JP2023035087A - ビールテイスト飲料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ビールらしい華やかさに優れるビールテイスト飲料を提供すること。【解決手段】アルコール度数が0v/v%超3v/v%以下であり、酢酸エチルの含有量が1.0mg/L以上であり、リナロールの含有量が9μg/L以上80μg/L以下である、ビールテイスト飲料。【選択図】なし
Description
本発明は、ビールテイスト飲料及びその製造方法に関する。
ビールテイスト飲料の香味向上について種々の技術手段が提案されている。例えば、特許文献1には、pH3.5~4.5の未発酵のビールテイスト飲料であって、酢酸エチルを1~15mg/Lの濃度範囲で含有するか、および/または、酢酸イソアミルを0.5~10mg/Lの濃度範囲で含有する、未発酵のビールテイスト飲料が開示されている。
本発明の目的は、ビールらしい華やかさに優れるビールテイスト飲料を提供することにある。
本発明は、アルコール度数が0v/v%超3v/v%以下であり、酢酸エチルの含有量が1.0mg/L以上であり、リナロールの含有量が9μg/L以上80μg/L以下である、ビールテイスト飲料に関する。
本発明に係るビールテイスト飲料は、アルコール度数、酢酸エチルの含有量及びリナロールの含有量それぞれが所定範囲内にあるため、ビールらしい華やかさに優れている。
本発明に係るビールテイスト飲料中の酢酸エチルの含有量は1.0mg/L以上5.0mg/L以下であってよい。この場合、ビールらしい華やかさ、スムースさ及びアルコール感が更に優れたものとなる。
本発明に係るビールテイスト飲料中のリナロールの含有量は9μg/L以上50μg/L以下であってよい。この場合、ビールらしい華やかさ、スムースさ及びアルコール感が更に優れたものとなる。
本発明に係るビールテイスト飲料において、アルコール度数は0v/v%超1.5v/v%以下であってよい。
本発明に係るビールテイスト飲料は、香料不使用であってよい。本発明に係る飲料は発酵飲料であってよい。
本発明はまた、アルコール度数を0v/v%超3v/v%以下に調整すること、酢酸エチルの含有量を1.0mg/L以上に調整すること、及び、リナロールの含有量を9μg/L以上80μg/L以下に調整することを含む、ビールテイスト飲料を製造する方法に関する。
本発明はまた、アルコール度数を0v/v%超3v/v%以下に調整すること、酢酸エチルの含有量を1.0mg/L以上に調整すること、及び、リナロールの含有量を9μg/L以上80μg/L以下に調整することを含む、ビールテイスト飲料のビールらしい華やかさを向上させる方法に関する。
本発明によれば、ビールらしい華やかさに優れるビールテイスト飲料を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、アルコール度数が0v/v%超3v/v%以下であり、酢酸エチルの含有量が1.0mg/L以上であり、リナロールの含有量が9μg/L以上80μg/L以下である。
本明細書において「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の香味を有する飲料を意味する。
本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコール度数は、0v/v%超3v/v%以下である。本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコール度数の上限は、ビールらしい華やかさが更に向上する観点、及び、スムースさが更に向上する観点から、2.8v/v%以下、2.6v/v%以下、2.4v/v%以下、2.2v/v%以下、2.0v/v%以下、1.8v/v%以下、1.6v/v%以下、1.5v/v%以下、1.4v/v%以下、1.2v/v%以下、1.0v/v%以下、0.9v/v%以下、又は0.8v/v%以下であってよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコール度数の下限は、アルコール感が更に向上する観点から、0.1v/v%以上、0.2v/v%以上、0.3v/v%以上、0.4v/v%以上、0.5v/v%以上、又は0.6v/v%以上であってよい。本明細書において、アルコールは、特に言及のない限り、エタノールを意味する。
