JP2023053860A - ロイシン酸の製造方法、ロイシン酸含有組成物の製造方法、炎症抑制用組成物、及びロイシン酸産生細菌のスクリーニング方法 - Google Patents

ロイシン酸の製造方法、ロイシン酸含有組成物の製造方法、炎症抑制用組成物、及びロイシン酸産生細菌のスクリーニング方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ロイシン酸の製造方法、ロイシン酸含有組成物の製造方法、炎症抑制用組成物、及びロイシン酸産生細菌のスクリーニング方法のうち1つ以上の提供。【解決手段】(A)ロイシン酸産生細菌を培地中で培養する工程と、(B)前記培地からロイシン酸及び菌体の少なくとも一方を回収する工程とを含む、ロイシン酸の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、ロイシン酸の製造方法、ロイシン酸含有組成物の製造方法、炎症抑制用組成物、及びロイシン酸産生細菌のスクリーニング方法に関する。
ヒドロキシカルボン酸受容体(Hydroxycarboxylic acid receptor;HCA)は、エネルギーや免疫のホメオスタシス維持に重要な役割を果たしている(非特許文献1)。HCAにはHCA1、HCA2及びHCA3の3種類が知られており、ほとんどの哺乳類はHCA1及びHCA2を持っているが、ヒトをはじめとするヒト科動物のみがHCA3を持っている。HCA3は、GPR109bとしても知られており、脂肪細胞、マクロファージ、好中球、大腸上皮細胞などに発現している。乳酸菌やビフィドバクテリウム属細菌が産生する4-ヒドロキシフェニル乳酸(4-Hydroxyphenyllactic Acid;HPLA)、フェニル乳酸(Phenyllactic acid;PLA)、インドール-3-乳酸(Indole-3-lactic acid;ILA)などの芳香族乳酸化合物(以下、「アリール乳酸」、「ALA」とも記載する。)は、HCA3のリガンドとして報告されている(非特許文献2、非特許文献3)。
ビフィドバクテリウム属細菌は、健康な乳幼児の腸内に最も多く存在する細菌の一属である(非特許文献4)。ヒトから分離されたビフィドバクテリウム属細菌は、ヒト常在性ビフィドバクテリウム(HRB)に分類され、他の動物やヨーグルトから分離されたビフィドバクテリウム株は非HRBに分類されている。ビフィドバクテリウム属細菌はさまざまな宿主に適応しているが、ヒトとビフィドバクテリウム属細菌との共進化については十分に理解されていない。
Ahmed, K. Biological roles and therapeutic potential of hydroxy-carboxylic Acid receptors. Front Endocrinol (Lausanne) 2011, 2, 51, doi:10.3389/fendo.2011.00051. Peters, A.; Krumbholz, P.; Jaeger, E.; Heintz-Buschart, A.; Cakir, M.V.; Rothemund, S.; Gaudl, A.; Ceglarek, U.; Schoeneberg, T.; Staeubert, C. Metabolites of lactic acid bacteria present in fermented foods are highly potent agonists of human hydroxycarboxylic acid receptor 3. PLoS Genet 2019, 15, e1008145, doi:10.1371/journal.pgen.1008145. Laursen, M.F.; Sakanaka, M.; von Burg, N.; Moerbe, U.; Andersen, D.; Moll, J.M.; Pekmez, C.T.; Rivollier, A.; Michaelsen, K.F.; Molgaard, C., et al. Breastmilk-promoted bifidobacteria produce aromatic lactic acids in the infant gut. bioRxiv 2020, 10.1101/2020.01.22.914994, 2020.2001.2022.914994, doi:10.1101/2020.01.22.914994. Arboleya, S.; Watkins, C.; Stanton, C.; Ross, R.P. Gut Bifidobacteria Populations in Human Health and Aging. Front Microbiol 2016, 7, 1204, doi:10.3389/fmicb.2016.01204.
乳酸菌やビフィドバクテリウム属細菌が産生するHPLA、PLA、ILA等の芳香族乳酸化合物がHCA3リガンド活性を有することは知られていたが、宿主であるヒトと常在菌であるビフィドバクテリウム属細菌との関係を調べるために、ビフィドバクテリウム属細菌の産生物をさらに探索し、HCA3リガンド活性を評価する必要があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ロイシン酸の製造方法、ロイシン酸含有組成物の製造方法、炎症抑制用組成物、及びロイシン酸産生細菌のスクリーニング方法のうち1つ以上の提供を課題とする。
上記課題を解決するために発明者が鋭意検討を行ったところ、ビフィドバクテリウム属細菌がロイシン酸(Leucic acid;LeuA、以下「LeuA」とも記載する。)を産生すること、及び該ロイシン酸はHCA3リガンド活性を有することを新たに見出した。さらに本発明者はビフィドバクテリウム属細菌が産生するアリール乳酸やロイシン酸はD体とL体の混合物(ラセミ体)であり、D体のものがHCA3リガンド活性に優れることも新たに見出した。
すなわち、本発明は以下の[1]~[15]のとおりである。
[1] (A)ロイシン酸産生細菌を培地中で培養する工程と、
(B)前記培地からロイシン酸及び菌体の少なくとも一方を回収する工程と、
を含む、ロイシン酸の製造方法。
[2] 前記ロイシン酸産生細菌がビフィドバクテリウム属細菌である、[1]に記載のロイシン酸の製造方法。
[3] 前記ビフィドバクテリウム属細菌が、Bifidobacterium longum subsp. longum、Bifidobacterium longum subsp. infantis、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium adolescentis、Bifidobacterium angulatum、Bifidobacterium dentium、Bifidobacterium pseudocatenulatum、Bifidobacterium pseudolongum subsp. globosum、Bifidobacterium pseudolongum subsp. pseudolongum 及び Bifidobacterium thermophilum からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]又は[2]に記載のロイシン酸の製造方法。
