JP2023053503A - 画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】幅広い用途で使用される不可視画像を形成する際に、その異常の有無について判断をすることを可能にする。【解決手段】不可視画像情報に基づいて不可視画像用トナーにより像担持体12上に形成される不可視画像用トナー像を最終的に記録材上に転写して、記録材上に不可視画像を形成する画像形成装置であって、前記像担持体の表面移動方向に対して直交する幅方向における該像担持体上のトナー担持可能領域全域にわたって、前記像担持体上に付着する不可視画像用トナーを検知する検知手段180と、前記検知手段の検知結果に基づいて前記幅方向における異常発生位置を判断する判断手段30とを有する。【選択図】図5

Description

本発明は、画像形成装置に関するものである。
従来、不可視画像情報に基づいて不可視画像用トナーにより像担持体上に形成される不可視画像用トナー像を最終的に記録材上に転写して、記録材上に不可視画像を形成する画像形成装置が知られている。
例えば、特許文献1には、印刷データ(画像情報)に基づいて生成されるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の可視画像とともに、予め設定された不可視画像を記録紙(記録材)上に形成する画像形成装置が開示されている。この不可視画像は、可視画像が形成される可視画像形成領域よりも主走査方向外側で、副走査方向(用紙搬送方向)に連続する線状の画像である。この画像形成装置では、メモリ内に格納されている画像データ(不可視画像情報)に基づいて、中間転写ベルト(像担持体)上に不可視画像用トナー像を形成する。そして、不可視画像用トナー像が形成される位置に対向するように配置される検出センサによって、中間転写ベルト上の不可視画像用トナー像を検出し、不可視画像用の画像情報と照合することで、不可視画像用トナー像の異常の有無を判断する。この判断により異常があると判断すると、主走査方向へ画像がずれる画素ずれや主走査方向に沿ったスジ状の画像抜け(ライン抜け)などの画像不良が記録紙上の可視画像に発生していると判断され、その旨が報知される。
従来の画像形成装置では可視画像の画像不良を判断するために不可視画像を使用しているが、不可視画像は、不正コピー防止等の用途やコード画像の情報量を増やす用途などの幅広い用途で使用可能である。従来の画像形成装置では、このような幅広い用途で使用される不可視画像を形成する際、その異常の有無について判断するということができないという課題があった。
上述した課題を解決するために、本発明は、不可視画像情報に基づいて不可視画像用トナーにより像担持体上に形成される不可視画像用トナー像を最終的に記録材上に転写して、記録材上に不可視画像を形成する画像形成装置であって、前記像担持体の表面移動方向に対して直交する幅方向における該像担持体上のトナー担持可能領域全域にわたって、前記像担持体上に付着する不可視画像用トナーを検知する検知手段と、前記検知手段の検知結果に基づいて前記幅方向における異常発生位置を判断する判断手段とを有することを特徴とする。
本発明によれば、不正コピー防止等の用途やコード画像の情報量を増やす用途などの幅広い用途で使用される不可視画像を形成する際に、その異常の有無について判断をすることができる。
実施形態に係るプリンタの全体構成を示す説明図。 同プリンタにおける不可視画像モードの制御に関わるブロック図。 同プリンタにおけるトナー付着量検知センサを示す概略構成図。 同トナー付着量検知センサを中間転写ベルトの一部とともに斜め下方から示す斜視図。 中間転写ベルト上に形成されるIRテストトナー像を中間転写ベルトやトナー付着量検知センサとともに示す説明図。 (a)は、副走査方向(用紙搬送方向)に延びる白スジの画像異常が発生している例を示す説明図。(b)は、副走査方向に延びる黒スジの画像異常が発生している例を示す説明図。 実施形態における画像異常検出処理の流れを示すフローチャート。 黒スジの画像異常が発生する主走査方向位置と、不可視画像モードで印刷される不可視画像の位置とが重なる例を示す説明図。 印刷の継続又は中止をユーザーに選択させる選択画面の一例を示す説明図。 (a)は、副走査方向(用紙搬送方向)に延びる黒スジの画像異常が発生している元画像の例を示す説明図。(b)は、不可視画像の位置を黒スジの画像異常が発生する位置と重ならない位置へ変更した例を示す説明図。 (a)は、副走査方向(用紙搬送方向)に延びる黒スジの画像異常が発生している元画像の例を示す説明図。(b)は、印刷画像の向きを180°回転させて不可視画像の位置を黒スジの画像異常が発生する位置と重ならないようにした例を示す説明図。(c)は、印刷画像の向きを90°回転させて不可視画像の位置を黒スジの画像異常が発生する位置と重ならないようにした例を示す説明図。
以下、本発明を、画像形成装置であるカラープリンタ(以下「プリンタ」という。)に適用した一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、画像形成装置としては、プリンタ以外にも、複写機、ファクシミリ単体、あるいは、プリンタ、複写機、ファクシミリ、スキャナのうちの少なくとも2つの機能を備えた複合機であってもよい。
本実施形態のプリンタは、可視画像用トナー(以下「可視トナー」という。)としてのイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)トナーのそれぞれを用いて画像形成を行う画像形成部としての4つのプロセスユニットを備えている。これらのプロセスユニットのうちのK用プロセスユニットは、不可視画像用トナー(以下「不可視トナー」という。)としての透明性トナーである赤外光吸収トナー(IRトナー)を用いて画像形成を行う画像形成部としてのIR用プロセスユニットと入れ替えて交換することができる。
赤外光吸収トナー等の不可視トナーによって記録材上に形成される不可視画像とは、人間の目で全く視認できない画像だけでなく、通常の可視画像と比較して視認が困難な視認困難画像も含む。不可視画像は、例えば、画像中に付加情報を埋め込む場合に使用される。具体例としては、不正コピー防止等の目的で、黒トナーやカラートナーによる可視画像とともに形成される、不可視パターン、地紋などと呼ばれる目視で認識しにくい不可視画像(人間が一見しても視認できない「COPY」等の文字画像)が挙げられる。また、例えば、QRコード(登録商標)等のコード画像の情報量を増やす目的で、可視画像であるコード画像と不可視画像によるコード画像とを重ねて記録材に形成する場合に利用される。
不可視画像とは、例えば、通常の可視トナー(カラートナー、黒トナー)よりも可視光下で発色を抑制されているような透明性の高い不可視トナー(透明性トナー)によって形成される画像である。また、不可視トナーは、当該不可視トナーによる不可視画像が記録材上に形成されたときに視認できない又は視認困難な状態になるトナーである。不可視トナーの具体例としては、透明性を有する赤外光吸収トナーや、紫外線を当てると蛍光する透明性の蛍光トナーなど、可視光領域外の光を吸収したり、可視光領域外の光によって可視光領域の光を発光したりするものが挙げられる。本実施形態は、不可視トナーとして、上述したように赤外光吸収トナーを用いる例で説明する。
以下の説明において、各部材のトナー別符号として、イエロートナー(Yトナー)は「Y」、マゼンタトナー(Mトナー)は「M」、シアントナー(Cトナー)は「C」、黒トナー(Kトナー)は「K」、赤外光吸収トナー(IRトナー)は「IR」を用いる。
まず、本実施形態に係るプリンタの全体構成及び動作について説明する。
図1は、本実施形態に係るプリンタの全体構成を示す説明図である。
本実施形態のプリンタは、画像形成部1と、転写部2と、記録材供給部3と、定着部4と、記録材排出部5と、制御部30と、画像形成制御部40とから、主に構成されている。
画像形成部1には、画像形成部である交換ユニットとしての4つのプロセスユニット6を保持するための4つのユニット保持部が設けられている。そのうちの3つのユニット保持部は、カラートナーに対応する3つのプロセスユニット6Y,6M,6Cにそれぞれ対応したものである。残りの1つのユニット保持部は、K用プロセスユニット6K及びIR用プロセスユニット6IRに対応したものであり、いずれかのプロセスユニット6K,6IRが選択的に装着されて保持する。なお、図1には、ユニット保持部に対し、K用プロセスユニット6Kではなく、IR用プロセスユニット6IRを装着して保持させた例が図示されている。各プロセスユニット6Y,6M,6C,6K,6IRは、使用するトナーの種類が異なる以外は同様の構成となっている。
本実施形態のプリンタは、ユニット保持部が4つであるため、上述した5つのプロセスユニット6Y,6M,6C,6K,6IRに対応する5つのユニット保持部を備えたプリンタよりも、小型化が実現される。すなわち、4つのユニット保持部をもつ小型のプリンタで、Y、M、C、Kのトナーによるフルカラー画像(カラー黒可視画像)の形成と、Y、M、C、IRのトナーによるフルカラー画像(カラー可視画像)及びIR画像(不可視画像)の形成とを両立できる。
また、すべてのプロセスユニットを着脱可能とし、プロセスユニットを装着する位置(ユニット保持部)を互いに入れ替えることができるようにしてもよい。この場合、IRのプロセスユニットの位置を入れ替えることで、記録材上におけるIRトナー像と各カラートナー像との位置関係(トナー像積層方向における位置関係)を適宜入れ替えることが可能となる。本実施形態では、中間転写ベルト12の走行方向最下流側のユニット保持部と最上流側のユニット保持部とに装着可能なプロセスユニット6を互いに入れ替えて装着することが可能である。
本実施形態において、各プロセスユニット6Y,6M,6C,6K,6IRは、潜像を担持する潜像担持体としての感光体7と、感光体7の表面を帯電させる帯電手段としての帯電ローラ8と、感光体7上の潜像を現像する現像手段としての現像装置9と、感光体7の表面をクリーニングする潜像担持体クリーニング手段としての感光体クリーニング装置10などで構成されている。各感光体7に対向した位置には、それぞれ、感光体7の表面に潜像を形成する潜像形成手段としての露光装置11が設けられている。本実施形態では、露光装置11としてLEDユニットを用いているが、レーザダイオードを用いたレーザビームスキャン方式のものが用いられてもよい。
転写部2には、感光体7上のトナー像が転写される像担持体としての中間転写体である無端状の中間転写ベルト12と、感光体7上の画像を中間転写ベルト12に一次転写する一次転写手段としての複数の一次転写ローラ13と、中間転写ベルト12に転写されたトナー像を記録材に二次転写する二次転写手段としての二次転写ローラ14と、中間転写ベルト12の表面(外周面)をクリーニングする中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置17とが配置されている。
中間転写ベルト12は、駆動ローラ15と従動ローラ16とに張架されており、駆動ローラ15が回転することで周回走行(回転)する。各一次転写ローラ13は、中間転写ベルト12を各感光体7に押し当てるように配置されている。これにより、中間転写ベルト12と各感光体7との接触箇所には、各感光体7上の画像が中間転写ベルト12に転写される一次転写ニップが形成される。一方、二次転写ローラ14は、駆動ローラ15に巻き付いた中間転写ベルト12の部分に接触するように配置されている。この二次転写ローラ14と中間転写ベルト12とが接触する箇所には、中間転写ベルト12上の画像が記録材に転写される二次転写ニップが形成される。
記録材供給部3には、記録材としての用紙Pを収容する記録材収容部としての給紙カセット18と、給紙カセット18から用紙Pを給送する記録材給送手段としての給紙ローラ19と、給紙ローラ19によって給送された用紙Pを所定のタイミングで前記二次転写ニップへ搬送する記録材搬送手段としてのタイミングローラ対20が配置されている。なお、記録材は、用紙以外に、OHPシートやOHPフィルム、布等であってもよい。また、用紙には、普通紙のほか、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、和紙等の凹凸紙、トレーシングペーパ等が含まれる。
定着部4には、用紙Pに画像を定着する定着手段としての定着装置21が配置されている。定着装置21は、ヒータ等の加熱源によって加熱される定着部材としての定着ローラ22と、定着ローラ22に対して所定の圧力で接触して定着ニップを形成する加圧部材としての加圧ローラ23とから主に構成されている。
記録材排出部5には、定着装置21から送り出された用紙Pを装置外に排出する記録材排出手段としての排紙ローラ対24と、排紙ローラ対24によって排出された用紙Pを載置する記録材載置部としての排紙トレイ25とが配置されている。
制御部30は、読取装置(スキャナ)やパソコン等からの入力画像情報に対する画像処理を行い、また、プリンタ全体の制御を担うものである。
