JP2023053663A - 容器 - Google Patents
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Abstract
【課題】プラスチック使用量の削減と薄肉容器の優れた遮光性の両方を十分に高水準に達成可能な容器の製造方法を提供する。【解決手段】超臨界流体成形による成形体である容器であって、厚さ0.3~0.6mmの第一の薄肉部を有する底部と、厚さ0.25~0.4mmの第二の薄肉部を有する側壁部と、底部の周縁部に沿って設けられた基端から下方に延びる支持部とを備え、支持部の先端は当該容器の底面と同じレベル又は底面よりも下方に位置する容器。【選択図】図1
Description
本開示は、超臨界流体成形によって製造される容器に関する。
近年、マイクロプラスチックの地球環境への影響が注目されるようになり、脱プラスチック運動やプラスチック製品の使用を控える風潮が高まっている。食品や日用品の用途における使い捨てのプラスチック容器については、ユーザーから少しでも石油由来のプラスチック使用量を少なくできないかという要望が強くなってきている。
プラスチック使用量を削減する手段の一つとして発泡成形が挙げられる。発泡成形は化学発泡成形と物理発泡成形に大別できる。化学発泡成形では発泡剤が使用される。一方、物理発泡成形では超臨界状態の流体が使用され、この方法は超臨界流体成形と称される。化学発泡成形は発泡剤の環境への悪誘響の懸念、金型の汚染等の課題がある。超臨界流体成形は、従来、自動車部品成形や事務用機器類などの比較的大型の工業製品に適用されてきた。近年、超臨界流体の生成技術及び樹脂組成物への混練技術の向上に伴ってハイサイクルな射出成形に超臨界流体成形を適用することが検討されている。特許文献1~3は超臨界流体成形によって製造される食品用容器を開示している。
本発明者らは、超臨界流体成形の適用範囲を広げるべく、バターやマーガリン、クリームチーズなどを収容する薄肉容器を超臨界流体成形で製造することを継続的に検討している。その結果、超臨界流体を樹脂組成物に添加することによる溶融樹脂組成物の粘度低下により、従来の薄肉容器を更に薄肉化できることを見出した。一方、容器の更なる薄肉化に伴って容器の強度が低下する傾向にあるため、プラスチック容器の薄肉化を実現しつつ、十分な強度を確保することが新たな課題として見出された。
本開示は、上記課題を解決すべくなされたものであり、プラスチック使用量が削減されており且つ十分な強度を有する容器を提供する。
本開示の一側面に係る容器は、超臨界流体成形による成形体であり、厚さ0.3~0.6mmの第一の薄肉部を有する底部と、厚さ0.25~0.4mmの第二の薄肉部を有する側壁部と、底部の周縁部に沿って設けられた基端から下方に延びる支持部とを備え、支持部の先端は当該容器の底面と同じレベル又は底面よりも下方に位置する。底部の周縁部を基端とする支持部を容器に設けることで、容器の強度を十分に確保することができる。なお、ここでいう「下方」は、容器の底部が下側に位置し且つ側壁部が底部から上方に向かう向きで容器を水平な面の上に配置した状態における下方を意味する。
支持部の基端は、底部の周縁部に沿って設けられていなくてもよく、側壁部の下部に沿って設けられていてもよい。すなわち、本開示の他の側面に係る容器は、超臨界流体成形による成形体であり、厚さ0.3~0.6mmの第一の薄肉部を有する底部と、厚さ0.25~0.4mmの第二の薄肉部を有する側壁部と、側壁部の下部に沿って設けられた基端から下方に延びる支持部とを備え、支持部の先端は当該容器の底面と同じレベル又は底面よりも下方に位置する。側壁部の下部を基端とする支持部を容器に設けることで、容器の強度を十分に確保することができる。
支持部の厚さは0.2~0.8mmであることが好ましい。この厚さが0.2mm以上であることで、支持部が容器の強度の向上に十分に寄与できる傾向にある。他方、この厚さが0.8mm以下であることで、底部及び側壁部の薄肉化によるプレスチック削減量の方が支持部の付加によるプラスチックの増加量を十分に上回ることができる傾向にある。
本開示によれば、プラスチック使用量が削減されており且つ十分な強度を有する容器が提供される。
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
<容器>
図1は本実施形態に係る容器を示す斜視図である。図1に示す容器10は、超臨界流体成形による成形体である。図2は容器10の断面図である。図3は容器10の底面図である。容器10は、平面視において、四隅が丸みを帯びている略長方形の形状を有している。容器10は、バターやマーガリン、クリームチーズなどを収容する薄肉容器に適用できる。容器10は、優れた強度(例えば、座屈強度及び落下耐性)を有することから、比較的大容量であってよい。容器10の内容積は、例えば、280cc以上であり、280~400ccであってもよい。
