JP2023044442A - 鉛蓄電池用セパレータおよびそれを含む鉛蓄電池 - Google Patents

鉛蓄電池用セパレータおよびそれを含む鉛蓄電池 Download PDF

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Abstract

【解決手段】鉛蓄電池用セパレータは、樹脂製の多孔質フィルムと、ガラス繊維マットとの積層体を含む。前記多孔質フィルムは、結晶質領域と非晶質領域とを含む。前記多孔質フィルムのX線回折スペクトルにおいて、A1/(A1+A2)で表される比率Rが、0.60以上である。A1は、前記結晶質領域に相当する回折ピークのうちピーク高さが最大である第1回折ピークの面積であり。A2は、前記結晶質領域に相当する回折ピークのうちピーク高さが2番目に高い第2回折ピークの面積である。【選択図】図1

Description

本発明は、鉛蓄電池用セパレータおよびそれを含む鉛蓄電池に関する。
鉛蓄電池は、車載用、産業用の他、様々な用途で使用されている。鉛蓄電池は、正極板および負極板と、これらの間に介在するセパレータと、電解液と、を含む。鉛蓄電池のセパレータには、様々な性能が要求される。セパレータとしては、一般にポリオレフィン製の多孔質フィルムが使用されている。
特許文献1は、ポリオレフィン微孔性膜を含む鉛蓄電池のためのセパレータであって、前記ポリオレフィン微孔性膜は、好ましくは超高分子量ポリエチレンであるポリエチレンと、粒子状充填剤と、処理可塑剤と、を含み、前記粒子状充填剤は重量で40%以上の量で存在し、前記ポリエチレンは、複数の伸び切り鎖結晶(シシ形成)及び複数の折り畳み鎖結晶(ケバブ形成)を含むシシケバブ形成のポリマーを含み、前記ケバブ形成の平均繰り返し又は周期は1nmから150nmであり、好ましくは120nm未満である、セパレータを提案している。
セパレータとして、多孔質フィルムとガラスマットとを併用する場合もある。例えば、特許文献2は、正極板と負極板と電解液とセパレータとを備えた鉛蓄電池において、前記セパレータは多孔質シートとガラスマットから成り、前記電解液がアルミニウムイオンを0.02mol/L以上0.2mol/L以下、リチウムイオンを0.02mol/L以上0.2mol/L以下含有することを特徴とする、鉛蓄電池を提案している。
特許文献3は、多孔性樹脂薄膜とガラスマットとを積層したセパレータを正極板と負極板との間に介在させ、これらを交互に積層した極板群を電槽に収納してなる鉛蓄電池において、(a)合成樹脂薄膜のベース部の少なくとも片面に複数条のリブ部が設けられ、(b)夫々のリブ部間にガラスマットが貼付され、(c)且つ両端のリブ部の外側にもガラスマットが貼付されること、更に、(d)前記ガラスマットが該合成樹脂薄膜のベース部に着接された際、着接面の反対側の該ガラスマット表面が、リブ部の頂面より高くなる厚さを有し、(e)該ガラスマットが前記合成樹脂薄膜に貼付されたセパレータが極板群に挿入され、鉛蓄電池の電槽内に収納された際、リブ部が正極板に当接するまで該ガラスマットが加圧圧縮され、そのスタッキング圧が10~60kPaであること、を特徴とした鉛蓄電池を提案している。
特表2019-514173号公報 特開2013-84362号公報 特開2016-139455号公報
鉛蓄電池では、充放電を繰り返すと、正極電極材料が軟化する。特許文献2または3のように、ガラス繊維マットを設けると、軟化した正極電極材料の脱落を低減するのに有利である。しかし、積層体であるセパレータでは、多孔質フィルムのみの場合に比べると抵抗が高くなるため、コールドクランキング電流(Cold Cranking Ampere:CCA)性能が低下する。多孔質フィルムの厚さを小さくすれば、CCA性能の低下を軽減できる。しかし、ガラス繊維マットの厚さはそれほど大きくないため、脱落した正極電極材料または集電体の端部などがガラス繊維マットを貫通し易い。積層体を構成する多孔質フィルムの厚さが小さいと、多孔質フィルムが破れて短絡するため、重負荷寿命試験における寿命性能が低下する。従って、高いCCA性能を確保しながら、重負荷寿命試験における優れた寿命性能を確保することは難しい。以下、重負荷寿命試験などの重負荷サイクルにおける寿命性能を、単に重負荷寿命性能と称することがある。
本開示の一側面は、鉛蓄電池用セパレータであって、
前記セパレータは、樹脂製の多孔質フィルムと、ガラス繊維マットとの積層体を含み、
前記多孔質フィルムは、結晶質領域と非晶質領域とを含み、
前記多孔質フィルムのX線回折スペクトルにおいて、A/(A+A)で表される比率Rが、0.60以上であり、
は、前記結晶質領域に相当する回折ピークのうちピーク高さが最大である第1回折ピークの面積であり、
は、前記結晶質領域に相当する回折ピークのうちピーク高さが2番目に高い第2回折ピークの面積である、鉛蓄電池用セパレータに関する。
鉛蓄電池において、高いCCA性能を確保しながら、優れた重負荷寿命性能を確保することができる。
本発明の一実施形態に係る鉛蓄電池の外観と内部構造を示す一部切り欠き斜視図である。 図1のセパレータの概略平面図である。 実施例の鉛蓄電池E7のセパレータに用いた多孔質フィルムのX線回折スペクトルである。
本発明の一側面に係る鉛蓄電池用セパレータは、樹脂製の多孔質フィルムと、ガラス繊維マットとの積層体を含む。多孔質フィルムは、結晶質領域と非晶質領域とを含む。多孔質フィルムのX線回折(X-ray diffraction:XRD)スペクトルにおいて、A/(A+A)で表される比率Rが、0.60以上である。ここで、Aは、上記の結晶質領域に相当する回折ピークのうちピーク高さが最大である回折ピーク(第1回折ピーク)の面積である。Aは、結晶質領域に相当する回折ピークのうちピーク高さが2番目に高い回折ピーク(第2回折ピーク)の面積である。
比率Rは、多孔質フィルムの結晶性の程度を示している。従来のセパレータに用いられる多孔質フィルムでは、例えば、比率Rはおおよそ0.58以下と比較的低い傾向がある。それに対し、上記側面のセパレータでは、多孔質フィルムの比率Rが0.60以上であり、従来に比べて、結晶性が高い多孔質フィルムが用いられる。セパレータを構成する多孔質フィルムの結晶性が高まることで、多孔質フィルム自体の強度(具体的には、突き刺し強度)を向上させることができる。そのため、脱落した正極電極材料または集電体の端部がガラス繊維マットを貫通して、多孔質フィルムに接触しても、多孔質フィルムを貫通したり、酸化劣化により多孔質フィルムが破れたりして、短絡が起こることを抑制することができる。これによって、正極電極材料の脱落が生じ易い条件である重負荷寿命試験における寿命性能を向上できる。多孔質フィルムの比率Rを0.60以上とすることで、多孔質フィルムの厚さを小さくしても、ある程度の強度を確保することができる。多孔質フィルムの厚さを小さくしても、高い重負荷寿命性能が得られることから、CCA性能の低下を抑制することができる。このように、高いCCA性能を確保しながら、優れた重負荷寿命性能を確保することができる。
本明細書中、重負荷寿命性能とは、定格容量(5時間率容量)を100%とするとき、1回の放電の深さが20%以上の領域(重負荷領域とも称される。)での放電と充電とのサイクルを繰り返したときの寿命性能である。このような放電と充電とのサイクルを重負荷サイクルと称することがある。