[4] 前記ビフィドバクテリウム属細菌が、Bifidobacterium longum subsp. longum NITE BP-02621、Bifidobacterium longum subspecies infantis NITE BP-02623、Bifidobacterium breve FERM BP-11175、Bifidobacterium breve FERM BP-02622、及び Bifidobacterium bifidum NITE BP-02431 からなる群から選択される少なくとも1種である、[2]又は[3]に記載のロイシン酸の製造方法。
[5] 前記ロイシン酸がD-ロイシン酸を含む、[1]~[4]のいずれかに記載のロイシン酸の製造方法。
[6] (A)ロイシン酸産生細菌を培地中で培養する工程と、
(B)前記培地からロイシン酸及び菌体の少なくとも一方を回収する工程と、
(C)前記ロイシン酸及び菌体の少なくとも一方を噴霧乾燥又は凍結乾燥により乾燥させることによりロイシン酸含有組成物を得る工程と
を含む、ロイシン酸含有組成物の製造方法。
[7] (A)ロイシン酸産生細菌を培地中で培養する工程と、
(B’)前記ロイシン酸産生細菌の培養上清を回収する工程と、
(C’)前記培養上清を噴霧乾燥又は凍結乾燥により乾燥させることによりロイシン酸含有組成物を得る工程と
を含む、ロイシン酸含有組成物の製造方法。
[8] 前記ロシイン酸含有組成物が食品又は飲料組成物である、[6]又は[7]に記載のロイシン酸含有組成物の製造方法。
[9] 前記ロイシン酸含有組成物が医薬組成物である、[6]又は[7]に記載のロイシン酸含有組成物の製造方法。
[10] ロイシン酸及びロイシン酸産生細菌の少なくとも一方を含む炎症抑制用組成物。
[11] 前記ロイシン酸産生細菌がビフィドバクテリウム属細菌である、[10]に記載の炎症抑制用組成物。
[12] 前記ビフィドバクテリウム属細菌が、Bifidobacterium longum subsp. longum、Bifidobacterium longum subsp. infantis、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium adolescentis、Bifidobacterium angulatum、Bifidobacterium dentium、Bifidobacterium pseudocatenulatum、Bifidobacterium pseudolongum subsp. globosum、Bifidobacterium pseudolongum subsp. pseudolongum 及び Bifidobacterium thermophilum からなる群から選択される少なくとも1種である、[11]に記載の炎症抑制用組成物。
[13] 前記ビフィドバクテリウム属細菌が、Bifidobacterium longum subsp. longum NITE BP-02621、Bifidobacterium longum subspecies infantis NITE BP-02623、Bifidobacterium breve FERM BP-11175、Bifidobacterium breve FERM BP-02622、及び Bifidobacterium bifidum NITE BP-02431 からなる群から選択される少なくとも1種である、[11]又は[12]に記載の炎症抑制用組成物。
[14] 前記ロイシン酸がD-ロイシン酸を含む、[10]~[13]に記載の炎症抑制用組成物。
[15] ロイシン酸産生細菌を培地中で培養する工程、
前記ロイシン酸産生細菌の培養上清中のD-ロイシン酸及びL-ロイシン酸を定量する工程、
前記培養上清中のロイシン酸の75モル%以上がD-ロイシン酸であるロイシン酸産生細菌を選抜する工程、を含む、ロイシン酸産生細菌のスクリーニング方法。
本発明によれば、ロイシン酸の製造方法、ロイシン酸含有組成物の製造方法、炎症抑制用組成物、及びロイシン酸産生細菌のスクリーニング方法のうち1つ以上が提供される。
ビフィドバクテリウム属細菌の培養上清の分画。 ALA及びLeuAのキラルクロマトグラフィー。 ALA及びそのエナンチオマーのHCA3リガンド活性。 LeuAのHCA3リガンド活性。 Fr.7とLeuA及びDL-2HHAとのLC-MS/MS比較。 培養上清(CS)に含まれるALAの部分精製。
本発明の様々な実施形態及び態様について、後述する詳細を参照して説明し、添付の図面で様々な実施形態を説明する。 以下の説明及び図面は、本発明を例示するものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。 本発明の様々な実施形態を完全に理解するために、多数の具体的な詳細が記載されている。しかし、特定の例では、本発明の実施形態の簡潔な議論を提供するために、よく知られた又は従来の詳細は記載されていない。
本明細書における「一実施形態」、「ある実施形態」、又は「別の実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくともひとつの実施形態に含まれ得ることを意味する。 本明細書の様々な場所に登場する「一実施形態において」という表現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではない。
[ロイシン酸の製造方法]
本発明の一実施形態は、ロイシン酸の製造方法である。
本実施形態のロイシン酸の製造方法は、(A)ロイシン酸産生細菌を培地中で培養する工程(培養工程)と、(B)前記培地からロイシン酸及び菌体の少なくとも一方を回収する工程(回収工程)と、を含む。
本明細書において「ロイシン酸」とは、2-ヒドロキシ-4-メチル吉草酸(2-Hydroxy-4-methylvaleric Acid)を意味し、D体とL体の混合物(ラセミ体)を意味する。さらに「ロイシン酸」とはD-ロイシン酸であることが好ましい。本明細書において「ロイシン酸」は「LeuA」、「Leucic acid」と記載される場合がある。
<培養工程>
前記ロイシン酸産生細菌としては、ロイシン酸を産生する微生物であれば特に限定されないが、ビフィドバクテリウム属細菌が好ましい。
前記ビフィドバクテリウム属細菌として、Bifidobacterium longum subsp. longum、Bifidobacterium longum subsp. infantis、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium adolescentis、Bifidobacterium angulatum、Bifidobacterium dentium、Bifidobacterium pseudocatenulatum、Bifidobacterium pseudolongum subsp. globosum、Bifidobacterium pseudolongum subsp. pseudolongum 及び Bifidobacterium thermophilum からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。より好ましくは、前記ビフィドバクテリウム属細菌はBifidobacterium longum subsp. longum、Bifidobacterium longum subspecies infantis 、Bifidobacterium breve 、Bifidobacterium bifidum からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。さらに好ましくは、前記ビフィドバクテリウム属細菌はBifidobacterium longum subsp. longum NITE BP-02621、Bifidobacterium longum subspecies infantis NITE BP-02623、Bifidobacterium breve FERM BP-11175、Bifidobacterium breve FERM BP-02622、及び Bifidobacterium bifidum NITE BP-02431 からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
