JP2023035280A - 化合物及びこれを用いた標識生体物質 - Google Patents

化合物及びこれを用いた標識生体物質 Download PDF

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Abstract

【課題】溶液及びメンブレンの状態において優れた蛍光強度を示す標識生体物質を得ることができる化合物、及び標識生体物質を提供する。【解決手段】下記一般式(I)で表される化合物、これを用いた標識生体物質。RH―L1―Q 一般式(I)式中、RHは、親水性基を示す。Qは、カルボキシ基、生体物質に結合可能な置換基又は固体支持体に結合可能な置換基を示す。L1は、RHとQを結ぶ連結基であって、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、2価の環基、-O-、>NRa1、>C=O、>S=O、-S(=O)2-及び>P(=O)ORa2の各基のうちの1種又は2種以上を組み合わせた2価の連結基を示す。Ra1及びRa2は水素原子又は1価の置換基を示す。ただし、L1は蛍光体部を含む基を置換基として少なくとも1つ有する。【選択図】なし

Description

本発明は、化合物及びこれを用いた標識生体物質に関する。
様々な刺激(病気、環境変化など)に対する生体内の変化を観察するために、目的の検出対象物質に対して結合性の生体分子(抗体等)を蛍光性化合物(蛍光色素)で標識した蛍光標識生体物質が多用されている。
例えば、タンパク質混合物から特定のタンパク質を検出するウエスタンブロッティング(以下、WBとも略す。)でも、上記特定のタンパク質の有無ないし存在量を、このタンパク質に対して結合性の蛍光標識抗体を用いて検出する蛍光法が利用されている。
また、生体中の生体分子、細胞及び組織等の動態及び機能等を解析するバイオイメージング技術においては、蛍光標識により可視化した生体の特定の部位を観察する生体蛍光イメージングが、生体観察の技術の一つとして利用されている。
上記蛍光標識では、一般的には有機蛍光色素分子が用いられ、通常、複数の蛍光色素分子を結合させた蛍光標識生体物質を用いることにより、輝度(蛍光強度)を高めている(例えば、特許文献1~5)。しかし、シアニン色素、ローダミン色素等の蛍光性を示す有機色素の大部分は、高い平面性を有する芳香族発色団を有するため、色素間での相互作用を生じやすく、その結果、標識後の色素間における自己会合等の相互作用による蛍光強度の低下が生じやすい。また、生体分子1分子あたりの蛍光色素の分子数(蛍光標識率:DOL)が増加するにつれて、自己会合等による蛍光強度がより低下する傾向にある。
特表2015-532641号公報 特表2020-504770号公報 特開2020-109162号公報 米国特許公開2018/0031545号公報 特表2005-538164号公報
蛍光標識に用いられる色素は、溶液又はメンブレン等の多様な状態において優れた蛍光強度を示すことが求められる。
本発明は、溶液及びメンブレンの状態において優れた蛍光強度を示す標識生体物質を得ることができる化合物を提供することを課題とする。また本発明は、この化合物と生体物質とを結合してなる標識生体物質を提供することを課題とする。
すなわち、本発明の上記課題は、下記の手段によって解決された。
〔1〕
下記一般式(I)で表される化合物。

―L―Q 一般式(I)

式中、Rは親水性基を示す。
Qは、カルボキシ基、生体物質に結合可能な置換基又は固体支持体に結合可能な置換基を示す。
は、RとQを結ぶ連結基であって、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、2価の環基、-O-、>NRa1、>C=O、>S=O、-S(=O)-及び>P(=O)ORa2の各基のうちの1種又は2種以上を組み合わせた2価の連結基を示す。Ra1及びRa2は水素原子又は1価の置換基を示す。ただし、Lは蛍光体部を含む基を置換基として少なくとも1つ有する。
〔2〕
上記Rが、アニオン性基、カチオン性基又は-(L-O)である、〔1〕に記載の化合物。
Lはアルキレン基を示し、Rは水素原子又はアルキル基を示し、tは1~24である。
〔3〕
上記Rが、スルホ基、第四級アンモニウムイオンを有する基又は-(L-O)である、〔2〕に記載の化合物。
〔4〕
上記Rが、-(L-O)である、〔3〕に記載の化合物。
〔5〕
下記一般式(II)で表される、〔3〕に記載の化合物。
Figure 2023035280000001
式中、pは1以上の整数である。
~Lは、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、2価の環基、-O-、>NRa1、>C=O、>S=O、-S(=O)-及び>P(=O)ORa2の各基のうちの1種又は2種以上を組み合わせた2価の連結基を示す。
Mは、上記蛍光体部、生理活性物質部、プロドラッグ部又は放射性同位体含有部を示す。
及びRは、水素原子、ヒドロキシ基、スルファニル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、ヘテロアリール基、アニオン性基又はカチオン性基を示す。
Qは、上記のQと同義である。
は、スルホ基、第四級アンモニウムイオンを有する基又は-(L-O)を示す。
Lはアルキレン基を示し、Rは水素原子又はアルキル基を示し、tは1~24である。
ただし、Mの少なくとも1つは上記蛍光体部を示す。
〔6〕
上記Lが、アルキレン基、2価の環基、>P(=O)ORa2、-O-、アミノ酸由来の基、アリーレン基及び-(LL-O)-のうちの1種又は2種以上を組み合わせた構造を含む連結基である、〔5〕に記載の化合物。
LLはアルキレン基を示し、hは1~24である。
〔7〕
上記Lが、アミノ酸由来の基を含む連結基である、〔6〕に記載の化合物。
〔8〕
上記Lが、下記一般式(III)で表される構造を含む連結基である、〔5〕~〔7〕のいずれか1つに記載の化合物。
Figure 2023035280000002
式中、X、X、Xは、-O-、-S-、>NRa1又は>CRa2a3を示す。
a1~Ra3は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基、ヘテロアリール基、-NRa8a9、-ORa10又はアニオン性基を示す。
a8~Ra10は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基、ヘテロアリール基又はアニオン性基を示す。
nは1以上の整数である。
*は結合手を示す。
〔9〕
上記nが3以上の整数である、〔8〕に記載の化合物。
〔10〕
上記蛍光体部が、キサンテン色素、ローダミン色素、クマリン色素、シアニン色素、ピレン色素、オキサジン色素、スクアリウム色素、ピリジルオキサゾール色素又はピロメテン色素からなる構造部である、〔1〕~〔9〕のいずれか1つに記載の化合物。
〔11〕
上記Qが、下記構造のいずれかである、〔1〕~〔10〕のいずれか1つに記載の化合物。
Figure 2023035280000003
上記構造式中、Xはハロゲン原子を示し、*は結合手を示す。
〔12〕
〔1〕~〔11〕のいずれか1つに記載の化合物と生体物質とが結合してなる標識生体物質。
〔13〕
上記生体物質がタンパク質、アミノ酸、核酸、ヌクレオチド、糖鎖及びリン脂質のいずれかである〔12〕に記載の標識生体物質。
本発明の化合物は、生体物質等に対する標識とした際に、溶液への適用及びメンブレンへの適用のいずれの使用形態においても優れた蛍光強度を示すことができる。また、本発明の標識生体物質は、溶液への適用及びメンブレンへの適用のいずれの使用形態においても優れた蛍光強度を示す。
本発明において、特定の符号又は式で表示された置換基、連結基もしくは構造単位等(以下、置換基等という)が複数あるとき、又は、複数の置換基等を同時に規定するときには、特段の断りがない限り、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。また、複数の置換基等が近接するとき(特に、隣接するとき)には、特段の断りがない限り、それらが互いに連結して環を形成していてもよい。また、特段の断りがない限り、環、例えば脂環、芳香族環及びヘテロ環は、さらに縮環して縮合環を形成していてもよい。
例えば、本発明において、後記一般式(III)で表される構造は、下記一般式(i)で表される構造がn個(nは2以上の整数)連なっていることを意味する。この場合、n個の一般式(i)で表される構造は、互いに同一でも異なっていてもよい。なお、下記一般式(i)中におけるX~Xは、後記一般式(III)におけるX~Xと同義である。このことは、( )pで括られる構造についても同様であり、p個存在する構造は互いに同一でも異なっていてもよい。
Figure 2023035280000004
本発明において、特段の断りがない限り、二重結合については、分子内にE型及びZ型が存在する場合、そのいずれであっても、またこれらの混合物であってもよい。また、特段の断りがない限り、化合物中に不斉炭素原子又は不斉中心が存在する場合、立体配置はR,S表記におけるR及びSのいずれであってもよく、また、それらの混合物であってもよい。
本発明において、化合物及び置換基の表示については、化合物そのもの及び置換基そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。例えば、カルボキシ基、スルホ基及びホスホノ基(-P(=O)(OH))等の解離性アニオン性基は、水素原子が解離してイオン構造を取っていてもよく、塩構造を取っていてもよい。すなわち、本発明において、「カルボキシ基」はカルボン酸イオン又はその塩を、「スルホ基」はスルホン酸イオン又はその塩を、「ホスホノ基」はホスホン酸イオン又はその塩を、それぞれ含む意味で使用する。上記塩構造を構成する際の1価若しくは多価のカチオンとしては、特に制限されず、無機カチオン、有機カチオン等が挙げられ、具体的には、Na、Li及びK等のアルカリ金属のカチオン、Mg2+、Ca2+及びBa2+等のアルカリ土類金属のカチオン、並びに、トリアルキルアンモニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン等の有機アンモニウムカチオンが挙げられる。
塩構造の場合、その塩の種類は1種類でもよく、2種類以上混在していてもよく、化合物中で塩型と遊離酸構造の基が混在していてもよく、また、塩構造の化合物と遊離酸構造化合物が混在していてもよい。
本発明の化合物は、いずれも中性の化合物である。本発明において、化合物が中性であるとは、電気的に中性であることを意味する。具体的には、化合物内の電荷を有する基又は対イオンによって、化合物全体として電荷が0となるように調整されている。例えば、蛍光体部を構成する色素の一例として挙げる一般式(α)で表されるシアニン色素は、R42が結合する窒素原子の形式電荷は+1であり、この形式電荷と対となるようにして、シアニン色素中又は本発明の化合物におけるその他の構造中のスルホ基等の解離性基がスルホン酸イオン等のイオン構造を有することによって、本発明の化合物は、化合物全体として電荷0の化合物となる。
本発明で規定するシアニン色素に係る各一般式においては、化合物が有する正電荷を、特定の窒素原子が有する構造として便宜上特定して示している。ただし、本発明で規定するシアニン色素は共役系を有するため、実際には、上記窒素原子以外の他の原子が正電荷を採りうることもあり、化学構造の1つとして各一般式で表される構造を取りうるシアニン色素であれば、各一般式で表されるシアニン色素に包含される。このことは負電荷についても同様である。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、構造の一部を変化させたものを含む意味である。更に、置換又は無置換を明記していない化合物については、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の置換基を有していてもよい意味である。このことは、置換基(例えば、「アルキル基」、「メチル基」、「メチル」などのように表現される基)及び連結基(例えば、「アルキレン基」、「メチレン基」、「メチレン」などのように表現される基)についても同様である。このような任意の置換基のうち、本発明において好ましい置換基は、後述の置換基群Tから選択される置換基である。
本発明において、ある基の炭素数を規定する場合、この炭素数は、本発明ないし本明細書において特段の断りのない限りは、基全体の炭素数を意味する。つまり、この基がさらに置換基を有する形態である場合、この置換基を含めた全体の炭素数を意味する。
また、本発明において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明の化合物は、後述の一般式(I)で表されるように、連結基Lの一方の末端に親水性基であるRを有し、別の末端にカルボキシ基、生体物質に結合可能な置換基又は固体支持体に結合可能な置換基であるQを有し、上記連結基Lの置換基として蛍光体部を含む基を有する化合物である。本発明の化合物が、溶液及びメンブレンのいずれの状態においても優れた蛍光強度を示す標識生体物質を得ることができる理由の詳細については定かではないが、次のように考えられる。
本発明の化合物から得られる標識生体物質において、本発明の化合物が連結基の末端に有する親水性基は、溶解性を向上させる基、立体反発性基又は荷電反発基として作用することにより、連結基同士部分及び/又は生体物質同士の相互作用を発生要因とする凝集が生じにくく、この凝集を契機とする会合消光を抑制できる。このため、本発明の化合物を用いて得られる標識生体物質は、優れた蛍光強度を示すことができると考えられる。
以下、本発明の化合物について詳述する。
<本発明の化合物>
本発明の化合物は、下記一般式(I)で表される化合物であり、連結基Lの一方の末端に親水性基であるRを有し、別の末端にカルボキシ基又は生体物質もしくは固体支持体への反応性基であるQを有し、連結基Lの置換基として蛍光体部を含む基を有する。
化合物を下記一般式(I)にあてはめる際には、RとQとを結ぶ連結基Lを以下のようにして決定する。化合物中におけるQとの結合位置を片末端とし、化合物中の全ての蛍光体部を側鎖に位置するように配置した主鎖であって、化合物中からRと読みうる親水性基(ただし、蛍光体部とQと結ぶ鎖中に含まれるポリアルキレンオキシ構造は除く)を全て除いて考えた場合に、Qからの結合鎖が最長となる主鎖を、Lとする。このようにして決定したLのうち、Qからの結合鎖が最長となる末端側に結合する親水基を、親水性基Rとする。逆に、このようにして決定したLのQからの結合鎖が最長となる末端側に親水基Rが結合していない場合には、本発明の化合物ではないことを意味する。
ただし、Qは、蛍光体部が有するQであることはない。
本発明の化合物は、ポリマー又はオリゴマーに分類される化合物であってもよい。

