JP2023048619A - 多層光学フィルム及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】使用時における耐熱性が高く、耐溶媒性が高く、且つ高品質なものを容易に製造しうる、多層光学フィルム及びその製造方法を提供する。【解決手段】おもて面及びうら面の表層を構成する一対のB層と、前記一対のB層の間に位置するA層とを備える多層光学フィルムであって、前記A層は、融点を有さない非晶性重合体(a)を含む樹脂(a)の層であり、前記B層は、融点を有する結晶性重合体(b1)と融点を有さない非晶性重合体(b2)とを含む、融点を有する樹脂(b)の層であり、前記樹脂(a)及び前記樹脂(b)は、TgA-TgB≦20℃、110℃<TgB<140℃、180℃<TcB<235℃を満たし、式中TgAは樹脂(a)のガラス転移温度であり、TgBは樹脂(b)のガラス転移温度であり、TcBは樹脂(b)の冷結晶化温度である、多層光学フィルム。【選択図】図1

Description

本発明は、多層光学フィルム及びその製造方法に関する。
従来、光学用途のフィルムは、非晶性重合体で製造されることが一般的であった。しかし、非晶性重合体は、耐溶媒性に劣る傾向がある。そこで、非晶性重合体と結晶性重合体とを組み合わせて含む樹脂によって、耐溶媒性に優れるフィルムを製造することが提案されている(例えば特許文献1及び2)。また、そのようなフィルムと、他のフィルムとを組み合わせた多層の光学フィルムも提案されている(例えば特許文献3及び4)。そのような多層の光学フィルムでは、その表層を構成する層として結晶性重合体を含む層を採用することにより、耐溶媒性を向上させ、且つそれらの間のコア層により所望の光学的性能を発現させることが期待しうる。コア層は、例えば延伸により発現した位相差を有する位相差層としうる。
特開2002-249645号公報 特開2007-016102号公報 特願平3-230614号公報 国際公開第2013/069666号
光学的性能を発現させるコア層は、光学フィルム使用時の耐熱性を高める観点から、そのガラス転移温度が高いことが求められる。そのようなコア層は、延伸の過程において、比較的高い温度で延伸を行うことが求められる。しかしながら、そのようなガラス転移温度の高いコア層を、結晶性重合体を含む表面層と共に用いて光学フィルムを製造する場合、高品質な製品を容易に製造することが困難であった。例えば、樹脂を溶融押出により製膜する際に冷却ロール上で厚みムラが発生する、延伸前フィルムを延伸の工程に供するときに破断が発生する、といった不具合が発生する傾向が高い。
従って、本発明の目的は、使用時における耐熱性が高く、耐溶媒性が高く、且つ高品質なものを容易に製造しうる、多層光学フィルム及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、前記の課題を解決するべく検討した。その結果、本発明者は、多層光学フィルムの表層を構成する材料として、コア層との関係において特定の性質を有するものを採用することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
〔1〕 おもて面及びうら面の表層を構成する一対のB層と、前記一対のB層の間に位置するA層とを備える多層光学フィルムであって、
前記A層は、融点を有さない非晶性重合体(a)を含む樹脂(a)の層であり、
前記B層は、融点を有する結晶性重合体(b1)と融点を有さない非晶性重合体(b2)とを含む、融点を有する樹脂(b)の層であり、
前記樹脂(a)及び前記樹脂(b)は、下記式(1)~(3)を満たし、
TgA-TgB≦20℃ (1)
110℃<TgB<140℃ (2)
180℃<TcB<235℃ (3)
式中TgAは樹脂(a)のガラス転移温度であり、TgBは樹脂(b)のガラス転移温度であり、TcBは樹脂(b)の冷結晶化温度である、
多層光学フィルム。
〔2〕 前記A層及び前記B層が層間密着している、〔1〕に記載の多層光学フィルム。
〔3〕 前記B層のそれぞれの厚みがいずれも10μm以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の多層光学フィルム。
〔4〕 ヘイズが1%以下である、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の多層光学フィルム。
〔5〕 〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の多層光学フィルムの製造方法であって、
前記樹脂(a)と、前記樹脂(b)とを調製する工程と、
前記樹脂(a)及び前記樹脂(b)を成形して、多層樹脂フィルムを得る工程を含む、製造方法。
〔6〕 前記多層樹脂フィルムを、TgA以上の延伸温度にて延伸する工程をさらに含む、〔5〕に記載の多層光学フィルムの製造方法。
本発明によれば、使用時における耐熱性が高く、耐溶媒性が高く、且つ高品質なものを容易に製造しうる、多層光学フィルム及びその製造方法が提供される。
図1は、本願実施例における耐溶媒性試験の方法を模式的に示す側面図である。 図2は、本願実施例における相間密着性試験の方法を模式的に示す斜視図である。
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下でありうる。
以下の説明において、面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。また、厚み方向のレターデーションRthは、別に断らない限り、Rth=[{(nx+ny)/2}-nz]×dで表される値である。さらに、複屈折Δnとは、別に断らない限り、nx-nyで表される値であり、よって、Re/dで表される値である。ここで、nxは、厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzは厚み方向の屈折率を表す。dは、厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、590nmである。
以下の説明において、正の固有複屈折を有する重合体とは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに垂直な方向の屈折率よりも大きくなる重合体を意味する。また、負の固有複屈折を有する重合体とは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに垂直な方向の屈折率よりも小さくなる重合体を意味する。
〔多層光学フィルム:概要〕
本発明の多層光学フィルムは、おもて面及びうら面の表層を構成する一対のB層と、それらの間に位置するA層とを備える。ここで、表層のおもて面及びうら面は、多層光学フィルムの表層となるB層の一方の面をおもて面とした際、もう一方の面をうら面とする。
A層は、融点を有さない非晶性重合体(a)を含む樹脂(a)の層であり、樹脂(a)のみからなる層としうる。一方B層は、融点を有する結晶性重合体(b1)と融点を有さない非晶性重合体(b2)とを含む、融点を有する樹脂(b)の層であり、樹脂(b)のみからなる層としうる。
〔樹脂(b):結晶性重合体(b1)〕
結晶性重合体(b1)としては、既知のもの等の各種の結晶性重合体を用いうる。一般に結晶性重合体は、結晶性を有する重合体である。結晶性を有する重合体とは、融点を有する重合体である。重合体の融点は、示差走査熱量計(DSC)によって測定できる。よって、結晶性重合体とは、示差走査熱量計(DSC)で融点を観測することができる重合体である。
結晶性重合体(b1)は、正の固有複屈折を有していてもよく、負の固有複屈折を有していてもよい。中でも、正の固有複屈折を有する結晶性重合体が好ましい。
結晶性重合体(b1)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;などが挙げられるが、環状オレフィン系重合体が好ましい。すなわち、結晶性重合体(b1)は、融点を有する環状オレフィン系重合体であることが好ましい。以下、融点を有する環状オレフィン系重合体を、「環状オレフィン系結晶性重合体」と呼ぶことがある。
