JP2023031066A - 重ね隅肉溶接方法及び溶接装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】下向きの重ね隅肉溶接において、上板と下板の間に隙間がある場合であっても、上板側における溶け込み不足を解消することができる重ね隅肉溶接方法を提供する。【解決手段】重ね合わされた第1母材及び第2母材の隅部へ溶接ワイヤを送給してアーク溶接を行う重ね隅肉溶接方法であって、溶接電流を検出し、第1母材及び第2母材の隙間に溶融金属が吸い込まれることによる溶接電流の減少の有無を判定し、溶接電流が減少したと判定された場合、前記隅部に対する溶接ワイヤの狙い角を小さくする。【選択図】図4
Description
本発明は、重ね隅肉溶接方法及び溶接装置に関する。
溶接継手の一つに2枚の板材を略水平に重ね合わせた重ね継手がある。重ね継手の上板端部と下板とからなる隅部の溶接は、重ね隅肉溶接と呼ばれる。特許文献1には、アーク時間のバラツキから、継手位置に対する溶接トーチの位置ずれを検知し、溶け落ちを防止する技術が開示されている。
下向きの重ね隅肉溶接において、上板と下板の間に隙間があると、その隙間に溶融金属が吸い込まれてしまい、隙間がない場合と比べて上板側に溶け込み不足が発生しやすいという技術的問題がある。隙間が生じないように上板及び下側を治具で固定しても、母材である上板及び下板の加工精度、溶接時の熱膨張の影響によって部分的に隙間が生じることがあり、上板側に溶け込み不足が発生し得る。
特許文献1には、溶接トーチの位置ずれを検知し、溶け落ちを防止する技術が開示されているが、上板と下板の隙間に溶融金属が吸い込まれることによる溶け込み不足を解決する技術は開示されていない。
特許文献1には、溶接トーチの位置ずれを検知し、溶け落ちを防止する技術が開示されているが、上板と下板の隙間に溶融金属が吸い込まれることによる溶け込み不足を解決する技術は開示されていない。
本発明の目的は、下向きの重ね隅肉溶接において、上板と下板の間に隙間がある場合であっても、上板側における溶け込み不足を解消することができる重ね隅肉溶接方法及び溶接装置を提供することにある。
本発明の一態様に係る重ね隅肉溶接方法は、重ね合わされた第1母材及び第2母材の隅部へ溶接ワイヤを送給してアーク溶接を行う重ね隅肉溶接方法であって、溶接電流を検出し、第1母材及び第2母材の隙間に溶融金属が吸い込まれることによる溶接電流の減少の有無を判定し、溶接電流が減少したと判定された場合、前記隅部に対する溶接ワイヤの狙い角を小さくする。
本発明の一態様に係る溶接装置は、重ね合わされた第1母材及び第2母材の隅部へ溶接ワイヤを送給してアーク溶接を行う溶接装置であって、溶接電流を検出する電流検出回路と、前記隅部に沿って溶接トーチを移動させる溶接ロボットと、第1母材及び第2母材の隙間に溶融金属が吸い込まれることによる溶接電流の減少の有無を判定し、溶接電流が減少したと判定された場合、前記隅部に対する溶接ワイヤの狙い角が小さくなるように、前記溶接トーチの姿勢を制御する制御装置とを備える。
上記によれば、下向きの重ね隅肉溶接において、上板と下板の間に隙間がある場合であっても、上板側における溶け込み不足を解消することができる。
本開示の実施形態に係る重ね隅肉溶接方法及び溶接装置を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、アーク溶接装置の構成例を示す模式図、図2は、溶接電源の構成例を示すブロック図である。本実施形態に係るアーク溶接装置は、下向きの重ね隅肉溶接を行うための消耗電極式のガスシールドアーク溶接機である。母材Aは、略水平に重ね合わせた上板A1(第1母材)及び下板A2(第2母材)からなる重ね継手である。本実施形態に係るアーク溶接装置は、例えばパルス溶接機であり、上板A1の端部と下板A2とからなる隅部へ溶接ワイヤWを送給してアーク溶接を行い、下向き重ね隅肉溶接方法を実施する。
図1は、アーク溶接装置の構成例を示す模式図、図2は、溶接電源の構成例を示すブロック図である。本実施形態に係るアーク溶接装置は、下向きの重ね隅肉溶接を行うための消耗電極式のガスシールドアーク溶接機である。母材Aは、略水平に重ね合わせた上板A1(第1母材)及び下板A2(第2母材)からなる重ね継手である。本実施形態に係るアーク溶接装置は、例えばパルス溶接機であり、上板A1の端部と下板A2とからなる隅部へ溶接ワイヤWを送給してアーク溶接を行い、下向き重ね隅肉溶接方法を実施する。
