JP6807019B2 - 塩化ビニル樹脂組成物並びに絶縁電線及びケーブル - Google Patents
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Description
[2]前記塩化ビニル樹脂100質量部に対する、前記カルボン酸縮合物の部分エステル化合物の含量が0.01〜10質量部である前記[1]に記載の絶縁電線。
[3]前記塩化ビニル樹脂100質量部に対する、前記可塑剤の含量が25〜70質量部である前記[1]又は前記[2]に記載の絶縁電線。
[4]前記塩化ビニル樹脂組成物は、前記ベースポリマーにさらに(A)脂肪酸金属塩、(B)シアヌル酸誘導体又はイソシアヌル酸誘導体、(C)ステアロイルベンゾイルメタン、及び(D)高密度酸化ポリエチレンワックスが含有されており、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対する前記(A)〜(D)の合計含量が1〜4.5質量部であって、前記(B)シアヌル酸誘導体又はイソシアヌル酸誘導体に対する前記(C)ステアロイルベンゾイルメタンの含有質量比(C/B)が0.25〜6である前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の絶縁電線。
[5]前記(A)脂肪酸金属塩は、(A1)脂肪酸亜鉛塩及び(A2)脂肪酸亜鉛塩以外の脂肪酸金属塩からなり、前記(A2)脂肪酸亜鉛塩以外の脂肪酸金属塩に対する前記(A1)脂肪酸亜鉛塩の含有質量比(A1/A2)が4〜9である前記[4]に記載の絶縁電線。
[6]前記(A2)脂肪酸亜鉛塩以外の脂肪酸金属塩は、脂肪酸カルシウム塩、脂肪酸マグネシウム塩、及び脂肪酸アルミニウム塩から選ばれる1つ以上である前記[5]に記載の絶縁電線。
[7]前記(D)高密度酸化ポリエチレンワックスは、150℃における粘度が2500〜85000cpsの範囲内のものであり、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.01〜2質量部含有される前記[4]〜[6]のいずれか1つに記載の絶縁電線。
[8]前記(A)脂肪酸金属塩、前記(B)シアヌル酸誘導体又はイソシアヌル酸誘導体、前記(C)ステアロイルベンゾイルメタン、及び前記(D)高密度酸化ポリエチレンワックスの合計含量に対する前記(A)脂肪酸金属塩の含有割合が35質量%以上である前記[4]〜[7]のいずれか1つに記載の絶縁電線。
[9]前記可塑剤は、トリメリット酸エステルである前記[1]〜[8]のいずれか1つに記載の絶縁電線。
[10]前記可塑剤が、トリメリット酸エステルとエポキシ系可塑剤の併用系である前記[1]〜[8]のいずれか1つに記載の絶縁電線。
[11]前記エポキシ系可塑剤がエポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化脂肪酸オクチルエステル、エポキシ化脂肪酸アルキルエステルのうち1種以上からなる前記[10]に記載の絶縁電線。
[12]前記エポキシ系可塑剤の添加量が塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1〜10重量部からなる前記[10]又は[11]に記載の絶縁電線。
[13]前記塩化ビニル樹脂組成物は、ハイドロタルサイト、水酸化アルミニウム、焼成クレー及び酸化チタンのいずれか1種又は2種以上をさらに含有する前記[1]〜[12]のいずれか1つに記載の絶縁電線。
[14]塩化ビニル樹脂を含むベースポリマーにカルボン酸縮合物の部分エステル化合物、(A)脂肪酸金属塩、(B)シアヌル酸誘導体又はイソシアヌル酸誘導体、(C)ステアロイルベンゾイルメタン、(D)高密度酸化ポリエチレンワックス、及び可塑剤が含有されており、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対する、前記カルボン酸縮合物の部分エステル化合物の含量が0.01〜10質量部、かつ前記(A)〜(D)の合計含量が1〜4.5質量部であって、前記(B)シアヌル酸誘導体又はイソシアヌル酸誘導体に対する前記(C)ステアロイルベンゾイルメタンの含有質量比(C/B)が0.25〜6である塩化ビニル樹脂組成物。
[15]前記導体は、裸軟銅線である前記[1]〜[13]のいずれか1つに記載の絶縁電線。
[16]絶縁電線は、前記導体を複数本備えた多芯並行絶縁電線である前記[1]〜[13]、[15]のいずれか1つに記載の絶縁電線。