図1は本実施形態に係る容器を示す斜視図である。図1に示す容器10は、超臨界流体成形による成形体である。図2は容器10の断面図である。図3は容器10の底面図である。容器10は、平面視において、四隅が丸みを帯びている略長方形の形状を有している。容器10は、バターやマーガリン、クリームチーズなどを収容する薄肉容器に適用できる。容器10は、優れた強度(例えば、座屈強度及び落下耐性)を有することから、比較的大容量であってよい。容器10の内容積は、例えば、280cc以上であり、280~400ccであってもよい。
容器10は、底部1と、一対の側壁部2aと、一対の側壁部2bと、四隅に設けられたフランジ3と、支持部5とを備える。平面視において、側壁部2aは容器10の短辺をなし、他方、側壁部2bは容器10の長辺をなしている。フランジ3は、容器10と嵌合する蓋(不図示)のガイドの役割を果たす。支持部5は、底部1の周縁部から下方に延びており、容器10の強度を高める役割を果たす。
底部1は、平面視において、四隅が丸みを帯びている略長方形の形状を有している。底部1の短辺の長さ(図3における長さLa)は、例えば、3~12cmであり、5~10cm又は6~8.5cmであってもよい。底部1の長辺の長さ(図3における長さLb)は、例えば、5~15cmであり、7~12cm又は8~10.5cmであってもよい。
底部1の厚さは、0.3~0.6mmであり、0.4~0.5mmであってもよい。この厚さが0.3mm以上であることで、後膨れを抑制できる傾向にあるとともに落下耐性を確保することができる。他方、この厚さが0.6mm以下であることで、軽量化が図られる。なお、ここでは、底部1の全体が上記範囲の厚さを有する態様を例示したが、底部の一部が上記範囲の厚さを有する薄肉部(第一の薄肉部)であってもよい。プラスチック使用量削減の観点から、底部における薄肉部の面積割合は好ましくは50%以上であり、より好ましくは70%以上であり、更に好ましくは90%以上である。なお、図1,2に示すように、底部1は、中央の領域が上方に隆起し、他方、周縁の領域が窪んでいる。
図4は容器10の底部1と側壁部2aの境界を拡大して示す断面図である。側壁部2a,2bは、底部1の周縁から斜め上方に延びている。すなわち、側壁部2a,2bは、図1に示すように、底部1から遠ざかるにしたがって容器10の開口が拡大するように傾斜している。側壁部2a,2bの傾斜角(図4における角度α)は、例えば、45~85°であり、50~80°又は60~75°であってもよい。なお、ここでは、側壁部2a,2bが底部1に対して斜め上方に延びている態様を例示したが、側壁部2a,2bは底部1に対して実質的に鉛直方向に延びていてもよい。換言すれば、側壁部2a,2bの傾斜角αは85°よりも大きく90°以下であってもよい。
側壁部2a,2bの厚さは、0.25~0.4mmであり、0.3~0.35mmであってもよい。この厚さが0.25mm以上であることで、落下耐性を確保することができる。他方、この厚さが0.4mm以下であることで、軽量化が図られる。なお、ここでは、側壁部2a,2bの全体が上記範囲の厚さを有する態様を例示したが、側壁部の一部が上記範囲の厚さを有する薄肉部(第二の薄肉部)であってもよい。プラスチック使用量削減の観点から、側壁部における薄肉部の面積割合は好ましくは50%以上であり、より好ましくは70%以上であり、更に好ましくは90%以上である。
本実施形態において、肉眼で観察することができるスケールにおいて、底部1と側壁部2a,2bは連続しており、底部と側壁部の境界を見た目から把握することはできない。そこで、ここでは底部と側壁部の境界を以下のとおり定義する。すなわち、図4に示す向きに配置された容器の縦断面において、容器の外面の輪郭線の接線と水平方向のなす角度が30°である位置を底部と側壁部の境界と定義する。この定義に従うと、底部1と側壁部2aは境界6において区分けされる。なお、肉眼で観察することができるスケールにおいて、底部と側壁部の境界が明確に認識される場合には、その境界を境界としてもよい。
周縁部1bは、中央部1aと側壁部2a,2bとを接続しており、中央部1aの広がる方向(水平方向)から側壁部2a,2bの傾斜角度に底部1の角度を変換する領域であると言うことができる。周縁部1bは中央部1aよりも外側であり且つ境界6の内側に位置している。なお、図4に示すように、本実施形態の周縁部1bは下に凸の形状を有しているが、周縁部の形状はこれに限定されるものではなく、底部1の角度を単調に変化させるものであってもよい。
