JP2023016028A - 樹脂組成物 - Google Patents

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JP2023016028A JP2022114750A JP2022114750A JP2023016028A JP 2023016028 A JP2023016028 A JP 2023016028A JP 2022114750 A JP2022114750 A JP 2022114750A JP 2022114750 A JP2022114750 A JP 2022114750A JP 2023016028 A JP2023016028 A JP 2023016028A
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友裕 頼末
Tomohiro Yorisue
昌樹 米谷
Masaki Yonetani
隆志 岩田
Takashi Iwata
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Abstract

【課題】樹脂組成物の粘度安定性を高め、透明性を向上させてヘイズを低減し、無機膜形成後の再加熱工程で、より高い温度までシワが入らないポリイミド樹脂膜とポリイミド前駆体樹脂組成物を提供すること。【解決手段】一般式(1)で表されるポリイミド前駆体、及び/または、一般式(2)で表されるポリイミドを含み、更に、非プロトン性極性溶媒と、水と混和しない含酸素有機化合物とを含み、前記非プロトン性極性溶媒100質量%に対し、前記水と混和しない含酸素有機化合物を0.001~20質量%含むことを特徴とする、樹脂組成物。TIFF2023016028000047.tif41150{式中、P1は、2価の有機基を示し、P2は、4価の有機基を示し、かつpは、正の整数を示す。}【選択図】図1

Description

本発明は、ポリイミド前駆体/ポリイミド含有樹脂組成物及びポリイミドフィルムに関する。本発明はさらに、ポリイミド前駆体/ポリイミド含有樹脂組成物の製造方法、並びにポリイミドフィルム、ディスプレイ、積層体及びフレキシブルデバイスの製造方法にも関する。
ポリイミド樹脂は、不溶、不融の超耐熱性樹脂であり、耐熱酸化性、耐熱特性、耐放射線性、耐低温性、耐薬品性等に優れた特性を有している。このため、ポリイミド樹脂は、電子材料を含む広範囲な分野で用いられている。電子材料分野におけるポリイミド樹脂の適用例としては、例えば絶縁コーティング材、絶縁膜、半導体、薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ(TFT-LCD)の電極保護膜等を挙げることができる。最近は、ポリイミドフィルムの軽さ、柔軟性などを利用して、ディスプレイ材料の分野において従来使用されていたガラス基板に代わり、フレキシブル基板としても採用が検討されている。
例えば、特許文献1には、トリメリット酸クロライドと、R1~R4が炭素数1~3までのアルキル基であるオルト位アルキル化メチレンビスアニリンから合成されるポリアミドイミド構造を含む樹脂が開示されている。このポリアミドイミド樹脂は、低沸点溶媒を含む多様な溶媒に可溶であり、容易にスクリーン印刷可能なインクとすることができるため、低温で乾燥できるプリント基板向けカバーレイインクとしての使用が期待されている。
特開2015-74778号公報
しかしながら、ディスプレイ用途に用いた場合に、ポリイミド樹脂膜の曇り度(ヘイズともいう)が高いと視認性が悪化するため、ポリイミド樹脂膜のヘイズにも改善の余地がある。
それから、ディスプレイ製造工程においては、ポリイミド樹脂膜の上に、CVDやスパッタによって窒化ケイ素や酸化シリコン等の無機膜を形成し、更にその上に形成したシリコンを加熱する工程が含まれるが、その加熱工程でシリコンの特性改善のため加熱温度を上げて行くと、ポリイミド樹脂膜にシワが入る場合があり、この場合、より高い温度まで加熱してもシワが入らないよう、ポリイミド樹脂膜の改善が必要である。
また、樹脂組成物の保存時の粘度安定性を高めた、すなわち、樹脂組成物の粘度の経時変化を抑え、取り扱い性の良い樹脂組成物とすることも求められている。
したがって、本発明は、上記の事情に鑑みて為されたものであり、ポリイミド前駆体及び/又はポリイミド含有樹脂組成物の製造プロセスに求められる特性、及びディスプレイ用途に求められるその他の特性の双方に優れるポリイミドフィルム、及びこれを形成するための樹脂組成物を提供することを目的とする。
特に、本発明は、樹脂組成物の粘度安定性を高め、透明性を向上させてヘイズを低減し、無機膜形成後の再加熱工程で、より高い温度までシワが入らないポリイミド樹脂膜とポリイミド前駆体樹脂組成物を提供することを目的とする。
[1]
下記一般式(1):
Figure 2023016028000002
{式中、P1は、2価の有機基を示し、P2は、4価の有機基を示し、かつpは、正の整数を示す。}
で表されるポリイミド前駆体、及び/または、下記一般式(2):
Figure 2023016028000003
{式中、P1は、2価の有機基を示し、P2は、4価の有機基を示し、かつpは、正の整数を示す。}
で表されるポリイミドを含み、
更に、非プロトン性極性溶媒と、水と混和しない含酸素有機化合物を含み、
前記水と混和しない含酸素有機化合物が、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸3-メトキシブチル、酪酸エチル、エトキシプロピオン酸エチル、4-メチルテトラヒドロピラン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン及び炭酸ジエチルからなる群から選ばれるいずれか1種以上であり、
前記非プロトン性極性溶媒100質量%に対し、前記水と混和しない含酸素有機化合物を0.001~20質量%含むことを特徴とする、樹脂組成物。
[2]
樹脂1分子内に、下記一般式(1):
Figure 2023016028000004
{式中、P1は、2価の有機基を示し、P2は、4価の有機基を示し、かつpは、正の整数を示す。}
で表されるポリイミド前駆体骨格、及び、下記一般式(2):
Figure 2023016028000005
{式中、P1は、2価の有機基を示し、P2は、4価の有機基を示し、かつpは、正の整数を示す。}
で表されるポリイミド骨格を含む、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]
前記P1又はP2は、下記一般式(5):
Figure 2023016028000006
{式中、R1は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1~10の二価の有機基であり、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1~10の一価の有機基であり、少なくとも一つは炭素数1~5の一価の脂肪族炭化水素基であり、R4及びR5は、それぞれ独立に、炭素数1~10の一価の有機基であり、少なくとも一つは炭素数6~10の一価の芳香族基であり、R6及びR7は、それぞれ独立に、炭素数1~10の一価の有機基であり、L1及びL2は、それぞれ独立に、アミノ基、酸無水物基、イソシアネート基、カルボキシル基、酸エステル基、酸ハライド基、ヒドロキシ基、エポキシ基、又はメルカプト基であり、iは、1~200の整数であり、j及びkは、それぞれ独立に、0~200の整数であり、0≦j/(i+j+k)≦0.50であり、かつ官能基当量が800以上である。}
で表されるケイ素含有化合物に由来する構成単位を含む[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4]
前記非プロトン性極性溶媒が、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、γ-ブチロラクトン及びγ-バレロラクトンからなる群のいずれか1種以上を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]
前記水と混和しない含酸素有機化合物が、炭酸ジエチルである、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]
前記P1が、下記一般式(3):
Figure 2023016028000007
で表されるジアミンに由来する構成単位を含み、
又は、前記P2が、下記一般式(4):
Figure 2023016028000008
で表される酸二無水物に由来する構成単位を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]
前記ケイ素含有化合物の含量が、
全モノマー質量を100質量%としたとき、0.5質量%以上20質量%以下である、[3]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]
前記L1及びL2が、それぞれ独立に、アミノ基である、[3]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]
前記ポリイミド前駆体又は前記ポリイミドを加熱して得られるポリイミド樹脂膜が、フレキシブルディスプレイに用いられる、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10]
前記ポリイミド前駆体又は前記ポリイミドを加熱して得られるポリイミド樹脂膜が、前記水と混和しない含酸素有機化合物を実質的に含まない、[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11]
支持体の表面上に、[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を塗布する塗布工程と、
該樹脂組成物を加熱してポリイミド樹脂膜を形成する膜形成工程と、
該ポリイミド樹脂膜を該支持体から剥離する剥離工程と、
を含む、ポリイミド樹脂膜の製造方法。
[12]
前記剥離工程に先立って、前記支持体側から前記樹脂組成物にレーザーを照射する照射工程を含む、[11]に記載のポリイミド樹脂膜の製造方法。
[13]
支持体の表面上に、[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を塗布する塗布工程と、
該樹脂組成物を加熱してポリイミド樹脂膜を形成する膜形成工程と、
該ポリイミド樹脂膜上に素子を形成する素子形成工程と、
該素子が形成された該ポリイミド樹脂膜を該支持体から剥離する剥離工程と、
を含む、ディスプレイの製造方法。
[14]
支持体の表面上に、[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を塗布する塗布工程と、
該樹脂組成物を加熱してポリイミド樹脂膜を形成する膜形成工程と、
該ポリイミド樹脂膜上に素子を形成する素子形成工程と、
を含む、積層体の製造方法。
[15]
前記素子が形成された前記ポリイミド樹脂膜を前記支持体から剥離する工程をさらに含む、[14]に記載の積層体の製造方法。
[16]
[14]又は[15]に記載の方法により積層体を製造することを含む、フレキシブルデバイスの製造方法。
[17]
下記一般式(1):
Figure 2023016028000009
{式中、P1は、2価の有機基を示し、P2は、4価の有機基を示し、かつpは、正の整数を示す。}
で表されるポリイミド前駆体、及び/または、下記一般式(2):
Figure 2023016028000010
{式中、P1は、2価の有機基を示し、P2は、4価の有機基を示し、かつpは、正の整数を示す。}
で表されるポリイミドを含み、
前記P1又はP2は、下記一般式(5):
Figure 2023016028000011
{式中、R1は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1~10の二価の有機基であり、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1~10の一価の有機基であり、少なくとも一つは炭素数1~5の一価の脂肪族炭化水素基であり、R4及びR5は、それぞれ独立に、炭素数1~10の一価の有機基であり、少なくとも一つは炭素数6~10の一価の芳香族基であり、R6及びR7は、それぞれ独立に、炭素数1~10の一価の有機基であり、L1及びL2は、それぞれ独立に、アミノ基、酸無水物基、イソシアネート基、カルボキシル基、酸エステル基、酸ハライド基、ヒドロキシ基、エポキシ基、又はメルカプト基であり、iは、1~200の整数であり、j及びkは、それぞれ独立に、0~200の整数であり、0≦j/(i+j+k)≦0.50であり、かつ官能基当量が800以上である。}
で表されるケイ素含有化合物に由来する構成単位を含み、
更に、非プロトン性極性溶媒と、水と混和しない含酸素有機化合物とを含み、
前記非プロトン性極性溶媒100質量%に対し、前記水と混和しない含酸素有機化合物を0.001~20質量%含むことを特徴とする、樹脂組成物。
[18]
下記一般式(1):
Figure 2023016028000012
{式中、P1は、2価の有機基を示し、P2は、4価の有機基を示し、かつpは、正の整数を示す。}
で表されるポリイミド前駆体、及び/または、下記一般式(2):
Figure 2023016028000013
{式中、P1は、2価の有機基を示し、P2は、4価の有機基を示し、かつpは、正の整数を示す。}
で表されるポリイミドを含み、
更に、非プロトン性極性溶媒と、水と混和しない含酸素有機化合物とを含み(ただし、前記水と混和しない含酸素有機化合物は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテートは含まない)、
前記非プロトン性極性溶媒100質量%に対し、前記水と混和しない含酸素有機化合物を0.001~20質量%含むことを特徴とする、樹脂組成物。
本発明によれば、樹脂組成物の粘度安定性を高め、透明性を向上させてヘイズを低減し、更に無機膜との積層体を形成後、再加熱時により高い温度まで樹脂膜にシワが入らないポリイミド樹脂膜とポリイミド前駆体樹脂組成物を提供することができる。
図1は、本実施形態のディスプレイの例として、トップエミッション型フレキシブル有機ELディスプレイの、ポリイミド基板より上部の構造を示す模式図である。
以下、本発明の例示の実施の形態(以下、「本実施形態」と略記する。)について、詳細に説明する。本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。本願明細書において、各数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
《樹脂組成物》
〈ポリイミド前駆体/ポリイミド〉
本実施形態の樹脂組成物は、下記一般式(1):
Figure 2023016028000014
{式中、P1は、2価の有機基を示し、P2は、4価の有機基を示し、かつpは、正の整数を示す。}
で表されるポリイミド前駆体、及び/または、下記一般式(2):
Figure 2023016028000015
{式中、P1は、2価の有機基を示し、P2は、4価の有機基を示し、かつpは、正の整数を示す。}
で表されるポリイミドを含み、
更に、非プロトン性極性溶媒として好ましくはN-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、γ-ブチロラクトン、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、γ-バレロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンからなる群から選ばれるいずれか1種以上を含み、水と混和しない含酸素有機化合物として酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸3-メトキシブチル、酪酸エチル、エトキシプロピオン酸エチル、4-メチルテトラヒドロピラン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン及び炭酸ジエチルからなる群から選ばれるいずれか1種以上を含み、