なお、多孔質フィルム自体が鉛蓄電池用のセパレータとして利用されることもある。鉛蓄電池用の多孔質フィルムセパレータは、リチウムイオン二次電池などのセパレータとは異なり、ある程度大きな厚さを有する。また、多孔質フィルムの厚さが大きいほど、結晶性を高めることが難しくなる傾向があることに加え、結晶性が大きくなると、多孔質フィルムが硬く脆くなる傾向がある。このような観点から、従来の鉛蓄電池用のセパレータに利用される多孔質フィルムでは、結晶性を制御することはなされていなかった。このような従来の常識に対し、本発明の一側面の鉛蓄電池用セパレータでは、ガラス繊維マットと積層する多孔質フィルムの比率Rを0.60以上とすることで、多孔質フィルムの抵抗を低く抑えながら、高い強度を確保することができ、ガラス繊維マットとの積層体の抵抗の増加を抑制することができる。
多孔質フィルムの厚さは、100μm以上であることが好ましい。厚さがこのような範囲である場合、より高い強度が確保し易く、より高い重負荷寿命性能を確保することができる。多孔質フィルムの厚さは、300μm以下であることが好ましい。この場合、多孔質フィルムの抵抗を低く抑え易いため、比較的高いCCA性能が得られ易い。
比率Rは、0.9以下であることが好ましい。この場合、多孔質フィルムの劣化を抑制しながらも、多孔質フィルムの柔軟性が確保し易いことに加え、製造が容易である。
多孔質フィルムは、ポリオレフィンを含むことが好ましく、少なくともエチレン単位を含むポリオレフィンを含むことがより好ましい。このような多孔質フィルムは、強度が比較的低くなる傾向があるが、比率Rの調節が比較的容易であり、比率Rを調節することでセパレータの強度を高めることができる。少なくともエチレン単位を含むポリオレフィンを多孔質フィルムが含む場合、第1回折ピークは、結晶質領域による(110)面に相当し、第2回折ピークは、結晶質領域による(200)面に相当する。
多孔質フィルムは、端部の少なくとも一部に、ガラス繊維マットで覆われていない領域を有していてもよい。このような領域では、脱落した正極電極材料が、多孔質フィルムに突き刺さったり、多孔質フィルムに接触して酸化劣化させたりすることで、短絡が生じ、重負荷寿命試験における寿命性能が低下し易い。しかし、このような場合であっても、多孔質フィルムの比率Rが高いことで、多孔質フィルム自体の強度を向上させることができるため、短絡の発生を低減することができる。
本発明は、上記の鉛蓄電池用セパレータを含む鉛蓄電池も包含する。鉛蓄電池は、極板群および電解液を含む少なくとも1つのセルを含み、極板群は、正極板と、負極板と、正極板および負極板の間に介在する上記のセパレータとを含む。ここでセパレータのガラス繊維マットは、正極板と接触している。上記のセパレータを用いることで、セパレータの抵抗を低く抑えることができ、高いCCA性能を確保することができる。多孔質フィルムの高い強度が得られることで、脱落した正極電極材料または集電体の端部による多孔質フィルムの破れが抑制され、短絡の発生が抑制されることから、優れた重負荷寿命性能を確保することができる。
鉛蓄電池は、制御弁式電池であってもよいが、液式電池(ベント型電池)が好ましい。制御弁式鉛蓄電池は、VRLA(Valve Regulated Lead-Acid Battery)と呼ばれることがある。
本明細書中、鉛蓄電池または鉛蓄電池の構成要素(極板、電槽、セパレータなど)の上下方向は、鉛蓄電池が使用される状態において、鉛蓄電池の鉛直方向における上下方向を意味する。なお、正極板および負極板の各極板は、外部端子と接続するための耳部を備えており、液式電池では、耳部は、極板の上部に上方に突出するように設けられている。
以下、本発明の実施形態に係るセパレータおよび鉛蓄電池について、図面を参照しながらより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されない。
(セパレータ)
セパレータは、樹脂製の多孔質フィルムと、ガラス繊維マットとの積層体と含む。
(多孔質フィルム)
多孔質フィルムは、多孔質フィルムの構成材料(具体的には樹脂材料)の分子が比較的規則正しく配列した(つまり、配列性が高い)結晶質領域と、配列性が低い非晶質領域とを含む。そのため、多孔質フィルムのXRDスペクトルでは、結晶質領域による回折ピークが観察されるとともに、非晶質領域による散乱光がハローとして観察される。多孔質フィルムのXRDスペクトルにおいて、A/(A+A)で表される比率Rが0.60以上であることによって、多孔質フィルムの高い強度が得られる。ここで、Aは、結晶質領域に相当する回折ピークのうちピーク高さが最大である回折ピーク(第1回折ピーク)の面積であり、Aは、結晶質領域に相当する回折ピークのうちピーク高さが2番目に高い回折ピーク(第2回折ピーク)の面積である。
例えば、エチレン単位を含むポリオレフィンを含む多孔質フィルムのXRDスペクトルでは、結晶質領域の(110)面に相当する回折ピークが、2θが20°以上22.5°以下の範囲に観察され、結晶質領域の(200)面に相当する回折ピークが、2θが23°以上24.5°以下の範囲に観察される。また、非晶質領域のハローは、2θが17°以上27°以下の範囲に観察される。結晶質領域による回折ピークのうち、(110)面に相当する回折ピークは、ピーク高さが最大であり、第1回折ピークに相当する。(200)面に相当する回折ピークは、ピーク高さが2番目に高く、第2回折ピークに相当する。
比率Rは、0.60以上であり、多孔質フィルムのより高い強度を確保する観点からは、0.65以上であってもよく、0.70以上または0.75以上であってもよい。比率Rは、0.9以下であってもよく、0.85以下または0.80以下であってもよい。比率Rがこのような範囲である場合、セパレータの柔軟性を担保し易いことに加え、製造が容易である。
比率Rは、0.60以上(または0.65以上)0.9以下、0.60以上(または0.65以上)0.85以下、0.60以上(または0.65以上)0.80以下、
0.70以上(または0.75以上)0.9以下、0.70以上(または0.75以上)0.85以下、あるいは0.70以上(または0.75以上)0.80以下であってもよい。
回折ピークの面積は、多孔質フィルムのXRDスペクトルにおいて、結晶質領域による回折ピークをフィッティングすることによって求められる。求められた第1回折ピークの面積Aおよび第2回折ピークの面積Aを用いて、上記の式から比率Rが求められる。
多孔質フィルムは、例えば、ポリマー材料(以下、ベースポリマーとも称する。)を含む。多孔質フィルムは、結晶質領域を含むため、ベースポリマーは、通常、結晶性ポリマーを含む。多孔質フィルムは、例えば、ポリオレフィンを含む。ポリオレフィンとは、少なくともオレフィン単位を含む重合体(つまり、少なくともオレフィンに由来するモノマー単位を含む重合体)である。
ベースポリマーとして、ポリオレフィンと他のベースポリマーとを併用してもよい。多孔質フィルムに含まれるベースポリマー全体に占めるポリオレフィンの比率は、例えば、50質量%以上であり、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよい。ポリオレフィンの比率は、例えば、100質量%以下である。ベースポリマーをポリオレフィンのみで構成してもよい。ポリオレフィンの比率がこのように多い場合、多孔質フィルムの強度が低くなる傾向があるが、このような場合であっても、比率Rを上記の範囲とするため、高い強度を確保することができる。
