JP2023018620A - マイクロ流路チップ及びマイクロ流路チップの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本開示は、マイクロ流路チップ及びその製造方法に関するものである。
近年、リソプロセスや厚膜プロセス技術を応用して、微細な反応場を形成し、数μLから数nL単位での検査を可能とする技術が提案されている。このような微細な反応場を利用した技術をμ-TAS(Micro Total Analysis system)という。
μ-TASは、遺伝子検査、染色体検査、細胞検査、医薬品開発などの領域や、バイオ技術、環境中の微量な物質検査、農作物等の飼育環境の調査、農作物の遺伝子検査などに応用される。μ-TAS技術の導入により、自動化、高速化、高精度化、低コスト、迅速性、環境インパクトの低減など、大きな効果を得られる。
μ-TASでは、多くの場合、基板上に形成されたマイクロメートルサイズの流路(マイクロ流路、マイクロチャンネル)が利用され、このような基板はチップ、マイクロチップ、マイクロ流路チップなどと呼ばれる。
ところで、マイクロ流路チップにおいて、マイクロ流路を流れる反応溶液には、気泡が発生する場合ある。気泡は、例えばマイクロ流路チップに反応溶液等の流体を注液する際の気泡の巻き込みや、反応溶液の加熱による沸騰、マイクロ流路内の流れの不均一による泡噛み、又は、反応溶液自身からの発泡等によって発生する。
このような気泡の発生は、マイクロ流路における送液の不安定化や、反応溶液の反応の阻害等を引き起こしてしまう。
このような気泡の発生は、マイクロ流路における送液の不安定化や、反応溶液の反応の阻害等を引き起こしてしまう。
例えば特許文献1には、マイクロ流路内の気泡を抜く方法として、流体を通さずに空気のみを通す網状部材を有する気泡分離部を流路に取り付けることにより、マイクロ流体への空気の巻き込みによって発生する気泡を除去する方法が開示されている。
また、特許文献2には、部材同士を接着剤で接合してマイクロ流路チップを作製する方法が開示されている。
また、特許文献2には、部材同士を接着剤で接合してマイクロ流路チップを作製する方法が開示されている。
従来、マイクロ流路チップの作製においては、特許文献2に記載のように接着剤を用いて部材同士を接合することが一般的である。しかしながら、特許文献1に開示されているような気泡分離部を、接着材によってマイクロ流路に貼り付ける場合、接着剤の成分がマイクロ流路内を流れる溶液中へ溶出し、これにより溶液の反応阻害が生じ得るといった問題がある。
そこで、本開示は上記課題に鑑み、マイクロ流路内に生じる気泡を除去することができ、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができるマイクロ流路チップ、およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係るマイクロ流路チップは、基部と、前記基部上に流路を形成する隔壁部と、前記隔壁部の前記基部とは反対側の面に形成され、前記流路の蓋となる上蓋部と、を備え、前記上蓋部には、前記流路内に生じる気泡を除去する気泡除去部が設けられ、前記隔壁部と前記上蓋部との間に粘着層が設けられていないことを特徴とする。
また、上記課題を解決するために、本開示の他の態様に係るマイクロ流路チップは、基部と、前記基部上に流路を形成する隔壁部と、前記隔壁部の前記基部とは反対側の面に形成され、前記流路の蓋となる上蓋部と、を備え、前記上蓋部には、前記流路内に生じる気泡を除去する気泡除去部が設けられ、前記上蓋部と前記隔壁部とは互いに溶着していることを特徴とする。
また、上記課題を解決するために、本開示のさらに他の態様に係るマイクロ流路チップは、マイクロ流路チップであって、流路と、前記流路の蓋となる上蓋部と、を備え、前記上蓋部の材料は、熱流動性を有する樹脂であり、前記上蓋部には、前記流路内に生じる気泡を除去する気泡除去部が設けられていることを特徴とする。
また、上記課題を解決するために、本開示の他の態様に係るマイクロ流路チップは、基部と、前記基部上に流路を形成する隔壁部と、前記隔壁部の前記基部とは反対側の面に形成され、前記流路の蓋となる上蓋部と、を備え、前記上蓋部には、前記流路内に生じる気泡を除去する気泡除去部が設けられ、前記上蓋部と前記隔壁部とは互いに溶着していることを特徴とする。
また、上記課題を解決するために、本開示のさらに他の態様に係るマイクロ流路チップは、マイクロ流路チップであって、流路と、前記流路の蓋となる上蓋部と、を備え、前記上蓋部の材料は、熱流動性を有する樹脂であり、前記上蓋部には、前記流路内に生じる気泡を除去する気泡除去部が設けられていることを特徴とする。
また、本開示の一態様に係るマイクロ流路チップの製造方法は、基部上に、感光性樹脂を塗工する工程と、塗工した前記感光性樹脂を露光する工程と、露光した前記感光性樹脂を現像及び洗浄し、前記基部上において流路を画定する隔壁部を形成する工程と、記隔壁部を加熱処理して前記感光性樹脂を流動させることにより、前記流路の上蓋部を形成し且つ該上蓋部に前記流路に生じる気泡を除去する気泡除去部として貫通孔を設ける工程と、を含むことを特徴とする。
また、本開示の他の態様に係るマイクロ流路チップの製造方法は、基部上に、第一の感光性樹脂を塗工する工程と、塗工した前記第一の感光性樹脂の上に、第二の感光性樹脂を塗工する工程と、前記第一の感光性樹脂及び前記第二の感光性樹脂を露光する工程と、露光した前記第一の感光性樹脂及び前記第二の感光性樹脂を現像及び洗浄し、前記基部上において流路を画定する隔壁部を形成する工程と、前記隔壁部上の前記第二の感光性樹脂を加熱処理して該第二の感光性樹脂を流動させることにより、前記流路の上蓋部を形成し且つ該上蓋部に前記流路に生じる気泡を除去する気泡除去部として貫通孔を設ける工程と、を含むことを特徴とする。
また、本開示の他の態様に係るマイクロ流路チップの製造方法は、基部上に、第一の感光性樹脂を塗工する工程と、塗工した前記第一の感光性樹脂の上に、第二の感光性樹脂を塗工する工程と、前記第一の感光性樹脂及び前記第二の感光性樹脂を露光する工程と、露光した前記第一の感光性樹脂及び前記第二の感光性樹脂を現像及び洗浄し、前記基部上において流路を画定する隔壁部を形成する工程と、前記隔壁部上の前記第二の感光性樹脂を加熱処理して該第二の感光性樹脂を流動させることにより、前記流路の上蓋部を形成し且つ該上蓋部に前記流路に生じる気泡を除去する気泡除去部として貫通孔を設ける工程と、を含むことを特徴とする。
本開示の態様によれば、マイクロ流路内に生じる気泡を除去することができ、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができるマイクロ流路チップを提供することができる。
以下、実施形態を通じて本開示を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、図面は特許請求の範囲にかかる発明を模式的に示すものであり、各部の幅、厚さ等の寸法は現実のものとは異なり、これらの比率も現実のものとは異なる。
本開示の第一実施形態に係るマイクロ流路チップについて説明する。なお、以下の説明では、マイクロ流路チップの基板側を「下」、マイクロ流路チップの基板側と反対側(蓋材側)を「上」として説明する場合がある。
本発明者らは、鋭意検討の結果、マイクロ流路チップにおいて樹脂材料を加熱して流動させることによって流路部の蓋となる上蓋部を形成することで、接着剤を用いずに隔壁部上に上蓋を設けることが可能となることを見出した。また同様に、樹脂材料の流動によって上蓋部に気泡を除去可能な構成をもうけることが可能となることを見出した。これにより、本発明者らは、マイクロ流路内に含まれる気泡を効率良く取り除くことができ、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができるマイクロ流路チップ及びその製造方法を発明するに至った。
以下、図面を参照して本開示の各実施形態の各態様について説明する。
以下、図面を参照して本開示の各実施形態の各態様について説明する。
1.第一実施形態
(1.1)マイクロ流路チップの基本構成
図1は、本開示の第一実施形態(以下、「本実施形態」という)に係るマイクロ流路チップ1の一構成例を説明するための概略図である。具体的には、図1(a)は本実施形態のマイクロ流路チップ1の平面概略図である。また、図1(b)は、図1(a)に示すマイクロ流路チップ1の上蓋層12に設けられた気泡除去部7を拡大して示す平面概略図である。また、図1(c)は、図1(b)に示すA-A線でマイクロ流路チップ1の気泡除去部7を含む領域を切断した断面を示す概略断面図である。
(1.1)マイクロ流路チップの基本構成
図1は、本開示の第一実施形態(以下、「本実施形態」という)に係るマイクロ流路チップ1の一構成例を説明するための概略図である。具体的には、図1(a)は本実施形態のマイクロ流路チップ1の平面概略図である。また、図1(b)は、図1(a)に示すマイクロ流路チップ1の上蓋層12に設けられた気泡除去部7を拡大して示す平面概略図である。また、図1(c)は、図1(b)に示すA-A線でマイクロ流路チップ1の気泡除去部7を含む領域を切断した断面を示す概略断面図である。
図1(a)に示すように、マイクロ流路チップ1は、流体(例えば液体)を導入するための入力部2と、入力部2から導入された流体が流れる流路部3と、流路部3から流体を排出するための出力部4とを備えている。マイクロ流路チップ1において、流路部3の上面は、上蓋層12に覆われており、入力部2および出力部4と、気泡除去部7とは、上蓋層12に設けられた貫通孔である。上蓋層12および気泡除去部7の詳細は後述する。
図1(a)では、透明性を有する上蓋層12を介して視認される流路部3を図示している。
図1(a)では、透明性を有する上蓋層12を介して視認される流路部3を図示している。
マイクロ流路チップ1において、入力部2及び出力部4は、少なくとも1つ以上設けられていればよく、それぞれ複数個設けられていてもよい。またマイクロ流路チップ1において、流路部3は、複数設けられてもよいし、入力部2から導入された流体の合流や分離が可能な設計であってもよい。さらに、気泡除去部7は、上蓋層12における流路部3と対向する領域であれば、いずれの位置に設けられていてもよい。マイクロ流路チップ1の構成や用途において、最も効果の高い部分に適宜配置されるものである。
ここで、マイクロ流路チップ1において、流路部3を構成する部材の詳細について説明する。図1(a)から図1(c)に示すように、マイクロ流路チップ1は、基板(基部の一例)10と、基板10上に流路を形成する隔壁層(隔壁部の一例)11と、隔壁層11の基板10とは反対側の面に形成され、流路部3の蓋となる上蓋層(上蓋部の一例)12と、を備えている。また、本実施形態において上蓋層12には、流路部3内に生じる気泡を除去する気泡除去部7が設けられている。詳しくは後述するが、本実施形態において気泡除去部7は、上蓋部を厚さ方向に貫通する貫通孔17を有している。
マイクロ流路チップ1において、入力部2から導入された流体が流れる流路部3は、基板10と隔壁層11と上蓋層12とに囲まれた領域である。流路部3は、基板10上に設けられた対向する隔壁層11によって画定され、基板10とは反対側を蓋材となる上蓋層12に覆われている。つまり、流路部3は、基板10、隔壁層11および上蓋層12で構成される空間である。上述のように、流路部3には、上蓋層12に設けられた入力部2(図1(a)参照)から流体が導入され、流路部3を流れた流体は出力部4から排出される。
マイクロ流路チップ1において、入力部2から導入された流体が流れる流路部3は、基板10と隔壁層11と上蓋層12とに囲まれた領域である。流路部3は、基板10上に設けられた対向する隔壁層11によって画定され、基板10とは反対側を蓋材となる上蓋層12に覆われている。つまり、流路部3は、基板10、隔壁層11および上蓋層12で構成される空間である。上述のように、流路部3には、上蓋層12に設けられた入力部2(図1(a)参照)から流体が導入され、流路部3を流れた流体は出力部4から排出される。
詳しくは後述するが、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、隔壁層11と上蓋層12との間には、粘着層が設けられていない。本実施形態において、隔壁層11と上蓋層12とは互いに溶着している。ここで、粘着層とは接着剤を含有する層であって、複数の部材同士を貼り合わせるために用いられるものである。マイクロ流路チップ1は、隔壁層11と上蓋層12との間に粘着層を設けずに溶着(接合)することにより、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
また、図1(c)に示すように、隔壁層11と上蓋層12とは別体である。ここで、別体とは、例えば隔壁層11と上蓋層12とが異なる樹脂材料で形成されていることを示す。この場合、上蓋層12を形成する樹脂材料としては、隔壁層11に対してガラス転移温度や露光感度が異なる等、適宜、上蓋及び気泡除去部としての貫通孔の形成に好適な性質を持つものを選択することができる。また、本開示はこれに限られず、隔壁層11と上蓋層12とが積層構造を有し、隔壁層11と上蓋層12との界面が形成されていることを以て別体としてもよい。この場合、隔壁層11と上蓋層12とは同じ樹脂材料で形成されていてもよい。
(1.1.1)基板
基板10は、マイクロ流路チップ1の基礎となる部材であり、基板10上に設けられた隔壁層11によって流路部3が構成される。つまり、基板10および隔壁層11は、マイクロ流路チップ1の本体部といえる。
基板10は、透光性材料又は非透光性材料のいずれかによって形成することができる。例えば、流路部3内の状態(流体の状態)を光によって検出、観察する場合は、該光に対して透明性に優れる材料を用いることができる。透光性材料としては、樹脂又はガラス等を用いることができる。基板10を形成する透光性材料に用いる樹脂としては、マイクロ流路チップ1の本体部の形成に適しているという観点から、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
基板10は、マイクロ流路チップ1の基礎となる部材であり、基板10上に設けられた隔壁層11によって流路部3が構成される。つまり、基板10および隔壁層11は、マイクロ流路チップ1の本体部といえる。
基板10は、透光性材料又は非透光性材料のいずれかによって形成することができる。例えば、流路部3内の状態(流体の状態)を光によって検出、観察する場合は、該光に対して透明性に優れる材料を用いることができる。透光性材料としては、樹脂又はガラス等を用いることができる。基板10を形成する透光性材料に用いる樹脂としては、マイクロ流路チップ1の本体部の形成に適しているという観点から、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
また例えば、流路部3内の状態(流体の状態)を光によって検出、観察する必要がない場合は、非透光性材料を用いてもよい。非透光性材料としては、シリコンウエハ、銅板等が挙げられる。基板10の厚みは特に限定されないが、流路形成工程においてはある程度の剛性は必要となることから、10μm(0.01mm)以上10mm以下の範囲内が好ましい。
(1.1.2)隔壁層
隔壁層11は、基板上に設けられて、流路部3を形成する構成である。隔壁層11は、樹脂材料で形成することができる。隔壁層11の樹脂材料としては、例えば感光性樹脂を用いることができる。
隔壁層11は、基板上に設けられて、流路部3を形成する構成である。隔壁層11は、樹脂材料で形成することができる。隔壁層11の樹脂材料としては、例えば感光性樹脂を用いることができる。
隔壁層11を形成する感光性樹脂は、紫外光領域である190nm以上400nm以下の波長の光に対して感光性を有する感光性樹脂ことが望ましい。当該感光性樹脂としては、液体レジスト又はドライフィルムレジスト等のフォトレジストを用いることができる。これらの感光性樹脂は、感光領域が溶解するポジ型、又は感光領域が不溶化するネガ型のいずれであってもよい。マイクロ流路チップ1における隔壁層11の形成に適する感光性樹脂組成物としては、アルカリ可溶性高分子と付加重合性モノマーと光重合開始剤とを含むラジカルネガ型の感光性樹脂を挙げることができる。例えば、感光性樹脂材料としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、フェノールノボラック系樹脂、その他の感光性を有する樹脂を単独で又は複数混合あるいは共重合して用いることができる。
なお本実施形態においては、隔壁層11の樹脂材料は感光性樹脂に限定されるものではなく、例えば、シリコーンゴム(PDMS:ポリジメチルシロキサン)や、合成樹脂を用いてもよい。合成樹脂としては、例えばポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリプロピレン(PP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)などを用いることができる。隔壁層11の樹脂材料は、用途に応じて適宜選択されることが望ましい。
また、基板10上における隔壁層11の厚み、すなわち流路部3の高さは特に限定されないが、流路部3に導入される流体に含まれる解析・検査対象の物質(例えば、薬剤、菌、細胞、赤血球、白血球等)よりは流路部3の高さを大きくする必要がある。このため、隔壁層11の厚み、すなわち流路部3の高さ(深さ)は、1μm以上500μm以下の範囲内が好ましく、10μm以上100μmの範囲内がより好ましく、40μm以上60μm以下の範囲内がさらに好ましい。
また同様に、解析・検査対象の物質よりは流路部3の幅を大きくする必要から、隔壁層11によって画定される流路部3の幅は、1μm以上500μm以下の範囲内が好ましく、10μm以上100μmの範囲内がより好ましく、10μm以上30μm以下の範囲内がさらに好ましい。
また、隔壁層11により確定される流路長は、反応溶液の十分な反応時間を確保する必要から、10mm以上100mm以下の範囲内が好ましく、30mm以上70mm以下の範囲内がより好ましく、40mm以上60mm以下の範囲内がさらに好ましい。
なお本実施形態においては、隔壁層11の樹脂材料は感光性樹脂に限定されるものではなく、例えば、シリコーンゴム(PDMS:ポリジメチルシロキサン)や、合成樹脂を用いてもよい。合成樹脂としては、例えばポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリプロピレン(PP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)などを用いることができる。隔壁層11の樹脂材料は、用途に応じて適宜選択されることが望ましい。
また、基板10上における隔壁層11の厚み、すなわち流路部3の高さは特に限定されないが、流路部3に導入される流体に含まれる解析・検査対象の物質(例えば、薬剤、菌、細胞、赤血球、白血球等)よりは流路部3の高さを大きくする必要がある。このため、隔壁層11の厚み、すなわち流路部3の高さ(深さ)は、1μm以上500μm以下の範囲内が好ましく、10μm以上100μmの範囲内がより好ましく、40μm以上60μm以下の範囲内がさらに好ましい。
