JP2023055633A - 熱伝導性シリコーン組成物およびその製造方法 - Google Patents

熱伝導性シリコーン組成物およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の熱伝導性シリコーン組成物に比べて良好なディスペンス性と押しつぶし性を示し、かつ、糸切れ性が良好であり、高い形状保持性を有する熱伝導性シリコーン組成物及びその製造方法を提供する。【解決手段】液体状態で基材に塗布される熱伝導性シリコーン組成物に、(A)ケイ素原子に結合しているアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、(B)ケイ素原子に結合している水素原子を有するジオルガノポリシロキサン、(C)繊維状無機熱伝導性フィラー、(D)球状又は不定形である熱伝導性フィラー、(E)付加触媒を配合する。【選択図】なし

Description

本発明は、熱伝導充填剤を含有する放熱性・絶縁性の熱伝導性シリコーン組成物に関する。
シリコーン熱伝導性組成物(ギャップフィラー)は発熱する電気自動車のバッテリーや電子機器の半導体などから発する熱をヒートシンクなどの放熱部材に伝えるため、発熱体または放熱体に直接塗布される。塗布の仕方としてはディスペンサーにより定位置に定量塗布される。そのためギャップフィラーにはディスペンサーで吐出可能な適度な流動性が必要とされる。
この際、ギャップフィラーの粘度が高すぎるとディスペンス性が悪くなり、限られた時間で必要量の吐出ができなくなり生産効率が悪くなる。またギャップフィラーは、発熱体と放熱体の決められた間隙まで圧縮されるが、その際に熱伝導性フィラーが多いと、圧縮するために余分な力が必要となり、過剰な応力により電子基板等を損傷する危険がある。
一方粘度が低すぎると、ディスペンス性は良くなるが糸切れ性が悪くなり定位置へ定量のディスペンスが困難となる。さらに、ギャップフィラーが吐出される部分の間隙が広いと、ギャップフィラー吐出後の流れ出し(ポンプアウト)により、間隙を埋めることができなくなるという問題もある。つまり塗布後の高さの形状保持性が求められる。また、熱伝導性フィラーの配合量を少なくすると、ギャップフィラー全体の熱伝導性が低下して、十分な放熱性能が発揮できなくなる。
これらの課題を解決するには、通常細かいフィラーを増やしチクソ性を向上される手段が用いられるが、粘度が上昇してしまい、押しつぶし性、ディスペンス性が悪化するという問題が生じる。またフィラーを十分に増量しないと放熱効果は不十分であり、しかしフィラーを増量すると比重が上がるため好ましくない。
さらに、電子基板に適用する場合や、発熱体と放熱部材の間に絶縁状態を確保しなければならない場合には、ギャップフィラーに絶縁性が求められる。この場合、熱伝導性充填材としてアルミニウムや銅、銀等の金属粒子を用いることができず、水酸化アルミニウム、アルミナ( 酸化アルミニウム) 等の絶縁性熱伝導性充填材が用いられることが多い。水酸化アルミニウムやアルミナは、それ自体の熱伝導率が低いためにこれらを用いて、高熱伝導性を有する熱伝導性材料を得ようとすると多量に充填しなければならない。その結果、熱伝導性材料の粘度が非常に高くなり塗布が困難である、十分な圧縮ができなくなる、比重が上がるなどの問題が生じる。
特許文献1には、絶縁性熱伝導性シリコーン組成物として、窒化アルミニウムを熱伝導充填剤とする組成物が開示されている。当該組成物は高い熱伝導率と圧縮性を有し、所定の粘度範囲内であれば、形状保持と吐出が容易で作業性が良好であることが示されている。
しかし、当該組成物は粘度が低いことから、糸切れ性、形状保持性が不十分であり、ギャップフィラーとしては形状保持性のさらなる向上が必要である。
特開2020-169231号公報
以上の背景から、絶縁性熱伝導性シリコーン組成物であって、ディスペンス性と押しつぶし性が良好でありながら、糸切れ性が良く、高い形状保持性も実現可能な組成物の開発が求められている。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来の熱伝導性シリコーン組成物に比べて良好なディスペンス性と押しつぶし性を示し、かつ、高い形状保持性を有する絶縁性熱伝導性シリコーン組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、オルガノポリシロキサンを含む熱伝導性シリコーン組成物において、繊維状無機熱伝導性フィラーと、球状または不定形である熱伝導性フィラーとを配合することにより、本発明の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(A)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合しているアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと、
(B)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合している水素原子を有するジオルガノポリシロキサンと、
(C)繊維状無機熱伝導性フィラーと、
(D)球状または不定形である熱伝導性フィラーと、
(E)付加触媒と、を含み、
液体状態で基材に塗布されることを特徴とする熱伝導性シリコーン組成物である。
本発明の組成物は、良好なディスペンス性と押しつぶし性を示し、かつ、高い形状保持性を有することから、ディスペンサー等を用いて液体状態で基材に塗布される熱伝導性シリコーン組成物(ギャップフィラー)として有用である。
以下に本発明に係る、熱伝導性シリコーン組成物、該熱伝導性シリコーン組成物の製造方法、および該熱伝導性シリコーン組成物の特性を向上させる方法の詳細を説明する。なお、本明細書においてフィラーを充填材ともいう。
本発明に係る熱伝導性シリコーン組成物は、
(A)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合しているアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと、
(B)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合している水素原子を有するジオルガノポリシロキサンと、
(C)繊維状無機熱伝導性フィラーと、
(D)球状または不定形である熱伝導性フィラーと、
(E)付加触媒と、を含み、
液体状態で基材に塗布されることを特徴とする熱伝導性シリコーン組成物である。
(成分(A))
成分(A)は、熱伝導性シリコーン組成物の主剤であり、25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下である、ケイ素原子に結合しているアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンである。
ジオルガノポリシロキサンは、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。これは、熱伝導性シリコーン組成物(以下、単にシリコーン組成物と記載する場合がある。)の主剤であり、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に平均して、少なくとも1個、好ましくは2~50個、より好ましくは2~20個有するものである。
(A)成分の分子構造は特に限定されず、例えば、直鎖状構造、一部分岐を有する直鎖状構造、分岐鎖状構造、環状構造、分岐を有する環状構造であってもよい。(A)成分は、このうち、実質的に直鎖状のオルガノポリシロキサンであることが好ましく、具体的には、分子鎖が主にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。分子鎖末端の一部または全部がSi-OH基であってもよい。
また、(A)成分は、単一のシロキサン単位からなる重合体であっても、2種以上のシロキサン単位からなる共重合体であってもよい。さらに、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の位置は特に制限されず、該アルケニル基は分子鎖末端のケイ素原子及び分子鎖非末端(分子鎖途中)のケイ素原子のどちらか一方にのみ結合していてもよいし、これら両者に結合していてもよい。
