JP2023038873A - 遺伝子改変型ゼブラフィッシュ - Google Patents

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Abstract

Figure 2023038873000001
【課題】
trrapゲノム変異を起因とする症状(例えば、顔貌および精神遅滞)に対する有用な疾患モデルは十分には樹立されていなかった。
【解決手段】
本発明の目的は、変異型Trrapタンパク質を発現する遺伝子改変型ゼブラフィッシュであって、上記遺伝子改変型ゼブラフィッシュは、上記遺伝子改変型ゼブラフィッシュのゲノムに組み込まれた、上記変異型Trrapタンパク質をコードする核酸配列を有し、上記変異型Trrapタンパク質は、野生型Trrapタンパク質に存在するFATドメイン、PIKK-TRRAPドメイン、及びFATCドメインの機能が欠失しているTrrapタンパク質である、遺伝子改変型ゼブラフィッシュを提供することである。
【選択図】図3

Description

本発明は、遺伝子改変型ゼブラフィッシュ、特に、変異型Trrapタンパク質を発現する遺伝子改変型ゼブラフィッシュに関する。
ヒトTRRAP(transformation/transcription domain-associated protein)はHAT (histone acetyl-transferase)複合体の構成因子であり、標的遺伝子群の転写制御やDNA複製を調節する機能を有すると考えられている。最近、ヒトTRRAP遺伝子に様々なゲノム変異が見つかってきており、その罹患者は特徴的顔貌および精神遅滞などの類似した症状を示すことが報告されている(非特許文献1)。非特許文献1には、欧米でのヒト遺伝子変異の解析から17名の罹患者でヒトTRRAP遺伝子にミスセンス変異を同定し、罹患者には特徴的顔貌と精神遅滞の病状が認められることを報告した。しかしながら、TRRAP遺伝子に見られるミスセンス変異と特徴的顔貌および精神遅滞との関連性は不明である。
特許文献1には、心不全関連遺伝子が示されており、該遺伝子や該遺伝子にコードされるタンパク質を利用する心不全の診断や制御の手段としてのゼブラフィッシュ心不全モデルが開示されている。
非特許文献2には、ゼブラフィッシュのtrrap遺伝子に対するノックダウン胚とノックアウト胚で音に対する応答が抑制されていることおよび側線(聴覚を受容する器官と機能的に似た魚類独特の器官)の発生に異常を示すことを見出しており、ヒトTRRAP遺伝子の機能として聴覚の調節を述べている。
非特許文献3ではマウスTrrap遺伝子を中枢神経においてのみ破壊したコンディショナル・ノックアウトマウスの表現型解析を行い、神経細胞の分化が停止することが報告された。
特開2009-242388号
The American Journal of Human Genetics 104, 530-541, March 7, 2019 Clinical Genetics. 2019;1-9. Cell Stem Cell 14, 632-643, May 1, 2014
ヒト疾患の病態解明および治療薬の開発には疾患モデル生物の樹立が必要不可欠であるが、TRRAPゲノム変異を起因とする症状(例えば、顔貌および精神遅滞)に対する有用な疾患モデルは十分には樹立されていなかった。また、ヒトをモデルとした病態解析ができないため、ゼブラフィッシュtrrap遺伝子に変異を導入した疾患モデル生物の作出とその病態解析が必要であった。
本発明者は、鋭意研究により、ヒトTRRAP遺伝子疾患の病態と酷似している、ゼブラフィッシュtrrap遺伝子に変異を導入したゼブラフィッシュの作製に成功した。
本発明の目的は、
変異型Trrapタンパク質を発現する遺伝子改変型ゼブラフィッシュであって、
上記遺伝子改変型ゼブラフィッシュは、上記遺伝子改変型ゼブラフィッシュのゲノムに組み込まれた、上記変異型Trrapタンパク質をコードする核酸配列を有し、
上記変異型Trrapタンパク質は、野生型Trrapタンパク質に存在するFATドメイン、PIKK-TRRAPドメイン、及びFATCドメインの機能が欠失しているTrrapタンパク質である、遺伝子改変型ゼブラフィッシュ
を提供することである。
本発明にかかる遺伝子改変型ゼブラフィッシュは、ヒト疾患モデルになりうるものであり、上記のヒト疾患の病態解明や変異体の表現型の抑制を指標とした低分子化合物のin vivoスクリーニングによる治療薬の開発に用いることができる。
また、ヒトTRRAP遺伝子疾患の症状としては、特徴的顔貌および精神遅滞(非特許文献1)および聴覚の異常(非特許文献2)しか知られていない。trrap遺伝子改変型ゼブラフィッシュの発生過程における形態形成における異常を解析することで、ヒトTRRAP遺伝子疾患に関連する新たな病態や症状を見出す可能性がある。
上記変異型Trrapタンパク質は、
上記FATドメインをコードするアミノ酸配列の一部又は全て、
上記PIKK-TRRAPドメインをコードするアミノ酸配列の一部又は全て、
及び
上記FATCドメインをコードするアミノ酸配列をコードするアミノ酸配列の一部又は全て