また同様に、解析・検査対象の物質よりは流路部3の幅を大きくする必要から、隔壁層11によって画定される流路部3の幅は、1μm以上500μm以下の範囲内が好ましく、10μm以上100μmの範囲内がより好ましく、10μm以上30μm以下の範囲内がさらに好ましい。
また、隔壁層11により確定される流路長は、反応溶液の十分な反応時間を確保する必要から、10mm以上100mm以下の範囲内が好ましく、30mm以上70mm以下の範囲内がより好ましく、40mm以上60mm以下の範囲内がさらに好ましい。
(1.1.3)上蓋層
本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、上蓋層12は、図1(a)から図1(c)に示すように流路部3を覆う蓋材である。上述のように、上蓋層12は、隔壁層11の基板10とは反対側の面に設けられており、隔壁層11を挟んで基板10と対向している。より具体的には、図1(c)に示すように、断面視において上蓋層12は側端部が隔壁層11に支持され、中央領域が基板10と対向しており、該中央領域が流路部3の上部を画定している。
本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、上蓋層12は、図1(a)から図1(c)に示すように流路部3を覆う蓋材である。上述のように、上蓋層12は、隔壁層11の基板10とは反対側の面に設けられており、隔壁層11を挟んで基板10と対向している。より具体的には、図1(c)に示すように、断面視において上蓋層12は側端部が隔壁層11に支持され、中央領域が基板10と対向しており、該中央領域が流路部3の上部を画定している。
上蓋層12は、透光性材料又は非透光性材料のいずれかによって形成することができる。例えば、流路内の状態を光によって検出、観察する場合は、該光に対して透明性に優れる材料を用いることができる。透光性材料としては、樹脂を用いることができる。上蓋層12を形成する樹脂としては、隔壁層11に用いられるのと同様の感光性樹脂を使用することができる。
また、上蓋層12に用いる感光性樹脂は、熱流動性を有する樹脂である。上蓋層12の材料として熱流動性を有する感光性樹脂を用いることで、マイクロ流路チップ1において、接着剤を用いることなく上蓋層12の形成が可能となる。これにより、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
また、上蓋層12に用いる感光性樹脂は、熱流動性を有する樹脂である。上蓋層12の材料として熱流動性を有する感光性樹脂を用いることで、マイクロ流路チップ1において、接着剤を用いることなく上蓋層12の形成が可能となる。これにより、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
また従来、接着剤による隔壁層と蓋部材との接合は、高度な装置や技術が必要となるため製造方法が複雑になっていた。本実施形態に係るマイクロ流路チップ1では、上蓋層12の材料として、熱流動性を有する樹脂(本例では、感光性樹脂)を用いることにより従来よりも容易に隔壁層11上に上蓋層12を形成することができる。このため、製造方法の複雑化を抑制することができる。
熱流動性を有する感光性樹脂は、メルトフローレート(MFR:Melt Flow Rate)が1g/10min以上100g/10min(230℃)以下の範囲内であることが好ましい。これにより、後述する製造工程において、上蓋層12を容易に形成することができる。
また、詳しくは後述するが、上蓋層12は、隔壁層11上に形成された熱流動性を有する感光性樹脂を、加熱処理により流路部3上に流動(リフロー)させることで形成される。このため、図2に示すように、上蓋層12は、凹部120を有している。つまり、上蓋層12は、凹形状の領域を有している。具体的には、上蓋層12は、隔壁層11側から流路部3の中央部分に向かって厚みが薄くなっており、これにより、断面視において凹部120が形成される。
また、上蓋層12は、隔壁層11に対してガラス転移温度(Tg)が低い樹脂材料で形成されてもよい。例えば、上蓋層12は、隔壁層11に対してガラス転移温度が30℃から50℃の範囲で低くなっていてもよい。この場合、隔壁層11を形成する感光性樹脂は、上蓋層12を形成する感光性樹脂に対してガラス転移温度(Tg)が高いので、樹脂の流動はほとんど起こらない。このため、上蓋層12の形成時において隔壁層11に流動が起きて、流路パターンが変化することを抑制することができる。
また、上蓋層12のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上300℃以下の範囲内であることが好ましい。
また、上蓋層12のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上300℃以下の範囲内であることが好ましい。
また、上蓋層12は、露光感度が5μC/cm2以上50μC/cm2以下の範囲内であることが好ましい。
また、上蓋層12は、露光感度が隔壁層11と露光感度が異なっていてもよい。例えば、上蓋層12は隔壁層11に対して5μC/cm2以上20μC/cm2以下の範囲で露光感度が高くてもよい。
また例えば、上蓋層12は隔壁層11に対して5μC/cm2以上20μC/cm2以下の範囲で露光感度が低くてもよい。
このように、上蓋層12は隔壁層11に対して露光感度が高い又は低い構成であってもよい。
また、上蓋層12は、露光感度が隔壁層11と露光感度が異なっていてもよい。例えば、上蓋層12は隔壁層11に対して5μC/cm2以上20μC/cm2以下の範囲で露光感度が高くてもよい。
また例えば、上蓋層12は隔壁層11に対して5μC/cm2以上20μC/cm2以下の範囲で露光感度が低くてもよい。
このように、上蓋層12は隔壁層11に対して露光感度が高い又は低い構成であってもよい。
上蓋層12が隔壁層11と露光感度が異なっている場合、隔壁層11を形成する感光性樹脂に合わせた露光量を設定することで、隔壁層11を形成する感光性樹脂の開口幅、すなわち流路パターンの幅が十分大きく形成される。このため、上蓋層12の形成時に上蓋層用の樹脂材料を流動させる際に、隔壁層用の樹脂に流動が起こった場合も、隔壁層11を形成する感光性樹脂の開口幅を十分大きく形成できるため、流路部3として十分な空間を維持することができる。
(1.1.3.1)気泡除去部
図1に戻って、図1(a)から図1(c)に示すように、上蓋層12には、流路部3内に生じる気泡を除去する気泡除去部7が設けられている。具体的には、気泡除去部7は上蓋層12の一部として形成されている。
これにより、マイクロ流路チップ1は、流路部3内に生じる気泡を除去することができ、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
ここで、流路部3内に生じる気泡とは、例えば入力部2から流路部3に反応溶液等の流体を注液(導入)する際における気泡の巻き込みや、導入された反応溶液の加熱による沸騰、流路部3内の反応溶液の流れの不均一による泡噛み、又は、反応溶液自身からの発泡等を示す。
図1に戻って、図1(a)から図1(c)に示すように、上蓋層12には、流路部3内に生じる気泡を除去する気泡除去部7が設けられている。具体的には、気泡除去部7は上蓋層12の一部として形成されている。
これにより、マイクロ流路チップ1は、流路部3内に生じる気泡を除去することができ、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
ここで、流路部3内に生じる気泡とは、例えば入力部2から流路部3に反応溶液等の流体を注液(導入)する際における気泡の巻き込みや、導入された反応溶液の加熱による沸騰、流路部3内の反応溶液の流れの不均一による泡噛み、又は、反応溶液自身からの発泡等を示す。
図1(a)に示すように、気泡除去部7は、上蓋層12における流路部と対向する領域に流路部3の進行方向に沿って設けられている。なお、図1(a)では理解を容易にするため、上蓋層12において気泡除去部7が設けられた領域を矩形枠で図示しているが、当該矩形枠は実際に設けられる部材ではない。上蓋層12において、気泡除去部7は1つ(1箇所)でもよいし、必要に応じて複数(複数箇所)設けられていてもよい。
また図1(b)、図1(c)に示すように、気泡除去部7は、上蓋層12を厚さ方向に貫通する貫通孔17を有している。図1(b)に示すように、貫通孔17は、流路部3の外部(外環境)と連通している。これにより、流路部3から確実に気泡を除去することができる。具体的には、流路部3内において、反応溶液等の流体が上部に貫通孔17が設けられた領域を通過すると、気泡を形成する気体が貫通孔17を通して流路部3の外環境(大気中)へ放出される。このため、効率的に流路部3から気泡を除去することができる。
また図1(b)、図1(c)に示すように、気泡除去部7は、上蓋層12を厚さ方向に貫通する貫通孔17を有している。図1(b)に示すように、貫通孔17は、流路部3の外部(外環境)と連通している。これにより、流路部3から確実に気泡を除去することができる。具体的には、流路部3内において、反応溶液等の流体が上部に貫通孔17が設けられた領域を通過すると、気泡を形成する気体が貫通孔17を通して流路部3の外環境(大気中)へ放出される。このため、効率的に流路部3から気泡を除去することができる。
また、気泡除去部7は、上蓋層12と同一材料である樹脂、すなわち熱流動性を有する感光性樹脂で形成されている。詳しくは後述するが、上蓋層12の材料として熱流動性を有する感光性樹脂が用いられることで、接着剤等で別部材を接合することなく、上蓋層12の形成時において、上蓋層12と同時に上蓋層12の一部として微小孔である貫通孔17を有する気泡除去部7を形成することができる。また上述のように、マイクロ流路チップ1において、気泡除去部7を有する上蓋層12は、粘着層を用いずに隔壁層11と溶着している。これにより、マイクロ流路チップ1は、流路部3内に生じる気泡を除去し、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
本例において、気泡除去部7は複数の貫通孔17で構成されている。複数の貫通孔17は流路部3の進行方向に沿って形成される。本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、気泡除去部7が有する貫通孔17は1つであってもよいし、複数であってもよい。
気泡除去部7が複数の貫通孔17を有する場合、一の貫通孔17から次の貫通孔17までの距離、すなわち図1(b)に示す複数の前記貫通孔17の配置間隔Sは、5μm以上1000μm以下の範囲内であることが好ましい。配置間隔Sを前述の範囲内とすることで、流路部3内に生じる気泡を、より効率的に除去することができる。
また、図1(c)に示すように、本実施形態において気泡除去部7が有する貫通孔17は、流路部3側の開口端17aの径と流路部3と反対側の開口端17bの径が同等であって、厚さ方向に上蓋層12を貫通する貫通孔17の幅は一定である。なお、本開示はこれに限られず、例えば貫通孔17は、流路部3側の開口端17aの径と流路部3と反対側の開口端17bの径とが異なっており、これに伴って厚さ方向の幅が変化する構成であってもよい。例えば、貫通孔17は開口端17aの方が開口端17bよりも径が大きく、開口端17aから開口端17bに向かって、厚さ方向の幅が細くなる形状(例えば、図1(c)に示す断面視で台形状)でもよい。また、貫通孔17は開口端17aの方が開口端17bよりも径が小さく、開口端17aから開口端17bに向かって、厚さ方向の幅が太くなる形状(例えば、図1(c)に示す断面視で逆台形状)でもよい。
また、貫通孔17は、開口端17aと開口端17bとで径が同等であり、且つ厚さ方向の中間部分(開口端17aと開口端17bとの間)において幅が変化する構成であってもよい。この場合、例えば貫通孔17は、図1(c)に示す断面視で中間部分の幅が細くなる(中間部分がくびれた)形状や、中間部分の幅が太くなる形状であってもよい。
また、貫通孔17は、開口端17aと開口端17bとで径が同等であり、且つ厚さ方向の中間部分(開口端17aと開口端17bとの間)において幅が変化する構成であってもよい。この場合、例えば貫通孔17は、図1(c)に示す断面視で中間部分の幅が細くなる(中間部分がくびれた)形状や、中間部分の幅が太くなる形状であってもよい。
また図1(b)に示すように、気泡除去部7を構成する貫通孔17は、開口端17a,17bの形状が平面視で円形であってもよい。円形としては、正円、楕円形、卵型、長円形等が含まれる。貫通孔17の開口端17a,17bの形状が円形状である場合、開口端17a,17bの直径(最大径)は、1μm以上100μm以下の範囲内であることが好ましい。これにより、流路部3からの液漏れを生じさせることなく気泡を除去することができる。
また、本開示において、平面視での貫通孔17の開口端17a,17bの形状は、円形に限られない。貫通孔17の開口端17a,17bの形状は、平面視で多角形状でもよい。このとき、多角形状は各辺が円弧で連結された角丸形状であってもよい。また、貫通孔17の開口端17a,17bの形状が多角形状である場合、開口端17a,17bの長手方向の幅は、1μm以上100μm以下の範囲内であることが好ましい。これにより、流路部3からの液漏れを生じさせることなく気泡を除去することができる。
貫通孔17の開口端17a,17bの形状及び径の大きさは、流路部3の幅や長さに応じて、上述の範囲内において適宜設計すればよい。
また、開口端17a,17bの形状は同一でなくてもよい。例えば、開口端17a,17bのうち一方の形状が円形であり、他方の形状が多角形状でもよい。
貫通孔17の開口端17a,17bの形状及び径の大きさは、流路部3の幅や長さに応じて、上述の範囲内において適宜設計すればよい。
また、開口端17a,17bの形状は同一でなくてもよい。例えば、開口端17a,17bのうち一方の形状が円形であり、他方の形状が多角形状でもよい。
このように、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、上蓋層12は、蓋材としての機能と、気泡除去部としての機能とを有している。
(1.1.4)流路の構成
図3は、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の流路部3の断面形状の一例を示す図である。本実施形態において、流路部3の断面形状が角丸であること(例えば、断面形状における流路部3の断面の各辺が円弧で連結されていること)が好ましい。これにより、流路部3における流体(例えば反応溶液)の送液速度や流量を安定させ、角部における検査対象物質の滞留を抑制することができる。
ここで、本実施形態における流路部3の断面形状について、図3を用いて説明する。図3は、角丸形状を有する流路部3の断面を模式的に示す拡大断面模式図である。図3に示すように、流路部3の断面形状が矩形である場合の仮想断面A1と角丸の断面形状を有する流路部3の断面とでは、面積が異なる。具体的には、図3に示すように流路部3の断面は四隅に円弧形状を有する。このため、流路部3の断面は、仮想角部A11,A12,A13,A14の面積の合計分だけ、仮想断面A1よりも面積が狭くなっている。
本実施形態において、角丸形状である流路部3の断面は、流路部3の断面の面積が、仮想断面A1の表面積の95%以上98%以下の範囲内であればよい。なお、図3では、流路部3の断面を角丸の四角形としたが、これに限られず、四角形以外(角丸の多角形)であってもよい。この場合も、流路部3の断面の面積が、角丸でない場合の仮想断面の95%以上98%以下の範囲内であればよい。
図3は、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の流路部3の断面形状の一例を示す図である。本実施形態において、流路部3の断面形状が角丸であること(例えば、断面形状における流路部3の断面の各辺が円弧で連結されていること)が好ましい。これにより、流路部3における流体(例えば反応溶液)の送液速度や流量を安定させ、角部における検査対象物質の滞留を抑制することができる。
ここで、本実施形態における流路部3の断面形状について、図3を用いて説明する。図3は、角丸形状を有する流路部3の断面を模式的に示す拡大断面模式図である。図3に示すように、流路部3の断面形状が矩形である場合の仮想断面A1と角丸の断面形状を有する流路部3の断面とでは、面積が異なる。具体的には、図3に示すように流路部3の断面は四隅に円弧形状を有する。このため、流路部3の断面は、仮想角部A11,A12,A13,A14の面積の合計分だけ、仮想断面A1よりも面積が狭くなっている。
本実施形態において、角丸形状である流路部3の断面は、流路部3の断面の面積が、仮想断面A1の表面積の95%以上98%以下の範囲内であればよい。なお、図3では、流路部3の断面を角丸の四角形としたが、これに限られず、四角形以外(角丸の多角形)であってもよい。この場合も、流路部3の断面の面積が、角丸でない場合の仮想断面の95%以上98%以下の範囲内であればよい。
また、流路部3は、十点表面粗さRzが0.001μm以上0.03μm以下の範囲内であることが好ましい。ここで、流路部3の十点表面粗さRzは、隔壁層11の流路部3側の側面及び基板10の流路部3側の表面の粗さを示す。
十点表面粗さRzを上述の範囲内において適宜設計することにより、反応溶液や検査対象物、所望する検査条件に応じた検査を行うことができる。例えば、流路部3の表面粗さRzが0.001μm以上0.01μm以下の範囲内である場合、流路部3に導入される流体(例えば反応溶液)や検査対象物と流路部3の内面との接触を低減して、送液性(例えば、送液速度や流量)を向上することができる。
十点表面粗さRzを上述の範囲内において適宜設計することにより、反応溶液や検査対象物、所望する検査条件に応じた検査を行うことができる。例えば、流路部3の表面粗さRzが0.001μm以上0.01μm以下の範囲内である場合、流路部3に導入される流体(例えば反応溶液)や検査対象物と流路部3の内面との接触を低減して、送液性(例えば、送液速度や流量)を向上することができる。
また、表面粗さRzが0.02μmより大きく0.03μm以下の範囲内である場合、送液速度を低減して流路部3に導入される流体や検査対象物質が流路部3内に留まる時間、すなわち反応時間を確保することができる。
また、表面粗さRzが0.01μmより大きく0.02μm以下の範囲内である場合、適度な送液速度と、流路部3内における流体や検査対象物質の反応時間の確保とを両立することができる。
また、流路部3の表面粗さは、マイクロ流路チップ1の製造時において、公知のエッチング法等により、適宜、制御することができる。
また、表面粗さRzが0.01μmより大きく0.02μm以下の範囲内である場合、適度な送液速度と、流路部3内における流体や検査対象物質の反応時間の確保とを両立することができる。
また、流路部3の表面粗さは、マイクロ流路チップ1の製造時において、公知のエッチング法等により、適宜、制御することができる。
(1.2)マイクロ流路チップの製造方法
