JP2023012982A - コーティング膜及びコーティング膜の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】疎水性微粒子が有する撥水性の阻害を抑制し、かつ、耐擦過性を向上させたコーティング膜及びコーティング膜の形成方法を提供する。【解決手段】コーティング膜1は、被塗装物10に疎水性を付与する複数の疎水性微粒子5(例えば、疎水性シリカ粒子)と、疎水性微粒子5を被塗装物10に接着する熱可塑性樹脂(例えば、塩素化ポリオレフィン、あるいは酸変性塩素化ポリオレフィン)と、を備える。そして、熱可塑性樹脂は、疎水性微粒子の表面の一部に形成され、疎水性微粒子同士及び疎水性微粒子と被塗装物との間を接着する。【選択図】図1
Description
本発明は、対象物の表面に撥水性を付与するコーティング膜及びコーティング膜の形成方法に関するものである。
従来、基材表面に撥水性を付与する方法として、例えば、フルオロカーボンシラン加水分解物含有水性エマルション及び耐油防汚性・撥水撥油性の被覆物(コーティング膜)が提案されている(特許文献1参照)。
具体的には、特許文献1では、フルオロカーボンシラン、界面活性剤、及びpH分散安定剤としての金属酸化物粒子を含む水性エマルションを用いて、基材表面に水性エマルションを塗装し、乾燥させることにより、基材表面に被覆物を形成して撥水性を付与している。
しかしながら、このような従来の被覆物は、撥水性を示すフルオロカーボンシランの他に界面活性剤などの添加物を含み、成膜のために含有された界面活性剤により、撥水性が損なわれる。また、基材の使用に伴う表面の擦れにより、基材表面から被覆物が剥離し、撥水性が低下するという課題があった。
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、疎水性微粒子が有する撥水性の阻害を抑制し、かつ、耐擦過性を向上させたコーティング膜及びコーティング膜の形成方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係るコーティング膜は、被塗装物に撥水性を付与する複数の疎水性微粒子と、疎水性微粒子を被塗装物に接着する熱可塑性樹脂と、を備え、熱可塑性樹脂は、疎水性微粒子の表面の一部に形成され、疎水性微粒子同士、及び、疎水性微粒子と被塗装物との間を接着することを特徴とするものである。これにより、所期の目的を達成するものである。
また、本発明に係るコーティング膜の形成方法は、熱可塑性樹脂、疎水性微粒子、及び溶媒を含むコーティング剤を、吹付塗装により、疎水性微粒子の少なくとも一部の表面が露出した状態で、被塗装物表面に付着させる第一工程と、コーティング剤を乾燥させる第二工程と、を行い、熱可塑性樹脂が、疎水性微粒子の表面の一部に形成され、疎水性微粒子同士及び疎水性微粒子と被塗装物との間を接着することを特徴とする。これらにより、所期の目的を達成するものである。
本発明によれば、疎水性微粒子が有する撥水性の阻害を抑制し、かつ、耐擦過性を向上させたコーティング膜及びコーティング膜の形成方法を提供することができる。
本発明に係るコーティング膜は、被塗装物に撥水性を付与する複数の疎水性微粒子と、疎水性微粒子を被塗装物に接着する熱可塑性樹脂と、を備える。そして、熱可塑性樹脂は、疎水性微粒子の表面の一部に形成され、疎水性微粒子同士及び疎水性微粒子と被塗装物との間を接着する。
こうした構成によれば、熱可塑性樹脂によって、疎水性微粒子同士、及び、疎水性微粒子と被塗装物とが接着されることにより、撥水性を有する疎水性微粒子が被塗装物に定着する。また、疎水性微粒子の表面は、熱可塑性樹脂が形成されている一部以外は露出している。そのため、疎水性微粒子が有する撥水性の阻害を抑制し、かつ、耐擦過性を向上させたコーティング膜とすることができる。
また、本発明に係るコーティング膜では、熱可塑性樹脂は、塩素化ポリオレフィンを含む。このようにすることで、熱可塑性樹脂として、有機溶剤に対して高い溶解性を有する塩素化ポリオレフィンを用いることができる。そのため、各疎水性微粒子に対して熱可塑性樹脂が均等に付着しやすく、耐擦過性の高いコーティング膜とすることができる。
また、本発明に係るコーティング膜では、疎水性微粒子は、疎水性シリカ粒子である。これにより、高い撥水性を有する疎水性シリカ粒子の表面が露出する。そのため、撥水性の高いコーティング膜とすることができる。
また、本発明に係るコーティング膜の形成方法では、熱可塑性樹脂、疎水性微粒子、及び溶媒を含むコーティング剤を、吹付塗装により、疎水性微粒子の少なくとも一部の表面が露出した状態で、被塗装物表面に付着させる第一工程と、コーティング剤を乾燥させる第二工程と、を行い、熱可塑性樹脂が、疎水性微粒子の表面の一部に形成され、疎水性微粒子同士及び疎水性微粒子と被塗装物との間を接着するコーティング膜を形成する。これにより、熱可塑性樹脂によって、疎水性微粒子同士及び疎水性微粒子と被塗装物との接着性を保ちつつ、疎水性微粒子の表面を露出させた状態で被塗装物に塗布することができる。そのため、疎水性微粒子の撥水性を損なうことなく、疎水性微粒子を固定化可能となり、耐擦過性及び撥水性を兼ね備えたコーティング膜を形成することができる。
また、本発明に係るコーティング膜の形成方法では、コーティング剤を塗布する塗装方法として、吹付塗装を行う。これにより、被塗装物表面に対して、高い吹出速度をもってコーティング剤を塗装することができる。したがって、吹付中に溶媒が揮発しやすくなり、被塗装物上で熱可塑性樹脂が疎水性微粒子を被覆する可能性を低減できる。
また、本発明に係るコーティング膜の形成方法では、疎水性微粒子は、少なくとも一部の表面が露出した状態で吹付けられる。これにより、被塗装物に塗布された際に、疎水性微粒子の表面が露出する。したがって、疎水性微粒子の撥水性の低下を抑制し、撥水性を備えるコーティング膜を形成することができる。
また、本発明に係るコーティング膜の形成方法では、吹付塗装を行う吹付装置の吹付口の直径が0.2mm以上0.8mm以下である。これにより、平均直径の小さい液滴としてコーティング剤を吹き付けることができ、より溶媒が揮発しやすくなる。したがって、より迅速にコーティング膜を形成することができる。
また、本発明に係るコーティング膜の形成方法において、第二工程では、熱可塑性樹脂の軟化点未満の温度でコーティング剤を乾燥させる。これにより、熱可塑性樹脂の軟化を抑制し、疎水性微粒子の表面が覆われることを抑制できる。そのため、撥水性の低下を抑制する形成方法とすることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
まず、図1を参照して、本発明の実施の形態1に係るコーティング膜1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係るコーティング膜1を示す模式断面図である。
まず、図1を参照して、本発明の実施の形態1に係るコーティング膜1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係るコーティング膜1を示す模式断面図である。
コーティング膜1は、被塗装物10の表面に形成される膜である。コーティング膜1により、被塗装物10に撥水性を付与することが可能となる。コーティング膜1は、疎水性微粒子5と、バインダー7と、を有して構成される。詳細は後述するが、コーティング膜1は、被塗装物10の表面にコーティング剤3を塗装して乾燥させることにより形成される被膜である。
