JP2023018567A - 中性化防止剤、セメントモルタル及びコンクリート構造物 - Google Patents
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Abstract
【課題】中性化防止機能を有し、スプレ塗装が可能な中性化防止剤を提供すること。【解決手段】中性化防止剤は、コンクリートの中性化を防止する中性化防止剤であって、けい酸ナトリウムを含有し、けい酸ナトリウムのJIS K 1408:1966(けい酸ナトリウム(けい酸ソーダ))に規定されるSiO2/Na2Oのモル比が2.5以下である。中性化防止剤は、コンクリート11に施工されて、コンクリート11の中性化を防止する改質層13を形成する。【選択図】図1
Description
本明細書の技術分野は、コンクリートの中性化を防止する中性化防止剤及びセメントモルタル、並びに、中性化防止剤から形成された改質層及びセメントモルタルから形成された保護層を備えるコンクリート構造物に関する。
コンクリートの表面改質剤として、従来、下記特許文献1において、けい酸塩系の表面改質剤であって、けい酸濃度が15~24質量%であり、SiO2/Na2Oのモル比が2.3~2.7である表面改質剤が知られ、この表面改質剤で改質されたコンクリートは、透水比が低く抑えられ、優れた緻密性が得られることが知られている。
しかし、従来の表面改質剤は、表面改質剤の塗布作業性について検討されているものではない。
本明細書の技術が解決しようとする課題は、上述の点に鑑みてなされたものであり、中性化防止機能を有し、スプレ塗装が可能な中性化防止剤を提供することを目的とする。
本明細書の実施形態に係る中性化防止剤は、コンクリートの中性化を防止する中性化防止剤であって、
けい酸ナトリウムを含有し、
該けい酸ナトリウムのJIS K 1408:1966に規定されるSiO2/Na2Oのモル比が2.5以下であることを特徴とする。
けい酸ナトリウムを含有し、
該けい酸ナトリウムのJIS K 1408:1966に規定されるSiO2/Na2Oのモル比が2.5以下であることを特徴とする。
本明細書の実施形態に係る中性化防止剤によれば、けい酸ナトリウムの有するアルカリ性によって中性化防止機能を有し、モル比2.5以下であるけい酸ナトリウムが化学的に安定であるため、コンクリートに対してスプレ塗装による施工が可能なものとすることができる。
ここで、上記中性化防止剤において、前記けい酸ナトリウムの前記モル比が1.6以上であり、かつ、二酸化けい素の濃度が8~15質量%である、ものとすることができる。
これによれば、けい酸ナトリウムの二酸化けい素とコンクリートのカルシウムとが反応した成分がコンクリートの表面の細孔を塞ぐことができるため、中性化防止剤が施工されて形成された改質層を備えるコンクリートの中性化防止の効果を高めることができる。
また、上記中性化防止剤において、合成樹脂エマルジョンを含有するものとすることができる。
これによれば、改質層に合成樹脂が分散されるため、施工されたコンクリートの耐水性を高めることができる。
ここで、本明細書の実施形態に係るセメントモルタルは、上記中性化防止剤と組み合わせて使用されるセメントモルタルであって、
セメント、合成樹脂及び骨材を含有し、
該骨材は、骨材粒子の少なくとも30質量%が金属製網ふるい(JIS Z 8801-1:2019)公称目開き300μmを通過せず、少なくとも20質量%が公称目開き180μmを通過する、
ことを特徴とする。
セメント、合成樹脂及び骨材を含有し、
該骨材は、骨材粒子の少なくとも30質量%が金属製網ふるい(JIS Z 8801-1:2019)公称目開き300μmを通過せず、少なくとも20質量%が公称目開き180μmを通過する、
ことを特徴とする。
本明細書の実施形態に係るセメントモルタルによれば、セメントモルタルから形成された保護層は、セメントがコンクリートにアルカリ性を付与するため、コンクリートの中性化を防止することができ、骨材の粒子の大きさの組み合わせ及び合成樹脂が分散されていることにより、保護層の耐水性を高めることができる。
ここで、本明細書の実施形態に係るコンクリート構造物は、内面側に、上記中性化防止剤から形成された改質層を備え、外面側に、上記セメントモルタルから形成された保護層を備える、ことを特徴とする。
本明細書の実施形態に係るコンクリート構造物によれば、雨水等にさらされる外面側に、セメントモルタルから形成された保護層を備えているため、適切に中性化防止を図ることができる。