なお、Bifidobacterium longum subsp. longum NITE BP-02621はBifidobacterium longum subsp.longum ATCC BAA-999と同一菌株であり、「BB536」として森永乳業株式会社より購入可能である。
本明細書に開示された受託番号が付与された菌株については、それぞれ後記の寄託機関から入手可能である。
「NPMD」とは独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターの略称であり、所在地は〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室である。本明細書において、「NITE」で始まる受託番号が付された菌株については、NPMDに寄託されたものである。
「IPOD」とは独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターの略称である。2012年度に独立行政法人産業技術総合研究所から独立行政法人製品評価技術基盤機構へ国際寄託の地位が継承され、特許微生物寄託業務についてNPMDに一元化されている。本明細書において「FERM」で始まる受託番号が付与された菌株については、IPODに寄託され、その後NPMDにその管理が移管されたものである。
「ATCC」とはAmerican Type Culture Collectionの略称であり、所在地は米国、20110、ヴァージニア州、マナサス、ユニバーシティ ブルバード10801(10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110,United States of America)である。本明細書において「ATCC」で始まる受託番号が付与された菌株については、ATCCに寄託されたものである。
「JCM」とは国立研究開発法人理化学研究所バイオリソース研究センター微生物材料開発室のJapan Collection of Microorganismsの略称である。所在地は〒305-0074 茨城県つくば市高野台3-1-1である。本明細書において「JCM」で始まる受託番号が付与された菌株については、JCMに寄託されたものである。
「DSMZ」とはDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHの略称である。所在地はInhoffenstr. 7B 38124 Braunschweig Germanyである。本明細書において「DSM」で始まる受託番号が付与された菌株については、DSMZに寄託されたものである。
なお、前記例示した細菌名で特定される細菌には、当該細菌名で所定の機関に寄託や登録がなされている株そのもの(以下、説明の便宜上、「寄託株」ともいう)に限られず、それと実質的に同等な株(「派生株」または「誘導株」ともいう)も包含される。すなわち、前記受託番号で前記寄託機関に寄託されている株そのものに限られず、それと実質的に同等な株も包含される。各細菌について、「前記寄託株と実質的に同等の株」とは、前記寄託株と同一の種に属し、さらにその16SrRNA遺伝子の塩基配列が、前記寄託株の16SrRNA遺伝子の塩基配列に対して、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上、よりさらに好ましくは100%の同一性を有し、かつ、好ましくは前記寄託株と同一の菌学的性質を有する株をいう。各細菌について、前記寄託株と実質的に同等の株は、例えば、当該寄託株を親株とする派生株であってよい。派生株としては、寄託株から育種された株や寄託株から自然に生じた株が挙げられる。育種方法としては、遺伝子工学的手法による改変や、突然変異処理による改変が挙げられる。突然変異処理としては、X線の照射、紫外線の照射、ならびにN-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン、エチルメタンスルフォネート、およびメチルメタンスルフォネート等の変異剤による処理が挙げられる。寄託株から自然に生じた株としては、寄託株の使用の際に自然に生じた株が挙げられる。そのような株としては、寄託株の培養(例えば継代培養)により自然に生じた変異株が挙げられる。派生株は、一種の改変により構築されてもよく、二種またはそれ以上の改変により構築されてもよい。
ロイシン酸産生細菌を培養する方法は、特に限定されず、適切な条件下で培養を行うことができる。具体的には、例えば、培養温度は、通常25~50℃であり、35~42℃であることが好ましい。また、培養は嫌気条件下で行うことが好ましく、例えば、炭酸ガス等の嫌気ガスを通気しながら培養することができる。また、液体静置培養等の微好気条件下で培養してもよい。培養は、例えば、ロイシン酸が所望の濃度得られるまで実施することができる。例えば、培養時間は12~72時間であってよい。
ロイシン酸産生細菌としてビフィドバクテリウム属細菌を用いる場合の培地としては、特に限定されず、ビフィドバクテリウム属に属する細菌の培養に、通常用いられる培地をそのまま、あるいは適宜修正して用いることができる。
すなわち、炭素源としては、例えば、グルコース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、アラビノース、マンノース、セロビオース、マルトース、スクロース、トレハロース、デンプン、デンプン加水分解物、廃糖蜜等の糖類を資化性に応じて使用できる。窒素源としては、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのアンモニウム塩類や硝酸塩類を使用できる。また、無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マンガン、硫酸第一鉄等を用いることができる。また、ペプトン、大豆粉、脱脂大豆粕、肉エキス、酵母エキス等の有機成分を用いてもよい。
また、ビフィドバクテリウム属細菌の培養に通常用いられる培地として、具体的には、強化クロストリジア培地(Reinforced Clostridial medium)、MRS培地(de Man,Rogosa,and Sharpe medium)、mMRS培地(modified MRS medium)、TOSP培地(TOS propionate medium)、TOSP Mup培地(TOS propionate mupirocin medium)等が挙げられる。
<回収工程>
本発明は、培養工程の次に、(B)前記培地からロイシン酸及び菌体の少なくとも一方を回収する工程(回収工程)を含む。
培地からロイシン酸及び菌体の少なくとも一方を回収する方法は、ロイシン酸を含有する限りにおいて特に限定されないが、ろ過、遠心分離等が挙げられる。回収工程において回収されるものはロイシン酸を含有する限りにおいて特に限定されないが、ロイシン酸、菌体そのもの、培養上清、培地のいずれであってもよく、これらの混合物であってもよい。後述の実施例のとおり、ロイシン酸は本発明者が見出した、ビフィドバクテリウム属細菌が産生するHCA3リガンドであり、HCA3活性化による効果を発揮するための有効成分となる。
