JP2023057310A - オルガノイドの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】神経-筋オルガノイドをより簡便且つ効率的に製造する技術を提供すること。【解決手段】(1a)培養底面から培養槽側に伸びる少なくとも2本のピラーを備える培養デバイス中で、多能性幹細胞にMyoDを一過的に発現させてなる初期誘導細胞、及び多能性幹細胞からなる群より選択される少なくとも1種の細胞を含有するオルガノイド形成用組成物を、前記ピラーの周囲を覆った状態で筋分化誘導させ、筋オルガノイドを得る工程、並びに(2)工程(1a)で得られた筋オルガノイドを、神経栄養因子を含む培地で培養して神経分化誘導させ、神経-筋オルガノイドを得る工程を含む、神経-筋オルガノイドの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、オルガノイドの製造方法等に関する。
様々な神経筋疾患に於いて、運動神経細胞や骨格筋細胞の変性、あるいは、運動神経細胞と骨格筋組織の接合部である神経筋接合部(neuromuscular junction:NMJ)の異常により、生命も脅かされる進行性の運動機能障害がもたらされる。神経筋疾患の例としては、筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis:ALS)、球脊髄性筋萎縮症(Spinal and BulbarMuscular Atrophy:SBMA)、等が知られている。
神経筋疾患の発症メカニズムの研究や治療薬のスクリーニングをin vitroで行うための評価モデルが知られている。例えば、iPS細胞から筋細胞、神経細胞、シュワン細胞等を分化誘導し、神経筋接合部を形成させる技術が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1に記載された方法で得られるのは平面状組織であり、生体中の神経筋組織(立体状)とは異なる。
特許文献2では、筋細胞と神経細胞とを別々の区画で培養し、両者の区画を連結する孔を介して神経組織を立体状の筋組織に連結させる技術が記載されている。しかし、この技術は、2種の細胞を準備し、別々に培養する必要がある。
国際公開第2019/078263号 国際公開第2020/171052号
本発明は、神経-筋オルガノイドをより簡便且つ効率的に製造する技術を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、(1a)培養底面から培養槽側に伸びる少なくとも2本のピラーを備える培養デバイス中で、多能性幹細胞にMyoDを一過的に発現させてなる初期誘導細胞、及び多能性幹細胞からなる群より選択される少なくとも1種の細胞を含有するオルガノイド形成用組成物を、前記ピラーの周囲を覆った状態で筋分化誘導させ、筋オルガノイドを得る工程、並びに(2)工程(1a)で得られた筋オルガノイドを、神経栄養因子を含む培地で培養して神経分化誘導させ、神経-筋オルガノイドを得る工程を含む、神経-筋オルガノイドの製造方法、であれば、上記課題を解決できることを見出した。本発明者はこの知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
項1. (1a)培養底面から培養槽側に伸びる少なくとも2本のピラーを備える培養デバイス中で、多能性幹細胞にMyoDを一過的に発現させてなる初期誘導細胞、及び多能性幹細胞からなる群より選択される少なくとも1種の細胞を含有するオルガノイド形成用組成物を、前記ピラーの周囲を覆った状態で筋分化誘導させ、筋オルガノイドを得る工程、並びに
(2)工程(1a)で得られた筋オルガノイドを、神経栄養因子を含む培地で培養して神経分化誘導させ、神経-筋オルガノイドを得る工程を含む、
神経-筋オルガノイドの製造方法。
項2. 前記筋分化誘導が、前記細胞にMyoDを一過的に発現させること、及び/又は前記オルガノイド形成用組成物を低血清培地若しくは無血清培地で培養することを含む、項1に記載の製造方法。
項3. 前記筋分化誘導が、薬剤を用いた発現誘導により、前記細胞にMyoDを一過的に発現させることを含み、項1又は2に記載の製造方法。
項4. 前記薬剤がドキシサイクリンである、項3に記載の製造方法。
項5. 前記ドキシサイクリンの培地中濃度が0.05μg/ml以上である、項4に記載の製造方法。
項6. 工程(1a)の筋分化誘導開始時において、前記オルガノイド形成用組成物における細胞濃度が5×106cells/ml以上である、項1~5のいずれかに記載の製造方法。
項7. 前記筋分化誘導の培養期間の一部又は全部において、ロック阻害剤含有培地で培養する、項1~6のいずれかに記載の製造方法。
項8. 工程(1a)における培地量が、工程(1a)の筋分化誘導開始時における前記細胞1×104あたり5~50μlである、項1~7のいずれかに記載の製造方法。
項9. 前記オルガノイド形成用組成物が細胞足場材料を含有する、項1~8のいずれかに記載の製造方法。
項10. 前記細胞足場材料がフィブリン、マトリゲル、及びコラーゲンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、項1~8のいずれかに記載の製造方法。
項11. 前記神経栄養因子がGlial cell line-derived Neurotrophic Factor(GDNF)、及びBrain-derived Neurotrophic Factor(BDNF)からなる群より選択される少なくとも1種を含む、項1~10のいずれかに記載の製造方法。
項12. さらに、(3)前記オルガノイド形成用組成物及び/又はその分化誘導物を遠心操作により前記ピラー上部に移動させる工程を含む、項1~11のいずれかに記載の製造方法。
項13. (1b)培養底面から培養槽側に伸びる少なくとも2本のピラーを備える培養デバイス中で、多能性幹細胞にMyoDを一過的に発現させてなる初期誘導細胞、多能性幹細胞、及び筋芽細胞からなる群より選択される少なくとも1種の細胞を含有するオルガノイド形成用組成物を、前記ピラーの周囲を覆った状態で筋分化誘導させる工程を含み、
さらに、(3)前記オルガノイド形成用組成物及び/又はその分化誘導物を遠心操作により前記ピラー上部に移動させる工程を含む、
オルガノイドの製造方法。
項14. (1b)培養底面から培養槽側に伸びる少なくとも2本のピラーを備える培養デバイス中で、多能性幹細胞にMyoDを一過的に発現させてなる初期誘導細胞、多能性幹細胞、及び筋芽細胞からなる群より選択される少なくとも1種の細胞を含有するオルガノイド形成用組成物を、前記ピラーの周囲を覆った状態で筋分化誘導させる工程を含み、
前記細胞が多能性幹細胞にMyoDを一過的に発現させてなる初期誘導細胞、及び多能性幹細胞からなる群より選択される少なくとも1種であり、且つ
前記筋分化誘導の培養期間の一部又は全部において、ロック阻害剤含有培地で培養する、
オルガノイドの製造方法。
項15. 工程(1b)における培地量が、工程(1b)の筋分化誘導開始時における前記細胞1×104あたり5~50μlである、項14に記載の製造方法。
項16. 項1~15のいずれかに記載の製造方法により得られる、オルガノイド。
項17. 培養底面から培養槽側に伸びる少なくとも2本のピラーを備える培養デバイスを含み、且つ前記培養デバイスは培養槽が1つである、神経-筋オルガノイド製造用キット。
項18. 培養底面から培養槽側に伸びる少なくとも2本のピラーを備える培養デバイスと前記ピラーの周囲に形成された神経―筋オルガノイドを含む、神経―筋オルガノイド筋収縮試験キット。
項19. (Aa)項1~15のいずれかに記載の製造方法の一部又は全部の工程を被験物質の存在下で行い、オルガノイドを得る工程、或いは
(Ab)項16に記載の神経-筋オルガノイドと被験物質とを接触させる工程、
並びに
(B)オルガノイドの機能及び/又は状態を評価する工程、
を含む、神経筋疾患の治療薬のスクリーニング方法。
本発明によれば、神経-筋オルガノイドをより簡便且つ効率的に製造する技術を提供することができる。
本発明の培養デバイスの一例の立体図を示す。 本発明の培養デバイスの一例の平面図を示す。 本発明の培養デバイスの一例の断面図を示す。本図は、図2のA-A線に沿った断面図である。 本発明の培養デバイスの一例の立体図を示す。 実施例で得られた本発明のデバイスのサイズを示す。数値の単位は全てmmである。 培養デバイス設置型マイクロウェルプレートのウェルの模式図を示す。 試験例1の神経-筋オルガノイド製造工程の概要を示す。 試験例1で得られた神経筋オルガノイドの模式図を示す。ピラー上部のリボン形状の組織が神経筋オルガノイドである。 試験例2-1の測定結果を示す。縦軸はピラー上部の変位量を示し、横軸は経過時間を示す。 試験例2-2の測定結果を示す。縦軸は、MNX1遺伝子発現量の相対値を示す。横軸は、組織化(図7:D0)からの経過日数を示す。 試験例2-3で得られた免疫染色画像を示す。 試験例2-4の測定結果を示す。縦軸はピラー上部の変位量を示し、横軸は薬剤添加からの経過時間を示す。クラーレは臭化ベクロニウムを示し、TTXはテトロドトキシンを示す。 試験例3の測定結果を示す。縦軸は組織の収縮力を示し、横軸は筋誘導培地に添加するDoxycyclineの濃度を示す。 試験例4の測定結果を示す。縦軸は組織の収縮力を示し、横軸はROCK inhibitorの有無(有り:Y+、無し:Y-)を示す。 試験例5の測定結果を示す。縦軸は組織の収縮力を示し、横軸は筋分化誘導開始時におけるフィブリンゲル中の細胞濃度を示す。 試験例5の測定結果を示す。縦軸は組織の収縮力を示し、横軸は、組織化(図7:D0)からの経過日数を示す。凡例において、「96MNM」は96ウェルプレート(培地量200 μl)での培養結果を示し、「48MNM-S」は48ウェルプレート(培地量700 μl)での培養結果を示す。 試験例6の測定結果を示す。縦軸は組織の収縮力を示し、横軸は、組織化(図7:D0)からの経過日数を示す。凡例において、「96MNM」は96ウェルプレート(培地量200 μl)での神経栄養因子を含む培地で培養した培養結果を示し、「96HS」は筋分化培地(2%馬血清、1% ITS supplement I3146、及び100 unitsペニシリンを含むDMEM)の培養結果を示す。 試験例7の収縮力の測定結果を示す。 試験例7で測定された収縮力の変動係数を示す。横軸は、筋分化培地へ交換後からの経過日数を示す。
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
1.オルガノイドの製造方法
本発明は、その一態様において、