本明細書の中性化防止剤によれば、中性化防止機能を有し、スプレ塗装による施工が可能なものとすることができる。
以下、本明細書の実施形態に係る中性化防止剤、セメントモルタル及びコンクリート構造物について説明する。なお、本発明の範囲は、実施形態で開示される範囲に限定されるものではない。図1に示すように、実施形態に係る中性化防止剤は、コンクリート11に施工されて、コンクリート11の中性化を防止する改質層13を形成する。実施形態に係るセメントモルタルは、コンクリート11に施工されて、コンクリート11の中性化を防止する保護層15を形成する。また、実施形態に係るコンクリート構造物1は、内面側に中性化防止剤から形成された改質層13を備え、外面側にセメントモルタルから形成された保護層15を備え、適切に中性化防止を図ることができるものである。
改質層13を形成する実施形態の中性化防止剤は、けい酸ナトリウム(水ガラス)、水酸化ナトリウム、希釈水を含有し、JIS K 1408:1966(けい酸ナトリウム(けい酸ソーダ))に規定されるモル比(SiO2/Na2O)が2.5以下であるものである。
中性化防止剤は、中性化防止剤がコンクリート11に施工された際に、中性化防止剤のナトリウムイオン(酸化ナトリウム(Na2O))がコンクリート11に浸入し、中性化防止機能を発揮する。また、けい酸ナトリウムの二酸化けい素から溶出されるけい酸イオンミセルがコンクリート11のカルシウムと結合し、コンクリート11の表面の細孔を閉塞するけい酸カルシウムが形成され、コンクリート11は、二酸化炭素や酸性雨などの中性化促進成分の浸入が抑制される。
本願発明者は、中性化防止剤のモル比(SiO2/Na2O)が2.5以下であることにより、中性化防止剤をスプレ塗装による施工が可能であることを見出したものである。中性化防止剤は、モル比が2.5以下であることにより、化学的安定性に欠ける二酸化けい素(SiO2)をナトリウムイオンによって溶解させて、化学的に安定化させているため、スプレ塗装による施工が可能となるものである。中性化防止剤のモル比が2.5を超える場合には、二酸化けい素が化学的安定性に欠け、スプレ塗装の際に、スプレガンの吐出口で二酸化けい素が析出し、目詰まりが生じるおそれがある。別の実施形態として、中性化防止剤のモル比は、1.6~2.4とすることができる。中性化防止剤のモル比が1.6未満だと、スプレ塗装による施工は可能であるものの、ナトリウムイオン(酸化ナトリウム)が過剰に含まれているため、ナトリウムイオンが、コンクリート11の表面の細孔を埋めたけい酸カルシウムを再溶解させ、中性化防止効果が十分に得られないおそれがある。さらに別の実施形態として、中性化防止剤のモル比は、1.85~2.25とすることができる。
実施形態の中性化防止剤では、酸化ナトリウムを4~9質量%含有するものとすることができる。施工されて中性化防止剤から形成された改質層13を備えるコンクリート11の中性化防止の効果を発揮することができるためである。酸化ナトリウムの含有量が4質量%未満だと、アルカリ性(ナトリウムイオン)が少なく、中性化防止の効果を十分に発揮することができないおそれがある。一方、9質量%を超えると、酸化ナトリウムが水に対する親和性が大きいことにより、改質層13の耐水性が劣るおそれがある。別の実施形態として、中性化防止剤の酸化ナトリウムの含有量は、4.5~8質量%、さらに別の実施形態として、5~7質量%、とすることができる。
実施形態の中性化防止剤では、二酸化けい素を8~14質量%含有するものとすることができる。施工されて中性化防止剤から形成された改質層13を備えるコンクリート11の中性化防止の効果を発揮することができるためである。二酸化けい素の含有量が8質量%未満だと、中性化防止剤に含まれる二酸化けい素の全体量が少なく、コンクリート11の表面の細孔を十分に閉塞することができないおそれがある。一方、二酸化けい素の含有量が14質量%を超えると、モル比によっては、相対的に酸化ナトリウムの含有量が多くなり、中性化防止剤から形成される改質層13の耐水性が劣るおそれがある。別の実施形態として、中性化防止剤の二酸化けい素含有量は、9~13質量%、さらに別の実施形態として、9.5~12質量%、とすることができる。
実施形態の中性化防止剤は、けい酸ナトリウム(水ガラス)に、水酸化ナトリウムと希釈水を適宜加えることにより、調製することができる。
