JP2023020640A - 樹脂組成物、絶縁電線および樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

樹脂組成物、絶縁電線および樹脂組成物の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2023020640A
JP2023020640A JP2021126119A JP2021126119A JP2023020640A JP 2023020640 A JP2023020640 A JP 2023020640A JP 2021126119 A JP2021126119 A JP 2021126119A JP 2021126119 A JP2021126119 A JP 2021126119A JP 2023020640 A JP2023020640 A JP 2023020640A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resin composition
mass
additive group
vinyl chloride
resin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021126119A
Other languages
English (en)
Inventor
龍太郎 菊池
Ryutaro Kikuchi
晃司 柏
Koji Kashiwa
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Proterial Ltd
Original Assignee
Proterial Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Proterial Ltd filed Critical Proterial Ltd
Priority to JP2021126119A priority Critical patent/JP2023020640A/ja
Publication of JP2023020640A publication Critical patent/JP2023020640A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Insulated Conductors (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Abstract

【課題】アンチモンおよびビスフェノールAを含有しないことによる環境性能の向上を図りながら、変色を抑制し、難燃性およびゲル分率の向上を図ることができる樹脂組成物を提供する。【解決手段】樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂と、第1添加物群と、第2添加物群と、架橋助剤とを有する。ここで、第1添加物群は、酸化チタンと、ステアリン酸亜鉛とを含む。また、第2添加物群は、水酸化アルミニウムと、クレーと、シリカとを含む。ここで、ゲル分率が45質量%以上である。そして、塩化ビニル樹脂100質量部に対する第1添加物群の合計添加量を樹脂組成物の総量で除した分率値Aは、1質量%以上2質量%以下であり、塩化ビニル樹脂100質量部に対する第2添加物群の合計添加量を樹脂組成物の総量で除した分率値Bは、6質量%以上15質量%以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物、絶縁電線および樹脂組成物の製造技術に関し、例えば、UL規格にしたがった絶縁電線およびこの絶縁電線に適用可能な樹脂組成物に関する。
電子機器類の内部配線に使用される絶縁電線は、電子機器類の故障や不具合などに起因する発火現象に際して、絶縁電線を伝わって炎が広がらないようにするため、難燃性を有することが求められている。例えば、絶縁電線の難燃性の基準は、米国のUL758規格などで定められている。UL758規格が要求する項目には、垂直燃焼試験(以下、「VW-1試験」という)がオプションとして設けられている。ただし、ほとんどの絶縁電線が、この「VW-1試験」に合格してUL規格に認定されていることから、オプション規格とはいえ「VW-1試験」は、必須項目に近い項目である。
このような絶縁電線の被覆材の主原料としては、塩化ビニル樹脂(PVC)が使用されている。塩化ビニル樹脂は、化学構造中にハロゲン元素である塩素を含んでいるため、塩化ビニル樹脂自体の難燃性は高い。ところが、塩化ビニル樹脂は硬質であることから、絶縁電線の被覆材として使用する場合には軟化させる必要がある。このため、塩化ビニル樹脂に対して可燃性の可塑剤を多量に添加している。この結果、塩化ビニル樹脂を使用した絶縁電線では、難燃剤を添加しないと、上述した難燃性の基準を満たすことができない。