アーク溶接装置は、溶接トーチ11及びワイヤ送給部12が取り付けられた溶接ロボット1と、溶接電源2と、制御装置3と、図示しないシールドガス供給部とを備える。図1中、太線は給電ケーブル、細線は制御通信線である。
制御装置3は、溶接電源2に溶接条件を設定して、溶接電源2の動作を制御する。また、制御装置3は、動作制御信号を溶接ロボット1へ出力することによって、溶接ロボット1の動作を制御する。更に、制御装置3は、上板A1と下板A2の隙間に溶融金属が吸い込まれて溶け込み不足が発生する問題を解消するための調整装置4を備える。
溶接ロボット1は、床面の適宜箇所に固定される基部を備える。基部には、複数のアームが軸部を介して回動可能に連結している。先端側に連結されたアームの先端部位には、溶接トーチ11が保持されている。アームの連結部分にはサーボモータが設けられており、サーボモータの回転駆動力によって軸部を中心に各アームが回動する。サーボモータの回転は制御装置3によって制御されている。制御装置3は、各アームを回動させることによって、母材Aに対して溶接トーチ11を上下前後左右に移動させることができる。各アームの連結部分には、アームの回動位置を示す信号を制御装置3へ出力するエンコーダが設けられており、制御装置3は、エンコーダから出力された信号に基づいて、溶接トーチ11の位置及び姿勢を認識する。
シールドガス供給部は、溶接トーチ11へシールドガスを供給する。シールドガスは、アークによって溶融した母材A及び溶接ワイヤWの酸化を防止するためのものである。シールドガスは、例えばアルゴンAr、二酸化炭素CO2 及びヘリウムHeの混合ガス、又はアルゴンAr及びヘリウムHeの混合ガスである。
溶接トーチ11は、銅合金等の導電性材料からなり、母材Aの被溶接部へ溶接ワイヤWを案内すると共に、アークの発生に必要な溶接電流Iwを供給する円筒形状のコンタクトチップを有する。コンタクトチップは、その内部を挿通する溶接ワイヤWに接触し、溶接電流Iwを溶接ワイヤWに供給する。また、溶接トーチ11は、コンタクトチップを囲繞する中空円筒形状をなし、シールドガス供給部から供給されたシールドガスを被溶接部へ噴射するノズルを有する。
溶接ワイヤWは、例えばソリッドワイヤ、メタルコアードワイヤ又はフラックスコアードワイヤであり、消耗電極として機能する。溶接ワイヤWは、例えば、螺旋状に巻かれた状態でペールパックに収容されたパックワイヤ、あるいはワイヤリールに巻回されたリールワイヤである。
ワイヤ送給部12は、溶接ワイヤWを溶接トーチ11へ送給する送給ローラと、当該送給ローラを回転させるモータとを有する。ワイヤ送給部12は、送給ローラを回転させることによって、ペールパック又はワイヤリールから溶接ワイヤWを引き出し、引き出された溶接ワイヤWを溶接トーチ11へ定速で供給する。
溶接電源2は、電源回路21、検出部22、電源制御回路23及び送給制御回路24を備える。電源回路21は、給電ケーブルを介して、溶接トーチ11のコンタクトチップ及び母材Aに接続され、溶接ワイヤW及び母材A間に溶接電圧Vwを印加して、溶接電流Iwを供給する。
検出部22は、電圧検出回路22a及び電流検出回路22bを含む。電流検出回路22bは、溶接工程中にアークを流れる溶接電流Iwを検出し、検出した電流値を示す電流検出信号Idを電源制御回路23へ出力する。電圧検出回路22aは、溶接トーチ11及び母材Aに印加される溶接電圧Vwを検出し、検出した電圧値を示す電圧検出信号Vdを電源制御回路23へ出力する。
電源制御回路23は、電圧検出回路22a及び電流検出回路22bにて検出された電流値及び電圧値と、設定電圧値及び設定電流値とに基づく誤差増幅信号ΔEを電源回路21へ出力する。設定電圧値及び設定電流値は、例えば制御装置3によって設定される。誤差増幅信号ΔEは、例えば、検出された電流値と、溶接電流Iwの目標値との差分を示す信号である。誤差増幅信号ΔEは、検出された電圧値と、溶接電圧Vwの目標値との差分を示す信号としてもよい。電源回路21は、商用交流電源を入力し、誤差増幅信号ΔEに基づいて、インバータ制御、サイリスタ位相制御等を行い、溶接に適した溶接電圧Vw及び溶接電流Iwを出力する。
