JP2023032005A - 導電性繊維並びにそれを用いた繊維製品及び電気・電子機器 - Google Patents

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Kentaro Ishii
秀和 鹿野
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Toshiyasu Hibino
博子 三井
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Abstract

【課題】本発明は、導電性と柔軟性を兼ね備えた導電性繊維、並びにそれを用いた繊維製品または電気・電子機器を提供する。【解決手段】中空断面を有し、その内部に40℃以下の液体金属を含む導電性繊維。【選択図】なし

Description

本発明は、導電性と柔軟性を兼ね備えた導電性繊維、並びにそれを用いた繊維製品及び電気・電子機器に関するものである。
近年、編物や織物などのテキスタイルに、各種デバイスやセンサー、ICチップなどの電子部品を組み込んだスマートテキスタイルの需要が拡大している。これらスマートテキスタイルは、スポーツ用途から医療用途に至るまで、その目的に応じた設計が可能であることから、様々なシーンでの着用が見込まれている。
これら電子部品を組み込んだスマートテキスタイルにおいて、デバイスの駆動源となる電気の送電やセンサーからの電気信号伝達等には、抵抗値の低い電気配線が必要となる。この電気配線に通常の銅線を用いた場合、送電や信号伝達に十分な導電性を示すものの、銅線は柔軟性に欠けるため、テキスタイルの曲げや伸縮などの変形に対して追従することが難しい。そのため、例えば、銅線を被服に組み込んだ際に違和感を生じたり、人間の動きを阻害するという課題があり、導電性と柔軟性を兼ね備えた素材が求められている。
このような背景から、導電性繊維に変形に対する電気特性安定性や柔軟性を付与する様々な技術が検討されている。例えば、エラストマーを用いた伸縮性繊維の表面側内部近傍にヨウ化銅からなる導電層を形成させた伸縮性芯鞘型複合繊維(特許文献1参照)や、導電性繊維をバネ状に形成し、高伸縮性を付与することで、耐久性に優れた高伸縮性導電配線とする技術(非特許文献1参照)が提案されている。
また、捲縮を有した合成繊維に導電性を付与する方法として、カーボンブラックを含有した導電層と繊維形成性を有する非導電層とが、サイドバイサイドもしくは偏心芯鞘複合を形成しており、かつ導電層が繊維表面の少なくとも一部を形成した複合繊維(特許文献2参照)などが提案されている。
また別に、フィラメントの撚線を液体金属浴に浸して被覆する技術として、中心繊維とその周りにらせん状に巻き付けられた金属合金のフィラメントより成る撚線を被覆した金属強化層を備える、複合体強化インサート(特許文献3参照)が提案されている。
特開2010-209481号公報 特開2009-46785号公報 特表2016-536479号公報
[online]、2015年2月25日、国立研究開発法人産業技術総合研究所、2021年7月5日検索、インターネット<URL:https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2015/pr20150225/pr20150225.html>
特許文献1の技術では、異なる2種類のエラストマーを用いた芯鞘型複合繊維の鞘部に導電性を付与することで伸縮性や電気特性安定性を有した芯鞘型複合繊維が得られるとされている。しかし、特許文献1の技術では、繊維の繊維径に対して導電層が薄膜となるため、送電や信号伝達に十分な導電性を得るには繊維径を太くする必要があることに加え、エラストマー特有の弾性挙動により屈曲部や伸長部に反発力が生じるため、芯鞘型複合繊維を被服に組込んだ場合、違和感を生じるという課題があった。
非特許文献1の技術では、導電性繊維をバネ状に形成することで伸縮性や耐久性に優れた導電性繊維が得られるとされている。しかし、バネ状となった繊維束の外径は太く、またバネ状構造体の弾性挙動により屈曲部や伸長部に反発力が生じるため、この導電性繊維を被服に組込んだ場合、違和感を生じるという課題があった。
特許文献2の技術では、カーボンブラックを含有した導電層を有する捲縮繊維とすることで伸縮性に優れた芯鞘型複合繊維が得られるとされている。しかし、得られた繊維の体積抵抗値が1×10-1Ω・cm以上と高く、電気の送電やセンサーからの信号伝達に用いるためには導電性が不十分であり、また導電性がカーボンブラックの分散性に起因するために抵抗値のムラが大きくなりやすく、電気特性安定性を十分に確保できないことがあった。
特許文献3の技術では、中心繊維から成る撚線を液体金属浴に浸して被覆した、複合体強化繊維が得られるとされている。しかし、金属で被覆することで十分な導電性を得られるものの、液体金属浴に充填する材料がチタニウムやアルミニウムを含むため、被覆層は柔軟性に欠け、テキスタイルの曲げや伸縮などの変形に対して追従することが難しく、被服に組み込んだ際に違和感を生じたり、人間の動きを阻害するという課題があった。
そこで本発明の目的は、上記の事情を鑑みてなされたものであって、導電性と柔軟性を兼ね備えた導電性繊維、およびそれを用いた繊維製品または電気・電子機器を提供することにある。