ロイシン酸の同定、定量方法は、公知の分析手法を用いて適宜行うことができる。例えば後記の実施例のように、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS;TSQ-FORTISと接続されたヴァンキッシュHPLC、サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製)により行うことが可能である。
本実施形態のロイシン酸の製造方法において、回収工程の後に、回収されたロイシン酸及び菌体の少なくとも一方を処理する工程を含んでいてもよい。ロイシン酸を処理する工程としては、HCA3リガンド活性が失われない限り特に限定されないが、希釈、濃縮、精製、加熱、凍結乾燥、噴霧乾燥、破砕、分画等が挙げられる。
本実施形態のロイシン酸の製造方法において、回収されたロイシン酸及び菌体の少なくとも一方を殺菌処理する工程を含んでいても良い。ロイシン酸を殺菌処理する工程は、HCA3リガンド活性が損なわれない限り特に限定されないが、加熱処理、破砕処理等が挙げられる。
[ロイシン酸含有組成物の製造方法]
本発明の別の実施形態は、ロイシン酸含有組成物の製造方法である。
本実施形態のロイシン酸含有組成物の製造方法は、(A)ロイシン酸産生細菌を培地中で培養する工程(培養工程)と、(B)前記培地からロイシン酸及び菌体の少なくとも一方を回収する工程(回収工程)と、(C)前記ロイシン酸及び菌体の少なくとも一方を噴霧乾燥又は凍結乾燥により乾燥させることによりロイシン酸含有組成物を得る工程(乾燥工程)とを含む。
培養工程及び回収工程は、上述したロイシン酸の製造方法と同様である。
乾燥工程では、回収工程で回収した前記ロイシン酸及び菌体の少なくとも一方を噴霧乾燥又は凍結乾燥により乾燥させる。噴霧乾燥、凍結乾燥の方法は特に限定されず、従来公知の方法で行うことができる。
本実施形態のロイシン酸含有組成物の製造方法の別の態様は、(A)ロイシン酸産生細菌を培地中で培養する工程(培養工程)と、(B’)前記ロイシン酸産生細菌の培養上清を回収する工程(上清回収工程)と、(C’)前記培養上清を噴霧乾燥又は凍結乾燥により乾燥させることによりロイシン酸含有組成物を得る工程(上清乾燥工程)とを含む。
培養工程は、上述したロイシン酸の製造方法と同様である。
上清回収工程で培養液から上清を回収する方法は、特に限定されず、例えば、遠心分離、ろ過等を採用することができる。
ロイシン酸産生細菌は、通常、産生したロイシン酸を培養液中に分泌するため、上清からもロイシン酸を回収できる。
上清乾燥工程では、回収した培養上清を噴霧乾燥又は凍結乾燥によって乾燥する。噴霧乾燥、凍結乾燥の方法は特に限定されず、従来公知の方法で行うことができる。
本実施形態のロイシン酸含有組成物の製造方法において、乾燥工程又は上清乾燥工程の後に、回収されたロイシン酸及び菌体の少なくとも一方を処理する工程を含んでいてもよい。ロイシン酸及び菌体の少なくとも一方を処理する工程としては、HCA3リガンド活性が失われない限り特に限定されないが、希釈、濃縮、精製、加熱、凍結乾燥、噴霧乾燥、破砕、分画等が挙げられる。
本実施形態のロイシン酸含有組成物の製造方法において、乾燥工程又は上清乾燥工程の後に、ロイシン酸及び菌体の少なくとも一方を食品原料に添加する工程を含んでいてもよい。
本実施形態のロイシン酸含有組成物の製造方法において、さらに殺菌処理する工程を含んでいても良い。殺菌処理する工程は、HCA3リガンド活性が損なわれない限り特に限定されないが、加熱処理、破処理等が挙げられる。
[炎症抑制用組成物]
本発明のまた別の実施形態は、ロイシン酸及びロイシン酸産生細菌の少なくとも一方を含む炎症抑制用組成物である。ロイシン酸及びロイシン酸産生細菌は上記ロイシン酸の製造方法と同じである。
本発明者は、ロイシン酸がHCA3リガンド活性を有することを新たに見出だした。HCA3は肥満に伴う炎症を抑制しうる(日本内科学会雑誌第100巻第4 号 平成23年4 月10日)。よって、ロイシン酸及びロイシン酸産生細菌の投与により、炎症抑制効果が得られてよい。すなわち、ロイシン酸及びロイシン酸産生細菌の投与により、炎症や炎症性疾患を予防、改善、及び/又は治療する効果を得ることができる。炎症や炎症性疾患としては脳炎、骨髄炎、髄膜炎、神経炎、皮膚炎、筋炎、肝炎、膵炎、血管の炎症(動脈炎、静脈炎、毛細血管炎等)、心臓の炎症(心内膜炎、心筋炎、心膜炎等)、眼の炎症(涙腺炎、角膜炎、網膜炎、結膜炎等)、耳の炎症(外耳炎、中耳炎、内耳炎等)、呼吸器の炎症(副鼻腔炎、鼻炎、咽頭炎、喉頭炎、気管支炎、肺炎等)、口腔の炎症(口内炎、舌炎、扁桃炎等)、消化器の炎症(食道炎、胃炎、腸炎、虫垂炎等)、泌尿器の炎症(腎炎、膀胱炎、前立腺炎等)が挙げられる。
本明細書において「対象に投与すること」は「対象に摂取させること」と同義であってよい。摂取は自由摂取、強制摂取のいずれであってもよい。
ここで、炎症や炎症性疾患の「予防」とは、症状又は疾患の発生を防止すること、該発生を遅延させること、該発生のリスクを低下させることを含む。
炎症や炎症性疾患の「改善」とは、疾患が治癒すること、症状が緩和すること、疾患又は症状の程度が低減すること、疾患又は症状の進行が遅延することを含む。
投与対象は、動物であれば特に限定されないが、通常はヒトである。また、成人、小児、乳児、新生児(低体重児含む)等のいずれであってもよい。また、性別は特に限定されない。
本発明の炎症抑制用組成物の投与量は、摂取対象の年齢、性別、状態、その他の条件等により適宜選択される。1日の投与量を1日1回から3回に分けて経口投与してもよい。本発明の炎症抑制用組成物の投与量は、ロイシン酸及び菌体の固形分量に換算して、例えば、成人において100μg/日~10g/日の範囲が好ましく、1mg/日~1g/日の範囲がより好ましく、10mg/日~500mg/日の範囲がよりさらに好ましい。また、ロイシン酸に換算して、例えば、1ng/日~100μg/日の範囲が好ましく、1ng/日~1μg/日の範囲がより好ましく、10ng/日~500ng/日の範囲を投与することがよりさらに好ましい。
本発明の炎症抑制用組成物の投与量は、例えば、ロイシン酸産生細菌であるビフィドバクテリウム属細菌の生菌数に換算して、炎症抑制用組成物1gあたりに換算して、1.0×10CFU/g/日以上が好ましく、1.0×10CFU/g/日以上がより好ましく、1.0×10CFU/g/日以上がよりさらに好ましい。「CFU」とはcolony forming unit(コロニー形成単位)を表す。菌体が死菌体である場合、cfuは個細胞(cells)と置き換えることができる。また、菌体の含有量は、例えば培養物の固形物量に換算して、組成物1g当たり0.1mg以上とすることが好ましく、より好ましくは1mg以上、さらに好ましくは10mg以上を含有するとしてよい。
本発明の炎症抑制用組成物の投与期間は特に限定されない。投与期間の上限は特に設けられず、継続的な長期の投与が可能である。
本発明の炎症抑制用組成物の投与経路は経口、非経口のいずれであってもよいが、経口が好ましい。非経口投与としては経皮、静注、直腸投与、吸入等が挙げられる。
(食品、飲料)
上記ロイシン酸含有組成物、及び炎症抑制用組成物は、食品又は飲料として利用できる。
飲食品、食品としては、液状、ペースト状、固体、粉末等の形態を問わず、錠菓、流動食、飼料(ペット用を含む)等のほか、例えば、小麦粉製品、即席食品、農産加工品、水産加工品、畜産加工品、乳・乳製品、油脂類、基礎調味料、複合調味料・食品類、冷凍食品、菓子類、飲料、これら以外の市販食品等が挙げられる。
乳製品としては、例えば、発酵乳、乳飲料、乳酸菌飲料、加糖れん乳、脱脂粉乳、加糖粉乳、調整粉乳、クリーム、チーズ、バター、アイスクリーム類等が挙げられる。