[17]前記導体は、錫めっき厚が0.05〜0.2μmである錫めっき軟銅線であり、前記絶縁電線は、前記導体を複数本備えた多芯並行絶縁電線である前記[1]〜[13]のいずれか1つに記載の絶縁電線。
[18]塩化ビニル樹脂を含むベースポリマーにカルボン酸縮合物の部分エステル化合物及び可塑剤が含有されている塩化ビニル樹脂組成物からなるシースを備えたケーブル。
[19]前記塩化ビニル樹脂組成物は、前記ベースポリマーにさらに(A)脂肪酸金属塩、(B)シアヌル酸誘導体又はイソシアヌル酸誘導体、(C)ステアロイルベンゾイルメタン、及び(D)高密度酸化ポリエチレンワックスが含有されており、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対する前記カルボン酸縮合物の部分エステル化合物の含量が0.01〜10質量部、かつ前記(A)〜(D)の合計含量が1〜4.5質量部であって、前記(B)シアヌル酸誘導体又はイソシアヌル酸誘導体に対する前記(C)ステアロイルベンゾイルメタンの含有質量比(C/B)が0.25〜6である前記[18]に記載のケーブル。
[20]前記[1]〜[13]、[15]〜[17]のいずれか1つに記載の絶縁電線を備えた前記[18]又は前記[19]に記載のケーブル。
[21]前記絶縁層に接してエポキシ樹脂による封止が施された前記[1]〜[13]、[15]〜[17]のいずれか1つに記載の絶縁電線。
[22]前記シースに接してエポキシ樹脂による封止が施された前記[18]〜[20]のいずれか1つに記載のケーブル。
本発明の実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂を含むベースポリマーにカルボン酸縮合物の部分エステル化合物及び可塑剤が含有されている。
本発明の実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物は、ベースポリマーとして塩化ビニル樹脂を含有している。
本発明の実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物は、カルボン酸縮合物の部分エステル化合物が含有されている。これにより、本願発明の効果(エポキシ樹脂をはじく現象の抑制)を奏する。
本発明の実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂を含むベースポリマーにさらに(A)脂肪酸金属塩、(B)シアヌル酸誘導体又はイソシアヌル酸誘導体、(C)ステアロイルベンゾイルメタン、及び(D)高密度酸化ポリエチレンワックスが含有されている。ベースポリマー中の塩化ビニル樹脂100質量部に対する上記(A)〜(D)の合計含量は、1〜4.5質量部である。これらの合計含量を上記範囲内とすることで塩基起因による変色の抑制等の効果を奏する。(A)〜(D)の合計含量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、1.1〜4.1質量部であることが好ましく、1.2〜3質量部であることがより好ましく、1.3〜2.5質量部であることがさらに好ましい。
脂肪酸金属塩としては、例えば脂肪酸亜鉛塩を用いることが好ましく、脂肪酸亜鉛塩と脂肪酸カルシウム塩を併用することがより好ましい。また、必要に応じ、耐熱バランスを調整する上で脂肪酸マグネシウム塩や脂肪酸アルミニウム塩を併用しても良い。これらを用いる場合、(A2)脂肪酸亜鉛塩以外の脂肪酸金属塩に対する(A1)脂肪酸亜鉛塩の含有質量比(A1/A2)が4〜9であることが好ましい。
(C17H35COO)2Zn + 2HCL → ZnCL2 + C17H35COOH
(C17H35COO)2Ca + ZnCL2 → (C17H35COO)2Zn +CaCL2
シアヌル酸誘導体又はイソシアヌル酸誘導体としては、イソシアヌル酸誘導体を用いることが好ましく、例えば、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)を用いることが特に好ましい。なお、ここでいう「又は」には、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体をそれぞれ単独で使用する場合のほか、シアヌル酸誘導体とイソシアヌル酸誘導体とを併用する場合も含まれる。
ステアロイルベンゾイルメタンの役割を以下に説明する。
一般に塩化ビニル樹脂のアリル塩安定化剤としては、ジベンゾイルメタン(DBM)が用いられてきた。脂肪酸塩や金属化合物下で、次式(I)、(II)の通り働く。すなわち、アリル塩を安定化することで、結果として着色抑制剤として働く。