が欠失していてもよい。
上記FATドメインは、配列番号1で示されるアミノ酸配列又はその等価アミノ酸配列を有していてもよい。
上記PIKK-TRRAPドメインは、配列番号2で示されるアミノ酸配列又はその等価アミノ酸配列を有していてもよい。
上記FATCドメインは、配列番号3で示されるアミノ酸配列又はその等価アミノ酸配列を有していてもよい。
上記変異型Trrapタンパク質をコードする核酸配列は、上記野生型Trrapタンパク質における1番目からn番目(1002≦n≦2826)までのアミノ酸配列をコードする核酸配列であってもよい。
上記変異型Trrapタンパク質をコードする核酸配列は、配列番号4からなるアミノ酸配列をコードする核酸配列であってもよい。
上記遺伝子改変型ゼブラフィッシュは、上記野生型Trrapタンパク質は発現していなくてもよい。
また、本発明の別の目的は、trrap遺伝子改変型ゼブラフィッシュをヒトTRRAP遺伝子および変異型ヒトTRRAP遺伝子の活性評価系として活用が可能である。ヘテロ型trrap遺伝子改変型ゼブラフィッシュの交配によりTrrap分子の機能を欠損している受精卵を入手できる。この受精卵にヒトTRRAP遺伝子疾患で同定された変異型TRRAP遺伝子に対するmRNAを注入することで、trrapゼブラフィッシュ変異体(-/-)の胚発生で認められる小眼球、下顎の低形成及び歯の形成不全の機能回復を指標としたヒトTRRAP遺伝子産物の機能の評価が可能である。
本発明の別の目的は、
配列番号5からなる塩基配列、
配列番号5からなる塩基配列と95%以上の配列相同性を有する塩基配列と、
配列番号5からなる塩基配列に1または数塩基が欠失、置換、付加されている塩基配列、
又は、
配列番号5からなる塩基配列と相補的な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列、
を有する、上記遺伝子改変型ゼブラフィッシュを作成するための第一核酸分子
を提供することである。
本発明の別の目的は、
配列番号6からなる塩基配列、
配列番号6からなる塩基配列と95%以上の配列相同性を有する塩基配列、
配列番号6からなる塩基配列に1または数塩基が欠失、置換、付加されている塩基配列、
又は、
配列番号6からなる塩基配列と相補的な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列、
を有する、上記遺伝子改変型ゼブラフィッシュを作成するための第二核酸分子
を提供することである。
上記第一核酸分子及び上記第二核酸分子を用いることによって、上記遺伝子改変型ゼブラフィッシュを作成することができる。
本発明の別の目的は、
上記第一核酸分子と、
上記第二核酸分子と、
を有する、上記遺伝子改変型ゼブラフィッシュを作成するためのキット
を提供することである。
上記キットを用いることによって、上記遺伝子改変型ゼブラフィッシュを作成することができる。
本発明の別の目的は、
Trrapタンパク質における変異による疾患を予防及び/又は治療する候補物質のスクリーニング方法であって、
上記方法は、
上記遺伝子改変型ゼブラフィッシュに被検試料を投与する投与工程と、
上記遺伝子改変型ゼブラフィッシュにおける表現型を指標として、上記被検試料が上記疾患を予防及び/又は治療する候補物質であるか否かを評価する評価工程と、
を含む、スクリーニング方法
を提供することである。
上記スクリーニング方法を用いることによって、Trrapタンパク質における変異による疾患を予防及び/又は治療する候補物質をスクリーニングすることができる。
上記表現型は、小眼球、下顎の低形成及び歯の形成不全からなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。
図1は、野生型Trrapタンパク質(Trrap-WT)の分子構造を示している。野生型Trrapタンパク質は3841アミノ酸からなる。 図2は、ゼブラフィッシュの胚発生におけるtrrap遺伝子の発現を示している。trrap mRNAのゼブラフィッシュ胚での発現をジゴキシゲニン(DIG)標識のアンチセンスtrrap RNAの局在を紫色のシグナルで可視化している。センスtrrap RNAは、対照実験で紫色のシグナルは認められない。スケールバーは200μmである。2 cell stage(2細胞期): 受精後0.75時間、shield stage(シールド期): 受精後6時間、bud stage(バッド期): 受精後10時間、15 somite stage(15体節期): 受精後12時間、20 somite stage(20体節期): 受精後19時間、24 hpf stage(15時間胚): 受精後24時間。 図3は、野生型Trrapタンパク質(Trrap-WT)と変異型Trrapタンパク質(Trrap-Mut)の分子構造を示している。野生型Trrapタンパク質は3841アミノ酸からなるが、変異型Trrapタンパク質は、1002アミノ酸からなる。 図4は、変異型Trrapタンパク質をコードする塩基配列における欠失した塩基(-: 5塩基欠失)と終止コドン(TAG)の位置を示している。 