小麦粉製品としては、例えば、パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等が挙げられる。
即席食品類としては、例えば、即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等が挙げられる。
農産加工品としては、例えば、農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等が挙げられる。
水産加工品としては、例えば、水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等が挙げられる。
畜産加工品としては、例えば、畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等が挙げられる。
油脂類としては、例えば、バター、マーガリン類、植物油等が挙げられる。
基礎調味料としては、例えば、しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等が挙げられ、前記複合調味料・食品類として、調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等が挙げられる。
冷凍食品としては、例えば、素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等が挙げられる。
菓子類としては、例えば、キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、その他の菓子等が挙げられる。
飲料類としては、例えば、炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等が挙げられる。
前記以外の市販食品としては、例えば、ベビーフード、ふりかけ、お茶漬けのり等が挙げられる。
また、飲食品、食品としては、これらの中でも特に、乳製品とすることが好ましく、発酵乳とすることが特に好ましい。これにより、ロイシン酸の生理的効果に加え、乳製品の有する高い栄養化をも享受できる。
本発明のロイシン酸含有組成物又は炎症抑制用組成物が飲食品(飼料を含む)の態様である場合、炎症抑制に関する用途が表示された飲食品として提供・販売されることが可能である。
かかる「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本発明における「表示」行為に該当する。
また、「表示」は、需要者が前記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に前記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に前記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、医薬部外品等としての表示も挙げられる。この中でも特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、若しくは機能性表示食品に係る制度、又はこれらに類似する制度にて認可される表示等が挙げられる。具体的には、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク減少表示、科学的根拠に基づいた機能性の表示等を挙げることができ、より具体的には、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成二十一年八月三十一日内閣府令第五十七号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)及びこれに類する表示が典型的な例である。
かかる表示としては、例えば、「ビフィズス菌が産生するロイシン酸が炎症を抑えます」、「皮膚があれている方に」、「お腹の炎症に効果があります」等が挙げられる。
(医薬)
上記ロイシン酸含有組成物及び炎症抑制用組成物は、医薬として利用できる。
本発明の医薬は、経口投与に適した適宜所望の剤形に製剤化することができる。その剤形は特に限定されないが、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、トローチ剤、カプセル剤等の固形製剤;溶液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等に製剤化することができる。なお、製剤化は剤形に応じて、適宜、公知の方法により実施できる。
本発明の医薬の製剤化に際しては、適宜製剤担体を配合する等して製剤化してもよい。また、通常製剤化に用いられている賦形剤、pH調整剤、着色剤、矯味剤等の成分を用いることができる。さらに、公知の又は将来的に見出される疾患や症状の予防、治療及び/又は改善の効果を有する成分を、適宜目的に応じて併用することも可能である。
前記製剤担体としては、剤形に応じて、各種有機又は無機の担体を用いることができる。固形製剤の場合の担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
前記賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α-デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体等が挙げられる。
前記結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴール等が挙げられる。
前記崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導体等が挙げられる。
前記滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ビーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸塩類;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体等が挙げられる。
前記安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられる。
前記矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料等が挙げられる。
なお、経口投与用の液剤の場合に使用する担体としては、水等の溶剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
本開示の医薬において、投与量や投与方法等の詳細については、炎症抑制用組成物の記載に準ずる。
[ロイシン酸産生細菌のスクリーニング方法]
本発明のさらに別の実施形態は、ロイシン酸産生細菌を培地中で培養する工程、前記ロイシン酸産生細菌の培養上清中のD-ロイシン酸及びL-ロイシン酸を定量する工程、前記培養上清中のロイシン酸の75モル%以上がD-ロイシン酸であるロイシン酸産生細菌を選抜する工程、を含む、ロイシン酸産生細菌のスクリーニング方法である。
ロイシン酸産生細菌は、通常、D-ロイシン酸及びL-ロイシン酸を含むラセミ体を産生する。D-ロイシン酸の方がHCA3リガンドとしての活性が高いので、D-ロイシン酸の産生能がより高い細菌をスクリーニングすることにより、より高効率のD-ロイシン酸製造をすることができる。
ロイシン酸産生細菌を培養する工程は、上記ロイシン酸の製造方法に記載のとおりである。