送給制御回路24は、設定電流値に対応した送給速度で溶接ワイヤWを送給するための送給制御信号をワイヤ送給部12へ出力し、溶接ワイヤWの送給速度を制御する。また、溶接電源2又は電源制御回路23は、溶接工程中の溶接状態の状態を示す溶接モニタ信号を制御装置3の調整装置4へ出力する。溶接モニタ信号は、例えば電流検出信号Idである。
図3は、調整装置4の構成例を示すブロック図である。調整装置4は、処理部40と、入力部40aと、出力部40bと、記憶部40cとを備えるコンピュータである。
記憶部40cは、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部40cは、母材Aに対する溶接トーチ11及び溶接ワイヤWの狙い角を最適化し、上板A1側における溶け込み不足を解消するためのコンピュータプログラム40d及びテーブル40eを記憶している。テーブル40eは、設定電流値と、上板A1及び下板A2の隙間に溶融金属が吸い込まれた際に生ずる溶接電流Iwの減少率とを対応付けて格納している。溶融金属が上記隙間に吸い込まれた際に生ずる溶接電流Iwの減少率は、設定電流値に依存する。
処理部40は、CPU(Central Processing Unit)、又はマルチコアCPU等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インタフェース等を有するコンピュータであり、インタフェースには、入力部40a、出力部40b及び記憶部40cが接続されている。処理部40は、記憶部40cが記憶するコンピュータプログラム40dを実行することにより、母材Aに対する溶接トーチ11及び溶接ワイヤWの狙い角を最適化する処理を実行する。
入力部40aは、溶接電源2に接続されている。入力部40aには、溶接電源2から出力された溶接モニタ信号、例えば電流検出信号Idが入力される。
出力部40bは、溶接ロボット1及び溶接電源2に接続されている。処理部40は、母材Aに対する溶接トーチ11及び溶接ワイヤWの狙い角を最適化する動作制御信号を溶接ロボット1へ出力する。
図4は、本実施形態に係る調整処理手順を示すフローチャート、図5は、重ね隅肉溶接方法を示す説明図である。制御装置3は、溶接ロボット1及び溶接電源2の動作を制御し、重ね継手である母材Aの隅肉溶接を行うものとする。溶接速度は100cm/分以上、120cm/分以下である。パルス溶接に係るパルス周期は例えば4m秒(250Hz)である。調整装置4は、隅肉溶接を開始前又は開始時に、設定電流値をキーにして、上板A1と下板A2の隙間への溶融金属の吸い込みを判定するための減少率をテーブル40eから読み出す(ステップS11)。
次いで、調整装置4は、電流検出回路22bにて溶接電流Iwを検出する(ステップS12)。具体的には、調整装置4は、溶接電源2から出力される電流検出信号Idから溶接電流Iwの電流値を示すデータを取得する。
調整装置4は、検出した溶接電流Iwの電流値に基づいて平均出力電流を算出し、当該平均出力電流が急減したか否かを判定する(ステップS13)。母材Aのひずみによって生まれた上板A1及び下板A2の隙間に溶融金属が吸い込まれると、出力電流が急激に減少するため、平均出力電流が急減したか否かを判定することによって、溶融金属の吸い込みを検知することができる。
平均出力電流は、例えばNパルス周期分の電流値の移動平均値である。平均出力電流は、例えばNパルス周期分の電流値の移動平均値を算出すればよい。調整装置4は、直前Nパルス周期分の電流値から算出される溶接電流Iwの平均値と、その前のNパルス周期分の電流値から算出される溶接電流Iwの平均値との差分を算出することによって、出力電流の変化量を算出する。そして、平均出力電流が、設定電流値に減少率を乗算して得られる閾値よりも大きく減少している場合、調整装置4は平均出力電流が急減したと判定する。つまり、平均出力電流の変化量が負で、変化量の絶対値が、上記閾値の絶対値より大きい場合、調整装置4は、平均出力電流が急減したと判定する。
平均出力電流は、例えばNパルス周期分の電流値の移動平均値である。平均出力電流は、例えばNパルス周期分の電流値の移動平均値を算出すればよい。調整装置4は、直前Nパルス周期分の電流値から算出される溶接電流Iwの平均値と、その前のNパルス周期分の電流値から算出される溶接電流Iwの平均値との差分を算出することによって、出力電流の変化量を算出する。そして、平均出力電流が、設定電流値に減少率を乗算して得られる閾値よりも大きく減少している場合、調整装置4は平均出力電流が急減したと判定する。つまり、平均出力電流の変化量が負で、変化量の絶対値が、上記閾値の絶対値より大きい場合、調整装置4は、平均出力電流が急減したと判定する。