(1a)培養底面から培養槽側に伸びる少なくとも2本のピラーを備える培養デバイス中で、多能性幹細胞にMyoDを一過的に発現させてなる初期誘導細胞、及び多能性幹細胞からなる群より選択される少なくとも1種の細胞を含有するオルガノイド形成用組成物を、前記ピラーの周囲を覆った状態で筋分化誘導させ、筋オルガノイドを得る工程、並びに
(2)工程(1a)で得られた筋オルガノイドを、神経栄養因子を含む培地で培養して神経分化誘導させ、神経-筋オルガノイドを得る工程を含む、
神経-筋オルガノイドの製造方法
、に関する。
また、本発明は、その一態様において、
(1b)培養底面から培養槽側に伸びる少なくとも2本のピラーを備える培養デバイス中で、多能性幹細胞にMyoDを一過的に発現させてなる初期誘導細胞、多能性幹細胞、及び筋芽細胞からなる群より選択される少なくとも1種の細胞を含有するオルガノイド形成用組成物を、前記ピラーの周囲を覆った状態で筋分化誘導させる工程を含む、
オルガノイドの製造方法
、に関する。
以下に、これらについて説明する。工程(1a)と工程(1b)をまとめて、「工程(1)」と示すこともある。上記製造方法をまとめて、「本発明の製造方法」と示すこともある。
培養デバイスについて、図1~4を参照しながら説明する。培養デバイスは、培養底面11、及び少なくとも2本のピラーを備える。代表的には、培養デバイス1は、ピラー12a、ピラー12bの2本のピラーを備える。
ピラー12a、12bは、培養底面11から培養槽14側に伸びている。ピラー12a、12bは培養底面11に対して略垂直であることが好ましい。例えば、ピラー12a、12bと培養底面11とが形成する最も小さな鋭角の角度は、例えば75~90°、好ましくは80~90°、より好ましくは85~90°である。
ピラー12a、12bの形状は特に制限されず、例えば円柱状、角柱状、円錐状、角錐状等、それらが組み合わさった形状であることができる。
ピラー12a、12bの断面の最大径は、特に制限されないが、例えば0.1~2mm、好ましくは0.2~1mm、より好ましくは0.3~0.7mmである。
ピラー12a、12bの高さは、特に制限されないが、例えば0.5~15mm、好ましくは1~10mm、より好ましくは2~6mmである。
ピラー12aの支点16aとピラー12bの支点16bとの距離は、ピラー間で筋オルガノイドを形成できれば特に制限されず、例えば0.5~5mm、好ましくは1~4mm、より好ましくは2~3mmである。
ピラー12a、12bは、上端に、障壁構造体13a、13bを備えることが好ましい。障壁構造体13a、13bにより、オルガノイドがピラー12a、12bの上端から抜けてしまうことをより確実に防ぐことができる。
ピラー12a、12bは、障壁構造体13a、13bを備えない場合は、図4に示されるように上方で連結してピラー連結体12を形成することが好ましい。
障壁構造体13a、13bの形状は特に制限されない。障壁構造体13a、13bは、例えば板状であることができる。障壁構造体13a、13bは、ピラー12a、12bの断面の最大径よりも長い辺又は径を有することが好ましい。
培養デバイス1は、壁15を備えることが好ましい。壁15により、培養底面11の形状及び面積を調整することができる。培養底面11の形状は、特に制限されないが、好ましい一態様においては、ダンベル形状であることができる。培養底面11の面積は、特に制限されないが、例えば1~30mm2、好ましくは2~20mm2、より好ましくは3~10mm2である。
培養デバイス1は、培養槽として培養槽14のみを備えるものであってもよいし、培養槽14以外の培養槽を含むものであってもよい。本発明によれば、1つのみの培養槽中で、神経-筋オルガノイドを形成できることから、培養デバイス1は培養槽が1つのみであることが好ましい。
培養デバイスの形成方法は、特に制限はない。例えば、切削加工で形成、3Dプリンタで形成等が挙げられる。また、フォトリソグラフィ技術を用いて先ず鋳型を作製し、次いで、転写してもよい。なお、鋳型を転写して作製する場合は、必要に応じて複数の鋳型を用いてもよい。
培養デバイスの材料としては切削または鋳型を転写できるものであれば特に制限はない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂、AS(アクリロニトリルスチレン)樹脂、テフロン(登録商標)等のフッ素樹脂、アクリル樹脂(PMMA)等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド、シリコンゴム等の熱硬化性樹脂が挙げられる。なお、第1ユニット2に形成した骨格筋組織を染色して観察する場合は、光透過性がある樹脂が望ましい。その場合の樹脂としては、例えば、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、硬質ポリエチレン製等のプラスチック、シリコン等が挙げられる。また、樹脂に代え、金属を用いてもよい。
培養デバイスは、通常、培養皿、又はマイクロウェルプレートのウェルの底面(好ましくはウェルの底面)に、図6に示されるように設置して使用する。
多能性幹細胞とは、生体に存在する多くの細胞に分化可能である多能性を有し、かつ、増殖能をも併せもつ幹細胞であり、本発明で使用される中間中胚葉細胞に誘導される任意の細胞が包含される。多能性幹細胞には、特に限定されないが、例えば、胚性幹(ES)細胞、核移植により得られるクローン胚由来の胚性幹(ntES)細胞、精子幹細胞(「GS細胞」)、胚性生殖細胞(「EG細胞」)、人工多能性幹(iPS)細胞、培養線維芽細胞や骨髄幹細胞由来の多能性細胞(Muse細胞)などが含まれる。好ましい多能性幹細胞は、製造工程において胚、卵子等の破壊をしないで入手可能であるという観点から、iPS細胞であり、より好ましくはヒトiPS細胞である。
iPS細胞の製造方法は当該分野で公知であり、任意の体細胞へ初期化因子を導入することによって製造され得る。ここで、初期化因子とは、例えば、Oct3/4、Sox2、Sox1、Sox3、Sox15、Sox17、Klf4、Klf2、c-Myc、N-Myc、L-Myc、Nanog、Lin28、Fbx15、ERas、ECAT15-2、Tcl1、beta-catenin、Lin28b、Sall1、Sall4、Esrrb、Nr5a2、Tbx3またはGlis1等の遺伝子または遺伝子産物が例示され、これらの初期化因子は、単独で用いても良く、組み合わせて用いても良い。初期化因子の組み合わせとしては、WO2007/069666、WO2008/118820、WO2009/007852、WO2009/032194、WO2009/058413、WO2009/057831、WO2009/075119、WO2009/079007、WO2009/091659、WO2009/101084、WO2009/101407、WO2009/102983、WO2009/114949、WO2009/117439、WO2009/126250、WO2009/126251、WO2009/126655、WO2009/157593、WO2010/009015、WO2010/033906、WO2010/033920、WO2010/042800、WO2010/050626、WO2010/056831、WO2010/068955、WO2010/098419、WO2010/102267、WO2010/111409、WO2010/111422、WO2010/115050、WO2010/124290、WO2010/147395、WO2010/147612、Huangfu D,et al.(2008),Nat.Biotechnol.,26:795-797、Shi Y,et al.(2008),Cell Stem Cell,2:525-528、Eminli S,et al.(2008),Stem Cells.26:2467-2474、Huangfu D,et al.(2008),Nat.Biotechnol.26:1269-1275、Shi Y,et al.(2008),Cell Stem Cell,3,568-574、Zhao Y,et al.(2008),Cell Stem Cell,3:475-479、Marson A,(2008),Cell Stem Cell,3,132-135、Feng B,et al.(2009),Nat.Cell Biol.11:197-203、R.L.Judson et al.,(2009),Nat.Biotechnol.,27:459-461、Lyssiotis CA,et al.(2009),Proc Natl Acad Sci U S A.106:8912-8917、Kim JB,et al.(2009),Nature.461:649-643、Ichida JK,et al.(2009),Cell Stem Cell.5:491-503、Heng JC,et al.(2010),Cell Stem Cell.6:167-74、Han J,et al.(2010),Nature.463:1096-100、Mali P,et al.(2010),Stem Cells.28:713-720、Maekawa M,et al.(2011),Nature.474:225-9.に記載の組み合わせが例示される。
体細胞には、非限定的に、胎児(仔)の体細胞、新生児(仔)の体細胞、および成熟した健全なもしくは疾患性の体細胞のいずれも包含されるし、また、初代培養細胞、継代細胞、および株化細胞のいずれも包含される。具体的には、体細胞は、例えば(1)神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、歯髄幹細胞等の組織幹細胞(体性幹細胞)、(2)組織前駆細胞、(3)血液細胞(末梢血細胞、臍帯血細胞等)、リンパ球、上皮細胞、内皮細胞、筋肉細胞、線維芽細胞(皮膚細胞等)、毛細胞、肝細胞、胃粘膜細胞、腸細胞、脾細胞、膵細胞(膵外分泌細胞等)、脳細胞、肺細胞、腎細胞および脂肪細胞等の分化した細胞などが例示される。
初期誘導細胞は、多能性幹細胞にMyoDを一過的に発現させて得られる、筋分化初期段階の細胞であり、この限りにおいて特に制限されない。初期誘導細胞は、筋芽細胞へと分化する前の分化段階の細胞である。
本発明で用いられるMyoDとしては、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるヒトmyogenic differentiation 1(MYOD1)および他の哺乳動物におけるそのオルソログ、並びにそれらの転写変異体、スプライシング変異体などが挙げられる。あるいは、上記いずれかのタンパク質と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上のアミノ酸同一性を有し、且つ該タンパク質と同等の機能(例、筋特異的プロモーターの転写活性化など)を有するタンパク質であってもよい。