環状オレフィン系結晶性重合体は、その分子内に脂環式構造を有しうる。このような環状オレフィン系結晶性重合体は、例えば、環状オレフィンを単量体として用いた重合反応によって得られうる重合体又はその水素化物でありうる。環状オレフィン系結晶性重合体を含む樹脂(b)を用いる場合、多層光学フィルムの機械特性、耐熱性、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性を良好にできる。
脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が挙げられる。これらの中でも、熱安定性などの特性に優れる多層光学フィルムが得られ易いことから、シクロアルカン構造が好ましい。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数は、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数が上記範囲内にある場合、機械的強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされる。
環状オレフィン系結晶性重合体において、全ての構造単位に対する脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。脂環式構造を有する構造単位の割合が前記のように多い場合、耐熱性を高めることができる。全ての構造単位に対する脂環式構造を有する構造単位の割合は、100重量%以下としうる。また、環状オレフィン系結晶性重合体において、脂環式構造を有する構造単位以外の残部は、格別な限定はなく、使用目的に応じて適宜選択しうる。
環状オレフィン系結晶性重合体としては、例えば、下記の重合体(α)~重合体(δ)が挙げられる。これらの中でも、耐熱性に優れる多層光学フィルムが得られ易いことから、重合体(β)が好ましい。
重合体(α):環状オレフィン単量体の開環重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(β):重合体(α)の水素化物であって、結晶性を有するもの。
重合体(γ):環状オレフィン単量体の付加重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(δ):重合体(γ)の水素化物であって、結晶性を有するもの。
具体的には、脂環式構造を含有する結晶性重合体としては、ジシクロペンタジエンの開環重合体であって結晶性を有するもの、及び、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物であって結晶性を有するものがより好ましい。中でも、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物であって結晶性を有するものが特に好ましい。ここで、ジシクロペンタジエンの開環重合体とは、全構造単位に対するジシクロペンタジエン由来の構造単位の割合が、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは100重量%の重合体をいう。
ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物は、ラセモ・ダイアッドの割合が高いことが好ましい。具体的には、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物における繰り返し単位のラセモ・ダイアッドの割合は、好ましくは51%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは85%以上である。ラセモ・ダイアッドの割合が高いことは、シンジオタクチック立体規則性が高いことを表す。よって、ラセモ・ダイアッドの割合が高いほど、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物の融点が高い傾向がある。
ラセモ・ダイアッドの割合は、後述する実施例に記載の13C-NMRスペクトル分析に基づいて決定できる。
上記重合体(α)~重合体(δ)としては、国際公開第2018/062067号に開示されている製造方法により得られる重合体を用いうる。
結晶性重合体(b1)の融点Tmb1は、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上であり、好ましくは290℃以下である。このような融点Tmb1を有する結晶性重合体(b1)を用いる場合、成形性と耐熱性とのバランスに更に優れた多層光学フィルムを得ることができる。
通常、結晶性重合体(b1)は、ガラス転移温度Tgb1を有する。結晶性重合体(b1)の具体的なガラス転移温度Tgb1は、特に限定されないが、通常は85℃以上、通常170℃以下である。
重合体のガラス転移温度及び融点は、以下の方法によって測定できる。まず、重合体を、加熱によって融解させ、融解した重合体をドライアイスで急冷する。続いて、この重合体を試験体として用いて、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温速度(昇温モード)で、重合体のガラス転移温度及び融点を測定しうる。
結晶性重合体(b1)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下である。このような重量平均分子量を有する結晶性重合体(b1)は、成形加工性と耐熱性とのバランスに優れる。
結晶性重合体(b1)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下である。ここで、Mnは数平均分子量を表す。このような分子量分布を有する結晶性重合体(b1)は、成形加工性に優れる。
重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを展開溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算値として測定しうる。また、重合体がシクロヘキサンに溶解しない場合には、溶媒としてトルエンを用いて、ポリイソプレン換算値として重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を測定しうる。
結晶性重合体(b1)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
樹脂(b)に含まれる結晶性重合体(b1)の量は、樹脂(b)100重量%に対して、好ましくは30重量%以上、より好ましくは35重量%以上、特に好ましくは40重量%以上であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは75重量%以下、特に好ましくは70重量%以下である。結晶性重合体(b1)の量が前記範囲にある場合に、多層光学フィルムの耐溶媒性、耐熱性及び柔軟性を効果的に高めることができる。
樹脂(b)に含まれる結晶性重合体(b1)の量Wa及び非晶性重合体(b2)の量Wbの重量比Wa/Wbは、特定の範囲にあることが好ましい。具体的には、重量比Wa/Wbは、好ましくは30/70より大きく、より好ましくは35/65より大きく、特に好ましくは40/60より大きく、好ましくは80/20未満、より好ましくは75/25未満である。重量比Wa/Wbを前記下限以上とすることにより、樹脂(b)を、融点を有する樹脂としうる。また、重量比Wa/Wbが前記範囲にある場合に、多層光学フィルムの耐溶媒性、耐熱性及び柔軟性を効果的に高めることができる。
また、樹脂(b)に含まれる結晶性重合体(b1)及び非晶性重合体(b2)の合計量は、樹脂(b)100重量%に対して、好ましくは50重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、更に好ましくは80重量%~100重量%、更に好ましくは90重量%~100重量%、特に好ましくは95重量%~100重量%である。