非プロトン性極性溶媒100質量%に対し、水と混和しない含酸素有機化合物を0.001~20質量%含む。
本実施形態の樹脂組成物は、樹脂1分子内に、上記一般式(1)で表されるポリイミド前駆体、及び、上記記一般式(2)で表されるポリイミドを含むことが好ましい。
前記P1が、下記一般式(3):
Figure 2023016028000016
で表されるジアミンに由来する構成単位を含み、
又は、前記P2が、下記一般式(4):
Figure 2023016028000017
で表される酸二無水物に由来する構成単位を含む。
1が、前記一般式(3)で表されるジアミンに由来する構成単位を含み、又は、P2が式(4)で表される酸二無水物に由来する構成単位を含むことは、得られるポリイミドがRth、レーザー剥離性が良好になるため、好ましい。
上記樹脂は、一般式(3)に由来する構造、又は一般式(4)に由来する構造を、ランダム共重合体として含んでいても、ブロック共重合体として含んでいてもよい。
前記樹脂は、下記一般式(6):
Figure 2023016028000018
{式中、R1、及びR2の各々は、複数ある場合それぞれ独立に、炭素数1~5の1価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の1価の芳香族基を示し、そしてmは1~200の整数を示す}
で表される構造を含むことができる。
一般式(6)の構造を含むと、得られるポリイミドフィルムのRth,残留応力が良好になるため、好ましい。
樹脂が一般式(6)の構造を有するために、前記P1又はP2は、下記一般式(5):
Figure 2023016028000019
{式中、R1は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1~10の二価の有機基であり、
2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1~10の一価の有機基であり、少なくとも一つは炭素数1~5の一価の脂肪族炭化水素基であり、
4及びR5は、それぞれ独立に、炭素数1~10の一価の有機基であり、少なくとも一つは炭素数6~10の一価の芳香族基であり、
6及びR7は、それぞれ独立に、炭素数1~10の一価の有機基であり、
1及びL2は、それぞれ独立に、アミノ基、酸無水物基、イソシアネート基、カルボキシル基、酸エステル基、酸ハライド基、ヒドロキシ基、エポキシ基、又はメルカプト基であり、
iは、1~200の整数であり、j及びkは、それぞれ独立に、0~200の整数であり、0≦j/(i+j+k)≦0.50であり、かつ官能基当量が800以上である。}
で表されるケイ素含有化合物に由来する構成単位を含むことができる。
樹脂組成物において、前記一般式(5)で表されるケイ素含有化合物は:
全ジアミンを100mol%としたとき、20mol%以下;または、
全酸二無水物を100mol%としたとき、20mol%以下
である。ケイ素含有化合物が上記の範囲であると、得られるポリイミド前駆体又はポリイミド樹脂組成物のろ過性の観点で好ましい。ろ過性をさらに向上させるという観点から、ケイ素含有化合物は、樹脂組成物の全ジアミン又は全酸二無水物を100モル%としたとき、20.0モル%以下、19.0モル%以下、18.0モル%以下、17.0モル%以下、16.0モル%以下、15.0モル%以下、又は14.0モル%以下であることがより好ましい。ケイ素含有化合物は、樹脂組成物の全ジアミン又は全酸二無水物を100モル%としたとき、0モル%を超えることができる。
ポリイミドは、ポリイミド前駆体を熱イミド化することで得られ、化学イミド化することもできる。得られるポリイミドフィルムの透明性の観点から、熱イミド化が好ましい。また、樹脂組成物は、イミド化促進剤を含有することができる。
樹脂組成物の製造プロセスに求められる特性とディスプレイ用途に求められる特性(特に透明性、ヤング率の観点において)の双方に優れるという観点から、樹脂組成物において、一般式(3)及び(4)で表される化合物が、全酸二無水物(一般式(5)で表される化合物を除く)を100mol%としたとき、10mol%以上であることが好ましく、20mol%以上であることがより好ましく、50mol%以上であることがさらに好ましい。
(ジアミン)
樹脂組成物は、下記式(3):
Figure 2023016028000020
で表される化合物(ジアミノジフェニルスルホン)に由来する構成単位を含むことができる。
樹脂組成物がこの構造単位を有すると、得られるポリイミドフィルムのRth、ヤング率を両立できるため好ましい。
式(3)で表される化合物を用いることでRthが良好になる理由は明確ではないが、アミノ基の結合位置により、固有複屈折が小さくなることが相関していると考えられる。
全ジアミン(上記一般式(5)においてL1及びL2がアミノ基の化合物を含まない)中の、上記ジアミン化合物に由来する構造の含有量は、20モル%以上、40モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上、又は95モル%以上であってよい。
樹脂組成物は、所望により、一般式(3)で表されるジアミン化合物以外のジアミンを含んでよい。一般式(3)以外のジアミンとしては、p-フェニレンジアミン(PDA)、m-フェニレンジアミン、3,5-ジアミノ安息香酸(DABA)、2,2’-ジメチルベンジジン(mTB)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノベンズアニリド(DABAN)、9,9-ビス(4-アミノフェニルフルオレン)(BAFL)、9,9-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、4-アミノ安息香酸-4-アミノフェニルエステル(APAB)、2-(4-アミノフェニル)-5-アミノベンゾオキサゾール、4,4’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、及び1,4-ビス(3-アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン,1,3-ビス[1-(4-アミノフェニル)-1-メチルエチル]ベンゼン](BiSAM)、1,4-シクロヘキサンジアミン(CHDA)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(TFOMB)、2,2’’-ビス(トリフロロメチル)[1,1’:4’,1’’-ターフェニル]-4,4’’-ジアミン等が挙げられる。
これらの中で、好ましく用いられるのは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、3,5-ジアミノ安息香酸(DABA)、9,9-ビス(4-アミノフェニルフルオレン)(BAFL)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(TFOMB)である。
(酸二無水物)
樹脂組成物は、下記式(4):
Figure 2023016028000021
で表される酸二無水物に由来する構成単位を含むことができる。
上記樹脂は、一般式(3)に由来する構造、又は式(4)に由来する構造を、ランダム共重合体として含んでいても、ブロック共重合体として含んでいてもよい。
2が、一般式(3)で表される化合物に由来する構成単位を含み、かつ、P2が式(4)で表される化合物に由来する構成単位を含むことは、得られるポリイミドがRth、レーザー剥離性が良好になるため、好ましい。
全酸二無水物(上記一般式(5)においてL1及びL2が酸無水物基の化合物を含む)中の、一般式(4)の含有量は、10モル%以上、20モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよい。
樹脂組成物は、所望により、一般式(4)で表される化合物以外の酸二無水物を含んでよい。
一般式(4)以外の酸二無水物としては、無水ピロメリット酸(PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-シクロヘキセン-1,2ジカルボン酸無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’―ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’-(2,2’-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1-エチリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、チオ-4,4’-ジフタル酸二無水物、スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、1,4-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、2,2-ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、及び1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二酸無水物(BPAF)、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(HPMDA)、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、2′-オキソジスピロ[ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,1′-シクロペンタン-3′,2′′-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン]-5,6:5′′,6′′-テトラカルボン酸二無水物(CpODA)、及び下記構造:
Figure 2023016028000022
の化合物(BzDA);
下記構造:
Figure 2023016028000023
の化合物(BNBDA)等が挙げられる。
これらの酸二無水物の中で好ましく用いられるのは、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二酸無水物(BPAF)、2′-オキソジスピロ[ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,1′-シクロペンタン-3′,2′′-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン]-5,6:5′′,6′′-テトラカルボン酸二無水物(CpODA)である。
〈ケイ素含有化合物〉
本実施形態における樹脂は、下記一般式(6):
Figure 2023016028000024
{式中、R1、及びR2の各々は、複数ある場合それぞれ独立に、炭素数1~5の1価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の1価の芳香族基を示し、そしてmは1~200の整数を示す}
で表されるケイ素含有化合物に由来する構造を含むことができる。
したがって、本実施形態におけるポリイミド前駆体の合成に用いられるケイ素含有化合物は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンのうちの少なくとも一方と共縮合し得る反応性基とを有する化合物であってよい。
このようなケイ素含有化合物は、例えば、下記式(5):
Figure 2023016028000025
{式中、R1は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1~10の二価の有機基であり、
2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1~10の一価の有機基であり、少なくとも一つは炭素数1~5の一価の脂肪族炭化水素基であり、
4及びR5は、それぞれ独立に、炭素数1~10の一価の有機基であり、少なくとも一つは炭素数6~10の一価の芳香族基であり、
6及びR7は、それぞれ独立に、炭素数1~10の一価の有機基であり、
1及びL2は、それぞれ独立に、アミノ基、酸無水物基、イソシアネート基、カルボキシル基、酸エステル基、酸ハライド基、ヒドロキシ基、エポキシ基、又はメルカプト基であり、
iは、1~200の整数であり、j及びkは、それぞれ独立に、0~200の整数であり、0≦j/(i+j+k)≦0.50であり、かつ官能基当量が800以上である。}で表されるケイ素含有化合物が挙げられる。
式(5)中のR1は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1~10の2価の有機基である。炭素数1~10の2価の有機基は、直鎖状、環状、及び分枝状のいずれでもよく、飽和していても不飽和であってもよい。炭素数1~10の2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、i-プロピレン基、n-ブチレン基、s-ブチレン基、t-ブチレン基、n-ペンチレン基、ネオペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デシレン基等の直鎖又は分岐鎖アルキレン基;シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基等のシクロアルキレン基が挙げられる。炭素数1~10の2価の脂肪族炭化水素基としては、エチレン基、n-プロピレン基、及びi-プロピレン基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
式(5)中のR2及びR3はそれぞれ独立に、炭素数1~10の1価の有機基であり、少なくとも1つは炭素数1~5の1価の脂肪族炭化水素基である。
炭素数1~10の1価の有機基は、直鎖状、環状、分枝状のいずれでもよく、飽和していても不飽和であってもよい。例えば、炭素数1~10の1価の有機基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の直鎖又は分岐鎖アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基等の芳香族基等が挙げられる。
炭素数1~5の1価の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、環状、分枝状のいずれでもよく、飽和していても不飽和であってもよい。例えば、炭素数1~5の1価の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基等の直鎖または分岐鎖アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。炭素数1~5の1価の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、及びn-プロピル基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
式(5)中のR4及びR5は、それぞれ独立に、炭素数1~10の1価の有機基であり、少なくとも1つは炭素数6~10の1価の芳香族基である。炭素数1~10の1価の有機基は、直鎖状、環状、分枝状のいずれでもよく、飽和していても不飽和であってもよい。例えば、炭素数1~10の1価の有機基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の直鎖又は分岐鎖アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基等の芳香族基等が挙げられる。炭素数6~10の1価の芳香族基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基等が挙げられ、フェニル基、トリル基、又はキシリル基であることが好ましい。