また、画像形成制御部40は、制御部30の制御の下、プリンタの各部(画像形成部1、転写部2、記録材供給部3、定着部4、記録材排出部5等)における画像形成動作を制御するものである。
また、本実施形態のプリンタには、上述の各構成要素に加え、画像形成に用いられる粉体であるトナーを収容するトナー収容器としての複数のトナーカートリッジ26Y,26M,26C,26K,26IRを着脱可能に保持する容器保持部材102が設けられる。この容器保持部材102には、4つのトナー収容器保持部が設けられ、各トナー収容器保持部にそれぞれ対応するトナーカートリッジが装着され保持される。なお、図1には、トナー収容器保持部に対し、K用トナーカートリッジ26Kではなく、IR用トナーカートリッジ26IRを装着して保持させた例が図示されている。
各トナーカートリッジ26Y,26M,26C,26K,26IRは、上述した各プロセスユニット6Y,6M,6C,6K,6IRの現像装置9内のトナーと同じ種類(色)のトナーが、それぞれに収容されている。容器保持部材102の4つのトナー収容器保持部には、それぞれ、4つのユニット保持部に装着されているプロセスユニット6のトナーに対応するトナーカートリッジ26が装着されている。装着されているプロセスユニット6の現像装置9内のトナーが所定量を下回ると、対応するトナー収容器保持部に装着されたトナーカートリッジ26から同じ種類のトナーが補給される。
また、本実施形態のプリンタには、廃トナー収容容器27が装着されている。この廃トナー収容容器27には、ベルトクリーニング装置17あるいは感光体クリーニング装置10によって回収された廃トナーが収容される。
また、図1に示すように、本実施形態のプリンタは、装置本体(画像形成装置本体)100の上部を開閉するためのカバー部材101を備える。カバー部材101は、装置本体100に設けられた回動軸103を中心に上下に回動可能となっている。また、カバー部材101の下方には、4つのトナーカートリッジ26を着脱可能にトナー収容器保持部に保持する容器保持部材102が配置されている。容器保持部材102は、装置本体100に設けられた別の回動軸104を中心に上下に回動可能となっている。
図1に示すように、最下流のユニット保持部にIR用プロセスユニット6IRが装着されている場合、IRのプロセスユニット6IRが中間転写ベルト12の走行方向最下流側に配置され、その上流側にカラーのプロセスユニット6Y,6M,6Cが配置される。この場合、中間転写ベルト12上では、ベルト側から順に、Yトナー像、Mトナー像、Cトナー像、IRトナー像が積層される。そして、これを二次転写した後の記録材上におけるトナー像の重ね順は、記録材側から順に、IRトナー像、Cトナー像、Mトナー像、Yトナー像の順となる。
IRトナー像をカラートナー像よりも記録材側に形成することで、IRトナー像がカラートナー像に隠れ、IRトナー像による不可視画像の不視認性を高めやすい。ただし、不可視画像を形成する場合において、カラーのプロセスユニット6Y,6M,6Cに対してIRのプロセスユニット6IRをどこに配置するのかは適宜変更可能である。また、上述したように、プロセスユニット6Y,6M,6C,6IRの装着位置を互いに入れ替えることができる構成とした場合には、IRのプロセスユニットの位置を自由に入れ替えることができる。
また、本実施形態のプリンタは、Y、M、C、K、IRの各トナーの付着量(単位面積当たりのトナー付着量)を調整して各トナーによる画像濃度の調整を行う。詳しくは、中間転写ベルト12上に形成されるY、M、C、K、IRの各トナーのテストトナー像(異なる目標濃度となるように作像された複数のトナーパッチ)のトナー付着量を検知するためのトナー付着量検知センサ180が設けられている。このトナー付着量検知センサ180で検知した結果から、所望の濃度に対して所望のトナーが付着するように、Y、M、C、K、IRの各プロセスユニットにおける作像条件(画像形成条件)等が調整される。
本実施形態のトナー付着量検知センサ180は、Y、M、C、K、IRの各テストトナー像に対して共通に使用されるものでもよいし、Y、M、C、K、IRの各テストトナー像に対して個別に使用されるものでもよい。本実施形態のトナー付着量検知センサ180は、テストトナー像へ光を照射し、当該テストトナー像からの正反射光及び拡散反射光を受光する光学式の画像濃度センサ(光学センサ)である。Y、M、Cのカラートナーについては、正反射光および拡散反射光の両方の受光量に基づいてテストトナー像のトナー付着量(テストトナー像の画像濃度)が検出される。ただし、Kトナーについては、正反射光の受光量のみに基づいてテストトナー像のトナー付着量(テストトナー像の画像濃度)が検出される。
一方、本実施形態のIRトナーは、定着処理後は不可視画像(例えば、目視しにくい画像、あるいは、可視光領域内に吸収ピークを実質的に持たない画像)となる。しかしながら、IRトナーは、定着処理前の中間転写ベルト12上で可視画像(目視できる画像、あるいは、可視光領域内に吸収ピークを実質的に持つ画像)である場合には、C、M、Y、Kと同様のトナー付着量検知センサを用いることができる。本実施形態においては、Kのテスト像とIRのテストトナー像については、共通のトナー付着量検知センサ180が用いられる。ただし、IRトナーのテストトナー像(不可視画像用トナー像)については、正反射光のみを取得してテストトナー像のトナー付着量を検知するよりも、正反射光および拡散反射光の両方を取得してテスト像のトナー付着量を検知する方が、高精度である。
続いて、本実施形態のプリンタの基本的な動作について説明する。
画像形成動作が開始されると、各感光体7が回転駆動され、帯電ローラ8によって各感光体7の表面が所定の極性に一様に帯電される。次いで、読取装置(スキャナ)やパソコン等からの入力画像情報に基づき、露光装置11が各感光体7の帯電面にレーザ光を照射し、潜像(静電潜像)を形成する。
各感光体7上に形成される潜像は、所望のフルカラー画像をY、M、Cの色情報に分解した単色の画像情報(可視画像情報)に基づく潜像である。詳しくは、入力画像情報の色情報(RGB、YCM等)を、当該プリンタ用の色情報(YMC)へ変換・分解するための色変換分解テーブルを用い、入力画像情報を、Y、M、Cの色情報に変換、分解した単色の画像情報が生成される。そして、Y、M、C用の各露光装置11は、Y、M、Cの各色の画像情報に基づいてそれぞれの感光体7上に各色の潜像を形成する。
なお、K用プロセスユニット6Kが装着されている場合には、Y、M、Cの単色の画像情報を生成した後、更に、Kの色情報を抽出した単色の画像情報を生成するとともに、Y、M、Cの単色の画像情報の修正を行う。この処理は、UCR(Under Color Removal)等のようにKの画像情報を生成する処理であり、Y、M、Cのトナーが重ね合わさって表現される黒色あるいはグレー色の画像情報を、Kの画像情報に置き換えるものである。Kに対応する露光装置11(IRに対応する露光装置11と共用)は、Kの画像情報に基づいてK用プロセスユニット6Kの感光体7上にKの潜像を形成する。
また、本実施形態では、入力画像情報に含まれる付加情報や当該プリンタによって付加される付加情報等に基づいて不可視画像を形成する場合、その付加情報からIRの画像情報(不可視画像情報)が生成される。入力画像情報に含まれる付加情報は、パソコン上のアプリケーションによって付加される情報でもよいし、パソコン上のプリントドライバによって付加される情報でもよい。IR用プロセスユニット6IRが装着されている場合、IRに対応する露光装置11(Kに対応する露光装置11と共用)は、IRの画像情報に基づいてIR用プロセスユニット6IRの感光体7上にIRの潜像を形成する。
K用プロセスユニット6Kが装着されている場合、感光体7上に形成されたY、C、M、Kの各潜像には、それぞれの現像装置9からトナーが供給されて、Y、C、M、Kのトナー像に現像される。各感光体7上のトナー像は、周回走行する中間転写ベルト12上に順次重ね合せて転写される。詳しくは、感光体7上のトナー像が一次転写ニップの位置に達すると、一次転写ローラ13に所定の電圧が印加されて形成される転写電界によって、感光体7上のトナー像が中間転写ベルト12上に順次転写される。このようにして、中間転写ベルト12の表面には、Y、C、M、Kトナーからなるフルカラートナー像(可視像)が形成される。なお、中間転写ベルト12に転写しきれなかった各感光体7上のトナーは、感光体クリーニング装置10によって除去される。
一方、IR用プロセスユニット6IRが装着されている場合、感光体7上に形成されたY、C、M、IRの各潜像には、それぞれの現像装置9からトナーが供給されて、Y、C、M、IRのトナー像に現像される。各感光体7上のトナー像は、上述と同様に、周回走行する中間転写ベルト12上に順次重ね合せて転写される。このようにして、中間転写ベルト12の表面には、Y、C、Mからなるフルカラートナー像(可視トナー像)及びIRトナーからなるIRトナー像(不可視トナー像)が形成される。なお、中間転写ベルト12に転写しきれなかった各感光体7上のトナーは、上述と同様、感光体クリーニング装置10によって除去される。
また、画像形成動作が開始されると、給紙ローラ19が回転して、給紙カセット18から用紙Pが給送される。給送された用紙Pは、タイミングローラ対20によって搬送が一旦停止される。その後、所定のタイミングでタイミングローラ対20の回転駆動が開始され、中間転写ベルト12上のトナー像が二次転写ニップに達するタイミングに合わせて、用紙Pが二次転写ニップへ搬送される。
用紙Pが二次転写ニップに搬送された際、二次転写ローラ14には所定の電圧が印加されており、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、この二次転写ニップに形成された転写電界によって、中間転写ベルト12上のトナー像が用紙Pに一括して転写される。また、このとき、中間転写ベルト12上に残ったトナーはベルトクリーニング装置17によって除去される。
その後、用紙Pは定着装置21へと搬送され、定着ローラ22と加圧ローラ23によってトナー像が加熱されつつ加圧されて用紙Pに定着される。そして、用紙Pは排紙ローラ対24によって装置外に排出され、排紙トレイ25上に載置される。
以上の説明は、4つのプロセスユニット6Y,6M,6C,6IR(又は6K)のすべてを使用して画像を形成するときの画像形成動作であるが、これに限られない。例えば、4つのプロセスユニット6Y,6M,6C,6IR(又は6K)のいずれか1つを使用して画像を形成したり、いずれか2つ又は3つのプロセスユニットを使用して画像を形成したりすることも可能である。
図2は、本実施形態のプリンタにおける不可視画像モードの制御に関わるブロック図である。
以下の説明では、入力画像情報の色情報がRGB多値の情報である場合について説明する。また、IR画像を形成する際には、入力画像情報にIRの画像情報(付加情報)が含まれ、そのIRの画像情報に基づいてIR画像を形成する場合について説明する。なお、入力画像情報に含まれる付加情報は、画像情報でなくてもよく、非画像情報である場合には、例えば、制御部30において、予め決められたIR画像生成プログラムを実行し、その付加情報からIRの画像情報を生成する。また、入力画像情報に付加情報が含まれていない場合でも、制御部30において、ユーザ指定等に応じたIRの画像情報を生成してもよい。
本実施形態の制御部30は、主に、主制御部31と、記憶手段としての記憶部32と、色変換・分解処理部33と、ガンマ変換部35と、階調変換部36と、トナー総量規制部37とから、構成されている。
主制御部31は、CPU、RAM、ROMなどから構成され、各種プログラムを実行することにより、画像処理やプリンタの全体的な制御を実行する。
記憶部32は、制御部30の各部で用いる各種データやプログラムを記憶している。
色変換・分解処理部33は、記憶部32に記憶されている色変換分解テーブルを用いて、入力画像情報の色情報(RGB)を、プリンタ用の色情報であるY、M、Cの色情報に変換、分解して、Y、M、Cごとの画像情報(可視画像情報)を生成する。また、入力画像情報中にIRの画像情報が含まれている場合には、IRの画像情報(不可視画像情報)を入力画像情報から抽出して生成する。
ガンマ変換部35は、記録材上において適切な階調を実現するために、記憶部32に記憶されているガンマ変換テーブルを用いて、Y、M、Cの各画像情報、及び、必要に応じてIRの画像情報も、γ(ガンマ)変換する処理を行う。
階調変換部36は、記憶部32に記憶されているディザパターンデータを用いて、Y、M、C、IRの各画像情報を、中間調濃度に応じたディザパターンに変換する階調変換処理を実行する。
