本発明の実施の形態について図面を参照して説明するが、本発明は、以下に述べる実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施の形態が含まれる。
先ず、本発明の一実施の形態による潜像印刷物の潜像読取装置、読取方法及び読取用ソフトウェアにおいて、読み取りの対象とする潜像印刷物について説明する。この潜像印刷物は、目視で確認すると一見して単調な画線が一様に形成され潜像模様を視認することはできず、スマートフォン等の潜像読取装置で潜像印刷物を読み取ると潜像模様が出現するというものである。
図1に、本実施の形態において読み取り対象とする潜像印刷物(7)を示す。潜像印刷物(7)は、基材(2)上に潜像模様(4)を施した印刷模様(8)を有する。この印刷模様(8)は、目視において模様として認識できるように、基材(2)とは異なる色を有している。また、拡大図に示すように、印刷模様(8)は、後述にて説明する画線構成の最小単位である第1のユニット(9)、第2のユニット(10)及び第3のユニット(11)を複数配列して形成される。
図2に、本実施の形態において読み取り対象とする潜像印刷物(7)を、例えば、スマートフォンに潜像模様(4)を可視化するアプリケーションをインストールした潜像読取装置(21)を使用して、観察した状態を示す。図2に示すように、印刷模様(8)は、潜像読取装置(21)のカメラ機能とアプリケーションによって潜像模様(4)「鳳凰」が可視化されて、画面(22)に表示される。
図3に、本実施の形態において読み取り対象とする潜像印刷物(7)における画線構成を示す。潜像印刷物(7)は、基材(2)の少なくとも一部に潜像模様(4)を形成するための印刷領域を有し、印刷領域には、以下に示す複数のユニットが所定間隔で規則的に配置されている。
図3(a)に示された第1のユニット(9)は、潜像画線(31)及び可視模様(5)を形成する可視模様形成領域(41)を有し、図3(b)に示された第2のユニット(10)は、潜像画線(32)及び可視模様(5)を形成する可視模様形成領域(42)を有し、図3(c)に示された第3のユニット(11)は、潜像画線(33)及び可視模様(5)を形成する可視模様形成領域(43)を有する。なお、可視模様は、可視模様形成領域(41、42、43)だけではなく、潜像画線(31、32、33)の少なくとも一部を異なる色に置換して、置換した色を有する可視模様を形成してもよく、さらには、一本の潜像画線(31、32、33)の中で、一部を異なる色に置換して、可視模様を形成したり、これらを組み合わせたりしてもよい。以下、一例として、可視模様を、可視模様形成領域(41、42、43)で形成する構成として説明する。第1のユニット(9)、第2のユニット(10)及び第3のユニット(11)は、同一の形状と大きさを有し、縦横の寸法(u)は、0.18mmから0.50mmの範囲内にある。縦横の寸法(u)が0.50mmを超えると視認されやすくなり、潜像模様(4)の秘匿性が低くなる。また、0.18mmより小さいとプリンタ等による潜像画線の形成が困難となる。ただし、このユニットの寸法については、現状のプリンタの性能を考慮したものであり、将来に亘り、プリンタの性能が向上するに伴い、この範囲も適宜異なってくることは言うまでもなく、また、確認者の視力や視認角度による条件の差によっても異なるものではあるが、あくまでも例としての記載であり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
なお、本実施の形態においては、潜像画線を第1の潜像画線(31)、第2の潜像画線(32)及び第3の潜像画線(33)の3つを用いた場合で説明するが、本発明は、少なくとも2つの潜像画線を用いることで実施可能である。以降の説明では、「第1」、「第2」及び「第3」なる表記は省略するとともに、各潜像画線に伴い形成される各領域及び各模様についても「第1」、「第2」及び「第3」なる表記は省略する。
第1のユニット(9)、第2のユニット(10)及び第3のユニット(11)にそれぞれ設けられた潜像画線(31、32、33)の画線幅(v)は、ユニットの寸法(u)の1/5~1/10の範囲内が望ましい。例えば、ユニットの寸法(u)が0.423mmの場合、潜像画線(31、32、33)の画線幅(v)は、0.40~0.85mmとなる。潜像画線(31、32、33)の画線幅(v)がユニットの寸法(u)の1/5より太い場合、潜像模様(4)が視認されやすくなる。潜像画線(31、32、33)の画線幅(v)がユニットの寸法(u)の1/10より細いと、潜像画線(31、32、33)を読み取って潜像模様(4)を再現することが困難となる。
なお、各ユニット(9、10、11)内に配置されている潜像画線(31、32、33)は、ユニット内における面積率が全て等しい。図3においては、図3(a)と図3(b)とは、二つともユニット(9、10)の一端から対角線の一端までの斜めの潜像画線(31、32)が配置されているため、長さ及び画線幅(V1、V2)はいずれも等しいことから、面積率は等しい。また、図3(c)の第3の潜像画線(33)については、第3のユニット(6)の横(水平)方向に配置されているため、長さは第1のユニット(4)の第1の潜像画線(31)及び第2のユニット(5)の第2の潜像画線(32)よりも短い。ただし、画線幅(V3)については、第1の潜像画線(31)の画線幅(V1)及び第2の潜像画線(32)の画線幅(V2)よりも太くなっており、面積率は、第3の潜像画線(33)も第1の潜像画線(31)及び第2の潜像画線(32)と等しくなっている。したがって、各潜像画線の長さ及び画線幅とを調整することにより、全てのユニットにおける潜像画線の面積率を等しく形成することができる。