難燃剤としては、一般的に三酸化アンチモンが使用されてきた。ただし、三酸化アンチモンは、劇薬であるため、製造にあたっては厳格な管理が必要となり使用することを回避したい材料である。さらに、アンチモンは希少な金属でもあり、価格も上昇傾向にあることから、絶縁電線の製造コストの上昇を抑制する観点からも使用を避けたい材料である。
このことから、三酸化アンチモンに替わる難燃剤として、例えば、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物が用いられてきている。
例えば、特開2011-26427号公報(特許文献1)には、塩化ビニル樹脂と、水酸化アルミニウムおよび/または水酸化マグネシウムと、可塑剤と、非鉛系安定剤とを含む塩化ビニル樹脂組成物であって、水酸化アルミニウムおよび/または水酸化マグネシウムの含有量が、塩化ビニル樹脂の含有量100質量部に対して、8質量部以上22質量部以下で、かつ、アンチモンの含有量が1000ppm未満である塩化ビニル樹脂組成物に関する技術が記載されている。
また、塩化ビニル樹脂組成物には、可塑剤として、トリメリット酸エステルが使用されることが多い。このトリメリット酸エステルには、酸化防止剤として、ビスフェノールAが添加されているものがある。この点に関し、近年では、環境対応および環境法規制の観点から、ビスフェノールAを使用しない、いわゆる「ノンビス化」が求められている。
特開2011-26427号公報
したがって、例えば、絶縁電線に使用される樹脂組成物には、アンチモンおよびビスフェノールAを含有しない、いわゆる「アンチモンフリー化」および「ノンビス化」が進められている。この点に関し、本発明者は、樹脂組成物の「アンチモンフリー化」および「ノンビス化」を進めると、以下に示す改善の余地が顕在化することを新規に見出した。
(1)アンチモンに替わる難燃剤を使用することによる樹脂組成物の変色現象
(2)ゲル分率(架橋度)が向上しない現象
(3)難燃性が低下する現象
このような現象が生じる結果、例えば、電子線で架橋した樹脂組成物の「アンチモンフリー化」および「ノンビス化」が進まない現状がある。したがって、電子線で架橋した樹脂組成物の「アンチモンフリー化」および「ノンビス化」を進めるために、上述した改善の余地を克服する工夫が望まれている。
本発明の目的は、アンチモンおよびビスフェノールAを含有しないことによる環境性能の向上を図りながら、変色を抑制し、難燃性およびゲル分率の向上を図ることができる樹脂組成物を提供することにある。
一実施の形態における樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂と、第1添加物群と、第2添加物群と、架橋助剤とを有する。ここで、第1添加物群は、酸化チタンと、ステアリン酸亜鉛とを含む。また、第2添加物群は、水酸化アルミニウムと、クレーと、シリカとを含む。ここで、ゲル分率が45質量%以上である。そして、塩化ビニル樹脂100質量部に対する第1添加物群の合計添加量を樹脂組成物の総量で除した分率値Aは、1質量%以上2質量%以下であり、塩化ビニル樹脂100質量部に対する第2添加物群の合計添加量を樹脂組成物の総量で除した分率値Bは、6質量%以上15質量%以下である。
一実施の形態における絶縁電線は、導線と、導線を被覆する絶縁層とを含み、絶縁層は、上述した樹脂組成物から構成される。
一実施の形態における樹脂組成物の製造方法は、電子線を照射することにより、上述した樹脂組成物を架橋させる工程を有し、架橋助剤の添加量と架橋時に照射する電子線の照射強度との積が9以上である。
一実施の形態によれば、アンチモンおよびビスフェノールAを含有しないことによる環境性能の向上を図りながら、変色を抑制し、難燃性およびゲル分率の向上を図ることができる樹脂組成物を提供することができる。
絶縁電線の構成例を示す断面図である。
実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
<技術的思想の概要>
本発明者は、鋭意検討した結果、「発明が解決しようとする課題」の欄に記載した改善の余地を克服することができる技術的思想を想到したので、以下では、この技術的思想の概要について説明する。
