JP2023013754A - 潤滑剤用添加剤、および潤滑剤組成物の製造方法 - Google Patents

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Kohei Yamashita
雅幸 畑
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Abstract

【課題】潤滑剤の潤滑性を向上する潤滑剤用添加剤を実現する。【解決手段】本発明の一態様に係る潤滑剤用添加剤は、下記式(1)で表されるフェノキサチイン化合物を含有する:【化1】TIFF2023013754000013.tif27152式(1)中、R1~R8は、それぞれ独立して、水素または炭素数1~24の直鎖または分岐のアルキル基である。【選択図】なし

Description

本発明は、潤滑剤用添加剤、および潤滑剤組成物の製造方法に関する。
近年、潤滑油、潤滑グリースなどの潤滑剤は、高速、高荷重といった、より過酷な条件の下で使用されるようになっている。そのため、より優れた潤滑性を有する潤滑剤が求められている。
例えば、特許文献1にはアルキルジフェニルエーテル(ADE、アルキルジフェニルオキシド)を含有する高温潤滑油が記載されている。特許文献2にはアルキル置換ジフェニルチオエーテル(ADS、アルキルジフェニルサルファイド)を含む合成潤滑油が記載されている。特許文献3にはフェノキサチイン-S-オキシド(フェノキサチイン10,10-ジオキシド)を含む油を用いて試験を行ったことが記載されている。特許文献4には、ヒドロカルビル置換基等を含む化合物i)と多核芳香族化合物ii)とを触媒反応させることによって製造することのできる付加物が記載されている。
国際公開第2014/069670号 特開昭58-208392号公報 特開昭53-141306号公報 特表平6-504289号公報
しかしながら、上述のような従来技術は、潤滑剤の潤滑性を向上する潤滑剤用添加剤を実現するという観点からさらなる改善の余地があった。
そこで、本発明の一態様は、潤滑剤の潤滑性を向上する潤滑剤用添加剤を実現することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の式で表されるフェノキサチイン化合物を含有する潤滑剤用添加剤を用いることにより、潤滑剤の潤滑性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、以下の構成を含む。
<1>下記式(1)で表されるフェノキサチイン化合物を含有する、潤滑剤用添加剤:
Figure 2023013754000001
式(1)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~24の直鎖または分岐のアルキル基である。
<2>前記フェノキサチイン化合物は、下記式(2)で表される、<1>に記載の潤滑剤用添加剤:
Figure 2023013754000002
式(2)中、Rはそれぞれ独立して炭素数1~24の直鎖または分岐のアルキル基であり、nおよびmは、0≦n+m<4を満たす実数である。
<3>式(2)中、nおよびmは、0≦n+m<1.5を満たす実数である、<2>に記載の潤滑剤用添加剤。
<4><1>~<3>のいずれか1つに記載の潤滑剤用添加剤を潤滑剤に添加する工程を含む、潤滑剤組成物の製造方法。
本発明の一態様によれば、潤滑剤の潤滑性を向上する潤滑剤用添加剤を提供することができる。
モデル化合物の1H-NMRスペクトルを示す図である。
本発明の実施形態について、以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
〔1.潤滑剤用添加剤〕
本発明の一実施形態に係る潤滑剤用添加剤は、下記式(1)で表されるフェノキサチイン化合物を含有する:
Figure 2023013754000003
式(1)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~24の直鎖または分岐のアルキル基である。