本発明者らが検討を進めたところ、電子部品を組み込んだスマートテキスタイルにおける電気の送電やセンサーからの信号伝達に用いる導電性繊維として、高い導電性や変形に対する電気特性安定性に加え、違和感なくテキスタイルの動きに追従するように優れた柔軟性を有していることが重要であることを確認した。
すなわち、以下のいずれかの手段により達成される
(1)中空断面を有し、その内部に融点が40℃以下の液体金属を含む導電性繊維。
(2)中空部面積が繊維断面積の10~98%であることを特徴とする前記(1)記載の導電性繊維。
(3)一次降伏点伸度が5~300%であることを特徴とする前記(1)または(2)記載の導電性繊維。
(4)繊維径が5~5000μmであることを特徴とする前記(1)~(3)のいずれか1項に記載の導電性繊維。
(5)体積抵抗率が1×10-7~1×10-1Ω・cmであることを特徴とする前記(1)~(4)のいずれか1項に記載の導電性繊維。
(6)繊維端部の少なくとも一方に、液体金属の流出を抑制する液体封止部が具備されていることを特徴とする前記(1)~(5)のいずれか1項に記載の導電性繊維。
(7)少なくとも2点に、液体金属と接触し通電する通電部が具備されていることを特徴とする前記(1)~(6)のいずれか1項に記載の導電性繊維。
(8)液体封止部と通電部が一体であることを特徴とする前記(7)に記載の導電性繊維。
(9)少なくとも一部が前記(1)~(8)のいずれか1項に記載の導電性繊維から構成される繊維製品。
(10)少なくとも一部が前記(1)~(8)のいずれか1項に記載の導電性繊維から構成される電気・電子機器。
本発明によれば、導電性と柔軟性を兼ね備えた導電性繊維、およびそれを用いた繊維製品または電気・電子機器を得ることができる。
本発明の1態様である実施例1の導電性繊維の横断面のSEM観察画像である。 本発明における一次降伏点伸度の求め方の説明図である。
本発明の導電性繊維は、中空断面を有し、その内部に融点が40℃以下の液体金属を含むものである。以下に、その構成要素について詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する範囲に何ら限定されるものではない。
[導電性繊維]
本発明の導電性繊維は、中空断面を有し、その内部に融点が40℃以下の液体金属を含むことが重要である。内部(すなわち、中空断面における中空部)の繊維軸方向に対して連続的に液体金属が満たされることにより、繊維の体積抵抗率を低くすることが可能となり、導電性を有した導電性繊維を得ることができる。また、融点が40℃以下の液体金属であるため、少なくとも40℃を超える温度では、繊維の内部において液体金属の状態であり、流動性を有している。そのため、液体金属が内部に均一に存在することができ、繊維軸方向に対する導電性の均一性に優れる。さらに、繊維に曲げや伸縮などの変形が加えられた場合も、変形に追従する形で、液体金属が内部に均一に存在するように変形できるため、変形後においても繊維軸方向に対する導電性の均一性に優れる。加えて、通常の金属線に使用される銅、アルミニウム、ステンレスなどの金属材料と異なり、融点が40℃以下の液体金属であるため、本発明の導電性繊維は曲げや伸縮などの変形に対して追従しやすく柔軟な繊維となる。そのため、本発明の導電性繊維を繊維製品や電気・電子機器に組み込んだ場合に柔軟な動きを可能とし、特に、被服などのテキスタイルに組み込んだ場合には違和感を生じにくく、人間の動きを阻害することも抑制されており、着用快適性に優れた導電性繊維を得ることができる。
本発明における液体金属は、融点が40℃以下であれば特に制限されないが、融点が40℃以下の金属である水銀、ガリウム、セシウムおよびルビジウムであることが好ましい。なかでも、毒性や放射性などの人体に対する安全性の観点から、ガリウムが好適に用いられる。
本発明における液体金属は、上記液体金属を単体で使用してもよいが、液体金属と他の金属を混合した合金を使用してもよい。例えば、ガリウム68.5%、インジウム21.5%、錫10.0%の合金とすることで、融点をガリウム単体の29.8℃から-19.0℃に下げることができることが知られており、このようなガリウムの合金を本発明の導電性繊維に用いた場合に、より低温下でも柔軟性を維持することが可能となり好適である。
本発明の導電性繊維を繊維製品、特に被服に使用することを考えると、液体金属の融点は室温(25℃)以下であることがより好ましい。
本発明における液体金属は、導電性繊維の体積抵抗率を制御するために導電性を有する金属粒子や、非導電性の鉱石や樹脂などの粒子を混合したスラリーとしてもよい。これら粒子が液体金属より体積抵抗率が低い物質の場合は、液体金属を単体で用いた場合より体積抵抗率を低くすることが可能となり、その結果、送電や信号伝達の電力ロスを低減することが可能となる。そのような粒子の物質として、金、銀、銅、アルミニウム、カリウム、マグネシウム、ロジウム、ナトリウム、モリブデン、イリジウム、タングステン、コバルト、黄銅、亜鉛、ベリリウム、ニッケル、ルテニウム、カリウム、カドミウム、オスミウム、インジウム、リチウム、鉄、白金、スズ、クロムおよびパラジウムなどの金属粒子を使用することが可能である。また、上記粒子が液体金属より体積抵抗率が高い物質の場合は、液体金属を単体で用いた場合より体積抵抗率を高くすることが可能となる。そのため、例えば、導電性繊維に電流を流すことで発生する熱エネルギーを利用したヒーターとしても利用が可能となる。そのような粒子の物質として、酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機酸化物、カーボンブラック、カーボンナノチューブなどの炭素系化合物、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの導電性高分子などを使用することが可能である。