支持部5は、底部1の周縁部1bから下方に延びている。図3に示すように、本実施形態に係る支持部5は底部1の周縁部1bの全周に沿って連続的に設けられている。換言すれば、支持部5の基端5aは底部1の周縁部1bの全周に沿って連続的に設けられている。支持部5は、図4に示すように、内周面5cと外周面5dとを有する。支持部5は、容器10の強度向上に寄与し、特に容器10を押しつぶす力に対する強度(座屈強度)を向上させる。支持部5は容器10の底面10Fよりも下方にまで延びている。換言すれば、支持部5の先端5bは容器10の底面10Fの最も低い箇所10aよりも下方に位置する(図4参照)。かかる構成は、容器10の圧縮強度及び落下耐性向上に寄与する。すなわち、容器10に対して圧縮力が加わっても、底面10Fに力が直接加わることがないため、底面10Fの変形を抑制できる。また、テーブルの上から容器10から落下しても、支持部5があることにより、底部1が床に直接衝突することを回避することができ、底部1及びその近傍が破壊されることを抑制できる。
支持部5の長さ(基端5aから先端5bまでの距離)は、例えば、1~10mmであり、2~8mm又は3~6mmであってもよい。この長さが1mm以上であることで、支持部5が容器10の強度の向上に十分に寄与できる。他方、この長さが10mm以下であることで、底部1及び側壁部2a,2bの薄肉化によるプレスチック削減量の方が支持部5の付加によるプラスチックの増加量を十分に上回ることができる傾向にある。これに加え、この長さが10mm以下であることで、容器10に圧縮力が加わったときに、支持部5が座屈することを抑制できる傾向にある。
支持部5の厚さは、例えば、0.2~0.8mmであり、0.2~0.6mm又は0.3~0.5mmであってもよい。この厚さが0.2mm以上であることで、支持部5が容器10の強度の向上に十分に寄与できる。他方、この厚さが0.8mm以下であることで、底部1及び側壁部2a,2bの薄肉化によるプレスチック削減量の方が支持部5の付加によるプラスチックの増加量を十分に上回ることができる傾向にある。
図3に示すように、容器10は、支持部5を補強する複数のリブ7を更に備えてもよい。リブ7は、支持部5に対して直交する方向に延びており、底部1と支持部5を接続している。本実施形態においては、リブ7は支持部5の4つのコーナー部及び4つの辺の中央部にそれぞれ設けられている。なお、リブ7が支持部5を補強する役割を果たす限り、リブ7と支持部5のなす角度は90°でなくてもよい。
<容器の製造方法>
容器10の製造方法について説明する。容器10は以下の工程を経て製造される。
(A)樹脂材料と、超臨界流体とを含む溶融樹脂組成物を調製する工程。
(B)溶融樹脂組成物を金型のキャビティ内に射出する工程。
(C)上記(B)工程後、キャビティを保圧するとともに冷却する工程。
(D)容器を金型から回収する工程。
(A)工程から(D)工程の一連の工程は、例えば、MuCell射出成形機(「MuCell」はTrexel.Co.Ltdの登録商標)を使用して実施できる(特許文献1,2参照)。
容器10の製造方法について説明する。容器10は以下の工程を経て製造される。
(A)樹脂材料と、超臨界流体とを含む溶融樹脂組成物を調製する工程。
(B)溶融樹脂組成物を金型のキャビティ内に射出する工程。
(C)上記(B)工程後、キャビティを保圧するとともに冷却する工程。
(D)容器を金型から回収する工程。
(A)工程から(D)工程の一連の工程は、例えば、MuCell射出成形機(「MuCell」はTrexel.Co.Ltdの登録商標)を使用して実施できる(特許文献1,2参照)。
[(A)工程]
まず、樹脂材料と、超臨界流体とを含む溶融樹脂組成物を調製する。樹脂材料として、熱可塑性樹脂が挙げられ、その具体例はポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂である。熱可塑性樹脂のメルトフローレートは、好ましくは15g/10分以上であり、より好ましくは20~40g/10分であり、更に好ましくは25~36g/10分である。この値が15g/10分以上であることで、ショートショットの発生を抑制できる傾向にあり、他方、40g/10分以下であることで、落下耐性に優れる容器を製造できる傾向にある。なお、メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210-1:2014に記載の方法に準拠し、温度230℃及び荷重2.16kgの条件で測定された値を意味する。ショートショットは、キャビティの流動末端にまで樹脂材料が至らない現象を意味する。
