JP2023025816A - ケーブル巻取装置およびメンテナンス方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】人手により搬送し易く、かつケーブルを適切な長さだけ引き出して効率的に作業を行うことができるケーブル巻取装置を提供する。【解決手段】ケーブル巻取装置31は、筐体32の内部に設けられ、ケーブル30を巻き取る複数のリール33と、ケーブル30が巻き取られる回転方向にリール33を付勢するバネ55と、ケーブル30が引き出されているときに、リール33の回転を停止させる停止部58と、リール33に巻き取られるケーブル30の一方の端部を筐体32から引き出し可能な状態で保持する第1保持部41と、リール33に巻き取られるケーブル30の他方の端部を筐体32に固定した状態または筐体32から引き出し可能な状態で保持する第2保持部42と、搬送するときに作業者が把持する把持部36,37を備える。【選択図】図3
Description
本発明の実施形態は、ケーブル巻取装置に関する。
粒子線がん治療装置では、加速粒子線を患者のがん細胞などに適切かつ正確に照射することが求められる。がんなどの腫瘍には様々な大きさと形状があり、患者の体内における深さも異なる。特に、重粒子線を腫瘍に照射する治療では、腫瘍の周辺の正常組織が影響を受けないように、腫瘍部分に集中的に重粒子線を照射することが好ましい。そこで、治療開始前と定期点検時に、入射器、加速器、ビーム輸送ライン、照射装置などのビーム調整と機器調整が行われる。これらの調整を行う際には、複数の信号を確認するために、取り扱うケーブルが多くなる。また、信号の測定は、複数の計測器とデータ保存装置を様々な場所に移動させながら行うため、多数のケーブルコネクタが並んだケーブルパネルを用いる。このケーブルパネルから計測器までの接続には、測定の都度、適切な長さのケーブルを用意することで行っている。
しかし、ケーブルパネルから接続先まで適切な長さのケーブルを用意できないことが多く、ケーブルの余長分によってケーブルパネルの周辺が乱雑になっていた。そのため、目的の信号のケーブルを特定するのに時間がかかるばかりか、作業場所が狭くなり、効率的に作業が行えなくなる。また、ケーブルの余長分が床に付くことが多いため、作業者が誤って躓いてしまう、または誤って踏んでしまいケーブルが傷むことがある。そこで、ケーブルを格納するケーブル格納装置が知られている。このケーブル格納装置は、複数のケーブルの余長を1つの筐体内で行うものである。しかし、従来のケーブル格納装置は、ケーブルの余長調整を筐体内のモータで行うため、構造が複雑なものとなっていた。また、ケーブルを余長調整するためのリールが横に多数並んでいるため、取り扱うケーブルの本数が増えると、筐体が大型化し、かつ重くなってしまう。さらに、移動し難く、かつ設置するために広い場所が必要になり、扱い難いという欠点がある。
本発明が解決しようとする課題は、人手により搬送し易く、かつケーブルを適切な長さだけ引き出して効率的に作業を行うことができるケーブル巻取装置を提供することである。
本発明の実施形態に係るケーブル巻取装置は、筐体と、前記筐体の内部に設けられ、ケーブルを巻き取る複数のリールと、それぞれの前記リールに対応して設けられ、前記ケーブルが巻き取られる回転方向に前記リールを付勢するバネと、それぞれの前記リールに対応して設けられ、前記ケーブルが引き出されているときに、前記リールの回転を停止させる停止部と、前記筐体に設けられ、前記リールに巻き取られる前記ケーブルの一方の端部を前記筐体から引き出し可能な状態で保持する第1保持部と、前記筐体に設けられ、前記リールに巻き取られる前記ケーブルの他方の端部を前記筐体に固定した状態または前記筐体から引き出し可能な状態で保持する第2保持部と、前記筐体に設けられ、搬送するときに作業者が把持する把持部と、を備える。
本発明の実施形態により、人手により搬送し易く、かつケーブルを適切な長さだけ引き出して効率的に作業を行うことができるケーブル巻取装置が提供される。
以下、図面を参照しながら、ケーブル巻取装置および、このケーブル巻取装置を用いて行われる粒子線治療システムのメンテナンス方法の実施形態について詳細に説明する。まず、本実施形態でメンテナンスの対象となっている粒子線治療システムおよび回転ガントリーについて図1から図2を用いて説明する。なお、図2の紙面左側を回転ガントリーの正面側(前方側)とし、紙面右側を回転ガントリーの背面側(後方側)として説明する。図面では、直交座標系において、回転ガントリーの軸方向をZ方向とした場合に、これに直交する垂直方向(上下方向)をY方向とし、これらに直交する水平方向をX方向として図示している。