ポリオレフィンには、例えば、オレフィンの単独重合体、異なるオレフィン単位を含む共重合体、オレフィン単位および共重合性モノマー単位を含む共重合体が包含される。オレフィン単位および共重合性モノマー単位を含む共重合体は、1種または2種以上のオレフィン単位を含んでいてもよい。また、オレフィン単位および共重合性モノマー単位を含む共重合体は、1種または2種以上の共重合性モノマー単位を含んでいてもよい。共重合性モノマー単位とは、オレフィン以外で、かつオレフィンと共重合可能な重合性モノマーに由来するモノマー単位である。
ポリオレフィンとしては、例えば、少なくともC2-3オレフィンをモノマー単位として含む重合体が挙げられる。C2-3オレフィンとして、エチレンおよびプロピレンからなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、C2-3オレフィンをモノマー単位として含む共重合体(例えば、エチレン-プロピレン共重合体)がより好ましい。ポリオレフィンの中では、少なくともエチレン単位を含むポリオレフィン(ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体など)を用いることが好ましい。エチレン単位を含むポリオレフィン(ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体など)と他のポリオレフィンとを併用してもよい。
多孔質フィルムは、オイルを含むことが好ましい。多孔質フィルムがオイルを含む場合、多孔質フィルムの酸化劣化を抑制する効果が高まる。脱落した正極電極材料が接触しても、多孔質フィルムの酸化劣化が抑制されるため、破れの発生をより軽減することができる。
オイルとは、室温(20℃以上35℃以下の温度)で液状であり、水と分離する疎水性物質を言う。オイルには、天然由来のオイル、鉱物オイル、および合成オイルが包含される。オイルとしては、鉱物オイル、合成オイルなどが好ましい。オイルとしては、例えば、パラフィンオイル、シリコーンオイルが挙げられる。多孔質フィルムは、オイルを一種含んでもよく、二種以上組み合わせて含んでもよい。
多孔質フィルム中のオイルの含有率は、11質量%以上18質量%以下が好ましい。オイルの含有率がこのような範囲である場合、多孔質フィルムの酸化劣化を抑制する効果がさらに高まる。また、セパレータの抵抗を比較的低く抑えることができる。
多孔質フィルムは、シート状であってもよい。また、シート状の多孔質フィルムを、蛇腹状に折り曲げて用いてセパレータに用いてもよい。多孔質フィルムは袋状に形成してもよい。正極板または負極板のうちのいずれか一方を袋状の多孔質フィルムに収容してもよい。
多孔質フィルムは、リブを有してもよく、リブを有さなくてもよい。リブを有する多孔質フィルムは、例えば、ベース部とベース部の表面から立設されたリブとを備える。リブは、多孔質フィルムまたは各ベース部の一方の表面のみに設けてもよく、両方の表面にそれぞれ設けてもよい。なお、多孔質フィルムのベース部とは、多孔質フィルムの構成部位のうち、リブなどの突起を除く部分であり、多孔質フィルムの外形を画定するシート状の部分をいう。
多孔質フィルムの厚さは、例えば、90μm以上である。より高い強度が得られる観点からは、100μm以上が好ましい。多孔質フィルムの厚さは、例えば、300μm以下であり、250μm以下であってもよい。多孔質フィルムの抵抗を低く抑えて、より高いCCA性能が確保し易い観点からは、多孔質フィルムの厚さは200μm以下が好ましく、150μ以下であってもよい。多孔質フィルムの厚さがこのように小さくても、十分な強度が得られ、高い重負荷寿命性能を確保することができる。多孔質フィルムの厚さとは、多孔質フィルムの電極材料に対向する部分における平均厚さを意味する。多孔質フィルムが、ベース部とベース部の少なくとも一方の表面から立設されたリブとを備える場合には、多孔質フィルムの厚さとは、ベース部における平均厚さである。
多孔質フィルムの厚さは、90μm以上(または100μm以上)300μm以下、90μm以上(または100μm以上)250μm以下、90μm以上(または100μm以上)200μm以下、あるいは90μm以上(または100μm以上)150μ以下であってもよい。
多孔質フィルムがリブを有する場合、リブの高さは、50μm以上であってもよい。また、リブの高さは、1.2mm以下であってもよい。リブの高さは、ベース部の表面から突出した部分の高さ(突出高さ)である。
本発明の上記側面では、多孔質フィルムのリブは、負極板側の表面に設けてもよい。この場合、リブは、多孔質フィルムの負極電極材料に対向する部分に設けることが好ましい。負極板側にリブを設けることで、電解液が拡散し易くなる。負極板側に設けられるリブの高さは、例えば、50μm以上である。リブの高さは、例えば、400μm以下または300μm以下であってもよい。
多孔質フィルムの正極板側にリブを設ける場合には、ガラス繊維マットで覆われていない領域に設けてもよい。正極電極材料に対向する部分にリブを設ける場合には、特許文献2のように、隣接するリブ間に、ガラス繊維マットを配置してもよい。しかし、ガラス繊維マットとの積層の容易さを考慮すると、多孔質フィルムの正極板側には特にリブを設けなくてもよい。
多孔質フィルムは、端部の少なくとも一部にガラス繊維マットで覆われていない領域を有してもよい。この領域に、脱落した正極電極材料が接触すると、多孔質フィルムが酸化劣化したり、多孔質フィルムに正極電極材料が食い込んだりして、多孔質フィルムが破れ、短絡が生じて寿命となり易い。しかし、本発明の上記側面では、このような場合であっても、多孔質フィルムの強度が高まることで、多孔質フィルムの破れが抑制され、短絡の発生を抑制できる。多孔質フィルムは、おおよそ四角形であり、通常、上下端部および両方の側端部の合計4つの端部を有する。1つの端部において、多孔質フィルムのガラス繊維マットで覆われていない領域の幅(例えば、後述の図2では、w)は、例えば、1mm以上であり、2mm以上であってもよい。この領域の幅は、例えば、5mm以下であり、4.5mm以下または4mm以下であってもよい。多孔質フィルムは、側端部(好ましくは双方の側端部)にガラス繊維マットで覆われていない領域を有してもよい。袋状の多孔質フィルムとガラス繊維マットとを積層した場合、袋状に圧着した部分を含む側端部の所定の領域がガラス繊維マットより外側に露出した状態となる。
上記の領域の幅は、1mm以上(または2mm以上)5mm以下、1mm以上(または2mm以上)4.5mm以下、あるいは1mm以上(または2mm以上)4mm以下であってもよい。
多孔質フィルムは、例えば、ベースポリマーと、造孔剤と、浸透剤(界面活性剤)とを含む樹脂組成物をシート状に押出成形し、延伸処理した後、造孔剤の少なくとも一部を除去することにより得られる。少なくとも一部の造孔剤を除去することで、ベースポリマーのマトリックス中に微細孔が形成される。シート状の多孔質フィルムは、造孔剤を除去した後、必要に応じて乾燥処理される。例えば、押出成形する際のシートの冷却速度、延伸処理の際の延伸倍率、および乾燥処理の際の温度からなる群より選択される少なくとも1つを調節することによって、比率Rが調節される。例えば、押出成形する際にシートを急冷したり、延伸倍率を高くしたり、または乾燥処理の際の温度を低くしたりすると、比率Rが高くなる傾向がある。延伸処理は、二軸延伸によって行ってもよいが、通常、一軸延伸によって行われる。シート状の多孔質フィルムは、必要に応じて、蛇腹状に折り曲げたり、袋状に加工したりしてもよい。
