JP2023014840A - タイヤ - Google Patents

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寛太 安藤
Kanta Ando
澄子 宮崎
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Sumitomo Rubber Industries Ltd
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Abstract

【課題】低燃費性と強度(高速耐久性)を両立させたタイヤを提供すること。【解決手段】コード-ゴム複合体を備えたタイヤであって、前記タイヤはタイヤ重量(WT)が20kg以下であり、前記コード-ゴム複合体は有機繊維コードと、前記有機繊維コードを被覆するトッピングゴムと、短繊維フィラーとを含み、前記短繊維フィラーは所定の式で定義される分散Vが0.6超であるタイヤ。【選択図】なし

Description

本開示はタイヤに関する。
従来、カーカスコードとして使用するセルロース繊維の強度を高めるため、カーボンナノチューブ(CNT)で補強したセルロース繊維コードを使用することにより、カーカスコード径を太くしたり、コード打ち込み本数を多くすることなく、カーカスコードの高耐久性を実現し、高速走行時の操縦安定性を高めることが提案されている(特許文献1)。
特開2014-189212号公報
しかし、セルロース繊維のような短繊維フィラーを有機繊維コードとともに使用する場合に、短繊維フィラーの配向性(度合)を定量的に評価する手法は確立されていなかった。このため、短繊維フィラーの配向性が与える影響も十分に理解されてはいなかった。
本開示は、低燃費性と強度(高速耐久性)を両立させたタイヤを提供しようとするものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、コード-ゴム複合体を備えた、重量が所定値以下のタイヤにおいて、該コード-ゴム複合体が有機繊維コードと、該有機繊維コードを被覆するトッピングゴムと、短繊維フィラーとを含む場合に、所定の式で定義される該短繊維フィラーの分散Vを0.6超とすることにより、低燃費性と強度(高速耐久性)を両立させ得ることを見出し、さらに検討を重ねて、本開示を完成した。
すなわち、本開示は、以下のタイヤに関する。
コード-ゴム複合体を備えたタイヤであって、
前記タイヤは、タイヤ重量(WT)が20kg以下であり、
前記コード-ゴム複合体は、有機繊維コードと、前記有機繊維コードを被覆するトッピングゴムと、短繊維フィラーとを含み、
前記短繊維フィラーは、下記で定義される分散Vが0.6超である、タイヤ。
V=1-R
Figure 2023014840000001
{θj|j=1,2,・・・,N}
[ここで、iは虚数単位を表し、Nは有機繊維コードについてのコードの長さ方向およびコードの配列の幅方向のいずれにも平行な面で切り出したトッピングゴムの断面における電子顕微鏡画像の基準面積の範囲から確認できる短繊維フィラー塊の数であり、θは前記トッピングゴムの断面において各短繊維フィラー塊の配向方向が前記有機繊維コードの長さ方向となす角度(ラジアン)を表す。]
本開示によれば、低燃費性と強度(高速耐久性)を両立させたタイヤを提供することができる。
本開示の一実施形態を示すタイヤの断面図である。 本開示の一実施形態を示すトレッド部の展開図である。 本開示の一実施形態を示すトレッド部の展開図である。 本開示の一実施形態を示すトレッド部の展開図である。 実施例5の試験用タイヤから得られた、本開示所定の観察用断面の電子顕微鏡画像である。 前図の電子顕微鏡画像から、短繊維フィラー(CNF)塊の画像部分のみを抜き出した画像である。
<定義>
「タイヤ重量」はWT(kg)で表す。ただし、WTはリムの重量を含まない、タイヤ単体の重量である。一方、タイヤの内腔に、スポンジやシーラントからなる部材またはセンサー部材などを備える場合はそれらを含む重量である。
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMA(日本自動車タイヤ協会)であれば「JATMA YEAR BOOK」に記載されている適用サイズにおける標準リム、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば「STANDARDS MANUAL」に記載されている“Measuring Rim”、TRA(The Tire and Rim Association, Inc.)であれば「YEAR BOOK」に記載されている“Design Rim”を指す。そして、規格に定められていないタイヤの場合には、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、即ちリム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムのうち、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば“最高空気圧”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”である。規格に定められていないタイヤの場合、正規内圧は250kPaである。
「正規状態」とは、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法(タイヤ断面幅W等)は、前記正規状態で測定される。
「最大負荷能力(WL)(kg)」とは、正規状態で測定されたタイヤ断面幅をW(mm)、タイヤ外径をDt(mm)、タイヤ内径をr(mm)とするとき、下記で定義される。但し、タイヤ断面幅Wは、タイヤ側面に模様または文字などがある場合にはそれらを除いたものとしてのサイドウォール外面間の最大幅である。
L=0.000011×VT+100
[ここで、VTは、内圧250kPaを負荷した際のタイヤの仮想体積(mm3)であり以下の式で算出される。
VT={(Dt2-r2)/4×π}×W
Dt:タイヤ外径(mm)
r:タイヤ内径(mm)
π:円周率
W:タイヤ断面幅(mm)]
「トレッド端Ti、To」とは、正規状態のタイヤに正規荷重が負荷されキャンバー角0度で平面に接地したときの最も外側の接地位置である。トレッド端Tiは車両装着時に車両内側となるトレッド端を表し、トレッド端Toは車両外側となるトレッド端を表す。
「トレッド幅TW」は、トレッド端Toとトレッド端Tiとの間のタイヤ幅方向X(図2~図4における左右方向)における距離である。
「陸部」とは、トレッド部において、前記トレッド端Toと前記トレッド端Tiとの間で、タイヤ周方向に連続して延びる周方向溝によって仕切られた領域をいう。例えば、周方向溝が2つの場合、陸部は一対のショルダー陸部とそれらに挟まれたセンター陸部とに分けられ、周方向溝が3つの場合、センター陸部がさらに車両装着時に車両内側となる陸部と、同外側となる陸部とに分けられる。
「オイルの含有量」は、油展ゴムに含まれるオイル量も含む。
なお、本明細書において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、特に断りのない限り、その両端の数値を含むものとする。
<測定方法>
「スチレン含有量」は、1H-NMR測定により算出される。例えば、SBR等のスチレン含有ゴムに適用される。
「ビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)」は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定される。例えば、SBRに適用される。
「シス1,4-結合含有率」は、赤外吸収スペクトル分析により算出される値である。例えば、BRに適用される。
「カーボンブラックのN2SA」は、JIS K 6217-2「ゴム用カーボンブラック基本特性-第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」に準じて測定される。
「シリカのN2SA」は、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される。
<タイヤ>
以下、本開示のタイヤについて説明する。
本開示のタイヤは、コード-ゴム複合体を備えたタイヤであって、前記タイヤはタイヤ重量(WT)が20kg以下であり、前記コード-ゴム複合体は有機繊維コードと、前記有機繊維コードを被覆するトッピングゴムと、短繊維フィラーとを含み、前記短繊維フィラーは上記式で定義される分散Vが0.6超である、タイヤである。
理論に拘束されることは意図しないが、本開示のタイヤが低燃費性と強度(高速耐久性)を両立させることができるメカニズムとしては、以下が考えられる。
すなわち、短繊維フィラーが配向すると、配向方向は強度が高くなるが、反配向方向では相対的に強度が低くなる。このため、タイヤの転動中に反配向方向での変形が大きくなるため、転がり抵抗が悪化することが懸念される。また、高速走行中の様な慣性の大きい状態においては、タイヤに強い衝撃が伝わると、配向方向に沿って衝撃が伝播しやすく、損傷に至りやすいことが懸念される。そこで、本開示に係るタイヤでは、短繊維フィラーの配向度合に関し、その分散を0.6超とランダムな状態にしている。これにより、転がり抵抗の悪化を防ぐと共に、衝撃の伝播も小さくすることができる様になるため、高速走行時の耐久性にも優れたタイヤとすることができると考えられる。
また、同時に、タイヤ重量20kg以下とすることにより、転動時のタイヤそのものの重量の影響を小さくすることにより、接地面での変形に対する入力を小さくすることができるため、良好な転がり抵抗と耐久性を得ることができると考えられる。
以上のように、コード-ゴム複合体における短繊維フィラーの配向度合をランダムな状態にすることによる効果と、タイヤ重量を抑えることによる効果とが相俟って、その結果として、低燃費性と強度(高速耐久性)との両立が可能となっていると考える。
なお、従来、短繊維フィラーを配合したコード-ゴム複合体について、その弾性率の異方性や強度には、短繊維フィラーの繊維径や繊維長さ、短繊維フィラー塊の長さや大きさ、短繊維フィラーの配合量、短繊維フィラーの配向度合など様々な因子が関係すると考えられ、定量的評価手法が確立されていなかった。本開示では、複数の短繊維フィラーが凝集した短繊維フィラー塊に着目し、コード-ゴム複合体を所定の面で切断した断面において、該短繊維フィラー塊の配向度合を所定の数式から得られる分散Vで評価し、これを制御することで、低燃費性と強度(高速耐久性)を向上させることができることを見出したことを特徴とする。
前記タイヤは、下記で定義される最大負荷能力(WL)に対するタイヤ重量(WT)の比(WT/WL)が0.027以下であることが好ましい。
L=0.000011×VT+100
[ここで、VTは、内圧250kPaを負荷した際のタイヤの仮想体積(mm3)であり以下の式で算出される。
VT={(Dt2-r2)/4×π}×W
Dt:タイヤ外径(mm)
r:タイヤ内径(mm)
π:円周率
W:タイヤ断面幅(mm)]
一般に、最大負荷能力が高くなると、タイヤの重量も重たくなるが、上記のように最大負荷能力に対して、一定の割合となるようにタイヤ重量を抑えることで、良好な転がり抵抗と強度を得ることができると考えられる。
前記タイヤは、前記短繊維フィラー塊について、下記で定義される平均アスペクト比が3.0以上であることが好ましい。
平均アスペクト比=(短繊維フィラー塊の長径の平均値)/(短繊維フィラー塊の短径の平均値)