〔樹脂(b):非晶性重合体(b2)〕
非晶性重合体(b2)としては、既知のもの等の各種の非晶性重合体を用いうる。一般に非晶性重合体は、結晶性を有しない重合体である。結晶性を有しない重合体とは、融点を有しない重合体である。よって、非晶性重合体とは、示差走査熱量計(DSC)で融点を観測することができない重合体を表す。
非晶性重合体(b2)は、正の固有複屈折を有していてもよく、負の固有複屈折を有していてもよい。中でも、正の固有複屈折を有する非晶性重合体が好ましい。
非晶性重合体(b2)としては、環状オレフィン系重合体が好ましい。すなわち、非晶性重合体(b2)は、融点を有さない環状オレフィン系重合体であることが好ましい。以下、融点を有さない環状オレフィン系重合体を、「環状オレフィン系非晶性重合体」と呼ぶことがある。環状オレフィン系非晶性重合体は、機械特性、耐熱性、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性に優れる。
環状オレフィン系非晶性重合体は、その分子内に環状構造を有しうる。通常、環状オレフィン系非晶性重合体は、その重合体の構造単位が脂環式構造を有する。環状オレフィン系非晶性重合体は、主鎖に脂環式構造を有する重合体、側鎖に脂環式構造を有する重合体、主鎖及び側鎖に脂環式構造を有する重合体、並びに、これらの2以上の任意の比率の混合物でありうる。中でも、環状オレフィン系非晶性重合体は、機械的強度及び耐熱性の観点から、主鎖に脂環式構造を有することが好ましい。
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、及び不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造が挙げられる。中でも、機械強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、シクロアルカン構造が特に好ましい。
1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数は、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。脂環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲である場合、機械強度、耐熱性及び成形性が高度にバランスされる。
環状オレフィン系非晶性重合体において、全ての構造単位に対する脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。全ての構造単位に対する脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にある場合、透明性及び耐熱性が良好となる。
環状オレフィン系非晶性重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び、これらの水素化物等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体及びその水素化物は、成形性が良好である。
ノルボルネン系重合体及びその水素化物の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素化物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる他の単量体との開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる他の単量体との付加共重合体が挙げられる。これらの重合体としては、例えば、特開2002-321302号公報、国際公開第2017/145718号等に開示されている重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素化物は、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適である。
ノルボルネン構造を有する単量体の例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(慣用名:テトラシクロドデセン)等の、芳香環構造を含まないノルボルネン系単量体;5-フェニル-2-ノルボルネン、5-(4-メチルフェニル)-2-ノルボルネン、5-(1-ナフチル)-2-ノルボルネン、9-(2-ノルボルネン-5-イル)-カルバゾール等の、芳香族置換基を有するノルボルネン系単量体;1,4-メタノ-1,4,4a,4b,5,8,8a,9a-オクタヒドロフルオレン、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロジベンゾフラン、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロカルバゾール、1,4-メタノ-1,4,4a,9,9a,10-ヘキサヒドロアントラセン、1,4-メタノ-1,4,4a,9,10,10a-ヘキサヒドロフェナンスレン等の、縮合多環構造中にノルボルネン環構造と芳香環構造とを含むノルボルネン系単量体;並びに、これらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの);などが挙げられる。
置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロキル基等のアルキル基;アルキリデン基;アルケニル基;極性基;などが挙げられる。極性基としては、例えば、ヘテロ原子、又はヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、フルオロ基、クロル基、ブロモ基、ヨード基等のハロゲン基;カルボキシル基;カルボニルオキシカルボニル基;エポキシ基;ヒドロキシ基;オキシ基;アルコキシ基;エステル基;シラノール基;シリル基;アミノ基;ニトリル基;スルホン基;シアノ基;アミド基;イミド基;などが挙げられる。置換基の数は、1でもよく、2以上でもよい。また、2以上の置換基の種類は、同じでもよく、異なっていてもよい。ただし、飽和吸水率が低く耐湿性に優れる非晶性樹脂を得る観点では、ノルボルネン系単量体は、極性基の量が少ないことが好ましく、極性基を有さないことがより好ましい。
環状オレフィン系非晶性重合体の例を商品名で挙げると、日本ゼオン社製「ZEONEX」;JSR社製「アートン」;三井化学社製「アペル」;ポリプラスチックス社製「TOPAS」;などが挙げられる。
非晶性重合体(b2)のガラス転移温度Tgb2は、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下、更に好ましくは180℃以下である。非晶性重合体(b2)のガラス転移温度Tgb2が前記の範囲にある場合に、多層光学フィルムの耐溶媒性及び耐熱性の両方を効果的に高めることができる。また、通常は、延伸処理を円滑に行うことができる。
非晶性重合体(b2)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。重量平均分子量が前記の範囲にある場合、樹脂(b)の機械的強度および成型加工性が高度にバランスされる。
非晶性重合体(b2)の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.8以上であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.7以下である。分子量分布が前記範囲の下限値以上である場合、重合体の生産性を高め、製造コストを抑制できる。また、上限値以下である場合、低分子成分の量が小さくなるので、高温曝露時の緩和を抑制して、多層光学フィルムの安定性を高めることができる。
非晶性重合体(b2)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