次に、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法について説明する。図4は、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法の一例を示すフローチャートである。
ここでは、隔壁層11を感光性樹脂で形成する場合を例にとって説明する。
次に、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法について説明する。図4は、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法の一例を示すフローチャートである。
ここでは、隔壁層11を感光性樹脂で形成する場合を例にとって説明する。
(ステップS1)
本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法では、まず基板10上へ隔壁層11
を形成するための隔壁用樹脂(第一の感光性樹脂の一例)を塗工する工程を行う。これにより、基板10上に隔壁層11を形成するための樹脂層を設ける。本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法では、例えば基板10上に感光性樹脂による樹脂層(第一感光性樹脂層)を形成する。
本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法では、まず基板10上へ隔壁層11
を形成するための隔壁用樹脂(第一の感光性樹脂の一例)を塗工する工程を行う。これにより、基板10上に隔壁層11を形成するための樹脂層を設ける。本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法では、例えば基板10上に感光性樹脂による樹脂層(第一感光性樹脂層)を形成する。
基板10上への感光性樹脂層の形成方法は、例えば、基板10への感光性樹脂の塗工により行われる。塗工は、例えば、スピンコーティング、スプレーコーティング、バーコーティングなどにより行われることができ、中でも膜厚制御性の観点からはスピンコーティングが好ましい。基板10上には、例えば液状、固体状、ゲル状、フィルム状など種々の形態の感光性樹脂を塗工することができる。中でも、液体レジストによって感光性樹脂層を形成することが好ましい。液体レジストは、流路パターンの特性に応じて、適宜、ポジ型、ネガ型のいずれかのレジストを使用すればよい。
また、基板10上には、樹脂層(例えば、感光性樹脂層)の厚み、すなわち隔壁層11の厚みが1μm以上500μm以下の範囲内となるように樹脂(例えば、感光性樹脂)を塗工すればよい。
また、基板10上には、樹脂層(例えば、感光性樹脂層)の厚み、すなわち隔壁層11の厚みが1μm以上500μm以下の範囲内となるように樹脂(例えば、感光性樹脂)を塗工すればよい。
(ステップS2)
基板10上に隔壁用樹脂による第一感光性樹脂層を形成すると、次に、基板10上に塗工した樹脂(例えば、感光性樹脂)内に含まれる溶媒(溶剤)を除去する目的で加熱処理(プリベーク処理)する工程を行う。なお、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法において、プリベーク処理は必須の工程ではなく、適宜、樹脂の特性に合わせて最適な条件(温度、時間)で実施すればよい。例えば、基板10上の樹脂層が感光性樹脂である場合は、プリベーク温度、時間は感光性樹脂の特性に応じて、適宜、最適な条件で行う。基板と感光性樹脂との密着性を上げる目的で、必要に応じて、基板上にHMDS処理を行うことや薄膜の樹脂をコートしてもよい。
基板10上に隔壁用樹脂による第一感光性樹脂層を形成すると、次に、基板10上に塗工した樹脂(例えば、感光性樹脂)内に含まれる溶媒(溶剤)を除去する目的で加熱処理(プリベーク処理)する工程を行う。なお、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法において、プリベーク処理は必須の工程ではなく、適宜、樹脂の特性に合わせて最適な条件(温度、時間)で実施すればよい。例えば、基板10上の樹脂層が感光性樹脂である場合は、プリベーク温度、時間は感光性樹脂の特性に応じて、適宜、最適な条件で行う。基板と感光性樹脂との密着性を上げる目的で、必要に応じて、基板上にHMDS処理を行うことや薄膜の樹脂をコートしてもよい。
(ステップS3)
次に、第一感光性樹脂層上に上蓋層12を形成するための上蓋用樹脂(第二の感光性樹脂の一例)を塗工する工程を行う。これにより、プリベーク後の隔壁用樹脂上に上蓋層12を形成するための樹脂層を設ける。本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法では、例えば基板10上に熱流動性を有する感光性樹脂による樹脂層(第二感光性樹脂層)を形成する。基板10上への第二感光性樹脂層の形成方法は、上記ステップS1における第一感光性樹脂層の形成方法と同様の方法を用いることができる。
次に、第一感光性樹脂層上に上蓋層12を形成するための上蓋用樹脂(第二の感光性樹脂の一例)を塗工する工程を行う。これにより、プリベーク後の隔壁用樹脂上に上蓋層12を形成するための樹脂層を設ける。本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法では、例えば基板10上に熱流動性を有する感光性樹脂による樹脂層(第二感光性樹脂層)を形成する。基板10上への第二感光性樹脂層の形成方法は、上記ステップS1における第一感光性樹脂層の形成方法と同様の方法を用いることができる。
(ステップS4)
次に、隔壁用樹脂による第一感光性樹脂層上に上蓋用樹脂による第二感光性樹脂層を形成すると、次に、第一感光性樹脂層上に塗工した上蓋用樹脂内に含まれる溶媒(溶剤)を除去する目的で加熱処理(プリベーク処理)する工程を行う。本工程におけるプリベーク処理は必須の工程ではなく、上記ステップS2のプリベーク処理と同様に、適宜、樹脂の特性に合わせて最適な条件(温度、時間)で実施すればよい。また、第一感光性樹脂層と第二感光性樹脂層との密着性を上げる目的で、必要に応じて、基板上にHMDS処理を行うことや薄膜の樹脂をコートしてもよい。これにより、基板10上に2層の感光性樹脂層が形成される。
次に、隔壁用樹脂による第一感光性樹脂層上に上蓋用樹脂による第二感光性樹脂層を形成すると、次に、第一感光性樹脂層上に塗工した上蓋用樹脂内に含まれる溶媒(溶剤)を除去する目的で加熱処理(プリベーク処理)する工程を行う。本工程におけるプリベーク処理は必須の工程ではなく、上記ステップS2のプリベーク処理と同様に、適宜、樹脂の特性に合わせて最適な条件(温度、時間)で実施すればよい。また、第一感光性樹脂層と第二感光性樹脂層との密着性を上げる目的で、必要に応じて、基板上にHMDS処理を行うことや薄膜の樹脂をコートしてもよい。これにより、基板10上に2層の感光性樹脂層が形成される。
上記ステップS1からステップS4に示すように、隔壁層11、上蓋層12を形成するための2層の感光性樹脂層(第一感光性樹脂層、第二感光性樹脂層)は、接着剤を用いることなく溶着されている。つまり、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、隔壁層11と上蓋層12とは互いに溶着している。つまり、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、隔壁層11と上蓋層12とは中間部材(例えば、接着剤)を用いずに接合させることができる。これにより、接着剤成分の流路部3への流出を防ぐとともに、接着剤の膜厚不均一に起因した接合不良も防ぐことができる。
なお、本実施形態では感光性樹脂を2層としているが、これに限定されることなく、3層以上であってもよい。
なお、本実施形態では感光性樹脂を2層としているが、これに限定されることなく、3層以上であってもよい。
(ステップS5)
次に、基板10上に塗工した樹脂(例えば第一感光性樹脂層、第二感光性樹脂層)を露光する工程を行う。具体的には、基板10上に塗工した感光性樹脂には、露光により流路パターンが描画される。露光は、例えば、紫外線を光源とした露光装置、レーザー描画装置により行うことができる。中でも、紫外線を光源としたプロキシミティ露光やコンタクト露光装置を用いた露光が好ましい。プロキシミティ露光装置の場合、マイクロ流路チップ1における流路パターン配列を有するフォトマスクを介して露光が行われる。フォトマスクはクロム及び酸化クロムの二層構造を遮光膜とするフォトマスクなどを使用すればよい。
次に、基板10上に塗工した樹脂(例えば第一感光性樹脂層、第二感光性樹脂層)を露光する工程を行う。具体的には、基板10上に塗工した感光性樹脂には、露光により流路パターンが描画される。露光は、例えば、紫外線を光源とした露光装置、レーザー描画装置により行うことができる。中でも、紫外線を光源としたプロキシミティ露光やコンタクト露光装置を用いた露光が好ましい。プロキシミティ露光装置の場合、マイクロ流路チップ1における流路パターン配列を有するフォトマスクを介して露光が行われる。フォトマスクはクロム及び酸化クロムの二層構造を遮光膜とするフォトマスクなどを使用すればよい。
基板10上に塗工された感光性樹脂(第一感光性樹脂層、第二感光性樹脂層)がポジ型レジストの場合、露光領域が溶解して流路部3となり、未露光領域に残存する感光性樹脂が隔壁層11、上蓋層12となる。また、基板10上に塗工された感光性樹脂がネガ型レジストの場合、露光領域に残存する感光性樹脂が隔壁層11、上蓋層12となり、未露光領域が溶解して流路部3となる。このように、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法では、フォトリソグラフィを用いて基板10上に流路部3を構成する隔壁層11を形成することができる。
なお、基板10上における樹脂層の形成に化学増幅型レジストなどを用いる場合には、露光により発生した酸の触媒反応を促すために、露光後にさらに加熱処理(ポストエクスポージャーベーク:PEB)を行うとよい。
(ステップS6)
次に、露光した感光性樹脂に対して現像を行い、流路パターンを形成する工程を行う。
現像は、例えば、スプレー、ディップ、パドル形式などの現像装置にて感光性樹脂と現像液の反応により行われる。現像液は、例えば炭酸ナトリウム水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化カリウム、有機溶剤などを用いることができる。現像液は感光性樹脂の特性に応じた最適なものを適宜使用すればよく、これらに限定されるものではない。また、濃度や現像処理時間は、感光性樹脂の特性に合わせて適宜最適な条件に調整することができる。
次に、露光した感光性樹脂に対して現像を行い、流路パターンを形成する工程を行う。
現像は、例えば、スプレー、ディップ、パドル形式などの現像装置にて感光性樹脂と現像液の反応により行われる。現像液は、例えば炭酸ナトリウム水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化カリウム、有機溶剤などを用いることができる。現像液は感光性樹脂の特性に応じた最適なものを適宜使用すればよく、これらに限定されるものではない。また、濃度や現像処理時間は、感光性樹脂の特性に合わせて適宜最適な条件に調整することができる。
(ステップS7)
次に、洗浄により基板10上の樹脂層(感光性樹脂層)から現像に用いた現像液を完全に除去する工程を行う。洗浄は、例えば、スプレー、シャワー、浸漬形式などの洗浄装置によって行うことができる。洗浄水としては、例えば純水、イソプロピルアルコールなどから、現像処理に用いた現像液を除去するために最適な洗浄水を適宜使用すればよい。洗浄後はスピンドライヤ、IPAベーパドライヤ、自然乾燥などにより乾燥を行う。
この段階においても、隔壁層11上には、上蓋用樹脂による第二感光性樹脂層が残存している。
次に、洗浄により基板10上の樹脂層(感光性樹脂層)から現像に用いた現像液を完全に除去する工程を行う。洗浄は、例えば、スプレー、シャワー、浸漬形式などの洗浄装置によって行うことができる。洗浄水としては、例えば純水、イソプロピルアルコールなどから、現像処理に用いた現像液を除去するために最適な洗浄水を適宜使用すればよい。洗浄後はスピンドライヤ、IPAベーパドライヤ、自然乾燥などにより乾燥を行う。
この段階においても、隔壁層11上には、上蓋用樹脂による第二感光性樹脂層が残存している。
(ステップS8)
次に、流路パターン、すなわち流路部3を形成する隔壁層11および第二感光性樹脂層に対して加熱処理(ポストベーク)する工程を行う。このポストベーク処理により、現像や洗浄時の残留水分を除去する。また、このポストベーク処理により、流路部3の蓋となり、流路部3の上部を画定する上蓋層12および及び流路部3内に生じる気泡を除去する気泡除去部7が形成される。具体的には、このポストベーク処理により流動性を有する感光性樹脂である上蓋用樹脂の流動(リフロー)を促し、流路部3の上蓋層12及び気泡除去部7を構成する貫通孔17を形成できる。ポストベークの温度、時間は上蓋用樹脂の特性に合わせて最適な条件で実施する。なお、図1に示すように、上蓋層12は流路部3を覆う蓋材であって流路部3上に形成される。入力部2及び出力部4は、上蓋層12に覆われずに開口している。
また、ポストベーク処理は、例えば、ホットプレート、オーブン、などを用いて行われる。上記ステップS7の洗浄工程での乾燥が不十分な場合、現像液や洗浄時の水分が隔壁層11に残留している場合がある。また、プリベーク処理において除去されなかった溶剤も隔壁層11に残留している場合がある。ポストベーク処理を行うことで、それらを除去することができる。
次に、流路パターン、すなわち流路部3を形成する隔壁層11および第二感光性樹脂層に対して加熱処理(ポストベーク)する工程を行う。このポストベーク処理により、現像や洗浄時の残留水分を除去する。また、このポストベーク処理により、流路部3の蓋となり、流路部3の上部を画定する上蓋層12および及び流路部3内に生じる気泡を除去する気泡除去部7が形成される。具体的には、このポストベーク処理により流動性を有する感光性樹脂である上蓋用樹脂の流動(リフロー)を促し、流路部3の上蓋層12及び気泡除去部7を構成する貫通孔17を形成できる。ポストベークの温度、時間は上蓋用樹脂の特性に合わせて最適な条件で実施する。なお、図1に示すように、上蓋層12は流路部3を覆う蓋材であって流路部3上に形成される。入力部2及び出力部4は、上蓋層12に覆われずに開口している。
また、ポストベーク処理は、例えば、ホットプレート、オーブン、などを用いて行われる。上記ステップS7の洗浄工程での乾燥が不十分な場合、現像液や洗浄時の水分が隔壁層11に残留している場合がある。また、プリベーク処理において除去されなかった溶剤も隔壁層11に残留している場合がある。ポストベーク処理を行うことで、それらを除去することができる。
以上説明したように、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法は、基板10上に、隔壁用樹脂を塗工する工程(上記ステップS1)と、塗工した隔壁用樹脂の上に、上蓋用樹脂を塗工する工程(上記ステップS3)と、隔壁用樹脂及び上蓋用樹脂を露光する工程(上記ステップS5)と、露光した隔壁用樹脂及び上蓋用樹脂を現像及び洗浄し、基板10上において流路部3を画定する隔壁層11を形成する工程(上記ステップS6及びステップS7)と、隔壁層11上の上蓋用樹脂を加熱処理して該上蓋用樹脂を流動させることにより、流路部3の上蓋層12を形成し且つ上蓋層12に流路部3に生じる気泡を除去する気泡除去部7として貫通孔17を設ける工程(上記ステップS8)と、を含んでいる。
これにより、接着剤を用いることなく隔壁層11と上蓋層12とを溶着することができ、接着剤成分の流路部3内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
これにより、接着剤を用いることなく隔壁層11と上蓋層12とを溶着することができ、接着剤成分の流路部3内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
(1.3)隔壁層及び上蓋層の製造工程の詳細
本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法においては、隔壁層11を形成するための隔壁用樹脂、および上蓋層12を形成するための上蓋用樹脂の物性に応じて各製造工程を調整する。以下、具体的な例を挙げて説明する。
(1.3.1)ガラス転移温度が異なる樹脂を用いた隔壁層及び上蓋層の形成
隔壁用樹脂と上蓋用樹脂とでガラス転移温度の異なる場合における、隔壁層11及び上蓋層12の形成について、図5を用いて説明する。図5(a)は、基板40上に形成された第一感光性樹脂層41及び第二感光性樹脂層42を示す断面模式図であり、図5(b)は、基板40上の流路パターンを示す断面模式図であり、図5(c)は本例によるマイクロ流路チップ400の概略構成を示す断面模式図である。
本例では、上蓋用樹脂のガラス転移温度(Tg)が隔壁用樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも低い(上蓋用樹脂のガラス転移温度(Tg)<隔壁用樹脂のガラス転移温度(Tg))という条件によるマイクロ流路チップの製造方法について説明する。
本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法においては、隔壁層11を形成するための隔壁用樹脂、および上蓋層12を形成するための上蓋用樹脂の物性に応じて各製造工程を調整する。以下、具体的な例を挙げて説明する。
(1.3.1)ガラス転移温度が異なる樹脂を用いた隔壁層及び上蓋層の形成
隔壁用樹脂と上蓋用樹脂とでガラス転移温度の異なる場合における、隔壁層11及び上蓋層12の形成について、図5を用いて説明する。図5(a)は、基板40上に形成された第一感光性樹脂層41及び第二感光性樹脂層42を示す断面模式図であり、図5(b)は、基板40上の流路パターンを示す断面模式図であり、図5(c)は本例によるマイクロ流路チップ400の概略構成を示す断面模式図である。
本例では、上蓋用樹脂のガラス転移温度(Tg)が隔壁用樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも低い(上蓋用樹脂のガラス転移温度(Tg)<隔壁用樹脂のガラス転移温度(Tg))という条件によるマイクロ流路チップの製造方法について説明する。
図5(a)に示すように、本例では、上記ステップS1の塗工工程において、基板40上へ隔壁用感光性樹脂を塗布して第一感光性樹脂層41を形成する。隔壁用感光性樹脂は、例えばスピンコーティングにより所望の厚さで基板40上へ塗布する。また、本例では、上記ステップS3において第一感光性樹脂層41の上に上蓋用感光性樹脂を塗布して第二感光性樹脂層42を形成する。本例では、第二感光性樹脂層42を形成する上蓋用感光性樹脂としては、第一感光性樹脂層41を形成する隔壁用感光性樹脂よりもガラス転移温度(Tg)が低い樹脂を用いる。第二感光性樹脂層42は、第一感光性樹脂層41と同様にスピンコーティングにより所望の厚さで第一感光性樹脂層41上へ塗布する。