ビールテイスト飲料のアルコール度数は、例えば、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.3.6 ビール、アルコール(アルコライザー法)」又は「8.3.7 ヘッドスペースGC-FID法」に記載の方法によって測定することができる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコール度数は、例えば、アルコールの添加により上記範囲内に調整してもよく、醸造により得られた発酵液からアルコールを除去して上記範囲内に調整してもよく、醸造に際してアルコール生成を抑える条件(例えば、後述するβ-アミラーゼの活性を制御する製法での仕込により糖化(マルトース、マルトトリオース生成)を抑えて発酵前液を得ることと、マルトース資化性及び/又はマルトトリオース資化性が低い酵母を使用することとを組み合わせた条件)で発酵して発酵液を得ることで上記範囲内に調整してもよく、発酵工程を途中で止めたり(途中で発酵温度を下げる)、発酵工程の初めから低温で発酵させる等の手法で発酵工程を制御してもよく、別途調製したアルコール含量の低い発酵後液、又はアルコールを含まない水若しくは炭酸水と混合することによって調整してもよく、またこれらを併用して上記範囲内に調整してもよい。添加するアルコールに特に制限はなく、例えば、蒸留アルコール(例えば、原料用アルコール、スピリッツ、ウォッカ)であってもよく、醸造により得られた発酵液であってもよい。醸造により得られた発酵液からアルコールを除去する方法に特に制限はなく、例えば、蒸留、透析等の常法に従って実施することができる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料中の酢酸エチルの含有量は、1.0mg/L以上であり、ビールらしい華やかさ、スムースさ及びアルコール感が更に向上する観点から、1.1mg/L以上、1.2mg/L以上、1.3mg/L以上、1.4mg/L以上、1.5mg/L以上、1.6mg/L以上、1.7mg/L以上、1.8mg/L以上、1.9mg/L以上、2.0mg/L以上、2.1mg/L以上、2.2mg/L以上、2.3mg/L以上、2.4mg/L以上、2.5mg/L以上、2.6mg/L以上、2.7mg/L以上、2.8mg/L以上、2.9mg/L以上又は3.0mg/L以上であってよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料中の酢酸エチルの含有量は、ビールらしい華やかさ、スムースさ及びアルコール感が更に向上する観点から、30.0mg/L以下、25.0mg/L以下、20.0mg/L以下、15.0mg/L以下、10.0mg/L以下、9.0mg/L以下、8.0mg/L以下、7.0mg/L以下、6.0mg/L以下、5.0mg/L以下、4.0mg/L以下、3.0mg/L以下、又は2.5mg/L以下であってよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料中の酢酸エチルの含有量は、ビールらしい華やかさ、スムースさ及びアルコール感が更に向上する観点から、1.0mg/L以上10.0mg/L以下、1.0mg/L以上5.0mg/L以下、1.0mg/L以上3.0mg/L以下、又は1.5mg/L以上2.5mg/L以下であってよい。
ビールテイスト飲料中の酢酸エチルの含有量は、例えば、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料中の酢酸エチルの含有量は、例えば、常法によりビールテイスト飲料を製造する際、含有量が上記範囲になるように酢酸エチルを添加する方法、酢酸エチルの含有量が高くなる、又は低くなるように原料種類の使用量、品種、種類、添加タイミングなどのうち少なくとも一つを適宜選択する方法、及びこれらを任意に組み合わせた方法により調整することができる。酢酸エチルを添加する方法において、酢酸エチルの添加は、例えば、酢酸エチルそのものを添加してもよく、酢酸エチルを含有する組成物等を添加してもよい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料中のリナロールの含有量は、9μg/L以上80μg/L以下である。本実施形態に係るビールテイスト飲料中のリナロールの含有量の上限は、ビールらしい華やかさ、スムースさ及びアルコール感が更に向上する観点から、70μg/L以下、60μg/L以下、50μg/L以下、40μg/L以下、30μg/L以下、又は25μg/L以下であってよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料中のリナロールの含有量の下限は、ビールらしい華やかさ、スムースさ及びアルコール感が更に向上する観点から、10μg/L以上、11μg/L以上、12μg/L以上、13μg/L以上、14μg/L以上、15μg/L以上、16μg/L以上、17μg/L以上、18μg/L以上、19μg/L以上、又は20μg/L以上であってよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料中のリナロールの含有量は、ビールらしい華やかさ、スムースさ及びアルコール感が更に向上する観点から、9μg/L以上50μg/L以下、9μg/L以上40μg/L以下、10μg/L以上30μg/L以下、又は15μg/L以上25μg/L以下であってよい。