まず、樹脂材料と、超臨界流体とを含む溶融樹脂組成物を調製する。樹脂材料として、熱可塑性樹脂が挙げられ、その具体例はポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂である。熱可塑性樹脂のメルトフローレートは、好ましくは15g/10分以上であり、より好ましくは20~40g/10分であり、更に好ましくは25~36g/10分である。この値が15g/10分以上であることで、ショートショットの発生を抑制できる傾向にあり、他方、40g/10分以下であることで、落下耐性に優れる容器を製造できる傾向にある。なお、メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210-1:2014に記載の方法に準拠し、温度230℃及び荷重2.16kgの条件で測定された値を意味する。ショートショットは、キャビティの流動末端にまで樹脂材料が至らない現象を意味する。
従来の射出成形で薄肉容器を成形するには、ショートショット防止のために流動性の高い(MFRの値が大きい)樹脂を選定する必要があった。しかし、流動性の高い樹脂材料は分子量が比較的小さく、強度が低い傾向にあるため、優れた落下耐性の薄肉容器を製造しにくかった。これに対し、本実施形態においては、MFRの値が比較的小さい樹脂材料であっても、超臨界流体と併用することで、溶融樹脂組成部の流動性を高めることができる。これにより、ショートショットの抑制と優れた強度(例えば、座屈強度及び落下耐性)を両立することができる。
本発明者らの検討によると、二酸化炭素を使用する場合、樹脂材料100質量部に対して2~3質量部の超臨界状態の二酸化炭素を添加して溶融樹脂組成物を調製する。二酸化炭素の量が2質量部以上であることで、成形ショット毎の充填圧のばらつきを小さくできるとともに、二酸化炭素の添加による溶融樹脂組成物の粘度低下により、ショートショットの発生を抑制することができる。これに加え、超臨界状態の二酸化炭素に起因する発泡を促すことで成形体の内部に空隙を形成することができる。他方、二酸化炭素の量が3質量部以下であることで、(C)工程における保圧圧力を比較的低く設定することができ、後膨れを抑制できる傾向にある。なお、後膨れは、金型から成形体を取り出した後、成形体が局所的に膨れる現象を意味し、成形後の硬化収縮時に残留応力により歪みが集中する箇所に発生しやすいと推察される。
窒素を使用する場合、樹脂材料100質量部に対して0.5~1.5質量部の超臨界状態の窒素を添加して溶融樹脂組成物を調製する。窒素の量が0.5質量部以上であることで、成形ショット毎の充填圧のばらつきを小さくできるとともに、窒素の添加による溶融樹脂組成物の粘度低下により、ショートショットの発生を抑制することができる。これに加え、超臨界状態の窒素に起因する発泡を促すことで成形体の内部に空隙を形成することができる。他方、窒素の量が1.5質量部以下であることで、(C)工程における保圧の圧力を比較的低く設定することができ、後膨れを抑制できる傾向にある。
溶融樹脂組成物の温度(スクリューシリンダ温度)は、樹脂材料の融点又はMFRに応じて設定すればよい。ポリプロピレン樹脂を使用する場合、この温度は210~250℃程度であることが好ましい。ポリエチレン樹脂を使用する場合、この温度は220~260℃程度であることが好ましい。この温度が下限値以上であることで、キャビティ内において樹脂が流動しやすく、他方、上限値以下であることで、樹脂の焦げ付きを抑制できる傾向にある。
溶融樹脂組成物は、樹脂材料及び超臨界流体以外の成分を含んでもよい。すなわち、溶融樹脂組成物は、必要に応じて、例えば、フィラー、着色剤、スリップ剤、帯電防止剤などを更に含んでもよい。
[(B)工程]
(A)工程で調製した溶融樹脂組成物を金型のゲートを通じてキャビティ内に射出する。射出速度は、好ましくは60mm/秒以上であり、より好ましくは200mm/秒以上であり、更に好ましくは250mm/秒以上である。射出速度が60mm/秒以上であることで、流動末端まで樹脂を到達させやすく、ショートショットの発生を抑制できる傾向にある。射出速度の上限値は、例えば、350mm/秒である。
(A)工程で調製した溶融樹脂組成物を金型のゲートを通じてキャビティ内に射出する。射出速度は、好ましくは60mm/秒以上であり、より好ましくは200mm/秒以上であり、更に好ましくは250mm/秒以上である。射出速度が60mm/秒以上であることで、流動末端まで樹脂を到達させやすく、ショートショットの発生を抑制できる傾向にある。射出速度の上限値は、例えば、350mm/秒である。
キャビティのゲートから、最も遠い流動末端までの距離(以下、「最大流動長」という。)が60mm以上であっても、流動末端にまで溶融樹脂組成物が至ることが好ましい。最大流動長は、例えば、70mm以上又は80mm以上であってもよい。最大流動長の上限値は、例えば、120mmである。容器10において、底部1の中央部1aがゲート位置に相当する箇所である(図2参照)。
