JP2023051507A - 有機電界発光素子用組成物、及び有機電界発光素子の製造方法 - Google Patents

有機電界発光素子用組成物、及び有機電界発光素子の製造方法 Download PDF

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Hidetaka Goromaru
優記 大嶋
Yuki Oshima
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Abstract

【課題】層の平坦性を向上することができる有機電界発光素子用溶媒化合物を提供する。【解決手段】式(1)で表される溶媒化合物と、機能性材料を含み、機能性材料は、繰返し単位をトリアリールアミン構造の繰返し単位として有する特定の重合体を含む、有機電界発光素子用組成物。TIFF2023051507000125.tif46134【選択図】なし

Description

本発明は、有機電界発光素子の製造において、機能性材料からなる有機膜である機能性膜の形成に好適に用いられる有機電界発光素子用組成物と、有機電界発光素子の製造方法に関する。
有機電界発光素子の製造方法としては、有機材料を真空蒸着法により成膜し、積層する製造方法が一般的であるが、近年、より材料使用効率に優れた製造方法として、溶液化した有機材料をインクジェット法等により成膜し、積層する湿式成膜による製造方法の研究が盛んになってきている。
湿式成膜による有機電界発光素子、特に有機ELディスプレイの製造においては、各画素をバンクと呼ばれる隔壁で区画し、バンク内の微小な領域に、有機電界発光素子を構成する有機膜を形成するための有機電界発光素子形成用組成物であるインクをインクジェット法にて吐出させて成膜する方法が検討されている。この際、インクに種々の表面改質剤を混合することにより、バンクで囲まれた領域内において、より平坦な膜を得る技術が提案されている(特許文献1及び2)。
しかし、従来法では、バンクで囲まれた領域内における膜の平坦性は十分ではなかった。
特許文献3には、乾燥・固化後に断面形状がほぼフラットな機能層を形成することを目的として、沸点の異なる2種以上の溶媒を用いる技術の開示がある。高沸点溶媒として例えば、1,1-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタンを用いる技術の開示がある。
国際公開第2010/104183号 特開2002-056980号公報 特開2015-185640号公報
湿式成膜による製造、特にインクジェット装置での塗布により製造される有機電界発光素子に用いられる溶媒には、発光材や正孔輸送材などの機能性材料を溶解させる性質や、成膜した時に層が平坦となるような性質が求められる。
特許文献3に開示された、1,1-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタンは、機能性材料を溶解することができる。また、1,1-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタンは沸点が高いため乾燥工程の後半まで層に残り、機能性材料の析出を防ぐことができる。
しかし、層の平坦性に対しては依然として改善の余地がある。
本発明は、層の平坦性を向上することができる有機電界発光素子用溶媒化合物、これを用いた組成物、及び有機電界発光素子の製造方法の提供を目的とした。
すなわち、本発明は下記<1>~<11>に関するものである。
<1>下記式(1)で表される溶媒化合物と、機能性材料を含み、
前記機能性材料は、下記式(54)で表される繰返し単位、下記式(55)で表される繰返し単位、下記式(56)で表される繰返し単位、及び、下記式(57)で表される繰返し単位から選択される繰返し単位をトリアリールアミン構造の繰返し単位として有する重合体を含む、有機電界発光素子用組成物。
Figure 2023051507000001
(式(1)中、R、R、R、n、mは、次の(i)又は(ii)のいずれかを満たす。
(i)
は炭素数1~6のアルキル基を表し、
は各々独立に炭素数1~3のアルキル基を表し、
は1~5の整数を表し、
は存在せず、すなわちm=0である。
(ii)
は炭素数2~6のアルキル基を表し、
、Rは各々独立に炭素数1~3のアルキル基を表し、
、mは0~5の整数を表す。)
Figure 2023051507000002
(式(54)中、
Ar51は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選択される複数の基が連結した基を表し、かつ、少なくとも、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基の縮合環構造、若しくは、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が複数連結した構造を含み、
Xは、-C(R207)(R208)-、-N(R209)-又は-C(R211)(R212)-C(R213)(R214)-であり、
201、R202、R221及びR222は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基であり、
207~R209及びR211~R214は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、
a及びbは、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
cは、0~3の整数であり、
dは、0~4の整数であり、
i及びjはそれぞれ独立して0~3の整数である。)
Figure 2023051507000003
(式(55)中、
Ar51は前記式(54)におけるAr51と同様であり、
303及びR306は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基であり、
304及びR305は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよいアラルキル基であり、
lは、0又は1であり、
mは、1又は2であり、
nは、0又は1であり、
pは、0又は1であり、
qは、0又は1である。)
Figure 2023051507000004
(式(56)中、
Ar51は前記式(54)におけるAr51と同様であり、
Ar41は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基、又は前記2価の芳香族炭化水素基及び前記2価の芳香族複素環基からなる群から選択される少なくとも1つの基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した2価の基であり、
441及びR442は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基であり、
tは、1又は2であり、
uは、0又は1であり、
r及びsは、それぞれ独立して、0~4の整数である。)
Figure 2023051507000005
(式(57)中、
Ar51は前記式(54)におけるAr51と同様であり、
517~R519は、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
f、g、hは、各々独立して、0~4の整数を表し、
eは0~3の整数を表し、
ただし、gが1以上の場合、eは1以上である。)
<2>前記重合体中に含まれる、前記式(54)で表される繰返し単位、前記式(55)で表される繰返し単位、前記式(56)で表される繰返し単位、又は、前記式(57)で表される繰返し単位が、Ar51としてさらに、下記式(51)で表される基、下記式(52)で表される基、及び、下記式(53)で表される基から選択される基を含む、<1>に記載の有機電界発光素子用組成物。
Figure 2023051507000006
(式(51)中、
*は前記式(54)、前記式(55)、前記式(56)、及び前記式(57)の主鎖の窒素原子との結合を表し、
Ar53、Ar54は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは置換基を有していてもよい芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した2価の基を表し、
Ar55は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した1価の基を表し、
Ar56は、水素原子又は置換基を表す。)
Figure 2023051507000007
(式(52)中、
Ar61及びAr62は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した2価の基であり、
Ar63~Ar65は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基である。
*は前記式(54)、前記式(55)、前記式(56)、及び前記式(57)中の主鎖の窒素原子への結合位置を表す。)
Figure 2023051507000008
(式(53)中、
*は前記式(54)、前記式(55)、前記式(56)、及び前記式(57)の主鎖の窒素原子との結合を表し、
Ar71は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表し、
Ar72及びAr73は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、或いは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選ばれる2以上の基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した1価の基を表し、
環HAは窒素原子を含む芳香族複素環であり、
、Yは、それぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表し、X及びYの少なくとも一方が、炭素原子の場合は、当該炭素原子は置換基を有していてもよい。)
<3>前記トリアリールアミン構造を繰返し単位として有する重合体の重量平均分子量が50,000以下である、<1>又は<2>に記載の有機電界発光素子用組成物。
<4>前記繰返し単位であるトリアリールアミン構造が、前記式(54)で表される繰返し単位を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の有機電界発光素子用組成物。
<5>さらに溶媒Bを含み、
前記溶媒Bは、前記溶媒化合物とは異なる沸点200℃以上の溶媒化合物である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の有機電界発光素子用組成物。
<6>前記組成物中に含まれる溶媒の全量に対する前記溶媒化合物と前記溶媒Bの合計の含有量が50重量%以上である、<5>に記載の有機電界発光素子用組成物。
<7>前記溶媒Bの23℃における粘度が5mPas以下である、<5>又は<6>に記載の有機電界発光素子用組成物。
<8>前記溶媒化合物の沸点aと前記溶媒Bの沸点bが、沸点b<沸点aを満たす、<5>~<7>のいずれか1つに記載の有機電界発光素子用組成物。
<9>前記沸点aと前記沸点bの差が10℃以上である、<5>~<8>のいずれか1つに記載の有機電界発光素子用組成物。
<10>前記沸点aは、270℃以上340℃以下の範囲であり、前記沸点bは、250℃以上340℃以下の範囲である<5>~<9>のいずれか1つに記載の有機電界発光素子用組成物。
<11><10>に記載の有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜する工程を含む、有機電界発光素子の製造方法。
本発明により、層の平坦性を向上することができる有機電界発光素子用組成物、及び有機電界発光素子の製造方法を提供することができる。
図1は、本発明の有機電界発光素子の構造例を示す断面の模式図である。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形して実施することができる。
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、式(1)で表される溶媒化合物を用いることで、層の平坦性を向上することができることを見出した。ことで、より広範囲での波長調節ができ、特に赤色に代表される長波長側へ調節された芳香族化合物を提供することができることを見出した。
<溶媒化合物>
本発明で用いる溶媒化合物は、下記式(1)で表される有機電界発光素子用溶媒化合物である。
Figure 2023051507000009
(式(1)中、R、R、R、n、mは、次の(i)又は(ii)のいずれかを満たす。
(i)
は炭素数1~6のアルキル基を表し、
は各々独立に炭素数1~3のアルキル基を表し、
は1~5の整数を表し、
は存在せず、すなわちm=0である。
(ii)
は炭素数2~6のアルキル基を表し、
、Rは各々独立に炭素数1~3のアルキル基を表し、
、mは0~5の整数を表す。)
一般的に、有機電界発光素子を形成する機能性材料は芳香族系の化合物である。本発明の溶媒化合物は、アルキル基の一方の末端炭素上に2つのフェニル基が結合している。すなわち、2つのフェニル基がメチレン基で連結されている。ここで、フェニル基は芳香族系の溶質化合物と相互作用することで、機能性材料である芳香族系の溶質化合物を高濃度で溶解させることができる。さらに、2つのベンゼン環が4級炭素で連結することで分子骨格の平面性が崩れて自由度が増し、より溶質化合物との親和性を向上させるように自由に配列されやすくなり、さらに溶解性が高くなると推測される。
(i)の場合はさらに、本発明の溶媒化合物における、2つのフェニル基のうち一方のフェニル基のみに置換基を有することで非対称性が高くなり、非対称的な会合体が形成され、対称な溶媒よりも溶質化合物がより分散し、より均一で平坦なアモルファス性の有機膜を形成すると考えられる。
また、(ii)の場合、及び、(i)の場合であってnが2以上の場合はさらに、末端に2つのフェニル基が結合を有しているアルキル基が炭素数3以上のアルキル基であるため、2つのフェニル基が結合していない部位にて本発明の溶媒化合物同士が相互作用して均一な溶液となる。従って溶質化合物がより均一に分散し、均一で平坦なアモルファス性の有機膜を形成すると考えられる。
これらの結果、発光効率に優れた素子、及び/又は、長寿命の発光素子を得ることが出来ると期待される。
尚、本発明で用いる溶媒化合物は、以下の説明において単に溶媒又は溶剤と記すことがある。単に溶媒又は溶剤と記したものが本発明で用いる溶媒化合物であるかどうかは、文脈にて適切に解釈されるものである。
<(i)の場合>
は炭素数1~6のアルキル基を表し、Rは各々独立に炭素数1~3のアルキル基を表し、nは1~5の整数を表し、Rは存在せず、すなわちm=0である。
<R
は、炭素数1~6のアルキル基である。アルキル基としては、直鎖のアルキル基でもよく、分岐鎖のアルキル基を用いることもできる。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基を用いることができる。好ましい範囲としては、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐鎖のプロピル基、直鎖又は分岐鎖のブチル基、直鎖又は分岐鎖のペンチル基、直鎖又は分岐鎖のヘキシル基である。膜の平坦性の面から、メチル基、エチル基、n-プロピル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。
<R
は各々独立に炭素数1~3のアルキル基である。アルキル基としては、直鎖のアルキル基でもよく、分岐鎖のアルキル基を用いることもできる。好ましい範囲は、メチル基、エチル基、プロピル基であり、膜の平坦性の面から特に好ましくはメチル基、エチル基である。
<n
は1~5の整数であり、膜の平坦性の面から好ましくは1~2の整数である。
に対するR、Rの好ましい範囲は、nが1の場合は、Rはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基で、Rがメチル基又はエチル基が好ましく、塗布性の面から特にRがメチル基、エチル基であり、Rがエチル基であることが好ましい。
が2の場合は、Rはメチル基、エチル基、ピロピル基であり、Rはメチル基である事が塗布膜の安定性の面から好ましく、インクの保存安定性の面からRはメチル基、Rはメチル基であることが特に好ましい。
本発明で用いる溶媒化合物が(i)の場合、Rとしてアルキル基を有し、Rが存在しないことから、二つのベンゼン環が非対称であるため特に溶解性に優れると考えられる。また、R及びRは炭素数の少ないメチル基であることで溶媒化合物自体の安定性が向上すると考えられる。その結果、芳香環基を多く含む有機電界発光素子に用いられる機能性材料に対する溶解性が高く、かつ、保存安定性に優れたインクを得ることが出来ると考えられる。
<(ii)の場合>
は炭素数2~6のアルキル基を表し、R、Rは各々独立に炭素数1~3のアルキル基を表し、n、mは0~5の整数を表す。
<R
は、炭素数2~6のアルキル基である。アルキル基としては、直鎖のアルキル基でもよく、分岐鎖のアルキル基を用いることもできる。例えば、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基を用いることができる。平坦性の向上の面から特にアルキル基の好ましい範囲としては、エチル基、直鎖又は分岐鎖のプロピル基、直鎖又は分岐鎖ブチル基、直鎖又は分岐鎖ペンチル基、直鎖又は分岐鎖ヘキシル基である。膜の平坦性や安定性、及び溶解性の観点から、Rは、炭素数3~5のアルキル基が好ましく、炭素数4又は5のアルキル基がさらに好ましい。膜の平坦性や安定性の面から、n-ブチル基、n-ペンチル基がより好ましい。
<R、R
、Rは各々独立に炭素数1~3のアルキル基を表す。アルキル基としては、直鎖のアルキル基でもよく、分岐鎖のアルキル基を用いることもできる。アルキル基の好ましい範囲は、メチル基、エチル基、プロピル基であり、膜の平坦性の面から特に好ましくはメチル基である。
とRは、同一であってもよく、異なっていてもよい。溶質の溶解性を向上させ、膜の均一性の観点からは、異なっている事が好ましい。
<n、m
、mは0~5の整数である。n、mは膜の平坦性の面から好ましくは0~2の整数であり、特に好ましくは0又は1である。
、R、nの好ましい範囲は、nが0の場合、mは0であり、Rは炭素数3以上が好ましく、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基が好ましく、塗布性の面から特に好ましくは炭素数4以上であり、n-ブチル基、n-ペンチル基である事が塗布膜の安定性の面から好ましい。この場合は、式(1)における二つのベンゼン環に置換基が無く立体障害が少ないため、有機電界発光素子に用いられる機能性材料の芳香環基と相互作用しやすいと考えられ、さらにRが炭素数3以上であることで溶解性がさらに向上していると考えられる。
が1であり、mが1の場合は、Rはn-プロピル基、n-ブチル基で、R、Rがメチル基、エチル基である事が塗布膜の安定性の面から好ましい
が2であり、mが1又は2である場合は、Rはエチル基、プロピル基であり、R、Rはメチル基である事が塗布膜の安定性の面から好ましい。
<有機電界発光素子用組成物>
本発明の有機電界発光素子用(以下、本発明の組成物と称することがある。)は、機能性材料と、溶媒A含む組成物であって、該溶媒Aは、上記一般式(1)の構造を有する有機電界発光素子用溶媒化合物である。また、本発明の組成物は、溶媒Bを含むことが好ましく、該溶媒Bは、該溶媒Aとは異なる沸点200℃以上の溶媒化合物である。
溶媒Aの含有割合は、溶媒の総量に対して0.5~50重量%であることが好ましい。
機能性材料の割合は、0.5重量%から10重量%程度であり、溶媒Aが少なくとも0.5重量%含まれていれば、膜形成される1歩手前の状態では、溶質に対して溶媒Aの比率が大きくなり、溶媒Aの平坦性の影響を受けると考えられる。
本発明の組成物に含まれる溶媒Aは、非対称性を持つ特定の構造式を有する式(1)で表される構造を有する化合物であり、機能性材料に対する高い溶解性と、適度な粘度を兼ね備えており、微小ノズルから吐出可能なインクとして使用可能である。
本発明の組成物は、常温では適度な粘度を示すが、真空乾燥される過程で気化熱により温度が下がると粘度上昇を起こす。これにより、液の流動速度が遅くなり、膜形状をコントロールすることができるようになって、平坦な膜を得ることができる。特に、高分子より比較的結晶性が高い低分子材料を用いた組成物においてより顕著である。
本明細書においては、本発明の組成物を、インクジェットなどのノズルから吐出するインクとして用いる場合、単にインクと称する場合がある。
本発明の組成物をインクジェットなどのノズルから吐出するインクとして用い、ノズルから吐出してバンクに囲まれた領域内に塗布した場合、バンクに囲まれた領域内のインクを液、または液膜と称する場合があり、ノズルから吐出されたインクを液滴と称する場合がある。
バンクに囲まれた領域内の液膜を乾燥させ、溶媒が揮発することによって液膜の溶媒組成比が変化したものも液または液膜と称する場合がある。
本発明の組成物を塗布成膜し、有機溶媒を揮発させて乾燥させて得られた、機能性材料を含む膜を機能性膜と称する。また、有機化合物を含む膜であって、溶媒を含まないか又は実質的に溶媒を揮発させて乾燥した膜を有機膜と称する。機能性膜は有機膜の一種である。
<溶媒の種類>
温度低下、粘度上昇による平坦性向上、および、パネル端部での平坦性確保の観点から、溶媒Aに加え少なくとも1種の溶媒Bを用いることが好ましい。
溶媒Bとしては、沸点200℃以上であれば特に限定されないが、好ましくは、芳香族炭化水素系溶媒、芳香族エステル系溶媒、芳香族エーテル系溶媒、芳香族ケトン系溶媒といった非水溶性の芳香族系溶媒またはそれらの混合物が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶媒としては、ベンゼン誘導体、ナフタレン誘導体、水素化ナフタレン誘導体、ビフェニル誘導体が好ましい。
ベンゼン誘導体としては、置換基の総炭素数が5以上12以下であって、直鎖、分岐、または脂環のアルキル基を置換として有するベンゼン誘導体が好ましく、n-オクチルベンゼル、n-ノニルベンゼン、n-デシルベンゼン、ドデシルベンゼンが挙げられる。
ナフタレン誘導体としては、特に限定はされないが、アルキル基で置換されたナフタレン誘導体が好ましく、1-メチルナフタレン、2-エチルナフタレン、2-イソプロピルナフタレン、2,6-ジメチルナフタレン、1-メトキシナフタレンが挙げられる。
水素化ナフタレン誘導体としては、例えばテトラリン、1,2-ジヒドロナフタレン、1,4-ジヒドロナフタレン等が挙げられ、これらは炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい。
ビフェニル誘導体としては、特に限定はされないが、炭素数1~6のアルキル基で置換されたビフェニル誘導体が好ましく、例えば3-エチルビフェニル、4-イソプロピルビフェニル等が挙げられる。
他の好ましい芳香族炭化水素系溶媒としては、ジフェニルメタン、メチルジフェニルメタンが挙げられる。
芳香族エステル系溶媒としては、安息香酸エステル系溶媒、フェニル酢酸エステル系溶媒、フタル酸エステル系溶媒が挙げられる。
安息香酸エステル系溶媒は、安息香酸とエステル結合を有する化合物であり、置換基を有していてもよい安息香酸と、炭素数2以上12以下のアルコールとがエステル結合した化合物を用いることができる。有していてもよい置換基は、炭素数1以上6以下の、直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数1以上6以下の、直鎖又は分岐のアルコキシ基が好ましい。これら置換基は複数であってもよく、複数の場合は置換基としての総炭素数が6以下が好ましい。安息香酸エステル系溶媒としては、例えば安息香酸ブチル、安息香酸n-ペンチル、安息香酸イソアミル、安息香酸n-ヘキシル、安息香酸2-エチルヘキシル、安息香酸ベンジル、4-メトキシ安息香酸エチル等が挙げられる。
フェニル酢酸エステル系溶媒としては、フェニル酢酸エチル等が挙げられる。
フタル酸エステル系溶媒としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチルが挙げられる。
他の好ましい芳香族エステル系溶媒としては、酢酸2-フェノキシエチル、イソ酪酸2-フェノキシエチル、等が挙げられる。
芳香族エーテル系溶媒は、芳香環とエーテル結合とを有する化合物であり、以下のようなものが挙げられる。
炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐のアルキル基が置換していてもよいジフェニルエーテル誘導体として、例えばジフェニルエーテル、2-フェノキシトルエン、3-フェノキシトルエン、4-フェノキシトルエン;
炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐のアルキル基とのエーテル結合を2個有するベンゼン誘導体として、例えば1,4-ジエトキシベンゼン、1-エトキシ-4-ヘキシルオキシベンゼン;
炭素数4以上12以下の直鎖又は分岐のアルキル基とエーテル結合を1個有するベンゼン誘導体として、例えばフェニルヘキシルエーテル;
ベンジルエーテル系溶媒として、例えばジベンジルエーテル;
その他の芳香族エーテル系溶媒として、2-フェノキシエタノール:
芳香族ケトン系溶媒は、芳香環とケトン構造とを有する化合物であり、例えば1-アセチルナフタレン等が挙げられる。
本発明で用いる溶媒Bは、非水溶性の非芳香族系溶媒であってもよく、非水溶性の非芳香族系溶媒としては、例えばエーテル系溶媒、グリコールエステル系溶媒などが挙げられる。
<その他溶媒成分>
本発明の組成物は、溶媒A、溶媒B以外の第3成分を有していてもよい。第3成分としては、式(1)を満たさず、沸点が200℃未満の溶媒成分が挙げられる。例えば上記溶媒Bで用いることができる溶媒成分のうち沸点が200℃未満のものが挙げられる。
第3成分の含有量は、本発明の組成物に対して0~60重量%の範囲であることが好ましく、膜の平坦性の観点から0~30重量%の範囲であることが好ましい。
<沸点>
溶媒Aの沸点は200℃以上が好ましく、260℃以上350℃以下の範囲がさらに好ましい。特に好ましくは270℃以上340℃以下の範囲である。本発明の組成物に含まれる溶媒の中で、溶媒Bは沸点200℃以上であり、特に沸点250℃以上340℃以下が好ましい。
沸点が高い方の溶媒に特定構造の溶媒(式(1))を用いることで、バンクに囲まれた領域内に有機膜を湿式成膜する際に、膜厚の均一性を良好にすることができる。
したがって、沸点は、溶媒Bの沸点b<溶媒Aの沸点aを満たすことが好ましい。これにより溶媒Bが蒸発する際の気化熱により溶媒Aの粘度が上昇し、平坦な膜が形成されると考えられる。
また、溶媒Aの沸点aと溶媒Bの沸点bの差が10℃以上であることが好ましい。
本発明で用いる溶媒A及び溶媒Bの沸点は共に200℃以上であって、溶媒Aの沸点は、溶媒Bの沸点より高いことが膜形成の点で好ましい。塗布後の乾燥工程時、通常は沸点の低い溶媒Bが溶媒Aよりも先に揮発する。後述するように、バンク内に吐出された組成物によって液膜を形成し、該液膜を真空乾燥等で乾燥する際、沸点の低い溶媒Bが先に揮発する。このとき、気化熱が奪われることによって液膜の温度が低下する。このとき、液膜中に残存する溶媒Aの粘度向上と共に、溶媒固有の非対称性構造により均一な膜形状を与えることができ、平坦な膜を得ることができると考えられる。
なお、本発明において、溶媒の沸点は1気圧下で測定された値である。
以下、一般式(1)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2023051507000010
Figure 2023051507000011