また、実施形態の中性化防止剤には、合成樹脂エマルジョンを含有させることができる。合成樹脂エマルジョンを含有させることにより、中性化防止剤から形成される改質層13は、耐水性を高めることができる。合成樹脂エマルジョンを構成する合成樹脂として、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、バーサチック酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、スチレンブタジエン樹脂などを使用することができる。別の実施形態として、中性化防止剤には、耐水性をより高めることができるスチレンブタジエン樹脂エマルジョンを含有させることができる。
実施形態のセメントモルタルは、モルタル粉体主材と混錬水とが混錬されてなる1材型のセメントモルタルと、モルタル粉体主材と(混錬水を含む)セメントモルタル混和液とが混錬されてなる2材型のセメントモルタルとを使用することができる。セメントモルタルは、コンクリート11に塗布されることにより、コンクリート11の中性化を防止する保護層15が形成される。
セメントモルタル粉体主材は、詳しくは、セメント、再乳化形粉末樹脂(合成樹脂)、骨材、を含有し、必要により、増粘剤、繊維及び防蟻剤を含有することができる。これらは、全て粉体状の原材料であり、ナウターミキサ、パドルミキサなどの粉体混合機を用いて混合することによって、セメントモルタル粉体主材とすることができる。
セメントとは、水と結合することによって硬化する材料であり、ポルトランドセメント(JIS R 5210-2019)に規定される普通ポルトランドセメントを好適に使用することができる。なお、セメントモルタルには、本発明の効果を阻害しない範囲内で、他のセメントも使用することができる。他のセメントとしては、早強セメント、超早強セメント、ホワイトセメントなどを使用することができる。
再乳化形粉末樹脂とは、乳化重合によって製造した合成樹脂エマルジョンを粒子状態で乾燥して得られた微粉末樹脂であり、水を添加して撹拌すると再乳化するものである。再乳化形粉末樹脂は、セメントモルタルに配合することにより、セメントモルタルから形成される保護層15の耐水性を高めるとともに、保護層15に可とう性を付与し、コンクリート11の伸縮に対して追従可能とすることができるものである。このため、コンクリート構造物の雨水等にさらされる外面側への施工に適している(図1)。再乳化形粉末樹脂は、セメント混和用ポリマーディスパージョン及び再乳化形粉末樹脂(JIS A 6203:2015)に規定される再乳化形粉末樹脂を使用することができ、市販品として、モビニールパウダー(ジャパンコーティングレジン株式会社製)、スミカフレックス(住化ケムテックス株式会社)、アクロナール(BASF株式会社製)、ELOTEX(セラニーズジャパン株式会社)などの再乳化形粉末樹脂を使用することができる。実施形態のセメントモルタルでは、再乳化形粉末樹脂の配合量は、1材型のセメントモルタルの場合、セメント100質量部に対して、20~100質量部である。再乳化形粉末樹脂の配合量がセメント100質量部に対して20質量部未満である場合には、保護層15の耐水性を高めることができないおそれがある。一方、セメント100質量部に対して100質量部を超えると、再乳化形粉末樹脂は水に親和する成分を多く含有しているため、保護層15の耐水性が劣るおそれがある。別の実施形態として、再乳化形粉末樹脂の配合量は、セメント100質量部に対して、30~80質量部、さらに別の実施形態として、40~60質量部とすることができる。2材型のセメントモルタルの場合、再乳化形粉末樹脂の配合量は、セメント100質量部に対して、5~100質量部であり、別の実施形態として、10~80質量部、さらに別の実施形態として、20~60質量部とすることができる。
骨材とは、セメントモルタルに混合させることにより、セメントモルタルから形成される保護層15の物理的強度を向上させつつ、セメントモルタルの増量材として原材料コストを抑える役割を持つ材料である。実施形態のセメントモルタルに適した骨材として、珪砂、寒水石(石灰石粉砕物)砕石粉などを使用することができ、別の実施形態として珪砂を使用することができる。実施形態のセメントモルタルでは、骨材の配合量は、セメント100質量部に対して、50~800質量部である。骨材の配合量がセメント100質量部に対して50質量部未満である場合には、保護層15の物理的強度を高めることができないおそれがある。一方、セメント100質量部に対して800質量部を超えると、骨材に対して結合材(セメント、合成樹脂)が少ないため、保護層15の強度が劣るおそれがある。別の実施形態として、骨材の配合量は、セメント100質量部に対して、100~600質量部、さらに別の実施形態として、200~400質量部とすることができる。