リブを有する多孔質フィルムでは、リブは、樹脂組成物を押出成形する際にシートに形成してもよい。また、リブは、樹脂組成物をシート状に成形した後または造孔剤を除去した後に、各リブに対応する溝を有するローラでシートを押圧することにより形成してもよい。
造孔剤としては、液状造孔剤および固形造孔剤などが挙げられる。造孔剤は、少なくともオイルを含むことが好ましい。オイルを用いることで、オイルを含有する多孔質フィルムが得られ、酸化劣化を抑制する効果を高めることができる。造孔剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。オイルと他の造孔剤とを併用してもよい。液状造孔剤と、固形造孔剤とを併用してもよい。なお、室温(20℃以上35℃以下の温度)において、液状の造孔剤を液状造孔剤、固形の造孔剤を固形造孔剤と分類する。
液状造孔剤としては、上述のオイルが好ましい。固形造孔剤としては、例えば、ポリマー粉末が挙げられる。
多孔質フィルム中の造孔剤の量は、種類によっては変化することがある。多孔質フィルム中の造孔剤の量は、ベースポリマー100質量部あたり、例えば、30質量部以上である。造孔剤の量は、ベースポリマー100質量部あたり、例えば、60質量部以下である。
例えば、造孔剤としてのオイルを用いて形成されるシートから、溶剤を用いて一部のオイルを抽出除去することによって、オイルを含有する多孔質フィルムが形成される。溶剤は、例えば、オイルの種類に応じて選択される。例えば、溶剤の種類および組成、抽出条件(抽出時間、抽出温度、溶剤を供給する速度など)などを調節することによって、多孔質フィルム中のオイルの含有率が調節される。
浸透剤としての界面活性剤としては、例えば、イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれであってもよい。界面活性剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
多孔質フィルム中の浸透剤の含有率は、例えば、0.01質量%以上であり、0.1質量%以上であってもよい。多孔質フィルム中の浸透剤の含有率は、10質量%以下であってもよい。
多孔質フィルム(または多孔質フィルムの製造に供される樹脂組成物)は、無機粒子を含んでもよい。
無機粒子としては、例えば、セラミックス粒子が好ましい。セラミックス粒子を構成するセラミックスとしては、例えば、シリカ、アルミナ、およびチタニアからなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
多孔質フィルム中の無機粒子の含有率は、例えば、40質量%以上であってもよい。無機粒子の含有率は、例えば、80質量%以下であり、70質量%以下であってもよい。
(ガラス繊維マット)
ガラス繊維マットは、多孔質フィルムの正極板と対向する側の表面に積層されている。例えば、袋状の多孔質フィルムでは、袋の外側の双方の表面にガラス繊維マットを積層してもよい。例えば、極板群の端の極板が負極板である場合には、この負極板を収容する袋状の多孔質フィルムは、正極板と対向する側の表面にガラス繊維マットが積層され、正極板と対向しない側の表面は多孔質フィルムが露出した状態であってもよい。
ガラス繊維マットは、ガラス繊維で構成されたマット(または不織布)である。ガラス繊維マットは、吸収ガラスマット(AGM:Absorbed Glass Mat、または、Absorbent Glass Mat)と呼ばれる材料であってもよい。
ガラス繊維マットは、全体がガラス繊維で形成されていてもよい。ガラス繊維マットは、主成分としてガラス繊維を含んでもよい。ガラス繊維マット中のガラス繊維の含有率は、90質量%以上または95質量%以上であってもよい。ガラス繊維マット中のガラス繊維の含有率は、100質量%以下である。ガラス繊維マットは、ガラス繊維以外の成分、例えば、有機繊維、耐酸性の無機粉体、結着剤としてのポリマーなどを含んでもよいが、それらの含有率は、通常、10質量%以下または5質量%以下である。
ガラス繊維の平均繊維径は、例えば、0.1μm以上であり、0.5μm以上であってもよい。ガラス繊維の平均繊維径がこのような範囲である場合、軟化した正極電極材料の脱落を抑制する効果が高まる。ガラス繊維の平均繊維径は、例えば、30μm以下であり、10μm以下であってもよい。この場合、電池の内部抵抗が過度に増加することを抑制できる。また、ガラス繊維マットの比較的高い柔軟性を確保できるとともに、比較的多くの電解液を保持し易い。
ガラス繊維の平均繊維径は、0.1μm以上(または0.5μm以上)30μm以下、あるいは0.1μm以上(または0.5μm以上)10μm以下であってもよい。
ガラス繊維マットの面密度は、例えば、100g/m以上である。ガラス繊維マットの面密度は、250g/m以下であってもよく、200g/m以下であってもよい。
セパレータは、例えば、多孔質フィルムとガラス繊維マットとを積層することによって得られる。より具体的には、多孔質フィルムの正極板と対向する表面にガラス繊維マットを積層することによってセパレータを形成してもよい。多孔質フィルムとガラス繊維マットとは、単に重ねるだけでもよく、接着剤を用いて積層(または固定)してもよい。また、溶着(ヒートシールなど)、または機械的接着方法(ギアシールなど)などを使用して、多孔質フィルムとガラス繊維マットとを積層(または固定)してもよい。接着剤としては、例えば、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリオレフィン系接着剤などが挙げられる。セパレータの抵抗が高くならないように、接着剤の塗布量は少ない方が好ましい。例えば、接着剤は、多孔質フィルムまたはガラス繊維マットの接着させる面全体に付与するよりも、部分的に付与することが好ましい。
(多孔質フィルムおよびガラス繊維マットの分析またはサイズの計測)
(セパレータの準備)
多孔質フィルムまたはガラス繊維マットの分析またはサイズの計測には、未使用のセパレータまたは使用初期の満充電状態の鉛蓄電池から取り出したセパレータが用いられる。鉛蓄電池から取り出したセパレータは、分析または計測に先立って、洗浄および乾燥される。
鉛蓄電池から取り出したセパレータの洗浄および乾燥は、次の手順で行われる。鉛蓄電池から取り出したセパレータを純水中に1時間浸漬し、セパレータ中の硫酸を除去する。次いで浸漬していた液体からセパレータを取り出して、25℃±5℃環境下で、16時間以上静置し、乾燥させる。
本明細書中、液式の鉛蓄電池の満充電状態は、JIS D 5301:2019の定義によって定められる。より具体的には、25℃±2℃の水槽中で、鉛蓄電池を、定格容量として記載の数値の1/10の電流(A)で、15分ごとに測定した充電中の端子電圧(V)または20℃に温度換算した電解液密度が3回連続して有効数字3桁で一定値を示すまで充電した状態が満充電状態である。また、制御弁式の鉛蓄電池の場合、満充電状態とは、25℃±2℃の気槽中で、定格容量に記載の数値(単位をAhとする数値)の0.2倍の電流(A)で、2.23V/セルの定電流定電圧充電を行い、定電圧充電時の充電電流が定格容量に記載の数値(単位をAhとする数値)の0.005倍の値(A)になった時点で充電を終了した状態である。定格容量として記載の数値は、単位をAhとした数値である。定格容量として記載の数値を元に設定される電流の単位はAとする。