このような構成とし、かつ、ランダムに配列させることで、補強性が確保しやすくなると考えられる。
前記タイヤは、前記有機繊維コードの長さ方向と前記各短繊維フィラー塊の配向方向とがなす角度(°)の平均が10以上であることが好ましい。
このような構成することで、本開示の効果を発揮しやすくなると考えられる。
前記タイヤは、前記短繊維フィラーがセルロースナノファイバー(CNF)およびカーボンナノチューブ(CNT)からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
CNFやCNTは、短繊維フィラーとして本開示の効果を発揮し易いと考えられる。
前記タイヤは、断面幅Wが150mm~290mmであることが好ましい。
このような構成とすることで、本開示の効果を発揮し易いと考えられる。
前記タイヤは、前記コード-ゴム複合体をカーカスに用いたものであることが好ましい。
このような構成とすることで、タイヤ全体を補強し、かつ、変形を抑制することが可能となるため、本開示の効果を発揮し易いと考えられる。
前記タイヤは、前記タイヤ外径Dtと前記タイヤ断面幅Wとが下記式(1)を満たすことが好ましい。
1963.4≦(Dt2×π/4)/Wt≦2827.4 (1)
式(1)を満たすように、断面幅に対して外形を大きくすることで、転動時にトレッド部から伝わる変形を最小限とし、かつ、短繊維による補強効果が発揮されることで、低燃費性、耐久性を向上させることができると考えられる。
前記タイヤは、トレッド部を備え、前記トレッド部は車両装着時に車両外側となるトレッド端Toと車両内側となるトレッド端Tiとを有し、かつ、前記トレッド端Toと前記トレッド端Tiとの間に、タイヤ周方向に連続して延びる2つ以上の周方向溝と、前記周方向溝のうちタイヤ幅方向最外端に位置する一対の最外周方向溝によって仕切られた一対のショルダー陸部および前記一対のショルダー陸部の間に位置する一つ以上のセンター陸部とを有し、前記前記一対のショルダー陸部および前記一つ以上のセンター陸部はタイヤ幅方向に延びる複数の横溝を有し、前記一対のショルダー陸部のうちの、少なくとも一つのショルダー陸部の横溝が、その一端がトレッド接地端まで到達し、他端が最外周方向溝まで到達せず陸部内に留まっていることが好ましい。
横溝の一端がトレッド接地端まで到達することで、トレッド部で転動中に発生した熱を排出しやすくなるため、トレッド部が過度に温度上昇することで変形が大きくなることを防ぐことができる。また、横溝の他端が陸部内でとどまることで剛性が維持されるため、変形を抑えることができる。これらにより、低燃費性と耐久性をより両立させやすくなると考えられる。
前記タイヤは、前記一つ以上のセンター陸部のうちの、少なくとも一つのセンター陸部の横溝が、その一端が当該センター陸部を画する2本の周方向溝の一方に連通し、他端が他方の周方向溝まで到達せず陸部内に留まっていることが好ましい。
横溝の一端が周方向溝の一方に連通することで、トレッド部で転動中に発生した熱を排出しやすくなるため、トレッド部が過度に温度上昇することで変形が大きくなることを防ぐことができる。また、横溝の他端が陸部内でとどまることで剛性が維持されるため、変形を抑えることができる。これらにより、低燃費性と耐久性をより両立させやすくなると考えられる。
前記タイヤは、前記センター陸部を画する2本の周方向溝が、タイヤ中心線との距離が大きい周方向溝と小さい周方向溝とからなり、前記横溝が連通している周方向溝がタイヤ中心線との距離が大きい周方向溝であることが好ましい。
前記横溝がタイヤ中心線との距離が大きい周方向溝と連通している方が、タイヤの接地中心からの反力を発生させやすくなると考えられる。
前記タイヤは、ランフラットタイヤであることが好ましい。
このような構成とすることで、本開示の効果を発揮し易いと考えられる。
(コード-ゴム複合体を備えたタイヤ)
本開示のタイヤは、コード-ゴム複合体を備えたタイヤである。コード-ゴム複合体は、有機繊維コードと、前記有機繊維コードを被覆するトッピングゴムと、短繊維フィラーとを含む。ここで、コード-ゴム複合体において、有機繊維コードは一定の方向に配列されている。また、短繊維フィラーは、複数が相互に凝集して短繊維フィラー塊を形成している。
図1は、本開示のタイヤの一実施形態を示す断面図である。図1において、本開示のタイヤ1は、ランフラットタイヤであり、トレッド部2、サイドウォール部3、ブレーカー4、カーカス5、インナーライナー6、サイド補強ゴム7、ビード部8およびクリンチ9を備えている。
本開示のタイヤにおいて、前記コード-ゴム複合体の用途は、特に限定されることなく有機繊維コードと該コードを被覆するトッピングゴムとを含む部材として使用することができる。より具体的には、例えば、ブレーカーやカーカスに使用することができ、このうち、カーカスに使用することが好ましい。
(タイヤ重量)
本開示のタイヤの重量WT(kg)は、20kg以下である。タイヤ重量が20kgを超えると、接地面での変形に対する入力が大きくなる。このため、良好な転がり抵抗と強度を得ることができない。タイヤ重量は、19kg以下が好ましく、より好ましくは18kg以下、さらに好ましくは17kg以下、さらに好ましくは16kg以下である。タイヤ重量WTの下限について特に制限はないが、例えば、8kg程度のタイヤであってもよい。
(有機繊維コード)
本開示のコード-ゴム複合体に用いる有機繊維コードは、1本以上のフィラメント糸を撚り合わせて得られるものをいい、例えば、タイヤ工業において補強材として通常使用されるコードを用いることができる。
有機繊維コートに用いる有機繊維の種類としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル繊維;ナイロン繊維;レーヨン繊維;ビニロン繊維;アラミド繊維;及びポリウレタン繊維等が挙げられる。有機繊維は1種または2種以上を用いることができる。
これらの有機繊維のうち、本開示の効果の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル繊維、レーヨン繊維を用いることが好ましく、なかでも、レーヨン繊維を用いることが好ましい。
ポリエステル繊維からなるコード(ポリエステルコード)としては、例えば、i)1100デシテックス(dtex)のマルチフィラメントをそれぞれ2本または3本合わせて(言い換えれば、1100/2デシテックス、または1100/3デシテックス)、10~60回/10cmの撚りをかけた後、この下撚コード2本を合せて下撚と反対方向に同数の上撚をかけたものや、ii)1670デシテックスのマルチフィラメントをそれぞれ2本合わせて(言い換えれば、1670/2デシテックス)、20~50回/10cmの撚りをかけた後、この下撚コード2本を合せて下撚と反対方向に同数の上撚をかけたものが使用され得る。
ナイロン繊維からなるコード(ナイロンコード)としては、例えば、i)940デシテックスのマルチフィラメントをそれぞれ2本合わせて(言い換えれば、940/2デシテックス)、31~48回/10cmの撚りをかけた後、この下撚コード2本を合せて下撚と反対方向に同数の上撚をかけたもの(一定荷重44Nをかけた際の中間伸度8.80%)や、ii)1400デシテックスのマルチフィラメントをそれぞれ2本合わせて(言い換えれば、1400/2デシテックス)30~51回/10cmの撚りをかけた後、この下撚コード2本を合せて下撚と反対方向に同数の上撚をかけたもの(一定荷重66Nをかけた際の中間伸度8.80%)が使用され得る。
レーヨン繊維からなるコード(レーヨンコード)としては、例えば、1840デシテックスのマルチフィラメントを、それぞれ2本合わせて(言い換えれば、1840/2デシテックス)、20~50回/10cmの撚りをかけた後、この下撚コード2本を合せて下撚と反対方向に同数の上撚をかけたもの(一定荷重44Nをかけた際の中間伸度4.80%)が使用され得る。
アラミド繊維からなるコード(アラミドコード)としては、例えば、1670デシテックスの芳香族ポリアミドマルチフィラメント(デュポン社製ケブラー)を、それぞれ2本または3本合わせて(言い換えれば、1670/2デシテックス、または1670/3デシテックス)、30~78回/10cmの撚りをかけた後、この下撚コード2本を合せて下撚と反対方向に同数の上撚をかけたもの(一定荷重44Nをかけた際の中間伸度0.7~1.5%)が使用され得る。
ポリエステル繊維及びナイロン繊維からなるコード(ポリエステル-ナイロンハイブリッドコード)としては、例えば、1440デシテックスのポリエステルマルチフィラメント及び1440デシテックスのナイロンマルチフィラメントを2本合わせて(言い換えれば、1440-P/1400-Nデシテックス)、30~38回/10cmの撚りをかけた後、この下撚コード2本を合せて下撚と反対方向に同数の上撚をかけたもの(一定荷重44Nをかけた際の中間伸度4.40%、一定荷重66Nをかけた際の中間伸度6.30%)が使用され得る。
アラミド繊維及びナイロン繊維からなるコード(アラミド-ナイロンハイブリッドコード)としては、例えば、1100デシテックスのアラミドマルチフィラメント及び940デシテックスのナイロンマルチフィラメントを2本合わせて(言い換えれば、1100-K/940-Nデシテックス)、42回/10cmの撚りをかけた後、この下撚コード2本を合せて下撚と反対方向に同数の上撚をかけたもの(一定荷重44Nをかけた際の中間伸度3.60%)が使用され得る。
(トッピングゴム)
本開示のコード-ゴム複合体において、有機繊維コードを被覆するトッピングゴムに用いるゴム組成物(トッピングゴム用ゴム組成物)としては、ゴム工業で通常使用するものであれば特に限定されない。
≪ゴム成分≫
ゴム成分としては、イソプレン系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)等を用いることができ、このうち、機械的強度、耐リバージョン、耐熱性、耐亀裂成長性に優れることから、SBRやイソプレン系ゴムが好ましい。ゴム成分は1種または2種以上を用いることができる。
イソプレン系ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)および天然ゴム等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。天然ゴムには、非改質天然ゴム(NR)の他に、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴム等も含まれる。これらのイソプレン系ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。NRとしては、特に限定されず、タイヤ業界において一般的なものを用いることができ、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20等が挙げられる。
イソプレン系ゴムを含有する場合のゴム成分100質量%中の含有量は、本開示の観点から、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。
SBRとしては特に限定はなく、溶液重合SBR(S-SBR)、乳化重合SBR(E-SBR)、これらの変性SBR(変性S-SBR、変性E-SBR)等が挙げられる。変性SBRとしては、末端および/または主鎖が変性されたSBR、スズ、ケイ素化合物等でカップリングされた変性SBR(縮合物、分岐構造を有するもの等)等が挙げられる。なかでもS-SBRおよび変性SBRが好ましい。さらに、これらSBRの水素添加物(水素添加SBR)等も使用することができる。これらSBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本開示で使用できるS-SBRとしては、JSR(株)、住友化学(株)、宇部興産(株)、旭化成(株)、ZSエラストマー(株)等によって製造販売されるS-SBRが挙げられる。