また本例では、上記ステップS5の露光工程において、基板40上に塗工した第一感光性樹脂層41及び第二感光性樹脂層42に対して、フォトマスクを介して流路パターンを描画する。例えば、本例では、紫外光領域である350nm以上400nm以下の波長の光を光源としたプロキシミティ露光装置を用いる。次いで、上記ステップS6の現像工程において、露光した第一感光性樹脂層41及び第二感光性樹脂層42に対して現像を行い、流路パターン43形成する。ここでは例えば、スプレー方式にて炭酸ナトリウム水溶液を現像液として用いる。次いで、上記ステップS7において現像した第一感光性樹脂層41及び第二感光性樹脂層42を洗浄により現像液を完全に除去する。ここでは、例えば、超純水を用いてスプレー方式にて洗浄する。これにより、図5(b)に示すように隔壁層41aが形成され、流路パターン43が画定される。
次いで、流路パターン43を形成したマイクロ流路チップに対し、ステップS8の加熱処理(ポストベーク)を行う。本例では、ホットプレートを用いて第二感光性樹脂層42のガラス転移温度(Tg)付近の温度にて加熱処理行う。本例では、加熱処理によって第二感光性樹脂層42、すなわち上蓋用樹脂の流動(リフロー)が促され、対向する左右の隔壁層11上から流路パターン43の中央に向かって上蓋用樹脂が流動する。隔壁層41a上から流動した上蓋用樹脂は、基板40と反対側、すなわち流路パターン43の上側において接合し、上蓋層42aが形成される。これにより、図5(c)に示すように、流路パターン43の上部が上蓋層42aで覆われ、流路部43aが形成されてマイクロ流路チップ400が作製される。
本例のように、隔壁層41aを形成する第一感光性樹脂層41、すなわち隔壁用樹脂のガラス転移温度(Tg)が第二感光性樹脂層42、すなわち上蓋用樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも高い場合には、加熱処理によって上蓋用樹脂の流動(リフロー)が起きる際にも、隔壁用樹脂には流動がほぼ起きない。したがって、「上蓋用樹脂のガラス転移温度(Tg)<隔壁用樹脂のガラス転移温度(Tg)」という条件を満たすことで、上蓋用樹脂の流動による流路パターンの変形を生じさせることなく、上蓋用樹脂を流動させて上蓋層42aを容易に形成することができる。
(1.3.2)露光感度が異なる樹脂を用いた隔壁層及び上蓋層の形成(1)
隔壁用樹脂と上蓋用樹脂とで露光感度の異なる場合における、隔壁層11及び上蓋層12の形成について、図6を用いて説明する。図6(a)は、基板50上に形成された第一感光性樹脂層51及び第二感光性樹脂層52を示す断面模式図であり、図6(b)は、基板50上の流路パターンを示す断面模式図であり、図6(c)は本例によるマイクロ流路チップ500の概略構成を示す断面模式図である。
本例では、上蓋用樹脂の露光感度(C/cm2)が隔壁用樹脂の露光感度(C/cm2)よりも低い(上蓋用樹脂の露光感度(C/cm2)<隔壁用樹脂の露光感度(C/cm2))という条件によるマイクロ流路チップの製造方法について説明する。
隔壁用樹脂と上蓋用樹脂とで露光感度の異なる場合における、隔壁層11及び上蓋層12の形成について、図6を用いて説明する。図6(a)は、基板50上に形成された第一感光性樹脂層51及び第二感光性樹脂層52を示す断面模式図であり、図6(b)は、基板50上の流路パターンを示す断面模式図であり、図6(c)は本例によるマイクロ流路チップ500の概略構成を示す断面模式図である。
本例では、上蓋用樹脂の露光感度(C/cm2)が隔壁用樹脂の露光感度(C/cm2)よりも低い(上蓋用樹脂の露光感度(C/cm2)<隔壁用樹脂の露光感度(C/cm2))という条件によるマイクロ流路チップの製造方法について説明する。
図6(a)に示すように、本例では、上記ステップS1の塗工工程において、基板50上へ隔壁用感光性樹脂を塗布して第一感光性樹脂層51を形成する。隔壁用感光性樹脂は、例えばスピンコーティングにより所望の厚さで基板50上へ塗布する。第一感光性樹脂層51、すなわち隔壁用樹脂はポジ型のレジストである。また、本例では、上記ステップS3において第一感光性樹脂層51の上に上蓋用感光性樹脂を塗布して第二感光性樹脂層52を形成する。第二感光性樹脂層52、すなわち上蓋用樹脂は、ポジ型のレジストである。つまり、本例では、隔壁用感光性樹脂及び上蓋用感光性樹脂として、ポジ型のレジストを用いる。
本例では、第二感光性樹脂層52を形成する上蓋用感光性樹脂としては、第一感光性樹脂層51を形成する隔壁用感光性樹脂よりも露光感度(C/cm2)が低い樹脂を用いる。第二感光性樹脂層52は、第一感光性樹脂層51と同様にスピンコーティングにより所望の厚さで第一感光性樹脂層51上へ塗布する。例えば、第一感光性樹脂層51を形成する隔壁用樹脂として化学増幅型レジスト、第二感光性樹脂層52を形成する上蓋用樹脂として非化学増幅型レジストを用いてもよい。
本例では、第二感光性樹脂層52を形成する上蓋用感光性樹脂としては、第一感光性樹脂層51を形成する隔壁用感光性樹脂よりも露光感度(C/cm2)が低い樹脂を用いる。第二感光性樹脂層52は、第一感光性樹脂層51と同様にスピンコーティングにより所望の厚さで第一感光性樹脂層51上へ塗布する。例えば、第一感光性樹脂層51を形成する隔壁用樹脂として化学増幅型レジスト、第二感光性樹脂層52を形成する上蓋用樹脂として非化学増幅型レジストを用いてもよい。
また本例では、上記ステップS5の露光工程において、基板50上に塗工した第一感光性樹脂層51及び第二感光性樹脂層52に対して、フォトマスクを介して流路パターンを描画する。例えば、本例では、紫外光領域である350nm以上400nm以下の波長の光を光源としたプロキシミティ露光装置を用いる。ここで、露光量は第一感光性樹脂層51に対して最適な露光量を設定する。上述のように、本例では第二感光性樹脂層52を形成する上蓋用樹脂は、第一感光性樹脂層51を形成する隔壁用樹脂に対して露光感度が低い。このため、第二感光性樹脂層52において、第一感光性樹脂層51に合わせた露光量では反応が十分ではないが、パターン解像において問題は無い。
次いで、上記ステップS6の現像工程において、露光した第一感光性樹脂層51及び第二感光性樹脂層52に対して現像を行い、流路パターン53を形成する。ここでは例えば、スプレー方式にて炭酸ナトリウム水溶液を現像液として用いる。次いで、上記ステップS7において現像した第一感光性樹脂層51及び第二感光性樹脂層52を洗浄により現像液を完全に除去する。ここでは、例えば、超純水を用いてスプレー方式にて洗浄する。これにより、図6(b)に示すように隔壁層51aが形成され、流路パターン53が画定される。本例では、上述のように第二感光性樹脂層52は第一感光性樹脂層51に比べて露光感度が低い樹脂で形成されている。このため図6に示すように、第二感光性樹脂層52における露光範囲の開口幅は、第一感光性樹脂層51の開口幅よりも小さくなっている。
次いで、上記ステップS6の現像工程において、露光した第一感光性樹脂層51及び第二感光性樹脂層52に対して現像を行い、流路パターン53を形成する。ここでは例えば、スプレー方式にて炭酸ナトリウム水溶液を現像液として用いる。次いで、上記ステップS7において現像した第一感光性樹脂層51及び第二感光性樹脂層52を洗浄により現像液を完全に除去する。ここでは、例えば、超純水を用いてスプレー方式にて洗浄する。これにより、図6(b)に示すように隔壁層51aが形成され、流路パターン53が画定される。本例では、上述のように第二感光性樹脂層52は第一感光性樹脂層51に比べて露光感度が低い樹脂で形成されている。このため図6に示すように、第二感光性樹脂層52における露光範囲の開口幅は、第一感光性樹脂層51の開口幅よりも小さくなっている。
次いで、流路パターン53を形成したマイクロ流路チップに対し、ステップS8の加熱処理(ポストベーク)を行う。本例では、ホットプレートを用いて第一感光性樹脂層51及び第二感光性樹脂層52のガラス転移温度(Tg)付近の温度にて加熱処理行う。本例では、加熱処理によって第二感光性樹脂層52、すなわち上蓋用樹脂の流動(リフロー)が促され、左右の隔壁層51a上から流路パターン53の中央に向かって上蓋用樹脂が流動する。隔壁層51a上から流動した上蓋用樹脂は、基板50と反対側、すなわち流路パターン53の上側において接合し、上蓋層52aが形成される。これにより、図6(c)に示すように、流路パターン53の上部が上蓋層52aで覆われ、流路部53aが形成されてマイクロ流路チップ500が作製される。
本例では、隔壁層51aを形成する第一感光性樹脂層51、すなわち隔壁用樹脂のガラス転移温度(Tg)は、上蓋層52aを形成する第二感光性樹脂層52、すなわち上蓋用樹脂のガラス転移温度(Tg)と同等である。このため、上蓋用樹脂が流動(リフロー)する際に隔壁用樹脂も流動する。ただし、本例では、第一感光性樹脂層51および第二感光性樹脂層52が、ポジ型のレジストで形成され、且つ第二感光性樹脂層52の露光感度が第一感光性樹脂層51よりも低い。このため、図6(b)に示すように第二感光性樹脂層52の開口幅は第一感光性樹脂層51の開口幅に比べて小さく形成され、第一感光性樹脂層51の開口幅は第二感光性樹脂層52の開口幅に比べて十分に大きく形成されている。
したがって、第二感光性樹脂層52と同程度の流動が第一感光性樹脂層51に起きることで流路パターン53の開口幅よりも流路部53aの幅が減少するものの、図6(c)に示すように流路部53aの幅は、十分に確保されることとなる。
したがって、第二感光性樹脂層52と同程度の流動が第一感光性樹脂層51に起きることで流路パターン53の開口幅よりも流路部53aの幅が減少するものの、図6(c)に示すように流路部53aの幅は、十分に確保されることとなる。
したがって、第一感光性樹脂層51および第二感光性樹脂層52がポジ型のレジストで形成され、且つ「上蓋用樹脂の露光感度<隔壁用樹脂の露光感度」という条件を満たすことで、流路部の流路幅を十分に維持しつつ、上蓋用樹脂及び隔壁用樹脂を流動させて上蓋層52aを容易に形成することができる。
(1.3.3)露光感度が異なる樹脂を用いた隔壁層及び上蓋層の形成(2)
隔壁用樹脂と上蓋用樹脂とで露光感度の異なる場合における、隔壁層11及び上蓋層12の形成について、図7を用いて説明する。図7(a)は、基板60上に形成された第一感光性樹脂層61及び第二感光性樹脂層62を示す断面模式図であり、図7(b)は、基板60上の流路パターンを示す断面模式図であり、図7(c)は本例によるマイクロ流路チップ600の概略構成を示す断面模式図である。
本例では、上蓋用樹脂の露光感度(C/cm2)が隔壁用樹脂の露光感度(C/cm2)よりも高い(上蓋用樹脂の露光感度(C/cm2)>隔壁用樹脂の露光感度(C/cm2))という条件によるマイクロ流路チップの製造方法について説明する。
隔壁用樹脂と上蓋用樹脂とで露光感度の異なる場合における、隔壁層11及び上蓋層12の形成について、図7を用いて説明する。図7(a)は、基板60上に形成された第一感光性樹脂層61及び第二感光性樹脂層62を示す断面模式図であり、図7(b)は、基板60上の流路パターンを示す断面模式図であり、図7(c)は本例によるマイクロ流路チップ600の概略構成を示す断面模式図である。
本例では、上蓋用樹脂の露光感度(C/cm2)が隔壁用樹脂の露光感度(C/cm2)よりも高い(上蓋用樹脂の露光感度(C/cm2)>隔壁用樹脂の露光感度(C/cm2))という条件によるマイクロ流路チップの製造方法について説明する。
図7(a)に示すように、本例では、上記ステップS1の塗工工程において、基板60上へ隔壁用感光性樹脂を塗布して第一感光性樹脂層61を形成する。隔壁用感光性樹脂は、例えばスピンコーティングにより所望の厚さで基板60上へ塗布する。第一感光性樹脂層61、すなわち隔壁用樹脂はネガ型のレジストである。また、本例では、上記ステップS3において第一感光性樹脂層61の上に上蓋用感光性樹脂を塗布して第二感光性樹脂層62を形成する。第二感光性樹脂層62、すなわち上蓋用樹脂は、ネガ型のレジストである。つまり、本例では、隔壁用感光性樹脂及び上蓋用感光性樹脂として、ネガ型のレジストを用いる。
本例では、第二感光性樹脂層52を形成する上蓋用感光性樹脂としては、第一感光性樹脂層51を形成する隔壁用感光性樹脂よりも露光感度(C/cm2)が低い樹脂を用いる。第二感光性樹脂層52は、第一感光性樹脂層51と同様にスピンコーティングにより所望の厚さで第一感光性樹脂層51上へ塗布する。例えば、第一感光性樹脂層61を形成する隔壁用樹脂として非化学増幅型レジスト、第二感光性樹脂層62を形成する上蓋用樹脂として化学増幅型レジストを用いてもよい。
本例では、第二感光性樹脂層52を形成する上蓋用感光性樹脂としては、第一感光性樹脂層51を形成する隔壁用感光性樹脂よりも露光感度(C/cm2)が低い樹脂を用いる。第二感光性樹脂層52は、第一感光性樹脂層51と同様にスピンコーティングにより所望の厚さで第一感光性樹脂層51上へ塗布する。例えば、第一感光性樹脂層61を形成する隔壁用樹脂として非化学増幅型レジスト、第二感光性樹脂層62を形成する上蓋用樹脂として化学増幅型レジストを用いてもよい。
また本例では、上記ステップS5の露光工程において、基板60上に塗工した第一感光性樹脂層61及び第二感光性樹脂層62に対して、フォトマスクを介して流路パターンを描画する。例えば、本例では、紫外光領域である350nm以上400nm以下の波長の光を光源としたプロキシミティ露光装置を用いる。ここで、露光量は第一感光性樹脂層61に対して最適な露光量を設定する。上述のように、本例では第二感光性樹脂層62を形成する上蓋用樹脂は、第一感光性樹脂層61を形成する隔壁用樹脂に対して露光感度が高い。このため、第二感光性樹脂層62において、第一感光性樹脂層61に合わせた露光量は必要十分である。
次いで、上記ステップS6の現像工程において、露光した第一感光性樹脂層61及び第二感光性樹脂層62に対して現像を行い、流路パターン63を形成する。ここでは例えば、スプレー方式にて炭酸ナトリウム水溶液を現像液として用いる。次いで、上記ステップS7において現像した第一感光性樹脂層61及び第二感光性樹脂層62を洗浄により現像液を完全に除去する。ここでは、例えば、超純水を用いてスプレー方式にて洗浄する。これにより、図7(b)に示すように隔壁層61aが形成され、流路パターン63が画定される。本例では、第二感光性樹脂層62は、第一感光性樹脂層61に比べて露光感度が高い。このため図7(b)に示すように、露光後において、露光部のパターンとして残存する第二感光性樹脂層62の範囲は、第一感光性樹脂層61に対して広くなる。結果として、図6に示すように、第二感光性樹脂層62における露光範囲の開口幅は、第一感光性樹脂層61の開口幅よりも小さくなる。
次いで、上記ステップS6の現像工程において、露光した第一感光性樹脂層61及び第二感光性樹脂層62に対して現像を行い、流路パターン63を形成する。ここでは例えば、スプレー方式にて炭酸ナトリウム水溶液を現像液として用いる。次いで、上記ステップS7において現像した第一感光性樹脂層61及び第二感光性樹脂層62を洗浄により現像液を完全に除去する。ここでは、例えば、超純水を用いてスプレー方式にて洗浄する。これにより、図7(b)に示すように隔壁層61aが形成され、流路パターン63が画定される。本例では、第二感光性樹脂層62は、第一感光性樹脂層61に比べて露光感度が高い。このため図7(b)に示すように、露光後において、露光部のパターンとして残存する第二感光性樹脂層62の範囲は、第一感光性樹脂層61に対して広くなる。結果として、図6に示すように、第二感光性樹脂層62における露光範囲の開口幅は、第一感光性樹脂層61の開口幅よりも小さくなる。
次いで、流路パターン63を形成したマイクロ流路チップに対し、ステップS8の加熱処理(ポストベーク)を行う。本例では、ホットプレートを用いて第一感光性樹脂層61及び第二感光性樹脂層62のガラス転移温度(Tg)付近の温度にて加熱処理行う。本例では、加熱処理によって第二感光性樹脂層62、すなわち上蓋用樹脂の流動(リフロー)が促され、左右の隔壁層61a上から流路パターン63の中央に向かって上蓋用樹脂が流動する。隔壁層61a上から流動した上蓋用樹脂は、基板60と反対側、すなわち流路パターン63の上側において接合し、上蓋層62aが形成される。これにより、図7(c)に示すように、流路パターン63の上部が上蓋層62aで覆われ、流路部63aが形成されてマイクロ流路チップ600が作製される。
本例では、上述のマイクロ流路チップ500と同様に、マイクロ流路チップ600において、隔壁層61aを形成する第一感光性樹脂層61、すなわち隔壁用樹脂のガラス転移温度(Tg)は、上蓋層62aを形成する第二感光性樹脂層62、すなわち上蓋用樹脂のガラス転移温度(Tg)と同等である。このため、上蓋用樹脂が流動(リフロー)する際に隔壁用樹脂も流動する。本例では、第一感光性樹脂層61および第二感光性樹脂層62が、ネガ型のレジストで形成され、且つ第二感光性樹脂層62の露光感度が第一感光性樹脂層61よりも高い。このため、図6(b)に示すように第二感光性樹脂層62の開口幅は第一感光性樹脂層61の開口幅に比べて小さく形成され、第一感光性樹脂層51の開口幅は第二感光性樹脂層52の開口幅に比べて十分に大きく形成されている。
したがって、第二感光性樹脂層62と同程度の流動が第一感光性樹脂層61に起きることで流路パターン63の開口幅よりも流路部63aの幅が減少するものの、図7(c)に示すように流路部63aの幅は、十分に確保されることとなる。
したがって、第二感光性樹脂層62と同程度の流動が第一感光性樹脂層61に起きることで流路パターン63の開口幅よりも流路部63aの幅が減少するものの、図7(c)に示すように流路部63aの幅は、十分に確保されることとなる。
したがって、第一感光性樹脂層61および第二感光性樹脂層62がネガ型のレジストで形成され、且つ「上蓋用樹脂の露光感度>隔壁用樹脂の露光感度」という条件を満たすことで、流路部の流路幅を十分に維持しつつ、上蓋用樹脂及び隔壁用樹脂を流動させて上蓋層62aを容易に形成することができる。
以上、本実施形態に係るマイクロ流路チップにおいて、隔壁層および上蓋層を別体形成(複層構成)とする例を説明した。上述のように、本実施形態に係る製造方法によれば、マイクロ流路チップの流路部を覆う蓋材(上蓋層)を、接着剤などの中間層を用いることなく、既存のフォトリソグラフィ工程の範囲内で形成することができる。これにより、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
また、接着剤の膜厚不均一に起因した接合不良による品質低下も防ぐことができる。また、接着剤などの中間部材を用いて隔壁層と上蓋層とを接合する場合と比べて、製造方法を簡略化することができる。
また、接着剤の膜厚不均一に起因した接合不良による品質低下も防ぐことができる。また、接着剤などの中間部材を用いて隔壁層と上蓋層とを接合する場合と比べて、製造方法を簡略化することができる。
なお、本開示はこれに限られず、隔壁層および上蓋層を3層以上で構成してもよい。またこの場合、上蓋層を形成する第二感光性樹脂層を複層構成としてもよい。熱流動性を有する感光性樹脂は、上層であるほど、加熱処理によって樹脂の流動性が大きくなる性質である。このため、複層構成の第二感光性樹脂層によって上蓋層を形成する場合において、上層部分の方が下層部分よりも早く接合する。したがって、複層構成の第二感光性樹脂層による上蓋層は、上層であるほど開口幅が狭く、最上層又は最上層と近接する層において接合した構成となる。