樹脂(b)に含まれる非晶性重合体(b2)の量は、樹脂(b)100重量%に対して、好ましくは20重量%以上、より好ましくは25重量%以上、特に好ましくは30重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは65重量%以下、特に好ましくは60重量%以下である。非晶性重合体(b2)の量が前記範囲にある場合に、多層光学フィルムの耐溶媒性及び耐熱性の両方を効果的に高めることができる。
非晶性重合体(b2)のガラス転移温度Tgb2は、結晶性重合体(b1)のガラス転移温度Tgb1よりも、相対的に高いことが好ましい。一般的に、結晶性重合体のガラス転移温度は低く、一方非晶性重合体は、ガラス転移温度が高いものも低いものも存在する。ここで、非晶性重合体(b2)として、そのガラス転移温度Tgb2が高いものを採用することにより、樹脂(b)全体としてのガラス転移温度TgBを、所望の高い温度とすることができる。
結晶性重合体(b1)のガラス転移温度Tgb1と非晶性重合体(b2)のガラス転移温度Tgb2との差の絶対値|Tgb1-Tgb2|は、特定の範囲にあることが好ましい。具体的には、絶対値|Tgb1-Tgb2|は、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、特に好ましくは50℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、特に好ましくは80℃以下である。絶対値|Tgb1-Tgb2|が前記下限以上であることにより、樹脂(b)全体としてのガラス転移温度TgBを、所望の高い温度とすることができる。一方、絶対値|Tgb1-Tgb2|が前記の範囲にある場合に、多層光学フィルムの耐溶媒性、耐熱性及び柔軟性を効果的に高めることができる。
〔樹脂(b):任意成分〕
樹脂(b)は、結晶性重合体(b1)及び非晶性重合体(b2)に組み合わせて、更に任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤;石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリアルキレンワックス等のワックス;ソルビトール系化合物、有機リン酸の金属塩、有機カルボン酸の金属塩、カオリン及びタルク等の核剤;ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、アゾール系誘導体(例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、及びベンゾチアソール誘導体)、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ナフタル酸誘導体、及びイミダゾロン誘導体等の蛍光増白剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;着色剤;難燃剤;難燃助剤;帯電防止剤;可塑剤;近赤外線吸収剤;滑剤;タルク、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維等の無機充填材;などが挙げられる。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。任意の成分の量は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で適宜定めうる。任意の成分の量は、例えば、多層光学フィルムの全光線透過率を85%以上に維持できる範囲でありうる。
〔樹脂(b)の特性〕
樹脂(b)は、下記式(2)を満たすガラス転移温度TgBを有する。
110℃<TgB<140℃ (2)
詳細には、樹脂(b)のガラス転移温度TgBは、110℃より高く、好ましくは115℃より高く、特に好ましくは120℃以上であり、また、140℃未満、好ましくは135℃未満、特に好ましくは130℃以下である。
樹脂(b)のガラス転移温度TgBは、例えば、結晶性重合体(b1)の種類及び量、並びに、非晶性重合体(b2)の種類及び量を調整することによって、調整しうる。
樹脂(b)のガラス転移温度TgBは、上述した重合体のガラス転移温度の測定方法と同じ方法によって測定できる。
樹脂(b)は、下記式(3)を満たす冷結晶化温度TcBを有する。
180℃<TcB<235℃ (3)
詳細には、樹脂(b)の冷結晶化温度TcBは、180℃より高く、好ましくは185℃より高く、特に好ましくは190℃以上であり、通常235℃未満、好ましくは230℃未満、特に好ましくは225℃未満である。
樹脂(b)の冷結晶化温度TcBは、例えば、結晶性重合体(b1)の種類及び量、並びに、非晶性重合体(b2)の種類及び量を調整することによって、調整できる。
樹脂(b)の冷結晶化温度TcBは、以下の方法によって測定できる。まず、樹脂(b)を、加熱によって融解させ、融解した樹脂(b)をドライアイスで急冷する。続いて、この樹脂(b)を試験体として用いて、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温速度(昇温モード)で、樹脂(b)の冷結晶化温度TcBを測定しうる。この測定方法では、冷結晶化温度TcBは、昇温過程における発熱ピークのピークトップの温度として得ることができる。
樹脂(b)が上述した式(2)を満たすガラス転移温度TgB及び式(3)を満たす冷結晶化温度TcBを有する場合に、得られる多層光学フィルムは高い耐溶媒性を有するものとすることができ、且つ多層フィルムの製造の工程における不具合の発生を抑制することができる。
樹脂(b)のガラス転移温度TgBと結晶性重合体(b1)のガラス転移温度Tgb1との差の絶対値|TgB-Tgb1|は、特定の範囲にあることが好ましい。具体的には、絶対値|TgB-Tgb1|は、好ましくは3℃以上、より好ましくは6℃以上、特に好ましくは10℃以上であり、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下、特に好ましくは35℃以下である。絶対値|TgB-Tgb1|が前記の範囲にある場合、多層光学フィルムの耐溶媒性及び耐熱性の両方を効果的に高めることができる。
樹脂(b)のガラス転移温度TgBと非晶性重合体(b2)のガラス転移温度Tgb2との差の絶対値|TgB-Tgb2|は、特定の範囲にあることが好ましい。具体的には、絶対値|TgB-Tgb2|は、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上、特に好ましくは30℃以上であり、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、特に好ましくは60℃以下である。絶対値|TgB-Tgb2|が前記の範囲にある場合、多層光学フィルムの耐溶媒性及び耐熱性の両方を効果的に高めることができる。
樹脂(b)は、融点Tmbを有する。樹脂(b)の融点Tmbの範囲は、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上、特に好ましくは240℃以上であり、好ましくは290℃以下である。樹脂(b)が前記範囲の融点Tmbを有する場合、多層光学フィルムの耐溶媒性及び耐熱性の両方を効果的に高めることができる。
樹脂(b)の融点Tmbは、例えば、上述した重合体の融点の測定方法と同じ方法によって測定できる。
〔B層〕
B層における樹脂(b)は、結晶性重合体(b1)を含むため、結晶化した状態となり得る。しかしながらガラス転移温度TgBなどの所望の要件を満たし、且つ本発明の多層光学フィルムとして成形された状態の樹脂(b)は、多くの場合、B層において非晶状態で存在する。結晶化の有無は、本願実施例で示す条件によるTEM観察により判定しうる。観察した切片の中に球晶構造又はコンストラストの差が見出された場合は結晶化している状態であると判定され、見出されない場合は非晶状態であると判定される。