本発明の導電性繊維は中空断面繊維の中空部に液体金属を含むものであるが、中空断面繊維は熱可塑性ポリマーからなることが好ましい。中空断面繊維が熱可塑性ポリマーからなることにより、その製造に溶融紡糸法を用いることができるため、繊維形状への成形が容易となり、内部に液体金属を含み、かつ繊維軸方向に均一な形状を有した導電性繊維を得ることができる。
本発明の導電性繊維に用いられる熱可塑性ポリマーの例としては、「ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート」等のポリエステル系ポリマーおよびその共重合体、「ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシブチレート-ポリヒドロキシバリレート共重合体、ポリカプロラクトン」等の脂肪族ポリエステル系ポリマーおよびその共重合体、「ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド10、ポリアミド12、ポリアミド6-12」等の脂肪族ポリアミド系ポリマーおよびその共重合体、「ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン」等のポリオレフィン系ポリマーおよびその共重合体、「エチレン単位を25モル%~70モル%含有する水不溶性のエチレン-ビニルアルコール共重合体系ポリマー、ポリスチレン系、ポリジエン系、塩素系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、フッ素系」等のエラストマー系ポリマー等であり、これらの中から選んで用いることができる。中でも、機械的特性や耐久性に優れる点から、ポリエステル系ポリマーおよびその共重合体、脂肪族ポリアミド系ポリマーおよびその共重合体、ポリオレフィン系ポリマーおよびその共重合体が好適に用いられ、特にポリエチレンテレフタレート、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリプロピレンが好適に用いられる。また、伸縮回復性に優れる点から、エラストマー系ポリマーが好適に用いられ、特にポリウレタン系エラストマーが好適に用いられる。これらの熱可塑性ポリマーは1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の導電性繊維は、本発明の効果を損ねない範囲で、前記の熱可塑性ポリマー中に、酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機酸化物、カーボンブラック、カーボンナノチューブなどの炭素系化合物、金、銀、銅などの金属粒子、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。
本発明における中空断面繊維は、中空部を有していれば繊維の断面形状に関して特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができ、真円状の円形断面であってもよく、非円形断面であってもよい。非円形断面の具体例として、多葉形、多角形、扁平形、楕円形などが挙げられるが、これらに限定されない。また、円形断面において、中空部が同心円状に配された同心中空型であってもよく、中空部が偏心円状に配された偏心中空型であってもよい。さらには、断面において、複数の中空部を有する複数中空断面であってもよい。中空部が1つであっても複数であっても、繊維断面における中空部の形状に関して特に制限がなく、真円状の円形断面であってもよく、非円形断面であってもよい。非円形断面の具体例として、多葉形、多角形、扁平形、楕円形などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の導電性繊維は、中空部の面積が繊維断面積の10~98%であることが好ましい。中空部の面積を好ましくは繊維断面積の10%以上、より好ましくは繊維断面積の20%以上、さらに好ましくは繊維断面積の30%以上とすることにより、液体金属を一定量以上含ませることができ繊維へ導電性を付与することができる。また、中空部の面積を好ましくは繊維断面積の98%以下、より好ましくは繊維断面積の90%以下、さらに好ましくは繊維断面積の80%以下とすることにより、断面において液体金属を含む中空部の占める割合が小さくなり、強度などの力学物性が向上する。
本発明の導電性繊維は、一次降伏点伸度が5~300%であることが好ましい。一次降伏点伸度を好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上とすることにより、曲げや伸縮などの変形に対して追従しやすく柔軟な繊維となるため、繊維製品や電気・電子機器に組み込んだ場合に柔軟な動きを可能とし、特に、被服などのテキスタイルに組み込んだ場合には違和感を生じず、人間の動きを阻害することも抑制されており、着用快適性に優れた導電性繊維となる。また、一次降伏点伸度を好ましくは300%以下、より好ましくは250%以下、さらに好ましくは200%以下とすることにより、伸縮時の抵抗変化を抑制することが可能である。