本明細書において、「フェノキサチイン化合物」とは、フェノキサチインおよびアルキル置換フェノキサチインの総称を意味する。本明細書において、フェノキサチイン化合物は、式(1)で表される範囲に包含される複数種の化合物の混合物であってもよい。
式(1)で表されるフェノキサチイン化合物は、フェノキサチイン構造を有するため、潤滑剤の潤滑性を向上することができる。本明細書において、フェノキサチイン構造とは、2つの芳香環がチオエーテル結合(-S-)およびエーテル結合(-O-)を介して結合している構造を意味する。また、当該フェノキサチイン化合物は、潤滑剤に添加した場合に容易に溶解する。
本明細書において、潤滑性は耐摩耗性試験によって評価することができる。具体的には、実施例に記載の方法により測定された鋼球の平均摩耗痕径によって潤滑性を評価することができる。また、実施例に記載の方法により測定された摩耗痕径低減率によって潤滑性の向上効果を評価することもできる。
上記フェノキサチイン化合物は、好ましくは下記式(2)で表される。
Figure 2023013754000004
式(2)中、Rはそれぞれ独立して炭素数1~24の直鎖または分岐のアルキル基であり、nおよびmは、0≦n+m<4を満たす実数である。n+mはアルキル置換数を示している。
n+m<4であれば、上記フェノキサチイン構造に起因する効果が希釈されることを抑制でき、当該効果を十分に発揮することができる。また、n+m<4であれば、耐酸化性の観点からも好ましい。nおよびmは、0≦n+m<3.6を満たすことがより好ましく、0≦n+m<3.0を満たすことがさらに好ましく、0≦n+m<2.6を満たすことが特に好ましく、0≦n+m<1.5を満たすことが最も好ましい。
式(1)中、R~Rがすべて水素である場合、式(1)で表されるフェノキサチイン化合物はフェノキサチインである。また、式(2)中、n+m=0である場合、式(2)で表されるフェノキサチイン化合物はフェノキサチインである。フェノキサチインは、下記式(3)で表される。
Figure 2023013754000005
式(1)中、R~Rの少なくとも1つがアルキル基である場合、式(1)で表されるフェノキサチイン化合物はアルキル置換フェノキサチインである。また、式(2)中、0<n+mである場合、式(2)で表されるフェノキサチイン化合物はアルキル置換フェノキサチインである。上記アルキル置換フェノキサチインは、フェノキサチイン構造を有し、且つアルキル基の炭素数およびアルキル置換数が特定の範囲に制御されているがゆえに、優れた潤滑性を潤滑剤に付与することができる。
Rの炭素数が1以上であれば、蒸発しにくいため、耐熱性の観点から好ましい。また、Rの炭素数が1以上であれば、硫黄による影響を抑えることができるため、耐腐食性の観点から好ましい。Rの炭素数が24以下であれば、上記フェノキサチイン構造に起因する効果が希釈されることを抑制でき、当該効果を十分に発揮することができる。また、Rの炭素数が24以下であれば、粘度を抑制することができる。Rの炭素数は、1~16であることが好ましく、1以上16未満であることがより好ましい。
0<n+mであれば、蒸発しにくく、且つ硫黄による影響を抑えることができるため、耐熱性および耐腐食性の観点から好ましい。本発明の一実施形態では、後述のように例えば単蒸留、分子蒸留を行うことにより、アルキル置換数が特定の範囲であるアルキル置換フェノキサチインを得ることができる。
アルキル置換数は、1H-NMRスペクトルを解析して求めることができる。詳細な測定条件については実施例にて説明する。また、図1に示すモデル化合物の1H-NMRスペクトルを用いて、アルキル置換数の算出方法について説明する。図1において、a(ケミカルシフト6.5~7.3)は芳香環の水素のピークを示す。b1(ケミカルシフト2.8~3.3)およびb2(ケミカルシフト2.2~2.7)はベンジル位の水素のピークを示す。c(ケミカルシフト0.5~1.9)はアルキル基の水素のピークを示す。これらa、b1、b2およびcのピークの積分値(比)を基に、次の式よりアルキル置換数を算出することができる:
アルキル置換数(n+m)=(芳香環の水素数)(b1+b2+c)/[(アルキル基の平均水素数)a+b1+b2+c]
上記式中のa、b1、b2、cはピークa、b1、b2、cそれぞれの積分値を表す。
上記アルキル置換フェノキサチインの質量平均分子量は、200~1200g/molであることが好ましく、250~1000g/molであることがより好ましく、250~800g/molであることがさらに好ましく、250~700g/molであることが特に好ましい。質量平均分子量は、1H-NMRを用いて測定することができる。
〔2.アルキル置換フェノキサチインの製造方法〕
本発明の一実施形態に係るアルキル置換フェノキサチインは、例えば、フェノキサチインと、炭素数1~24の直鎖または分岐のオレフィンまたはハロゲン化アルキルとのフリーデル・クラフツ反応によって得ることができる。
製造方法の一例を以下に説明する。まずフェノキサチインに触媒を加えて、通常80~110℃に加熱することにより、触媒をフェノキサチインに均一に溶解する。その後、反応系の温度を80~110℃に保ちながら、オレフィンまたはハロゲン化アルキルを滴下する。滴下終了後、80~110℃で撹拌を続けたのち、アルカリ中和剤を投入し、約30分攪拌する。その後、活性白土を投入し、80~90℃で0.5~3時間攪拌する。次いで減圧ろ過により、触媒およびその他副生する酸性物質を除去する。得られたろ液を減圧蒸留し、未反応の原料等を除去する。さらに特定の圧力および温度の条件にて減圧蒸留を適宜繰り返すことにより、フラクション(留分)および/または蒸留釜残として所望のアルキル置換数を有するアルキル置換フェノキサチインを得ることができる。
オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、2-デシル-1-テトラデセン等が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。オレフィンの炭素数は、1~16であることがより好ましく、1以上16未満であることがさらに好ましい。
ハロゲン化アルキルとしては、クロロメタン、クロロエタン、1-クロロプロパン、1-クロロブタン、1-クロロペンタン、1-クロロヘキサン、1-クロロヘプタン、1-クロロオクタン、1-クロロノナン、1-クロロデカン、1-クロロウンデカン、1-クロロドデカン、1-クロロトリデカン、1-クロロテトラデカン、1-クロロペンタデカン、1-クロロヘキサデカン、1-クロロ-2-デシル-1-テトラデカン、ブロモメタン、ブロモエタン、1-ブロモプロパン、1-ブロモブタン、1-ブロモペンタン、1-ブロモヘキサン、1-ブロモヘプタン、1-ブロモオクタン、1-ブロモノナン、1-ブロモデカン、1-ブロモウンデカン、1-ブロモドデカン、1-ブロモトリデカン、1-ブロモテトラデカン、1-ブロモペンタデカン、1-ブロモヘキサデカン、1-ブロモ-2-デシル-1-テトラデカン等が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ハロゲン化アルキルの炭素数は、1~16であることがより好ましく、1以上16未満であることがさらに好ましい。
触媒としては、塩化アルミニウム、硫酸化ジルコニア、塩化亜鉛等が挙げられる。
〔3.潤滑剤組成物の製造方法〕
本発明の一実施形態に係る潤滑剤組成物の製造方法は、上述の潤滑剤用添加剤を潤滑剤に添加する工程を含む。これにより、潤滑性が向上された潤滑剤組成物を得ることができる。また、本発明の一実施形態には、上述の潤滑剤用添加剤と潤滑剤とを含む潤滑剤組成物も包含される。
本明細書において、「潤滑剤組成物」とは、潤滑剤に潤滑剤用添加剤を添加することにより得られる組成物を意味する。潤滑剤用添加剤を添加する対象となる潤滑剤は、潤滑剤用基油であってもよく、各種の一般的な添加剤が既に添加された潤滑剤(例えば製品として販売されている潤滑剤)であってもよい。
潤滑剤用基油としては、特に限定されないが、アルキルジフェニルエーテル、ポリα-オレフィン(PAO)、α-オレフィンオリゴマー、エステル油(ポリオールエステル、ジエステル等)、ポリアルキレングリコール、シリコーン油、変性シリコーン油、鉱油等が挙げられる。