潜像画線の面積率については、図3では直線を対象として長さと画線幅による調整により、面積率を等しくする方法を説明したが、潜像画線は、直線のみに限定されるものではなく、後述するように、例えば「◎」、「〇」及び「×」のように形状を異ならせても良いため、大きさ及び画線幅を異ならせて面積率を等しくすることが可能である。以上のとおり、各潜像画線(31、32、33)は、ユニット内において面積率が等しく、配置される角度及び/又は形状が相互に異なる。
図4(a)に示された第1のユニット(9)の例では、潜像画線(31)の両端部分がユニット内の端まで形成されている。図4(b)に示された第1のユニット(9)の例では、潜像画線(31)がユニット内の一方の端の途中から他方の端の途中まで配置されており、端までは形成されていない。このように、ユニット内において潜像画線(31、32、33)がユニットの端まで形成されていてもよく、形成されていなくともよい。
図3においては、潜像画線の長さ及び画線幅が異なっていても面積率が等しい例で説明したが、図4(b)に示したような潜像画線(31)のように、ユニットの対角線よりも短い潜像画線(31)を用いて、全ての潜像画線(31、32、33)を同じ形状及び大きさとし、配置角度のみ異ならせて各ユニット(9、10、11)の潜像画線(31、32、33)を形成すれば、面積率を全て等しくすることが可能である。
このように各ユニット内における潜像画線の面積率を等しくすることで、印刷模様(3)は可視模様(5)以外の領域の濃度が一定となるため、目視で確認すると可視模様(5)以外は一見して単調な画線模様が視認され、潜像読取装置(21)において潜像模様(7)が可視化される潜像印刷物(1)となる。
図5(a)に、第1のユニット(9)内において、潜像画線(31)に隣接して可視模様(5)を形成する可視模様形成領域(41)に、形成する可視模様(5)の任意の階調濃度に対応した濃度を形成した状態を示す。
図5(b)に、可視模様形成領域(41)の濃度が0%であるときの状態を示す。この場合は、潜像画線(31)のみが形成されており、可視模様(5)を形成するための可視模様形成領域(41)は形成されない。具体的には、トーンカーブで濃度10%に変換され、10%に相当する潜像画線(31)のみが形成される。
図5(c)に、可視模様形成領域(41)の濃度が50%であるときの状態を示す。具体的には、トーンカーブで濃度24%に変換され、10%に相当する潜像画線(31)に加えて、14%に相当する可視要素が可視模様形成領域(41)に形成される。
図5(d)に、可視模様形成領域(41)の濃度が100%であるときの状態を示す。具体的には、トーンカーブで濃度38%に変換され、10%に相当する潜像画線(31)に加えて、28%に相当する可視要素が可視模様形成領域(41)に形成される。
同様に、図6(a)に、第2のユニット(10)内において、潜像画線(32)に隣接して可視模様(5)を形成する可視模様形成領域(42)に、形成する可視模様(5)の任意の階調濃度に対応した濃度を形成した状態を示す。
図6(b)に、可視模様形成領域(42)の濃度が0%であるときの状態を示す。この場合は、潜像画線(32)のみが形成されており、可視模様(5)を形成するための可視模様形成領域(42)は形成されない。具体的には、トーンカーブで濃度10%に変換され、10%に相当する潜像画線(32)のみが形成される。
図6(c)に、可視模様形成領域(42)の濃度が50%であるときの状態を示す。具体的には、トーンカーブで濃度24%に変換され、10%に相当する潜像画線(32)に加えて、14%に相当する可視要素が可視模様形成領域(42)に形成される。
図6(d)に、可視模様形成領域(42)の濃度が100%であるときの状態を示す。具体的には、トーンカーブで濃度38%に変換され、10%に相当する潜像画線(32)に加えて、28%に相当する可視要素が可視模様形成領域(42)に形成される。
さらに、図7(a)に、第3のユニット(11)内において、潜像画線(33)に隣接して可視模様(5)を形成する可視模様形成領域(43)に、形成する可視模様(5)の任意の階調濃度に対応した濃度を形成した状態を示す。
図7(b)に、可視模様形成領域(43)の濃度が0%であるときの状態を示す。この場合は、潜像画線(33)のみが形成されており、可視模様(5)を形成するための可視模様形成領域(43)は形成されない。具体的には、トーンカーブで濃度10%に変換され、10%に相当する潜像画線(33)のみが形成される。
図7(c)に、可視模様形成領域(43)の濃度が50%であるときの状態を示す。具体的には、トーンカーブで濃度24%に変換され、10%に相当する潜像画線(33)に加えて、14%に相当する可視要素が可視模様形成領域(43)に形成される。
図7(d)に、可視模様形成領域(43)の濃度が100%であるときの状態を示す。具体的には、トーンカーブで濃度38%に変換され、10%に相当する潜像画線(33)に加えて、28%に相当する可視要素が可視模様形成領域(43)に形成される。