本実施の形態における樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂と、第1添加物群と、第2添加物群と、架橋助剤とを有する。ここで、第1添加物群は、酸化チタンと、ステアリン酸亜鉛とを含む。また、第2添加物群は、水酸化アルミニウムと、クレーと、シリカとを含む。さらに、架橋助剤は、トリメチロールプロパントリアクリレートである。ここで、ゲル分率が45質量%以上である。例えば、ゲル分率が45質量%以上である上述した樹脂組成物は、以下に示す樹脂組成物の製造方法で実現できる。
すなわち、本実施の形態における樹脂組成物の製造方法は、電子線を照射することにより、上述した樹脂組成物を架橋させる工程を有し、架橋助剤の添加量と架橋時に照射する電子線の照射強度との積が9以上である。
このように構成されている樹脂組成物によれば、樹脂組成物の「アンチモンフリー化」および「ノンビス化」を進めても、「アンチモンフリー化」および「ノンビス化」によって顕在化する改善の余地{(1)アンチモンに替わる難燃剤を使用することによる樹脂組成物の変色現象、(2)ゲル分率(架橋度)が向上しない現象、(3)難燃性が低下する現象}を克服することができるという顕著な効果を得ることができる。すなわち、本実施の形態における技術的思想は、「アンチモンフリー化」および「ノンビス化」によって環境負荷の小さな樹脂組成物を提供しながら、「アンチモンフリー化」および「ノンビス化」によって顕在化する改善の余地を克服して樹脂組成物の性能向上を図ることができる点で非常に優れた技術的思想であるということができる。
特に、本発明者は、上述した技術的思想に基づいて、さらに詳細に検討した結果、上述した顕著な効果を奏するために望ましい樹脂組成物の構成を新規に見出したので、この樹脂組成物の新規な構成例について説明する。
<樹脂組成物の構成>
上述した技術的思想を具現化した樹脂組成物の構成例について説明する。
本実施の形態における樹脂組成物は、以下に示す組成物を有する。
<<塩化ビニル樹脂>>
樹脂組成物は、主成分として塩化ビニル樹脂(PVC)を含む。ここで、本実施の形態における塩化ビニル樹脂は、例えば、「K値」が「75.7」以上「85.6」以下にある1種類以上の塩化ビニル樹脂から構成されるか、あるいは、「K値」が「71.6」以上「85.6」以下になる2種類以上の塩化ビニル樹脂から構成されることが望ましい。なぜなら、本発明者による鋭意検討の結果に得られた知見によれば、「K値」が「71.6」である単独の塩化ビニル樹脂では、電子線照射後の長期耐熱性を向上することが困難である一方、「K値」が「84」以上「85.6」以下の塩化ビニル樹脂も組み合わせると、電子線照射後の長期耐熱性を向上できることが判明したからである。
本実施の形態では、「K値」が「75.7」以上「85.6」以下にある1種類以上の塩化ビニル樹脂として、「K値」が「75.7」以上「78.1」以下の範囲にある通称「重合度P=1700」の塩化ビニル樹脂が使用されている。ここで、「K値」とは、重合度そのものではないが、重合度と比例関係にある指標である。
なお、樹脂組成物の柔軟性や耐寒性に代表されるその他の物性を向上させる観点から、塩化ビニル樹脂に酢酸ビニルやエチレンが共重合された「コポリマ」を適用してもよい。
<<可塑剤>>
樹脂組成物は、例えば、酸化防止剤を含有する可塑剤を含む。
特に限定されないが、可塑剤としては、トリメリット酸エステルに代表されるトリメリテート系可塑剤を使用することが望ましく、例えば、トリメリット酸トリ2-エチルヘキシル、トリメリット酸トリノルマルアルキル、トリメリット酸トリイソノニル、トリメリット酸イソデシルを挙げることができる。
本実施の形態において、酸化防止剤は、例えば、フェノール系酸化防止剤であり、このフェノール系酸化防止剤が1分子中にヒドロキシ基を3つ以上有する構造の物質から構成され、その添加量が可塑剤の総添加量のうちの0.5質量%以下である。本発明者の検討によると、このような可塑剤の構成は、上述した改善の余地を克服する観点から望ましい構成であることが新規に見出されている。そして、さらなる本発明者の検討によって、トリメリット酸エステルの総添加量のうちの20質量%以下を塩素化ポリエチレンに置き換えた構成においても、上述した改善の余地を克服する観点から望ましいことが見出されている。
この点に関し、後述する実施例において、本実施の形態における可塑剤の有効性について検証している。具体的に、実施例では、トリメリット酸トリノルマルアルキル(N08A:n-TOTM 花王社製)、あるいは、トリメリット酸トリイソノニル(UN302:台湾UPC社製)を評価している。ここで、トリメリット酸トリノルマルアルキル(N08A:n-TOTM 花王社製)は、テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタンが0.3質量%添加されている可塑剤である。一方、トリメリット酸トリイソノニル(UN302:台湾UPC社製)は、テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタンが0.35質量%添加されている可塑剤である。