MyoDをコードする核酸としては、配列番号1の塩基番号213~1175で表されるヌクレオチド配列からなるヒトmyogenic differentiation 1(MYOD1)cDNAおよび他の哺乳動物におけるそのオルソログ、並びにそれらの転写変異体、スプライシング変異体などが挙げられる。あるいは、上記いずれかの核酸と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上のヌクレオチド同一性を有し、且つ該核酸にコードされるタンパク質と同等の機能(例、筋特異的プロモーターの転写活性化など)を有するタンパク質をコードする核酸であってもよい。あるいは、上記いずれかの核酸の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズすることができる程度の相補関係を有するセンス鎖を有するものであってもよい。なお、ここでストリンジェントな条件は、Berger and Kimmel(1987, Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol. 152, Academic Press, San Diego CA)に教示されるように、複合体或いはプローブを結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。例えばハイブリダイズ後の洗浄条件として、「0. 1×SSC、0.1%SDS、60℃」の条件を挙げることができ、かかる条件で洗浄してもハイブリダイズ状態を維持するものであることが好ましい。
MyoDをコードする核酸は、DNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。また、該核酸は、一本鎖であっても、二本鎖DNA、二本鎖RNAもしくはDNA: RNAハイブリッドであってもよい。好ましくは二本鎖DNAもしくは一本鎖RNAである。当該RNAは、分解を抑制するため、5-メチルシチジンおよびシュードウリジン(pseudouridine)(TriLink Biotechnologies)を取り込ませたRNAを用いても良く、フォスファターゼ処理による修飾RNAであってもよい。
MyoDを多能性幹細胞において一過的に発現させる方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法を用いることができる。尚、ここで「発現」とは、MyoDをコードする核酸である場合においては、細胞内で、該核酸からMyoDタンパク質が転写および翻訳され生成することを意味し、MyoDタンパク質である場合においては、該タンパク質が細胞内に導入されることと同義である。
MyoDがDNAの形態の場合、例えば、ウイルス、プラスミド、人工染色体などのベクターをリポフェクション、リポソーム、マイクロインジェクションなどの手法によって多能性幹細胞内に導入することができる。ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、センダイウイルスベクターなどが例示される。また、人工染色体ベクターとしては、ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC、PAC)などが例示される。プラスミドとしては、哺乳動物細胞用プラスミドが例示される。
ベクターには、MyoDをコードするDNAが発現可能なように、プロモーター、エンハンサー、リボゾーム結合配列、ターミネーター、ポリアデニル化サイトなどの制御配列を含むことができるし、さらに、必要に応じて、薬剤耐性遺伝子(例えば、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子など)、チミジンキナーゼ遺伝子、ジフテリアトキシン遺伝子などの選択マーカー配列、蛍光タンパク質、βグルクロニダーゼ(GUS)、FLAGなどのレポーター遺伝子配列などを含むことができる。プロモーターとして、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(cytomegalovirus)プロモーター、RSV(Rous sarcoma virus)プロモーター、MoMuLV(Moloney mouse leukemia virus)LTR、HSV-TK(herpes simplex virus thymidine kinase)プロモーター、EF-αプロモーター、CAGプロモーターおよびTREプロモーター(tetO配列が7回連続したTet応答配列をもつCMV最小プロモーター)が例示される。
MyoDを一過的に発現させるためには、一過的発現ベクターを用いてMyoD遺伝子を多能性幹細胞に導入してもよいが、より厳密に発現を制御するためには、誘導発現システムを使用することが好ましい。誘導発現システムとしてはテトラサイクリンやその誘導体(例えば、ドキシサイクリン)などを用いた薬剤誘導発現システムが挙げられ、予めMyoDの薬剤誘導発現が可能な遺伝子コンストラクトが導入された多能性幹細胞を用いることが好ましい。
例えば、上記のTREプロモーターを用いた場合、同一の細胞において、tetRおよびVP16ADとの融合タンパク質またはリバース(reverse)tetR(rtetR)およびVP16ADとの融合タンパク質(rtTA)を同時に発現させることが望ましい。このTet-Onシステムでは薬剤が存在しないときは該融合タンパク質がTREに結合せず、転写は起こらないが、薬剤を添加することにより該融合タンパク質がTREプロモーターに結合し、転写が起こるので、薬剤を添加している間に一過的にMyoDを発現させることができる。
また、上記ベクターには、多能性幹細胞の染色体へ、プロモーターとそれに結合するMyoDをコードするDNAからなる発現カセットを取り込み、さらに必要に応じて切除するために、この発現カセットの前後にトランスポゾン配列を有していてもよい。トランスポゾン配列として特に限定されないが、piggyBacが例示される。他の態様として、発現カセットを除去する目的のため、発現カセットの前後にLoxP配列を有してもよい。
また、MyoDがRNAの形態の場合、例えばエレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクションなどの手法によって多能性幹細胞内に導入してもよい。MyoDがタンパク質の形態の場合、例えばリポフェクション、細胞膜透過性ペプチド(例えば、HIV由来のTATおよびポリアルギニン)との融合、マイクロインジェクションなどの手法によって多能性幹細胞内に導入してもよい。
初期誘導細胞は、MyoD自身の発現を直接制御する(例えばMyoDをコードする核酸を導入する、人為的に導入したMyoD発現カセットのプロモーター活性を制御する薬剤を用いて発現させる等)ことのみならず、MyoDの上流の転写因子(例えばPax7等)の発現を制御することや、サイトカイン等の化合物濃度を制御することによって最終的にMyoDを発現させる等の、MyoDの発現を間接的に制御することによって、得ることができる。
MyoDを多能性幹細胞内で一過的に発現させる期間は、筋分化初期段階の細胞が得られる程度の期間であればよく、用いる多能性幹細胞の種類や性質によって適宜変更できるが、例えば12~48時間、好ましくは18~30時間である。例えば、上記の薬剤誘導発現システムを使用する場合は、この期間薬剤を加えて培養することが好ましい。また、他の態様として、トランスポゾン配列を有するベクターを用いる場合、上記の期間経過後、トランスポゼースを細胞内に導入することで発現を停止する方法およびLoxP配列を有するベクターを用いる場合、所望の期間経過後、Creを細胞内に導入することで発現を停止する方法などが例示される。
一方、MyoDがRNAまたはタンパク質の場合、上記の期間においてMyoDが細胞内で存在するように導入を複数回行ってもよい。
初期誘導細胞の作製の際には、MyoDを一過的に発現させる前に、多能性幹細胞をロック阻害剤の存在下で培養することが好ましい。ロック阻害剤としては、特に制限されず、例えばY-27632、CloneRTM、RevitaCell、SMC4、CEPT等が挙げられる。
初期誘導細胞の作製における培養条件は、接着培養条件であることが好ましい。例えば、細胞外マトリクスなどの細胞接着分子、具体的には、マトリゲル(BD)、I型コラーゲン、IV型コラーゲン、ゼラチン、ラミニン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、またはエンタクチン、およびこれらの組み合わせを用いてコーティング処理された培養皿を用い、動物細胞の培養に用いられる培地を基本培地として血清または血清代替物を添加した培地で培養することが好ましい。ここで、基本培地としては、例えば、GMEM(グラスゴー最小必須培地:Glasgow Minimum Essential Medium)、IMDM(イスコフ改変ダルベッコ培地:Iscove's Modified Dulbecco's Medium)、199培地、イーグル最小必須培地(Eagle’s Minimum Essential Medium)(EMEM)、αMEM培地、ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s modified Eagle’s Medium)(DMEM)、Ham’s F12培地、RPMI 1640培地、フィッシャー培地(Fischer’s medium)、およびこれらの混合培地などが包含される。また、血清代替物として、アルブミン、トランスフェリン、脂肪酸、インスリン、コラーゲン前駆体、微量元素、Knockout Serum Replacement(KSR)(ES細胞培養時のFBSの血清代替物)、ITS-サプリメントおよびこれらの混合物などが包含される。
培養温度は、特に限定されないが、約30~40℃、好ましくは約37℃であり、CO2含有空気の雰囲気下で培養が行われ、CO2濃度は、好ましくは約2~5%である。
筋芽細胞とは、好ましくは骨格筋芽細胞であり、CD56、MyoDまたはmyogeninなどのマーカー遺伝子の発現で特徴づけられる。筋芽細胞は、例えば、単離されたもの、或いはそれを継代培養して得られた株化細胞でもよい。筋芽細胞は哺乳動物由来であることが好ましく、ヒト由来であることがより好ましい。
オルガノイド形成用組成物は、初期誘導細胞、多能性幹細胞、及び筋芽細胞からなる群より選択される少なくとも1種の細胞を含有する。オルガノイド形成用組成物は、好ましくは、初期誘導細胞を含むことができ、さらに多能性幹細胞を含むこともできる。