このように、例えば、第1のユニット(9)において、可視模様(5)の階調濃度の増加に伴って、潜像画線(31)に隣接した可視模様形成領域(41)の画線面積率が増加し、可視要素の面積が増加する。なお、前述した例では、潜像画線(31)の下側に可視模様形成領域(41)を設けている。しかし、可視模様形成領域(41)の位置には限定されず、ユニット内であれば、ユニット内における潜像画線が形成されていない領域や、さらには、前述したとおり、可視模様形成領域(41)だけではなく、複数配置した潜像画線(31)のうち、少なくとも一部を異なる色に置換して、置換した色を有する可視模様を形成してもよく、さらには、一本の潜像画線(31)中で、一部を異なる色に置換して、可視模様を形成したり、これらを組み合わせたりしてもよい。
図5(a)、図6(a)及び図7(a)を用いて前述した例では、可視模様形成領域(41、42、43)が潜像画線(31、32、33)を始点として徐々に拡大し、かつ、濃度が徐々に潜像画線(31、32、33)から離れるに従って低下するように階調性を伴って形成されている。これに対し、後述の例では、可視模様形成領域(41、42、43)が、潜像画線(31、32、33)を境界として二つの領域のうち一方の領域に、可視模様(5)の階調濃度に応じて均一な画線面積率で形成されている。
図8(a)に、第1のユニット(9)内において、潜像画線(31)に隣接して可視模様(5)を形成する可視模様形成領域(41)に、形成する可視模様(5)の階調濃度に対応した濃度を形成することを示す。
図8(b)に、可視模様形成領域(41)の濃度が0%であるときの状態を示す。この場合は、潜像画線(31)のみが形成されており、可視模様(5)を形成するための可視要素は形成されない。具体的には、トーンカーブで濃度10%に変換され、均一な10%の濃度の潜像画線(31)のみが形成される。
図8(c)に、可視模様形成領域(41)の濃度が50%であるときの状態を示す。具体的には、トーンカーブで濃度24%に変換され、10%に相当する潜像画線(31)に加えて、均一な14%の濃度の可視要素が可視模様形成領域(41)に形成される。
図8(d)に、可視模様形成領域(41)の濃度が100%であるときの状態を示す。具体的には、トーンカーブで濃度38%に変換され、10%に相当する潜像画線(31)に加えて、均一な28%の濃度の可視要素が可視模様形成領域(41)に形成される。
図9(a)に、第2のユニット(10)内において、潜像画線(32)に隣接して可視模様(5)を形成する可視模様形成領域(42)に、形成する可視模様(5)の階調濃度に対応した濃度を形成することを示す。
図9(b)に、可視模様形成領域(42)の濃度が0%であるときの状態を示す。この場合は、潜像画線(32)のみが形成されており、可視模様(5)を形成するための可視要素は形成されない。具体的には、トーンカーブで濃度10%に変換され、均一な10%の濃度の潜像画線(32)のみが形成される。
図9(c)に、可視模様形成領域(42)の濃度が50%であるときの状態を示す。具体的には、トーンカーブで濃度24%に変換され、10%に相当する潜像画線(32)に加えて、均一な14%の濃度の可視要素が可視模様形成領域(42)に形成される。
図9(d)に、可視模様形成領域(42)の濃度が100%であるときの状態を示す。具体的には、トーンカーブで濃度38%に変換され、10%に相当する潜像画線(32)に加えて、均一な28%の濃度の可視要素が可視模様形成領域(42)に形成される。
図10(a)に、第3のユニット(11)内において、潜像画線(33)に隣接して可視模様(5)を形成する可視模様形成領域(43)に、形成する可視模様(5)の階調濃度に対応した濃度を形成することを示す。
図10(b)に、可視模様形成領域(43)の濃度が0%であるときの状態を示す。この場合は、潜像画線(33)のみが形成されており、可視模様(5)を形成するための可視要素は形成されない。具体的には、トーンカーブで濃度10%に変換され、均一な10%の濃度の潜像画線(33)のみが形成される。
図10(c)に、可視模様形成領域(43)の濃度が50%であるときの状態を示す。具体的には、トーンカーブで濃度24%に変換され、10%に相当する潜像画線(33)に加えて、均一な14%の濃度の可視要素が可視模様形成領域(43)に形成される。
図10(d)に、可視模様形成領域(43)の濃度が100%であるときの状態を示す。具体的には、トーンカーブで濃度38%に変換され、10%に相当する潜像画線(33)に加えて、均一な28%の濃度の可視要素が可視模様形成領域(43)に形成される。
図11(a)に、10画素×10画素で構成された第1のユニット(9)内において、潜像画線(31)に隣接して可視模様(5)を形成する可視模様形成領域(41)に、形成する可視模様(5)の階調濃度に対応した濃度を形成した状態を示す。
図11(b)に、可視模様形成領域(41)の濃度が0%であるときの状態を示す。この場合は、潜像画線(31)のみが形成されており、可視模様(5)を形成するための可視要素は形成されない。具体的には、トーンカーブで濃度10%に変換され、10%に相当する潜像画線(31)のみが形成される。
図11(c)に、可視模様形成領域(41)の濃度が50%であるときの状態を示す。具体的には、トーンカーブで濃度24%に変換され、10%に相当する潜像画線(31)に加えて、14%に相当する可視要素が可視模様形成領域(41)に形成される。
図11(d)に、可視模様形成領域(41)の濃度が100%であるときの状態を示す。具体的には、トーンカーブで濃度38%に変換され、10%に相当する潜像画線(31)に加えて、28%に相当する可視要素が可視模様形成領域(41)に形成される。