式(5)中のR6及びR7は、それぞれ独立に、炭素数1~10の1価の有機基であり、少なくとも1つは不飽和脂肪族炭化水素基を有する有機基であることが好ましい。炭素数1~10の1価の有機基は、直鎖状、環状、分枝状のいずれでもよい。炭素数1~10の1価の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の直鎖又は分岐鎖アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基等の芳香族基等が挙げられる。炭素数1~10の1価の有機基としては、メチル基、エチル基、及びフェニル基から成る群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
不飽和脂肪族炭化水素基を有する有機基は、炭素数3~10の不飽和脂肪族炭化水素基であってよく、直鎖状、環状、分枝状のいずれでもよい。炭素数3~10の不飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、3-ブテニル基、2-ブテニル基、ペンテニル基、シクロペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等が挙げられる。炭素数3~10の不飽和脂肪族炭化水素基としては、ビニル基、アリル基、及び3-ブテニル基から成る群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
式(5)中のR1~R7の水素原子の一部又は全部は、F、Cl、Br等のハロゲン原子等の置換基で置換されていてもよく、非置換であってもよい。
式(5)中のL1及びL2は、それぞれ独立に、酸無水物構造を含む1価の有機基(酸無水物基ともいう)、アミノ基、イソシアネート基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン化カルボニル基、ヒドロキシ基、エポキシ基、又はメルカプト基である。
酸無水物構造を含む1価の有機基としては、例えば、下記式:
Figure 2023016028000026
{上記式中、「*」は、結合手を表す。}で表される、2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル基が挙げられる。
これらの中でもアミノ基、酸無水物基が好ましく、樹脂組成物の粘度安定性の観点から、アミノ基がより好ましい。
アルコキシカルボニル基におけるアルコキシル基は、炭素数1~6のアルコキシル基であってよく、例えば、メトキシル基、エトキシル基、n-プロポキシル基、i-プロポキシル基、n-ブトキシル基、i-ブトキシル基、t-ブトキシル基等であってよい。
ハロゲン化カルボニル基におけるハロゲン原子は、フッ素原子以外のハロゲン原子が好ましく、より好ましくは、塩素原子又はヨウ素原子である。
式(5)で表されるケイ素含有化合物の官能基当量は、樹脂組成物のろ過性の観点から800以上が好ましく、1000以上がより好ましく、1500以上がさらに好ましい。他方、官能基当量が500以下の場合は、ろ過性が悪くなることがある。ここで官能基当量とは、官能基1mol当たりのケイ素含有化合物の分子量である(単位:g/mol)。官能基当量は、既存の規格等に従って、公知の方法によって測定できる。また、ケイ素含有化合物の官能基当量が800以上である場合は、ポリイミドフィルムの窒素雰囲気下の残留応力が小さいため好ましい。この理由としては、官能基当量が特定の値以上の場合、シリコーンドメインが増え、応力緩和されるためと考えられる。
式(5)中のiは、1~200の整数であり、好ましくは2~100の整数、より好ましくは4~80の整数、更に好ましくは8~40の整数である。j及びkは、それぞれ独立に、0~200の整数であり、jは1~200の整数でもよく、j及びkは、好ましくは0~50の整数、より好ましくは0~20の整数、更に好ましくは0~50の整数である。
樹脂組成物中の樹脂は、式(5)に由来する構造を有していると、ポリイミドフィルムの窒素雰囲気下で測定した残留応力が良好(小さい)であるため、好ましい。窒素雰囲気下で測定する理由としては、ディスプレイのプロセスにおいて、ポリイミドフィルム上にSiO,SiN等の無機膜を形成する際、窒素雰囲気下に曝される場合があり、窒素雰囲気下の残留応力が小さいことが求められるからである。
モノマーの種類、コストの観点、および得られるポリイミド前駆体の分子量の観点から、一般式(5)中のL1及びL2は、それぞれ独立に、アミノ基であることが好ましい。すなわち、一般式(5)の、ケイ素含有化合物は、ケイ素含有ジアミンであることが好ましい。ケイ素含有ジアミンとしては、例えば、下記一般式(7):
Figure 2023016028000027
{式中、P5は、それぞれ独立に、二価の炭化水素基を示し、同一でも異なっていてもよく、P3及びP4は、一般式(5)において定義したR2、R3と同様であり、lは、1~200の整数を表す。}
で表されるジアミノ(ポリ)シロキサンが好ましい。
上記一般式(7)中のP3及びP4の好ましい構造としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びフェニル基等が挙げられる。これらの中でも好ましいのは、メチル基である。
上記一般式(7)中のlは、1~200の整数であり、式(7)で表されるケイ素含有ジアミンを用いて得られるポリイミドの耐熱性の観点から、3~200の整数であることが好ましい。
一般式(7)で表される化合物の官能基当量の好ましい範囲は、前述した一般式(5)で表されるケイ素含有化合物と同様である。
一般式(5)で表されるケイ素含有化合物の含有量(共重合割合)は、全モノマー質量(ポリイミド前駆体/ポリイミドの全質量)を100質量%としたとき、0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
ケイ素含有化合物が0.5質量%以上である場合、支持体との間に発生する残留応力を効果的に低下することができる。ケイ素含有化合物が20質量%以下である場合、得られるポリイミドフィルムの透明性(特に低ヘイズ)が良好であり、高い全光線透過率の実現、及び高いガラス転移温度の観点から好ましい。
ポリイミド前駆体/ポリイミドに用いる単量体としてのケイ素含有化合物は、上述のとおり、出願時の技術常識を用いて合成してもよいし、市販品を用いてもよい。市販品としては、両末端アミン変性メチルフェニルシリコーンオイル(信越化学社製:X22-1660B-3(官能基当量2200)、X22-9409(官能基当量670))、両末端酸無水物変性メチルフェニルシリコーンオイル(信越化学社製:X22-168-P5-B(官能基当量2100))、両末端エポキシ変性メチルフェニルシリコーンオイル(信越化学社製:X22-2000(官能基当量620))、両末端アミノ変性ジメチルシリコーン(信越化学社製:PAM-E(官能基当量130)、X22-161A(官能基当量800)、X22-161B(官能基当量1500)、KF8012(官能基当量2200)、東レダウコーニング製:BY16-853U(官能基当量450)、JNC社製:サイラプレーンFM3311(数平均分子量1000))、両末端エポキシ変性ジメチルシリコーン(信越化学社製:X-22-163A(官能基当量1750)、両末端脂環式エポキシ変性ジメチルシリコーン(信越化学社製:X-22-169B(官能基当量1700))、両末端ヒドキシ基変性ジメチルシリコーン(信越化学社製:KF-6000)、両末端メルカプト変性ジメチルシリコーン(信越化学社製:X-22-167B(官能基当量1700))、両末端酸無水物変性ジメチルシリコーン(信越化学社製:X-22-168A(官能基当量1000))等が挙げられる。これらの中でも、価格、耐薬品性向上、及びTgの向上の観点から、両末端アミン変性ジメチルシリコーンオイルが好ましい。
<非プロトン性溶媒>
本実施形態の樹脂組成物は、非プロトン性極性溶媒を含む。
非プロトン性極性溶媒は、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンから選ばれる1種以上であることが好ましい。
(水と混和しない含酸素有機化合物)
本実施形態の樹脂組成物は、さらに、水と混和しない含酸素有機化合物を含む。
なお、本願明細書において、「水と混和しない」とは、含酸素有機化合物を、水と特定の割合で混ぜた場合に均一溶液になる場合もあるが、任意の割合で均一溶液になるわけではない。これを「水と混和しない」と言う。
水と混和しない含酸素有機化合物として具体的には、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸3-メトキシブチル、酪酸エチル、エトキシプロピオン酸エチル、4-メチルテトラヒドロピラン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン及び炭酸ジエチルから選ばれる1種以上を含み、炭酸ジエチルを含むことがより好ましい。また、水と混和しない含酸素有機化合物であってもプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと3-メチル-3-メトキシブチルアセテートは用いることができない。
本実施形態の樹脂組成物では、水と混和しない含酸素有機化合物を含むことで、粘度安定性を向上することができる。具体的には、樹脂組成物の保存時における粘度の経時変化を抑えることができる。これにより本実施形態の樹脂組成物は取り扱い性が良好なものとなる。また、本実施形態の樹脂組成物は、ポリイミド樹脂膜とした際のヘイズを改善することができ、これによりディスプレイの視認性を改善することができる。更に、ポリイミド樹脂膜の上に無機膜を形成した後の再加熱時、より高い温度までポリイミド樹脂膜にシワが入るのを防ぐことができる。これによりディスプレイ製作が容易になる。これらの効果については、プリベーク時並びにキュア時に、水と混和しない含酸素有機化合物が揮発する際に、ポリイミド樹脂のモルフォロジーを、ヘイズや再加熱時のシワを抑制させるように変化させることにより発現すると考えられる。水と混和しない含酸素有機化合物の中で、特に本発明に記載されている化合物が好ましいのは、非プロトン性極性溶媒との相溶性が高いためと考えられる。一方、水と混和しない含酸素有機化合物であっても、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと3-メチル-3-メトキシブチルアセテートのような、酢酸とエーテル結合を有する分枝状アルコールの直鎖エステルは、特異的に非プロトン性極性溶媒との相溶性が低く、本発明の効果を奏しないため、用いることができない。
本実施形態の樹脂組成物において、水と混和しない含酸素有機化合物は、粘度安定性をより効果的に向上させる観点、及び、ポリイミド樹脂膜のヘイズを低減させる観点、無機膜形成後、再加熱時のシワを防ぐ観点から、非プロトン性極性溶媒100質量%に対し、0.001~20質量%の割合で含むことが好ましい。
水と混和しない含酸素有機化合物は、樹脂組成物の調製において、ポリイミド/ポリイミド前駆体を合成した後で、最後に添加される。
なお、水と混和しない含酸素有機化合物は、樹脂組成物をイミド化してポリイミド樹脂膜とした際には、当該ポリイミド樹脂膜中には、実質的に含まれないものとなる。
〈追加の成分〉
本実施形態の樹脂組成物は、ポリイミド/ポリイミド前駆体、溶媒及び水と混和しない含酸素有機化合物に加えて、追加の成分を更に含んでもよい。追加の成分としては、例えば、界面活性剤、及びアルコキシシラン化合物等が挙げられる。
(界面活性剤)
本実施形態の樹脂組成物に界面活性剤を添加することによって、樹脂組成物の塗布性を向上することができる。具体的には、塗工膜におけるスジの発生を防ぐことができる。
このような界面活性剤は、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、これら以外の非イオン界面活性剤等を挙げることができる。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、オルガノシロキサンポリマーKF-640、642、643、KP341、X-70-092、X-70-093(商品名、信越化学工業社製);SH-28PA、SH-190、SH-193、SZ-6032、SF-8428、DC-57、DC-190(商品名、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製);SILWET L-77,L-7001,FZ-2105,FZ-2120,FZ-2154,FZ-2164,FZ-2166,L-7604(商品名、日本ユニカー社製);DBE-814、DBE-224、DBE-621、CMS-626、CMS-222、KF-352A、KF-354L、KF-355A、KF-6020、DBE-821、DBE-712(Gelest)、BYK-307、BYK-310、BYK-378、BYK-333(商品名、ビックケミー・ジャパン製);グラノール(商品名、共栄社化学社製)等が挙げられる。フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、F173、R-08(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名);フロラードFC4430、FC4432(住友スリーエム株式会社、商品名)等が挙げられる。これら以外の非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンウラリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等が挙げられる。
これらの界面活性剤の中でも、樹脂組成物の塗工性(スジ抑制)の観点から、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が好ましく、キュア工程時の酸素濃度によるYI値及び全光線透過率への影響を低減する観点から、シリコーン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤を用いる場合、その配合量は、樹脂組成物中のポリイミド前駆体100質量部に対して、好ましくは0.001~5質量部、より好ましくは0.01~3質量部である。
(アルコキシシラン化合物)
本実施形態の樹脂組成物から得られるポリイミドフィルムをフレキシブル基板等に用いる場合、製造プロセスにおける支持体とポリイミドフィルムとの良好な密着性を得る観点から、樹脂組成物は、ポリイミド前駆体100質量部に対して、アルコキシシラン化合物を0.01~20質量部含有することができる。ポリイミド前駆体100質量部に対するアルコキシシラン化合物の含有量が0.01質量部以上であることにより、支持体とポリイミドフィルムとの間に良好な密着性を得ることができる。またアルコキシシラン化合物の含有量が20質量部以下であることが、樹脂組成物の保存安定性の観点から好ましい。アルコキシシラン化合物の含有量は、ポリイミド前駆体100質量部に対して、好ましくは0.02~15質量部、より好ましくは0.05~10質量部、更に好ましくは0.1~8質量部である。アルコキシシラン化合物を用いることにより、上記の密着性の向上に加えて、樹脂組成物の塗工性が向上し(スジムラ抑制)、及びキュア時の酸素濃度によるポリイミドフィルムのYI値への影響を低減することもできる。
アルコキシシラン化合物としては、例えば、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ-アミノプロピルトリブトキシシラン、γ-アミノエチルトリエトキシシラン、γ-アミノエチルトリプロポキシシラン、γ-アミノエチルトリブトキシシラン、γ-アミノブチルトリエトキシシラン、γ-アミノブチルトリメトキシシラン、γ-アミノブチルトリプロポキシシラン、γ-アミノブチルトリブトキシシラン、フェニルシラントリオール、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシ(p-トリル)シラン、ジフェニルシランジオール、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジメトキシジ-p-トリルシラン、トリフェニルシラノール、及び下記構造:
Figure 2023016028000028
のそれぞれで表されるアルコキシシラン化合物等を挙げることができる。アルコキシシラン化合物は、一種を単独で用いても二種以上を組み合わせて使用してもよい。
《樹脂組成物の製造方法》
本実施形態における樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、以下の方法によることができる。
〈ケイ素含有化合物の精製〉
本実施形態の樹脂組成物は、酸二無水物、ジアミン、及びケイ素含有化合物を含む重縮合成分を重縮合反応させることにより製造することができる。本実施形態の樹脂組成物中に含まれる、環状のケイ素含有化合物の総量を低減する方法としては、例えば、重縮合反応の前に、ケイ素含有化合物を精製して、環状のケイ素含有化合物の総量を低減することが挙げられる。あるいは、重縮合反応の後に、樹脂組成物を精製して、環状のケイ素含有化合物の総量を低減してもよい。
ケイ素含有化合物を精製する方法としては、例えば、任意の容器内でケイ素含有化合物に不活性ガス、例えば窒素ガスを吹き込みながらストリッピングを行うことが挙げられる。ストリッピングの温度としては、好ましくは200℃以上300℃以下、より好ましくは220℃以上300℃以下、更に好ましくは240℃以上300℃以下である。ストリッピングの蒸気圧としては、低いほど好ましく、1000Pa以下、より好ましくは300Pa以下、更に好ましくは200Pa以下、より更に好ましくは133.32Pa(1mmHg)Pa以下である。ストリッピングの時間としては、好ましくは4時間以上12時間以下、より好ましくは6時間以上10時間以下である。上記の条件に調整することにより、一環状のケイ素含有化合物を効率的に除去することができ、また、環状のケイ素含有化合物の総量を好ましい範囲に制御することができる。
〈ポリイミド/ポリイミド前駆体の合成〉
本実施形態のポリイミド前駆体は、酸二無水物、ジアミン、及びケイ素含有化合物を含む重縮合成分を重縮合反応させることにより合成することができる。ポリイミド/ポリイミド前駆体の合成と関連して、例えば、次のいずれかの工程:
・上記で説明された一般式(3)及び(4)で表される化合物と、上記ジアミン化合物から選択される少なくとも一つの化合物と、その他の化合物とを重縮合反応させてポリイミド前駆体及び/又はポリイミドを提供する工程;
・上記で説明された一般式(3)及び(4)で表される化合物と、上記酸二無水物化合物から選択される少なくとも一つの化合物と、その他の化合物とを重縮合反応させてポリイミド前駆体及び/又はポリイミドを提供する工程;
・上記で説明された一般式(3)及び(4)で表される化合物と、一般式(5)で表されるケイ素含有化合物と、その他の化合物とを重縮合反応させてポリイミド前駆体及び/又はポリイミドを提供する工程;
・上記で説明された一般式(3)及び(4)で表される化合物と、上記ジアミン化合物から選択される少なくとも一つの化合物と、一般式(5)で表されるケイ素含有化合物と、その他の化合物とを重縮合反応させてポリイミド前駆体及び/又はポリイミドを提供する工程;
・上記で説明された一般式(3)及び(4)で表される化合物と、上記酸二無水物化合物から選択される少なくとも一つの化合物と、一般式(5)で表されるケイ素含有化合物と、その他の化合物とを重縮合反応させてポリイミド前駆体及び/又はポリイミドを提供する工程;
を含む樹脂組成物の製造方法が提供される。また、ケイ素含有化合物は、上記の精製したものを用いることが好ましい。好ましい態様において、重縮合成分は、酸二無水物と、ジアミンと、ケイ素含有化合物とからなる。重縮合反応は、適当な溶媒中で行うことが好ましい。具体的には、例えば、溶媒に所定量のジアミン成分及びケイ素含有化合物を溶解させた後、得られたジアミン溶液に、酸二無水物を所定量添加し、撹拌する方法が挙げられる。ポリイミドを合成する際のイミド化は、熱イミド化でも、イミド化触媒を用いた化学イミド化でもよい。
ポリイミド/ポリイミド前駆体を合成する際の酸二無水物とジアミンとのモル比は、ポリイミド前駆体樹脂の高分子量化、樹脂組成物のスリットコーティング特性の観点から、酸二無水物:ジアミン=100:90~100:110(酸二無水物1モル部に対してジアミン0.90~1.10モル部)の範囲が好ましく、100:95~100:105(酸二無水物1モル部に対してジアミン0.95~1.05モル部)の範囲が更に好ましい。
ポリイミド/ポリイミド前駆体の分子量は、酸二無水物、ジアミン及びケイ素含有化合物の種類、酸二無水物とジアミンとのモル比の調整、末端封止剤の添加、反応条件の調整等によってコントロールすることが可能である。酸二無水物成分とジアミン成分とのモル比が1:1に近いほど、及び末端封止剤の使用量が少ないほど、ポリイミド前駆体を高分子量化することができる。
酸二無水物成分及びジアミン成分として、高純度品を使用することが推奨される。その純度としては、それぞれ、好ましくは98質量%以上、より好ましくは99質量%以上、更に好ましくは99.5質量%以上である。酸二無水物成分及びジアミン成分における水分含量を低減することによって高純度化することもできる。複数種類の酸二無水物成分、及び/又は複数種類のジアミン成分を使用する場合には、酸二無水物成分全体として、及びジアミン成分全体として上記の純度を有することが好ましく、使用する全種類の酸二無水物成分及びジアミン成分が、それぞれ上記の純度を有していることがより好ましい。
反応の溶媒としては、酸二無水物成分及びジアミン成分、並びに生じるポリイミド/ポリイミド前駆体を溶解することができ、高分子量の重合体が得られる溶媒であれば特に限定されない。このような溶媒としては、例えば、非プロトン性溶媒、フェノール系溶媒、エーテル及びグリコール系溶媒等が挙げられる。
非プロトン性溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-メチルカプロラクタム、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素、及び下記一般式のアミド系溶媒:
Figure 2023016028000029
{式中、R12=メチル基で表されるエクアミドM100(商品名:KJケミカルズ社製)、及び、R12=n-ブチル基で表されるエクアミドB100(商品名:KJケミカルズ社製)};γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等のラクトン系溶媒;ヘキサメチルホスホリックアミド、ヘキサメチルホスフィントリアミド等の含リン系アミド系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ピコリン、ピリジン等の3級アミン系溶媒;酢酸(2-メトキシ-1-メチルエチル)等のエステル系溶媒等が挙げられる。
フェノ-ル系溶媒としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール等が挙げられる。
エーテル及びグリコール系溶媒としては、例えば、1,2-ジメトキシエタン、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン、ビス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]エーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
これらの溶媒は、単独で又は2種類以上混合して用いてもよい。
ポリイミド/ポリイミド前駆体の合成に用いられる溶媒の常圧における沸点は、好ましくは60~300℃、より好ましくは140~280℃、更に好ましくは170~270℃である。溶媒の沸点が300℃より低いことにより、乾燥工程が短時間になる。溶媒の沸点が60℃以上であると、乾燥工程中に、樹脂膜の表面における荒れの発生、樹脂膜中への気泡の混入等が起こり難く、より均一なフィルムを得ることができる。特に、沸点が170~270℃であり、及び/又は20℃における蒸気圧が250Pa以下である溶媒を使用することが、溶解性及び塗工時のエッジ異常の低減の観点から好ましい。より具体的には、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、γ-ブチロラクトン(GBL)、及び上記一般式で表される化合物から成る群より選択される1種以上が好ましい。
溶媒中の水分含量は、重縮合反応を良好に進行させるために、例えば3,000質量ppm以下であることが好ましい。本実施形態における樹脂組成物中、分子量1,000未満の分子の含有量が5質量%未満であることが好ましい。樹脂組成物中に分子量1,000未満の分子が存在するのは、合成時に使用する溶媒や原料(酸二無水物、ジアミン)の水分量が関与しているためと考えられる。すなわち、一部の酸二無水物モノマーの酸無水物基が水分によって加水分解してカルボキシル基になり、高分子量化することなく低分子の状態で残存することによると考えられる。従って、上記の重縮合反応に使用する溶媒の水分量は少ないほど好ましい。溶媒の水分量は、3,000質量ppm以下とすることが好ましく、1,000質量ppm以下とすることがより好ましい。同様に、原料に含まれる水分量についても、3,000質量ppm以下とすることが好ましく、1,000質量ppm以下とすることがより好ましい。
溶媒の水分量は、使用する溶媒のグレード(脱水グレード、汎用グレード等)、溶媒容器(ビン、18L缶、キャニスター缶等)、溶媒の保管状態(希ガス封入の有無等)、開封から使用までの時間(開封後すぐ使用するか、開封後経時した後に使用するか等)等が関与すると考えられる。合成前の反応器の希ガス置換、合成中の希ガス流通の有無等も関与すると考えられる。従って、ポリイミド前駆体の合成時には、原料として高純度品を用い、水分量の少ない溶媒を用いるとともに、反応前および反応中に系内に環境からの水分が混入しないような措置を講ずることが推奨される。
溶媒中に各重縮合成分を溶解させるときには、必要に応じて加熱してもよい。重合度の高いポリイミド前駆体を得る観点から、ポリイミド前駆体合成時の反応温度としては、好ましくは0℃~120℃、40℃~100℃、又は60~100℃であってよく、重合時間としては、好ましくは1~100時間、又は2~10時間であってよい。重合時間を1時間以上とすることによって均一な重合度のポリイミド前駆体となり、100時間以下とすることによって重合度の高いポリイミド前駆体を得ることができる。
本実施形態の樹脂組成物は、本実施形態におけるポリイミド/ポリイミド前駆体以外に、他の追加のポリイミド前駆体を含んでもよい。しかしながら、追加のポリイミド/ポリイミド前駆体の質量割合は、ポリイミドフィルムのYI値及び全光線透過率の酸素依存性を低減する観点から、樹脂組成物中のポリイミド/ポリイミド前駆体の総量に対して、好ましくは30質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
本実施形態におけるポリイミド前駆体は、その一部がイミド化されていてもよい(部分イミド化)。ポリイミド前駆体を部分イミド化することにより、樹脂組成物を保存する際の粘度安定性を向上できる。この場合のイミド化率は、樹脂組成物中のポリイミド前駆体の溶解性と溶液の保存安定性とのバランスをとる観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上であり、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、更に好ましくは50%以下である。この部分イミド化は、ポリイミド前駆体を加熱して脱水閉環することにより得られる。この加熱は、好ましくは120~200℃、より好ましくは150~185℃、さらに好ましくは150~180℃の温度において、好ましくは15分~20時間、より好ましくは30分~10時間行うことができる。
上述の反応によって得られたポリイミド/ポリイミド前駆体に、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール又はN,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタールを加えて加熱することでカルボン酸の一部又は全部をエステル化したものを、本実施形態のポリイミド前駆体として用いてもよい。エステル化によって、保存時の粘度安定性を向上することができる。これらエステル変性ポリアミド酸は、上述の酸二無水物成分を、酸無水物基に対して1当量の1価のアルコール、及び塩化チオニル、ジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤と順次に反応させた後、ジアミン成分と縮合反応させる方法によっても得ることができる。
〈ポリイミドの合成〉
より好ましい様態としては、ポリイミドワニスは、酸二無水物成分及びジアミン成分を、溶媒、例えば有機溶媒に溶解し、トルエンなどの共沸溶媒を加え、イミド化の際に発生する水を系外に除去することでポリイミド及び溶媒を含有するポリイミド溶液(ポリイミドワニスとも言う)として製造することが出来る。ここで、反応時の条件は特に限定されないが、例えば、反応温度は0℃~180℃、反応時間は3~72時間である。スルホン基含有ジアミン類との反応を充分に進めるために、180℃で12時間程度加熱反応させることが好ましい。また、反応時、アルゴンや窒素などの不活性雰囲気であることが好ましい。
〈樹脂組成物の調製〉
ポリイミド前駆体を合成した際に用いた溶媒と、樹脂組成物に含有させる溶媒とが同一の場合には、合成したポリイミド/ポリイミド前駆体溶液をそのまま樹脂組成物として使用することができる。必要に応じて、室温(25℃)~80℃の温度範囲で、ポリイミド前駆体に更なる溶媒及び追加の成分の1種以上を添加して、攪拌混合することにより、樹脂組成物を調製してもよい。この攪拌混合は、撹拌翼を備えたスリーワンモータ(新東化学株式会社製)、自転公転ミキサー等の適宜の装置を用いて行うことができる。必要に応じて樹脂組成物を40℃~100℃に加熱してもよい。
他方、ポリイミド/ポリイミド前駆体を合成した際に用いた溶媒と、樹脂組成物に含有させる溶媒とが異なる場合には、合成したポリイミド前駆体溶液中の溶媒を、例えば再沈殿、溶媒留去等の適宜の方法により除去してポリイミド/ポリイミド前駆体を単離してもよい。次いで、室温(25℃)~80℃の温度範囲で、単離したポリイミド前駆体に、所望の溶媒及び必要に応じて追加の成分を添加して、攪拌混合することにより、樹脂組成物を調製してもよい。
そして特に、本実施形態では、樹脂組成物の調製において、ポリイミド/ポリイミド前駆体を合成した後で、最後に、水と混和しない含酸素有機化合物を添加する。これにより、樹脂組成物の保存時における粘度の経時変化を抑えることができる。これにより、本実施形態の樹脂組成物は粘度安定性が向上し取り扱い性が良好なものとなるともに、得られるポリイミド樹脂膜のヘイズを低減させることができる。
上述のように樹脂組成物を調製した後、樹脂組成物を、例えば130~200℃で、例えば5分~2時間加熱することにより、ポリマーが析出を起こさない程度にポリイミド前駆体の一部を脱水イミド化してもよい(部分イミド化)。加熱温度及び加熱時間をコントロールすることにより、イミド化率を制御することができる。ポリイミド前駆体を部分イミド化することにより、樹脂組成物を保存する際の粘度安定性を向上することができる。
樹脂組成物の溶液粘度は、スリットコート性能の観点においては、好ましくは500~100,000mPa・s、より好ましくは1,000~50,000mPa・s、更に好ましくは3,000~20,000mPa・sである。具体的には、スリットノズルから液漏れし難い点で、好ましくは500mPa・s以上、より好ましくは1,000mPa・s以上、更に好ましくは3,000mPa・s以上である。スリットノズルが目詰まりし難い点で、好ましくは100,000mPa・s以下、より好ましくは50,000mPa・s以下、更に好ましくは20,000mPa・s以下である。