[(C)工程]
上記(B)工程後、キャビティを保圧するとともに冷却する。本発明者らの検討によると、超臨界流体として二酸化炭素を使用した場合、15~80MPaの圧力条件で保圧する。この圧力が15MPa以上であることで、ショートショットの発生を抑制することができ、他方、80MPa以下であることで、後膨れの発生を抑制することができる傾向にある。この値は、好ましくは15~50MPaであり、より好ましくは15~30MPaである。超臨界流体として窒素を使用した場合、5~50MPaの圧力条件で保圧する。この圧力が5MPa以上であることで、ショートショットの発生を抑制することができ、他方、50MPa以下であることで、後膨れの発生を抑制することができる傾向にある。この値は、好ましくは15~50MPaであり、より好ましくは30~50MPaである。保圧時間は、超臨界流体の種類に関わらず、例えば、0.1~1.0秒とすればよい。
上記(B)工程後、キャビティを保圧するとともに冷却する。本発明者らの検討によると、超臨界流体として二酸化炭素を使用した場合、15~80MPaの圧力条件で保圧する。この圧力が15MPa以上であることで、ショートショットの発生を抑制することができ、他方、80MPa以下であることで、後膨れの発生を抑制することができる傾向にある。この値は、好ましくは15~50MPaであり、より好ましくは15~30MPaである。超臨界流体として窒素を使用した場合、5~50MPaの圧力条件で保圧する。この圧力が5MPa以上であることで、ショートショットの発生を抑制することができ、他方、50MPa以下であることで、後膨れの発生を抑制することができる傾向にある。この値は、好ましくは15~50MPaであり、より好ましくは30~50MPaである。保圧時間は、超臨界流体の種類に関わらず、例えば、0.1~1.0秒とすればよい。
薄肉容器を作製する観点から、キャビティ内の圧力を低下させるための「コアバック」と称される工程を実施しないことが好ましい。コアバックは、キャビティに充填された溶融樹脂組成物が固化し終わる前に、金型の可動部を移動させてキャビティの容積を拡大させる工程である(特許文献1参照)。
[(D)工程]
金型内の成形体の温度が30~60℃程度に下がった時点で、成形体(容器10)を金型から回収する。本実施形態においては、(C)工程で保圧を実施するとともに、上述のように「コアバック」を実施しないため、容器10には目視で確認できるような大きな空隙があまり形成されない。容器10は、空隙による軽量化よりも、薄肉化による軽量化を主に目指したものであると言うことができる。
金型内の成形体の温度が30~60℃程度に下がった時点で、成形体(容器10)を金型から回収する。本実施形態においては、(C)工程で保圧を実施するとともに、上述のように「コアバック」を実施しないため、容器10には目視で確認できるような大きな空隙があまり形成されない。容器10は、空隙による軽量化よりも、薄肉化による軽量化を主に目指したものであると言うことができる。
以上、本開示の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、支持部5の先端5bが容器10の底面10Fよりも下方に位置する場合を例示したが、支持部の先端は容器の底面と同じレベルであってもよい。図5は容器10の変形例の一部を拡大して示す断面図である。この図に示すように、支持部15の先端15bが容器20の底面20Fの最も低い箇所20aと同じレベルに位置している。図5に示す破線Lは、支持部15の先端15b及び底面20Fのレベルを示したものである。容器20に対して圧縮力が加わっても、圧縮力を支持部15で主に受けることができ、底面20Fの変形を抑制できる。なお、図5の紙面において、支持部15の基端15aは境界6よりも右側に位置しており、容器20の支持部15は側壁部2aの下部に設けられていると言うことができる。また、支持部は境界6を含む位置から下方に設けられていてもよい。支持部はある程度の厚みを有することから、この場合、支持部は底部の周縁部に沿って設けられていると言えるし、側壁部の下部に沿って設けられているとも言える。
上記実施形態においては、超臨界流体として二酸化炭素又は窒素を使用する場合を例示したが、これらのガスに代えて、例えば、アルゴン又はヘリウムを使用してもよい。また、上記実施形態においては、内容物の例として、バターやマーガリンなどの乳製品を挙げたが、他の内容物であってもよい。他の内容物として、例えば、パフェアイス、プリン、かき氷、ヨーグルトなどのデザートが挙げられる。これらの内容物を収容する場合、容器の形状は内容物に適したものとすればよい。例えば、容器の底部の形状は略正方形や円形、楕円形であってもよい。また、側壁部は平板状でなくてもよく、ボウルの様に湾曲していてもよい。