なお、本実施の形態で使用している可塑剤(酸化防止剤含有)の有効性を評価するための比較用可塑剤として、酸化防止剤未添加のトリメリット酸トリイソノニルを60℃に加温して、テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタンを0.5質量%溶解させた可塑剤(イルガ1010 0.5質量%添加品)も評価する。さらに、比較用可塑剤として、トリメリット酸トリノルマルアルキル(N08:n-TOTM 花王社製)も評価している。このトリメリット酸トリノルマルアルキル(N08:n-TOTM 花王社製)は、ビスフェノールAが添加されている可塑剤である。
<<安定剤>>
樹脂組成物は、例えば、安定剤を含む。安定剤としては、ハイドロタルサイト、ステアリン酸、ステアリン酸金属石鹸、ステアロイルベンゾイルメタン、ジベンゾイルメタン、ジベンゾイルメタン塩、ルチル型酸化チタン、トリヒドロキシエチルイソシアネート、フェノール系酸化防止剤、シリカ、水酸化カルシウム、酸化ポリエチレン、タルク、ベンゾトリアゾールなどを使用することができる。
ここで、安定剤に含まれるハイドロタルサイトの添加量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、5質量部以上15質量部未満であることが望ましい。なぜなら、ハイドロタルサイトの添加量が5質量部未満であると、耐熱性能が発現しない一方、ハイドロタルサイトの添加量が15質量部以上になると、樹脂組成物の混練時や押出成形時の成形加工性が悪化するからである。さらに、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、ステアリン酸亜鉛と酸化チタンの合計添加量を樹脂組成物の総量で除した分率値Aは、1質量%以上2質量%以下であることが望ましい。なぜなら、分率値Aが1質量%未満では、電子線照射時の変色抑制効果が充分ではない一方、分率値が2質量%よりも大きいと、樹脂組成物の混練時や押出成形時の成形加工性が悪化するとともに、材料コストの上昇を招くことになるからである。
<<酸化チタン>>
本実施の形態における酸化チタンは、隠ぺい剤として使用される。この酸化チタンは、例えば、硫酸チタン溶液を加水分解して得られる含水酸化チタンを焼成する「硫酸法」や、ハロゲン化チタンを気相酸化する「塩素法」で製造された酸化チタンを挙げることができる。ここで、例えば、電子顕微鏡写真法による一次粒子の平均粒子径は0.1μm以上1.0μm以下程度であって、結晶形は、アナタース型やルチル型を挙げることができる。
本実施の形態で使用している酸化チタンは、「塩素法」で製造された2層コートルチル型酸化チタンであり、例えば、選定グレードは、ケマーズ社の「R103」である。すなわち、本実施の形態で使用している酸化チタンは、酸化チタンを覆う第1被覆層と、第1被覆層を覆う第2被覆層とによって覆われている。ここで、例えば、第1被覆層は、酸化アルミニウムから構成される一方、第2被覆層は、ポリオールから構成されている。このとき、ポリオールは、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのいずれかを含む。
ここで、第1被覆層と第2被覆層で被覆された酸化チタンを使用する技術的意義について説明する。例えば、第1被覆層は酸化チタンによるポリマや可塑剤の活性化やフェノール系酸化防止剤存在下でのキノン発色抑制に働き、第2被覆層はそれらをさらに抑制する働きを発現させるとともに樹脂組成物への分散性向上に働く。つまり、第1被覆層は、キノン発色を抑制する機能を有し、第2被覆層は、キノン発色をさらに抑制する機能と樹脂組成物への分散性を向上させる機能を有している。
「硫酸法」で製造し、第1被覆層(例:アルミニウム、シリカ、亜鉛の複合物)のみで構成された酸化チタン(R820)を適用しても問題は無いが、上述した程の変色抑制効果は得られない。「R820」は平均粒子径が0.26μmで、チタン含有量が93質量%の酸化チタンである。これに対し、「塩素法」で製造し、第1被覆層と第2被覆層で被覆された酸化チタンを使用すると、上述したように、顕著な変色抑制効果が得られる。この点が、第1被覆層と第2被覆層で被覆された酸化チタンを使用する技術的意義であり、本発明者が新規に見出した知見である。