(1.3.4)上蓋層における気泡除去部の形成
本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法においては、上蓋層12の形成時において、併せて気泡除去部7も形成される。以下、気泡除去部7の形成について図8及び図9を用いて説明する。
本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法においては、上蓋層12の形成時において、併せて気泡除去部7も形成される。以下、気泡除去部7の形成について図8及び図9を用いて説明する。
図8(a)は、上記ステップS8の加熱処理(ポストベーク)の実行前、すなわち上記ステップS7における現像液の洗浄後の流路パターン73aの平面模式図である。図8(b)は、図8(a)のD-D線で流路パターン73aを画定する基板70と隔壁層71、及び隔壁層71上の第二感光性樹脂層72aを切断した断面を示す概略断面図である。図8(c)は、図8(a)のE-E線で流路パターン73aを画定する基板70と隔壁層71、及び隔壁層71上の第二感光性樹脂層72aを切断した断面を示す概略断面図である。図8(b)、図8(c)に示すように、基板70で画定される流路パターン73aは、マイクロ流路チップにおいて流体が流れる流路部となる空間である。
図8(a)から図8(c)に示すように、ポストベーク前の流路パターン73aの上部には、後述する上蓋層72を形成するための第二感光性樹脂層72aが配置されている。より具体的には、基板70上には隔壁層71が形成され、その上に第二感光性樹脂層72aが残存している。
図8(a)から図8(c)に示すように、流路パターン73aの上部の第二感光性樹脂層72aには、気泡除去部を構成する貫通孔を形成するための領域74aが形成されている。領域74aは、例えば流路パターン描画時の露光パターンの制御により形成される。領域74aにおける開口幅L1は、領域74a以外の開口幅L2よりも予め広く形成されている。開口幅L1,L2は、隔壁層71を形成する隔壁層用の樹脂と第二感光性樹脂層72aを形成する上蓋用の樹脂との特性の違い(ガラス転移温度の高低や露光感度の違い)や、流路パターンの描画に用いるフォトマスク(露光パターン)によって、適宜、調整することができる。
図8(a)から図8(c)に示すように、流路パターン73aの上部の第二感光性樹脂層72aには、気泡除去部を構成する貫通孔を形成するための領域74aが形成されている。領域74aは、例えば流路パターン描画時の露光パターンの制御により形成される。領域74aにおける開口幅L1は、領域74a以外の開口幅L2よりも予め広く形成されている。開口幅L1,L2は、隔壁層71を形成する隔壁層用の樹脂と第二感光性樹脂層72aを形成する上蓋用の樹脂との特性の違い(ガラス転移温度の高低や露光感度の違い)や、流路パターンの描画に用いるフォトマスク(露光パターン)によって、適宜、調整することができる。
図9(a)は、図8(a)から図8(c)に示す流路パターン73aに対してステップS8の加熱処理(ポストベーク)を実行して作製されたマイクロ流路チップ700の平面模式図である。また、図9(b)は図9(a)のD-D線でマイクロ流路チップ700を切断した断面模式図であり、図9(c)は、図9(a)のE-E線でマイクロ流路チップ700を切断した断面模式図である。
マイクロ流路チップ700において、図8(a)の領域74aに相当する箇所には、ポストベークによって、気泡除去部7が形成されている。より具体的には、ポストベークによって対向する左右の隔壁層71上において第二感光性樹脂層72aの流動が促され、図9(b)に示すように、流路部73の中心付近の上部で接合する。これにより、上蓋層72が形成される。
一方、予め広い開口幅L1が設けられた領域74a(図8(a)参照)では、第二感光性樹脂層72aが完全には接合せずに間隙が維持される。これにより図9(c)に示すように、貫通孔74が形成される。このようにして、上蓋層72には、2つの貫通孔74を有する気泡除去部7が形成される。本例では、上蓋層72における気泡除去部7の貫通孔74は、平面視で開口端が円形(より詳細には楕円形)に形成されている。開口端の形状は露光パターンの形状(フォトマスク)によって適宜、制御することができる。
一方、予め広い開口幅L1が設けられた領域74a(図8(a)参照)では、第二感光性樹脂層72aが完全には接合せずに間隙が維持される。これにより図9(c)に示すように、貫通孔74が形成される。このようにして、上蓋層72には、2つの貫通孔74を有する気泡除去部7が形成される。本例では、上蓋層72における気泡除去部7の貫通孔74は、平面視で開口端が円形(より詳細には楕円形)に形成されている。開口端の形状は露光パターンの形状(フォトマスク)によって適宜、制御することができる。
このように、本実施形態において、予め流路パターン73aの上部における上蓋層用の樹脂層(第二感光性樹脂層72a)の開口幅を調整することにより、気泡除去部7を構成する貫通孔(本例では、貫通孔74)を形成することができる。つまり、上蓋層(本例では、上蓋層72)を形成する上記ステップS8の加熱処理時において、上蓋層と同時に、気泡除去部7を容易に形成することができる。すなわち、既存のフォトリソグラフィ工程の範囲内で、マイクロ流路チップ700の上蓋及び気泡除去のための複数の貫通孔を形成することができる。
このため、例えば上蓋層とは別部材で形成した気泡除去のための構成を、接着剤によって貼り合わせる場合に比べて製造方法を簡略化することができる。さらに、気泡除去部7の形成には接着剤が用いられない。このため、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
このため、例えば上蓋層とは別部材で形成した気泡除去のための構成を、接着剤によって貼り合わせる場合に比べて製造方法を簡略化することができる。さらに、気泡除去部7の形成には接着剤が用いられない。このため、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
本実施形態においてマイクロ流路チップ400,500,600,700は、マイクロ流路チップ1と同等の構成である。また、これらのマイクロ流路チップにおける基板40,50,60,70は基板10と同等であり、隔壁層41a,51a,61a,71は隔壁層11と同等であり、上蓋層42a,52a,62a,72は上蓋層12と同等であり、流路部43a,53a,63a,73は流路部3と同等である。
(1.4)第一実施形態の効果
以上のようなマイクロ流路チップ1は、以下の効果を有する。マイクロ流路チップ1、(1)本実施形態に係るマイクロ流路チップ1は、基板10と、基板10上に流路部3を形成する隔壁層11と、隔壁層11の基板10とは反対側の面に形成され、流路部3の蓋となる上蓋層12と、を備え、上蓋層12には、上蓋層12の一部であって流路部3内に生じる気泡を除去する気泡除去部7が設けられ、隔壁層11と上蓋層12との間に粘着層が設けられていない。
これにより、マイクロ流路内に生じる気泡を除去することができ、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。さらに、接着剤の膜厚不均一に起因した接合不良も防ぐことができる。
(2)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1は、基板10と、基板10上に流路部3を形成する隔壁層11と、隔壁層11の基板10とは反対側の面に形成され、流路部3の蓋となる上蓋層12と、を備え、上蓋層12には、上蓋層12の一部であって流路部3内に生じる気泡を除去する気泡除去部7が設けられ、上蓋層12と隔壁層11とは互いに溶着している。
これにより、マイクロ流路内に生じる気泡を除去することができ、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。さらに、接着剤の膜厚不均一に起因した接合不良も防ぐことができる。
(3)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1は、マイクロ流路チップであって、流路部3と、流路部3の蓋となる上蓋層12と、を備え、上蓋層12の材料は、熱流動性を有する樹脂であり、上蓋層12には、上蓋層12の一部であって流路部3内に生じる気泡を除去する気泡除去部7が設けられている。
これにより、マイクロ流路内に生じる気泡を除去することができ、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。また、既存のフォトリソグラフィ工程の範囲内で上蓋層12と隔壁層11とを接合することができるため、接着剤の膜厚不均一に起因した接合不良も防ぐことができる。
以上のようなマイクロ流路チップ1は、以下の効果を有する。マイクロ流路チップ1、(1)本実施形態に係るマイクロ流路チップ1は、基板10と、基板10上に流路部3を形成する隔壁層11と、隔壁層11の基板10とは反対側の面に形成され、流路部3の蓋となる上蓋層12と、を備え、上蓋層12には、上蓋層12の一部であって流路部3内に生じる気泡を除去する気泡除去部7が設けられ、隔壁層11と上蓋層12との間に粘着層が設けられていない。
これにより、マイクロ流路内に生じる気泡を除去することができ、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。さらに、接着剤の膜厚不均一に起因した接合不良も防ぐことができる。
(2)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1は、基板10と、基板10上に流路部3を形成する隔壁層11と、隔壁層11の基板10とは反対側の面に形成され、流路部3の蓋となる上蓋層12と、を備え、上蓋層12には、上蓋層12の一部であって流路部3内に生じる気泡を除去する気泡除去部7が設けられ、上蓋層12と隔壁層11とは互いに溶着している。
これにより、マイクロ流路内に生じる気泡を除去することができ、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。さらに、接着剤の膜厚不均一に起因した接合不良も防ぐことができる。
(3)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1は、マイクロ流路チップであって、流路部3と、流路部3の蓋となる上蓋層12と、を備え、上蓋層12の材料は、熱流動性を有する樹脂であり、上蓋層12には、上蓋層12の一部であって流路部3内に生じる気泡を除去する気泡除去部7が設けられている。
これにより、マイクロ流路内に生じる気泡を除去することができ、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。また、既存のフォトリソグラフィ工程の範囲内で上蓋層12と隔壁層11とを接合することができるため、接着剤の膜厚不均一に起因した接合不良も防ぐことができる。
(4)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、気泡除去部7は、上蓋層12における流路部3と対向する領域に流路部3の進行方向に沿って設けられていてもよい。
これにより、効率的にマイクロ流路内に生じる気泡を除去することができる。
(5)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、気泡除去部7は、上蓋層12を厚さ方向に貫通する貫通孔17を有していてもよい。
これにより、より確実にマイクロ流路内に生じる気泡を除去することができる。
これにより、効率的にマイクロ流路内に生じる気泡を除去することができる。
(5)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、気泡除去部7は、上蓋層12を厚さ方向に貫通する貫通孔17を有していてもよい。
これにより、より確実にマイクロ流路内に生じる気泡を除去することができる。
(6)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、貫通孔17の開口端の形状は、平面視で円形であってもよく、貫通孔17の開口端の直径は、1μm以上100μm以下の範囲内であってもよい。
これにより、流路部3からの液漏れを生じさせることなく気泡を除去することができる。
(7)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、貫通孔17の開口端の形状は、平面視で多角形状であってもよく、貫通孔17の開口端の長手方向の幅は、1μm以上100μm以下の範囲内であってもよい。
これにより、流路部3からの液漏れを生じさせることなく気泡を除去することができる。
(8)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、気泡除去部7は、複数の貫通孔17を有しており、複数の貫通孔17の配置間隔Sは、5μm以上1000μm以下の範囲内であってもよい。
これにより、流路部3内に生じる気泡をより効率的に除去することができる。
これにより、流路部3からの液漏れを生じさせることなく気泡を除去することができる。
(7)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、貫通孔17の開口端の形状は、平面視で多角形状であってもよく、貫通孔17の開口端の長手方向の幅は、1μm以上100μm以下の範囲内であってもよい。
これにより、流路部3からの液漏れを生じさせることなく気泡を除去することができる。
(8)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、気泡除去部7は、複数の貫通孔17を有しており、複数の貫通孔17の配置間隔Sは、5μm以上1000μm以下の範囲内であってもよい。
これにより、流路部3内に生じる気泡をより効率的に除去することができる。
(9)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、流路部3の断面形状は角丸であってもよい。
これにより、流路部3における流体(例えば反応溶液)の送液速度や流量を安定させ、角部における検査対象物質の滞留を抑制することができる。
(10)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、上蓋部は、前記流路を形成する隔壁部と別体であってもよい。
これにより、上蓋として好適な性質を有する樹脂を適宜選択することができる。
(11)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、流路部3を形成する隔壁層11及び上蓋層12は、樹脂材料で形成されており、当該樹脂材料は、紫外光領域である190nm以上400nm以下の波長の光に対して感光性を有する感光性樹脂であってもよい。
これにより、接着剤を用いることなく感光性樹脂のリフローによって、マイクロ流路チップの蓋材(上蓋層)を形成することができ、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
これにより、流路部3における流体(例えば反応溶液)の送液速度や流量を安定させ、角部における検査対象物質の滞留を抑制することができる。
(10)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、上蓋部は、前記流路を形成する隔壁部と別体であってもよい。
これにより、上蓋として好適な性質を有する樹脂を適宜選択することができる。
(11)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、流路部3を形成する隔壁層11及び上蓋層12は、樹脂材料で形成されており、当該樹脂材料は、紫外光領域である190nm以上400nm以下の波長の光に対して感光性を有する感光性樹脂であってもよい。
これにより、接着剤を用いることなく感光性樹脂のリフローによって、マイクロ流路チップの蓋材(上蓋層)を形成することができ、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
(12)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、上蓋層12は隔壁層11と別体であって、隔壁層11に対してガラス転移温度が低くてもよい。
これにより、上蓋層12の形成時において隔壁層11に流動が起きて、流路パターンが変化することを抑制することができる。
(13)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、上蓋層12は隔壁層11と別体であって、隔壁層11に対して露光感度が高い又は低い構成でもよい。
これにより、上蓋層12の形成時に上蓋層用の樹脂材料を流動させる際に、隔壁層用の樹脂に流動が起こった場合も、隔壁層11を形成する感光性樹脂の開口幅を十分大きく形成できるため、流路部3として十分な空間を維持することができる。
これにより、上蓋層12の形成時において隔壁層11に流動が起きて、流路パターンが変化することを抑制することができる。
(13)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、上蓋層12は隔壁層11と別体であって、隔壁層11に対して露光感度が高い又は低い構成でもよい。
これにより、上蓋層12の形成時に上蓋層用の樹脂材料を流動させる際に、隔壁層用の樹脂に流動が起こった場合も、隔壁層11を形成する感光性樹脂の開口幅を十分大きく形成できるため、流路部3として十分な空間を維持することができる。
(14)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法は、基板10上に、隔壁層11用の感光性樹脂を塗工する工程と、塗工した隔壁層11用の感光性樹脂の上に、上蓋層12用の感光性樹脂を塗工する工程と、隔壁層11用の感光性樹脂及び上蓋層12用の感光性樹脂を露光する工程と、露光した隔壁層11用の感光性樹脂及び上蓋層12用の感光性樹脂を現像及び洗浄し、前記基板10上において流路部3を画定する隔壁層11を形成する工程と、隔壁層11上の上蓋層12用の感光性樹脂を加熱処理して上蓋層12用の感光性樹脂を流動させることにより、流路部3の上蓋層12を形成し且つ上蓋層12に流路部3に生じる気泡を除去する気泡除去部7として貫通孔17を設ける工程と、を含む。
これにより、マイクロ流路内に生じる気泡を除去することができ、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができるマイクロ流路チップを提供することができる。
これにより、マイクロ流路内に生じる気泡を除去することができ、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができるマイクロ流路チップを提供することができる。
2.第二実施形態