平均出力電流が急減したと判定した場合(ステップS13:YES)、調整装置4は、動作制御信号を溶接ロボット1へ出力し、母材Aに対する溶接トーチ11の狙い角が所定量減少するように溶接トーチ11の姿勢を制御する(ステップS14)。図5に示すように、溶接線(上板A1の端面と、下板A2の上面とが交わる線)を含み下板A2に対して直交する基準平面上に溶接ワイヤWがあるときの狙い角を0度とする。当該基準平面に対する溶接ワイヤWの角度を狙い角とする。ここでは、狙い角45度を設定角とする。平均出力電流が急減したと判定した調整装置4は、狙い角を所定量、例えば1度減少させる。
次いで、調整装置4は、溶接電流Iwを検出し(ステップS15)、平均出力電流が急減前の状態まで回復したか否かを判定する(ステップS16)。平均出力電流が回復していないと判定した場合(ステップS16:NO)、調整装置4は処理をステップS14へ戻し、溶接トーチ11の狙い角を段階的に減少させる処理を継続する。調整装置4は、例えば-1度/0.1m秒ずつ、溶接トーチ11の狙い角を小さくする(溶接トーチ11を立てる)。なお、溶接トーチ11の狙い角の調整量に制限を設けてもよい。例えば、狙い角の減少量は15度を上限にするとよい。
平均出力電流が回復したと判定した場合(ステップS16:YES)、又はステップS13において、平均出力電流が急減していないと判定した場合(ステップS13:NO)、調整装置4は、溶接トーチ11の狙い角が設定角未満であるか否かを判定する(ステップS17)。つまり、溶接トーチ11の狙い角を減少させた状態にあるか否かを判定する。狙い角が設定角未満でないと判定した場合(ステップS17:NO)、調整装置4は処理を終える。狙い角が設定角未満であると判定した場合(ステップS17:YES)、調整装置4は、動作制御信号を溶接ロボット1へ出力し、溶接トーチ11の狙い角が所定量増加するように溶接トーチ11の姿勢を制御し(ステップS18)、処理をステップS12へ戻す。例えば、調整装置4は、溶接トーチ11の狙い角を1度増加させる。調整装置4は、例えば1度/0.1m秒ずつ、溶接トーチ11の狙い角を大きくする(溶接トーチ11を寝かせる)。
溶接トーチ11の狙い角を所定角へ段階的に戻す過程で、平均出力電流が急減しない場合、つまり上板A1と下板A2に隙間が無く溶融金属の吸い込みが生じないような場合、少しずつ溶接トーチ11の姿勢及び狙い角は徐々に元の所定角に戻る。
(実施例)
実施例を説明する。突き出し長さ20mm、狙い角45度、前進角0度、狙い位置-2.0mm(下板A2側)で設定電流440A、設定電圧32.5Vで溶接速度150cm/分とし、板厚3.2mm×3.2mmの重ね隅肉溶接をする。スタート過渡期間後、3パルス分の平均出力電流が前3周期分より10A以上、減少した場合、ひずみによって発生した隙間に溶融金属が吸い込まれ始めたと判断し、3パルス分の平均出力電流が、溶融金属の吸い込み判断前の3周期分のパルスの出力電流となるまで1度/0.1msの傾きで狙い角を小さくする(溶接トーチ11を立てる)。
このように溶接トーチ11の姿勢を制御することによって、溶融金属の吸い込みを効果的に防ぐことができる。
実施例を説明する。突き出し長さ20mm、狙い角45度、前進角0度、狙い位置-2.0mm(下板A2側)で設定電流440A、設定電圧32.5Vで溶接速度150cm/分とし、板厚3.2mm×3.2mmの重ね隅肉溶接をする。スタート過渡期間後、3パルス分の平均出力電流が前3周期分より10A以上、減少した場合、ひずみによって発生した隙間に溶融金属が吸い込まれ始めたと判断し、3パルス分の平均出力電流が、溶融金属の吸い込み判断前の3周期分のパルスの出力電流となるまで1度/0.1msの傾きで狙い角を小さくする(溶接トーチ11を立てる)。
このように溶接トーチ11の姿勢を制御することによって、溶融金属の吸い込みを効果的に防ぐことができる。
本実施形態に係る溶接装置及び重ね隅肉溶接方法によれば、下向きの重ね隅肉溶接において、上板A1と下板A2の間に隙間がある場合であっても、上板A1側における溶け込み不足を解消することができる。