ビールテイスト飲料中のリナロールの含有量は、例えば、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料中のリナロールの含有量は、例えば、常法によりビールテイスト飲料を製造する際、含有量が上記範囲になるようにリナロールを添加する方法、リナロールの含有量が高くなる、又は低くなるように原料種類の使用量、品種、種類、添加タイミングなどのうち少なくとも一つを適宜選択する方法、及びこれらを任意に組み合わせた方法により調整することができる。リナロールを添加する方法において、リナロールの添加は、例えば、リナロールそのものを添加してもよく、リナロールを含有する組成物等を添加してもよい。
酢酸エチルの含有量(mg/L)に対するリナロールの含有量(μg/L)の比(リナロール/酢酸エチル)は、ビールらしい華やかさ、スムースさ及びアルコール感が更に向上する観点から、5以上、6以上、7以上、8以上、又は9以上であってよく、ビールらしい華やかさ、スムースさ及びアルコール感が更に向上する観点から、30以下、28以下、26以下、24以下、22以下、20以下、18以下、16以下、14以下、12以下、又は11以下であってよい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として麦原料を含有していてもよく、原料として麦原料を含有していなくてもよい。本明細書において麦原料とは、麦又は麦加工物をいう。麦としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦が挙げられる。麦加工物としては、例えば、麦エキス、麦芽、モルトエキスが挙げられる。麦エキスは、麦から糖分及び窒素分を含む麦エキス分を抽出することにより得られる。麦芽は麦を発芽させることにより得られる。モルトエキスは、麦芽から糖分及び窒素分を含むエキス分を抽出することにより得られる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料としてホップを含有していてもよく、原料としてホップを含有していなくてもよい。ホップには、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスが含まれ、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品も含まれる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、麦芽比率(水及びホップ以外の原料に占める麦芽の割合)が0重量%以上100重量%以下であってよい。麦芽比率は、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、66重量%以上、67重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、99重量%以上、又は100重量%であってよい。また、麦芽比率は、100重量%未満、90重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、又は50重量%以下であってよい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発酵飲料(ビールテイスト発酵飲料)であってもよく、非発酵飲料(ビールテイスト非発酵飲料)であってもよい。発酵飲料は、酵母等による発酵を経て製造されるものである。非発酵飲料は、酵母等による発酵を行わずに製造されるものである。なお、非発酵飲料には、酵母等による発酵を行わず、アルコール(例えば、スピリッツ、原料用アルコール等の蒸留アルコール)を配合して製造されるビールテイスト飲料も含まれる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料が発酵飲料である場合ビールらしい華やかさ、スムースさ及びアルコール感がより一層優れたものとなる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、本発明の効果を損なわない範囲で、飲料に通常配合される着色料、タンパク質、苦味料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、塩類等を含んでいてもよい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、香料不使用であってよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、香料不使用であっても、ビールらしい華やかさに優れている。