<粘度>
溶媒Aの粘度は、3mPas以上20mPas以下が好ましい。
溶媒Bは、23℃における粘度が5mPas以下であることが好ましい。溶媒Bの粘度が上記上限以下であることにより、組成物を調製する際に、粘度が高めの溶媒Aや、粘度を高くしやすい機能性材料も選択できるようになり、溶媒Aや機能性材料の選択の幅、インク濃度の選択の幅が広がる。
溶媒Bの粘度は、特に4.5mPas以下であることが好ましい。一方、インクジェットヘッドに充填された際に、ヘッド内にインクを保持しやすい観点から、溶媒Bの粘度は1.0mPas以上が好ましい。
本発明において、溶媒の粘度はE型粘度計RE85L(東機産業製)を用いて、23℃環境下にて、コーンプレート回転数20rpm~100rpmにより測定することができる。
<表面張力>
溶媒Aの表面張力は、30mN/m以上が好ましく、45mN/m以下であることが好ましい。溶媒Aの表面張力がこの範囲であることで、インク全体としての表面張力を適正な範囲に保ち、インクジェット装置での安定吐出が可能になると考えられる。また、溶媒Aの表面張力がこの範囲であることで、バンク内の液面が平坦化しやすく好ましいと考えられる。溶媒Aの表面張力が上記下限値以上であることで、乾燥中に液表面に一定以上の張力が発生し、表面積が小さくなろうとするために、膜にシワなどが発生しにくい。一方で、溶媒Aの表面張力が上記上限値以下であることで、乾燥中に表面張力差が発生しにくく、無駄なマランゴニ対流などが発生しにくくなるため、平坦な膜を形成しやすく好ましい。
本発明において、溶媒の表面張力は23.0℃の環境にて、白金プレートを用いたプレート法により測定することができる。
<溶媒の組み合わせ>
本発明の組成物に含まれる溶媒A及び溶媒Bは、それぞれ1種であっても複数種であってもよい。
特に、溶媒Aが2種以上含まれていることで、薄膜の手前で溶媒の対流を生み出しやすい表面張力を調整でき、非対称構造を持つ溶媒Aがより不均一化を抑制するため、平坦性をより一層高めることができ、好ましい。
本発明の組成物に含まれる溶媒Bは、いずれも非水溶性溶媒であることが好ましく、溶媒Bは非水溶性芳香族系溶媒であることが更に好ましい。
特に、機能性材料がよく溶解し、乾燥過程においても容易に析出してこないという観点から、溶媒Bは、それぞれ置換基を有していてもよい、ナフタレン、安息香酸エステル、芳香族エーテルのいずれかであることが好ましい。
[溶媒Aと溶媒Bの含有量]
本発明の組成物中の溶媒の全量に対して、溶媒Aの含有量は、0.5~50重量%である。溶媒Bの揮発によって溶媒Aの温度を効率的に下げるためには、揮発成分を多くしておくことが必要であるため、溶媒Aの含有量は50重量%以下であり、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。溶媒Bの揮発時に機能性材料を溶解した状態とするために、溶媒Aの含有量は0.5重量%以上であり、好ましくは5重量%以上、より好ましくは15重量%以上である。
組成物中に含まれる溶媒の全量に対する溶媒Aと溶媒Bの合計の含有量は50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましく、85重量%以上が特に好ましく、90重量%以上がとりわけ好ましく、最も好ましくは95重量%以上であり、上限としては100重量%である。溶媒Aと溶媒Bの合計の含有量が上記下限以上であることで、微小ノズルから吐出可能なインクとして使用可能であり、溶媒の乾燥を制御しやすく、本発明の効果が得られやすい。
[機能性材料]
本発明における機能性材料は、分子量50,000以下であることが好ましい。本発明における機能性材料は、低分子材料であっても高分子材料であってもよいが、低分子材料である場合により顕著な効果を得ることができる。ここで、低分子材料とは、分子量10,000以下であることが好ましく、更に好ましくは分子量5,000以下である。
本発明における機能性材料としては、後述の発光層用材料、正孔注入層用材料、正孔輸送層用材料または電子輸送層用材料を用いることができ、好ましくは発光層用材料、正孔注入層用材料、または正孔輸送層用材料である。発光層用材料としてさらに好ましくは、低分子の発光層用材料である。
また、本発明の機能性材料としては、電子受容性化合物を含んでもよい。本発明の組成物が電子受容性化合物を含む場合、本発明の組成物は正孔注入層形成用組成物であることが好ましい。
また、本発明における機能性材料としては、高分子化合物であることが好ましい。高分子化合物として好ましくは正孔輸送高分子化合物であり、通常、正孔注入層用材料、正孔輸送層用材料、又は発光層用材料として用いられる。
本発明の組成物には、機能性材料の1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。本発明の組成物が機能性材料として電子受容性化合物を含む場合、さらに正孔輸送高分子化合物を含むことが好ましい。
[電子受容性化合物]
本発明の組成物は、前記式(1)で表される溶媒化合物と、電子受容性化合物を含んでもよい。本発明の組成物に好適に用いられる電子受容性化合物は以下の通りである。
電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送材料から1電子受容する能力を有する化合物が好ましい。具体的には、電子受容性化合物としては、電子親和力が4.0eV以上である化合物が好ましく、5.0eV以上の化合物がさらに好ましい。
このような電子受容性化合物としては、例えばテトラアリールホウ素イオン化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物等が挙げられる。さらに具体的には、電子受容性化合物としては、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩(国際公開2005/089024号、国際公開2017/164268号);塩化鉄(III)(特開平11-251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(特開2003-31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体;ヨウ素;ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、ショウノウスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン等が挙げられる。
[テトラアリールホウ酸イオン]
テトラアリールホウ酸イオンは、ホウ素原子に、4つの、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環が置換した、イオン価1のアニオンである。
本発明の組成物に含まれることが好ましいテトラアリールホウ酸イオンは、アリール基の置換基として、フッ素原子又はフッ素置換されたアルキル基を有するため、安定性が高い。さらに、本発明の組成物に含まれることが好ましいテトラアリールホウ酸イオンは、下記式(2)で表されるテトラアリールホウ酸イオン及び対カチオンからなるイオン化合物であることが好ましい。下記式(2)で表されるテトラアリールホウ酸イオンを有すると、アニオンの安定性がさらに高く、カチオンを安定させる効果がさらに高くなる。
Figure 2023051507000012
(式(2)中、
Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選択される構造が複数連結した1価の基を表し、
該置換基は架橋基であってもよく、
Ar、Ar、Ar及びArの少なくとも1つは、フッ素原子又はフッ素置換されたアルキル基を置換基として有する。)
また、前記式(2)におけるAr、Ar、Ar及びArの少なくとも1つが、下記式(3)で表される基であることが好ましい。
Figure 2023051507000013
(式(3)中、
100は各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選択される構造が複数連結した1価の基、フッ素置換されたアルキル基、又はR100は架橋基を含む基であり、
はフッ素原子が4個置換していることを表し、
(5-m)は各々独立にフッ素原子が5-m個置換していることを表し、
kは各々独立に0~5の整数を表し、
mは各々独立に0~5の整数を表す。)
Ar、Ar、Ar及びArに用いられる芳香族炭化水素環基中の芳香族炭化水素環としては、単環、2~6縮合環が好ましい。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環、ビフェニル構造、テルフェニル構造、又はクアテルフェニル構造が挙げられる。
Ar、Ar、Ar及びArに用いられる芳香族複素環基中の芳香族複素環としては、単環、2~6縮合環が好ましい。具体的には、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、又はアズレン環が挙げられる。
中でも、安定性、耐熱性に優れることから、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、ピリジン環もしくはカルバゾール環由来の1価の基またはビフェニル基がより好ましい。特に好ましくはベンゼン環由来の1価の基、すなわちフェニル基又はビフェニル基である。
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選択される構造が複数連結した1価の基に含まれる、単環又は2~6縮合環の芳香族炭化水素環基及び単環又は2~6縮合環の芳香族複素環基の数は2以上であり、8以下が好ましく、4以下がさらに好ましく、3以下がより好ましい。
Ar、Ar、Ar及びArが有してもよい置換基としては、後述の置換基群Wに記載の基が挙げられる。
Ar、Ar、Ar及びArの置換基としては、アニオンの安定性が増し、カチオンを安定させる効果が向上する点から、フッ素原子又はフッ素置換されたアルキル基が好ましい。また、フッ素原子又はフッ素置換されたアルキル基は、Ar、Ar、Ar及びArのうち、2つ以上に置換していることが好ましく、3つ以上に置換していることがより好ましく、4つに置換していることが最も好ましい。
Ar、Ar、Ar及びArの置換基としてのフッ素置換されたアルキル基としては、炭素数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基であってフッ素原子が置換している基が好ましく、パーフルオロアルキル基がより好ましく、炭素数1~5の直鎖又は分岐のパーフルオロアルキル基がさらに好ましく、炭素数1~3の直鎖又は分岐のパーフルオロアルキル基が特に好ましく、パーフルオロメチル基が最も好ましい。この理由は、架橋基を有する電子受容性化合物の架橋物を含む正孔注入層や、その上層に積層される塗布膜が安定になるためである。
本発明の組成物に含まれる、テトラアリールホウ酸イオンは、アニオンの安定性がさらに増し、カチオンを安定させる効果がさらに向上する点で、Ar、Ar、Ar及びArの少なくとも二つが各々独立に前記式(3)で表される基であることがより好ましく、Ar、Ar、Ar及びArの少なくとも三つが各々独立に前記式(3)で表される基であることがさらに好ましく、Ar、Ar、Ar及びArすべてが各々独立に式(3)で表される基であることが最も好ましい。
kはアニオンの安定性がさらに向上する点で1以上が好ましく、2以上がより好ましい。kは偏りなく分散しやすい点で0又は1が好ましく、0がより好ましい。
mは耐久性により優れる点で、0が好ましく、テトラアリールホウ酸イオンに種々の機能を導入可能な点で、1以上が好ましく、耐久性との両立の点で1又は2がさらに好ましい。
アニオンの安定性が向上し、耐久性も優れる点で、k+m≧1であることが好ましく、k+m≧2であることがさらに好ましい。
100の芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基としては、その好ましい構造及び有してもよい置換基は、Ar、Ar、Ar及びArの構造及び有してもよい置換基と同様である。
100の置換基としては、後述の置換基群Wに記載の基が挙げられる。
式(3)においては、アニオンの安定性がさらに増し、カチオンを安定させる効果がさらに向上する点で、少なくとも一つのR100は前記フッ素置換されたアルキル基であることが好ましく、ペルフルオロアルキル基であることが好ましく、トリフルオロメチル基であることがより好ましい。
[架橋基]
式(3)においては、少なくとも一つのR100が架橋基を含み、当該架橋基は下記架橋基群Tにおける下記式(X1)~(X18)のいずれかで表されることが好ましい。
(架橋基群T)
Figure 2023051507000014
(式(X1)~(X4)中、ベンゼン環及びナフタレン環は置換基を有していてもよい。また、置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
式(X4)、式(X5)、式(X6)及び式(10)中のR110は水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。)
(X1)~(X4)で表される基は置換基を有していてもよく、その置換基の例としては、R100が有していてもよい置換基と同じである。
110がアルキル基である場合、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
100としては、式(X1)で表される基、式(X2)で表される基、若しくは式(X4)で表される基であるか、又は、式(X1)で表される基、式(X2)で表される基、若しくは式(X4)で表される基が1または複数個、芳香族炭化水素基に結合している構造がより好ましい。
100が、式(X1)で表される基、式(X2)で表される基、若しくは式(X4)で表される基が1または複数個、芳香族炭化水素基に結合している構造である場合の芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、又はベンゼン環とナフタレン環から選択される2以上が連結した構造を含む基であることが好ましく、連結数は4以下が好ましい。この場合のさらに好ましいR100は、ベンゼン環単環又はナフタレン環単環に式(X1)で表される基、式(X2)で表される基、若しくは式(X4)で表される基が結合している構造を含む基であり、ベンゼン環に式(X1)で表される基、式(X2)で表される基、若しくは式(X4)で表される基が結合している構造を含む基であることがさらに好ましく、式(X1)で表される基、式(X2)で表される基、若しくは式(X4)で表される基が1または2結合している構造を含む基であることが特に好ましい。
これら式(X1)~(X18)で表される基は架橋性を有しており、テトラアリールホウ酸イオン及び対カチオンが他の層に拡散しないと考えられるため好ましい。
(置換基群W)
置換基群Wは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、1~5の芳香環からなる芳香環基、炭化水素環基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルケトン基またはアリールケトン基である。
ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子などが挙げられ、フッ素原子が化合物の安定性から好ましい。化合物の安定性の面からフッ素原子で4つ以上置換されていることが特に好ましい。
1~5の芳香環からなる芳香環基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クアテルフェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、トリフェニレン基、ナフチルフェニル基等が挙げられ、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基またはクアテルフェニル基が化合物の安定性から好ましい。
炭化水素環基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数が通常1以上であり、好ましくは4以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下であり、さらに好ましくは8以下であり、より好ましくは6以下である。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、2エチルヘキシル基、ドデシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、炭素数が通常2以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下である。具体的には、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、炭素数が通常2以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下であり、具体的には、アセチル基、プロピニル基、ブチニル基等が挙げられる。
アラルキル基の例としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルヘキシル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数が通常1以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下であり、さらに好ましくは6以下であり、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、ブチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基としては、炭素数が通常4以上であり、好ましくは5以上であり、さらに好ましくは6以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下であり、さらに好ましくは12以下であり、具体例としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
アルキルチオ基としては、炭素数が通常1以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下であり、具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基、ヘキシルチオ基等が挙げられる。
アリールチオ基としては、炭素数が通常4以上であり、好ましくは5以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下であり、具体例としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
アルキルケトン基としては、炭素数が通常1以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下でありさらに好ましくは6以下であり、具体例としては、アセチル基、エチルカルボニル基、ブチルカルボニル基、オクチルカルボニル基等が挙げられる。
アリールケトン基としては、炭素数が通常5以上であり、好ましくは7以上であり、通常25以下であり、好ましくは13以下であり、具体例としては、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基等が挙げられる。
また、隣り合う置換基同士が結合して、環を形成してもよい。
環を形成した例としては、シクロブテン環、シクロペンテン環等が挙げられる。
また、これらの置換基にさらに置換基が置換されていてもよく、その置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基が挙げられる。
これらの置換基の中でも、ハロゲン原子またはアリール基が化合物の安定性の点で好ましい。最も好ましくはハロゲン原子である。
[テトラアリールホウ酸イオンの具体例]
以下に、本発明の組成物に用いるテトラアリールホウ酸イオンの具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2023051507000015
Figure 2023051507000016
Figure 2023051507000017
Figure 2023051507000018
Figure 2023051507000019
Figure 2023051507000020
Figure 2023051507000021
Figure 2023051507000022
Figure 2023051507000023
Figure 2023051507000024
上記具体例のうち、電子受容性、耐熱性、溶解性の点で、好ましくは、(A-1)、(A-2)のいずれかで表される化合物である。さらに、電荷輸送膜用組成物として安定性が高いことから、(A-18)、(A-19)、(A-20)、(A-21)、(A-25)、(A-26)、(A-28)のいずれかで表される化合物がより好ましく、組成物の安定性から(A-19)、(A-21)、(A-25)、(A-26)、(A-28)のいずれかで表される化合物が特に好ましい。
[テトラアリールホウ酸イオンを含む電子受容性イオン化合物]
テトラアリールホウ酸イオンは、テトラアリールホウ酸イオンを含む電子受容性イオン化合物として用いられることも好ましい。テトラアリールホウ酸イオンを含む電子受容性イオン化合物を第1のイオン化合物と称する。第1のイオン化合物は、アニオンである前記テトラアリールホウ酸イオンと対カチオンからなる。第1のイオン化合物は、電子受容性化合物として用いられる。
対カチオンとしては、ヨードニウムカチオン、スルホニウムカチオン、カルボカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオンまたは遷移金属を有するフェロセニウムカチオンが好ましく、ヨードニウムカチオン、スルホニウムカチオン、カルボカチオン、アンモニウムカチオンがより好ましく、ヨードニウムカチオンが特に好ましい。
ヨードニウムカチオンとして好ましくは、後述の一般式(6)で表される構造であり、さらに好ましい構造も同様である。
ヨードニウムカチオンとして具体的には、ジフェニルヨードニウムカチオン、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカチオン、4-tert-ブトキシフェニルフェニルヨードニウムカチオン、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウムカチオン、4-イソプロピルフェニル-4-メチルフェニルヨードニウムカチオン等が好ましい。
スルホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルスルホニウムカチオン、4-ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウムカチオン、4-シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムカチオン、4-メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムカチオン、(4-tert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムカチオン、ビス(4-tert-ブトキシフェニル)フェニルスルホニウムカチオン、4-シクロヘキシルスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムカチオン等が好ましい。
カルボカチオンとして具体的には、トリフェニルカルボカチオン、トリ(メチルフェニル)カルボカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボカチオンなどの三置換カルボカチオン等が好ましい。
アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン;ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオン等が好ましい。
ホスホニウムカチオンとして具体的には、テトラフェニルホスホニウムカチオン、テトラキス(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、テトラキス(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのテトラアリールホスホニウムカチオン;テトラブチルホスホニウムカチオン、テトラプロピルホスホニウムカチオンなどのテトラアルキルホスホニウムカチオン等が好ましい。
これらの中では、化合物の膜安定性の点でヨードニウムカチオン、カルボカチオン、スルホニウムカチオンが好ましく、ヨードニウムカチオンがより好ましい。
第1のイオン化合物の対カチオンとしてのヨードニウムカチオンは、下記式(6)で表される構造が好ましい。
Figure 2023051507000025
式(6)中、Ar、Arは各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基である。Ar、Arとしての芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基は、Ar、Ar、Ar及びArの場合と同じ構造から選択することが出来、好ましい構造もAr、Ar、Ar及びArの場合と同じ構造から選択することが出来る。
また、前記式(6)で表される対カチオンは、下記式(7)で表されることが好ましい。
Figure 2023051507000026
式(7)中、Ar及びArは、前述の式(6)におけるAr及びArが有していてもよい置換基と同様である。
本発明において使用される第1のイオン化合物の分子量は、通常900以上、好ましくは1000以上、更に好ましくは1200以上、また、通常10000以下、好ましくは5000以下、更に好ましくは3000以下の範囲である。分子量が小さすぎると、正電荷及び負電荷の非局在化が不十分なため、電子受容能が低下するおそれがあり、分子量が大きすぎると、電荷輸送の妨げとなるおそれがある。
[具体例]
以下に本発明における第1のイオン化合物として、ヨードニウムカチオンとのイオン化合物の具体例を挙げるが、第1のイオン化合物はこれらに限定されるものではない。
Figure 2023051507000027
Figure 2023051507000028
Figure 2023051507000029
Figure 2023051507000030
Figure 2023051507000031
Figure 2023051507000032
Figure 2023051507000033
Figure 2023051507000034
Figure 2023051507000035
Figure 2023051507000036
Figure 2023051507000037
Figure 2023051507000038
上記具体例のうち、電子受容性、耐熱性、溶解性の点で、好ましくは、(B-1)、(B-2)のいずれかで表される化合物である。さらに、電荷輸送膜用組成物として安定性が高いことから、(B-18)、(B-19)、(B-20)、(B-21)、(B-25)、(B-26)、(B-28)のいずれかで表される化合物がより好ましく、組成物の安定性から(B-19)、(B-21)、(B-25)、(B-26)、(B-28)のいずれかで表される化合物が特に好ましい。