図5は、野生型(+/+)とtrrap変異体(-/-)の眼の形態と直径の比較およびトルイジンブルーで染色した眼の組織を示している。スケールバーは200μm(パネルa及びb)及び50μm(パネルd及びe)である。エラーバーは標準偏差を示す。アスタリスクは野生型と変異型との間の統計的有意性を示す。****P<0.0001。RGL:網膜神経節細胞層、IPL:内叢状層、INL:内核層、OPL:外叢状層、ONL:外核層。 図6は、軟骨の形成をアルシアンブルーで染色した野生型(+/+)及びtrrap変異体(-/-)を示す写真及び腹側咽頭弓の前後方向の距離に関するグラフである。スケールバーは200μmである。アスタリスクは、野生型と変異型との間の統計的有意性を示す。****P<0.0001。eth:篩骨板、m:メッケル軟骨,pq:口蓋方形軟骨、ch:舌骨角軟骨、h:舌顎骨、cb:角鰓骨。 図7は、硬骨の形成をアリザリンレッドで染色した野生型(+/+)及びtrrap変異体(-/-)を示す写真である。スケールバーは200μmである。ot:耳石、vb:椎骨、n:脊索、cb5:角鰓骨5、c:擬鎖骨、p:副蝶形骨、br:鰓条骨、op:主鰓蓋骨。 図8は、野生型(+/+)、ヘテロ型(+/-)及びtrrap変異体(-/-)における咽頭弓の遺伝子の発現を示す写真である。dlx2a, dlx3およびnkx2.3遺伝子は、72時間胚において咽頭弓に発現が認められる。 スケールバーは200μmである。 図9は、野生型(+/+)、ヘテロ型(+/-)及びtrrap変異体(-/-)における歯の遺伝子の発現を示す写真である。dlx2bおよびpitx2遺伝子は、72時間胚において奥歯に発現が認められる。スケールバーは200μmである。 図10は、野生型(+/+)及びtrrap変異体(-/-)における神経系遺伝子の遺伝子の発現を示す写真である。54時間胚において、elavl3遺伝子は神経細胞に、gfap遺伝子は放射状グリア細胞と神経幹細胞に、olig2遺伝子は第一次運動ニューロンとオリゴデンドロサイトに、gli2遺伝子は中枢神経系と咽頭弓に発現が認められる。スケールバーは200μmである。
定義
便宜上、本願で使用される特定の用語は、ここに集めている。別途規定されない限り、本願で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。文脈で別途明記されない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の言及を含む。
本発明で示す数値範囲及びパラメーターは、近似値であるが、特定の実施例に示されている数値は可能な限り正確に記載している。しかしながら、いずれの数値も本質的に、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含んでいる。また、本明細書で使用する「約」という用語は、一般に、所与の値又は範囲の10%、5%、1%又は0.5%以内を意味する。或いは、用語「約」は、当業者が考慮する場合、許容可能な標準誤差内にあることを意味する。
なお、本明細書において同一性・相同性を示す値は、BLASTなどの公知のプログラムを利用することにより算出することができる。配列番号に示される塩基配列と配列相同性を有する塩基配列は、95%以上の配列相同性を有していればよく、例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、99.8%以上であっても良い。
配列番号に示されるアミノ酸配列と配列相同性を有するアミノ酸配列は、95%以上の配列相同性を有していればよく、例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、99.8%以上であっても良い。
本明細書において、「1または数塩基が欠失、置換、付加されている塩基配列」における「数塩基」は、例えば、2~10塩基、2~9塩基、2~8塩基、2~7塩基、2~6塩基、2~5塩基、2~4塩基、2~3塩基、2塩基である。欠失、置換、付加した塩基の数は、一般的に少ないほど好ましい。塩基の欠失、置換、付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。なお、塩基の欠失、置換、付加については、公知の技術を用いることができる。
本明細書において、「ストリンジェントな条件」とは、例えば以下の(1)(2)などが挙げられる。
(1)イオン強度が低く洗浄温度が高い状態として、たとえば0.015MのNaCl/0.0015Mのクエン酸ナトリウム(チトラート)/0.1%SDSで温度50℃が挙げられる。あるいは