図1の符号1は、本実施形態の粒子線治療システムである。この粒子線治療システム1は、炭素イオンなどの粒子線ビームを被検体としての患者の病巣組織(がん)に照射して治療を行う所謂粒子線がん治療装置である。
粒子線治療システム1を用いた放射線治療技術は、重粒子線がん治療技術などとも称される。この技術は、がん病巣(患部)を炭素イオンがピンポイントで狙い撃ちし、がん病巣にダメージを与えながら、正常細胞へのダメージを最小限に抑えることが可能とされる。なお、粒子線とは、放射線のなかでも電子より重いものと定義され、陽子線、重粒子線などが含まれる。このうち重粒子線は、ヘリウム原子より重いものと定義される。
重粒子線を用いるがん治療では、従来のエックス線、ガンマ線、陽子線を用いたがん治療と比較してがん病巣を殺傷する能力が高く、患者の体の表面では放射線量が弱く、がん病巣において放射線量がピークになる特性を有している。そのため、照射回数と副作用を少なくすることができ、治療期間をより短くすることができる。
図1に示すように、粒子線治療システム1は、ビーム発生器2と円形加速器3とビーム輸送ライン4と回転ガントリー5とを備える。
ビーム発生器2は、荷電粒子である炭素イオンのイオン源を有し、この炭素イオンによって粒子線ビーム7(図2)を生成する。円形加速器3は、平面視でリング状を成し、ビーム発生器2で生成された粒子線ビーム7を加速する。ビーム輸送ライン4は、円形加速器3で加速された粒子線ビーム7を回転ガントリー5に輸送する。回転ガントリー5には、粒子線ビーム7が照射される患者8(図2)が配置される。
この粒子線治療システム1では、まず、ビーム発生器2で生成された炭素イオンの粒子線ビーム7が、ビーム発生器2から円形加速器3に入射される。この粒子線ビーム7は、円形加速器3を約百万回周回する間に光速の約70%まで加速される。そして、この粒子線ビーム7がビーム輸送ライン4を介して回転ガントリー5まで導かれる。
ビーム発生器2と円形加速器3とビーム輸送ライン4は、内部が真空にされる真空ダクト6(ビームパイプ)を備える。この真空ダクト6の内部を粒子線ビーム7が進行する。ビーム発生器2と円形加速器3とビーム輸送ライン4が有する真空ダクト6が一体となり、粒子線ビーム7を回転ガントリー5まで導く輸送経路が形成される。つまり、真空ダクト6は、粒子線ビーム7を通過させるために、充分な真空度を有する密閉された連続空間である。
図2に示すように、回転ガントリー5は、円筒形状を成す大型の装置である。この回転ガントリー5は、その円筒の軸9が水平方向を向くように設置される。この水平軸9を中心として回転ガントリー5が回転可能となっている。
回転ガントリー5は、粒子線治療システム1が設けられている治療施設を構成する建屋の躯体10に支持されている。例えば、この回転ガントリー5の本体部の前部と後部には、エンドリング11が固定されている。これらのエンドリング11の下方位置には、エンドリング11を回転可能な状態で支持し、かつ駆動モータを備える回転駆動部12が設けられている。これらの回転駆動部12は、躯体10に支持されている。回転駆動部12の駆動力は、エンドリング11を介して回転ガントリー5に与えられ、回転ガントリー5が水平軸9周りに回転される。
回転ガントリー5には、ビーム輸送ライン4(図1)から延びる真空ダクト6が設けられている。真空ダクト6は、まず、回転ガントリー5の後方側からその水平軸9に沿って内部に導かれる。そして、真空ダクト6は、回転ガントリー5の外周面よりも外側に向けて一旦延びた後、再び回転ガントリー5の内側に向けて延びる。この真空ダクト6の先端部は、患者8に近接する位置まで延びる。
なお、特に図示はしないが、真空ダクト6において、回転ガントリー5の水平軸9に沿う部分には、所定の回転機構が設けられている。真空ダクト6は、この回転機構よりも外側の部分が静止した状態であり、この回転機構よりも内側の部分が回転ガントリー5の回転とともに回転するようになっている。
また、回転ガントリー5には、粒子線ビーム7を患者8に向けて照射する照射ノズル13と、この照射ノズル13に粒子線ビーム7を輸送する輸送部14とが設けられている。つまり、照射ノズル13と輸送部14は、回転ガントリー5に支持されている。
さらに、輸送部14は、粒子線ビーム7を輸送する経路を形成する磁場を発生させる超電導電磁石15を備えている。これらの超電導電磁石15は、例えば、真空ダクト6に沿って粒子線ビーム7の進行方向を変更する偏向電磁石、または、粒子線ビーム7の収束および発散を制御する四極電磁石などである。