着色料としては、例えば、カラメル色素、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素を挙げることができる。タンパク質としては、例えば、大豆タンパク質、大豆タンパク質分解物、大麦タンパク質、大麦タンパク質分解物が挙げられる。苦味料としては、上記のホップの他、例えば、イソα酸、カフェイン、ゲンチアナ抽出物、ペプチド類、テオブロミン、ナリンジン、ニガキ抽出物、ニガヨモギ抽出物、キナ抽出物等が挙げられる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲン、デンプンを挙げることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムK、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームを挙げることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールを挙げることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムを挙げることができる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、非発泡性であってもよく、発泡性であってもよい。ここで、非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm2)未満であることをいい、発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm2)以上であることをいう。発泡性とする場合、ガス圧の上限は0.294MPa(3.0kg/cm2)程度としてもよい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、容器に入れて提供することができる。容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器等を適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分及び光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、例えば、アルコール度数を0v/v%超3v/v%以下に調整すること、酢酸エチルの含有量を1.0mg/L以上に調整すること、及び、リナロールの含有量を9μg/L以上80μg/L以下に調整することを含む方法によって製造することができる。当該方法は、アルコール度数を0v/v%超3v/v%以下に調整すること、酢酸エチルの含有量を1.0mg/L以上に調整すること、及び、リナロールの含有量を9μg/L以上80μg/L以下に調整することの他は、常法に従って実施することができる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、例えば、原料を混合して製造してもよく(調合による方法)、酵母等による発酵(醸造による方法)を経て製造してもよい。
一実施形態に係る製造方法(調合による方法)は、例えば、酢酸エチル又は酢酸エチルを含有する原材料と、リナロール又はリナロールを含有する原材料と、水と、必要に応じて、アルコール又はアルコール含有液(例えば、原料用アルコール、スピリッツ及びウォッカ等の蒸留アルコール、醸造により得られた発酵液)と、各種添加剤(例えば、着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、塩類等)と、を原料タンクに配合する配合工程を含む。
本実施形態に係る製造方法は、配合工程において各成分を混合して得た混合液をろ過するろ過工程と、ろ過工程でろ過したろ過液を殺菌する第一の殺菌工程と、第一の殺菌工程で殺菌した殺菌済みのろ過液をビン、缶、ペットボトル等の容器に充填する充填工程と、充填工程で容器に充填されたろ過液を容器ごと殺菌する第二の殺菌工程と、を更に含んでいてもよい。
配合工程は、各成分がよく混ざるよう、撹拌機等により撹拌しながら混合してもよい。また、ろ過工程は、例えば、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。第一の殺菌工程は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行ってもよく、同様の処理を行うことができるのであれば、これに限定されることなく適用可能である。充填工程は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにて充填してもよい。第二の殺菌工程は、所定の温度及び所定の時間でろ過液を容器ごと加熱することにより行うことができる。第一又は第二の殺菌工程は、非加熱の殺菌工程としてもよい。非加熱の殺菌工程としては、紫外線(UV)殺菌等が挙げられる。殺菌工程を行わない無殺菌充填を行うことも可能である。