上記実施形態においては、支持部5が底部1の周縁部1bの全周に沿って連続的に設けられた態様を例示したが、支持部が底部の四隅のみに設けられた態様であってもよい。図6(a)に示す容器30は、平面視において、四隅が丸みを帯びた略長方形の形状を有する底部31を有し、互いに連続していない四つの支持部35a,35b,35c,35dが底部31の四隅に沿って設けられている。容器30に対して圧縮力が加わっても、底面30Fに力が直接加わることがないため、底面30Fの変形を抑制できる。また、テーブルの上から容器30から落下したとき、四隅が床に衝突しやすいところ、四隅に沿って支持部35a,35b,35c,35dが設けられていることで、優れた緩衝効果も得られる。また、支持部が底部の二対の辺のみに設けられた態様であってもよい。図6(b)に示す容器40は、平面視において、四隅が丸みを帯びた略長方形の形状を有する底部41を有し、互いに連続していない四つの支持部45a,45b,45c,45dが底部41の四辺に沿って設けられている。
上記実施形態においては、支持部5が鉛直方向に延びている態様を例示したが、図7(a)及び図7(b)に示すように、支持部5は鉛直方向に対して傾斜していてもよい。図7(a)に示す態様は、支持部5は側壁部2の傾斜角度を保ったまま、側壁部2の下部から連続して下方に延びている。図7(b)に示す態様は、支持部5が容器10の外側に向けて傾斜している。
以下、本開示について実施例及び比較例に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
MuCell射出成形機(「MuCell」はTrexel.Co.Ltdの登録商標)を使用して超臨界流体成形によって図1に示す形状の容器を以下のようにして作製した。まず、以下に示す樹脂組成物Aを準備した。100質量部の樹脂組成物Aに対して2.5質量部の超臨界状態の二酸化炭素を添加して溶融樹脂組成物を調製した。金型として2プレート金型(ホットランナー)を使用した。容器の設計値及び構成は以下のとおりとした。
MuCell射出成形機(「MuCell」はTrexel.Co.Ltdの登録商標)を使用して超臨界流体成形によって図1に示す形状の容器を以下のようにして作製した。まず、以下に示す樹脂組成物Aを準備した。100質量部の樹脂組成物Aに対して2.5質量部の超臨界状態の二酸化炭素を添加して溶融樹脂組成物を調製した。金型として2プレート金型(ホットランナー)を使用した。容器の設計値及び構成は以下のとおりとした。
[樹脂組成物Aの組成]
・樹脂材料:ポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製、J667TG(型番)、MFR:36g/10分) 100質量部
・着色剤1:クリーム色 5質量部
[容器の設計値]
・底部の厚さ:0.350mm
・側壁部(短辺)の厚さ:0.350mm
・側壁部(長辺)の厚さ:0.350mm
・フランジの厚さ:0.350mm
・支持部(先端部)の厚さ:0.350mm
・容器外側における支持部の長さ(短辺側):4.55mm
・容器外側における支持部の長さ(長辺側):4.93mm
[容器の構成]
・支持部の位置:底面部の周縁部の全周(図3参照)
・リブの個数:8個(図3参照)
・フランジ:あり
[成形条件]
・スクリューシリンダー温度:240℃
・射出速度:250mm/秒
・保圧圧力:30MPa
・保圧時間:1秒
・キャビティにおける最大流動長:99mm
・樹脂材料:ポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製、J667TG(型番)、MFR:36g/10分) 100質量部
・着色剤1:クリーム色 5質量部
[容器の設計値]
・底部の厚さ:0.350mm
・側壁部(短辺)の厚さ:0.350mm
・側壁部(長辺)の厚さ:0.350mm
・フランジの厚さ:0.350mm
・支持部(先端部)の厚さ:0.350mm
・容器外側における支持部の長さ(短辺側):4.55mm
・容器外側における支持部の長さ(長辺側):4.93mm
[容器の構成]
・支持部の位置:底面部の周縁部の全周(図3参照)
・リブの個数:8個(図3参照)
・フランジ:あり
[成形条件]
・スクリューシリンダー温度:240℃
・射出速度:250mm/秒
・保圧圧力:30MPa
・保圧時間:1秒
・キャビティにおける最大流動長:99mm
(比較例1)
実施例1と同様にして作製した容器の支持部及びリブをナイフで切除して、本例に係る容器を得た。
実施例1と同様にして作製した容器の支持部及びリブをナイフで切除して、本例に係る容器を得た。