より平坦な膜を得るためにも、このような電子受容性化合物を混合することは好ましい。電子受容性化合物は、通常高い電子親和力を得るために、電気陰性度の高い材料が使用される。これは、ハンセンの溶解度パラメータで見たとき、相対的に極性パラメータが非常に大きくなり、非極性の溶媒に対しては溶けにくい性質になる。一般式(1)に示される溶媒化合物を適用した場合、二つのベンゼン環と電子受容性化合物の相溶性が非常に悪く、インクの最表面に電子受容性化合物が集まりやすいと考えられる。正孔注入層形成時に、乾燥過程でわずかに析出してきた電子受容性化合物がインクの最表面に分布することで、ラプラス圧による流動の低減や、表面張力差によって発生してしまうマランゴニ対流を抑制するため、平坦な膜を得るのに好ましいと考えられる。
[正孔輸送高分子化合物]
本発明の組成物は、正孔輸送高分子化合物を含むことが好ましい。正孔輸送高分子化合物は通常、正孔注入層、正孔輸送層、又は発光層を形成するために用いられ、後述の正孔注入層形成用組成物、正孔輸送層形成用組成物、又は発光層形成用組成物に含まれる。この場合、本発明の組成物は、正孔注入層形成用組成物、正孔輸送層形成用組成物、又は発光層形成用組成物である。
正孔輸送高分子化合物として好ましくは、以下に記すトリアリールアミン構造を繰返し単位として含む重合体である。
[好ましい重合体]
本発明の組成物に含まれる機能性材料が正孔輸送高分子化合物を含む場合、正孔輸送高分子化合物としては、トリアリールアミン構造を繰り返し単位として有する重合体であることが好ましい。トリアリールアミン構造の繰返し単位は下記式(50)で表される。
Figure 2023051507000039
(式(50)中、
Ar51は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選択される複数の基が連結した基を表し、
Ar52は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基、又は前記2価の芳香族炭化水素基及び前記2価の芳香族複素環基からなる群から選択される少なくとも1つの基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した2価の基を表す。
Ar51とAr52は単結合又は連結基を介して環を形成していてもよい。Ar51、Ar52は架橋基を有していてもよい。)
架橋基は、Ar51又はAr52に直接または連結基を介して結合していることが好ましい。連結基としては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基が複数連結した構造が好ましく、芳香族炭化水素基としてはフェニル基が好ましい。連結基としての芳香族炭化水素基が有してよい置換基は下記置換基群Zから選択される。連結基としての芳香族炭化水素基は置換基を有さないことが好ましい。
(架橋基)
ここで架橋基とは、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により、該架橋基の近傍に位置する他の架橋基と反応して、新規な化学結合を生成する基のことをいう。この場合、反応する基は架橋基と同一の基あるいは異なった基の場合もある。
架橋基としては、限定されないが、アルケニル基を含む基、共役ジエン構造を含む基、アルキニル基を含む基、オキシラン構造を含む基、オキセタン構造を含む基、アジリジン構造を含む基、アジド基、無水マレイン酸構造を含む基、芳香族環に結合したアルケニル基を含む基、芳香族環に縮環したシクロブテン環などが挙げられる。好ましい架橋基の具体例としては前記架橋基群Tから選ばれる架橋基が挙げられる。
(Ar52)[主鎖]
上記式(50)で表される繰り返し単位中において、Ar52は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選択される複数の基が連結した基を表す。ここで、該芳香族炭化水素基及び該芳香族複素環基が有してもよい置換基は、後述の置換基群Zと同様の基が好ましい。
芳香族炭化水素基としては、炭素数が6以上、60以下が好ましく、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等の、6員環の単環若しくは2~5縮合環の2価の基又はこれらが複数連結した基が挙げられる。複数個連結される場合は、2~10連結した2価の基が挙げられ、2~5連結した2価の基であることが好ましい。なお、例えば「ベンゼン環の2価の基」とは、「2価の遊離原子価を有するベンゼン環」、すなわち、フェニレン基を意味する。芳香族炭化水素基として好ましくは、ベンゼン環、ビフェニル環すなわちベンゼン環が2連結した構造、ターフェニル環すなわちベンゼン環が3連結した構造、クォーターフェニレン環すなわちベンゼン環が4連結した構造、フルオレン環の2価の基である。
芳香族複素環基としては、炭素数が3以上、60以下が好ましく、具体的には、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等の、5~6員環の単環若しくは2~4縮合環の2価の基又はこれらが複数連結した基が挙げられる。複数個連結される場合は、2~10連結した2価の基が挙げられ、2~5連結した2価の基であることが好ましい。芳香族複素環基として好ましくは、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、カルバゾール環、トリアジン環の2価の基である。
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは置換基を有していてもよい芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した2価の基としては、同じ基が複数連結した基でもよく、異なる基が複数連結した基でも構わない。複数個連結される基としては2~10連結した2価の基が挙げられ、2~5連結した2価の基であることが好ましい。
(Ar51)[側鎖]
上記式(50)で表される繰り返し単位中において、Ar51は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選択される複数の基が連結した基を表す。置換基は、後述の置換基群Zと同様の基が好ましい。
芳香族炭化水素基としては、炭素数が6以上、60以下が好ましく、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等の、6員環の単環若しくは2~5縮合環の1価の基又はこれらが複数連結した基が挙げられる。複数個連結される場合は、2~10連結した1価の基が挙げられ、2~5連結した1価の基であることが好ましい。なお、例えば「ベンゼン環の1価の基」とは、「1価の遊離原子価を有するベンゼン環」、すなわち、フェニル基を意味する。
芳香族複素環基としては、炭素数が3以上、60以下が好ましく、具体的には、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等の、5~6員環の単環若しくは2~4縮合環の1価の基又はこれらが複数連結した基が挙げられる。複数個連結される場合は、2~10連結した1価の基が挙げられ、2~5連結した1価の基であることが好ましい。
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは置換基を有していてもよい芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した1価の基としては、同じ基が複数連結した基でもよく、異なる基が複数連結した基でも構わない。複数個連結される基としては2~10連結した1価の基が挙げられ、2~5連結した1価の基であることが好ましい。
Ar51は、電荷輸送性が優れる点、耐久性に優れる点から、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基が2~5連結した1価又は2価の基を含むことが好ましく、中でも置換基を有していてもよいベンゼン環が2~5連結した1価又は2価の基を含むことが更に好ましい。Ar51が置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基が2~5連結した2価の基を含む場合、末端が置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基である。置換基としては後述の置換基群Zから選択される基又は前記架橋基群Tから選択される架橋基が好ましい。
Ar51が置換基として架橋基を有する場合、Ar51は好ましくは、置換基を有していてもよいベンゼン環が2~5連結した1価の基の末端に前記架橋基群Tから選択される架橋基を有する構造が好ましい。Ar51はさらに好ましくは、置換基を有さないベンゼン環が2~5連結した1価の基の末端に前記架橋基群Tから選択される架橋基を有する構造である。
但し、該重合体は、該重合体中に含まれる前記式(54)で表される繰返し単位として、少なくとも、Ar51が、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基の縮合環構造、若しくは、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が複数連結した構造を含む。尚、Ar51が含む、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基の縮合環構造、若しくは、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が複数連結した構造は、その構造自体又はその構造を構成する部分構造が、置換基の一部又は架橋基の一部である場合も含む。芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が複数連結した構造は好ましくは、置換基を有していてもよいベンゼン環が2~5連結した1価又は2価の基であり、ここで、該ベンゼン環は置換基又は架橋基の一部であってもよい。
Ar51は、電荷輸送性が優れる点、耐久性に優れる点から、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基が好ましく、中でも置換基を有していてもよいベンゼン環又はフルオレン環の1価の基、すなわち、置換基を有していてもよいフェニル基又はフルオレニル基がより好ましく、置換基を有していてもよいフルオレニル基がさらに好ましく、置換基を有していてもよい2-フルオレニル基が特に好ましい。
Ar51の芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が有してもよい置換基としては、本重合体の特性を著しく低減させないものであれば、特に制限はない。当該置換基は、好ましくは、後述の置換基群Zから選ばれる基が挙げられ、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基がより好ましく、アルキル基がさらに好ましい。
Ar51は、塗布溶媒への溶解性の点から、炭素数1~24のアルキル基で置換されたフルオレニル基が好ましく、特に、炭素数4~12のアルキル基で置換された2-フルオレニル基が好ましい。さらに、2-フルオレニル基の9位がアルキル基で置換された9-アルキル-2-フルオレニル基が好ましく、特に、アルキル基で2置換された9,9’-ジアルキル-2-フルオレニル基が好ましい。
9位及び9’位の少なくとも一方がアルキル基で置換されたフルオレニル基であることにより、溶媒に対する溶解性及びフルオレン環の耐久性が向上する傾向にある。さらに、9位及び9’位の両方がアルキル基で置換されたフルオレニル基であることにより、溶媒に対する溶解性及びフルオレン環の耐久性がさらに向上する傾向にある。
また、Ar51は、塗布溶媒への溶解性の点から、スピロビフルオレニル基であることも好ましい。
(式(50)で表される繰り返し単位の含有量)
重合体において、式(50)で表される繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、式(50)で表される繰り返し単位は重合体中に通常10モル%以上含まれ、30モル%以上含まれることが好ましく、40モル%以上含まれることがより好ましく、50モル%以上含まれることがさらに好ましい。
重合体は、繰り返し単位が、式(50)で表される繰り返し単位のみから構成されていてもよいが、有機電界発光素子とした場合の諸性能をバランスさせる目的から、式(50)とは別の繰り返し単位を有していてもよい。その場合、重合体中の式(50)で表される繰り返し単位の含有量は、通常、99モル%以下、好ましくは95モル%以下である。
(末端基)
本明細書において、末端基とは、重合体の重合終了時に用いるエンドキャップ剤によって形成された、重合体の末端部の構造のことを指す。本発明の組成物において、式(50)で表される繰り返し単位を含む重合体の末端基は炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基としては、電荷輸送性の観点から、炭素数1以上60以下の炭化水素基が好ましく、1以上40以下の炭化水素基がより好ましく、1以上30以下の炭化水素基がさらに好ましい。
炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等の、炭素数が通常1以上であり、好ましくは4以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基;
ビニル基等の、炭素数が通常2以上、24以下であり、好ましくは12以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルケニル基;
エチニル基等の、炭素数が通常2以上、24以下であり、好ましくは12以下である、直鎖又は分岐のアルキニル基;
フェニル基、ナフチル基等の、炭素数が通常6以上、36以下であり、好ましくは24以下である芳香族炭化水素基;が挙げられる。
これら炭化水素基はさらに置換基を有していてもよく、さらに有していてもよい置換基はアルキル基又は芳香族炭化水素基が好ましい。これらさらに有していてもよい置換基が複数ある場合は、互いに結合して環を形成していてもよい。
末端基は、好ましくは、電荷輸送性及び耐久性の観点から、アルキル基又は芳香族炭化水素基であり、更に好ましくは芳香族炭化水素基である。
(置換基群Z)
置換基群Zは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基、アシル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、シロキシ基、シアノ基、芳香族炭化水素基、及び芳香族複素環基よりなる群である。これらの置換基は直鎖、分岐及び環状のいずれの構造を含んでいてもよい。
置換基群Zとして、より具体的には、以下の構造が挙げられる。
炭素数が1以上であり、好ましくは4以上であり、24以下、好ましくは12以下であり、さらに好ましくは8以下であり、より好ましくは6以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基。具体例としてはメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等が挙げられる。
例えば、ビニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルケニル基;
例えば、エチニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下である、直鎖又は分岐のアルキニル基;
炭素数が1以上、24以下、好ましくは12以下であるアルコキシ基。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
炭素数4以上、好ましくは5以上であり、36以下、好ましくは24以下である、アリールオキシ基若しくはヘテロアリールオキシ基。具体例としては、フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等が挙げられる。
炭素数2以上、24以下、好ましくは12以下であるアルコキシカルボニル基。具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
炭素数2以上、24以下、好ましくは12以下であるジアルキルアミノ基。具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられる。
炭素数10以上、好ましくは12以上であり、36以下、好ましくは24以下のジアリールアミノ基。具体例としては、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N-カルバゾリル基等が挙げられる。
炭素数7以上、36以下、好ましくは24以下であるアリールアルキルアミノ基。具体例としては、フェニルメチルアミノ基が挙げられる。
炭素数2以上、24以下、好ましくは12以下であるアシル基。具体例としては、アセチル基、ベンゾイル基が挙げられる。
フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子。好ましくはフッ素原子である。;
炭素数1以上、12以下、好ましくは6以下のハロアルキル基。具体例としては、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
炭素数1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下のアルキルチオ基。具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられる。
炭素数4以上、好ましくは5以上であり、36以下、好ましくは24以下であるアリールチオ基。具体的には、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等が挙げられる。
炭素数が通常2以上、好ましくは3以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるシリル基。具体例としては、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられる。
炭素数2以上、好ましくは3以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるシロキシ基。具体例としては、トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等が挙げられる。
シアノ基。
炭素数6以上、36以下、好ましくは24以下である芳香族炭化水素基。具体例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
炭素3以上、好ましくは4以上であり、36以下、好ましくは24以下である芳香族複素環基。具体例としては、チエニル基、ピリジル基等が挙げられる。
上記置換基は、直鎖、分岐又は環状のいずれの構造を含んでいてもよい。
上記置換基が隣接する場合、隣接した置換基同士が結合して環を形成してもよい。好ましい環の大きさは、4員環、5員環、6員環であり、具体例としては、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環である。
上記の置換基群Zの中でも、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基である。
また、上記置換基群Zの各置換基は更に置換基を有していてもよい。それら置換基としては、上記置換基群Zと同じのものが挙げられる。好ましくは、更なる置換基は有さないか、炭素数8以下のアルキル基、炭素数8以下のアルコキシ基、またはフェニル基、より好ましくは炭素数6以下のアルキル基、炭素数6以下のアルコキシ基、またはフェニル基である。電荷輸送性の観点からは、さらなる置換基を有さないことがより好ましい。
(好ましいAr51
また、重合体としては、前記式(50)で表される繰り返し単位におけるAr51の少なくとも一つが、置換基を有していてもよいベンゼン環が2~5連結した1価又は2価の基を含む基、置換基を有していてもよいフルオレニル基、下記式(51)で表される基、下記式(52)で表される基、又は下記式(53)で表される基であることが好ましい。
(式(51))
Figure 2023051507000040
式(51)中、
*は式(50)の主鎖の窒素原子との結合を表し、
Ar53、Ar54は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは置換基を有していてもよい芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した2価の基を表し、
Ar55は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した1価の基を表し、
Ar56は水素原子又は置換基を表す。
ここで、各芳香族炭化水素基及び各芳香族複素環基が有してもよい置換基、並びに置換基である場合のAr56は、架橋基を有していてもよい。架橋基としては、前記架橋基群Tから選ばれる基を用いることが出来る。
(Ar53、Ar54
前記式(51)で表される繰り返し単位中において、Ar53、Ar54は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは置換基を有していてもよい芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した2価の基を表す。好ましくは、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基が複数連結した基である。ここで、該芳香族炭化水素基及び該芳香族複素環基が有してもよい置換基は、架橋基を有していても良く、前記置換基群Zと同様の基が好ましい。架橋基としては、前記架橋基群Tから選ばれる基を用いることが出来る。
Ar53及びAr54の芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基は、前記Ar52と同様の芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基を用いることが出来る。
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは置換基を有していてもよい芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した2価の基としては、同じ基が複数連結した基でもよく、異なる基が複数連結した基でも構わない。
上記の2価の基が複数個連結される場合は、2~10連結した2価の基が挙げられ、2~5連結した2価の基であることが好ましい。
Ar53は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基が1乃至6個連結した基が好ましく、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基が2乃至4個連結した基がさらに好ましく、中でも置換基を有していてもよいフェニレン環が1乃至4個連結した基がより好ましく、置換基を有していてもよいフェニレン環が2個連結したビフェニレンが特に好ましい。
また、これら2価の芳香族炭化水素基又は2価の芳香族複素環基が複数連結する場合、好ましくは複数連結した2価の芳香族炭化水素基が共役しないように結合した基である。具体的には、1,3-フェニレン基、又は置換基を有し置換基の立体効果によって捻じれ構造となる基を含むことが好ましい。
Ar53が有していてもよい置換基は、前記置換基群Zと同様の基が好ましい。好ましくは、Ar53は置換基を有さない。
Ar54は電荷輸送性が優れる点、耐久性に優れる点から、同一であっても異なっていてもよい2価の芳香族炭化水素基が1または複数連結した基が好ましく、該2価の芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。複数連結する場合は2以上10以下が好ましく、6以下がさらに好ましく、3以下が膜の安定性の観点からは特に好ましい。好ましい芳香族炭化水素構造としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環であり、より好ましくはベンゼン環およびフルオレン環である。複数連結した基としては、置換基を有していてもよいフェニレン環が1乃至4個連結した基、または、置換基を有していてもよいフェニレン環と置換基を有していてもよいフルオレン環が連結した基が好ましい。LUMOが広がる観点から置換基を有していてもよいフェニレン環が2個連結したビフェニレンが特に好ましい。
Ar54が有していてもよい置換基としては、前記置換基群Zのいずれか、またはこれらの組み合わせを用いることができる。N-カルバゾリル基、インドロカルバゾリル基、インデノカルバゾリル基以外であることが好ましく、より好ましい置換基としては、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基である。また、置換基を有さないことも好ましい。
(Ar55
Ar55は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び該置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選択される基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した1価の基である。好ましくは、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基が複数連結した基である。
ここで、該芳香族炭化水素基及び該芳香族複素環基が有してもよい置換基は、架橋基を有していても良く、前記置換基群Zと同様の基が好ましい。架橋基としては、前記架橋基群Tから選ばれる基を用いることが出来る。
複数個連結する場合は、2~10連結した2価の基であり、2~5連結した1価の基であることが好ましい。芳香族炭化水素、芳香族複素環としては、前記Ar51と同様の芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基を用いることが出来る。
Ar55としては、下記スキーム2のいずれかで表される構造を有することが好ましい。更には、分子のLUMOを分布させる観点からa-1~a-4、b-1~b-9、c-1~c-4、d-1~d-16、及びe1~e4から選択される構造が好ましい。更に電子求引性基を有することにより分子のLUMOが広がることに促進する観点から、a-1~a-4、b-1~b-9、d-1~d-12、及びe1~e4から選択される構造が好ましい。更に三重項レベルが高い、発光層に形成された励起子を閉じ込む効果の観点から、a-1~a-4、d-1~d-12、及びe1~e4から選択される構造が好ましい。また、簡易に合成でき、安定性に優れる観点から、d-1及びd-10がさらに好ましく、d-1のベンゼン環構造が特に好ましい。更にこれら構造に置換基を有していてもよい。なお、図中“-*”はAr54との結合位置を表わし、“-*”が複数ある場合はいずれか一つがAr54との結合位置を表す。
Figure 2023051507000041
Figure 2023051507000042
Figure 2023051507000043
<R31及びR32
スキーム2のR31及びR32は、各々独立に、置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状のアルキル基であることが好ましい。アルキル基の炭素数は特に限定されないが、重合体の溶解性を維持するために、炭素数が1以上、6以下が好ましく、3以下がより好ましく、メチル基又はエチル基であることが更に好ましい。
31及びR32は同一であっても異なっていてもよいが、電荷を均一的に窒素原子の周りに分布することができ、更に合成も容易であることから、全てのR31及びR32は同一の基であることが好ましい。
Ar55が有していてもよい置換基としては、前記置換基群Zのいずれかまたは、これらの組み合わせを用いることができる。耐久性および電荷輸送性の観点から、上記のAr54が有してもよい置換基と同じ置換基から選ばれることが好ましい。
(Ar56