(2)ハイブリッド形成中にホルムアミド等の変性剤を使用して、たとえば、50%(vol/vol)ホルムアミドに、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%polyinylpyrrolidone/50mMリン酸ナトリウムバッファpH6.5、750mMNaCl、75mMクエン酸ナトリウムで温度42℃とすることが挙げられる。別の例としては、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl,0.075Mクエン酸ナトリウム),5mM EDTA, 0.1% Tween-20, 1mg/ml torula RNA, 1μg/ml heparin,温度65度で培養する。胚を50%ホルムアミド、2×SSC、0.1% Tween20で30分間、2回洗浄する。次に、2×SSC、0.1% Tween20で15分間、2回洗浄する。最後に0.2×SSC、0.1% Tween20で30分間、2回洗浄する。また、当業者であれば、クリアで検出可能なハイブリダイゼーションシグナルを得るべく、ストリンジェントな条件を適宜変更できることは、明らかである。
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、例示であって、本発明の範囲は、以下の実施形態で示すものに限定されない。なお、同様な内容については繰り返しの煩雑をさけるために、摘示説明を省略する。
遺伝子改変型ゼブラフィッシュ
本実施形態にかかる遺伝子改変型ゼブラフィッシュは、変異型Trrapタンパク質を発現する。変異型Trrapタンパク質は、trrap遺伝子がコードする野生型Trrapタンパク質に存在するFAT (FRAP, ATM, TRRAP)ドメイン、PIKK-TRRAPドメイン(TRRAPの偽キナーゼ(pseudokinase)ドメイン)、及びFATC(FRAP, ATM, TRRAP C末端)ドメインの機能が欠失しているTrrapタンパク質である。遺伝子改変型ゼブラフィッシュは、遺伝子改変型ゼブラフィッシュのゲノムに組み込まれた、変異型Trrapタンパク質をコードする核酸配列を有する。
図1は、野生型Trrapタンパク質(Trrap-WT)の分子構造を示している。Trrap-WTは、3841アミノ酸からなる。Trrap-WTは、FATドメイン、PIKK-TRRAPドメイン、及びFATCドメインを有する。変異型Trrapタンパク質は、これらのドメインの機能が欠失している。あるタンパク質におけるドメインの機能は、そのドメインを構成するアミノ酸の欠失、置換、付加又はこれらの組み合わせにより欠失させることができる。
変異型Trrapタンパク質は、(1)FATドメインをコードするアミノ酸配列の一部又は全てが欠失していてもよい。変異型Trrapタンパク質は、(2)PIKK-TRRAPドメインをコードするアミノ酸配列の一部又は全てが欠失していてもよい。変異型Trrapタンパク質は、(3)FATCドメインをコードするアミノ酸配列をコードするアミノ酸配列の一部又は全てが欠失していてもよい。
FATドメインは、配列番号1で示されるアミノ酸配列又はその等価アミノ酸配列を有していてもよい。PIKK-TRRAPドメインは、配列番号2で示されるアミノ酸配列又はその等価アミノ酸配列を有していてもよい。FATCドメインは、配列番号3で示されるアミノ酸配列又はその等価アミノ酸配列を有していてもよい。「等価アミノ酸配列」は、ドメインとしての機能を有し且つ配列番号に示されるアミノ酸配列と配列相同性を有するアミノ酸配列を意味する。
変異型Trrapタンパク質をコードする核酸配列は、野生型Trrapタンパク質における1番目からn番目(1002≦n≦2826)までのアミノ酸配列をコードする核酸配列であってもよい。
変異型Trrapタンパク質をコードする核酸配列は、配列番号4からなるアミノ酸配列又はその等価アミノ酸配列をコードする核酸配列であってもよい。
遺伝子改変型ゼブラフィッシュにおけるTrrapタンパク質をコードする遺伝子の遺伝子型は、例えば、変異型Trrapタンパク質をコードする遺伝子のホモ接合型(ホモ型)であってもよく、変異型Trrapタンパク質をコードする遺伝子と野生型Trrapタンパク質をコードする遺伝子とのヘテロ接合型(ヘテロ型)であってもよい。
ある実施形態において、遺伝子改変型ゼブラフィッシュは、ホモ型ゼブラフィッシュ(すなわち、変異型Trrapタンパク質をコードする遺伝子のホモ接合型)である。ホモ型ゼブラフィッシュは、ヒト疾患の病態解明や変異体の表現型の抑制を指標とした低分子化合物のin vivoスクリーニングによる治療薬の開発に用いることができる。本明細書において、ホモ型ゼブラフィッシュは、変異型trrapゼブラフィッシュとも称する。
別の実施形態において、遺伝子改変型ゼブラフィッシュは、ヘテロ型ゼブラフィッシュ(すなわち、変異型Trrapタンパク質をコードする遺伝子と野生型Trrapタンパク質をコードする遺伝子とのヘテロ接合型)である。ヘテロ型ゼブラフィッシュは、交配によりホモ型ゼブラフィッシュを作成することができる。
「ヘテロ型」は、必ず野生型のアレル(染色体)を持っているため、変異型Trrapタンパク質だけでなく、その正常な染色体から正常なTrrapタンパク質が産生される。したがって、ヘテロ型ゼブラフィッシュは、野生型ゼブラフィッシュと同じ正常な表現型となる。
更に別の本実施形態において、遺伝子改変型ゼブラフィッシュは、ホモ型ゼブラフィッシュ及びヘテロ型ゼブラフィッシュである。