ポリイミド/ポリイミド前駆体合成時における樹脂組成物の溶液粘度については、200,000mPa・sより高いと、合成時の撹拌が困難になるという問題が生じるおそれがある。ただし、合成する際に溶液が高粘度になったとしても、反応終了後に溶媒を添加して撹拌することにより、取扱い性のよい粘度の樹脂組成物を得ることが可能である。本実施形態における樹脂組成物の溶液粘度は、E型粘度計(例えばVISCONICEHD、東機産業製)を用い、23℃で測定される値である。
本実施形態の樹脂組成物の水分量は、樹脂組成物を保存する際の粘度安定性の観点から、好ましくは3,000質量ppm以下、より好ましくは2,500質量ppm以下、更に好ましくは2,000質量ppm以下、より更に好ましくは1,500質量ppm以下、特に好ましくは1,000質量ppm以下、特に好ましくは500質量ppm以下、特に好ましくは300質量ppm以下、特に好ましくは100質量ppm以下である。
《ポリイミドフィルム及びその製造方法》
本実施形態の樹脂組成物を用いて、ポリイミドフィルム(以下、ポリイミド樹脂膜ともいう)を提供することができる。本実施形態のポリイミドフィルムの製造方法は、支持体の表面上に、本実施形態の樹脂組成物を塗布する塗布工程と;上記樹脂組成物を加熱してポリイミド樹脂膜を形成する膜形成工程と;上記ポリイミド樹脂膜を上記支持体から剥離する剥離工程とを含む。
〈塗布工程〉
塗布工程では、支持体の表面上に本実施形態の樹脂組成物を塗布する。支持体は、その後の膜形成工程(加熱工程)における加熱温度に対する耐熱性を有し、かつ剥離工程における剥離性が良好であれば特に限定されない。支持体としては、例えば、ガラス基板、例えば無アルカリガラス基板;シリコンウェハー;PET(ポリエチレンテレフタレート)、OPP(延伸ポリプロピレン)、ポリエチレングリコールテレフタレート、ポリエチレングリコールナフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンスルフィド等の樹脂基板;ステンレス、アルミナ、銅、ニッケル等の金属基板等が挙げられる。
薄膜状のポリイミド成形体を形成する場合には、例えば、ガラス基板、シリコンウェハー等が好ましく、厚膜状のフィルム状又はシート状のポリイミド成形体を形成する場合には、例えばPET(ポリエチレンテレフタラート)、OPP(延伸ポリプロピレン)等からなる支持体が好ましい。
塗布方法としては、一般には、ドクターブレードナイフコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ロータリーコーター、フローコーター、ダイコーター、バーコーター等の塗布方法、スピンコート、スプレイコート、ディップコート等の塗布方法;スクリーン印刷及びグラビア印刷等に代表される印刷技術等が挙げられる。本実施形態の樹脂組成物には、スリットコートによる塗布が好ましい。塗布厚は、所望の樹脂フィルムの厚さと樹脂組成物中のポリイミド前駆体の含有量に応じて適宜調整するべきであるが、好ましくは1~1,000μm程度である。塗布工程における温度は室温でもよく、粘度を下げて作業性をよくするために、樹脂組成物を例えば40℃~80℃に加温してもよい。
〈任意の乾燥工程〉
塗布工程に続いて乾燥工程を行ってもよく、又は乾燥工程を省略して直接次の膜形成工程(加熱工程)に進んでもよい。乾燥工程は、樹脂組成物中の有機溶剤除去の目的で行われる。乾燥工程を行う場合、例えば、ホットプレート、箱型乾燥機、コンベヤー型乾燥機等の適宜の装置を使用することができる。乾燥工程の温度は、好ましくは80℃~200℃、より好ましくは100℃~150℃である。乾燥工程の実施時間は、好ましくは1分~10時間、より好ましくは3分~1時間である。上記のようにして、支持体上にポリイミド前駆体を含有する塗膜が形成される。
〈膜形成工程〉
続いて、膜形成工程(加熱工程)を行う。加熱工程は、上記の塗膜中に含まれる有機溶剤の除去を行うとともに、塗膜中のポリイミド前駆体のイミド化反応を進行させ、ポリイミド樹脂膜を得る工程である。この加熱工程は、例えば、イナートガスオーブン、ホットプレート、箱型乾燥機、コンベヤー型乾燥機等の装置を用いて行うことができる。この工程は乾燥工程と同時に行っても、両工程を逐次的に行なってもよい。
加熱工程は、空気雰囲気下で行なってもよいが、安全性と、得られるポリイミドフィルムの良好な透明性、低い厚み方向レタデーション(Rth)及び低いYI値を得る観点から、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン等が挙げられる。加熱温度は、ポリイミド前駆体の種類、及び樹脂組成物中の溶媒の種類に応じて適宜に設定されてよいが、好ましくは250℃~550℃、より好ましくは300℃~450℃である。250℃以上であればイミド化が良好に進行し、550℃以下であれば得られるポリイミドフィルムの透明性の低下、耐熱性の悪化等の不都合を回避できる。加熱時間は、好ましくは0.1時間~10時間程度である。
本実施形態では、上記の加熱工程における周囲雰囲気の酸素濃度は、得られるポリイミドフィルムの透明性及びYI値の観点から、好ましくは2,000質量ppm以下、より好ましくは100質量ppm以下、更に好ましくは10質量ppm以下である。酸素濃度が2,000質量ppm以下の雰囲気中で加熱を行うことにより、得られるポリイミドフィルムのYI値を30以下にすることができる。
〈剥離工程〉
剥離工程では、支持体上のポリイミド樹脂膜を、例えば室温(25℃)~50℃程度まで冷却した後に剥離する。この剥離工程としては、例えば下記の(1)~(4)の態様が挙げられる。
(1)上記の方法によりポリイミド樹脂膜/支持体を含む構成体を作製した後、構造体の支持体側からレーザーを照射して、支持体とポリイミド樹脂膜との界面をアブレーション加工することにより、ポリイミド樹脂を剥離する方法。レーザーの種類としては、固体(YAG)レーザー、ガス(UVエキシマー)レーザー等が挙げられる。波長308nm等のスペクトルを用いることが好ましい(特表2007-512568号公報、特表2012-511173号公報等を参照)。
(2)支持体に樹脂組成物を塗工する前に、支持体に剥離層を形成し、その後ポリイミド樹脂膜/剥離層/支持体を含む構成体を得て、ポリイミド樹脂膜を剥離する方法。剥離層としては、パリレン(登録商標、日本パリレン合同会社製)、酸化タングステンが挙げられ;植物油系、シリコーン系、フッ素系、アルキッド系等の離型剤を用いてもよい(特開2010-067957号公報、特開2013-179306号公報等を参照)。
この方法(2)と方法(1)のレーザー照射とを併用してもよい。
(3)支持体としてエッチング可能な金属基板を用いて、ポリイミド樹脂膜/支持体を含む構成体を得た後、エッチャントで金属をエッチングすることにより、ポリイミド樹脂フィルムを得る方法。金属としては、例えば、銅(具体例としては、三井金属鉱業株式会社製の電解銅箔「DFF」)、アルミニウム等を使用することができる。エッチャントとしては、銅に対しては塩化第二鉄等を、アルミニウムに対しては希塩酸等を使用することができる。
(4)上記方法によりポリイミド樹脂膜/支持体を含む構成体を得た後、ポリイミド樹脂膜表面に粘着フィルムを貼り付けて、支持体から粘着フィルム/ポリイミド樹脂膜を分離し、その後粘着フィルムからポリイミド樹脂膜を分離する方法。
これらの剥離方法の中でも、得られるポリイミド樹脂フィルムの表裏の屈折率差、YI値及び伸度の観点から、方法(1)又は(2)が好ましい。得られるポリイミド樹脂フィルムの表裏の屈折率差の観点から方法(1)、すなわち、剥離工程に先立って、支持体側からレ-ザ-を照射する照射工程を行うことがより好ましい。なお、方法(3)において、支持体として銅を用いた場合は、得られるポリイミド樹脂フィルムのYI値が大きくなり、伸度が小さくなる傾向が見られる。これは、銅イオンの影響であると考えられる。
得られるポリイミドフィルムの厚さは、限定されないが、好ましくは1~200μm、より好ましくは5~100μmである。
《ポリイミド》
上記実施形態のポリイミド前駆体から形成されるポリイミド樹脂膜に含まれるポリイミドの構造は、下記一般式(8)で表される。
Figure 2023016028000030
{一般式(8)中、P1及びP2は、一般式(1)又は(2)中のP1及びP2と同じであり、mは正の整数である。}
一般式(1)又は(2)中の好ましいP1及びP2は、同じ理由により、一般式(8)のポリイミドにおいても好ましい。一般式(16)の繰り返し単位数mは、特に限定は無いが、2~150の整数であってもよい。
なお、本実施形態の樹脂組成物から得られるポリイミドには、樹脂組成物中に含まれていた、水と混和しない含酸素有機化合物は、実質的に含まれない。
《ポリイミドフィルムの用途》
本実施形態の樹脂組成物から得られるポリイミドフィルムは、例えば、半導体絶縁膜、薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ(TFT-LCD)絶縁膜、電極保護膜として、また、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、電子ペーパー等の表示装置の透明基板等として適用できる。特に、本実施形態の樹脂組成物から得られるポリイミドフィルムは、フレキシブルデバイスの製造において、薄膜トランジスタ(TFT)基板、カラーフィルタ基板、タッチパネル基板、透明導電膜(ITO、Indium Thin Oxide)の基板として好適に使用することができる。本実施形態におけるポリイミドフィルムを適用可能なフレキシブルデバイスとしては、例えば、フレキシブルディスプレイ用TFTデバイス、フレキシブル太陽電池、フレキシブルタッチパネル、フレキシブル照明、フレキシブルバッテリー、フレキシブルプリント基板、フレキシブルカラーフィルター、スマートフォン向け表面カバーレンズ等を挙げることができる。
ポリイミドフィルムを使ったフレキシブル基板上にTFTを形成する工程は、典型的には、150℃~650℃の広い範囲の温度で実施される。具体的にはアモルファスシリコンを使用したTFTデバイスを作製する場合には、一般的に250℃~350℃のプロセス温度が必要となり、本実施形態のポリイミドフィルムはその温度に耐えうる必要があるため、具体的にはプロセス温度以上のガラス転移温度、熱分解開始温度を有するポリマー構造を適宜選択する必要がある。
金属酸化物半導体(IGZO等)を使用したTFTデバイスを作製する場合には、一般的に320℃~400℃のプロセス温度が必要となり、本実施形態のポリイミドフィルムはその温度に耐えうる必要があるため、TFT作製プロセス最高温度以上のガラス転移温度、熱分解開始温度を有するポリマー構造を適宜選択する必要がある。
低温ポリシリコン(LTPS)を使用したTFTデバイスを作製する場合には、一般的に380℃~520℃のプロセス温度が必要となり、本実施形態のポリイミドフィルムはその温度に耐えうる必要があるため、TFT作製プロセス最高温度以上のガラス転移温度、熱分解開始温度を適宜選択する必要がある。他方で、これら熱履歴により、ポリイミドフィルムの光学特性(特に、光線透過率、レタデーション特性及びYI値)は高温プロセスにさらされるほどに低下する傾向にある。しかし、本実施形態のポリイミド前駆体から得られるポリイミドは、熱履歴を経ても良好な光学特性を有する。
以下に、本実施形態のポリイミドフィルムの用途例として、ディスプレイ及び積層体の製造方法について説明する。
〈ディスプレイの製造方法〉
本実施形態のディスプレイの製造方法は、支持体の表面上に、本実施形態の樹脂組成物を塗布する塗布工程と;上記樹脂組成物を加熱してポリイミド樹脂膜を形成する膜形成工程と;上記ポリイミド樹脂膜上に素子を形成する素子形成工程と;上記素子が形成された上記ポリイミド樹脂膜を上記支持体から剥離する剥離工程とを含む。
フレキシブル有機ELディスプレイの製造例
図1は、本実施形態のディスプレイの例として、トップエミッション型フレキシブル有機ELディスプレイのポリイミド基板より上部の構造を示す模式図である。図1の有機EL構造部25について説明する。例えば、赤色光を発光する有機EL素子250aと、緑色光を発光する有機EL素子250bと、青色光を発光する有機EL素子250cとが1単位として、マトリクス状に配列されており、隔壁(バンク)251により、各有機EL素子の発光領域が画定されている。各有機EL素子は、下部電極(陽極)252、正孔輸送層253、発光層254、上部電極(陰極)255から構成されている。窒化ケイ素(SiN)や酸化ケイ素(SiO)からなるCVD複層膜(マルチバリヤーレイヤー)を示す下部層2a上には、有機EL素子を駆動するためのTFT256(低温ポリシリコン(LTPS)や金属酸化物半導体(IGZO等)から選択される)、コンタクトホール257を備えた層間絶縁膜258、及び下部電極259が複数設けられている。有機EL素子は封止基板2bで封入されており、各有機EL素子と封止基板2bとの間に中空部261が形成されている。
フレキシブル有機ELディスプレイの製造工程は、ガラス基板支持体上にポリイミドフィルムを作製し、その上部に図1に示される有機EL基板を製造する工程と、封止基板を製造する工程と、両基板を貼り合わせる組み立て工程と、ガラス基板支持体からポリイミドフィルム上に作製された有機ELディスプレイを剥離する剥離工程とを含む。有機EL基板製造工程、封止基板製造工程、及び組み立て工程は、周知の製造工程を適用することができる。以下ではその一例を挙げるが、これに限定されるものではない。剥離工程は、上述したポリイミドフィルムの剥離工程と同一である。
例えば、図1を参照すれば、まず、上記の方法によりガラス基板支持体上にポリイミドフィルムを作製し、その上部にCVD法やスパッタ法により窒化ケイ素(SiN)と酸化ケイ素(SiO)の複層構造からなるマルチバリアレイヤー(図1中の下部基板2a)を作製し、その上部にTFTを駆動するためのメタル配線層を、フォトレジスト等を使用して作製する。その上部にCVD法を用いてSiO等のアクティブバッファー層を作製し、その上部に金属酸化物半導体(IGZO)や低温ポリシリコン(LTPS)などのTFTデバイス(図1中のTFT256)を作製する。フレキシブルディスプレイ用TFT基板を作製後、感光性アクリル樹脂等でコンタクトホール257を備えた層間絶縁膜258を形成する。スパッタ法等にてITO膜を成膜し、TFTと対をなすように下部電極259を形成する。
次に、感光性ポリイミド等で隔壁(バンク)251を形成した後、隔壁で区画された各空間内に、正孔輸送層253、発光層254を形成する。発光層254及び隔壁(バンク)251を覆うように上部電極(陰極)255を形成する。その後、ファインメタルマスク等をマスクにして、赤色光を発光する有機EL材料(図1中の、赤色光を発光する有機EL素子250aに対応)、緑色光を発光する有機EL材料(図1中の、緑色光を発光する有機EL素子250bに対応)及び青色光を発光する有機EL材料(図1中の、青色光を発光する有機EL素子250cに対応)を公知の方法にて蒸着することで、有機EL基板を作製する。有機EL基板を封止フィルム等(図1中の封止基板2b)で封止し、ガラス基板支持体からポリイミド基板より上部のデバイスをレーザー剥離等の公知の剥離方法で剥離することで、トップエミッション形フレキシブル有機ELディスプレイを作製することができる。本実施形態のポリイミドを使用する場合は、シースルー型のフレキシブル有機ELディスプレイを作製することができる。公知の方法でボトムエミッション形のフレキシブル有機ELディスプレイを作製してもよい。
フレキシブル液晶ディスプレイの製造例