ロイシン酸産生細菌の培養上清中のD-ロイシン酸及びL-ロイシン酸を定量する工程では、ロイシン酸の培養上清の回収については、上述のとおりである。
ロイシン酸産生細菌の培養上清中のD-ロイシン酸及びL-ロイシン酸を定量する方法は、特に限定されないが、例えば、キラルクロマトグラフィーによってエナンチオマーを分離し、それぞれを定量することができる。キラルクロマトグラフィーは、固定相がキラル化合物であるカラムクロマトグラフィーであり、キラルクロマトグラフィーの固定相に光学異性体を含有する化合物を通すと、キラリティーによって親和性が異なるため、分離が図れる。具体的には、後述する実施例に記載したように、ロイシン酸産生細菌の培養上清を分取逆相クロマトグラフィーを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に適用し、ロイシン酸画分をさらにキラルカラムを用いたLC-MS/MSシステムで分析してD-ロイシン酸及びL-ロイシン酸を定量することが好ましい。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
本実施例において、ビフィドバクテリウム属細菌の培養上清中のHCA3リガンド及びそのHCA3リガンド活性を確認した。
[試料及び方法]
<試薬>
試薬は下記のものを用いた。特に断りのない限り、使用した化学試薬はすべて分析グレードのものである。
DL-4-ヒドロキシフェニル乳酸(DL-HPLA):東京化成工業社製
L-(-)-3-フェニル乳酸(L-PLA):東京化成工業社製
D-(+)-3-フェニル乳酸(D-PLA):東京化成工業社製
フェニルピルビン酸:東京化成工業社製
L-ロイシン酸 (CAS登録番号:13748-90-8:(S)-2-ヒドロキシ-4-メチルペンタン酸):東京化成工業社製
D-ロイシン酸(CAS登録番号:20312-37-2:(R)-2-ヒドロキシ-4-メチルペンタン酸):ChemSpace.com Database社製
DL-2-ヒドロキシカプロン酸(2HHA):Merck KGaA社製
DL-インドール-3-乳酸(ILA):Merck KGaA社製
1st-ILA及び2nd-ILA(ILAの光学異性体):ダイセル社製
3-メチル-2-オキシインドール:Merck KGaA社製
インドール-3-ピルビン酸:Merck KGaA社製
1-キヌレニン:Merck KGaA社製
p-ヒドロキシフェニルピルビン酸:Merck KGaA社製
アセトニトリル(HPLCグレード):関東化学社製
酢酸アンモニウム:Merck KGaA社製
<菌株>
下記表3に記載のビフィドバクテリウム属細菌を用いた。
<培養方法>
MRSブロス(BDバイオサイエンス社製)に0.05%のL-システイン(関東化学社製)を添加したもの(MRS-C)を用い、上記2つの菌株をそれぞれアネロパック(三菱ガス化学社製)を用いて嫌気的条件で37℃で16時間培養した。その後、増殖期の細菌細胞を採取し、37℃で24時間、嫌気条件下で培養した。
培養液から培養上清(Culture supernatants;以下「CS」とも記載する。)を採取した。すなわち培養液を遠心分離した後、フィルター(孔径0.22μm;ミリポア社製)でろ過し、使用するまで-80℃で保存することでCSを得た。すべてのCSは個別に3回調製し、分析用に処理した。
<代謝物の定量>
CS及び分取したサンプル中の代謝物の濃度を、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法(LC-MS/MS;TSQ-FORTISと接続されたヴァンキッシュHPLC,サーモフィッシャー・サイエンティフィク社製)を用いて分析した。クロマトグラフィー分離は、XBridge C18カラム(4.6×150mm,3.5μm;ウォーターズコーポレーション社製)を用いて行った。移動相A(水に1g/L酢酸アンモニウムを含む)及び移動相B(メタノールに1g/Lギ酸アンモニウム及び0.1%ギ酸を含む)を0.2mL/分の流速で適用した。B相の2%から40%の間でグラジエント溶出を行った。代謝物のピーク面積を、対応する合成化合物標準及び内部標準(3-メチル-2-オキシインンドール)のピーク面積と比較することで、定量を行った。プリカーサーイオンのLC-MS/MSスペクトル(プロダクトイオンデータ)を評価し、各代謝物の最終的な含有量を決定した。表1に代謝物及び内部標準物質の一覧を示す。
Figure 2023053860000001
<キラルHPLCによるALAの光学異性体の分析>
各ALAの分析に使用したキラルカラム(ダイセル社製)及び条件を表2に示す。キラルカラム分析の前に、CSを以下のように調製した:
i)CS 1mLをメタノール(富士フイルム和光純薬社製)9mLと混合した。
ii)遠心分離(10,000×g,5分)により凝集体を除去した(TOMY MX-307,トミー精工社製)。
iii)上清を蒸発させ(miVac Quattro LV;ジェネバック社製)、乾燥したサンプルを1.1mLの超純水(富士フイルム和光純薬社製)で再構成し、フィルター(孔径0.22μm;ミリポア社製)で直ちにろ過した。
iv)サンプル(1.0mL)を、2998フォトダイオードアレイ(PDA)検出器(ウォーターズコーポレーション社製)と、フラクションコレクタIIIを備えたe2695セパレーションモジュール(ウォーターズコーポレーション社製)と、XBridge C18 OBD Prepカラム(10×250mm、5μm;ウォーターズコーポレーション社製)とを用いたダイオードアレイによる分取逆相クロマトグラフィーを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に適用した。上述した移動相A及びBを3.0mL/分で適用した。B相の2%から20%の間でグラジエント溶出を行った。ALAの溶出の保持時間を事前に確認し、5.5分から7.5分(HPLA)、11.5分から13.0分(PLA)、13.5分から15.0分(ILA)のサンプルを採取した(図6)。採取した各サンプルを蒸発させ、乾燥させたサンプルを0.2mLの超純水(和光)で再構成し、フィルター(孔径0.22μm,ミリポア)でろ過した後、使用するまで-80℃で保存した。最後に、表2に記載されているように、調製したサンプルをキラルカラム(10μL注入)を用いて分析した。キラルカラムは、LC-MS/MSシステム(ヴァンキッシュHPLC及びTSQ-FORTIS)に接続した。プリカーサーイオンのLC-MS/MSスペクトル(プロダクトイオンデータ)を評価し、イオンクロマトグラムの溶出ピークを表した(表2:本実験で使用したキラルカラム及び分析条件の一覧)。ALAの標準品(A)とサンプル(B、C、D、E)の典型的な溶出パターンを図2に示す。
Figure 2023053860000002
<MRS及びCSの分取LC>
各サンプル(MRS及びCS)を逆相HPLCで分取し、ALAの光学異性体を分析した。サンプルを適用する前に、45mLのメタノール(富士フイルム和光純薬社製)を各サンプルの5mLと混合した。遠心分離(10,000×g,5分)して凝集体を除去した。上清液を蒸発させ、乾燥した試料を2mLの超純水で再構成した。調製したサンプルは、分画の直前にろ過した(孔径0.22μm、ミリポア社製)。調製したサンプルの1mLをXBridge C18 OBD Prepカラム(10×250mm,5μm;ウォーターズコーポレーション社製)に適用した。前述の移動相A及びBを3.0mL/分の流速で適用し、カラムを平衡化した。グラジエント溶出は2%のB相で開始し、B相の2%から20%の間で、代謝物が溶出した。画分は3分から21分までの1分ごとに、合計18画分を採取し、Fr.1からFr.18まで番号を付けた(図1(B))。