また、溶接トーチ11の狙い角を段階的に小さくする(溶接トーチ11を立てる)ことにより、より安定的に母材Aの溶け込み不足を解消することができる。
更に、狙い角の調整により溶接電流が安定した際、溶接トーチ11の狙い角を段階的に大きくする(溶接トーチ11を寝かせる)ことにより、溶接条件の急激な変化を避けることができ、より安定した重ね隅肉溶接を実現することができる。
更に、狙い角の調整により溶接電流が安定した際、溶接トーチ11の狙い角を段階的に大きくする(溶接トーチ11を寝かせる)ことにより、溶接条件の急激な変化を避けることができ、より安定した重ね隅肉溶接を実現することができる。
更にまた、設定電流値に応じた閾値を用いて、上板A1及び下板A2の隙間への溶融金属が吸い込みを検知する構成であるため、より精度良く溶接トーチ11の姿勢を制御し、溶け込み不足を解消することができる。
更にまた、上板A1及び下板A2の隙間に溶融金属が吸い込まれる問題が発生しやすい高速溶接、例えば、100cm/分~120cm/分の溶接速度で薄板の重ね隅肉溶接を行う場合であっても、本実施形態の処理によって、溶融金属が上記隙間に吸い込まれることを効果的に防ぐことができる。
なお、本実施形態では、平均出力電流が急減した際、溶接トーチ11の狙い角を小さくする制御を例示したが、溶接トーチ11の狙い位置を上板A1側に寄せるように制御してもよい。
また、本実施形態では、溶接トーチ11の狙い角を減少させるときと、増加させるときの変化率が同じ場合を説明したが、溶接トーチ11の姿勢を元に戻す際はより速い速度で狙い角を増加させるように構成してもよい。
更に、本実施形態に係る重ね隅肉溶接方法を実施することができる溶接装置は、パルス溶接機に限定されるものでは無く、任意の消耗電極式の溶接装置に適用することができる。また、溶接ロボット1を用いた自動溶接機を説明したが、半自動溶接機に本発明を適用してもよい。
1:溶接ロボット、2:溶接電源、3:制御装置、4:調整装置、11:溶接トーチ、12:ワイヤ送給部、21:電源回路、22:検出部、22a:電圧検出回路、22b:電流検出回路、23:電源制御回路、24:送給制御回路、40:処理部、40a:入力部、40b:出力部、40c:記憶部、40d:コンピュータプログラム、40e:テーブル、A1:上板、A2:下板、Vw:溶接電圧、Iw:溶接電流、Vd:電圧検出信号、Id:電流検出信号、ΔE:誤差増幅信号、W:溶接ワイヤ
Claims (5)
- 重ね合わされた第1母材及び第2母材の隅部へ溶接ワイヤを送給してアーク溶接を行う重ね隅肉溶接方法であって、
溶接電流を検出し、
第1母材及び第2母材の隙間に溶融金属が吸い込まれることによる溶接電流の減少の有無を判定し、
溶接電流が減少したと判定された場合、前記隅部に対する溶接ワイヤの狙い角を小さくする
重ね隅肉溶接方法。 - 溶接電流が減少前の状態に戻るまで、前記狙い角を所定の設定角から段階的に小さくし、
溶接電流が減少前の状態に戻った場合、前記狙い角を前記設定角まで段階的に大きくする
請求項1に記載の重ね隅肉溶接方法。 - 溶接電流の設定値と、第1母材及び第2母材の隙間に溶融金属が吸い込まれることによる溶接電流の減少率とを対応付けたテーブルを用意し、
溶接電流の前記設定値に基づいて前記テーブルを参照して前記減少率を特定し、
検出された溶接電流が、特定した前記減少率より減少していると判定した場合、前記隅部に対する溶接ワイヤの狙い角を小さくする
請求項1又は請求項2に記載の重ね隅肉溶接方法。 - 溶接速度は100cm/分以上である
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の重ね隅肉溶接方法。 - 重ね合わされた第1母材及び第2母材の隅部へ溶接ワイヤを送給してアーク溶接を行う溶接装置であって、
溶接電流を検出する電流検出回路と、
前記隅部に沿って溶接トーチを移動させる溶接ロボットと、
第1母材及び第2母材の隙間に溶融金属が吸い込まれることによる溶接電流の減少の有無を判定し、溶接電流が減少したと判定された場合、前記隅部に対する溶接ワイヤの狙い角が小さくなるように、前記溶接トーチの姿勢を制御する制御装置と
を備える溶接装置。
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