JP2023049629A - 合成床版の非破壊検査装置と非破壊検査方法 - Google Patents

合成床版の非破壊検査装置と非破壊検査方法 Download PDF

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訓裕 藤田
Kunihiro Fujita
ちひろ 岩本
Chihiro Iwamoto
宇宙 高梨
Takaoki Takanashi
淑恵 大竹
Toshie Otake
秀作 野田
Shusaku Noda
博之 井田
Hiroyuki Ida
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Abstract

Figure 2023049629000001
【課題】中性子ビームを用いて、合成床版における小さい欠陥でも検出できるようにする。
【解決手段】合成床版の非破壊検査装置10は、合成床版1の表面1eにおける局所的な照射箇所に中性子ビームを照射する中性子照射装置2と、照射箇所への中性子ビームの照射の結果、合成床版1から戻って来た散乱中性子を、表面1eに対向する各検出位置で検出し、検出位置毎に散乱中性子の検出数を計測する検出装置3と、各検出位置について、当該検出位置の基準値に対する当該検出位置の検出数の比率を求める比率算出部5とを備える。基準値は、合成床版1に欠陥が存在しないと仮定した場合の検出数として検出位置毎に設定されている。
【選択図】図1A

Description

特許法第30条第2項適用申請有り 添付書面(1) 「散乱中性子を用いた床版内欠陥の非破壊検査システム」、第47~52頁、第11回道路橋床版シンポジウム論文報告集 土木学会
本発明は、中性子ビームを用いて合成床版を検査するための装置と方法に関する。より詳しくは、本発明は、合成床版に中性子ビームを入射し、その結果、合成床版の内部で散乱して戻って来た散乱中性子に基づいて、合成床版内における欠陥の有無や種類を検査するための装置と方法に関する。
合成床版は、鋼板とコンクリートとを一体化して構成されている。合成床版は、例えば道路橋や鉄道橋の床版として用いられている。合成床版には、その使用や経年劣化により、欠陥が生じる場合がある。このような欠陥として、コンクリートの土砂化や層状のひび割れ、滞水箇所などがある。また、合成床版には、その初期施工時に、コンクリートの未充填箇所などが生じる場合もある。この未充填箇所は、例えば鋼板の近傍に生じる。
なお、本願の先行技術には特許文献1がある。特許文献1は、中性子ビームを用いて、インフラ構造物等の欠陥を検査する技術を開示している。特許文献1では、インフラ構造物等の検査対象物にパルス中性子ビームを照射し、検査対象物において散乱して戻って来た散乱中性子を検出し、散乱中性子の検出数を時間に対して表した検出数データを生成し、この検出数データに基づいて、検査対象物内部における欠陥の有無を判断している。
国際公開第2017/043581号
合成床版は、上述のように例えば道路橋や鉄道橋を構成しており、道路橋や鉄道橋を通過する車両の荷重を支える重要な部材である。そのため、合成床版の定期的点検等により合成床版の保全を図ることが必要となっている。
合成床版の保全のために合成床版を非破壊的に検査することにより、合成床版に生じた欠陥が小さいうちに当該欠陥を発見することが望ましい。すなわち、合成床版に生じた欠陥が大きく進展する前に、当該欠陥を発見することできれば、合成床版の保全に大きく貢献することができる。
しかし、従来において、合成床版において目視できない箇所に生じた10mm以下の寸法の欠陥(例えば3mmの空隙や6mmの滞水箇所等)を非破壊的に検出することは不可能であった。
そこで、本発明の目的は、合成床版において目視できない箇所に生じた小さな欠陥(例えば10mm以下の大きさの欠陥)でも非破壊的に検出できるようにする装置と方法を提供することにある。
上述の目的を達成するため、本発明による合成床版の非破壊検査装置は、
合成床版の表面における局所的な照射箇所に中性子ビームを照射する中性子照射装置と、
前記照射の結果、前記合成床版から戻って来た散乱中性子を、前記表面に対向する各検出位置で検出し、検出位置毎に散乱中性子の検出数を計測する検出装置と、
各検出位置について、当該検出位置の基準値に対する当該検出位置の前記検出数の比率を求めて出力する比率算出部と、を備え、
前記基準値は、前記合成床版に欠陥が存在しないと仮定した場合の検出数として前記検出位置毎に設定されている。
また、本発明による合成床版の非破壊検査方法では、
(A)合成床版の表面における局所的な照射箇所に中性子ビームを照射し、
(B)前記(A)の結果、前記合成床版から戻って来た散乱中性子を、前記表面に対向する各検出位置で検出し、検出位置毎に散乱中性子の検出数を計測し、
(C)各検出位置について、比率算出部により、当該検出位置の基準値に対する当該検出位置の前記検出数の比率を求めて出力し、
前記基準値は、前記合成床版に欠陥が存在しないと仮定した場合の検出数として前記検出位置毎に設定されている。
本発明によると、合成床版の表面における局所的な照射箇所に中性子ビームを照射し、その結果、合成床版から散乱中性子が戻って来る時に、合成床版の表面に対向する各検出位置で散乱中性子を検出し、検出位置毎に散乱中性子の検出数を計測する。また、各検出位置について、当該検出位置の基準値に対する当該検出位置の検出数の比率を求める。
合成床版内に存在する欠陥が小さくても、検出位置に関する上記比率の分布において、当該欠陥により比率の増大ピーク形成部と減少ピーク形成部の一方又は両方が生じる。したがって、合成床版内の欠陥が小さくても、各検出位置の上記比率に基づいて、当該欠陥の有無を検出することが可能となる。
本発明の実施形態による合成床版の非破壊検査装置の構成を示す。 図1Aの1B-1B矢視図である。 合成床版の内部に低密度部分(例えば空隙)が存在する場合に得られる比率分布を模式的に示す。 合成床版の内部に滞水箇所が存在する場合に得られる比率分布を模式的に示す。 合成床版における欠陥の有無および種類の判定の説明図である。 本発明の実施形態による合成床版の非破壊検査方法を示すフローチャートである。 実施例1における合成床版の断面を示す。 図5Aの5B-5B矢視図である。 図5Aにおける各部の寸法を示す。 実施例1において熱中性子を選択的に検出した場合の、検出面における比率の2次元的分布を示す。 実施例1において中速中性子を選択的に検出した場合の、検出面における比率の2次元的分布を示す。 実施例1において熱中性子を選択的に検出した場合の、検出面における比率のx軸方向分布を示す。 実施例1において中速中性子を選択的に検出した場合の、検出面における比率のx軸方向分布を示す。 実施例1における検査結果を示す。 実施例2における合成床版の断面を示す。 図9Aの9B-9B矢視図である。 実施例2において欠陥が空隙である場合の検出面における比率の1次元的分布を示す。 実施例2において欠陥が空隙である場合のビームスキャンにより得られたSp/Snの値を示す。
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
図1Aは、本発明の実施形態による合成床版の非破壊検査装置10と検査対象である合成床版1とを示す。図1Bは、図1Aの1B-1B矢視図である。非破壊検査装置10は、中性子ビームを合成床版1に照射し、その結果、合成床版1から戻って来た散乱中性子を検出し、その検出結果に基づいて、欠陥の有無、種類などを検出するための装置である。
(合成床版)
合成床版1は、車両が走行する橋(道路橋または鉄道橋)を構成するものであってよい。図1において、左右方向は、上記橋が延びている方向(橋軸方向)であり、この図の紙面と直交する方向は、橋軸方向と直交する方向(水平方向)であって上記橋の幅方向である。合成床版1は、鋼板とコンクリート1cとを一体化して構成されたものである。より詳しくは、合成床版1は、底鋼板1aと形鋼1bとコンクリート1cを有する。
底鋼板1aは、橋軸方向(上記橋が延びている方向)に延びる主桁(図示せず)の上面に設置されて当該主桁に固定されている。