他の実施形態における製造方法(醸造による方法)は、例えば、仕込工程及び発酵工程を備える。醸造による方法によって得られるビールテイスト飲料では、ビールらしい華やかさ、スムースさ及びアルコール感がより一層強く感じられる。
仕込工程では、原料及び仕込水(仕込工程で使用される水)を用いて、発酵前液を得る。つまり、仕込工程は、発酵に用いられる発酵前液を調製する工程である。仕込工程は、原料及び仕込水からもろみを製造する糖化工程、もろみを濾過して糖含有液を得る濾過工程、糖含有液を煮沸する煮沸工程、原料液中の固形分を除去する除去工程、原料液を冷却する冷却工程をこの順に含んでいてよい。
糖化工程では、原料及び仕込水を仕込んだ後、62~68℃に温度を調節して、当該温度を保持するステップを含む。当該ステップでは、例えば、10~120分、62~68℃で温度を保持する。これにより、例えば、原料の糖化が進んだり、可溶性成分が溶出したりして、酵母の代謝に必要な成分を含むもろみが得られる。糖化工程で得られたもろみは、濾過工程で濾過されて糖含有液となる。
煮沸工程では、糖含有液を煮沸して煮沸後液(煮沸後の糖含有液)を得る。糖含有液とは、酵母によるアルコール発酵が可能な成分を含有するものである。糖含有液としては、例えば、麦汁、シロップが挙げられる。麦汁とは、上述の麦原料の糖化を経て得られる液であり、未発酵のものである。麦汁は、例えば、上述の麦原料等の原料と水とを混合する工程、原料と水とを含む液を常法により糖化して糖化液を得る工程、及び糖化液をろ過する工程を経て得ることができる。
煮沸工程では、原料液にホップを添加してよい。添加するホップとしては、例えば、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスを用いることができる。ホップは、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品であってもよい。
除去工程では、煮沸後液中の固形分を除去して精製液を得る。除去工程は、例えば、煮沸後液に含まれる不溶性の固形分を沈殿させることにより行うことができる。固形分としては、煮沸工程により生じた熱凝固物、煮沸工程でホップを添加した場合には、ホップのかす等が挙げられる。除去工程は、ワールプール中で実施してよい。冷却工程では、酵母による発酵が可能な温度まで精製液を冷却して発酵前液を得る。
仕込工程では、β-アミラーゼの活性を制御する製法を採用してもよい。具体的には、糖化工程における62~68℃の温度保持ステップを省略又は短縮する仕込方法である。これにより糖化が抑えられるため、発酵工程でのアルコール生成を抑えることができ、アルコール度数の調整が可能になる。
発酵工程では、発酵前液を酵母により発酵させて発酵後液を得る。発酵工程では、酵母を添加してアルコール発酵が行われる。より具体的には、発酵前液に酵母を接種して発酵させ、酵母により生成するアルコールを含む発酵後液を得る。
発酵工程で使用する酵母は、通常のビール酵母であってもよく、アルコール生成能が低い酵母(例えば、マルトース資化性及び/又はマルトトリオース資化性が低い酵母)であってもよい。アルコール生成能が低い酵母を使用することにより、発酵工程でのアルコール生成を抑えることができ、アルコール度数の調整が容易になる。また、酵母種類の選択、醸造条件の制御(例えば、発酵温度及び発酵期間等)により酢酸エチルの生成量を制御する方法によって、酢酸エチルの含有量の調整することができる。
本実施形態に係る製造方法は、アルコール度数調整工程を更に含んでいてもよい。アルコール度数調整工程は、アルコール度数を上記範囲内に調整する工程である。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、アルコール度数が低いため、例えば、上述のβ-アミラーゼの活性を制御する製法による仕込を行う、アルコール生成能が低い酵母を使用する等してアルコールの生成を抑えることによって、アルコール度数を調整してもよく、発酵工程において、発酵期間を短くしたり、発酵工程を途中で止めたり(途中で発酵温度を下げる)、発酵工程の初めから低温で発酵させる等の手法で発酵工程を制御したり、通常のビール等のビールテイスト飲料と同様に発酵を行ってアルコールを生成させた後に、アルコールを除去又は低減させること、及びこれらを任意に組み合わせた方法によって、アルコール度数を調整してもよい。アルコールを除去又は低減させる方法に特に制限はなく、例えば、蒸留、透析、希釈等の常法に従って実施することができる。
本実施形態に係る製造方法では、発酵工程後の発酵後工程として、上記発酵工程で得られた発酵後液を貯酒する貯酒工程、及び/又は、発酵後液をろ過するろ過工程を備えていてもよい。ろ過工程を実施することにより、発酵後液から不溶性の固形分、酵母等を除去することができる。