本実施形態のポリイミドフィルムを使用してフレキシブル液晶ディスプレイを作製することができる。具体的な作製方法としては、上記の方法でガラス基板支持体上にポリイミドフィルムを作製し、上記の方法を用いて、例えばアモルファスシリコン、金属酸化物半導体(IGZO等)、及び低温ポリシリコンからなるTFT基板を作製する。別途、本実施形態の塗布工程及び膜形成工程に従って、ガラス基板支持体上にポリイミドフィルムを作製し、公知の方法に従ってカラーレジスト等を使用して、ポリイミドフィルムを備えたカラーフィルターガラス基板(CF基板)を作製する。TFT基板およびCF基板の一方に、スクリーン印刷により、熱硬化性エポキシ樹脂などからなるシール材料を液晶注入口の部分を欠いた枠状パターンに塗布し、他方の基板に液晶層の厚さに相当する直径を持ち、プラスチックまたはシリカからなる球状のスペーサーを散布する。
次いで、TFT基板とCF基板とを貼り合わせ、シール材料を硬化させる。そして、TFT基板及びCF基板並びにシール材料で囲まれる空間に、減圧法により液晶材料を注入し、液晶注入口に熱硬化樹脂を塗布し、加熱によって液晶材料を封止することで液晶層を形成する。最後に、CF側のガラス基板とTFT側のガラス基板とをレーザー剥離法などでポリイミドフィルムとガラス基板の界面で剥離することで、フレキシブル液晶ディスプレイを作製することができる。
〈積層体の製造方法〉
本実施形態の積層体の製造方法は、支持体の表面上に、本実施形態の樹脂組成物を塗布する塗布工程と;上記樹脂組成物を加熱してポリイミド樹脂膜を形成する膜形成工程と;上記ポリイミド樹脂膜上に素子を形成する素子形成工程とを含む。
積層体における素子としては、上記のフレキシブルディスプレイ等のフレキシブルデバイスの製造について例示したものが挙げられる。支持体としては、例えばガラス基板を用いることができる。塗布工程及び膜形成工程の好ましい具体的手順は、上記のポリイミドフィルムの製造方法に関して記載したものと同様である。素子形成工程においては、支持体上に形成された、フレキシブル基板としてのポリイミド樹脂膜の上に、上記の素子を形成する。その後、任意に剥離工程においてポリイミド樹脂膜及び素子を支持体から剥離してもよい。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態をより具体的に説明する。しかしながら、本実施の形態は、その要旨から逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
500mlセパラブルフラスコに反応溶媒としてγ-ブチロラクトン(GBL):85.39gを入れ、4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA):31.02g(100mmol)を加えて攪拌溶解させた。つづいて4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DAS):13.699g(55.176mmol)、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DAS):9.1295g(36.784mmol)を加えて同じく攪拌溶解させた。それからシリコーンジアミン(SiDA)として信越化学製X-22-161-A:3.52g(2.2mmol)を滴下し、トルエン:45gを加えた。このフラスコの上にディーンスターク管とリフラックス管を取り付け、オイルバスで溶液を180℃に加熱して、途中で発生する水をディーンスターク管から抜きながら、窒素下で3時間リフラックスさせた。その後窒素下で、ディーンスターク管からトルエンを抜きながら更にリフラックスさせた。それから反応液を室温まで冷却し、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン:0.721g(2.904mmol)、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン:0.4805g(1.936mmol)を加えて室温で3日間反応させ、ポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液に、水と混和しない含酸素有機化合物として、炭酸ジエチルを0.8wt%となるように加えた。この溶液の粘度を、東機産業製E型粘度計RE-85Rで測定した所、粘度の経時変化は、-0.2%/dayであった。
次に、この溶液をスピンコートによりガラス基板及びアルミニウムを200nm厚みでスパッタしたシリコンウェハ、シリコンウェハにコートし、80℃のホットプレートでプリベークした後、air雰囲気下、240℃で2時間キュアした。キュア後のガラス基板上の樹脂膜のヘイズ(濁り度)を、日本電色工業製COH7700型ヘイズメーターを用いて測定した所、膜厚10μm換算で0.03であった。また、アルミニウムをスパッタしたシリコンウェハ上の樹脂膜をダイシングソー(ディスコ社製DAD3350型)で3mm幅にカットし、10%塩酸水溶液に漬けてシリコンウェハから剥離した。この剥離した樹脂膜をTMA(島津製作所製TMA60)を用いてガラス転移温度を測定した所、270℃であった。一方、シリコンウェハ基板上の樹脂膜をスパッタ装置(芝浦エルテック製CFS-8EP-55型)に入れ、室温で窒化ケイ素を膜厚300nmになるようにスパッタした。その後、この窒化ケイ素膜を形成した樹脂膜を、シリコンウェハ基板ごとガラス転移温度付近で温度を変えて再キュアし、樹脂膜にシワが入り始める温度を確認した。その結果、ガラス転移温度より10℃高い280℃より高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例2)
実施例1において、反応溶媒をN-メチルピロリドン(NMP)に変え、加える炭酸ジエチルの量を7.3wt%に変えた他は、実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液の粘度の経時変化は-0.3%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.08であり、ガラス転移温度は270℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は280℃だった。従って、ガラス転移温度より10℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例3)
実施例1において、反応溶媒をN-エチルピロリドン(NEP)に変え、加える炭酸ジエチルの量を12.3wt%に変えた他は、実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液の粘度の経時変化は-0.4%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.05であり、ガラス転移温度は270℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は280℃だった。従って、ガラス転移温度より10℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例4)
実施例1において、反応溶媒をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に変え、加える炭酸ジエチルの量を6.2wt%に変えた他は、実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液の粘度の経時変化は-0.4%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.04であり、ガラス転移温度は270℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は280℃だった。従って、ガラス転移温度より10℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例5)
実施例1において、反応溶媒をN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に変え、加える炭酸ジエチルの量を5.5wt%に変えた他は、実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液の粘度の経時変化は-0.4%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.11であり、ガラス転移温度は270℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は280℃だった。従って、ガラス転移温度より10℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例6)
実施例1において、反応溶媒を3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドに変え、加える炭酸ジエチルの量を16.2wt%に変えた他は、実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液の粘度の経時変化は-0.3%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.18であり、ガラス転移温度は270℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は280℃だった。従って、ガラス転移温度より10℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例7)
実施例1において、反応溶媒をγ-バレロラクトンに変え、加える炭酸ジエチルの量を8.7wt%に変えた他は、実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液の粘度の経時変化は-0.2%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.02であり、ガラス転移温度は270℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は280℃だった。従って、ガラス転移温度より10℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例8)
実施例1において、反応溶媒を3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドに変え、加える炭酸ジエチルの量を2.6wt%に変えた他は、実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液の粘度の経時変化は-0.4%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.06であり、ガラス転移温度は270℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は280℃だった。従って、ガラス転移温度より10℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例9)
実施例1において、反応溶媒を1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンに変え、加える炭酸ジエチルの量を10.1wt%に変えた他は、実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液の粘度の経時変化は-0.3%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.07であり、ガラス転移温度は270℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は280℃だった。従って、ガラス転移温度より10℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例10)
実施例1において、水と混和しない含酸素有機化合物として、炭酸ジエチルの代わりに2-ヘプタノンを6.5wt%加えた他は、実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液の粘度の経時変化は-0.8%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.05であり、ガラス転移温度は270℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は275℃だった。従って、ガラス転移温度より5℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例11)
実施例1において、水と混和しない含酸素有機化合物として、炭酸ジエチルの代わりに4-メチルテトラヒドロピランを0.5wt%加えた他は、実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液の粘度の経時変化は-0.5%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.17であり、ガラス転移温度は270℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は275℃だった。従って、ガラス転移温度より5℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例12)
実施例1において、水と混和しない含酸素有機化合物として、炭酸ジエチルの代わりに酢酸ブチルを2.7wt%加えた他は、実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液の粘度の経時変化は-0.6%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.12であり、ガラス転移温度は270℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は275℃だった。従って、ガラス転移温度より5℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例13)
実施例1において、水と混和しない含酸素有機化合物として、炭酸ジエチルの代わりに酢酸アミルを3.7wt%加えた他は、実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液の粘度の経時変化は-0.6%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.09であり、ガラス転移温度は270℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は275℃だった。従って、ガラス転移温度より5℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例14)
実施例1において、水と混和しない含酸素有機化合物として、炭酸ジエチルの代わりに酢酸イソアミルを5.3wt%加えた他は、実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液の粘度の経時変化は-0.7%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.08であり、ガラス転移温度は270℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は275℃だった。従って、ガラス転移温度より5℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例15)