形鋼1bは、底鋼板1aを補強する機能を有する。形鋼1bは、底鋼板1aの上面から上方へ立ち上がるように底鋼板1aの上面に結合される。この結合は例えば溶接によりなされてよい。また、形鋼1bは、上記橋の幅方向に延びている。このような形鋼1bが複数設けられる。すなわち、複数の形鋼1bは、橋軸方向に互いに間隔をおいて配置されている。上記橋軸方向と平行な鉛直平面による形鋼1bの断面は、図1の例ではT形である。すなわち、断面がT形の形鋼1bは、底鋼板1aの上面から上方へ立ち上がる板状部1b1と、当該板状部1b1の上端に結合されており橋軸方向に延びる板状部1b2とを有する。なお、形鋼1bの上記断面は、T形以外の形状を有していてもよい。
コンクリート1cは、複数の形鋼1bを埋設するように底鋼板1aの上側に打設されている。図1の例では、底鋼板1aの上面に打設されている。なお、コンクリート1cの内部には、鉄筋(図示せず)等の他の構造部が設けられていてもよい。
このような合成床版1は、実質的に、橋軸方向に周期的に繰り返される構造を有していてよい。この場合、複数の形鋼1bは、橋軸方向に一定の間隔をおいて配置されており、当該一定の間隔は、合成床版1の構造の周期に相当する。
なお、合成床版1は、図1のように、コンクリート1cの上側(例えばコンクリート1cの上面)に敷設されたアスファルト層1dを更に有していてよい。合成床版1の表面(図1ではアスファルト層1dの表面)1eは、車両が走行する側の上面となっている。
(非破壊検査装置の構成)
非破壊検査装置10は、中性子照射装置2と検出装置3と比率算出部5と記憶部6とデータ処理部7と判定値算出部8と判定部9を備える。
中性子照射装置2は、合成床版1の表面1eにおける局所的な照射箇所Rに(実質的に当該照射箇所Rにのみ)中性子ビームを照射する。当該照射の方向は、表面1eに垂直な方向であってもよいし、表面1eに対して斜めの方向であってもよい。照射箇所Rは、照射スポットであってよい。照射箇所Rの形状は、例えば円形、楕円形、又は矩形であってよいが、これらに限定されない。
照射箇所Rの寸法は、100mm以下、70mm以下、又は50mm以下であってよい。照射箇所Rの寸法の下限は、特に無くてよいが、可能な限り小さくてよい(例えば、当該下限は、0.3mm以上であり10mm以下の範囲内の値であってよい)。照射箇所Rの寸法は、表面1eにおける中性子ビームの断面の寸法である。また、照射箇所Rの寸法とは、表面1eにおける中性子ビームの断面の、各方向の寸法のうち最小の寸法を意味してよい。
中性子照射装置2は、中性子を放出する中性子源2aと、コリメータ2bとを有する。
中性子源2aは、一例では、荷電粒子ビームが照射されることにより中性子を放出するターゲットを有するものであってもよい。この場合、ターゲットは、リチウムであってよいが、これに限定されない。別の例では、中性子源2aは、可搬型DD核融合反応中性子源(DD管)であってもよい。更に別の例では、中性子源2aは、中性子を放出する放射性線源(RI(radioactive isotope)線源)であってもよい。この場合、放射性線源は、252Cfであってよいが、これに限定されない。
コリメータ2bは、中性子源2aからの中性子を断面が絞られた中性子ビームに整形する。このように中性子ビームの断面が絞られることにより、中性子ビームが表面1eにおける局所的な照射箇所Rに照射される。
コリメータ2bは、中性子ビームが通過する通過路を、中性子が透過し難い材料で区画形成したものであってよい。コリメータ2bは、例えば、内部空間が上記通過路となっている筒状のものであってよい。
中性子照射装置2は、設定時間にわたって中性子ビームを照射箇所Rへ放出する。例えば、中性子照射装置2は、パルス中性子ビームを、設定時間にわたって1回または複数回、照射箇所Rへ放出するように構成されていてもよいし、後述の変更例のように時間的に連続する中性子ビームを設定時間にわたって照射箇所Rへ放出するように構成されていてもよい。前者の場合、パルス中性子ビームのパルス時間幅(中性子ビームの持続時間)は、例えば0.1ミリ秒程度であり又は0.1ミリ秒よりも小さく、パルス中性子ビームの繰り返し周波数(合成床版1への中性子ビームの照射周波数)は、例えば100Hz程度であるが、欠陥の有無や種類の検出を妨げない限りで、これに限定されない。また、一例では、上述した荷電粒子ビームがパルス荷電粒子ビームであることにより、中性子照射装置2はパルス中性子ビームを放出するが、他の方法で、中性子照射装置2はパルス中性子ビームを放出するように構成されていてもよい。
また、中性子照射装置2が照射箇所Rへ放出する中性子ビームは、例えば、主に高速中性子を含んでいてもよいし、又は、高速中性子と熱中性子を含んでいてもよいし、又は主に熱中性子を含んでいてもよいが、これらに限定されない。
検出装置3は、照射箇所Rへの中性子ビームの照射の結果、合成床版1から戻って来た散乱中性子を、合成床版1の表面1eに対向する各検出位置(連続的に配列された複数の検出位置の各々)で検出し、検出位置毎に散乱中性子の検出数を計測する。例えば、検出装置3は、散乱中性子が入射する検出面3a1を有する。検出面3a1上の各位置が、上述の各検出位置であり、各検出位置の検出数は、当該検出位置へ入射した散乱中性子の数である。また、検出装置3は、各検出位置について、検出数に加えて、当該検出位置へ入射した散乱中性子のエネルギー、当該散乱中性子の検出時刻を記録するように構成されてよい。検出装置3は、検出位置毎に計測した検出数を比率算出部5に出力する。
合成床版1の表面1eに対向する方向から見た場合に、検出面3a1は、照射箇所Rよりも大きい領域にわたって連続的に広がっている。この場合、合成床版1の表面1eに対向する方向から見た場合に、照射箇所Rは、検出面3a1に含まれていてよい。なお、検出面3a1は、図1Bのように矩形であってもよいし、他の形状であってもよい。例えば、検出面3a1は、細長く延びる面であってもよい。
検出装置3による上記検出数の計測(散乱中性子の検出)は、計測時間にわたって行われてよい。この計測時間(以下で単に計測時間ともいう)は、上述のパルス中性子ビームのパルス時間幅よりも長くてよい。例えば、この計測時間は、中性子照射装置2が中性子ビームを照射した直後(上記設定時間の経過直後)から、単位時間あたりに検出面3a1へ入射する散乱中性子の数が少なくなる(例えば下限値以下になる)までの期間であってよい。計測時間の長さは、例えば、10秒以上10分以内の値であってよい。ただし計測時間は、これに限定されず、滞水箇所又は低密度部分(例えば空隙)等の欠陥が合成床版1に存在する場合に後述する比率分布において増大ピーク形成部と減少ピーク形成部の少なくともいずれかが生じるように設定されていればよい。なお、以下において、検出数は、上記計測時間にわたる中性子の検出数を意味してよい。
滞水箇所は、単に水が存在している箇所であってもよいし、合成床版1の金属部分(例えば、上記鉄筋、形鋼1b、または底鋼板1a)の錆が水分により進行している箇所であってもよい。低密度部分は、合成床版1の正常な部分よりも密度が低い部分である。詳しくは、低密度部分は、合成床版1の正常な部分の密度の1/3以下、1/5以下、又は1/10以下の部分であってよい。このような低密度部分は、空隙(例えばコンクリート1cにおける層状のひび割れ)であってもよいし、コンクリート1cの一部が土砂化した部分であってもよい。
検出装置3は、検出器3aと計測部3bとを有する。なお、以下において、検査時とは、合成床版1の欠陥の有無などを検査するために中性子ビームを合成床版1の表面1eの照射箇所Rに照射する時(後述のステップS3を行う時)を意味する。また、以下において、検査とは、このように中性子ビームを照射して合成床版1の欠陥の有無などを検査すること(例えば後述のステップS3~S8又はビームスキャンを行うこと)を意味する。
検出器3a(検出面3a1)は、検査時に、合成床版1の表面1eに対向するように配置される。この配置では、検出器3aにおける多数の検出位置の一部(例えば検出器3a(検出面3a1)の中央)は、照射箇所Rに対向している。この場合、検査時に、中性子照射装置2からの中性子ビームは、検出器3a(検出面3a1)を通過して合成床版1の表面1eに照射される。一例では、検出器3aにおける2次元的な広がりを有する(例えば仮想的な)面が、上述の検出面3a1である。図1において、互いに直交するx軸とy軸とz軸を有するxyz座標系を示している。図1の例では、x軸方向は橋軸方向であり、y軸方向は上記橋の幅方向であり、z軸方向は鉛直方向であり、検出面3a1は、xy平面に平行である。なお、図1のxyz座標系は、説明の便宜上のものであり、実際の運用では、どの座標軸がどの向きを示していてもよい(他の図におけるxyz座標系も同様である)。