(A)成分の25℃における粘度は、10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、20mPa・s以上500,000mPa・s以下が好ましく、50mPa・s以上10,000mPa・s以下がさらに好ましい。上記粘度が低すぎると、得られるシリコーン組成物において、後述の(C)成分、(D)成分の充填材が沈降しやすくなり、長期の保存性に欠けるおそれがある。また、上記粘度が高すぎると、得られるシリコーン組成物は著しく流動性に欠けたものとなりやすく、吐出性が低下し生産性が劣ったものとなるおそれがある。
最終的な生成物であるシリコーン組成物の粘度調整のため、粘度の異なる2種類以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンを用いることもできる。上記(A)成分~(E)成分を含む最終的な生成物であるシリコーン組成物の粘度は、特に限定されず、例えば50,000mPa・s以上2,000,000mPa・s以下の範囲であり、より好ましくは100,000mPa・s以上1,000,000mPa・s以下の範囲である。
具体的には、成分(A)は、平均組成式が下記一般式(1)で表される。
R1 aSiO(4-a)/2 (1)
(ただし、式(1)中、R1は、互いに同一または異種の炭素数1~18の非置換のまたは置換された一価炭化水素基である。aは1.7~2.1である。)
一つの実施形態において、上記R1で示される一価炭化水素基のうち、少なくとも2個以上はビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基などのアルケニル基から選ばれ、それ以外の基は、炭素数1~18の置換または非置換の一価炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基などのアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基などのアラルキル基や、これらの炭化水素基中の水素原子の一部または全部がハロゲン原子、シアノ基などによって置換されたクロロメチル基、2-ブロモエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-クロロプロピル基、シアノエチル基などのハロゲン置換アルキル基やシアノ置換アルキル基などから選ばれる。
R1の選択にあたって、2個以上必要なアルケニル基としてはビニル基が好ましく、その他の基としてはメチル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基が好ましい。また、全R1中の70モル%以上がメチル基であることが、硬化物の物性および経済性などの点で好ましく、通常はメチル基が80モル%以上のものが用いられる。
成分(A)の分子構造としては、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、式:(CH32ViSiO1/2で示されるシロキサン単位、式:(CH33SiO1/2で示されるシロキサン単位、式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン(式中のViは、ビニル基を表す)、これらのオルガノポリシロキサンのメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン化アルキル基で置換したオルガノポリシロキサン、およびこれらのオルガノポリシロキサンの2種類以上の混合物が例示されるが、分子鎖長の増長によって硬化物の切断時の伸びを高める観点から、直鎖状のジオルガノポリシロキサンで分子鎖両末端にビニル基を有するものが好ましい。
これらのジオルガノポリシロキサンは市販のものを使用してもよく、また当業者に公知の方法で製造されたものを使用してもよい。
本発明のシリコーン組成物中、シリコーン組成物全体を100質量部とした場合、(A)成分のオルガノポリシロキサンの含有量は、0.2質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上7.0質量%以下であることがより好ましい。上記範囲内であれば、シリコーン組成物全体の粘度が適切な範囲となり、より押しつぶし性に優れ、基材へ塗布した後に流出する現象を抑制可能であり、適度な流動性を有することにより熱伝導性を高く維持することが可能となる。
(成分(B))
成分(B)は、25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合している水素原子を有するジオルガノポリシロキサンである。
成分(B)は1分子中にケイ素原子に結合している水素原子を1個以上含有するジオルガノポリシロキサンであり、本発明のシリコーン組成物を硬化させるための架橋剤の役割を果たす成分である。
成分(B)は、1分子中にケイ素原子と結合している水素原子(SiH基)を1個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであればいかなるものでもよく、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、メチルフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルハイドロジェンシロキシ単位とSiO4/2単位からなるコポリマーが用いられる。成分(B)は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
成分(B)の分子構造は特に限定されず、例えば、直鎖状、分岐状、環状、又は三次元網状構造のいずれのものであってもよいが、具体的には、下記平均組成式(2)で示されるものを用いることができる。
R3 pHqSiO(4-p-q)/2 (2)
(式中、R3は脂肪族不飽和炭化水素基を除く、非置換又は置換の一価炭化水素基である。またpは0~3.0、好ましくは0.7~2.1、qは0.0001~3.0、好ましくは0.001~1.0で、かつp+qは0.5~3.0、好ましくは0.8~3.0を満足する正数である。)
式(2)中のR3としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等の、脂肪族不飽和炭化水素基を除く、通常、炭素数1~10、好ましくは1~8程度の非置換又はハロゲン置換の1価炭化水素基等が例示され、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基であり、特に好ましくはメチル基である。
(B)成分としては、具体的には、例えば1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、H(CH32SiO1/2単位とSiO2単位との共重合体、H(CH32SiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO2単位との共重合体や、これらのオルガノハイドロジェンシロキサンの2種以上の混合物等が例示できる。
上記シリコーン組成物中、(B)成分の含有量は、(A)成分中のアルケニル基に対する(B)成分中のSiH基の個数の比が1/5~7となる範囲であることが好ましく、1/2~2となる範囲であることがより好ましく、3/4~5/4の範囲であることがさらにより好ましい。上記範囲内であればシリコーン組成物が十分に硬化し、シリコーン組成物全体の硬さがより好適な範囲となり、ギャップフィラーとして使用する場合に割れが生じにくくなるほか、縦型に基材を配置した場合にもシリコーン組成物が垂直保持性を維持できるという利点がある。
(B)成分中のSiH基は、分子鎖末端にあってもよく、側鎖にあってもよく、分子鎖末端と側鎖の両方にあってもよい。分子鎖末端にのみSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、分子鎖側鎖にのみSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを混合して使用することが好ましい。
分子鎖末端にのみSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、立体障害が少ないことから反応性が高いという利点があり、側鎖にSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは架橋反応によりネットワーク構築に寄与するため強度を向上させるという利点がある。
成分(B)は、接着性および耐熱性向上の観点からは、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基を有するもので、分子中に芳香族の基を分子中に少なくとも1個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含むこともできる。経済的な理由により芳香族の基としてはフェニル基であることがより好ましい。