Ar56は、水素原子または置換基を表す。Ar56が置換基である場合、特に限定はされないが、好ましくは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基である。好ましい構造としては、前記Ar53~Ar54で挙げた芳香族炭化水素構造、芳香族複素環構造と同様であって1価である構造である。
Ar56が置換基である場合、架橋基を有していてもよい。架橋基としては、前記架橋基群Tから選ばれる基を用いることが出来る。
Ar56が置換基である場合、カルバゾールの3位に結合していることが、耐久性向上の観点から好ましい。Ar56は、合成のし易さ及び電荷輸送性の観点からは、水素原子であることが好ましい。Ar56は、耐久性向上及び電荷輸送性の観点からは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基であることが好ましく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であることがさらに好ましい。
Ar56は、合成のし易さ及び電荷輸送性の観点からは、水素原子であることが好ましい。
Ar56が置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基である場合の置換基としては、前記置換基群Zに挙げられる置換基と同様であり、好ましい置換基も同様であり、それら置換基がさらに有していてもよい置換基も同様である。
(式(52))
上記式(50)で表される繰り返し単位におけるAr51の少なくとも一つは、下記式(52)で表される基であることも好ましい。この理由は、下記式(52)中の2つのカルバゾール構造において、互いの窒素原子間の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基にLUMOが分布することで、式(50)における主鎖アミンへの影響が抑制され、主鎖アミンの電子や励起子に対する耐久性が向上するためと考えられる。
Figure 2023051507000044
(式(52)中、
Ar61及びAr62は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した2価の基であり、
Ar63~Ar65は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基である。
*は式(50)中の主鎖の窒素原子への結合位置を表す。)
各芳香族炭化水素基及び各芳香族複素環基が有してもよい置換基、並びに置換基である場合のAr63~Ar65は、架橋基を有していてもよい。架橋基としては、前記架橋基群Tから選ばれる基を用いることが出来る。
(Ar63~Ar65
Ar63~Ar65は、それぞれ独立して、前記Ar56と同様である。
(Ar62
Ar62は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは置換基を有していてもよい芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した2価の基である。好ましくは、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基が複数連結した基である。
Ar62の具体的な構造は、Ar54と同様である。
Ar62の具体的な好ましい基は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環の2価の基又はこれらが複数連結した基であり、より好ましくは、ベンゼン環の2価の基又はこれが複数連結した基であり、特に好ましくは、ベンゼン環が1,4位の2価で連結した1,4-フェニレン基、フルオレン環の2,7位の2価で連結した2,7-フルオレニレン基、又はこれらが複数連結した基であり、最も好ましくは、“1,4-フェニレン基-2,7-フルオレニレン基-1,4-フェニレン基-”を含む基である。
Ar62のこれら好ましい構造において、フェニレン基は連結位置以外に置換基を有さないことが、置換基の立体効果によるAr62のねじれが生じず好ましい。また、フルオレニレン基は、9,9’位に置換基を有している方が、溶解性及びフルオレン構造の耐久性向上の観点から好ましい。
(Ar61
Ar61は、前記Ar53と同様の基であり、好ましい構造も同様である。
(式(53))
前記式(50)で表される繰り返し単位におけるAr51の少なくとも一つは、下記式(53)で表される基であることも好ましい。
Figure 2023051507000045
式(53)中、
*は式(50)の主鎖の窒素原子との結合を表し、
Ar71は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表し、
Ar72及びAr73は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、或いは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選ばれる2以上の基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した1価の基を表し、
環HAは窒素原子を含む芳香族複素環であり、
、Yは、それぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表し、X及びYの少なくとも一方が、炭素原子の場合は、当該炭素原子は置換基を有していてもよい。
<Ar71
Ar71は、前記Ar53と同様の基である。
Ar71としては、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基1個又は置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基が2~10個連結した基が好ましく、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基1個か置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基が2~8個連結した基が更に好ましく、中でも置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基が2以上連結した基であることが好ましい。
Ar71としては、特に、置換基を有していてもよいベンゼン環が2~6個連結した基が好ましく、置換基を有していてもよいベンゼン環が4個連結したクアテルフェニレン基が最も好ましい。
また、Ar71は非共役部位である1,3位で連結したベンゼン環を少なくとも1つ含むことが好ましく、2以上含むことが更に好ましい。
Ar71が置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基が複数連結した基の場合、電荷輸送性又は耐久性の観点から、全て直接結合して連結していることが好ましい。
このため、Ar71として、重合体の主鎖の窒素原子と前記式(53)中の環HAとの間を繋ぐ好ましい構造は、下記のスキーム2-1及びスキーム2-2に挙げられる通りである。“-*”は、重合体の主鎖の窒素原子又は前記式(53)の環HAとの結合部位を表す。2つの”-*”のうち、どちらが重合体の主鎖の窒素原子と結合していても、環HAと結合していてもよい。
Figure 2023051507000046
Figure 2023051507000047
Ar71が有していてもよい置換基としては、前記置換基群Zのいずれか又はこれらの組み合わせを用いることができる。Ar71が有していてもよい置換基の好ましい範囲は、前述のGが芳香族炭化水素基である場合に有してもよい置換基と同様である。
<X及びY
及びYは、それぞれ独立に、C(炭素)原子又はN(窒素)原子を表す。X及びYの少なくとも一方が、C原子の場合は、置換基を有していてもよい。
環HAの周辺にLUMOをより局在化させやすい観点からX及びYはいずれもN原子であることが好ましい。
及びYの少なくとも一方がC原子の場合に有していてもよい置換基としては、前記置換基群Zのいずれか又はこれらの組み合わせを用いることができる。電荷輸送性の観点からは、X及びYは置換基を有さないことが更に好ましい。
<Ar72及びAr73
Ar72及びAr73は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、或いは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選ばれる2以上の基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した1価の基である。
分子のLUMOを分布させる観点から、Ar72及びAr73は、それぞれ独立に、前記スキーム2に示すa-1~a-4、b-1~b-9、c-1~c-4、d-1~d-16、及びe-1~e-4から選択される構造を有することが好ましい。
更に電子求引性基を有することにより分子のLUMOが広がることに促進する観点から、a-1~a-4、b-1~b-9、c-1~c-5、d-1~d-12、及びe-1~e-4から選択される構造が好ましい。
更に三重項レベルが高い、発光層に形成された励起子を閉じ込める効果の観点から、a-1~a-4、d-1~d-12、及びe-1~e-4から選択される構造が好ましい。
分子の凝集を防ぐため、d-1~d-12、及びe-1~e-4から選択される構造が更に好ましい。簡易に合成でき、安定性に優れる観点からAr72=Ar73=d-1又はd-10が好ましく、d-1のベンゼン環構造が特に好ましい。
またこれら構造に置換基を有していてもよい。“-*”は環HAとの結合部位を表す。“-*”が複数ある場合はいずれか一つが環HAと結合する部位を表す。
Ar72及びAr73が有していてもよい置換基としては、前記置換基群Zのいずれか又はこれらの組み合わせを用いることができる。耐久性及び電荷輸送性の観点から、置換基であり、前記置換基群Zと同様の基が好ましい。
(好ましい主鎖)
前記式(50)で表される繰り返し単位として好ましくは、下記式(54)で表される繰り返し単位、下記式(55)で表される繰り返し単位、下記式(56)で表される繰り返し単位、下記式(57)で表される繰り返し単位である。トリアリールアミン構造を繰り返し単位として有する重合体は、これらの各式で表される繰返し単位を、それぞれの式において、異なる構造の繰返し単位を複数種含むことも好ましい。
<式(54)で表される繰り返し単位>
Figure 2023051507000048
(式(54)中、
Ar51は、前記式(50)におけるAr51と同様であり、
Xは、-C(R207)(R208)-、-N(R209)-又は-C(R211)(R212)-C(R213)(R214)-であり、
201、R202、R221及びR222は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基であり、
207~R209及びR211~R214は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、
a及びbは、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
cは、0~3の整数であり、
dは、0~4の整数であり、
i及びjはそれぞれ独立して0~3の整数である。)
(Ar51
上記式(54)で表される繰り返し単位中のAr51は、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基の縮合環構造、若しくは、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が複数連結した構造を含むことが好ましく、具体的には、置換基を有していてもよいベンゼン環が2~5連結した1価又は2価の基、又は、置換基を有していてもよいフルオレニル基であることが好ましい。ここで、ベンゼン環は、置換基又は架橋基の一部であってもよい。
重合体としては、上記式(54)で表される繰り返し単位として、Ar51が芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基の縮合環構造、若しくは、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が複数連結した構造を含まない繰返し単位をさらに含んでいてもよい。
芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基の縮合環構造、若しくは、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が複数連結した構造は、芳香族炭化水素構造又は芳香族複素環構造を複数含む構造である。置換基を有していてもよいベンゼン環が2~5連結した1価又は2価の基、又は、置換基を有していてもよいフルオレニル基は、いずれもベンゼン環構造を複数含む構造である。側鎖は主鎖に比べ、溶媒に対する相互作用を受けやすいと考えられる。このように、側鎖であるAr51は、芳香族炭化水素構造又は芳香族複素環構造、好ましくはベンゼン環を複数含む構造である場合、前記式(1)で表される溶媒化合物に含まれる二つのベンゼン環との相互作用が強くなると考えられる。前記式(1)で表される溶媒化合物は、二つのベンゼン環が4級炭素原子によって結合しているため自由度が高く適度な柔軟性を有している。これら自由度の高い二つのベンゼン環は、それぞれ機能性材料に対して相溶性が高いためより浸透しやすくなり、溶解性が向上する。その結果、塗布されたwet膜において、溶媒が揮発して機能性材料の濃度が高くなっても、溶媒内に溶質が均一に分散しやすくなり、平坦性が向上すると推測される。
有機電界発光素子を用いたディスプレイパネルは、画素がバンクで区画されている。バンクで区画された微小領域内に成膜するには、機能性材料を溶媒に溶解させた組成物をインクジェット装置にて塗布し、溶媒を乾燥させて機能性材料膜をバンク内に形成する。ここで、溶媒として前記式(1)で表される溶媒化合物を用いると、前記式(1)で表される溶媒化合物は上記の通り機能性材料に浸透しやすいため、溶媒が揮発して機能性材料濃度が高くなっても、膜の平坦性が保たれ、バンク内に平坦な機能性材料膜を形成することが出来ると考えられる。
(R201、R202、R221、R222
上記式(54)で表される繰り返し単位中のR201、R202、R221及びR222は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基である。
該アルキル基は、直鎖、分岐又は環状のアルキル基である。アルキル基の炭素数は特に限定されないが、重合体の溶解性を維持するために、1以上が好ましく、また、8以下が好ましく、6以下がより好ましく、3以下がさらに好ましい。該アルキル基は、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましい。
201が複数ある場合は、複数のR201は同一であっても異なっていてもよく、R202が複数ある場合は、複数のR202は同一であっても異なっていてもよい。電荷を均一的に窒素原子の周りに分布することができ、さらに合成も容易であることから、全てのR201とR202は同一の基であることが好ましい。
221が複数ある場合は、複数のR221は同一であっても異なっていてもよく、R222が複数ある場合は、複数のR222は同一であっても異なっていてもよい。合成が容易であることから、全てのR221とR222は同一の基であることが好ましい。
(R207~R209及びR211~R214
207~R209及びR211~R214は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である。
該アルキル基は特に限定されないが、重合体の溶解性を向上できる傾向にあるため、炭素数は1以上が好ましく、また、24以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。また、該アルキル基は直鎖、分岐又は環状の各構造であってもよい。
該アルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等が挙げられる。
該アラルキル基は特に限定されないが、重合体の溶解性を向上できる傾向にあるため、炭素数は5以上が好ましく、また、60以下が好ましく、40以下がより好ましい。
該アラルキル基として、具体的には、1,1-ジメチル-1-フェニルメチル基、1,1-ジ(n-ブチル)-1-フェニルメチル基、1,1-ジ(n-ヘキシル)-1-フェニルメチル基、1,1-ジ(n-オクチル)-1-フェニルメチル基、フェニルメチル基、フェニルエチル基、3-フェニル-1-プロピル基、4-フェニル-1-n-ブチル基、1-メチル-1-フェニルエチル基、5-フェニル-1-n-プロピル基、6-フェニル-1-n-ヘキシル基、6-ナフチル-1-n-ヘキシル基、7-フェニル-1-n-ヘプチル基、8-フェニル-1-n-オクチル基、4-フェニルシクロヘキシル基等が挙げられる。
該芳香族炭化水素基としては特に限定されないが、重合体の溶解性を向上できる傾向にあるため、炭素数は6以上が好ましく、また、60以下が好ましく、30以下がより好ましい。
該芳香族炭化水素基として、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等の、6員環の単環若しくは2~5縮合環の1価の基、又はこれらが複数連結した基等が挙げられる。
電荷輸送性及び耐久性向上の観点から、R207及びR208はメチル基又は芳香族炭化水素基が好ましく、R207及びR208はメチル基であることがより好ましく、R209はフェニル基であることがより好ましい。
201、R202、R221、R222のアルキル基、R207~R209及びR211~R214のアルキル基、アラルキル基及び芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基は、前記R207~R209及びR211~R214のアルキル基、アラルキル基及び芳香族炭化水素基の好ましい基として挙げた基が挙げられる。
201、R202、R221、R222のアルキル基、R207~R209及びR211~R214のアルキル基、アラルキル基及び芳香族炭化水素基は、低電圧化の観点からは、置換基を有さないことが最も好ましい。
(a、b、c及びd)
上記式(54)で表される繰り返し単位中において、a及びbはそれぞれ独立して、0~4の整数である。a+bは1以上であることが好ましく、さらに、a及びbは、各々2以下であることが好ましく、aとbの両方が1であることがより好ましい。ここで、bが1以上である場合、dも1以上である。また、cが2以上の場合、複数のaは同じであっても異なってもよく、dが2以上の場合、複数のbは同じであっても異なってもよい。
a+bが1以上であると、主鎖の芳香環が立体障害により捻じれ、重合体の溶媒への溶解性が優れると共に、湿式成膜法で形成し加熱処理された塗膜は溶媒への不溶性に優れる傾向にある。したがって、a+bが1以上であると、この塗膜上へ湿式成膜法で別の有機層(例えば発光層)を形成する場合には、有機溶媒を含む該別の有機層形成用組成物への重合体の溶出が抑えられる。
上記式(54)で表される繰り返し単位中において、cは0~3の整数であり、dは0~4の整数である。c及びdは、各々2以下であることが好ましく、cとdは等しいことがさらに好ましく、cとdの両方が1であるか、又はcとdの両方が2であることが特に好ましい。
上記式(54)で表される繰り返し単位中のcとdの両方が1であるか又はcとdの両方が2であり、且つ、aとbの両方が2又は1である場合、R201とR202は、互いに対称な位置に結合していることが最も好ましい。
ここで、R201とR202とが互いに対称な位置に結合するとは、式(54)におけるフルオレン環、カルバゾール環又は9,10-ジヒドロフェナントレン誘導体構造に対して、R201とR202の結合位置が対称であることをいう。このとき、主鎖を軸とする180度回転は同一構造とみなす。
221とR222は存在する場合それぞれ独立に、Xが結合しているベンゼン環の炭素原子を基準として、1位、3位、6位、又は8位に存在することが好ましい。この位置にR221及び/又はR222が存在することで、R221及び/又はR222が結合している縮合環と、主鎖上の隣のベンゼン環とが立体障害により捻じれ、重合体の溶媒への溶解性が優れると共に、湿式成膜法で形成し加熱処理された塗膜は溶媒への不溶性に優れる傾向にあり、好ましい。
(X)
上記式(54)におけるXは、電荷輸送時の安定性が高いことから、-C(R207)(R208)-又は-N(R209)-であることが好ましく、-C(R207)(R208)-であることがより好ましい。
(好ましい繰り返し単位)
上記式(54)で表される繰り返し単位は、下記式(54-1)~(54-8)のいずれかで示される繰り返し単位であることが特に好ましい。
Figure 2023051507000049
Figure 2023051507000050
上記式において、R201及びR202は同一であり、且つ、R201とR202は互いに対称な位置に結合している。
<式(54)で表される繰り返し単位の主鎖の好ましい例>
上記式(54)中の窒素原子を除いた主鎖構造は特に限定されないが、例えば以下のような構造が好ましい。
Figure 2023051507000051
Figure 2023051507000052
Figure 2023051507000053
Figure 2023051507000054
Figure 2023051507000055
Figure 2023051507000056
Figure 2023051507000057
Figure 2023051507000058
<式(55)で表される繰り返し単位>
Figure 2023051507000059
(式(55)中、
Ar51は前記式(54)におけるAr51と同様であり、
303及びR306は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基であり、
304及びR305は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよいアラルキル基であり、
lは、0又は1であり、
mは、1又は2であり、
nは、0又は1であり、
pは、0又は1であり、
qは、0又は1である。)
(R303、R306
上記式(55)で表される繰り返し単位中のR303及びR306は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基である。
アルキル基としては、前記式(54)におけるR201及びR202と同様のものが挙げられ、有していてもよい置換基及び好ましい構造もR201及びR202と同様のものが挙げられる。
303が複数ある場合は、複数のR303は同一であっても異なっていてもよく、R306が複数ある場合は、複数のR306は同一であっても異なっていてもよい。
(R304、R305
上記式(55)で表される繰り返し単位中のR304及びR305は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよいアラルキル基である。好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基である。
304とR304は同一であることが好ましい。
該アルキル基は、直鎖、分岐又は環状のアルキル基である。該アルキル基の炭素数は特に限定されないが、重合体の溶解性を向上できる傾向にあるため、1以上が好ましく、また、24以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。
該アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等が挙げられる。
該アルコキシ基は特に限定されず、アルコキシ基(-OR10)のR10で表されるアルキル基は、直鎖、分岐又は環状のいずれの構造であってもよく、重合体の溶解性を向上できる傾向にあるため、炭素数は、1以上が好ましく、また、24以下が好ましく、12以下がより好ましい。
該アルコキシ基としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、ヘキシロキシ基、1-メチルペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
該アラルキル基は特に限定されないが、重合体の溶解性を向上できる傾向にあるため、炭素数5以上が好ましく、また、60以下が好ましく、40以下がより好ましい。
該アラルキル基としては、具体的には、1,1-ジメチル-1-フェニルメチル基、1,1-ジ(n-ブチル)-1-フェニルメチル基、1,1-ジ(n-ヘキシル)-1-フェニルメチル基、1,1-ジ(n-オクチル)-1-フェニルメチル基、フェニルメチル基、フェニルエチル基、3-フェニル-1-プロピル基、4-フェニル-1-n-ブチル基、1-メチル-1-フェニルエチル基、5-フェニル-1-n-プロピル基、6-フェニル-1-n-ヘキシル基、6-ナフチル-1-n-ヘキシル基、7-フェニル-1-n-ヘプチル基、8-フェニル-1-n-オクチル基、4-フェニルシクロヘキシル基などが挙げられる。
(l、m及びn)
lは0又は1を表し、nは0又は1を表す。
l及びnは各々独立であり、l+nは1以上が好ましく、1又は2がより好ましく、2がさらに好ましい。l+nが上記範囲であることで、本発明の組成物が含有する重合体の溶解性を高くし、該重合体を含有する第2の組成物からの析出も抑制できる傾向にある。
mは1又は2を表し、本発明の有機電界発光素子を低電圧で駆動でき、正孔注入能、輸送能、耐久性も向上する傾向にあることから、1であることが好ましい。
(p及びq)
pは0又は1を表し、qは0又は1を表す。lが2以上の場合、複数のpは同じであっても異なってもよく、nが2以上の場合、複数のqは同じであっても異なってもよい。l=n=1の場合、pとqは同時に0となることはない。pとqが同時に0とならないことで、本発明の組成物が含有する重合体の溶解性を高くし、該重合体を含有する第2の組成物からの析出も抑制できる傾向にある。また、前記a及びbと同様の理由により、p+qが1以上であると主鎖の芳香環が立体障害により捻じれ、重合体の溶媒への溶解性が優れると共に、湿式成膜法で形成し加熱処理された塗膜は溶媒への不溶性に優れる傾向にある。したがって、p+qが1以上であると、この塗膜上へ湿式成膜法で別の有機層(例えば発光層)を形成する場合には、有機溶媒を含む該別の有機層形成用組成物への重合体の溶出が抑えられる。
<式(55)で表される繰り返し単位の主鎖の具体例>
式(55)中の窒素原子を除いた主鎖構造は特に限定されないが、例えば以下のような構造が挙げられる。
Figure 2023051507000060
Figure 2023051507000061
Figure 2023051507000062
Figure 2023051507000063
Figure 2023051507000064
Figure 2023051507000065
Figure 2023051507000066
Figure 2023051507000067
<式(56)で表される繰り返し単位>
Figure 2023051507000068
(式(56)中、
Ar51は前記式(54)におけるAr51と同様であり、
Ar41は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基、又は前記2価の芳香族炭化水素基及び前記2価の芳香族複素環基からなる群から選択される少なくとも1つの基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した2価の基であり、
441及びR442は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基であり、
tは、1又は2であり、
uは、0又は1であり、
r及びsは、それぞれ独立して、0~4の整数である。)
(R441、R442