検査時に、検出器3a(検出面3a1)は、表面1eに近接又は接触した位置に配置される。ここで、表面1eに近接した位置とは、例えば表面1eから30mm以内、50mm以内、100mm以内、又は300mm以内の位置であってよいが、これらに限定されない。また、検査時に、検出面3a1は、合成床版1の表面1eと平行であってよい。
検出器3aは、位置敏感型検出器(PSD: Position Sensitive Detector)であってよい。検出器3aは、検出面3a1に中性子が入射する度に、当該中性子が入射した、検出面3a1の検出位置に対応する検出信号を出力する。
検出器3aは、熱中性子を選択的に検出し、熱中性子以外の中性子を検出しないように構成されていてよい。この場合、検出器3aは、ヘリウム3(He)比例係数管を用いたものであってもよいし、リチウム6(Li)を含むシンチレータと光センサとを組み合わせた検出器であってもよい。
あるいは、検出器3aは、中速中性子を選択的に検出し、中速中性子以外の中性子を検出しないように構成されていてもよい。この場合、検出器3aは、塩素(35Cl)と臭素(79Br,81Br)の少なくともいずれかを含んだシンチレータと光センサとを組み合わせた検出器であってもよい。例えば、検出器3aは、CLYC又はLaBrを含んだシンチレータと光センサとを組み合わせた検出器であってもよい。
なお、検出器3aは、上述に限定されず、例えば、155Gd、157Gd、10Bなどを含むシンチレータと光センサとを組み合わせた検出器であってもよい。また、上述した各光センサは、光電子倍増管又はSiPM(Silicon Photomultiplier)であってよいが、これらに限定されない。
熱中性子は、一般的には、室温で25meV付近のエネルギー値以下のエネルギーを有する中性子を示し、中速中性子は、熱中性子よりも十分に高いエネルギー(数keV以上であり数百keV未満のエネルギー)を有する中性子を示し、高速中性子は、数百keV以上を有する中性子を示す。ここで、エネルギーによる中性子の名称の閾値に厳格な定義はないため、本願の定義においては、熱中性子は数十meV(例えば50meV)以下のエネルギーを有する中性子であってよく、中速中性子は、数keV(例えば5keV)以上であり、数百keV(例えば500keV)未満のエネルギーを有する中性子であり、高速中性子は、数百keV(例えば500keV)以上のエネルギーを有する中性子であってよい。
計測部3bは、検出器3aから出力される多数の検出信号に基づいて、検出位置毎に当該検出位置へ入射して来た散乱中性子の検出数を計測する。なお、上述の光センサが用いられる場合、計測部3bは、SiPMなどの上述の光センサに組み込まれていてもよい。
比率算出部5は、検出器3aにおける各検出位置について、当該検出位置の基準値に対する当該検出位置の上記検出数の比率(以下で単に比率ともいう)を求める。基準値は、合成床版1に欠陥が存在しないと仮定した場合の検出数として検出位置毎に設定されている。このような基準値は、検出位置に応じて異なっていてよい。すなわち、基準値は、少なくとも一部の検出位置同士の間で異なってよい。すなわち、基準値は、欠陥が存在しない合成床版1に仮に検査を行った場合に得られる検出数である。検出器3a(検出面3a1)における各検出位置の基準値は、照射箇所Rと当該検出位置との位置関係、および合成床版1における中性子の散乱特性などに応じて予め設定されている。
本実施形態では、各検出位置の基準値は、中性子照射装置2からいずれかの形鋼1bに向けて中性子線を照射した場合の検出数として予め設定されている。断面がT形の形鋼1bの場合には、各検出位置の基準値は、中性子照射装置2からT形の形鋼1bに含まれる板状部1b1に向けて、板状部1b1が底鋼板1aから立ち上がっている方向(鉛直方向)に中性子線を照射した場合の検出数として予め設定されてよい。ここで、「中性子照射装置2から形鋼1b(又は板状部1b1)に向けて中性子線を照射」とは、中性子照射装置2からの中性子ビームが形鋼1bへ至る前に散乱されずに直進すると仮定した場合に、当該中性子ビームが形鋼1b(又は板状部1b1)に入射することを意味する。
各検出位置の基準値は、検査時に中性子ビームが照射される1つの照射箇所Rに設定されていてよい。また、例えば後述のビームスキャンのように、複数の照射箇所Rの各々について当該照射箇所Rへの中性子ビームの照射により検査を行う場合には、これらの照射箇所Rの各々について、各検出位置の基準値が設定されていてよい。
<基準値の設定方法>
上述の基準値は、以下のように、検出器3aにおける検出位置毎に予め設定されていてよい。すなわち、欠陥が存在しない合成床版1に対して、実際の検査と同じ条件で検査を行った場合に、計測時間にわたって検出器3aの各検出位置で検出される中性子の数(例えば推定される検出数)を、当該検出位置の基準値として設定してよい。ここで、「実際の検査と同じ条件」は、以下の検出条件(a)~(c)を含む。
(a)検出器3a(検出面3a1)と合成床版1(照射箇所R)と中性子照射装置2との位置関係および姿勢関係(向きの関係)が予め設定された位置関係と姿勢関係になっている。
(b)中性子照射装置2から合成床版1へ放出される中性子ビームのスペクトルが、定められたものとなっている。中性子照射装置2が中性子ビームを放出する時の当該中性子ビームのスペクトルは、単位時間あたりに(例えば、パルス中性子ビームの場合には、パルス時間幅において)中性子照射装置2から合成床版1に照射される多数の中性子のエネルギー分布であり、この分布において、各エネルギーについて、当該エネルギーを有する中性子の数が表される。
(c)中性子ビームの強度が、定められたものとなっている。中性子ビームの強度は、中性子照射装置2が中性子ビームを放出する時に当該放出により単位時間あたりに照射箇所R(又は照射箇所Rにおける単位面積)に照射される中性子の数である。
一例では、上記検出条件(a)~(c)の下で、実際の合成床版1(例えば欠陥の存在確率が低いと想定されている合成床版1)における1つの照射箇所Rに中性子照射装置2が中性子を照射し、検出器3aにおける各検出位置の検出数を求める。その後、同じ合成床版1において照射箇所Rを変えて再び同じ処理を行う。この処理を、繰り返し行うことにより、複数の照射箇所Rの各々について、検出器3aにおける各検出位置の検出数を求める。そして、検出器3aにおける各検出位置に関して、複数の照射箇所Rについて求めた、当該検出位置の複数の検出数の平均値を、当該検出位置の基準値として設定する。なお、これら複数の照射箇所Rは、上記橋の幅方向に互いにずれた箇所であってもよいし、上記橋軸方向における合成床版1の構造の周期(形鋼1bの配置間隔)だけ互いにずれた箇所であってもよい。また、この場合、これら複数の照射箇所Rの各々は、形鋼1bの真上に位置していてよい。
別の例では、実際の合成床版1(例えば欠陥の存在確率が高いと想定されている合成床版1)と構成(材質等)が同じであるが欠陥が存在しない供試体を用意し、この供試体を合成床版1として、上記検出条件(a)~(c)の下で、供試体における照射箇所Rに中性子照射装置2が中性子を照射し、検出器3aにおける各検出位置の検出数を求め、当該検出数を当該検出位置の基準値として設定する。
さらに別の例では、上記検出条件(a)~(c)の下で、欠陥が存在しない合成床版1に検査を行った場合に検出器3aの各検出位置について得られる検出数をシミュレーションにより求め、当該検出数を当該検出位置の基準値として設定する。
上述の検出条件(a)~(c)の下で中性子ビームが合成床版1の表面1eに入射する方向に見た場合に、検出器3a(検出面3a1)における各検出位置の基準値は、当該表面1eにおける当該中性子ビームの照射箇所Rから当該検出位置が離れるにつれて小さくなる傾向がある。