実施形態の骨材の粒度は、金属製網ふるい(JIS Z 8801-1:2019)公称目開き300μmを通過しない粗粒子が少なくとも30質量%、公称目開き180μmを通過する細粒子が少なくとも20質量%、含有しているものとすることができる。粗粒子と細粒子の組み合わせにより、セメントモルタルから形成される保護層15を緻密なものとすることができ、保護層15の耐水性を高めることができるためである。別の実施形態として、骨材の粒度は、金属製網ふるい公称目開き300μmを通過しない粗粒子が少なくとも40質量%、公称目開き180μmを通過する細粒子が少なくとも30質量%、含有するものとすることができる。
増粘剤は、セメントモルタルの施工時の作業性の調整や垂れを防止するために添加する材料である。増粘剤として、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)などを選択して適宜添加することができる。
繊維は、セメントモルタルの施工時の作業性の調整や垂れを防止するために添加する材料である。繊維として、合成樹脂繊維、ガラス繊維などを適宜選択することができる。
防蟻材は、蟻を忌避する添加剤であり、防蟻材として、アクリナトリン、エトフェンプロックス、ビフェントリンなどのピレスロイド系化合物、クロルフルアズロン、フルフェノクスロン、メトキシフェノジドなどの昆虫成長調節剤、クロルフェナピル、フィプロニル、エチプロールなどの殺虫剤、(E)-1-(2-クロロ-1,3-チアゾール-5-イルメチル)-3-メチル-2-ニトログアニジン又は1-(6-クロロ-3-ピリジルメチル)-N-ニトロイミダゾリジン-2-イリデンアミン等を用いることができる。これらの防蟻剤は合成樹脂で被覆して粉末状であることが好ましい。特に防蟻剤が合成樹脂で被覆されていることにより、アルカリ性であるセメントモルタル及びコンクリート中性化防止剤による不活化を抑制することができる。
セメントモルタル混和液は、詳しくは、合成樹脂エマルジョン、を含有し、必要により、水、消泡剤、増粘剤、防腐剤、pH調整剤を含有させることができる。これらは、ディゾルバーミキサなどの混合機を用いて混合することによって、セメントモルタル混和液とすることができる。
合成樹脂エマルジョンは、セメント混和性を有する市販品を使用することができる。市販品として、ポリトロン(旭化成株式会社製)、ペガール(高圧ガス工業株式会社性)、アクロナール(BASF株式会社製)などの合成樹脂エマルジョンを適宜選定して使用することができる。
水は、セメントの混錬水としても作用するものである。従って、セメントの混錬水が合成樹脂エマルションに含まれる水分でまかなえる際には、省略することができる。
消泡剤は、セメントモルタル混和液の泡立ちを抑制するものであり、市販品を適宜使用することができる。増粘剤は、セメントモルタル混和液の沈降分離を抑制するものであり、市販品を適宜使用することができる。防腐剤は、セメントモルタル混和液の腐敗を抑制するものであり、市販品を適宜使用することができる。pH調整材は、セメントモルタル混和液のpHを調整し、沈降分離を抑制するものであり、市販品を適宜使用することができる。
実施形態の中性化防止剤及びセメントモルタルは、コンクリート基礎(ベタ基礎、布基礎)、鉄筋コンクリート建築物、鉄筋コンクリート構造物、橋梁下部構造(橋台、橋脚)などのコンクリート構造物1に施工することができる。
次に、実施形態の中性化防止剤及びセメントモルタルの施工方法について、図1に示すように、ベタ基礎への施工を例にして説明する。
中性化防止剤の施工は、コンクリート基礎(ベタ基礎)のコンクリートの打設、脱型後のベタ基礎(コンクリート11)に、電池式噴霧器や手動式噴霧器などのスプレ塗装機を用いて塗装する。これらスプレ塗装機は、電源や特別な装置を必要としないため、電源等が確保されていない状態のコンクリート構造物1であっても施工部位を選ぶことなく施工することができる。なお、これらスプレ塗装機の吹付圧力は、0.3~1.5MPaである。