SBRのスチレン含有量は、ウェットグリップ性能および耐摩耗性能の観点から、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。また、グリップ性能の温度依存性および耐ブロー性能の観点からは、60質量%以下が好ましく、本開示の効果の観点からは、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。SBRのスチレン含有量は、前記測定方法により測定される。
SBRのビニル含量は、シリカとの反応性の担保、ウェットグリップ性能、ゴム強度、および耐摩耗性能の観点から、10モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましい。また、SBRのビニル含量は、温度依存性の増大防止、破断伸び、および耐摩耗性能の観点から、70モル%以下が好ましく、65モル%以下がより好ましく、60モル%以下がさらに好ましい。SBRのビニル含量は、前記測定方法により測定される。
SBRを含有する場合のゴム成分100質量%中の含有量は、本開示の効果の観点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。また、SBRの含有量は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
BRとしては特に限定されるものではなく、例えば、シス1,4結合含有率(シス含量)が50%未満のBR(ローシスBR)、シス1,4結合含有率が90%以上のBR(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、変性BR(ハイシス変性BR、ローシス変性BR)等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。これらBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。BRのシス1,4結合含有率は前記測定方法で測定される。変性BRとしては、リチウム開始剤により1,3-ブタジエンの重合を行ったのち、スズ化合物を添加することにより得られ、さらに変性BR分子の末端がスズ-炭素結合で結合されているもの(スズ変性BR)や、ブタジエンゴムの活性末端に縮合アルコキシシラン化合物を有するブタジエンゴム(シリカ用変性BR)等が挙げられる。このような変性BRとしては、例えば、ZSエラストマー(株)等によって製造販売されるスズ変性BRやシリカ用変性BRが挙げられる。
BRを含有する場合のゴム成分100質量%中の含有量は、本開示の効果の観点から、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。また、BRの含有量は、40質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
本開示に係るゴム成分として、前記のイソプレン系ゴム、SBR、およびBR以外のゴム成分を含有してもよい。他のゴム成分としては、タイヤ工業で一般的に用いられる架橋可能なゴム成分を用いることができ、例えば、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、塩化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム(ACM)、ヒドリンゴム等が挙げられる。これらその他のゴム成分は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。その他のゴムのゴム成分における含有量は、0質量%であってもよい。
≪充填剤≫
本開示に係るゴム組成物は、充填剤を含有することができ、充填剤としては、例えば、カーボンブラック、シリカ等が挙げられる。充填剤は1種または2種以上を使用することができる。
カーボンブラックとしては、タイヤ工業において一般的なものを適宜利用することができる、例えば、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762などが挙げられる。これらのカーボンブラックは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、補強性の観点から、80m2/g以上が好ましく、90m2/g以上がより好ましく、100m2/g以上がさらに好ましい。また、N2SAは、低燃費性能および加工性の観点から、200m2/g以下が好ましく、170m2/g以下がより好ましく、155m2/g以下がさらに好ましい。カーボンブラックのN2SAは前記測定方法で測定される。
カーボンブラックを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、耐摩耗性能およびウェットグリップ性能の観点から、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましい。また、低燃費性能の観点からは、60質量部以下が好ましく、55質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましく、10質量部以下が特に好ましい。
シリカとしては、特に限定されず、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)等、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。これらのシリカは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、低燃費性能および耐摩耗性能の観点から、140m2/g以上が好ましく、170m2/g以上がさらに好ましい。また、低燃費性能および加工性の観点からは、350m2/g以下が好ましく、300m2/g以下がより好ましく、250m2/g以下がさらに好ましい。シリカのN2SAは前記測定方法で測定される。
シリカを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、60質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。
充填剤としては、カーボンブラック、シリカ以外に、さらにその他の充填剤を用いてもよい。そのような充填剤としては、特に限定されず、例えば、水酸化アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、タルク、クレー等この分野で一般的に使用される充填剤をいずれも用いることができる。これらの充填剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
≪シランカップリング剤≫
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、タイヤ工業において、従来シリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができるが、例えば、メルカプト系シランカップリング剤;ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系シランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ系シランカップリング剤;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系シランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系シランカップリング剤等が挙げられる。なかでも、スルフィド系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤が好ましい。これらのシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤のシリカ100質量部に対する含有量(複数のシランカップリング剤を併用する場合は全ての合計量)は、シリカの分散性を高める観点から、1.0質量部以上が好ましく、3.0質量部以上がより好ましく、5.0質量部以上がさらに好ましい。また、コストおよび加工性の観点からは、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、12質量部以下がさらに好ましい。
≪その他の配合剤≫
本開示に係るゴム組成物には、前記成分以外にも、従来タイヤ工業で一般に使用される配合剤、例えば、軟化剤、ワックス、加工助剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等を適宜含有することができる。
軟化剤としては、例えば、オイル、液状ゴム、エステル系可塑剤、樹脂等が挙げられる。軟化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、動物油脂等が挙げられる。前記プロセスオイルとしてはパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等が挙げられる。また、環境対策で多環式芳香族(polycyclic aromatic compound:PCA)化合物の含量の低いプロセスオイルを使用することもできる。前記低PCA含量プロセスオイルとしては、軽度抽出溶媒和物(MES)、処理留出物芳香族系抽出物(TDAE)、重ナフテン系オイル等が挙げられる。オイルは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
オイルを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、40質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
液状ゴムは、常温(25℃)で液体状態のポリマーであれば特に限定されないが、例えば、液状ブタジエンゴム(液状BR)、液状スチレンブタジエンゴム(液状SBR)、液状イソプレンゴム(液状IR)、液状スチレンイソプレンゴム(液状SIR)、液状ファルネセンゴム等が挙げられる。液状ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
液状ゴムを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、液状ゴムの含有量は、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
エステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジブチル(DBA)、アジピン酸ジイソブチル(DIBA)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アゼライン酸ジ2-エチルヘキシル(DOZ)、セバシン酸ジブチル(DBS)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、フタル酸ジブチル(DBP)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、リン酸トリブチル(TBP)、リン酸トリオクチル(TOP)、リン酸トリエチル(TEP)、リン酸トリメチル(TMP)、チミジントリリン酸(TTP)、リン酸トリクレシル(TCP)、リン酸トリキシレニル(TXP)等が挙げられる。エステル系可塑剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エステル系可塑剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、エステル系可塑剤の含有量は、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