オルガノイド形成用組成物は、細胞足場材料を含有することが好ましい。
細胞足場材料は、細胞の足場となる材料である限り、特に制限されない。細胞足場材料としては、例えばフィブリン、コラーゲン、マトリゲル、ゼラチン、エラスチン、ケラチン、ラミニン、エンタクチン、フィブロネクチン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、ヒアルロン酸、キトサン、アルギン酸、アガロース、ポリエチレングリコールハイドロゲル、ペプチドゲル、DNAゲル、超分子ゲル、ポリ乳酸、ポリエチレングリコール、シリカゲル、セルロース等が挙げられる。これらの中でも、フィブリン、マトリゲル、コラーゲン等が特に好ましい。
オルガノイド形成用組成物は、ゲル状、又はゾル状であり、好ましくはゲル状である。
オルガノイド形成用組成物は、細胞と、細胞足場材料とを混合することにより得ることができる。例えば、細胞足場材料としてフィブリンを採用する場合であれば、細胞、フィブリノゲン、及びトロンビンを液体中で混合することにより、フィブリノゲンにトロンビンが作用してフィブリンを形成し、ゲル状のオルガノイド形成用組成物を得ることができる。オルガノイド形成用組成物は、好ましくは細胞を含むフィブリンゲルであることができる。
工程(1)の筋分化誘導開始時において、オルガノイド形成用組成物における細胞濃度は、オルガノイド形成用組成物から筋オルガノイドが形成可能である限り、特に制限されない。当該細胞濃度は、例えば1×106cells/ml以上、好ましくは2×106cells/ml以上、より好ましくは3×106cells/ml以上、さらに好ましくは4×106cells/ml以上、よりさらに好ましくは5×106cells/ml以上である。当該細胞濃度は、上記濃度範囲の中でも、好ましくは6×106cells/ml以上、より好ましくは7×106cells/ml以上、さらに好ましくは7.5×106cells/ml以上である。当該細胞濃度の上限は、例えば40×106cells/ml、20×106cells/ml、15×106cells/ml、10×106cells/mlである。細胞濃度を上記のように設定することにより、得られる筋オルガノイド、さらには神経-筋オルガノイドの筋収縮力をより高めることができ、これらのオルガノイドを薬剤スクリーニングにより適したものとすることができる。
工程(1)では、培養デバイス中で、オルガノイド形成用組成物を、ピラーの周囲を覆った状態で筋分化誘導させる。オルガノイド形成用組成物を、ピラーの周囲を覆った状態にするための方法は特に制限されないが、例えば、オルガノイド形成用組成物の前駆体溶液を培養デバイスの培養底面上に載せて培養底面全体に広げた状態で、当該前駆体溶液をゲル化又はゾル化させる方法が挙げられる。
工程(1)の筋分化誘導の方法は、オルガノイド形成用組成物から筋オルガノイドを形成可能な方法である限り、特に制限されない。筋分化誘導は、好ましくは細胞にMyoDを一過的に発現させること、及び/又は前記オルガノイド形成用組成物を低血清培地(血清濃度が、例えば8%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下の培地)若しくは無血清培地で培養することを含むことができる。
工程(1)において、MyoDを一過的に発現させる方法については、以下に言及すること以外は、上記した初期誘導細胞の作製方法と同様である。
工程(1)において、MyoDを細胞内で一過的に発現させて筋細胞を誘導する期間は、筋分化が十分行われる期間であればよく、用いる細胞の種類や性質によって適宜変更できる。当該期間は、例えば、約3~12日が挙げられ、約4~10日が好ましく、約5~8日がより好ましい。例えば、上記の薬剤誘導発現システムを使用する場合は、この期間薬剤を加えて培養することが好ましい。また、他の態様として、トランスポゾン配列を有するベクターを用いる場合、上記の期間経過後、トランスポゼースを細胞内に導入することで発現を停止する方法およびLoxP配列を有するベクターを用いる場合、所望の期間経過後、Creを細胞内に導入することで発現を停止する方法などが例示される。
工程(1)において、筋分化誘導が、薬剤を用いた発現誘導により、前記細胞にMyoDを一過的に発現させることを含むことが好ましい。薬剤としては、好ましくはドキシサイクリンが挙げられる。この場合、MyoDを一過的に発現させるためにドキシサイクリンを含有する培地で培養を行う。ドキシサイクリンの当該培地中濃度は、例えば0.01μg/ml以上、好ましくは0.02μg/ml以上、より好ましくは0.05μg/ml以上、さらに好ましくは0.07μg/ml以上、よりさらに好ましくは0.09μg/ml以上、とりわけ好ましくは0.1μg/ml以上である。当該濃度の上限は、例えば5μg/ml、4μg/ml、3μg/ml、又は2μg/mlである。ドキシサイクリンの培地中濃度を上記のように設定することにより、得られる筋オルガノイド、さらには神経-筋オルガノイドの筋収縮力をより高めることができ、これらのオルガノイドを薬剤スクリーニングにより適したものとすることができる。
本発明の一態様においては、工程(1)の筋分化誘導の培養期間の一部又は全部において、ロック阻害剤含有培地で培養することが好ましい。これにより、得られる筋オルガノイド、さらには神経-筋オルガノイドの筋収縮力をより高めることができ、これらのオルガノイドを薬剤スクリーニングにより適したものとすることができる。ロック阻害剤としては、前述のものを使用することができる。ロック阻害剤の培地中濃度は、例えば1~50μM、好ましくは2~40μM、より好ましくは5~20μMである。ロック阻害剤含有培地で培養する期間は、例えば1~4日間、好ましくは1~3日間、より好ましくは1~2日間である。
工程(1)における培地量は、特に制限されない。工程(1)における培地量は、工程(1a)の筋分化誘導開始時における前記細胞(オルガノイド形成用組成物中の細胞)1×104あたり、例えば5~200μlである。当該培地量は、好ましくは5~100μl、より好ましくは5~50μl、さらに好ましくは10~40μl、よりさらに好ましくは10~30μlである。上記培地量とすることにより、得られる筋オルガノイド、さらには神経-筋オルガノイドの筋収縮力をより高めることができ、これらのオルガノイドを薬剤スクリーニングにより適したものとすることができる。
工程(1)により、オルガノイド形成用組成物から、筋オルガノイドが得られる。筋オルガノイドが得られたことは、MHCやMEF2cなどの筋マーカーの存在により確認できる。なお、このように製造された筋オルガノイドは、単一の細胞集団ではなくふく数種の細胞が含有された細胞集団であることができる。筋オルガノイドは、電気刺激により収縮することができる。収縮力は、後述の試験例3に記載の方法に従って又は準じて測定することができる。
工程(2)では、工程(1)で得られた筋オルガノイドを、神経栄養因子を含む培地で培養して神経分化誘導させ、神経-筋オルガノイドを得る。
神経栄養因子とは、運動ニューロンの生存と機能維持に重要な役割を果たしている膜受容体へのリガンドであり、例えば、Nerve Growth Factor (NGF)、Brain-derived Neurotrophic Factor (BDNF)、Neurotrophin 3 (NT-3)、Neurotrophin 4/5 (NT-4/5)、Neurotrophin 6 (NT-6)、basic FGF、acidic FGF、FGF-5、Epidermal Growth Factor (EGF)、Hepatocyte Growth Factor (HGF)、Insulin、Insulin Like Growth Factor 1 (IGF 1)、Insulin Like Growth Factor 2 (IGF 2)、Glia cell line-derived Neurotrophic Factor (GDNF)、TGF-b2、TGF-b3、Interleukin 6 (IL-6)、Ciliary Neurotrophic Factor (CNTF)およびLIFなどが挙げられる。本発明において好ましい神経栄養因子は、GDNF、BDNFである。神経栄養因子は、例えばWako社やR&D systems社等から市販されており容易に利用することが可能であるが、当業者に公知の方法によって細胞へ強制発現させることによって得てもよい。
培養液中におけるGDNFの濃度は、例えば、0.1ng/mL~100 ng/mL、好ましくは1ng/mL~50ng/mL、より好ましくは5ng/mL~20ng/mLとすることができる。
培養液中におけるBDNFの濃度は、例えば、0.1ng/mL~100 ng/mL、好ましくは1ng/mL~50ng/mL、より好ましくは5ng/mL~20ng/mLとすることができる。
本発明において、工程(2)で用いる培養液は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えば、Glasgow's Minimal Essential Medium(GMEM)培地、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle's Minimum Essential Medium (EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco's modified Eagle's Medium (DMEM)培地、Ham's F12培地、RPMI 1640培地、Fischer's培地、Neurobasal Medium(ライフテクノロジーズ)およびこれらの混合培地などが包含される。培地には、血清が含有されていてもよいし、あるいは無血清でもよい。必要に応じて、培地は、例えば、アルブミン、トランスフェリン、Knockout Serum Replacement(KSR)(ES細胞培養時のFBSの血清代替物)、N2サプリメント(Invitrogen)、B27サプリメント(Invitrogen)、脂肪酸、インスリン、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール、3'-チオールグリセロールなどの1つ以上の血清代替物を含んでもよいし、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、Glutamax(Invitrogen)、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類などの1つ以上の物質も含有し得る。好ましい培養液は、非必須アミノ酸、B27サプリメント、cAMP、GDNF、BDNF、IGF、レチノイン酸、プルモルファミン、及びアスコルビン酸を含有する培養液である。