上記式(56)で表される繰り返し単位中のR441、R442は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基である。
該アルキル基は、直鎖、分岐又は環状のアルキル基である。アルキル基の炭素数は特に限定されないが、重合体の溶解性を維持するために、炭素数1以上が好ましく、また、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下がより好ましい。該アルキル基はメチル基又はヘキシル基であることがさらに好ましい。
441及びR442が上記式(56)で表される繰り返し単位中に複数ある場合は、複数のR441及びR442は同一であっても異なっていてもよい。
(r、s、t及びu)
式(56)で表される繰り返し単位中において、r及びsはそれぞれ独立して、0~4の整数である。tが2以上の場合、複数のrは同じであっても異なってもよく、uが2以上の場合、複数のsは同じであっても異なってもよい。r+sは1以上であることが好ましく、さらに、r及びsは、各々2以下であることが好ましい。r+sが1以上であると、前記式(54)におけるa及びbと同様の理由により、有機電界発光素子の駆動寿命はさらに長くなると考えられる。
上記式(56)で表される繰り返し単位中において、tは1又は2であり、uは0又は1である。tは1が好ましく、uは1が好ましい。
(Ar41
Ar41は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基、又は前記2価の芳香族炭化水素基及び前記2価の芳香族複素環基からなる群から選択される少なくとも1つの基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した2価の基である。
Ar41における芳香族炭化水素基及び芳香族炭化水素基としては、前記式(50)におけるAr52と同様の基が挙げられる。また、芳香族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基は、前記置換基群Zと同様の基が好ましく、さらに有していてよい置換基も前記置換基群Zと同様であることが好ましい。
<式(56)で表される繰り返し単位の具体例>
式(56)で表される繰り返し単位は特に限定されないが、例えば以下のような構造が挙げられる。
Figure 2023051507000069
<式(57)で表される繰り返し単位>
Figure 2023051507000070
(式(57)中、
Ar51は前記式(54)におけるAr51と同様であり、
517~R519は、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
f、g、hは、各々独立して、0~4の整数を表し、
eは0~3の整数を表し、
ただし、gが1以上の場合、eは1以上である。)
(R517~R519
517~R519における芳香族炭化水素基、芳香族複素環基は、各々独立に、前記Ar51で挙げたものと同様の基である、また、これらの基が有していてもよい置換基は、前記置換基群Z又と同様の基が好ましい。
517~R519におけるアルキル基及びアラルキル基は、前記R207で挙げたものと同様の基が好ましく、さらに有していてもよい置換基も前記R207と同様の基が好ましい。
517~R519におけるアルコキシ基は、前記置換基群Zで挙げたアルコキシ基が好ましく、さらに有していてもよい置換基も前記置換基群Zと同様である。
(f、g、h)
f、g、hは、各々独立して、0~4の整数を表す。
eが2以上の場合、複数のgは同じであっても異なってもよい。
f+g+hは1以上であることが好ましい。
f+hは1以上であることが好ましく、
f+hは1以上、且つ、f、g及びhは2以下であることがより好ましく、
f+hは1以上、且つ、f、hは1以下であることがさらに好ましく、
f、hはいずれも1であることが最も好ましい。
f及びhがいずれも1である場合、R517とR519は互いに対称な位置に結合していることが好ましい。
また、R517とR519とは同一であることが好ましく、
gは2であることがより好ましい。
gが2である場合、2つのR518は互いにパラ位に結合していることが最も好ましく、
gが2である場合、2つのR518は同一であることが最も好ましい。
ここで、R517とR519が互いに対称な位置に結合するとは、下記の結合位置のことを言う。ただし、表記上、主鎖を軸とする180度回転は同一構造とみなす。
Figure 2023051507000071
なお、本実施形態の重合体が式(57)で表される繰り返し単位を含む場合、式(1)で表される化合物と式(57)で表される繰り返し単位との割合は、(式(57)で表される繰り返し単位のモル数)/(式(1)で表される化合物のモル数)が、0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.5以上がさらに好ましく、0.9以上がよりさらに好ましく、1.0以上が特に好ましい。また、当該割合は、2.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.2以下がさらに好ましい。
また、前記式(57)で表される繰り返し単位は、下記式(58)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
好ましい式(57)=式(58)
Figure 2023051507000072
前記式(58)で表される繰り返し単位の場合、g=0または2であることが好ましい。g=2の場合、結合位置は2位と5位である。g=0の場合、すなわちR518による立体障害が無い場合、及びg=2であり結合位置は2位と5位である場合、すなわち立体障害が2つのR518が結合するベンゼン環の対角位置となる場合は、R517とR519とが互いに対称な位置に結合することが可能である。
また、前記式(58)で表される繰り返し単位は、e=3である下記式(59)で示される繰り返し単位であることがさらに好ましい。
好ましい式(58)=式(59)
Figure 2023051507000073
前記式(59)で表される繰り返し単位の場合、g=0または2であることが好ましい。g=2の場合、結合位置は2位と5位である。g=0の場合、すなわちR518による立体障害が無い場合、及びg=2であり結合位置は2位と5位である場合、すなわち、立体障害が2つのR518が結合するベンゼン環の対角位置となる場合は、R517とR519とが互いに対称な位置に結合することが可能である。
<式(57)で表される繰り返し単位の主鎖の具体例>
式(57)で表される繰り返し単位の主鎖構造は特に限定されないが、例えば以下のような構造が挙げられる。
Figure 2023051507000074
式(50)~(59)ので表される繰り返し単位には、架橋基を有していないことが好ましい。架橋基を有していない場合、湿式成膜後の加熱乾燥またはベーク(加熱焼成)によって、ポリマー鎖の歪みが生じにくく好ましい。架橋基が反応する際に、体積変化が生じることがあり、ポリマー鎖の歪みが生じる為である。また、体積変化が生じなくてもポリマー鎖の歪みが生じるためである。
(好ましい繰返し単位)
本発明の組成物に用いる機能性材料が前記式(50)で表される繰り返し単位を有する重合体の場合、式(50)で表される繰返し単位としてさらに好ましくは、前記式(54)で表される繰り返し単位、前記式(55)で表される繰り返し単位、前記式(56)で表される繰り返し単位又は前記式(57)で表される繰り返し単位であり、これらの中でも、
下記式(61)で表される部分構造を含む前記式(54)で表される繰り返し単位、
下記式(61)で表される部分構造を含む前記式(55)で表される繰り返し単位、
下記式(61)で表される部分構造を含む前記式(56)で表される繰り返し単位、
又は下記式(61)で表される部分構造を含む前記式(57)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
Figure 2023051507000075
(式(61)及び式(61’)において、
601は式(54)におけるR201またはR202、式(55)におけるR303、R304、R305、又はR406、式(56)におけるR441又はR+、式(57)におけるR517、R518又はR519を表し、 -* は隣の原子との結合を表す。
式(61)が式(54)の部分構造または式(56)の部分構造である場合、Ring Bは縮合環の一部であってもよい。
式(61)及び式(61’)で表される部分構造は、R601の他に、Ring A及びRing Bに、式(54)の部分構造である場合はR201またはR202、式(55)の部分構造である場合はR303、R304、R305、又はR406、式(56)の部分構造である場合はR441又はR442、式(57)の部分構造である場合はR517、R518又はR519を有していてもよい。)
前記式(61)又は前記式(61’)で表される部分構造は、π共役によって形成されるRing AとRingBとの略平面な構造を、R601の立体障害によって歪ませることで、通常のπ共役結合よりも主鎖がねじれた構造となっている。言い換えると、自由度が高くなっている。ここに前記式(1)で表される溶媒化合物を適用した場合、前記式(1)で表される溶媒化合物は、二つのベンゼン環が4級炭素原子によって結合しているため自由度が高く適度な柔軟性を有している。これら自由度の高い二つのベンゼン環は、それぞれ機能性材料に対して相溶性が高いためより浸透しやすくなり、溶解性が向上する。その結果、塗布されたwet膜において、溶媒が揮発して機能性材料の濃度が高くなっても、溶媒内に溶質が均一に分散しやすくなり、平坦性が向上すると推測される。
有機電界発光素子を用いたディスプレイパネルは、画素がバンクで区画されている。バンクで区画された微小領域内に成膜するには、機能性材料を溶媒に溶解させた組成物をインクジェット装置にて塗布し、溶媒を乾燥させて機能性材料膜をバンク内に形成する。ここで、溶媒として前記式(1)で表される溶媒化合物を用いると、前記式(1)で表される溶媒化合物は上記の通り機能性材料に浸透しやすいため、溶媒が揮発して機能性材料濃度が高くなっても、膜の平坦性が保たれ、バンク内に平坦な機能性材料膜を形成することが出来ると考えられる。
(式(54-2))
特に好ましくは、前記式(54)の繰り返し単位である。本発明の組成物は、前記式(1)で表される溶媒化合物と、この繰り返し単位を有する重合体を含むことが、さらに平坦な薄膜を形成するのに好ましい。前記式(54)で表される繰返し単位は、下記式(62)で表される繰返し単位であることが好ましい。
Figure 2023051507000076
(式(62)中、
Ar51、X、R201、R202、R221、R222、a、b、c、d、i、jは、前記式(54)におけるAr51、X、R201、R202、R221、R222、a、b、c、d、i、jと同じであり、
、a、b、b、i、i、j、jはそれぞれ独立に0又は1である。
但し、下記条件(1)、(2)のいずれかを満たす。
(1)a、a及びaの少なくとも一つは1以上であり、
、b及びbの少なくとも一つは1以上であり、
c及びは1以上であり、dは1以上であり、
cが1の場合はa又はaの少なくとも一方は1であり、
dが1の場合はb又はbの少なくとも一方は1である。
(2)i、i、j及びjの少なくとも1つは1である。
Ring A1はR201を特定の位置に有してよい2価のベンゼン環を指し、
Ring A2はR201を有してよいc-1個のベンゼン環が連結した2価の基、ただしc=1の場合は単環の2価のベンゼン環を指し、
Ring A3はビフェニル構造がXで更に結合した2価の縮合環を指し、
Ring A4はR202を有してよいd-1個のベンゼン環が連結した2価の基、ただしd=1の場合は単環の2価のベンゼン環を指し、
Ring A5はR202を特定の位置に有してよい2価のベンゼン環を指す。)
ここで、式(54)におけるaが1以上であるとは、式(62)において、a、a及びaの少なくとも一つは1以上であることと同義であり、式(54)におけるbが1以上であるとは、式(62)において、b、b及びbの少なくとも一つは1以上であることと同義である。)
以下の通り、式(62)は、前記式(61)または前記式(61’)を部分構造として含む。
、a及びaの少なくとも一つは1以上である場合、
またはaの少なくとも一方が1の場合、cが2以上の場合はRing A1とRing A2とが、cが1の場合はRing A1とRing A3とが、
aが1の場合、Ring A2とRing A1とが、又は、Ring A2とRing A3とが、
前記式(61)または前記式(61’)を部分構造として含む。
同様に、b、b及びbの少なくとも一つは1以上である場合も前記式(61)または前記式(61’)を部分構造として含むことがわかる。
また、i、i、j及びjの少なくとも1つは1である場合は、
及びiの一方又は両方が1の場合、Ring A3のR221が結合している環とRingA2のベンゼン環とで、部分構造として式(61’)が形成され、
及びjの一方又は両方が1の場合、Ring A3のR222が結合している環とRingA4のベンゼン環とで、部分構造として式(61)が形成されることが分かる。
すなわち、Ring A3とRing A2とが、又は、Ring A3とRing A4とが捻じれた構造であることが分かる
したがって、式(62)は主鎖の芳香環が捻じれた構造を含むため、前述した理由により平坦な膜が得られやすく、好ましい。
[重合体の分子量]
以下、本発明の組成物に含まれる重合体の分子量について記す。
上述のトリアリールアミン構造を繰返し単位として有する重合体の重量平均分子量(Mw)は、通常3,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは200,000以下、特に好ましくは100,000以下、最も好ましくは50,000以下である。また、当該重量平均分子量は、通常2,500以上、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは15,000以上、特に好ましくは17,000以上である。
上述のトリアリールアミン構造を繰返し単位として有する重合体の重量平均分子量が上記上限値以下であることで、溶媒に対する溶解性が得られ、成膜性に優れる傾向にある。また、該重合体の重量平均分子量が上記下限値以上であることで、重合体のガラス転移温度、融点及び気化温度の低下が抑制され、耐熱性が向上する場合がある。
また、上述のトリアリールアミン構造を繰返し単位として有する重合体における数平均分子量(Mn)は、通常2,500,000以下、好ましくは750,000以下、より好ましくは400,000以下、特に好ましくは100,000以下である。また、当該数平均分子量は、通常2,000以上、好ましくは4,000以上、より好ましくは6,000以上、さらに好ましくは8,000以上である。
さらに、上述のトリアリールアミン構造を繰返し単位として有する重合体における分散度(Mw/Mn)は、好ましくは3.5以下、さらに好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下である。なお、分散度は値が小さい程よいため、下限値は理想的には1である。当該重合体の分散度が、上記上限値以下であると、精製が容易で、また溶媒に対する溶解性や電荷輸送能が良好である。
通常、重合体の重量平均分子量及び数平均分子量はSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定により決定される。SEC測定では高分子量成分ほど溶出時間が短く、低分子量成分ほど溶出時間が長くなるが、分子量既知のポリスチレン(標準試料)の溶出時間から算出した校正曲線を用いて、サンプルの溶出時間を分子量に換算することによって、重量平均分子量及び数平均分子量が算出される。
[具体例]
式(54)で表される繰り返し単位を含む重合体の具体例を以下に示すが、本発明に用いる重合体はこれらに限定されるものではない。なお、化学式中の数字は繰返し単位のモル比を表す。nは繰り返し数を表す。
これらの重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、又はグラフト共重合体等のいずれでもよく、単量体の配列順序には限定されない。
Figure 2023051507000077
式(55)で表される繰り返し単位を含む重合体及び、式(55)で表される繰り返し単位のAr51が式(51)又は(52)で表される構造を有する重合体の具体例を以下に示すが、本発明で用いる重合体はこれらに限定されるものではない。なお、化学式中の数字は繰返し単位のモル比を表す。nは繰り返し数を表す。
これらの重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、又はグラフト共重合体等のいずれでもよく、単量体の配列順序は限定されない。
Figure 2023051507000078
Figure 2023051507000079
Figure 2023051507000080
Figure 2023051507000081
式(56)で表される繰り返し単位を含む重合体の具体例を以下に示すが、本発明で用いる重合体はこれらに限定されるものではない。なお、化学式中の数字は繰返し単位のモル比を表す。nは繰り返し数を表す。
これらの重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、又はグラフト共重合体等のいずれでもよく、単量体の配列順序には限定されない。
Figure 2023051507000082
Figure 2023051507000083
<重合体の製造方法>
本発明の組成物が含有する重合体の製造方法は特には制限されず任意である。例えば、Suzuki反応による重合方法、Grignard反応による重合方法、Yamamoto反応による重合方法、Ullmann反応による重合方法、Buchwald-Hartwig反応による重合方法等などが挙げられる。
Ullmann反応による重合方法及びBuchwald-Hartwig反応による重合方法の場合、例えば、下記式(2a)で表されるジハロゲン化アリール(ZはI、Br、Cl、F等のハロゲン原子を表す。)と下記式(2b)で表される1級アミノアリールとを反応させることにより、前記式(54)で表される繰り返し単位を含む重合体が合成される。
Figure 2023051507000084
(上記反応式中、Ar51、R201、R202、X、a~dは前記式(54)における定義と同義である。)
また、Ullmann反応による重合方法及びBuchwald-Hartwig反応による重合方法の場合、例えば、式(3a)で表されるジハロゲン化アリール(ZはI、Br、Cl、F等のハロゲン原子を表す。)と式(3b)で表される1級アミノアリールとを反応させることにより、式(55)で表される繰り返し単位を含む重合体が合成される。
Figure 2023051507000085
(上記反応式中、Ar51、R303~R306、n、m、l、p、qは前記式(55)における定義と同義である。)
なお、上記の重合方法において、通常、N-アリール結合を形成する反応は、例えば炭酸カリウム、tert-ブトキシナトリウム、トリエチルアミン等の塩基存在下で行う。また、例えば銅やパラジウム錯体等の遷移金属触媒存在下で行うこともできる。
[溶媒と機能性材料の含有量]
本発明の組成物中の機能性材料の含有量には特に制限はないが、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
本発明の組成物としては、具体的には、後述の発光層形成用組成物、正孔注入層形成用組成物、正孔輸送層形成用組成物、電気輸送層形成用組成物が挙げられ、その溶媒の好ましい含有量は、各々の層形成用組成物において後述する通りである。また、機能性材料の含有量についても、各々の層形成用組成物において後述する発光層用材料、正孔注入層用材料、正孔輸送層用材料、電子輸送層用材料の含有量が該当する。
[湿式成膜法による成膜]
本発明の組成物は有機電界発光素子の製造において、機能性膜の形成に好適に用いられる。有機電界発光素子の構成は後述の通りである。
本発明における有機電界発光素子は通常、電極が設けられた基板に、発光画素をバンクと呼ばれる隔壁で区画された微小領域を有する。このバンクで区画された微小領域内に本発明の組成物を吐出し、乾燥して、適宜加熱することによって機能性膜を形成する。
吐出方法は、微小なノズルからバンクで区画された微小領域よりも小さい液滴を吐出する方法であり、複数の液滴を吐出することによってバンクで区画された微小領域を本発明の組成物で満たすことが好ましい。吐出法としては好ましくはインクジェット法である。
湿式成膜法では、バンクで区画された微小領域を本発明の組成物で満たしたのち、真空乾燥する。真空乾燥とは、減圧することにより溶媒を揮発させることである。
溶媒A及び溶媒Bはともに真空乾燥により大半は揮発させることが可能であるが、十分乾燥させるために、次いで加熱乾燥を行う。加熱温度は機能性膜が結晶化または凝集しない温度および時間とすることが好ましい。
機能性材料が低分子材料である場合、加熱温度は通常50℃以上、好ましくは80℃以上、更に好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは180℃以下、更に好ましくは150℃以下である。加熱時間は通常1分以上、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上であり、通常120分以下、好ましくは90分以下、より好ましくは60分以下である。
機能性材料が高分子材料である場合、加熱温度は通常80℃以上、好ましくは100℃以上、更に好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上であり、通常300℃以下、好ましくは270℃以下、更に好ましくは240℃以下である。加熱時間は通常1分以上、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上であり、通常120分以下、好ましくは90分以下、より好ましくは60分以下である。
加熱方法は、ホットプレート、オーブン、赤外線照射等により実施することができる。
分子振動を直接与える赤外線照射の場合の加熱時間は上記下限に近い時間で十分であり、熱源に基板が直接接するかまたは熱源と基板が極めて近くに配置されるホットプレート加熱の場合は赤外線照射よりは長い時間が必要である。オーブン加熱の場合、即ち、オーブン内の気体、通常は空気または窒素若しくはアルゴンなどの不活性ガスによる加熱の場合は、温度上昇に時間を要するため、上記加熱時間の上限に近い加熱時間が好ましい。加熱方法によって加熱時間は適宜調整される。
〔機能性膜〕
機能性膜中に含まれる機能性材料は通常70重量%以上であり、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上であり、実質的に100重量%であることが最も好ましく、上限は100重量%である。実質的に100重量%であるとは、機能性膜に微量の添加剤、残留溶媒及び不純物が含まれる場合があるということである。機能性膜中の機能性材料の含有量がこの範囲であることにより、機能性材料の機能をより効果的に発現させることができる。
〔有機電界発光素子の層構成と形成方法〕
本発明の組成物を用いて製造される有機電界発光素子(以下、「本発明の有機電界発光素子」と称す場合がある。)の層構成及びその形成方法の実施の形態の好ましい例を、図1を参照して説明する。
図1は本発明の有機電界発光素子10の構造例を示す断面の模式図である。図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は電子注入層、9は陰極を各々表す。
本発明の有機電界発光素子は、陽極、発光層及び陰極を必須の構成層とするが、必要に応じて、図1に示すように陽極2と発光層5及び陰極9と発光層5との間に他の機能層を有していてもよい。
[基板]
基板1は、有機電界発光素子の支持体となるものである。基板1としては、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板;ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合には、ガスバリア性に留意するのが好ましい。基板のガスバリア性は、基板を通過した外気による有機電界発光素子の劣化が起こり難いので、大きいことが好ましい。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
[陽極]
陽極2は、発光層5側の層への正孔注入の役割を果たす電極である。
陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
陽極2の形成は、通常、スパッタリング法、真空蒸着法等の方法により行われることが多い。
銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極2を形成する場合には、これらの微粒子などを適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板1上に塗布することにより、陽極2を形成することもできる。
導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板1上に薄膜を形成することもできる。
基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
陽極2は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
陽極2の厚みは、必要とする透明性などに応じて適宜選択すればよい。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが好ましい。この場合、陽極2の厚みは、通常5nm以上、好ましくは10nm以上で、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は、陽極2の厚みは任意である。陽極2の機能を兼ね備えた基板1を用いてもよい。上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
陽極2に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極2表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることは好ましい。
[正孔注入層]
正孔注入層3は、陽極2から発光層5へ正孔を輸送する層である。正孔注入層3を設ける場合は、正孔注入層3は、通常、陽極2上に形成される。
正孔注入層3の形成方法は、真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はない。
正孔注入層3は、ダークスポット低減の観点から湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔注入層3の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上で、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
(正孔輸送材料)
正孔注入層形成用組成物は通常、正孔注入層3の構成材料として正孔輸送材料及び溶剤を含有する。
正孔輸送材料は、通常、有機電界発光素子の正孔注入層3に使用される、正孔輸送性を有する化合物であれば、重合体などの高分子化合物であっても、単量体などの低分子化合物であってもよいが、高分子化合物であることが好ましい。