潤滑剤組成物の添加量は、潤滑剤組成物100重量%中、30重量%未満であることが好ましく、0.5~10重量%であることがより好ましく、0.5~5重量%であることがさらに好ましい。
潤滑剤組成物中の硫黄含有率の上限値は、2.5%未満であることが好ましく、2.2%以下であることがより好ましい。潤滑剤組成物中の硫黄含有率の下限値は、0.02%以上であってもよく、0.05%以上であってもよい。
本明細書において「硫黄含有率」とは、以下の式から求められる値を意味する。
硫黄含有率[%]=(100×硫黄原子の原子量/フェノキサチイン化合物の分子量)×(潤滑剤組成物中のフェノキサチイン化合物の添加量[重量%]/100)
なお、上記式中の硫黄原子の原子量は、フェノキサチイン化合物1分子あたりに含まれる硫黄原子の原子量を意図している。当該硫黄含有率は、実施例に記載の方法によって測定することができる。
上記潤滑剤組成物には、上述の潤滑剤用添加剤に加えて、必要に応じて摩耗防止剤、極圧剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、防錆防食剤、導電性付与剤などを配合することができる。
上記潤滑剤組成物は、高温条件で使用される軸受油、流動体軸受油、含油軸受油、グリース基油、含油プラスチック油、ギヤ油、ジェットエンジン油、断熱エンジン油、ガスタービン油、自動変速機油、真空ポンプ油、油圧作動液等として使用可能である。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔評価方法〕
<質量平均分子量およびアルキル置換数>
日本電子株式会社製の核磁気共鳴装置JNM-ECX400を使用して、各化合物について1H-NMRスペクトルを測定した。測定条件として、温度は80℃、溶媒および標準物質は不使用とした。
また、同一の化合物について、溶媒として重クロロホルム、標準物質としてTMSを用いた1H-NMRの測定を行った。この測定結果と、上述の溶媒および標準物質を不使用の測定結果とを比較することにより化学シフトを求めた。重クロロホルムを用いる場合、重クロロホルムとベンゼン環のピークが重複し、正確な積分値を求めることができないためである。
上記条件において1H-NMRを使用して、得られた製造例1~4の化合物を解析し、各化合物の質量平均分子量を求めた。
また、上記化合物のアルキル置換数は、各化合物について1H-NMRスペクトルを解析して求めた。〔1.潤滑剤用添加剤〕で説明したモデル化合物の例と同様に、芳香環の水素のピークa、ベンジル位の水素のピークb1およびb2、アルキル基の水素のピークcの積分値に基づき、下記式よりアルキル置換数を算出した。
アルキル置換数(n+m)=(芳香環の水素数)(b1+b2+c)/[(アルキル基の平均水素数)a+b1+b2+c]
上記式中のa、b1、b2、cはピークa、b1、b2、cそれぞれの積分値を表す。
<潤滑性>
潤滑性を評価するために、ASTM D4172に従って、耐摩耗性試験(高速四球試験)を以下のように行った。当該試験は、荷重が50N、温度が40℃、周波数が5Hz、ストロークが1mmの条件下で行った。また、プレートとしてSK-5を使用し、鋼球としてSUJ-2(直径10mm)を使用した。試験後に鋼球の平均摩耗痕径を算出した。
基油としてアルキルジフェニルエーテルを用いた実施例および比較例の試験では、平均摩耗痕径が580μm未満であれば◎、580~600μmであれば〇、601~620μmであれば△、621μm以上であれば×とした。平均摩耗痕径が小さいほど、潤滑剤組成物は潤滑性に優れていると言える。
また、基油としてポリα-オレフィン(PAO)、エステル油または鉱油を用いた実施例および比較例については、摩耗痕径低減率に基づき、潤滑性向上効果を評価した。摩耗痕径低減率は、基油のみを用いた場合に対して基油と潤滑剤用添加剤とを含む潤滑組成物において摩耗痕径が低減された割合を表している。摩耗痕径低減率は下記式より算出した。