―L―Q 一般式(I)
は、親水性基を示す。親水性基としては特に限定されないが、ヒドロキシ基、アニオン性基、カチオン性基又は-(L-O)が好ましい。
として採りうるアニオン性基、カチオン性基及び-(L-O)は、それぞれ後述する置換基群Tにおけるアニオン性基、カチオン性基及び-(L-O)の記載を適用できる。
は、アニオン性基、カチオン性基又は-(L-O)が好ましく、スルホ基、第四級アンモニウムイオンを有する基又は-(L-O)がより好ましく、-(L-O)がさらに好ましい。
Qは、カルボキシ基、生体物質に結合可能な置換基又は固体支持体に結合可能な置換基を示す。
生体物質に結合可能な置換基としては後述の生体物質に結合可能な置換基の記載を適用することができ、固体支持体に結合可能な置換基としては後述の固体支持体に結合可能な置換基の記載を適用することができる。
は、RとQを結ぶ連結基であって、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、2価の環基、-O-、>NRa1、>C=O、>S=O、-S(=O)-及び>P(=O)ORa2の各基のうちの1種又は2種以上を組み合わせた2価の連結基を示す。ただし、Ra1及びRa2は水素原子又は1価の置換基を示す。Lは蛍光体部を含む基を置換基として少なくとも1つ有する。
を構成しうるアルキレン基は、後述する置換基群Tから選択されるアルキル基から更に水素原子を1つ除去した基と同義であり、好ましいものも同じである。アルキレン部分の炭素数は1~30であることが好ましく、1~20であることがより好ましく、1~15であることがさらに好ましい。
を構成しうるアルケニレン基は、後述する置換基群Tから選択されるアルケニル基から更に水素原子を1つ除去した基と同義であり、好ましいものも同じである。アルケニレン部分の炭素数は1~30であることが好ましく、1~20であることがより好ましく、1~15であることがさらに好ましい。
を構成しうるアルキニレン基は、後述する置換基群Tから選択されるアルキニル基から更に水素原子を1つ除去した基と同義であり、好ましいものも同じである。アルキニレン部分の炭素数が1~30であることが好ましく、1~20であることがより好ましく、1~15であることがさらに好ましい。
を構成しうるアルキレン基、アルケニレン基及びアルキニレン基は、それぞれ、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
を構成しうる2価の環基は、後述する置換基群Tにおける環基(すなわち、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基又はヘテロ環基)から更に水素原子を1つ除去した基である、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基又は2価の脂肪族ヘテロ環基と同義であり、好ましいものも同じである。
を構成しうるアリーレン基としては、アリーレン部分(すなわち、アリーレン基が有する置換基部分を除く部分)の炭素数が6~22であることが好ましく、6~18であることがより好ましく、6~14であることがさらに好ましい。アリーレン基はフェニレン基が好ましい。
を構成しうるヘテロアリーレン基としては、ヘテロアリーレン部分(すなわち、ヘテロアリーレン基が有する置換基部分を除く部分)の炭素数が2~16であることが好ましく、2~12であることがより好ましく、2~8であることがさらに好ましい。ヘテロアリーレン基は、環構成原子として窒素原子を有する5又は6員のヘテロアリーレン基が好ましく、ピロール環又はトリアゾール環から水素原子を2つ除いた2価の基であることがより好ましい。
を構成しうる2価の脂肪族ヘテロ環基としては、テトラヒドロピラン環、又は、後述の一般式(III)で表される構造に記載する、炭素原子、窒素原子及びX~Xを環構成原子とする5員環から水素原子を2つ除いた2価の基が好ましく挙げられ、後述の一般式(III)で表される構造に記載する、炭素原子、窒素原子及びX~Xを環構成原子とする5員環から水素原子を2つ除いた2価の基がより好ましい。
上記テトラヒドロピラン環は、環上にヒドロキシ基又は誘導される置換基を有するピラノース環であることが好ましい。本発明においては、2価のピラノース環基とは、ピラノース環上の2つのヒドロキシ基を除いた基を意味する。
を構成しうる2価の環基は、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、又は2価の脂肪族ヘテロ環基が好ましい。
上述した、Lを構成しうるアルキレン基、アルケニレン基及びアルキニレン基、2価の環基のそれぞれの炭素原子数は、L中において出現する各基の単位ごとに一般式(I)におけるR側から読むものとする。例えば、R側から、-メチレン基-フェニレン基-エチレン基-が連なっている場合には、R側から、炭素原子数1のアルキレン基、炭素原子数6のアリーレン基、炭素原子数2のアルキレン基と読むものとする。
a1及びRa2として採りうる1価の置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロアリール基が好ましい。Ra1及びRa2として採りうるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基及びヘテロアリール基は、後述する置換基群Tにおけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基及びヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同じである。これらの置換基は、さらに置換基群Tから選択される基で置換されていてもよい。
a1及びRa2としては、水素原子又はアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
を構成しうる、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、2価の環基、-O-、>NRa1、>C=O、>S=O、-S(=O)-及び>P(=O)ORa2のうちの1種又は2種以上を組み合わせた連結基において、組み合わせる基の種類は、妥当な化学構造となる限り特に制限されない。
を構成しうる、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、2価の環基(シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基又は2価の脂肪族ヘテロ環基)、-O-、>NRa1、>C=O、>S=O、-S(=O)-及び>P(=O)ORa2のうちの1種又は2種以上を組み合わせた連結基において、組み合わせる基の種類は、特に制限されないが、例えば、1~6種が好ましく、1~4種がより好ましく、1~2種がさらに好ましい。なお、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、2価の脂肪族ヘテロ環基、-O-、>NRa1、>C=O、>S=O、-S(=O)-及び>P(=O)ORa2の各基をそれぞれ1種と数え、最大で14種類である。
は、後述するL、L及びLを、この順にメチレン基で連結した基であることが好ましい。なお、このメチレン基は置換基で置換されていてもよく、例えば、後述する置換基群Tから選択される基が挙げられる。
は、Lを構成しうる、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、2価の環基、-O-、>NRa1、>C=O、>S=O、-S(=O)-及び>P(=O)ORa2のうちの2種以上を組み合わせた連結基として、後述の-(LL-O)-、アミノ酸由来の基を含む連結基であることが好ましい。
アミノ酸由来の基としては、>NRa1と>C=Oとを有し、これら>NRa1と>C=Oとを、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基のうちの少なくとも1種で連結する基、含窒素飽和複素環基であって、この環構成原子である窒素原子上に結合手を有する2価の環基と>C=Oとを有し、この環基と>C=Oとを、単結合、又は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基のうちの少なくとも1種で連結する基が挙げられる。
これらのなかでも、アミノ酸由来の基としては、天然のアミノ酸(生体のタンパク質を構成するユニット)のアミノ基から水素原子を1つと、カルボキシ基からヒドロキシ基を除いた2価の基(アミノ酸残基ともいう)が好ましい。
は、置換基として、蛍光体部を含む基を有する。
蛍光体部を含む基は、蛍光体部を有していればよく、蛍光体部そのものでもよく、蛍光体部に連結基が結合した形態でもよい。蛍光体部に連結基が結合した形態としては、蛍光体部に、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、2価の環基、-O-、>NRa、>C=O、>S=O、-S(=O)-及び>後述するP(=O)ORa2の各基のうちの1種又は2種以上を組み合わせた2価の連結基Xが結合した形態が挙げられる。この蛍光体部と連結基Xが結合した形態は、後述する一般式(II)における-L-M及び-L-MであってMが蛍光体部である場合と同様であり、これらの記載を適用することができる。
蛍光体部を含む基は、Lの主鎖に対して結合していればよい。
蛍光体部は、本発明の化合物中に少なくとも1つ含まれていればよい。蛍光体部は2つ以上含まれていることが好ましい。
蛍光体部については、後述の一般式(II)で表される化合物における蛍光体部の記載及び具体例等を適用することができる。
は、蛍光体部を含む基に加えて、別の置換基を有していてもよい。すなわち、好ましい形態においてL1を構成しうるアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、2価の環基、>NRa1及び>P(=O)ORa2もまた、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。
が有していてもよい置換基としては、後述する置換基群Tにおける置換基が挙げられ、例えば、-NRc1c2(Rc1及びRc2は、水素原子又はアルキル基を示し、水素原子が好ましい。)、アリール基(好ましくは、フェニル基)、ヘテロアリール基(環構成原子として>NHを含む5又は6員のヘテロアリール基が好ましく、イミダゾール-イル基がより好ましい。)、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アシルアミノ基、グアニジノ基(好ましくは、-NHC(=NH)NH)、インドール-イル基、アルキルチオ基、フェノール基、スルファニル基、アニオン性基、カチオン性基もしくは-(L-O)、又は、これらの置換基を2種以上組み合わせた基が好ましい。また、後述する生理活性物質部、プロドラッグ部及び放射性同位体含有部も好ましく挙げられる。
が有していてもよい置換基のうち、上記の2種以上を組み合わせた基としては、アリール基、ヘテロアリール基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、アシルアミノ基、アニオン性基、アニオン性基又は-(L-O)を2種以上組み合わせ基が好ましく挙げられ、アニオン性基、カチオン性基もしくはヒドロキシ基で置換されたアリール基、アニオン性基、カチオン性基もしくはヒドロキシ基で置換されたヘテロアリール基、-(L-O)を置換基として有するカルバモイル基、又は、-(L-O)を置換基として有するアシルアミノ基がより好ましい。
なお、-(L-O)を置換基として有するカルバモイル基において、-(L-O)はカルバモイル基に直接結合していてもよく、カルバモイル基又はアシルアミノ基等の連結基を介してカルバモイル基に結合していてもよい。同様に、-(L-O)を置換基として有するアシルアミノ基において、-(L-O)はアシルアミノ基に直接結合していてもよく、カルバモイル基又はアシルアミノ基等の連結基を介してアシルアミノ基に結合していてもよい。
本発明の化合物は、下記一般式(II)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2023035280000005
化合物を一般式(II)にあてはめる際には、化合物におけるM、R及びQを決定し、その他の基をL~L、R及びRとして読むものとする。
なお、Rが第四級アンモニウムイオンを有する基である場合、第四級アンモニウムイオンの窒素原子(N)が結合手を有するようにして、その結合手と結合した最初の原子までを第四級アンモニウムイオンを有する基とする。例えば、-C(CHは、-CH(CHを第四級アンモニウムイオンを有する基と読む。ただし、Nが環の環構成原子となっている場合には、この環を構成する環構成原子のいずれかがLへの結合手を有するようにして、第四級アンモニウムイオンを有する基を決定する。また、Rが-(L-O)である場合、tが最大となるようにして-(L-O)として読むものとする。
Qは上記のQと同義である。
pは1以上の整数である。上限値に特に制限はなく、例えば、30以下の整数とすることができ、20以下の整数が好ましく、15以下の整数がより好ましく、10以下の整数がさらに好ましい。
~Lは2価の連結基を示し、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、2価の環基、-O-、>NRa1、>C=O、>S=O、-S(=O)-及び>P(=O)ORa2の各基のうちの1種又は2種以上を組み合わせた連結基を示す。L~Lは、好ましくは、アルキレン基、2価の環基、-O-、>NRa1、>C=O、>S=O及び>P(=O)ORa2のうちの1種又は2種以上を組み合わせた2価の連結基を示す。さらに好ましくはアルキレン基、2価の環基、>NRa1、>C=Oのうちの1種又は2種以上を組み合わせた2価の連結基を示す。
a1及びRa2は、上記のLにおけるRa1及びRa2の規定を適用でき、好ましい範囲も同じである。
~Lを構成しうるアルキレン基は、後述する置換基群Tから選択されるアルキル基から更に水素原子を1つ除去した基と同義であり、好ましいものも同じである。
~Lを構成しうるアルケニレン基は、後述する置換基群Tから選択されるアルケニル基から更に水素原子を1つ除去した基と同義であり、好ましいものも同じである。
~Lを構成しうるアルキニレン基は、後述する置換基群Tから選択されるアルキニル基から更に水素原子を1つ除去した基と同義であり、好ましいものも同じである。
~Lを構成しうる2価の環基は、後述する置換基群Tにおける環基(すなわち、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基又はヘテロ環基)から更に水素原子を1つ除去した基である、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基又は2価の脂肪族ヘテロ環基と同義であり、好ましいものも同じである。
~Lを構成しうる、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、2価の環基(シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基又は2価の脂肪族ヘテロ環基)、-O-、>NRa1、>C=O、>S=O、-S(=O)-及び>P(=O)ORa2のうち2種以上を組み合わせた連結基(以下連結基Aということがある)において、組み合わせる基の種類は、特に制限されないが、例えば、1~6種が好ましく、1~4種がより好ましい。なお、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基又は2価の脂肪族ヘテロ環基、-O-、>NRa1、>C=O、>S=O、-S(=O)-及び>P(=O)ORa2の各基をそれぞれ1種と数え、最大で14種類である。
において、組み合わせる基の数は、特に制限されないが、1~10個が好ましく挙げられ、1~7個がより好ましく、1~5個がさらに好ましい。
において、組み合わせる基の数は、特に制限されないが、10~100個が好ましく挙げられ、12~70個がより好ましく、20~40個がさらに好ましい。
において、組み合わせる基の数は、特に制限されないが、1~30個が好ましく挙げられ、10~30個がより好ましく、10~20個がさらに好ましい。
例えば、実施例1の化合物(1)-NHSのLは、5個の>C=O、5個の>NRa1、5個のアルキレン基を組み合わせた基であり、「組み合わせる基の種類」は3種類、「組み合わせる基の数」は14個である。
連結基Aとしては、-C(=O)-NRa1-と>C=Oとの間をアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基のうちの少なくとも1種で連結する基、-O-とアルキレン基とを組み合わせた基(この構造を複数繰り返して、後述のn-(LL-O)-としてもよい)等が挙げられる。
(i)L
は、>NRa1、>C=O、-O-及びアルキレン基のうちの1種又は2種以上を組み合わせた連結基が好ましい。Lは、アルキレン-C(=O)-NH-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-、-C(=O)-O-アルキレン-C(=O)-NH-、-C(=O)-アルキレン-が好ましい。Lが有するアルキレン基は、アシルアミノ基で置換されていてもよい。
は、アルキレン基、-O-、>C=O及び>NRa1のうちの1種又は2種以上を組み合わせた連結基とすることも好ましく、アルキレン基、-O-、>C=O、>NRa1、-[NRa1-アルキレン-C(=O)]-で表される繰り返し単位(繰り返し数は1~20が好ましい)の右側に-NRa1-アルキレン基が結合した基、-NRa1-(LL-O)-アルキレン又は-C(=O)-(LL-O)-アルキレンがさらに好ましい。
(ii)L、L
及びLは、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基のうちの少なくとも1種を含む連結基であるか、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基のうちの少なくとも1種と、>NRa1及び>C=Oの少なくとも1種との組み合わせからなる基が好ましく、一般式(II)中におけるM側が>NRa1又は>C=Oであって、これらの>NRa1又は>C=Oと、アルキレン基、アルケニレン基及びアルキニレン基の少なくとも1種との組み合わせからなる基がさらに好ましく、一般式(II)中におけるM側が>NRa1であって、この>NRa1とアルキレン基との組み合わせからなる基が特に好ましい。
及びLは、アルキレン基、アリーレン基又はヘテロアリーレン基である形態とすることもできる。
なお、上記一般式(II)で表される化合物においては、Mと、L及びLが結合する炭素原子、又は、L及びLが結合する炭素原子とを結ぶ連結鎖(Lを含む連結鎖及びLを含む連結鎖の各連結鎖)における最短原子数は、例えば、1~60であればよく、1~40が好ましい。Mが蛍光体部である場合には、上記最短原子数は、蛍光体部Mのうち、蛍光を示すための共役構造部分と、L及びLが結合する炭素原子、又は、L及びLが結合する炭素原子とを結ぶ連結鎖のうち最短鎖を構成する原子数を意味する。
(iii)L
は、単結合、>C=Oであるか、アルキレン基、アルケニレン基及びアルキニレン基のうちの少なくとも1種と、>NRa1及び>C=Oとを組み合わせた基、アルキレン基、アルケニレン基及びアルキニレン基のうちの少なくとも1種と、>NRa1、-O-、及び>C=Oとを組み合わせた基、アルキレン基、アルケニレン基及びアルキニレン基のうちの少なくとも1種と、>NRa1と-O-とを組み合わせた基、アルキレン基と、-(LL-O)-と、>NRa1とを組み合わせた基、又は、アルキレン基と、後述の-(LL-O)-と、>NRa1と、>C=Oとを組み合わせた基、が好ましい。
は、-C(=O)と-NH-アルキレン基とを、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、>NRa1、>C=O及び後述の-(LL-O)-のうちの少なくとも1種で連結する基、又は、-アルキレン基-NRa1-アルキレン基-(LL-O)-がより好ましい。
は、-C(=O)-[NHCHC(=O)]-(wは1~5である)、アルキレン-NH-アルキレン-(LL-O)-、又は-C(=O)-NH-C-(O-LL)-であることがより好ましい。
は、アミノ酸由来の基又は後述の-(LL-O)-を含むことも好ましい。Lは、>C=Oとポリアミノ酸残基を含む基、>C=Oとpポリグリシンとを含む基とすることができる。Lは、アルキル基と-NH-と後述の-(LL-O)-と>C=Oとを含む基とすることができる。Lは、ポリグリシンを含むことが好ましい。
は、アルキレン基、-O-、>C=O及び>NRa1のうちの1種又は2種以上を組み合わせた連結基とすることも好ましく、アルキレン基、-O-、>C=O、>NRa1、-[NRa1-アルキレン-C(=O)]-で表される繰り返し単位(繰り返し数は1~20が好ましい)の右側に-NRa1-アルキレン基が結合した基、-NRa1-(LL-O)-アルキレン又は-C(=O)-(LL-O)-アルキレンがさらに好ましい。
は、さらに置換基を有していてもよい。
なお、上記のLに係る記載における「-C(=O)-NRa1-」及び「-アルキレン基-NRa1-」等における左右については、一般式(II)における紙面上の左右と同じとする。
(iv)L
は、その構造中に、アルキレン基、2価の環基、>P(=O)ORa2、-O-、アミノ酸由来の基、アリーレン基及び後述の-(LL-O)-のうちの1種又は2種以上を組み合わせた構造を含むことが好ましい。
は、その構造中に、>P(=O)ORa2、アミノ酸由来の基、アリーレン基及び後述の-(LL-O)-の少なくとも1つを含む形態とすることもでき、アミノ酸由来の基又は後述の-(LL-O)-を少なくとも含むことがより好ましく、アミノ酸由来の基を少なくとも含むことがさらに好ましい。Lが含みうるアミノ酸由来の基としては、上記Lのアミノ酸由来の基の記載を適用できる。
は、その構造中に、下記一般式(III)で表される構造を含むことが好ましい。下記一般式(III)で表される構造は、アミノ酸由来の基の一態様である。
Figure 2023035280000006
式中、X、X、Xは、-O-、-S-、>NRa1又は>CRa2a3を示す。
a1~Ra3は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基、ヘテロアリール基、-NRa8a9、-ORa10又はアニオン性基を示す。
a1~Ra3として採りうるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基及びヘテロアリール基は、後述する置換基群Tにおけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基及びヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同じである。
a1~Ra3として採りうるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基及びヘテロアリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。
a1~Ra3におけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基及びヘテロアリール基が有していてもよい置換基としては、後述する置換基群Tにおける置換基が挙げられ、例えば、ハロゲン原子が好ましい。また、後述のアニオン性基も好ましく挙げられる。
a1~Ra3として採り得る-NRa8a9及び-ORa10において、Ra8~Ra10は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基、ヘテロアリール基又はアニオン性基を示す。
a8~Ra10として採りうるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基及びヘテロアリール基は、後述する置換基群Tにおけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基及びヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同じである。
a8~Ra10として採りうるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基及びヘテロアリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。
a8~Ra10におけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基及びヘテロアリール基が有していてもよい置換基としては、後述する置換基群Tにおける置換基が挙げられ、例えば、ハロゲン原子が好ましい。また、後述のアニオン性基も好ましく挙げられる。
上記X~Xとしては、少なくともいずれか1つが>CRa2a3であることが好ましく、少なくとも2つが>CRa2a3であることがより好ましく、すべてが>CRa2a3であることが好ましい。
なお、上記X~Xは蛍光体部を有しても有しなくてもよいが、有しないことが好ましい。
nは1以上の整数である。nの下限値は、2以上の整数が好ましく、3以上の整数がより好ましく、5以上の整数がさらに好ましく、6以上の整数が特に好ましい。上限値に特に制限はなく、例えば、36以下の整数とすることができ、30以下の整数が好ましく、28以下の整数がより好ましく、24以下の整数がさらに好ましい。
*は結合手を示す。
は、その構造中に、下記一般式(c)で表される構造を含むことが好ましい。下記一般式(c)で表される構造は、アミノ酸由来の基の一態様である。
Figure 2023035280000007
式中、Rは水素原子又はアルキル基を示す。
mは1以上の整数である。
が採りうるアルキル基は、後述する置換基群Tにおけるアルキル基と同義であり、好ましい範囲も同じである。
が採りうるアルキル基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。
におけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、後述する置換基群Tにおける置換基が挙げられ、前述のLが有していてもよい置換基の好ましい記載を適用することができる。
におけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、アリール基(好ましくは、フェニル基)、ヘテロアリール基(好ましくは、イミダゾール-イル基)、ヒドロキシ基、アミノ基(好ましくは-NH)、カルバモイル基、アシルアミノ基、グアニジノ基(好ましくは-NHC(=NH)NH)、インドール-イル基、アルキルチオ基、フェノール基、スルファニル基、アニオン性基(好ましくは、スルホ基、ホスホノ基又はホスホノオキシ基)、カチオン性基もしくは-(L-O)、又は、これらを2種以上組み合わせた基が好ましい。
におけるアルキル基が有していてもよい置換基のうち、上記の2種以上を組み合わせた基としては、前述のLが有していてもよい置換基のうち、上記の2種以上を組み合わせた基に係る記載を好ましく適用することができる。
は、アニオン性基、カチオン性基及び-(L-O)のいずれかを置換基として有するアルキル基であることが好ましい。
は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロアリール基を示す。Yとして採りうるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基及びヘテロアリール基は、後述する置換基群Tにおけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基及びヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同じである。Yは、水素原子が好ましい。
は、その構造中に、下記一般式(IV)で表される構造を含むことが好ましい。
Figure 2023035280000008
式中、A及びAはそれぞれ上記一般式(III)で表される構造を示し、Bは上記一般式(c)で表される構造を示す。A、A及びBに一般式(III)又は(c)で表される構造をそれぞれ当てはめる際に、一般式(III)で表される構造及び一般式(c)で表される構造は、それぞれ、紙面上の左右とは逆の向きに配置されていてもよい。
*は結合手を示す。
pは1以上の整数である。pは、1~4が好ましく、1~2がより好ましく、得られる標識生体物質の活性を高める観点からは、1がさらに好ましい。なお、pは、化合物中において読み得る最大数として読む。
は、-C(=O)-一般式(IV)-NH-の形態であることが好ましい。
上記とは別に、Lは、-NH-LL-(O-LL)-C(=O)-NH-LL-(O-LL)-C(=O)-NH-であることが好ましい。
は、置換基を有していてもよく、この置換基として親水性基を有することが好ましい。Lが置換基を有している形態としては、Lが上記一般式(c)の構造を含み、Rがアルキル基であり、その置換基として親水性基を有する形態が挙げられる。
及びRは、水素原子、ヒドロキシ基、スルファニル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、ヘテロアリール基、アニオン性基、カチオン性基を示す。
及びRとして採りうるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、及びヘテロアリール基は、後述する置換基群Tにおけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基及びヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同じである。
及びRとして採りうる置換基は、置換基を有していてもよく、このような置換基としては後述する置換基群Tにおける置換基及び前述のQが挙げられ、例えば、ハロゲン原子が好ましい。Qは、上記のQと同義である。
及びRとしては、水素原子、ヒドロキシ基、スルファニル基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヘテロアリール基、アニオン性基、又はカチオン性基が好ましく、水素原子であることがより好ましい。アミノ酸を原料として用いた場合にはR及びRは水素原子になることが多いものの、本発明の化合物が優れた蛍光強度を示すことに対してR及びRにおける置換基は大きく寄与しないため、R及びRは水素原子以外のその他の置換基(ヒドロキシ基、スルファニル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、ヘテロアリール基、アニオン性基又はカチオン性基)であってもよい。
一般式(II)で表される化合物において、隣接する基同士が互いに結合して環を形成していてもよい。互いに結合して環を形成していてもよい隣接する基の組み合わせとしては、例えば、LとLの組み合わせ、LとLの組み合わせ、LとRの組み合わせ、LとLの組み合わせ、LとLの組み合わせ、又は、LとRの組み合わせが挙げられる。
上記の隣接する基同士が互いに結合して形成していてもよい環は、芳香族環及び脂肪族環のいずれでもよく、炭化水素環及びヘテロ環のいずれでもよく、5又は6員環であることが好ましい。
上記脂肪族環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、テトラヒドロピラン環、又は、上述の一般式(III)で表される構造に記載する、炭素原子、窒素原子及びX~Xを環構成原子とする5員環が好ましく挙げられ、上述の一般式(III)で表される構造に記載する、炭素原子、窒素原子及びX~Xを環構成原子とする5員環がより好ましい。
上記芳香族環としては、ベンゼン環、又は、含窒素芳香族複素環が好ましく、ベンゼン環、又は、環構成原子が炭素原子及び窒素原子から構成される含窒素芳香族複素環がより好ましく、ベンゼン環又はピリジン環がさらに好ましい。
これらの環は置換基を有していてもよく、特に制限することなく、置換基群Tから選択される。
とLとの組み合わせ、又は、LとRとの組み合わせにより形成される環としては、上記の脂肪族環及び芳香族環のいずれでもよく、上記の脂肪族環が好ましい。
とLの組み合わせ、LとLの組み合わせ、LとLの組み合わせ、又は、LとLの組み合わせにより形成される環としては、上記の脂肪族環及び芳香族環のいずれでもよく、上述の一般式(III)で表される構造に記載する、炭素原子、窒素原子及びX~Xを環構成原子とする5員環、又は、ベンゼン環が好ましい。
例えば、一般式(III)の破線で囲んだ下記構造を、
Figure 2023035280000009
環構造を有する以下の構造を有する構造とすることができる。
Figure 2023035280000010
は、スルホ基、第四級アンモニウムイオンを有する基又は-(L-O)を示す。Rとしては、スルホ基又は-(L-O)が好ましい。
上記組合せとしては、L及びLがアルキレン基、アリーレン基又はヘテロアリーレン基であるか、>NRa1とアルキレン基との組み合わせからなる基であり、L、L及びLがアルキレン基、2価の環基、>NRa1、>C=Oのうちの1種又は2種以上を組み合わせた2価の連結基であり、Rがスルホ基又は-(L-O)である形態がより好ましい。
Mは、蛍光体部、生理活性物質部、プロドラッグ部又は放射性同位体含有部を示す。ただし、Mの少なくとも1つは蛍光体部を示す。一般式(II)において、Lに結合するMの少なくとも1つ及びLに結合するMがそれぞれ蛍光体部であることが好ましい。
Mとして採り得る蛍光体部(以下、蛍光体部Mとも称す。)としては、蛍光を示す有機化合物からなる構造部である限り、特に制限することなく用いることができる。また、蛍光体部Mは、蛍光を示す有機化合物からなる構造部がさらに連結基を有する構造部であってもよい。このような連結基としては、特に制限されないが、例えば後述の連結基ZZZを挙げることができる。例えば、一般式(II)で表される化合物においては、蛍光体部Mはこの連結基ZZZによってL又はLと結合している化合物が好ましく挙げられる。
蛍光体部Mとしては、例えば、キサンテン色素、ローダミン色素、クマリン色素、シアニン色素、ピレン色素、オキサジン色素、スクアリウム色素、ピリジルオキサゾール色素及びピロメテン色素のうちの少なくとも1種の色素からなる構造部が挙げられ、好ましい。
上記のキサンテン色素、ローダミン色素、クマリン色素、シアニン色素、ピレン色素、オキサジン色素、スクアリウム色素、ピリジルオキサゾール色素及びピロメテン色素としては、これらの色素として通常知られている色素を特に制限することなく用いることができる。
本発明の化合物が蛍光体部を2つ以上有する場合、FRETが生じない構造とする観点から、各蛍光体部は光吸収特性が互いに等価な蛍光体部であることが好ましい。上記「光吸収特性が互いに等価な蛍光体部」とは、各蛍光体部の吸収スペクトルにおける最大吸収波長の差が15nm以内の関係を満たすものを意味する。
本発明においては、化合物が有する全ての蛍光体部が、各蛍光体部の吸収スペクトルにおける最大吸収波長のうち、最も低波長側の最大吸収波長と最も高波長側の最大吸収波長との差が15nm以内の関係を満たす化合物であることがより好ましい。
化合物中に2つの蛍光体部を有する化合物としては、上述の通り、FRET現象を生じる化合物が知られている。この化合物中における、励起光で励起される蛍光体部I(エネルギー供与体)と、蛍光体部Iからエネルギーを受け取る他の蛍光体部II(エネルギー受容体)とは、蛍光体部間の距離等の特定の要件を満たすことに加え、各吸収スペクトルにおける最大吸収波長の差は、通常15nmを越えるように設計される。このような化合物では、蛍光体部Iから蛍光が発せられる代わりに蛍光体部IIにエネルギーが受け渡されるため、化合物としての蛍光強度は低くなってしまう。
上記の光吸収特性が互いに等価な蛍光体部の化学構造としては、上記の最大吸収波長の差を満たす限り特に制限はなく、好ましくは、蛍光体部の主骨格の構造が同じである。ただし、置換基の立体配置及び鎖長等は異なっていてもよく、また、アニオン性基又はカチオン性基を有する場合は、カウンターイオン対塩が異なっていてもよい。上記最大吸収波長の差は、好ましくは10nm以内であり、5nm以内がより好ましい。
なお、蛍光体部の吸収スペクトルとは、PBS緩衝液で希釈した蛍光体部を構成する蛍光体単体を分光光度計で測定されるスペクトルである。
上記Mとして採りうる蛍光体部は、ピロメテン色素からなる構造部であることも好ましい。ピロメテン色素としては、ジピロメテンホウ素錯体をあげることができる。ジピロメテンホウ素錯体としては、国際公開第2019/230963号に記載の一般式(1)又は(4)で表される蛍光性化合物(ジピロメテンホウ素錯体)、国際公開第2021/100814号に記載の一般式(1)で表される化合物(ジピロメテンホウ素錯体)を使用でき、これらの記載を本明細書に引用して取り込む。
なお、上記蛍光体部Mを構成する色素については、生体物質に結合可能な置換基を有しないようにして取り込む。
上記蛍光体部Mはシアニン色素からなる構造部であることが好ましく、下記一般式(α)で表されるシアニン色素からなる構造部であることがより好ましい。
Figure 2023035280000011
式中、R~Rは、アルキル基又は-(CH-CH-O)-R21を示す。bは1~50であり、R21はアルキル基を示す。
11~R13は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基又はハロゲン原子を示し、隣接する基同士が互いに結合して5又は6員環を形成していてもよい。
22~R25及びR32~R35は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、スルホ基、スルファモイル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アシルアミノ基、ニトロ基又はハロゲン原子を示す。
41及びR42は、アルキル基又は-(CH-CH-O)-R21を示す。R21及びbは、上記のR21及びbと同義である。R41及びR42は互いに結合して環を形成していてもよい。
aは、1~3の整数である。
上記のR~R、R11~R13、R22~R25、R32~R35、R41又はR42のうちのいずれかから水素原子が1つ除かれることにより、1価の構造部となる。
ただし、式(α)で表されるシアニン色素は、中性である。
上記一般式(α)で表されるシアニン色素は、共役二重結合によって結ばれた繰り返し数2a+3のメチン鎖の長さに依存して、a=1の場合に585nm付近に、a=2の場合に685nm付近に、a=3の場合に785nm付近に、それぞれ励起吸収波長を有する。そのため、一般式(α)で表されるシアニン色素からなる構造部を蛍光体部Mとして有する本発明の化合物は、それぞれ、励起光源として600nm、700nm、800nm付近のものを使用する蛍光標識において、優れた蛍光強度を示す化合物として使用できる。
多色WBでは、可視領域から近赤外領域までの範囲内において、複数の発光色を検出する。そのため、色素を励起発光させた際に互いに干渉してクロストークが起こらないように、複数の色素の吸収発光波形が適切な波長関係となるように選択する必要がある。ある励起光では1つの色素だけが光り、他の色素が光らないように調整されるのが理想的である。この観点で、例えば、多色WBの近赤外領域の発光には、700nm付近と800nm付近という、ある程度波長の離れた2種類の励起光源が用いられている。
近赤外光励起による蛍光検出は、可視光励起による検出に比べてメンブレンの自家蛍光、すなわちバックグラウンド蛍光を抑制できるため、シグナルノイズ比(S/N比)を高めやすく、目的のタンパク質を高感度に検出することが可能となる。そのため、近年、微量タンパク質の解析研究において、近赤外領域の発光を利用した蛍光検出WBの必要性が増してきている。
しかし、近赤外領域では、一般的に蛍光色素の蛍光量子収率が低く、高いシグナル量を得ることが難しい。一般式(α)で表されるシアニン色素からなる構造部を蛍光体部Mとして有する本発明の化合物のうちa=2又は3である化合物は、上記の700nm付近と800nm付近の2種類のものを有する多色WBにおいても、優れた蛍光強度を示す化合物として使用でき、特に、タンパク質をより高感度に観察、検出するという要望に対しても、従来のシアニン色素を用いた蛍光標識と比較して、優れた蛍光強度を示すことができる。
(i)R~R
~Rは、アルキル基又は-(CH-CH-O)-R21を示す。
~Rとして採りうるアルキル基は、後述する置換基群Tにおけるアルキル基と同義である。
無置換のアルキル基の炭素数は、1~6が好ましく、1~4がより好ましく、1~2がさらに好ましい。
アルキル基が置換基を有する場合、置換基を有するアルキル基のアルキル基部分の炭素数としては、1~10が好ましく、1~8がより好ましく、2~6がさらに好ましく、2~5が特に好ましい。また、置換基を有するアルキル基の最長鎖を構成する原子数としては、3~35が好ましく、3~25がより好ましく、3~15がさらに好ましく、3~11が特に好ましい。