図12(a)に、10画素×10画素で構成された第2のユニット(10)内において、潜像画線(32)に隣接して可視模様(5)を形成する可視模様形成領域(42)に、形成する可視模様(5)の階調濃度に対応した濃度を形成した状態を示す。
図12(b)に、可視模様形成領域(42)の濃度が0%であるときの状態を示す。この場合は、潜像画線(32)のみが形成されており、可視模様(5)を形成するための可視要素は形成されない。具体的には、トーンカーブで濃度10%に変換され、10%に相当する潜像画線(32)のみが形成される。
図12(c)に、可視模様形成領域(42)の濃度が50%であるときの状態を示す。具体的には、トーンカーブで濃度24%に変換され、10%に相当する潜像画線(32)に加えて、14%に相当する可視要素が可視模様形成領域(42)に形成される。
図12(d)に、可視模様形成領域(42)の濃度が100%であるときの状態を示す。具体的には、トーンカーブで濃度38%に変換され、10%に相当する潜像画線(32)に加えて、28%に相当する可視要素が可視模様形成領域(42)に形成される。
図13(a)に、10画素×10画素で構成された第3のユニット(11)内において、潜像画線(33)に隣接して可視模様(5)を形成する可視模様形成領域(43)に、形成する可視模様(5)の階調濃度に対応した濃度を形成した状態を示す。
図13(b)に、可視模様形成領域(43)の濃度が0%であるときの状態を示す。この場合は、潜像画線(33)のみが形成されており、可視模様(5)を形成するための可視要素は形成されない。具体的には、トーンカーブで濃度10%に変換され、10%に相当する潜像画線(33)のみが形成される。
図13(c)に、可視模様形成領域(43)の濃度が50%であるときの状態を示す。具体的には、トーンカーブで濃度24%に変換され、10%に相当する潜像画線(33)に加えて、14%に相当する可視要素が可視模様形成領域(43)に形成される。
図13(d)に、可視模様形成領域(43)の濃度が100%であるときの状態を示す。具体的には、トーンカーブで濃度38%に変換され、10%に相当する潜像画線(33)に加えて、28%に相当する可視要素が可視模様形成領域(43)に形成される。
なお、ユニットを縦横共に3画素以上で構成することが可能である。しかしながら、第1のユニット(9)、第2のユニット(10)及び第3のユニット(11)をプリンタにより出力する場合は、後述するように、プリンタの描画性能を考慮して縦横ともに5画素以上で構成するのが望ましい。この5画素を換算すると、出力解像度が600dpiのプリンタでは、寸法(u)は約0.21mmとなり、出力解像度が720dpiのプリンタでは、寸法(u)は約0.18mmとなる。
また、本実施の形態において読み取り対象とする潜像印刷物(7)は、秘匿性の高い潜像模様(4)の形成を意図するものである。このため、人の近見視力において、潜像画線が1つ1つの画線として認識されないことが望ましい。例えば、図14(a)に示すように、各々のユニットが小さければ、近見視力では潜像画線が認識されずに一様の濃度として観察されるが、図14(b)に示すように、各々のユニットが大きいと、画線として観察されることとなる。潜像印刷物(7)の観察条件にもよるが、ユニットの縦横の寸法(u)が0.50mmを超えると、近見視力では画線として認識されやすい傾向にある。このことから、寸法(u)は、0.50mm以下であることが望ましい。
本実施の形態において読み取り対象とする潜像印刷物(7)では、ユニットの形状が正方形である場合を例にとり説明する。しかしながら、本発明におけるユニットの形状は、図15(a)~(c)に示すような縦の寸法(u)と横の寸法(w)とが異なる長方形であってもよく、又は図15(d)~(f)に示すような六角形であってもよい。なお、図15(a)~(f)に示されたユニットでは、潜像画線(31、32、33)のみが形成され、可視模様形成領域(41、42、43)は形成されていない場合を示している。また、ユニット内の潜像画線の端部は、前述したようにユニットの端まで形成されていてもよく、形成されていなくともよい。
図16、図17、図18のそれぞれに、印刷模様(8)における各々のユニットの配列の例を示す。図16(a)に示すように、複数のユニットをマトリクス状に隙間なく配置してもよい。図16(b)に、マトリクス状に配置されたユニットに潜像画線(31、32、33)を形成した状態を示す。また図17(a)に示すように、複数のユニットを水平方向にレンガ状に隙間なく配置してもよい。この場合は、水平方向の配列に対して垂直方向の位相がずれた状態にある。図17(b)に、レンガ状に配置されたユニットに潜像画線(31、32、33)を形成した状態を示す。さらに図18(a)に示すように、複数のユニットを垂直方向にレンガ状に隙間なく配置してもよい。この場合は、垂直方向の配列に対して水平方向の位相がずれた状態にある。図18(b)に、レンガ状に配置されたユニットに潜像画線(31、32、33)を形成した状態を示す。
また本実施の形態において読取対象とする潜像印刷物(7)には、可視模様を形成することができる。可視模様(5)は、図19に示すように、潜像模様(4)が形成された合成臨界値配列模様データ(101)に対して、可視模様データ(301)に示すような可視模様(5)を付与することで形成する。合成臨界値配列模様データ(101)は、前述したように、潜像画線(31)、可視模様形成領域(41)を有する第1のユニット(9)、潜像画線(32)、可視模様形成領域(42)を有する第2のユニット(10)、潜像画線(33)、可視模様形成領域(43)を有する第3のユニット(11)を備えている。