成分(B)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度は、10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、20mPa・s以上500,000mPa・s以下が好ましく、50mPa・s以上10,000mPa・s以下がさらに好ましい。
最終的な生成物であるシリコーン組成物の粘度 調整のため、粘度の異なる2種類以上の、水素原子を有するジオルガノポリシロキサンを用いることもできる
(成分(C))
(C)成分の繊維状無機熱伝導性フィラーは、シリコーン組成物の熱伝導率を向上させ、ディスペンス性、押しつぶし性、形状保持性を向上させるための充填材成分である。電子基板等に適用するための絶縁性の高いギャップフィラーを得るためには、(C)成分の熱伝導性フィラーは熱伝導性のみならず絶縁性にも優れた無機材料を使用することが好ましい。形状異方性を有するフィラーとしては扁平状、鱗片状などとも呼ばれる板状のフィラーと、棒状、針状などとも呼ばれる繊維状フィラーがあるが、本発明に係るフィラーは繊維状のフィラーである。
ディスペンス性とは、シリコーン組成物が充填された容器やカートリッジ等から液状でシリコーン組成物が吐出されるときの流動性や塗布性をいい、流動性、塗布性が高い(すなわちディスペンス性が良好である)方が吐出されやすいため好ましい。
シリコーン組成物が容器等から吐出されるときには応力がかかる状態となる。液状の成分(A)、成分(B)により表面が濡れた状態の繊維状のフィラーは、成分(A)、(B)を含む系内にランダムに分散した状態から、応力方向に沿ってフィラーが配向する。そのため、応力方向の粘性が低下して、ディスペンス性を向上させる。さらに繊維状のフィラーは、シリコーン組成物の糸引き性も向上させる。
フィラーは、シリコーン組成物全体の熱伝導性を高めるため熱伝導性と、電子部品等に適応するための絶縁性を備える無機繊維であることが好ましい。
(C)成分の繊維状無機熱伝導性フィラーとしては、例えば、ガラス繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、セピオライト、ゾノトライト、ホウ酸アルミニウムアルミナ繊維、セラミック繊維、塩基性硫酸マグネシウムに代表される塩基性無機繊維等があげられ、塩基性無機繊維を用いることが特に好ましい。
(C)成分の形状は繊維状であれば特に限定されず、例えば、平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)が5以上であり、好ましくは5~1000、より好ましくは5~100、特に好ましくは7~40の範囲であるのものを使用することができる。アスペクト比が上記範囲内であれば、ディスペンス性、押しつぶし性、形状保持性が高いシリコーン組成物を得ることができる。
ここで、繊維状とは繊維の断面が円形に近いものをいい、断面が長楕円形や長方形である鱗片状、板状のものは含まれない。具体的には、繊維断面の長径と短径の比(長径/短い径)が1.0/1.0~2.0/1.0の範囲にあるものを使用することが好ましい。鱗片状や板状では短径に対する長径の比が前記範囲よりも大きく、そのような場合には、シリコーン組成物に応力をかけたときに抵抗が大きくなり、ディスペンス性が低下するという問題がある。
平均繊維長は例えば、0.5~200μm、好ましくは5.0~200μm、さらに好ましくは5.0~100μmの範囲であり、平均繊維径は例えば0.1μm以上10μm未満、好ましくは0.3μm以上1.2μm未満、さらに好ましくは0.5μm以上1.0μm未満の範囲である。繊維径、繊維長は特に限定されないが、上記範囲であればよりディスペンス性と形状保持性が高く、繊維が折れにくいという効果が期待される。
なお、繊維状塩基性硫酸マグネシウム等の繊維状無機熱伝導性フィラーの平均繊維長および平均繊維径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による拡大画像から画像解析により測定した繊維長および繊維径のそれぞれの個数平均値から算出することができる。
本発明のシリコーン組成物中、(C)成分の含有量は、シリコーン組成物全体を100質量部とした場合に、0.1質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.2質量部以上2.0質量部以下がより好ましい。(C)成分の含有量が少なすぎると、得られるシリコーン組成物の硬化物の熱伝導率を高めることが困難となり、一方、(C)成分の含有量が多すぎるとシリコーン組成物は高粘度になり、シリコーン組成物を均一に塗布することが困難となるおそれがある。
また、成分(A)および成分(B)の合計量100質量部に対し、(C)繊維状無機熱伝導性フィラーの配合量は1質量部以上50質量部以下とすることができ、2質量部以上30質量部以下とすることが好ましく、3質量部以上15質量部以下とすることがより好ましい。
(成分(D))
(D)球状または不定形である熱伝導性フィラーは、シリコーン組成物の熱伝導率を向上させるための成分である。熱伝導性フィラーとして成分(C)と成分(D)とを併用すると、大きな繊維状フィラーの間に小さな粒子径を有する球状または不定形の熱伝導性粒子が埋まり、最密充填に近い状態で充填でき、熱伝導性が高くなるためである。
電子基板等に適用するための絶縁性の高いギャップフィラーを得るためには、(D)成分の熱伝導性フィラーは熱伝導性のみならず絶縁性にも優れた材料を使用することが好ましい。
(D)成分の球状または不定形である熱伝導性フィラーとしては、例えば、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ベリリウム等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の窒化物;炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ケイ素等の炭化物;グラファイト、黒鉛等の石墨;アルミニウム、銅、ニッケル、銀等の金属、およびこれらの混合物からなるのもが挙げられる。特に、シリコーン組成物に電気絶縁性が必要な場合は、金属酸化物、金属水酸化物、窒化物、またはこれらの混合物であることが好ましく、両性水酸化物または両性酸化物であってもよく、具体的には、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムからなる群より選択される1種又は2種以上を用いることが好ましい。
なお、酸化アルミニウムは絶縁材料であり、成分(A)および(B)との相溶性が比較的良好であり、工業的に広範囲な粒径の品種が選択可能であり、資源的に入手が容易であり、比較的安価で入手可能であることから、熱伝導性無機充填材として好適である。
(D)成分の形状は球状又は不定形状であればよく、特に、(D)成分として酸化アルミニウムを用いる場合には球状又は不定形のものを用いる。球状酸化アルミニウムは、主として高温溶射法あるいはアルミナ水和物の水熱処理により得られるα-アルミナである。ここでいう球状とは、真球状のみならず、丸み状であってもよい。
不定形とは、その粒子の長径/短径のアスペクト比が2以上5未満のものであり、鱗片状と呼ばれるものも含む。
球形とは、長径/短径のアスペクト比が1以上2未満のものをいう。
(D)成分の平均粒径は0.1μm以上500μm以下の範囲であり、0.5μm以上200μm以下がより好ましく、1.0μm以上100μm以下がさらにより好ましい。平均粒径が小さすぎると、シリコーン組成物の流動性が低下し、平均粒径が大きすぎるとディスペンス性が低下する上、塗布装置の摺動部分に挟まり、装置の削れなどの問題発生のおそれがある。なお、本発明において、(D)成分の平均粒径は、レーザー回折式粒度測定装置で測定された体積基準累積粒度分布における50%粒子径であるD50(又はメジアン径)である。
形状が異なる少なくとも2 種のフィラー(成分(C)と成分(D)を併用すると、成分(C)の間に成分(D)の粒子が埋まり、最密充填に近い状態で充填でき、熱伝導性がより高くなる効果が得られる。
成分(D)として、球状のフィラーのみまたは不定形のフィラーのみを使用することもできるが、これらを併用することもできる。球状の熱伝導性フィラーを配合することにより、シリコーン組成物の充填性を高めることが可能となり、平均粒径40μm以上の球形熱伝導性フィラーを採用すると充填性と熱伝導性をさらに高めることが可能となる。球状と不定形のフィラーを併用する場合、成分(D)全体を100質量%とした場合の、球状熱伝導性フィラーの割合は80質量%以上とすると、より熱伝導性を高めることが可能となる。平均粒径40μm以上70μm以下の球状熱伝導性フィラーと、平均粒径3.0μm以上5.0μm以下の不定形熱伝導性フィラーとを併用することにより、さらに熱伝導性を高めることが可能となる。