なお、本発明における一次降伏点伸度とは、後述する繊維端部における両端の開口部を覆うように接着剤を付着し封止した導電性繊維をテンシロン引張り試験機を用いて、張力をかけずに導電性繊維をセットし、試料長200mm、引張速度200mm/分の条件にて応力-歪み曲線から、弾性変形領域の延長線と塑性変形領域の延長線との交点から求められる一次降伏点での伸度として算出し(図2参照)、1水準につき5回測定を行い、その算術平均値より求めるものである。
本発明の導電性繊維は、体積抵抗率が1×10-7~1×10-1Ω・cmであることが好ましい。体積抵抗率を好ましくは1×10-7Ω・cm以上、より好ましくは1×10-6Ω・cm以上とすることにより、実質的に導電性繊維の断面において液体金属を含む芯成分の占める割合が小さくなり、強度などの力学物性が向上する。また、体積抵抗率を好ましくは1×10-1Ω・cm以下、より好ましくは1×10-2Ω・cm以下、さらに好ましくは1×10-3Ω・cm以下とすることにより、より高い導電性を得ることができる。
本発明の導電性繊維は、内部の液体金属が繊維端部から流出することを抑制するため、導電性繊維の繊維端部の少なくとも一方に液体封止部が具備されていることが好ましい。液体封止部は、導電性繊維の繊維端部における開口部に対し流動性の樹脂や接着剤を注入後固化させたり、繊維端部における開口部に対し覆うように樹脂や接着剤を付着させたり、繊維端部における開口部に対し金属、樹脂または鉱物などの固形物を挿入したり、導電性繊維そのものを捻ったり、結んだり、潰したりすることで、導電性繊維の繊維端部における開口(中空部)を閉塞することができればどの様な形態でもよい。このようにすることで、導電性繊維の繊維端部から液体金属の流出を抑制することができる。
前記液体封止部に使用する樹脂は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、変成シリコーン、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂及び、ポリ乳酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
前記液体封止部に使用する接着剤は、無機系、有機系、天然系、合成系などが挙げられるが、これらに限定されない。
前記液体封止部に使用する金属は、金、銀、銅、アルミニウム、カリウム、マグネシウム、ロジウム、ナトリウム、モリブデン、イリジウム、タングステン、コバルト、黄銅、亜鉛、ベリリウム、ニッケル、ルテニウム、カリウム、カドミウム、オスミウム、インジウム、リチウム、鉄、白金、スズ、クロムおよびパラジウムなどが挙げられるが、腐食性の観点から金または銀単体、もしくは上記金属に金メッキまたは銀メッキを施したものが好ましい。
本発明の導電性繊維は、導電性繊維の外から内部の液体金属と接触し通電する通電部が、少なくとも2点具備されていることが好ましい。通電部は、導電性繊維の繊維表層から貫通して内部の液体金属と接触させてもよいし、導電性繊維の繊維端部における開口において内部の液体金属と接触させるなど、導電性繊維の外から内部の液体金属に通電できればどの様な形態でもよい。
通電部の材料としては、金、銀、銅、アルミニウム、カリウム、マグネシウム、ロジウム、ナトリウム、モリブデン、イリジウム、タングステン、コバルト、黄銅、亜鉛、ベリリウム、ニッケル、ルテニウム、カリウム、カドミウム、オスミウム、インジウム、リチウム、鉄、白金、スズ、クロムおよびパラジウムなどの金属類やカーボン、グラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブなどの炭素系など、導電性を伴っていれば良い。また、それら金属類や炭素系の粒子を樹脂に含有して導電性を得るように加工したものでもよい。なお、上記金属類を使用する際は腐食性の観点から金または銀単体、もしくは上記金属に金メッキまたは銀メッキを施したものが好ましい。
本発明において、液体封止部と通電部は一体であってもよい。例えば、導電性繊維の中空部直径と略同じ直径の円柱状金属を2本準備し、導電性繊維の繊維端部における両端の開口に対し液体金属と接触するまで挿入し固定することで、内部液体金属が繊維端部から流出するのを抑制しつつ通電することができるため、その結果、両端の円柱状金属間で液体金属を通じて通電することが可能となる。円柱状金属としては、通電部の材料として上述したものが好ましく使用できる。
なお、本発明における抵抗値、抵抗率、体積抵抗率とは、以下のようにして求めるものである。
(1)導電性繊維を、張力をかけずにまたは任意の伸長率となるよう引き延ばした状態で固定し、抵抗測定レンジに設定した抵抗計のプローブを導電性繊維内部の液体金属に接触するようにセットし、抵抗値(Ω)を測定する。
(2)上記(1)で得られた抵抗値(Ω)を繊維長(cm)で割り、抵抗率(Ω/cm)を求める。
(3)上記(2)で得られた抵抗率(Ω/cm)に、後述する方法にて測定に供した導電性繊維の断面積(cm)をかけた値を求める。
(4)上記測定を1水準につき測定場所を変更して5回実施し、その算術平均値を体積抵抗率(Ω・cm)とする。
本発明の導電性繊維においては、液体金属の体積抵抗率が明らかである場合には導電性繊維の抵抗値を算術にて求めることが可能である。