照射ノズル13は、真空ダクト6の先端部に設けられ、輸送部14により導かれた粒子線ビーム7を患者8に向けて照射する。この照射ノズル13は、回転ガントリー5の内周面に固定されている。なお、粒子線ビーム7は、照射ノズル13から水平軸9に対して直交する方向に照射される。
回転ガントリー5の内部には、粒子線治療を行う治療空間16が設けられる。患者8は、この治療空間16に設けられた治療台17に載置される。この治療台17は、患者8を載置した状態で移動可能となっている。この治療台17の移動によって患者8を粒子線ビーム7の照射位置に移動させて位置合わせを行うことができる。そのため、患者8の病巣組織に最適な精度で粒子線ビーム7を照射することができる。
患者8は水平軸9の位置に配置され、回転ガントリー5を回転させることで、静止している患者8を中心として照射ノズル13を回転させることができる。例えば、患者8(水平軸9)を中心として照射ノズル13を、背面視で時計回り(右回り)または反時計回り(左回り)に185度ずつ回転させることができる。そして、患者8の周囲のいずれの方向からも粒子線ビーム7を照射させることができる。つまり、回転ガントリー5は、ビーム輸送ライン4により導かれた粒子線ビーム7の患者8に対する照射方向を変更可能な装置である。そのため、患者8の負担を軽減しつつ、最適な方向から粒子線ビーム7を正確に患部に照射することができる。
粒子線ビーム7は、患者8の体内を通過する際に運動エネルギーを失って速度が低下するとともに、速度の二乗にほぼ反比例する抵抗を受け、ある一定の速度まで低下すると急激に停止する。この粒子線ビーム7の停止点はブラッグピークと呼ばれ、高エネルギーが放出される。粒子線治療システム1は、このブラッグピークを患者8の病巣組織(患部)の位置に合わせることにより、正常組織のダメージを抑えつつ、病巣組織のみを死滅させることができる。
回転ガントリー5の内部に設けられた治療空間16は、回転ガントリー5の正面側にある治療室18と一体を成すように形成されている。なお、治療台17は、静止している治療室18の床19に固定されている。つまり、回転ガントリー5および照射ノズル13が回転されても、治療台17の位置は変化しないようになっている。
回転ガントリー5の外周面において、輸送部14が設けられた部分の反対側には、カウンターウエイト20が固定されている。このカウンターウエイト20は、回転ガントリー5と中心として輸送部14とのバランスをとるために設けられている。つまり、カウンターウエイト20の重量は、輸送部14の重量に対応して設定されている。また、回転ガントリー5の下方位置には、躯体10に凹状に形成され、回転ガントリー5の回転とともに、カウンターウエイト20が通過可能なウエイトピット21が設けられている。
さらに、回転ガントリー5には、外部から複数の常設ケーブル22が導かれている。これらの常設ケーブル22は、例えば、回転ガントリー5に設けられた所定の機器に対して電力を供給し、かつ制御信号を伝達するために設けられている。
回転ガントリー5の後部には、回転ガントリー5の回転とともに、常設ケーブル22の巻き取りまたは繰り出しを行うスプール23が設けられている。なお、スプール23の軸は、回転ガントリー5の水平軸9と一致している。
スプール23の下方位置には、躯体10に凹状に形成され、スプール23から垂れ下がる常設ケーブル22を配置可能なケーブルピット24が設けられている。ケーブルピット24のX方向の幅寸法は、スプール23の直径よりも大きくなるように設定される。
回転ガントリー5の内部および外部には、所定の盤25,26が設けられている。例えば、回転ガントリー5の内部の盤25は、回転ガントリー5の内面に固定されている。回転ガントリー5の外部の盤26は、躯体10に固定されている。これらの盤25,26は、例えば、制御盤、電源盤、コネクタの接続盤、ターミナルブロックのいずれでも良い。
粒子線治療システム1のメンテナンスを行う際には、これらの盤25,26に計測器27またはデータ保存装置28などの所定の装置が接続される(図13)。これらの所定の装置は、メンテナンス用の多数のケーブル29,30を用いて盤25,26に接続される。
なお、本実施形態の「メンテナンス」という用語には、定期点検時に行われる点検、保守、修理、調整の作業の意味を含んでいるのみならず、粒子線治療システム1の構築時(設置時)または治療開始前に行われる所定の作業の意味が含まれている。