トナー総量規制部37は、IR用プロセスユニット6IRが装着されて不可視画像モードを行う際に用いられる。トナー総量規制部37は、主制御部31の制御の下、記憶部32に記憶されているトナー付着量変換テーブルを用い、単位面積当たりにYトナー、Mトナー、Cトナー及びIRトナーが付着するトナー付着量の総量(以下「トナー総量」という。)が、定着上限値以下となるように、ガンマ補正(ガンマ変換)されたY、M、Cの各画像情報のトナー付着量変換処理(画像処理)を行う。このとき、IRの画像情報についてもトナー付着量変換処理(画像処理)が行われてもよい。
制御部30は、まず、読取装置(スキャナ)やパソコン等からの入力画像情報を取得する。これにより、制御部30は、記憶部32に記憶されている色変換分解テーブルを用いて、色変換・分解処理部33により、入力画像情報の色情報(RGB)を、プリンタ用の色情報であるY、M、Cの色情報に変換、分解する。このとき、K用プロセスユニット6Kが装着されて通常モードを行う際には、黒生成処理も行う。
不可視トナーを使用する不可視画像モードの場合、制御部30は、付加情報に基づいて生成されるIRの画像情報(不可視画像情報)を含むY、M、C、IRの各画像情報に対し、ガンマ変換部35により、ガンマ変換処理を実行する。その後、制御部30は、トナー総量規制処理を実行する。
不可視画像モード時では、K用プロセスユニット6Kが装着されていないので、黒色やグレー色などの画像部分(通常モード時にはKの色情報に置き換えられる部分)については、Y、M、Cのトナー像を重ねて作像する。そのため、このような画像部分についての単位面積当たりのトナー総量が、Kトナーを用いる通常モード時よりも多くなる。本実施形態においては、このようにトナー総量が多いY、M、Cのトナー像部分にIRトナー像を重ねて形成することで、IRトナー像による不可視画像の不視認性が高められる。ただし、単位面積当たりのトナー総量が多くなり過ぎると、定着不良を引き起こすおそれがある。
よって、不可視画像モード時のトナー総量規制処理でも、前記上限値を超えるトナー過剰部分を含むか否かを判断し、トナー過剰部分を含むと判断した場合、主制御部31は、トナー総量規制部37にトナー総量規制処理を実行させる。
このトナー総量規制処理において、不可視画像モード時には、IRトナーによる不可視画像の不視認性が確保できるように、カラートナーとIRトナーとの比率を考慮して行うのが好ましい。すなわち、不可視画像モード時のトナー総量規制処理では、処理後のカラートナーの付着量とIRトナーの付着量との比率が、不可視画像の不視認性を確保できるような所定比率となるように調整して、カラートナーの付着量とIRトナーの付着量とが決定される。このとき、トナー過剰部分のトナー付着量が前記上限値を超えないようにする。
このようにしてトナー総量規制処理を実行した後、制御部30は、階調変換部36により階調変換処理を実行する。階調変換部36から出力されるY、M、C、IRの各画像情報は、画像形成制御部40に送られ、画像形成動作(不可視画像モード)が実行される。
図3は、本実施形態におけるトナー付着量検知センサ180を示す概略構成図である。
本実施形態のトナー付着量検知センサ180は、中間転写ベルト12上に形成されるY、M、C、K、IRの各テストトナー像に対して共通に使用されるものである。図3において、トナー付着量検知センサ180は、光源181、レンズアレイ182、撮像素子アレイ183、透明ガラスからなる検知窓184、シャッター部材185、白色基準板186などを有している。
シャッター部材185は、アクチュエーターの駆動によって中間転写ベルト12のベルト移動方向Aに沿って往復移動することが可能になっており、その往復移動に伴って検知窓184を開閉する。図3においては、シャッター部材185が検知窓184の直下から待避して検知窓184を露出させている状態を示している。
白色基準板186としては、東レ株式会社製の白色フィルムであるルミラーE20(商品名)からなるものを例示することができる。白色基準板186は両面テープ等によってシャッター部材185の裏面に固定されており、シャッター部材185と一体となってベルト移動方向Aに沿って往復移動する。
光源181としては、発光素子が導光体の端部に設けられたものやLEDアレイなどが使用可能である。光源181は、白色光を発するものであるが、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各光をそれぞれ個別に発する光源をそれぞれ設けてそれら光の混合によって白色光としてもよい。
レンズアレイ182としては、セルフォック(登録商標)レンズを例示することができる。撮像素子アレイ183は、アレイ状に配設された複数のイメージセンサーを具備している。そして、それぞれのイメージセンサーはレンズアレイ182によって結像されたR(レッド)光、G(グリーン)光、B(ブルー)光を個別に受光し、それぞれの光に応じた信号を出力する。撮像素子アレイ183としては、CMOSセンサやCCDセンサなどが用いられる。
トナー付着量検知センサ180としては、密着型イメージセンサ(CIS)からなるものを例示することができる。図4に示されるように、トナー付着量検知センサ180は、その長手方向を中間転写ベルト12の表面移動方向に対して直交する方向(主走査方向又はベルト幅方向)に沿わせつつ、中間転写ベルト12のおもて面に所定の間隙を介して対向するように配設される。本実施形態のトナー付着量検知センサ180の長手方向の寸法は、中間転写ベルト12上の幅方向の寸法よりも大きくなっている。これにより、トナー付着量検知センサ180は、中間転写ベルト12のおもて面に形成される後述のテストトナー像の長手方向における全域の各画素のトナー付着量(画像濃度)をそれぞれ個別に検知することができる。なお、トナー付着量検知センサ180の長手方向の寸法をベルト幅より大きくしなくても、ベルト幅方向における有効画像領域(トナー像の担持可能領域)の寸法と同等以上にすれば、次のことが可能である。即ち、トナー付着量検知センサ180に対してテストトナー像の長手方向の全域における各画素の画像濃度を検知させることが可能である。
制御部30は、工場出荷後の初回の運転時に、シェーディング補正データ構築処理を実施する。このシェーディングデータ構築処理では、白色基準板186の各画素の画像濃度をトナー付着量検知センサ180に検知させて得た画像データに基づいてシェーディング補正データを構築する。具体的には、白色基準板186や検知窓184に汚れが全く付着していない状態では、理論的には、白色基準板186の読み取りによって得られる画像データの各画素が何れも白色として読み取られるはずである。ところが、実際には、イメージラインセンサの画像素子の感度誤差や光源181の発光量のムラなどにより、各画素の画素値に若干のバラツキが発生してしまう。すると、そのままではトナー付着量ムラ(画像濃度ムラ)が誤検知されてしまう。そこで、このトナー付着量ムラ(画像濃度ムラ)の誤検知を防止するために、全ての画素について白色であると認識するための補正データをシェーディング補正データとして構築する。
本実施形態に係る画像形成装置においては、機器異常に起因して画像にスジ状の画像異常(画像濃度異常)が発生することがある。この画像濃度異常の箇所は、本来の画像濃度よりも著しく薄い又は濃い画像濃度になっていて、画像の副走査方向に延在した形状のスジ状のものである。なお、副走査方向は、感光体7Y,7M,7C,7Kや、中間転写ベルト12の表面移動方向に沿った方向であり、これは画像形成装置内における画像の移動方向に相当する。これに対し、主走査方向は、感光体7Y,7M,7C,7Kの回転軸線方向や中間転写ベルト12のベルト幅方向に沿った方向であり、これは、副走査方向に直交する方向でもある。
制御部30は、テストトナー像におけるスジ状の画像濃度異常箇所の有無を判定し、スジ状の画像濃度異常箇所があった場合に、ユーザーにその旨を知らせるための画像異常検出処理を定期的に実施する。図5は、この画像異常検出処理のときに中間転写ベルト12のおもて面上に形成されるIRテストトナー像TIRを、中間転写ベルト12やトナー付着量検知センサ180とともに示す図である。図5に示されるように、IRテストトナー像TIRは、ベルト幅方向に延在する矩形状の形状で形成される。ベルト幅の全域に渡る長さではないが、ベルト幅方向における有効画像領域と同じ長さになっている。
図6(a)及び(b)は、IRトナー像において副走査方向(用紙搬送方向)に延びるスジ状の画像異常が発生している例を示す説明図である。
図6(a)においては、IRテストトナー像TIRに、スジ状の画像濃度異常箇所としての白スジwsが発生している。白スジwsは、本来の画像濃度よりも著しく薄い画像濃度で形成されるスジ状の画像濃度異常箇所である。IR用プロセスユニット6IRにおいて、露光装置11の光出射部(防塵ガラス等)に汚れが付着していたり、現像装置9内の現像剤に異物が混入していたりすると、図示のように、副走査方向に延在する白スジwsが発生することがある。
また、図6(b)においては、スジ状の画像濃度異常箇所としての黒スジdsが発生している。黒スジdsは、本来の画像濃度よりも著しく濃い画像濃度で形成されるスジ状の画像濃度異常箇所であり、IRテストトナー像TIR上に現れるほか、図示のようにIRテストトナー像TIRが形成されないときにも現れ得るものである。IR用プロセスユニット6IRにおいて、帯電ローラ8に汚れが付着しているなどの原因により、図示のように、副走査方向に延在する黒スジdsが発生することがある。
制御部30は、上述した画像異常検出処理を開始すると、IRテストトナー像TIRを形成する。その後、IRテストトナー像TIRをトナー付着量検知センサ180で撮像して得た画像データにおける主走査方向に並ぶ各画素のそれぞれについて画像濃度(トナー付着量)を求める。そして、各画素の画像濃度に基づいて、IRテストトナー像TIRにおける白スジwsや黒スジdsの有無を判定する。
IRテストトナー像TIRは所定のトナー付着量(所定の画像濃度)で一様に作成されるため、トナー付着量検知センサ180の検出する結果(画像データの各画素値)は、画像異常が発生していなければ、一様な値を示す。しかしながら、図6(a)の下図に示すように白スジwsが発生している場合には、その箇所の出力値(画素値)は図6(a)の上図に示すグラフのように局所的に低下する。そのため、所定の閾値を予め決めておき、その閾値より低い値を示したら、その箇所に白スジが発生していると判断する。
他方、IRテストトナー像TIRを作成していない箇所は、トナー付着量検知センサ180の検出する結果(画像データの各画素値)が実質的にゼロを示す。しかしながら、図6(b)の下図に示すように黒スジdsが発生している場合には、その箇所の出力値(画素値)は図6(b)の上図に示すグラフのように局所的に高い値を示す。そのため、所定の閾値を予め決めておき、その閾値より高い値を示したら、その箇所に黒スジが発生していると判断する。
図7は、本実施形態における画像異常検出処理の流れを示すフローチャートである。
なお、本実施形態の画像異常検出処理は、不可視画像モードの実行時に行う例で説明するが、画像異常検出処理の実行タイミングは、これに限られない。画像異常検出処理の実行タイミングは、例えば、ユーザーが任意に実施できるようにしてもよいし、ある条件を満足した場合に自動で実行されるようにしてもよい。
はじめに、制御部30は、不可視画像モードで印刷するかどうかの判定を行う(S1)。本実施形態の画像異常検出処理は、印刷後の不可視画像(用紙上の不可視画像)の異常を検出することを目的とするため、不可視画像を印刷しない場合には、処理ステップS20へ移行して、通常の印刷を実施して終了とする。不可視画像モードでの印刷か否かの判定は、ユーザーが不可視画像モードを選択して印刷する、もしくは不可視画像モードのカバレッジを判定して、カバレッジが0%より大きい場合に不可視画像モードでの印刷であると判定してもよい。
不可視画像モードで印刷する場合(S1のYes)、次に、制御部30は、不可視画像についての画像異常検出処理を実行するための条件(異常検出処理実行条件)を満たすか否かの判定を行う(S2)。異常検出処理実行条件としては、例えば、前回の画像異常検出処理を実行してから所定の枚数以上の印刷を行ったこと、前回の印刷時からの経過時間が所定時間以上経過したこと、本プリンタを使用する環境(温湿度)が所定値以上変化したこと、などが挙げられる。
不可視画像モードで印刷するたびに画像異常検出処理を実行すると、無駄にIRトナーが消費されることになる。画像異常は経時劣化などで発生することが多いため、所定枚数以上の印刷を実行したという異常検出処理実行条件を設けて実施タイミングを決定することで、適正な実行タイミングで画像異常検出処理を実行することができ、トナー消費量を抑えられる。また、環境の変化や前回印刷時からの放置時間が長い場合にも、IRトナーの帯電量に変化が起き、トナー汚れ(地汚れ)などの異常画像が発生しやすい。そのため、環境が大きく変化したことが前回印刷時からの放置時間が長いことなどの異常検出処理実行条件を設けて実施タイミングを決定することで、適正な実行タイミングで画像異常検出処理を実行することができ、トナー消費量を抑えられる。