B層において樹脂(b)は多くの場合非晶状態であり、非晶状態である樹脂(b)はヘイズの発現性が低い一方、位相差の発現性も低い傾向がある。そのため、多層光学フィルムに位相差を発現させる観点からは、多層光学フィルムにおけるB層のそれぞれの厚みが、ある程度以上薄いことが好ましい。それぞれのB層の厚みは、好ましくは10μm以下、より好ましくは9μm以下である。B層の厚みの下限は、特に限定されないが、耐溶媒性を有効に発現させる観点から、3μm以上としうる。
〔樹脂(a):非晶性重合体(a)〕
A層を構成する樹脂(a)の成分である非晶性重合体(a)の例としては、上に述べた非晶性重合体(b2)の例と同じものが挙げられる。本発明の多層光学フィルムにおいて、非晶性重合体(a)と非晶性重合体(b2)とは、同じものであってもよく異なっていてもよい。
樹脂(a)は、非晶性重合体(a)に加えて任意成分を含みうる。かかる任意成分の例及びその量の例としては、樹脂(b)のそれらの例と同じものが挙げられる。樹脂(a)は、非晶性重合体(a)を主成分とするため、融点を有しない。融点を有しないことは、上に述べた重合体の融点の測定方法によって融点が観測されないことによって確認しうる。
樹脂(a)のガラス転移温度TgAは、樹脂(b)のガラス転移温度TgBとの関係において、下記式(1)を満たす。
TgA-TgB≦20℃ (1)
TgA-TgBの値は、20℃以下であり、好ましくは15℃以下である。本発明者が見出したところによれば、TgA-TgBの値がかかる上限以下であることにより、多層光学フィルムを、高品質な状態で容易に製造しうるものとすることが可能となる。具体的には、樹脂を溶融押出により製膜する際の冷却ロール上での厚みムラの発生、及び延伸前のフィルムを延伸の工程に供する際の破断の発生といった不所望な現象を、効果的に抑制することができる。したがって、高い耐溶媒性などの、B層を表層に有することによる利点を享受しながら、且つ高品質な状態で容易に製造することができる多層光学フィルムを実現することができる。
TgA-TgBの値の下限は特に限定されないが、通常は-10℃以上、好ましくは-5℃以上としうる。TgA-TgBの値がかかる下限以上であることにより、多層樹脂フィルムの使用時の耐熱性と耐溶媒性とを両立させることができる。
樹脂(a)のガラス転移温度TgA自体は特に限定されないが、多層光学フィルム使用時の耐熱性を高める観点から、TgAは高いことが好ましい。一方、取扱いの容易性などの観点から、TgAはある程度以上低いことが好ましい。具体的には、TgAは、好ましくは105℃以上、より好ましくは110℃以上であり、一方好ましくは145℃以下、より好ましくは140℃以下である。樹脂(a)のガラス転移温度TgAは、例えば、結晶性重合体(a)の種類を適宜選択することによって、調整しうる。樹脂(a)のガラス転移温度TgAは、上述した重合体のガラス転移温度の測定方法と同じ方法によって測定しうる。
〔A層〕
A層の厚みは、特に限定されないが、多層光学フィルムとしての位相差を有効に発現させる観点から、ある程度以上の厚みがあることが好ましい。A層の厚みの下限は、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上としうる。一方、多層光学フィルムを備える装置の薄型化などの観点から、A層の厚みの上限は、好ましくは160μm以下、より好ましくは150μm以下としうる。
〔多層光学フィルムの特性〕
本発明の多層光学フィルムは、優れた耐溶媒性を有することができる。例えば、多層光学フィルムが屈曲した状態において、屈曲部にn-ヘキサンを滴下しても、容易に破断が生じないフィルムとしうる。
本発明の多層光学フィルムは、A層を構成する樹脂(a)のガラス転移温度TgA等を適切な範囲とすることにより、優れた耐熱性を有することができる。それにより、多層光学フィルムは、高温環境におけるレターデーションの変化、及び高温環境におけるヘイズの上昇を抑制できる。
多層光学フィルムは、A層において容易に高い複屈折を発現させることが可能である。多層光学フィルムは、A層とB層との組み合わせにより、位相差フィルムなどの用途に適した高い複屈折を有し、耐溶媒性に優れ、且つ容易に製造することができるフィルムとすることができる。多層光学フィルムの具体的な複屈折は、好ましくは0.00200以上、より好ましくは0.00205以上、特に好ましくは0.00210以上である。複屈折Δnの上限は、特に制限は無く、例えば、0.01000以下、0.00800以下などでありうる。
多層光学フィルムは、その用途に適した面内レターデーションを有しうる。例えば、測定波長590nmにおける多層光学フィルムの面内レターデーションReは、好ましくは30nm以上、より好ましくは40nm以上、特に好ましくは50nm以上であり、好ましくは300nm以下、より好ましくは290nm以下、特に好ましくは280nm以下である。
多層光学フィルムは、その用途に適した厚み方向のレターデーションを有しうる。例えば、測定波長590nmにおける多層光学フィルムの厚み方向のレターデーションRthは、好ましくは0nm以上、より好ましくは5nm以上、特に好ましくは10nm以上であり、好ましくは300nm以下、より好ましくは250nm以下、特に好ましくは200nm以下である。
多層光学フィルムの面内レターデーション及び厚み方向のレターデーションは、位相差計(AXOMETRICS社製「AxoScanOPMF-1」)により測定しうる。
多層光学フィルムは、高い透明性を有することが好ましい。多層光学フィルムの具体的な全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは88%以上である。フィルムの全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長400nm~700nmの範囲で測定しうる。
多層光学フィルムは、小さいヘイズを有することが好ましい。多層光学フィルムのヘイズは、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下、特に好ましくは0.5%以下であり、理想的には0.0%である。
多層光学フィルムは、枚葉のフィルムであってもよく、長尺の形状を有する長尺フィルムであってもよい。
多層光学フィルムの全体の厚みは、多層光学フィルムの用途に応じて適切に設定できるが、多層光学フィルムを備える装置の薄型化などの観点から、通常は薄いことが望ましい。多層光学フィルムの具体的な厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であり、好ましくは160μm以下、より好ましくは150μm以下である。
多層光学フィルムにおけるA層の厚み/B層の合計厚みの比率は、所望の光学的性能及び耐溶媒性などの特性を得られるよう適宜調整しうる。当該比率は、具体的には5~25としうる。
多層光学フィルムにおいては、A層及びB層、接着層などの他の層を介さずに直接接し、層間密着した構成を採り得る。特に、樹脂(a)が非晶性重合体(a)として脂環式構造含有重合体を含み、且つ樹脂(b)が、結晶性重合体(b1)及び非晶性重合体(b2)の一方または両方として脂環式構造含有重合体を含む場合、これらの親和性を高めることができ、他の層を介さずに、層間密着を得ることができる。層間密着性の有無は、本願実施例で示す条件による引裂試験により判定しうる。引裂試験で引裂いた試料の裂け目において、層間の界面での剥離が視認されなかった場合、層間密着性ありと判定し、層間の界面での剥離が視認された場合、層間密着性なしと判定しうる。
〔多層光学フィルムの製造方法〕
本発明の多層光学フィルムは、下記工程(i)~(ii)を含む製造方法により製造しうる。以下において、当該製造方法を、本発明の多層光学フィルムの製造方法として説明する。本発明の多層光学フィルムの製造方法は、工程(i)~(ii)に加えて、下記工程(iii)をも含みうる。
工程(i):樹脂(a)と、樹脂(b)とを調製する工程。
工程(ii):樹脂(a)及び樹脂(b)を成形して、多層樹脂フィルムを得る工程。
工程(iii):多層樹脂フィルムを、TgA以上の延伸温度にて延伸する工程。
工程(i)は、上に述べたそれぞれの重合体の製造方法で重合体を合成し、さらに必要に応じて複数の重合体、並びに任意成分を混合することにより行いうる。