本発明のシリコーン組成物中、(D)成分の含有量は、シリコーン組成物全体100質量部に対して75質量部以上95質量部以下が好ましく、80質量部以上90質量部以下がより好ましい。上記範囲内であれば、シリコーン組成物全体として十分な熱伝導率を有し、配合時に混合しやすく、硬化後にも柔軟性が維持され、さらに比重も大きくなりすぎないことから、熱伝導性と軽量化が求められるギャップフィラー用組成物としてより好適である。(D)成分の含有量が少なすぎると、得られるシリコーン組成物の硬化物の熱伝導率を十分に高めることが困難となり、一方、(D)成分の含有量が多すぎるとシリコーン組成物は高粘度になり、シリコーン組成物を均一に塗布することが困難となるおそれがあり、硬化後の組成物の熱抵抗上昇、柔軟性の低下といった問題が生じる場合がある。
(成分(E))
成分(E)の付加触媒は、上述した成分(A)におけるケイ素原子に結合しているアルケニル基と、上述した成分(B)におけるケイ素原子に結合している水素原子との付加硬化反応を促進する触媒であって、当業者には公知の触媒である。成分(E)としては白金、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウムなどの白金族金属、または、これらを微粒子状の担体材料(例えば、活性炭、酸化アルミニウム、酸化ケイ素)に固定したものが挙げられる。
さらに、成分(E)としては、白金ハロゲン化物、白金-オレフィン錯体、白金-アルコール錯体、白金-アルコラート錯体、白金-ビニルシロキサン錯体、ジシクロペンタジエン-白金ジクロライド、シクロオクタジエン-白金ジクロライド、シクロペンタジエン-白金ジクロライド等の白金化合物が挙げられる。
また、経済的な観点から、上述したような白金族金属以外の金属化合物触媒を用いてもよい。例えば、ヒドロシリル化鉄触媒としては、鉄-カルボニル錯体触媒、シクロペンタジエニル基を配位子として有する鉄触媒、ターピリジン系配位子や、ターピリジン系配位子とビストリメチルシリルメチル基を有する鉄触媒、ビスイミノピリジン配位子を有する鉄触媒、ビスイミノキノリン配位子を有する鉄触媒、アリール基を配位子として有する鉄触媒、不飽和基を有する環状または非環状のオレフィン基を有する鉄触媒、不飽和基を有する環状または非環状のオレフィニル基を有する鉄触媒である。その他、ヒドロシリル化のコバルト触媒、バナジウム触媒、ルテニウム触媒、イリジウム触媒、サマリウム触媒、ニッケル触媒、マンガン触媒などが例示される。
成分(E)の配合量は用途により所望される硬化温度や硬化時間に応じた有効量が用いられるが、通常、熱伝導性シリコーン組成物の合計質量に対して、触媒金属元素の濃度として好ましくは0.5~1,000ppm、より好ましくは1~500ppm、より一層好ましくは1~100ppmの範囲である。配合量が0.5ppm未満の場合は、付加反応が著しく遅くなり、一方、配合量が1,000ppmを超えるとコストが上昇するため経済的に好ましくない。
本発明の熱伝導充填剤含有の熱伝導性シリコーン組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、さらに、上記成分(A)~(E)以外のさらなる任意成分として、シリコーンゴム、ゲルへの添加物として従来公知のものを使用することができる。このような添加物としては、加水分解によりシラノールを生成する有機機ケイ素化合物またはオルガノシロキサン(シランカップリング剤ともいう)、縮合触媒、接着付与剤、顔料、染料、硬化抑制剤、耐熱付与剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、気密性向上剤、放射線遮蔽剤、電磁波遮蔽剤、防腐剤、安定剤、有機溶剤、可塑剤、防かび剤、あるいは、1分子中に1個のケイ素原子結合水素原子またはアルケニル基を含有し、他の官能性基を含有しないオルガノポリシロキサンや、ケイ素原子結合水素原子およびアルケニル基を含有しない無官能性のオルガノポリシロキサンが例示され、これらのさらなる任意成分は、1種を単独で使用してもよく、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
シランカップリング剤としては、1分子中にエポキシ基、アルキル基、アリール基等の有機基とケイ素原子結合アルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物またはオルガノシロキサンが挙げられる。
加水分解により生成したシラノールは金属基材または有機樹脂基材の表面に存在する縮合性基(例えば、水酸基、アルコキシ基、酸基等)と反応・結合し得るものであり、後述する縮合触媒の触媒効果によりシラノールと縮合性基とが反応・結合することにより、熱伝導性シリコーン組成物の各種基材への接着を進行させる。
必要に応じて、上記シランカップリング剤と共に縮合触媒を使用してもよい。縮合触媒としては、マグネシウム、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、タングステン、ビスマスから選ばれる金属の化合物等が使用できる。アルミニウム三価、鉄三価、コバルト三価、亜鉛二価、ジルコニウム四価、ビスマス三価の有機酸塩、アルコキシド、キレート化合物等の金属化合物が好ましく挙げられる。例えば、オクチル酸、ラウリン酸、ステアリン酸等の有機酸、プロポキシド、ブトキシド等のアルコキシド、カテコール、クラウンエーテル、多価カルボン酸、ヒドロキシ酸、ジケトン、ケト酸等の多座配位子キレート化合物が挙げられ、一つの金属に複数種類の配位子が結合していてもよい。特に、配合や使用条件が多少異なっても安定した硬化性が得られ易いジルコニウム、アルミニウム、鉄の化合物が好ましく、更に望ましい化合物は、ジルコニウムのブトキサイド、または、マロン酸エステル、アセト酢酸エステル、アセチルアセトン、それらの置換誘導体等を多座配位子としたアルミニウム又は鉄の三価キレート化合物である。アルミニウム三価、鉄三価の金属化合物では更にオクチル酸等の炭素数5~20の有機酸も好ましく使用でき、上述の多座配位子と有機酸とが一つの金属に結合している構造でもよい。
上記置換誘導体としては、上記化合物中に含まれる水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基、塩素原子、フッ素原子等のハロゲン原子、水酸基、フルオロアルキル基、エステル基含有基、エーテル含有基、ケトン含有基、アミノ基含有基、アミド基含有基、カルボン酸含有基、ニトリル基含有基、エポキシ基含有基等で置換したものであって、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオーネ、ヘキサフルオロペンタンジオーネを挙げることができる。
顔料としては、酸化チタン、アルミナケイ酸、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カーボンブラック、希土類酸化物、酸化クロム、コバルト顔料、群青、セリウムシラノレート、アルミニウムオキシド、アルミニウムヒドロキシド、チタンイエロー、カーボンブラック、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム等、および、これらの混合物が例示される。
硬化抑制剤としては、付加反応の硬化速度を調整する能力を有するものであり、アセチレン系化合物、ヒドラジン類、トリアゾール類、フォスフィン類、メルカプタン類が例示され、硬化抑制効果を持つ化合物として当該技術分野で従来公知の硬化抑制剤はすべて使用することができる。かかる化合物としては、トリフェニルホスフィン等のリン含有化合物、トリブチルアミンやテトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール等の窒素含有化合物、硫黄含有化合物、アセチレン系化合物、アルケニル基を2個以上含有する化合物、ハイドロパーオキシ化合物、マレイン酸誘導体などが例示される。また、アミノ基を有する、シランおよびシリコーン化合物を使用してもよい。