正孔輸送材料としては、陽極2から正孔注入層3への電荷注入障壁の観点から4.5eV~6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。正孔輸送材料の例としては、芳香族アミン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ベンジルフェニル誘導体、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、シラナミン誘導体、ホスファミン誘導体、キナクリドン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリキノリン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、カーボン等が挙げられる。
本発明において誘導体とは、例えば芳香族アミン誘導体を例にするならば、芳香族アミンそのもの及び芳香族アミンを主骨格とする化合物を含むものであり、重合体であっても、単量体であってもよい。
正孔注入層3の材料として用いられる正孔輸送材料は、このような化合物のうち何れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。2種以上の正孔輸送材料を含有する場合、その組み合わせは任意であるが、芳香族三級アミン高分子化合物1種又は2種以上と、その他の正孔輸送材料1種又は2種以上とを併用することが好ましい。
正孔輸送材料としては、上記例示した中でも非晶質性、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましく、特に芳香族三級アミン化合物が好ましい。芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果による均一な発光の点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型化合物)がさらに好ましい。芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記式(20)又は下記式(11)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
Figure 2023051507000086
(式(20)中、
Arは、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、
Arは、置換基を有していてもよい、二価の芳香族炭化水素基又は二価の芳香族複素環基、若しくは、該芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が、直接又は連結基を介して、複数個連結した二価の基を表す。)
前記式(20)において、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が、連結基を介して複数個連結したものである場合の連結基は、二価の連結基であり、例えば-O-基、-C(=O)-基及び(置換基を有していていてもよい)-CH-基から選ばれる基を任意の順番で1~30個、好ましくは1~5個、更に好ましくは1~3個連結してなる基が挙げられる。
連結基の中では、発光層への正孔注入に優れる点で、式(20)中のArが、下記式(30)で表される連結基を介して複数個連結された芳香族炭化水素基または芳香族複素環基であることが好ましい。
Figure 2023051507000087
(式(30)中、
dは1~10の整数を表し、
及びRは、各々独立して、水素原子又は置換基を有していてもよい、アルキル基、芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基を表す。
、Rが複数個存在する場合、同じであっても異なっていてもよい。)
Figure 2023051507000088
上記式(11)中、j、k、l、m、n、pは、各々独立に、0以上の整数を表す。但し、l+m≧1である。Ar11、Ar12、Ar14は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数30以下の2価の芳香環基を表す。Ar13は、置換基を有していてもよい炭素数30以下の2価の芳香環基または下記式(12)で表される2価の基を表し、Q11、Q12は、各々独立に、酸素原子、硫黄原子、置換基を有していてもよい炭素数6以下の炭化水素鎖を表し、S~Sは、各々独立に、下記式(13)で表される基で表される。
なお、ここでいう芳香環基とは、芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基のことを言う。
Ar11、Ar12、Ar14の芳香環基の例としては、単環、2~6縮合環又はこれらの芳香族環が2つ以上連結した基が挙げられる。単環又は2~6縮合環の芳香環基の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環、ビフェニル基、ターフェニル基、クアテルフェニル基、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環もしくはアズレン環由来の2価の基が挙げられる。中でも負電荷を効率良く非局在化すること、安定性、耐熱性に優れることから、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、ピリジン環もしくはカルバゾール環由来の2価の基またはビフェニル基が好ましい。
Ar13の芳香環基の例としては、Ar11、Ar12、Ar14の場合と同様である。
Figure 2023051507000089
上記式(12)中、R11は、アルキル基、芳香環基または炭素数40以下のアルキル基と芳香環基からなる3価の基を表し、これらは置換基を有していてもよい。R12は、アルキル基、芳香環基または炭素数40以下のアルキル基と芳香環基からなる2価の基を表し、これらは置換基を有していてもよい。Ar31は、1価の芳香環基、又は1価の架橋基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。qは1~4を表す。qが2以上の場合、複数のR12は同一であっても異なっていてもよく、複数のAr31は同一であっても異なっていてもよい。アスタリスク(*)は式(11)の窒素原子との結合手を示す。
11の芳香環基としては、炭素数3以上30以下の単環又は縮合環である芳香環基1つであるか、又はそれらが2~6連結した基が好ましく、具体例としては、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環及びこれらが2~6連結した基由来の3価の基が挙げられる。
11のアルキル基としては、炭素数1以上12以下の直鎖、分岐、又は環を含むアルキル基が好ましく、具体例としては、メタン、エタン、プロパン、イソプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン由来の基等が挙げられる。
11の炭素数40以下のアルキル基と芳香環基からなる基としては、好ましくは炭素数1以上12以下の直鎖、分岐、又は環を含むアルキル基と、炭素数3以上30以下の単環又は縮合環である芳香環基1つ又は2~6連結した基とが連結した基が挙げられる。
12の芳香環基の具体例としては、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環及びこれらが連結した炭素数30以下の連結環由来の2価の基が挙げられる。
12のアルキル基の具体例としては、メタン、エタン、プロパン、イソプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン由来の2価の基等が挙げられる。
Ar31の芳香環基の具体例としては、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環及びこれらが連結した炭素数30以下の連結環由来の1価の基が挙げられる。
式(12)の好ましい構造の例としては以下の構造が挙げられ、R11の部分構造である下記構造における主鎖のベンゼン環またはフルオレン環はさらに置換基を有していてもよい。
Figure 2023051507000090
Ar31の架橋基の例としては、ベンゾシクロブテン環、ナフトシクロブテン環またはオキセタン環由来の基、ビニル基、アクリル基等が挙げられる。化合物の安定性からベンゾシクロブテン環またはナフトシクロブテン環由来の基が好ましい。
Figure 2023051507000091
上記式(13)中、x,yは、0以上の整数を表す。Ar21、Ar23は、それぞれ独立に、2価の芳香環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar22は置換基を有していてもよい1価の芳香環基を表し、R13は、アルキル基、芳香環基、またはアルキル基と芳香環基からなる2価の基を表し、これらは置換基を有していてもよい。
Ar32は1価の芳香環基又は1価の架橋基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar32が1価の架橋基である場合、架橋基としては前記Ar31で用いることのできる架橋基と同様の架橋基が好ましい。アスタリスク(*)は式(11)の窒素原子との結合手を示す。
Ar21、Ar23の芳香環基の例としては、Ar11、Ar12、Ar14の場合と同様である。
Ar22、Ar32の芳香環基の例としては、単環、2~6縮合環又はこれらの芳香族環が2つ以上連結した基が挙げられる。具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環、ビフェニル基、ターフェニル基、クアテルフェニル基、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環もしくはアズレン環由来の1価の基が挙げられる。中でも負電荷を効率良く非局在化すること、安定性、耐熱性に優れることから、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、ピリジン環もしくはカルバゾール環由来の1価の基またはビフェニル基が好ましい。
13のアルキル基または芳香環基の例としては、R12と同様である。
Ar32の架橋基は特に限定しないが、好ましい例としては、ベンゾシクロブテン環、ナフトシクロブテン環もしくはオキセタン環由来の基、ビニル基、アクリル基等が挙げられる。
上記Ar11~Ar14、R11~R13、Ar21~Ar23、Ar31~Ar32、Q11、Q12はいずれも、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、更に置換基を有していてもよい。置換基の分子量としては、400以下が好ましく、中でも250以下がより好ましい。置換基の種類は特に制限されないが、例としては、下記の置換基群Wから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
[置換基群W]
メチル基、エチル基等の、炭素数が1以上、好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下のアルキル基;ビニル基等の、炭素数が2以上、好ましくは11以下、さらに好ましくは5以下のアルケニル基;エチニル基等の、炭素数が2以上、好ましくは11以下、さらに好ましくは5以下のアルキニル基;メトキシ基、エトキシ基等の、炭素数が1以上、好ましくは10以下、さらに好ましくは6以下のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の、炭素数が4以上、好ましくは5以上、好ましくは25以下、さらに好ましくは14以下のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数が2以上、好ましくは11以下、さらに好ましくは7以下のアルコキシカルボニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の、炭素数が2以上、好ましくは20以下、さらに好ましくは12以下のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N-カルバゾリル基等の、炭素数が10以上、好ましくは12以上、好ましくは30以下、さらに好ましくは22以下のジアリールアミノ基;フェニルメチルアミノ基等の、炭素数が6以上、さらに好ましくは7以上、好ましくは25以下、さらに好ましくは17以下のアリールアルキルアミノ基;アセチル基、ベンゾイル基等の、炭素数が2以上、好ましくは10以下、さらに好ましくは7以下のアシル基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;トリフルオロメチル基等の、炭素数が1以上、好ましくは8以下、さらに好ましくは4以下のハロアルキル基;メチルチオ基、エチルチオ基等の、炭素数が1以上、好ましくは10以下、さらに好ましくは6以下のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の、炭素数が4以上、好ましくは5以上、好ましくは25以下、さらに好ましくは14以下のアリールチオ基;トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の、炭素数が2以上、好ましくは3以上、好ましくは33以下、さらに好ましくは26以下のシリル基;トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の、炭素数が2以上、好ましくは3以上、好ましくは33以下、さらに好ましくは26以下のシロキシ基;シアノ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素数が6以上、好ましくは30以下、さらに好ましくは18以下の芳香族炭化水素基;チエニル基、ピリジル基等の、炭素数が3以上、好ましくは4以上、好ましくは28以下、さらに好ましくは17以下の芳香族複素環基。
上記置換基群Wのうち、溶解性を向上させる観点からアルキル基又はアルコキシ基が好ましく、電荷輸送性及び安定性の観点から芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好ましい。
特に、式(11)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物の中でも、下記式(14)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が、正孔注入・輸送性が非常に高くなるので好ましい。
Figure 2023051507000092
上記式(14)中、R21~R25は各々独立に、任意の置換基を表す。R21~R25の置換基の具体例は、前述の[置換基群W]に記載されている置換基と同様である。
s、tは各々独立に、0以上、5以下の整数を表す。
u、v、wは各々独立に、0以上、4以下の整数を表す。
芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記式(15)及び/又は式(16)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物が挙げられる。
Figure 2023051507000093
上記式(15)、式(16)中、Ar45、Ar47及びAr48は各々独立して、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基を表す。Ar44及びAr46は各々独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表す。
41~R43は各々独立して、水素原子又は任意の置換基を表す。
Ar45、Ar47及びAr48の具体例、好ましい例、有していてもよい置換基の例及び好ましい置換基の例は、Ar22と同様であり、Ar44及びAr46の具体例、好ましい例、有していてもよい置換基の例及び好ましい置換基の例は、Ar11、Ar12及びAr14と同様である。R41~R43として好ましくは、水素原子又は前述の[置換基群W]に記載されている置換基であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基である。
以下に、本発明において適用可能な、式(15)、式(16)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2023051507000094
正孔輸送材料の構造において、さらに下記式(a-1)の繰り返し単位を含むと、安定な膜を形成するのに好ましい。
Figure 2023051507000095
(式(a-1)中、
Arは、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選択される構造が複数連結した2価の基を表し、
Arは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選択される構造が複数連結した1価の基を表し、
Rは、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、フッ素原子、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選択される構造が複数連結した1価の基であり、
添字nは2から5までの整数を表し、
添字mは、各々独立に0から4までの整数を表し、
各々独立な複数のmの総和は1以上である。)
式(a-1)において、特に下記式(54)の繰り返し単位であることが、さらに平坦な薄膜を形成するのに好ましい。
Figure 2023051507000096
(54)の構造は、π共役によって形成される平面な構造をR201およびR202の側鎖によって歪ませることで、通常のπ共役結合よりも自由度が高くなっている。一般式(1)で表される溶媒を適用した場合、当該溶媒の自由な二つのベンゼン環に対して、お互いに自由に侵入しやすくなることから溶解性が増し、より溶媒内に溶質が均一に分散しやすくなることで、平坦性が向上すると推測される。
(正孔注入層用電子受容性化合物)
正孔注入層形成用組成物は、正孔注入層3の構成材料として、正孔注入層用電子受容性化合物を含有していることが好ましい。
正孔注入層用電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送材料から1電子受容する能力を有する化合物が好ましい。具体的には、正孔注入層用電子受容性化合物としては、電子親和力が4.0eV以上である化合物が好ましく、5.0eV以上の化合物がさらに好ましい。
このような正孔注入層用電子受容性化合物としては、例えばテトラアリールホウ素イオン化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物等が挙げられる。さらに具体的には、正孔注入層用電子受容性化合物としては、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩(国際公開2005/089024号、国際公開2017/164268号);塩化鉄(III)(特開平11-251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(特開2003-31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体;ヨウ素;ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、ショウノウスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン等が挙げられる。
また、正孔注入層用電子受容性化合物としては、前記電子受容性化合物で説明した化合物を用いることが好ましい。
電子受容性化合物は、正孔輸送材料を酸化することにより正孔注入層3の導電率を向上させることができる。また、より平坦な膜を得るためにも、このような電子受容性化合物を混合することは好ましい。
(その他の構成材料)
正孔注入層3の材料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述の正孔輸送材料や電子受容性化合物に加えて、さらに、その他の成分を含有させてもよい。
(溶剤)
湿式成膜法に用いる正孔注入層形成用組成物の溶剤のうち少なくとも1種は、上述の正孔注入層3の構成材料を溶解しうる化合物であることが好ましい。
正孔注入層形成用組成物が本発明の組成物である場合は、溶剤は本発明の前記溶媒Aと前記溶媒Bである。溶媒Aが、前記電子受容性化合物を溶かしにくい性質を有するため、インクとして全体の溶解性を担保する溶剤になるためには、溶媒Bは相対的に電子受容性化合物を溶かしやすい溶媒であることが好ましい。溶媒Bは芳香族エステル系溶媒、芳香族エーテル溶媒、芳香族ケトン溶媒であることがさらに好ましい。
溶剤として例えばエーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アミド系溶剤などが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2-メトキシトルエン、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、2,3-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n-ブチル等の芳香族エステル等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3-イソプロピルビフェニル、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
その他、ジメチルスルホキシド等も用いることができる。
中でも好ましくは、芳香族エステル、芳香族エーテルである。
これらの溶剤は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
正孔注入層形成用組成物中の正孔輸送材料の濃度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。正孔注入層形成用組成物中の正孔輸送材料の濃度は、膜厚の均一性の点から、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上である。正孔注入層形成用組成物中の正孔輸送材料の濃度は、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。この濃度は、膜厚ムラが生じ難い点では小さいことが好ましい。また、この濃度は、成膜された正孔注入層に欠陥が生じ難い点では大きいことが好ましい。
(湿式成膜法による正孔注入層の形成)
湿式成膜法により正孔注入層3を形成する場合、通常は、正孔注入層3を構成する材料を適切な溶剤(正孔注入層用溶剤)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層形成用組成物)を調製し、この正孔注入層3形成用組成物を適切な手法により、正孔注入層の下層に該当する層(通常は、陽極2)上に塗布して成膜し、乾燥することにより正孔注入層3を形成する。
(真空蒸着法による正孔注入層3の形成)
真空蒸着法により正孔注入層3を形成する場合には、例えば以下のようにして正孔輸送層3を形成することができる。正孔注入層3の構成材料(前述の正孔輸送材料、電子受容性化合物等)の1種又は2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10-4Pa程度まで排気する。この後、るつぼを加熱して(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して蒸発させ(2種以上の材料を用いる場合は各々独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板1の陽極2上に正孔注入層3を形成させる。2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱、蒸発させて正孔注入層3を形成することもできる。
蒸着時の真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されない。蒸着時の真空度は、通常0.1×10-6Torr(0.13×10-4Pa)以上、9.0×10-6Torr(12.0×-4Pa)以下である。蒸着速度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されない。蒸着速度は、通常0.1Å/秒以上、5.0Å/秒以下である。蒸着時の成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されない。蒸着時の成膜温度は、好ましくは10℃以上、50℃以下で行われる。
[正孔輸送層]
正孔輸送層4は、陽極2から発光層5へ輸送する層である。正孔輸送層4は、本発明の有機電界発光素子に必須の層ではないが、正孔輸送層4を設ける場合は、通常、正孔輸送層4は、正孔注入層3がある場合には正孔注入層3の上に、正孔注入層3が無い場合には陽極2の上に形成する。
正孔輸送層4の形成方法は、真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はない。
正孔輸送層4は、ダークスポット低減の観点から湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔輸送層4を形成する材料としては、正孔輸送性が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、正孔輸送層4を形成する材料は、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。多くの場合、正孔輸送層4は、発光層5に接するため、発光層5からの発光を消光したり、発光層5との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。
正孔輸送層4の材料としては、従来、正孔輸送層4の構成材料として用いられている材料であればよい。正孔輸送層4の材料としては、例えばアリールアミン誘導体、フルオレン誘導体、スピロ誘導体、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、シロール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。
正孔輸送層4の材料としては、例えばポリビニルカルバゾール誘導体、ポリアリールアミン誘導体、ポリビニルトリフェニルアミン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリアリーレン誘導体、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン誘導体、ポリアリーレンビニレン誘導体、ポリシロキサン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリ(p-フェニレンビニレン)誘導体等が挙げられる。これらは、交互共重合体、ランダム重合体、ブロック重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。また、主鎖に枝分かれがあり末端部が3つ以上ある高分子や、所謂デンドリマーであってもよい。
中でも、正孔輸送層4の材料としては、ポリアリールアミン誘導体やポリアリーレン誘導体が好ましい。
ポリアリールアミン誘導体及びポリアリーレン誘導体の具体例等は、特開2008-98619号公報に記載のものなどが挙げられる。
ポリアリールアミン誘導体としては、前記芳香族三級アミン高分子化合物を用いることが好ましい。
湿式成膜法で正孔輸送層4を形成する場合は、上記正孔注入層3の形成と同様にして、正孔輸送層形成用組成物を調製した後、湿式成膜後、乾燥させる。
正孔輸送層形成用組成物には、上述の正孔輸送材料の他、溶剤を含有する。用いる溶剤は、上記正孔注入層形成用組成物に用いたものと同様である。また、成膜条件、乾燥条件等も正孔注入層3の形成の場合と同様である。
正孔輸送層形成用組成物が本発明の組成物である場合は、溶剤は本発明の前記溶媒Aと前記溶媒Bである。
真空蒸着法により正孔輸送層4を形成する場合もまた、その成膜条件等は上記正孔注入層3の形成の場合と同様である。