異常検出処理実行条件を満たさない場合には(S2のNo)、処理ステップS20へ移行し、通常の印刷を実施して終了とする。一方、異常検出処理実行条件を満たした場合(S2のYes)、画像異常検出処理を実行する(S3)。画像異常検出処理では、まず、図5に例示したようなIRトナーによるIRテストトナー像TIR(主走査方向全域にわたって長尺な横帯パターン)を作成する。なお、本実施形態では、トナー消費の観点から、IRテストトナー像TIRの副走査方向長さは100mmに設定している。
例えばIR用プロセスユニット6IRで白スジwsが発生していた場合、IRテストトナー像TIRを検出したトナー付着量検知センサ180の出力値は、白スジwsが発生した主走査方向位置に対応する箇所の出力値(画素値)が所定の閾値よりも低い値を示す。このトナー付着量検知センサ180の出力結果により、主走査方向位置の当該箇所に白スジwsの画像異常があることがわかる。
また、本実施形態の画像異常検出処理では、IRテストトナー像TIRが作成していない副走査方向位置の部分(例えば、IRテストトナー像TIRに対して副走査方向に隣接する非トナー像部分)についても、トナー付着量検知センサ180の検出を行う。このとき、例えばIR用プロセスユニット6IRに異常があって黒スジdsが発生していた場合、トナー付着量検知センサ180の出力値は、黒スジdsが発生した主走査方向位置に対応する箇所の出力値(画素値)が所定の閾値よりも高い値を示す。このトナー付着量検知センサ180の出力結果により、主走査方向位置の当該箇所に黒スジdsの画像異常があることがわかる。
IRテストトナー像TIRは、主走査方向における中間転写ベルト12上のIRトナー像の担持可能領域全域にわたって形成されるパターンであれば、上述した横帯パターンに限らず、例えば用紙全面に対応する領域全体にパターン(全ベタ画像)であってもよい。このように、IRテストトナー像TIRとして、副走査方向にも長いパターンを作成することで、トナー像作成時あるいはトナー像非作成時に発生する副走査方向の周期的な横スジのような画像異常を検出することも可能になる。
本実施形態におけるトナー付着量検知センサ180は、主走査方向における中間転写ベルト12上のIRトナー像の担持可能領域全域にわたってIRトナーを検知可能なラインセンサである。そのため、IRトナー像の担持可能領域内のいずれの箇所に発生する画像異常についても、その有無を検出することが可能である。したがって、主走査方向における任意の箇所に不可視画像が形成され得る場合であっても、不可視画像の異常の有無を判断することができる。
また、本実施形態のように担持可能領域全域にわたってIRトナーを検知可能なトナー付着量検知センサ180であれば、トナー像作成時あるいはトナー像非作成時に発生する主走査方向の周期的な縦スジ(白スジwsや黒スジds)を検出することも可能になる。
画像異常検出処理を実行した制御部30は、トナー付着量検知センサ180の検出結果に基づいて、IRトナー像の異常の有無を判定する(S4)。この判定は、上述したとおり、所定の閾値よりも高い画素値や所定の閾値よりも低い画素値があるか否かを判断することによって行うことができる。IRトナー像の異常が発生していない場合には(S4のNo)、処理ステップS20へ移行し、通常の印刷を実施して終了とする。
一方、IRトナー像の異常が発生している場合(S4のYes)、制御部30は、これから不可視画像モードで印刷される不可視画像に対して、当該異常が影響するか否かを判断する。具体的には、IRトナー像の異常発生位置とこれから不可視画像モードで印刷される不可視画像の形成される位置とが重なるか否かを判断する。例えば、黒スジdsが発生すると判定されたときに、図8に示すように、その黒スジdsが発生する主走査方向位置と、これから不可視画像モードで印刷される不可視画像である二次元コード画像の位置とが重なるか否かを判断する。
そして、制御部30は、IRトナー像の異常が不可視画像に対して影響すると判断した場合、例えば、図9に示すような印刷の継続又は中止をユーザーに選択させる選択画面をタッチパネル等からなる操作表示部50に表示させる。この選択画面は、本プリンタに設けられる操作表示部50に表示するとともに又はその代わりに、ユーザーの操作するパソコンなどの画面に表示されるプリンタドライバの設定画面の一部として表示してもよく、その報知態様は問わない。
この選択画面に対し、ユーザーが印刷中止を選択した場合(S5のYes)、制御部30は、印刷動作を中止して処理を終了する。異常画像の程度が悪い場合などは、後述するような影響がなくなるような処理を行うことができない場合もある。そのときには印刷を継続せずに終了し、メンテナンス事業者などに故障発生を連絡するなどの対応を行う。
一方、この選択画面に対し、ユーザーが印刷継続を選択した場合(S5のNo)、本実施形態における制御部30は、更に、不可視画像の印刷方法の設定を行う(S10)。上述したように、不可視画像の異常画像は目視ではわからないため、印刷物としての品質に影響がなければ、そのままでも許容される場合がある。この場合、ユーザーは、操作表示部50やパソコンを操作して、そのまま印刷する旨の印刷方法を選択する。これにより、処理ステップS20へ移行し、通常の印刷を実施して終了とする。
また、不可視画像の異常画像は、上述したとおり、目視ではわからないため、用紙上に印刷される印刷画像に対する不可視画像の相対的位置が変更されても、印刷物としての品質に影響が少ないことが多い。そのため、図10(a)に示す元画像における不可視画像の位置を、図10(b)に示すようにIRトナー像の異常発生位置(黒スジdsの位置)と重ならない位置へ変更しても、印刷物としての品質に影響を与えることが少ない。よって、不可視画像の位置をIRトナー像の異常発生位置と重ならない位置へ変更する補正を行って、当該異常の影響を受けないように不可視画像を用紙Pに形成することが可能である。
この場合、ユーザーは、操作表示部50やパソコンを操作して、不可視画像の位置をIRトナー像の異常発生位置と重ならない位置へ変更して印刷する旨の印刷方法を選択する。この選択をした場合、制御部30は、IRの画像情報に対し、不可視画像の位置を変更する処理を実行した後、処理ステップS20へ移行し、通常の印刷を実施して終了とする。
また、別の印刷方法としては、例えば、用紙上に印刷される印刷画像の向きを変更する方法が挙げられる。具体例としては、図11(a)に示す元画像の向きを、図11(b)に示すように180°回転させて印刷する方法や、図11(b)に示すように90°回転させて印刷する方法などである。これらの印刷方法によれば、用紙上に印刷される印刷画像に対する不可視画像の相対的位置を維持したまま、すなわち、印刷上に印刷される印刷画像に変更を加えることなく、不可視画像の位置をIRトナー像の異常発生位置と重ならない位置とすることができる。
次に、本実施形態で使用されるトナーについて説明する。
以下の説明では、本実施形態のトナーセットは、Y、M、Cのカラートナーと不可視トナーであるIRトナーとを有するトナーセットである。
Y、M、Cのカラートナー(可視トナー)は、結着樹脂、及び着色剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。なお、Kトナー(可視トナー)も、結着樹脂、及び着色剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
IRトナー(不可視トナー)は、結着樹脂、及び近赤外光吸収材料を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
本実施形態では、トナーセットが下記のいずれかの条件を満たすとき、IRトナー像(不可視トナー像)とともに形成されるカラートナー像を目視した際、カラートナー像の画質の視認性及びIRトナー像の読み取り精度が良好であるトナーセットが提供される。
・第1の条件としては、カラートナーとIRトナーとを有し、IRトナーのベタ画像の60度光沢度が、30以上であり、IRトナーのベタ画像の60度光沢度が、カラートナーのベタ画像の60度光沢度より10以上高い。
・第2の条件としては、カラートナーとIRトナーとを有し、IRトナーの100℃以上140℃以下の範囲内における正接損失(tanδi)が、2.5以上であり、カラートナーの100℃以上140℃以下の範囲内における正接損失(tanδc)が、2以下である。
特開2001-265181号公報の記載のトナーにおいては、重ねられたトナー画像に関し規定がないことから、重ねあわされた画像の光沢度の差異で不可視画像が可視化されてしまう問題があった。その問題を解決するために、特開2007-171508号公報、特開2007-003944号公報、及び特開2010-113368号公報では、用いられるカラートナーの光沢度よりも低い光沢度のIRトナーとすることが提案されている。しかし、近年電子写真式の画像出力は一般的なオフセット印刷などのような高グロスの画像との差別化要求より、比較的低グロスの画像要求が高まっている。そのため、カラートナーが高グロスである場合、2次色、3次色はもとより不可視画像(IR画像)との重ね部位などの高付着部のグロスが高くなりIR画像の位置が目視で顕著となる問題が生じる。更に、IR画像上にカラートナーを画像形成すると、定着ニップの加熱加圧時にIRトナー層に積層されたカラートナーが入り込みやすくなることから、IR画像の情報を機械読み取りするときの読取精度が不安定となる問題がある。
<IRトナー>
IRトナーは、結着樹脂、及び近赤外光吸収材料を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
<<結着樹脂>>
結着樹脂としては、特に制限はなく、従来公知の樹脂がすべて使用可能である。結着樹脂としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-塩化ビニル共重合体、スチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体などのスチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変成マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、石油系樹脂、水素添加された石油系樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これら中でも、芳香族化合物を構成単位として含有するスチレン系樹脂、及びポリエステル樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂がより好ましい。
ポリエステル樹脂は、一般公知のアルコールと酸との重縮合反応によって得られる。
アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオールなどのジオール類、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールAなどのエーテル化ビスフェノール類、これらを炭素数3~22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した二価のアルコール単位体、その他の二価のアルコール単位体、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-サルビタン、ペンタエスリトールジペンタエスリトール、トリペンタエスリトール、蔗糖、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン等の三価以上の高アルコール単量体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、カルボン酸が好ましい。
カルボン酸としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などのモノカルボン酸、マレイン酸、フマール酸、メサコン酸、シトラコン酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸、これらを炭素数3~22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した二価の有機酸単量体、これらの酸の無水物、低級アルキルエステルとリノレイン酸の二量体、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸エンボール三量体酸、これらの酸の無水物等の三価以上の多価カルボン酸単量体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、結着樹脂には、結晶性樹脂を含有させることもできる。
結晶性樹脂としては、結晶性を有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ビニル樹脂、変性結晶性樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂が好ましく、耐湿性や後述の非晶性樹脂との非相溶性を持たせるためにウレタン骨格及びウレア骨格の少なくともいずれかを有する樹脂が好ましい。