コーティング膜1を形成する対象である被塗装物10は、撥水性及び耐擦過性が必要とされる製品の部材とすることができる。例えば、換気扇、送風機、換気扇及び送風機の羽根、換気扇及び送風機の羽根を囲む送風回路、ルーバー、浴室の内壁、及び道路標識等が挙げられる。被塗装物10の材質としては、例えば、プラスチック、ガラス、金属、木材等が挙げられる。なお、コーティング膜1は、部材の表面だけでなく、裏面或いは側面等、撥水性及び耐擦過性が必要とされる箇所に形成することができる。
コーティング膜1は、疎水性微粒子5が平面状に並んだ単層により形成されてもよいし、疎水性微粒子5が他の疎水性微粒子5の上に積層した多層により形成されてもよい。いずれの場合も、バインダー7により、疎水性微粒子5が、他の疎水性微粒子5もしくは被塗装物10に接着されている。
コーティング膜1の、被塗装物10とは反対の表面には、表面が露出した状態の疎水性微粒子5が存在する。なお、バインダー7が存在してもよいが、撥水性を損なわないためには、疎水性微粒子5の表面が一定以上露出する必要があるため、疎水性微粒子5を覆う量のバインダー7を添加するのは好ましくない。
コーティング膜1の、被塗装物10と接する表面には、疎水性微粒子5及びバインダー7が存在する。バインダー7により、疎水性微粒子5と被塗装物10の表面とが接着され、疎水性微粒子5が被塗装物10の表面に存在することができる。
疎水性微粒子5は、撥水性を示す材料である。疎水性微粒子5を被塗装物10上に塗装することにより、被塗装物10に撥水性を付与することができる。つまり、複数の疎水性微粒子5が、バインダー7により単独、もしくは他の疎水性微粒子5を介して被塗装物10の表面と接着することにより、被塗装物10に撥水性及び耐擦過性を付与することができ、撥水性及び耐擦過性を示すコーティング膜1とすることができる。
疎水性微粒子5としては、撥水性を有する素材であれば特に限定されない。例えば、疎水性シリカ粒子、シリコーン樹脂粒子、及びフッ素樹脂粒子等を用いることができる。これらのうち、フッ素樹脂粒子よりも、疎水性シリカ粒子及びシリコーン樹脂粒子が好ましい。フッ素樹脂粒子は、コーティング剤3中に単独で分散させることが難しく、分散剤として界面活性剤を用いたエマルションにする必要があるためである。界面活性剤を用いると、界面活性剤の有する両親媒性のために、形成したコーティング膜1の撥水性が低下する恐れがあるため、フッ素樹脂粒子よりも、有機溶剤からなる溶媒中に容易に分散可能な疎水性シリカ粒子及びシリコーン樹脂粒子を用いるのが好ましい。
疎水性微粒子5として、例示した物質のうち、一種類のみを選択して用いてもよいし、複数種類を同時に用いてもよい。例えば、疎水性微粒子5として、疎水性シリカ粒子のみを用いてもよいし、シリコーン樹脂粒子のみを用いてもよい。また、疎水性シリカ粒子及びシリコーン樹脂粒子を混合して用いてもよい。
疎水性微粒子5として真比重が2g/cm3以上である疎水性シリカ粒子を用いた場合の疎水性シリカ粒子の平均粒子径は、5~40nmであり、好ましくは7nmである。平均粒子径が40nmより大きい場合、溶媒中で均一に分散せず沈殿する可能性がある。また、平均粒子径が5nm未満の場合、小さすぎて分取などの作業性が下がるという可能性がある。なお、疎水性シリカ粒子の真比重とは、疎水性シリカ粒子の真密度(疎水性シリカ粒子自身が占有する体積のみにより算出される密度)を、水の密度で除算して算出した値である。また、請求項及び実施の形態に記載の「平均粒子径」とは非凝集状態の一次粒子径の測定値であり、例えば、レーザー回折法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒子径である。
疎水性微粒子5の形状は、平滑な球状であることが好ましい。球状の疎水性微粒子5であれば、平板状及び凹状等の球状でない場合、及び球状であっても表面が平滑でない場合と比較し、疎水基が360°にわたって粒子の表面に発現することで水滴が疎水性微粒子5表面にとどまりにくくなるため、高い撥水性を得ることができる。
疎水性微粒子5のうち、バインダー7と接していない表面を表面部とする。表面部の表面積は、疎水性微粒子5の表面積の40%以上であることが好ましく、より好ましくは50%~80%である。表面部の表面積が40%を下回るにつれ、疎水性微粒子5の表面がバインダー7に覆われていき、撥水性が低下する。そのため、所望の撥水性を有するコーティング膜1を得るためには、表面部の表面積が40%以上であることが好ましい。ただし、表面部の表面積が100%である場合には、疎水性微粒子5は、バインダー7と接していない。そのため、所望の耐擦過性が得られなくなる。したがって、表面部の表面積が100%である場合は、撥水性及び耐擦過性を備えるコーティング膜1として好ましくない。
バインダー7は、疎水性微粒子5を直接的及び間接的に被塗装物10の表面に保持する接着剤として作用する。疎水性微粒子5は、疎水性微粒子5同士、及び被塗装物10との接着性をもたないため、バインダー7を用いない場合、疎水性微粒子5が被塗装物10の表面に保持されず、所望の耐擦過性を得ることができない。バインダー7が疎水性微粒子5の表面あるいは被塗装物10の表面に存在することにより、疎水性微粒子5が被塗装物10の表面に保持され、被塗装物10に撥水性及び耐擦過性を付与することができる。つまり、バインダー7を介して、被塗装物10と疎水性微粒子5とが間接的に接着する。また、バインダー7を介して、疎水性微粒子5同士が間接的に接着する。
バインダー7としては、例えば、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、塩素化ポリオレフィン、酸変性塩素化ポリオレフィン、アクリル変性塩素化ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル、及びアクリル等が挙げられる。これらのうち、ポリプロピレン等の難接着性材料により形成される被塗装物10に対しても密着性が得られるという観点から、塩素化ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂が好ましい。塩素化ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂は、溶媒として用いるトルエン等の有機溶剤への溶解性が高いため、溶解性の低い樹脂と比べ、各疎水性微粒子5に対して均一に付着しやすい。そのため、塩素化ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂を用いることにより、疎水性微粒子5が被塗装物10から剥離する可能性を低減でき、コーティング膜1の耐擦過性を向上させることができる。
バインダー7の形状は、疎水性微粒子5及び被塗装物10に対する接着性を奏する形状であれば特に問わず、例えば、略球状、略楕円状、略平面状等が挙げられる。いずれの場合であっても、疎水性微粒子に対する体積比は、疎水性微粒子5に対して、バインダー7が1.63~3.26であることが好ましい。より好ましくは、1である。体積比が3.26を大きく上回る場合、疎水性微粒子5に対してバインダー7が多すぎることになり、疎水性微粒子5の表面が露出しづらくなるために、所望の撥水性を得られない可能性がある。一方、体積比が1.63を大きく下回る場合、疎水性微粒子5に対してバインダー7が少なすぎることになり、疎水性微粒子5が被塗装物10に接着されづらくなるために、所望の耐擦過性を得られない可能性がある。