液体金属の体積抵抗率をρ[Ω・cm]、長さをL[cm]、封入されている液体金属断面積をS[cm]とした場合の導電性繊維の抵抗値R[Ω]は式(1)によって求めることが可能となる。
R=ρ×L/S ・・・(1)
本発明の導電性繊維は、導電性繊維の伸長に伴い、抵抗値が変化する。これを、上記式(1)を用いて説明すると、繊維長が2倍に伸長した場合はL[cm]が2倍となり、S[cm]が1/2となるため、抵抗値R[Ω]は伸長する前の4倍となる。したがって、抵抗値を測定するだけで伸長率へと変換できることを利用した、伸長率のセンサーとして利用することが可能である。その一方で、導電性繊維の伸長率に応じて抵抗値が変化することから、導電性繊維を送電や信号伝達に使用する際は、伸長時においても十分な抵抗値となるよう液体金属の断面積を確保するようにする必要がある。
本発明の導電性繊維は、マルチフィラメントとする場合には、総繊度が10~300000dtexとすることが好ましい。総繊度を好ましくは10dtex以上、より好ましくは20dtex以上、さらに好ましくは30dtex以上とすることにより、繊維の破断強力が高くなるため、工程通過性が良好かつ使用時の耐久性に優れた導電性繊維となる。また、総繊度を好ましくは300000dtex以下、より好ましくは100000dtex以下、さらに好ましくは10000dtex以下とすることにより、曲げなどの変形に対して追従しやすく柔軟な導電性繊維となるため、繊維製品や電気・電子機器に組み込んだ場合に柔軟な動きを可能とし、特に、被服などのテキスタイルに組み込んでも違和感がなく、着用快適性に優れた導電性繊維となる。
なお、本発明における総繊度とは、導電性繊維を100mかせ取り、かせの質量に100を乗じることにより総繊度(dtex)を算出し、1水準につき5回測定を行い、その算術平均値より求めるものである。導電性繊維が100mより短い場合や、かせ取りすることができない場合は、導電性繊維の長さ(m)と質量(g)を測定し、質量(g)÷長さ(m)×10000によって、総繊度(dtex)を算出してもよい。
本発明の導電性繊維は、繊維径が5~5000μmであることが好ましい。繊維径を好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上とすることにより、繊維の強力が高くなるため摩擦などの擦過による糸切れが低減し、工程通過性が良好かつ使用時の耐久性に優れた導電性繊維となる。また、繊維径を好ましくは5000μm以下、より好ましくは3000μm以下、さらに好ましくは1000μm以下とすることにより、曲げなどの変形に対して追従しやすく柔軟な繊維となるため、繊維製品や電気・電子機器に組み込んだ場合に柔軟な動きを可能とし、特に、被服などのテキスタイルに組み込んだ場合には違和感がなく、着用快適性に優れた導電性繊維となる。
なお、本発明における断面積、繊維径、中空部面積とは、以下のようにして求めるものである。
(1)単繊維を繊維軸垂直方向に切断し、走査型電子顕微鏡を用いて、その単繊維断面全体が観察できる倍率として画像を撮影する。
(2)撮影した画像について、画像解析ソフトを用いて、単繊維の断面輪郭が形成する断面積(cm)を計測し、この断面積(cm)と同一面積となる真円の直径(μm)を算出する。
(3)無作為に抽出した20箇所について実施し、その算術平均値を繊維径(μm)とする。
(4)上記撮影した画像について、画像解析ソフトを用いて、単繊維の中空部内壁と液体金属の界面輪郭が形成する中空部面積(cm)を計測する。
本発明の導電性繊維は、破断強度が1.0cN/dtex以上であることが好ましい。破断強度を好ましくは1.0cN/dtex以上、より好ましくは1.5cN/dtex以上、さらに好ましくは2.0cN/dtex以上とすることにより、織り編みなどの後加工工程での糸切れや、電気・電子機器に組み込む際の糸切れが減少するとともに、繊維製品や電気・電子機器を使用時の糸切れも減少し、工程通過性が良好かつ使用時の耐久性に優れた導電性繊維となる。一方、本発明における破断強度の上限は特に制限されないが、10.0cN/dtex程度が実質的な上限である。
なお、本発明における破断強度とは、前述のように繊維端部における両端の開口部を覆うように接着剤を付着し封止した導電性繊維をJIS L 1013:2010 8.5に記載の引張強さ及び伸び率に基づき、張力をかけずに導電性繊維をセットし、試料長200mm、引張速度200mm/分の条件にて破断時の強力(cN)を測定し、総繊度(dtex)で除することにより強度(cN/dtex)を算出し、1水準につき5回測定を行い、その算術平均値より求めるものである。
本発明の導電性繊維は、破断伸度が15~500%であることが好ましい。破断伸度を好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上とすることにより、織り編みなどの後加工工程での糸切れや、電気・電子機器に組み込む際の糸切れが減少するとともに、繊維製品や電気・電子機器を使用時の糸切れも減少し、工程通過性が良好かつ使用時の耐久性に優れた導電性繊維となる。また、破断伸度を好ましくは500%以下、より好ましくは450%以下、さらに好ましくは400%以下とすることにより、繊維を伸長した際に塑性変形しにくくなるため、使用時の耐久性に優れた導電性繊維となる。