図20に示したような可視模様(5)を構成する可視模様テンプレートを用いる。例えば、可視模様の基模様データとして、ICメモリ等の記憶装置に格納された8bitRGB模様データを用意する。本実施の形態では、図20に示すような階調濃度を有する鳳凰の可視模様データ(301)を用いる。しかしながら、基模様の模様データには限定されず、例えば、文字、記号、数字、ロゴマーク、図形、イラスト及び風景等の様々な模様を用いることができる。また、8bitRGB模様データに限らず、模様データの形式も限定されない。
潜像模様(4)を表す合成臨界値配列模様データ(101)は、図19に示されたように、第1のユニット(9)、第2のユニット(10)及び第3のユニット(11)により構成されている。そして図20に示すように、鳳凰を形成するために用いられる可視模様テンプレートの階調濃度に応じて、第1のユニット(9)、第2のユニット(10)及び第3のユニット(11)における可視模様形成領域(41、42、43)が着色される。
図20に示すように、例えば、可視模様テンプレートが、0%、25%、50%、75%及び100%の5種類の階調濃度によって構成されている場合、階調濃度に応じた濃度で第1のユニット(9)、第2のユニット(10)及び第3のユニット(11)の可視模様形成領域(41、42、43)が着色される。
例えば、図20に示すように、可視模様テンプレートにおいて最も高い階調濃度100%に位置する第1のユニット(9)、第2のユニット(10)及び第3のユニット(11)では、可視模様形成領域(41、42、43)において100%の網点面積率を有する画素又は画線が形成される。
階調濃度が濃度50%に位置する第1のユニット(9)、第2のユニット(10)及び第3のユニット(11)では、可視模様形成領域(41、42、43)において50%の網点面積率を有する画素又は画線が形成される。
階調濃度が濃度0%に位置する第1のユニット(9)、第2のユニット(10)及び第3のユニット(11)では、可視模様形成領域(41、42、43)において可視模様(5)の画素又は画線等の構成要素は形成されない。
このようにして、それぞれの可視模様形成領域(41、42、43)に階調濃度に応じた網点面積率を有する画素又は画線が形成された第1のユニット(9)、第2のユニット(10)及び第3のユニット(11)により、図20に示すような潜像模様(4)及び可視模様(5)が形成された模様データ(201)が生成される。模様データ(201)の拡大図からも確認されるように、潜像模様(4)の構成要素と可視模様(5)の構成要素とが形成されている。
それぞれの第1のユニット(9)、第2のユニット(10)及び第3のユニット(11)においては、例えば、潜像画線(31、32、33)を始点として可視模様形成領域(41、42、43)の階調濃度を形成することで、簡易に可視模様(5)の構成要素が適用された第1のユニット(9)、第2のユニット(10)及び第3のユニット(11)を生成することができるが、この構成には限定されない。
次に、前述した潜像画線(31、32、33)のいずれかをそれぞれ含むユニット(9、10、11)を用いて潜像模様(4)及び可視模様(5)が構成された潜像印刷物(7)について説明する。より具体的には、本発明の一実施の形態において読み取り対象とする潜像印刷物(7)がユニット(9、10、11)を用いてどのように構成されているかについて図21を用いて説明する。図21のフローチャートは、潜像模様作成フロー(ステップ1~ステップ4)と、可視模様作成フロー(ステップ5)とを含み、まず潜像模様作成フローについて説明する。
ステップ1として、潜像模様(4)の基模様データ(51)を用意し、図示されないコンピュータ等の装置に入力された基模様データ(51)を色分解する。なお、潜像模様(4)は、フルカラーの階調模様とした。
例えば、基模様データ(51)として、ICメモリ等の記憶装置に記憶されたフルカラーの階調模様である、顔模様の24bitRGB模様データ(51)を用意する。本実施の形態では、図21に示すように顔模様データを用いているが、顔模様には限定されず、記号、数字、イラスト、風景等、あらゆる模様を用いることができる。
また、本実施の形態では、一例として、基模様データ(51)を特色分解により橙色成分模様データ(61)と黒色成分模様データ(62)とに分解している。しかしながら、特色分解には限定されず、RGB色分解やCMY色分解等、任意の複数の色に分解することができる。
ステップ2として、ステップ1で得られた橙色成分模様データ(61)及び黒色成分模様データ(62)を、解像度60dpiに変換し、更に誤差拡散ディザにより2階調化した橙色成分階調模様データ(71)と黒色成分階調模様データ(72)とを生成する。これにより、橙色成分階調模様データ(71)と黒色成分階調模様データ(72)は、それぞれ8bitから1bitに変換される。なお、この解像度を60dpiに変換する理由は、ステップ4において後述する。また、変換する解像度については、比較的粗い解像度に変換できればよく、60dpiには限定されない。
本実施の形態では、2階調化した橙色成分階調模様データ(71)と黒色成分階調模様データ(72)とを生成するために誤差拡散ディザを用いているが、これは、図1又は図2に示すように、印刷物上に形成されている一様な印刷模様(3)とするために望ましい手段として選択したものであり、色成分階調模様データを作成するための二値化処理が出来ればこれに限定はしない。