「R103」を代表とする2層コートルチル型酸化チタンにおける酸化チタンの濃度は、90質量%以上が望ましく、さらには、95質量%以上であることが不純物に起因する電子線照射による変色を抑制する観点から望ましい。そして、第1被覆層を構成する酸化アルミニウムによる被覆量は、1.7質量%以上4.3質量%以下であることが望ましく、第2被覆層を構成するポリオールによる被覆量は、0.15質量%以上0.3質量%以下であることが望ましい。
また、2層コートルチル型酸化チタンの平均粒子径としては、0.2μm以上0.35μm以下であることが望ましい。
なお、上述した「R103」は、純度96質量%、酸化アルミニウムによる被覆量が3.2質量%、ポリオールによる被覆量が0.2質量%、平均粒子径が0.23μmの酸化チタンである。
<<充填剤>>
樹脂組成物は、例えば、充填剤を含む。充填剤は、クレー(珪酸塩)から構成することができる。特に、クレーは、焼結された焼成クレーであることが望ましい。
<<難燃剤>>
樹脂組成物は、難燃剤を含む。この難燃剤は、水酸化アルミニウムおよびシリカを有している。ここで、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、水酸化アルミニウムとクレーとシリカの合計添加量を樹脂組成物の総量で除した分率値Bは、6質量%以上15質量%以下であることが望ましい。なぜなら、分率値Bが6質量%未満であると、難燃性が発現しにくくなる一方、分率値Bが15質量%よりも大きくなると、電子線照射による変色を抑制しにくくなるからである。
<<架橋助剤>>
樹脂組成物は、特性向上を図る観点から架橋されている。この場合、樹脂組成物には、例えば、架橋助剤が含まれている。架橋助剤としては、トリメチロールプロパントリアクリレートを挙げることができる。
ここで、トリメチロールプロパントリアクリレートの添加量を増加させると、ゲル分率(架橋度)を向上させることができる。一方、電子線の照射強度を高めることによっても、ゲル分率を向上させることができる。ただし、電子線の照射強度が高いと電子線照射に起因する変色が生じやすくなる。このことから、着色を抑制する観点からは、電子線の照射強度を高くし過ぎるすることは回避すべきである。つまり、電子線の照射強度が低くても、高いゲル分率が得られることが望ましい。そこで、本実施の形態では、電子線の照射強度が低くても高いゲル分率を得る目的で、ゲル分率に対する評価指標として、塩化ビニル樹脂100質量部に対するトリメチロールプロパントリアクリレートの添加量と電子線の照射強度の積を適用することにしている。このとき、高いゲル分率(ゲル分率45質量%以上)を得る観点から、架橋助剤の添加量と照射強度の積が9以上となるように、トリメチロールプロパントリアクリレートの添加量と電子線の照射強度とを調整することが望ましい。
<<その他の添加材料>>
樹脂組成物には、必要に応じてその他の添加材料が添加されていてもよい。具体的には、樹脂組成物には、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、着色剤、加工性改良剤やその他の改質剤などを単独あるいは2種類以上の組み合わせで添加することもできる。
以上のようにして、本実施の形態における樹脂組成物が構成されている。以下では、この樹脂組成物を使用した絶縁電線の構成例について説明する。
<絶縁電線の構成>
図1は、絶縁電線の構成例を示す断面図である。
図1に示すように、絶縁電線10は、導線1と、この導線1の外周を被覆する絶縁層2を有している。このとき、絶縁層2には、例えば、上述した本実施の形態における樹脂組成物が使用される。絶縁層2は、図1に示すように、導線1を直接被覆するように構成してもよいし、絶縁電線10を覆うシース材としても使用することができる。
絶縁電線10は、押出被覆などの成形手段によって導線1を樹脂組成物で被覆した後、電子線照射などの方法によって絶縁層2を構成する樹脂組成物を架橋することにより、本実施の形態における絶縁電線10を製造することができる。
なお、押出被覆は、架橋前の樹脂組成物をロール、バンバリー、押出機などを使用して混練して得られたペレットコンパウンドと導線1とをクロスヘッドダイを付設した電線用押出機で導線を覆うように樹脂組成物を押出成形することにより行なわれる。
被覆される導線1としては、例えば、外径0.15mmφ以上7mmφ程度の導線を使用することができる。導線1として、錫めっき軟銅線を撚り合わせた導線などを好適に使用することができるが、これらに限定されるものではない。
また、絶縁電線10の外径は、例えば、0.4mmφ以上11mmφ程度であり、その用途としては、ドライヤ、炊飯器、トランス口出部、照明器具、エアコンなどの機器内の高温部での配線などを挙げることができる。