塗装の際、中性化防止剤は、そのモル比が2.5以下であるため、噴霧器の吐出口で目詰まりが生じることはない。スプレ塗装が可能であるため、他の塗装方法(ローラ塗りや刷毛塗りなど)と比して、中性化防止剤を早く塗装することができる。中性化防止剤が施工されることにより、ベタ基礎(コンクリート11)に中性化防止機能を備える改質層13が形成される。
中性化防止剤の施工(塗装)部位は、図1に示すように、ベタ基礎の外面側を除いた内面側である。内面側は、建物が建てられることにより、雨水等にさらされることが少ないためである。なお、未塗装部分が生じるのを防ぐため、ベタ基礎の外面側の上端側まで施工することができる。
中性化防止剤の施工後に、セメントモルタルの施工を行なうが、セメントモルタルの施工は、内装を除く建物が建てられた後に行うことができる。セメントモルタルの施工部位は、ベタ基礎の外面側であり、目視で確認できる範囲であり、建物の建築中に、セメントモルタルから形成される保護層15が損傷を受けることを防止するためである。セメントモルタルの施工は、塗装厚を確保することができるローラや左官鏝を用いて塗装する。実施形態では、セメントモルタルの施工に、ローラとして多孔質ローラを使用した。セメントモルタルが施工されることにより、ベタ基礎(コンクリート11)外面側に、中性化防止機能と耐水性を備える保護層15が形成される。保護層15の上側(表面側)には、汎用の着色塗料を塗装し、着色層16を形成することができる。
このようにして形成されたコンクリート構造物1は、内面側では、けい酸ナトリウムからなる改質層13のアルカリ性によって、中性化防止機能が発揮される。外面側では、セメントモルタルからなる保護層15に含有されるセメントによって、中性化防止機能が発揮され、骨材の粒子の大きさの組み合わせ及び合成樹脂が分散されていることにより、耐水性が発揮される。
実施形態の中性化防止剤は、組成の異なる中性化防止剤について、以下に記載する噴霧性試験と中性化防止性試験を行ない、その評価を行なった。
噴霧性試験
噴霧性試験は、タンク容量5Lの噴霧器(電池式噴霧器IR-N5000(アイリスオーヤマ株式会社製))に中性化防止剤を4L注入し、中性化防止剤4Lを連続噴霧することによって試験を行なった。そして、試験結果は、中性化防止剤4L全て噴霧することができノズルにつまりが生じなかったものを○、4L全て噴霧することができたもののノズルにつまりが生じ吐出量に変化が見られたものを△、ノズルにつまりが生じ4L全てを噴霧することができなかったものを×、として評価した。
噴霧性試験は、タンク容量5Lの噴霧器(電池式噴霧器IR-N5000(アイリスオーヤマ株式会社製))に中性化防止剤を4L注入し、中性化防止剤4Lを連続噴霧することによって試験を行なった。そして、試験結果は、中性化防止剤4L全て噴霧することができノズルにつまりが生じなかったものを○、4L全て噴霧することができたもののノズルにつまりが生じ吐出量に変化が見られたものを△、ノズルにつまりが生じ4L全てを噴霧することができなかったものを×、として評価した。
中性化防止性試験
中性化防止性試験の試験体は、40×40×160mmのセメントモルタル(セメント:砂=1:3)の6面全てに、中性化防止剤を100g/m2の塗布量で施工し、試験体とした。中性化防止性試験は、試験体を、屋外で半年間暴露し、長手方向略中心を短手方向に割裂し、断面にフェノールフタレイン溶液(1%)を噴霧して、紫色に変化しない中性化深さを測定することによって試験を行なった。そして、試験結果は、中性化深さが、1mm以下であるものを○、1mmを超え3mm以下であるものを△、3mmを超えるものを×、として評価した。
中性化防止性試験の試験体は、40×40×160mmのセメントモルタル(セメント:砂=1:3)の6面全てに、中性化防止剤を100g/m2の塗布量で施工し、試験体とした。中性化防止性試験は、試験体を、屋外で半年間暴露し、長手方向略中心を短手方向に割裂し、断面にフェノールフタレイン溶液(1%)を噴霧して、紫色に変化しない中性化深さを測定することによって試験を行なった。そして、試験結果は、中性化深さが、1mm以下であるものを○、1mmを超え3mm以下であるものを△、3mmを超えるものを×、として評価した。
中性化防止剤の試験例を表1に記載する。なお、試験例1~6、9、10が実施例であり、試験例7、8が比較例である。
(試験例1~6)
