2)=BET比表面積(m2/g)×106×測定に用いた試料の重量(g)÷測定に用いた試料のみかけ面積(mm2
(触媒層のRu量)
携帯型蛍光X線分析計(Rigaku社製、Niton XL3t800+PM)を用い、下地陽極における触媒層の減耗量を評価した。すなわち、下地陽極がセルに溶接された状態において、下地陽極の中央のイオン交換膜に近い方の面に対して分析計の検出部を押し当て、貴金属モードで20秒間測定した。2回の測定の平均値をRu量の測定値とした。
触媒層における減耗量は、電解前の下地陽極の触媒層におけるRu量から、7日間電解後の下地陽極の触媒層におけるRu量を差し引くことで算出した。
(電圧)
電解電圧として、陽極と陰極との間の電位差を測定した。すなわち、陽極と陰極の導電部分を、2本のテスタークリップで挟み込み、前記テスタークリップをデータロガー(KEYCENCE社製、TR-V1000)に接続することにより電解電圧を測定した。
(通気抵抗)
電解用電極の通気抵抗を通気性試験機KES-F8(商品名、カトーテック株式会社)を用いて測定した。通気抵抗値の単位は、kPa・s/mとした。測定は5回実施し、その平均値を表1に記載した。測定は以下の条件で実施した。なお、測定室の温度は24℃、相対湿度は32%とした。
ピストン速度:2cm/s
通気量:4cc/cm2/s
測定レンジ:SENSE M(中)又はH(高)
サンプルサイズ:50mm×50mm
[実施例2]
実施例1で得られた電極を3枚用意し、水の表面張力で一体化した積層体を電解用電極として用いたことを除き、実施例1と同様にして電解試験を実施した。
[実施例3]
実施例1で得られた電極を4枚用意し、水の表面張力で一体化した積層体を電解用電極として用いたことを除き、実施例1と同様にして電解試験を実施した。
[実施例4]
(導電性基材)
導電性基材として、線径100μmの純チタン線を用いて、メッシュを得た。メッシュ製造の際、導電性基材のメッシュ数100を目標にチタン線を織り込んだ。導電性基材厚みとしては、デジマチックシックスネスゲージを用いて面内を均一に3点測定した平均値を用いた。導電性基材厚みは270μmであった。目付量としては、導電性基材を11.0cm×9.5cmに切り出し、電子天秤で重量を測定し、重量を面積で割ることにより得た。目付量は299.52g/m2であった。空隙率は75%であった。
(触媒層)
上記のメッシュを導電性基材として用いることを除き、実施例1と同様の方法を用いて得られた電極を、実施例4の電解用電極とした。触媒担持量は0.165mol/m2であった。かかる電解用電極を用いたことを除き、実施例1と同様にして電解試験を実施した。
[実施例5]
実施例4で得られた電極を2枚用意し、水の表面張力で一体化した積層体を電解用電極として用いたことを除き、実施例1と同様にして電解試験を実施した。
[実施例6]
実施例4で得られた電極を3枚用意し、水の表面張力で一体化した積層体を電解用電極として用いたことを除き、実施例1と同様にして電解試験を実施した。
[比較例1]
導電性基材として、純チタン製のパンチングメタル(孔径2mm、ピッチ3mm、60度千鳥配置)を用いた。基材厚みは、デジマチックシックネスゲージを用いて面内を均一に3点測定した平均値を用いた。基材厚みは26μmであった。空隙率は39%であった。
上記のパンチングメタルを導電性基材として用いることを除き、実施例1と同様の方法を用いて、比較例1の電解用電極を得た。触媒担持量は0.0299mol/m2であった。かかる電解用電極を用いたことを除き、実施例1と同様にして電解試験を実施した。
[比較例2]
実施例1の電解用電極を用いなかったことを除き、実施例1と同様にして電解試験を実施した。
実施例1~6及び比較例1~2の評価結果を表1に示す。
Figure 2023059600000001
200 電解槽
210 電解液
220 容器
230 電極
240 陰極
250 イオン交換膜
260 配線

Claims (10)

  1. 陽極と、当該陽極上に配された電解用電極と、を備える電極構造体であって、
    前記電解用電極が、導電性基材と、当該導電性基材の少なくとも1面上に配される触媒層と、を備え、
    前記電解用電極の厚みが、150μm以上1000μm以下であり、
    前記電解用電極のBET比表面積が、200mm2/mm2以上5000mm2/mm2以下であり、
    前記電解用電極の通気抵抗が、0.005kPa・g/m以上0.350kPa・g/m以下である、電極構造体。
  2. 前記触媒層の触媒担持量が、0.050mol/m2以上2.000mol/m2以下である、請求項1に記載の電極構造体。
  3. 前記触媒層が、白金族元素を含む、請求項1又は2に記載の電極構造体。
  4. 前記導電性基材が、チタンを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の電極構造体。
  5. 前記導電性基材が、繊維状金属を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の電極構造体。
  6. 前記繊維状金属の線径が、10μm以上150μm以下である、請求項5に記載の電極構造体。
  7. 前記導電性基材の空隙率が、40%以上90%以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の電極構造体。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の電極構造体と、
    前記陽極に対向する陰極と、
    を備える電解セルであって、
    前記電解用電極が陽極電極として機能する、電解セル。
  9. 請求項8に記載の電解セルと、
    前記陽極と前記陰極との間に配される隔膜と、
    を備える、電解槽。
  10. 陽極と、前記陽極に対向する陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配される隔膜と、を備える既存電解槽から、新たな電解槽を製造するための方法であって、
    前記既存電解槽において、陽極上に電解用電極を配する工程(A)を含み、
    前記電解用電極が、導電性基材と、前記導電性基材の少なくとも1面上に配される触媒層と、を備え、
    前記電解用電極の厚みが、150μm以上1000μm以下であり、
    前記電解用電極のBET比表面積が、200mm2/mm2以上5000mm2/mm2以下であり、
    前記電解用電極の通気抵抗が、0.005kPa・g/m以上0.350kPa・g/m以下であり、
    前記電解用電極が陽極電極として機能し、
    前記電解用電極と前記陽極とが、電気的に接続されている、電解槽の製造方法。
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