樹脂としては、特に限定されず、タイヤ工業で慣用されるC9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、アルキルフェノール樹脂、クマロン系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂等が挙げられる。樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
軟化剤のゴム成分100質量部に対する含有量(複数の軟化剤を併用する場合は全ての合計量)は、ウェットグリップ性能の観点から、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。また、加工性の観点からは、100質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましく、25質量部以下がさらに好ましいい。
ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐候性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、ブルームによるタイヤの白色化防止の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
加工助剤としては、例えば、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、アミドエステル、シリカ表面活性剤、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩とアミドエステルとの混合物、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物等が挙げられる。これらの加工助剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。加工助剤としては、例えば、Schill+Seilacher社、パフォーマンスアディティブス社等より市販されているものを使用することができる。
加工助剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の改善効果を発揮させる観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性および破壊強度の観点からは、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。
老化防止剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミン系、キノリン系、キノン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩等の老化防止剤が挙げられ、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系老化防止剤、および2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等のキノリン系老化防止剤が好ましい。これらの老化防止剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐オゾンクラック性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性能やウェットグリップ性能の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、加硫速度の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
加硫剤としては硫黄が好適に用いられる。硫黄としては、粉末硫黄、油処理硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等を用いることができる。
加硫剤として硫黄を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、十分な加硫反応を確保する観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましい。また、劣化防止の観点からは、5.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下がさらに好ましい。なお、加硫剤として、オイル含有硫黄を使用する場合の加硫剤の含有量は、オイル含有硫黄に含まれる純硫黄分の合計含有量とする。
硫黄以外の加硫剤としては、例えば、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、1,6-ヘキサメチレン-ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物、1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン等が挙げられる。これらの硫黄以外の加硫剤は、田岡化学工業(株)、ランクセス(株)、フレクシス社等より市販されているものを使用することができる。
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系若しくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、またはキサンテート系加硫促進剤等が挙げられる。これら加硫促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系、グアニジン系、およびチアゾール系加硫促進剤からなる群から選ばれる1以上の加硫促進剤が好ましい。
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等が挙げられる。なかでも、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)が好ましい。
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。なかでも、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)が好ましい。
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等が挙げられる。なかでも、2-メルカプトベンゾチアゾールが好ましい。
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また、加硫促進剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、8質量部以下が好ましく、7質量部以下がより好ましく、6質量部以下がさらに好ましい。加硫促進剤の含有量を上記範囲内とすることにより、破壊強度および伸びが確保できる傾向がある。
(短繊維フィラー)
本開示のコード-ゴム複合体は短繊維フィラーを含有する。短繊維フィラーは、コード-ゴム複合体にランダムな状態で含有されていればよく、例えば、短繊維フィラーは、トッピングゴムを形成するゴム組成物に含有されていてもよいし、有機繊維コードにまぶす形態で含有されていてもよい。
短繊維フィラーはタイヤ工業で通常使用されるものをいずれも使用することができるが、そのような短繊維フィラーとしては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリエステル繊維、セルロースナノファイバーなどのセルロース繊維、カーボンナノチューブなどのナノ炭素材料が例示される。短繊維フィラーは1種または2種以上を使用することができる。このうち、セルロース繊維、ナノ炭素材料が好ましく、セルロースナノファイバー(CNF)、カーボンナノチューブ(CNT)が特に好ましい。
短繊維フィラーの平均長さは、コード-ゴム複合体の強度の観点から、0.2μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上であり、さらに好ましくは1.0μm以上であり、さらに好ましくは2.0μm以上である。一方、短繊維フィラーの平均長さは、マトリックスへの分散性の観点から、20.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは15.0μm以下、さらに好ましくは10.0μm以下である。短繊維フィラーの平均直径(幅)は、コード-ゴム複合体の強度の観点から、1nm以上であることが好ましく、より好ましくは2nm以上であり、さらに好ましくは3nm以上であり、さらに好ましくは5nm以上である。一方、短繊維フィラーの平均直径(幅)は、マトリックスへの分散性の観点から、300nm以下であることが好ましく、より好ましくは270nm以下、さらに好ましくは240nm以下であり、さらに好ましくは210nm以下である。短繊維フィラーの平均長さおよび平均直径は、任意の100個の平均値として求めることができる。
短繊維フィラーのアスペクト比は、コード-ゴム複合体の強度の観点から、3以上であることが好ましく、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは10以上である。一方、短繊維フィラーのアスペクト比は、マトリックスへの分散性の観点から、2000以下であることが好ましく、より好ましくは1700以下、さらに好ましくは1500以下であり、さらに好ましくは1300以下である。短繊維フィラーのアスペクト比は、平均直径に対する平均長さの比として求められる値である。
短繊維フィラーの含有量は、コード-ゴム複合体の強度の観点から、トッピングゴム100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、より好ましくは10質量部以上であり、さらに好ましくは15質量部以上である。一方、短繊維フィラーの含有量は、有機繊維コードとトッピングゴムとの接着性の観点から、60質量部以下が好ましいく、より好ましくは50質量部以下であり、さらに好ましくは40質量部以下である。
(短繊維フィラー塊)