満充電状態の鉛蓄電池は、既化成の鉛蓄電池を満充電した鉛蓄電池である。鉛蓄電池の満充電は、化成後であれば、化成直後でもよく、化成から時間が経過した後に行ってもよい(例えば、化成後で、使用中(好ましくは使用初期)の鉛蓄電池を満充電してもよい)。
本明細書中、使用初期の電池とは、使用開始後、それほど時間が経過しておらず、ほとんど劣化していない電池である。
(XRDスペクトル)
多孔質フィルムのXRDスペクトルは、セパレータにおいて、多孔質フィルムの正極板と対向する表面に対して、垂直な方向からX線を照射することによって測定される。測定用のサンプルは、セパレータにおいて、多孔質フィルムからガラス繊維マットを剥がし、接着剤が塗布されていない領域を短冊状に加工することによって作製される。正極板と対向する表面にリブを有する多孔質フィルムでは、サンプルは、リブを含まないように加工される。XRDスペクトルの測定およびフィッティングは、以下の条件で行われる。
(測定条件)
測定装置:RINT-TTR2、リガク社製
フィッティング:FT(ステップスキャン)法
測定角度範囲:15-35°
ステップ幅:0.02°
計測速度:5°/min
XRDデータ処理:XRDパターン解析ソフト(PDXL2、リガク製)を使用。
(多孔質フィルムの厚さおよびリブの高さ)
多孔質フィルムの厚さは、セパレータの断面写真において、任意に選択した5箇所について多孔質フィルム部分の厚みを計測し、平均化することによって求められる。
リブの高さは、セパレータの断面写真において、リブの任意に選択される10箇所において計測したリブのベース部の一方の表面からの高さを平均化することにより求められる。
(多孔質フィルム中のオイル含有率)
セパレータにおいて、多孔質フィルムからガラス繊維マットを剥がす。接着剤が塗布されていない領域で、セパレータの電極材料に対向する部分を、短冊状に加工してサンプル(以下、サンプルAと称する)を作製する。多孔質フィルムがリブを有する場合には、サンプルAは、リブを含まないように加工される。
サンプルAの約0.5gを採取し、正確に秤量し、初期のサンプルの質量(m0)を求める。秤量したサンプルAを、適当な大きさのガラス製ビーカーに入れ、n-ヘキサン50mLを加える。次いで、ビーカーごと、サンプルに約30分間、超音波を付与することにより、サンプルA中に含まれるオイル分をn-ヘキサン中に溶出させる。次いで、n-ヘキサンからサンプルを取り出し、大気中、室温(20℃以上35℃以下の温度)で乾燥させた後、秤量することにより、オイル除去後のサンプルの質量(m1)を求める。そして、下記式により、オイルの含有率を算出する。10個のサンプルAについてオイルの含有率を求め、平均値を算出する。得られる平均値を多孔質フィルム中のオイルの含有率とする。
オイルの含有率(質量%)=(m0-m1)/m0×100
(多孔質フィルム中の無機粒子の含有率)
上記と同様に作製したサンプルAの一部を採取し、正確に秤量した後、白金坩堝中に入れ、ブンゼンバーナーで白煙が出なくなるまで加熱する。次に、得られるサンプルを、電気炉(酸素気流中、550℃±10℃)で、約1時間加熱して灰化し、灰化物を秤量する。サンプルAの質量に占める灰化物の質量の比率(百分率)を算出し、上記の無機粒子の含有率(質量%)とする。10個のサンプルAについて無機粒子の含有率を求め、平均値を算出する。得られる平均値を多孔質フィルム中の無機粒子の含有率とする。
(多孔質フィルム中の浸透剤の含有率)
上記と同様に作製したサンプルAの一部を採取し、正確に秤量した後、室温(20℃以上35℃以下の温度)で大気圧より低い減圧環境下で、12時間以上乾燥させる。乾燥物を白金セルに入れて、熱重量測定装置にセットし、昇温速度10K/分で、室温から800℃±1℃まで昇温する。室温から250℃±1℃まで昇温させたときの重量減少量を浸透剤の質量とし、サンプルBの質量に占める浸透剤の質量の比率(百分率)を算出し、上記の浸透剤の含有率(質量%)とする。熱重量測定装置としては、T.A.インスツルメント社製のQ5000IRが使用される。10個のサンプルAについて浸透剤の含有率を求め、平均値を算出する。得られる平均値を多孔質フィルム中の浸透剤の含有率とする。
(ガラス繊維マットの平均繊維径)
ガラス繊維の平均繊維径は、セパレータのガラス繊維マット部分から取り出した任意の100本の繊維について、その長さ方向に垂直な任意の断面の最大径を求め、平均化することによって求められる。
(ガラスマットの面密度)
セパレータの電極材料に対向する部分をカットし、接着剤が塗布されていない部分を採取し、計量するとともに、ガラス繊維マット部分の縦および横のサイズ(換言すると、カットした部分の縦および横のサイズ)を計測する。カットした部分からガラス繊維マットを剥離して多孔質フィルムの質量を測定する。カットした部分の質量から多孔質フィルムの質量を差し引いて、ガラス繊維マット部分の質量を求める。ガラス繊維マット部分の縦および横のサイズから面積を算出し、1m当たりのガラス繊維マット部分の質量(g)を面密度として求める。
(正極板)
正極板としては、ペースト式正極板が用いられる。ペースト式正極板は、正極集電体と、正極電極材料とを備える。正極電極材料は、正極集電体に保持されている。正極電極材料は、正極板から正極集電体を除いた部分である。なお、極板には、マット、ペースティングペーパなどの部材が貼り付けられていることがある。このような部材(貼付部材とも称する)は極板と一体として使用されるため、極板に含まれる。正極板が貼付部材を含む場合には、正極電極材料は、正極板から正極集電体および貼付部材を除いた部分である。
正極板に含まれる正極集電体は、鉛(Pb)または鉛合金の鋳造により形成してもよく、鉛または鉛合金シートを加工して形成してもよい。加工方法としては、例えば、エキスパンド加工または打ち抜き(パンチング)加工が挙げられる。正極集電体として格子状の集電体を用いると、正極電極材料を担持させ易いため好ましい。
正極集電体に用いる鉛合金としては、耐食性および機械的強度の点で、Pb-Ca系合金、Pb-Ca-Sn系合金が好ましい。正極集電体は、組成の異なる鉛合金層を有してもよく、合金層は1層であってもよく、複数層でもよい。
正極板に含まれる正極電極材料は、酸化還元反応により容量を発現する正極活物質(二酸化鉛もしくは硫酸鉛)を含む。正極電極材料は、必要に応じて、他の添加剤(補強材など)を含んでもよい。
補強材としては、例えば、繊維(無機繊維、有機繊維など)が挙げられる。有機繊維を構成する樹脂(または高分子)としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂など)、ポリエステル系樹脂(ポリアルキレンアリーレート(ポリエチレンテレフタレートなど)を含む)、およびセルロース類(セルロース、セルロース誘導体(セルロースエーテル、セルロースエステルなど)など)からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。セルロース類には、レーヨンも含まれる。
正極電極材料中の補強材の含有率は、例えば、0.03質量%以上である。また、正極電極材料中の補強材の含有率は、例えば、0.5質量%以下である。
未化成のペースト式正極板は、正極集電体に、正極ペーストを充填し、熟成および乾燥することにより得られる。正極ペーストは、鉛粉、アンチモン化合物、および必要に応じて他の添加剤(補強材など)に、水および硫酸を加えて混練することで調製される。