コーティング膜1は、コーティング膜1の形成後に上方(被塗装物10の表面とは反対方向)からコーティング膜1を見た場合に、被塗装物10の表面の露出率が10%以下となるように形成されることが好ましい。なお、表面の露出率とは、疎水性微粒子5もしくはバインダー7と接していない被塗装物10の割合ではなく、コーティング膜1の上方から垂直方向にコーティング膜1を見た場合に、コーティング膜1の間から観察可能な被塗装物10の表面の割合である。露出率が10%を上回ると、要求される撥水性を満足できなくなる可能性があるため、本実施の形態においては、露出率が10%以下となるようにコーティング膜1を形成する。
(形成方法)
図2を参照して、コーティング膜1の形成手順を説明する。図2は、本発明の実施の形態1におけるコーティング膜1の形成手順を示す模式断面図である。図2の(A)は、コーティング剤3中での疎水性微粒子5及びバインダー7の模式断面図である。図2の(B)は、スプレーガンの吹付口から吹出された時の疎水性微粒子5及びバインダー7の模式断面図である。図2の(C)は、被塗装物10の表面に付着する直前の疎水性微粒子5及びバインダー7の模式断面図である。図2の(D)は、コーティング剤3を乾燥させることにより形成されたコーティング膜1の模式断面図である。形成手順として、塗装手順及び乾燥手順が存在し、塗装手順を行った後に、乾燥手順を行うことでコーティング膜1を形成することができる。なお、塗装手順は、請求項の「第一工程」に相当する。また、乾燥手順は、請求項の「第二工程」に相当する。
図2を参照して、コーティング膜1の形成手順を説明する。図2は、本発明の実施の形態1におけるコーティング膜1の形成手順を示す模式断面図である。図2の(A)は、コーティング剤3中での疎水性微粒子5及びバインダー7の模式断面図である。図2の(B)は、スプレーガンの吹付口から吹出された時の疎水性微粒子5及びバインダー7の模式断面図である。図2の(C)は、被塗装物10の表面に付着する直前の疎水性微粒子5及びバインダー7の模式断面図である。図2の(D)は、コーティング剤3を乾燥させることにより形成されたコーティング膜1の模式断面図である。形成手順として、塗装手順及び乾燥手順が存在し、塗装手順を行った後に、乾燥手順を行うことでコーティング膜1を形成することができる。なお、塗装手順は、請求項の「第一工程」に相当する。また、乾燥手順は、請求項の「第二工程」に相当する。
(材料)
図3を参照して、コーティング剤3について説明する。図3は、本発明の実施の形態1におけるコーティング剤3の組成を示す図である。
図3を参照して、コーティング剤3について説明する。図3は、本発明の実施の形態1におけるコーティング剤3の組成を示す図である。
図3に示す通り、コーティング剤3は、疎水性微粒子5、バインダー7、及び溶媒を有する。コーティング剤3は、被塗装物10に塗装され、被塗装物10に撥水性を与えるための薬剤である。コーティング剤3の塗装対象としては、換気扇等の被塗装物10に限定されるものではなく、前述した被塗装物10の例示物品以外に、他の物品への適用も可能である。コーティング剤3が乾燥することにより、コーティング膜1が形成される。
コーティング剤3には、接着剤として作用するバインダー7が含まれる。バインダー7として、具体的には熱可塑性樹脂を用いる。熱可塑性樹脂としては、例えば、塩素化ポリオレフィン、酸変性塩素化ポリオレフィン、アクリル変性塩素化ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル、及びアクリル等が挙げられる。これらのうち、ポリプロピレン等の難接着性材料により形成される被塗装物10に対しても密着性が得られるという観点から、塩素化ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂が好ましい。塩素化ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂は、コーティング剤3の溶媒として用いるトルエン等の有機溶剤への溶解性が高いため、溶解性の低い樹脂と比べ、コーティング剤3中で均一に分散し、各疎水性微粒子5に対して均一に付着しやすい。そのため、塩素化ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂を用いることにより、疎水性微粒子5が被塗装物10から剥離する可能性を低減でき、コーティング膜1の耐擦過性を向上させることができる。
コーティング剤3におけるバインダー7の比率は、疎水性微粒子5を保持する接着剤としての機能を果たせる比率であればよい。例えば、バインダー7の配合率が20%であり、希釈用の溶媒の配合率が77%であってもよいし、バインダー樹脂溶液の配合率が10%であり、希釈用の溶媒の配合率が87%であってもよい。ただし、バインダー7の配合率が一定値以上となると、疎水性微粒子5がバインダー7に覆われ、疎水性微粒子5の表面の露出率が低下してしまい、所望の撥水性を得られない可能性がある。
コーティング剤3に用いる溶媒は、トルエンなど、バインダー7を希釈分散可能な溶媒が挙げられる。
コーティング剤3中の疎水性微粒子5の含有率は、特に問わないが、撥水性を得るためには、0.5~5%とすることが好ましく、より好ましくは3%前後である。疎水性微粒子5の含有率が5%より高い場合には、塗装量の制御が難しくなる。
コーティング剤3には、界面活性剤等の親水性を有する添加剤を添加しない方が好ましい。本実施の形態においては、界面活性剤を添加していない。なぜならば、界面活性剤を添加すると、コーティング膜1の表面に界面活性剤が露出し、界面活性剤の有する親水基が、疎水性微粒子5の有する撥水性を阻害する要因となるためである。
(形成手順)
まず、図2の(A)、図2の(B)、及び図2の(C)を参照して、塗装手順について説明する。塗装手順は、被塗装物10の少なくとも一つの表面にコーティング剤3を塗装する手順である。塗装手順により、撥水性を付与したい被塗装物10の表面にコーティング剤3を塗装することができる。
まず、図2の(A)、図2の(B)、及び図2の(C)を参照して、塗装手順について説明する。塗装手順は、被塗装物10の少なくとも一つの表面にコーティング剤3を塗装する手順である。塗装手順により、撥水性を付与したい被塗装物10の表面にコーティング剤3を塗装することができる。
コーティング剤3は、スプレーガンを用いた吹付塗装により被塗装物10の表面に塗装される。コーティング剤3中では、疎水性微粒子5及びバインダー7は、それぞれ溶媒に溶解した状態で存在する。この時、図2の(A)に示すように、疎水性微粒子5をバインダー7が取り囲んだ状態で存在する。