結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、定着性の観点からは、2,000~100,000が好ましく、5,000~60,000がより好ましく、8,000~30,000が特に好ましい。重量平均分子量が、2,000以上であると、耐ホットオフセット性が悪化する不具合を防止することができ、100,000以下であると、低温定着性が悪化する不具合を防止することができる。
<<近赤外光吸収材料>>
近赤外光吸収材料としては、無機材料系、及び有機材料系のいずれも用いることができる。
これまでにも、付加データ埋め込み技術のために、透明性を有する(不可視な)赤外線吸収材料が種々検討されており、様々な材料が開示されている。例えば、無機材料系では、イッテルビウムなどの希土類金属(特開平9-77507号公報、特開平9-104857号公報)や銅リン酸結晶化ガラスを含有する赤外線吸収材料(特開平7-53945号公報、特開2003-186238号公報)など、有機材料系としては、アルミニウム化合物(特開平7-271081号公報)や、クロコニウム色素(特開2001-294785号公報)が挙げられる。また、特開2002-146254号公報には、750nm~1100nmに分光吸収極大波長を有し、かつ650nmにおける吸光度が、該分光吸収極大波長における吸光度の5%以下である赤外線吸収材料を含有する有機材料が提案されている。更に、特開2007-171508号公報、特開2007-3944号公報、特開2010-113368号公報、及び特開2008-76663号公報には、ナフタロシアニン顔料を用いることが提案されており、可視光の吸光度及び赤外域の吸光度の差異の面から優れた技術といえる。
無機材料系の近赤外光吸収材料としては、例えば、燐酸、シリカ、ホウ酸等の可視域の波長を透過する公知のガラス網目形成成分に、遷移金属イオンや、無機及び/又は有機化合物からなる色素等の材料を添加したガラスや、これを熱処理により結晶化した結晶化ガラスなどが挙げられる。これらの無機材料は可視領域の光を良く反射して、不可視の画像を得ることができる。
有機材料系の近赤外光吸収材料としては、例えば、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物等の有色材料;アルミニウム塩系化合物、ナフタロシアニン系化合物等の無色材料などが挙げられる。これらの中でも、添加により画像を着色してしまうことがなく、赤外光域の吸収が十分に大きいことから添加量を抑えられ、結果としてカラー画像の画質を損ねない点から、無色材料が好ましい。
無色材料の中でも、可視光域の吸光度が非常に低く、無色に近い特徴があり、更にはトナーの帯電への影響が小さいことから、ナフタロシアニン系化合物が好ましい。
ナフタロシアニン系化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、以下に例示する化合物が好ましい。
Figure 2023053503000002
ただし、化学式(1)において、Metは、2個の水素原子、2価の金属原子、3価もしくは4価の置換金属原子を表し、A~Aは、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のアルキルチオ基又は置換もしくは非置換のアリールチオ基を表し、但し、AとA、AとA、AとA、AとAの各組み合わせにおいて、その両方が同時に水素原子又はハロゲン原子になることはなく、Y~Y16は、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のアルキルチオ基、置換もしくは非置換のアリールチオ基、置換もしくは非置換のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換のジアルキルアミノ基、置換もしくは非置換のアリールアミノ基、置換もしくは非置換のジアリールアミノ基、置換もしくは非置換のアルキルアリールアミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトリル基、オキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノカルボニル基又はモノもしくはジ置換アミノカルボニル基を表す。
近赤外光吸収材料の読み取り波長の反射率としては、赤外光照射により機械読み取りを安定して行う点から、50%以下であることが好ましい。反射率が50%以下であると、読み取り精度が下がるという不具合を防止することができる。
反射率の測定方法としては、例えば、出力したベタ画像を、分光光度計(例えば、V-660(日本分光株式会社製)、eXact(X-Rite社製)等)を用いて測定することができる。
近赤外光吸収材料はトナー粒子中に分散して含有することが好ましい。
近赤外光吸収材料をトナー表面に外部固着或いはトナー粒子群に混合添加した場合、トナー粒子及び現像剤中で材料凝集などを発生させる可能性が有り、さらにバルクとして必要量添加してもトナー表面に外部固着或いは現像剤調整の段階で、機器への付着などで失われ、IR画像中の近赤外光吸収材料が不足または偏在等することで情報を正確且つ安定に読み出せなくなってしまう。また、遊離した近赤外光吸収材料が機内、特に感光体等を汚染することで現像、転写などの他工程に悪影響を与える可能性も考えられる。 また、前述の有機系近赤外光吸収材料を用いる場合、無機系材料に比べ結着樹脂に対する分散性が良く、画像出力媒体上に形成されたIR画像中に均一に分散し、可視域においてより不可視性を損なうことなく、赤外域においては十分な吸収を示すことで情報が高密度に記録でき、且つトナー中への分散性が良いことからIR画像の機械読み取り・復号化処理が長期間わたり安定に行うことが可能となる。
近赤外光吸収材料の含有量の数値範囲は、近赤外光吸収材料の特性により異なる。近赤外光吸収材料の含有量の種類に関わらず、含有量が十分ではないと、近赤外光の吸収が十分ではなくなる。近赤外光の吸収が十分ではないと、IRトナーを紙などの媒体に多く付着させなければならない。このため、IRトナーの集合物(塊)による視認可能な凹凸を生じると共に、資源に無駄が生じる不具合が発生する。近赤外光吸収材料の含有量が過剰であると、近赤外光吸収材料は若干ではあるが、可視光波長域に吸収がある。このため、近赤外光吸収材料そのものが、視認されやすくなるという不具合が発生する。
透明性を有する(不可視の)近赤外光吸収材料としてよく用いられるバナジルナフタロシアニンの場合において、その含有量としては、IRトナーに対して、0.3質量%以上1.0質量%以下が好ましい。
<<その他の成分>>
その他の成分としては、通常、トナーに含有されるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、離型剤、帯電制御剤、外添剤などが挙げられる。
<<<離型剤>>>
離型剤としては、天然ワックス、及び合成ワックスのいずれも用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
天然ワックスとしては、例えば、カルナバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックスなどが挙げられる。
合成ワックスとしては、例えば、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス;1,2-ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド;低分子量の結晶性高分子である、ポリメタクリル酸n-ステアリル、ポリメタクリル酸n-ラウリル等のポリアクリレートのホモポリマー又はコポリマー(例えば、アクリル酸n-ステアリルーメタクリル酸エチル共重合体等)等の側鎖に長鎖アルキル基を有する結晶性高分子などが挙げられる。
これらの中でも、離型剤としては、モノエステルワックスを含むことが好ましい。モノエステルワックスは、一般的な結着樹脂との相溶性が低いため、定着時に表面に染み出しやすく、高い離型性を示し、高光沢と高い低温定着性を確保できる。
モノエステルワックスとしては、合成エステルワックスであることが好ましい。合成エステルワックスとしては、例えば、長鎖直鎖飽和脂肪酸と長鎖直鎖飽和アルコールから合成されるモノエステルワックスなどが挙げられる。長鎖直鎖飽和脂肪酸は、一般式C2n+1COOHで表わされ、n=5~28程度のものが好ましく用いられる。また、長鎖直鎖飽和アルコールとしては、C2n+1OHで表わされ、n=5~28程度が好ましい。
長鎖直鎖飽和脂肪酸の具体例としては、例えば、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、テトラデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラモン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸およびメリシン酸などが挙げられる。一方、長鎖直鎖飽和アルコールの具体例としては、例えば、アミルアルコール、ヘキシールアルコール、ヘプチールアルコール、オクチルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコールおよびヘプタデカンノオールなどが挙げられ、低級アルキル基、アミノ基、ハロゲン等の置換基を有していてもよい。
離型剤の融点は、50℃~120℃が好ましい。離型剤の融点が数値範囲であると、定着ローラとトナー界面の間で離型剤として効果的に作用することができるため、定着ローラにオイル等の離型剤を塗布しなくても高温耐オフセット性を向上させることができる。具体的には、融点が50℃以上であると、トナーの耐熱保存性が悪化する不具合を防止することができ、120℃以下であると、低温での離型性が発現されず、耐コールドオフセット性の悪化、定着機への紙の巻付きなどが発生するという不具合を防止することができる。
離型剤の融点の測定としては、例えば、示差走査熱量計であるTG-DSCシステムTAS-100(理学電機社製)を用いて、最大吸熱ピークを測定することにより求めることができる。
離型剤の含有量としては、結着樹脂に対して、1質量%~20質量%が好ましく、3質量%~10質量%がより好ましい。含有量が、1質量%以上であると、オフセット防止効果が不十分となる不具合を防止することができ、20質量%以下であると、転写性、耐久性が低下するという不具合を防止することができる。
また、モノエステルワックスの含有量としては、IRトナー100質量部に対して、4質量部~8質量部が好ましく、5質量部~7質量部がより好ましい。含有量が、4質量部以上であると、定着時における表面への染み出しが不十分となること、離型性が悪くなること、並びに光沢、低温定着性、及び耐高温オフセット性が低下することの不具合を防止することができる。含有量が、8質量部以下であると、トナー表面に析出する離型剤の量が増え、トナーとしての保存性が低下し、感光体等へのフィルミング性が低下するという不具合を防止することができる。
本実施形態のトナーは、ワックス分散剤を含有することが好ましく、分散剤がモノマーとして少なくともスチレン、ブチルアクリレート、及びアクリロニトリルを含む共重合体組成物、並びに共重合体組成物のポリエチレン付加物であることが好ましい。
ワックス分散剤の含有量としては、IRトナー100質量部に対して、7質量部以下であることが好ましい。ワックス分散剤を含有することにより、ワックスの分散効果が得られ、製造方法に左右されることなく安定的に保存性の向上が期待できる。また、ワックスの分散効果によりワックス径が小さくなり、感光体等へのフィルミング現象を抑制できる。含有量が7質量部以下であると、ポリエステル樹脂に対する非相溶成分が多くなり、光沢が低下すること、ワックスの分散性が高くなりすぎるために、耐フィルミング性は向上するが、定着時のワックスの表面への染み出しが悪くなり、低温定着性、耐ホットオフセット性が低下することなどの不具合を防止することができる。
<<<帯電制御剤>>>
帯電制御剤としては、公知のものを全て使用することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、第4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩、及びサリチル酸誘導体の金属塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
帯電制御剤としては、適宜合成したものが使用されてもよいし、市販品が使用されてもよい。市販品としては、例えば、ボントロン03、ボントロンP-51、ボントロンS-34、E-82、E-84、E-89(以上、オリエント化学工業社製)、TP-302、TP-415、コピーチャージPSY VP2038、コピーブルーPR、コピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA-901、LR-147(日本カーリット社製)などが挙げられる。