未化成の正極板を化成することにより正極板が得られる。化成は、鉛蓄電池の電槽内の硫酸を含む電解液中に、未化成の正極板を含む極板群を浸漬させた状態で、極板群を充電することにより行うことができる。ただし、化成は、鉛蓄電池または極板群の組み立て前に行ってもよい。
(負極板)
鉛蓄電池の負極板は、負極集電体と、負極電極材料とで構成されている。負極電極材料は、負極板から負極集電体を除いた部分である。なお、負極板には、上述のような貼付部材が貼り付けられている場合がある。この場合、貼付部材は、負極板に含まれる。負極板が貼付部材を含む場合には、負極電極材料は、負極板から負極集電体および貼付部材を除いた部分である。
負極集電体は、正極集電体の場合と同様にして形成できる。
負極集電体に用いる鉛合金は、Pb-Sb系合金、Pb-Ca系合金、Pb-Ca-Sn系合金のいずれであってもよい。これらの鉛もしくは鉛合金は、更に、添加元素として、Ba、Ag、Al、Bi、As、Se、Cuなどからなる群より選択された少なくとも1種を含んでもよい。負極集電体は、組成の異なる鉛合金層を有してもよく、合金層は1層であってもよく、複数層でもよい。
負極板に含まれる負極電極材料は、酸化還元反応により容量を発現する負極活物質(鉛もしくは硫酸鉛)を含んでおり、有機防縮剤、炭素質材料、硫酸バリウムなどを含んでもよい。負極電極材料は、必要に応じて、他の添加剤(補強材など)を含んでもよい。
有機防縮剤としては、リグニン、リグニンスルホン酸、合成有機防縮剤(フェノール化合物のホルムアルデヒド縮合物など)などが挙げられる。負極電極材料は、有機防縮剤を一種含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
負極電極材料中の有機防縮剤の含有率は、例えば、0.01質量%以上である。有機防縮剤の含有率は、例えば、1質量%以下である。
炭素質材料としては、カーボンブラック、黒鉛(人造黒鉛、天然黒鉛など)、ハードカーボン、ソフトカーボンなどが挙げられる。負極電極材料は、炭素質材料を一種含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
負極電極材料中の炭素質材料の含有率は、例えば、0.1質量%以上である。炭素質材料の含有率は、例えば、3質量%以下であってもよい。
負極電極材料中の硫酸バリウムの含有率は、例えば、0.1質量%以上である。硫酸バリウムの含有率は、例えば、3質量%以下である。
補強材としては、例えば、繊維(無機繊維、有機繊維(正極電極材料の補強材について記載した樹脂で構成された有機繊維など)など)が挙げられる。
負極電極材料中の補強材の含有率は、例えば、0.03質量%以上である。また、負極電極材料中の補強材の含有率は、例えば、0.5質量%以下である。
充電状態の負極活物質は、海綿状鉛であるが、未化成の負極板は、通常、鉛粉を用いて作製される。
負極板は、負極集電体に、負極ペーストを充填し、熟成および乾燥することにより未化成の負極板を作製し、その後、未化成の負極板を化成することにより形成できる。負極ペーストは、鉛粉と有機防縮剤および必要に応じて各種添加剤に、水と硫酸を加えて混練することで作製する。熟成工程では、室温より高温かつ高湿度で、未化成の負極板を熟成させることが好ましい。
化成は、鉛蓄電池の電槽内の硫酸を含む電解液中に、未化成の負極板を含む極板群を浸漬させた状態で、極板群を充電することにより行うことができる。ただし、化成は、鉛蓄電池または極板群の組み立て前に行ってもよい。化成により、海綿状鉛が生成する。
(電解液)
電解液は、硫酸を含む水溶液である。電解液は、必要に応じてゲル化させてもよい。
電解液は、さらに、Naイオン、Liイオン、Mgイオン、およびAlイオンからなる群より選択される少なくとも一種の金属イオンなどを含んでもよい。
電解液の20℃における比重は、例えば、1.10以上である。電解液の20℃における比重は、1.35以下であってもよい。なお、これらの比重は、満充電状態の鉛蓄電池の電解液についての値である。
以下、各特性の評価方法について説明する。
(1)突き刺し強度
セパレータ(多孔質フィルム)の突き刺し強度は、下記の手順で測定される。
JIS Z 1707:2019の7.5「突刺し強さ試験」に準拠して、ジグでセパレータの縁部(より具体的には、セパレータのガラス繊維マットから露出した多孔質フィルムの両方の側端部の縁部)を含む試験片を固定し、試験機の針を縁部に突き刺し、針が貫通するまでの最大力(N)を測定する。5つの試験片について同様に測定し、平均値を求め、突き刺し強度とする。試験片は、縁部を含むようにセパレータ(多孔質フィルムの上記の縁部)を縦50mm×横50mmのサイズにカットすることにより作製される。袋状の多孔質フィルムにおいて、多孔質フィルムの両方の側端部に圧着部が形成されている場合には、突き刺し強度は、縁部の圧着部以外の部分について測定される。試験機としては、(株)島津製作所製のAGS-X,10N-10kNを用いる。針としては、直径1.0mm、先端形状が半円形(半径0.5mm)の針を用い、試験速度は50±5mm/minとする。試験片を固定するためのジグは測定部の上面が直径10mm、下側直径が20mmのジグを使用する。
(2)CCA性能
JIS D 5301:2019に準拠して、次の手順で、放電開始後30秒目の端子電圧が7.2V以上となる電流値により鉛蓄電池の始動性を評価する。電流値が大きいほど始動性が高く、セパレータの抵抗が低いことを意味する。
(a)満充電が完了後、最低16時間、蓄電池を-18℃±1℃の冷却室に置く。
(b)中央にあるいずれかのセルの電解液温度が-18℃±1℃であることを確認後、CCA390Aで30秒放電する。
(c)放電開始後30秒目の端子電圧を記録する。
(3)重負荷寿命性能
重負荷寿命性能は次のようにして評価される。
JIS D 5301:2019 9.5.5 寿命試験 b)重負荷寿命試験に準拠して、重負荷試験を行う。より具体的には、まず、満充電状態の鉛蓄電池について、表1に示す放電電流で1時間放電を行い、次いで、表1に示す充電電流で5時間充電を行う。この放電と充電のサイクルを1サイクルとする。なお、放電電流および放電電流は、それぞれ、鉛蓄電池の5時間率容量に合わせて表1に示すように変化させる。以下の重負荷試験の説明は、5時間率容量が48Ahの鉛蓄電池を使用する場合の例である。試験中、鉛蓄電池は、40℃±2℃の水槽中に配置する。水槽の水面は、蓄電池の上面よりも15mm~25mm下に位置するようにする。数個の鉛蓄電池を水槽内に配置する場合には、隣接する鉛蓄電池間の距離および鉛蓄電池と隣接する水槽の内壁までの距離が、それぞれ、最低25mmとなるようにする。
Figure 2023044442000002
試験中、25サイクルごとに、放電電流20Aで、鉛蓄電池の端子電圧が10.2Vになるまで連続放電を行い、放電持続時間を記録する。次いで、充電電流5Aで、15分ごとに鉛蓄電池の端子電圧または電解液の比重(25℃換算値)が、3回連続して有効数字3桁で一定値を示すまで充電する。なお、この放電および充電も寿命回数に加算する。
上記の試験で測定した放電時間と放電電流との積から求められる容量(Ah)が定格容量48Ahの50%以下に低下し、再び上昇しないことを確認し、試験を終了する。容量が、定格容量48Ahの50%となる回数(寿命回数)を、重負荷サイクルにおける寿命性能の指標とする。容量が再び上昇しないことは、定格容量の50%に容量が低下した後、満充電状態まで充電し、再度上記と同様の放電を行い、このときの放電時間と放電電流との積から求められる容量が定格容量の50%以下であることに基づいて確認する。なお、寿命回数は、25サイクル毎の放電容量をプロットしたサイクル回数と容量とのグラフから、定格容量の50%のときのサイクル回数を近似することで求められる。