コーティング剤3を、吹付口の直径がとある値であるスプレーガンを用いて被塗装物10に吹付塗装を行う。コーティング剤3は、スプレーガンの吹付口から吹出されることにより、図2の(B)に示すように、バインダー7が覆っていた疎水性微粒子5の表面を露出させつつ、被塗装物10に向かっていく。これは、吹付口から吹出された際の速度によって、コーティング剤3の溶媒が揮発し、疎水性微粒子5とバインダー7とが分離しやすくなるためである。なお、疎水性微粒子5として真比重が2g/cm3以上である疎水性シリカ粒子を用いた場合の吹付口の直径は、0.2mm~0.8mmであり、好ましくは0.3mm~0.5mmである。吹付口の直径が0.8mmより大きい場合、疎水性微粒子5とバインダー7都が分離せず被塗装物10に付着し、コーティング膜1中で疎水性微粒子5がバインダー7に覆われてしまい、所望の撥水性を得られない可能性がある。また、吹付口の直径が0.2mm未満の場合、コーティング剤3が吹付口に詰まり、吹出が困難になるという可能性がある。
その後、被塗装物10に塗装される直前もしくは塗装後には、図2の(C)に示すように、バインダー7は、疎水性微粒子5から分離される。なお、塗装手順では、スプレーガン等の吹付装置を用いる吹付塗装によって、被塗装物10へのコーティング剤3の塗装を行う。塗装手順において、刷毛、ローラーブラシ、ヘラ等による塗装を行うと、疎水性微粒子5の表面をバインダー7が被覆した状態で被塗装物10に塗装され、所望の撥水性が得られないため、好ましくない。吹付塗装によれば、疎水性微粒子5の表面が露出した状態で被塗装物10に塗装されるため、所望の撥水性を備えるコーティング膜1を形成可能となる。この場合、被塗装物10の表面が露出しないように、被塗装物10表面を十分に覆うことができる量のコーティング剤3を塗装する。なお、コーティング膜1の形成後にコーティング膜1の上方から見た場合に、被塗装物10の表面の露出率が10%以下となるように、コーティング剤3を塗装することが好ましい。露出率が10%を上回ると、要求される撥水性を満足できなくなる。
以上が塗装手順の手順である。
塗装手順の完了後、乾燥手順に移行する。
図2の(D)を参照して、乾燥手順について説明する。乾燥手順は、被塗装物10に塗装されたコーティング剤3を乾燥させ、溶媒を揮発させることにより、コーティング膜1を形成する手順である。乾燥手順により、被塗装物10の表面に、撥水性の低下を抑制しつつ、耐擦過性を向上させたコーティング膜1を形成することができる。
乾燥手順では、バインダー7として熱可塑性樹脂を用いた場合には、軟化点未満の温度で乾燥を行う。その結果、溶媒が揮発し、表面が露出した疎水性微粒子5が、バインダー7により、被塗装物10または他の疎水性微粒子5と間接的に結合する。したがって、図2の(D)に示すように、撥水性及び耐擦過性を備えるコーティング膜1が形成される。なお、軟化点未満の温度で乾燥を行う理由として、軟化点以上の温度で乾燥を行うと、熱可塑性樹脂が軟化し、近傍の疎水性微粒子5の表面を被覆する可能性があるためである。疎水性微粒子5の表面がバインダー7により被覆されると、所望の撥水性を得られなくなる可能性があるため、軟化点未満の温度で乾燥を行うのが好ましい。
以上の形成方法にて、被塗装物10の表面にコーティング膜1が形成される。つまり、被塗装物10の表面にコーティング剤3を塗装し、乾燥させることにより、疎水性微粒子5が有する撥水性の低下を抑制しつつ、耐擦過性を向上させたコーティング膜1が形成される。
(実施例及び比較例の評価)
次に、実施例及び比較例を用いて実験的に被塗装物10上に形成したそれぞれのコーティング膜の特性について説明する。
次に、実施例及び比較例を用いて実験的に被塗装物10上に形成したそれぞれのコーティング膜の特性について説明する。
実施例及び比較例について、図4~図7を参照しながら説明する。図4は、実施例1~9における各コーティング膜の詳細条件及び評価結果をまとめた図である。図5は、比較例1~4における各コーティング膜の詳細条件及び評価結果をまとめた図である。図6は、比較例1におけるコーティング膜を示す模式断面図である。図7は、比較例2~4におけるコーティング膜を示す模式断面図である。
以下に具体的な実施例及び比較例を示す。これらの実施例により、コーティング膜1の詳細な実験結果及び特性を説明する。なお、以下に示す実施例は、この発明の範囲を限定するものではないとする。
図4及び図5に示すように、実施例及び比較例では、それぞれ組成の異なるコーティング剤3を被塗装物10上に塗装し、乾燥させ、コーティング膜1(比較例ではコーティング膜101及びコーティング膜201)を形成することにより、評価を行った。
いずれの実施例及び比較例の場合にも、被塗装物10として、50mm角、厚さ0.5mmのポリプロピレン樹脂板を用いた。
なお、各評価結果は、以下の測定及び評価基準に基づいたものである。
(耐擦過性)
耐擦過性は、以下に示す評価基準に沿って判断した。
耐擦過性は、以下に示す評価基準に沿って判断した。
まず、コーティング膜1及びコーティング膜1に相当する疎水性微粒子5を有する構造体が形成された被塗装物10の表面を指先でなぞり、指先に付着する粉体の量を観察する。指先に大量に付着していた場合は「×」、付着していた場合は「△」、少量付着していた場合は「〇」、ほぼ付着しなかった場合は「◎」とした。このうち、実際に使用する場合の被塗装物10として、人が触れる機会の少ない部材(例えば、換気扇の羽根車など)を用いる場合には、評価基準が「△」、「〇」、あるいは「◎」のコーティング膜1を用いればよい。
(撥水性)
撥水性は、以下に示す評価基準に沿って判断した。
撥水性は、以下に示す評価基準に沿って判断した。
まず、コーティング膜1及びコーティング膜1に相当する疎水性微粒子5を有する構造体が形成された被塗装物10に霧吹きで水滴を吹き付ける。吹き付けた水の様子を観察し、結果を評価した。被塗装物10の表面に水滴が付着し続けるなど、水を弾かなかった場合には「×」とした。また、被塗装物10の表面が水を弾き、強く息を吹きかけると水滴が吹き飛んだ場合には「△」とした。さらに、被塗装物10の表面が水を弾き、軽く息を吹きかけただけで水滴が吹き飛んだ場合には「〇」とした。そして、被塗装物10に霧吹きで水滴を吹き付けると、霧吹きの風圧で水滴が吹き飛び、被塗装物10表面にほとんど水滴が付着しなかった場合を「◎」とした。このうち、評価基準で「〇」あるいは「◎」の結果を出したコーティング膜1を用いることが好ましい。
(接触角測定)
接触角測定には、協和界面科学株式会社製自動接触角計DM-701を用い、コーティング膜1及びコーティング膜1に対応する物質の表面に約2μLの水滴を滴下した時の接触角を測定した。
接触角測定には、協和界面科学株式会社製自動接触角計DM-701を用い、コーティング膜1及びコーティング膜1に対応する物質の表面に約2μLの水滴を滴下した時の接触角を測定した。
(擦り試験後の撥水性)
擦り試験後の撥水性は、上記した撥水性の評価基準に沿って判断した。なお、擦り試験は、コーティング膜1が形成された被塗装物10の表面に、キムワイプを30g/cm2の荷重で押し付けながら、30回往復させるという方法で実施した。擦り試験後に、霧吹きで水滴を吹付けて撥水性を評価した。
擦り試験後の撥水性は、上記した撥水性の評価基準に沿って判断した。なお、擦り試験は、コーティング膜1が形成された被塗装物10の表面に、キムワイプを30g/cm2の荷重で押し付けながら、30回往復させるという方法で実施した。擦り試験後に、霧吹きで水滴を吹付けて撥水性を評価した。
次に、実施例及び比較例におけるコーティング膜の形成条件について説明する。
[実施例1]