工程(ii)における成形方法は、特に限定されず既知の各種の成形方法を採用しうる。成形方法の例としては、押出成形法、溶液キャスト法、及びインフレーション成型法が挙げられる。中でも、押出成形法及び溶液キャスト法が好ましく、押出成形法が特に好ましい。
押出成形法による成形では、樹脂(a)及び樹脂(b)の共押出成形を行いうる。具体的には、2種3層の共押出成形を行いうる押出成形装置から、溶融状態の樹脂(a)及び樹脂(b)を共押出して吐出させ、層状の溶融樹脂とし、さらにこれを冷却することにより、共押出成形を行いうる。吐出の際の溶融温度は、好ましくは(TgA+100)℃以上、より好ましくは(TgA+110)℃以上であり、一方好ましくは(TgA+180)℃以下、より好ましくは(TgA+170)℃以下としうる。層状の溶融樹脂が最初に接触する冷却体は特に限定されないが、通常はキャストロールを用いる。このキャストロール温度は、好ましくはTgA-15℃以上であり、好ましくはTgA+5℃以下である。
工程(ii)で得られた多層樹脂フィルムは、用途によっては、そのまま、製品たる本発明の多層光学フィルムとしうる。一方、多層光学フィルムとして、大きな位相差を有するフィルムが求められる場合は、工程(iii)を行い、多層フィルムに位相差を付与しうる。この延伸により、樹脂フィルム中の重合体の分子が配向するので、好ましい光学特性を有する多層光学フィルムが得られる。この延伸に際しての延伸温度は、好ましくはTgA℃以上、より好ましくはTgA+5℃以上であり、一方好ましくはTgA+40℃以下、より好ましくはTgA+30℃以下としうる。かかる温度範囲内で延伸を行うことにより、所望の位相差を容易に付与することができる。
一方、B層における樹脂(b)の結晶化の促進を抑制し、ヘイズの上昇を抑制する観点からは、延伸温度は、樹脂(b)のガラス転移温度TgB及び冷結晶化温度TcBと相対的なある範囲内としうる。具体的には、延伸温度は、好ましくはTgB℃以上、より好ましくはTgB+10℃以上、特に好ましくはTgB+15℃以上であり、一方好ましくはTcB-20℃以下、より好ましくはTcB-25℃以下、特に好ましくはTcB-30℃以下である。
工程(iii)における延伸倍率は、多層光学フィルムが有するべき光学特性に応じて設定しうる。具体的な延伸倍率は、好ましくは1倍より大きく、より好ましくは1.1倍以上、特に好ましくは1.2倍以上であり、好ましくは5倍以下、より好ましくは4倍以下、特に好ましは3倍以下である。二軸延伸を行う場合、一方の方向への延伸の延伸倍率と他方の方向への延伸の延伸倍率との積で表される全体の延伸倍率が、前記範囲に収まることが好ましい。
前記の延伸の態様は、例えば、1方向に延伸を行う一軸延伸であってもよく、非平行な2方向に延伸を行う二軸延伸であってもよい。また、二軸延伸は、2方向への延伸を同時に行う同時二軸延伸であってもよく、一方の方向への延伸を行った後で他方の方向への延伸を行う逐次二軸延伸であってもよい。
多層光学フィルムの製造方法は、前記の工程(i)~(iii)に組み合わせて、更に任意の工程を含んでいてもよい。例えば、多層光学フィルムの製造方法は、工程(iii)で延伸を行う前に、樹脂フィルムに対して予熱処理を施す工程を含んでいてもよい。予熱温度は、好ましくは「延伸温度-40℃」以上、より好ましくは「延伸温度-30℃」以上であり、好ましくは「延伸温度+20℃」以下、より好ましくは「延伸温度+15℃」以下である。
任意の工程の他の例としては、多層光学フィルムをトリミングする工程、及び多層光学フィルムに表面処理を施す工程が挙げられる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧(23℃1気圧)大気中の条件において行った。
〔評価方法〕
(重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定方法)
重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム(東ソー社製「HLC-8320」)を用いて、ポリスチレン換算値として測定した。測定の際、カラムとしてはHタイプカラム(東ソー社製)を用い、溶媒としてはテトラヒドロフランを用いた。また、測定時の温度は、40℃であった。
(重合体の水素化率の測定方法)
重合体の水素化率は、オルトジクロロベンゼン-d4を溶媒として、145℃で、H-NMRにより測定した。
(融点、ガラス転移温度及び冷結晶化温度の測定方法)
樹脂及びその製造過程の中間体の融点、ガラス転移温度(TgA及びTgB等)、並びに樹脂(b)の冷結晶化温度TcBの測定は、以下の通り行った。
まず、樹脂等の測定対象の試料を、加熱によって融解させ、融解した試料をドライアイスで急冷した。続いて、この試料について、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温速度(昇温モード)で、試料のガラス転移温度及び冷結晶化温度を測定した。冷結晶化温度としては、昇温過程における発熱ピークのピークトップの値を採った。
(重合体のラセモ・ダイアッドの割合の測定方法)
重合体のラセモ・ダイアッドの割合の測定は以下のようにして行った。オルトジクロロベンゼン-dを溶媒として、200℃で、inverse-gated decoupling法を適用して、重合体の13C-NMR測定を行った。この13C-NMR測定の結果において、オルトジクロロベンゼン-dの127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルとを同定した。これらのシグナルの強度比に基づいて、重合体のラセモ・ダイアッドの割合を求めた。
(フィルムの厚みの測定方法)
フィルム全体の厚みは、接触式厚さ計(MITUTOYO社製 Code No.543 -390)を用いて測定した。各層の厚みは、ミクロトームを使用し、ガラス刃で断面出しを実施し、断面を透過顕微鏡で観察することにより求めた。透過顕微鏡での観察が困難である場合は、偏光顕微鏡を用い、2枚の偏光板をクロスニコル(黒配置)にして断面を観察した。
(Re、Rth、Δnの測定方法)
フィルムの面内レターデーションRe及び厚み方向のレターデーションRthは、AXOMETRICS社製「AxoScan OPMF-1」により測定した。この際、測定は、波長590nmで行った。得られたReの値と、別途測定したフィルムの厚みの値から、Δnを下記式により算出した。
Δn=Re[nm]/d[nm]
(耐溶媒性試験)
評価対象のフィルムを切り出し、長手方向(切り出し前の長尺のフィルムであった時点での長手方向に対応する方向)×幅方向(切り出し前の長尺のフィルムであった時点での幅方向に対応する方向)の寸法が5cm×2cmである試料を得た。
屈曲の軸方向(平坦な試料の屈曲によって生じる部分円筒形の形状の、円筒軸方向、以下において同じ)が試料の幅方向となり、試料の長手方向の端部が重なるよう、試料を屈曲させ、長手方向端部をクリップ(市販のダブルクリップ(binder clip))で把持し、試料を図1に示す形状に設置した。図1において、試料100は、その長手方向端部101が重なった状態でクリップ200により把持され、その結果屈曲部102が形成されている。クリップ200による把持の位置は、屈曲部102の直径が5mmとなるよう調整した。ここで屈曲部102の直径とは、矢印A1で示される長さであり、これは、試料100の長手方向端部101の延長方向Lvと直交する方向Lhにおける、屈曲部の直径である。
試料100の端部101が下側、頂部103が上側となるよう試料100を載置し、頂部103の位置にn-ヘキサンをスポイトで1滴垂らして30秒保持し、その後、クリップ200から試料100を取り外し、試料100を以下の評価基準に従って評価した。
良:試料の表面にクラックが存在しないか、存在していても厚み方向に貫通しないクラックである。
不良:試料厚み方向に貫通するクラックが存在する(試料が破断している場合を含む)。
(製膜性の評価)