工程(1)において筋分化を誘導した後、MyoDの発現を停止し、培地を神経分化用の培地に変更することで、神経分化を誘導することができる。
培養条件について、培養温度は、特に限定されないが、約30~40℃、好ましくは約37℃であり、CO2含有空気の雰囲気下で培養が行われ、CO2濃度は、好ましくは約2~5%である。
培養期間は、運動ニューロンおよびシュワン細胞が出現する期間であれば、特に限定されないが、工程(2)は、少なくとも3日間行われることが望ましい。より好ましくは4日間以上、さらに好ましくは5日間以上である。培養期間の上限は、特に制限されず、例えば30日間、50日間、100日間、又は200日間である。長い期間の培養により、より成熟したオルガノイドを得ることができる。ただ、コストや簡便さの観点から、培養期間の上限は、好ましくは20日間、より好ましくは12日間、さらに好ましくは10日間である。
これにより、人工神経筋接合部、すなわち、運動ニューロン、筋細胞、シュワン細胞等を含む神経-筋オルガノイドを得ることができる。
工程(1)及び工程(2)においては、オルガノイド形成用組成物又はその分化誘導物(オルガノイド形成用組成物から筋オルガノイドに分化する途中段階の分化誘導物、筋オルガノイド、筋オルガノイドから神経-筋オルガノイドに分化する途中段階の分化誘導物、又は神経-筋オルガノイド)は、収縮力が高まるにつれて、ピラーの上端方向に移動する傾向にある。ただ、様々な要因により、ピラーの上端方向に移動しない、或いは移動量が少ないサンプルも存在する。収縮力を測定するためには、ピラーの上方にオルガノイドが存在することが重要であるところ、上記のようなサンプルについては、工程(1)及び工程(2)のいずれかの段階で1回又は複数回、オルガノイド形成用組成物又はその分化誘導物をピラー上方(好ましくは上端)まで引き上げる操作を行うことが好ましい。この引き上げ操作の方法は、特に制限されず、例えば遠心操作、吸引操作等を採用することができる。筋収縮率のサンプル間のばらつきを低減させるためには、この引き上げ操作を、遠心操作で行うことが好ましい。
上記観点から、本発明の製造方法は、さらに、工程(3)前記オルガノイド形成用組成物及び/又はその分化誘導物を遠心操作により前記ピラー上部に移動させる工程を含むことが好ましい。
遠心操作は、オルガノイド形成用組成物及び/又はその分化誘導物がピラー上部に移動できる態様である限り、特に制限されない。典型的には、培地がこぼれないように蓋をした上で、遠心の中心と反対側の方向にピラー上部が向くように、培養デバイスを備える培養皿又はマイクロウェルプレートを遠心機に設置し、遠心することによって、オルガノイド形成用組成物及び/又はその分化誘導物がピラー上部に移動させることができる。
遠心力は、ピラーの長さ、ピラーの形状、ピラー上端の構造等に応じて適宜設定することができる。遠心力は、例えば50~500 ×g、好ましくは80~300 ×g、より好ましくは100~250 ×gである。
遠心時間は、ピラーの長さ等に応じて適宜設定することができる。遠心時間は、例えば1秒間~1分間、好ましくは3~30秒間、より好ましくは5~15秒間である。
工程(3)の回数は、特に制限されない。当該回数は、コストや簡便さの観点から、例えば1~10回、又は1~5回であることができる。
2.キット1
本発明は、その一態様において、培養底面から培養槽側に伸びる少なくとも2本のピラーを備える培養デバイスを含み、且つ前記培養デバイスは培養槽が1つである、神経-筋オルガノイド製造用キット、に関する。以下にこれについて説明する。
培養デバイスについては、上述の説明のとおりである。
本発明のキットは、好ましくは、本発明の製造方法において用いるためのキットである。
本発明のキットには、好ましくは上述した工程(1)および(2)に使用する細胞、培養液、添加剤等が含まれる。例えば、MyoDが誘導可能な状態で導入された多能性幹細胞、テトラサイクリンまたはその誘導体などの薬剤、神経栄養因子、培養皿、マイクロウェルプレート、基礎培地から成る群より選択される1種類以上の試薬を含むキットが挙げられる。本発明のキットは、さらに製造工程の手順を記載した書面や説明書を含んでもよい。
3.スクリーニング方法
本発明は、その一態様において、
(Aa)本発明の製造方法の一部又は全部の工程を被験物質の存在下で行い、オルガノイドを得る工程、或いは
(Ab)本発明の製造方法により得られる神経-筋オルガノイドと被験物質とを接触させる工程、
並びに
(B)オルガノイドの機能及び/又は状態を評価する工程、
を含む、神経筋疾患の治療薬のスクリーニング方法
、に関する。以下に、これについて説明する。
神経筋疾患としては、運動神経細胞と骨格筋組織との間のシグナル伝達に関する疾患であれば特に制限はない。例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)等の遺伝子変異が原因となる遺伝性疾患が挙げられる。また、遺伝子疾患以外には、例えば、加齢や寝たきりによる筋萎縮、腕神経叢損傷や顔面神経麻痺等の運動神経細胞の細胞体から伸びた軸索が、物理的衝撃や神経毒性物質によって変性して引き起こされる疾患が挙げられる。
被験物質は、例えば、細胞抽出物、細胞培養上清、微生物発酵産物、海洋生物由来の抽出物、植物抽出物、精製タンパク質又は粗タンパク質、ペプチド、非ペプチド化合物、合成低分子化合物、及び天然化合物が例示される。
被検物質はまた、(1)生物学的ライブラリー、(2)デコンヴォルーションを用いる合成ライブラリー法、(3)「1ビーズ1化合物(one-bead one-compound)」ライブラリー法、及び(4)アフィニティクロマトグラフィ選別を使用する合成ライブラリー法を含む当技術分野で公知のコンビナトリアルライブラリー法における多くのアプローチのいずれかを使用して得ることができる。アフィニティクロマトグラフィー選別を使用する生物学的ライブラリー法はペプチドライブラリーに限定されるが、その他の4つのアプローチはペプチド、非ペプチドオリゴマー、又は化合物の低分子化合物ライブラリーに適用できる(Lam (1997) Anticancer Drug Des. 12: 145-67)。分子ライブラリーの合成方法の例は、当技術分野において見出され得る(DeWitt et al. (1993) Proc. Natl.Acad. Sci. USA 90: 6909-13; Erb et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 11422-6; Zuckermann et al. (1994) J. Med. Chem. 37: 2678-85; Cho et al. (1993) Science 261: 1303-5; Carell et al. (1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2059; Carell et al. (1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2061; Gallop et al. (1994) J. Med. Chem. 37: 1233-51)。化合物ライブラリーは、溶液(Houghten (1992) Bio/Techniques 13: 412-21を参照のこと)又はビーズ(Lam (1991) Nature 354: 82-4)、チップ(Fodor (1993) Nature 364: 555-6)、細菌(米国特許第5,223,409号)、胞子(米国特許第5,571,698号、同第5,403,484号、及び同第5,223,409号)、プラスミド(Cull et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 1865-9)若しくはファージ(Scott and Smith (1990) Science 249: 386-90; Devlin (1990) Science 249: 404-6; Cwirla et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 6378-82; Felici (1991) J. Mol. Biol. 222: 301-10; 米国特許出願第2002103360号)として作製され得る。
工程(Aa)においては、例えば被験物質を工程(1)及び/又は工程(2)の培養培地に添加することにより、実行することができる。工程(Ab)は、例えば神経-筋オルガノイドを含む培地中に被験物質を添加することにより、実行することができる。培地中の被験物質の濃度は、被験物質の種類等に応じて、適宜設定することができる。
工程(Aa)及び工程(Ab)においては、神経筋疾患を誘発或いは増悪させる物質を、被験物質と共に用いることもできる。また、工程(Aa)及び工程(Ab)においては、オルガノイド形成用組成物中の細胞として、神経筋疾患を誘発或いは増悪させる遺伝子変異を有する細胞を使用する、或いは当該細胞を使用して得られたオルガノイドを使用することもできる。
被験物質との接触状態を保つ期間は、特に制限されないが、例えば1時間~14日間とすることができる。
工程(B)における評価対象は、オルガノイドの機能及び/又は状態である。オルガノイドの機能としては、特に制限されないが、例えば収縮力が挙げられる。収縮力は、例えば後述の試験例2-4、試験例3に記載の方法に従って又は準じて測定することができる。オルガノイドの状態としては、特に制限されないが、例えばオルガノイドの形状及びサイズ、オルガノイドにおける筋細胞マーカー、神経細胞マーカー等の遺伝子の発現量、発現場所等が挙げられる。これらは、従来公知の方法に従って又は準じて、例えばPCR、ウェスタンブロッティング、免疫染色等によって測定することができる。
工程(B)の評価の結果、被験物質を使用しない以外は同じ条件の対照サンプルの評価結果と比較して、神経筋疾患の治療効果を示す評価が得られた場合(例えば、オルガノイドの形態の正常化、収縮力の増加、マーカー遺伝子の発現量の増加等の場合)は、被験物質を神経筋疾患の治療薬(或いはその候補物質)として選別することができる。
4.キット2
本発明は、その一態様において、培養底面から培養槽側に伸びる少なくとも2本のピラーを備える培養デバイスと前記ピラーの周囲に形成された神経―筋オルガノイドを含む、神経―筋オルガノイド筋収縮試験キット、に関する。
培養デバイス等については、上記説明のとおりである。
本発明のキットは、好ましくは、本発明のスクリーニング方法において用いるためのキットである。