電解液の量が、鉛蓄電池の電槽における下限ライン(LL:Lower Line)に達したときには、このときのサイクル回数を減液による寿命と判断する。なお、電槽にLLがない場合には、電解液の液面が、正極ストラップ(正極棚部)の上端まで下がったときのサイクル回数を減液による寿命と判断する。
本明細書中に記載した事項は、任意に組み合わせることができる。
図1に、本発明の実施形態に係る鉛蓄電池の一例の外観を示す。
鉛蓄電池1は、極板群11と電解液(図示せず)とを収容する電槽12を具備する。電槽12内は、隔壁13により、複数のセル室14に仕切られている。各セル室14には、極板群11が1つずつ収納されている。電槽12の開口部は、負極端子16および正極端子17を具備する蓋15で閉じられる。蓋15には、セル室毎に液口栓18が設けられている。補水の際には、液口栓18を外して補水液が補給される。液口栓18は、セル室14内で発生したガスを電池外に排出する機能を有してもよい。
極板群11は、それぞれ複数枚の負極板2および正極板3を、セパレータ4を介して積層することにより構成されている。電槽12の一方の端部に位置するセル室14では、複数の負極板2を並列接続する負極棚部6が貫通接続体8に接続され、複数の正極板3を並列接続する正極棚部5が正極柱7に接続されている。正極柱7は蓋15の外部の正極端子17に接続されている。電槽12の他方の端部に位置するセル室14では、負極棚部6に負極柱9が接続され、正極棚部5に貫通接続体8が接続される。負極柱9は蓋15の外部の負極端子16と接続されている。各々の貫通接続体8は、隔壁13に設けられた貫通孔を通過して、隣接するセル室14の極板群11同士を直列に接続している。
図2は、セパレータ4の概略平面図である。セパレータ4は、袋状の多孔質フィルム4aとガラス繊維マット4bとの積層体である。袋状の多孔質フィルム4aには図1の負極板2が収容されている。袋状の多孔質フィルム4aは、図2における下端が折り目になっており、上端が開口になっている。袋状の多孔質フィルム4aの両方の側端部には、重なった多孔質フィルム4aを閉じるように圧着部20が上下方向に直線状に設けられている。そして、袋状の多孔質フィルム4aの両方の側端部には、それぞれ、ガラス繊維マット4bで覆われていない領域21が形成されている。ガラス繊維マット4bの側端は、圧着部20よりも内側に位置している。そのため、領域21の幅wは、多孔質フィルム4aの側端から圧着部20(より具体的には、圧着部20の外側の位置)までの幅wよりも大きい。
セパレータ4は、鉛蓄電池1内では、ガラス繊維マット4bが正極板3と接触するように配置される。図2のセパレータ4において、裏側が正極板3と接触する場合には、裏側にも表側に示すようなガラス繊維マット4bが設けられる。
[実施例]
以下、本発明を実施例および参考例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
《鉛蓄電池E1~E16およびR1~R12》
下記の手順で各鉛蓄電池を作製した。
(1)セパレータの作製
ポリエチレン100質量部と、シリカ粒子160質量部と、造孔剤としてのパラフィン系オイル80質量部と、2質量部の浸透剤とを含む樹脂組成物を、シート状に押出成形し、延伸処理した後、造孔剤の一部を除去することによって、片面にリブを有する微多孔膜を作製した。このとき、既述の手順で求められる多孔質フィルムの比率Rが、表2および表3に示す値となるように、押出成形されたシートの冷却速度および延伸処理の倍率を調節した。
既述の手順で求められるセパレータのオイル含有率は、11~18質量%であり、シリカ粒子の含有率は、60質量%であった。既述の手順で求められるリブの高さは0.2mmであった。既述の手順で求められる多孔質フィルムの厚さ(ベース部の厚さ)を表2および表3に示す。
次に、シート状の多孔質フィルムを内面にリブが配置されるように二つ折りにして袋を形成し、重ね合わせた両端部を圧着して、袋状の多孔質フィルム(平置きした状態のサイズ:縦117mm×横152mm)を得た圧着部は、多孔質フィルムの側端から2mmの位置より内側で、3mmの幅であった。参考例1~8(R1~R8)では、外面にリブが形成されるとともに、リブの高さを0.6mmとした以外は、上記と同様にして形成した袋状の多孔質フィルムをセパレータとして用いた。
袋状の多孔質フィルムの両方の外面に、図2に示すようにガラス繊維マット(大気圧下におけるサイズ:縦117mm×横143mm、平均繊維径:17μm、面密度:60g/m)を接着剤で貼り付けた。多孔質フィルムの横幅は、ガラス繊維マットの横幅よりも大きく、多孔質フィルムの両方の側端部には、ガラス繊維マットが重なっていない領域が4.5mmの幅で形成されていた。
なお、多孔質フィルムの比率R、オイル含有率、シリカ粒子の含有率、ベース部の厚さ、リブの高さ、ガラス繊維マットのサイズ、平均繊維径および面密度は、鉛蓄電池の作製前の多孔質フィルムまたはガラス繊維マットについて求めた値であるが、作製後の鉛蓄電池から取り出した多孔質フィルムまたはガラス繊維マットについて既述の手順で測定した値とほぼ同じである。
(2)正極板の作製
鉛酸化物、補強材(合成樹脂繊維)、水および硫酸を混合して正極ペーストを調製した。正極ペーストを、アンチモンを含まないPb-Ca-Sn系合金製のエキスパンド格子の網目部に充填し、熟成および乾燥を行うことによって、幅137mm、高さ110mm、厚さ1.6mmの未化成の正極板を得た。
(3)負極板の作製
鉛酸化物、カーボンブラック、硫酸バリウム、リグニン、補強材(合成樹脂繊維)、水および硫酸を混合して負極ペーストを調製した。負極ペーストを、アンチモンを含まないPb-Ca-Sn系合金製のエキスパンド格子の網目部に充填し、熟成および乾燥を行うことによって、幅137mm、高さ110mm、厚さ1.3mmの未化成の負極板を得た。カーボンブラック、硫酸バリウム、リグニンおよび合成樹脂繊維の使用量は、満充電状態の鉛蓄電池から取り出した負極板について各成分の含有率が、それぞれ0.3質量%、2.1質量%、0.1質量%および0.1質量%になるように調節した。
(4)鉛蓄電池の作製
未化成の負極板を、セパレータの袋状の多孔質フィルムに収容した。袋の両方の外表面に貼り付けられたガラス繊維マットが正極板と接触するように負極板と正極板とをセパレータを介して積層した。参考例1~8では、袋状の多孔質フィルムに収容した負極板と正極板とを積層した。このようにして、未化成の負極板7枚と未化成の正極板6枚とで極板群を形成した。
正極板の耳部同士および負極板の耳部同士をそれぞれキャストオンストラップ方式で正極棚部および負極棚部と溶接した。極板群をポリプロピレン製の電槽に挿入し、電解液を注液して、電槽内で化成を施して、定格電圧12Vおよび定格容量が30Ah(5時間率容量(定格容量に記載のAhの数値の1/5の電流(A)で放電するときの容量))の液式の鉛蓄電池を組み立てた。なお、電槽内では6個の極板群が直列に接続されている。
電解液としては、硫酸水溶液を用いた。化成後の電解液の20℃における比重は1.285であった。
(5)評価