試験例1~6は、けい酸ナトリウムのSiO2/Na2Oのモル比が1.6~2.5にある試験例である。試験例1~6は、SiO2/Na2Oのモル比が2.5以下であるため、噴霧性試験において、ノズルにつまりが生じることなく、4L全て噴霧することができ、モル比が1.6以上であるため、中性化防止性能も十分に満たされるものであった。なお、モル比が1.86の試験例5は、中性化防止性試験の結果が○であるものの、ぎりぎりに近い値であった。また、これらの試験例の中で、ベストモードとなるものは、試験例1~4であり、これらの性能に甲乙付け難いものであったが、あえて1つを選定する場合には、試験例1である。
試験例1~6は、けい酸ナトリウムのSiO2/Na2Oのモル比が1.6~2.5にある試験例である。試験例1~6は、SiO2/Na2Oのモル比が2.5以下であるため、噴霧性試験において、ノズルにつまりが生じることなく、4L全て噴霧することができ、モル比が1.6以上であるため、中性化防止性能も十分に満たされるものであった。なお、モル比が1.86の試験例5は、中性化防止性試験の結果が○であるものの、ぎりぎりに近い値であった。また、これらの試験例の中で、ベストモードとなるものは、試験例1~4であり、これらの性能に甲乙付け難いものであったが、あえて1つを選定する場合には、試験例1である。
(試験例7、8)
試験例7、8は、けい酸ナトリウムのSiO2/Na2Oのモル比が2.5を超える試験例である。試験例7、8は、SiO2/Na2Oのモル比が2.5を超えるため、噴霧性試験において、ノズルにつまりが生じ、4L全て噴霧することができなかった。なお、中性化防止性能は、十分に満たされるものであった。
試験例7、8は、けい酸ナトリウムのSiO2/Na2Oのモル比が2.5を超える試験例である。試験例7、8は、SiO2/Na2Oのモル比が2.5を超えるため、噴霧性試験において、ノズルにつまりが生じ、4L全て噴霧することができなかった。なお、中性化防止性能は、十分に満たされるものであった。
(試験例9、10)
試験例9、10は、けい酸ナトリウムのSiO2/Na2Oのモル比がそれぞれ1.65と1.60の試験例である。試験例9、10は、噴霧性試験において、ノズルにつまりが生じることなく、4L全て噴霧することができたものの、中性化防止性能がやや劣るものであった。
試験例9、10は、けい酸ナトリウムのSiO2/Na2Oのモル比がそれぞれ1.65と1.60の試験例である。試験例9、10は、噴霧性試験において、ノズルにつまりが生じることなく、4L全て噴霧することができたものの、中性化防止性能がやや劣るものであった。
実施形態のセメントモルタルは、組成の異なるセメントモルタルについて、以下に記載する耐水性試験と、先に記載した中性化防止性試験を行ない、その評価を行なった。
耐水性試験
耐水性試験は、JIS A 6909:2014(建築仕上塗材)の透水性試験B法に従って試験を行なった。そして、試験結果は、透水量が0.5mL以下であるものを○、0.5mLを超え1.0mL以下であるものを△、1.0mLを超えるものを×、として評価した。
耐水性試験は、JIS A 6909:2014(建築仕上塗材)の透水性試験B法に従って試験を行なった。そして、試験結果は、透水量が0.5mL以下であるものを○、0.5mLを超え1.0mL以下であるものを△、1.0mLを超えるものを×、として評価した。
セメントモルタルの試験例を表2に記載する。なお、試験例11~13が実施例であり、試験例14、15が比較例である。また、セメントモルタルに含有される珪砂の粒度分布を表3に記載し、セメントモルタル混和液の配合を表4に記載する。
(試験例11)
試験例11は、1材型のセメントモルタルであり、セメント100質量部に対し、骨材が300質量部含有されているため、保護層15の物理的強度が高められている。また、試験例11は、骨材が、金属製網ふるい公称目開き300μmを通過しない粗粒子を少なくとも30質量%、公称目開き180μmを通過する細粒子を少なくとも20質量%、含有しているため、粗粒子と細粒子の組み合わせにより、保護層15の耐水性が高められ、再乳化形粉末樹脂により、さらに保護層15の耐水性が高められている。
試験例11は、1材型のセメントモルタルであり、セメント100質量部に対し、骨材が300質量部含有されているため、保護層15の物理的強度が高められている。また、試験例11は、骨材が、金属製網ふるい公称目開き300μmを通過しない粗粒子を少なくとも30質量%、公称目開き180μmを通過する細粒子を少なくとも20質量%、含有しているため、粗粒子と細粒子の組み合わせにより、保護層15の耐水性が高められ、再乳化形粉末樹脂により、さらに保護層15の耐水性が高められている。