本発明において、「置換基を有するアルキル基のアルキル基部分の炭素数」とは、アルキル基が有する置換基部分を除く炭素数を意味する。
本発明において、「置換基を有するアルキル基の最長鎖を構成する原子数」とは、置換基部分を含む原子数(すなわち、全原子数から、最長鎖を構成しない分子鎖の原子数を引いた原子数)を意味する。なお、スルホ基、カルボキシ基等の解離性の水素原子を有する置換基が最長鎖を構成する場合、解離の有無にかかわらず、水素原子を含めて計算する。また、後述する生体物質に結合可能な置換基部分における原子数は含めない。
~Rとして採りうるアルキル基が有していてもよい置換基としては、アルコキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アシルアミノ基、スルホ基、ホスホノ基及び-(CH-CH-O)-R21、並びにこれらの置換基の組み合わせからなる基が挙げられる。
~Rとして採りうる置換基を有するアルキル基としては、上記置換基を有するアルキル基であれば特に制限はない。
~Rとして採りうるアルキル基としては、無置換のアルキル基が好ましい。
(-(CH-CH-O)-R21
~Rとして採りうる-(CH-CH-O)-R21において、bは1~50であり、R21はアルキル基を示す。
bは平均繰り返し数(単に、繰り返し数とも称す。)を意味し、1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~10がさらに好ましく、4~10が特に好ましく、4~8が最も好ましい。
上記平均繰り返し数は、化合物についてH-NMR測定を行い、平均積分値より算出することができる。本発明において規定する平均繰り返し数は、上記方法により算出される平均繰り返し数の小数第一位を四捨五入して得られる数を意味する。
21におけるアルキル基は、上記R~Rとして採りうるアルキル基の記載を適用することができる。
~Rとして採りうる-(CH-CH-O)-R21及びR~Rとしてのアルキル基が置換基として有しうる-(CH-CH-O)-R21としては、-(CH-CH-O)-無置換のアルキル基が好ましい。
蛍光体部Mを構成する蛍光色素そのものを蛍光強度に優れた構造とする観点からは、R~Rの少なくとも1つが、-(CH-CH-O)-で表される構造を含むことが好ましく、R及びRの少なくとも1つとR及びRの少なくとも1つとが、-(CH-CH-O)-で表される構造を含むことがより好ましい。
本発明の化合物中における全ての蛍光体部Mが一般式(α)で表されるシアニン色素からなる構造部であって、R及びRの少なくとも1つとR及びRの少なくとも1つとが、-(CH-CH-O)-で表される構造を含むことがさらに好ましい。
上記-(CH-CH-O)-で表される構造は、R~Rとして-(CH-CH-O)-R21を採ることにより導入されていることが好ましい。
上記-(CH-CH-O)-におけるbは、上記-(CH-CH-O)-R21におけるbと同義である。
~Rの置換基はシアニン色素骨格(平面)に対し垂直方向へ張り出すため、この置換基として-(CH-CH-O)-で表される構造を含むことにより、縮環部分がπ-π相互作用しにくくなり、蛍光体部Mを構成する色素そのものとして、会合抑制効果に優れた構造とすることができる。
(ii)R11~R13
11~R13は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基又はハロゲン原子を示す。隣接する基同士が互いに結合して5又は6員環を形成していてもよい。
11~R13として採りうるアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基及びハロゲン原子は、後述する置換基群Tにおけるアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基及びハロゲン原子と同義であり、好ましい範囲も同じである。
11~R13におけるアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基及びアミノ基が有していてもよい置換基としては、後述する置換基群Tにおける置換基が挙げられる。
11~R13のうち、隣接する基同士が互いに結合して形成される5又は6員環は、芳香族性又は脂肪族性のいずれであってもよく、脂肪族性であることが好ましい。また、6員環を形成することが好ましい。化合物中における上記の5又は6員環の数は特に制限されないが、1又は2個が好ましく、1個がより好ましい。
例えば、a=3の場合を例にすると、R11~R13のうち隣接する基同士が結合して形成される環を有する構造としては、下記構造が好ましく挙げられる。なお、下記例においては、環構造を形成していないR11~R13は水素原子であり、環構造は置換基を有しない構造を記載しているが、これらに限定されるものではない。また、下記において、波線の先の構造は省略して記載する。
Figure 2023035280000012
11及びインドレニン環に結合する炭素原子が有するR13は、水素原子が好ましい。
12及び上記以外のR13は、水素原子又はアルキル基が好ましい。
11~R13のうち、R11及びインドレニン環に結合する炭素原子が有するR13以外のR12~R13における隣接する基同士(すなわち、インドレニン環に結合する炭素原子が有するR13以外のR13とR12のうちの隣接する基同士)が、互いに結合して5又は6員環を形成していることが好ましく、6員環を形成していることがより好ましい。また、インドリン環及びインドレニン環を結ぶ結合の中心部分に上記5又は6員環を形成していることが好ましい。インドリン環及びインドレニン環を結ぶ結合の中心部分に形成される環とは、インドリン環及びインドレニン環からの結合原子数が等しくなる炭素原子を環構成原子として含む環を意味する。
上記蛍光体部Mは、上記のR~R、R11~R13、R22~R25、R32~R35、R41又はR42のうちのいずれかから水素原子が1つ除かれることにより、1価の構造部となる。
具体的には、R~R、R11~R13、R22~R25、R32~R35、R41又はR42として採り得る置換基から水素原子が1つ除かれることにより1価の構造部となるか、R11~R13、R22~R25又はR32~R35として採り得る水素原子が除かれ、R11~R13、R22~R25又はR32~R35が結合していた炭素原子と上記Xとが直接結合する。
なかでも、上記蛍光体部Mは、上記R41及びR42が結合して形成した環上から水素原子が1つ除かれることにより1価の構造部となることが好ましい。
(iii)R22~R25及びR32~R35
22~R25及びR32~R35は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、スルホ基、スルファモイル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アシルアミノ基、ニトロ基又はハロゲン原子を示す。これらR22~R25及びR32~R35は、隣接する基同士が互いに結合して縮合環を形成していていてもよい。
22~R25及びR32~R35として採りうるアルキル基、アルコキシ基、アリール基、スルホ基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アシルアミノ基、ニトロ基及びハロゲン原子は、それぞれ、後述する置換基群Tにおけるアルキル基、アルコキシ基、アリール基、スルホ基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アシルアミノ基、ニトロ基及びハロゲン原子と同義である。
22~R25及びR32~R35のうち隣接する基同士が互いに結合して形成される縮合環としては、特に制限はないが、例えば、ナフタレン環が挙げられる。なお、蛍光体部Mを構成する色素そのものの会合抑制の観点から、R22~R25及びR32~R35のうち隣接する基同士が互いに結合しておらず、縮合環を形成していないことが好ましい。
蛍光体部Mを構成する色素そのものの水溶性の向上および会合抑制の観点から、R22~R25の少なくとも1つとR32~R35の少なくとも1つとが親水性基を有することが好ましく、R22~R25が結合する環及びR32~R35が結合する環の数1つに付き少なくとも1つの親水性基を有することがより好ましい。例えば、R22~R25及びR32~R35うち隣接する基同士が互いに結合して縮合環としてナフタレン環をそれぞれ形成している場合、R22~R25が結合する環の数は2つ、R32~R35が結合する環の数は2つとなり、R22~R25の少なくとも2つ及びR32~R35の少なくとも2つが親水性基を有することがより好ましいことを意味する。上限値は、構造として可能な限り特に制限されず、後述する化合物全体としての親水性基の数にあわせて、適宜調整することができる。
22~R25の少なくとも1つとR32~R35の少なくとも1つとが有することが好ましい親水性基としては、特に制限されないが、例えば、置換基を有するアルコキシ基、カルボキシ基、スルホ基及びホスホノ基が挙げられ、スルホ基が好ましい。
22~R25及びR32~R35は、水素原子、アルキル基、スルホ基、ニトロ基又はハロゲン原子が好ましく、水素原子、アルキル基、スルホ基又はハロゲン原子がより好ましく、水素原子、アルキル基又はスルホ基がさらに好ましい。
(iv)R41及びR42
41及びR42は、アルキル基又は-(CH-CH-O)-R21を示す。R21及びbは、上記のR21及びbと同義である。
41及びR42におけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、アルコキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アシルアミノ基、スルホ基及びホスホノ基並びにこれらの置換基の組み合わせからなる基が挙げられる。
41及びR42として採りうるアルキル基は、後述する置換基群Tにおけるアルキル基と同義である。
無置換のアルキル基の炭素数は、1~6が好ましく、1~4がより好ましく、1~3がさらに好ましい。
置換基を有するアルキル基のアルキル基部分の炭素数は、1~10が好ましく、1~8がより好ましく、1~7がさらに好ましく、1~6がさらに好ましく、1~5がさらに好ましい。また、置換基を有するアルキル基の最長鎖を構成する原子数は、3~14が好ましく、3~12がより好ましく、3~10がさらに好ましい。
41及びR42として採り得る置換基を有するアルキル基としては、水溶性をより向上させる観点からは、アルコキシ基、カルボキシ基、スルホ基及びホスホノ基の少なくとも1つを置換基として有するアルキル基が好ましく、カルボキシ基及びスルホ基の少なくとも1つを置換基として有するアルキル基がより好ましい。なお、上記の好ましい置換基(アルコキシ基、カルボキシ基、スルホ基及びホスホノ基)と、これらの置換基以外の基との組合わせからなる置換基を有するアルキル基であってもよい。
また、上記R~Rが採り得る、置換基を有するアルキル基の形態も好ましく適用できる。
41及びR42として採りうる-(CH-CH-O)-R21は、上記R~Rにおける-(CH-CH-O)-R21の記載を好ましく適用することができる。
41及びR42は互いに結合して環を形成していてもよい。
上記一般式(α)で表されるシアニン色素のうち、R41及びR42が互いに結合して環を形成した構造としては、下記一般式(β)で表されるシアニン色素が好ましく挙げられる。
Figure 2023035280000013
式中、L及びLはアルキレン基又は-(CH-CH-O)-アルキレン-*を示す。*はUとの結合位置を示す。
連結基Uは原子数1~100の2価の連結基を示す。
~R、R11~R13、R22~R25、R32~R25、b及びaは上記一般式(α)におけるR~R、R11~R13、R22~R25、R32~R25、b及びaと同義であり、特段の断りのない限り、好ましい範囲も同じである。
~R、L、L及びUの少なくとも1つは-(CH-CH-O)-で表される構造を含む。bは、上記bと同義である。
ただし、式(α)で表されるシアニン色素は、中性である。
及びLとして採りうるアルキレン基は、R41及びR42として採りうる置換基を有するアルキル基から水素原子又は置換基を1つ除いて得られるアルキレン基に相当する。
及びLとして採りうるアルキレン基のアルキレン基部分の炭素数は、R41及びR42における置換基を有するアルキル基のアルキル基部分の炭素数の記載を好ましく適用することができる。
及びLとして採りうる-(CH-CH-O)-アルキレン-*は、R41及びR42として採りうる-(CH-CH-O)-R21(R21は置換基を有するアルキル基を示す。)のうち、R21としてのアルキル基から水素原子又は置換基を1つ除いて得られる-(CH-CH-O)-アルキレンに相当する。
及びLとして採り得うる-(CH-CH-O)-アルキレン-*において、bは1~10が好ましく、1~8がより好ましく、アルキレン基部分の炭素数は、R41及びR42における置換基を有するアルキル基のアルキル基部分の炭素数の記載を好ましく適用することができる。
蛍光体部Mを構成する色素そのものを蛍光強度に優れた構造とする観点から、L及びLはいずれも、-(CH-CH-O)-で表される構造を含むことが好ましい。
連結基Uを構成する総原子数は、1~100であり、10~90が好ましく、20~90がより好ましく、30~80がさらに好ましい。
連結基Uは、アルキレン基、-O-、-NR50-、-COO-、-CONR50-及び-SONR50-から選ばれる3つ以上が結合して形成される2価の連結基であることが好ましい。R50は、水素原子又はアルキル基を示す。
連結基Uとして採り得るアルキレン基のアルキレン部分の炭素数は、1~10が好ましく、1~8がより好ましく、1~7がさらに好ましく、1~6が特に好ましく、1~5が最も好ましい。
本発明において、「アルキレン基のアルキレン部分の炭素数」とは、アルキレン基が有する置換基部分を除く炭素数を意味する。
50として採り得るアルキル基は、上記R~Rにおけるアルキル基の記載を好ましく適用することができる。
50としては水素原子が好ましい。
連結基Uを構成する上記のアルキレン基、-O-、-NR50-、-COO-、-CONR50-及び-SONR50-の数は、3~11が好ましく、3~7がより好ましく、3~5がさらに好ましく、3が特に好ましい。
連結基Uは、L及びLとの連結部が-O-、-NR50-、-COO-、-CONR50-又は-SONR50-であることが好ましい。すなわち、連結基Uは、連結基Uを構成する、-O-、-NR50-、-COO-、-CONR50-又は-SONR50-を介して、L及びLのアルキレン基に対して結合していることが好ましい。連結基Uは、L及びLとの連結部が-O-、-NR50-、-COO-、-CONR50-又は-SONR50-であって、上記の連結部同士がアルキレン基で結ばれた2価の連結基であることがより好ましい。
連結基Uは、水素原子が1つ除かれることにより1価の構造部、すなわち、蛍光体部Mとなることが好ましい。連結基Uにおいて、水素原子が1つ除かれる箇所としては、アルキレン基又はR50としてのアルキル基が挙げられ、アルキレン基が好ましい。
連結基Uにおいて、アルキレン基又はR50としてのアルキル基における水素原子が1つ除かれる際には、アルキレン基又はR50としてのアルキル基から直接水素原子が1つ除かれてもよく、アルキレン基又はR50としてのアルキル基に対して連結基ZZZが結合し、この連結基ZZZが結合手となっていてもよい。
上記連結基ZZZとしては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、-O-、-S-、>C=O、>NR60、>S=O、-S(=O)-、>P(=O)OR70、-COO-、-CONR60-及び-(CH-CH-O)-、並びにこれらの置換基の組み合わせからなる基が挙げられる。組み合わせる数は、特に制限はないが、例えば、2~20とすることができ、2~7が好ましく、2~5がより好ましい。
60及びR70は水素原子又はアルキル基であり、水素原子が好ましい。R60及びR70として採り得るアルキル基としては、上記R50におけるアルキル基の記載を好ましく適用することができる。
pは繰り返し数を表し、1~10が好ましく、1~8がより好ましく、1~4がさらに好ましい。
(v)a
aは、1~3の整数であって、2又は3の整数が好ましい。
上記一般式(α)で表されるシアニン色素において、R~R、R41及びR42の少なくとも1つは、-(CH-CH-O)-で表される構造を含むことが好ましい。bは上記bと同義である。これにより、蛍光体部Mを構成する色素そのものを蛍光強度に優れた構造を有する色素とすることができる。
また、上記一般式(α)で表されるシアニン色素は、本発明の化合物として十分な親水性を付与する観点から、一般式(α)で表されるシアニン色素1分子あたりの親水性基の数は、2個以上であることが好ましく、2~8個であることがより好ましく、2~6個であることがさらに好ましく、3~6個であることが特に好ましい。
親水性基としては、前述のR22~R25及びR32~R35が採りうる親水性基の記載を適用することができる。
親水性基の位置は、特段の断りがない限り特に制限されず、上記親水性基を有する基としては、例えば、R22~R25、R32~R35、R41又はR42が好ましく挙げられる。
なお、上記一般式(α)又は(β)で表される構造中において、いずれの置換基から水素原子が1つ除かれて1価の構造部(蛍光体部M)となってもよいが、例えば、連結基Uから水素原子が1つ除かれて1価の構造部となることが好ましい。
なお、上記一般式(α)又は(β)で表される構造中において、いずれの置換基から水素原子が1つ除かれて1価の構造部(蛍光体部M)となってもよいが、例えば、連結基Uから水素原子が1つ除かれて1価の構造部となることが好ましい。
Mとして採りうる生理活性物質部としては、生理活性物質からなる構造部である限り、特に制限することなく用いることができる。生理活性物質としては、例えば、ビタミン、補酵素、ホルモン、抗生物質、神経伝達物質、サイトカイン等が挙げられ、より具体的には、特開2021-020956の段落[0095]に記載の、カリチアマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、シクロシチジン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メトトレキセート、シスプラチンもしくはその誘導体、オーリスタチンもしくはその誘導体、メイタンシンもしくはその誘導体、タキソールもしくはその誘導体、カンプトテシンもしくはその誘導体などであり、特開2021-020956の段落[0095]~[0099]の記載を適用することができる。
Mとして採りうるプロドラッグ部としては、生体内で代謝されて生理活性物質に変化する化合物からなる構造部である限り、特に制限することなく用いることができる。プロドラッグとしては、例えば、特開2020-105187の段落[0003]の記載(2-ピロリノドキソルビシンのプロドラッグ形態)を適用することができる。
Mとして採りうる放射性同位体含有部としては、医療分野で利用可能な放射性同位体を含む構造部である限り、特に制限することなく用いることができる。放射性同位体としては、例えば、ヨウ素131、インジウム111、イットリウム90、およびルテチウム177が挙げられるが、これらに制限されない。特開2021-11483の段落[0225]の記載を適用することができる。放射性同位体を含む構造部としては、上記放射性同位体がアミノ基もしくは第三級アミンの窒素原子、スルファニル基、アリール基又はヘテロアリール基等に結合又は配位した構造部が挙げられる。上記放射性同位体に第三級アミンの窒素原子が配位した構造部としては、上記放射性同位体にDOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸)などが配位し錯体を形成した構造部が挙げられ、上記放射性同位体にスルファニル基が配位した構造部としては、Diacetylbis(N(4)-methylthiosemicarbazonato) Copper(II)などの錯体からなる構造部が挙げられる。
本発明の化合物のうち、一般式(II)で表される化合物をペプチド合成法を利用して得る場合、通常、紙面上右側がC末端構造、紙面上左側がN末端構造となる。
本発明の化合物は、上記Qで表される置換基、すなわち、カルボキシ基、生体物質に結合可能な置換基又は固体支持体に結合可能な置換基を少なくとも1つ含むことが好ましい。
本発明の化合物は、カルボキシ基又は後述の生体物質に結合可能な置換基により、生体物質と結合し、目的とする標識生体物質を得ることができる。なお、カルボキシ基は、生体物質に結合可能な置換基を常法により容易に誘導することができる。
また、本発明の化合物は、カルボキシ基又は後述の固体支持体に結合可能な置換基により、固体支持体と結合し、目的とする標識マイクロ粒子等を得ることができる。マイクロ粒子とは、特に限定されないが、ガラス製ビーズ、磁気ビーズ等の非ポリマー製ビーズ、ポリマー製ビーズなどを含めた、本発明の化合物への結合に有用な小型粒子を挙げることができる。ある種の実施形態では、マイクロ粒子はポリスチレン製ビーズを含む。小型粒子とは、蛍光標識において常用されるサイズであれば特に制限されないが、通常、平均粒子径は50~800である。なお、カルボキシ基は、固体支持体に結合可能な置換基を常法により容易に誘導することができる。
本発明において、便宜上、生体物質に結合可能な置換基及び固体支持体に結合可能な置換基にはカルボキシ基は含まれず、「生体物質に結合可能な置換基」は、カルボキシ基から誘導される生体物質に結合可能な置換基を含み、「固体支持体に結合可能な置換基」は、カルボキシ基から誘導される固体支持体に結合可能な置換基を含む。ただし、上述の通り、カルボキシ基によって生体物質又は固体支持体に結合することも可能である。
本発明の化合物において、上記Qで表される置換基を有する位置は、一般式(I)で表される化合物において特定されている位置であるが、側鎖の一部として、例えば、一般式(II)におけるR及びRのいずれか一方で示される位置にさらに有していてもよい。
本発明の化合物中における上記Qで表される置換基の数は、合計で、少なくとも1つ以上であればよく、検出対象物質の定量の観点から、1~3つが好ましく、1つ又は2つがより好ましく、1つがさらに好ましい。
また、本発明の化合物は、化合物として十分な親水性を付与する観点から、Lの末端以外の位置に、親水性基Rを有することも好ましく、例えば、親水性基Rを化合物中に1個以上有することが好ましく、1~8個有することがより好ましく、1~6個有することがさらに好ましい。
親水性基Rの位置は、特段の断りがない限り特に制限されず、上記親水性基Rを有する基としては、例えば、一般式(II)におけるL、L、又はL上の置換基が好ましく挙げられる。
以下に、本発明の化合物の具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。下記具体例において、スルホ基は、水素原子が解離して塩構造を採っていてもよい。下記具体例において、Dyeは蛍光体部を示す。以下の例示化合物は、末端に生体物質に結合可能な置換基としてNHSエステル構造(N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)を有する態様である。
Figure 2023035280000014
Figure 2023035280000015
Figure 2023035280000016
本発明の化合物は、化合物が有する少なくとも1つの生体物質に結合可能な置換基によって、タンパク質、(ペプチドを含む)、アミノ酸、核酸、ヌクレオチド、糖鎖及び脂質などの生体物質に結合させることができ、標識生体物質として用いることができる。
生体物質に結合可能な置換基としては、生体物質に作用(付着を含む)もしくは結合するための基であれば、特に制限することなく用いることができ、国際公開第2002/026891号等に記載の置換基を挙げることができる。
「生体物質に結合可能な置換基」としては、具体的には、下記の構造を挙げることができる。
Figure 2023035280000017
Xは、ヨウ素原子、臭素原子などのハロゲン原子を意味する。*は結合手を示す。
上記の他にも、「生体物質に結合可能な置換基」として、ペプチド構造(ポリアミノ酸構造)、長鎖アルキル基等を用いることができる。
なかでも、NHSエステル構造(N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、スクシンイミド構造、マレイミド構造、アジド基、アセチレン基、ペプチド構造(ポリアミノ酸構造)、長鎖アルキル基(好ましくは、炭素数12~30)、4級アンモニウム基が好ましく挙げられる。
本発明の化合物のうち、生体物質に結合可能な置換基を少なくとも1つ有する化合物の具体例としては、例えば、上述の本発明の例示化合物(NHSエステル構造を有する化合物)の他に、NHSエステル構造を上記の生体物質に結合可能な置換基に適宜置き換えた形態も、具体例として挙げられる。なお、本発明はこれらの化合物に限定されない。例えば、これらの具体例において、カルボキシ基及びスルホ基等の解離性の水素原子を有する基については、水素原子が解離して塩構造を採っていてもよい。
本発明の化合物は、化合物が有する少なくとも1つの固体支持体に結合可能な置換基によって、上述のマイクロ粒子などの固体支持体に結合させることができ、固体支持体試薬として用いることができる。
固体支持体に結合可能な置換基としては、固体支持体に作用(付着を含む)もしくは結合するための基であれば、特に制限することなく用いることができ、NHSエステル構造(N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、スクシンイミド構造、マレイミド構造、アジド基、アセチレン基、ペプチド構造(ポリアミノ酸構造)、長鎖アルキル基(好ましくは、炭素数12~30)、4級アンモニウム基等が好ましく挙げられる。なかでも、NHSエステル構造(N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、スクシンイミド構造、マレイミド構造が好ましく挙げられる。「固体支持体に結合可能な置換基」の具体的な構造としては、上述の「生体物質に結合可能な置換基」について挙げた具体的な構造を用いることができる。
本発明の化合物のうち、固体支持体に結合可能な置換基を少なくとも1つ有する化合物の具体例としては、例えば、上述の本発明の例示化合物(NHSエステル構造を有する化合物)の他に、NHSエステル構造を上記の固体支持体に結合可能な置換基に適宜置き換えた形態も、具体例として挙げられる。なお、本発明はこれらの化合物に限定されない。例えば、これらの具体例において、カルボキシ基及びスルホ基等の解離性の水素原子を有する基については、水素原子が解離して塩構造を採っていてもよい。
本発明の化合物は、常法により合成できる。例えば、ペプチド固相合成等のペプチド合成に基づき合成することができ、国際公開第20181/74078号に記載のペプチド自動合成装置を用いた方法も好ましく適用することができる。蛍光体部、生理活性物質部、プロドラッグ部及び放射性同位体含有部についても、常法に基づき合成し、本発明の化合物中に導入することができる。
生体物質に結合可能な置換基を有する化合物についても、常法により合成できる。例えば、Bioconjugate Techniques(Third Edition、Greg T. Hermanson著)を参照することができる。
<<標識生体物質>>
本発明の標識生体物質は、本発明の化合物と生体物質とが結合した物質である。本発明の化合物は蛍光体部に起因した蛍光性を有し、優れた蛍光強度を示すため、標識生体物質に好ましく用いることができる。本発明の化合物と生体物質との結合は、本発明の化合物と生体物質とが直接結合した形態でもよいし、連結基を介して連結した形態でもよい。
上記生体物質としては、タンパク質(ペプチドを含む)、アミノ酸、核酸、ヌクレオチド、糖鎖及び脂質が好ましく挙げられる。タンパク質としては抗体が好ましく挙げられ、脂質としてはリン脂質、脂肪酸及びステロールが好ましく挙げられ、リン脂質がより好ましい。
上記生体物質のうち、臨床病理的に有用な物質としては、特に制限されるものではないが、例えば、Ig(Immunoglobulin)G、IgM、IgE、IgA、IgD等の免疫グロブリン、補体、C反応性蛋白(CRP)、フェリチン、αマイクログロブリン、βマイクログロブリン等の血漿タンパク及びそれらの抗体、α-フェトプロテイン、癌胎児抗原(CEA)、前立線性酸性フォスファターゼ(PAP)、CA(carbohydrate antigen)19-9、CA‐125等の腫瘍マーカー及びそれらの抗体、黄体化ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ヒト繊毛性ゴナドトロビン(hCG)、エストロゲン、インスリン等のホルモン類及びそれらの抗体、B型肝炎ウイルス(HBV)関連抗原(HBs、HBe、HBc)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、成人T細胞白血病(ATL)等のウイルス感染関連物質及びそれらの抗体、等が挙げられる。
さらに、ジフテリア菌、ボツリヌス菌、マイコプラズマ、梅毒トレポネーマ等のバクテリア及びそれらの抗体、トキソプラズマ、トリコモナス、リーシュマニア、トリバノゾーマ、マラリア原虫等の原虫類及びそれらの抗体、ELM3、HM1、KH2、v6.5、v17.2、v26.2(由来マウス129、129/SV、C57BL/6、BALB/c)等のES細胞(Embryonic Stem Cell)及びそれらの抗体、フェニトイン、フェノバルビタール等の抗てんかん薬、キニジン、ジゴキニシン等の心血管薬、テオフィリン等の抗喘息薬、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン等の抗生物質等の薬物類及びそれらの抗体、その他の酵素、菌体外毒素(スチレリジンO等)及びそれらの抗体等も挙げられる。また、Fab’2、Fab、Fv等の抗体断片も用いる事ができる。
本発明の化合物と生体物質が相互作用して結合した具体的な形態としては、例えば、下記に記載する形態が挙げられる。
i)本発明の化合物中のペプチドと生体物質中のペプチドとの非共有結合(例えば、水素結合、キレート形成を含むイオン結合)又は共有結合、
ii)本発明の化合物中の長鎖アルキル基と生体物質中の脂質二重膜及び脂質などとのファンデルワールス力、
iii)本発明の化合物中のNHSエステル(N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)と生体物質中のアミノ基との反応によるアミド結合、
iv)本発明の化合物中のマレイミド基と生体物質中のスルファニル基(-SH)との反応によるチオエーテル結合、
v)本発明の化合物中のアジド基と生体物質中のアセチレン基とのClick反応又は化合物(1)中のアセチレン基と生体物質中のアジド基とのClick反応によるトリアゾール環の形成、
が挙げられる。
ただし、上記i)の形態において、本発明の化合物中におけるペプチドは、生体物質中のペプチドと非共有結合又は共有結合を形成可能なペプチドであれば特に制限されず、このようなペプチドを有する位置としては、例えば、一般式(II)におけるR又はQが好ましく挙げられる。
上記i)~v)の形態以外にも、例えば、Lucas C. D. de Rezende and Flavio da Silva Emery,. A Review of the Synthetic Strategies for the Development of BODIPY Dyes for Conjugation with Proteins, Orbital: The Electronic Journal of Chemistry, 2013, Vol 5, No. 1, p.62-83に記載の形態により結合することができる。また、本発明の標識生体物質の作製においても、同文献に記載の方法等を適宜参照することができる。
本発明の化合物のうち、生体物質に結合可能な置換基を有する化合物と、これと相互作用により結合する生体物質とから得られる本発明の標識生体物質については、特開2019-172826号公報の段落0038の化合物例及び生成物の記載において、生体物質に結合可能な置換基以外の部分を本発明の化合物に置き換えた化合物ならびにその生成物が挙げられる。ただし、本発明はこれらの標識生体物質等に限定されない。
<標識生体物質を含む試薬>
本発明の標識生体物質を含む試薬において、本発明の標識生体物質は、例えば、生理食塩水及びリン酸緩衝液等の水系媒体に溶解した溶液形態、並びに、微粒子状粉末及び凍結乾燥粉末等の固形形態等、特に制限されることなく、使用目的等に応じてその形態を適宜選択することができる。
例えば、蛍光標識試薬として本発明の標識生体物質を用いる場合に、上記いずれかの形態の標識生体物質を含む試薬として使用することもできる。
<標識生体物質の用途>
本発明の化合物から得られる本発明の標識生体物質は、優れた蛍光強度を示すことができ、光照射により励起された標識生体物質から放出される蛍光を安定的に検出することができる。このため、本発明の標識生体物質は、蛍光標識を用いた種々の技術に適用することができ、例えば、多色WB若しくはドットブロッティングにおける蛍光標識試薬又は生体蛍光イメージング試薬として好適に用いることができる。
本発明の標識生体物質を用いて行う蛍光検出は、通常、以下(i)~(iii)または(iv)~(vii)の工程を含む。(i)~(iii)の工程を含む蛍光検出は、本発明の化合物で蛍光標識した一次抗体を用いる直接法に該当し、(iv)~(vii)の工程を含む蛍光検出は、本発明の化合物で蛍光標識した二次抗体を用いる間接法に該当する。
(i)下記(a)及び(b)をそれぞれ用意する工程
(a)標的とする生体物質(以下、「標的生体物質」とも称す。)を含む試料
(b)上記(a)における標的生体物質と結合可能な生体物質(以下、「一次生体物質」とも称す。)と、本発明の化合物と、が結合した本発明の標識生体物質(以下、「本発明の標識生体物質A」とも称す。)
(ii)上記(a)における標的生体物質と、上記(b)の本発明の標識生体物質Aにおける一次生体物質と、が結合した結合体(以下、「蛍光標識された結合体A」とも称す。)を用意する工程
(iii)上記の蛍光標識された結合体Aに、本発明の標識生体物質Aが吸収する波長域の光を照射し、本発明の標識生体物質Aが発する蛍光を検出する工程
(iv)下記(c)~(e)をそれぞれ用意する工程
(c)標的生体物質を含む試料
(d)上記(c)における標的生体物質と結合可能な生体物質(以下、「一次生体物質」とも称す。)
(e)上記(d)の一次生体物質と結合可能な生体物質(以下、「二次生体物質」とも称す。)と、本発明の化合物と、が結合した本発明の標識生体物質(以下、「本発明の標識生体物質B」とも称す。)
(v)上記(c)における標的生体物質と、上記(d)の一次生体物質と、が結合した結合体(以下、「結合体b」とも称す。)を用意する工程
(vi)上記結合体bにおける一次生体物質と、本発明の標識生体物質Bにおける二次生体物質と、が結合した結合体(以下、「蛍光標識された結合体B2」とも称す。)を用意する工程
(vii)上記の蛍光標識された結合体B2に、本発明の標識生体物質Bが吸収する波長域の光を照射し、本発明の標識生体物質Bが発する蛍光を検出する工程
上記の標的生体物質と結合可能な生体物質(一次生体物質)、及び、一次生体物質と結合可能な生体物質(二次生体物質)としては、上記本発明の標識生体物質における生体物質が挙げられる。標的生体物質(被検体中の生体物質)又は一次生体物質にあわせて適宜選択することができ、被検体中の生体物質又は一次生体物質に対して特異的に結合可能な生体物質を選択することができる。
上記標的生体物質のうち、タンパク質としては、いわゆる疾患マーカーが挙げられる。疾患マーカーとしては、特に制限はされるものではないが、例えば、α-フェトプロテイン(AFP)、PIVKA-II(protein induced by vitamin K absence or antagonist II)、BCA(breast carcinoma-associated antigen)225、塩基性フェトプロテイン(BFP)、CA(carbohydrate antigen)15-3、CA19-9、CA72-4、CA125、CA130、CA602、CA54/61(CA546)、癌胎児性抗原(CEA)、DUPAN-2、エラスターゼ1、免疫抑制酸性タンパク(IAP)、NCC-ST-439、γ-セミノプロテイン(γ-Sm)、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺酸性フォスファターゼ(PAP)、神経特異エノラーゼ(NSE)、Iba1、アミロイドβ、タウ、フロチリン、扁平上皮癌関連抗原(SCC抗原)、シアリルLeX-i抗原(SLX)、SPan-1、組織ポリペプタイド抗原(TPA)、シリアルTn抗原(STN)、シフラ(cytokeratin:CYFRA)ペプシノゲン(PG)、C-反応性タンパク(CRP)、血清アミロイドAタンパク(SAA)、ミオグロビン、クレアチンキナーゼ(CK)、トロポニンT、心室筋ミオシン軽鎖I等が挙げられる。
上記標的生体物質は細菌でもよく、この細菌としては、細胞微生物学的検査の対象とされる細菌が挙げられ、特に制限されるものではないが、例えば、大腸菌、サルモネラ菌、レジオネラ菌、公衆衛生上の問題を生じる菌等が挙げられる。
上記標的生体物質はウイルスでもよく、このウイルスとしては、特に制限されるものではないが、例えば、C型、B型肝炎ウイルスの抗原等の肝炎ウイルス抗原、HIVウイルスのp24タンパク抗原、CMV(サイトメガロウイルス)のpp65タンパク抗原、HPV(ヒトパピローマウイルス)のE6及びE7タンパク等が挙げられる。
上記(i)または(iv)において、標的生体物質を含む試料は、特に制限されることなく、常法に従って調製することができる。
また、本発明の標識生体物質も、特に制限されることなく、標的生体物質と結合可能な生体物質と本発明の化合物とを常法に従って結合させて調製することができる。結合の形態及び結合を形成する反応は、上記本発明の標識生体物質で説明した通りである。
上記(v)において、標的生体物質と一次生体物質とは、直接結合させても、標的生体物質及び一次生体物質とは異なるその他の生体物質を介して結合させてもよい。また、上記(vi)において、結合体bにおける一次生体物質と、本発明の標識生体物質Bにおける二次生体物質とは、直接結合させても、一次生体物質及び二次生体物質とは異なるその他の生体物質を介して結合させてもよい。
本発明の標識生体物質は、直接法及び間接法のいずれにおける蛍光標識抗体としても用いることができるが、間接法における蛍光標識抗体として用いることが好ましい。
上記(ii)または(v)及び(vi)において、本発明の標識生体物質等と標的生体物質との結合は、特に制限されることなく、常法に従って行うことができる。
上記(iii)または(vii)において、本発明の標識生体物質を励起するための波長は、本発明の標識生体物質を励起可能な発光波長(波長光)であれば特に限定されない。通常、300~1000nmが好ましく、400~800nmがより好ましい。
本発明に用いられる蛍光励起光源としては、本発明の標識生体物質を励起可能な発光波長(波長光)を発光するものであれば特に限定されず、例えば、各種レーザー光源を用いることができる。また、各種光学フィルターを用いて、好ましい励起波長を得たり、蛍光のみを検出したりする事ができる。
上記(i)~(vii)におけるその他の事項については、特に制限されることなく、蛍光標識を用いる蛍光検出において通常用いられる手法、試薬、装置等の条件を適宜選択することができる。
また、上記(i)~(vii)以外の工程についても、蛍光標識を用いる種々の手法にあわせて、通常用いられる手法、試薬、装置等の条件を適宜選択することができる。
例えば、本発明の標識生体物質を用いた多色WBは、標的生体物質として通常用いられる手法(電気泳動によるタンパク質の分離、メンブレンへのブロッティング、メンブレンのブロッキング)によりブロットメンブレンを作製し、本発明の標識生体物質を標識抗体(好ましくは、二次抗体)として用いることにより、優れた蛍光強度で標的生体物質を検出することができる。本発明の標識生体物質を用いたドットブロッティングについても、多色WBと同様、標的生体物質として通常用いられる手法によりブロットニトロセルロース膜又はブロットPVDF(ポリフッ化ビニリデン)膜等を作製し、本発明の標識生体物質を標識抗体(好ましくは、二次抗体)として用いることにより、優れた蛍光強度で標的生体物質を検出することができる。
- 置換基群T -
本発明において、好ましい置換基としては、下記置換基群Tから選ばれる置換基が挙げられる。
また、本発明において、単に置換基としてしか記載されていない場合は、この置換基群Tを参照するものであり、各々の基、例えば、アルキル基、が記載されているのみの場合は、この置換基群Tの対応する基が好ましく適用される。