本実施形態に係る製造方法では、他の発酵後工程として、発酵後液(又はろ過工程後の発酵後液)に対して加熱(殺菌)、各種添加剤(例えば、着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、酸味料、香料、塩類)の添加等を行ってもよい。
本発明はまた、アルコール度数を0v/v%超3v/v%以下に調整すること、酢酸エチルの含有量を1.0mg/L以上に調整すること、及び、リナロールの含有量を9μg/L以上80μg/L以下に調整することを含む、ビールテイスト飲料のビールらしい華やかさを向上させる方法と捉えることもできる。当該方法における具体的な態様として、上述した各態様を特に制限なく適用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
〔ビールテイスト飲料の製造〕
以下の製造方法I、II又はIIIに示す方法に従ってサンプル1~18のビールテイスト飲料を製造した。
以下の製造方法I、II又はIIIに示す方法に従ってサンプル1~18のビールテイスト飲料を製造した。
試験例1~3のビールテイスト飲料の製造(製造方法I)
用水に糖類、酸味料、苦味料及びスピリッツを添加した。得られた混合液に、酢酸エチル及びリナロールを所定量添加した。得られたビールテイスト飲料に炭酸水をブレンドしてガス圧2.4kgf/cm2になるように調整して350mlの缶に充填した。これによってサンプル1~12のビールテイスト飲料を得た。
用水に糖類、酸味料、苦味料及びスピリッツを添加した。得られた混合液に、酢酸エチル及びリナロールを所定量添加した。得られたビールテイスト飲料に炭酸水をブレンドしてガス圧2.4kgf/cm2になるように調整して350mlの缶に充填した。これによってサンプル1~12のビールテイスト飲料を得た。
試験例4のビールテイスト飲料の製造(製造方法II)
通常のビールと同様に麦芽及びホップを原料として、ビールを製造した。製造したビールに糖類、食物繊維(難消化性グルカン)、及び酸味料を添加した。次いで、サンプル14に酢酸エチル、サンプル15にリナロールを所定量添加した。得られたビールテイスト飲料を炭酸水にてガス圧2.4kgf/cm2になるように調整して350ml缶に充填した。これによってサンプル13~15のビールテイスト飲料を得た。
通常のビールと同様に麦芽及びホップを原料として、ビールを製造した。製造したビールに糖類、食物繊維(難消化性グルカン)、及び酸味料を添加した。次いで、サンプル14に酢酸エチル、サンプル15にリナロールを所定量添加した。得られたビールテイスト飲料を炭酸水にてガス圧2.4kgf/cm2になるように調整して350ml缶に充填した。これによってサンプル13~15のビールテイスト飲料を得た。
試験例5のビールテイスト飲料の製造(製造方法III)
用水に糖類、酸味料、苦味料、及びスピリッツを添加し、次いで、酢酸エチル、及びリナロールを所定量添加した。得られたビールテイスト飲料を炭酸水とブレンドしてガス圧2.4kgf/cm2になるように調整して350mlの缶に充填した。これによってサンプル16~18のビールテイスト飲料を得た。
用水に糖類、酸味料、苦味料、及びスピリッツを添加し、次いで、酢酸エチル、及びリナロールを所定量添加した。得られたビールテイスト飲料を炭酸水とブレンドしてガス圧2.4kgf/cm2になるように調整して350mlの缶に充填した。これによってサンプル16~18のビールテイスト飲料を得た。
〔酢酸エチルの含有量〕
サンプル1~18のビールテイスト飲料中の酢酸エチルの含有量(単位:mg/L)は、表1~5に示すとおりであった。
サンプル1~18のビールテイスト飲料中の酢酸エチルの含有量(単位:mg/L)は、表1~5に示すとおりであった。
醸造によって製造したビールテイスト飲料中の酢酸エチルの含有量は、BCOJビール分析法(財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会(分析委員会)編集1996年4月1日発行)の「8.22 低沸点香気成分」の方法にしたがい、FID検出器付きガスクロマトグラフ(装置名:Agilent 6890ガスクロマトグラフ)を用いて測定した。
〔リナロールの含有量〕
サンプル1~18のビールテイスト飲料中のリナロールの含有量(単位:μg/L)は、表1~5に示すとおりであった。
サンプル1~18のビールテイスト飲料中のリナロールの含有量(単位:μg/L)は、表1~5に示すとおりであった。
醸造によって製造したビールテイスト飲料中のリナロールの含有量は、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ-質量分析法(SPME-GC-MS法)により測定した。
〔アルコール度数〕