ある実施形態において、遺伝子改変型ゼブラフィッシュは、野生型Trrapタンパク質は発現しない。
遺伝子改変型ゼブラフィッシュを作製するための核酸分子
本実施形態にかかる遺伝子改変型ゼブラフィッシュを作成するための第一核酸分子は、配列番号5からなる塩基配列、配列番号5からなる塩基配列と95%以上の配列相同性を有する塩基配列と、配列番号5からなる塩基配列に1または数塩基が欠失、置換、付加されている塩基配列、又は配列番号5からなる塩基配列と相補的な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列、を有する。
本実施形態にかかる遺伝子改変型ゼブラフィッシュを作製するための第二核酸分子は、配列番号6からなる塩基配列、配列番号6からなる塩基配列と95%以上の配列相同性を有する塩基配列、配列番号6からなる塩基配列に1または数塩基が欠失、置換、付加されている塩基配列、又は配列番号6からなる塩基配列と相補的な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列、を有する。
遺伝子改変型ゼブラフィッシュを作製するためのキット
本実施形態にかかる遺伝子改変型ゼブラフィッシュを作製するためのキットは、第一核酸分子と、第二核酸分子と、を有する。
遺伝子改変型ゼブラフィッシュの製造方法
ホモ型ゼブラフィッシュの製造方法は、変異型Trrapタンパク質をコードする核酸配列を有するヘテロ型ゼブラフィッシュ同士を交配させる交配工程を含む。本製造方法は、ホモ型ゼブラフィッシュの受精卵を回収する回収工程を更に含んでいてもよい。
ヘテロ型ゼブラフィッシュの製造方法は、遺伝子工学的技術に基づいて、1細胞期ゼブラフィッシュ胚における野生型Trrapタンパク質をコードする核酸配列を、変異型Trrapタンパク質をコードする核酸配列に改変する改変工程が含まれる。遺伝子工学的技術は、ZFN、TALEN、CRISPR/Cas9システムなどのゲノム編集技術が含まれる。CRISPR/Cas9システムは、CRISPR RNA(crRNA)、トランス活性化crRNA(tracrRNA)、リコンビナントCas9タンパク質が用いられる。本実施形態において、CRISPR RNA(crRNA)は、第一核酸分子及び第二核酸分子であってもよい。
ヘテロ型ゼブラフィッシュの製造方法は、変異型Trrapタンパク質をコードする核酸配列を有するヘテロ型ゼブラフィッシュの胚を取得する取得工程を更に含んでいてもよい。
Trrapタンパク質における変異による疾患を予防及び/又は治療する候補物質のスクリーニング方法
本実施形態にかかるスクリーニング方法は、Trrapタンパク質における変異による疾患を予防及び/又は治療する候補物質をスクリーニングする方法である。本スクリーニング方法は、遺伝子改変型ゼブラフィッシュに被検試料を投与する投与工程と、遺伝子改変型ゼブラフィッシュにおける表現型を指標として、被検試料が疾患を予防及び/又は治療する候補物質であるか否かを評価する評価工程と、を含む。
被検試料は、ゼブラフィッシュの飼育水に溶解可能な水溶性の物質が好ましく、水溶性低分子有機化合物がより好ましい。
被検試料の投与方法としては、例えば、飼育水に添加する方法、餌に混ぜる方法などが挙げられる。1種の被検試料を用いてもよく、2種以上の被検試料を併用して用いてもよい。
被検試料の投与期間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する試験例に示すように、変異型Trrapタンパク質による表現型が観察可能となるゼブラフィッシュの2日齢から10日齢(孵化後8日の間)の飼育期間に投与することが好ましい。
表現型は、小眼球、下顎の低形成及び歯の形成不全からなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。
疾患は、小眼球、下顎の低形成及び歯の形成不全からなる群より選択される少なくとも1つに関連する疾患であってもよい。
被検試料の投与量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
被験試料は、被験試料を投与することによって、変異型Trrapタンパク質による表現型が抑制される(言い換えれば、野生型Trrapタンパク質による表現型に近づく又はと同じになる)場合に候補物質となり得ると判断してもよい。
ホールマウントIn Situハイブリダイゼーション(WISH)
trrap遺伝子の発現をホールマウントIn Situハイブリダイゼーション(WISH)で調べた。胚に発現する標的遺伝子のmRNAは、ジゴキシゲニン(DIG)標識のアンチセンスRNAプローブ(配列番号12)で培養し、次に、結合しなかったプローブを洗浄した後に、アルカリホスファターゼを結合した抗DIG抗体と共に培養した。標的遺伝子のmRNAと結合するアンチセンスtrrap DIGプローブの発現は、BM Purple(Roche社)を基質として培養した。0.1% Tween 20および0.2% BSAを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBST)で3回洗浄した後、胚を4%パラホルムアルデヒドと培養し酵素反応を停止した。