具体的には、3-メチル-3-ペンテンー1-イン、および3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-インのような各種の「エン-イン」システム;3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、および2-フェニル-3-ブチン-2-オールのようなアセチレン性アルコール;周知のジアルキル、ジアルケニル、およびジアルコキシアルキルフマラートおよびマレアートのようなマレアートおよびフマラート;およびシクロビニルシロキサンを含有するものが例示される。
耐熱付与剤としては、水酸化セリウム、酸化セリウム、酸化鉄、ヒューム二酸化チタン等、および、これらの混合物が例示される。
気密性向上剤としては、硬化物の通気性を低下させる効果を有するものであればいかなるものでもよく、有機物、無機物を問わず、具体的にはウレタン、ポリビニルアルコール、ポリイソブチレン、イソブチレン-イソプレン共重合体や、板状形状を有するタルク、マイカ、ガラスフレーク、ベーマイト、各種金属箔や金属酸化物の粉体、および、これらの混合物が例示される。
上記成分を含む組成物は液体状態で基材に塗布される熱伝導性シリコーン組成物である。すなわち、当該組成物は25℃における初期粘度が50,000mPa・s以上2,000,000mPa・s以下の範囲の液状であり、基材へ塗布された後120分以内に非流動性の反応物を形成する。
粘度が上記範囲にある液状の上記シリコーン組成物は、カートリッジ、リボン、又はディスペンサー、シリンジ及びチューブ等の容器から押し出され、基材に塗布することができる。L 字ノズル/ ニードル等を備えたディスペンサーを用いて基材に塗布することが好ましい。
ここで基材とは放熱部や発熱部をいう。
基材としてはガラス、金属、セラミックス、および樹脂から選択される1種以上であってもよい。
本発明の熱伝導性シリコーン組成物が硬化して接着する金属基材は、アルミニウム、マグネシウム、鉄、ニッケル、チタン、ステンレス、銅、鉛、亜鉛、モリブデン、シリコンから選択される金属基材であることが好ましい。
本発明の熱伝導性シリコーン組成物が硬化して接着するセラミックス基材は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、アルミナジルコニア、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、酸化ベリリウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、などそのほか、酸化物、炭化物、窒化物であることが好ましい。
本発明の熱伝導性シリコーン組成物が硬化して接着する樹脂基材は、ポリエステル、エポキシ、ポリアミド、ポリイミド、エステル、ポリアクリルアミド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、スチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、アクリル、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)およびシリコーンから選択される樹脂基材であることが好ましい。
シリコーン組成物は、放熱部に塗布された後にシリコーン組成物を挟むように発熱部を配置してもよく、発熱部に塗布したのちにシリコーン組成物を挟むように放熱部を配置してもよく、発熱部と放熱部の間の空隙に注入してもよい。
上記熱伝導性シリコーン組成物は、硬化させる前の段階において圧縮応力が300MPa以下であり、かつ、形状保持性が90%以上であることを特徴とする。
圧縮応力が300MPa以下であればディスペンス性、押しつぶし性が良好である。また、形状保持性が90%以上であれば、基材へ吐出後の流れ出し(ポンプアウト)が抑制可能である。
ここで、形状保持性とは基板に熱伝導性シリコーン組成物を円錐状に塗布し、塗布直後の高さ(初期高さ)に対する、30分経過後の高さの変化をいい、数値が100%に近いほど形状保持性が良好である。
上記組成物は(E)付加触媒の存在下で、(A)成分と(B)成分とが架橋反応し、硬化物を与える。該組成物は、熱伝導率が1以上であればよく、2以上であればより好ましい。該組成物の熱伝導率は1以上20以下であってもよく、2以上15以下であってもよい。
また、組成物の比重は1.5以上10以下であればよい。熱伝導性シリコーン組成物が塗布される基材を含む部材(例えば電子機器、バッテリー等である)は軽量化が重視される傾向にあることから、組成物の比重は5.0以下であることが好ましく、2.9以下であることがさらに好ましい。
さらに上記組成物は絶縁性であることが好ましく、具体的には体積抵抗率が10^10(Ω・cm)以上であることが好ましい。
本発明に係る熱伝導性シリコーン組成物は、付加硬化型組成物であり、1液型組成物としてもよいが、2液型組成物としてもよい。1液型の場合には、加熱硬化により硬化させる組成にする、湿気硬化型組成物にする等の工夫により、貯蔵性を向上させることができる。
2液型組成物の場合には、これらの工夫なしに貯蔵安定性をさらに向上させることが可能になり、室温(例えば25℃)で硬化する組成物とすることが容易である。その場合、本発明に係るシリコーン組成物を例えば次のように第1液と第2液とに分配することができる。第1液は(B)成分を含まず、(E)成分を含むことを特徴とし、第2液は(B)成分を含み、(E)成分を含まないことを特徴とする。
第1液:
(A)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合しているアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと、
(C)繊維状無機熱伝導性フィラーと、
(D)球状または不定形である熱伝導性フィラーと、
(E)付加触媒と、を含み、
(B)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合している水素原子を有するジオルガノポリシロキサンを含まない。
第2液:
(A)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合しているアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと、
(B)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合している水素原子を有するジオルガノポリシロキサンと、
(C)繊維状無機熱伝導性フィラーと、
(D)球状または不定形である熱伝導性フィラーと、を含み、
(E)付加触媒を含まない。
上記の組成物を、第1液と第2液とに分配して保存するためには、これらの各成分を、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、あるいはホワイトスピリット、あるいはこれらの混合物などの有機溶剤中に保存したり、あるいはこれらの異なる成分を、乳化剤を用いて乳化して水系エマルジョン状態として保存してもよい。特に、有機溶剤の揮発による火災の危険性、作業環境の悪化および大気汚染などの問題を防ぐために、特に無溶剤系や、乳化剤を用いて乳化したエマルジョンであることが好ましい。
本発明に係る熱伝導性シリコーン組成物の製造方法には、当業者に公知な方法を用いることができ、その方法は限定されないが、(A)、(B)、及び(D)成分を混合した後に(C)成分を添加し、さらに混合する工程を有するものとしてもよい。
例えば、予め成分(A)、(B)および(D)を攪拌機で混合したり、あるいは2本ロール、ニーダーミキサー、加圧ニーダーミキサーや、ロスミキサーなどの高せん断型の混合機や押出し機、連続式の押出し機などで均一に混練してシリコーンゴムベースを調整した後、これに成分(C)を添加配合して製造するという方法が用いられる。
成分(E)およびその他の任意成分は最終的にシリコーン組成物中に配合されていればよく、成分(A)、(B)、および(D)と共に混合されてもよいが、成分(C)と共に混合されてもよく、(C)を混合したあとで混合されてもよい。
成分(D)と、成分(A)、(B)が混合されると、混合物の粘度が高くなる。ここに成分(C)を混合することにより、混合物中における成分(C)の凝集が抑制され、分散性が良好になるという利点がある。
また、成分(C)を混合した後の混錬時間を短くすることができるため、繊維が折れることなく、繊維状の形状を維持させることが可能になり、ディスペンス性、押しつぶし性、形状保持性の特性をより高く維持できる。
さらに、成分(E)と、成分(D)とが共存した状態での混合時間を短くすることにより、触媒の不活性化を抑制し得る。