短繊維フィラーは、コード-ゴム複合体において、複数が相互に凝集して短繊維フィラー塊を形成する。短繊維フィラー塊の長径の長さの平均値は、本開示の効果の観点から、1.0μm以上であることが好ましく、より好ましくは3.0μm以上であり、さらに好ましくは5.0μm以上である。一方、該短繊維フィラー塊の長径の長さの平均値は、本開示の効果の観点から、100.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは50.0μm以下であり、さらに好ましくは20.0μm以下である。また、短繊維フィラー塊の短径の長さの平均値は、本開示の効果の観点から、0.1μm以上であることが好ましく、より好ましくは1.0μm以上であり、さらに好ましくは2.0μm以上である。一方、該短繊維フィラー塊の短径の長さの平均値は、本開示の効果の観点から、50.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは30.0μm以下であり、さらに好ましくは10.0μm以下である。ここで、各短繊維フィラー塊について、その「長径」とは、コード-ゴム複合体から切り出した観察面の電子顕微鏡画像において、短繊維フィラー塊の径が最大となる径をいい、平均値とはそれらを算術平均した値である。一方、「短径」とは、長径に対して垂直方向で最大の径をいい、平均値とはそれらを算術平均した値である。なお、観察面の切り出しは、有機繊維コードについてのコードの長さ方向およびコードの配列の幅方向のいずれにも平行な面で行われる。短繊維フィラー塊の長径の平均値および短径の平均値は、下記「基準面積」の範囲に含まれるN個の短繊維フィラー塊の平均値として求めることができる。
下記で定義される短繊維フィラー塊の平均アスペクト比は、本開示の効果の観点から、1.5以上であることが好ましく、より好ましくは1.8以上であり、さらに好ましくは2.0以上である。該平均アスペクト比は、本開示の効果の観点から20.0以下であることが好ましく、より好ましくは10.0以下であり、さらに好ましくは5.0以下である。
平均アスペクト比=(短繊維フィラー塊の長径の平均値)/(短繊維フィラー塊の短径の平均値)
短繊維フィラー塊の長径の方向を短繊維フィラー塊の「配向方向」という。各短繊維フィラー塊の配向方向が前記有機繊維コードの長さ方向となす角度(θ、0~180(°)の範囲の値)は、本開示の効果の観点から、その平均が10以上であることが好ましく、より好ましくは20以上であり、さらに好ましくは30以上、さらに好ましくは40以上、さらに好ましくは45以上、さらに好ましくは48以上、さらに好ましくは50以上、さらに好ましくは55以上である。該θは、上限は特に限定されず、本開示ある度の効果の観点からは、ある程度大きければ十分である。
(短繊維フィラー塊の分散V)
短繊維フィラー塊の分散Vとは、前記θをもとに、下記式で定義される値である。本開示においては、その効果の観点から、該分散Vは0.6超である。該分散Vは、0.7以上であることが好ましく、より好ましくは0.75以上であり、さらに好ましくは0.8以上である。
V=1-R
Figure 2023014840000002
{θj|j=1,2,・・・,N}
[ここで、iは虚数単位を表し、Nは有機繊維コードについてのコードの長さ方向およびコードの配列の幅方向のいずれにも平行な面で切り出したトッピングゴムの断面における電子顕微鏡画像の基準面積の範囲から確認できる短繊維フィラー塊の数であり、θは前記トッピングゴムの断面において各短繊維フィラー塊の配向方向が前記有機繊維コードの長さ方向となす角度(ラジアン)を表す。]
前記「基準面積の範囲」とは、Nの値が短繊維フィラー塊の分散Vを算出するに十分な数となる範囲であれば特に限定されない。そのような範囲は、トッピング用ゴム組成物の配合や、使用する短繊維フィラーの種類等によって異なり得るが、例えば、一辺を、200μm~400μmの範囲内の長さとする長方形ないし正方形の範囲が挙げられる。
短繊維フィラーを含有するコード-ゴム複合体を、有機繊維コードについてのコードの長さ方向およびコードの配列の幅方向のいずれにも平行な面で切り出した断面において、短繊維フィラー塊の前記配向方向が有機繊維コードの長さ方向となす角(θ)に着目し、前記所定の式により得られるその分散Vを算出することで、本開示の効果を評価するのに有用な指標が得られる。
(WT/WL
本開示のタイヤにおいては、タイヤの重量を抑え、本開示の効果を発揮させやすくする観点から、下記で定義される最大負荷能力(WL)に対するタイヤ重量(WT)の比(WT/WL)が0.027以下であることが好ましく、より好ましくは0.025以下であり、さらに好ましくは0.024以下であり、さらに好ましくは0.020以下であり、さらに好ましくは0.019以下である。
L=0.000011×VT+100
[ここで、VTは、内圧250kPaを負荷した際のタイヤの仮想体積(mm3)であり以下の式で算出される。
VT={(Dt2-r2)/4×π}×W
Dt:タイヤ外径(mm)
r:タイヤ内径(mm)
π:円周率
W:タイヤ断面幅(mm)]
一般に、最大負荷能力が高くなると、タイヤの重量も重たくなるが、上記のように最大負荷能力に対して、一定の割合となるようにタイヤ重量を抑えることで、良好な転がり抵抗と強度を得ることができると考えられる。
(タイヤ断面幅)
本開示のタイヤの断面幅W(mm)は、本開示の効果の観点から、150~290mmであることが好ましい。タイヤの断面幅は、好ましくは160mm以上、より好ましくは170mm以上である。一方、タイヤの断面幅は、好ましくは280mm以下、より好ましくは270mm以下である。
(DtとWとの関係式(1))
前記タイヤ外径Dtと前記タイヤ断面幅Wとは下記式(1)を満たすことが好ましい。
1963.4≦(Dt2×π/4)/W≦2827.4 (1)
式(1)を満たすように、断面幅に対して外形を大きくすることで、転動時にトレッド部から伝わる変形を最小限とし、かつ、短繊維による補強効果が発揮されることで、低燃費性、耐久性を向上させることができると考えられる。
上記式(1)の左辺は、1970であることが好ましく、2070であることがさらに好ましい。一方、上記式(1)の右辺は、2800であることが好ましく、2700であることがさらに好ましい。
(トレッド部)
本開示のタイヤにおいて、トレッド部は、車両装着時に車両外側となるトレッド端Toと車両内側となるトレッド端Tiとを有し、かつ、前記トレッド端Toと前記トレッド端Tiとの間に、タイヤ周方向に連続して延びる2つ以上の周方向溝と前記周方向溝のうちタイヤ幅方向最外端に位置する一対の最外周方向溝によって仕切られた一対のショルダー陸部および前記一対のショルダー陸部の間に位置する一つ以上のセンター陸部とを有し、前記前記一対のショルダー陸部および前記一つ以上のセンター陸部はタイヤ幅方向に延びる複数の横溝を有していることが好ましい。
≪周方向溝、陸部≫
周方向溝は、直線状に延びるものであってもよいし、ジグザグ状に延びるものであってもよい。また、周方向溝の本数は2つ以上であればよいが、さらに3つ以上であることでセンター陸部が、さらに車両装着時に車両内側となる陸部と、同外側となる陸部とに分けられる。このため、それぞれの陸部のトレッドパターンを異なるものとすることができ、トレッドパターンを設計する際の自由度が向上するので好ましい。周方向溝の本数は、4つ以上であってもよく、5つ以上であってもよい。
周方向溝の数が3つ以上である場合、そのうちのタイヤ幅方向最外端に位置する一対の周方向溝を最外周方向溝といい、前記最外周方向溝以外の周方向溝を中央周方向溝という。一対の最外周方向溝のうち、少なくとも一つの最外周方向溝の溝幅は、中央周方向溝の少なくとも一つの溝幅より狭いことが好ましい。また、一対の最外周方向溝の溝幅のいずれもが、中央周方向溝の溝幅より狭いことがより好ましい。
周方向溝の数が5つ以上である場合、3つ以上の中央周方向溝のうち、真ん中の中央周方向溝の溝幅が、その両脇の一対の中央周方向溝の溝幅よりも広いことが好ましい。このような構成とすることで、旋回時にタイヤのトレッド部では、タイヤ幅方向外側での圧力が必然的に高くなる傾向にあるので、上記の如く溝幅を調整しておくことで、ショルダー陸部での反力を大きくすることができ、雪上路面での操縦安定性を向上させやすくなる傾向がある。
≪陸部の横溝≫
陸部は、タイヤ幅方向に延びる複数の横溝を有する。横溝の幅は特に限定されないが、通常、8mm以下である。横溝のうち、幅が2mm以下のものは特にサイプという。横溝の方向は、タイヤ幅方向Wに対し、所定の角度をもつものであってよい。当該角度の範囲は、例えば、0°~±80°である。一の横溝は、タイヤ幅方向の任意の位置で当該角度が一定であってもよく、タイヤ幅方向の位置の変位に応じて当該角度が変化してもよい。
横溝は、周方向溝に連通しない一端をもつものであることが、パターン剛性を高くする観点から好ましい。例えば、横溝は、一対のショルダー陸部のうちの少なくとも一つのショルダー陸部において、好ましくは、双方のショルダー陸部において、その一端がトレッド接地端まで到達し、他端が最外周方向溝まで到達せず陸部内に留まっていることが好ましい。また、横溝は、少なくとも一つのセンター陸部において、その一端が当該センター陸部を画する2本の周方向溝の一方に連通し、他端が他方の周方向溝まで到達せず陸部内に留まっていることが好ましい。また、センター陸部を画する2本の周方向溝が、タイヤ中心線との距離が大きい周方向溝と小さい周方向溝とからなる場合、横溝が連通する周方向溝は、タイヤ中心線との距離が大きい周方向溝であることが好ましい。
すべての横溝が隣接するすべての周方向溝に連通しているものであっても構わないが、横溝のうちの一部は、隣接する周方向溝に連通しない一端をもつ前記横溝であることが好ましく、すべての横溝が隣接する周方向溝に連通しない一端をもつ前記横溝であることがより好ましい。
≪トレッドパターン≫
本開示のタイヤのトレッドパターンは、上記説明に従うものである限り特に限定されない。以下、図面を用いて、本開示のタイヤのトレッドパターンについて説明するが、図面はあくまで実施形態を説明するためのものであって、これら図面によって、本開示の内容が限定されるものではない。
図2は、本開示の一実施形態を示すトレッド部の展開図である。Xはタイヤ幅方向を表している。TWは、内側トレッド端Tiと外側トレッド端Toとの間のタイヤ幅方向Xにおける距離を表している。当該トレッド部は、直線状の5つの周方向溝10(3本の中央周方向溝11と2本の最外周方向溝12)を有する。一番幅が広い中央周方向溝11がタイヤ中心線Cの上を通り、その外側を若干幅が狭い一対の中央周方向溝11が通り、さらにその外側を幅の狭い一対の最外周方向溝12が通っている。ショルダー陸部30において、その横溝20は、一端がトレッド接地端TiまたはToまで到達し、かつ、他端が最外周方向溝まで到達している。タイヤ中心線Cを通る中央周方向溝11に接している一対のセンター陸部40において、その横溝(サイプ)21は、両端がそれぞれ、当該センター陸部を画する2本の中央周方向溝11に連通している。当該センター陸部のさらに外側に位置する一対のセンター陸部41には横溝は形成されていない。
図3は、本開示の一実施形態を示すトレッド部の展開図である。図3は、一対のショルダー陸部30において、その横溝20が、一端はトレッド接地端まで到達しているものの、他端が最外周方向溝まで到達していない点で、図2と異なる。
図4は、本開示の一実施形態を示すトレッド部の展開図である。図4は、一対のショルダー陸部30において、その横溝20が、一端はトレッド接地端まで到達しているものの、他端が最外周方向溝まで到達していないことに加えて、さらに、中央周方向溝11によって仕切られた一対のセンター陸部40において、その横溝(サイプ)21が、一端は各センター陸部を画する2本の中央周方向溝11のうちタイヤ中心線Cからの距離が大きい中央周方向溝11にまで到達しているものの、他端がタイヤ中心線を通る中央周方向溝11まで到達せずに、陸部内に留まっている点で、図2と異なる。
<製造>
(トッピング用ゴム組成物の製造)
本開示に係るトッピング用ゴム組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、前記の各成分をオープンロール、密閉式混練機(バンバリーミキサー、ニーダー等)等のゴム混練装置を用いて混練りすることにより製造できる。