この二値化の処理については、単純二値化とハーフトーニングがあり、更にハーフトーニングについては、ドット集中型ハーフトーニングとドット分散型ハーフトーニングがある。更にドット集中型ハーフトーニングについては、AMスクリーンや特殊形状のスクリーン等があり、またドット分散型ハーフトーニングについては、パターンディザや本発明で用いた誤差拡散ディザ等がある。なお、近年の技術進歩により、ドット集中型ハーフトーニングとドット分散型ハーフトーニングにおいては、ニューラルネットワーク(機械学習)を用いる方法も可能である。どの手段を用いるかは、作成者の用途により適宜選択すればよい。
ステップ3として、橙色成分階調模様データ(71)を橙色に着色し、黒色成分階調模様データ(72)を黒色に着色して、橙着色模様データ(81)及び黒着色模様データ(82)を生成する。また、得られた橙着色模様データ(81)及び黒着色模様データ(82)の解像度を600dpiに変換する。また、600dpiに変換して得られた橙着色模様データ(81)及び黒着色模様データ(82)を合成して、図21に示す疑似的にカラー模様を表現している疑似カラー模様データ(91)を得る。
ステップ3では、橙着色模様データ(81)及び黒着色模様データ(82)を600dpiに変換した後に二つのデータを合成しているが、二つのデータを合成した後に600dpiに変換してもよい。また、橙着色模様データ(81)及び黒着色模様データ(82)の解像度の変換については、600dpiには限定されず、ステップ2における解像度より細かい解像度であれば、任意の解像度でもよい。
本発明の実施の形態において、ステップ2において解像度を一旦、60dpiに変換して2階調化を行い、ステップ3において再度、600dpiに変換する理由は、潜像模様(4)として、図21に示す写真のような滑らかな階調表現の模様から、画素の粗密が荒く、いわゆるモザイク状の多階調化された模様を得るためである。
ステップ4として、疑似カラー模様データ(91)における白色成分模様データ(63)に第1のユニット(9)を適用する。ここで、第1のユニット(9)、第2のユニット(10)及び第3のユニット(11)は、前述したように、潜像画線(31、32、33)と可視模様形成領域(41、42、43)とを有し、臨界値配列模様の1つの単位に相当する。臨界値配列模様とは、印刷用の網点を創出する基本パターンであり、Adobe(登録商標)社のPostScript(登録商標)リファレンスマニュアルにて定義されている連続階調表現方法の一つである。
なお、第1のユニット(9)、第2のユニット(10)及び第3のユニット(11)の形状は正方形として説明しているが、第1のユニット(9)、第2のユニット(10)及び第3のユニット(11)の形状は、長方形、六角形又はその他の多角形でもよい。例えば、四角形とした場合、縦横マトリックス状に隙間なく配置されてもよく、又はレンガ状に隙間なく配置されてもよい。
潜像画線(31、32、33)を前述のように構成したのは、例えば、スマートフォン等の潜像読取装置(21)による読み取り効率を高めるためである。潜像印刷物(7)を読み取り対象として、真偽判別や個人認証等のために潜像読取装置(21)のカメラやスキャナ等により印刷物を読み取ってその画面(22)に潜像模様(4)を可視化させる際に、潜像画線(31、32、33)の抽出を簡易、かつ、確実に行う必要があり、前述のように、潜像画線(31、32、33)を読み取り易く構成することで、潜像読取装置(21)による読み取り効率を高めることができる。
なお、前述した潜像印刷物(7)では、ユニットを3種類の第1のユニット(9)、第2のユニット(10)及び第3のユニット(11)で構成しているが、ユニット数は限定されず、2種類又は4種類以上のユニットで構成してもよい。
疑似カラー模様データ(91)への第1のユニット(9)、第2のユニット(10)及び第3のユニット(11)の適用について説明する。疑似カラー模様データ(91)に含まれる3色のうちの白色の画素領域に対して、第1のユニット(9)を適用させて第1の臨界値配列模様(91a)を生成する。3色以上とした場合には、フルカラー模様として潜像模様(4)を形成することが可能となる。
次に、疑似カラー模様データ(91)に含まれる黒色の画素領域に対して、第2のユニット(10)を適用させて、第2の臨界値配列模様(91b)を生成する。さらに、疑似カラー模様データ(91)に含まれる橙色の画素領域に対して第3のユニット(11)を適用させて、第3の臨界値配列模様(91c)を生成する。
このように、白色、黒色及び橙色の画素領域を含む疑似カラー模様データ(91)に対し、各々の色の画素領域をそれぞれ対応する第1のユニット(9)、第2のユニット(10)及び第3のユニット(11)に置き替えることで、図21に示すような合成臨界値配列模様データ(101)を生成する。本実施の形態では、白色の模様領域に第1のユニット(9)、黒色の模様領域に第2のユニット(10)及び橙色の模様領域に第3のユニット(11)を適用した例で説明するが、何色にどのユニットを適用するかは適宜設定すれば良く、本実施の形態に限定されない。
なお、図21におけるステップ4において示された臨界値配列模様(91a)は、疑似カラー模様データ(91)に含まれる白色の画素領域に第1のユニット(9)を適用した模様データであり、臨界値配列模様(91b)は、疑似カラー模様データに含まれる黒色の画素領域に第2のユニット(10)を適用した模様データであり、臨界値配列模様(91c)は、疑似カラー模様データに含まれる橙色の画素領域に第3のユニット(11)を適用した模様データに相当する。