正孔輸送層4の膜厚は、発光層中の低分子材料の浸み込みや正孔輸送材料の膨潤など要素を考慮し、通常5nm以上、好ましくは10nm以上で、通常300nm以下、好ましくは200nm以下である。
[発光層]
発光層5は、電界を与えられた電極間において、陽極2から注入された正孔と、陰極9から注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。発光層5は、通常、正孔輸送層4がある場合には正孔輸送層4の上に、正孔輸送層4が無く、正孔注入層3がある場合には正孔注入層3の上に、正孔輸送層4も正孔注入層3も無い場合は、陽極2の上に形成する。
<発光層用材料>
発光層用材料は、通常、発光材料とホストとなる電荷輸送材料を含む。
<発光材料>
発光材料としては、通常、有機電界発光素子の発光材料として使用されている任意の公知の材料を適用することができ、特に制限はなく、所望の発光波長で発光し、発光効率が良好である物質を用いればよい。発光材料は、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよいが、内部量子効率の観点から、好ましくは燐光発光材料である。さらに好ましくは、赤発光材料と緑発光材料は燐光発光材料であり、青発光材料は蛍光発光材料である。
本発明の組成物が発光層形成用組成物である場合、以下の燐光発光材料、蛍光発光材料及び電荷輸送材料を用いることが好ましい。
<燐光発光材料>
燐光発光材料とは、励起三重項状態から発光を示す材料をいう。例えば、Ir、Pt、Euなどを有する金属錯体化合物がその代表例であり、材料の構造として、金属錯体を含むものが好ましい。
金属錯体の中でも、三重項状態を経由して発光する燐光発光性有機金属錯体として、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7~11族から選ばれる金属を中心金属として含むウェルナー型錯体又は有機金属錯体化合物が挙げられる。このような燐光発光材料としては、例えば、国際公開第2014/024889号、国際公開第2015-087961号、国際公開第2016/194784、特開2014-074000号に記載の燐光発光材料が挙げられる。好ましくは、下記式(201)で表される化合物、又は下記式(205)で表される化合物が好ましく、より好ましくは下記式(201)で表される化合物である。
Figure 2023051507000097
式(201)において、環A1は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造又は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
環A2は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
201、R202は各々独立に式(202)で表される構造であり、“*”は環A1又は環A2との結合位置を表す。R201、R202は同じであっても異なっていてもよく、R201、R202がそれぞれ複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。
Ar201、Ar203は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
Ar202は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造、置換基を有していてもよい芳香族複素環構造、又は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素構造を表す。
環A1に結合する置換基同士、環A2に結合する置換基同士、又は環A1に結合する置換基と環A2に結合する置換基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。
201-L200-B202は、アニオン性の2座配位子を表す。B201及びB202は、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子又は窒素原子を表し、これらの原子は環を構成する原子であってもよい。L200は、単結合、又は、B201及びB202とともに2座配位子を構成する原子団を表す。B201-L200-B202が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
なお、式(201)、(202)において、
i1、i2はそれぞれ独立に、0以上12以下の整数を表し、
i3は、Ar202に置換可能な数を上限とする0以上の整数を表し、
i4は、Ar201に置換可能な数を上限とする0以上の整数を表し、
k1及びk2はそれぞれ独立に、環A1、環A2に置換可能な数を上限とする0以上の整数を表し、
zは1~3の整数を表す。
(置換基)
特に断りのない場合、置換基としては、次の置換基群Sから選ばれる基が好ましい。
<置換基群S>
・アルキル基、好ましくは炭素数1~20のアルキル基、より好ましくは炭素数1~12のアルキル基、さらに好ましくは炭素数1~8のアルキル基、特に好ましくは炭素数1~6のアルキル基。
・アルコキシ基、好ましくは炭素数1~20のアルコキシ基、より好ましくは炭素数1~12のアルコキシ基、さらに好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基。
・アリールオキシ基、好ましくは炭素数6~20のアリールオキシ基、より好ましくは炭素数6~14のアリールオキシ基、さらに好ましくは炭素数6~12のアリールオキシ基、特に好ましくは炭素数6のアリールオキシ基。
・ヘテロアリールオキシ基、好ましくは炭素数3~20のヘテロアリールオキシ基、より好ましくは炭素数3~12のヘテロアリールオキシ基。
・アルキルアミノ基、好ましくは炭素数1~20のアルキルアミノ基、より好ましくは炭素数1~12のアルキルアミノ基。
・アリールアミノ基、好ましくは炭素数6~36のアリールアミノ基、より好ましくは炭素数6~24のアリールアミノ基。
・アラルキル基、好ましくは炭素数7~40のアラルキル基、より好ましくは炭素数7~18のアラルキル基、さらに好ましくは炭素数7~12のアラルキル基。
・ヘテロアラルキル基、好ましくは炭素数7~40のヘテロアラルキル基、より好ましくは炭素数7~18のヘテロアラルキル基、
・アルケニル基、好ましくは炭素数2~20のアルケニル基、より好ましくは炭素数2~12のアルケニル基、さらに好ましくは炭素数2~8のアルケニル基、特に好ましくは炭素数2~6のアルケニル基。
・アルキニル基、好ましくは炭素数2~20のアルキニル基、より好ましくは炭素数2~12のアルキニル基。
・アリール基、好ましくは炭素数6~30のアリール基、より好ましくは炭素数6~24のアリール基、さらに好ましくは炭素数6~18のアリール基、特に好ましくは炭素数6~14のアリール基。
・ヘテロアリール基、好ましくは炭素数3~30のヘテロアリール基、より好ましくは炭素数3~24のヘテロアリール基、さらに好ましくは炭素数3~18のヘテロアリール基、特に好ましくは炭素数3~14のヘテロアリール基。
・アルキルシリル基、好ましくはアルキル基の炭素数が1~20であるアルキルシリル基、より好ましくはアルキル基の炭素数が1~12であるアルキルシリル基。
・アリールシリル基、好ましくはアリール基の炭素数が6~20であるアリールシリル基、より好ましくはアリール基の炭素数が6~14であるアリールシリル基。
・アルキルカルボニル基、好ましくは炭素数2~20のアルキルカルボニル基。
・アリールカルボニル基、好ましくは炭素数7~20のアリールカルボニル基。
以上の基は一つ以上の水素原子がフッ素原子で置き換えられているか、若しくは1つ以上の水素原子が重水素原子で置き換えらえられていてもよい。
特に断りのない限り、アリールは芳香族炭化水素環であり、ヘテロアリールは芳香族複素環である。
・水素原子、重水素原子、フッ素原子、シアノ基、又は、-SF5。
上記置換基群Sのうち、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アリールシリル基、及びこれらの基の一つ以上の水素原子がフッ素原子で置き換えられている基、フッ素原子、シアノ基、又は-SFであり、
より好ましくはアルキル基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基であり、及びこれらの基の一つ以上の水素原子がフッ素原子で置き換えられている基、フッ素原子、シアノ基、又は-SFであり、
さらに好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アリールシリル基であり、
特に好ましくはアルキル基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基であり、
最も好ましくはアルキル基、アリールアミノ基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基である。
これら置換基群Sにはさらに置換基群Sから選ばれる置換基を置換基として有していてもよい。有していてもよい置換基の好ましい基、より好ましい基、さらに好ましい基、特に好ましい基、最も好ましい基は置換基群Sの中の好ましい基と同様である。
(環A1)
環A1は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造又は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
芳香族炭化水素環としては、好ましくは炭素数6~30の芳香族炭化水素環である。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、トリフェニリル環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環が好ましい。
芳香族複素環としては、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子のいずれかを含む、炭素数3~30の芳香族複素環が好ましい。さらに好ましくは、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環である。
環A1としてより好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環であり、特に好ましくはベンゼン環又はフルオレン環であり、最も好ましくはベンゼン環である。
(環A2)
環A2は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
芳香族複素環としては、好ましくはヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子のいずれかを含む、炭素数3~30の芳香族複素環である。具体的には、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、ナフチリジン環、フェナントリジン環が挙げられ、好ましくは、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環であり、より好ましくは、ピリジン環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環であり、最も好ましくは、ピリジン環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環である。
(環A1と環A2との組み合わせ)
環A1と環A2の好ましい組み合せとしては、(環A1-環A2)と表記すると、(ベンゼン環-ピリジン環)、(ベンゼン環-キノリン環)、(ベンゼン環-キノキサリン環)、(ベンゼン環-キナゾリン環)、(ベンゼン環-ベンゾチアゾール環)、(ベンゼン環-イミダゾール環)、(ベンゼン環-ピロール環)、(ベンゼン環-ジアゾール環)、及び(ベンゼン環-チオフェン環)である。
(環A1、環A2の置換基)
環A1、環A2が有していてもよい置換基は任意に選択できるが、好ましくは前記置換基群Sから選ばれる1種又は複数種の置換基である。
(Ar201、Ar202、Ar203
Ar201、Ar203は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
Ar202は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造、置換基を有していてもよい芳香族複素環構造、又は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素構造を表す。
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造である場合、該芳香族炭化水素環構造としては、好ましくは炭素数6~30の芳香族炭化水素環である。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、トリフェニリル環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環が好ましく、より好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環が好ましく、最も好ましくはベンゼン環である。
Ar201、Ar202のいずれかが置換基を有していてもよいベンゼン環である場合、少なくとも一つのベンゼン環がオルト位又はメタ位で隣接する構造と結合していることが好ましく、少なくとも一つのベンゼン環がメタ位で隣接する構造と結合していることがより好ましい。
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよいフルオレン環である場合、フルオレン環の9位及び9’位は、置換基を有するか又は隣接する構造と結合していることが好ましい。
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよい芳香族複素環構造である場合、芳香族複素環構造としては、好ましくはヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子のいずれかを含む、炭素数3~30の芳香族複素環であり、具体的には、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、ナフチリジン環、フェナントリジン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環が挙げられ、好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環である。
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよいカルバゾール環である場合、カルバゾール環のN位は、置換基を有するか又は隣接する構造と結合していることが好ましい。
Ar202が置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素構造である場合、直鎖、分岐鎖、又は環状構造を有する脂肪族炭化水素構造であり、好ましくは炭素数が1以上24以下であり、さらに好ましくは炭素数が1以上12以下であり、より好ましくは炭素数が1以上8以下である。
(i1、i2、i3、i4、k1、k2)
i1、i2はそれぞれ独立に、0~12の整数を表し、好ましくは1~12、さらに好ましくは1~8、より好ましくは1~6である。この範囲であることにより、溶解性向上や電荷輸送性向上が見込まれる。
i3は好ましくは0~5の整数を表し、さらに好ましくは0~2、より好ましくは0又は1である。
i4は好ましくは0~2の整数を表し、さらに好ましくは0又は1である。
k1、k2はそれぞれ独立に、好ましくは0~3の整数を表し、さらに好ましくは1~3であり、より好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1である。
(Ar201、Ar202、Ar203の好ましい置換基)
Ar201、Ar202、Ar203が有していてもよい置換基は任意に選択できるが、好ましくは前記置換基群Sから選ばれる1種又は複数種の置換基であり、好ましい基も前記置換基群Sの通りであるが、より好ましくは無置換(水素原子)、アルキル基、アリール基であり、特に好ましくは無置換(水素原子)、アルキル基であり、最も好ましくは無置換(水素原子)またはターシャリーブチル基であり、ターシャリーブチル基はAr203が存在する場合はAr203に、Ar203が存在しない場合はAr202に、Ar202とAr203が存在しない場合はAr201に置換していることが好ましい。
(式(201)で表される化合物の好ましい態様)
前記式(201)で表される化合物は、下記(I)~(IV)のうちのいずれか1以上を満たす化合物であることが好ましい。
(I)フェニレン連結式
式(202)で表される構造はベンゼン環が連結した基を有する構造、すなわち、ベンゼン環構造、i1が1~6で、少なくとも一つの前記ベンゼン環がオルト位又はメタ位で隣接する構造と結合していることが好ましい。
このような構造であることによって、溶解性が向上し、かつ電荷輸送性が向上することが期待される。
(II)(フェニレン)-アラルキル(アルキル)
環A1又は環A2に、アルキル基若しくはアラルキル基が結合した芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基を有する構造、すなわち、Ar201が芳香族炭化水素構造又は芳香族複素環構造、i1が1~6、Ar202が脂肪族炭化水素構造、i2が1~12、好ましくは3~8、Ar203がベンゼン環構造、i3が0又は1である構造、好ましくは、Ar201は前記芳香族炭化水素構造であり、さらに好ましくはベンゼン環が1~5連結した構造であり、より好ましくはベンゼン環1つである。
このような構造であることによって、溶解性が向上し、かつ電荷輸送性が向上することが期待される。
(III)デンドロン
環A1又は環A2に、デンドロンが結合した構造、例えば、Ar201、Ar202がベンゼン環構造、Ar203がビフェニル又はターフェニル構造、i1、i2が1~6、i3が2、jが2である。
このような構造であることによって、溶解性が向上し、かつ電荷輸送性が向上することが期待される。
(IV)B201-L200-B202
201-L200-B202で表される構造は下記式(203)又は下記式(204)で表される構造であることが好ましい。
Figure 2023051507000098
式(203)中、R211、R212、R213はそれぞれ独立に置換基を表す。
式(204)中、環B3は、置換基を有していてもよい、窒素原子を含む芳香族複素環構造を表す。環B3は好ましくはピリジン環である。
(好ましい燐光発光材料)
前記式(201)で表される燐光発光材料としては特に限定はされないが、好ましいものとして以下のものが挙げられる。
Figure 2023051507000099
Figure 2023051507000100
また、下記式(205)で表される燐光発光材料も好ましい。
Figure 2023051507000101
[式(205)中、Mは金属を表し、Tは炭素原子又は窒素原子を表す。R92~R95は、それぞれ独立に置換基を表す。但し、Tが窒素原子の場合は、R94及びR95は無い。]
式(205)中、Mの具体例としては、周期表第7~11族から選ばれる金属が挙げられる。中でも好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が挙げられ、特に好ましくは、白金、パラジウム等の2価の金属が挙げられる。
また、式(205)において、R92及びR93は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。
更に、Tが炭素原子の場合、R94及びR95は、それぞれ独立に、R92及びR93と同様の例示物で表される置換基を表す。また、Tが窒素原子の場合は該Tに直接結合するR94又はR95は存在しない。また、R92~R95は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、前記の置換基とすることができる。更に、R92~R95のうち任意の2つ以上の基が互いに連結して環を形成してもよい。
(分子量)
燐光発光材料の分子量は、好ましくは5000以下、更に好ましくは4000以下、特に好ましくは3000以下である。また、燐光発光材料の分子量は、好ましくは800以上、より好ましくは1000以上、更に好ましくは1200以上である。この分子量範囲であることによって、燐光発光材料同士が凝集せず電荷輸送材料と均一に混合し、発光効率の高い発光層を得ることができると考えられる。
燐光発光材料の分子量は、Tgや融点、分解温度等が高く、燐光発光材料及び形成された発光層の耐熱性に優れる点、及び、ガス発生、再結晶化及び分子のマイグレーション等に起因する膜質の低下や材料の熱分解に伴う不純物濃度の上昇等が起こり難い点では大きいことが好ましい。一方、燐光発光材料の分子量は、有機化合物の精製が容易である点では小さいことが好ましい。
<電荷輸送材料>
発光層に用いる電荷輸送材料は、電荷輸送性に優れる骨格を有する材料であり、電子輸送性材料、正孔輸送性材料及び電子と正孔の両方を輸送可能な両極性材料から選ばれることが好ましい。
電荷輸送性に優れる骨格としては、具体的には、芳香族構造、芳香族アミン構造、トリアリールアミン構造、ジベンゾフラン構造、ナフタレン構造、フェナントレン構造、フタロシアニン構造、ポルフィリン構造、チオフェン構造、ベンジルフェニル構造、フルオレン構造、キナクリドン構造、トリフェニレン構造、カルバゾール構造、ピレン構造、アントラセン構造、フェナントロリン構造、キノリン構造、ピリジン構造、ピリミジン構造、トリアジン構造、オキサジアゾール構造又はイミダゾール構造等が挙げられる。
電子輸送性材料としては、電子輸送性に優れ構造が比較的安定な材料である観点から、ピリジン構造、ピリミジン構造、トリアジン構造を有する化合物がより好ましく、ピリミジン構造、トリアジン構造を有する化合物であることがさらに好ましい。
正孔輸送性材料は、正孔輸送性に優れた構造を有する化合物であり、前記電荷輸送性に優れた中心骨格の中でも、カルバゾール構造、ジベンゾフラン構造、トリアリールアミン構造、ナフタレン構造、フェナントレン構造又はピレン構造が正孔輸送性に優れた構造として好ましく、カルバゾール構造、ジベンゾフラン構造又はトリアリールアミン構造がさらに好ましい。
発光層に用いる電荷輸送材料は、3環以上の縮合環構造を有することが好ましく、3環以上の縮合環構造を2以上有する化合物又は5環以上の縮合環を少なくとも1つ有する化合物であることがさらに好ましい。これらの化合物であることで、分子の剛直性が増し、熱に応答する分子運動の程度を抑制する効果が得られ易くなる。さらに、3環以上の縮合環及び5環以上の縮合環は、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有することが電荷輸送性及び材料の耐久性の点で好ましい。
3環以上の縮合環構造としては、具体的には、アントラセン構造、フェナントレン構造、ピレン構造、クリセン構造、ナフタセン構造、トリフェニレン構造、フルオレン構造、ベンゾフルオレン構造、インデノフルオレン構造、インドロフルオレン構造、カルバゾール構造、インデノカルバゾール構造、インドロカルバゾール構造、ジベンゾフラン構造、ジベンゾチオフェン構造等が挙げられる。電荷輸送性ならびに溶解性の観点から、フェナントレン構造、フルオレン構造、インデノフルオレン構造、カルバゾール構造、インデノカルバゾール構造、インドロカルバゾール構造、ジベンゾフラン構造及びジベンゾチオフェン構造からなる群より選択される少なくとも1つが好ましく、電荷に対する耐久性の観点からカルバゾール構造又はインドロカルバゾール構造がさらに好ましい。
本発明においては、有機電界発光素子の電荷に対する耐久性の観点から、発光層の電荷輸送材料の内、少なくとも一つはピリミジン骨格又はトリアジン骨格を有する材料であることが好ましい。
発光層の電荷輸送材料は、可撓性に優れる観点では高分子材料であることが好ましい。
可撓性に優れる材料を用いて形成された発光層は、フレキシブル基板上に形成された有機電界発光素子の発光層として好ましい。発光層に含まれる電荷輸送材料が高分子材料である場合、分子量は、好ましくは5,000以上1,000,000以下、より好ましくは10,000以上、500,000以下、さらに好ましくは10,000以上100,000以下である。
また、発光層の電荷輸送材料は、合成及び精製のしやすさ、電子輸送性能及び正孔輸送性能の設計のしやすさ、溶媒に溶解した時の粘度調整のしやすさの観点からは、低分子であることが好ましい。発光層に含まれる電荷輸送材料が低分子材料である場合、分子量は、5,000以下が好ましく、さらに好ましくは4,000以下であり、特に好ましくは3,000以下であり、最も好ましくは2,000以下であり、好ましくは300以上、より好ましくは350以上、さらに好ましくは400以上である。
<蛍光発光材料>
蛍光発光材料としては特に限定されないが、下記式(211)で表される化合物が好ましい。
Figure 2023051507000102
上記式(211)において、Ar241は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素縮合環構造を表し、Ar242、Ar243は各々独立に置換基を有していてもよいアルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素基又はこれらが結合した基を表す。n41は1~4の整数である。
Ar241は好ましくは炭素数10~30の芳香族炭化水素縮合環構造を表し、具体的な環構造としては、ナフタレン、アセナフテン、フルオレン、アントラセン、フェナトレン、フルオランテン、ピレン、テトラセン、クリセン、ペリレン等が挙げられる。
Ar241はより好ましくは炭素数12~20の芳香族炭化水素縮合環構造であり、具体的な環構造としては、アセナフテン、フルオレン、アントラセン、フェナトレン、フルオランテン、ピレン、テトラセン、クリセン、ペリレンが挙げられる。
Ar241はさらに好ましくは炭素数16~18の芳香族炭化水素縮合環構造であり、具体的な環構造としては、フルオランテン、ピレン、クリセンが挙げられる。
n41は1~4であり、好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2、最も好ましくは2である。
Ar242、Ar243のアルキル基としては、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基である。
Ar242、Ar243の芳香族炭化水素基としては、炭素数6~30の芳香族炭化水素基が好ましく、より好ましくは炭素数6~24の芳香族炭化水素基であり、最も好ましくはフェニル基、ナフチル基である。
Ar242、Ar243の芳香族複素基としては、炭素数3~30の芳香族複素基が好ましく、より好ましくは炭素数5~24の芳香族炭化水素基であり、具体的にはカルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基が好ましく、ジベンゾフラニル基がより好ましい。
Ar241、Ar242、Ar243が有していてもよい置換基は、前記置換基群Sから選ばれる基が好ましく、より好ましくは置換基群Sに含まれる、炭化水素基であり、さらに好ましくは置換基群Sとして好ましい基の中の炭化水素基である。
上記蛍光発光材料と共に用いる電荷輸送材料としては特に限定されないが、下記式(212)で表されるものが好ましい。
Figure 2023051507000103
上記式(212)において、R251、R252はそれぞれ独立に式(213)で表される構造であり、R253は置換基を表し、R253が複数ある場合、同一であっても異なっていてもよく、n43は0~8の整数である。
Figure 2023051507000104