帯電制御剤の含有量としては、結着樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法に応じて適宜選択することができるが、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部~5質量部が好ましく、0.2質量部~2質量部がより好ましい。含有量が、5質量部以下であると、トナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く不具合を防止することができる。
また、帯電制御剤の中でも三価以上の金属塩を用いることでトナーの熱物性を制御することも可能である。金属塩を含むことにより、定着時に結着樹脂の酸性基と架橋反応が進行し、弱い三次元的な架橋を形成することで、低温定着性を維持しつつ、耐高温オフセット性を得ることができる。
金属塩としては、例えば、サリチル酸誘導体の金属塩、アセチルアセトナート金属塩などが挙げられる。金属としては、3価以上の多価イオン金属であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄、ジルコニウム、アルミニウム、チタン、ニッケルなどが挙げられる。これらの中でも、3価以上のサリチル酸金属化合物が好ましい。
金属塩の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、IRトナー100質量部に対して、0.5質量部~2質量部が好ましく、0.5質量部~1質量部がより好ましい。含有量が、0.5質量部以上であると、耐ホットオフセット性に劣る不具合を防止することができ、含有量が、2質量部以下であると、光沢性が劣る不具合を防止することができる。
<<<外添剤>>>
外添剤は、流動性や現像性、帯電性を補助するために含有される。外添剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機微粒子、高分子系微粒子などが挙げられる。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
高分子系微粒子としては、例えば、ソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子などが挙げられる。
外添剤は、表面処理剤による表面処理を行なって、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
外添剤の一次粒子径としては、5nm~2μmが好ましく、5nm~500nmがより好ましい。また、外添剤のBET法による比表面積としては、20m/g~500m/gが好ましい。
外添剤の含有量としては、IRトナーに対して0.01質量%~5質量%が好ましく、0.01質量%~2.0質量%がより好ましい。
<<<クリーニング性向上剤>>>
クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するために含有される。クリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩;ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などが挙げられる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1μmのものが好ましい。
<カラートナー>
カラートナーは、結着樹脂、及び着色剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。その他の成分については、その他の成分と同様のものを使用することができる。
カラートナーとしては、シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナーのいずれかであることが好ましく、シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナーであることがより好ましい。言い換えれば、トナーセットにおいては、IRトナーのベタ画像の60度光沢度が、シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナーのいずれかのベタ画像の60度光沢度より10以上高いことが好ましく、シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー、のすべてのベタ画像の60度光沢度より10以上高いことがより好ましい。
<<結着樹脂>>
本実施形態のカラートナーにより作像されるトナー像としては、一般的なオフセット印刷などと比較して低グロスであることが好ましい。
このため、カラートナーに含有される結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゲルを含むことが好ましい。ゲル分率としては、結着樹脂に対して、0.5質量%以上20質量%以下が好ましく、1.0質量%以上10質量%以下がより好ましい。
ゲルを含まない場合でも、カラートナーに用いられる結着樹脂としては、重量平均分子量Mwc100,000以上の高分子量体を含有していることが好ましく、IRトナーで用いられる結着樹脂の重量平均分子量Mwiよりも大きいことがより好ましい。カラートナーにおいて用いられる結着樹脂の重量平均分子量Mwcを、IRトナーにおいて用いられる結着樹脂の重量平均分子量Mwiよりも大きくすることにより、オフセット印刷と比較して視認性の高い、60度光沢度で10から30程度のカラー画像のグロスを得ることができる。
<<着色剤>>
着色剤としては、800nm以上の波長の吸収が、小さいものが好ましく、例えば、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン、ペリレンブラック、ペリノンブラック及びこれらの混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
プロセスカラートナーとして用いる場合、シアン、マゼンタ、及びイエローのそれぞれについて、以下の着色剤が好ましい。
シアンでは、C.I.ピグメントブルー15:3が好ましい。マゼンタでは、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド269、及びC.I.ピグメントレッド81:4が好ましい。イエローでは、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、及びC.I.ピグメントイエロー185が好ましい。これらの着色剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
着色剤の800nm以上の吸光度としては、0.05未満が好ましく、0.01未満がより好ましい。吸光度が、0.05未満であると、カラートナーがIRトナーの上に重ねられたとき、IRトナーで形成される情報の読み取りを阻害するという不具合を防止することができる。
着色剤の含有量としては、各着色剤の着色力にもよるが、各色のカラートナー全体に対して、3質量%~12質量%が好ましく、5質量%~10質量%がより好ましい。含有量が、3質量%以上であると、着色力が十分でなく単色トナー付着量が多くなり資源に無駄が生じる不具合を防止することができる。含有量が、12質量%以下であると、トナーの帯電性に影響が大きくなり安定したトナー帯電量を維持することが困難となる不具合を防止することができる。
<IRトナー、及びカラートナーの特性>
IRトナーのベタ画像の60度光沢度としては、30以上であり、30以上80以下が好ましく、30以上60以下が更に好ましい。ベタ画像の60度光沢度が、30未満ではIRトナー像の視認性が増すことにより、目的の隠し画像としての体をなさなくなる。80より大きいと、トナー樹脂の分子量が小さくなり、十分な定着温度範囲が維持できにくくなることがある。
カラートナーのベタ画像の60度光沢度としては、10以上40以下が好ましく、15以上35以下がより好ましい。光沢度が数値範囲であると、カラートナー像が比較的低グロスの画像となる。
また、IRトナーのベタ画像の60度光沢度は、カラートナーのベタ画像の60度光沢度より10以上高く、15以上高いことが好ましく、20以上高いことが更に好ましい。IRトナーのベタ画像の60度光沢度と、カラートナーのベタ画像の60度光沢度との差が、10未満であると、画像出力媒体上で、画像形成時の加熱定着前にIRトナー像の上にカラートナー像を重ねた場合、加熱加圧定着される際に、上層のカラートナーが下層のIRトナー層内に入り込み、カラートナー像の視認性が悪化する。即ち、IRトナーのベタ画像の光沢度が、カラートナーのベタ画像の光沢度と比較して高いことにより、上層に重ねられたカラートナー像の視認性が向上し、結果として、下層のIRトナー像が視認されにくくなる。
カラートナーのベタ画像の800nm以上の吸光度としては、0.05未満であることが好ましく、0.01未満であることがより好ましい。
IRトナー、及びカラートナーのベタ画像の光沢度を調整する手段としては、例えば、結着樹脂のゲルの割合を調整する、結着樹脂の重量平均分子量を調整することなどが挙げられる。結着樹脂のゲル分率が大きいほど低光沢となり、ゲル分率が0に近づくほど高光沢となる傾向となる。ゲルを含まない結着樹脂を用いた場合、結着樹脂の重量平均分子量が大きいほど低光沢となり、重量平均分子量が小さいほど高光沢となる傾向にある。
更に結着樹脂に酸価のある樹脂を用いると、3価以上の金属塩を添加することにより光沢を調整することも可能である。結着樹脂酸価が大きく、金属塩添加量が多いほど低光沢となる傾向になり、結着樹脂酸価が小さく、金属塩添加量が少ないほど高光沢となる傾向となる。
IRトナーの重量平均分子量(Mwi)としては、6,000~12,000が好ましく、7,500~10,000がより好ましい。
重量平均分子量としては、THF溶解分の分子量分布をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定装置GPC-150C(ウォーターズ社製)によって測定できる。
重量平均分子量の測定としては、例えば、カラム(KF801~807:ショウデックス社製)を使用し、以下の方法で行う。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流す。次いで、試料0.05gをTHF5gに十分に溶かした後、前処理用フィルタ(例えば、孔径0.45μm クロマトディスク(クラボウ製))で濾過し、最終的に試料濃度として0.05質量%~0.6質量%に調製した樹脂のTHF試料溶液を50μL~200μL注入して測定する。
IRトナーのゲル分率は0質量%~2質量%が好ましい。
ゲル分率は、重量平均分子量の測定の際に用いた、前処理用フィルタにてろ過された成分の乾燥重量より算出することができる。
IRトナーの重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)としては、5以下が好ましく、4以下がより好ましい。
重量平均分子量Mw、個数平均分子量Mnの測定方法としては、IRトナーの有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、分子量が6×10、2.1×10、4×10、1.75×10、5.1×10、1.1×10、3.9×10、8.6×10、2×10、4.48×10(PressureChemical Co.社製、又は東洋ソーダ工業社製)などが挙げられる。検量線を作成するにあたり、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
IRトナーの酸価としては、12mgKOH/g以下が好ましく、6mgKOH/g~12mgKOH/gがより好ましい。酸価は、結着樹脂として、ポリエステル樹脂を用いることで数値範囲内にすることができ、低温定着性と、耐ホットオフセット性を両立しやすい。
本実施形態におけるトナー及び結着樹脂の酸価の測定は、JIS K0070-1992に記載の測定方法に準拠して以下の条件で測定を行った。
試料溶液の調製としては、トナー又は結着樹脂0.5g(酢酸エチル可溶成分では0.3g)をトルエン120mLに添加して室温(23℃)で約10時間攪拌して溶解した。更に、エタノール30mLを添加して試料溶液とした。
測定は装置にて計算することが出来るが、具体的には次のように計算した。あらかじめ標定されたN/10苛性カリ~アルコール溶液で滴定し、アルコールカリ液の消費量から次の計算で酸価を求めた。
酸価=KOH(mL数)×N×56.1/試料質量(ただしNはN/10KOHのファクター)
なお、以下に示す実施例及び比較例では、結着樹脂とトナーの酸価がほぼ一致した。したがって、結着樹脂の酸価をトナーの酸価として扱う。