さらに、本発明において、アルキル基を環状(シクロ)アルキル基と区別して記載している場合、アルキル基は、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基を包含する意味で用いる。一方、アルキル基を環状アルキル基と区別して記載していない場合、及び、特段の断りがない場合、アルキル基は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基及びシクロアルキル基を包含する意味で用いる。このことは、環状構造を採りうる基(アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等)を含む基(アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニルオキシ基等)、環状構造を採りうる基を含む化合物についても同様である。基が環状骨格を形成しうる場合、環状骨格を形成する基の原子数の下限は、この構造を採りうる基について下記に具体的に記載した原子数の下限にかかわらず、3以上であり、5以上が好ましい。
下記置換基群Tの説明においては、例えば、アルキル基とシクロアルキル基のように、直鎖又は分岐構造の基と環状構造の基とを明確にするため、これらを分けて記載していることもある。
置換基群Tに含まれる基としては、下記の基を含む。
アルキル基(好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~20、さらに好ましくは炭素数1~12、さらに好ましくは炭素数1~8、さらに好ましくは炭素数1~6、特に好ましくは炭素数1~3)、アルケニル基(好ましくは炭素数2~30、より好ましくは炭素数2~20、さらに好ましくは炭素数2~12、さらに好ましくは炭素数2~6、さらに好ましくは炭素数2~4)、アルキニル基(好ましくは炭素数2~30、より好ましくは炭素数2~20、さらに好ましくは炭素数2~12、さらに好ましくは炭素数2~6、さらに好ましくは炭素数2~4)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20であり、5又は6員環が好ましい。)、シクロアルケニル基(好ましくは炭素数5~20)、アリール基(単環の基であってもよく、縮環の基(好ましくは2~6環の縮環の基)であってもよい。縮環の基である場合、5~7員環等からなる。アリール基は好ましくは炭素数6~40、より好ましくは炭素数6~30、さらに好ましくは炭素数6~26、特に好ましくは炭素数6~10)、ヘテロ環基(環構成原子として少なくとも1つの窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子又はセレン原子を有し、単環の基であってもよく、縮環の基(好ましくは2~6環の縮環の基)であってもよい。単環の基である場合、その環員数は5~7員が好ましく、5員又は6員がより好ましい。ヘテロ環基の炭素数は好ましくは2~40、より好ましくは2~20である。ヘテロ環基は芳香族ヘテロ環基(ヘテロアリール基)及び脂肪族ヘテロ環基(脂肪族複素環基)が包含される。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~12)、アルケニルオキシ基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~12)、アルキニルオキシ基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~12)、シクロアルキルオキシ基(好ましくは炭素数3~20)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6~40、より好ましくは炭素数6~26、さらに好ましくは炭素数6~14)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数2~20)、ポリアルキレンオキシ構造を有する基(下記の-(L-O)又は-(LL-O)-)、
アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~20)、シクロアルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数4~20)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数6~20)、アミノ基(好ましくは炭素数0~20で、無置換アミノ基(-NH)、(モノ-又はジ-)アルキルアミノ基、(モノ-又はジ-)アルケニルアミノ基、(モノ-又はジ-)アルキニルアミノ基、(モノ-又はジ-)シクロアルキルアミノ基、(モノ-又はジ-)シクロアルケニルアミノ基、(モノ-又はジ-)アリールアミノ基、(モノ-又はジ-)ヘテロ環アミノ基を含む。無置換アミノ基を置換する上記各基は置換基群Tの対応する基と同義である。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0~20で、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールのスルファモイル基が好ましい。)、アシル基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数2~15)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数1~20)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1~20で、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールのカルバモイル基が好ましい。)、
アシルアミノ基(好ましくは炭素数1~20)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数0~20で、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールのスルホンアミド基が好ましい。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~12)、シクロアルキルチオ基(好ましくは炭素数3~20)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6~40、より好ましくは炭素数6~26、さらに好ましくは炭素数6~14)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2~20)、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1~20)、
シリル基(好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~20で、アルキル、アリール、アルコキシもしくはアリールオキシが置換したシリル基が好ましい。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数1~20で、アルキル、アリール、アルコキシもしくはアリールオキシが置換したシリルオキシ基が好ましい。)、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子)、酸素原子(具体的には、環を構成する>CHを>C=Oに置き換える)、カルボキシ基(-COH)、ホスホノ基〔-PO(OH)〕、ホスホノオキシ基〔-O-PO(OH)〕、スルホ基(-SOH)、ホウ酸基〔-B(OH)〕、オニオ基(カチオン性基とも称す。環状アンモニオを含むアンモニオ基、スルホニオ基、ホスホニオ基を含み、好ましくは炭素数0~30、より好ましくは1~20)、スルファニル基(-SH)、グアニジノ基(-NHC(=NH)NH)、アミノ酸残基、又は、ポリアミノ酸残基が挙げられる。
(アニオン性基)
本発明において、アニオン性基とは、アニオンを有する基であればよい。このようなアニオン性基としては、カルボキシ基、ホスホノ基(ホスホン酸基、-PO(OH))、ホスホノオキシ基(リン酸基、-OPO(OH))及びスルホ基などが挙げられ、ホスホノ基、ホスホノオキシ基又はスルホ基が好ましく、ホスホノオキシ基又はスルホ基がより好ましい。
アニオン性基は、水素原子が解離してイオン構造を取っていてもよく、塩構造を取っていてもよい。アニオン性基が塩構造を有する際の1価又は多価のカチオンとしては、前述の塩構造の記載における1価又は多価のカチオンの記載を好ましく適用することができる。
(カチオン性基)
本発明において、カチオン性基とは、カチオンを有する基であればよい。このようなカチオン性基としては、第四級アンモニウムイオンを有する基及び第四級ホスホニウムイオンを有する基などが挙げられ、第四級アンモニウムイオンを有する基が好ましい。
カチオン性基はイオン構造の他に、塩構造を取っていてもよい。カチオン性基が塩構造を有する際の1価又は多価のアニオンとしては、例えば、F、Cl等のハロゲン化物イオン、BF 、PF 、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド等の1価又は多価の有機アニオンが挙げられる。
(ポリアルキレンオキシ構造を有する基)
本発明において、ポリアルキレンオキシ構造を有する基としては、-(L-O)で表される1価の基及び-(LL-O)-で表される2価の基が挙げられる。なお、-(LL-O)-は、結合の向きを変えて、-(O-LL)-と記載する場合がある。
上記L及びLLは上記置換基群Tにおけるアルキル基から水素原子を1つ除いて得られるアルキレン基を示し、炭素数は2~4が好ましく、2又は3がより好ましく、2が更に好ましく、アルキレン基の結合手である2つの炭素原子を連結する最短鎖中に含まれる炭素原子数は、0~2が好ましく、0又は1がより好ましく、0が更に好ましい。すなわち、上記L及びLLは、エチレン基であることが最も好ましい。
上記t及びhは平均繰り返し数(単に、繰り返し数とも称す。)を意味し、1~24が好ましく、1~12がより好ましく、4~12がさらに好ましい。
上記Rは水素原子又はアルキル基を示す。Rとして採り得るアルキル基は、上記置換基群Tにおけるアルキル基の記載を好ましく適用することができ、なかでもメチル基が好ましい。Rとしては、メチル基が好ましい。
また、置換基群Tから選ばれる置換基を複数組み合わせてなる基としては、例えば、アニオン性基(カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基)、カチオン性基(オニオ基)、アミノ酸残基、ポリアミノ酸残基又は-(L-O)を置換基として有する上記のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルコキシカルボニル基、シクロアルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、スルファモイル基、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールスルホニル基が挙げられる。
置換基群Tから選ばれる置換基は、より好ましくは、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、シアノ基、ハロゲン原子、アニオン性基、カチオン性基又は-(L-O)であり、特に好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、シアノ基、アニオン性基、カチオン性基又は-(L-O)である。
置換基群Tから選ばれる置換基は、上述の置換基群Tから選ばれる置換基を複数組み合わせてなる基以外にも、特段の断りがない限り、上記の基を複数組み合わせてなる基をも含む。例えば、化合物又は置換基等がアルキル基、アルケニル基等を含むとき、これらは置換されていても置換されていなくてもよい。また、アリール基、ヘテロ環基等を含むとき、それらは単環でも縮環でもよく、置換されていても置換されていなくてもよい。
以下に実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。なお、室温とは25℃を意味する。
実施例で用いた化合物(1)-NHS~(6)-NHS、比較化合物(1)-NHS及び(2)-NHSを、以下に示す。
なお、各化合物におけるDyeは、後記構造式で表される構造を示し、*は結合部位を示す。また、各化合物において、特に記載しない場合にも、スルホ基、ホスホノオキシ基は塩構造(例えば、カリウム塩、ナトリウム塩、TEA(トリエチルアミン)塩あるいはDIPEA(N,N-ジイソプロピルエチルアミン)塩)を含んでいてもよい。mPEGは、-(CHCHO)CHを意味する。
以下、スキーム中の化合物Zとの表記は、化合物(Z)を意味する。
Figure 2023035280000018
Figure 2023035280000019
Figure 2023035280000020
Figure 2023035280000021
以下に、各化合物の合成方法を詳しく説明するが、出発物質、色素中間体及び合成ルートはこれらに限定されるものではない。
以下の合成ルートにおいて、室温とは25℃を意味する。
なお、各合成に用いた溶媒、化合物、置換基等の略語は、その他の部分の記載においても、溶媒、化合物、置換基等として同じものを意味する。Resinは2-クロロトリチル樹脂を意味する。また、%v/vは容量パーセントを意味する。
特に記載のない場合、逆相カラムクロマトグラフィーにおける担体は、SNAP Ultra C18(商品名、Biotage社製)またはSfar C18(商品名、Biotage社製)を使用し、順相カラムクロマトグラフィーにおける担体は、Hi-Flash Column(商品名、山善社製)を使用した。
逆相カラムクロマトグラフィー又は順相カラムクロマトグラフィーにおいて使用する溶離液における混合比は、容量比である。例えば、「アセトニトリル:水=0:100→20:80」は、「アセトニトリル:水=0:100」の溶離液を「アセトニトリル:水=20:80」の溶離液へ変化させたことを意味する。
分取HPLC(High Performance Liquid Chromatography)は、2767(商品名、waters社製)を使用した。
MSスペクトルは、ACQUITY SQD LC/MS System〔商品名、Waters社製、イオン化法:ESI(ElectroSpray Ionization、エレクトロスプレーイオン化)〕又はLCMS-2010EV〔商品名、島津製作所社製、イオン化法:ESI及びAPCI(Atomospheric Pressure ChemicalIonization、大気圧化学イオン化)を同時に行うイオン化法〕を用いて測定した。
合成例
ペプチド鎖の合成は、国際公開第2018/174078号公報に記載のペプチド固相法の一般法に準じて行った。
〔ペプチド自動合成装置によるペプチド固相合成の一般法〕
ペプチド自動合成装置(biotage社製 SyroI)を用いてペプチド固相合成を行なった。合成装置にRink Amide-ChemMatrix(登録商標)(バイオタージ社製)、Fmocアミノ酸(0.5mol/L)のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液、シアノ―ヒドロキシイミノ―酢酸エチルエステル(1.0mol/L)およびジイロプロピルエチルアミン(0.1mol/L)のNMP溶液、ジイソプロピルカルボジイミド(1.0mol/L)のNMP溶液、ピペリジン(20%v/v)のNMP溶液、および無水酢酸(20%v/v)のNMP溶液をセットし、マニュアルに従い合成を行った。Fmoc脱保護(20分)、NMPによる洗浄、Fmocアミノ酸の縮合(1時間)、NMPによる洗浄を1サイクルとし、このサイクルを繰り返すことで、ペプチド鎖を伸長させた。
[化合物(M1-1)の合成]
下記のスキームに基づき、化合物(M1-1)を合成した。化合物(5)のMS測定の結果は以下の通りであった。
MS(ESI m/z):(M+H=1723、(M-H=1721
Figure 2023035280000022
Figure 2023035280000023
[化合物(1)の合成法]
以下の通り、化合物(1)を合成した。
1)化合物(1-1)の合成
Figure 2023035280000024
H-Gly-Trt(2-Cl)-Resin(0.93mmol/g、53.8mg)を出発原料として用いて、ペプチド固相合成を行った。N-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル]グリシン(Fmoc-Gly-OH)を用いた伸長を4サイクル繰り返した。Nε-(tert-ブトキシカルボニル) -Nα-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル)-L-リジン(Fmoc-Lys(Boc)-OH)に続いてN-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-L-プロリン(Fmoc-Pro-OH)を用いた伸長を6サイクル繰り返した。さらにNε-(1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキサ-1-イリデン)-3-メチルブチル) -Nα-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル)-L-リジン(Fmoc-Lys(ivDde)-OH)を伸長した後、N-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-L-プロリン(Fmoc-Pro-OH)を用いた伸長を6サイクル繰り返した後、Nε-(tert-ブトキシカルボニル)-Nα-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル)-L-リジン(Fmoc-Lys(Boc)-OH)を伸長した。その後、ピペリジン(20%v/v)のNMP溶液を加え、20分反応させることで、Fmoc基の脱保護を行い、その後3-ヒドロキシプロピオン酸の縮合を行った。伸長終了後、ヒドラジン一水和物(5%v/v)のNMP溶液を加え、1時間反応させることでivDde基の脱保護を行い、4、7、10、13-テトラオキサテトラデカンサンN-スクシンイミジル(2%v/v)のNMP溶液を加え反応させることでLys側鎖にPEG基を導入した。反応終了後、レジンをジクロロメタンで洗浄したのち、減圧下溶媒を留去した。TFA:トリイソプロピルシラン:水(=95:2.5:2.5、2.0mL)を加え、ペプチドの切り出しと脱保護を行った。2時間後、レジンをろ別し、ろ液にメチル-t-ブチルエーテル(12mL)を加え、固体を生じさせた。遠心分離によって固体を沈殿させた後、上澄みを除去した。メチル-t-ブチルエーテルで固体を洗浄後、減圧下溶媒を留去し、白色固体の化合物(1-1)を70.2mg得た。
2)化合物(1)の合成
10mL容のナスフラスコに化合物(1-1)1.0mg、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)150μL、トリエチルアミン(Et3N)1μL、化合物(M1-1)3.0mgを入れ、室温にて1時間撹拌した。その後、反応液を濃縮して分取HPLCにて精製し、凍結乾燥を施して、化合物(1)1.8mgを得た。
化合物(1)のMS測定の結果は以下の通りであった。
MS(ESI m/z):(M+H=5359、(M-H=5357
3)化合物(1)-NHSの合成
化合物(1)1.8mgに、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)180μL、N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムヘキサフルオロホスファート 1mg、及びトリエチルアミン(Et3N)1.0μLを加えて1時間攪拌させた。その後、溶媒を減圧留去し、酢酸エチルを加えて上澄みを除去、真空乾燥を施すことで化合物(1)-NHSを得た。
化合物(1-1)と化合物(M1-1)を出発物質とする、化合物(1)及び化合物(1)-NHSの合成スキームは、下記の通りである。
Figure 2023035280000025
以降において合成した化合物(2)~(6)は、それぞれ、上述の化合物(2)-NHS~(6)-NHSにおけるNHSエステル構造をカルボキシ基に置き換えた化合物である。すなわち、化合物(2)~(6)におけるカルボキシは、上記化合物(1)-NHSの合成と同様の化学反応を行うことにより、対応するNHSエステル構造に変換される。
[化合物(2)及び化合物(2)-NHSの合成]
3-ヒドロキシプロピオン酸の代わりに3-ホスホノプロピオン酸を用いたこと以外は化合物(1)と同様にして化合物(2)を得た。
化合物(2)のMS測定の結果は以下の通りであった。
MS(ESI m/z):(M+H=5453、(M-H=5451
化合物(2)を用いたこと以外は化合物(1)-NHSの合成と同様にして、化合物(2)から上記化合物(2)-NHSを合成した。
[化合物(3)及び化合物(3)-NHSの合成]
3-ヒドロキシプロピオン酸の代わりにスルトンを用いたこと以外は化合物(1)と同様にして化合物(3)を得た。
化合物(3)のMS測定の結果は以下の通りであった。
MS(ESI m/z):(M+H=5437、(M-H=5435
化合物(3)を用いたこと以外は化合物(1)-NHSの合成と同様にして、化合物(3)から化合物(3)-NHSを合成した。
[化合物(4)及び化合物(4)-NHSの合成]
Figure 2023035280000026
1)化合物(4-3)の合成
50mL容のナスフラスコにNε-(1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキサ-1-イリデン)-3-メチルブチル)-Nα-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル)-L-リジン(Fmoc-Lys(ivDde)-OH)(化合物(4-1))750mg、テトラヒドロフラン(THF)15mL、1-アミノ-3,6,9,12-テトラオキサペンタデカン-15-酸tert-ブチル461mg、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(HATU)595mg、N、N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)273μLを入れ、室温にて4時間撹拌した。その後、酢酸エチル、飽和食塩水で分液後、有機層を減圧留去し、化合物(4-2)を粗体で得た。
50mL容のナスフラスコに化合物(4-2)の粗体(全量)、テトラヒドロフラン(THF)7.5mL、ピペリジン258μLを入れ、室温にて12時間撹拌した。その後、酢酸エチル、飽和食塩水で分液後、有機層を減圧留去し、順相カラムクロマトグラフィーにて精製して化合物(4-3)855mgを得た。
2)化合物(4-4)の合成
10mL容のナスフラスコに化合物(4-3)100mg、ジクロロメタン(CHCl)1.2mL、トリエチルアミン(TEA)40μL、4,7,10,13-テトラオキサテトラデカン酸N-スクシンイミジル(Me-PEG-NHS)30mgを入れ、室温にて1時間撹拌した。その後、クロロホルム(CHCL)、飽和食塩水で分液後、有機層を減圧留去し粗体を得た。
50mL容のナスフラスコに得られた粗体とトリフルオロ酢酸(TFA)3.5mLを入れ、室温にて30分撹拌した。その後、反応液を濃縮して逆相カラムクロマトグラフィーにて精製し、凍結乾燥を施して、化合物(4-4)94.6mgを得た。
3)化合物(4-5)の合成
50mL容のナスフラスコに化合物(4-4)94.6mg、テトラヒドロフラン(THF)2.1mL、1-アミノ-3,6,9,12-テトラオキサペンタデカン-15-酸tert-ブチル69mg、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(HATU)84mg、N、N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)42μLを入れ、室温にて4時間撹拌した。その後、酢酸エチル、飽和食塩水で分液後、有機層を減圧留去した。
10mL容のナスフラスコに得られた粗体とトリフルオロ酢酸(TFA)2.5mLを入れ、室温にて30分撹拌した。その後、反応液を濃縮して逆相カラムクロマトグラフィーにて精製し、凍結乾燥を施して、化合物(4-5)93.9mgを得た。
4)化合物(4-6)の合成
10mL容のナスフラスコに化合物(4-5)90mg、テトラヒドロフラン(THF)1.4mL、化合物(4-3)50.6mg、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(HATU)、N、N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を入れ、室温にて4時間撹拌した。その後、酢酸エチル、飽和食塩水で分液後、有機層を減圧留去した。
10mL容のナスフラスコに得られた粗体とテトラヒドロフラン(THF)1.4mL、ヒドラジン一水和物30.6μLを入れ、室温にて12時間撹拌した。その後、反応液を濃縮して逆相カラムクロマトグラフィーにて精製し、凍結乾燥を施して、化合物(4-6)73mgを得た。
5)化合物(4-7)の合成
10mL容のナスフラスコに化合物(4-6)73mg、トリフルオロ酢酸(TFA)3mLを入れ、室温にて1.5時間撹拌した。その後、反応液を濃縮して逆相カラムクロマトグラフィーにて精製し、凍結乾燥を施して、化合物(4-7)52.8mgを得た。
6)化合物(4)の合成
化合物(1-1)の代わりに化合物(4-7)を用い、化合物(1)と同様にして化合物(4)を得た。
化合物(4)のMS測定の結果は以下の通りであった。
MS(ESI m/z):(M+H=4642、(M-H=4640
化合物(4)を用いたこと以外は化合物(1)-NHSの合成と同様にして、化合物(4)から化合物(4)-NHSを合成した。
[化合物(5)及び化合物(5)-NHSの合成]
3-ヒドロキシプロピオン酸の代わりに4,7,10,13-テトラオキサテトラデカン酸N-スクシンイミジルを用いたこと以外は化合物(1)と同様にして化合物(5)を得た。
化合物(5)のMS測定の結果は以下の通りであった。
MS(ESI m/z):(M+H=5520、(M-H=5518
化合物(5)を用いたこと以外は化合物(1)-NHSの合成と同様にして、化合物(5)から化合物(5)-NHSを合成した。
[化合物(6)及び化合物(6)-NHSの合成法]
下記スキームに従い化合物(6)を合成した。
Figure 2023035280000027
Figure 2023035280000028
Figure 2023035280000029
1)化合物(6-2)の合成
50mL容のナスフラスコに化合物(6-1)300mg、テトラヒドロフラン(THF)3mL、Nε-(tert-ブトキシカルボニル)-Nα-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル)-L-リジン(Fmoc-Lys(Boc)-OH)229.8mg、ジイソプロピルカルボジイミド76.8μL、4-ジメチルアミノピリジン8.0mg入れ、室温にて2時間撹拌した。アセトニトリル(30mL)を添加することで析出した固体をろ過、減圧乾燥させることで化合物(6-2)を350mg得た。
2)化合物(6-3)の合成
H-Pro-Trt(2-Cl)-Resin(0.94mmol/g、53.2mg)を出発原料として用いて、ペプチド固相合成を行った。N-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-L-プロリン(Fmoc-Pro-OH)を6サイクル繰り返し、Nε-(1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキサ-1-イリデン)-3-メチルブチル)-Nα-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル)-L-リジン(Fmoc-Lys(ivDde)-OH)を伸長した後、N-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-L-プロリン(Fmoc-Pro-OH)6サイクルとNε-(tert-ブトキシカルボニル) -Nα-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル)-L-リジン(Fmoc-Lys(Boc)-OH)を伸長した。伸長終了後、レジンをジクロロメタンで洗浄したのち、減圧下溶媒を留去した。ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP):ジクロロメタン(CHCl)(=1:4、2.0mL)を加え、ペプチドの切り出しを行った。30分後、レジンをろ別してろ液を濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィーにて精製して白色固体の化合物(6-3)を45.2mg得た。
3)化合物(6-4)の合成
10mL容のナスフラスコに化合物(6-2)175mg、クロロホルム(CHCl)1.5mL、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)38.2μLを入れ、35℃にて1時間撹拌した。メタンスルホン酸(MsOH)16.5μL、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)133μL、化合物(6-3)300mg、(7-アザベンゾトリアゾールー1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩(PyAOP)201mgを入れ、35℃にて1時間撹拌した。アセトニトリル(15mL)を添加することで析出した固体をろ過、減圧乾燥させることで化合物(6-4)を322mg得た。
4)化合物(6-5)の合成
原料の化合物(6-2)を化合物(6-4)に変えたこと以外は化合物(6-4)と同様にして化合物(6-5)を合成した。
5)化合物(6-6)の合成
原料の化合物(6-2)を化合物(6-5)に変えたこと以外は化合物(6-4)と同様にして化合物(6-6)を合成した。
6)化合物(6-7)の合成
10mL容のナスフラスコに化合物(6-6)54.3mg、クロロホルム(CHCl)500μL、2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)50μL、トリフルオロ酢酸(TFA)5μLを入れ、35℃にて4時間撹拌した。その後、反応液をろ過し、ろ液にメチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)6mLを加えることで析出した固体をろ過、減圧乾燥させることで化合物(6-7)を30.4mg得た。
7)化合物(6-8)の合成
10mL容のナスフラスコに化合物(6-7)30.4mg、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)1.5mL、1-アミノ-3,6,9,12-テトラオキサペンタデカン-15-酸tert-ブチル2.5mg、(7-アザベンゾトリアゾールー1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩(PyAOP)7.4mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)8.2μLを入れ、35℃にて2時間撹拌した。その後、ヒドラジン一水和物を30.8μL添加し、室温にて3時間攪拌した。反応終了後、反応液を逆相カラムクロマトグラフィーにて精製して白色固体の化合物(6-8)を15.4mg得た。
8)化合物(6-9)の合成
10mL容のナスフラスコに化合物(6-8)15.4mg、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)500μL、4,7,10,13-テトラオキサテトラデカン酸N-スクシンイミジル20mg、N、N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)15μLを入れ、35℃にて2時間撹拌した。反応終了後、減圧蒸留により溶媒を除去した後にトリフルオロ酢酸(TFA)500μLを加え、室温にて2時間攪拌した。その後、反応液を濃縮して分取HPLCにて精製し、凍結乾燥を施して、化合物(6-9)13.3mgを得た。
9)化合物(6)の合成
化合物(1-1)の代わりに化合物(6-9)を用い、化合物(1)と同様にして化合物(6)を合成した。
化合物(6)のMS測定の結果は以下の通りであった。
MS(ESI m/z):(M+H=11771、(M-H=11769
化合物(6)を用いたこと以外は化合物(1)-NHSの合成と同様にして、化合物(6)から化合物(6)-NHSを合成した。
[比較化合物(1)の合成]
1)比較化合物(1)の合成
N-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-L-プロリン(Fmoc-Pro-OH)の代わりにN-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル]グリシンを用い、かつ3-ヒドロキシプロピオン酸の代わりに無水酢酸を用いたこと以外は化合物(1)と同様にして比較化合物(1)を得た。
比較化合物(1)のMS測定の結果は以下の通りであった。
MS(ESI m/z):(M+H=4774、(M-H=4772
2)比較化合物(1)-NHSの合成
比較化合物(1)を用いたこと以外は化合物(1)-NHSの合成と同様にして、比較化合物(1)から比較化合物(1)-NHSを合成した。
[比較化合物(2)の合成法]
下記スキームに従い比較化合物(2)を合成した。tBUは、t-ブチルを意味する。
Figure 2023035280000030
1)化合物(9-3)の合成
50mL容のナスフラスコにNε-(1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキサ-1-イリデン)-3-メチルブチル)-Nα-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル)-L-リジン(Fmoc-Lys(ivDde)-OH)(化合物(9-1))750mg、テトラヒドロフラン(THF)15mL、1-アミノ-3、6、9、12-テトラオキサペンタデカン-15-酸tert-ブチル461mg、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(HATU)595mg、N、N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)273μLを入れ、室温にて4時間撹拌した。その後、酢酸エチル、飽和食塩水で分液後、有機層を減圧留去し、化合物(9-2)を粗体で得た。
50mL容のナスフラスコに化合物(9-2)1.18g、テトラヒドロフラン(THF)7.5mL、ピペリジン258μLを入れ、室温にて12時間撹拌した。その後、酢酸エチル、飽和食塩水で分液後、有機層を減圧留去し、順相カラムクロマトグラフィーにて精製して化合物(9-3)を855mg得た。
2)化合物(9-4)の合成
50mL容のナスフラスコに化合物(9-3)855mg、ジクロロメタン(CHCl)7.7mL、無水酢酸(AcO)83.2μL、トリエチルアミン(TEA)139μLを入れ、室温にて1時間撹拌した。その後、クロロホルム(CHCL)、飽和食塩水で分液後、有機層を減圧留去し粗体を得た。
50mL容のナスフラスコに得られた粗体とトリフルオロ酢酸(TFA)3.5mLを入れ、室温にて30分撹拌した。その後、反応液を濃縮して逆相カラムクロマトグラフィーにて精製し、凍結乾燥を施して、化合物(9-4)を287mg得た。
3)化合物(9-5)の合成
50mL容のナスフラスコに化合物(9-4)287mg、テトラヒドロフラン(THF)5.7mL、1-アミノ-3、6、9、12-テトラオキサペンタデカン-15-酸tert-ブチル172mg、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(HATU)255mg、N、N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)117μLを入れ、室温にて4時間撹拌した。その後、酢酸エチル、飽和食塩水で分液後、有機層を減圧留去し粗体を得た。
50mL容のナスフラスコに得られた粗体とトリフルオロ酢酸(TFA)2.5mLを入れ、室温にて30分撹拌した。その後、反応液を濃縮して逆相カラムクロマトグラフィーにて精製し、凍結乾燥を施して、化合物(9-5)281mgを得た。
4)化合物(9-6)の合成
50mL容のナスフラスコに化合物(9-5)140mg、テトラヒドロフラン(THF)2.8mL、化合物(9-3)103mg、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(HATU)71.9mg、N、N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)33.0μLを入れ、室温にて4時間撹拌した。その後、酢酸エチル、飽和食塩水で分液後、有機層を減圧留去し粗体を得た。
50mL容のナスフラスコに得られた粗体とテトラヒドロフラン(THF)2.8mL、ヒドラジン一水和物30.6μLを入れ、室温にて12時間撹拌した。その後、反応液を濃縮して逆相カラムクロマトグラフィーにて精製し、凍結乾燥を施して、化合物(9-6)152mgを得た。
5)化合物(9-7)の合成
50mL容のナスフラスコに化合物(9-6)108mg、トリフルオロ酢酸(TFA)3mLを入れ、室温にて1.5時間撹拌した。その後、反応液を濃縮して逆相カラムクロマトグラフィーにて精製し、凍結乾燥を施して、化合物(9-7)100mgを得た。
6)比較化合物(2)の合成
化合物(1-1)の代わりに化合物(9-7)を用い、化合物(1)と同様にして比較化合物(1)を合成した。
比較化合物(1)のMS測定の結果は以下の通りであった。
MS(ESI m/z):(M+H=4466、(M-H=4464
7)比較化合物(2)-NHSの合成
比較化合物(2)を用いたこと以外は化合物(1)-NHSの合成と同様にして、比較化合物(2)から比較化合物(2)-NHSを合成した。
上記の各化合物について、標識物質とした上での溶液への適用及びメンブレンへの適用の使用形態における適性の指標として、溶液蛍光強度、メンブレン上蛍光強度、及びドットブロット蛍光強度を評価した。
[0]蛍光標識抗体の作製
マイクロチューブに、抗ウサギIgG抗体(2.3mg/ml)217μL及び炭酸塩バッファー21.7μLを入れ、振とう撹拌を施した後、化合物(1)-NHSのジメチルスルホキシド溶液を、抗体1当量に対して5当量になるように加え、さらに振とう撹拌を行った。4℃にて24間静置させ、反応液を遠心限外ろ過フィルター(商品名:アミコンウルトラUFC510096、Merck社製)とPBS溶液(リン酸緩衝食塩水)を用いて精製を施し、化合物(1)-NHSのIgG標識抗体(1)を得た。
同様にして、各化合物、比較化合物及び参考化合物の標識抗体を得た。以下、化合物(Z)-IgG、比較化合物(Z)-IgGとの表記は、それぞれ、化合物(Z)-NHSのIgG標識抗体、比較化合物(Z)-NHSのIgG標識抗体を意味する。
得られた標識抗体について、下記に示す方法により蛍光標識率を算出した。
蛍光標識率の算出方法は、下記に示すような一般的な手法を用いた。[ ]の中の記載は単位を示し、[-]は単位がないことを意味する。本試験においては、タンパク質は抗ウサギIgG抗体を意味する。
蛍光標識率=蛍光色素の濃度/タンパク質の濃度
蛍光色素の濃度とは、標識されている蛍光色素の総モル濃度[M]を意味し、タンパク質の濃度とは、蛍光標識したタンパク質のモル濃度[M]を意味し、それぞれ、下記式により算出される。
蛍光色素の濃度=Dyemax/εdye
タンパク質の濃度=(IgG280-(Dyemax×CF))/εprotein
上記式中の各符号は、下記の通りである。
Dyemax;蛍光色素の最大吸収波長における吸収[-]
εdye;蛍光色素のモル吸光係数[M-1cm-1
IgG280;蛍光標識タンパク質の280nmにおける吸収[-]
Dye280;蛍光色素の280nmにおける吸収[-]
εprotein;タンパク質のモル吸光係数[M-1cm-1
CF(Correction Factor);Dye280/Dyemax[-]
得られた標識抗体について、下記に示す方法により蛍光標識率(DOL)を算出した。表Aに結果をまとめて示す。
Figure 2023035280000031
[1]溶液蛍光強度の評価
上記[0]で作製した標識抗体の溶液を、タンパク質濃度0.005mg/mLに調整し、分光蛍光強度計(商品名:RF-5300、島津製作所社製)を用いて、785nmの励起光で、露光条件を統一して、蛍光波長810~840nmの範囲の蛍光強度の積分値を算出した。比較化合物(1)-IgGのDOL4.4の蛍光波長810~840nmの範囲の蛍光強度を基準値とし、この基準値に対する比(標識抗体の蛍光波長810~840nmの範囲の蛍光強度の積分値/基準値)を算出し、以下の評価基準に基づき評価した。表1に結果をまとめて示す。
本試験において、蛍光強度は、評価ランク「D」以上が合格である。