結果を図2に示す。パネルaは、2細胞期の写真、パネルbはシールド期の写真、パネルcはバッド期の写真、パネルdは15体節期の写真、パネルeは20体節期の写真を示す。パネルf及びgは、受精後24時間胚の写真を示す。写真はすべて側方から見たものである。パネルbにおいて背部が右であり、パネルcからgにおいて前部が左である。パネルaからfにおいてアンチセンスのtrrap DIGプローブを用いた。パネルgにおいてセンスのtrrap DIGプローブを用いた。2 cell stage(2細胞期): 受精後0.75時間、shield stage (シールド期): 受精後6時間、bud stage (バッド期): 受精後10時間、15 somite stage(15体節期): 受精後12時間、20 somite stage(20体節期): 受精後19時間、24 hpf stage(24時間胚): 受精後24時間。
trrap遺伝子は、2細胞期において母性遺伝子として供給されており、シールド期から20体節期まで胚体全体で発現していた(図1のパネルaからe)。受精後24時間(24hpf)の時点で頭部にtrrapの発現が強く検出されたが、センスのtrrap DIG RNAプローブをインキュベートした胚ではそのようなシグナルは検出されなかった(図1のパネルf及びg)。このことから、trrap遺伝子は頭部が形成される時期に頭部に発現が強く誘導されることが明らかになった。
trrap遺伝子座のゲノム編集
trrap遺伝子の機能を調べるために、ゼブラフィッシュのtrrap遺伝子をCRISPR/Cas9ゲノム編集技術で破壊し、trrap遺伝子改変型ゼブラフィッシュを樹立した。
ゼブラフィッシュのtrrap遺伝子を破壊するために、CRISPR RNA(crRNA)、トランス活性化crRNA(tracrRNA)及びリコンビナントCas9タンパク質を用いたready-to-use CRISPR/Cas9システムを使用した。crRNA(trrap-crRNA1;配列番号5、trrap-crRNA2;配列番号6)、tracrRNA(配列番号7)及びリコンビナントCas9タンパク質は、Integrated Device Technology, Inc.(IDT)から入手した。
Figure 2023038873000002
Figure 2023038873000003
trrap-crRNA1(25 pg)、trrap-crRNA2(25 pg)、tracrRNA(100 pg)を、リコンビナントCas9タンパク質(1 ng)とともに1細胞期のゼブラフィッシュ受精卵に注入した。
ゼブラフィッシュの維持管理と倫理声明
ヘテロ接合型のtrrap変異型ゼブラフィッシュ(成魚)を、逆浸透膜システムによる精製水に人工海水を添加し一定の塩濃度となる管理水域施設で以下の条件で飼育した。14/10時間の明暗の光周期、28.5℃(±1℃)、pH7.0(±1)、導電率450mS/cm。
ホモ接合型のtrrap変異型ゼブラフィッシュの胚は、ヘテロ接合型のtrrap変異型ゼブラフィッシュ(成魚)を交配して得た。回収した胚をE3水で洗浄し、光学顕微鏡(オリンパスSZ61)で受精胚を選別した。
すべての動物実験は、機関および国のガイドラインと規制に従って行われた。本研究は,山梨大学のInstitutional Animal Care and Use Committee(承認識別番号:A30-25)により承認された。
trrap変異型ゼブラフィッシュの遺伝子型決定
ゼブラフィッシュ胚を1.5mlチューブに移し108μlの50mM NaOHを加え98℃10分間で培養し、その後、上記溶液に12μlの1M Tris-HCl(pH 8.0)を加えゲノム抽出液とした。目的のゲノム断片は、ゲノム抽出液(1μl)を表3に示す遺伝子座特異的プライマー、dNTP (deoxynucleotide) mixtureとPrimeTaq(Primetech社)を用いてPCR法を行い増幅した。
Figure 2023038873000004
PCRの条件は以下の通りである。98℃×10秒、55℃×30秒及び72℃×30秒を40サイクル。ヘテロ二本鎖移動度分析(HMA)のために、得られたPCRアンプリコンを12.5%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動した(不図示)。これによって、変異の導入を確認した。
ヘテロ二重鎖移動度分析は、以下の手順に従って行った。下記のPCR反応を行ったサンプルを12.5%ポリアクリルアミドゲル(12.5% acrylamide/bis solution、1×tris glycine buffer、10% APS、1% TEMED)にて電気泳動(10mA、100分間/1枚)した。
<PCR反応液>
・ 10×buffer 1μL
・ 10mM dNTP mixture 0.8μL
・ trrap-HMA-F(10μM) 0.2μL
・ trrap-HMA-R(10μM) 0.2μL
・ ゲノムDNA 1μL