混練り工程は、例えば、加硫剤および加硫促進剤以外の配合剤および添加剤を混練りするベース練り工程と、ベース練り工程で得られた混練物に加硫剤および加硫促進剤を添加して混練りするファイナル練り(F練り)工程とを含んでなるものである。さらに、前記ベース練り工程は、所望により、複数の工程に分けることもできる。
混練条件としては特に限定されるものではないが、例えば、ベース練り工程では、排出温度150~170℃で3~10分間混練りし、ファイナル練り工程では、70~110℃で1~5分間混練りする方法が挙げられる。
上記混練りで得たトッピング用ゴム組成物は、有機繊維コードの被覆に用いるために、成形される。当該成形は、トッピング用ゴム組成物に含まれる短繊維フィラーについて、短繊維フィラー塊の配向方向をランダムとすることができ、その結果、前記分散Vが0.6超となる方法であれば、特に限定されない。そのような方法としては、例えば、(1)上記混練りで得られたゴム組成物を、ロールにかけることなく、所望の厚さにスライスし、こうしてスライスしたものを重ね合わせて圧着することなどが挙げられる。あるいは、(2)上記混練りで得たゴム組成物を、一旦押し出したのち裁断し、当該裁断したものを用いて、一度目の押出し方向と垂直方向に2回目の押出しを行うことにより実施できる(この操作は、必要に応じ、さらに、繰り返すことができる)。そして、必要な場合には、こうして得たゴム組成物を上記(1)の方法でさらにスライスして成形して使用してもよい。前記分散Vは、例えば、上記(2)の方法による場合、押し出しを繰り返すことで、短繊維フィラー塊の配向方向はよりランダムとなる傾向にあるので、当業者は限られた試行錯誤の中で、分散Vを、0.6超の所望の値に調節することができる。
≪短繊維フィラーの含有方法≫
本開示において、短繊維フィラーは、上記混練り工程で、他の添加剤と同様に混練りすることで、ゴム組成物に含有させることができる他、以下説明するとおり、ウェットマスターバッチとして、予めゴム成分と混合しておいた後、該ウェットマスターバッチを用いて上記混練りを行うことによって、ゴム組成物に含有させてもよい。あるいは、短繊維フィラーは、有機繊維コードに予めまぶすことによって、コード-ゴム複合体に含有せしめてもよい。
≪ウェットマスターバッチ≫
ウェットマスターバッチを製造する方法としては特に限定されず、例えば、ゴムラテックスと、上記短繊維フィラーの分散液とを混合し、その後、凝固、乾燥することにより調製できる。
上記ゴムラテックスとしては特に限定されず、天然ゴムラテックスなどのイソプレン系ゴムラテックス、合成ジエン系ゴムラテックス(BR、SBR、スチレンイソプレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレン酢酸ビニルゴム、クロロプレンゴム、ビニルピリジンゴム、ブチルゴムなどのラテックス)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、破壊性能、低発熱性、コードとの接着性などに優れるという点から、SBRラテックス、NR、エポキシ化天然ゴム(ENR)、イソプレンゴム(IR)などのイソプレン系ゴムのラテックスが好ましい。
上記ゴムラテックスは、従来公知の製法で調製でき、各種市販品も使用できる。上記ゴムラテックスとしては、ゴム固形分(固形分濃度)が5~80質量%のものを使用することが好ましい。7質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。また、短繊維状フィラーの分散性の観点から、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。
短繊維フィラー分散液は、上記短繊維フィラーを溶媒中に分散させたものであり、溶媒としては、通常、水が好適に使用され、他にも、例えば、水に可溶なアルコール類、エーテル類、ケトン類なども使用できる。短繊維フィラー分散液は、公知の方法で製造でき、その製造方法としては特に限定されず、例えば、高速ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、コロイドミル、ブレンダーミルなどを用いて前記短繊維フィラーを前記溶媒に分散させることで調製できる。調製の際の温度や時間も、前記短繊維フィラーが前記溶媒に充分分散するよう、通常行われる範囲で適宜設定することができる。
上記短繊維フィラー分散液中の短繊維フィラーの含有量(固形分含量、固形分濃度)は、特に限定されないが、当該分散液での短繊維フィラーの分散性の観点から、短繊維フィラー分散液100質量%中、0.2質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上がさらに好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。一方、該含有量は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
前記ゴムラテックスと前記短繊維フィラー分散液との混合は、前記ゴムラテックスと前記短繊維フィラー分散液とが混合される限り特に限定されず、前記ゴムラテックス及び前記短繊維フィラー分散液以外のバインダーなどの他の配合剤を更に加えてもよい。該混合の方法としては、特に限定されず、例えば、高速ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ブレンダーミルなどの公知の撹拌装置を用いて実施できる。
上記混合の後、通常、凝固させる。凝固工程は、通常、ギ酸、硫酸等の酸性化合物や、塩化ナトリウム等の凝固剤を添加して行われる。なお、上記混合によって凝固される場合もあり、この場合は凝固剤を用いなくてもよい。
凝固後、通常、得られた凝固物を回収し、遠心分離等によって脱水し、さらに、洗浄、乾燥を行うことにより、ウェットマスターバッチが得られる。乾燥に使用できる乾燥機としては、例えば、真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤー、バンドドライヤー、熱風乾燥器、キルン式乾燥機等を挙げることができる。
こうして得られるウェットマスターバッチは、上記混練工程において、他の原料と同様に使用することができる。
(コード-ゴム複合体の製造)
コード-ゴム複合体は、常法により、例えば、有機繊維コードからなる縦糸と、横糸とによって簾織りされた平行な側縁を有する帯状の簾織物の両面を、前記トッピング用ゴム組成物を成形して得たシートで被覆することによって形成することができる。トッピング用ゴム組成物が、短繊維フィラーを含有しない場合には、短繊維フィラーは、予め有機繊維コードにまぶしておくことで、含有せしめることができる。この場合において、分散Vは、押し出し速度により調節することができる。
縦糸である有機繊維コードとしては、通常、940デシテックス/2~6600デシテックス/2の範囲のものが使用できる。横糸は、綿、扁平レーヨンなど実質的に融点を持たない熱に強い材料からなる糸を使用できるが、さらに融点が110~150℃である低融点材料を使用することもできる。この場合、横糸がタイヤ加硫中の熱及び張力の作用下において溶融し、縦糸を波打たせる畳表現象を防止することができる。つまり、タイヤの加硫温度(約150℃)条件下の熱及び圧力で、横糸は、融点が110~150℃であると、加硫中に縦糸の拘束力を低下することができる。前記低融点を有する横糸の材料としては、例えば、高密度ポリエチレン、塩化ビニル・ビニルアセテート共重合体、エチレン・ビニルアセテート共重合体、三元共重合体ポリアミド、四元共重合体ポリアミド、多元共重合体ポリアミド等がある。そして、通常180デニール~270デニールのものが使用できる。ここで横糸は、前記縦糸を一定間隔に維持し、相互にバラけるのを防止するように織り込まれている。
前記簾織物における前記縦糸である有機繊維コードの配列密度は、要求するプライ強度等によって設定されるが、例えば、カーカスプライの場合、40~70本/5cmの範囲が一般的である。コード-ゴム複合体の厚みは0.8mm以下が好ましい。厚さを0.8mm以下とすることで、走行時の発熱性を低下させることができる。また、該コード-ゴム複合体を使用した空気入りタイヤの軽量化も図ることができる。
前記簾織物は、トッピング用ゴム組成物に埋設するのに先立ち接着処理をしてもよい。該接着処理は、簾織物を、接着処理液に浸漬する浸漬工程と、この浸漬工程をした後、経糸にある程度の張力をかけた状態で加熱(ベーキング)する加熱工程とを含み、これによって、タイヤ補強用簾織物のゴム接着性が向上する。
(タイヤの製造)
本開示のタイヤは、前記コード-ゴム複合体を用いて、通常の方法により製造できる。すなわち、タイヤ成型機上で、前記コード-ゴム複合体を他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成型することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを製造することができる。加硫条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、150~200℃で10~30分間加硫する方法が挙げられる。
<用途>
本開示のタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤに好適に用いることができ、中でも乗用車用タイヤに用いることが好ましい。なお、乗用車用タイヤとは、四輪で走行する自動車に装着されることを前提としたタイヤであり、その最大負荷能力が1000kg以下のものを指す。また、本開示のタイヤは、全シーズン用タイヤ、夏用タイヤ、スタッドレスタイヤ等の冬用タイヤに使用可能である。本開示のタイヤは、ランフラットタイヤに用いることが好ましい。
<評価方法>
本開示の評価方法は、短繊維フィラーを含むゴム部材において、短繊維フィラーの配向度合を評価する方法であって、以下の工程を含む、評価方法である。
(1)前記短繊維フィラーを含むゴム部材を切断して、観察用断面を切り出す工程
(2)前記観察用断面を電子顕微鏡で撮像して、電子顕微鏡画像を得る工程
(3)前記電子顕微鏡画像から、短繊維フィラー塊の画像のみ抜き出す工程
(4)前記短繊維フィラー塊の画像において、任意に定める一の基準方向に対して、各短繊維フィラー塊の配向方向がなす角度θを計測する工程
(5)前記角度をもとに、下記式により、前記基準方向と各短繊維フィラー塊の配向方向とがなす角度の分散Vを求める工程
V=1-R
Figure 2023014840000003
{θj|j=1,2,・・・,N}
[ここで、iは虚数単位を表し、Nは短繊維フィラーを含むゴム部材の断面における電子顕微鏡画像の基準面積の範囲から確認できる短繊維フィラー塊の数であり、θは前記短繊維フィラーを含むゴム部材の断面において各短繊維フィラー塊の配向方向が前記基準方向となす角度(ラジアン)を表す。]
(6)前記分散Vから前記短繊維フィラーの配向度合を評価する工程
本開示の評価方法によれば、短繊維フィラーを含むゴム部材に関し、複数の短繊維フィラーが凝集した短繊維フィラー塊に着目し、その配向方向に関し所定の数式から得られる角度の分散Vを求めることで、該短繊維フィラー塊の配向度合を評価することができる。
(工程(1))