上記式(213)において、*は式(212)のアントラセン環との結合手を表し、Ar254、Ar255はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造、又は置換基を有していてもよい複素芳香環構造を表し、Ar254、Ar255はそれぞれ複数存在する場合、同一であっても異なっていてもよく、n44は1~5の整数、n45は0~5の整数である。
Ar254は好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素数6~30の単環又は縮合環である芳香族炭化水素構造であり、より好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素数6~12の単環又は縮合環である芳香族炭化水素構造である。
Ar255は好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素数6~30の単環もしくは縮合環である芳香族炭化水素構造、又は置換基を有していてもよい炭素数6~30の縮合環である芳香族複素環構造である。Ar255はより好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素数6~12の単環もしくは縮合環である芳香族炭化水素構造、又は置換基を有していてもよい炭素数12の縮合環である芳香族複素環構造である。
n44は好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは1又は2である。
n45は好ましくは0~3の整数であり、より好ましくは0~2である。
置換基であるR253、Ar254及びAr255が有していてもよい置換基は、前記置換基群Sから選ばれる基が好ましい。より好ましくは置換基群Sに含まれる炭化水素基であり、さらに好ましくは置換基群Sとして好ましい基の中の炭化水素基である。
蛍光発光材料及び電荷輸送材料の分子量は5,000以下が好ましく、さらに好ましくは4,000以下であり、特に好ましくは3,000以下であり、最も好ましくは2,000以下である。また、好ましくは300以上であり、より好ましくは350以上、さらに好ましくは400以上である。
[正孔阻止層]
発光層5と後述の電子注入層8との間に、正孔阻止層6を設けてもよい。正孔阻止層6は、電子輸送層のうち、更に陽極2から移動してくる正孔を陰極9に到達するのを阻止する役割をも担う層である。正孔阻止層6は、発光層5の上に、発光層5の陰極9側の界面に接するように積層される層である。
正孔阻止層6は、陽極2から移動してくる正孔を陰極9に到達するのを阻止する役割と、陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とを有する。
正孔阻止層6を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項エネルギー準位(T1)が高いことなどが挙げられる。このような条件を満たす正孔阻止層6の材料としては、例えばビス(2-メチル-8-キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2-メチル-8-キノラト)アルミニウム-μ-オキソ-ビス-(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11-242996号公報)、3-(4-ビフェニルイル)-4-フェニル-5(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7-41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10-79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005/022962号公報に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層6の材料として好ましい。
正孔阻止層6の形成方法に制限はない。正孔阻止層6は、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層6の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。正孔阻止層6の膜厚は、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上で、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
[電子輸送層]
電子輸送層7は、発光層5と陰極9の間に設けられた電子を輸送するための層である。
電子輸送層7の電子輸送材料としては、通常、陰極9又は陰極9側の隣接層からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物を用いる。このような条件を満たす化合物としては、例えば8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体やリチウム錯体などの金属錯体(特開昭59-194393号公報)、10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3-ヒドロキシフラボン金属錯体、5-ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6-207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5-331459号公報)、2-t-ブチル-9,10-N,N’-ジシアノアントラキノンジイミン、トリアジン化合物誘導体、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
電子輸送層7に用いられる電子輸送材料としては、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される電子輸送性有機化合物に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープさせることにより(特開平10-270171号公報、特開2002-100478号公報、特開2002-100482号公報などに記載)、電子注入輸送性と優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。また、上述の電子輸送性有機化合物にフッ化リチウムや炭酸セシウムなどのような無機塩をドープすることも有効である。
電子輸送層7の形成方法に制限はない。電子輸送層7は、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
電子輸送層7の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。電子輸送層7の膜厚は常1nm以上、好ましくは5nm以上で、通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
[電子注入層]
陰極9から注入された電子を効率良く発光層5に注入するために、電子輸送層7と後述の陰極9との間に電子注入層8を設けてもよい。電子注入層8は、無機塩などからなる。
電子注入層8の材料としては、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF)、酸化リチウム(LiO)、炭酸セシウム(II)(CsCO)等が挙げられる(Applied Physics Letters,1997年,Vol.70、pp.152;特開平10-74586号公報;IEEE Transactions on Electron Devices,1997年,Vol.44,pp.1245;SID 04 Digest,pp.154等参照)。
電子注入層8は、電荷輸送性を伴わない場合が多いため、電子注入を効率よく行なうには、極薄膜として用いることが好ましく、その膜厚は、通常0.1nm以上、好ましくは5nm以下である。
[陰極]
陰極9は、発光層5側の層に電子を注入する役割を果たす電極である。
陰極9の材料としては、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等が挙げられる。これらのうち、効率よく電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、例えばスズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金などが用いられる。具体例としては、マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、アルミニウム-リチウム合金等の低仕事関数の合金電極などが挙げられる。
陰極9の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
陰極9の膜厚は、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが好ましい。この場合、陰極9の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上で、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陰極9の厚みは任意であり、陰極は基板と同一でもよい。
陰極9の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
例えばナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウム等のアルカリ土類金属等からなる低仕事関数の金属からなる陰極を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。
この目的のために、例えばアルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[その他の層]
本発明の有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えばその性能を損なわない限り、陽極2と陰極9との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、上記説明にある層のうち必須でない層が省略されていてもよい。
以上説明した層構成において、基板以外の構成要素を逆の順に積層することも可能である。例えば図1の層構成であれば、基板1上に他の構成要素を陰極9、電子注入層8、電子輸送層7、正孔阻止層6、発光層5、正孔輸送層4、正孔注入層3、陽極2の順に設けてもよい。
本発明の有機電界発光素子は、単一の有機電界発光素子として構成してもよく、複数の有機電界発光素子がアレイ状に配置された構成に適用してもよく、陽極と陰極がX-Yマトリックス状に配置された構成に適用してもよい。
上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。
<有機電界発光デバイス>
互いに異なる色に発光する有機電界発光素子を2つ以上設けて有機EL表示装置や有機EL照明などの有機電界発光デバイスとすることができる。この有機電界発光デバイスにおいて、少なくとも一つ、好ましくはすべての有機電界発光素子を本発明の有機電界発光素子とすることで、高品質の有機電界発光デバイスを提供できる。
<有機EL表示装置>
本発明の有機電界発光素子を用いた有機EL表示装置の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、有機EL表示装置を形成することができる。
<有機EL照明>
本発明の有機電界発光素子を用いた有機EL照明の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
<基板の準備>
膜厚0.5mmのガラス基板に、スパッタ法によってAg合金膜を製膜し、さらに該Ag膜上にスパッタ法によってインジウム・スズ酸化物(ITO)膜を製膜し、一般的なフォトリソグラフィー法によってパターニングした基板を準備した。該基板上に、撥液性を有するアクリル系樹脂を厚さ1.1μmで塗布し、一般的なフォトリソグラフィー法によって開口部を作製した。開口部のサイズは、長軸約180μm、短軸約60μmで、コーナーのRは30μmであった。
作製した該基板は、超純水にて超音波洗浄を15分間実施した後、エアブローで基板の残留水を飛ばし、130℃設定のクリーンオーブンで10分間乾燥させた。以下すべての実施例と比較例において、乾燥後の該基板はインクを塗布する直前に、230℃のホットプレートで10分間のベークを行ってから使用を開始している。
(実施例1)
<インクの準備>
下記に示す平均分子量15kの正孔輸送材料P-1と電子受容性化合物D-1を、重量比で100:12.5になるように混合した。一方、溶剤としてブチルベンゾエートと1,1-ジフェニルペンタンを、重量比で75:25になるように混合し、溶剤1を調製した。該混合物の含有量が溶剤1に対して2.0重量%になるように調整し、撹拌子を用いて420rpmで撹拌しながら、110℃で3時間加熱し、組成物1を作製した。
Figure 2023051507000105
Figure 2023051507000106
<塗布・乾燥工程>
組成物1を、インクジェットプリンター用カートリッジ(DMCLCP-11610)に充填し、インクジェットプリンター(富士フイルム社製DMP-2831)を用いて、前記基板の開口部に対して組成物1を塗布した。塗布量は、液滴の吐出速度が10m/sになるようにプリンターの吐出電圧を調整し、1つの開口に5滴滴下した。長軸方向に開口部の21個分、短軸方向に開口部の65個分塗布し、短軸方向は5個分塗布するごとに1個分塗布しないようなパターンで塗布し、画素群1とした。これにより、画素群1は短軸方向で開口部6個分を周期として、塗布された開口部と塗布されない開口部を繰り返した周期構造をとっている。組成物1を塗布した基板を真空乾燥し、得られた有機膜を230℃のホットプレートで30分間焼成することで、有機膜を得た。
<塗布膜の評価>
触針式の段差プロファイラー(小坂研究所 ET-200)によって、得られた有機膜の短軸方向7個分を測定し、塗布していない開口部の隣の有機膜を除いた3つの測定結果のなかからノイズの少ない一つを選んで、有機膜の形状プロファイルとした。
<平坦度の定量化>
得られた有機膜プロファイルの中で、最も薄い膜厚をTmとした場合、有機膜の膜厚TがTm+15nm以下になる領域を平坦な領域と考えた。すなわち、有機膜の膜厚TがTm<T<Tm+15nmの条件を満たす有機膜の長さをLf、開口部の長さをLоとし、以下の式(1)から平坦度Fを導出した。
平坦度F=Lf/Lо % 式(1)
(実施例2)
実施例1で用いた正孔輸送材料P-1の代わりに、平均分子量40kの正孔輸送材料P-2を用いたこと以外は、すべて実施例1と同じ工程で有機膜を製造し、平坦度の定量化を行った。
Figure 2023051507000107
(実施例3)
実施例1で用いた正孔輸送材料P-1の代わりに、平均分子量15kの正孔輸送材料P-3を用いたこと以外は、すべて実施例1と同じ工程で有機膜を製造し、平坦度の定量化を行った。
Figure 2023051507000108
(実施例4)
実施例1で用いた正孔輸送材料P-1の代わりに、平均分子量40kの正孔輸送材料P-4を用いたこと以外は、すべて実施例1と同じ工程で有機膜を製造し、平坦度の定量化を行った。
Figure 2023051507000109
(実施例5)
実施例1で用いた正孔輸送材料P-1と電子受容性化合物D-1の比率を重量比で100:0としたこと以外は、すべて実施例1と同じ工程で有機膜を製造し、平坦度の定量化を行った。
(実施例6)
実施例1で用いた電子受容性化合物D-1の代わりに、電子受容性化合物D-2を用いたこと以外は、すべて実施例1と同じ工程で有機膜を製造し、平坦度の定量化を行った。
Figure 2023051507000110
(実施例7)
実施例1で用いた混合溶剤において、1,1-ジフェニルペンタンを、以下に示す組成の混合溶媒1に変更したこと以外は、すべて実施例1と同じ工程で有機膜を製造し、平坦度の定量化を行った。
混合溶媒1の組成
1,2-ジメチル-4-(1-フェニルエチル)ベンゼン
4-ジメチル-2-(1-フェニルエチル)ベンゼン
4-ジメチル-1-(1-フェニルエチル)ベンゼン
エチル(フェニルエチル)ベンゼン
(実施例8)
実施例1で用いた溶剤1において、ブチルベンゾエートをジフェニルエーテルに変更したこと以外は、すべて実施例1と同じ工程で有機膜を製造し、平坦度の定量化を行った。
(実施例9)
実施例1で用いた溶剤1において、1,1ジフェニルペンタンとブチルベンゾエートの比率を50:50に変更したこと以外は、すべて実施例1と同じ工程で有機膜を製造し、平坦度の定量化を行った。
(実施例10)
実施例1で用いた溶剤1において、1,1ジフェニルペンタンとブチルベンゾエートの比率を5:95に変更したこと以外は、すべて実施例1と同じ工程で有機膜を製造し、平坦度の定量化を行った。
(実施例11)
実施例1で用いた正孔輸送材料をP-5に変更し、正孔輸送材料P-5と電子受容性化合物D-1の比率を重量比で100:0に変更したこと以外は、すべて実施例1と同じ工程で有機膜を製造し、平坦度の定量化を行った。
Figure 2023051507000111
(実施例12)
実施例11で用いた正孔輸送材料をP-6に変更したこと以外は、すべて実施例11と同じ工程で有機膜を製造し、平坦度の定量化を行った。
Figure 2023051507000112
(比較例1)
実施例1で用いた溶剤1において、1,1-ジフェニルペンタンを4-ブチルビフェニルに変更したこと以外は、すべて実施例1と同じ工程で有機膜を製造し、平坦度の定量化を行った。
(比較例2)
実施例1で用いた正孔輸送材料P-1と電子受容性化合物D-1の比率を重量比で100:0に変更し、且つ実施例1で用いた混合溶剤の1,1-ジフェニルペンタンを4-ブチルビフェニルに変更したこと以外は、すべて実施例1と同じ工程で有機膜を製造し、平坦度の定量化を行った。
(結果)
有機膜形状のプロファイルと平坦度を下記表にまとめた。
Figure 2023051507000113
Figure 2023051507000114
Figure 2023051507000115
Figure 2023051507000116
上記表にあるように、式(1)で表される溶媒を用いて溶剤を作成し製膜した有機膜は、それ以外の溶媒を用いて製膜した有機膜に比べて、平坦度が高くなっていることが分かる。
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極
10 有機電界発光素子

Claims (11)

  1. 下記式(1)で表される溶媒化合物と、機能性材料を含み、
    前記機能性材料は、下記式(54)で表される繰返し単位、下記式(55)で表される繰返し単位、下記式(56)で表される繰返し単位、及び、下記式(57)で表される繰返し単位から選択される繰返し単位をトリアリールアミン構造の繰返し単位として有する重合体を含む、有機電界発光素子用組成物。
    Figure 2023051507000117
    (式(1)中、R、R、R、n、mは、次の(i)又は(ii)のいずれかを満たす。
    (i)
    は炭素数1~6のアルキル基を表し、
    は各々独立に炭素数1~3のアルキル基を表し、
    は1~5の整数を表し、
    は存在せず、すなわちm=0である。
    (ii)
    は炭素数2~6のアルキル基を表し、
    、Rは各々独立に炭素数1~3のアルキル基を表し、
    、mは0~5の整数を表す。)
    Figure 2023051507000118
    (式(54)中、
    Ar51は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選択される複数の基が連結した基を表し、かつ、少なくとも、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基の縮合環構造、若しくは、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が複数連結した構造を含み、
    Xは、-C(R207)(R208)-、-N(R209)-又は-C(R211)(R212)-C(R213)(R214)-であり、
    201、R202、R221及びR222は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基であり、
    207~R209及びR211~R214は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、
    a及びbは、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
    cは、0~3の整数であり、
    dは、0~4の整数であり、
    i及びjはそれぞれ独立して0~3の整数である。)
    Figure 2023051507000119
    (式(55)中、
    Ar51は前記式(54)におけるAr51と同様であり、
    303及びR306は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基であり、
    304及びR305は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよいアラルキル基であり、
    lは、0又は1であり、
    mは、1又は2であり、
    nは、0又は1であり、
    pは、0又は1であり、
    qは、0又は1である。)
    Figure 2023051507000120
    (式(56)中、
    Ar51は前記式(54)におけるAr51と同様であり、
    Ar41は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基、又は前記2価の芳香族炭化水素基及び前記2価の芳香族複素環基からなる群から選択される少なくとも1つの基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した2価の基であり、
    441及びR442は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基であり、
    tは、1又は2であり、
    uは、0又は1であり、
    r及びsは、それぞれ独立して、0~4の整数である。)
    Figure 2023051507000121
    (式(57)中、
    Ar51は前記式(54)におけるAr51と同様であり、
    517~R519は、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
    f、g、hは、各々独立して、0~4の整数を表し、
    eは0~3の整数を表し、
    ただし、gが1以上の場合、eは1以上である。)
  2. 前記重合体中に含まれる、前記式(54)で表される繰返し単位、前記式(55)で表される繰返し単位、前記式(56)で表される繰返し単位、又は、前記式(57)で表される繰返し単位が、Ar51としてさらに、下記式(51)で表される基、下記式(52)で表される基、及び、下記式(53)で表される基から選択される基を含む、請求項1に記載の有機電界発光素子用組成物。
    Figure 2023051507000122
    (式(51)中、
    *は前記式(54)、前記式(55)、前記式(56)、及び前記式(57)の主鎖の窒素原子との結合を表し、
    Ar53、Ar54は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは置換基を有していてもよい芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した2価の基を表し、
    Ar55は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した1価の基を表し、
    Ar56は、水素原子又は置換基を表す。)
    Figure 2023051507000123
    (式(52)中、
    Ar61及びAr62は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した2価の基であり、
    Ar63~Ar65は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基である。
    *は前記式(54)、前記式(55)、前記式(56)、及び前記式(57)中の主鎖の窒素原子への結合位置を表す。)
    Figure 2023051507000124
    (式(53)中、
    *は前記式(54)、前記式(55)、前記式(56)、及び前記式(57)の主鎖の窒素原子との結合を表し、
    Ar71は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表し、
    Ar72及びAr73は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、或いは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選ばれる2以上の基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した1価の基を表し、
    環HAは窒素原子を含む芳香族複素環であり、
    、Yは、それぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表し、X及びYの少なくとも一方が、炭素原子の場合は、当該炭素原子は置換基を有していてもよい。)
  3. 前記トリアリールアミン構造を繰返し単位として有する重合体の重量平均分子量が50,000以下である、請求項1又は請求項2に記載の有機電界発光素子用組成物。
  4. 前記繰返し単位であるトリアリールアミン構造が、前記式(54)で表される繰返し単位を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物。
  5. さらに溶媒Bを含み、
    前記溶媒Bは、前記溶媒化合物とは異なる沸点200℃以上の溶媒化合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物。
  6. 前記組成物中に含まれる溶媒の全量に対する前記溶媒化合物と前記溶媒Bの合計の含有量が50重量%以上である、請求項5に記載の有機電界発光素子用組成物。
  7. 前記溶媒Bの23℃における粘度が5mPas以下である、請求項5又は請求項6に記載の有機電界発光素子用組成物。
  8. 前記溶媒化合物の沸点aと前記溶媒Bの沸点bが、沸点b<沸点aを満たす、請求項5~7のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物。
  9. 前記沸点aと前記沸点bの差が10℃以上である、請求項5~8のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物。
  10. 前記沸点aは、270℃以上340℃以下の範囲であり、前記沸点bは、250℃以上340℃以下の範囲である請求項5~9のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物。
  11. 請求項10に記載の有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜する工程を含む、有機電界発光素子の製造方法。
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