・ Prime Taq 0.05μL
・ DDW 6.75μL
合計 10μL
<PCR反応条件>
94℃、2分間の後、以下のサイクルを40回繰り返した。
98℃、10秒間→55℃、30秒間→72℃、30秒間
また、ゲノムDNAを抽出後、上記のPCR反応条件で標的部位を増幅させた。得られたPCR断片をpGEM-T Easyベクター(Promega社)にサブクローニングし、ゲノム配列を配列分析により決定した。
図3は、野生型Trrapタンパク質(Trrap-WT)と変異型Trrapタンパク質(Trrap-Mut)の分子構造を示している。変異型Trrapタンパク質は、野生型Trrapタンパク質(Trrap-WT)の1002番目までのアミノ酸配列からなる。
図4は、変異型Trrapタンパク質をコードする塩基配列における終止コドン(TAG)の位置を示している。「1002」が示す塩基配列は、野生型Trrapタンパク質(Trrap-WT)の1002番目のアミノ酸をコードする塩基配列(コドン)を示している。
変異型Trrapタンパク質は、FAT(FRAP, ATM, TRRAP)、PIKK-TRRAP(TRRAPのシュードキナーゼドメイン)、FATC(FRAP, ATM, TRRAP C-terminal)ドメインの機能を欠いているため、機能的に破綻していることがわかった。
変異型trrapゼブラフィッシュの頭部の形態異常
変異型trrapゼブラフィッシュの頭部の形態学的異常を調べた(図5)。アスタリスクは野生型と変異型(ホモ型)の間の統計的有意性を示す。受精後3日齢(3dpf)のホモ型ゼブラフィッシュ(trrap-/-:n=8)の眼球の直径は、野生型ゼブラフィッシュ(trrap+/+:n=2)及びヘテロ型ゼブラフィッシュ(trrap+/-:n=6)に比べてわずかに減少していることが確認された(図5のパネルaからc)。
トルイジンブルー染色を用いた変異型trrapゼブラフィッシュの組織学的解析を行った(図5)。野生型ゼブラフィッシュ(trrap+/+:n=2、図5のパネルd)及びヘテロ型ゼブラフィッシュ(trrap+/-:n=6、不図示)、ホモ型ゼブラフィッシュ(trrap-/-:n=8、図5のパネルe)ともに、3つの核層(網膜神経節細胞層、内核層、外核層)と2つの叢状層(内叢状層、外叢状層)からなる網膜の積層が正常に形成されていることが確認された。
アルシアンブルー染色
アルシアンブルーを用いて硫酸化およびカルボキシル化した酸性ムコ多糖を染色し、咽頭弓の形態を調べた。
5日齢(5dpf)の固定胚を4%パラホルムアルデヒドで一晩培養した。上記胚をPBSTで3回洗浄した後、漂白バッファー(1% H2O2および1% KOH)で30分間インキュベートした。アルシアンブルー(0.1%)を含む30%酢酸及び70%エタノールの混合液(酸性アルコール緩衝液)において胚を室温で一晩培養した。胚を酸性アルコール緩衝液で3回洗浄した後、トリプシン(0.5%)とともにインキュベートした。
結果を図6に示す。5dpf(5日齢)時点でのホモ型trrapゼブラフィッシュ(trrap-/-: n=8)では、野生型ゼブラフィッシュ(trrap+/+: n=6)と比較すると、腹側咽頭弓の形態が乱れていることがわかった(図6のパネルaからe)。ホモ型ゼブラフィッシュでは、メッケル軟骨及び舌骨角軟骨を含む腹側咽頭弓の前後方向の距離(二重矢印)が野生型ゼブラフィッシュ及びヘテロ型ゼブラフィッシュ(trrap+/-: n=2、不図示)よりも短くなっていたが、篩骨板と角鰓骨の形態は、ホモ型ゼブラフィッシュでは正常であった。
アリザリンレッド染色
組織に沈着したカルシウムを染色するアリザリンレッドを用いて、変異型trrapゼブラフィッシュの頭部の骨形成を調べた。
アリザリンレッドの染色を前述の方法と同じ手順に従って行った。4%パラホルムアルデヒドを含むPBS中で10dpf(10日齢)の胚をインキュベートし、PBSTで2回洗浄した。10日齢を漂白バッファー中で30分間インキュベートし、PBSTで2回洗浄した。室温で0.5%KOHに溶かした1mg/mlのアリザリンレッド中で胚を1時間培養した後、0.5%KOHで洗浄した。
結果を図7に示す。ホモ型ゼブラフィッシュ(trrap-/-:n=6、のパネルf及びg)では、野生型ゼブラフィッシュ(trrap+/+:n=3、のパネルh及びi)及びヘテロ型ゼブラフィッシュ(trrap+/-:n=5、不図示)と比較して、頭部では骨化不全が見られたが、擬鎖骨では見られなかった。第5角鰓骨の歯の低形成が認められた。
この実験から、野生型ゼブラフィッシュ及びヘテロ型ゼブラフィッシュでは角鰓骨の歯がミネラル化しているのに対し、ホモ型ゼブラフィッシュでは歯の低形成が認められた。従って、trrap遺伝子は、眼球、腹側咽頭弓、歯など頭顔の形態形成に必要であることが明らかになった。
変異型trrapゼブラフィッシュにおける咽頭弓と歯のマーカー遺伝子の発現
ホモ型ゼブラフィッシュは、咽頭弓および歯の低形成を含む頭顔異常を示したため、咽頭弓のマーカー遺伝子(dlx2a、dlx3、nkx2.3)と歯のマーカー遺伝子(dlx2b、pitx2)の発現をWISHで調べた。