<<トナー粒径>>
IRトナーの重量平均粒径としては、5μm以上7μm以下が好ましく、5μm以上6μm以下がより好ましい。
カラートナーの重量平均粒径としては、4μm以上8μm以下が好ましく、5μm以上7μm以下がより好ましい。
重量平均粒径が範囲内であると、600dpi以上の微少ドットを再現し、高画質な画像を得ることができる。これは、微小な潜像ドットに対して、十分に小さい粒径のトナー粒子を有することができ、ドット再現性に優れるという利点が得られる。
特に、IRトナーにおいては、画像出力媒体上に転写され定着前の状態において、高密度に配置され、その上に重ねられるカラートナーがその隙間に入り込まないようにすることにより、再現性の高い定着後の画像を得ることができる。その再現性の高い画像は赤外光照射により機械読み取り処理にあたり、より安定した処理が可能となる。
カラートナーの重量平均粒径(D4)が4μm以上であると、転写効率の低下、ブレードクリーニング性の低下といった現象を防止することができ、カラートナーの重量平均粒径(D4)が8μm以下であると、上述のように定着前の画像に重なられたカラートナーが入り込むことによる画像情報の乱れが生じやすくなること、文字やラインの飛び散りを抑えることが難しくなるという不具合を抑えることができる。
また、重量平均粒径(D4)と個数平均粒径(D1)との比(D4/D1)としては、1.00~1.40が好ましく、1.05~1.30がより好ましい。比(D4/D1)は、1.00に近いほど粒径分布がシャープであることを示す。
このような小粒径で粒径分布の狭いトナーでは、トナーの帯電量分布が均一になり、地肌かぶりの少ない高品位な画像を得ることができ、また、静電転写方式では転写率を高くすることができる。
異なる色のトナー像を重ね合わせることにより多色像を形成するフルカラー画像形成方法においては、ブラックトナー1色のみで画像形成するため異なる色のトナー像を重ね合わせる必要のないモノクロ画像形成方法に比べて紙上に付着させるトナー量が多い。すなわち現像、転写、定着されるトナー量が多くなるために、上述の転写効率の低下、ブレードクリーニング性の低下、文字やラインの飛び散り、地肌かぶりなど画質を悪化させる不具合が起こりやすく、重量平均粒径(D4)や重量平均粒径(D4)と個数平均粒径(D1)との比(D4/D1)の管理が重要となる。
トナー粒子の粒度分布の測定は、コールターカウンター法によるトナー粒子の粒度分布の測定装置を用いて行うことができる。装置としては、例えば、コールターカウンターTA-IIやコールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)が挙げられる。
具体的な測定方法は以下のとおりである。
まず、電解水溶液100mL~150mL中に分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩など)を0.1mL~5mL加える。電解水溶液とは、1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えば、ISOTON-II(コールター社製)が挙げられる。
次に、測定試料を2mg~20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1分間~3分間分散処理を行ない、測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの重量、個数を測定して、重量分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)を求めることができる。
チャンネルとしては、2.00~2.52μm未満;2.52~3.17μm未満;3.17~4.00μm未満;4.00~5.04μm未満;5.04~6.35μm未満;6.35~8.00μm未満;8.00~10.08μm未満;10.08~12.70μm未満;12.70~16.00μm未満;16.00~20.20μm未満;20.20~25.40μm未満;25.40~32.00μm未満;32.00~40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上乃至40.30μm未満の粒子を対象とする。
電子写真現像用トナーの正接損失(tanδ)は、画像の光沢度と明らかな相関があることが知られている。tanδの値が大きくなるとトナーの定着時の延展性が大きくなり、基材隠蔽性が高くなり、高光沢の画像が得られる。
IRトナーの100℃~140℃における正接損失(tanδi)としては、2.5以上が好ましく、3.0以上がより好ましい。tanδiは、15以下が好ましい。なお、IRトナーの100℃~140℃における正接損失(tanδi)が2.5以上であるとは、100℃~140℃において、IRトナーの正接損失(tanδi)が常に2.5以上の値をとることを意味する。
カラートナーの正接損失(tanδc)としては、2以下が好ましい。tanδcは、0.1以上が好ましい。カラートナーの正接損失が2以下であると、IR画像上に重ねたカラートナーがIRトナー画像内に入り込み、IRトナー画像の安定性を損なうという不具合を防止することができる。なお、カラートナーの100℃~140℃における正接損失(tanδc)が2以下であるとは、100℃~140℃において、カラートナーの正接損失(tanδc)が常に2以下の値をとることを意味する。
電子写真現像用トナーの正接損失(tanδ)は、損失弾性率(G'')及び貯蔵弾性率(G')の比(G'')/(G')であり、粘弾性測定により測定することができる。損失弾性率(G'')及び貯蔵弾性率(G')は、例えば、以下の方法により測定することができる。IRトナー、又はカラートナーを0.8g、φ20mmのダイスを用いて30MPaの圧力で成型し、ADVANCED RHEOMETRIC EXPANSION SYSTEM(TA社製)でφ20mmのパラレルコーンを使用して周波数1.0Hz、昇温速度2.0℃/分間、歪み0.1%(自動歪み制御:許容最小応力1.0g/cm、許容最大応力500g/cm、最大付加歪み200%、歪み調整200%)、GAPはサンプルセット後FORCEが0~100gmになる範囲で、損失弾性率(G'')、貯蔵弾性率(G')、正接損失(tanδ)の測定を行うことができる。
<トナーの製造方法>
本実施形態のトナーセットの製造方法としては、溶融混練-粉砕法、重合法など従来公知の方法が適用できる。また、カラートナーとIRトナーの製造法は同じ製造方法を用いても良いし、カラートナーは重合法、IRトナーは溶融混練粉砕法といったように別の製造方法を用いても良い。
<<溶融混練-粉砕法>>
溶融混練-粉砕法においては、その製造工程では、(1)少なくとも結着樹脂と着色剤もしくは近赤外光吸収材料、離型剤とを溶融混錬する工程、(2)溶融混錬されたトナー組成物を粉砕/分級する工程、(3)無機微粒子を外添する工程を有する。また、工程(2)の粉砕/分級工程で複製する微紛を、工程(1)の原料としてサイド混練することがコストの面で好ましい。
混練に使用する混錬機としては、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、又はオープンロール型混練機等を用いることができる。混錬機の種類としては、例えば、KRCニーダー(栗本鉄工所社製)、ブス・コ・ニーダー(Buss社製)、TEM型押し出し機(東芝機械社製)、TEX二軸混練機(日本製鋼所社製)、PCM混練機(池貝鉄工所社製)、三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製)、ニーデックス(三井鉱山社製)、MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製)、バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)などが挙げられる。
粉砕機としては、例えば、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製)、IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製)、クロスジェットミル(栗本鉄工所社製)、ウルマックス(日曹エンジニアリング社製)、SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製)、クリプトロン(川崎重工業社製)、ターボミル(ターボエ業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)などが挙げられる。
分級機としては、例えば、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製)、ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製)、ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製)、YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられる。
粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、例えば、ウルトラソニック(晃栄産業社製)、レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社)、バイブラソニックシステム(ダルトン社製)、ソニクリーン(新東工業社製)、ターボスクリーナー(ターボエ業社製)、ミクロシフター(槙野産業社製)、円形振動篩いなどが挙げられる。
<<重合法>>
重合法としては、従来公知の方法を用いることができる。重合法としては、例えば、以下のような手順が挙げられる。先ず、着色剤、結着樹脂、離型剤を有機溶媒中に分散させ、トナー材料液(油相)を作る。トナー材料液には、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を添加し、造粒中に反応させて、ウレア変性ポリエステル樹脂をトナーに含有させることが好ましい。
次に、トナー材料液を界面活性剤、樹脂微粒子の存在下、水系媒体中で乳化させる。
水系媒体としては、水系媒体に用いる水系溶媒は、水単独でもよいし、アルコールなどの有機溶媒を含むものであってもよい。
トナー材料液100質量部に対する水系溶媒の使用量は、通常50質量部~2,000質量部が好ましく、100質量部~1,000質量部がより好ましい。
樹脂微粒子としては、水性分散体を形成しうる樹脂であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
分散後、乳化分散体(反応物)から有機溶媒を除去し、洗浄、乾燥してトナー母体粒子を得る。
IRトナー、及びカラートナーは、一成分現像剤としても、二成分現像剤として用いることができる。
本実施形態のトナーを二成分系現像剤に用いる場合には、磁性キャリアと混合して用いればよく、現像剤中のキャリアとトナーの含有比は、キャリア100質量部に対して、トナー1質量部~10質量部が好ましい。
磁性キャリアとしては、従来から公知のものを使用することができ、例えば、粒子径20μm~200μm程度の鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉、磁性樹脂キャリアなどが挙げられる。
磁性キャリアは、被覆されたものも使用することができる。磁性キャリアを被覆するための被覆材料としては、例えば、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等のアミノ系樹脂;ポリビニル等のポリビニリデン系樹脂;アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ弗化ビニル樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、弗化ビニリデンと弗化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンと弗化ビニリデンと非弗化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、シリコーン樹脂などが挙げられる。
更に必要に応じて、導電粉等を被覆樹脂中に含有させてもよい。導電粉としては、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等が使用できる。これらの導電粉は、平均粒子径1μm以下のものが好ましい。平均粒子径が1μm以下であると、電気抵抗の制御が困難になるという不具合を防止することができる。
本実施形態におけるIRトナーの一例としては、IRトナー像がベタ画像である場合のベタ画像の60度光沢度が、30以上であり、30以上80以下が好ましく、30以上60以下が更に好ましい。