本発明のキットには、好ましくは本発明のスクリーニング方法に使用する細胞、培養液、添加剤等が含まれる。例えば、被験物質、培養皿、マイクロウェルプレート、基礎培地から成る群より選択される1種類以上の試薬を含むキットが挙げられる。本発明のキットは、さらに筋収縮試験、スクリーニング工程等の手順を記載した書面や説明書を含んでもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
参考例1.培養デバイスの作製
図1~3に示される培養デバイスを作製した。培養デバイスのサイズを図5に示す。図1~3を参照して培養デバイスの構造を説明する。培養デバイス1は、培養底面11、及び2本のピラー(ピラー12a、ピラー12b)を備える。2本のピラーは、培養底面11から培養槽14側に伸びている。培養デバイス1は、培養底面11がダンベル形状になるように、壁15を備えている。ピラー12a、12bは、上端(培養底面11と反対側の端)に半円状の障壁構造体13a、13bを備える。
培養デバイスの作製方法は次のとおりである。培養デバイスはPDMS (Polydimetylsiloxane) (SILPOT 184, DuPont Toray Spacialty Materials, Tokyo, Japan)を用いて作製した。テフロンで作製した鋳型にPDMSを流し込み、70℃で1時間加熱し固化した。型から外した後、ピラー上部に薄膜PDMSで作製した円盤を乗せた。薄膜円盤は、次のようにして作製した:テフロンシートの上にPDMSを数滴滴下し、30秒間で回転数を1000 rpmまで上げ、30秒スピンコートし、その後70℃で1時間加熱して固化し、さらにPDMSを数滴滴下し、30秒で回転数を2000 rpmまで上げ30秒スピンコートし、得られた薄膜から直径1.5 mmの円をバイオプシーでくり抜いて薄膜円盤を得た。薄膜円盤を、培養デバイスのピラー上部に乗せ、70℃で1時間加熱することでピラー上部に固定した。その後、薄膜円盤を半分に切断し、半円状にした。
参考例2.培養デバイス設置型マイクロウェルプレートの作製
作製した培養デバイスは、70% エタノールに浸漬し、滅菌した後、十分に乾かしてから使用した。マイクロウェルプレートの底に未硬化のPDMSを垂らし、その上に培養デバイスを乗せ、向きを整えた。70℃に設定されたホットプレート上で30分間加熱して固定し、培養デバイス設置型マイクロウェルプレートを得た。培養デバイス設置型マイクロウェルプレートのウェルの模式図を図6に示す。図6の下側がウェル底部である。作製したプレートはフタを開けた状態で少なくとも30分間UV光により滅菌した。筋組織の付着を防ぐため、培養を開始する前日に2%プルロニック(登録商標)溶液で培養デバイスを満たし、4℃で静置した。プルロニック溶液は使用する直前に除去した。
試験例1.神経-筋オルガノイドの製造
多能性幹細胞(試験例1-1、試験例1-2)にMyoDを一過的に発現させてなる誘導細胞を調製し(試験例1-3)、これを培養デバイスの2本のピラーの周囲を覆った状態で筋分化誘導させて筋オルガノイドを得た(試験例1-4)後、得られた筋オルガノイドを、2本のピラーと接触した状態のまま、神経栄養因子を含む培地で培養して神経分化誘導させ、神経-筋オルガノイドを得た(試験例1-5)。製造工程の概要を図7に示す。使用した材料、方法の詳細は以下のとおりである。
<試験例1-1.薬剤依存的MyoD過剰発現ヒトiPS細胞株409B2MyoD
未分化ヒトiPS細胞株409B2MyoD(Uchimura, T., et al., A human iPS cell myogenic differentiation system permitting high-throughput drug screening, Stem Cell res. 25: 98-106 (2017))は京都大学iPS細胞研究所より提供された。409B2MyoD細胞は、Doxycyclineにより外因性のMyoDの過剰発現が誘導され、iPS細胞を骨格筋細胞へと直接誘導することが出来る。また、409B2MyoD細胞は、ピューロマイシン耐性が導入されており、培地にピューロマイシンを添加することで、遺伝子導入されていない細胞を除去することが出来る。
<試験例1-2.iPS細胞の未分化培養>
ヒトiPS細胞である409B2MyoDは以下の手順で培養された。培養しているT25フラスコから培地を除去し、PBSで1度洗浄した後、TrypLETM Select CTSTM (A12859-01, Life Technologies, Californica, USA)とPBSで1000倍に希釈されたUltraPureTM 0.5 M EDTA pH 8.0(15575-038, Life Technologies, California, USA)を等量で混合したトリプシン溶液を350 μl加え37℃インキュベーター内で4分間インキュベートした。トリプシン溶液を除去し、PBSで一度洗浄後、ロック阻害剤であるY-27632 (08945-71, Nacalai Tesque, Japan)を10 μMとなるように添加したStemFitTM (AK02N, Ajinomoto, Tokyo, Japan)を2 ml加え、セルスクレーパー(99002, Techno Plastic Products, Trasadingen, Switzerland)で細胞を回収した。回収した細胞は1 mlのピペットマンで10回懸濁した後に、全自動セルカウンター (TC20TM, Bio-Rad Laboratories, California, USA)で細胞数を算出し、25000 cells/mlとなるようにT25フラスコに播種し、Y-27632を10 μM添加したAK02N 3 mlと、10 μlのiMatrix-511 silkともに37℃、5%CO2のインキュベーター内で培養した。48時間後、Y-27632及びiMatrix-511 Silkを含まないAK02Nに交換し、その後72時間後に培地を交換した。さらに48時間後、サブコンフルエント状態となった細胞は再度継代された。
<試験例1-3.ヒトiPS細胞の骨格筋細胞への初期分化誘導>
6 well plate(TR5000, Trueline, Japan)にCorning(登録商標) Matrigel(登録商標) Basement Membrane Matrix(354234, Corning. USA)を無血清のDMEM/F-12 (Dulbecco’s Modified Eagle Medium : Nutrient Mixture F-12)(042-30555, Wako, Japan)で100倍に希釈したマトリゲル溶液を1 ml/wellで加え37℃インキュベーター内で1時間静置した。その後マトリゲル溶液を抜き、継代時と同様の操作で得られたヒトiPS細胞を10 μMのY-27632を添加したStemFitに懸濁し、1ウェル当たり1 mlで1.5*105cell/mlになるように播種し、37℃、5% CO2インキュベーター内で培養した。48時間後ヒトES細胞培地(DMEM/F-12 + 20% Knockout Serum Replacement(KSR, 10828028, Sigma-Aldrich), 1% MEM Non-Essential Amino Acids solution (NEAA, 11140050, GibcoTM, USA), 2 mM L-glutamine, 100 μM 2-Mercaptoethanol(2-ME, 21438-82, Wako, Japan))に10 μMのY-27632を添加した培地に交換し、37℃、5%CO2インキュベーター内で24時間培養した。その後、培地を、ヒトES細胞培地に1 μg/mlのDoxycycline Hyclate (Dox, D4116, Tokyo Chemical Industry)を添加した培地に交換し、37℃、5%CO2インキュベーター内で24時間培養した。
<試験例1-4.ヒトiPS細胞骨格筋組織の作製と誘導>
ヒトiPS細胞を初期分化誘導した6 well plateから培地を除去し、PBSで3度洗浄した。Accutase を350 μl加え、37℃インキュベーター内で4分間静置した。10 μMとなるようにY-27632を添加した筋誘導培地(αMEM + 10% KSR, 2% UltroserG, 200 μM 2-ME, 0.5% penicillin/streptomycin)を1 ml加え、10回ピペッティングを行い、遠沈管に回収した。800 rpmで5分間遠心し上清を取り除いた。細胞数を計測し増殖培地を用いて16.67*106cells/mlとなるように懸濁した。48.4% 細胞懸濁液、20% DMEM (2X), 20% Fibrinogen from bovine plasma (10 mg/ml) (F8630, Sigma-Aldrich, Massachusetts, USA)、10% Matrigel(登録商標) Basement Membrane Matrix(354234, Corning. USA)、1.6% Thrombin (2%) (T4648, Sigma-Aldrich, Massachusetts, USA)の比率で混合した細胞混合ハイドロゲル溶液を、12 μlずつ培養デバイスに播種し、37℃で30分間インキュベートすることで固化させた。その後、10μMのY-27632、1 μg/mlのDoxを含む筋誘導培地にゲルの分解を防ぐためと1 mg/mlのTAを加えたものを200 μl/wellで加え37℃、5% CO2インキュベーター内で培養した。その後24時間毎に、培地を、Y-27632を含まずDox、TAを添加した筋誘導培地に交換した。
<試験例1-5.ヒトiPS細胞神経筋オルガノイドの誘導>
フィブリンゲルを作製して6日間の筋誘導の後(図7:D6)、組織はピラー上部に持ち上げられ、培地を1.0 mg/ml TAを含む神経誘導培地(KBM Neural stem cell (16050100, Kohjin Bio, Saitama, Japan) に2% B-27TM supplement, serum free (17504-44, Gibco TM, USA)、1% NEAA、1 μM N6,2′-O-Dibutyryladenosine 3′,5′-cyclic monophosphate sodium salt (cAMP, D0260, Sigma-Aldrich)、10 ng/ml Brain Derived Neurotrophic Factor (BDNF, 248-BD-025, R&D Systems, Minesota, USA)、10 ng/ml Glial cell Derived Neurotrophic Factor (GDNF, 212-GD-025, R&D Systems)、10 ng/ml Insulin like Growth Factor-1 (IGF-1, 291-G1-050, R&D Systems)、50 nM Retinoic Acid (RA, 180-01114, Wako)、500 nM Purmorphamine (540220, Calbiochem, California, USA)、Ascorbic Acid (AA, 012-04802, Wako)を添加した培地)に交換し神経細胞を誘導した。37℃、5% CO2インキュベーター内で培養し、2日に一度新鮮なTAを含む神経誘導培地に交換した。得られた神経筋オルガノイドの模式図を図8に示す。