結果を図8に示す。ホモ型ゼブラフィッシュの腹側咽頭弓では、dlx2a(三角形)、dlx3(三角形)、nkx2.3(二重矢印)の発現パターンが野生型ゼブラフィッシュ及びヘテロ型ゼブラフィッシュに比べて狭くなり、減少していた。
dlx2b(矢印)とpitx2(矢印)は、ホモ型ゼブラフィッシュの発育中の歯で発現が減弱していた(図9)。一方、中枢神経系(CNS)における神経遺伝子、elavl3/huC(ニューロン)、gfap(放射状グリア及び神経幹細胞)、olig2(第一次運動ニューロン及びオリゴデンドロサイト)及びgli2a(中枢神経系及び咽頭弓)の発現量は、野生型ゼブラフィッシュ及びヘテロ型ゼブラフィッシュで同等であった(図10)。これらの結果から、ホモ型ゼブラフィッシュでは、咽頭弓や歯のマーカー遺伝子の発現が大幅に低下していることが明らかになった。

Claims (11)

  1. 変異型Trrapタンパク質を発現する遺伝子改変型ゼブラフィッシュであって、
    前記遺伝子改変型ゼブラフィッシュは、前記遺伝子改変型ゼブラフィッシュのゲノムに組み込まれた、前記変異型Trrapタンパク質をコードする核酸配列を有し、
    前記変異型Trrapタンパク質は、野生型Trrapタンパク質に存在するFATドメイン、PIKK-TRRAPドメイン、及びFATCドメインの機能が欠失しているTrrapタンパク質である、遺伝子改変型ゼブラフィッシュ。
  2. 前記変異型Trrapタンパク質は、
    前記FATドメインをコードするアミノ酸配列の一部又は全て、
    前記PIKK-TRRAPドメインをコードするアミノ酸配列の一部又は全て、
    及び
    前記FATCドメインをコードするアミノ酸配列をコードするアミノ酸配列の一部又は全て
    が欠失している、
    請求項1に記載の遺伝子改変型ゼブラフィッシュ。
  3. 前記FATドメインは、配列番号1で示されるアミノ酸配列又はその等価アミノ酸配列を有し、
    前記PIKK-TRRAPドメインは、配列番号2で示されるアミノ酸配列又はその等価アミノ酸配列を有し、
    前記FATCドメインは、配列番号3で示されるアミノ酸配列又はその等価アミノ酸配列を有する、
    請求項1又は2に記載の遺伝子改変型ゼブラフィッシュ。
  4. 前記変異型Trrapタンパク質をコードする核酸配列は、前記野生型Trrapタンパク質における1番目からn番目(1002≦n≦2826)までのアミノ酸配列をコードする核酸配列である、請求項1から3のいずれかに記載の遺伝子改変型ゼブラフィッシュ。
  5. 前記変異型Trrapタンパク質をコードする核酸配列は、配列番号4からなるアミノ酸配列をコードする核酸配列である、請求項4に記載の遺伝子改変型ゼブラフィッシュ。
  6. 前記野生型Trrapタンパク質は発現しない、請求項1から5のいずれかに記載の遺伝子改変型ゼブラフィッシュ。
  7. 配列番号5からなる塩基配列、
    配列番号5からなる塩基配列と95%以上の配列相同性を有する塩基配列と、
    配列番号5からなる塩基配列に1または数塩基が欠失、置換、付加されている塩基配列、
    又は、
    配列番号5からなる塩基配列と相補的な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列、
    を有する、請求項1から6のいずれかに記載の遺伝子改変型ゼブラフィッシュを作成するための第一核酸分子。
  8. 配列番号6からなる塩基配列、
    配列番号6からなる塩基配列と95%以上の配列相同性を有する塩基配列、
    配列番号6からなる塩基配列に1または数塩基が欠失、置換、付加されている塩基配列、
    又は、
    配列番号6からなる塩基配列と相補的な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列、
    を有する、請求項1から6のいずれかに記載の遺伝子改変型ゼブラフィッシュを作成するための第二核酸分子。
  9. 請求項7に記載の第一核酸分子と、
    請求項8に記載の第二核酸分子と、
    を有する、請求項1から6のいずれかに記載の遺伝子改変型ゼブラフィッシュを作成するためのキット。
  10. Trrapタンパク質における変異による疾患を予防及び/又は治療する候補物質のスクリーニング方法であって、
    前記方法は、
    請求項1から6のいずれかに記載の遺伝子改変型ゼブラフィッシュに被検試料を投与する投与工程と、
    前記遺伝子改変型ゼブラフィッシュにおける表現型を指標として、前記被検試料が前記疾患を予防及び/又は治療する候補物質であるか否かを評価する評価工程と、
    を含む、スクリーニング方法。
  11. 前記表現型は、小眼球、下顎の低形成及び歯の形成不全からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項10に記載のスクリーニング方法。
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