- 蛍光強度の評価基準 -
A:基準値に対する蛍光強度の比が2.0倍以上
B:基準値に対する蛍光強度の比が1.5倍以上2.0倍未満
C:基準値に対する蛍光強度の比が1.3倍以上1.5倍未満
D:基準値に対する蛍光強度の比が1.1倍以上1.3倍未満
E:基準値に対する蛍光強度の比が0.8倍以上1.1倍未満
F:基準値に対する蛍光強度の比が0.8倍未満
[2]メンブレン上蛍光強度評価
ウサギIgG溶液をタンパク質濃度5.0ng/mLに調整し、2μLをニトロセルロースメンブレン上に慎重にスポットした。メンブレンを乾燥後、次いでTBS-T(Tris Buffered Saline with Tween 20)中、Fish Gelatinブロッキング緩衝液でブロックした。膜を室温で1時間攪拌しながらインキュベートした。ブロッキング溶液を取り除き、標識抗体(上記[0]で調製した標識抗体の溶液、希釈前の濃度1mg・mL)のPBS溶液をTBSで20000倍希釈した。メンブレンを希釈した溶液に浸し、1時間攪拌しながらインキュベートした。メンブレンをTBS-T緩衝液で10分間、3回洗浄し、最後にTBSで10分洗浄した。得られたメンブレンを40℃のホットプレートで1時間乾燥させ、Amersham Typhoon scanner(GEHC社製)を用いて画像化し、785nmの励起光で、露光条件を統一して、蛍光波長810~840nmの範囲の蛍光強度を算出した。比較化合物(1)-IgG DOL4.4の蛍光波長810~840nmの範囲の蛍光強度を基準値とし、この基準値に対する比(標識抗体の蛍光波長810~840nmの範囲の蛍光強度の積分値/基準値)を算出し、以下の評価基準に基づき評価した。表1に結果をまとめて示す。
本試験において、蛍光強度は、評価ランク「D」以上が合格である。