工程(1)は、前記短繊維フィラーを含むゴム部材を切断して、観察用断面を切り出す工程である。前記観察用断面の切り出しは常法により実施することができる。短繊維フィラーを含むゴム部材としては、特に限定はなく、種々のものを用いることができるが、具体的には、例えば、短繊維フィラーを含むゴム組成物、短繊維フィラーを含むゴム-コード複合体などが挙げられる。短繊維フィラーを含むゴム部材が、例えば、タイヤのカーカスなどのコード-ゴム複合体である場合には、観察用断面の切り出しは、コードの長さ方向およびコードの配列の幅方向のいずれにも平行な面で実施することができる。
(工程(2))
工程(2)は、前記観察用断面を電子顕微鏡で撮像して、電子顕微鏡画像を得る工程である。電子顕微鏡での撮像は、常法により実施できる。電子顕微鏡としては特に限定されず、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)などを使用することができる。
(工程(3))
工程(3)は、前記電子顕微鏡画像から、短繊維フィラー塊の画像のみ抜き出す工程である。かかる画像の抜き出しは、例えば、Image J等のソフトを用いて二極化し、閾値を設定して、短繊維フィラー(CNF)塊の画像部分のみを抜き出すなどの処理を行うことにより実施することができる。
(工程(4))
工程(4)は、前記短繊維フィラー塊の画像において、任意に定める一の基準方向に対して、各短繊維フィラー塊の配向方向がなす角度θを計測する工程である。すなわち、得られた短繊維フィラー塊の画像において、各短繊維フィラー塊をそれぞれ楕円に近似し、その長径方向を短繊維フィラー塊の配向方向として、当該配向方向が基準方向となす角度(θ)を計測する。前記短繊維フィラーを含むゴム部材を、コード-ゴム複合体として、例えば、タイヤのカーカスなどに用いる場合には、有機繊維コードの長さ方向を基準方向とすることができ、当該基準方向となす角度(θ)を計測することができる。
(工程(5))
工程(5)は、前記角度(θ)をもとに、下記式により、前記基準方向と各短繊維フィラー塊の配向方向とがなす角度(θ)の分散Vを求める工程である。
V=1-R
Figure 2023014840000004
{θj|j=1,2,・・・,N}
[ここで、iは虚数単位を表し、Nは短繊維フィラーを含むゴム部材の断面における電子顕微鏡画像の基準面積の範囲から確認できる短繊維フィラー塊の数であり、θは前記短繊維フィラーを含むゴム部材の断面において各短繊維フィラー塊の配向方向が前記基準方向となす角度(ラジアン)を表す。]
なお、「基準面積の範囲」とは上記で説明したとおりである。
(工程(6))
工程(6)は、前記分散Vから前記短繊維フィラーの配向度合を評価する工程である。配向度合を評価した結果、当該短繊維フィラーを含むゴム部材の有用な機能を評価することが可能となる。例えば、短繊維フィラーを含むゴム部材を有機繊維コードとして組合せてタイヤのカーカスに用いた場合、当該配向度合は、低燃費性や、強度などを評価する指標の一つとして役立ち得る。
本評価方法は、特に矛盾のない限り、本明細書の「タイヤ」、「製造」および「用途」に関する説明を「評価方法」の説明として参酌できるものであり、同様に、「評価方法」に関する説明も、特に矛盾のない限り、「タイヤ」、「製造」および「用途」の説明として参酌できるものである。
以下、実施例に基づいて、本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらのみに限定されるものではない。
<各種薬品>
実施例および比較例において用いた各種薬品をまとめて示す。
NR:天然ゴム(RSS#3グレード)
カーボンブラック:三菱ケミカル(株)製のダイアブラックN220(平均粒子径:23nm、CTAB:110m2/g、N2SA:114m2/g)
オイル:H&R社製のVIVATEC 500(TDAEオイル)
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(TBBS、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
短繊維フィラー1:カーボンナノチューブ(CNT)(平均繊維径:5nm、平均繊維長:6μm、アスペクト比:1200)
短繊維フィラー2:セルロースナノファイバー(CNF)(ウェットマスターバッチとして調製した後の平均繊維径、平均繊維長およびアスペクト比は、後記のとおりである)
有機繊維コードA:レーヨン繊維(1840デシテックス/2)
製造例1:ウェットマスターバッチ(WMB)1の製造
セルロースナノファイバー(CNF)100gに純水10kgを添加し、CNFの1.0質量%(固形分濃度)懸濁液を作製し、高速ホモジナイザー(IKAジャパン社製の「T50」、回転数:8000rpm)で約5分撹拌して均一な水分散液を調製した。天然ゴムラテックスの固形分濃度(DRC)を10質量%に調整した後、天然ゴムラテックスのゴム固形分100質量部に対して、上記調製した水分散液をCNFの乾燥重量(固形分)が20質量部となるように添加し、高速ホモジナイザー(IKAジャパン社製の「T50」、回転数:8000rpm)を用いて25℃で5分撹拌、混合して、ゴムラテックス分散液(配合ラテックス)を調製した。次いで、25℃で5分ゆっくり撹拌(IKAジャパン社製のEurostar〔電子制御撹拌機〕、回転数:100rpm)しながら、硫酸を添加してpHを3~4に調整し、凝固した。得られた固形物をろ過し、乾燥して、ウェットマスターバッチ1を得た。
(繊維径、繊維長の算出)
ウェットマスターバッチ1の0.001質量%水分散液を調製した。この希釈分散液をマイカ製試料台に薄く延ばし、50℃で加熱乾燥させて観察用試料を作成した。原子間力顕微鏡(AFM、株式会社日立ハイテクサイエンス製、製品名「走査型プローブ顕微鏡SPI3800N」)にて試料を観察し、形状像の断面高さを計測することにより、繊維径、繊維長を算出した。平均繊維径は200nm、平均繊維長は4μm、アスペクト比〔繊維長/繊維径〕は20であった。
<未加硫ゴム組成物の製造>
表1に示す各配合内容に従い、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を排出温度160℃で4分間混練りし、混練り物を得た。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄および加硫促進剤を添加し、4分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。ゴム組成物Aとゴム組成物Bは、短繊維フィラーのマトリックスをゴム組成物とするものである。一方、ゴム組成物Cは短繊維フィラーを含有しないため、試験用タイヤを作製する場合には、後記のとおり、短繊維フィラーは有機繊維コードに含有せしめた。
上記で得た未加硫ゴム組成物は、押し出し方向を変えて複数回押し出すことにより角度の分散Vを調節した。一方、比較例においては、押し出し成形によりシート状に成形する際に、押し出し時の圧延の程度により、角度の分散Vの値が0.6以下の値となるように調節した。
Figure 2023014840000005
<表2の試験用タイヤの製造>
表2の記載に従い、タイヤを製造した。すなわち、未加硫のゴム組成物Aまたはゴム組成物Bを、上記のとおりシート状に押し出し成形したものを用いて、有機繊維コードAを50本/5cmの配列密度で埋め込んで、厚さ2.0mmのカーカスを作製し、他のタイヤ部材と貼り合わせて生タイヤを作製した。こうして得た生タイヤを170℃で20分間プレス加硫し、ランフラットタイヤである試験用タイヤ(255/45RF18)を作製した。なお、タイヤ重量は、トレッド部のゴムゲージを変化させることにより調節した。
<表3の試験用タイヤの製造>
表3の記載に従い、タイヤを製造した。まず、短繊維フィラー1(CNT)は有機繊維コードAに予めをまぶすことにより含有せしめた。すなわち、短繊維フィラーのマトリックスを有機繊維コードとした。この際、短繊維フィラー塊についての角度の分散Vは押し出し速度を調整することにより調節した。短繊維フィラー1の含有量は、上記表2試験用タイヤの場合と同じになるように調節した。
こうして得たCNT含有有機繊維コードAと、上記で得た配合Cの未加硫ゴム組成物を使用する以外は、上記表2の試験用タイヤの製造と同様にして、試験用タイヤ(255/45RF18)を得た。
<表4の試験用タイヤの製造>
表4の記載に従い、タイヤを製造した。すなわち、試験用タイヤをランフラットタイヤではないタイヤとして作製したこと以外は、上記表2の試験用タイヤの製造と同様にして、試験用タイヤ(255/45R18)を得た。
<評価>
以下に、測定方法および評価方法を示す。なお、低燃費性と高速耐久性の指数との合計値により、総合性能を評価する。
(低燃費性)
転がり抵抗試験機を用い、各試験用タイヤを、リム(18×5JJ)、内圧(260kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、以下の計算式により、転がり抵抗性を指数で表示した。指数が大きいほど低燃費性に優れている。
(低燃費性)=(基準比較例の転がり抵抗)/(各試験用タイヤの転がり抵抗)×100
(高速耐久性)
各試験用タイヤについて、ドラム試験機を用い、リム(19×9.50J)、内圧(360kPa)、荷重(5.34kN)、室温(25℃)、キャンバー角(0゜)の条件下で、ステップスピード方式により高速耐久性をテストした。テストは、速度230(km/h)から、10分走行毎に10(km/h)速度を増加させ、タイヤが破壊するまでの走行時間に基づき、基準比較例を100とした指数で評価した。指数値が大きいほど良好である。
(短繊維フィラーの分散V)
短繊維フィラーの分散Vの測定方法は以下のとおりである。
(1)試験用タイヤのカーカスについて、有機繊維コードについてのコードの長さ方向およびコードの配列の幅方向のいずれにも平行な面でゴム組成物を切断して、観察用断面を切り出した。
(2)得られた観察用断面を、走査型電子顕微鏡(日本FEI(株)製 XL30)を用いて、加速電圧15kVで撮像して、電子顕微鏡画像を得た。実施例5の試験用タイヤについて得られた画像を図5として示す(倍率:500倍)。
(3)得られた電子顕微鏡画像を、Image Jを用いて二極化し、閾値を設定して、短繊維フィラー(CNF)塊の画像部分のみを抜き出した。実施例5の試験用タイヤについて得られた画像を図6として示す(倍率:500倍)。
(4)得られた短繊維フィラー塊の画像の320μm×240μmの範囲において、各短繊維フィラー塊をそれぞれ楕円に近似し、その長径方向を短繊維フィラー塊の配向方向として、当該配向方向が有機繊維コードの長さ方向(基準方向)となす角度(θ)を計測した。
(5)得られた角度(θ)をもとに、前記式により、前記基準方向と各短繊維フィラー塊の配向方向とがなす角度について、分散Vを求めた。
各試験用タイヤについて、上記(1)~(5)に従い、それぞれ、短繊維フィラーの分散Vを求めた。
Figure 2023014840000006
Figure 2023014840000007
Figure 2023014840000008
表2~表4の結果より、短繊維フィラー塊の配向度合を分散Vで評価する場合において、該分散Vが0.6超でかつタイヤ重量WTが20kg以下の実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに対して、優れた低燃費性および強度(高速耐久性)が達成されていることがわかる。
<実施形態>
本開示の実施形態の例を以下に示す。
[1]コード-ゴム複合体を備えたタイヤであって、
前記タイヤは、タイヤ重量(WT)が20kg以下、好ましくは19kg以下、より好ましくは18kg以下、さらに好ましくは17kg以下、さらに好ましくは16kg以下であり、
前記コード-ゴム複合体は、有機繊維コードと、前記有機繊維コードを被覆するトッピングゴムと、短繊維フィラーとを含み、