なお、本発明における破断伸度とは、前述のように繊維端部における両端の開口部を覆うように接着剤を付着し封止した導電性繊維をJIS L 1013:2010 8.5に記載の引張強さ及び伸び率に基づき、張力をかけずに導電性繊維をセットし、試料長200mm、引張速度200mm/分の条件にて破断時の伸度(%)を測定し、1水準につき5回測定を行い、その算術平均値より求めるものである。
本発明の導電性繊維は、10%モジュラスが1.50cN/dtex以下であることが好ましい。10%モジュラスを好ましくは1.50cN/dtex以下、より好ましくは1.00cN/dtex以下、さらに好ましくは0.50cN/dtex以下とすることにより、変形に対して生じる応力が小さくなるため、柔軟性に優れた導電性繊維となる。一方、本発明における10%モジュラスの下限は特に制限されないが、0.00cN/dtexが実質的な下限である。
なお、本発明における10%モジュラスとは、前述のように繊維端部における両端の開口部を覆うように接着剤を付着し封止した導電性繊維をJIS L 1013:2010 8.5に記載の引張強さ及び伸び率に基づき、張力をかけずに導電性繊維をセットし、試料長200mm、引張速度200mm/分の条件にて10%伸長させた際の応力(cN/dtex)を測定し、1水準につき5回測定を行い、その算術平均値より求めるものである。
本発明の導電性繊維は、高い導電性や変形に対する電気特性安定性に加え、優れた柔軟性を有していることから、これらの特徴を活かして、例えば帯電防止素材としてストッキング、タイツ、防塵衣などの衣料やカーテンなどのテキスタイル、または屋内外、車両内に敷くカーペットやマット、床材などの各種用途に使用することができるが、特に布帛に組み込んだデバイスの駆動源となる電気の送電やセンサーからの電気信号伝達などの、スマートテキスタイルに好適に用いることができる。また、電気・電子機器において、伸縮や屈曲のような動作を必要とする部分へ本発明の導電性繊維を組み込むことで、電気の送電やセンサーからの電気信号伝達などにも好適に用いることができるほか、導電性繊維自身をセンサーやヒーターなどとして使用することができる。
本発明の導電性繊維は、環境温度より融点が高い液体金属を使用することで、体温やドライヤーなどの熱源で形状を自由に変えた後、環境温度を液体金属の融点より低くすることで、その形状を維持するテキスタイルとすることができる。この特性を利用して、形状を自由に変更できるオブジェクトや必要なときに面状に拡げられるスクリーンなどに活用することができる。
[繊維製品]
本発明の繊維製品は、少なくとも一部が本発明の導電性繊維から構成されてなる。繊維製品としては織物や編物などのテキスタイルのほか、それらを縫製した被服などがある。本発明の導電性繊維を少なくとも一部に含むことで、着用時の違和感がない、もしくは生じにくく着用快適性に優れた、テキスタイル、被服となる。
本発明の被服とは、身体を部分的あるいは全体的に覆うために着用する物であり、上衣や下衣、または着物やカバーオールなどの衣服だけでなく、帽子や手袋、靴下なども含まれる。中でも、各種デバイスやセンサー、ICチップなどの電子部品を組み込んだ被服であるスマートテキスタイルに適用することにより、高い導電性や変形に対する電気特性安定性、柔軟性といった本発明の導電性繊維の特徴を遺憾なく発揮することが可能となるため、より好ましい。
例えば、本発明の導電性繊維をスマートテキスタイルに適用した場合、銅、アルミニウム、ステンレスなどの通常の金属線と異なり、繊維素材かつ内部が液体金属であることに起因する高い柔軟性により、曲げや伸縮などの変形に対して追従しやすく、着用時に違和感が無くもしくは生じにくく、人間の動きを阻害することも抑制されており、着用快適性に優れたスマートテキスタイルとなる。さらに、本発明の導電性繊維はカーボンブラックを含有させた繊維と比較して体積抵抗率が低いため、デバイスの駆動源となる電気の送電やセンサーからの電気信号伝達も可能であることに加え、変形に対する電気特性安定性にも優れている。よって、本発明の導電性繊維は、様々な用途のスマートテキスタイルに適用することができる。
本発明の被服は、導電性繊維を電気の送電に用いる場合に、表面成分の材料を非導電性とすることで、着用時に感電や漏電などを防ぐことができるため好適である。
[電気・電子機器]
本発明の電気・電子機器は、少なくとも一部が本発明の導電性繊維から構成されてなる。本発明の導電性繊維を少なくとも一部に含むことで、曲げや伸縮のような動作を円滑に行うことができ、かつ変形に対する電気特性安定性に優れた電気機器又は電子機器となる。
本発明の導電性繊維は、電気の送電やセンサーからの電気信号伝達が可能であることに加え、変形に対する電気特性安定性にも優れている。よって、本発明の導電性繊維は、曲げや伸縮のような動作を必要とする様々な用途の電気・電子機器に適用することができる。
本発明の電気・電子機器は、導電性繊維を電気の送電に用いる場合、表面成分の材料を非導電性とすることで、漏電などを防ぐことができるため好適である。
本発明の導電性繊維は、複数本束ねて使用することができる。合撚糸、カバーリング糸および組紐などとすることで、繊維をまとめてコンパクトにでき、かつ取り扱い性が良好となるため好適である。また、導電性繊維を織物の経糸および/または緯糸とすることでフラットケーブルとして使用することができ、経糸と緯糸のどちらも導電性繊維とすることでマトリックス状のフラットケーブルとすることができる。
[導電性繊維、並びに繊維製品及び電気・電子機器の製造方法]
次に、本発明の導電性繊維を製造する好ましい態様を、具体的に説明する。