- メンブレン上蛍光強度の評価基準 -
A:基準値に対する蛍光強度の比が2.0倍以上
B:基準値に対する蛍光強度の比が1.5倍以上2.0倍未満
C:基準値に対する蛍光強度の比が1.3倍以上1.5倍未満
D:基準値に対する蛍光強度の比が1.1倍以上1.3倍未満
E:基準値に対する蛍光強度の比が0.8倍以上1.1倍未満
F:基準値に対する蛍光強度の比が0.8倍未満
[3]ドットブロット蛍光強度評価
トランスフェリン(20mg/mL)をTBS-Tで50ng/mLに調整し、2μLをニトロセルロースメンブレン上に慎重にスポットした。メンブレンを乾燥後、次いでTBS-T中、Fish Gelatinブロッキング緩衝液でブロックした。続いて、PBS-T30mLにウサギ抗ヒトトランスフェリンのポリクローナル抗体6μLを加え、メンブレンを浸して1時間振とうした。その後、メンブレンを取り出し、 TBS-Tで4回洗浄した。その後、TBS-T30mLに上記[0]で調製した標識抗体(抗ウサギIgG)の溶液をタンパク質濃度0.1mg/mLに調整したもの15μLを加え、そこにメンブレンを浸し、室温で1時間攪拌しながらインキュベートした。メンブレンをTBS-Tで10分間、3回洗浄し、最後にTBSで10分洗浄した。得られたメンブレンを40℃のホットプレートで1時間乾燥させ、Amersham Typhoon scanner(GEHC社製)を用いて画像化し、785nmの励起光で、露光条件を統一して、蛍光波長810~840nmの範囲の蛍光強度を算出した。比較化合物(1)-IgGのDOL4.4の蛍光波長810~840nmの範囲の蛍光強度を基準値とし、この基準値に対する比標識抗体の蛍光波長810~840nmの範囲の蛍光強度の積分値/基準値)を算出し、以下の評価基準に基づき評価した。表1に結果をまとめて示す。
本試験において、蛍光強度は、評価ランク「D」以上が合格である。