(比較例2)
樹脂組成物Aに超臨界状態の二酸化炭素を添加せず、通常の射出成形によって実施例1と同様の形状の容器の作製を試みた。ショートショットは発生しなかったものの、充填時の充填圧力が装置の仕様上の上限(250MPa)に達してしまっていたため、製造の安定性の面での懸念があった。
樹脂組成物Aに超臨界状態の二酸化炭素を添加せず、通常の射出成形によって実施例1と同様の形状の容器の作製を試みた。ショートショットは発生しなかったものの、充填時の充填圧力が装置の仕様上の上限(250MPa)に達してしまっていたため、製造の安定性の面での懸念があった。
(比較例3)
比較例2と同様にして作製した容器の支持部及びリブをナイフで切除して、本例に係る容器を得た。
比較例2と同様にして作製した容器の支持部及びリブをナイフで切除して、本例に係る容器を得た。
(実施例2)
樹脂組成物Aの代わりに以下の樹脂組成物Bを使用したことの他は、実施例1と同様にして容器を作製した。
[樹脂組成物Bの組成]
・樹脂材料:ポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製、J667TG(型番)、MFR:36g/10分) 100質量部
・着色剤1:クリーム色 2.5質量部
・着色剤2:白色 2.5質量部
樹脂組成物Aの代わりに以下の樹脂組成物Bを使用したことの他は、実施例1と同様にして容器を作製した。
[樹脂組成物Bの組成]
・樹脂材料:ポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製、J667TG(型番)、MFR:36g/10分) 100質量部
・着色剤1:クリーム色 2.5質量部
・着色剤2:白色 2.5質量部
(実施例3)
実施例2と同様にして作製した容器のフランジをナイフで切除して、本例に係る容器を得た。
実施例2と同様にして作製した容器のフランジをナイフで切除して、本例に係る容器を得た。
(比較例4)
実施例2と同様にして作製した容器の支持部と、リブとをナイフで切除して、本例に係る容器を得た。
実施例2と同様にして作製した容器の支持部と、リブとをナイフで切除して、本例に係る容器を得た。
(比較例5)
実施例2と同様にして作製した容器のフランジも更にナイフで切除したことの他は、比較例4と同様にして容器を得た。
実施例2と同様にして作製した容器のフランジも更にナイフで切除したことの他は、比較例4と同様にして容器を得た。
(実施例4)
実施例2と同様にして作製した容器のリブをナイフで切除して、本例に係る容器を得た。
実施例2と同様にして作製した容器のリブをナイフで切除して、本例に係る容器を得た。
(実施例5)
実施例2と同様にして作製した容器のフランジも更にナイフで切除したことの他は、実施例4と同様にして容器を得た。
実施例2と同様にして作製した容器のフランジも更にナイフで切除したことの他は、実施例4と同様にして容器を得た。
(実施例6)
実施例2と同様にして作製した容器の支持部の一部をナイフで切除して、図6(a)に示す態様の容器を得た。すなわち、四隅の支持部は切除せずに残存させた。
実施例2と同様にして作製した容器の支持部の一部をナイフで切除して、図6(a)に示す態様の容器を得た。すなわち、四隅の支持部は切除せずに残存させた。
(実施例7)
実施例2と同様にして作製した容器のリブも更にナイフで切除したことの他は、実施例6と同様にて容器を得た。
実施例2と同様にして作製した容器のリブも更にナイフで切除したことの他は、実施例6と同様にて容器を得た。
(実施例8)
実施例2と同様にして作製した容器のフランジも更にナイフで切除したことの他は、実施例6と同様にして容器を得た。
実施例2と同様にして作製した容器のフランジも更にナイフで切除したことの他は、実施例6と同様にして容器を得た。
(実施例9)
実施例2と同様にして作製した容器のリブとフランジとを更にナイフで切除したことの他は、実施例6と同様にして容器を得た。
実施例2と同様にして作製した容器のリブとフランジとを更にナイフで切除したことの他は、実施例6と同様にして容器を得た。
(実施例10)
実施例2と同様にして作製した容器の支持部の一部をナイフで切除して、図6(b)に示す態様の容器を得た。すなわち、四辺の支持部は切除せずに残存させた。
実施例2と同様にして作製した容器の支持部の一部をナイフで切除して、図6(b)に示す態様の容器を得た。すなわち、四辺の支持部は切除せずに残存させた。
(実施例11)
実施例2と同様にして作製した容器のリブも更にナイフで切除したことの他は、実施例10と同様にて容器を得た。
実施例2と同様にして作製した容器のリブも更にナイフで切除したことの他は、実施例10と同様にて容器を得た。
(実施例12)