バインダー7として用いた溶剤系酸変性塩素化ポリオレフィン溶液スーパークロン(R)930(日本製紙株式会社製、固形分20%、トルエン及びシクロヘキサン80%、コーティング剤3中の配合率10%)及び疎水性微粒子5として用いた疎水性シリカ粒子RX300(日本アエロジル株式会社製、平均粒子径7nm、真比重2.2g/cm3、コーティング剤3中の配合率3.0%)を溶媒として用いたトルエン(コーティング剤3中の配合率87%)で希釈溶解させ、コーティング剤3を作製した。吹付口(ノズル径)の直径が0.3mmのスプレーガンを用いて、コーティング剤3を被塗装物10に吹付塗装し、25℃(常温)で5分風乾乾燥させた。乾燥により溶媒を揮発させ、コーティング膜1を得た。評価結果を図4に示す。
バインダー7として用いた溶剤系酸変性塩素化ポリオレフィン溶液スーパークロン(R)930(日本製紙株式会社製、固形分20%、トルエン及びシクロヘキサン80%、コーティング剤3中の配合率10%)及び疎水性微粒子5として用いた疎水性シリカ粒子RX300(日本アエロジル株式会社製、平均粒子径7nm、真比重2.2g/cm3、コーティング剤3中の配合率3.0%)を溶媒として用いたトルエン(コーティング剤3中の配合率87%)で希釈溶解させ、コーティング剤3を作製した。吹付口(ノズル径)の直径が0.3mmのスプレーガンを用いて、コーティング剤3を被塗装物10に吹付塗装し、25℃(常温)で5分風乾乾燥させた。乾燥により溶媒を揮発させ、コーティング膜1を得た。評価結果を図4に示す。
[実施例2]
コーティング剤3の吹付塗装に用いたスプレーガンの吹付口の直径を0.5mmとした以外は、実施例1と同様にしてコーティング膜1を得た。評価結果を図4に示す。
コーティング剤3の吹付塗装に用いたスプレーガンの吹付口の直径を0.5mmとした以外は、実施例1と同様にしてコーティング膜1を得た。評価結果を図4に示す。
[実施例3]
コーティング剤3の組成を変更した以外は、実施例1と同様にしてコーティング膜1を得た。具体的には、コーティング剤3中の溶剤系酸変性塩素化ポリオレフィン溶液スーパークロン(R)930の配合率を20%、溶媒であるトルエンの配合率を77%にした以外は、実施例1と同様にしてコーティング剤3を作製した。評価結果を図4に示す。
コーティング剤3の組成を変更した以外は、実施例1と同様にしてコーティング膜1を得た。具体的には、コーティング剤3中の溶剤系酸変性塩素化ポリオレフィン溶液スーパークロン(R)930の配合率を20%、溶媒であるトルエンの配合率を77%にした以外は、実施例1と同様にしてコーティング剤3を作製した。評価結果を図4に示す。
[実施例4]
コーティング剤3の吹付塗装に用いたスプレーガンの吹付口の直径を0.5mmとした以外は、実施例3と同様にしてコーティング膜1を得た。評価結果を図4に示す。
コーティング剤3の吹付塗装に用いたスプレーガンの吹付口の直径を0.5mmとした以外は、実施例3と同様にしてコーティング膜1を得た。評価結果を図4に示す。
[実施例5]
コーティング剤3の吹付塗装に用いたスプレーガンの吹付口の直径を0.8mmとした以外は、実施例3と同様にしてコーティング膜1を得た。評価結果を図4に示す。
コーティング剤3の吹付塗装に用いたスプレーガンの吹付口の直径を0.8mmとした以外は、実施例3と同様にしてコーティング膜1を得た。評価結果を図4に示す。
[実施例6]
コーティング剤3に分散させる疎水性シリカ粒子を、RX50(日本アエロジル株式会社製、平均粒子径40nm、真比重2.2g/cm3、コーティング剤3中の配合率3.0%)とした以外は、実施例1と同様にしてコーティング膜1を得た。評価結果を図4に示す。
コーティング剤3に分散させる疎水性シリカ粒子を、RX50(日本アエロジル株式会社製、平均粒子径40nm、真比重2.2g/cm3、コーティング剤3中の配合率3.0%)とした以外は、実施例1と同様にしてコーティング膜1を得た。評価結果を図4に示す。
[実施例7]
コーティング剤3に分散させる疎水性シリカ粒子を、RX50(日本アエロジル株式会社製、平均粒子径40nm、真比重2.2g/cm3、コーティング剤3中の配合率3.0%)とした以外は、実施例2と同様にしてコーティング膜1を得た。評価結果を図4に示す。
コーティング剤3に分散させる疎水性シリカ粒子を、RX50(日本アエロジル株式会社製、平均粒子径40nm、真比重2.2g/cm3、コーティング剤3中の配合率3.0%)とした以外は、実施例2と同様にしてコーティング膜1を得た。評価結果を図4に示す。
[実施例8]
コーティング剤3に分散させる疎水性シリカ粒子を、RX50(日本アエロジル株式会社製、平均粒子径40nm、真比重2.2g/cm3、コーティング剤3中の配合率3.0%)とした以外は、実施例3と同様にしてコーティング膜1を得た。評価結果を図4に示す。
コーティング剤3に分散させる疎水性シリカ粒子を、RX50(日本アエロジル株式会社製、平均粒子径40nm、真比重2.2g/cm3、コーティング剤3中の配合率3.0%)とした以外は、実施例3と同様にしてコーティング膜1を得た。評価結果を図4に示す。
[実施例9]
コーティング剤3に分散させる疎水性シリカ粒子を、RX50(日本アエロジル株式会社製、平均粒子径40nm、真比重2.2g/cm3、コーティング剤3中の配合率3.0%)とした以外は、実施例4と同様にしてコーティング膜1を得た。評価結果を図4に示す。
コーティング剤3に分散させる疎水性シリカ粒子を、RX50(日本アエロジル株式会社製、平均粒子径40nm、真比重2.2g/cm3、コーティング剤3中の配合率3.0%)とした以外は、実施例4と同様にしてコーティング膜1を得た。評価結果を図4に示す。
[比較例1]
疎水性微粒子105として用いた疎水性シリカ粒子RX300(日本アエロジル株式会社製、平均粒子径7nm、真比重2.2g/cm3、配合率3.0%)をエタノール(配合率40%)及び水(配合率57%)を混合した溶媒中に分散させ、コーティング剤103とした。作製したコーティング剤103を吹付口(ノズル径)の直径が0.3mmのスプレーガンを用いて、被塗装物110の表面に吹付塗装し、25℃(常温)で5分風乾乾燥させた。乾燥により溶媒を揮発させ、コーティング膜101を得た。得られたコーティング膜101の断面の模式図を図6に示す。また、評価結果を図5に示す。なお、コーティング膜101は、図6に示すように、疎水性微粒子105が積み重なっている場合だけでなく、疎水性微粒子105が単層である場合も含む。
疎水性微粒子105として用いた疎水性シリカ粒子RX300(日本アエロジル株式会社製、平均粒子径7nm、真比重2.2g/cm3、配合率3.0%)をエタノール(配合率40%)及び水(配合率57%)を混合した溶媒中に分散させ、コーティング剤103とした。作製したコーティング剤103を吹付口(ノズル径)の直径が0.3mmのスプレーガンを用いて、被塗装物110の表面に吹付塗装し、25℃(常温)で5分風乾乾燥させた。乾燥により溶媒を揮発させ、コーティング膜101を得た。得られたコーティング膜101の断面の模式図を図6に示す。また、評価結果を図5に示す。なお、コーティング膜101は、図6に示すように、疎水性微粒子105が積み重なっている場合だけでなく、疎水性微粒子105が単層である場合も含む。
[比較例2]