メンテナンス時には、多数のケーブル30を使用するため、これらのケーブル30を捌くために、ケーブル巻取装置31を用いる(図3)。このようにすれば、粒子線治療システム1のメンテナンス時にケーブル30の取り扱い易いが容易になる。
次に、本実施形態のケーブル巻取装置31について図3から図13を用いて説明する。なお、図5の紙面上側をケーブル巻取装置31の正面側(前方側)とし、紙面下側をケーブル巻取装置31の背面側(後方側)として説明する。また、図6、図7、図10、図11の紙面左側をケーブル巻取装置31の正面側(前方側)とし、紙面右側をケーブル巻取装置31の背面側(後方側)として説明する。
図3から図6に示すように、本実施形態のケーブル巻取装置31は、箱状を成す筐体32を備える。この筐体32の内部には、複数のケーブル30のそれぞれを巻き取るための複数のリール33が収容されている。本実施形態では、水平方向に9個のリール33が並べられ、1段のリール33の列が形成されている。そして、上下方向に3段のリール33の列が並べられている。
作業者は、筐体32の正面側および背面側から所定のケーブル30を引き出して使うことができる。例えば、作業者は、引き出したケーブル30の一方の端部を計測器27またはデータ保存装置28に接続し、ケーブル30の他方の端部を盤25,26に接続する(図13)。このケーブル巻取装置31を用いることで、作業者は、ケーブル30を適切な長さだけ引き出して効率的に作業を行うことができる。さらに、ケーブル30の余長分により作業者が躓いたり、作業者がケーブル30を踏むことによりケーブル30が傷んだりすることを防ぐことができる。
図3に示すように、筐体32は、底面を構成する底板34と、この底板34の両側縁辺に固定されて両側面を構成する2枚の側板35とを備える。側板35の上部は、2本の棒部材36で連結されている。これらの棒部材36は、ケーブル巻取装置31を搬送するときに作業者が把持する把持部となっている。また、側板35の上部には、把持部を形成する把持穴37が開口されている。作業者は、この把持穴37に指を通して側板35の上部を把持することもできる。
筐体32の底面には、複数(例えば、4つ)の車輪38が設けられている(図6)。ケーブル巻取装置31は、車輪38により床面上を走行可能となっている。このようにすれば、ケーブル巻取装置31を搬送し易くなる。
なお、車輪38には、従来公知の所定のロック機構(図示略)が設けられている。任意の位置で車輪38をロックすることで、ケーブル巻取装置31を固定的に設置することができる。なお、車輪38の少なくとも2つは、旋回軸を偏芯させることで自在に旋回して移動できる旋回キャスターとなっている。
ケーブル巻取装置31(筐体32)は、メンテナンスを行う作業者が搬送可能な寸法および重量となっている。例えば、ケーブル巻取装置31の寸法は、幅と高さと奥行きとが1m以下であることが好ましい。また、ケーブル巻取装置31の全重量は、30kg以下であることが好ましい。このようにすれば、1人の作業者が手作業でケーブル巻取装置31を搬送することができる。なお、作業者は、車輪38によりケーブル巻取装置31を引き摺って搬送しても良いし、ケーブル巻取装置31を持ち上げて搬送しても良い。
本実施形態のケーブル巻取装置31は、人手により搬送し易く、簡単な構造のため、取り扱うケーブル30の本数が増えても大型化せず、軽量化を図ることができる。さらに、移動もさせ易いため、取り扱いが容易になっている。
例えば、筐体32は、粒子線治療システム1(図1)が備える回転ガントリー5(図2)の内部に設置可能な寸法となっている。このようにすれば、回転ガントリー5に設けられている機器のメンテナンス時にケーブル30の取り扱い易いが容易になる。
また、筐体32は、盤25,26(図2)の内部に設置可能な寸法となっている。このようにすれば、盤25,26の内部の機器のメンテナンス時にケーブル30の取り扱い易いが容易になる。
筐体32の正面側には、それぞれのリール33の列に対応して、3つの前面部材39が設けられている(図3)。同様に、筐体32の背面側には、それぞれのリール33の列に対応して、3つの後面部材40が設けられている(図4)。前面部材39および後面部材40は、側板35同士を連結するように、水平方向に延びる板状を成す。
図10に示すように、前面部材39には、リール33に巻き取られるケーブル30の一方の端部を筐体32から引き出し可能な状態で保持する第1保持部としての前面保持部41が設けられている。ケーブル30の一方の端部が、前面保持部41から引き出されることで、その端部のコネクタ43が、計測器27またはデータ保存装置28に接続可能となる。