ポリオレフィンワックスには、ポリエチレンホモポリマータイプ、酸化ポリエチレンタイプ、高密度酸化ポリエチレンタイプ、ポリプロピレンタイプ、エチレン・アクリル酸共重合タイプ、エチレン・酢酸ビニル共重合タイプ、酸化エチレン・酢酸ビニル共重合タイプ、低分子量アイオノマータイプ、エチレン−無水マレイン酸共重合タイプ、プロピレン−無水マレイン酸共重合タイプなど、さまざまなワックスが存在する。これらの中でも、以下の点に着眼し、高密度酸化ポリエチレンワックスを選定した。
(1)塩化ビニル樹脂、及び(B)シアヌル酸誘導体又はイソシアヌル酸誘導体や(C)ステアロイルベンゾイルメタンとの相溶性を考慮し、極性基を保有するワックスであること。
(2)国際規格ASTM−D3954ベースの滴点が本発明の塩化ビニル樹脂組成物の混練温度(130〜150℃)付近にあるワックスであること。
(3)本発明の塩化ビニル樹脂組成物の混練温度付近での粘度が高く、内部滑剤として働くワックスであること。
本発明の実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物には、可塑剤として、従来公知の可塑剤を添加することができる。特に限定はされないが、軟銅線との密着性及び耐熱性の観点からトリメリテート系可塑剤を使用することが好ましく、例えばトリメリット酸トリ2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリノルマルアルキル、トリメリット酸トリイソデシル等のトリメリット酸エステルを挙げることができる。耐熱性、コストの観点からトリメリット酸トリ2−エチルヘキシルを用いることがより好ましい。フタル酸エステルでは十分な耐熱性が得られにくい。また、ポリエステル可塑剤では加水分解を招く恐れがある。可塑剤の含量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、25〜70質量部であることが好ましく、熱変形量を抑える観点から25〜50質量部であることがより好ましい。25質量部未満では必要な耐寒性能が得られにくい。
トリメリテート系可塑剤と併用して適用する可塑剤としては、エポキシ系可塑剤が適している。
[図7]に示した効果が実証されたためである。
エポキシ系可塑剤はビスフェノール型エポキシ樹脂のようにエポキシ基の反応性の高いものは好ましくない。
以下の2つの理由による。
(1)エポキシ基は塩化ビニル樹脂の脱塩酸時の塩酸を捕捉しエピクロルヒドリン化合物を生成するが、金属石鹸併用で、エポキシ環を再生することが知られている。このエポキシ環の再生自体は問題ないが、金属石鹸が消費されるため、本材料の特徴である変色抑制効果を低下させてしまうためである。
(2)エポキシ基は塩化ビニル樹脂の脱塩酸で生成するアリル塩素の置換する働きが知られているが、この置換反応は金属塩存在下で促進される。本実施例は[化3]で示した反応を伴う。使用するエポキシ基の反応性が高いと[化3]の反応が抑制されるため、本材料の特徴である変色抑制効果を低下させてしまうためである。
エポキシ系可塑剤はエポキシ基がある程度の化学構造的な阻害を受けるエポキシ化大豆油やエポキシ化亜麻仁油、エポキシ価の小さいエポキシ化脂肪酸オクチルエステル、エポキシ化脂肪酸アルキルエステルなどが適している。これらは1種で用いても良く、併用して適用しても良い。エポキシ系可塑剤の添加量は塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部からなることが好ましい。0.1質量部以上だとさらなるエポキシはじき抑制効果があらわれ、10質量部未満だと変色抑制があるためである。1〜6質量部で使用するのがより好ましい。
本発明の実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物には、安定剤として、従来公知の安定剤を添加することができる。特に限定はされないが、安定剤は、鉛を含有しない非鉛系安定剤を用いることが、法規制上好ましい。非鉛系安定剤としては、ハイドロタルサイト系安定剤や、カルシウム−亜鉛系の複合安定剤を挙げることができる。前述の脂肪酸金属塩としてステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛等を添加した場合、これらを安定剤として機能させることもできる。