このように構成されている絶縁電線10によれば、絶縁層2を構成する樹脂組成物として、上述した本実施の形態における樹脂組成物が採用されている。このことから、絶縁電線10によれば、樹脂組成物の「アンチモンフリー化」および「ノンビス化」を実現しながら、「アンチモンフリー化」および「ノンビス化」によって顕在化する改善の余地を克服することができる。すなわち、本実施の形態によれば、環境負荷の小さな絶縁電線10を提供しながら、絶縁電線10の性能向上を図ることができる。言い換えれば、本実施の形態における絶縁電線10によれば、環境性能と電線性能とを両立できる。
以下では、本実施の形態における技術的思想を具現化した絶縁電線によれば、「アンチモンフリー化」および「ノンビス化」による環境性能の向上を図りながら、絶縁電線自体の電線性能も向上できることを裏付ける実験結果について説明する。ただし、本実施の形態における技術的思想は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
<実施例>
<<樹脂組成物の作製>>
以下の表1に記載された割合で各材料を配合した後、170℃に加熱したオーブンロールミキサで混練混合してペレット化することにより、実施例1~実施例10、比較例1~比較例2および参考例1のそれぞれにおける樹脂組成物を作製した。実施例1~実施例10および比較例1~比較例2のそれぞれにおける樹脂組成物は、アンチモンとビスフェノールAが含まれておらず、「アンチモンフリー化」および「ノンビス化」が実現されている。一方、参考例1における樹脂組成物は、アンチモンとビスフェノールAが含まれている樹脂組成物であり、「アンチモンフリー化」および「ノンビス化」が実現されていない。
Figure 2023020640000001
<<絶縁電線の作製>>
導線として、外径0.16mmφの錫めっき軟銅線を17本撚り合わせた導線(外径:0.76mmφ)を使用した。この導線上に樹脂組成物を溶融押出法によって形成した後、樹脂組成物で導線を被覆した絶縁電線(試料)を作製した。具体的に、実施例1~実施例10、比較例1~比較例2および参考例1のそれぞれにおける樹脂組成物で導線を被覆した複数の試料を作製した。樹脂組成物からなる絶縁層の厚さは、0.5mmとなった。なお、電線製造条件は、シリンダ温度170℃およびヘッド温度180℃とするとともに線速20m/minとした。その後、電子線照射機を使用して指定の照射強度で電子線を絶縁電線に照射することにより、樹脂組成物に対して架橋反応を生じさせて、最終的な絶縁電線を作製した。
<<絶縁電線の評価>>
作製した絶縁電線に対して、以下の項目に示す評価を行った。
(1)電子線照射後の変色
表1に記載した割合で各材料を配合して混練する際、表2に示す材料で着色することにより作製した絶縁電線を10cmの長さに切断して、電子線照射前後の変色を評価した。
ここで、目視で電子線照射前後の色相に差異がないものを「〇」とし、色相に差異が生じたものを「×」とした。
Figure 2023020640000002
(2)難燃性
実施例1~実施例10、比較例1~比較例2および参考例1のそれぞれにおける絶縁電線について、UL758準拠の「VW-1試験」を実施し、合格するものを「〇」とし、不合格のものを「×」とした。
(3)ゲル分率
作製した絶縁電線の絶縁層を剥いで、絶縁層を1mm角以下に裁断した後、70℃20時間、テトラヒドロフラン下でゲルを抽出した。そして、抽出したゲルを乾燥させることによりゲル分率を算出した。
ゲル分率が45質量%以上のものを「〇」とし、ゲル分率が45質量%未満のものを「×」とした。ゲル分率が45質量%未満であると、電線の実用特性である「300℃3secはんだ耐性」が得られない可能性があるからである。
(4)評価結果
上述した評価項目に対する評価結果を表3に示す。
Figure 2023020640000003
表3に示すように、本実施の形態における技術的思想が具現化された実施例1~実施例10では、すべての評価項目において良好な結果が得られた。一方、本実施の形態における技術的思想が未適用の比較例1~比較例2では、3つの評価項目全部を達成することができなかった。すなわち、比較例1では、3つの評価項目すべてが不合格となった。また、比較例2では、ゲル分率が不合格となった。なお、アンチモンとビスフェノールAを含有する樹脂組成物を使用した参考例1では、すべての評価項目において良好な結果が得られるものの、「アンチモンフリー化」および「ノンビス化」が実現されていない。