図11に示すように、後面部材40には、リール33に巻き取られるケーブル30の他方の端部を筐体32に固定した状態または筐体32から引き出し可能な状態で保持する第2保持部としての後面保持部42が設けられている。例えば、ケーブル30の他方の端部のコネクタ43には、盤25,26から延びる他のケーブル29のコネクタ44が接続される。なお、ケーブル30の他方の端部が、後面保持部42から引き出されることで、その端部のコネクタ43を盤25,26に接続しても良い。
なお、前面保持部41と後面保持部42は、ケーブル30を通過可能な状態で保持する溝または穴となっている。さらに、コネクタ43には、前面保持部41と後面保持部42の部分に掛止される掛止部材45が取り付けられている。
本実施形態では、それぞれの第1保持部としての前面保持部41が、筐体32の前面側に設けられ(図3)、それぞれの第2保持部としての後面保持部42が、筐体32の後面側に設けられている(図4)。そして、ケーブル30の端部のコネクタ43が、筐体32の外部に露呈するように、前面保持部41または後面保持部42に保持される。このようにすれば、ケーブル30の一方の端部と他方の端部とが、筐体32の前面と後面に集まるため、取り扱いがし易くなる。
図12に示すように、前面部材39または後面部材40には、それぞれのリール33に対応する前面保持部41または後面保持部42が形成されている。前面保持部41および後面保持部42は、上方が開放されたU字の溝状を成している。ケーブル30は、前面保持部41または後面保持部42に対して着脱可能な状態で保持される。
なお、前面部材39および後面部材40には、ケーブル30の抜け止めとなるストッパー46が取り付けられる。このストッパー46は、板状を成す部材となっている。さらに、ストッパー46は、ケーブル30を保持するケーブル保持溝47と、前面保持部41または後面保持部42に嵌合されるブロック部48とを備えている。ケーブル保持溝47は、下方が開放されたU字形状を成している。
少なくともブロック部48は、エラストマーなどの可撓性を有する材質で形成され、前面保持部41または後面保持部42に対して着脱可能となっている。そして、前面保持部41または後面保持部42にケーブル30が保持された状態で、ストッパー46が前面保持部41または後面保持部42に取り付けられる。
なお、本実施形態では、ストッパー46に設けられたブロック部48によりストッパー46を前面保持部41または後面保持部42に取り付けているが、その他の態様であっても良い。例えば、所定の取り付け器具でストッパー46を前面保持部41または後面保持部42に取り付けても良い。
なお、ストッパー46に、手動でON/OFFの切り替え操作が可能な所定のロック機構を設けても良い。例えば、ケーブル30を引き出した後に、ロック機構をONにしてケーブル30を固定する。さらに、ケーブル30を巻き取らせるときに、ロック機構をOFFにしてケーブル30をリール33に巻き取らせても良い。このようにすれば、リール33の誤回転により誤ってケーブル30が巻き取られる事態を阻止することができる。
図3および図5に示すように、筐体32の内部には、それぞれのリール33を着脱可能な状態で支持するリール支持部としての複数の内壁板49が水平方向に並んで設けられている。それぞれの内壁板49の間に、リール33が配置されている。つまり、筐体32の内部では、リール33と内壁板49とが交互に並んで配置されている。
なお、それぞれのリール33は、その回転軸が水平方向に延び、かつそれぞれのリール33の回転軸が同一方向を向くように並んでいる。つまり、複数のリール33が水平方向に重なっている。また、リール33から延びるケーブル30は、内壁板49同士の間に配置される。そして、これらの内壁板49によりケーブル30が案内される。そのため、筐体32の内部において、隣接するケーブル30同士が干渉して絡み合うことがなくなる。
図6および図7に示すように、内壁板49同士は、側板35の間に掛け渡されたフレーム部材50により互いに連結されている。これらのフレーム部材50により内壁板49が側板35に固定されている。
内壁板49の前後方向の中央部には、上方が開口するU字形状を成す凸部51が形成されている。この凸部51の中央に形成された上下方向に延びるリール固定溝52に、リール33の支持柱53が嵌め込まれる。リール固定溝52の下端は、矩形状を成しており、支持柱53が嵌るようになっている。なお、支持柱53は、リール33の両側面に突出された凸部である。これらの支持柱53は、側面視で四角形状を成し、支持柱53がリール固定溝52に嵌ると、支持柱53が回転しない状態でリール33が支持される。