評価対象のフィルムの長手方向(切り出し前の長尺のフィルムであった時点での長手方向に対応する方向)に沿って、3cmピッチで10点の厚みを接触式厚さ計(MITUTOYO社製 Code No.543 -390)を用いて測定し、最大厚みと最小厚みの差を求めた。最大厚みと最小厚みの差が3μm以下の場合、製膜性が良好であると判定される。
(結晶化の確認)
下記条件でTEM観察を行い、観察した切片の中に、球晶構造又はコンストラストの差が見出された場合、「結晶化している」と判定した。
前処理:常温ミクロトーム(ダイヤモンドナイフ)で断面から切削、試料送り50nm、切片化後Ru蒸気染色40秒、2分。
観察した切片の枚数は6枚。
TEM装置:日立HT7700。
加速電圧:100kV。
(層間密着性)
評価対象のフィルムを切り出し、長手方向(切り出し前の長尺のフィルムであった時点での長手方向に対応する方向)×幅方向(切り出し前の長尺のフィルムであった時点での幅方向に対応する方向)の寸法が150cm×50cmである試料を得た。
試料の長手方向の一方の端部から、長手方向に沿って、カッターナイフで75±1mmのスリットを入れた。スリットの位置は、試料の幅方向端部から25±1mmの範囲内とした。
計測スタンド((株)イマダ製、製品名「電動計測スタンド MX-500N-L550-E」)と、それに取り付けたフォースゲージ((株)イマダ製、製品名「ZP-5N」)により、試料の引裂試験を行った。図2に示す通り、フォースゲージ側の把持具310及び計測スタンド側の把持具320のそれぞれは、一対の把持用の平坦な板(311及び312、並びに321及び322)を備え、対向する板の内側の把持面において試料の端部を把持する形状を有するものであった。測定開始時点での計測スタンド側把持具320の上端とフォースゲージ側把持具310の下端との距離は、75mmに調整した。
スリットSにより2つに分割された試料400の端部の1つ410を、試料幅方向に平行な軸方向で上向きに屈曲させ、フォースゲージ側把持具310で把持した。試料400の分割された端部のもう1つ420を、試料幅方向に平行な軸方向で下向きに屈曲させ、計測スタンド側把持具320で把持した。挟み込んだ端部の長さは、それぞれ30mmとした。端部410及び420は、鉛直な同一平面内に位置し、これらの仮想中心線が同一線状に並ぶよう、把持具310及び320の位置を調整した。端部410の仮想中心線とは、試料を分割しない状態で上向きに屈曲して把持具310で把持した場合を仮想し、当該仮想において試料の把持された部分における、試料の長手方向に沿った、試料の幅方向の中心線である。端部420の仮想中心線とは、試料を分割しない状態で下向きに屈曲して把持具320で把持した場合を仮想し、当該仮想において試料の把持された部分における、試料の長手方向に沿った、試料の幅方向の中心線である。
把持具320を固定する一方、把持具310を、鉛直方向上側に移動速度200mm/minで上昇させ、引裂試験を行った。試料が二つの片に引き裂かれるまで引裂きを行った後、試料を把持具から取り外し目視で観察した。試料の裂け目において、層間の界面での剥離が視認されなかった場合、層間密着性ありと判定し、層間の界面での剥離が視認された場合、層間密着性なしと判定した。
(ヘイズの測定)
フィルムを切り出して、50mm×50mmの矩形の試料を得た。試料のヘイズを、JIS K7361-1997に準拠して、NDH-7000(日本電色製)を用いて測定した。
〔製造例1:樹脂(b)の製造〕
金属製の耐圧反応器を、充分に乾燥した後、窒素置換した。この金属製耐圧反応器に、シクロヘキサン154.5部、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の濃度70%シクロヘキサン溶液42.8部(ジシクロペンタジエンの量として30部)、及び1-ヘキセン1.9部を加え、53℃に加温した。
テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.014部を0.70部のトルエンに溶解し、溶液を調製した。この溶液に、濃度19%のジエチルアルミニウムエトキシド/n-ヘキサン溶液0.061部を加えて10分間攪拌して、触媒溶液を調製した。この触媒溶液を耐圧反応器に加えて、開環重合反応を開始した。その後、53℃を保ちながら4時間反応させて、ジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液を得た。得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、8,750及び28,100であり、これらから求められる分子量分布(Mw/Mn)は3.21であった。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部に、停止剤として1,2-エタンジオール0.037部を加えて、60℃に加温し、1時間攪拌して重合反応を停止させた。ここに、ハイドロタルサイト様化合物(協和化学工業社製「キョーワード(登録商標)2000」)を1部加えて、60℃に加温し、1時間攪拌した。その後、濾過助剤(昭和化学工業社製「ラヂオライト(登録商標)#1500」)を0.4部加え、PPプリーツカートリッジフィルター(ADVANTEC東洋社製「TCP-HX」)を用いて吸着剤と溶液を濾別した。
濾過後のジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部(重合体量30部)に、シクロヘキサン100部を加え、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0043部を添加して、水素圧6MPa、180℃で4時間水素化反応を行なった。これにより、結晶性重合体(b1)としての、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物を含む反応液が得られた。この反応液は、水素化物が析出してスラリー溶液となっていた。
前記の反応液に含まれる水素化物と溶液とを、遠心分離器を用いて分離し、60℃で24時間減圧乾燥して、結晶性を有するジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物28.5部を得た。この水素化物の水素化率は99%以上、ガラス転移温度Tgは93℃、融点(Tm)は266℃、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物100部に、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン;BASFジャパン社製「イルガノックス(登録商標)1010」)1.1部を混合後、内径3mmΦのダイ穴を4つ備えた二軸押出し機(製品名「TEM-37B」、東芝機械社製)に投入した。ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物及び酸化防止剤の混合物を、熱溶融押出し成形によりストランド状の成形した後、ストランドカッターにて細断して、ペレット形状の結晶性樹脂(b1)を得た。前記の二軸押出し機の運転条件は、以下のとおりであった。得られた結晶性樹脂(b1)のガラス転移温度TgB及び冷結晶化温度TcBを測定した。
・バレル設定温度=270~280℃
・ダイ設定温度=250℃
・スクリュー回転数=145rpm
その後、非晶性重合体(b2)としての樹脂(b2)(ZEONEX790R;日本ゼオン製、ガラス転移温度163℃、融点は観測されず)を準備し、重量比で結晶性樹脂(b1):非晶性樹脂(b2)=45:55となるように重量フィーダーで2軸混錬押出機(L/D=41、φ25mm)に投入し、2軸混錬によりストランド状に成形した後、ストランドカッターにて細断して、ペレット形状の結晶性樹脂(b-I)を得た。前記の2軸押出し機の運転条件は、以下のとおりであった。得られた結晶性樹脂(b-I)のガラス転移温度TgB及び冷結晶化温度TcBを測定した。結晶性樹脂(b-I)の融点は、263℃であった。
・バレル設定温度=275~280℃
・ダイ設定温度=275℃
・スクリュー回転数=200rpm
〔製造例2〕