以上の評価結果から、本実施の形態における技術的思想が具現化された絶縁電線(実施例1~実施例10)によれば、環境に優しい「アンチモンフリー化」および「ノンビス化」を実現しながら、変色の抑制、難燃性の向上およびゲル分率の向上に代表される絶縁電線の性能を向上できることが裏付けられている。したがって、本実施の形態における技術的思想は、絶縁電線の性能向上を図る観点から非常に優れているということがわかる。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
1 導線
2 絶縁層
10 絶縁電線

Claims (13)

  1. 塩化ビニル樹脂と、第1添加物群と、第2添加物群と、架橋助剤と、を有する、樹脂組成物であって、
    前記第1添加物群は、酸化チタンと、ステアリン酸亜鉛と、を含み、
    前記第2添加物群は、水酸化アルミニウムと、クレーと、シリカと、を含み、
    ゲル分率が45質量%以上であり、
    前記塩化ビニル樹脂100質量部に対する前記第1添加物群の合計添加量を前記樹脂組成物の総量で除した分率値Aは、1質量%以上2質量%以下であり、
    前記塩化ビニル樹脂100質量部に対する前記第2添加物群の合計添加量を前記樹脂組成物の総量で除した分率値Bは、6質量%以上15質量%以下である、樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載の樹脂組成物において、
    前記第1添加物群は、
    ステアロイルベンゾイルメタンと、
    トリヒドロキシエチルイソシアネートと、
    を含む、樹脂組成物。
  3. 請求項1または2に記載の樹脂組成物において、
    前記樹脂組成物は、ハイドロタルサイトを含む、樹脂組成物。
  4. 請求項3に記載の樹脂組成物において、
    前記ハイドロタルサイトは、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して、5質量部以上15質量部未満含まれている、樹脂組成物。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物において、
    前記酸化チタンは、
    前記酸化チタンを覆う第1被覆層と、
    前記第1被覆層を覆う第2被覆層と、
    によって覆われている、樹脂組成物。
  6. 請求項5に記載の樹脂組成物において、
    前記第1被覆層は、酸化アルミニウムから構成され、
    前記第2被覆層は、ポリオールから構成されている、樹脂組成物。
  7. 請求項6に記載の樹脂組成物において、
    前記ポリオールは、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのいずれかを含む、樹脂組成物。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物において、
    前記樹脂組成物は、酸化防止剤を含む可塑剤を有し、
    前記酸化防止剤は、1分子中にヒドロキシ基を3つ以上有する構造の物質から構成され、
    前記酸化防止剤の添加量は、前記可塑剤の総添加量のうちの0.5質量%以下である、樹脂組成物。
  9. 請求項8に記載の樹脂組成物において、
    前記可塑剤は、トリメリット酸エステルを含み、
    前記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤である、樹脂組成物。
  10. 請求項8に記載の樹脂組成物において、
    前記可塑剤は、
    トリメリット酸エステルと、
    塩素化ポリエチレンと、
    を含む、樹脂組成物。
  11. 請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物において、
    アンチモンおよびビスフェノールAが非含有である、樹脂組成物。
  12. 導線と、
    前記導線を被覆する絶縁層と、
    を含む、絶縁電線であって、
    前記絶縁層は、請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂組成物から構成される、絶縁電線。
  13. 塩化ビニル樹脂と、第1添加物群と、第2添加物群と、架橋助剤と、を有し、
    前記第1添加物群は、酸化チタンと、ステアリン酸亜鉛と、を含み、
    前記第2添加物群は、水酸化アルミニウムと、クレーと、シリカと、を含み、
    前記塩化ビニル樹脂100質量部に対する前記第1添加物群の合計添加量を前記樹脂組成物の総量で除した分率値Aは、1質量%以上2質量%以下であり、