本発明の繊維の製造方法は、溶融紡糸法や溶液紡糸法などから選択することができるが、環境負荷が小さいことや製造が容易である点から、溶融紡糸法を適用することが好ましい。
本発明に用いられる熱可塑性ポリマーは、水分混入防止やオリゴマー除去を目的に、紡糸に供する前に乾燥することが製糸性を高める上で好ましい。乾燥条件としては、80~200℃にて、1~24時間の真空乾燥が通常用いられる。
溶融紡糸では、プレッシャーメルター型、単軸や2軸エクストルーダー型などの押出機を用いた溶融紡糸法を適用することができる。押し出された熱可塑性ポリマーは、配管を経由し、ギアーポンプなどの計量装置により計量され、異物除去のフィルターを通過した後、紡糸口金へと導かれ中空断面を有し吐出される。
熱可塑性ポリマーとしてポリエステルやポリアミドを用いる場合、ポリマー配管から紡糸口金までの温度(紡糸温度)は、流動性を高めるために上記熱可塑性ポリマーの融点+20℃以上が好ましく、熱可塑性ポリマーの熱分解を抑制するために320℃以下とすることが好ましい。
本発明に用いられる液体金属は、バンドヒーターや湯煎などで凝固した液体金属の容器を加熱し溶融することができる。溶融後はギヤポンプやチューブポンプなどの容積式ポンプやシリンジポンプなどで計量でき、配管を経由し紡糸口金へと導かれ、上記中空断面の熱可塑性ポリマーの内部を満たしながら吐出される。
液体金属の溶融温度は、流動性を高めるために液体金属の融点+20℃以上が好ましい。
紡糸口金から吐出された未延伸繊維は、冷却風(空気)を吹き付けることにより冷却固化されることが好ましい。冷却風の温度は、冷却効率の観点から冷却風速とのバランスで決定することができるが、30℃以下であることが好ましい態様である。冷却風の温度を好ましくは30℃以下とすることにより、冷却による固化挙動が安定し、繊維径均一性の高い導電性繊維となる。
紡糸口金から吐出された未延伸繊維は、冷却浴に導かれて急冷されてもよい。冷却浴の温度は10~90℃であることが好ましい。冷却浴の温度が10℃以上であれば、冷却浴中で繊維が蛇行することなく、繊維径均一性の高い導電性繊維を得ることができるため好ましい。一方、冷却浴の温度が90℃以下であれば、冷却による固化挙動が安定し、繊維径均一性の高い導電性繊維を得ることができるため好ましい。また、冷却時間は、吐出量や引き取り速度などに応じて適宜調整することができる。
冷却浴の冷媒としては、繊維表面から容易に除去でき、繊維に対して物理的変化や化学的変化を与えない物質であり、上記の冷却浴の温度範囲において液体であれば、特に制限なく用いることができる。冷却浴の冷媒の具体例として、水、パラフィン、エチレングリコール、グリセリン、アミルアルコール、キシレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
また、冷却風は、紡糸口金から吐出された未延伸繊維にほぼ垂直方向に流すことが好ましい。その際、冷却風の速度は、冷却効率および繊維径均一性の観点から、10m/分以上であることが好ましく、製糸安定性の点から100m/分以下であることが好ましい。
冷却固化された未延伸繊維は、直接ワインダーで巻き取ってもよく、もしくは一定速度で回転するローラー(ゴデットローラー)により引き取られた後、ワインダーで巻き取ってもよい。
このようにして得られた未延伸繊維は、一旦巻き取った後、または引き取った後連続して、延伸工程に供されてもよい。延伸は加熱された第1ローラー、もしくは第1ローラーと第2ローラーの間に設けられた加熱装置、例えば、加熱浴中や熱板上を走行させることにより行われる。延伸条件は得られた未延伸繊維の力学物性などにより決定されるが、延伸温度は加熱された第1ローラーもしくは第1ローラーと第2ローラーの間に設けられた加熱装置の温度により決定され、延伸倍率は第1ローラーと第2ローラーの周速度の比により決定される。
さらに、第2ローラーを通過した後、加熱された第3ローラー、もしくは第2ローラーと第3ローラーの間に設けられた加熱装置にて延伸繊維を加熱し、熱セットを施すことも可能である。熱セットを施すことにより結晶化が進み、形状安定性に優れた導電性繊維となる。
上記の製造方法にて得られた導電性繊維は、織物や編物などのテキスタイルに組み込まれる。織物や編物に組み込む場合、製造工程に供される繊維の一部またはすべてに本発明の導電性繊維を使用する方法や、別の繊維にて構成された生機や編地に本発明の導電性繊維を縫い付ける方法などが挙げられる。このようにして得られたテキスタイル(織物や編物)を用いて、本発明の被服を縫製する。また、被服に本発明の導電性繊維を直接縫い付ける方法なども挙げられる。さらに、本発明の導電性繊維を電気・電子機器へ組み込む場合には、銅線のような通常の電気配線と同様の方法などを採用できる。
次に、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各物性の測定において、特段の記載がないものは、前述の方法に基づいて測定を行ったものである。
(1)繊維径、断面積、中空部面積
単繊維について、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の走査型電子顕微鏡「S-5500」を用いて、単繊維断面全体が観察できる倍率として画像を撮影した。その後、画像解析ソフトとして、三谷商事株式会社製「WinROOF2015」を用い、前述の通り測定を行った。