記憶部6は、1つの照射箇所Rについて、又は複数の照射箇所Rの各々について、検出器3aにおける各検出位置の基準値を記憶している。比率算出部5は、検出器3aにおける各検出位置について、記憶部6の基準値と上述の検出数とに基づいて比率を算出する。
データ処理部7は、比率算出部5が出力した検出器3aの各検出位置の比率に対してデータ処理を行う。データ処理部7は、検出器3a上の検出位置に関する上記比率の分布(以下で単に比率分布ともいう)において、比率の増大ピーク形成部と減少ピーク形成部を特定する。また、データ処理部7は、特定した増大ピーク形成部の大きさと減少ピーク形成部の大きさを求める。
<比率分布>
図2A~図2Dは、検出位置に関する比率分布を示す比率曲線C1~C4を模式的に示している。
図2Aと図2Bは、合成床版1の内部に欠陥として低密度部分(例えば空隙)が存在する場合を示し、図2Cと図2Dは、合成床版1の内部に欠陥として水が存在する場合を示す。また、図2Aと図2Cは、合成床版1内における欠陥が、合成床版1に照射される中性子ビームの延長線上に存在する場合を示し、図2Bと図2Dは、合成床版1内における欠陥が、合成床版1に照射される中性子ビームの延長線からずれた位置に存在する場合を示す。
図2A~図2Dにおいて、横軸は、図1Aのx軸方向(左右方向)における検出器3a上の検出位置(x座標)を示し、縦軸は、検出数の上記比率を示す。なお、図2A~図2Dの比率分布は、照射箇所Rと同じ一定のy座標(図1Bを参照)における分布を示す。図2A~図2Dは、検出数が熱中性子の検出数である場合を示す。ただし、検出数が中速中性子の検出数であっても、比率分布の傾向は、図2A~図2Dと同様である。
図2A~図2Dの各々のように、合成床版1内に存在する欠陥の影響で、比率分布に減少ピーク形成部と増大ピーク形成部が生じる。減少ピーク形成部は、比率が1よりも小さくなる部分であって、比率の減少ピーク(負方向のピーク)を形成する部分である。増大ピーク形成部は、比率が1よりも大きくなる部分であって、比率の増大ピーク(正方向のピーク)を形成する部分である。
図2Aと図2Bでは、減少ピーク形成部は、比率分布を表わす比率曲線C1,C2における点D2から点D3までの部分であり、増大ピーク形成部は、比率曲線C1,C2における点D1から点D2までの部分と、比率曲線C1,C2における点D3から点D4までの部分である。
図2Cと図2Dでは、減少ピーク形成部は、比率曲線C3,C4における点D1から点D2までの部分と、比率曲線C3,C4における点D3から点D4までの部分であり、増大ピーク形成部は、比率曲線C3,C4における点D2から点D3までの部分である。
また、減少ピーク形成部の大きさは、比率が1である部分(図2A~図2Dでは、破線で示す直線L)と、減少ピーク形成部とで挟まれた領域の面積(図2A~図2Dでは、符号Nが示す斜線部分の面積)であってよい。すなわち、xを位置座標(図1Aのx軸座標)であるとして、比率曲線が、比率=f(x)で表される場合に、∫{1-f(x)}dxが、減少ピーク形成部の大きさであってよい。この積分は、減少ピーク形成部のxの区間にわたって行われる。
同様に、増大ピーク形成部の大きさは、比率が1である部分(図2A~図2Dでは、破線で示す直線L)と、増大ピーク形成部とで挟まれた領域の面積(図2A~図2Dでは、符号Pが示す斜線部分の面積)であってよい。すなわち、xを位置座標(図1Aのx軸座標)であるとして、比率曲線が、比率=f(x)で表される場合に、∫{f(x)-1}dxが、増大ピーク形成部の大きさであってよい。この積分は、増大ピーク形成部のxの区間にわたって行われる。
・低密度部分の欠陥
以下で、低密度部分の欠陥として空隙を想定して説明するが、以下の内容は、他の低密度部分の欠陥を想定する場合にも当てはまる。この場合、以下において、各「空隙」は、低密度部分に読み替えられてよい。
合成床版1の内部に存在する欠陥が空隙である場合に、図2Aのように、検出器3aにおいて、空隙に対向する領域付近(すなわち空隙と同じx座標付近)では、比率分布において、比率の減少ピーク形成部が生じる。
この減少ピーク形成部は、次の理由で形成される。中性子は空隙では散乱しないので、合成床版1に照射された中性子は、合成床版1の表面1eから離れる側へ当該空隙を通過する時に当該空隙の箇所から検出器3aへ散乱することが無くなる。したがって、その分、検出面3a1において空隙に対向する領域付近では、散乱中性子の検出数が減るので、減少ピーク形成部が生じる。また、合成床版1に入射した高速中性子は、合成床版1(例えばコンクリート1c)内を通過中に熱中性子に変わるが、合成床版1内に空隙があることは、その分、熱中性子が生成されなくなることを意味する。したがって、検出面3a1において空隙に対向する領域付近では、散乱熱中性子の検出数が減る。
一方、検出器3aにおいて空隙に対向する領域付近(減少ピーク形成部)に隣接する領域では、図2Aのように、比率分布(比率曲線C1)において、比率の増大ピーク形成部(正方向のピーク)が生じる。
この増大ピーク形成部は、次の理由で形成される。検出面3a1において空隙に対向する領域付近(減少ピーク形成部)に隣接する領域に入射する散乱中性子には、空隙よりも深い位置で散乱し当該隣接する領域へ向けて空隙を通過して来る散乱中性子が含まれる。この「空隙を通過して来る散乱中性子」は、空隙で他の方向へ散乱することが無く、空隙の存在により合成床版1(例えばコンクリート1c)で吸収され難くなる。したがって、その分、上記隣接する領域では、散乱中性子の検出数が増えるので、上記増大ピーク形成部が生じる。
また、図2Bのように、空隙の位置が、照射箇所Rへ照射される中性子ビームの延長線上から多少ずれていても、図2Aの場合と同様の比率分布が得られる。なお、図2Bでは、左側に、相対的に大きな増大ピーク形成部が生じている。図2Bでは、合成床版1に入射した中性子ビームのうち、より多くの散乱中性子が空隙を通過して左側の増大ピーク形成部に対応する位置で検出されるからである。
・水の欠陥
合成床版1の内部に存在する欠陥が水(滞水箇所)である場合に、図2Cのように、比率分布において、滞水箇所に対向する領域付近(すなわち滞水箇所と同じx座標付近)では、比率の増大ピーク形成部が生じる。
この増大ピーク形成部は、次の理由で形成される。検出面3a1において、滞水箇所に対向する領域に入射する散乱中性子には、滞水箇所からの散乱中性子が含まれる。ここで、中性子は水と反応しやすいので、滞水箇所からの散乱中性子は、水と反応して熱中性子になっているものが多く含まれる。したがって、その分、検出面3a1において、滞水箇所に対向する領域では、散乱熱中性子の検出数が増えるので、増大ピーク形成部が生じる。
なお、図2Cのように、増大ピーク形成部の頂部において負方向への窪みが生じているのは次の理由による。中性子が合成床版1の表面1eから離れる側へ滞水箇所を通過する時に当該滞水箇所から検出器3aへ散乱し難い。したがって、その分、検出面3a1において滞水箇所に対向する領域の中央では、熱中性子の検出数が減るので、上記窪みが生じる。
判定値算出部8は、増大ピーク形成部の大きさと減少ピーク形成部の大きさをそれぞれSpとSnとしてデータ処理部7から受ける。判定値算出部8は、増大ピーク形成部の大きさと減少ピーク形成部の大きさとの和(Sp+Sn)を求めるとともに、減少ピーク形成部の大きさを増大ピーク形成部の大きさで割った値(Sn/Sp)を求める。また、判定値算出部8は、求めたSp+SnとSn/Spを出力する。
なお、比率分布において複数の増大ピーク形成部が生じている場合には、Spは、当該複数の増大ピーク形成部の大きさの合計であってよい。同様に、比率分布において複数の減少ピーク形成部が生じている場合には、Snは、当該複数の減少ピーク形成部の大きさの合計であってよい。
判定部9は、データ処理部7が出力したSp+SnとSn/Spに基づいて、合成床版1における欠陥の有無と欠陥の種類を判定する。図3は、この判定に関する2次元座標系を示す。図3において、横軸はSp+Snを示し、縦軸はSn/Spを示す。
合成床版1に欠陥が存在しない場合には、比率分布において、増大ピーク形成部と減少ピーク形成部が生じず、又は、増加ピークと減少ピークが生じたとしても、これらのピーク形成部は小さいので、Sp+Snは、0又は0に近い値となる。したがって、第1しきい値T1が0又は0に近い正の値であるとして、欠陥が存在しない場合には、図3のように、Sp+Snが第1しきい値T1以下となる。