本発明の実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物には、上記添加剤に加え、必要に応じて、難燃剤、充填剤、架橋剤、架橋助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、酸化防止剤、着色剤、加工性改良剤、その他の改質剤などを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明の実施形態に係る絶縁電線は、導体と、導体の外周に被覆された、本発明の実施形態に係る上記塩化ビニル樹脂組成物からなる絶縁層とを備えたことを特徴とする。
図1に示すように、本実施の形態に係る絶縁電線10は、導体1と、導体1の外周に被覆された絶縁層2とを備える。被覆される導体1としては、例えば外径0.15〜7mmφ程度の導体を使用することができる。錫メッキ軟銅線を撚り合わせた導体などを好適に使用することができるが、これに限定されるものではない。導体1は、図1のように1本である場合に限られず、複数本であってもよい。
図2に示すように、本実施の形態に係る絶縁電線20は、並行させた2本の導体21と、2本の導体21の外周に一括被覆された絶縁層22とを備える。導体21としては、錫メッキされていない軟銅線、すなわち裸軟銅線を使用することが、絶縁層22を構成する樹脂組成物との密着性の観点から望ましい。導体21は、例えば外径0.15〜7mmφ程度の導体を使用することができる。裸軟銅線を複数本(図2では7本)撚り合わせた導体を好適に使用することができるが、これに限定されるものではない。導体21は、図2のように2芯を並行に配置させる場合に限られず、単芯であっても、3芯以上であってもよい。
本発明の実施形態に係るケーブルは、本発明の実施形態に係る上記塩化ビニル樹脂組成物を被覆材料(シースないし絶縁層及びシース)として使用したことを特徴とする。
図3に示すように、本実施の形態に係るケーブル30は、導体1に絶縁層2を被覆した絶縁電線10、3本を紙等の介在4と共に撚り合わせた三芯撚り線と、三芯撚り線の外周に施された押え巻きテープ5と、その外周に押出被覆されたシース3とを備える。三芯撚り線に限らず、絶縁電線1本(単芯)でもよく、三芯以外の多芯撚り線であってもよい。
(1)本発明の実施形態によれば、エポキシ樹脂を塗布し硬化封止する際、エポキシ樹脂をはじく現象を抑制しうる塩化ビニル樹脂組成物、並びにこれを用いた絶縁電線及びケーブルを提供することができる。図4及び図7は、エポキシ樹脂をはじく現象を抑制する効果を説明するための概念図であり、(a)は従来例を示し、(b)は本発明の実施の形態の一例を示す。エポキシ樹脂13がはじかれる要因は、図4(a)及び図7(a)に示したように、PVC11の表面に浸出する極微量の可塑剤12の存在と考えられる。この微量可塑剤の影響を抑制する材料としてカルボン酸縮合物の部分エステル化合物14が有効に働いたと考えられる。図4(b)に示したように、部分エステル化合物部14bは可塑剤12と、カルボン酸縮合物部14aはエポキシ樹脂13と親和することから、エポキシ樹脂13をはじく現象の抑制効果が発現すると推察した。図7(b)は、PVC11中に予めエポキシ化合物15を添加した例を示している(この図では、カルボン酸縮合物の部分エステル化合物14の記載は省略)。エポキシ化合物15はPVC11の安定剤兼2次可塑剤として使用される。添加されたエポキシ化合物15は、極微量の可塑剤12とともにPVC11の表面に浸出する。含有するエポキシ化合物15のエポキシとディップするエポキシ樹脂13のエポキシの相互作用でエポキシ樹脂13をはじく現象の抑制効果がさらに発現する。
表1〜2に示す各材料を記載された割合で配合し、140℃に加熱したオープンロールミキサーで混練混合してペレット化し、各実施例及び比較例の塩化ビニル樹脂組成物を得た。用いた材料は、表4に示す通りである。
140℃に加熱したオープンロールミキサーで混練する際、5分以内で、フロントロールに巻き付いた混和物シートの外観が滑らかで、シートにたるみが生じないものを〇、外観荒れやシートにたるみが生じたものを×とした。×のものは、外部滑性が過多であることから生じる現象であり、連続混練機やバッチ式ミキサーで量産化した場合、均一に分散した混練物が得られない。
(2−1)図1の構造の絶縁電線10の作製(実施例1〜6及び比較例1〜3)
導体として、外径0.16mmφ錫メッキ軟銅線の26本撚り導体(外径0.94mmφ、錫めっき厚0.5μm)を使用した。該導体上に上記(1)で表1に基づき作製した塩化ビニル樹脂組成物を溶融押出法により押出成形し、各塩化ビニル樹脂組成物で導体を被覆した試料(絶縁電線)を得た。塩化ビニル樹脂組成物から成る絶縁層の厚さは、0.5mmとなった。電線製造条件は、シリンダー温度170℃、ヘッド温度180℃にて、線速400m/分にて作業を実施した。