(2)伸長率
伸長率について、株式会社ミツトヨ社製のABSデジマチックキャリパ「CD-20-AX」を用い、張力をかけない状態の導電性繊維と任意の伸長率となるよう引き延ばした状態の導電繊維の長さを測定し、算出した。
(3)抵抗値、抵抗率、体積抵抗率
抵抗値について、日置電機株式会社製の抵抗計「RM3544」を用い、前述の通り測定を行った。また、抵抗率、体積抵抗率を前述の通り算出した。
(4)一次降伏点伸度
一次降伏点伸度については、繊維端部における両端の開口部を覆うように接着剤を付着し封止した導電性繊維をテンシロン引張り試験機を用いて、前述の通り測定を行った。
[実施例1]
円筒状にポリマーを吐出でき、その内部に液体金属を吐出できる構造(いわゆる芯鞘構造)の紡糸口金を設計・作製した。導電性繊維の中空断面繊維の熱可塑性ポリマーとして東レ・オペロンテックス株式会社製のポリウレタン「“ライクラ”T-127」、内部の液体金属として50℃の水浴で1時間静置して溶融させたガリウムを使用し、紡糸温度220℃にて溶融紡糸した。溶融紡糸において、ポリウレタンはギアを用いた計量方法にて計量し、ガリウムはシリンジポンプにて計量し、紡糸口金まで導いた。その後、紡糸口ノズルで単糸吐出量の体積をポリウレタン1.6mL/分、ガリウム1.6mL/分として吐出し、20m/分にてワインダーにて巻き取り、導電性繊維を得た。得られた導電性繊維の横断面をSEMで観察した画像を図1に示す。また、評価結果を表1に示す。
[実施例2]
紡糸工程における単孔吐出量を、実施例2では単糸吐出量の体積をポリウレタン1.6mL/分、ガリウム14.4mL/分として吐出した以外は実施例1と同様の方法で導電性繊維を得た。得られた導電性繊維の評価結果を表1に示す。
[比較例1]
円筒状に液体金属を吐出でき、その内部にポリマーを吐出できる芯鞘構造の紡糸口金を設計・作製した。導電性繊維の液体金属として50℃の水浴で1時間静置し溶融させたガリウム、内部の熱可塑性ポリマーとして東レ・オペロンテックス株式会社製のポリウレタン「“ライクラ”T-127」を使用し、紡糸温度220℃にて溶融紡糸した。溶融紡糸において、ガリウムはシリンジポンプにて計量し、ポリウレタンはギアを用いた計量方法にて計量し、紡糸口金まで導いた。その後、紡糸口金内で単糸吐出量の体積をガリウム1.6mL/分、ポリウレタン1.6mL/分として吐出し紡糸し、20m/分にてワインダーにて巻き取り、導電性繊維を得た。しかし、導電性繊維の表面に液体金属が露出しているためにワインダーでボビンへ巻き取り直後に糸同士が固着し、ボビンからの解舒が困難であった。また、解舒操作中に手に液体金属が付着し、液体金属が繊維から剥離し破断してしまったため評価はできなかった。
Figure 2023032005000001
表1に実施例1および実施例2における評価結果を示す。実施例1、実施例2で得られた導電性繊維を未伸長状態で、10cmにカットし測定した抵抗値はそれぞれ0.769Ω、0.085Ωであった。また、導電性繊維の繊維長と断面積から算出した体積抵抗率はそれぞれ2.7×10-5Ω・cm、1.5×10-5Ω・cmであり、電気配線のような送電用として使用する上で十分に低い抵抗値および体積抵抗率の導電性繊維であった。
また、実施例1、実施例2で得られた導電性繊維を20cmになるまで100%伸長させて測定した抵抗値はそれぞれ3.078Ω、0.342Ωであり、100%伸長した状態でも電気配線のような送電用として使用する上で十分に低い抵抗値の導電性繊維であった。導電性繊維を100%伸長(長さは2倍)させることで実施例1、実施例2ともに未伸長状態と比べて抵抗値が4倍となっており、すなわち伸長率に応じて抵抗値が変化することから、抵抗値を測定するだけで伸長率へと変換することが可能となり、伸長率のセンサーとして使用できることを確認できた。

Claims (10)

  1. 中空断面を有し、その内部に融点が40℃以下の液体金属を含む導電性繊維。
  2. 中空部面積が繊維断面積の10~98%であることを特徴とする請求項1記載の導電性繊維。
  3. 一次降伏点伸度が5~300%であることを特徴とする請求項1または2記載の導電性繊維。
  4. 繊維径が5~5000μmであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性繊維。
  5. 体積抵抗率が1×10-7~1×10-1Ω・cmであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性繊維。
  6. 繊維端部の少なくとも一方に、液体金属の流出を抑制する液体封止部が具備されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の導電性繊維。
  7. 少なくとも2点に、液体金属と接触し通電する通電部が具備されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の導電性繊維。
  8. 液体封止部と通電部が一体であることを特徴とする請求項7に記載の導電性繊維。
  9. 少なくとも一部が請求項1~8のいずれか1項に記載の導電性繊維から構成される繊維製品。
  10. 少なくとも一部が請求項1~8のいずれか1項に記載の導電性繊維から構成される電気・電子機器。
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