疎水性シリカ粒子RX300(日本アエロジル株式会社製、平均粒子径7nm、配合率3.0%)及びバインダー107として用いたフッ素樹脂溶液LF800(AGC株式会社製、固形分60%、ミネラルスピリット及びキシレン等40%、配合率20%)をトルエン(配合率77%)溶媒中に分散、溶解させてコーティング剤103とした。作製したコーティング剤103を、吹付口(ノズル径)の直径が0.3mmのスプレーガンで被塗装物110の表面に吹付塗装し、25℃(常温)で5分風乾乾燥させた。乾燥により溶媒を揮発させ、コーティング膜201を得た。得られたコーティング膜201の断面の模式図を図7に示す。つまり、フッ素樹脂をバインダー成分としたコーティング膜201を得た。また、評価結果を図5に示す。
疎水性シリカ粒子RX300(日本アエロジル株式会社製、平均粒子径7nm、配合率3.0%)及びバインダー107として用いたフッ素樹脂溶液LF800(AGC株式会社製、固形分60%、ミネラルスピリット及びキシレン等40%、配合率20%)をトルエン(配合率77%)溶媒中に分散、溶解させてコーティング剤103とした。作製したコーティング剤103を、吹付口(ノズル径)の直径が0.3mmのスプレーガンで被塗装物110の表面に吹付塗装し、25℃(常温)で5分風乾乾燥させた。乾燥により溶媒を揮発させ、コーティング膜201を得た。得られたコーティング膜201の断面の模式図を図7に示す。つまり、フッ素樹脂をバインダー成分としたコーティング膜201を得た。また、評価結果を図5に示す。
[比較例3]
疎水性シリカ粒子RX300(日本アエロジル株式会社製、平均粒子径7nm、配合率3.0%)及びバインダー107として用いた塩素化ポリオレフィン水性エマルションE-480T(日本製紙株式会社製、固形分30%、配合率10%)を、溶媒として用いたエタノール(配合率40%)及び水(配合率47%)に分散及び溶解させ、コーティング剤103とした。吹付口(ノズル径)の直径が0.3mmのスプレーガンで被塗装物110の表面に吹付塗装し、25℃(常温)で5分風乾乾燥させた。乾燥により溶媒を揮発させ、コーティング膜201を得た。得られたコーティング膜201の断面の模式図を図7に示す。つまり、塩素化ポリオレフィン水性エマルションをバインダー成分としたコーティング膜201を得た。また、評価結果を図5に示す。なお、コーティング膜201は、図7に示すように、疎水性微粒子105が単層である場合だけでなく、疎水性微粒子105が積み重なり積層している場合も含む。
疎水性シリカ粒子RX300(日本アエロジル株式会社製、平均粒子径7nm、配合率3.0%)及びバインダー107として用いた塩素化ポリオレフィン水性エマルションE-480T(日本製紙株式会社製、固形分30%、配合率10%)を、溶媒として用いたエタノール(配合率40%)及び水(配合率47%)に分散及び溶解させ、コーティング剤103とした。吹付口(ノズル径)の直径が0.3mmのスプレーガンで被塗装物110の表面に吹付塗装し、25℃(常温)で5分風乾乾燥させた。乾燥により溶媒を揮発させ、コーティング膜201を得た。得られたコーティング膜201の断面の模式図を図7に示す。つまり、塩素化ポリオレフィン水性エマルションをバインダー成分としたコーティング膜201を得た。また、評価結果を図5に示す。なお、コーティング膜201は、図7に示すように、疎水性微粒子105が単層である場合だけでなく、疎水性微粒子105が積み重なり積層している場合も含む。
[比較例4]
コーティング剤103の吹付塗装に用いたスプレーガンの吹付口の直径を1.5mmとした以外は、実施例1と同様にしてコーティング膜201を得た。得られたコーティング膜201の断面の模式図を図7に示す。また、評価結果を図5に示す。
コーティング剤103の吹付塗装に用いたスプレーガンの吹付口の直径を1.5mmとした以外は、実施例1と同様にしてコーティング膜201を得た。得られたコーティング膜201の断面の模式図を図7に示す。また、評価結果を図5に示す。
[比較例5]
コーティング剤103中の溶剤系酸変性塩素化ポリオレフィン溶液の配合率を30%、トルエンの配合率を67%とした以外は、実施例1と同様にしてコーティング膜201を得た。得られたコーティング膜201の断面の模式図を図7に示す。また、評価結果を図5に示す。
コーティング剤103中の溶剤系酸変性塩素化ポリオレフィン溶液の配合率を30%、トルエンの配合率を67%とした以外は、実施例1と同様にしてコーティング膜201を得た。得られたコーティング膜201の断面の模式図を図7に示す。また、評価結果を図5に示す。
次に、実施例及び比較例におけるコーティング膜の評価結果について説明する。
[比較例の評価]
図4からわかるように、実施例1~9のコーティング膜1は、耐擦過性及び撥水性の両方が評価基準を満たした。一方、図5に示した通り、比較例1~4では、コーティング膜101及びコーティング膜201のいずれにおいても、耐擦過性及び撥水性の両方がともに必要とされる基準を満たしたコーティング膜はなかった。その理由を具体的に検討する。
図4からわかるように、実施例1~9のコーティング膜1は、耐擦過性及び撥水性の両方が評価基準を満たした。一方、図5に示した通り、比較例1~4では、コーティング膜101及びコーティング膜201のいずれにおいても、耐擦過性及び撥水性の両方がともに必要とされる基準を満たしたコーティング膜はなかった。その理由を具体的に検討する。
比較例1では、疎水性シリカ粒子のみを被塗装物110の表面に吹き付けた。その結果、図6に示すように、被塗装物110上に疎水性微粒子105が付着したコーティング膜101を得た。コーティング膜101では、疎水性微粒子105全体が露出しているため、接触角は167℃であり、撥水性も「◎」であり、撥水性能については良好な結果を示した。しかし、実施例のように接着剤として機能するバインダー7に相当する成分を含まないため、疎水性シリカ粒子が被塗装物110の表面にとどまることができず、耐擦過性は「×」であった。この結果から、撥水性及び耐擦過性の両方を有するコーティング膜1とするためには、バインダー7が必要であるといえる。
そこで、比較例2及び比較例3では、バインダー7に相当する成分(バインダー成分)としてフッ素樹脂或いは塩素化ポリオレフィン水性エマルションを用いた。その結果、図7に示すように、被塗装物110上に付着した疎水性微粒子105が被覆膜207によって覆われたコーティング膜201を得た。比較例2において、耐擦過性は「〇」であり、接触角は134°であったものの、撥水性が「×」となった。また、比較例3において、耐擦過性は「×」であり、接触角は164°であったものの、撥水性が「△」となった。これは、フッ素樹脂のトルエンに対する溶解性が、塩素化ポリオレフィンほど高くなく、疎水性微粒子105がバインダー成分に被覆された状態(図2の(A)の状態)で被塗装物110上に吹付られたためと推察される。この状態で溶媒が揮発すると、疎水性シリカ粒子の表面をバインダー成分が覆い、被覆膜207が形成されるため、コーティング膜201の撥水性が低くなると考えられる。また、比較例3でバインダー成分として用いた塩素化ポリオレフィン水性エマルションには、界面活性剤が含まれる。両親媒性である界面活性剤がコーティング膜1の表面に存在することにより、実際の撥水性は低下する。つまり、比較例3において、耐擦過性を向上させようとして、塩素化ポリオレフィン水性エマルションの配合率を高めると、撥水性がさらに低下してしまう。