本発明はまた、成分(A)と成分(B)との混合物に代表される液状オルガノポリシロキサンに、繊維状無機熱伝導性フィラーと、球状または不定形である熱伝導性フィラーとを配合することにより、熱伝導性シリコーン組成物のディスペンス性と形状保持性を向上させる方法である。
ここで、本発明に係る組成物が課題を解決する機構について説明する。
成分(A)および成分(B)に代表されるジオルガノポリシロキサンは、水や一般の合成油などに比べて非常に小さい表面張力を有する。そのため、熱伝導性フィラー表面で広がりやすい性質をもち、熱伝導性フィラーをくまなくウェッティングさせる。この効果により、成分(A)と(B)を含む系内において、熱伝導性フィラーは分散する。しかし、フィラーとジオルガノポリシロキサンとの相溶性は低いため、一度分散したフィラーがジオルガノポリシロキサン中で凝集しやすい傾向にあった。これは熱力学的にフィラー同士の界面エネルギーが、フィラーとジオルガノポリシロキサンとの間の界面エネルギーよりも低いことから説明づけることができる。
ここで、本発明に係る組成物が成分(C)の繊維状フィラーと成分(D)の球状又は不定形フィラーを含み、成分(C)
同士あるいは成分(D)同士よりも、成分(C)と成分(D)との相互作用が有利になることによって、ディスペンス性、押しつぶし性、形状保持性の課題を解決することができるのである。
まず、成分(A)および(B)により表面がウェッティングされた成分(C)および(D)は、(C)と(D)との相互作用により3次元ネットワークを構築し、構造粘性を発現する3次元的ネットワークが形成される。このとき、繊維状フィラーである成分(C)はランダムな方向に配向しており、応力がかからない静止状態においては流動性が低くなり、良好な形状保持性を発揮する。
しかし、上記ネットワーク構造は化学結合によるものではないため、応力がかかると容易に崩壊し、繊維状フィラーである成分(C)は応力がかかる方向に沿って配向し、成分(D)は成分(C)の周辺に分散した状態となる。これにより、応力化では流れ方向の抵抗が低くなるため、ディスペンス性が向上するのである。
押しつぶし性についても同様であり、ランダムな方向でネットワークを構築していた成分(C)が押しつぶしの際の応力の方向に沿って配向することにより、小さい応力でも押しつぶされる良好な押しつぶし性を発現するのである。
この静止状態のネットワーク構造と、応力下における(C)が一定方向に配向した状態との変化、すなわちネットワーク構造の破壊と再構築は可逆的に繰り返すことができる。
特に、成分(C)が塩基性無機繊維であり、成分(D)が両性水酸化物または両性酸化物であると、成分(C)と(D)との相互作用がより強力になり、3次元ネットワーク構造を形成することに起因するディスペンス性、押しつぶし性、形状保持性の特性がさらに顕著となる。具体的には、例えば、(C)成分を塩基性硫酸マグネシウムを主成分とする繊維状無機熱伝導性フィラーとして、(D)を球状または不定形アルミナとすると、極めて良好な特性が得られる。
本発明はまた、上記熱伝導性シリコーン組成物が充填された容器から、熱伝導性シリコーン組成物を吐出し、発熱部または放熱部の少なくとも一方に前記熱伝導性シリコーン組成物を塗布する工程と、15℃以上の温度で前記熱伝導性シリコーン組成物を硬化させる工程と、を含む電子機器の製造方法である。
本発明に係る熱伝導性シリコーン組成物は応力がかかる吐出時には粘度が低下するため吐出性が良好であり、糸切れ性も良好であるため基材(発熱部または放熱部)に容易に塗布可能である。基材へ塗布後された際には応力がかからない状態となり、良好な形状保持性を有する。本発明に係る組成物は例えば15℃以上40℃未満の温度で硬化させる室温硬化性組成物であってもよく、加熱下で硬化させる加熱硬化性組成物であってもよい。加熱硬化性組成物である場合、基材に組成物を塗布したのちに加熱してもよく、放熱部材の放熱を利用して硬化させてもよい。加熱硬化させる場合の温度は、例えば40℃以上200℃以下であってもよい。
本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。実施例および比較例の各成分の配合比を表1に、評価結果を表2に示す。表1中に示す配合比の数値は質量部を示す。
<熱伝導性シリコーン組成物の硬化物の作製方法>
実施例と比較例にそれぞれ示した第1液と第2液を、1:1の割合で計量し、撹拌機で十分に混合し、さらに真空ポンプで脱気を行い、各熱伝導性シリコーン組成物を作製した。これを、各評価項目に応じた試験片となるように、23℃、24時間で硬化させ、各硬化物を作製した。
<硬さの測定方法>
実施例と比較例にそれぞれ示した第1液と第2液を、1:1の割合で計量し、撹拌機で十分に混合し、さらに真空ポンプで脱気を行い、これを、直径30mm×高さ6mmの円柱状のプレス金型に流し込み、100℃60分で硬化させ、円柱状の硬化物を作製した。
アスカーC硬度の測定は、日本ゴム協会規格(SRIS 0101)のアスカーC法に準拠し、硬度計(高分子計器社製、製品名「ASKER CL-150LJ」)を使用して、温度23℃の環境下で行った。
具体的には、得られた円柱状硬化物と指針の距離が15mmとなるようダンパー高さを調整し、また試験体表面に指針が到達する時間を5秒になるようダンパー落下速度を調整した。指針が試験体に衝突したときの最大値をアスカーC硬度の測定値とし、上記硬度計を用いて3回測定し、測定結果の平均値を採用した。一般に、アスカーC硬度が小さいほど柔軟性が高いことを示す。
硬化物のアスカーC硬度は50以上70以下の範囲であることが好ましい。
<比重の測定方法>
実施例と比較例にそれぞれ示した第1液と第2液を、1:1の割合で計量し、撹拌機で十分に混合し、さらに真空ポンプで脱気を行い、これを、縦約10cm×横約10cm×厚み2mmのシート状のプレス金型に流し込み、100℃60分で硬化させ、硬化物を作製した。 JIS K 6249に準拠し、実施例、比較例で得られた硬化物の比重(密度)(g/m3)を測定した。
軽量化が重視される用途の場合、比重は2.9以下であることが好ましい。
<熱伝導率の測定方法>
実施例と比較例にそれぞれ示した第1液と第2液を、1:1の割合で計量し、撹拌機で十分に混合し、さらに真空ポンプで脱気を行い、これを、直径30mm×高さ6mmの円柱状のプレス金型に流し込み、100℃60分で硬化させ、円柱状の硬化物を作製した。硬化物の熱伝導率はISO 22007-2に準拠したホットディスク法により測定する機械[TPS-500、京都電子工業(株)製]を用いて測定した。上記で作成した2個の円柱状の硬化物にセンサーを挟み、上記装置で熱伝導率を測定した。
熱伝導率は2.0以上であることが好ましい。
<混合粘度の測定方法>
実施例と比較例にそれぞれ示した第1液と第2液を、1:1の割合で計量し、撹拌機で十分に混合し、JIS K 7117―2に従い、25℃における粘度を測定した。具体的には直径25mmのパラレルプレート間に上記未硬化の熱伝導組成物を乗せ、せん断速度10(1/s)、ギャップ0.5mmで粘度をAnton Paar社製 Physica MR 301で測定した。
粘度300Pa・s以下であれば押しつぶし性が良好であるといえる。
<形状保持性の評価方法>
実施例と比較例にそれぞれ示した第1液と第2液を、1:1の割合で計量し、撹拌機で十分に混合し、23℃雰囲気下で底面直径約5cm、高さ約5cmの円錐状に塗布し、塗布直後の高さ(初期高さとする)と、30分後の高さを測定する。初期高さ5cmとした場合、例えば30分後の高さが4cmであった場合、形状保持性は80%となる。数値が100%に近いほど形状保持性が良好であると判断する。形状保持性は90%以上であることが好ましい。
<導電性の測定方法>
実施例と比較例にそれぞれ示した第1液と第2液を、1:1の割合で計量し、撹拌機で十分に混合し、さらに真空ポンプで脱気を行い、これを、縦約10cm×横約10cm×厚み1mmのシート状のプレス金型に流し込み、100℃60分で硬化させ、硬化物を作製した。 導電性としてJISK6249に準じて体積抵抗率を測定した。一般的に絶縁性を有するとは例えば体積抵抗率が1×10^9Ω・cmを超える場合をいい、絶縁性を有する硬化物が得られることが電子部品用途には特に好ましい。
<圧縮応力の測定方法>
実施例と比較例にそれぞれ示した第1液と第2液を、1:1の割合で計量し、撹拌機で十分に混合し、23℃雰囲気下で直径約100mmのアルミ円盤の上に約60g吐出する。そのアルミ円盤上の熱伝導組成物を圧縮試験機にて同じく直径約100mmのアルミ円盤を上側圧縮治具に取り付け、圧縮したときの圧縮応力をJIS K6400-2に従い測定する。
具体的には、島津製作所社製 AUTOGRAPH AGS-Jを用いて、降下速度10mm/minで1.0mmまで圧縮し、その時の応力値を読み取る。応力値が小さいほど押しつぶし性が良好であると判断する。