試験例2.神経-筋オルガノイドの評価
<試験例2-1.収縮特性の取得>
組織化(図7:D0)から14日目の神経筋オルガノイドに電圧4 V/mm, 周波数30Hz, パルス持続時間2 msの電気刺激を3秒間与え、その応答を正立顕微鏡 (BX53F, OLYMPUS, Japan)に組み込んだ顕微鏡用デジタルカメラ(ORCA-Spark, Hamamatsu Photonics, Hamamatsu, Japan)で60Hzのフレームレートで動画撮影した。撮影した動画はPV Studio 2D (OA Science, Miyazaki, Japan)を用いてモーショントラッキングを行い、収縮の様子を数値化した。
結果を図9に示す。神経筋オルガノイドが電気刺激に応じて収縮することが分かった。
<試験例2-2.遺伝子発現変化の取得>
組織化(図7:D0)から6日目と16日目のオルガノイドの神経細胞マーカー遺伝子(MNX1)の発現を解析した。RNA抽出はNucleo Spin(登録商標) RNA XS (740902.50, MACHEREY-NAGEL, Germany)を用いて行った。デバイス上の組織をPBSで3回洗浄し、培養デバイスから外してPBSをふき取り3サンプルをまとめてマイクロチューブに回収した。以降はキットのプロトコルに従ってRNAを抽出した。RNAの定量はQubit 3.0 Fluorometer (Invitrogen, USA)とQubit RNA HS assay (Q32852, Invirogen)を用いて行った。cDNAへの逆転写はReverTra Ace qPCR RT Master Mix with gDNA Remover (FSQ-301, TOYOBO, Japan)を用いて行った。サンプルのRNA濃度が16.7 ng/μlとなるようにNuclease free Waterで希釈してからプロトコルに従って行った。作製したcDNAは-80℃で保存した。RT-PCR は THUNDERBIRD SYBR qPCR Mix (QPS201, TOYOBO)を用いてStepOne real-time PCR System (Applied Biosystems, USA)で検出した。初めに95℃で1分間加熱し、cDNAを変性させ、60℃で1分間アニーリング及び伸長を行うサイクルを40サイクル行った。使用したプライマーの配列は以下に示す。遺伝子発現の相対変化を比較Ct (ΔΔCt)法により計算し、内因性対照遺伝子としてGAPDHに対して標準化した。
結果を図10に示す。神経筋オルガノイド(組織化(図7:D0)から16日目)において、神経細胞マーカー遺伝子(MNX1)の発現が亢進していることが分かった。
<試験例2-3.免疫蛍光画像の取得>
培養した組織はPBSで3回洗浄した後、培養デバイス上で4%パラホルムアルデヒド・りん酸緩衝液(163-20145, Wako)に1時間反応させ固定化した。固定化液を除去し、培養デバイスをウェルプレートから取り外し組織を培養デバイスから取り外しマイクロチューブに回収した。PBSで10分間、3回洗浄し、PBSで希釈した3% Triton X-100 (T8787, Sigma-Aldrich)溶液を加え、常温で1時間処理することで膜貫通を行った。PBSで3回洗浄した後、基本液(PBS + 10% Goat serum (S-1000, Vector Laboratories, USA)、0.01% Triton X-100)を加え室温で1時間反応させブロッキングを行った。基本液に1次抗体を加え、室温で一晩反応させた。用いた1次抗体はそれぞれ、抗α-actinin マウス IgG抗体 (A7811-2ML, Sigma-Aldrich)、抗tubulin β-3 ラビット IgG抗体 (802001, Biolegend, USA)である。PBSで3回洗浄した後、基本液に2次抗体とDAPI(340-07971, Dojindo)を加え、室温で2時間反応させた。用いた2次抗体はCF488A TM Goat anti rabbit IgG (H+L) (2 mg/ml, 20012, biotium)、CF555TM Goat anti mouse IgG (H+L) (2 mg/ml, 20231, biotiium)である。PBSで3回洗浄した後、組織をスライドガラスに乗せ、蛍光染色用封入剤 (H-1400, Vector Laboratories)を数滴たらし、乾いたことを確認後、蛍光顕微鏡(BZ-X700, Keyence, Osaka, Japan)を用いて蛍光画像を取得した。
結果を図11に示す。筋細胞マーカーであるα-actininと、神経細胞マーカーであるtubulin β-3の両方の発現が確認できた。
<試験例2-4.神経筋接合部の機能評価>
神経筋接合部の形成を機能的に評価するため、運動神経細胞の単独刺激による骨格筋の収縮の確認を作製した神経筋オルガノイドで行った。運動神経細胞の刺激にはNMDA受容体のアゴニストであるグルタミン酸 (070-00502, Wako)を用いた。グルタミン酸は下位運動神経に作用して神経発火を促すことが出来る神経伝達物質であることが知られている。先ず、最終濃度が400 μMとなるようにグルタミン酸が添加し、組織の様子を正立顕微鏡 (BX53F, OLYMPUS, Japan)に組み込んだ顕微鏡用デジタルカメラ(ORCA-Spark, Hamamatsu Photonics, Hamamatsu, Japan)で60Hzのフレームレートで動画撮影した。次に運動神経細胞の刺激によって収縮していることを確認するため、最終濃度2 μMとなるようにテトロドトキシンを添加し、組織の様子を観察した。テトロドトキシンは運動神経細胞の興奮性膜の電位依存的ナトリウムチャネルを選択的に阻害することで神経発火を阻害することが出来る。また、神経細胞の刺激が神経筋接合部を介して骨格筋の収縮を起こしていることを確認するため、グルタミン酸を添加、組織の様子の観察に次いで、最終濃度20 μMの臭化ベクロニウム(Curare, 223-01811, Wako)を添加し、組織の様子を観察した。収縮の様子はPV Studio 2Dを用いたモーショントラッキングにより、数値化された。
結果を図12に示す。製造した神経筋オルガノイドには、運動神経、及びNMJ(神経筋接合部)が形成されていることが分かった。
試験例3.Doxycycline添加濃度の最適化
ヒトiPS細胞骨格筋組織の作製(試験例1-1~1-4)と同様の方法で骨格筋組織を構築した。本試験例では、培養する際の筋誘導培地に添加するDoxycyclineの濃度を0, 0.01, 0.1, 1 μg/mlとして6日間(図7:D6まで)培養を行った。組織の持ち上げ操作を行い筋収縮力の測定を行った。筋収縮力の測定方法の詳細は以下のとおりである。
<収縮力測定用電気刺激装置の作製>
筋組織に電気刺激を与えて収縮力を測定するために3Dプリンターと白金電極を用いて電極を作製した。電極には化学的に安定である白金を採用し、直径0.5 mmの円柱形電極とし電極間距離は5 mmに設計した。3Dプリンターで作製した電極の基盤には各wellの上部に窓が開いており、筋組織の観察が可能になっている。それぞれの電極はセレクタ―スイッチにより制御され、well毎に電気刺激を可能にしている。
<筋収縮力の測定>
筋組織に対する電気刺激はC-PACE (C-PACE 100, IonOptix, Massachusetts, USA)により生成した。電気刺激はC-PACEによって生成され、作製された電極により、各wellに振り分けられる。測定には電圧4 V/mm, 周波数30Hz, パルス持続時間2 msecを使用し、正立顕微鏡 (BX53F, OLYMPUS, Japan)に組み込んだ顕微鏡用デジタルカメラ(ORCA-Spark, Hamamatsu Photonics, Hamamatsu, Japan)によって筋組織の動きを撮影した。電気刺激を与える前後の筋組織の写真からマイクロポストの変位を画像解析ソフトImageJを使用して計算した。計測したマイクロポストの変位は以下の式を用いて収縮力に変換した。E (PDMSの弾性係数)は1.7 MN/m2、R (円柱の半径)は 0.25 mm、L (円柱の長さ)は4 mmとし、δは各筋組織が収縮した距離である。 式:F=3πER4δ/4L3
結果を図13に示す。Doxycyclineの濃度が一定以上である場合に収縮力が強くなることが分かった。
試験例4.ROCK inhibitorの効果の解析
ヒトiPS細胞骨格筋組織の作製(試験例1-1~1-4)と同様の方法で骨格筋組織を構築した。本試験例では、培養初期2日間(図7:D0~1まで)に筋誘導培地にY-27632(ROCK inhibitor)を添加する/添加しない(PBSのみ)条件で培養した。6日間(図7:D6まで)の培養の後、持ち上げ操作を行い、試験例3と同様にして筋収縮力の測定を行った。
結果を図14に示す。筋分化誘導時にロック阻害剤を添加することにより、収縮力が強くなることが分かった。
試験例5.細胞密度の最適化
試験例1-3で得られた初期分化誘導細胞をAccutaseで回収し、細胞数を計測した。組織の細胞密度を検討するため16.67、12.5、8.33、4.17*106cells/mlとなるように細胞懸濁液を作製し、試験例1-4に記載の通りフィブリンゲルを作製した。フィブリンゲル中の細胞密度はそれぞれ8、6、4、2*106cell/mlである。以降は試験例1-4の通りに培養を行い、6日間(図7:D6まで)の培養の後、持ち上げ操作を行い、試験例3と同様にして筋収縮力の測定を行った。
結果を図15に示す。筋分化誘導開始時におけるフィブリンゲル中の細胞濃度が一定以上である場合に収縮力が強くなることが分かった。
試験例6.培地量の比較