合成床版1に欠陥としての空隙が存在する場合には、比率分布において、図2Aのように、比較的大きな減少ピーク形成部が生じるとともに、増大ピーク形成部も生じる。したがって、空隙が存在する場合には、図3のように、Sp+Snは、上述の第1しきい値T1より大きくなり、Sn/Spは、正の値である第2しきい値T2以上となる。
合成床版1に欠陥としての水(滞水箇所)が存在する場合には、比率分布において、図2Cのように、かなり大きな増大ピーク形成部が生じ、減少ピーク形成部は、ほとんど現れない。したがって、水が存在する場合には、図3のように、Sp+Snは、上述の第1しきい値T1より大きくなり、Sn/Spは、上述の第2しきい値T2未満となる。
上述に従って、判定部9は次のように判定を行う。Sp+Snが第1しきい値以下である場合には、判定部9は、合成床版1内に欠陥が存在しないと判定し、欠陥が存在しないことを示す信号を出力する。この出力に基づいて、例えば、欠陥が存在しない旨がディスプレイに表示されてよい。
Sp+Snが第1しきい値より大きい場合には、判定部9は、合成床版1内に欠陥が存在すると判定し、その旨の欠陥存在信号を出力する。この場合、当該信号には、次のように欠陥の種類を示す情報が含まれていてよい。Sp+Snが第1しきい値T1より大きく、且つ、Sn/Spが第2しきい値T2以上である場合には、判定部9は、合成床版1内に空隙が存在すると判定し、その旨の第1欠陥信号を出力する。Sp+Snが第1しきい値T1より大きく、且つ、Sn/Spが第2しきい値T2未満である場合には、判定部9は、合成床版1内に水(滞水箇所)が存在すると判定し、その旨の第2欠陥信号を出力する。
(非破壊検査方法)
図4は、本発明の実施形態による合成床版の非破壊検査方法を示すフローチャートである。この非破壊検査方法は、上述の非破壊検査装置10を用いて行われ、ステップS1~S8を有する。
ステップS1において、検出器3aの各検出位置の基準値を上述のように設定する。
ステップS2において、合成床版1に対して中性子照射装置2と検出器3aを配置する。本実施形態では、合成床版1の内部から見て合成床版1の表面1e側に中性子照射装置2と検出器3aを配置する。
ステップS3において、中性子照射装置2により、合成床版1の表面1eにおける局所的な照射箇所Rに中性子ビームを入射する。このようなステップS2、S3は、上述の検出条件(a)~(c)の下で行われる。
なお、ステップS3において、照射箇所Rへの中性子ビームの照射方向は、合成床版1の平らな表面1eと垂直な方向であってもよいし、当該表面1eと垂直な方向に対して斜めの方向であってもよい。
ステップS4において、ステップS3の結果、合成床版1から戻って来た散乱中性子を、表面1eに対向する検出面3a1上の各検出位置で検出し、検出位置毎に散乱中性子の検出数を計測する。ステップS4は、検出装置3により行われる。
ステップS5において、ステップS1で設定した各検出位置の基準値とステップS4で計測した各検出位置の検出数とに基づいて、比率算出部5により、検出面3a1上の各検出位置について、当該検出位置の基準値に対する当該検出位置の検出数の比率を求めて出力する。
ステップS6において、データ処理部7により、ステップS5で算出した比率の、検出位置に関する分布において、比率の増大ピーク形成部と減少ピーク形成部を特定し、増大ピーク形成部の大きさSpと減少ピーク形成部の大きさSnを求める。
ステップS7において、判定値算出部8によりSp+Snを求め、判定部9により、Sp+Snに基づいて、合成床版1の内部に欠陥が存在するかどうかを判定する。ステップS7において、Sp+Snが第1しきい値T1以下である場合には、判定部9は、合成床版1の内部に欠陥が存在しないと判定し、欠陥が存在しないことを示す信号を出力する。一方、ステップS7において、Sp+Snが第1しきい値T1より大きい場合には、判定部9は、合成床版1の内部に欠陥が存在すると判定し、ステップS8へ進む。
ステップS8において、判定値算出部8によりSn/Spを求め、判定部9により、Sn/Spに基づいて、欠陥の種類を判定する。ステップS8において、Sn/Spが第2しきい値T2以上である場合には、判定部9は、合成床版1の内部に欠陥としての低密度部分(例えば空隙)が存在すると判定し、その旨の第1欠陥信号を出力する。一方、ステップS8において、Sn/Spが第2しきい値T2未満である場合には、判定部9は、合成床版1の内部に欠陥としての水(滞水箇所)が存在すると判定し、その旨の第2欠陥信号を出力する。
<ビームスキャン>
ステップS8の次に、ステップS3での照射箇所Rを変えてステップS3~S6を繰り返し行ってもよい。すなわち、ステップS3で合成床版1の表面1eにおいて中性子ビームが入射する照射箇所Rを、繰り返される複数回のステップS3の間で互いに異なるようにする。この場合、合成床版1を中性子ビームでスキャンするように複数回のステップS3を行ってよい。
また、1回のステップS3~S6を1サイクルとして、各サイクルについて、当該サイクルのステップS6で求めたSpとSnからSp/Sn又はSn/Spを求める。この時、上述のステップS8で欠陥として低密度部分が存在すると判定された場合には、Sp/Snを求め、上述のステップS8で欠陥として水が存在すると判定された場合には、Sn/Spを求めてよい。
複数のサイクルについてそれぞれ求めた複数のSp/Sn又はSn/Spのうち、最小のSp/Sn又はSn/Spを特定する。特定された最小のSp/Sn又はSn/Spに対応する照射箇所R(すなわち、このSp/Sn又はSn/Spを求めたサイクルでの照射箇所R)を、これらのSp/Sn又はSn/Spにそれぞれ対応する複数の照射箇所Rのうち上記低密度部分(空隙)又は上記水に最も近い箇所として特定する。
すなわち、複数のサイクルについてそれぞれ複数のSp/Snを求めた場合、これらのSp/Snのうち最小のSp/Snに対応する照射箇所Rを、上記低密度部分(空隙)に最も近い箇所として特定する。同様に、複数のサイクルについてそれぞれ複数のSn/Spを求めた場合、これらのSn/Spのうち最小のSn/Spに対応する照射箇所Rを上記水に最も近い箇所として特定する。このようなビームスキャンについては、後述の実施例2でより詳しく説明する。
(実施例1:熱中性子を検出する場合と中速中性子を検出する場合)
欠陥としての空隙の位置と寸法が既知である合成床版1(供試体)に対して非破壊検査装置10を用いて検査を行った。図5Aは、検査を行った合成床版1の断面を示し、図5Bは、図5Aの5B-5B矢視図である。図5Cは、図5Aにおける各部の寸法を記載した図である。
図5Aと図5Bに示すように、合成床版1の内部において欠陥としての空隙が存在する。図5Aにおけるx、y、zは、xyz座標系において互いに直交するx軸とy軸とz軸を示す。
上述のステップS4で熱中性子を選択的に検出する検出器3aを用いて、上述のステップS2~S7を行った。この時、ステップS3において、図5Bに示す照射箇所Rに中性子ビームを照射した。この照射箇所Rは、1辺が50mmの正方形(図5Bにおいて符号Rが示す破線で囲んだ領域)である。ステップS5では、熱中性子を選択的に検出する場合の基準値を用いた。
空隙のx軸方向とy軸方向の寸法をそれぞれ50mmと300mmに固定して、空隙のz軸方向の寸法を3mmと10mmと30mmとした各場合について、条件を同じにして上述の実験を行った。
また、中速中性子を選択的に検出する検出器3aを用いて、他の条件は同じにして上述の実験を行った。なお、基準値は、中速中性子を選択的に検出する場合の値を用いた。
図6Aと図6Bは、空隙のz軸方向の寸法が30mmである場合の、検出面3a1における比率の2次元的分布を示す。図6Aは、熱中性子を選択的に検出する検出器3aを用いた場合を示し、図6Bは、中速中性子を選択的に検出する検出器3aを用いた場合を示す。図6Aと図6Bにおいて、横軸と縦軸は、図5Aに示すx軸とy軸の座標を示し、各座標の原点は、照射箇所Rの中心である。また、図6Aと図6Bにおいて、破線は、z軸方向に見た場合の、空隙が存在する範囲を示す。