鉛蓄電池E7のセパレータの多孔質フィルムについて、既述の手順で測定されたXRDスペクトルを図3に示す。図3に示されるように、ポリエチレンの結晶質領域の(110)面に相当する第1回折ピークが、2θ=21.5°~22.5°の範囲に観察され、(200)面に相当する第2回折ピークが、2θ=23°~24.5°の範囲に観察された。そして、非晶質領域によるハローが2θ=17°~27°の広い範囲にブロードに観察された。
セパレータまたは得られた鉛蓄電池を用いて、既述の手順で、セパレータの突き刺し強度、鉛蓄電池のCCA性能および重負荷寿命性能を評価した。重負荷寿命性能は、一旦満充電状態にした鉛蓄電池について、既述の手順で評価した。突き刺し強度は、鉛蓄電池R4で用いたセパレータの突き刺し強度を100としたときの比率(%)によって評価した。CCA性能は、鉛蓄電池R4の30秒目の端子電圧を100としたときの各鉛蓄電池の30秒目の端子電圧の比率(%)によって評価した。
評価結果を表2および表3に示す。E1~E16は実施例である。R1~R12は参考例である。
Figure 2023044442000003
表2に示されるように、ガラス繊維マットなしのセパレータでは、CCA性能は、セパレータの厚さに影響され、厚さが小さいほど、高いCCA性能が得られる(R1~R4)。しかし、セパレータの厚さが小さいほど、重負荷寿命性能は低下する傾向がある(R1~R4)。これは、セパレータの厚さが小さい場合には、セパレータの強度は低下するため、セパレータの破れが起こり易くなり、脱落した正極電極材料による短絡が生じることで寿命になるためと考えられる。ガラス繊維マットなしの場合、多孔質フィルムの比率Rを高めても、CCA性能に変化は見られないが、強度は向上して、重負荷寿命性能もある程度向上する(R1~R4とR5~R8との比較)。例えば、多孔質フィルムの厚さが100μmとごく薄い場合でも、重負荷寿命性能は、350サイクルから400サイクルに50サイクル向上する(R1とR5との比較)。多孔質フィルムの厚さが大きい場合でも、結果はそれほど変わらず、比率Rを高めることによる効果は25~50サイクル程度である。
多孔質フィルムをガラス繊維マットと積層すると、正極電極材料の脱落が低減されるため、重負荷寿命はある程度向上すると期待される。しかし、多孔質フィルムの比率Rが0.6未満で、厚さが100μmの場合には、ガラス繊維マットと積層しても、350サイクルから375サイクルに25サイクル向上するだけで向上効果が小さい(R1とR9との比較)。多孔質フィルムの厚さが大きい場合でも、結果はそれほど変わらず、ガラス繊維マットと積層することによる重負荷寿命性能の向上効果は、25~50サイクル程度である(R2~R4とR10~R12との比較)。一方で、多孔質フィルムの厚さが大きくなると、抵抗が大きくなるため、CCA性能は低下する傾向がある。
上記の結果を考慮すると、多孔質フィルムの比率Rを0.58から0.75に高め、ガラス繊維マットとを積層しても、重負荷寿命性能は、50~100サイクル向上する程度であると予想される。ところが実際には、E1~E4では、R1~R4に比べて、重負荷寿命性能が125~150サイクルも向上しており、500サイクル以上の高い値が得られている。しかも、E1~E4では、CCA性能の低下も低く抑えられている。多孔質フィルムの厚さは300μm以下であれば同様の傾向が見られる。優れた重負荷寿命性能が得られるとともに、CCA性能をさらに向上する観点からは、多孔質フィルムの厚さを250μm以下または200μm以下としてもよい。
Figure 2023044442000004
表3に示されるように、多孔質フィルムの比率Rが0.60以上であれば、ガラス繊維マットと積層することで、高いCCA性能を確保しながら、優れた重負荷寿命性能を確保することができる(E5~E16)。多孔質フィルムの厚さが100μmと非常に小さくても、450サイクル以上の重負荷寿命性能を得ることができる。
なお、実施例では、上述のサイズの多孔質フィルムおよび極板を用いて鉛蓄電池を作製し、評価を行ったが、多孔質フィルムおよび極板のサイズが上記と異なる場合でも、同様の結果が得られる。
本発明の上記側面に係る鉛蓄電池用セパレータは、例えば、アイドリングストップ用途(アイドリングストップシステム車用の鉛蓄電池など)、様々な車両(自動車、バイクなど)の始動用電源などに適している。また、鉛蓄電池用セパレータは、電動車両(フォークリフトなど)などの産業用蓄電装置などの電源にも好適に利用できる。なお、これらの用途は単なる例示である。本発明の上記側面に係る鉛蓄電池用セパレータおよび鉛蓄電池の用途は、これらに限定されない。アイドリングストップ(Idling Reductionとも言う。)は、ISと称されることがある。
1:鉛蓄電池
2:負極板
3:正極板
4:セパレータ
4a:多孔質フィルム
4b:ガラス繊維マット
5:正極棚部
6:負極棚部
7:正極柱
8:貫通接続体
9:負極柱
11:極板群
12:電槽
13:隔壁
14:セル室
15:蓋
16:負極端子
17:正極端子
18:液口栓
20:圧着部
21:多孔質フィルムのガラス繊維マットで覆われていない領域

Claims (7)

  1. 鉛蓄電池用セパレータであって、
    前記セパレータは、樹脂製の多孔質フィルムと、ガラス繊維マットとの積層体を含み、
    前記多孔質フィルムは、結晶質領域と非晶質領域とを含み、
    前記多孔質フィルムのX線回折スペクトルにおいて、A/(A+A)で表される比率Rが、0.60以上であり、
    は、前記結晶質領域に相当する回折ピークのうちピーク高さが最大である第1回折ピークの面積であり、
    は、前記結晶質領域に相当する回折ピークのうちピーク高さが2番目に高い第2回折ピークの面積である、鉛蓄電池用セパレータ。
  2. 前記多孔質フィルムは、100μm以上300μm以下の厚さを有する、請求項1に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
  3. 前記比率Rは、0.9以下である、請求項1または2に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
  4. 前記多孔質フィルムは、ポリオレフィンを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
  5. 前記ポリオレフィンは、少なくともエチレン単位を含み、
    前記第1回折ピークは、前記結晶質領域の(110)面に相当し、
    前記第2回折ピークは、前記結晶質領域の(200)面に相当する、請求項4に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
  6. 前記多孔質フィルムは、端部の少なくとも一部に、前記ガラス繊維マットで覆われていない領域を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
  7. 鉛蓄電池であって、
    前記鉛蓄電池は、極板群および電解液を含む少なくとも1つのセルを含み、
    前記極板群は、正極板と、負極板と、前記正極板および前記負極板の間に介在するセパレータとを含み、
    前記セパレータは、請求項1~6のいずれか1項に記載の鉛蓄電池用セパレータであり、
    前記ガラス繊維マットは、前記正極板と接触している、鉛蓄電池。
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