培養デバイスを96ウェルプレート及び48ウェルプレートに固定した。固定方法は参考例2と同様である。得られたウェルプレートを用いて、ヒトiPS細胞骨格筋組織の作製(試験例1-1~1-4)と同様の方法で骨格筋組織を構築した。培地量は、96ウェルプレートでは200 μl、48 ウェルプレートでは700 μlである。6日間(図7:D6まで)の培養後、経時的に、試験例3と同様にして筋収縮力を測定した。
結果を図16及び17に示す。一定の細胞数あたりの培地量を調整することにより、収縮力が強くなることが分かった。
試験例7.培養法の改善
筋分化誘導における組織の持ち上げ方法を検討した。使用した材料、方法の詳細は以下のとおりである。
<試験例7-1.骨格筋細胞の継代培養>
骨格筋細胞にはHu5/KD3(国立長寿医療センターから譲渡)を用い、以下の手順で培養を行った。初めにフラスコのコラーゲンコートを行った。0.02N酢酸にコラーゲン(Cellmatrix typeI-C : 新田ゼラチン株式会社, Osaka, Japan)を50 μg/mlの濃度で溶かし、コラーゲン溶液を作製した。作製したコラーゲン溶液をT75フラスコに5 ml加え、室温で1時間静置した。その後、コラーゲン溶液を除去し、PBS 5 mlで2度洗浄した。培養しているT75フラスコから培地を除去し、PBSで2度洗浄した後、0.05% トリプシンを1 ml加え、37℃インキュベーター内で2分間インキュベートした。筋増殖培地(DMEM(20% FBS, 2mM L-glutamine (073-05391, Wako, Tokyo, Japan), 0.5% penicillin/streptomycin, 2% UltroserG (15950-017, Sartorius, Gottingen, Deutschland)))を5 ml加え、1000 rpmで5分間遠心することで細胞のペレットを回収した。得られたペレットを筋増殖培地2 mlで懸濁し、全自動セルカウンター (TC20TM, Bio-Rad Laboratories, California, USA)で細胞数を算出し、コートされたフラスコに2.0*105 cellsを、筋増殖培地10 mlに加え。T75に播種し37℃、10% CO2、5% O2のインキュベーター内で培養した。72時間後、サブコンフルエント状態となった細胞は再度継代した。
<試験例7-2.骨格筋組織の作製と遠心操作による筋組織持ち上げ>
T75フラスコで培養した細胞を継代操作と同様の手法で回収し、細胞数を計測し増殖培地を用いて4.17*106 cells/mlとなるように懸濁した。48.4% 細胞懸濁液、20% DMEM (2X), 20% Fibrinogen from bovine plasma (10 mg/ml) (F8630, Sigma-Aldrich, Massachusetts, USA)、10% Matrigel(登録商標) Basement Membrane Matrix(354234, Corning. USA), 1.6% Thrombin (2%) (T4648, Sigma-Aldrich, Massachusetts, USA)の比率で混合した細胞混合ハイドロゲル溶液を、12 μlずつ培養デバイスに播種し、37℃で30分間インキュベートすることで固化させた。その後、筋増殖培地にゲルの分解を防ぐため2.0 mg/mlの6-Amino caproic Acid (6-AA, A2504, Sigma-Aldrich, Massachusetts, USA)と1 mg/mlのtrans-4- (Aminomethyl) cyclohexanecarboxylic Acid(TA, A0236, Tokyo Chemical industry, Tokyo, Japan)を加えたものを200 μl/wellで添加し37℃、5% CO2インキュベーター内で培養した。48時間後、培地を抜き、筋組織を持ち上げた。
持ち上げには、従来の吸引操作と新規の遠心操作を用いた。吸引操作では、アスピレーターにゲルローディングチップ (Q-010, QSP)をセットし、筋組織を吸引することで組織を把持し、ピラー上部に持ち上げた。遠心操作では、テーブルトップ遠心機(5010, KUBOTA, Japan)に上下逆さまにプレートを設置し、200 ×gで10秒間すること筋組織を上部に持ち上げた。その後、6-AA、TAを含む筋分化培地(DMEM(+ 2% FBS, 1% penicillin/streptomycin, 1% ITS supplement (I3146, Sigma-Aldrich, Massachusetts, USA))を200 μl/wellで加え、37℃、5% CO2インキュベーター内で培養した。48時間後にもう一度同様の操作で持ち上げを行い、筋分化培地を加えた。以降48時間毎に新鮮な筋分化培地に培地を交換し、試験例3と同様にして筋組織の収縮力を測定した。
結果を図18及び19に示す。組織の持ち上げを遠心操作により行うことにより、筋収縮率のサンプル間のばらつきが低くなることが分かった。

Claims (19)

  1. (1a)培養底面から培養槽側に伸びる少なくとも2本のピラーを備える培養デバイス中で、多能性幹細胞にMyoDを一過的に発現させてなる初期誘導細胞、及び多能性幹細胞からなる群より選択される少なくとも1種の細胞を含有するオルガノイド形成用組成物を、前記ピラーの周囲を覆った状態で筋分化誘導させ、筋オルガノイドを得る工程、並びに
    (2)工程(1a)で得られた筋オルガノイドを、神経栄養因子を含む培地で培養して神経分化誘導させ、神経-筋オルガノイドを得る工程を含む、
    神経-筋オルガノイドの製造方法。
  2. 前記筋分化誘導が、前記細胞にMyoDを一過的に発現させること、及び/又は前記オルガノイド形成用組成物を低血清培地若しくは無血清培地で培養することを含む、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記筋分化誘導が、薬剤を用いた発現誘導により、前記細胞にMyoDを一過的に発現させることを含み、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記薬剤がドキシサイクリンである、請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記ドキシサイクリンの培地中濃度が0.05μg/ml以上である、請求項4に記載の製造方法。
  6. 工程(1a)の筋分化誘導開始時において、前記オルガノイド形成用組成物における細胞濃度が5×106cells/ml以上である、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 前記筋分化誘導の培養期間の一部又は全部において、ロック阻害剤含有培地で培養する、請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 工程(1a)における培地量が、工程(1a)の筋分化誘導開始時における前記細胞1×104あたり5~50μlである、請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 前記オルガノイド形成用組成物が細胞足場材料を含有する、請求項1~8のいずれかに記載の製造方法。
  10. 前記細胞足場材料がフィブリン、マトリゲル、及びコラーゲンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~8のいずれかに記載の製造方法。
  11. 前記神経栄養因子がGlial cell line-derived Neurotrophic Factor(GDNF)、及びBrain-derived Neurotrophic Factor(BDNF)からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~10のいずれかに記載の製造方法。
  12. さらに、(3)前記オルガノイド形成用組成物及び/又はその分化誘導物を遠心操作により前記ピラー上部に移動させる工程を含む、請求項1~11のいずれかに記載の製造方法。
  13. (1b)培養底面から培養槽側に伸びる少なくとも2本のピラーを備える培養デバイス中で、多能性幹細胞にMyoDを一過的に発現させてなる初期誘導細胞、多能性幹細胞、及び筋芽細胞からなる群より選択される少なくとも1種の細胞を含有するオルガノイド形成用組成物を、前記ピラーの周囲を覆った状態で筋分化誘導させる工程を含み、
    さらに、(3)前記オルガノイド形成用組成物及び/又はその分化誘導物を遠心操作により前記ピラー上部に移動させる工程を含む、
    オルガノイドの製造方法。
  14. (1b)培養底面から培養槽側に伸びる少なくとも2本のピラーを備える培養デバイス中で、多能性幹細胞にMyoDを一過的に発現させてなる初期誘導細胞、多能性幹細胞、及び筋芽細胞からなる群より選択される少なくとも1種の細胞を含有するオルガノイド形成用組成物を、前記ピラーの周囲を覆った状態で筋分化誘導させる工程を含み、
    前記細胞が多能性幹細胞にMyoDを一過的に発現させてなる初期誘導細胞、及び多能性幹細胞からなる群より選択される少なくとも1種であり、且つ
    前記筋分化誘導の培養期間の一部又は全部において、ロック阻害剤含有培地で培養する、
    オルガノイドの製造方法。
  15. 工程(1b)における培地量が、工程(1b)の筋分化誘導開始時における前記細胞1×104あたり5~50μlである、請求項14に記載の製造方法。
  16. 請求項1~15のいずれかに記載の製造方法により得られる、オルガノイド。
  17. 培養底面から培養槽側に伸びる少なくとも2本のピラーを備える培養デバイスを含み、且つ前記培養デバイスは培養槽が1つである、神経-筋オルガノイド製造用キット。
  18. 培養底面から培養槽側に伸びる少なくとも2本のピラーを備える培養デバイスと前記ピラーの周囲に形成された神経―筋オルガノイドを含む、神経―筋オルガノイド筋収縮試験キット。
  19. (Aa)請求項1~15のいずれかに記載の製造方法の一部又は全部の工程を被験物質の存在下で行い、オルガノイドを得る工程、或いは
    (Ab)請求項16に記載の神経-筋オルガノイドと被験物質とを接触させる工程、
    並びに
    (B)オルガノイドの機能及び/又は状態を評価する工程、
    を含む、神経筋疾患の治療薬のスクリーニング方法。
JP2021166757A 2021-10-11 2021-10-11 オルガノイドの製造方法 Pending JP2023057310A (ja)

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