図6Aにおいて、検出面3a1における大まかな比率の分布を実線で囲まれた各区画A~Eで示している。比率は、区画Aでは0.85未満であり、区画Bでは0.85以上0.90未満であり、区画Cでは0.90以上1.00未満であり、区画Dでは1.00以上1.10未満である。なお、区画Eは、誤差が大きい区画である。
同様に、図6Bにおいて、検出面3a1における大まかな比率の分布を実線で囲まれた各区画A~Dで示している。比率は、区画Aでは0.90未満であり、区画Bでは0.90以上0.95未満であり、区画Cでは0.95以上1.00未満であり、区画Dでは1.00以上1.10未満である。なお、区画Eは、誤差が大きい区画である。
図6Aと図6Bから分かるように、検出する中性子が熱中性子であっても中速中性子であっても、空隙の存在を検出できる。例えば、図6Aと図6Bにおいて、比率が1よりも減少している領域と比率が1よりも大きくなっている領域が存在すること(且つ空隙の真上付近で比率が最も小さくなっていること)から、空隙が存在していると判断できる。
図7Aは、上述の実験において、熱中性子を選択的に検出する検出器3aを用いた場合に得られた比率のx軸方向分布を示す。図7Bは、上述の実験において、中速中性子を選択的に検出する検出器3aを用いた場合に得られた比率のx軸方向分布を示す。図7Aと図7Bにおいて、各三角印は、空隙のz軸方向の寸法が3mmである場合を示し、各四角印は、空隙のz軸方向の寸法が10mmである場合を示し、各丸印は、空隙のz軸方向の寸法が30mmである場合を示す。
図7Aと図7Bにおいて、曲線は、空隙のz軸方向の寸法が30mmである場合の比率分布を近似する曲線である。図7Aと図7Bにおいて、x軸方向の位置座標の絶対値が大きくなると(図7Bの場合には400mm程度を超えると)、得られた比率は、誤差が大きくなる。そのため、SnとSpは、誤差が許容限度を超えない位置座標の範囲で求められてよい。例えば、図7Bでは、SnとSpは、x座標が-200mmから400mm又は600mm程度までの範囲で求められてよい。なお、SnとSpを求める座標範囲は欠陥の大きさや種類に応じて適宜に設定されてよい。図7Aと図7Bにおいて、比率は、x軸方向における位置座標の両端側で、照射箇所Rの中心から離れるにつれて1に近づく傾向がある。
図6Aと図6Bとの比較、または図7Aと図7Bとの比較から分かるように、
中速中性子を検出した場合のほうが、比率は、空隙の位置に対して1を超えるように急激に立ち上がる。したがって、SnとSpは、誤差が比較的小さい位置座標の範囲(図7Aと図7Bでは、例えばx座標が-200mmから400mmまでの範囲)で求めた場合、Sp+Snの値は、中速中性子を検出した場合のほうが大きくなる。このように、中速中性子の検出により、空隙の存在に対するSp+Snの値の感度を高くすることができる。
図8は、上述の実験における各場合のSp+Snの値を示す。図8において、横軸は、空隙のz軸方向寸法を示し、縦軸は、求められたSp+Snの値を示す。また、図8において、丸印は、熱中性子を選択的に検出した場合を示し、四角印は、中速中性子を選択的に検出した場合を示す。
図8に示されるように、空隙のz軸方向寸法が3mmであっても、Sp+Snは、その誤差により実際よりも小さくなったとしても、有意に、ゼロ又はゼロに近い第1しきい値T1よりも大きくなる。また、中速中性子の検出数は、熱中性子の検出量よりも少なくなる傾向があるが、図8に示されるように、中速中性子を検出した場合の方が、空隙の存在に対するSp+Snの値の感度が高くなる。したがって、十分な量の中速中性子が検出される場合には、検査において中速中性子を検出することで、空隙の存在を高感度に検出できる。
(実施例2:ビームスキャン)
<欠陥が空隙の場合>
非破壊検査装置10を用いて上述のビームスキャンを行った。この実施例2では、熱中性子を選択的に検出する検出器3aを用いた。図9Aは、ビームスキャンを行った合成床版1の断面を示し、図9Bは、図9Aの9B-9B矢視図である。図9Aの合成床版1は、図5Aの場合と同じであり、各部の寸法も図5Cの場合と同じである。
図9Aと図9Bにおいて、合成床版1の内部において欠陥として存在する空隙のx軸方向とy軸方向とz軸方向の寸法は、それぞれ、50mmと300mmと10mmである。
上述のステップS3~S6をビームスキャンの1サイクルとして、3回のサイクルの各々(ステップS3)において、合成床版1の表面1eへ中性子ビームを照射した。また、3回のサイクルで照射した中性子ビームを、それぞれ図9AにおいてB1~B3で示す。また、3回のサイクルでの照射箇所は、一辺が50mmの正方形である。図9Bでは、1回目のサイクルでの照射箇所R1とその中心r1と、2回目のサイクルでの照射箇所の中心r2と、3回目のサイクルでの照射箇所の中心r3を示している。r1とr2とr3は、x軸方向に互いに29mmずれている。
図10は、このように3回のサイクルのビームスキャンを行った結果であり、検出面3a1における比率のx軸方向分布を示す。図10において、横軸は、x軸方向の位置座標を示し、縦軸は、比率(検出数/基準値)を示す。図10において、各三角印は、合成床版1の表面1eにおける中性子ビームの照射箇所の中心が図9Bのr1である場合を示し、各四角印は、当該中心が図9Bのr2である場合を示し、各丸印は、当該中心が図9Bのr3である場合を示す。なお、図10において、各位置座標での比率は、表面1eにおける中性子ビームの照射箇所R1の中心と同じy軸座標での比率を示す。図10において、x軸方向の位置座標の絶対値が大きくなると、得られた比率は、誤差が大きくなる。そのため、SnとSpは、誤差が許容限度を超えない位置座標の範囲で求められてよい。なお、図10において、x軸方向における位置座標の両端側で、照射箇所の中心から離れるにつれてゼロに近づく傾向がある。
上述の3回のサイクルのビームスキャンを、空隙のz軸方向の寸法を3mmと30mmとした各場合についても、条件を同じにして上述の実験を行った。図11は、このようなビームスキャンにより得られたSp/Snの値を示す。図11において、横軸は、照射箇所Rの中心と空隙の中心とのx軸方向距離を示し、縦軸は、ビームスキャンの各サイクルで求められたSp/Snの値を示す。ここで、SnとSpは、誤差が比較的小さい範囲で求めたものである。また、図11において、丸印は、空隙のz軸方向寸法が3mmの場合を示し、四角印は、空隙のz軸方向寸法が10mmの場合を示し、三角印は、空隙のz軸方向寸法が30mmの場合を示す。
図11のように、最小のSp/Snが得られたサイクルでの照射箇所Rは、合成床版1内の空隙に最も近い。したがって、最小のSp/Snに対応する照射箇所Rを空隙に最も近い箇所として特定することができる。例えば、合成床版1内の空隙の真上から合成床版1の表面1eに中性子ビームを照射した場合には、多くの中性子が空隙を表面1eから離れる方向に通過するが、この時、これらの中性子は空隙において検出器3a側へ散乱しない。その結果、検出面3a1において空隙の真上の領域では、検出数が大きく減少すると考えられる。また、空隙では熱中性子が生成されない。そのため、照射箇所Rが、空隙(空隙の真上)に近いほど、Snが大きくなり、Sp/Snが小さくなると考えられる。
(実施形態の効果)
上述のように、合成床版1の表面1eにおける局所的な照射箇所Rに中性子ビームを照射し、その結果、検出器3a上の検出位置毎に当該検出位置へ入射した散乱中性子の数を検出数として計測し、各検出位置について、当該検出位置の基準値に対する当該検出位置の検出数の比率を求める。このように得た、検出位置に関する比率分布は、欠陥の有無や種類を示す情報が含まれている。したがって、検出器3aにおける各検出位置の比率(比率分布)に基づいて、欠陥の有無や種類を検出できる。
例えば、比率分布における比率の増大ピーク形成部と減少ピーク形成部の大きさを、それぞれSpとSnとして、Sp+Snが第1しきい値T1よりも大きい場合には、水又は低密度部分(例えば空隙)の欠陥が存在すると判定できる。
また、Sp+Snが第1しきい値T1よりも大きく、且つ、Sn/Spが第2しきい値T2以上である場合には、合成床版1に欠陥としての低密度部分が存在すると判定できる。