実施例1において、水と混和しない含酸素有機化合物として、炭酸ジエチルの代わりに酢酸-3-メトキシブチルを1.5wt%加えた他は、実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液の粘度の経時変化は-0.5%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.03であり、ガラス転移温度は270℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は275℃だった。従って、ガラス転移温度より5℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例16)
実施例1において、水と混和しない含酸素有機化合物として、炭酸ジエチルの代わりに酪酸エチルを8.7wt%加えた他は、実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液の粘度の経時変化は-0.7%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.06であり、ガラス転移温度は270℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は275℃だった。従って、ガラス転移温度より5℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例17)
実施例1において、水と混和しない含酸素有機化合物として、炭酸ジエチルの代わりにエトキシプロピオン酸エチルを11.2wt%加えた他は、実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液の粘度の経時変化は-0.6%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.14であり、ガラス転移温度は270℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は275℃だった。従って、ガラス転移温度より5℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例18)
実施例1において、水と混和しない含酸素有機化合物として、炭酸ジエチルの代わりに4-ヘプタノンを4.3wt%加えた他は、実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液の粘度の経時変化は-0.7%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.08であり、ガラス転移温度は270℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は275℃だった。従って、ガラス転移温度より5℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例19)
実施例1において、酸二無水物として4,4’-オキシジフタル酸二無水物の代わりに、2′-オキソジスピロ[ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,1′-シクロペンタン-3′,2′′-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン]-5,6:5′′,6′′-テトラカルボン酸二無水物(CpODA)を用いた他は実施例1と同様に合成を行ない、ポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液に、水と混和しない含酸素有機化合物として、炭酸ジエチルを0.8wt%となるように加えた。この溶液の粘度の経時変化は-0.6%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.05であり、ガラス転移温度は300℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は305℃だった。従って、ガラス転移温度より5℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例20)
実施例1において、酸二無水物として4,4’-オキシジフタル酸二無水物の代わりに、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物(BPAF)を用いた他は実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液に、水と混和しない含酸素有機化合物として、炭酸ジエチルを0.8wt%となるように加えた。この溶液の粘度の経時変化は-0.7%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.11であり、ガラス転移温度は290℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は295℃だった。従って、ガラス転移温度より5℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例21)
500mlセパラブルフラスコにγ-ブチロラクトン:109.41gを入れ、2′-オキソジスピロ[ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,1′-シクロペンタン-3′,2′′-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン]-5,6:5′′,6′′-テトラカルボン酸二無水物(CpODA):38.44g(100mmol)を加えて攪拌溶解させた。つづいて9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(BAFL):34.50g(99mmol)を加えて同じく攪拌溶解させた。それからトルエン:45gを加えた。このフラスコの上にディーンスターク管とリフラックス管を取り付け、オイルバスで溶液を180℃に加熱して、途中で発生する水をディーンスターク管から抜きながら、窒素下で3時間リフラックスさせた。その後窒素下で、ディーンスターク管からトルエンを抜きながら更にリフラックスさせた。それから反応液を室温まで冷却し、ポリイミドの溶液を得た。この溶液に、水と混和しない含酸素有機化合物として、炭酸ジエチルを0.8wt%加えた。この溶液の粘度の経時変化は、-0.8%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.17であり、ガラス転移温度は300℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は305℃だった。従って、ガラス転移温度より5℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例22)
実施例21において、ジアミンとして9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(BAFL)の代わりに)2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(TFMB)を用いた他は実施例21と同様にポリイミドの溶液を得た。この溶液に、水と混和しない含酸素有機化合物として、炭酸ジエチルを0.8wt%となるように加えた。この溶液の粘度の経時変化は-0.6%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.07であり、ガラス転移温度は290℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は295℃だった。従って、ガラス転移温度より5℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例23)
実施例1において、ジアミンとして4,4’-ジアミノジフェニルスルホンと3,3’-ジアミノジフェニルスルホンの代わりに9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(BAFL)を用いた他は実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液に、水と混和しない含酸素有機化合物として、炭酸ジエチルを0.8wt%となるように加えた。この溶液の粘度の経時変化は-0.7%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.06であり、ガラス転移温度は285℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は290℃だった。従って、ガラス転移温度より5℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例24)
実施例1において、ジアミンとして4,4’-ジアミノジフェニルスルホンと3,3’-ジアミノジフェニルスルホンの代わりに2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(TFOMB)を用いた他は実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液に、水と混和しない含酸素有機化合物として、炭酸ジエチルを0.8wt%となるように加えた。この溶液の粘度の経時変化は-0.6%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.10であり、ガラス転移温度は240℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は245℃だった。従って、ガラス転移温度より5℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例25)
500mlセパラブルフラスコにγ-ブチロラクトン:85.39gを入れ、4,4’-オキシジフタル酸二無水物:31.02g(100mmol)を加えて攪拌溶解させた。つづいて4,4’-ジアミノジフェニルスルホン:14.01g(56.43mmol)、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン:9.34g(37.62mmol)を加えて同じく攪拌溶解させた。そこにトルエン:45gを加えた。このフラスコの上にディーンスターク管とリフラックス管を取り付け、オイルバスで溶液を180℃に加熱して、途中で発生する水をディーンスターク管から抜きながら、窒素下で3時間リフラックスさせた。その後窒素下で、ディーンスターク管からトルエンを抜きながら更にリフラックスさせた。それから反応液を室温まで冷却し、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン:0.737g(2.97mmol)、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン:0.492g(1.98mmol)を加えて室温で3日間反応させ、ポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液に、水と混和しない含酸素有機化合物として、炭酸ジエチルを2.4wt%加えた。この溶液の粘度の経時変化は、-0.5%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.05であり、ガラス転移温度は285℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は290℃だった。従って、ガラス転移温度より5℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例26)
500mlセパラブルフラスコにγ-ブチロラクトン:85.39gを入れ、4,4’-オキシジフタル酸二無水物:31.02g(100mmol)を加えて攪拌溶解させた。つづいて4,4’-ジアミノジフェニルスルホン:14.748g(59.4mmol)、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン:9.832g(39.6mmol)を加えて同じく攪拌溶解させた。それから信越化学製シリコーンジアミンX-22-161-A:3.52g(2.2mmol)を滴下し、トルエン:45gを加えた。このフラスコの上にディーンスターク管とリフラックス管を取り付け、オイルバスで溶液を180℃に加熱して、途中で発生する水をディーンスターク管から抜きながら、窒素下で3時間リフラックスさせた。その後窒素下で、ディーンスターク管からトルエンを抜きながら更にリフラックスさせた。それから反応液を室温まで冷却し、ポリイミドの溶液を得た。この溶液に、水と混和しない含酸素有機化合物として、炭酸ジエチルを1.7wt%加えた。この溶液の粘度の経時変化は、-0.3%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.07であり、ガラス転移温度は275℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は280℃だった。従って、ガラス転移温度より5℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(実施例27)
500mlセパラブルフラスコにγ-ブチロラクトン:85.39gを入れ、4,4’-オキシジフタル酸二無水物:31.02g(100mmol)を加えて攪拌溶解させた。つづいて4,4’-ジアミノジフェニルスルホン:14.748g(59.4mmol)、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン:9.832g(39.6mmol)を加えて同じく攪拌溶解させ、そのまま80℃で3時間反応させた。それから反応液を室温まで冷却し、信越化学製シリコーンジアミンX-22-161-A:3.52g(2.2mmol)を滴下後、室温で5時間反応させてポリアミド酸の溶液を得た。この溶液に、水と混和しない含酸素有機化合物として、炭酸ジエチルを5.6wt%加えた。この溶液の粘度の経時変化は、-0.3%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.18であり、ガラス転移温度は265℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は270℃だった。従って、ガラス転移温度より5℃高い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(比較例1)
実施例1において、最後に炭酸ジエチルを加えなかった他は実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液の粘度の経時変化は-3.5%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.23であり、ガラス転移温度は270℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は260℃だった。従って、ガラス転移温度より10℃低い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(比較例2)
2Lセパラブルフラスコに、N,N-ジエチルアセトアミド:800gを入れ、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン):87.54g(0.604mol)、トリエチルアミン61.12g(0.604mol)を加え、攪拌均一溶解させた。この溶液を氷浴で冷却しながら無水トリメリット酸クロライド:127.18g(0.604mol)をゆっくり滴下した。滴下終了後、室温で粘度上昇が終わるまで攪拌した。粘度上昇が終わった所で、この溶液にアニリン:0.56g(0.006mol)を加え、1時間攪拌した。続いてこの溶液に無水酢酸:120ml、ピリジン:60mlを加え、55℃で2時間攪拌してイミド化を行なった。そして、得られた溶液を水/メタノールに注ぎ込み、析出した固体を濾別、水洗、乾燥することでポリアミドイミドの粉末を得た。得られた粉末をγ-ブチロラクトン(GBL)とN-メチルピロリドン(NMP)の1:1(重量比)溶液に溶解させ、炭酸ジエチルを0.8wt%になるように加えた。この溶液の粘度の経時変化は-2.8%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.43であり、ガラス転移温度は240℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は235℃だった。従って、ガラス転移温度より5℃低い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(比較例3)