    前記塩化ビニル樹脂100質量部に対する前記第2添加物群の合計添加量を前記樹脂組成物の総量で除した分率値Bは、6質量%以上15質量%以下である、樹脂組成物の製造方法であって、
    電子線を照射することにより、前記樹脂組成物を架橋させる工程を有し、
    前記架橋助剤の添加量と前記電子線の照射強度との積が9以上である、樹脂組成物の製造方法。
JP2021126119A 2021-07-30 2021-07-30 樹脂組成物、絶縁電線および樹脂組成物の製造方法 Pending JP2023020640A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021126119A JP2023020640A (ja) 2021-07-30 2021-07-30 樹脂組成物、絶縁電線および樹脂組成物の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021126119A JP2023020640A (ja) 2021-07-30 2021-07-30 樹脂組成物、絶縁電線および樹脂組成物の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023020640A true JP2023020640A (ja) 2023-02-09

Family

ID=85159340

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021126119A Pending JP2023020640A (ja) 2021-07-30 2021-07-30 樹脂組成物、絶縁電線および樹脂組成物の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023020640A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5323332B2 (ja) 難燃性絶縁電線
WO2011010694A1 (ja) 塩化ビニル樹脂組成物およびそれを用いた絶縁電線
US9305679B2 (en) Vinyl chloride resin composition, electric wire and cable
JP6284673B1 (ja) 樹脂組成物、樹脂被覆材、自動車用ワイヤーハーネス及び自動車用ワイヤーハーネスの製造方法
JP6807019B2 (ja) 塩化ビニル樹脂組成物並びに絶縁電線及びケーブル
JP6684053B2 (ja) 塩化ビニル樹脂組成物、並びにこれを用いた絶縁電線及びケーブル
CN111909468B (zh) 氯乙烯树脂组合物、绝缘电线、电缆、绝缘电线的制造方法和电缆的制造方法
JP6229591B2 (ja) 塩化ビニル樹脂組成物、並びにこれを用いた絶縁電線及びケーブル
JP2023020640A (ja) 樹脂組成物、絶縁電線および樹脂組成物の製造方法
JP6256787B2 (ja) 難燃性塩化ビニル樹脂組成物およびそれを用いた絶縁電線、並びに絶縁電線の製造方法
JP6859377B2 (ja) 塩化ビニル樹脂組成物、並びにこれを用いた絶縁電線及びケーブル
JP2018002781A (ja) 塩化ビニル樹脂組成物、並びにこれを用いた絶縁電線及びケーブル
JP6206229B2 (ja) 塩化ビニル樹脂組成物およびそれを用いた絶縁電線ならびに絶縁電線の製造方法
JP6136964B2 (ja) 塩化ビニル樹脂組成物およびそれを用いた絶縁電線、並びに絶縁電線の製造方法
JP2007207642A (ja) ノンハロゲン絶縁電線
JP6459552B2 (ja) 塩化ビニル樹脂組成物を用いた絶縁電線及びケーブル
JP2012038648A (ja) ビニル絶縁ビニルシースケーブル
CN106349589B (zh) 氯乙烯树脂组合物、以及使用其的电线和电缆
JP2011034703A (ja) フラットケーブル
JP6503947B2 (ja) 塩化ビニル樹脂組成物並びにこれを用いた電線及びケーブル
JP2023015841A (ja) 樹脂組成物および絶縁電線
JP2022153974A (ja) 塩化ビニル樹脂組成物およびこれを用いた絶縁電線
JP2016196605A (ja) 塩化ビニル樹脂組成物、並びにこれを用いた絶縁電線及びケーブル
JP2017075335A (ja) 塩化ビニル樹脂組成物およびそれを用いた絶縁電線、並びに絶縁電線の製造方法
JP2004158465A (ja) 塩化ビニル系樹脂被覆電線

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20240422