各サンプルの18の画分を蒸発させ、乾燥したサンプルを0.3mLのダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(ナカライテスク社製)で再構成し、フィルター(孔径0.22μm;ミリポア社製)でろ過して、-80℃で保存した。
<HCA3リガンドアッセイ>
ヒドロキシカルボン酸受容体3(HCA3)のリガンド活性は、PathHunter CHO-K1 GPR109B β-アレスチン細胞株(Eurofins DiscoverX社製)を用いて測定した。この細胞は、ProLinkタグ付きのGタンパク質共役型受容体及び酵素アクセプタータグ付きのβ-アレスチンを共発現するように設計されている。アッセイはメーカーの説明書に従って行われた。簡単に説明すると、培養は96ウェルプレート(組織培養処理された、透明な平底と蓋のある半面積の黒いプレート)(コーニング社製)で行った。HCA3リガンド活性は、PathHunter Detection Kit(Eurofins DiscoverX社製)を用いて、発生した化学発光シグナルを測定することで検出した。化学発光シグナルは、マイクロプレートリーダー(SH-9000;コロナ電気社製)を用いて測定した。化学発光シグナルは、相対発光量(RLU)で表した。
[結果]
<ビフィドバクテリウム属細菌のCSのHCA3リガンド活性及びALA濃度>
図1(A)に、B. longum subsp. longum NITE BP-02621(乳児型HRB)及びB. animalis subsp. lactis DSM10140(非HRB)の2種類のビフィドバクテリウム株のCSと、MRSコントロールと、を調製し、HPLCで分画したチャートを示す。
図1(A)に示すように、3分から22分(保持時間)の間に明確な溶出パターンが観察されたため、この時間帯にALA画分を採取した(18画分)。
コントロールMRSの画分(図1(B)上段)には、微量のHCA3活性が検出された。
NITE BP-02621のCSの画分(Fr.7、Fr.9、Fr.10、Fr.11、Fr.12)では、強いHCA3リガンド活性が検出された(図1(B)中段)。
DSM10140のCSの画分(Fr.10、Fr.12、Fr.13)には比較的弱いHCA3リガンド活性が認められた(図1(B)下段)。
Fr.1からFr.18までの18画分中のHCA3リガンド(アリール乳酸(ALA);HPLA、PLA、ILA)の含有量をLC-MS/MS分析により定量した(図1(C))。
図1(C)に示されるように、MRS画分では、ALAは検出されなかった。
NITE BP-02621のCSには比較的高い含有量のALAが検出された(図1(C))。Fr.5にはHPLAが含まれていた(図1(C)第1段)。Fr.9及びFr.10にはPLAが含まれていた(図1(C)第3段)。Fr.11及びFr.12にはILAが含まれていた(図1(C)第4段)。
一方、Fr.7にはHCA3リガンド活性が観察されたが(図1(B)中段)、ALAは検出されなかった(図1(C)第1段、第3段及び第4段)。このFr.7の未知の物質についてさらなる探索を行った。
<ビフィドバクテリウム属細菌のCSに含まれるHCA3リガンドの同定(Fr.7)>
Fr.7のHCA3リガンド活性を説明するために、この画分に含まれる活性化合物を3種類の異なるクロマトグラフィー(フェニルヘキシル、Scherzo C18、C18カラム)を組み合わせて精製した。精製された化合物の分子量から、2-ヒドロキシカプロン酸(2HHA)及び2-ヒドロキシ-4-メチル吉草酸(ロイシン酸;LeuA)の2つの候補がピックアップされた。2HHAはHCA3を活性化することが知られている。
図5は、Fr.7とLeuA及び2HHAとのLC-MS/MSの比較を示す。2HHAはLeuAと同程度の分子量(132.16)を持つ。本実験の結果、精製サンプルの保持時間とプロダクトイオンのプロファイルは、標準の2HHAとは異なるが、標準のLeuAとは類似していることがわかった。
図5のA-1はFr.7の、A-2はLeuAの、A-3は2HHAの、ポジティブイオン化モードでm/z=131.070で選択したイオンクロマトグラムである。
図5のB-1はFr.7の、B-2はLeuAの、B-3は2HHAの、MS/MSフラグメンテーションプロファイルである。
Fr.7及び2HHAの特徴的なプロダクトイオンを比較した結果、2HHAの存在は否定され、活性化合物はLeuAと同定された(図5)。18個のフラクションのそれぞれに含まれるLeuAの濃度をLC-MS/MS分析で調べたところ、NITE BP-02621のCSのFr.7に含まれるLeuAの濃度は、DSM10140のCSのFr.7に含まれるLeuAの濃度よりも高く(図1(C)第2段)、図1(B)に示されるFr.7のHCA3リガンド活性(図1(B)中段、下段)と一致した。
以上より、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム NITE BP-02621はロイシン酸を産生し、ロイシン酸はHCA3リガンド活性を有することが明らかとなった。
<ビフィドバクテリウム属細菌によるALA及びLeuAの産生>
表3に、19株のビフィドバクテリウム属細菌のCSに含まれるALA及びLeuAの産生量を示す。
表3に示される全てのビフィドバクテリウム属細菌がLeuAを産生することが明らかとなった。中でも、D-LeuAがHCA3リガンド活性に優れていることが明らかとなった。
Figure 2023053860000003
<ビフィドバクテリウム属細菌のCSに含まれるALA及びLeuAの光学活性>
ビフィドバクテリウム株がCSに生産するALA及びLeuAの光学活性の分析を、キラルカラムを用いて光学分割することにより検討した。標準化合物(エナンチオマーの混合物;A 標準)の溶出パターンは、クロマトグラム中に2つのピークを示した(図2、第1段)。これらのピークを区別するために、早い方のピークを“1st”、遅い方のピークを“2nd”とした。
乳児型HRB、成人型HRB、非HRBを含む4株のクロマトグラムから、CSに含まれるALA及びLeuAはエナンチオマーの混合物であることがわかった(図2)。
19株のCSの1stピーク(曲線の下の面積)の曲線の下の総面積に対する割合(1stピークの割合(%))を算出した(表4)。HPLAの1stピークの割合は、B. dentium(39.1±7.2%)を除き、調べた19株の中で85%以上と高かった。一方、PLA及びILAの1stピークの割合は、菌株に依存していた。CSに含まれるALAの総濃度(表3)と1stピークの比率(表4)とから、B. breve(LMG 23729)のCSは1st-PLA(14.2±0.8μM)及び1st-ILA(1.31±0.19μM)の濃度が最も高かった。
Figure 2023053860000004
<ALA、LeuA及びこれらのエナンチオマーのHCA3リガンド活性>
図3にALA、2HHA、LeuA及びこれらのエナンチオマーのHCA3リガンド活性を示す。
図3Aは、アリール乳酸(ALA;ILA、PLA及びHPLA)のラセミ混合物及びDL-2-ヒドロキシカプロン酸(2HHA)のそれぞれの濃度(μM)とHCA3リガンド活性(相対発光量,RLU)との関係を示すグラフである。
図3Bは、D-PLA及びL-PLAのそれぞれの濃度(μM)とHCA3リガンド活性(相対発光量,RLU)との関係を示すグラフである。
図3CはILAの1stピーク(1st-ILA)及び2ndピーク(2nd-ILA)のそれぞれの濃度(μM)とHCA3リガンド活性(相対発光量,RLU)との関係を示すグラフである。いずれも3回の実験の平均値±標準偏差(S.D.)で示している。