(試験例12、13)
試験例12、13は、2材型のセメントモルタルであり、セメント100質量部に対し、骨材が300質量部含有されているため、保護層15の物理的強度が高められている。また、試験例12、13は、骨材が、金属製網ふるい公称目開き300μmを通過しない粗粒子を少なくとも30質量%、公称目開き180μmを通過する細粒子を少なくとも20質量%、含有しているため、粗粒子と細粒子の組み合わせにより、保護層15の耐水性が高められている。また、試験例12、13は、セメントモルタル混和液に含有されるアクリル樹脂により、さらに保護層15の耐水性が高められている。なお、試験例12と試験例13は、骨材の粒度分布が異なる。
試験例12、13は、2材型のセメントモルタルであり、セメント100質量部に対し、骨材が300質量部含有されているため、保護層15の物理的強度が高められている。また、試験例12、13は、骨材が、金属製網ふるい公称目開き300μmを通過しない粗粒子を少なくとも30質量%、公称目開き180μmを通過する細粒子を少なくとも20質量%、含有しているため、粗粒子と細粒子の組み合わせにより、保護層15の耐水性が高められている。また、試験例12、13は、セメントモルタル混和液に含有されるアクリル樹脂により、さらに保護層15の耐水性が高められている。なお、試験例12と試験例13は、骨材の粒度分布が異なる。
(試験例14、15)
試験例14、15は、試験例12、13からさらに骨材の粒度分布を変更したものである。試験例14は、骨材の粒度が、金属製網ふるい公称目開き300μmを通過しない粗粒子が30質量%に満たないものである。試験例15は、骨材の粒度が、公称目開き180μmを通過する細粒子が20質量%に満たないものである。このため、試験例14、15は、耐水性が劣り、これに伴い、中性化防止性もやや劣るものとなった。
試験例14、15は、試験例12、13からさらに骨材の粒度分布を変更したものである。試験例14は、骨材の粒度が、金属製網ふるい公称目開き300μmを通過しない粗粒子が30質量%に満たないものである。試験例15は、骨材の粒度が、公称目開き180μmを通過する細粒子が20質量%に満たないものである。このため、試験例14、15は、耐水性が劣り、これに伴い、中性化防止性もやや劣るものとなった。
1…コンクリート構造物、11…コンクリート、13…改質層、15…保護層、16…着色層。
Claims (5)
- コンクリートの中性化を防止する中性化防止剤であって、
けい酸ナトリウムを含有し、
該けい酸ナトリウムのJIS K 1408:1966に規定されるSiO2/Na2Oのモル比が2.5以下であることを特徴とする中性化防止剤。 - 前記けい酸ナトリウムの前記モル比が1.6以上であり、かつ、二酸化けい素の濃度が8~14質量%である、ことを特徴とする請求項1に記載の中性化防止剤。
- 合成樹脂エマルジョンを含有することを特徴とする請求項1に記載の中性化防止剤。
- 請求項1に記載の中性化防止剤と組み合わせて使用されるセメントモルタルであって、
セメント、合成樹脂及び骨材を含有し、
該骨材は、骨材粒子の少なくとも30質量%が金属製網ふるい(JIS Z 8801-1:2019)公称目開き300μmを通過せず、少なくとも20質量%が公称目開き180μmを通過する、
ことを特徴とするセメントモルタル。 - 内面側に、請求項1に記載の中性化防止剤から形成された改質層を備え、外面側に、請求項5に記載のセメントモルタルから形成された保護層を備える、ことを特徴とするコンクリート構造物。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2021122781A JP2023018567A (ja) | 2021-07-27 | 2021-07-27 | 中性化防止剤、セメントモルタル及びコンクリート構造物 |
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- 2021-07-27 JP JP2021122781A patent/JP2023018567A/ja active Pending
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