Sp+Snが第1しきい値T1よりも大きく、且つ、Sn/Spが第2しきい値T2未満である場合には、合成床版1に欠陥としての水が存在すると判定できる。
また、照射箇所Rを局所的な箇所(例えばスポット)とすることにより、合成床版1内に欠陥が存在する場合には、比率分布において上述の増大ピーク形成部と減少ピーク形成部がより顕著に生じやすくなる。
低密度部分(例えば空隙)の有無を検出する場合に、検出器3aが中速中性子を選択的に検出することにより、低密度部分に対して高感度なSp+Snを得ることができる。
上述したビームスキャンにより、各照射箇所RについてSp/Sn又はSn/Spを求め、最小のSp/Sn又はSn/Spに対応する照射箇所Rが低密度部分又は滞水箇所に最も近いと判定できる。
また、ビームスキャン法により、少なくとも2つ又は3つの照射箇所Rの各々について、Sp/Sn又はSn/Spを求めることにより、Sp/Sn又はSn/Spの値がより小さい方の照射箇所R側に低密度部分又は滞水箇所が存在していることが分かる。
合成床版1に入射した中性子ビームの各中性子は、コンクリート1cの部分を通過するよりも、形鋼1bの部分を通過した方が、より深い位置まで進入することができる。したがって、検査時において、中性子照射装置は、合成床版1における形鋼1bに向けて中性子線を照射することにより、合成床版1内の小さい欠陥(例えば形鋼1b付近の欠陥)を高感度に検出することが可能となる。この場合、これに合わせて、比率の算出に用いる、各検出位置の基準値は、中性子照射装置2から合成床版1における形鋼1bに向けて中性子線を照射した場合の検出数として予め設定されている。
また、本実施形態の検査では、合成床版1に中性子ビームを照射し、戻って来た散乱中性子を検出するので、合成床版1の表面1eである上面側だけに、全ての検査機器(中性子照射装置2や検出装置3)を配置することができる。そのため、合成床版1の下面側に検査機器を配置することが不要になり、検査に要するコストや所要時間を削減できる。
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、本発明の実施形態による非破壊検査装置10は、上述した効果の全てを奏するものなくてもよい。また、本発明の実施形態による非破壊検査装置10は、上述した複数の構成要素の全てを有していなくてもよく、上述した複数の構成要素のうち一部のみを有していてもよい。
また、本発明によると、以下の変更例1~7のいずれかを単独で採用してもよいし、変更例1~7の2つ以上を任意に組み合わせて採用してもよい。この場合、以下で述べない点は、上述と同じである。
(変更例1)
上述では、中性子照射装置2は、パルス中性子ビームを照射箇所Rに照射したが、時間的に連続する連続中性子ビームを照射箇所Rに照射してもよい。この場合、検出装置3は、合成床版1内に滞水箇所又は低密度部分等の欠陥が存在する場合に上述した比率分布において増大ピーク形成部と減少ピーク形成部が生じるようになる時間区間(計測時間)わたって、検出器3aにおける各検出位置での検出数を計測してよい。
(変更例2)
欠陥の種類を判定しない場合には、判定値算出部8は、Sn/Spを算出しなくてもよい。
(変更例3)
上述では説明しなかったが、図1Aに示すように、非破壊検査装置10は、ディスプレイ11を更に備えていてもよい。
比率算出部5は、検出器3aにおける各検出位置の比率を、検出位置に関する比率分布として、ディスプレイ11に出力してよい。この場合、出力された比率分布は、ディスプレイ11に表示され、人が、表示された比率分布を見て、欠陥の有無や種類を判定してもよい。このような変更例3では、ディスプレイ11を設ける場合、データ処理部7と判定値算出部8と判定部9を省略してもよい。
ディスプレイ11に表示される比率分布は、例えば図2A~図2Dのように、各検出位置を示す座標軸(例えば図1Aのx軸)と、比率を示す座標軸とを有する2次元の座標系で表されたものであってもよい。あるいは、ディスプレイ11に表示される比率分布は、各検出位置を示し互いに直交する2つの座標軸(例えば図1Aのx軸とy軸)と比率を示す座標軸とを有する3次元の座標系で表されたものであってもよい。または、ディスプレイ11に表示される比率分布は、図6Aや図6Bのようにディスプレイ11に表示された2次元的な面(検出面3a1)面内において各検出位置での比率の大きさを、複数の区画(例えば図6Aの区画A~E)、色、又は、濃淡などで表したものであってもよい。なお、複数の区画の間で、互いに比率の値の範囲が異なっており、各区画の比率の範囲の上限と下限もディスプレイ11に表示されてよい。
あるいは、ディスプレイ11を設ける場合、データ処理部7と判定値算出部8と判定部9のうち判定部9のみを省略してもよい。この場合、判定値算出部8は、求めた判定値としてのSp+SnとSn/Spを、ディスプレイ11に出力してよい。この場合、出力された各判定値は、ディスプレイ11に表示され、人が、表示された当該各判定値を見て、欠陥の有無や種類を判定してよい。この場合、ディスプレイ11には、上述のように更に比率分布が表示されてもよい。
または、ディスプレイ11を設ける場合、データ処理部7と判定値算出部8と判定部9のうち判定値算出部8と判定部9のみを省略してもよい。この場合、データ処理部7は、SpとSnを、ディスプレイ11に出力してよい。この場合、出力されたSpとSnの各値は、ディスプレイ11に表示され、人が、表示された当該各値を見て、欠陥の有無や種類を判定してよい。この場合、ディスプレイ11には、上述のように更に比率分布が表示されてもよい。
(変更例4)
上述では、比率分布における増大ピーク形成部の大きさは、面積で表されたが、増大ピーク形成部における比率の最大値(正方向のピーク値)であってもよい。この場合、比率分布における減少ピーク形成部の大きさは、減少ピーク形成部における比率の最小値(負方向のピーク値)であってもよい。
(変更例5)
比率算出部5が出力する比率分布(検出器3aにおける各検出位置の比率)は、図2A~図2Dのように1次元座標(x座標)に対して表される分布、すなわち、x軸と比率の軸を有する2次元座標系で表される分布であってもよいし、2次元座標(x軸座標とy軸座標)に対して表される分布、すなわち、x軸とy軸と比率の軸を有する3次元座標系で表されるものであってもよい。
後者の場合、増大ピーク形成部の大きさは、比率が1である部分と、増大ピーク形成部とで挟まれた領域の体積であってよい。すなわち、xとyを、検出面3a1上の2次元座標を表わす位置座標であるとして、比率分布を表わす比率曲面が、比率=f(x,y)で表される場合に、∫{f(x,y)-1}dxdyが、増大ピーク形成部の大きさであってよい。この積分は、増大ピーク形成部のxの区間とyの区間にわたって行われる。この場合、減少ピーク形成部の大きさも、同様に、比率が1である部分と、減少ピーク形成部とで挟まれた領域の体積であってよい。すなわち、増大ピーク形成部の場合と同様に、∫{1-f(x,y)}dxdyが、減少ピーク形成部の大きさであってよい。
また、比率分布が、上述のように2次元座標系で表される場合、データ処理部7は、当該2次元座標系において比率分布を近似する曲線(例えば図2Aの比率曲線C1)を生成し、当該曲線に基づいて、上述のSpとSnを求めてもよい。比率分布が、上述のように3次元座標系で表される場合、データ処理部7は、当該3次元空間において比率分布を近似する曲面(例えば上述のf(x,y))を生成し、当該曲面に基づいて、上述のSpとSnを求めてもよい。
(変更例6)
上述では、検出器3aは、2次元的な広がりを有する検出面3a1を有するものであったが、本発明は、これに限定されない。例えば、検出器3aは、棒状に(例えば図1Aのx軸方向)に延びていてもよい。この場合、このような棒状の検出器3aには、棒状に配列された複数(例えば多数)の検出位置が存在する。棒状の検出器3aを用いて、ステップS2~S4を行うことにより、1次元的な(棒状の)広がりを有する範囲にわたる多数の検出位置での検出数が取得される。