摩耗痕径低減率={1-(実施例または比較例の潤滑剤組成物の摩耗痕径)/(基油のみの摩耗痕径)}×100
式中「基油のみの摩耗痕径」とは、対象となる実施例または比較例と同じ種類の基油のみを用いて得られた摩耗痕径を意味する。例えば後述の実施例13および14の摩耗痕径低減率を算出する場合、「基油のみの摩耗痕径」とは、比較例15の摩耗痕径を意味する。
本試験では、基油としてPAOを使用した場合、摩耗痕径低減率が33%以上であれば〇、30~32%であれば△、29%以下であれば×とした。基油としてエステル油を使用した場合、摩耗痕径低減率が12%以上であれば〇、11%以下であれば△とした。基油として鉱油を使用した場合、摩耗痕径低減率が31%以上であれば〇、29~30%であれば△、28%以下であれば×とした。摩耗痕径低減率が大きいほど、潤滑性向上効果が高いと言える。
<硫黄含有率>
硫黄含有率は、下記式から算出した。
硫黄含有率[%]=(100×硫黄原子の原子量/フェノキサチインまたはアルキル置換フェノキサチインの分子量)×(潤滑剤組成物中のフェノキサチインまたはアルキル置換フェノキサチインの添加量[重量%]/100)
なお、フェノキサチインおよびアルキル置換フェノキサチイン以外の化合物を用いた比較例については、その化合物の分子量および添加量を用いて硫黄含有率を算出した。硫黄原子の原子量は32.07である。アルキル置換フェノキサチインの分子量としては、上述の1H-NMRで求められた質量平均分子量を用いた。
〔製造例1、2〕
攪拌機、滴下ロートおよび温度計を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、フェノキサチイン(東京化成工業社製)400g(2.0モル)と無水塩化アルミニウム32.0g(0.24モル)とを入れ、90℃に加熱して無水塩化アルミニウムを溶解した。その後、反応系の温度を100℃に保ちながら、上記四つ口フラスコに1-ヘキセン84.2g(1.0モル)を2時間かけて滴下し、置換反応を行った。滴下終了後、100℃で5時間攪拌を続けたのち、キョーワード(登録商標)1000s(アルカリ性中和剤、協和化学工業社製、Mg4.5・Al(OH)13・CO・3.5HO)を無水塩化アルミニウムの5.5倍量投入し、30分間攪拌した。続けて、活性白土を無水塩化アルミニウムの3.65倍量投入し、90℃で30分攪拌した後、減圧ろ過により、無水塩化アルミニウムおよびその他副生する酸性物質を除去した。ここで得られたろ液を40Paにおいて140℃で減圧蒸留して、未反応の原料等を除去した。続けて、40Pa、200℃の条件で減圧蒸留し、フラクション(留分)としてモノアルキル(C6)-フェノキサチインを主成分とするアルキル置換フェノキサチイン(製造例1)を、蒸留釜残としてジアルキル(C6)-フェノキサチインとトリアルキル(C6)-フェノキサチインを主成分とする混合物(製造例2)を得た。ここで「C6」は、アルキル基1つあたりの炭素数を意味し、以下でも同様である。
〔製造例3〕
攪拌機、滴下ロートおよび温度計を取り付けた2Lの四つ口フラスコに、フェノキサチイン(東京化成工業社製)565g(2.82モル)と無水塩化アルミニウム32.0g(0.24モル)とを入れ、90℃に加熱して無水塩化アルミニウムを溶解した。その後、反応系の温度を100℃に保ちながら、上記四つ口フラスコに1-ドデセンと1-テトラデセンとの混合物(45:55混合物)を190.0g(1.13モル)を2時間かけて滴下し、置換反応を行った。滴下終了後、100℃で5時間攪拌を続けたのち、キョーワード(登録商標)1000sを無水塩化アルミニウムの5.5倍量投入し、30分間攪拌した。続けて、活性白土を無水塩化アルミニウムの3.65倍量投入し、90℃で30分攪拌した後、減圧ろ過により、無水塩化アルミニウムおよびその他副生する酸性物質を除去した。ここで得られたろ液を40Paにおいて140℃で減圧蒸留して、未反応の原料等を除去した。続けて、40Pa、220℃の条件で減圧蒸留し、フラクションとしてモノアルキル(C12&C14)-フェノキサチインを主成分とするアルキル置換フェノキサチイン(製造例3)を得た。すなわち、製造例3のアルキル置換フェノキサチインは、モノアルキル(C12)-フェノキサチインとモノアルキル(C14)-フェノキサチインとの混合物を主成分とする。