応力値は100MPa以下であることが好ましく80MPa以下であればさらに好ましい。
<糸切れ性の評価方法>
前記熱伝導性組成物が充填され、ディスペンサー(武蔵エンジニアリング製MPP3)からアルミ板上高さ2.5mmから幅10mm長さ20mmにビード塗布を行う。10mm 間隔を空け5か所に吐出を行い、4か所のビード間隔を測定し、その平均値が10mmに近いほど糸引き性は良好であり、0mmに近いほど糸切れ性は悪いと判断される。
評価結果は次の通りA=良い、B=普通、C=悪いの3段階とした。
A:6mm以上
B:2以上6mm未満
C:2mm未満
<熱伝導性シリコーン組成物の硬化物の作製方法>
(実施例1)
実施例と比較例にそれぞれ示した第1液と第2液とを、表に示す組成に従い、それぞれ以下の手順により作成した。表に示す各成分の配合比の単位は質量部である。
[実施例1の第1液]
成分(A)として、アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、成分(E)として、白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体をそれぞれ計量し加え、プラネタリミキサーを用いて室温で30分間混練りした。
成分(A)は側鎖にのみアルケニル基を有し、粘度が100mPa・sである直鎖のジメチルポリシロキサン60%と、末端にのみアルケニル基を有し、粘度が1000mPa・sである直鎖のジメチルオルガノポリシロキサン40%との混合物である。1分子中のケイ素原子に結合したアルケニル基の個数は、前者が平均0.5~10個、後者が平均1~10個である。
その後、任意成分のシランカップリング剤として、n―オクチルエトキシシランの半量、成分(D)として熱伝導性フィラーである平均粒径42.8μmの球状アルミナおよび平均粒径4μmの不定形アルミナ、不定形の熱伝導性フィラーである酸化亜鉛(ハクスイテック株式会社、放熱用酸化亜鉛、粒径20μm以下)の半量を加えプラネタリミキサーを用いて室温で15分間混練りした。
球状アルミナとしてはデンカ社製球状アルミナDAM―45(平均粒径42.8μm)を使用した。
不定形アルミナとしては日本軽金属株式会社製の微粒アルミナ SA34 (平均粒径4μm)を使用した。
その後、n―オクチルエトキシシランの半量、成分(D)として球状である熱伝導性フィラーおよび不定形である熱伝導性フィラーの半量、成分(C)として、繊維状無機フィラーを加えプラネタリミキサーを用いて室温で15分間混練りし、第1液を作製した。
繊維状無機熱伝導性フィラーとしては、モスハイジ(登録商標)(宇部マテリアルズ(株)製塩基性硫酸マグネシウム、針形状、平均繊維長15μm、平均繊維径0.5μm)を使用した。
[実施例1の第2液]
成分(A)として、第1液と同じアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、成分(B)として、水素原子を有するジオルガノポリシロキサン、任意の成分(H)として架橋剤、をそれぞれ計量し加え、プラネタリミキサーを用いて室温で30分間混練りした。
成分(A)は側鎖にのみアルケニル基を有し、粘度が100mPa・sである直鎖のジメチルポリシロキサン60%と、末端にのみアルケニル基を有し、粘度が1000mPa・sである直鎖のジメチルオルガノポリシロキサン40%との混合物である。1分子中のケイ素原子に結合したアルケニル基の個数は、前者が平均0.5~10個、後者が平均1~10個である。
成分(B)は側鎖にのみSi-H基を有し、粘度が100mPa・sである直鎖のジメチルハイドロジェンポリシロキサン80%と、末端にのみSi-H基を有し、粘度が500mPa・sである直鎖のジメチルハイドロジェンポリシロキサン20%との混合物である。1分子中のケイ素原子に結合した水素原子の個数は、前者が平均0.1~5個、後者が平均1~20個である。
架橋剤は、側鎖にのみケイ素原子に結合する水素原子を有する、粘度200mPa・sのジメチルポリシロキサンである。
その後、n―オクチルエトキシシランの半量、成分(D)として熱伝導性フィラーである平均粒径42.8μmの球状アルミナ、平均粒径4μmの不定形アルミナ、その他の不定形の熱伝導性フィラーである酸化亜鉛(ハクスイテック株式会社、放熱用酸化亜鉛、粒径20μm以下)の半量を加えプラネタリミキサーを用いて室温で15分間混練りした。
その後、n―オクチルエトキシシランの半量、成分(D)として球状である熱伝導性フィラーおよび不定形である熱伝導性フィラーの半量、成分(C)として、上記繊維状無機熱伝導性フィラーを加えプラネタリミキサーを用いて室温で15分間混練りし、比較例および実施例の第2液を作製した。
(実施例2)
繊維状無機フィラーと、不定形である熱伝導性フィラーの配合量を変化させた以外は実施例1と同様にして第1液と第2液を作製した。
(実施例3)
不定形である熱伝導性フィラーの配合量を変化させ、球状である熱伝導性フィラーとして平均粒径74.6μmの球状アルミナを使用した以外は実施例2と同様にして第1液と第2液を作製した。
球状アルミナとしてはデンカ社製球状アルミナDAM―70(平均粒径74.6μm)を使用した。
(実施例4)
不定形である熱伝導性フィラーの配合量を変化させ、繊維状無機熱伝導性フィラーとしてグラスファイバーを使用した以外は実施例2と同様にして第1液と第2液を作製した。
グラスファイバーとしては、日東紡製カットファイバーSS―10―420(平均繊維径は10μmであり、平均繊維長は0.3mmである)を使用した。
(実施例5)
不定形である熱伝導性フィラーを配合せず、球状の熱伝導性フィラーを増加させた以外は、実施例2と同様にして第1液と第2液を作製した。
(実施例6)
球状である熱伝導性フィラーを配合せず、不定形の熱伝導性フィラーを増加させた以外は、実施例2と同様にして第1液と第2液を作製した。
(実施例7)
不定形である熱伝導性フィラーとして不定形水酸化アルミニウムを用いた以外は、実施例2と同様にして第1液と第2液を作製した。
不定形水酸化アルミニウムとしては日本軽金属製B703(平均粒径3μm)を使用した。
(比較例1)
繊維状無機熱伝導性フィラーを配合しなかった以外は、実施例2と同様にして第1液と第2液を作製した。
(比較例2)
不定形アルミナの配合量を増加させた以外は、比較例1と同様にして第1液と第2液を作製した。
(比較例3)
不定形アルミナの配合量をさらに増加させた以外は、比較例2と同様にして第1液と第2液を作製した。
(比較例4)
球状である熱伝導性フィラーを、デンカ社製球状アルミナDAM―45(平均粒径42.8μm)からデンカ社製球状アルミナDAM―70(平均粒径74.6μm)に変更した以外は、比較例1と同様にして第1液と第2液を作製した。
(比較例5)
繊維状無機熱伝導性フィラーに代えてカーボンファイバーを配合した以外は、実施例2と同様にして第1液と第2液を作製した。
カーボンファイバーとしては三菱ケミカル社製 ミルドファイバーK223HM (平均繊維径は11μm、平均繊維長は0.2mmである) を使用した。
評価結果は表1に示す通りであった。
実施例1では、糸切れ性が良好で、圧縮応力が80MPa以下と低いことから押しつぶし性が良好であり、粘度が140Pa・sと十分に低いことからディスペンス性も良好であった。形状保持性も95%と非常に良好であった。
実施例2でも糸切れ性、押しつぶし性ディスペンス性が良好であった。形状保持性が実施例1よりもさらに向上したことは、繊維状無機熱伝導性フィラー配合量を増加させたことによる効果と推定される。
実施例3では、実施例2よりも押しつぶし性がさらに良好な値となり、硬さはやや上昇した。球状熱伝導性フィラーの平均粒子径を大きくしたことによる効果と推定される。
実施例4でも糸切れ性、押しつぶし性、形状保持性は良好であった。実施例2よりも粘度がやや高く、熱伝導率はやは低下したが、これは繊維状無機熱伝導性フィラーにグラスファイバーを使用したことによる効果と推定される。
実施例5では、不定形の熱伝導性フィラーを配合しなかったところ、糸切れ性、押しつぶし性は良好であり、実施例2よりも形状保持性がやや低下した。
実施例6では球状の熱伝導性フィラーを配合しなかったところ、粘度がやや上昇してディスペンス性が少し低下したほか、押しつぶし性がやや低下する結果となった。
実施例7では不定形水酸化アルミニウムを使用したが、この場合にも糸切れ性、形状保持性、押しつぶし性、ディスペンス性は良好であった。
比較例1~4は繊維状の熱伝導性フィラーを含まないため、糸切れ性が悪く、形状保持性も悪い(90%未満)結果となった。粘度が低く、ディスペンス性が良好であっても、糸切れ性と形状保持性が悪いため、ギャップフィラーとしての性能は十分であるとは言えない。