筐体32の側板35の内面側にも、内壁板49に形成されたものと同様の凸部51が形成されている(図5)。側板35に隣接するリール33の支持柱53は、側板35の凸部51のリール固定溝52に嵌め込まれる。
本実施形態のリール33は、内壁板49に対して着脱可能な状態で支持されている(図7)。このようにすれば、作業者は、作業内容に応じてそれぞれのリール33を適切なものに交換することができる。また、後面部材40は、筐体32に対して着脱可能となっている。リール33を交換する際には、後面部材40を取り外しても良い。
なお、本実施形態では、リール支持部がそれぞれのリール33を挟む位置に設けられた内壁板49となっているが、その他の態様であっても良い。例えば、U字形状を成す凸部51がフレーム部材50から直に延びるように設けられた部材でも良い。
また、本実施形態では、巻き取るケーブル30の種類毎に異なるリール33が設けられている。このようにすれば、1台のケーブル巻取装置31を用いて複数種類のケーブル30を取り扱うことができる。作業者は、作業内容に応じて適切なリール33およびケーブル30を選択して用いることができる。
なお、種類が異なるケーブル30とは、例えば、コネクタ43の種類が異なるものでも良いし、ケーブル30の太さが異なるものでも良いし、ケーブル30の長さが異なるものでも良いし、ケーブル30の重さが異なるものでも良いし、ケーブル30の用途が異なるものでも良いし、ケーブル30の材質が異なるものでも良いし、ケーブル30の規格が異なるものでも良い。
なお、ケーブル30の長さは、特に限定されるものではなく、最大長が、5m、10m、15mの様に複数の種類のケーブル30を用意することによって、様々な用途に対応することができる。
また、ケーブル30の太さによってリール33の大きさを変えても良い。例えば、上段にLEMOケーブルのような細いケーブル30を設けるようにし、巻き付けるリール33を小さくしても良い。また、下段にBNCケーブルのような太いケーブル30を設けても良い。このように、段毎に太さの異なるケーブル30を設けることで、同じ大きさの筐体32でも取り扱えるケーブル30の本数を増やすことができる。
リール33は、回転するドラム54(図8)を備える。このドラム54にケーブル30が巻き回される。なお、以下の説明では、「リール33のドラム54が回転する」ことを、「リール33が回転する」と称する場合がある。
リール33は、作業者の手作業によりケーブル30が引き出されるときに回転する。そして、ケーブル30が所定の長さ引き出された状態でリール33の回転が自動的にロックされる。また、リール33がケーブル30を巻き取るときには、作業者がケーブル30を再度少しだけ引き出すと、自動的にロックが解除され。そして、リール33にケーブル30が巻き取られる。このようなリール33の巻取機構には、従来公知の技術を用いることができる(例えば、特許文献2参照)。
例えば、図8に示すように、リール33は、ドラム54とゼンマイバネ55と第1蓋56と第2蓋57と球体58とを備える。
第1蓋56および第2蓋57は、円盤状を成す部材である。第1蓋56に形成された嵌合穴59に、第2蓋57に形成された嵌合柱60が嵌合されることで、第1蓋56と第2蓋57が互いに固定される。なお、第1蓋56と第2蓋57との間に、ゼンマイバネ55とドラム54が配置される。また、第1蓋56および第2蓋57の外側の面には、支持柱53が設けられている。
ドラム54は、それぞれのリール33に対応して設けられ、円筒形状を成す部材である。ドラム54の中央にゼンマイバネ55が保持される。ケーブル30の一部(中央部)は、ドラム54の内周に形成されたケーブル嵌合溝61に嵌め込まれる。そして、ドラム54が回転することによってケーブル30がドラム54の外周に巻き取られる。
ゼンマイバネ55は、それぞれのリール33に対応して設けられ、ケーブル30が巻き取られる回転方向にリール33を付勢するものである。ゼンマイバネ55の内側の端部は、第1蓋56の中央から突出された円柱部62に形成された蓋割溝63に差し込まれる。さらに、ゼンマイバネ55の外側の端部は、ドラム54に設けられたドラム割溝64に差し込まれる。このゼンマイバネ55の付勢力により、ケーブル30を巻き取る方向にドラム54が回転されるように付勢される。