前記短繊維フィラーは、下記で定義される分散Vが0.6超である、タイヤ。
V=1-R
Figure 2023014840000009
{θj|j=1,2,・・・,N}
[ここで、iは虚数単位を表し、Nは有機繊維コードについてのコードの長さ方向およびコードの配列の幅方向のいずれにも平行な面で切り出したトッピングゴムの断面における電子顕微鏡画像の基準面積の範囲から確認できる短繊維フィラー塊の数であり、θは前記トッピングゴムの断面において各短繊維フィラー塊の配向方向が前記有機繊維コードの長さ方向となす角度(ラジアン)を表す。]
[2]下記で定義される最大負荷能力(WL)に対するタイヤ重量(WT)の比(WT/WL)が0.027以下、好ましくは0.025以下、より好ましくは0.024以下、さらに好ましくは0.020以下、さらに好ましくは0.019以下である、上記[1]記載のタイヤ。
L=0.000011×VT+100
[ここで、VTは、内圧250kPaを負荷した際のタイヤの仮想体積(mm3)であり以下の式で算出される。
VT={(Dt2-r2)/4×π}×W
Dt:タイヤ外径(mm)
r:タイヤ内径(mm)
π:円周率
W:タイヤ断面幅(mm)]
[3]前記短繊維フィラー塊について、下記で定義される平均アスペクト比が3.0以上である、上記[1]または[2]記載のタイヤ。
平均アスペクト比=(短繊維フィラー塊の長径の平均値)/(短繊維フィラー塊の短径の平均値)
[4]前記有機繊維コードの長さ方向と前記各短繊維フィラー塊の配向方向とがなす角度(°)の平均が10以上、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、さらに好ましくは40以上、さらに好ましくは45以上、さらに好ましくは48以上、さらに好ましくは50以上、さらに好ましくは55以上である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のタイヤ。
[5]前記短繊維フィラーがセルロースナノファイバーおよびカーボンナノチューブからなる群から選択される少なくとも一つである、上記[1]~[4]のいずれかに記載のタイヤ。
[6]前記タイヤにおいて、断面幅Wが150mm~290mm、好ましくは160mm~280mm、より好ましくは170mm~270mmである、上記[1]~[5]のいずれかに記載のタイヤ。
[7]前記コード-ゴム複合体をカーカスに用いた、上記[1]~[6]のいずれかに記載のタイヤ。
[8]前記タイヤ外径Dtと前記タイヤ断面幅Wとが下記式(1)を満たす、好ましくは「1963.4」を「1970」に、「2827.4」を「2800」に置き換えて下記式(1)を満たす、より好ましくは「1963.4」を「2070」に、「2827.4」を「2700」に置き換えて下記式(1)を満たす上記、[1]~[7]のいずれかに記載のタイヤ。
1963.4≦(Dt2×π/4)/Wt≦2827.4 (1)
[9]トレッド部を備え、
前記トレッド部は、車両装着時に車両外側となるトレッド端Toと車両内側となるトレッド端Tiとを有し、かつ、前記トレッド端Toと前記トレッド端Tiとの間に、タイヤ周方向に連続して延びる2つ以上の周方向溝と、前記周方向溝のうちタイヤ幅方向最外端に位置する一対の最外周方向溝によって仕切られた一対のショルダー陸部および前記一対のショルダー陸部の間に位置する一つ以上のセンター陸部とを有し、
前記前記一対のショルダー陸部および前記一つ以上のセンター陸部はタイヤ幅方向に延びる複数の横溝を有し、
前記一対のショルダー陸部のうちの、少なくとも一つのショルダー陸部の横溝が、その一端がトレッド接地端まで到達し、他端が最外周方向溝まで到達せず陸部内に留まっている、上記[1]~[8]のいずれかに記載のタイヤ。
[10]前記一つ以上のセンター陸部のうちの、少なくとも一つのセンター陸部の横溝が、その一端が当該センター陸部を画する2本の周方向溝の一方に連通し、他端が他方の周方向溝まで到達せず陸部内に留まっている、上記[9]記載のタイヤ。
[11]前記センター陸部を画する2本の周方向溝が、タイヤ中心線との距離が大きい周方向溝と小さい周方向溝とからなり、前記横溝が連通している周方向溝がタイヤ中心線との距離が大きい周方向溝である、上記[10]記載のタイヤ。
[12]タイヤがランフラットタイヤである、上記[1]~[11]のいずれかに記載のタイヤ。
[13]短繊維フィラーを含むゴム部材において、短繊維フィラーの配向度合を評価する方法であって、以下の工程を含む、評価方法。
(1)前記短繊維フィラーを含むゴム部材を切断して、観察用断面を切り出す工程
(2)前記観察用断面を電子顕微鏡で撮像して、電子顕微鏡画像を得る工程
(3)前記電子顕微鏡画像から、短繊維フィラー塊の画像のみ抜き出す工程
(4)前記短繊維フィラー塊の画像において、任意に定める一の基準方向に対して、各短繊維フィラー塊の配向方向がなす角度θを計測する工程
(5)前記角度をもとに、下記式により、前記基準方向と各短繊維フィラー塊の配向方向とがなす角度の分散Vを求める工程
V=1-R
Figure 2023014840000010
{θj|j=1,2,・・・,N}
[ここで、iは虚数単位を表し、Nは短繊維フィラーを含むゴム部材の断面における電子顕微鏡画像の基準面積の範囲から確認できる短繊維フィラー塊の数であり、θは前記短繊維フィラーを含むゴム部材の断面において各短繊維フィラー塊の配向方向が前記基準方向となす角度(ラジアン)を表す。]
(6)前記分散Vから前記短繊維フィラーの配向度合を評価する工程
1 タイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ブレーカー
5 カーカス
6 インナーライナー
7 サイド補強ゴム
8 ビード部
9 クリンチ
C タイヤ中心線
J リム
10 周方向溝
11 中央周方向溝
12 最外周方向溝
20 横溝
21 横溝(サイプ)
30 ショルダー陸部
40 センター陸部
41 センター陸部
Ti 内側トレッド端
To 外側トレッド端
TW トレッド幅
X タイヤ幅方向

Claims (13)

  1. コード-ゴム複合体を備えたタイヤであって、
    前記タイヤは、タイヤ重量(WT)が20kg以下であり、
    前記コード-ゴム複合体は、有機繊維コードと、前記有機繊維コードを被覆するトッピングゴムと、短繊維フィラーとを含み、
    前記短繊維フィラーは、下記で定義される分散Vが0.6超である、タイヤ。
    V=1-R
    Figure 2023014840000011
    {θj|j=1,2,・・・,N}
    [ここで、iは虚数単位を表し、Nは有機繊維コードについてのコードの長さ方向およびコードの配列の幅方向のいずれにも平行な面で切り出したトッピングゴムの断面における電子顕微鏡画像の基準面積の範囲から確認できる短繊維フィラー塊の数であり、θは前記トッピングゴムの断面において各短繊維フィラー塊の配向方向が前記有機繊維コードの長さ方向となす角度(ラジアン)を表す。]
  2. 下記で定義される最大負荷能力(WL)に対するタイヤ重量(WT)の比(WT/WL)が0.027以下である、請求項1記載のタイヤ。
    L=0.000011×VT+100
    [ここで、VTは、内圧250kPaを負荷した際のタイヤの仮想体積(mm3)であり以下の式で算出される。
    VT={(Dt2-r2)/4×π}×W
    Dt:タイヤ外径(mm)
    r:タイヤ内径(mm)
    π:円周率
    W:タイヤ断面幅(mm)]
  3. 前記短繊維フィラー塊について、下記で定義される平均アスペクト比が3.0以上である、請求項1または2記載のタイヤ。
    平均アスペクト比=(短繊維フィラー塊の長径の平均値)/(短繊維フィラー塊の短径の平均値)
  4. 前記有機繊維コードの長さ方向と前記各短繊維フィラー塊の配向方向とがなす角度(°)の平均が10以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ。
  5. 前記短繊維フィラーがセルロースナノファイバーおよびカーボンナノチューブからなる群から選択される少なくとも一つである、請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤ。
  6. 前記タイヤにおいて、断面幅Wが150mm~290mmである、請求項1~5のいずれか1項に記載のタイヤ。
  7. 前記コード-ゴム複合体をカーカスに用いた、請求項1~6のいずれか1項に記載のタイヤ。
  8. 前記タイヤ外径Dtと前記タイヤ断面幅Wとが下記式(1)を満たす、請求項1~7のいずれか1項に記載のタイヤ。
    1963.4≦(Dt2×π/4)/Wt≦2827.4 (1)
  9. トレッド部を備え、
    前記トレッド部は、車両装着時に車両外側となるトレッド端Toと車両内側となるトレッド端Tiとを有し、かつ、前記トレッド端Toと前記トレッド端Tiとの間に、タイヤ周方向に連続して延びる2つ以上の周方向溝と、前記周方向溝のうちタイヤ幅方向最外端に位置する一対の最外周方向溝によって仕切られた一対のショルダー陸部および前記一対のショルダー陸部の間に位置する一つ以上のセンター陸部とを有し、
    前記前記一対のショルダー陸部および前記一つ以上のセンター陸部はタイヤ幅方向に延びる複数の横溝を有し、
    前記一対のショルダー陸部のうちの、少なくとも一つのショルダー陸部の横溝が、その一端がトレッド接地端まで到達し、他端が最外周方向溝まで到達せず陸部内に留まっている、請求項1~8のいずれか1項に記載のタイヤ。
  10. 前記一つ以上のセンター陸部のうちの、少なくとも一つのセンター陸部の横溝が、その一端が当該センター陸部を画する2本の周方向溝の一方に連通し、他端が他方の周方向溝まで到達せず陸部内に留まっている、請求項9記載のタイヤ。
  11. 前記センター陸部を画する2本の周方向溝が、タイヤ中心線との距離が大きい周方向溝と小さい周方向溝とからなり、前記横溝が連通している周方向溝がタイヤ中心線との距離が大きい周方向溝である、請求項10記載のタイヤ。
  12. タイヤがランフラットタイヤである、請求項1~11のいずれか1項に記載のタイヤ。
  13. 短繊維フィラーを含むゴム部材において、短繊維フィラーの配向度合を評価する方法であって、以下の工程を含む、評価方法。
    (1)前記短繊維フィラーを含むゴム部材を切断して、観察用断面を切り出す工程
    (2)前記観察用断面を電子顕微鏡で撮像して、電子顕微鏡画像を得る工程
    (3)前記電子顕微鏡画像から、短繊維フィラー塊の画像のみ抜き出す工程
    (4)前記短繊維フィラー塊の画像において、任意に定める一の基準方向に対して、各短繊維フィラー塊の配向方向がなす角度θを計測する工程
    (5)前記角度をもとに、下記式により、前記基準方向と各短繊維フィラー塊の配向方向とがなす角度の分散Vを求める工程
    V=1-R
    Figure 2023014840000012
    {θj|j=1,2,・・・,N}
    [ここで、iは虚数単位を表し、Nは短繊維フィラーを含むゴム部材の断面における電子顕微鏡画像の基準面積の範囲から確認できる短繊維フィラー塊の数であり、θは前記短繊維フィラーを含むゴム部材の断面において各短繊維フィラー塊の配向方向が前記基準方向となす角度(ラジアン)を表す。]
    (6)前記分散Vから前記短繊維フィラーの配向度合を評価する工程
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