比較例4では、吹付口の直径が1.5mmのスプレーガンを吹付塗装に用いた。その結果、図7に示すように、被塗装物110上に付着した疎水性微粒子105が被覆膜207によって覆われたコーティング膜201を得た。比較例4では、耐擦過性は「◎」であった。これは、吹付口の直径が大きいため、吹付口から吹出されるコーティング剤103の液滴が大きく、疎水性微粒子105がバインダー成分に被覆された状態(図2の(A)の状態)で被塗装物110上に吹付られたためと推察される。この状態で溶媒が揮発することで、疎水性微粒子5の表面がバインダー成分に被覆されたまま、被塗装物110の表面に接着されるため、耐擦過性が「◎」になったと考えられる。また、接触角は115°であったものの、撥水性は「△」であった。これも上記の理由と同様に、疎水性微粒子105がバインダー成分に被覆されており、疎水性微粒子105の表面の露出率が低いためである。
比較例5では、バインダー成分である酸変性塩素化ポリオレフィンのコーティング剤103中の配合率を30%とした。その結果、図7に示すように、被塗装物110上に付着した疎水性微粒子105が被覆膜207によって覆われたコーティング膜201を得た。結果として、接触角は164°であり、耐擦過性は、「◎」となった。しかし、撥水性は「△」であり、基準を同時に満たすことはできなかった。この原因として、酸変性塩素化ポリオレフィンの配合率が挙げられる。バインダーとして作用する酸変性塩素化ポリオレフィンが、コーティング剤103中において高い配合率を有する場合、被塗装物110上で疎水性微粒子105の表面の大部分を被覆してしまう。そのため、疎水性シリカ粒子表面の露出率が低く、高い撥水性が得られなかったといえる。
[実施例の評価]
実施例1では、疎水性微粒子5として疎水性シリカ粒子を用いた。また、バインダー7として酸変性塩素化ポリオレフィンを用いた。疎水性シリカ粒子及び酸変性塩素化ポリオレフィンを、溶媒であるトルエンによって溶解させ、コーティング剤3とした。作製したコーティング剤3を吹付口の直径が0.3mmのスプレーガンを用いて被塗装物10上に塗装して乾燥させ、コーティング膜1を形成した。その結果、接触角は164°であった。また、耐擦過性、撥水性、及び擦り試験後撥水性は、いずれも「〇」であった。この理由について検討する。0.3mmの吹付口を有するスプレーガンにより、コーティング剤3を被塗装物10に吹付塗装することにより、吹付口から吹出された際の速度によって、コーティング剤3の溶媒が揮発し、疎水性微粒子5とバインダー7とが分離しやすくなる。吹付塗装によれば、疎水性微粒子5は、表面が露出した状態で被塗装物10に塗装されるため、良好な撥水性が得られる。したがって、実施例1では、高い耐擦過性と高い撥水性とが両立したと推察される。
実施例1では、疎水性微粒子5として疎水性シリカ粒子を用いた。また、バインダー7として酸変性塩素化ポリオレフィンを用いた。疎水性シリカ粒子及び酸変性塩素化ポリオレフィンを、溶媒であるトルエンによって溶解させ、コーティング剤3とした。作製したコーティング剤3を吹付口の直径が0.3mmのスプレーガンを用いて被塗装物10上に塗装して乾燥させ、コーティング膜1を形成した。その結果、接触角は164°であった。また、耐擦過性、撥水性、及び擦り試験後撥水性は、いずれも「〇」であった。この理由について検討する。0.3mmの吹付口を有するスプレーガンにより、コーティング剤3を被塗装物10に吹付塗装することにより、吹付口から吹出された際の速度によって、コーティング剤3の溶媒が揮発し、疎水性微粒子5とバインダー7とが分離しやすくなる。吹付塗装によれば、疎水性微粒子5は、表面が露出した状態で被塗装物10に塗装されるため、良好な撥水性が得られる。したがって、実施例1では、高い耐擦過性と高い撥水性とが両立したと推察される。
また、実施例2では、実施例1と比較して、吹付口の直径が0.5mmであり、直径の大きいスプレーガンを用いた。その結果、接触角は164°であった。また、耐擦過性は「◎」、撥水性及び擦り試験後撥水性は「〇」となった。これは、実施例1と同様に、吹付塗装によるものである。具体的には、吹付口から吹出された際の速度によって、コーティング剤3の溶媒が揮発し、疎水性微粒子5とバインダー7とが分離しやすくなり、疎水性微粒子5は、表面が露出した状態で被塗装物10に塗装されるためと推察される。この結果から、0.5mmの吹付口を有するスプレーガンを用いた吹出塗装によっても、高い耐擦過性及び高い撥水性を有するコーティング膜1を形成できるといえる。
さらに、実施例3では、実施例1の条件から、コーティング剤3の組成を変更した。具体的には、酸変性塩素化ポリオレフィンの配合率を20%に上昇させ、これに応じ、トルエンの配合率を77%とした。その結果、接触角は実施例1と変わらず、164°であった。また、撥水性及び擦り試験後撥水性は実施例1と変わらず、「〇」となった。一方、耐擦過性については、「◎」となった。耐擦過性が向上した理由については、バインダー7である酸変性塩素化ポリオレフィンの配合率を上昇させたためであると推察される。具体的な理由を述べる。バインダー7である酸変性塩素化ポリオレフィンの割合が増加すると、疎水性シリカ粒子あたりのバインダーの割合が上昇するため、疎水性シリカ粒子の周囲に存在するバインダー量が増加する。そのため、疎水性シリカ粒子同士もしくは疎水性シリカ粒子及び被塗装物10間の接着性が向上する。したがって、耐擦過性が向上したと推察される。
しかし、耐擦過性の向上のために、バインダー7の割合を過度に上昇させると、撥水性を損なう可能性がある。前述した比較例4は、実施例3よりも酸変性塩素化ポリオレフィンの割合を10%上昇させ、30%とした。その結果、耐擦過性は「◎」であったものの、撥水性が「△」となった。つまり、撥水性を保ちつつ耐擦過性を向上させるためには、疎水性微粒子5の表面を被覆しきらない量のバインダー7を用いることが必要である。
実施例4では、実施例3と比較して、吹付口の直径が0.5mmであり、直径の大きいスプレーガンを用いた。その結果、接触角は126°であった。また、実施例3と同様に、耐擦過性は「◎」、撥水性及び擦り試験後撥水性は「〇」となり、実施例1と比較し、向上している。これは、実施例3と同様に、バインダー7の配合率によるものである。具体的には、実施例1と比較し、疎水性シリカ粒子あたりのバインダーの割合が上昇し、疎水性シリカ粒子の周囲に存在するバインダー量が増加する。そのため、疎水性シリカ粒子同士もしくは疎水性シリカ粒子及び被塗装物10間の接着性が向上し、耐擦過性が向上したと推察される。この結果から、バインダー7の配合率を20%としたコーティング剤3を、0.5mmの吹付口を有するスプレーガンを用いて吹出塗装により被塗装物10に塗装しても、高い耐擦過性及び高い撥水性を有するコーティング膜1を形成できるといえる。
実施例5では、吹付口の直径が0.8mmであり、実施例3及び実施例4と比較して、更に直径の大きいスプレーガンを用いた。その結果、接触角は164°であった。また、実施例3及び実施例4と同様に、耐擦過性は「◎」、撥水性及び擦り試験後撥水性は「〇」となり、実施例1と比較し、向上している。これは、実施例3及び実施例4と同様に、バインダー7の配合率によるものである。具体的には、実施例1と比較し、疎水性シリカ粒子あたりのバインダーの割合が上昇し、疎水性シリカ粒子の周囲に存在するバインダー量が増加する。そのため、疎水性シリカ粒子同士もしくは疎水性シリカ粒子及び被塗装物10間の接着性が向上し、耐擦過性が向上したと推察される。この結果から、バインダー7の配合率を20%としたコーティング剤3を、0.8mmの吹付口を有するスプレーガンを用いて吹出塗装により被塗装物10に塗装しても、高い耐擦過性及び高い撥水性を有するコーティング膜1を形成できるといえる。