導体として、実施例7〜10、15〜19、比較例7、8では外径0.16mmφ軟銅線(裸軟銅線)を使用し、実施例11〜14及び比較例4〜6では外径0.16mmφ錫メッキ軟銅線の7本撚り導体(外径0.94mmφ、錫めっき厚0.5μm(実施例11〜12及び比較例4〜6)、錫めっき厚0.1μm(実施例13〜14))を使用した。該導体上に上記(1)で表2に基づき作製した塩化ビニル樹脂組成物を溶融押出法により押出成形し、各塩化ビニル樹脂組成物で導体を被覆した試料(2芯並行絶縁電線)を得た。得られた2芯並行絶縁電線の厚み(図2に示すX)は1.3mmであり、幅(図2に示すY)は2.6mmであった。電線製造条件は、シリンダー温度180℃、ヘッド温度190℃にて、線速250m/分にて作業を実施した。実施例11と13、実施例12と14は、それぞれ錫メッキ軟銅線の錫めっき厚のみが異なるものである。
エポキシ樹脂100質量部と芳香族ポリアミン型硬化剤20質量部を常温で10分撹拌したものを、上記(2)で作製した絶縁電線の表面に刷毛を用いて100mm長塗布し、常温で48時間放置したあと、エポキシ樹脂のはじき痕を15倍の拡大鏡にて目視観察した。はじき痕が確認されなかったものを○、確認されたものを×とした。表1、2及び3に評価結果を示す。
上記各例の絶縁電線について、300mmの長さに切断した電線を100℃で500時間、ギヤーオーブン(強制循環式空気加熱老化試験機)に曝露し、曝露前後の色相変化を確認した。色相変化は5人による目視比較試験を行い、曝露前後で5人とも変色無と判断したものを◎、4人が変色無と判断したものを○、0〜3人が変色無と判断したものを×とした。表1、2及び3に評価結果を示す。
上記各例の絶縁電線について、外観を目視で評価した。表面に艶があり、表面がスムーズだったものを◎、表面がスムーズだが艶消し状態となったものを○、表面に肌荒れ又は凹凸を生じたものを×とした。表1、2及び3に評価結果を示す。
上記(2−2)で作製した2芯並行絶縁電線を長さ500mmに切断し、その電線の先端から絶縁層を5mm剥離し、図5に示す状態とした。その後、120℃で3時間ギアオーブンで加熱した後、ギアオーブンから取り出して、2芯導体の長さを計測した。加熱処理後の2芯導体の長さが4.5〜5.5mmの範囲内にあるものを良品と判定し、2芯導体のいずれかの長さが4.5mm未満又は5.5mmを超えたものは不良品と判定した。試験は、N=20で実施した。20本中20本が良品であったものを◎、20本中16本以上19本以下が良品であったものを○、20本中16本未満が良品であったものを×とした。表2及び3に評価結果を示す。
比較例7においては、色相変化及び外観ともに結果が悪かった。また、絶縁層剥離後の導体長さの均一性の結果も不合格のものが4割あった。
比較例8においては、色相変化及び外観ともに結果が悪かった。また、絶縁層剥離後の導体長さの均一性の結果も不合格のものが1割以上あった。
1、21、41:導体、2、22、42:絶縁層
3:シース、4:介在、5:押さえ巻きテープ
11:PVC、12:可塑剤、13:エポキシ樹脂
14:カルボン酸縮合物の部分エステル化合物
14a:カルボン酸縮合物部、14b:部分エステル化合物部
15:エポキシ化合物
Claims (20)
- 導体と、前記導体の外周に被覆された、塩化ビニル樹脂組成物からなる絶縁層とを備え、
前記塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂を含むベースポリマーにカルボン酸縮合物の部分エステル化合物及び可塑剤が含有されている絶縁電線であって、
前記塩化ビニル樹脂組成物は、前記ベースポリマーにさらに(A)脂肪酸金属塩、(B)シアヌル酸誘導体又はイソシアヌル酸誘導体、(C)ステアロイルベンゾイルメタン、及び(D)高密度酸化ポリエチレンワックスが含有されており、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対する前記(A)〜(D)の合計含量が1〜4.5質量部であって、前記(B)シアヌル酸誘導体又はイソシアヌル酸誘導体に対する前記(C)ステアロイルベンゾイルメタンの含有質量比(C/B)が0.25〜1である絶縁電線。 - 前記塩化ビニル樹脂100質量部に対する、前記カルボン酸縮合物の部分エステル化合物の含量が0.01〜10質量部である請求項1に記載の絶縁電線。
- 前記塩化ビニル樹脂100質量部に対する、前記可塑剤の含量が25〜70質量部である請求項1又は請求項2に記載の絶縁電線。