実施例1において、加える炭酸ジエチルの量を0.0005wt%に変えた他は実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液の粘度の経時変化は-3.8%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.35であり、ガラス転移温度は270℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は265℃だった。従って、ガラス転移温度より5℃低い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(比較例4)
実施例1において、加える炭酸ジエチルの量を22.3wt%に変えた他は実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液の粘度の経時変化は-3.1%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.22であり、ガラス転移温度は270℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は265℃だった。従って、ガラス転移温度より5℃低い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(比較例5)
実施例1において、非プロトン極性溶媒としてγ-ブチロラクトン(GBL)の代わりにジメチルスルホキシド(DMSO)を、水と混和しない含酸素有機化合物として、炭酸ジエチルの代わりにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を3.1wt%加えた他は、実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液の粘度の経時変化は-2.5%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.54であり、ガラス転移温度は270℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は260℃だった。従って、ガラス転移温度より10℃低い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(比較例6)
実施例1において、非プロトン極性溶媒としてγ-ブチロラクトン(GBL)の代わりにジメチルスルホキシド(DMSO)を、水と混和しない含酸素有機化合物として、炭酸ジエチルの代わりに酢酸3-メトキシブチルを43wt%加えた他は、実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液の粘度の経時変化は-2.6%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.51であり、ガラス転移温度は270℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は260℃だった。従って、ガラス転移温度より10℃低い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(比較例7)
実施例1において、非プロトン極性溶媒としてγ-ブチロラクトン(GBL)の代わりにN-メチルピロリドン(NMP)とγ-ブチロラクトン(GBL)の1:1混合物を、水と混和しない含酸素有機化合物として、炭酸ジエチルの代わりに酢酸-3-メチル-3-メトキシブチルを10wt%加えた他は、実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液の粘度の経時変化は-2.1%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.48であり、ガラス転移温度は270℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は260℃だった。従って、ガラス転移温度より10℃低い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
(比較例8)
実施例1において、非プロトン極性溶媒としてγ-ブチロラクトン(GBL)の代わりにN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を、水と混和しない含酸素有機化合物として、炭酸ジエチルの代わりに酢酸ブチルを25wt%加えた他は、実施例1と同様にポリアミドイミドの溶液を得た。この溶液の粘度の経時変化は-2.8%/dayであった。また、実施例1と同様の方法でこの溶液をコート、キュアし、キュア後の樹脂膜のヘイズを測定した所、膜厚10μm換算で0.56であり、ガラス転移温度は270℃、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素をスパッタした後の再加熱で、樹脂膜にシワが入り始める温度は260℃だった。従って、ガラス転移温度より10℃低い温度で再キュアすると樹脂膜にシワが入り始めることがわかった。
上記各実施例および比較例の結果を表1~表4にまとめて示す。
Figure 2023016028000031
Figure 2023016028000032
Figure 2023016028000033
Figure 2023016028000034
以上のように、実施例の樹脂組成物は、比較例に比べて、粘度の経時変化が抑えられるとともに、ポリイミド樹脂膜とした際に、ヘイズが小さく、無機膜形成後の再加熱工程で、より高い温度までシワが入らない、というディスプレイ用途に求められる特性が優れていた。
2a 下部基板
2b 封止基板
25 有機EL構造部
250a 赤色光を発光する有機EL素子
250b 緑色光を発光する有機EL素子
250c 青色光を発光する有機EL素子
251 隔壁(バンク)
252 下部電極(陽極)
253 正孔輸送層
254 発光層
255 上部電極(陰極)
256 TFT
257 コンタクトホール
258 層間絶縁膜
259 下部電極
261 中空部

Claims (18)

  1. 下記一般式(1):
    Figure 2023016028000035
    {式中、P1は、2価の有機基を示し、P2は、4価の有機基を示し、かつpは、正の整数を示す。}
    で表されるポリイミド前駆体、及び/または、下記一般式(2):
    Figure 2023016028000036
    {式中、P1は、2価の有機基を示し、P2は、4価の有機基を示し、かつpは、正の整数を示す。}
    で表されるポリイミドを含み、
    更に、非プロトン性極性溶媒と、水と混和しない含酸素有機化合物を含み、
    前記水と混和しない含酸素有機化合物が、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸3-メトキシブチル、酪酸エチル、エトキシプロピオン酸エチル、4-メチルテトラヒドロピラン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン及び炭酸ジエチルからなる群から選ばれるいずれか1種以上であり、
    前記非プロトン性極性溶媒100質量%に対し、前記水と混和しない含酸素有機化合物を0.001~20質量%含むことを特徴とする、樹脂組成物。
  2. 樹脂1分子内に、下記一般式(1):
    Figure 2023016028000037
    {式中、P1は、2価の有機基を示し、P2は、4価の有機基を示し、かつpは、正の整数を示す。}
    で表されるポリイミド前駆体骨格、及び、下記一般式(2):
    Figure 2023016028000038
    {式中、P1は、2価の有機基を示し、P2は、4価の有機基を示し、かつpは、正の整数を示す。}
    で表されるポリイミド骨格を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記P1又はP2は、下記一般式(5):
    Figure 2023016028000039
    {式中、R1は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1~10の二価の有機基であり、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1~10の一価の有機基であり、少なくとも一つは炭素数1~5の一価の脂肪族炭化水素基であり、R4及びR5は、それぞれ独立に、炭素数1~10の一価の有機基であり、少なくとも一つは炭素数6~10の一価の芳香族基であり、R6及びR7は、それぞれ独立に、炭素数1~10の一価の有機基であり、L1及びL2は、それぞれ独立に、アミノ基、酸無水物基、イソシアネート基、カルボキシル基、酸エステル基、酸ハライド基、ヒドロキシ基、エポキシ基、又はメルカプト基であり、iは、1~200の整数であり、j及びkは、それぞれ独立に、0~200の整数であり、0≦j/(i+j+k)≦0.50であり、かつ官能基当量が800以上である。}
    で表されるケイ素含有化合物に由来する構成単位を含む請求項1に記載の樹脂組成物。
  4. 前記非プロトン性極性溶媒が、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、γ-ブチロラクトン及びγ-バレロラクトンからなる群のいずれか1種以上を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  5. 前記水と混和しない含酸素有機化合物が、炭酸ジエチルである、請求項1に記載の樹脂組成物。
  6. 前記P1が、下記一般式(3):
    Figure 2023016028000040
    で表されるジアミンに由来する構成単位を含み、
    又は、前記P2が、下記一般式(4):
    Figure 2023016028000041
    で表される酸二無水物に由来する構成単位を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  7. 前記ケイ素含有化合物の含量が、全モノマー質量を100質量%としたとき、0.5質量%以上20質量%以下である、請求項3に記載の樹脂組成物。
  8. 前記L1及びL2が、それぞれ独立に、アミノ基である、請求項3に記載の樹脂組成物。
  9. 前記ポリイミド前駆体又は前記ポリイミドを加熱して得られるポリイミド樹脂膜が、フレキシブルディスプレイに用いられる、請求項1に記載の樹脂組成物。
  10. 前記ポリイミド前駆体又は前記ポリイミドを加熱して得られるポリイミド樹脂膜が、前記水と混和しない含酸素有機化合物を実質的に含まない、請求項1に記載の樹脂組成物。
  11. 支持体の表面上に、請求項1~10のいずれか一項に記載の樹脂組成物を塗布する塗布工程と、
    該樹脂組成物を加熱してポリイミド樹脂膜を形成する膜形成工程と、
    該ポリイミド樹脂膜を該支持体から剥離する剥離工程と、
    を含む、ポリイミド樹脂膜の製造方法。
  12. 前記剥離工程に先立って、前記支持体側から前記樹脂組成物にレーザーを照射する照射工程を含む、請求項11に記載のポリイミド樹脂膜の製造方法。
  13. 支持体の表面上に、請求項1~10のいずれか一項に記載の樹脂組成物を塗布する塗布工程と、
    該樹脂組成物を加熱してポリイミド樹脂膜を形成する膜形成工程と、
    該ポリイミド樹脂膜上に素子を形成する素子形成工程と、
    該素子が形成された該ポリイミド樹脂膜を該支持体から剥離する剥離工程と、
    を含む、ディスプレイの製造方法。
  14. 支持体の表面上に、請求項1~10のいずれか一項に記載の樹脂組成物を塗布する塗布工程と、
    該樹脂組成物を加熱してポリイミド樹脂膜を形成する膜形成工程と、
    該ポリイミド樹脂膜上に素子を形成する素子形成工程と、
    を含む、積層体の製造方法。
  15. 前記素子が形成された前記ポリイミド樹脂膜を前記支持体から剥離する工程をさらに含む、請求項14に記載の積層体の製造方法。
  16. 請求項14に記載の方法により積層体を製造することを含む、フレキシブルデバイスの製造方法。
  17. 下記一般式(1):
    Figure 2023016028000042
    {式中、P1は、2価の有機基を示し、P2は、4価の有機基を示し、かつpは、正の整数を示す。}
    で表されるポリイミド前駆体、及び/または、下記一般式(2):
    Figure 2023016028000043
    {式中、P1は、2価の有機基を示し、P2は、4価の有機基を示し、かつpは、正の整数を示す。}
    で表されるポリイミドを含み、
    前記P1又はP2は、下記一般式(5):
    Figure 2023016028000044
    {式中、R1は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1~10の二価の有機基であり、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1~10の一価の有機基であり、少なくとも一つは炭素数1~5の一価の脂肪族炭化水素基であり、R4及びR5は、それぞれ独立に、炭素数1~10の一価の有機基であり、少なくとも一つは炭素数6~10の一価の芳香族基であり、R6及びR7は、それぞれ独立に、炭素数1~10の一価の有機基であり、L1及びL2は、それぞれ独立に、アミノ基、酸無水物基、イソシアネート基、カルボキシル基、酸エステル基、酸ハライド基、ヒドロキシ基、エポキシ基、又はメルカプト基であり、iは、1~200の整数であり、j及びkは、それぞれ独立に、0~200の整数であり、0≦j/(i+j+k)≦0.50であり、かつ官能基当量が800以上である。}
    で表されるケイ素含有化合物に由来する構成単位を含み、
    更に、非プロトン性極性溶媒と、水と混和しない含酸素有機化合物とを含み、
    前記非プロトン性極性溶媒100質量%に対し、前記水と混和しない含酸素有機化合物を0.001~20質量%含むことを特徴とする、樹脂組成物。
  18. 下記一般式(1):
    Figure 2023016028000045
    {式中、P1は、2価の有機基を示し、P2は、4価の有機基を示し、かつpは、正の整数を示す。}
    で表されるポリイミド前駆体、及び/または、下記一般式(2):
    Figure 2023016028000046
    {式中、P1は、2価の有機基を示し、P2は、4価の有機基を示し、かつpは、正の整数を示す。}
    で表されるポリイミドを含み、
    更に、非プロトン性極性溶媒と、水と混和しない含酸素有機化合物とを含み(ただし、前記水と混和しない含酸素有機化合物は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテートは含まない)、
    前記非プロトン性極性溶媒100質量%に対し、前記水と混和しない含酸素有機化合物を0.001~20質量%含むことを特徴とする、樹脂組成物。
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