球体58は、それぞれのリール33に対応して設けられ、ケーブル30が引き出されているときに、リール33の回転を停止させる停止部となっている。
また、ドラム54において、第2蓋57に対向する面には、ドラム54の回転方向に沿って円弧状を成す円弧槽65が形成されている(図9)。さらに、第2蓋57には、蓋溝66が形成され、この蓋溝66に沿って球体58が自由に動くようになっている。この円弧槽65を移動する球体58の作用により、自動的にリール33の回転がロックされ、またはロックが解除される。
例えば、作業者が、ケーブル30をゼンマイバネ55の付勢力に抗して引き出し、その引き出す力を止めたときに、球体58の作用によりリール33の回転がロックされる。そして、ケーブル30をリール33に巻き取らせる場合には、作業者が、ケーブル30を再度少しだけ引き出す。すると、球体58の作用により自動的にリール33のロックが解除され、ドラム54が回転を開始し、ケーブル30が巻き取られる。
なお、本実施形態のリール33の巻取機構は一例であり、その他の技術を適用しても良い。例えば、家庭用の掃除機または炊飯器における電源ケーブルを巻き取る機構を、リール33の巻取機構として適用しても良い。
図13に示すように、例えば、制御盤の中には、各種ビームモニタからの信号を処理するための、ビームモニタ回路が備わっている盤25,26がある。そして、ビーム調整または機器調整のときには、各種ビームモニタから出力される多数の信号を確認する必要がある。特に、作業者は、盤25,26の前で計測器27とデータ保存装置28を用意して確認作業を行う必要がある。
なお、ケーブル巻取装置31を盤25,26の内部に常時設置しておいても良い。例えば、各種ビームモニタから出力される信号のように、高い頻度で確認するものがある場合には、盤25,26の機器をケーブル巻取装置31に予め接続しておく。このようにすれば、メンテナンス時に、作業者が盤25,26の前で多数の信号を確認する際に、別途、ケーブル30を用意しなくても良くなる。そのため、作業者が多数のケーブル30を接続する手間が少なくなる。また、急ぎのメンテナンスの際に、ケーブル30を用意できずに確認作業が滞るといった事態を防ぐことができる。
さらに、常時設置しているケーブル巻取装置31を盤25,26の内部から着脱可能にしておいても良い。このようにすれば、他の盤25,26の内部の機器の測定に即座に対応することができる。なお、このような場合において、ケーブル巻取装置31を取り扱いし易いように、筐体32の材質をプラスチックのような軽いものにしておくことが望ましい。
また、回転ガントリー5(図2)の内部は、一般的に狭く、暗いため、多数のケーブル30を扱う作業が行い難い。本実施形態のケーブル巻取装置31では、ケーブル30を適切な長さだけ引き出すことができるため、回転ガントリー5の内部でも円滑に作業を行うことができる。さらに、取り扱うケーブル30の本数が増えても、ケーブル巻取装置31が大型化せず、かつ重くならならずに済む。
なお、前述の実施形態では、重粒子線がん治療を行う施設を例示しているが、その他の施設にも前述の実施形態を適用できる。例えば、陽子線がん治療を行う施設に前述の実施形態を適用しても良い。
なお、前述の実施形態では、筐体32の底面に車輪38を設けているが、その他の態様であっても良い。例えば、筐体32の底面に車輪38を設けずに、作業者がケーブル巻取装置31を持ち上げて搬送するのみの態様にしても良い。
なお、前述の実施形態では、ストッパー46を用いて、ケーブル30を前面保持部41または後面保持部42に保持させているが、その他の態様であっても良い。例えば、従来公知の所定の取り付け器具を用いて、ケーブル30を前面保持部41または後面保持部42に保持させても良い。
なお、前述の実施形態では、筐体32の正面側に第1保持部が設けられるとともに背面側に第2保持部が設けられているが、その他の態様であっても良い。例えば、筐体32の正面側に第2保持部が設けられるとともに背面側に第2保持部が設けられても良い。また、筐体32の正面側のみに第1保持部と第2保持部の双方を設けても良い。