以下、本開示の第二実施形態に係るマイクロ流路チップについて、図10を用いて説明する。図10は、本開示の第二実施形態に係るマイクロ流路チップ200の一構成例を説明するための断面図である。
マイクロ流路チップ200は、基板20と、基板20上に流路部23を形成する隔壁層21と、隔壁層21の一部で形成された上蓋層22と、を備えている。すなわち、マイクロ流路チップ200は、隔壁層21と上蓋層22とが、一体である。この点で、第一実施形態に係るマイクロ流路チップ1,400,500,600,700と相違する。
以下、本開示の第二実施形態に係るマイクロ流路チップについて、図10を用いて説明する。図10は、本開示の第二実施形態に係るマイクロ流路チップ200の一構成例を説明するための断面図である。
マイクロ流路チップ200は、基板20と、基板20上に流路部23を形成する隔壁層21と、隔壁層21の一部で形成された上蓋層22と、を備えている。すなわち、マイクロ流路チップ200は、隔壁層21と上蓋層22とが、一体である。この点で、第一実施形態に係るマイクロ流路チップ1,400,500,600,700と相違する。
(2.1)マイクロ流路チップ200の構成
以下、マイクロ流路チップ200の隔壁層21及び上蓋層22について、上記第一実施形態の隔壁層11、上蓋層12と異なる点を主に説明する。なお、上蓋層22以外の各構成(基板20、流路部23、気泡除去部170、貫通孔171)については、マイクロ流路チップ1の基板10、流路部3、気泡除去部7、貫通孔17と同様の構成であるため説明を省略する。
また、マイクロ流路チップ200の隔壁層21及び上蓋層22の材料は、マイクロ流路チップ1の隔壁層11と同様のものを用いればよい。
以下、マイクロ流路チップ200の隔壁層21及び上蓋層22について、上記第一実施形態の隔壁層11、上蓋層12と異なる点を主に説明する。なお、上蓋層22以外の各構成(基板20、流路部23、気泡除去部170、貫通孔171)については、マイクロ流路チップ1の基板10、流路部3、気泡除去部7、貫通孔17と同様の構成であるため説明を省略する。
また、マイクロ流路チップ200の隔壁層21及び上蓋層22の材料は、マイクロ流路チップ1の隔壁層11と同様のものを用いればよい。
図10は、隔壁層21と上蓋層22とが一体であるマイクロ流路チップ200の一構成例を示している。マイクロ流路チップ200では、隔壁層21自体が上蓋層22となるため、製造工程を簡略化することができる。
(2.2)マイクロ流路チップ200の製造方法
以下、マイクロ流路チップ200の製造方法の一例について説明する。
マイクロ流路チップ200の製造方法では、図4に示すマイクロ流路チップ1の製造方法におけるステップS3(第二感光性樹脂の塗工工程)を省略することができる。これにより、製造工程を簡略化することができる。
以下、図11を用いて、マイクロ流路チップ200の製造方法をより詳細に説明する。
以下、マイクロ流路チップ200の製造方法の一例について説明する。
マイクロ流路チップ200の製造方法では、図4に示すマイクロ流路チップ1の製造方法におけるステップS3(第二感光性樹脂の塗工工程)を省略することができる。これにより、製造工程を簡略化することができる。
以下、図11を用いて、マイクロ流路チップ200の製造方法をより詳細に説明する。
図11は、本実施形態に係るマイクロ流路チップ200の製造方法の各工程を示す概略図である。なお、マイクロ流路チップ200の製造方法では、基板20上に形成される感光性樹脂が一層である点を除き、図4に示すマイクロ流路チップ1の製造方法におけるステップS1,S2,S4~S7における各工程と同様にして流路パターンを形成する。このため、ステップS1,S2,S4~S7における各工程については、説明を省略する。
図11(a)は本実施形態に係るマイクロ流路チップ200の製造時における流路パターン220の平面概略図である。隔壁層21に対して、液体を導入するための入力部32と、液体が流れる流路部33と、液体を排出するための出力部34とを有している。入力部32および出力部34は、上記第一実施形態に係るマイクロ流路チップ1の入力部2および出力部4と同等の構成であるため、説明は省略する。
図11(b)は図11(a)のB-B線における断面図である。ベースとなる基板20の上に隔壁層21が形成されている。基板20と隔壁層21に囲まれた領域に流体(例えば、反応溶液)を導入するための入力部32が形成される。なお流体を導入するため、入力部32の上部には、上蓋層22は形成されない。
図11(b)は図11(a)のB-B線における断面図である。ベースとなる基板20の上に隔壁層21が形成されている。基板20と隔壁層21に囲まれた領域に流体(例えば、反応溶液)を導入するための入力部32が形成される。なお流体を導入するため、入力部32の上部には、上蓋層22は形成されない。
図11(c)は、図11(a)のC-C線における断面図である。ベース部材となる基板20の上に隔壁層21が形成されており、基板20と隔壁層21に囲まれた領域に流体が流れる流路部3を画定する流路パターン220の領域23aが形成されている。領域23aの開口幅は、入力部32よりも狭く形成されている。
形成された流路パターン220に対し加熱処理(ポストベーク)を行う。加熱処理は、例えば、ホットプレート、オーブン、などにより行われる。ポストベークは、隔壁用樹脂(隔壁層21)のガラス転移温度(Tg)まで加熱して、隔壁用樹脂を流動(リフロー)させる目的で行う。この点が、上記第一実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法における加熱処理と異なる。感光性樹脂の流動(リフロー)は、樹脂の性質によっては基板20と反対側、すなわち流路パターン220の上部側が流動しやすい特徴がある。流路パターン220の上部が流動することによって、隔壁層21同士が接合し、流路パターン220の上蓋材、つまり流路パターン220の領域23aを覆う上蓋層22としての機能を持つことになる。これにより、隔壁層21と一体の上蓋層22が形成され、本実施形態に係るマイクロ流路チップ200が作製される。
図11(d)は、加熱処理(ポストベーク)後のマイクロ流路チップ200の平面概略図である。加熱処理によって隔壁層21が流動して上蓋層22が形成され、後述する図11(f)に示すように流路部23が画定されている。なお、図11(d)では図示を省略しているが、透明性を有する上蓋層22を介して流路部23を視認することができる。入力部32及び出力部34も、隔壁層21の流動によってサイズは小さくなるものの、予めサイズの縮小を想定して大きなサイズで形成しているため、上蓋層22で塞がれることなく、貫通孔が形成されたままとなる。これは、上記第一実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造時も同様である。
図11(e)は、図11(d)のB-B線におけるマイクロ流路チップ200の断面模式図である。ホットプレート25上でのポストベークによって、隔壁層21の上部側の樹脂は入力部32の幅方向の中央に向かって流動するが、入力部32は塞がれることなく開口端は外部と連通したままとなる。つまり、流体を導入するための入力部32の機能は維持される。
図11(f)は図11(d)のC-C線におけるマイクロ流路チップ200の断面模式図である。ホットプレート25上でのポストベークによって、隔壁層21の基板20と反対側(隔壁層21の上側)の樹脂が左右から流動して流路部23の幅方向の中央付近で接合し上蓋層22を形成している。このように、本実施形態によれば、マイクロ流路チップの流路部を覆う蓋材を、接着剤を用いることなく、既存のフォトリソグラフィ工程の範囲内で、マイクロ流路チップの蓋材(上蓋層)を形成することができる。これにより、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
また、接着剤の膜厚不均一に起因した接合不良による品質低下も防ぐことができる。また、接着剤などの中間部材を用いて隔壁層と上蓋層とを接合する場合と比べて、製造方法を簡略化することができる。また、隔壁層21と上蓋層22とを一体形成とすることで、より確実に接合不良を抑制することができる。
また、接着剤の膜厚不均一に起因した接合不良による品質低下も防ぐことができる。また、接着剤などの中間部材を用いて隔壁層と上蓋層とを接合する場合と比べて、製造方法を簡略化することができる。また、隔壁層21と上蓋層22とを一体形成とすることで、より確実に接合不良を抑制することができる。
(2.2.1)上蓋層における気泡除去部の形成
本実施形態に係るマイクロ流路チップ200においても、上記第一実施形態と同様に、上蓋層の形成時において、併せて気泡除去部が形成される。以下、上蓋層22における気泡除去部170の形成について図12を用いて説明する。
図12(a)は、上記ステップS8の加熱処理(ポストベーク)の実行前、すなわち上記ステップS7における現像液の洗浄後の流路パターン220の平面模式図である。図12(a)に示すように、流路パターン220において、隔壁層21の上部には、気泡除去部を構成する貫通孔を形成するための領域171aが形成されている。領域171aは、例えば流路パターン描画時の露光パターンの制御により形成される。隔壁層21において、気泡除去部を構成する貫通孔を形成するための領域171aにおける開口幅L11が、領域171a以外の開口幅L12よりも予め広く形成されている。
本実施形態に係るマイクロ流路チップ200においても、上記第一実施形態と同様に、上蓋層の形成時において、併せて気泡除去部が形成される。以下、上蓋層22における気泡除去部170の形成について図12を用いて説明する。
図12(a)は、上記ステップS8の加熱処理(ポストベーク)の実行前、すなわち上記ステップS7における現像液の洗浄後の流路パターン220の平面模式図である。図12(a)に示すように、流路パターン220において、隔壁層21の上部には、気泡除去部を構成する貫通孔を形成するための領域171aが形成されている。領域171aは、例えば流路パターン描画時の露光パターンの制御により形成される。隔壁層21において、気泡除去部を構成する貫通孔を形成するための領域171aにおける開口幅L11が、領域171a以外の開口幅L12よりも予め広く形成されている。
図12(b)は、流路パターン220に対してステップS8の加熱処理(ポストベーク)を実行して作製されたマイクロ流路チップ200の平面模式図である。図12(b)に示すように、ポストベークの実行により、マイクロ流路チップ200には、上蓋層22と気泡除去部170とが形成される。
具体的には、マイクロ流路チップ200において、ポストベークによって対向する左右の隔壁層21の上部側の樹脂が流路部23となる領域23aの幅方向の中央に向かって流動し、領域23aの流路部73の中心付近の上部で接合する。これにより、上蓋層22が形成される。このとき、予め広い開口幅L11が設けられた領域171a(図12(a)参照)では、隔壁層21の上部の樹脂が完全には接合せずに間隙が維持される。これにより図12(b)に示すように、2つの貫通孔171が形成される。このようにして、上蓋層22に貫通孔171を有する気泡除去部170が形成される。
このように、本実施形態において、予め流路パターン220の隔壁層21の上部における開口幅を調整することにより、気泡除去部170を構成する貫通孔(本例では、貫通孔171)を形成することができる。つまり、隔壁層21の上部を流動させて上蓋層(本例では、上蓋層22)を形成する上記ステップS8の加熱処理時において、上蓋層と同時に、気泡除去部170を容易に形成することができる。すなわち、既存のフォトリソグラフィ工程の範囲内で、マイクロ流路チップ200の上蓋及び気泡除去のための複数の貫通孔を形成することができる。
このため、例えば上蓋層22を形成する隔壁層21とは別部材で形成した気泡除去のための構成を、接着剤によって貼り合わせる場合に比べて製造方法を簡略化することができる。さらに、気泡除去部170の形成には接着剤が用いられない。このため、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
このため、例えば上蓋層22を形成する隔壁層21とは別部材で形成した気泡除去のための構成を、接着剤によって貼り合わせる場合に比べて製造方法を簡略化することができる。さらに、気泡除去部170の形成には接着剤が用いられない。このため、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
以上説明したように、本実施形態に係るマイクロ流路チップ200の製造方法は、基板10上に、隔壁用樹脂を塗工する工程(上記ステップS1)と、隔壁用樹脂を露光する工程(上記ステップS5)と、露光した隔壁用樹脂を現像及び洗浄し、基板20上において流路部23を画定する隔壁層21を形成する工程(上記ステップS6及びステップS7)と、隔壁層21を加熱処理して該隔壁用樹脂を流動させることにより、上蓋層22を形成し且つ上蓋層22に流路部23に生じる気泡を除去する気泡除去部170として貫通孔171を設ける工程と、を含んでいる。
これにより、接着剤を用いることなく隔壁層21の一部として隔壁層21に溶着して一体形成された上蓋層22を形成ことができ、接着剤成分の流路部23内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
これにより、接着剤を用いることなく隔壁層21の一部として隔壁層21に溶着して一体形成された上蓋層22を形成ことができ、接着剤成分の流路部23内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
3.第三実施形態
以下、本開示の第三実施形態に係るマイクロ流路チップについて、図13および図14を用いて説明する。図13は、本開示の第三実施形態に係るマイクロ流路チップ300の一構成例を説明するための断面図である。
マイクロ流路チップ300は、基板30と、基板30上に流路部33を形成する隔壁層11と、上蓋層12と、を備えている。すなわち、マイクロ流路チップ300は、基板30と基板30上に形成された流路部33を備える点で、第一実施形態に係るマイクロ流路チップ1,400,500,600,700および第二実施形態に係るマイクロ流路チップ200と相違する。
以下、本開示の第三実施形態に係るマイクロ流路チップについて、図13および図14を用いて説明する。図13は、本開示の第三実施形態に係るマイクロ流路チップ300の一構成例を説明するための断面図である。
マイクロ流路チップ300は、基板30と、基板30上に流路部33を形成する隔壁層11と、上蓋層12と、を備えている。すなわち、マイクロ流路チップ300は、基板30と基板30上に形成された流路部33を備える点で、第一実施形態に係るマイクロ流路チップ1,400,500,600,700および第二実施形態に係るマイクロ流路チップ200と相違する。
(3.1)マイクロ流路チップ300の構成
以下、マイクロ流路チップ300の基板30及び流路部33について、上記第一実施形態の基板10、流路部3と異なる点を主に説明する。なお、マイクロ流路チップ300における基板30および流路部33以外の各構成(隔壁層11、上蓋層12、気泡除去部7、貫通孔17)については、マイクロ流路チップ1の隔壁層11、上蓋層12、気泡除去部7、貫通孔17と同様の構成であるため説明を省略する。
また、マイクロ流路チップ300の基板30の材料は、マイクロ流路チップ1の基板10と同様のものを用いればよい。
以下、マイクロ流路チップ300の基板30及び流路部33について、上記第一実施形態の基板10、流路部3と異なる点を主に説明する。なお、マイクロ流路チップ300における基板30および流路部33以外の各構成(隔壁層11、上蓋層12、気泡除去部7、貫通孔17)については、マイクロ流路チップ1の隔壁層11、上蓋層12、気泡除去部7、貫通孔17と同様の構成であるため説明を省略する。
また、マイクロ流路チップ300の基板30の材料は、マイクロ流路チップ1の基板10と同様のものを用いればよい。
図13は、マイクロ流路チップ300の一構成例を示す断面模式図である。図13に示すように、本実施形態に係るマイクロ流路チップ300において、基板(基部の一例)30は、気泡除去部7が有する貫通孔17と対向する領域が表面改質されている。すなわち、基板30は、隔壁層11側の表面30aのうち貫通孔17と対向する領域(貫通孔17の直下の領域)に表面改質部301が設けられている。表面改質部301は、表面改質領域と称してもよい。表面改質部301を有することにより、本実施形態に係るマイクロ流路チップ300は、接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができるとともに、気泡除去の効率を向上することができる。
表面改質部301は、表面改質処理により濡れ性が改質され、親水性が付与されている。つまり、基板(基部の一例)30は、気泡除去部7が有する貫通孔17と対向する領域が親水性を有している。すなわち、表面改質部301は、流路部33を構成する基板30の他の領域や、隔壁層11の流路側の表面11aおよび上蓋層12の流路側の表面12aよりも濡れ性が高くなっている。これにより、マイクロ流路チップ300は、気泡除去の効率をより確実に向上することができる。
表面改質部301は、表面改質処理により濡れ性が改質され、親水性が付与されている。つまり、基板(基部の一例)30は、気泡除去部7が有する貫通孔17と対向する領域が親水性を有している。すなわち、表面改質部301は、流路部33を構成する基板30の他の領域や、隔壁層11の流路側の表面11aおよび上蓋層12の流路側の表面12aよりも濡れ性が高くなっている。これにより、マイクロ流路チップ300は、気泡除去の効率をより確実に向上することができる。
表面改質処理とは、材料表面に特殊な処理を施して組成や構造を変えることで材料がもつ性質に新たな機能を付与する処理を示す。表面改質部301に親水性を付与(親水化)するための表面改質処理(親水化処理)としては、例えば紫外線(UV)を照射する紫外線処理が挙げられる。紫外線処理(UV処理)は、処理に用いられる装置に比較的安価な装置が多く、光源の低圧水銀ランプから発光する紫外線の持つエネルギーと、当該エネルギーよって発生するオゾンの力で、素材表面(本例では、表面30a)の有機系皮膜の除去(洗浄)や素材表面におけるシラノール基(Si-OH基)の形成によって、表面改質処理の対象面の親水化を実現できる。
また、本実施形態において、表面改質部301を形成するための表面改質処理は、紫外線処理に限られず、例えばプラズマ(大気圧、真空、酸素)を照射するプラズマ処理であってもよい。プラズマ処理によっても、表面改質処理の対象面に親水性を付与(親水化)することができる。
なお図13では、理解を容易にするため、貫通孔17の開口端17a,17bの幅と、表面改質部301の幅が一致しているが、紫外線処理やプラズマ処理の条件や処理環境により、表面改質部301の最大幅は開口端17a,17bの幅と必ずしも一致しない。例えば、表面改質部301の最大幅は開口端17a,17bの幅よりも、若干広くなる場合がある。
なお図13では、理解を容易にするため、貫通孔17の開口端17a,17bの幅と、表面改質部301の幅が一致しているが、紫外線処理やプラズマ処理の条件や処理環境により、表面改質部301の最大幅は開口端17a,17bの幅と必ずしも一致しない。例えば、表面改質部301の最大幅は開口端17a,17bの幅よりも、若干広くなる場合がある。