〔製造例4〕
攪拌機、滴下ロートおよび温度計を取り付けた500mLの四つ口フラスコに、フェノキサチイン(東京化成工業社製)240g(1.2モル)と無水塩化アルミニウム32.0g(0.24モル)とを入れ、90℃に加熱して無水塩化アルミニウムを溶解した。その後、反応系の温度を100℃に保ちながら、上記四つ口フラスコに1-ヘキサデセン108g(0.48モル)を2時間かけて滴下し、置換反応を行った。滴下終了後、100℃で5時間攪拌を続けたのち、キョーワード(登録商標)1000sを無水塩化アルミニウムの5.5倍量投入し、30分間攪拌した。続けて、活性白土を無水塩化アルミニウムの3.65倍量投入し、90℃で30分攪拌した後、減圧ろ過により、無水塩化アルミニウムおよびその他副生する酸性物質を除去した。ここで得られたろ液を40Paにおいて140℃で減圧蒸留して、未反応の原料等を除去した。続けて、蒸留釜残をさらに分子蒸留器により3.2×10-2Pa、200℃の条件で減圧蒸留し、フラクションとしてモノアルキル(C16)-フェノキサチインを主成分とするアルキル置換フェノキサチイン(製造例4)を得た。
〔実施例および比較例で用いた材料〕
<基油>
・アルキルジフェニルエーテル(ADE)(MORESCO社製、商品名モレスコハイルーブLB-15)
・ポリα-オレフィン(PAO)(ExxonMobil社製、商品名Spectrasyn Plus6)
・エステル油(日油株式会社製、商品名ユニスターMB-881)
・鉱油(コスモ石油ルブリカンツ株式会社製、商品名コスモニュートラル350)
<実施例添加剤>
・フェノキサチイン(東京化成工業社製、分子量200g/mol)
・製造例1のアルキル置換フェノキサチイン(質量平均分子量284g/mol、n+m=1.0)
・製造例2のアルキル置換フェノキサチイン(質量平均分子量402g/mol、n+m=2.4)
・製造例3のアルキル置換フェノキサチイン(質量平均分子量400g/mol、n+m=1.1)
・製造例4のアルキル置換フェノキサチイン(質量平均分子量446g/mol、n+m=1.1)
<比較例添加剤>
・ジフェニルサルファイド(DPS)(東京化成工業株式会社製、分子量186g/mol)
・ジベンゾチオフェン(DBT)(東京化成工業株式会社製、分子量184g/mol)
・ジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)(株式会社ADEKA製)
・トリクレジルホスフェート(TCP)(大八化学工業株式会社製)
〔実施例1~4〕
ADEを基油として、フェノキサチインを添加剤として、表1に示す配合量で配合し、実施例1~4の潤滑剤組成物を得た。
〔比較例1~4〕
ADEを基油として、DPS、DBT、ZnDTPまたはTCPを添加剤として、表1に示す配合量で配合し、比較例1~4の潤滑剤組成物を得た。
〔実施例5~12〕
ADEを基油として、製造例1~4のいずれかのアルキル置換フェノキサチインを添加剤として、表2に示す配合量で配合し、実施例5~12の潤滑剤組成物を得た。
〔実施例13、14〕
PAOを基油として、フェノキサチインまたは製造例4のアルキル置換フェノキサチインを添加剤として、表3に示す配合量で配合し、実施例13、14の潤滑剤組成物を得た。
〔比較例5~7〕
PAOを基油として、TCP、DPSまたはZnDTPを添加剤として、表3に示す配合量で配合し、比較例5~7の潤滑剤組成物を得た。
〔実施例15、16〕
エステル油を基油として、フェノキサチインまたは製造例4のアルキル置換フェノキサチインを添加剤として、表4に示す配合量で配合し、実施例15、16の潤滑剤組成物を得た。
〔比較例8~10〕
エステル油を基油として、TCP、DPSまたはZnDTPを添加剤として、表4に示す配合量で配合し、比較例8~10の潤滑剤組成物を得た。
〔実施例17、18〕