実施例2と同様にして作製した容器のフランジも更にナイフで切除したことの他は、実施例10と同様にして容器を得た。
実施例2と同様にして作製した容器のフランジも更にナイフで切除したことの他は、実施例10と同様にして容器を得た。
(実施例13)
実施例2と同様にして作製した容器のリブとフランジとを更にナイフで切除したことの他は、実施例10と同様にして容器を得た。
実施例2と同様にして作製した容器のリブとフランジとを更にナイフで切除したことの他は、実施例10と同様にして容器を得た。
(参考例1)
市販のマーガリン容器(通常の射出成形品、材質:ポリプロピレン)を入手した。この容器を参考例1とした。この容器はフランジに相当する構成を有するものの、支持部及びリブに相当する構成を有しないものであった。
市販のマーガリン容器(通常の射出成形品、材質:ポリプロピレン)を入手した。この容器を参考例1とした。この容器はフランジに相当する構成を有するものの、支持部及びリブに相当する構成を有しないものであった。
(参考例2)
参考例1と同じマーガリン容器のフランジをナイフで切除した。このようにして得た容器を参考例2とした。
参考例1と同じマーガリン容器のフランジをナイフで切除した。このようにして得た容器を参考例2とした。
<質量の測定>
実施例、比較例及び参考例に係る容器を2つずつ準備し、これらの質量を測定した。表1に質量の平均値を記載した。
実施例、比較例及び参考例に係る容器を2つずつ準備し、これらの質量を測定した。表1に質量の平均値を記載した。
<圧縮試験>
図8に示す装置を使用して容器の圧縮強度を測定した。装置50は、測定対象の容器Sが置かれる台座51と、容器Sの上部よりも大きいサイズの平板52と、平板52上に配置されたロードセル53と、ロードセル53及び平板52を介して容器Sに圧縮力を加えるプレス機構(不図示)とを備えたものした。なお、プレス機構の移動速度は20mm/分とした。容器を2.0mm変位させるのに要する荷重(圧縮力)を記載した。図9は、実施例1及び比較例1~3の結果を示すグラフである。支持部を有する容器は、支持部を有さない容器と比べて、2.0mm変位させるのに要する荷重が大きい、すなわち、強度が高かったことが確認された。
図8に示す装置を使用して容器の圧縮強度を測定した。装置50は、測定対象の容器Sが置かれる台座51と、容器Sの上部よりも大きいサイズの平板52と、平板52上に配置されたロードセル53と、ロードセル53及び平板52を介して容器Sに圧縮力を加えるプレス機構(不図示)とを備えたものした。なお、プレス機構の移動速度は20mm/分とした。容器を2.0mm変位させるのに要する荷重(圧縮力)を記載した。図9は、実施例1及び比較例1~3の結果を示すグラフである。支持部を有する容器は、支持部を有さない容器と比べて、2.0mm変位させるのに要する荷重が大きい、すなわち、強度が高かったことが確認された。
1…底部(第一の薄肉部)、1a…中央部、1b…周縁部、2,2a,2b…側壁部(第二の薄肉部)、3…フランジ、5,15…支持部、5a,15a…基端、5b,15b…先端、6…境界、7…リブ、10,20,30,40…容器、10F,20F…容器の底面。
Claims (7)
- 超臨界流体成形による成形体である容器であって、
厚さ0.3~0.6mmの第一の薄肉部を有する底部と、
厚さ0.25~0.4mmの第二の薄肉部を有する側壁部と、
前記底部の周縁部に沿って設けられた基端から下方に延びる支持部と、
を備え、
前記支持部の先端は当該容器の底面と同じレベル又は前記底面よりも下方に位置する容器。 - 超臨界流体成形による成形体である容器であって、
厚さ0.3~0.6mmの第一の薄肉部を有する底部と、
厚さ0.25~0.4mmの第二の薄肉部を有する側壁部と、
前記側壁部の下部に沿って設けられた基端から下方に延びる支持部と、
を備え、
前記支持部の先端は当該容器の底面と同じレベル又は前記底面よりも下方に位置する容器。 - 前記支持部の厚さが0.2~0.8mmである、請求項1又は2に記載の容器。
- 前記支持部を補強するリブを更に備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の容器。
- 前記底部の全体が前記第一の薄肉部である、請求項1~4のいずれか一項に記載の容器。
- 前記側壁部の全体が前記第二の薄肉部である、請求項1~5のいずれか一項に記載の容器。
- 前記底部は、平面視において、四隅が丸みを帯びた略正方形又は略長方形の形状を有し、
互いに連続していない四つの支持部が前記底部の前記四隅に沿って設けられている、請求項1~6のいずれか一項に記載の容器。
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