マイクロ流路を流れる流体(例えば反応溶液)内に巻き込まれた気泡は、反応溶液の反応阻害や、マイクロ流路内での反応溶液の滞留等による送液の不安定化を招く。このため、上述のようにマイクロ流路における流体内の気泡除去はマイクロ流路デバイスにおける重要な課題である。
マイクロ流路において流体内の気泡を効率的に除去するための一手法としては、気泡除去部を有する部材(例えばマイクロ流路の蓋材)において流路側の表面を疎水性(撥水性)にすることが有効である。その方法として、マイクロ流路の上面側における当該部材の表面を、疎水性を有する材料に変更すること等が考えられる。しかしながら、マイクロ流路を構成する部材の構成材料を、疎水性を有する材料に変更した場合、マイクロ流路における流体の流れが悪くなる等の影響が広い範囲で生じ得る。したがって、気泡除去部の周辺のみに気泡除去の効率を向上するための効果を付与することが望ましい。
マイクロ流路において流体内の気泡を効率的に除去するための一手法としては、気泡除去部を有する部材(例えばマイクロ流路の蓋材)において流路側の表面を疎水性(撥水性)にすることが有効である。その方法として、マイクロ流路の上面側における当該部材の表面を、疎水性を有する材料に変更すること等が考えられる。しかしながら、マイクロ流路を構成する部材の構成材料を、疎水性を有する材料に変更した場合、マイクロ流路における流体の流れが悪くなる等の影響が広い範囲で生じ得る。したがって、気泡除去部の周辺のみに気泡除去の効率を向上するための効果を付与することが望ましい。
そこで本願発明者らは、マイクロ流路の底面(流路底部の構成部材の流路側の表面)において気泡除去部と対向する領域に親水性を付与することで、マイクロ流路の上面(気泡除去部を有する部材の流路側の表面)において気泡除去部の周辺領域が相対的に疎水性となり、これにより気泡除去の効率が上昇することに着目した。
マイクロ流路の底面が親水性を有する(濡れ性が高い)場合、マイクロ流路内を流れる流体(例えば、反応溶液や培養液のように水を主成分とする液体)は、親水性を有する底面側との親和性が高くなり、かつ相対的に疎水性となる上面との親和性が低くなる。
一方、流体内に巻き込まれた気泡は、気泡除去部と対向するマイクロ流路の底面領域との親和性が低くなり、マイクロ流路の上面における気泡除去部の周辺領域との親和性は高くなる。このため、マイクロ流路内の気泡除去部の近傍領域において、マイクロ流路を流れる流体と、流体内に巻き込まれた気泡とが効率良く分離され、気泡除去がより効果的に行えるようになる。
一方、流体内に巻き込まれた気泡は、気泡除去部と対向するマイクロ流路の底面領域との親和性が低くなり、マイクロ流路の上面における気泡除去部の周辺領域との親和性は高くなる。このため、マイクロ流路内の気泡除去部の近傍領域において、マイクロ流路を流れる流体と、流体内に巻き込まれた気泡とが効率良く分離され、気泡除去がより効果的に行えるようになる。
具体的には、本実施形態に係るマイクロ流路チップ300は、上蓋層12に設けられた気泡除去部7が有する貫通孔17と対向する領域に親水性が付与されていることで、上蓋層12の流路側の表面12aにおいて、貫通孔17の周辺領域が相対的に疎水性となる。つまり、流路部33において濡れ性が高い領域(表面改質部301)と、濡れ性が低い領域(貫通孔17の周辺領域における表面12a)とが対向する位置に設けられている。このため流路部33内では、表面改質部301と貫通孔17の間の領域において濡れ性の差異が生じる。これにより、マイクロ流路チップ300は、気泡除去の効率をより向上することができる。
より具体的には、流路部33内を流れる流体は、上述のように親水性を有する基板30の表面改質部301側との親和性が高くなり、かつ相対的に疎水性となる貫通孔17の周辺領域における表面12aとの親和性が低くなる。このため、流路部33内において流体は親水性(高い濡れ性)を有する表面改質部301側に押し下げられるように寄っていく。
これに対し、流体内に巻き込まれた気泡は、親水性を有する表面改質部301との親和性が低くなり、貫通孔17の周辺領域における表面12aとの親和性は高くなる。このため、表面改質部301側に寄っている流体とは逆に、流体内の気泡は表面改質部301と対向する表面12a側に移動する。これにより、流路部33の表面改質部301と貫通孔17の間の領域において、流体と気泡とが効率よく分離され、貫通孔17からの気泡除去がより効果的に行われることとなる。
これに対し、流体内に巻き込まれた気泡は、親水性を有する表面改質部301との親和性が低くなり、貫通孔17の周辺領域における表面12aとの親和性は高くなる。このため、表面改質部301側に寄っている流体とは逆に、流体内の気泡は表面改質部301と対向する表面12a側に移動する。これにより、流路部33の表面改質部301と貫通孔17の間の領域において、流体と気泡とが効率よく分離され、貫通孔17からの気泡除去がより効果的に行われることとなる。
また、基板30の表面改質部301と対向する貫通孔17周辺の表面12aは、相対的に疎水性となっていることから、流体内から貫通孔17の周辺に移動した気泡が弾け易い。このため、気泡除去の効率がより向上される。
(水接触角)
基板30の表面改質部301における親水性を評価する指標として、例えば水接触角が挙げられる。本実施形態によるマイクロ流路チップ300において、基板30の表面30aにおける表面改質部301の水接触角が90度以下であればよく、30度以下がより好ましい。水接触角が90度以下であれば、表面改質部301は、気泡除去効果をさらに向上させるための十分な親水性を有しているといえる。
基板30の表面改質部301における親水性を評価する指標として、例えば水接触角が挙げられる。本実施形態によるマイクロ流路チップ300において、基板30の表面30aにおける表面改質部301の水接触角が90度以下であればよく、30度以下がより好ましい。水接触角が90度以下であれば、表面改質部301は、気泡除去効果をさらに向上させるための十分な親水性を有しているといえる。
水接触角のコントロール方法としては紫外線の照射エネルギー(単位:mJ)の調整や紫外線照射時間の調整がある。紫外線の照射エネルギーが高いほど、照射対象面(本例では、表面改質部301)の水接触角を小さくする、すなわち親水性を向上することができる。また同様に、紫外線の照射時間を長くするほど、照射対象面(表面改質部301)の水接触角を小さくする、すなわち親水性を向上することができる。
水接触角の測定方法には、例えば接触角計「協和界面社製、PCA-1」を用いることができる。上記接触角計による測定では、シリンジに水を充填させて接触角計に装着し、接触角の測定までの待ち時間[msec]、測定時間間隔[msec]、連続測定回数[回]などのパラメータを設定する。次いで、シリンジから基板30と同等の構成を有する試料の表面に水を滴下し、画像撮像と液滴の接触角(静的接触角)を測定する。なお、静的接触角の測定方法は、液滴法を採用している。液滴法とは、液滴が球の一部であることを前提とし、着滴後の液滴の半径rと高さhから接触角θを求める方法である。
(3.2)マイクロ流路チップ300の製造方法
以下、マイクロ流路チップ300の製造方法の一例について図14を用いて説明する。図14は本実施形態に係るマイクロ流路チップ300の製造方法の一例を示すフローチャートである。図14に示すように、マイクロ流路チップ300の製造方法では、図4に示すマイクロ流路チップ1の製造方法のステップS1~S8の各工程に加えて、基板30の隔壁層11側の表面30aのうち貫通孔17と対向する領域に表面改質処理を行う工程(ステップS9)をさらに含んでいる。これにより、マイクロ流路チップ300において基板30に表面改質部301を設けることができる。
以下、マイクロ流路チップ300の製造方法の一例について図14を用いて説明する。図14は本実施形態に係るマイクロ流路チップ300の製造方法の一例を示すフローチャートである。図14に示すように、マイクロ流路チップ300の製造方法では、図4に示すマイクロ流路チップ1の製造方法のステップS1~S8の各工程に加えて、基板30の隔壁層11側の表面30aのうち貫通孔17と対向する領域に表面改質処理を行う工程(ステップS9)をさらに含んでいる。これにより、マイクロ流路チップ300において基板30に表面改質部301を設けることができる。
具体的には、本実施形態に係るマイクロ流路チップ300の製造方法では、ステップS8の加熱処理(ポストベーク処理)後に行うステップS9において、ポストベーク処理で形成された上蓋層12の貫通孔17を介して基板30の表面30aに対して表面改質処理を行う。これにより、接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができるとともに、気泡除去の効率を向上することができるマイクロ流路チップを得ることができる。
また例えば本実施形態に係るマイクロ流路チップ300の製造方法では、ステップS9において、表面改質処理として紫外線処理を行う。より詳細には、上蓋層12の貫通孔17から基板30において貫通孔17と対向する領域に向かって紫外線を照射することにより表面改質処理(親水化処理)を行い、当該領域に親水性を付与する。これにより、貫通孔17と対向する位置に表面改質部301を設けることができる。したがって、マイクロ流路チップにおける気泡除去の効率をより確実に向上することができる。
なお、ステップS9における表面改質処理(親水化処理)は紫外線処理に限られず、プラズマ処理を行ってもよい。
なお、ステップS9における表面改質処理(親水化処理)は紫外線処理に限られず、プラズマ処理を行ってもよい。
(3.3)変形例
以上、本実施形態に係るマイクロ流路チップ300について説明したが、表面改質部301を有するマイクロ流路チップの形態はこれに限られない。
例えば、流路部33の高さは一定でなく、高さの高低に変化があってもよい。例えば、隔壁層11の高さの高低が変化する構成であったり、基板30の表面30aに傾斜や凹凸が設けられた構成であってもよい。
通常、マイクロ流路の高さ(深さ)が増大すると、気泡除去の効率が低減され得るが、気泡除去部7の貫通孔17と対向する位置に親水性を有する表面改質部301が設けられることで、流路部33の高さ(深さ)が相対的に深い領域においても気泡除去の効率を向上することができる。
以上、本実施形態に係るマイクロ流路チップ300について説明したが、表面改質部301を有するマイクロ流路チップの形態はこれに限られない。
例えば、流路部33の高さは一定でなく、高さの高低に変化があってもよい。例えば、隔壁層11の高さの高低が変化する構成であったり、基板30の表面30aに傾斜や凹凸が設けられた構成であってもよい。
通常、マイクロ流路の高さ(深さ)が増大すると、気泡除去の効率が低減され得るが、気泡除去部7の貫通孔17と対向する位置に親水性を有する表面改質部301が設けられることで、流路部33の高さ(深さ)が相対的に深い領域においても気泡除去の効率を向上することができる。
また、例えば流路部33が、平面視において屈曲した形状(角部を有する形状)であってもよい。通常、マイクロ流路に屈曲部(角部)が設けられていると、送液速度が低減されることで流体の滞留が生じ、これに伴って気泡除去の効率が低減し得るが、貫通孔17と対向する位置に親水性を有する表面改質部301が設けられることで、流路部33が屈曲部を有する場合であっても気泡除去の効率を向上することができる。
また、本実施形態に係るマイクロ流路チップ300は、上記第一実施形態に係るマイクロ流路チップ1に表面改質部301を設けた構成としたが、本開示はこれに限られない。例えば、上記第二実施形態に係るマイクロ流路チップ200に表面改質部301を設けてもよい。これにより、隔壁層21と上蓋層22とが一体である構成のマイクロ流路チップにおいても気泡除去の効率を向上させることができる。
(実施例)
上述したマイクロ流路チップ及びその製造方法について、具体的な実施例を用いて説明する。なお、本開示は、下記の実施例に限定されるものではない。
<第一実施例>
上記第一実施形態に係るマイクロ流路チップ及びその製造方法の実施例を説明する。
まず、ガラス基板上へ隔壁層用の感光性樹脂を塗工して、第一感光性樹脂層を形成した。隔壁層用の感光性樹脂はエポキシ系樹脂による透明体のネガ型液体樹脂(ネガ型の液体レジスト)を使用した。また当該感光性樹脂(ネガ型液体レジスト)はガラス転移温度(TG)が160℃であった。ネガ型液体レジストは、スピンコーターにて回転数1100rpm、30秒でガラス基板上に塗工した。またスピンコーターは、第一感光性樹脂層の膜厚が50μmになるように回転数、時間を調整した。
次に、ホットプレート上にて隔壁層用の感光性樹脂(ネガ型液体レジスト)内に含まれる残留溶媒を除去する目的で加熱処理(プリベーク)を行った。プリベークは、温度90℃で20分実施した。
<第一実施例>
上記第一実施形態に係るマイクロ流路チップ及びその製造方法の実施例を説明する。
まず、ガラス基板上へ隔壁層用の感光性樹脂を塗工して、第一感光性樹脂層を形成した。隔壁層用の感光性樹脂はエポキシ系樹脂による透明体のネガ型液体樹脂(ネガ型の液体レジスト)を使用した。また当該感光性樹脂(ネガ型液体レジスト)はガラス転移温度(TG)が160℃であった。ネガ型液体レジストは、スピンコーターにて回転数1100rpm、30秒でガラス基板上に塗工した。またスピンコーターは、第一感光性樹脂層の膜厚が50μmになるように回転数、時間を調整した。
次に、ホットプレート上にて隔壁層用の感光性樹脂(ネガ型液体レジスト)内に含まれる残留溶媒を除去する目的で加熱処理(プリベーク)を行った。プリベークは、温度90℃で20分実施した。
次いで、第一感光性樹脂層の上に上蓋用の感光性樹脂を塗布して第二感光性樹脂層を形成した。上蓋用の感光性樹脂は、隔壁層用の感光性樹脂よりもガラス転移温度(TG)が50℃低い温度(110℃)である以外は、上述のネガ型液体レジストと同様のものを用いた。また隔壁層用の感光性樹脂と同条件でプリベークを行い、上蓋用の感光性樹脂内に含まれる残留溶媒を除去した。
次に、ガラス基板上の感光性樹脂層(第一感光性樹脂層、第二感光性樹脂層)を露光して流路パターンを描画した。具体的には、マイクロ流路のパターン配列を有するフォトマスクを介して、感光性樹脂へパターン露光した。フォトマスクはクロム及び酸化クロムの二層構造を遮光膜とするフォトマスクを使用した。また、露光にはプロキシミティ露光装置を用いた。露光装置は高圧水銀灯を光源とし、i線フィルタのカットフィルタを入れて露光した。露光量は170mJ/cm2とした。このとき、フォトマスクにおけるマイクロ流路のパターン配列には、気泡除去部の貫通孔を形成するための領域のパターンも含まれる。
次に、露光した感光性樹脂層に対して現像を行い、流路パターンを形成した。具体的には、アルカリ現像液(TMAH2.38%)を用いて感光性樹脂層を60秒間現像することにより、未露光部分を溶解し、流路構造をパターニングした。
続いて、超純水によるシャワー洗浄を行い、基板上の感光性樹脂層から現像液を除去し、スピンドライヤにて乾燥を行った。この段階では、流路パターンの流路部においてガラス基板とは反対側の上側部分は開口している。また、隔壁層上には第二感光性樹脂層が残存している。
続いて、超純水によるシャワー洗浄を行い、基板上の感光性樹脂層から現像液を除去し、スピンドライヤにて乾燥を行った。この段階では、流路パターンの流路部においてガラス基板とは反対側の上側部分は開口している。また、隔壁層上には第二感光性樹脂層が残存している。
次に、流路パターンをオーブンで160℃、30分、加熱処理(ポストベーク)した。このとき、感光性樹脂のリフローにより流路パターン上部、すなわち対向する隔壁層上の第二感光性樹脂層がそれぞれ流路部の中心に向かって流動して上蓋層及び気泡除去部を構成する貫通孔が形成された。これにより、本実施例によるマイクロ流路チップを得た。なお、流路部の両端部には、貫通孔である入力部および出力部が上蓋層で塞がれることなく形成された。
上述のようにして作製した本実施例によるマイクロ流路チップは、接着剤を用いることなく隔壁層と上蓋層とを溶着しており、ポストベーク時の上蓋層用の樹脂(第二感光性樹脂層)の流動によって上蓋層を形成している。これにより、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
また、本実施例のマイクロ流路チップに対し、着色した反応溶液10μLの量をピペットにて採取し、流路の入口ポートより導入し、その送液の様子を顕微鏡にて観察した。導入された反応溶液は、流路内を滞りなく流れ、流路内からの液漏れも一切無く、送液は良好であった。よって、本実施例のマイクロ流路チップには流体が滞りなく流れ、液漏れも無く、マイクロ流路チップとしての基本性能は備わっていることが確認できた。
また、本実施例のマイクロ流路チップに対し、着色した反応溶液10μLの量をピペットにて採取し、流路の入口ポートより導入し、その送液の様子を顕微鏡にて観察した。導入された反応溶液は、流路内を滞りなく流れ、流路内からの液漏れも一切無く、送液は良好であった。よって、本実施例のマイクロ流路チップには流体が滞りなく流れ、液漏れも無く、マイクロ流路チップとしての基本性能は備わっていることが確認できた。
また、流路内を流れる反応溶液には注液の際に巻き込んだ気泡が複数存在したが、気泡除去部の貫通孔から効率的に気泡が外部に排出されたことを確認した。このため、気泡除去部を通過後の溶液には気泡が無く、観察の妨げになることは無かった。よって、本実施例のマイクロ流路チップでは流体が滞りなく流れ、流路内において流体に含まれる気泡を効率良く除去できる機能が備わっていることが確認できた。
<第二実施例>
上記第二実施形態に係るマイクロ流路チップ及びその製造方法の実施例を説明する。
隔壁層と上蓋層とが一体形成である以外は、上記第一実施例と同様にして第二実施例によるマイクロ流路チップを作製した。
具体的には、まず、上記第一実施例と同様に、隔壁層用の感光性樹脂をガラス基板上へ塗工して第一感光性樹脂層を形成し、プリベーク処理を行った。
次に、上記第一実施例と同様の露光条件で、ガラス基板上の第一感光性樹脂層を露光して流路パターンを描画した。
上記第二実施形態に係るマイクロ流路チップ及びその製造方法の実施例を説明する。
隔壁層と上蓋層とが一体形成である以外は、上記第一実施例と同様にして第二実施例によるマイクロ流路チップを作製した。
具体的には、まず、上記第一実施例と同様に、隔壁層用の感光性樹脂をガラス基板上へ塗工して第一感光性樹脂層を形成し、プリベーク処理を行った。
次に、上記第一実施例と同様の露光条件で、ガラス基板上の第一感光性樹脂層を露光して流路パターンを描画した。
次に、露光した第一感光性樹脂層に対し、上記第一実施例と同様の条件で現像を行った後に現像液を除去し、スピンドライヤにて乾燥して流路パターンを形成した。この時点での流路パターンの断面SEM像の一例を図15(a)に示す。
図15(a)において、対向する隔壁層に挟まれた凹部が流路パターンの流路部にあたる。図15(a)に示すように、現像液の除去・乾燥後の流路パターンの流路部において、ガラス基板とは反対側の上側部分は開口している。流路部の上側の開口は、上記第一実施例でも同様である。