鉱油を基油として、フェノキサチインまたは製造例4のアルキル置換フェノキサチインを添加剤として、表5に示す配合量で配合し、実施例17、18の潤滑剤組成物を得た。
〔比較例11~13〕
鉱油を基油として、TCP、DPSまたはZnDTPを添加剤として、表5に示す配合量で配合し、比較例11~13の潤滑剤組成物を得た。
〔比較例14~17〕
比較例14の潤滑剤として、ADEを使用した。比較例15の潤滑剤として、PAOを使用した。比較例16の潤滑剤として、エステル油を使用した。比較例17の潤滑剤として、鉱油を使用した。すなわち、比較例14~17では、添加剤を添加せずに基油のみを用いた。
〔評価結果〕
表1~5に、実施例1~18および比較例1~16の潤滑性の評価結果を示す。表中、基油、実施例添加剤、比較例添加剤の数値は、配合量(重量%)を意味する。
Figure 2023013754000006
Figure 2023013754000007
Figure 2023013754000008
Figure 2023013754000009
Figure 2023013754000010
表1~5より、フェノキサチインまたは特定のアルキル置換フェノキサチインを用いた実施例1~18は、比較例1~17と同等またはそれ以上の潤滑性向上効果を示すことが分かった。より具体的には以下に説明する。
表1に示すように、フェノキサチインを用いた実施例1は、同量の別の添加剤を用いた比較例1~4およびADEのみを用いた比較例14に比べて潤滑性に優れていた。また、実施例2~4のように添加剤の添加量を変更した場合にも優れた潤滑性が得られた。
表2に示すように、特定のアルキル置換フェノキサチインを用いた実施例5~8においても、優れた潤滑性が得られた。また、実施例9~12のように添加剤の添加量を変更した場合にも優れた潤滑性が得られた。
表3に示すように、フェノキサチイン化合物をPAOと組み合わせた実施例13および14は、PAOのみを用いた比較例15に比べて潤滑性に優れていた。また、実施例13および14は、別の添加剤を用いた比較例5~7に比べて潤滑性向上効果が高いことが確認された。
表4に示すように、フェノキサチイン化合物をエステル油と組み合わせた実施例15および16は、エステル油のみを用いた比較例16に比べて潤滑性に優れていた。また、実施例15および16は、別の添加剤を用いた比較例8~10と同等またはそれ以上の潤滑性向上効果を示すことが確認された。
表5の結果から、フェノキサチイン化合物を鉱油と組み合わせた実施例17および18は、鉱油のみを用いた比較例17に比べて潤滑性に優れていた。また、実施例17および18は、別の添加剤を用いた比較例11~13と同等またはそれ以上の潤滑性向上効果を示すことが確認された。
これらの結果から、本発明の一実施形態に係る潤滑剤用添加剤は、従来の添加剤の代替品として有用であることが確認された。
本発明の一態様は、潤滑剤の分野に利用することができる。

Claims (4)

  1. 下記式(1)で表されるフェノキサチイン化合物を含有する、潤滑剤用添加剤:
    Figure 2023013754000011
    式(1)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~24の直鎖または分岐のアルキル基である。
  2. 前記フェノキサチイン化合物は、下記式(2)で表される、請求項1に記載の潤滑剤用添加剤:
    Figure 2023013754000012
    式(2)中、Rはそれぞれ独立して炭素数1~24の直鎖または分岐のアルキル基であり、nおよびmは、0≦n+m<4を満たす実数である。
  3. 式(2)中、nおよびmは、0≦n+m<1.5を満たす実数である、請求項2に記載の潤滑剤用添加剤。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の潤滑剤用添加剤を潤滑剤に添加する工程を含む、潤滑剤組成物の製造方法。
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