- 前記(A)脂肪酸金属塩は、(A1)脂肪酸亜鉛塩及び(A2)脂肪酸亜鉛塩以外の脂肪酸金属塩からなり、前記(A2)脂肪酸亜鉛塩以外の脂肪酸金属塩に対する前記(A1)脂肪酸亜鉛塩の含有質量比(A1/A2)が4〜9である請求項1に記載の絶縁電線。
- 前記(A2)脂肪酸亜鉛塩以外の脂肪酸金属塩は、脂肪酸カルシウム塩、脂肪酸マグネシウム塩、及び脂肪酸アルミニウム塩から選ばれる1つ以上である請求項4に記載の絶縁電線。
- 前記(D)高密度酸化ポリエチレンワックスは、150℃における粘度が2500〜85000cpsの範囲内のものであり、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.01〜2質量部含有される請求項1〜5のいずれか1項に記載の絶縁電線。
- 前記(A)脂肪酸金属塩、前記(B)シアヌル酸誘導体又はイソシアヌル酸誘導体、前記(C)ステアロイルベンゾイルメタン、及び前記(D)高密度酸化ポリエチレンワックスの合計含量に対する前記(A)脂肪酸金属塩の含有割合が35質量%以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載の絶縁電線。
- 前記可塑剤は、トリメリット酸エステルである請求項1〜7のいずれか1項に記載の絶縁電線。
- 前記可塑剤が、トリメリット酸エステルとエポキシ系可塑剤の併用系である請求項1〜7のいずれか1項に記載の絶縁電線。
- 前記エポキシ系可塑剤がエポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化脂肪酸オクチルエステル、エポキシ化脂肪酸アルキルエステルのうち1種以上からなる請求項9に記載の絶縁電線。
- 前記エポキシ系可塑剤の添加量が塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1〜10重量部からなる請求項9又は請求項10に記載の絶縁電線。
- 前記塩化ビニル樹脂組成物は、ハイドロタルサイト、水酸化アルミニウム、焼成クレー及び酸化チタンのいずれか1種又は2種以上をさらに含有する請求項1〜11のいずれか1項に記載の絶縁電線。
- 塩化ビニル樹脂を含むベースポリマーにカルボン酸縮合物の部分エステル化合物、(A)脂肪酸金属塩、(B)シアヌル酸誘導体又はイソシアヌル酸誘導体、(C)ステアロイルベンゾイルメタン、(D)高密度酸化ポリエチレンワックス、及び可塑剤が含有されており、
前記塩化ビニル樹脂100質量部に対する、前記カルボン酸縮合物の部分エステル化合物の含量が0.01〜10質量部、かつ前記(A)〜(D)の合計含量が1〜4.5質量部であって、前記(B)シアヌル酸誘導体又はイソシアヌル酸誘導体に対する前記(C)ステアロイルベンゾイルメタンの含有質量比(C/B)が0.25〜1である塩化ビニル樹脂組成物。 - 前記導体は、裸軟銅線である請求項1〜12のいずれか1項に記載の絶縁電線。
- 前記絶縁電線は、前記導体を複数本備えた多芯並行絶縁電線である請求項1〜12、14のいずれか1項に記載の絶縁電線。
- 前記導体は、錫めっき厚が0.05〜0.2μmである錫めっき軟銅線であり、前記絶縁電線は、前記導体を複数本備えた多芯並行絶縁電線である請求項1〜12のいずれか1項に記載の絶縁電線。
- 塩化ビニル樹脂を含むベースポリマーにカルボン酸縮合物の部分エステル化合物及び可塑剤が含有されている塩化ビニル樹脂組成物からなるシースを備えたケーブルであって、
前記塩化ビニル樹脂組成物は、前記ベースポリマーにさらに(A)脂肪酸金属塩、(B)シアヌル酸誘導体又はイソシアヌル酸誘導体、(C)ステアロイルベンゾイルメタン、及び(D)高密度酸化ポリエチレンワックスが含有されており、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対する前記カルボン酸縮合物の部分エステル化合物の含量が0.01〜10質量部、かつ前記(A)〜(D)の合計含量が1〜4.5質量部であって、前記(B)シアヌル酸誘導体又はイソシアヌル酸誘導体に対する前記(C)ステアロイルベンゾイルメタンの含有質量比(C/B)が0.25〜1であるケーブル。 - 請求項1〜12、14〜16のいずれか1項に記載の絶縁電線を備えた請求項17に記載のケーブル。
- 前記絶縁層に接してエポキシ樹脂による封止が施された請求項1〜12、14〜16のいずれか1項に記載の絶縁電線。
- 前記シースに接してエポキシ樹脂による封止が施された請求項17に記載のケーブル。
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