ALAはHCA3リガンド活性を有することが知られているが、2-ヒドロキシカプロン酸(2HHA)もHCA3リガンド活性を有することが確認された(図3A)。ALAの中でもILA及びPLAは、HPLAと比較して明らかな活性を示した(図3A)。D-PLA(1st-PLA)はL-PLA(2nd-PLA)に比べてより強いHCA3リガンド活性を示すことが確認された(図3B)。また、1st-ILAのHCA3リガンド活性は2nd-ILAのHCA3リガンド活性よりも強かった。なお、D-ILA及びL-ILAの標準品は市販されていないため、1st-ILA及び2nd-ILAのどちらがD-ILA又はL-ILAに相当するのかは不明である。
LeuAがHCA3リガンド活性を有するという結果を受けて、合成LeuAのエナンチオマー及びその混合物のHCA3リガンド活性を調べた。
図4はLeuAのHCA3リガンド活性を示す図である。D-LeuA、L-LeuA及びDL-LeuAの濃度(μM)とHCAリガンド活性(相対発光量,RLU)との関係を示す。いずれも3回の実験の平均値±標準偏差(S.D.)で示している。
図4に示されるように、D-LeuAのHCA3リガンド活性は、L-LeuA及びDL-LeuAのHCA3リガンド活性よりも強かった。
以上の実験から、ビフィドバクテリウム属細菌は、HCA3リガンドとしてALAに加えてLeuAも生産することが示された。ビフィドバクテリウム属細菌が産生するALA及びLeuAは、エナンチオマーの混合物であり、HCA3リガンド活性はそれらの立体構造に依存しおり、D体のものがL体のものよりも優れていることが示された。
ロイシン酸は抗炎症作用、抗真菌作用、筋肉増強作用等を有するので、本発明によれば、ヒトの健康にとって有用な製品を提供できる。

Claims (15)

  1. (A)ロイシン酸産生細菌を培地中で培養する工程と、
    (B)前記培地からロイシン酸及び菌体の少なくとも一方を回収する工程と、
    を含む、ロイシン酸の製造方法。
  2. 前記ロイシン酸産生細菌がビフィドバクテリウム属細菌である、請求項1に記載のロイシン酸の製造方法。
  3. 前記ビフィドバクテリウム属細菌が、Bifidobacterium longum subsp. longum、Bifidobacterium longum subsp. infantis、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium adolescentis、Bifidobacterium angulatum、Bifidobacterium dentium、Bifidobacterium pseudocatenulatum、Bifidobacterium pseudolongum subsp. globosum、Bifidobacterium pseudolongum subsp. pseudolongum 及び Bifidobacterium thermophilum からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のロイシン酸の製造方法。
  4. 前記ビフィドバクテリウム属細菌が、Bifidobacterium longum subsp. longum NITE BP-02621、Bifidobacterium longum subspecies infantis NITE BP-02623、Bifidobacterium breve FERM BP-11175、Bifidobacterium breve FERM BP-02622、及び Bifidobacterium bifidum NITE BP-02431 からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2又は3に記載のロイシン酸の製造方法。
  5. 前記ロイシン酸がD-ロイシン酸を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のロイシン酸の製造方法。
  6. (A)ロイシン酸産生細菌を培地中で培養する工程と、
    (B)前記培地からロイシン酸及び菌体の少なくとも一方を回収する工程と、
    (C)前記ロイシン酸及び菌体の少なくとも一方を噴霧乾燥又は凍結乾燥により乾燥させることによりロイシン酸含有組成物を得る工程と
    を含む、ロイシン酸含有組成物の製造方法。
  7. (A)ロイシン酸産生細菌を培地中で培養する工程と、
    (B’)前記ロイシン酸産生細菌の培養上清を回収する工程と、
    (C’)前記培養上清を噴霧乾燥又は凍結乾燥により乾燥させることによりロイシン酸含有組成物を得る工程と
    を含む、ロイシン酸含有組成物の製造方法。
  8. 前記ロシイン酸含有組成物が食品又は飲料組成物である、請求項6又は7に記載のロイシン酸含有組成物の製造方法。
  9. 前記ロイシン酸含有組成物が医薬組成物である、請求項6又は7に記載のロイシン酸含有組成物の製造方法。
  10. ロイシン酸及びロイシン酸産生細菌の少なくとも一方を含む炎症抑制用組成物。
  11. 前記ロイシン酸産生細菌がビフィドバクテリウム属細菌である、請求項10に記載の炎症抑制用組成物。
  12. 前記ビフィドバクテリウム属細菌が、Bifidobacterium longum subsp. longum、Bifidobacterium longum subsp. infantis、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium adolescentis、Bifidobacterium angulatum、Bifidobacterium dentium、Bifidobacterium pseudocatenulatum、Bifidobacterium pseudolongum subsp. globosum、Bifidobacterium pseudolongum subsp. pseudolongum 及び Bifidobacterium thermophilum からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項11に記載の炎症抑制用組成物。
  13. 前記ビフィドバクテリウム属細菌が、Bifidobacterium longum subsp. longum NITE BP-02621、Bifidobacterium longum subspecies infantis NITE BP-02623、Bifidobacterium breve FERM BP-11175、Bifidobacterium breve FERM BP-02622、及び Bifidobacterium bifidum NITE BP-02431 からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項11又は12に記載の炎症抑制用組成物。
  14. 前記ロイシン酸がD-ロイシン酸を含む、請求項10~13に記載の炎症抑制用組成物。
  15. ロイシン酸産生細菌を培地中で培養する工程、
    前記ロイシン酸産生細菌の培養上清中のD-ロイシン酸及びL-ロイシン酸を定量する工程、
    前記培養上清中のロイシン酸の75モル%以上がD-ロイシン酸であるロイシン酸産生細菌を選抜する工程、を含む、ロイシン酸産生細菌のスクリーニング方法。
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