以上説明した実施形態によれば、筐体の内部に設けられ、ケーブルを巻き取る複数のリールを備えることにより、人手により搬送し易く、かつケーブルを適切な長さだけ引き出して効率的に作業を行うことができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態またはその変形は、発明の範囲と要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1…粒子線治療システム、2…ビーム発生器、3…円形加速器、4…ビーム輸送ライン、5…回転ガントリー、6…真空ダクト、7…粒子線ビーム、8…患者、9…水平軸、10…躯体、11…エンドリング、12…回転駆動部、13…照射ノズル、14…輸送部、15…超電導電磁石、16…治療空間、17…治療台、18…治療室、19…床、20…カウンターウエイト、21…ウエイトピット、22…常設ケーブル、23…スプール、24…ケーブルピット、25,26…盤、27…計測器、28…データ保存装置、29,30…ケーブル、31…ケーブル巻取装置、32…筐体、33…リール、34…底板、35…側板、36…棒部材、37…把持穴、38…車輪、39…前面部材、40…後面部材、41…前面保持部、42…後面保持部、43,44…コネクタ、45…掛止部材、46…ストッパー、47…ケーブル保持溝、48…ブロック部、49…内壁板、50…フレーム部材、51…凸部、52…リール固定溝、53…支持柱、54…ドラム、55…ゼンマイバネ、56…第1蓋、57…第2蓋、58…球体、59…嵌合穴、60…嵌合柱、61…ケーブル嵌合溝、62…円柱部、63…蓋割溝、64…ドラム割溝、65…円弧槽、66…蓋溝。
Claims (9)
- 筐体と、
前記筐体の内部に設けられ、ケーブルを巻き取る複数のリールと、
それぞれの前記リールに対応して設けられ、前記ケーブルが巻き取られる回転方向に前記リールを付勢するバネと、
それぞれの前記リールに対応して設けられ、前記ケーブルが引き出されているときに、前記リールの回転を停止させる停止部と、
前記筐体に設けられ、前記リールに巻き取られる前記ケーブルの一方の端部を前記筐体から引き出し可能な状態で保持する第1保持部と、
前記筐体に設けられ、前記リールに巻き取られる前記ケーブルの他方の端部を前記筐体に固定した状態または前記筐体から引き出し可能な状態で保持する第2保持部と、
前記筐体に設けられ、搬送するときに作業者が把持する把持部と、
を備える、
ケーブル巻取装置。 - 前記筐体に固定され、それぞれの前記リールを着脱可能な状態で支持するリール支持部を備える、
請求項1に記載のケーブル巻取装置。 - 巻き取る前記ケーブルの種類毎に異なる前記リールが設けられている、
請求項1または請求項2に記載のケーブル巻取装置。 - それぞれの前記第1保持部が前記筐体の前面側に設けられ、それぞれの前記第2保持部が前記筐体の後面側に設けられている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のケーブル巻取装置。 - 前記筐体の底面に設けられた車輪を備える、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のケーブル巻取装置。 - 前記ケーブルは、粒子線治療システムのメンテナンス時に用いるものである、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のケーブル巻取装置。 - 前記筐体は、前記粒子線治療システムが備える回転ガントリーの内部に設置可能な寸法となっている、
請求項6に記載のケーブル巻取装置。 - 前記筐体は、前記粒子線治療システムの盤内に設置可能な寸法となっている、
請求項6または請求項7に記載のケーブル巻取装置。 - 請求項6から請求項8のいずれか1項に記載のケーブル巻取装置を用いて前記粒子線治療システムのメンテナンスを行う、
メンテナンス方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2021131188A JP2023025816A (ja) | 2021-08-11 | 2021-08-11 | ケーブル巻取装置およびメンテナンス方法 |
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Publications (1)
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Family Applications (1)
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-
2021
- 2021-08-11 JP JP2021131188A patent/JP2023025816A/ja active Pending
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