- ドットブロット蛍光強度の評価基準 -
A:基準値に対する蛍光強度の比が2.0倍以上
B:基準値に対する蛍光強度の比が1.5倍以上2.0倍未満
C:基準値に対する蛍光強度の比が1.3倍以上1.5倍未満
D:基準値に対する蛍光強度の比が1.1倍以上1.3倍未満
E:基準値に対する蛍光強度の比が0.8倍以上1.1倍未満
F:基準値に対する蛍光強度の比が0.8倍未満
Figure 2023035280000032
上記表1の結果から、以下のことがわかる。
比較化合物(1)-NHS(比較化合物(1)-IgG)及び比較化合物(2)-NHS(比較化合物(2)-IgG)は、一般式(I)におけるRを有さない点で、本発明で規定する化合物ではない。すなわち、本願明細書の段落[0015]に記載する規則に基づき一般式(I)にあてはめようとすると、比較化合物(1)-NHSは、Rの位置ではなくLが有する置換基としてmPEG基を有し、比較化合物(2)-NHSはRとして親水性基を有さず主鎖構造中にPEG構造を有する。比較化合物(1)-NHS及び比較化合物(2)-NHSは、いずれも溶液での蛍光強度、メンブレン上における蛍光強度、ドットブロットでの蛍光強度がいずれも低い標識抗体しか得ることができなかった(No.c101及びc102)。
これらに対して、本発明で規定する化合物(1)-NHS~(6)-NHSは、いずれも、上記比較化合物(1)-NHSの標識抗体の蛍光強度に対して、溶液、メンブレン又はドットブロットのいずれの状態でも1.1倍以上の蛍光強度を有し、優れた蛍光強度を示す標識抗体を作製できた(No.c101に対するNo.101~106)。