実施例6~9では、疎水性シリカ粒子の粒子径を40nmとした以外は、それぞれ実施例1~4と同じ条件でコーティング膜1を形成した。評価結果は、実施例6における接触角が117°、実施例7における接触角が116°、実施例8における接触角が104°、実施例9における接触角が106°であった。実施例6~9のいずれも、耐擦過性については「◎」、撥水性及び擦り試験後撥水性については「〇」となった。この結果から、疎水性シリカ粒子の平均粒子径が40nmであっても、平均粒子径が7nmの場合と同様に、高い耐擦過性及び高い撥水性を有するコーティング膜1を形成することができる。
以上、本実施の形態1に係るコーティング膜1によれば、以下の効果を享受することができる。
(1)コーティング膜1は、被塗装物10に撥水性を付与する複数の疎水性微粒子5と、疎水性微粒子5を被塗装物10に接着する熱可塑性樹脂と、を備える。そして、熱可塑性樹脂は、疎水性微粒子の表面の一部に形成され、疎水性微粒子同士及び疎水性微粒子と被塗装物との間を接着するようにした。
こうした構成によれば、熱可塑性樹脂によって、疎水性微粒子5同士及び疎水性微粒子5と被塗装物10とが接着されることにより、撥水性を有する疎水性微粒子5が被塗装物10に定着する。また、疎水性微粒子5の表面は、熱可塑性樹脂が形成されている一部以外は露出している。そのため、疎水性微粒子5が有する撥水性の阻害を抑制し、かつ、耐擦過性を向上させたコーティング膜1とすることができる。
(2)コーティング膜1では、熱可塑性樹脂は、塩素化ポリオレフィンを含むようにした。このようにすることで、熱可塑性樹脂として、有機溶剤に対して高い溶解性を有する塩素化ポリオレフィンを用いることができる。そのため、各疎水性微粒子5に対して熱可塑性樹脂が均等に付着しやすく、耐擦過性の高いコーティング膜1とすることができる。
(3)コーティング膜1では、疎水性微粒子5は、疎水性シリカ粒子であるようにした。これにより、高い撥水性を有する疎水性シリカ粒子の表面が露出する。そのため、撥水性の高いコーティング膜1とすることができる。
(4)コーティング膜1の形成方法では、熱可塑性樹脂、疎水性微粒子5、及び溶媒を含むコーティング剤3を、吹付塗装により、疎水性微粒子5の少なくとも一部の表面が露出した状態で、被塗装物10表面に付着させる第一工程と、コーティング剤3を乾燥させる第二工程と、を行い、熱可塑性樹脂が、疎水性微粒子5の表面の一部に形成され、疎水性微粒子5同士及び疎水性微粒子5と被塗装物10との間を接着するコーティング膜を形成するようにした。これにより、被塗装物10表面に対して、高い吹出速度をもってコーティング剤3を塗装するため、疎水性微粒子5の表面を露出させた状態で被塗装物10に塗布することができる。なぜなら、吹付中に溶媒が揮発しやすくなり、被塗装物上で熱可塑性樹脂が疎水性微粒子を被覆する可能性を低減できるからである。つまり、熱可塑性樹脂によって、疎水性微粒子5同士及び疎水性微粒子5と被塗装物10との接着性を保ちつつ、疎水性微粒子5の撥水性を損なうことなく、疎水性微粒子5を固定化可能となり、耐擦過性及び撥水性を兼ね備えたコーティング膜1を形成することができる。
(5)コーティング膜1の形成方法では、吹付塗装を行う吹付装置の吹付口の直径が0.2mm以上0.8mm以下であるようにした。これにより、平均直径の小さい液滴としてコーティング剤3を吹き付けることができ、より溶媒が揮発しやすくなる。したがって、より迅速にコーティング膜1を形成することができる。
(6)コーティング膜1の形成方法において、第二工程では、熱可塑性樹脂の軟化点未満の温度でコーティング剤3を乾燥させるようにした。これにより、熱可塑性樹脂の軟化を抑制し、疎水性微粒子5の表面が覆われることを抑制できる。そのため、撥水性の低下を抑制する形成方法とすることができる。
以上、本発明に関して実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されているところである。
本開示に係るコーティング膜は、従来のコーティング膜と比較し、疎水性微粒子が有する撥水性の阻害を抑制し、かつ、耐擦過性を向上させたという特徴をもつ。そのため、換気扇の羽根などの撥水性及び耐擦過性が必要とされる製品の部材をコーティングするコーティング膜として有用である。
1 コーティング膜
3 コーティング剤
5 疎水性微粒子
7 バインダー
10 被塗装物
101 コーティング膜
103 コーティング剤
105 疎水性微粒子
107 バインダー
110 被塗装物
201 コーティング膜
207 被覆膜
3 コーティング剤
5 疎水性微粒子
7 バインダー
10 被塗装物
101 コーティング膜
103 コーティング剤
105 疎水性微粒子
107 バインダー
110 被塗装物
201 コーティング膜
207 被覆膜
Claims (6)
- 被塗装物に撥水性を付与する複数の疎水性微粒子と、
前記疎水性微粒子を前記被塗装物に接着する熱可塑性樹脂と、
を備え、
前記熱可塑性樹脂は、前記疎水性微粒子の表面の一部に形成され、前記疎水性微粒子同士、及び、前記疎水性微粒子と前記被塗装物との間を接着することを特徴とするコーティング膜。 - 前記熱可塑性樹脂は、塩素化ポリオレフィンを含むことを特徴とする請求項1に記載のコーティング膜。
- 前記疎水性微粒子は、疎水性シリカ粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載のコーティング膜。
- 熱可塑性樹脂、疎水性微粒子、及び溶媒を含むコーティング剤を、吹付塗装により、前記疎水性微粒子の少なくとも一部の表面が露出した状態で、前記被塗装物表面に付着させる第一工程と、
前記コーティング剤を乾燥させる第二工程と、
を行い、前記熱可塑性樹脂が、前記疎水性微粒子の表面の一部に形成され、前記疎水性微粒子同士及び前記疎水性微粒子と前記被塗装物との間を接着することを特徴とするコーティング膜の形成方法。 - 前記吹付塗装を行う吹付装置の吹付口の直径が0.2mm以上0.8mm以下であることを特徴とする請求項4に記載のコーティング膜の形成方法。
- 前記第二工程では、前記熱可塑性樹脂の軟化点未満の温度で前記コーティング剤を乾燥させることを特徴とする請求項4または5に記載のコーティング膜の形成方法。
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---|---|---|---|
JP2021116804A JP2023012982A (ja) | 2021-07-15 | 2021-07-15 | コーティング膜及びコーティング膜の形成方法 |
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2021
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