すなわち、第1のユニット(9)、第2のユニット(10)及び第3のユニット(11)は、疑似カラー模様データ(91)に含まれる三色のそれぞれに適用する模様であり、疑似カラー模様データ(91)の各色が第1のユニット(9)、第2のユニット(10)及び第3のユニット(11)に置き換わった模様データ、言い換えれば、第1のユニット(9)、第2のユニット(10)及び第3のユニット(11)を合成した、フルカラーの模様データが合成臨界値配列模様データ(101)に相当する。
生成された合成臨界値配列模様データ(101)を印刷した潜像印刷物(7)には、顔模様を基模様とする、フルカラーの潜像模様(4)が埋め込まれており、潜像印刷物(7)を目視で視認しても潜像模様(4)は視認されない。しかし、後述するように、潜像読取装置(21)のカメラやスキャナ等により潜像印刷物(7)の模様データを取得して潜像模様(4)を構成する構成要素に相当する第1のユニット(9)、第2のユニット(10)及び第3のユニット(11)を抽出して着色することで、潜像読取装置(21)の画面上、又はこの潜像読取装置(21)からデータを送信された他の端末の画面(22)上に潜像模様(4)を可視化させて、潜像印刷物(7)の真偽判別や個人認証等を行うことができる。
次に、本発明の一実施の形態による潜像印刷物(7)の読取装置について説明する。本実施の形態による潜像印刷物(7)の読取装置は、図22に示したように、画像取得部(IAU)、画像処理部(IPU)、データ格納部(DSU)、画像表示部(IDU)を備えている。
画像取得部(IAU)は、例えばカメラ機能を有し、潜像印刷物(7)に形成された潜像模様(4)が形成された領域を撮影して模様データを生成し、出力する。しかしながら、カメラによる模様データの取得には限定されず、例えば、コンピュータに接続されたスキャナ等で模様データを取得することもできる。
画像処理部(IPU)は、画像取得部(IAU)から出力された模様データを与えられ、後述する潜像模様(4)の読取処理を行う。
データ格納部(DSU)は、画像取得部(IAU)から出力された模様データ、画像処理部(IPU)から出力されたデータを与えられて格納し、必要に応じて格納したデータを画像処理部(IPU)及び画像表示部(IDU)に出力する。
画像表示部(IDU)は、モニタ等のための画面を有し、画像処理部(IPU)又はデータ格納部(DSU)から出力されたデータを与えられて、潜像模様(4)等の模様や真偽判別を行った結果等の表示を行う。
本発明の一実施の形態による潜像印刷物(7)の読取方法は、前述した潜像印刷物(7)の読取装置を用いて潜像模様(4)の読取を行うものであって、前述した本発明の潜像印刷物(7)の印刷模様(8)が有する潜像模様(4)を読み取って可視化する方法である。
潜像模様(4)を読み取る際には、図23に示すように、ステップ11として潜像模様(4)を構成する潜像画線(31、32、33)の局所的特徴としてエッジを検出して抽出し、ステップ12として抽出した潜像画線(31、32、33)を着色し、具体的には、潜像画線(31、32、33)のいずれかを含んでいるユニット(9、10、11)を、対応する色成分模様となる白色成分模様データ(63)、黒色成分模様データ(62)及び橙色成分模様データ(61)のいずれかに置き換えて着色し、ステップ13として、3つの模様データを合成して得られた潜像模様(4)を潜像読取装置(21)の画面(22)に表示する。ここで、潜像画線(31、32、33)の特異点、すなわち局所的特徴の抽出には、潜像画線(31、32、33)の局所的特徴として、一方のエッジを強調することができる微分フィルタを用いる。
なお、微分フィルタには、例えば、プレヴィットフィルタやソーベルフィルタを利用してもよい。また、カーネルサイズは、各々のユニットの縦横のピクセル数や、潜像読取装置(21)のカメラやスキャナ等の機能の性能等によって適正なサイズを決定することが望ましい。
本実施の形態における潜像印刷物(7)には、例えば、顔模様を基模様とする潜像模様(4)と、鳳凰の可視模様(5)とが形成されている。この潜像模様(4)の抽出には、以下の数式1で表される微分フィルタを用いる。
ステップ11として、潜像印刷物(7)をスマートフォン等の潜像読取装置(21)のカメラ等により読み取る際に、潜像画線(31、32、33)のそれぞれの上側のエッジを抽出する。図23、図24に示したように、前述した微分フィルタを用いて潜像画線(31、32、33)の上側のエッジを検出する。
潜像画線(31)の読み取りには、例えば、以下の数式2で表される微分フィルタを用いる。
潜像画線(32)の読み取りには、例えば、以下の数式3で表される微分フィルタを用いる。
さらに、潜像画線(33)の読み取りには、例えば、以下の数式4で表される微分フィルタを用いる。
なお、本実施の形態ではエッジ検出のために微分フィルタを用いているが、微分フィルタには限定されず、画線が抽出できればよい。また、画線の読取の際には、カメラを用いる場合にカメラ機能における動画モード又は静止画モードのいずれで読取ってもよい。
図23において、潜像画線(31)を抽出することによって白色のエッジ検出模様(701)が生成され、潜像画線(32)を抽出することによって黒色のエッジ検出模様(702)が生成され、潜像画線(33)を抽出することによって橙色のエッジ検出模様(703)が生成される。