棒状の検出器3aを用いて、ステップS2~S4を複数回行ってもよい。この場合、複数回の間で、検出器3aの位置を異ならせ、他の条件は同じにする。これにより、2次元的な広がりを有する範囲にわたる多数の検出位置での検出数を取得し、上述のステップS5のように、これらの検出位置の各々での比率を求めてもよい。その後、これらの検出位置での比率(比率分布)に基づいて、上述のステップS7,S8のように欠陥の有無や種類を判定してもよいし、この比率分布をディスプレイ11に表示させてもよい。なお、ステップS2~S4の各回の検出器3aの位置と向きは、適宜の手段により(例えば人が入力装置を操作することにより)検出装置3に入力され、この入力に基づいて、検出装置3は、各検出位置と検出数との対応関係を把握してよい。
なお、検出器3aは、1つの検出位置が存在する点状の検出器であってもよい。この場合には、ステップS2~S4を多数回行う。この場合、多数回の間で、検出器3aの位置を異ならせ、他の条件は同じにする。これにより、1次元的又は2次元的な広がりを有する範囲にわたる多数の検出位置での検出数を取得し、これらの検出位置の各々での比率を求めてもよい。この場合、他の点は、棒状の検出器3aを用いてステップS2~S4を複数回行う場合と同様である。
(変更例7)
比率算出部5は、以下のように、正規化された基準値と正規化された検出数とを用いて上述の比率を求めてもよい。
各検出位置i(iは検出位置の識別子である。以下同様)の基準値は、内部に欠陥が存在しない状態の合成床版1にNa個の中性子を入射した結果、当該検出位置iで検出される放出中性子の数αiをNaで正規化した値であってよい(iは検出位置の識別子である)。すなわち、各検出位置iの各々の基準値Riは、Ri=αi/Naであってよい。
同様に、各検出位置iの検出数は、上述のステップS3において合成床版1に中性子照射装置2が合成床版1にNb個の中性子を入射させた結果、当該検出位置iで検出される放出中性子の数βiをNbで正規化した値であってよい。すなわち、各検出位置iの各々の検出数Diは、Di=βi/Nbであってよい。
比率算出部5は、各検出位置iでの比率を、Di/Riにより算出する。なお、比率算出部5は、比率の算出の際に、既知のNbと、計測部3bが計測したβiとから、検出数Di=βi/Nbを算出してよい。また、正規化された基準値Riは、記憶部6に記憶されていてよい。
このような変更例7では、上述のNaとNbは、互いに異なっていてよく、ステップS3で中性子ビームを合成床版1(照射箇所R)に照射する時間は、基準値の設定での対応する時間(中性子ビームの照射時間)と異なっていてもよい。なお、変更例7では、ステップS4で放出中性子の検出数を計測する時間と、基準値の設定での対応する計測時間とは、いずれも、単位時間あたりに合成床版1から放出される中性子の数が十分に少なくなる(例えば実質的にゼロになる)までの時間であってよい。
1 合成床版
1a 底鋼板
1b 形鋼
1c コンクリート
1d アスファルト層
1e 表面
2 中性子照射装置
2a 中性子源
2b コリメータ
3 検出装置
3a 検出器
3a1 検出面
3b 計測部
5 比率算出部
6 記憶部
7 データ処理部
8 判定値算出部
9 判定部
10 非破壊検査装置
11 ディスプレイ
R 照射箇所

Claims (11)

  1. 合成床版の表面における局所的な照射箇所に中性子ビームを照射する中性子照射装置と、
    前記照射の結果、前記合成床版から戻って来た散乱中性子を、前記表面に対向する各検出位置で検出し、検出位置毎に散乱中性子の検出数を計測する検出装置と、
    各検出位置について、当該検出位置の基準値に対する当該検出位置の前記検出数の比率を求めて出力する比率算出部と、を備え、
    前記基準値は、前記合成床版に欠陥が存在しないと仮定した場合の検出数として前記検出位置毎に設定されている、合成床版の非破壊検査装置。
  2. 前記合成床版が、底鋼板と、当該底鋼板の上面から立ち上がるように互いに間隔をおいて設けられた複数の形鋼と、当該複数の形鋼を埋設するように前記底鋼板の上側に打設されたコンクリートとを有する場合、前記基準値は、前記中性子照射装置から前記形鋼に向けて中性子線を照射した場合の検出数として設定される、請求項1に記載の合成床版の非破壊検査装置。
  3. 各検出位置の前記比率に対してデータ処理を行うデータ処理部を備え、
    前記データ処理部は、
    検出位置に関する前記比率の分布において、前記比率の増大ピーク形成部と減少ピーク形成部を特定し、
    前記増大ピーク形成部の大きさと前記減少ピーク形成部の大きさを求めて出力する、請求項1又は2に記載の合成床版の非破壊検査装置。
  4. 前記増大ピーク形成部の大きさをSpとし、前記減少ピーク形成部の大きさをSnとした場合に、Sp+SnとSn/Spを判定値として求めて出力する判定値算出部を備える、請求項3に記載の合成床版の非破壊検査装置。
  5. 前記判定値算出部が出力したSp+SnとSn/Spに基づいて、合成床版における欠陥の有無と欠陥の種類を判定する判定部を備え、
    前記判定部は、
    Sp+Snが第1しきい値T1以下である場合には、欠陥が存在しないことを示す信号を出力し、
    Sp+Snが前記第1しきい値T1よりも大きく、且つ、Sn/Spが第2しきい値T2以上である場合には、第1欠陥信号を出力し、
    Sp+Snが前記第1しきい値T1よりも大きく、且つ、Sn/Spが前記第2しきい値T2未満である場合には、第2欠陥信号を出力する、請求項4に記載の合成床版の非破壊検査装置。
  6. 前記増大ピーク形成部の大きさをSpとし、前記減少ピーク形成部の大きさをSnとした場合に、Sp+Snを判定値として求めて出力する判定値算出部と、
    Sp+Snが第1しきい値T1以下である場合には、欠陥が存在しないことを示す信号を出力する判定部と、を備える、請求項3に記載の合成床版の非破壊検査装置。
  7. 前記検出装置は、各検出位置で、散乱中性子である熱中性子と中速中性子の一方を選択的に検出し、検出位置毎に当該一方の検出数を計測する、請求項1~6のいずれか一項に記載の合成床版の非破壊検査装置。
  8. (A)合成床版の表面における局所的な照射箇所に中性子ビームを照射し、
    (B)前記(A)の結果、前記合成床版から戻って来た散乱中性子を、前記表面に対向する各検出位置で検出し、検出位置毎に散乱中性子の検出数を計測し、
    (C)各検出位置について、比率算出部により、当該検出位置の基準値に対する当該検出位置の前記検出数の比率を求めて出力し、
    前記基準値は、前記合成床版に欠陥が存在しないと仮定した場合の検出数として前記検出位置毎に設定されている、合成床版の非破壊検査方法。
  9. 前記合成床版が、底鋼板と、当該底鋼板の上面から立ち上がるように互いに間隔をおいて設けられた複数の形鋼と、当該複数の形鋼を埋設するように前記底鋼板の上側に打設されたコンクリートとを有する場合、前記基準値を、前記中性子照射装置から前記形鋼に向けて中性子線を照射した場合の検出数として設定し、
    前記(A)において前記形鋼に向けて中性子ビームを前記照射箇所に照射する、請求項8に記載の合成床版の非破壊検査方法。
  10. 前記合成床版の前記表面は上面であり、
    前記(A)では、前記合成床版の内部から見て前記上面側に配置された中性子照射装置から前記中性子ビームを前記上面に照射し、
    前記(B)では、前記合成床版の内部から見て前記上面側に配置された検出装置により、前記検出位置毎に散乱中性子の検出数を計測する、請求項8又は9に記載の合成床版の非破壊検査方法。
  11. (D)検出位置に関する前記比率の分布において、前記比率の増大ピーク形成部と減少ピーク形成部を特定し、前記増大ピーク形成部の大きさと前記減少ピーク形成部の大きさをそれぞれSpとSnとして求め、Sp/Sn又はSn/Spを求め、
    前記(A)において中性子ビームを入射する照射箇所を変えて、前記(A)~(D)を繰り返す、
    複数回の前記(D)でそれぞれ求めた複数のSp/Sn又はSn/Spのうち最も小さい値に対応する前記照射箇所を、複数の前記照射箇所のうち、欠陥としての低密度部分又は滞水箇所に最も近い箇所として特定し、
    前記低密度部分は、合成床版の正常な部分よりも密度が低い部分である、請求項8~10のいずれか一項に記載の合成床版の非破壊検査方法。
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