また、本実施形態におけるIRトナーの他の例としては、IRトナー像がベタ画像である場合のベタ画像の60度光沢度は、カラートナー像がベタ画像である場合のベタ画像の60度光沢度より10以上高く、15以上高いことが好ましく、20以上高いことが更に好ましい。
本実施形態におけるIRトナーの更に他の例としては、IRトナーの100℃~140℃における正接損失(tanδi)は、2.5以上が好ましく、3.0以上がより好ましい。また、画像形成方法、及び画像形成装置において、カラートナーの正接損失(tanδc)としては、2以下が好ましい。
カラートナー像の形成に用いるカラートナーの数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。カラートナーを複数使用する場合は、複数のカラートナーを同時に形成する方法、単色トナーを繰り返し形成させて各色を重ねる方法のいずれも行うことができるが、単色トナーを繰り返し形成させて各色を重ねる方法が好ましい。なお、カラートナー像において、各色を形成させる順序としては特に制限はない。
IRトナー像における、IRトナーの付着量としては、0.30mg/cm以上0.45mg/cm以下が好ましく、0.35mg/cm以上0.40mg/cm以下がより好ましい。IRトナーの付着量が、0.30mg/cm以上であると画像の基材隠蔽率が十分となり安定した画像が得られる。
また、近赤外光吸収材料は、可視光領域に若干の吸収があり、完全に無色ではないため、近赤外光吸収材料のトナーへの添加量が増えれば、視認性が増してしまう。その為に、画像のIRトナー付着量を、0.45mg/cm以下とすることにより、視認性の低減が可能となる。
IRトナー像に重ねるカラートナー像の単位面積当たりにおけるトナー付着量は、30%以上80%以下が好ましい。カラートナー像の単位面積当たりにおけるトナー付着量がこの数値範囲内であると、カラートナー像の下にあるIRトナー像の視認性を十分に低下させることができる点で好ましい。
この理由としては、以下のことが考えられる。本実施形態のIRトナーは、可視光領域に若干の吸収があり、単色での画像は完全な透明ではない。よって、IRの画像情報を不可視にする(目視しにくくする)ためには、カラートナーでマスクするのが好ましい。カラートナー像の単位面積当たりにおけるトナー付着量が30%以上であれば、IRトナー像が視認されやすくなるという不具合を防止するのに有効である。カラートナー像の単位面積当たりにおけるトナー付着量が30%未満であると、特にイエロートナーを重ねた場合のIRトナー像の視認性が上がってしまう。
IRトナー像上のカラートナー像の単位面積当たりにおけるトナー付着量を30%以上80%以下とする画像形成方法は、特に二次元コード画像を重ねて画像形成する際に有効である。互いに情報の異なるIRトナーによる二次元コード画像とカラートナーによる二次元コード画像とを重ねて画像形成することにより、異なる光波長の読み取り装置(それぞれ860nm、532nm)を用いれば、同じ画像面積内で、カラートナーによる二次元コード画像のみの場合よりも多くの情報を埋め込むことができる。
記録材上において、IRトナー像である二次元コード画像(i)が、カラートナー像である二次元コード画像(c)よりも記録材側に形成されていることが好ましい。この際に、カラートナー像がベタ画像である場合のベタ画像の800nm以上900nm以下の吸光度は、0.05未満であることが好ましく、0.01未満であることがより好ましい。
また、二次元コード画像(i)が有する情報と、二次元コード画像(c)が有する情報とが異なることが好ましい。
IRトナーの二次元コード画像と、カラートナーの二次元コード画像とを重ねる場合、カラートナーの二次元コード画像をダミーのコードとする形態も可能である。このような形態では、IRトナーの二次元コード画像は、視認されることなく、赤外光の二次元コードの読み取り機のみで情報を読み取れ、カラートナーの二次元コード画像は、視認されるが、赤外光の二次元コードの読み取り機では情報を読み取ることができない。
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、不可視画像情報(例えばIRの画像情報)に基づいて不可視画像用トナー(例えばIRトナー)により像担持体(例えば中間転写ベルト12)上に形成される不可視画像用トナー像を最終的に記録材(例えば用紙P)上に転写して、記録材上に不可視画像(例えば二次元コード画像)を形成する画像形成装置(例えばプリンタ)であって、前記像担持体の表面移動方向に対して直交する幅方向(例えば主走査方向)における該像担持体上のトナー担持可能領域全域(例えば有効画像領域全域)にわたって、前記像担持体上に付着する不可視画像用トナーを検知する検知手段(例えばトナー付着量検知センサ180)と、前記検知手段の検知結果に基づいて前記幅方向における異常発生位置を判断する判断手段(例えば制御部30)とを有することを特徴とする。
不可視画像は、不正コピー防止等の目的で地紋を印刷する場合や、コード画像の情報量を増やす目的で可視画像であるコード画像と不可視画像によるコード画像とを重ねて印刷する場合など、幅広く利用され得る。このような用途で形成される不可視画像が形成される記録材上の像担持体幅方向(主走査方向)の位置は、画像形成動作ごとに異なる場合が多い。ところが、従来の画像形成装置は、予め決められた像担持体幅方向位置に不可視画像が形成され、検出手段が当該所定位置だけに対向するように設けられている。そのため、当該予め決められた像担持体幅方向位置以外の位置で発生する不可視画像の異常を検出手段により検出できず、形成する不可視画像によってはその異常の有無を判断することができない。
本態様によれば、像担持体上のトナー担持可能領域全域にわたって不可視画像用トナーを検知できる検知手段を用いる。これによれば、例えば、不可視画像用トナーによって像担持体上に検知パターンを形成し、その検知用パターン内に発生する異常(白スジや黒スジなど)の発生位置や、本来は付着しないはずの位置に不可視画像用トナーが付着する異常(黒スジなど)の発生位置が、当該トナー担持可能領域内のいずれの位置であっても、その異常発生位置を検知手段を用いて検知することが可能である。これにより、判断手段により、検知手段の検知結果に基づいて像担持体幅方向における異常発生位置を判断することができる。したがって、不可視画像がどの像担持体幅方向位置に形成される場合でも、その不可視画像の異常の有無について適切な判断をすることができる。よって、不正コピー防止等の用途やコード画像の情報量を増やす用途などの幅広い用途で使用される不可視画像を形成する際に、その異常の有無について判断をすることができる。
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記検知手段は、前記幅方向に延びるラインセンサ(例えばトナー付着量検知センサ180)であることを特徴とするものである。
これによれば、像担持体幅方向(主走査方向)における不可視画像用トナー像の担持可能領域全域にわたって不可視画像用トナーを適切に検知することができる。
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様において、前記検知手段は、前記像担持体上の不可視画像用トナーの反射濃度を検知する反射濃度センサ(例えばトナー付着量検知センサ180)であることを特徴とするものである。
本態様によれば、不可視画像用トナーを簡易な構成で検知することができる。特に、不可視画像用トナーは、記録材に定着される前の状態、すなわち、像担持体上に担持されている状態では、可視画像用トナーと同様、可視光を反射させるものがある。このような不可視画像用トナーを用いる場合、一般的な可視画像用トナーを検知する反射濃度センサを用いることが可能であり、より簡易な構成で不可視画像用トナーを検知することができる。
[第4態様]
第4態様は、第1乃至第3態様のいずれかにおいて、前記判断手段が判断した前記幅方向の異常発生位置と前記不可視画像情報に基づく不可視画像の形成される前記幅方向の位置とが重なるとき、該不可視画像の画像形成開始前に、ユーザーに報知する報知手段(例えば操作表示部50)を有することを特徴とするものである。
これによれば、判断手段により判断された異常発生箇所が、不可視画像情報に基づいて形成される不可視画像に影響を与える旨を、その不可視画像の画像形成前に、ユーザーに知らせることができる。よって、ユーザーは適切な対処をその不可視画像の画像形成前にとることが可能となる。
[第5態様]
第5態様は、第1乃至第4態様のいずれかにおいて、前記判断手段が判断した前記幅方向の異常発生位置と前記不可視画像情報に基づく不可視画像の前記幅方向の画像形成位置とが重なるとき、記録材上に形成される形成画像に対する該不可視画像の相対的位置を変更する処理を行うことを特徴とするものである。
これによれば、記録材上に形成される形成画像に対する不可視画像の相対的位置を変更して、判断手段により判断された異常発生位置に不可視画像の画像形成位置が重ならないようにすることができる。これにより、異常が発生しても、画像形成を継続することができる。
[第6態様]
第6態様は、第1乃至第4態様のいずれかにおいて、前記判断手段が判断した前記幅方向の異常発生位置と前記不可視画像情報に基づく不可視画像の前記幅方向の画像形成位置とが重なるとき、記録材上に形成される形成画像の向きを変更する処理を行うことを特徴とするものである。
これによれば、記録材上に形成される形成画像の向きを変更して、判断手段により判断された異常発生位置に不可視画像の画像形成位置が重ならないようにすることができる。これにより、不可視画像用トナー像の異常が発生しても、画像形成を継続することができる。
1 :画像形成部
2 :転写部
3 :記録材供給部
4 :定着部
5 :記録材排出部
6 :プロセスユニット
7 :感光体
8 :帯電ローラ
9 :現像装置
10 :感光体クリーニング装置
11 :露光装置
12 :中間転写ベルト
13 :一次転写ローラ
14 :二次転写ローラ
15 :駆動ローラ
16 :従動ローラ
17 :ベルトクリーニング装置
18 :給紙カセット
20 :タイミングローラ対
21 :定着装置
26 :トナーカートリッジ
27 :廃トナー収容容器
30 :制御部
31 :主制御部
32 :記憶部
33 :分解処理部
35 :ガンマ変換部
36 :階調変換部
37 :トナー総量規制部
40 :画像形成制御部
50 :操作表示部
180 :トナー付着量検知センサ
181 :光源
182 :レンズアレイ
183 :撮像素子アレイ
184 :検知窓
185 :シャッター部材
186 :白色基準板
ds :黒スジ
ws :白スジ
特開2010-286641号公報

Claims (6)

  1. 不可視画像情報に基づいて不可視画像用トナーにより像担持体上に形成される不可視画像用トナー像を最終的に記録材上に転写して、記録材上に不可視画像を形成する画像形成装置であって、
    前記像担持体の表面移動方向に対して直交する幅方向における該像担持体上のトナー担持可能領域全域にわたって、前記像担持体上に付着する不可視画像用トナーを検知する検知手段と、
    前記検知手段の検知結果に基づいて前記幅方向における異常発生位置を判断する判断手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
  2. 請求項1に記載の画像形成装置において、
    前記検知手段は、前記幅方向に延びるラインセンサであることを特徴とする画像形成装置。
  3. 請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
    前記検知手段は、前記像担持体上の不可視画像用トナーの反射濃度を検知する反射濃度センサであることを特徴とする画像形成装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
    前記判断手段が判断した前記幅方向の異常発生位置と前記不可視画像情報に基づく不可視画像の形成される前記幅方向の位置とが重なるとき、該不可視画像の画像形成開始前に、ユーザーに報知する報知手段を有することを特徴とする画像形成装置。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
    前記判断手段が判断した前記幅方向の異常発生位置と前記不可視画像情報に基づく不可視画像の前記幅方向の画像形成位置とが重なるとき、記録材上に形成される形成画像に対する該不可視画像の相対的位置を変更する処理を行うことを特徴とする画像形成装置。
  6. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
    前記判断手段が判断した前記幅方向の異常発生位置と前記不可視画像情報に基づく不可視画像の前記幅方向の画像形成位置とが重なるとき、記録材上に形成される形成画像の向きを変更する処理を行うことを特徴とする画像形成装置。
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