図23において、ステップ12として、抽出されたエッジ検出模様(701)を白色に着色することで白着色模様(801)が生成され、抽出されたエッジ検出模様(702)を黒色に着色することで黒着色模様(802)が生成され、抽出されたエッジ検出模様(703)を橙色に着色することで橙着色模様(803)が生成される。
図23及び図25において、ステップ13として、各着色模様(801、802、803)を合成して、潜像模様(4)を含む合成模様(901)が生成される。
ここで、潜像画線(31、32、33)のエッジを検出することで潜像画線(31、32、33)を抽出する意義について説明する。図26に示すように、潜像画線(31、32、33)の上側のエッジのみを検出し、下側のエッジを敢えて検出しないことにより、潜像画線(31、32、33)以外の領域に形成された可視模様形成領域(41、42、43)の存在に影響されることがない。すなわち、可視模様(5)の階調濃度に応じて可視模様形成領域(41、42、43)の濃度(画線面積率)を形成したとしても、潜像画線(31、32、33)の抽出には支障が生じない。これにより、連続的な階調濃度を有する可視模様(5)を形成することが可能となる。
本実施の形態では、潜像印刷物(7)に形成する潜像模様(4)として、1つの顔模様データを用いている。しかし、複数の認証情報を潜像模様(4)として潜像印刷物(7)に形成することができる。図27(a)に個人情報等が埋め込まれた二次元コード模様データ(1001)を示し、図27(b)にカラーの顔模様を表す基模様データ(51)とを示す。これらの情報を潜像模様(4)として形成する場合について説明する。
図28(a)に示すように、縦の画線を有するユニット、横の画線を有するユニットを用いて、二次元コード模様データ(1001)を潜像模様(4)にした模様(1101)を示す。図28(b)には、カラーの顔模様を潜像模様(4)とし鳳凰の模様を可視模様(5)とした模様データ(201)を示す。
そして、図29に示すように、二次元コード模様データ(1001)を潜像模様(4)にした模様(1101)に対して任意の色、例えば、通常のプリンタで単色として用いられているイエロー(Y)で着色した模様(1102)を生成し、カラーの顔模様を潜像模様(4)とし、鳳凰の模様を可視模様(5)とした模様データ(201)に対して任意の色、例えば通常のプリンタで単色として用いられているシアン(C)で着色した模様(202)を生成する。そして、模様(1102)と模様(202)とを重ねて印刷することで、図30に示すような一つの潜像印刷物(7)において、二次元コードとカラーの顔模様とを一体化した潜像模様(4)として形成することができる。
なお、取得した模様に対して平均化処理を行ってもよい。例えば、模様に対して単位面積毎に濃度を平均化する。この平均化処理には、例えば、ガウシアンフィルタ等の平滑化フィルタを用いてもよい。
得られた潜像印刷物(7)に対し、図31に示すような潜像読取装置(21)で潜像模様(4)を読み取ると、画面(22)上に顔模様が出現し、目視により本人認証を行うことができる。また、潜像読取装置(21)は、カメラ機能を内蔵したスマートフォン等の端末に限らず、上述したように、例えば、コンピュータに接続されたスキャナ等で模様を取得して、コンピュータにインストールされたソフトウェアの処理によって可視化された潜像模様(4)を画面に表示する形態でもよい。
さらに、潜像読取装置(21)によって同時に読み取られた二次元コード模様データ(1001)の情報を、例えば、クラウド・コンピューティングのサーバーシステム(1201)によって個人認証等を行うことで機械認証も併せて行うことができる。なお、コード情報は図示した二次元コードに限られずバーコード等、他の情報であってもよい。
前述した本実施の形態による潜像印刷物(7)の読取方法によれば、潜像印刷物(7)に形成された潜像模様(4)の局所的特徴を抽出し、潜像模様(4)を簡易、かつ、確実にカラーで出現させることができるので、例えば、パスポートや身分証明書の顔模様等に用いることで、人の目視による認証を簡易、かつ、確実に行うことができる。また機械認証を併用して行うことで、巧妙な偽造やなりすまし等に対しても、より高度な真偽判別、個人認証等を行うことができる。
前述のような本発明の潜像印刷物(7)の読取方法は、コンピュータにより実行されるソフトウェアで具現化され、コンピュータで読出し可能な形態で記録媒体(CD-ROM、RAM、ROM、フロッピーディスク、ハードディスク、光磁気ディスク等)に保存され得る。このような過程は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるため、これ以上の説明は省略する。
本発明の一実施の形態について説明したが、この実施の形態は一例として提示したものであり、発明の技術的範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施の形態やその変形は、発明の技術的範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、前述した実施の形態では、橙色成分、黒色成分、白色成分の三色に色分解しているが、分解する色成分の数は限定されず、2色以上に分解したものであればよい。また、潜像模様(4)を構成する少なくとも2つ以上の臨界値配列模様は全て同一色であることが潜像模様(4)の秘匿性の観点から望ましいが、必ずしも同一色には限られない。