アルコール度数は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.3.6 ビール、アルコール(アルコライザー法)」に記載の方法に従って測定した。
アルコール度数は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.3.6 ビール、アルコール(アルコライザー法)」に記載の方法に従って測定した。
〔官能評価〕
試験例のビールテイスト飲料に対して、「ビールらしい華やかさ」、「スムース」及び「アルコール感」の評価項目について官能評価を実施した。官能評価は、選抜された識別能力のあるパネル4名により実施した。いずれの評価項目も評点1~5の5段階で評価し、その平均値を評価スコアとした。
試験例のビールテイスト飲料に対して、「ビールらしい華やかさ」、「スムース」及び「アルコール感」の評価項目について官能評価を実施した。官能評価は、選抜された識別能力のあるパネル4名により実施した。いずれの評価項目も評点1~5の5段階で評価し、その平均値を評価スコアとした。
「ビールらしい華やかさ」は、評点が高いほどビールらしい華やかさがより強く感じられることを示す。「スムース」は、評点が高いほどよりスムースに感じられることを示す。「アルコール感」は、評点が高いほどアルコール感がより強く感じられることを示す。
表1~5に示すとおり、ビールテイスト飲料において、アルコール度数を0v/v%超3v/v%以下、酢酸エチルの含有量を1.0mg/L以上、リナロールの含有量を9μg/L以上80μg/L以下に調整すると、ビールらしい華やかさが優れたものになることが示された。
表1のとおり、酢酸エチルの含有量を所定範囲内に調整することにより、ビールらしい華やかさに加えて、スムースさがより優れたものとなった(サンプル1,5と、サンプル2~4との比較)。サンプル3~4のビールテイスト飲料は、サンプル1及び5のビールテイスト飲料と比較して、ビールらしい華やかさ、スムースさ、及びアルコール感がより優れたものであった。
表2のとおり、リナロールの含有量を所定範囲内に調整することにより、ビールらしい華やかさに加えて、スムースさ、及び、アルコール感がより優れたものとなった(サンプル6,10と、サンプル7~9との比較)。
表4のとおり、発酵工程を経て得られるビールテイスト飲料(ビールテイスト発酵飲料)において、アルコール度数、酢酸エチル及びリナロールを所定範囲内に調整すると、ビールらしい華やかさが更に優れたものとなることが示された。ビールテイスト発酵飲料は、調合によって製造されたビールテイスト飲料と比べて、ビールらしい華やかさ、スムース及びアルコール感に更に優れるものであった。
表5のとおり、アルコール度数が1.5v/v%未満であると、ビールらしい華やかさ及びスムースが更に優れたものとなった(サンプル16とサンプル17との比較)。
Claims (8)
- アルコール度数が0v/v%超3v/v%以下であり、
酢酸エチルの含有量が1.0mg/L以上であり、
リナロールの含有量が9μg/L以上80μg/L以下である、ビールテイスト飲料。 - 酢酸エチルの含有量が1.0mg/L以上5.0mg/L以下である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
- リナロールの含有量が9μg/L以上50μg/L以下である、請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。
- アルコール度数が0v/v%超1.5v/v%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
- 香料不使用である、請求項1~4のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
- 発酵飲料である、請求項1~5のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
- アルコール度数を0v/v%超3v/v%以下に調整すること、
酢酸エチルの含有量を1.0mg/L以上に調整すること、及び、
リナロールの含有量を9μg/L以上80μg/L以下に調整することを含む、ビールテイスト飲料を製造する方法。 - アルコール度数を0v/v%超3v/v%以下に調整すること、
酢酸エチルの含有量を1.0mg/L以上に調整すること、及び、
リナロールの含有量を9μg/L以上80μg/L以下に調整することを含む、ビールテイスト飲料のビールらしい華やかさを向上させる方法。
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- 2021-08-31 JP JP2021141698A patent/JP2023035087A/ja active Pending
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