結晶性樹脂(b1)と非晶性樹脂(b2)との割合を、結晶性樹脂(b1):非晶性樹脂(b2)=35:65に変更した他は、製造例1と同じ操作により、ペレット形状の結晶性樹脂(b-II)を得て、ガラス転移温度TgB及び冷結晶化温度TcBを測定した。結晶性樹脂(b-II)の融点は、263℃であった。
〔実施例1〕
(1-1.工程(1):非晶性樹脂(a)及び結晶性樹脂(b)からなる多層樹脂フィルムの製造)
目開き3μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを備える、ダブルフライト型単軸押出機(スクリューの直径D=50mm、スクリューの長さLとスクリューの直径Dとの比L/D=28)を用意した。この単軸押出機に、非晶性樹脂(a)(ZEONEX690R;日本ゼオン製;ガラス転移温度136℃、融点は観測されず)を導入し、溶融させて、2種3層押出し用のフィードブロックを介して単層ダイに供給した。「2種3層」とは、フィルムに含まれる層の数が3層であり、それらの層を形成する樹脂の種類が2種類であることを表す。単軸押出機への樹脂(a)の導入は、単軸押出機に装填されたホッパーを介して行った。樹脂(a)の押出機出口での温度は、280℃であった。
他方、目開き3μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを備える単軸押出機(スクリューの直径D=50mm、スクリューの長さLとスクリューの直径Dとの比L/D=30)1台を用意した。この単軸押出機に、製造例1で製造した結晶性樹脂(b-I)を導入し、溶解させて、フィードブロックを介して前記の単層ダイに供給した。樹脂(b-I)の押出機出口での温度は、280℃であった。
その後、樹脂(a)及び樹脂(b-I)を、275℃の溶融状態で単層ダイから吐出させ、樹脂(b-I)の層、樹脂(a)の層、及び、樹脂(b-I)の層の3層をこの順に備える、層状の溶融樹脂を得た。吐出された層状の溶融樹脂を、120℃に温度調整された冷却ロールにキャストし、ロール上においてエッジピニングを行い、樹脂を搬送して冷却し、長尺の多層樹脂フィルムを得た。
得られた多層樹脂フィルムは、樹脂(b-I)の層であるB層、樹脂(a)の層であるA層、及び樹脂(b-I)の層であるB層を厚み方向においてこの順に備える、2種3層のフィルムであった。多層樹脂フィルムの総厚みは、136μmであった。また、B層のそれぞれの厚みはいずれも8μmであり、A層の厚みは120μmであった。
(1-2.工程(2):加熱延伸工程)
(1-1)で得た多層樹脂フィルムを切断し、130mm×130mmの寸法の矩形のフィルムとした。矩形のフィルムの各辺は、長尺の多層樹脂フィルムの長手方向又は幅方向と平行な方向とした。
矩形のフィルムを、延伸機(エトー株式会社製)に設置し、四辺のそれぞれを、5つのクリップで把持し、フィルムを150℃で予熱した。予熱開始6分後の、フィルム温度が安定した時点から、150℃のフィルム温度を維持し、フィルムを長手方向(切り出し前の長尺のフィルムであった時点での長手方向に対応する方向)に固定端一軸延伸した。延伸倍率は3倍、延伸速度は7mm/secとした。この工程により、多層樹脂フィルムを加熱延伸し、多層光学フィルムを得た。
得られた多層光学フィルムについて、ヘイズ、Re、Rth、及び厚みdを測定し、Δnを求め、且つ、層間密着性、耐溶媒性、製膜性、及び結晶化有無を評価した。
〔実施例2〕
下記の変更点の他は、実施例1と同じ操作により、多層樹脂フィルム及び多層光学フィルムを得て評価した。
・工程(1-1)において、樹脂(b-I)に代えて、製造例2で得た樹脂(b-II)を用いた。
・延伸後の位相差が250nm付近とするべく、工程(1-1)において押出機のスクリューの回転速度を調整し、延伸前B層/A層/B層の各層の厚みを、表1に示す厚みに変更した。
〔比較例1〕
下記の変更点の他は、実施例1と同じ操作により、多層樹脂フィルム及び多層光学フィルムを得て評価した。
・工程(1-1)において、樹脂(b-I)に代えて、製造例1で使用した結晶性樹脂(b1)を、樹脂(b2)と混合することなくそのまま用いた。
・延伸後の位相差が250nm付近とするべく、工程(1-1)において押出機のスクリューの回転速度を調整し、延伸前B層/A層/B層の各層の厚みを、表1に示す厚みに変更した。
〔比較例2〕
下記の変更点の他は、実施例1と同じ操作により、多層樹脂フィルム及び多層光学フィルムを得て評価した。
・工程(1-1)において、非晶性樹脂(a)として、ZEONEX690Rに代えて、ZEONEX790R(日本ゼオン製;TgA=163℃;製造例1で使用した樹脂(b2)と同じもの)を用いた。
・延伸後の位相差が250nm付近とするべく、工程(1-1)において押出機のスクリューの回転速度を調整し、延伸前B層/A層/B層の各層の厚みを、表1に示す厚みに変更した。
・予熱及び延伸の温度を、樹脂(a)に適合させるべく、165℃に変更した。
〔比較例3〕
下記の変更点の他は、実施例1と同じ操作により、多層樹脂フィルムの代わりに、樹脂(a)の層であるA層単層のフィルム、及びそれを延伸した光学フィルムを得て評価した。
・工程(1-1)において、樹脂(b-I)をフィードブロックに供給せず、樹脂(a)のみを供給した。
・延伸後の位相差が250nm付近とするべく、工程(1-1)において押出機のスクリューの回転速度を調整し、延伸前A層の厚みを、表1に示す厚みに変更した。
実施例及び比較例の概要及び結果を表1に示す。
Figure 2023048619000002
以上の結果から明らかな通り、本願実施例の多層光学フィルムは、比較例のフィルムと対比すると、B層に起因する高い耐溶媒性を有しつつ、低ヘイズ、低い厚みムラ等の所望の物性を兼ね備えた高品質の光学フィルムとすることができる。
100:試料
101:試料長手方向端部
102:試料屈曲部
103:試料頂部
200:クリップ
310:フォースゲージ側の把持具
311:把持用の平坦な板
312:把持用の平坦な板
320:計測スタンド側の把持具
321:把持用の平坦な板
322:把持用の平坦な板
400:試料
410:試料の端部
420:試料の端部
A1:屈曲部の直径
Lh:Lvと直交する方向
Lv:試料の長手方向端部の延長方向
S:スリット

Claims (6)

  1. おもて面及びうら面の表層を構成する一対のB層と、前記一対のB層の間に位置するA層とを備える多層光学フィルムであって、
    前記A層は、融点を有さない非晶性重合体(a)を含む樹脂(a)の層であり、
    前記B層は、融点を有する結晶性重合体(b1)と融点を有さない非晶性重合体(b2)とを含む、融点を有する樹脂(b)の層であり、
    前記樹脂(a)及び前記樹脂(b)は、下記式(1)~(3)を満たし、
    TgA-TgB≦20℃ (1)
    110℃<TgB<140℃ (2)
    180℃<TcB<235℃ (3)
    式中TgAは樹脂(a)のガラス転移温度であり、TgBは樹脂(b)のガラス転移温度であり、TcBは樹脂(b)の冷結晶化温度である、
    多層光学フィルム。
  2. 前記A層及び前記B層が層間密着している、請求項1に記載の多層光学フィルム。
  3. 前記B層のそれぞれの厚みがいずれも10μm以下である、請求項1又は2に記載の多層光学フィルム。
  4. ヘイズが1%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の多層光学フィルム。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の多層光学フィルムの製造方法であって、
    前記樹脂(a)と、前記樹脂(b)とを調製する工程と、
    前記樹脂(a)及び前記樹脂(b)を成形して、多層樹脂フィルムを得る工程を含む、製造方法。
  6. 前記多層樹脂フィルムを、TgA以上の延伸温度にて延伸する工程をさらに含む、請求項5に記載の多層光学フィルムの製造方法。
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