比較例2,3では不定形の熱伝導性フィラーを増量させて改善を図ったが、糸切れ性は改善されず、形状保持性は不定形のフィラー増量に伴ってやや改善されたものの、不十分な結果であった上、押しつぶし性は悪化する傾向となった。比較例3では硬さの値も他の実施例、比較例よりも高くなったことから、基材等にダメージを与える可能性がある。よって、さらなる不定形フィラー増量により改善を図ることはできないと判断した。
比較例5は球状の熱伝導性フィラー配合により改善を試みた例であるが、糸切れ性は改善されず、形状保持性は比較例1よりもさらに低下する結果となった。
比較例6は、繊維状熱伝導フィラーであるカーボンファイバーが配合されていることから、糸切れ性と形状保持性は良好であった。しかし体積抵抗率が高く、絶縁性が低いため、絶縁性が求められる熱伝導性フィラー用途には不向きである。
Figure 2023055633000001
Figure 2023055633000002
(実施例8)
成分(A)として、両末端にのみアルケニル基を有し、粘度が150mPa・sである直鎖のジメチルポリシロキサン、成分(B)として、は両末端にのみSi-H基を有し、粘度が150mPa・sである直鎖のジメチルハイドロジェンポリシロキサンを配合し、酸化亜鉛を配合せず、熱伝導性フィラーとして平均粒径42.8μmの球状アルミナを配合し、平均粒径3μmの不定形の水酸化アルミニウムを配合した以外は実施例2と同様にして第1液と第2液を作製した。
成分(A)として、アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、成分(B)として、水素原子を有するジオルガノポリシロキサン、任意の成分(H)として架橋剤、をそれぞれ計量し加え、プラネタリミキサーを用いて室温で30分間混練りした。
架橋剤は、側鎖にのみケイ素原子に結合する水素原子を有する、粘度200mPa・sのジメチルポリシロキサンである。
その後、n―オクチルエトキシシランの半量、成分(D)として熱伝導性フィラーである平均粒径42.8μmの球状アルミナ、不定形の水酸化アルミニウムの半量を加えプラネタリミキサーを用いて室温で15分間混練りした。
その後、n―オクチルエトキシシランの半量、成分(D)として球状である熱伝導性フィラーおよび不定形である熱伝導性フィラーの半量、成分(C)として、上記繊維状無機熱伝導性フィラーを加えプラネタリミキサーを用いて室温で15分間混練りし、比較例および実施例の第2液を作製した。
実施例8~10および比較例6について、結果を表3に示す。
(実施例9)
平均粒径4μm不定形のアルミナを配合した以外は実施例8と同様にして第1液と第2液を作製した。
(実施例10)
球状である熱伝導性フィラーとして平均粒径74.8μmの球状アルミナを使用した以外は実施例8と同様にして第1液と第2液を作製した。
(比較例6)
繊維状無機熱伝導性フィラーを配合しなかった以外は、実施例8と同様にして第1液と第2液を作製した。
実施例8から10の結果は表に示す通りであるが、糸切れ性、形状保持性は良好であり、他の物性も良好であった。
比較例6では繊維状無機熱伝導性フィラーを配合した実施例8と比較し、糸切れ性、形状保持性が劣る結果であった。
Figure 2023055633000003
Figure 2023055633000004

Claims (12)

  1. (A)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合しているアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと、
    (B)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合している水素原子を有するジオルガノポリシロキサンと、
    (C)繊維状無機熱伝導性フィラーと、
    (D)球状または不定形である熱伝導性フィラーと、
    (E)付加触媒と、を含み、
    液体状態で基材に塗布されることを特徴とする熱伝導性シリコーン組成物。
  2. 前記(C)繊維状無機熱伝導性フィラーは塩基性無機繊維であり、
    前記(D)球状または不定形である熱伝導性フィラーは、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1 に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
  3. 前記(C)繊維状無機熱伝導性フィラーは塩基性無機繊維であり、
    前記(D)球状または不定形である熱伝導性フィラーは両性水酸化物または両性酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
  4. 前記(C)繊維状無機熱伝導性フィラーは塩基性硫酸マグネシウムであることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
  5. 前記(C)繊維状無機熱伝導性フィラーは、平均繊維径が0.1μm以上10μm未満であり、かつ平均繊維長が0.5μm以上200μm以下であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
  6. 前記成分(A)および前記成分(B)の合計量100質量部に対し、前記(C)繊維状無機熱伝導性フィラーが1質量部以上50質量部以下含有されることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
  7. 圧縮応力300MPa以下であり、かつ、形状保持性が90%以上である、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
  8. 熱伝導率が1以上の範囲であり、かつ、比重が1.5以上10以下である、請求項1ないし請求項3の1のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
  9. 第1液と第2液とからなる2液付加反応硬化型熱伝導性シリコーン組成物であって、
    前記第1液が
    (A)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合しているアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと、
    (C)繊維状無機熱伝導性フィラーと、
    (D)球状または不定形である熱伝導性フィラーと、
    (E)付加触媒と、を含み、
    (B)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合している水素原子を有するジオルガノポリシロキサンを含まず、
    前記第2液が、
    (A)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合しているアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと、
    (B)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合している水素原子を有するジオルガノポリシロキサンと、
    (C)繊維状無機熱伝導性フィラーと、
    (D)球状または不定形である熱伝導性フィラーと、を含み、
    (E)付加触媒を含まない、
    熱伝導性シリコーン組成物。
  10. (A)、(B)、及び(D)成分を混合した後に(C)成分を添加し、さらに混合する工程を有する請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン組成物の製造方法。
  11. 液状オルガノポリシロキサンに、繊維状無機熱伝導性フィラーと、球状または不定形である熱伝導性フィラーとを配合することにより、熱伝導性シリコーン組成物のディスペンス性と形状保持性を向上させる方法。
  12. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン組成物が充填された容器から、前記熱伝導性シリコーン組成物を吐出し、発熱部または放熱部の少なくとも一方に前記熱伝導性シリコーン組成物を塗布する工程と、
    15℃以上の温度で前記熱伝導性シリコーン組成物を硬化させる工程と、を含む電子機器の製造方法。


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