図15(a)において、対向する隔壁層に挟まれた凹部が流路パターンの流路部にあたる。図15(a)に示すように、現像液の除去・乾燥後の流路パターンの流路部において、ガラス基板とは反対側の上側部分は開口している。流路部の上側の開口は、上記第一実施例でも同様である。
次に、流路パターンを上記第一実施例と同様の条件(オーブンで160℃、30分)でポストベークした。このとき、感光性樹脂のリフローにより流路パターン上部、すなわち対向する隔壁層の上側の感光性樹脂(ネガ型液体レジスト)がそれぞれ流路部の中心に向かって流動し、上蓋層及び気泡除去部を構成する貫通孔が形成された。これにより、本実施例によるマイクロ流路チップを得た。
ポストベーク後のマイクロ流路チップの断面SEM像の一例を図15(b)に示す。図15(b)に示すとおり、ポストベーク後において流路パターン上側、すなわち隔壁層の上側)の感光性樹脂が流動し、流路部の中心付近で接合され、上蓋層が形成されていることを確認した。
また図15(b)に示すように、隔壁層の流動で形成される上蓋層は、流路部の中央部分に向かって厚みが薄くなっており、凹部が形成されていることが確認された。また、図15(b)に示すように、流路部の断面形状は角丸であることが確認された。さらに、図15(b)の中央上部に示すように、上蓋層の奥行方向には、局所的に気泡除去部を構成する貫通孔が形成されていることを確認した。これらの点は、隔壁層と上蓋層とが別体である上記第一実施例でも同様である。
なお、流路部の両端部には、貫通孔である入力部および出力部が上蓋層で塞がれることなく形成された。
また図15(b)に示すように、隔壁層の流動で形成される上蓋層は、流路部の中央部分に向かって厚みが薄くなっており、凹部が形成されていることが確認された。また、図15(b)に示すように、流路部の断面形状は角丸であることが確認された。さらに、図15(b)の中央上部に示すように、上蓋層の奥行方向には、局所的に気泡除去部を構成する貫通孔が形成されていることを確認した。これらの点は、隔壁層と上蓋層とが別体である上記第一実施例でも同様である。
なお、流路部の両端部には、貫通孔である入力部および出力部が上蓋層で塞がれることなく形成された。
上述のようにして作製した本実施例によるマイクロ流路チップは、ポストベークによる隔壁層上部の流動によって上蓋層が形成され、隔壁層と上蓋層との接合に接着剤が用いられない。これにより、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
また、本実施例のマイクロ流路チップに対し、上記第一実施例と同様にして送液試験を行った。その結果導入された反応溶液は、流路内を滞りなく流れ、流路内からの液漏れも一切無く、送液は良好であった。よって、本実施例のマイクロ流路チップには流体が滞りなく流れ、液漏れも無く、マイクロ流路チップとしての基本性能は備わっていることが確認できた。
また、本実施例のマイクロ流路チップに対し、上記第一実施例と同様にして送液試験を行った。その結果導入された反応溶液は、流路内を滞りなく流れ、流路内からの液漏れも一切無く、送液は良好であった。よって、本実施例のマイクロ流路チップには流体が滞りなく流れ、液漏れも無く、マイクロ流路チップとしての基本性能は備わっていることが確認できた。
また、流路内を流れる反応溶液には注液の際に巻き込んだ気泡が複数存在したが、気泡除去部の貫通孔から効率的に気泡が外部に排出されたことを確認した。このため、気泡除去部を通過後の溶液には気泡が無く、観察の妨げになることは無かった。よって、本実施例のマイクロ流路チップでは流体が滞りなく流れ、流路内において流体に含まれる気泡を効率良く除去できる機能が備わっていることが確認できた。
<第三実施例>
上記第三実施形態に係るマイクロ流路チップ及びその製造方法の実施例を説明する。
ポストベーク処理後のマイクロ流路チップに対して、表面改質処理を行った以外は、上記第一実施例と同様にして第三実施例によるマイクロ流路チップを作製した。
具体的には、卓上型オゾン洗浄装置(OC1801C10X)を用いて、紫外線(UV)積算光量が10000mJとなるように5分間の紫外線処理(UV処理)を行った。これにより、基板表面において貫通孔と対向する領域に表面改質部を形成した。このとき、上蓋層の貫通孔を介して、基板の表面に対して紫外線の照射を行った。UV処理を行うことによって、照射面(基板の表面)の有機系皮膜除去(洗浄)やシラノール基(Si-OH基)を形成することができ、基板表面において、上蓋層の貫通孔と対向する領域を親水化することができる。
本実施例のマイクロ流路チップでは、貫通孔を介したUV処理により、気泡除去部の貫通孔の下面側(例えば、直下の領域)を局所的に親水化できる。これにより、マイクロ流路を流れる流体と、流体内に巻き込まれた気泡とが効率良く分離され、気泡除去が効果的に行えるようになる。
上記第三実施形態に係るマイクロ流路チップ及びその製造方法の実施例を説明する。
ポストベーク処理後のマイクロ流路チップに対して、表面改質処理を行った以外は、上記第一実施例と同様にして第三実施例によるマイクロ流路チップを作製した。
具体的には、卓上型オゾン洗浄装置(OC1801C10X)を用いて、紫外線(UV)積算光量が10000mJとなるように5分間の紫外線処理(UV処理)を行った。これにより、基板表面において貫通孔と対向する領域に表面改質部を形成した。このとき、上蓋層の貫通孔を介して、基板の表面に対して紫外線の照射を行った。UV処理を行うことによって、照射面(基板の表面)の有機系皮膜除去(洗浄)やシラノール基(Si-OH基)を形成することができ、基板表面において、上蓋層の貫通孔と対向する領域を親水化することができる。
本実施例のマイクロ流路チップでは、貫通孔を介したUV処理により、気泡除去部の貫通孔の下面側(例えば、直下の領域)を局所的に親水化できる。これにより、マイクロ流路を流れる流体と、流体内に巻き込まれた気泡とが効率良く分離され、気泡除去が効果的に行えるようになる。
上述のようにして作製した本実施例によるマイクロ流路チップは、接着剤を用いることなく隔壁層と上蓋層とを溶着しており、ポストベーク時の上蓋層用の樹脂(第二感光性樹脂層)の流動によって上蓋層を形成している。これにより、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
また、本実施例のマイクロ流路チップに対し、上記第一実施例と同様にして送液試験を行った。
その結果、導入された反応溶液は、流路内を滞りなく流れ、流路内からの液漏れも一切無く、送液は良好であった。よって、本実施例のマイクロ流路チップには流体が滞りなく流れ、液漏れも無く、マイクロ流路チップとしての基本性能は備わっていることが確認できた。
また、本実施例のマイクロ流路チップに対し、上記第一実施例と同様にして送液試験を行った。
その結果、導入された反応溶液は、流路内を滞りなく流れ、流路内からの液漏れも一切無く、送液は良好であった。よって、本実施例のマイクロ流路チップには流体が滞りなく流れ、液漏れも無く、マイクロ流路チップとしての基本性能は備わっていることが確認できた。
また、流路内を流れる反応溶液には注液の際に巻き込んだ気泡が複数存在したが、気泡除去部の貫通孔から効率的に気泡が外部に排出されたことを目視で確認した。このため、気泡除去部を通過後の溶液には気泡が無く、観察の妨げになることは無かった。
よって、本実施例のマイクロ流路チップでは流体が滞りなく流れ、流路内において流体に含まれる気泡を効率良く除去できる機能が備わっていることが確認できた。
よって、本実施例のマイクロ流路チップでは流体が滞りなく流れ、流路内において流体に含まれる気泡を効率良く除去できる機能が備わっていることが確認できた。
またUV処理後において、本実施例のマイクロ流路チップについて、基板表面の表面改質部の水接触角を測定した。水接触角の測定方法は上述のように、接触角計「協和界面社製、PCA-1」を用いて、液滴法により静的接触角を測定した。本実施例において、表面改質部の水接触角は10度であった。よって、本実施例のマイクロ流路チップは、気泡除去の効率の向上に十分な親水性を有することが分かった。
<第四実施例>
上記第三実施形態の変形例に係るマイクロ流路チップ及びその製造方法の実施例を説明する。
ポストベーク処理後のマイクロ流路チップに対して、表面改質処理を行った以外は、上記第二実施例と同様に隔壁層と上蓋層とを一体形成として、第四実施例によるマイクロ流路チップを作製した。
上記第三実施形態の変形例に係るマイクロ流路チップ及びその製造方法の実施例を説明する。
ポストベーク処理後のマイクロ流路チップに対して、表面改質処理を行った以外は、上記第二実施例と同様に隔壁層と上蓋層とを一体形成として、第四実施例によるマイクロ流路チップを作製した。
具体的には、ポストベーク処理後のマイクロ流路チップに対して、表面改質処理として、卓上型オゾン洗浄装置(OC1801C10X)を用いて、紫外線(UV)積算光量が10000mJとなるように5分間の紫外線処理(UV処理)を行った。これにより、基板表面において上蓋層の貫通孔と対向する領域に表面改質部を形成した。このとき、上記第三実施例と同様に、上蓋層の貫通孔を介して、基板の表面に対して紫外線の照射を行った。
また、本実施例のマイクロ流路チップに対し、上記第一実施例と同様にして送液試験を行った。
その結果、導入された反応溶液は、流路内を滞りなく流れ、流路内からの液漏れも一切無く、送液は良好であった。よって、本実施例のマイクロ流路チップには流体が滞りなく流れ、液漏れも無く、マイクロ流路チップとしての基本性能は備わっていることが確認できた。
その結果、導入された反応溶液は、流路内を滞りなく流れ、流路内からの液漏れも一切無く、送液は良好であった。よって、本実施例のマイクロ流路チップには流体が滞りなく流れ、液漏れも無く、マイクロ流路チップとしての基本性能は備わっていることが確認できた。
また、流路内を流れる反応溶液には注液の際に巻き込んだ気泡が複数存在したが、気泡除去部の貫通孔から効率的に気泡が外部に排出されたことを目視で確認した。このため、気泡除去部を通過後の溶液には気泡が無く、観察の妨げになることは無かった。
よって、本実施例のマイクロ流路チップでは流体が滞りなく流れ、流路内において流体に含まれる気泡を効率良く除去できる機能が備わっていることが確認できた。
よって、本実施例のマイクロ流路チップでは流体が滞りなく流れ、流路内において流体に含まれる気泡を効率良く除去できる機能が備わっていることが確認できた。
またUV処理後において、本実施例のマイクロ流路チップについて、基板表面の表面改質部の水接触角を測定した。水接触角の測定方法は上述のように、接触角計「協和界面社製、PCA-1」を用いて、液滴法により静的接触角を測定した。本実施例において、表面改質部の水接触角は10度であった。よって、本実施例のマイクロ流路チップは、気泡除去の効率の向上に十分な親水性を有することが分かった。
本開示は、研究用途、診断用途、検査、分析、培養などを目的としたマイクロ流路チップにおいて、複雑な製造工程が必要なく上蓋を形成できるマイクロ流路チップ及びその製造方法として好適に使用することができる。
1,200,400,500,600、700…マイクロ流路チップ
2、32…入力部
3、23、43a、53a、63a、73…流路部
4、34…出力部
7、170…気泡除去部
10、20、40、50、60、70…基板
11、21、41a、51a、61a、71…隔壁層
12、22、42a、52a、62a、72…上蓋層
17、74、171…貫通孔
25…ホットプレート
2、32…入力部
3、23、43a、53a、63a、73…流路部
4、34…出力部
7、170…気泡除去部
10、20、40、50、60、70…基板
11、21、41a、51a、61a、71…隔壁層
12、22、42a、52a、62a、72…上蓋層
17、74、171…貫通孔
25…ホットプレート
Claims (22)
- 基部と、
前記基部上に流路を形成する隔壁部と、
前記隔壁部の前記基部とは反対側の面に形成され、前記流路の蓋となる上蓋部と、
を備え、
前記上蓋部には、該上蓋部の一部であって前記流路内に生じる気泡を除去する気泡除去部が設けられ、
前記隔壁部と前記上蓋部との間に粘着層が設けられていない
ことを特徴とするマイクロ流路チップ。 - 基部と、
前記基部上に流路を形成する隔壁部と、
前記隔壁部の前記基部とは反対側の面に形成され、前記流路の蓋となる上蓋部と、
を備え、
前記上蓋部には、該上蓋部の一部であって前記流路内に生じる気泡を除去する気泡除去部が設けられ、
前記上蓋部と前記隔壁部とは互いに溶着している
ことを特徴とするマイクロ流路チップ。 - マイクロ流路チップであって、
流路と、
前記流路の蓋となる上蓋部と、を備え、
前記上蓋部の材料は、熱流動性を有する樹脂であり、
前記上蓋部には、該上蓋部の一部であって前記流路内に生じる気泡を除去する気泡除去部が設けられている
ことを特徴とするマイクロ流路チップ。 - 前記気泡除去部は、前記上蓋部における前記流路と対向する領域に該流路の進行方向に沿って設けられている
ことを特徴とする請求項3に記載のマイクロ流路チップ。 - 前記気泡除去部は、前記上蓋部を厚さ方向に貫通する貫通孔を有する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のマイクロ流路チップ。 - 前記貫通孔の開口端の形状は、平面視で円形である
ことを特徴とする請求項5に記載のマイクロ流路チップ。 - 前記貫通孔の開口端の直径は、1μm以上100μm以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項6に記載のマイクロ流路チップ。 - 前記貫通孔の開口端の形状は、平面視で多角形状である
ことを特徴とする請求項5に記載のマイクロ流路チップ。 - 前記貫通孔の開口端の長手方向の幅は、1μm以上100μm以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項8に記載のマイクロ流路チップ。 - 前記気泡除去部は、複数の前記貫通孔を有しており、
複数の前記貫通孔の配置間隔は、5μm以上1000μm以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項5から9のいずれか1項に記載のマイクロ流路チップ。 - 前記流路の底面を構成する基部は、前記貫通孔と対向する領域が表面改質されている
ことを特徴とする請求項5から10のいずれか1項に記載のマイクロ流路チップ。 - 前記流路の底面を構成する基部は、前記貫通孔と対向する領域が親水性を有している
ことを特徴とする請求項5から11のいずれか1項に記載のマイクロ流路チップ。 - 前記流路の断面形状は角丸である、
請求項1から12のいずれか1項に記載のマイクロ流路チップ。 - 前記上蓋部は、前記流路を形成する隔壁部と別体又は一体である
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載のマイクロ流路チップ。 - 前記上蓋部は、凹部を有する
ことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載のマイクロ流路チップ。 - 前記流路を形成する隔壁部及び前記上蓋部は、樹脂材料で形成されており、
前記樹脂材料は、紫外光領域である190nm以上400nm以下の波長の光に対して感光性を有する感光性樹脂である
ことを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載のマイクロ流路チップ。 - 前記上蓋部は前記流路を形成する隔壁部と別体であって、前記隔壁部に対してガラス転移温度が低い
ことを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載のマイクロ流路チップ。 - 前記上蓋部は前記流路を形成する隔壁部と別体であって、前記隔壁部に対して露光感度が高い又は低い
ことを特徴とする請求項1から17のいずれか1項に記載のマイクロ流路チップ。 - 基部上に、感光性樹脂を塗工する工程と、
塗工した前記感光性樹脂を露光する工程と、
露光した前記感光性樹脂を現像及び洗浄し、前記基部上において流路を画定する隔壁部を形成する工程と、
前記隔壁部を加熱処理して前記感光性樹脂を流動させることにより、前記流路の上蓋部を形成し且つ該上蓋部に前記流路に生じる気泡を除去する気泡除去部として貫通孔を設ける工程と、を含む
ことを特徴とするマイクロ流路チップの製造方法。 - 基部上に、第一の感光性樹脂を塗工する工程と、
塗工した前記第一の感光性樹脂の上に、第二の感光性樹脂を塗工する工程と、
前記第一の感光性樹脂及び前記第二の感光性樹脂を露光する工程と、
露光した前記第一の感光性樹脂及び前記第二の感光性樹脂を現像及び洗浄し、前記基部上において流路を画定する隔壁部を形成する工程と、
前記隔壁部上の前記第二の感光性樹脂を加熱処理して該第二の感光性樹脂を流動させることにより、前記流路の上蓋部を形成し且つ該上蓋部に前記流路に生じる気泡を除去する気泡除去部として貫通孔を設ける工程と、を含む
ことを特徴とするマイクロ流路チップの製造方法。 - 前記基部の前記貫通孔と対向する領域に表面改質処理を行う工程をさらに含む
ことを特徴とする請求項19または20に記載のマイクロ流路チップの製造方法。 - 前記貫通孔から前記基部の前記領域に向かって紫外線を照射することにより前記表面改質処理を行い、前記基部の前記領域に親水性を付与する
ことを特徴とする請求項21に記載のマイクロ流路チップの製造方法。
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---|---|---|---|
EP22849459.7A EP4379394A1 (en) | 2021-07-27 | 2022-07-26 | Microfluidic chip and method for manufacturing microfluidic microchip |
PCT/JP2022/028683 WO2023008398A1 (ja) | 2021-07-27 | 2022-07-26 | マイクロ流路チップ及びマイクロ流路チップの製造方法 |
CN202280051722.2A CN117813513A (zh) | 2021-07-27 | 2022-07-26 | 微流路芯片及微流路芯片的制造方法 |
US18/425,328 US20240165609A1 (en) | 2021-07-27 | 2024-01-29 | Microfluidic chip and method of producing microfluidic chip |
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Publications (1)
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---|---|
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2021
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