Claims (13)

  1. 下記一般式(I)で表される化合物。

    ―L―Q 一般式(I)

    式中、Rは、親水性基を示す。
    Qは、カルボキシ基、生体物質に結合可能な置換基又は固体支持体に結合可能な置換基を示す。
    は、RとQを結ぶ連結基であって、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、2価の環基、-O-、>NRa1、>C=O、>S=O、-S(=O)-及び>P(=O)ORa2の各基のうちの1種又は2種以上を組み合わせた2価の連結基を示す。Ra1及びRa2は水素原子又は1価の置換基を示す。ただし、Lは蛍光体部を含む基を置換基として少なくとも1つ有する。
  2. 前記Rが、アニオン性基、カチオン性基又は-(L-O)である、請求項1に記載の化合物。
    Lはアルキレン基を示し、Rは水素原子又はアルキル基を示し、tは1~24である。
  3. 前記Rが、スルホ基、第四級アンモニウムイオンを有する基又は-(L-O)である、請求項2に記載の化合物。
  4. 前記Rが、-(L-O)である、請求項3に記載の化合物。
  5. 下記一般式(II)で表される、請求項3に記載の化合物。
    Figure 2023035280000033
    式中、pは1以上の整数である。
    ~Lは、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、2価の環基、-O-、>NRa1、>C=O、>S=O、-S(=O)-及び>P(=O)ORa2の各基のうちの1種又は2種以上を組み合わせた2価の連結基を示す。
    Mは、前記蛍光体部、生理活性物質部、プロドラッグ部又は放射性同位体含有部を示す。
    及びRは、水素原子、ヒドロキシ基、スルファニル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、ヘテロアリール基、アニオン性基又はカチオン性基を示す。
    Qは、前記のQと同義である。
    は、スルホ基、第四級アンモニウムイオンを有する基又は-(L-O)を示す。
    Lはアルキレン基を示し、Rは水素原子又はアルキル基を示し、tは1~24である。
    ただし、Mの少なくとも1つは前記蛍光体部を示す。
  6. 前記Lが、アルキレン基、2価の環基、>P(=O)ORa2、-O-、アミノ酸由来の基、アリーレン基及び-(LL-O)-のうちの1種又は2種以上を組み合わせた構造を含む連結基である、請求項5に記載の化合物。
    LLはアルキレン基を示し、hは1~24である。
  7. 前記Lが、アミノ酸由来の基を含む連結基である、請求項6に記載の化合物。
  8. 前記Lが、下記一般式(III)で表される構造を含む連結基である、請求項5~7のいずれか1項に記載の化合物。
    Figure 2023035280000034
    式中、X、X、Xは-O-、-S-、>NRa1又は>CRa2a3を示す。
    a1~Ra3は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基、ヘテロアリール基、-NRa8a9、-ORa10又はアニオン性基を示す。
    a8~Ra10は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基、ヘテロアリール基又はアニオン性基を示す。
    nは1以上の整数である。
    *は結合手を示す。
  9. 前記nが3以上の整数である、請求項8に記載の化合物。
  10. 前記蛍光体部が、キサンテン色素、ローダミン色素、クマリン色素、シアニン色素、ピレン色素、オキサジン色素、スクアリウム色素、ピリジルオキサゾール色素又はピロメテン色素からなる構造部である、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物。
  11. 前記Qが、下記構造のいずれかである、請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物。
    Figure 2023035280000035
    上記構造式中、Xはハロゲン原子を示し、*は結合手を示す。
  12. 請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物と生体物質とが結合してなる標識生体物質。
  13. 前記生体物質がタンパク質、アミノ酸、核酸、ヌクレオチド、糖鎖及びリン脂質のいずれかである請求項12に記載の標識生体物質。
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