JP2023009798A - 板厚の異なる側壁を備えた角筒容器及びその製造方法 - Google Patents

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Masato Kobayashi
勝広 大野
Katsuhiro Ono
正登 白川
Masato Shirakawa
崇 本田
Takashi Honda
智彦 村木
Tomohiko Muraki
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Abstract

【課題】パンチとダイスとの組合せを少なくしながら、薄いブランクから成形でき、かつ、一方の側壁の板厚を他方の側壁の板厚より厚くした角筒容器の製造方法を提供する。【解決手段】角筒容器の製造方法は、ブランクに絞り加工を施して第1中間容器体を成形する第1成形工程S2と、第1中間容器体に再絞り加工及びしごき加工を施して第2中間容器体を成形する第2成形工程S3とを含む。第2成形工程S3では、第2中間容器体に更に再絞り加工及びしごき加工を施す繰り返しの工程を含む。第2成形工程S3では、最初又は繰り返しの工程で使用されるパンチと被加工物との間に板押さえを挿入し、該板押さえとダイスとの間にクリアランスを調整・保持する工程S31を含み、かつ、被加工物の径方向の移動を規制しつつ、被加工物の開口端に対して軸方向に圧縮する押圧工程S32を含む。【選択図】図4

Description

本発明は、例えば、電池ケースに使用される角筒容器の製造方法に関し、より具体的には、最終製品又は中間成形品において、短辺側壁の板厚と長辺側壁の板厚とが異なる角筒容器の製造方法に関するものである。
(角筒容器の需要)
リチウムイオン二次電池は携帯端末等の情報通信機器の電源として広く使用されている。さらに、地球温暖化防止対策の一つとして電気自動車の普及が要望される中、これに搭載可能な大型の二次電池の需要拡大も見込まれている。とりわけ、電気自動車用二次電池を収納するケースとしては深底で大型の金属製角筒容器が必要とされている。
(課題1.深底の角筒容器の成形に必要な工程数)
金属製角筒容器を成形するには、通常、多工程の絞り・しごき加工が必要となる。つまり、素材(ブランク)形状から最終容器形状に近づけるために、工程毎に形状の異なる一対のパンチとダイスとを備えた成形金型が必要となり、最終容器形状が深底に(高さが大きく)なればなるほど、実施すべき工程数つまり用意すべき成形金型が増加してしまう。
(課題2.素材の重量化やロス)
また、多工程を要する従来の絞り・しごき加工では、最終製品形状の最終板厚を得るために最終板厚よりもかなり厚い元板厚を有した重量のあるブランクが必要となる。これは材料選択肢の減少や材料費の高騰を意味する。例えば、ブランクのうち最終製品形状に使用されない端部(ロス)は必ず発生するものであるが、板厚が増えれば増える程、端部も増加し、材料及び材料費のロスも大きくなる。
(課題3.板厚の異なる角筒容器の需要)
また、最近では、一方の側壁の板厚と他方の側壁の板厚とが異なった角筒容器の需要も増加している。例えば、電池ケースの重量を抑えつつ機械的強度を高めるために短辺側壁の板厚を長辺側壁のそれよりも厚くすることが要望されている。従来技術を使用してこの要望を叶えるには、より薄くすべき側壁に追加の絞り・しごき加工が必要となり、全ての側壁において均一な板厚を有した角筒容器を成形する場合よりも更に多くの工程を要してしまうことが予想される。
(課題4.シワや割れや板厚バラツキの抑制)
角筒容器より形状が単純で成形も容易な円筒容器の絞り加工であっても、被加工物内の微小要素は、場所によって軸方向や径方向に伸び縮みするために、成形中にシワや割れが発生し易い。さらに、被加工物を加工する際にある一つの側壁部の板厚に注目すると、パンチ(底面)に近い肩部(パンチ肩部)では薄くなり、ダイスに近い(底面から離れた)肩部(ダイス肩部)では厚くなることが避けられない。このように、シワや割れが起こりにくく、各面の側壁部においては板厚の均一化が図られる角筒容器の成形方法が要望されている。
(課題1や課題2に関連した先行技術)
課題1に関連して、工程数の削減を目的とした角筒容器の製造方法が特許文献1に開示されている。しかしながら、最終加工製品の板厚に対して2.7倍~3.5倍もの大きな板厚を有したブランクを準備する必要があるため、課題2は全く解決されない。また、特許文献1は、短辺側と長辺側とで板厚が異なる側壁を有した角筒容器を製造する技術でもない。
(課題3に関連した先行技術)
課題3に関連して、短辺側壁の板厚を長辺側壁の板厚より厚くした角形電池缶の製造方法が特許文献2に開示されている。この先行技術においては、ブランクから略楕円形の第1中間容器体を得る第1の工程と、第1中間容器体の横断面形状よりも短径/長径の比が小さい横断面形状を有した第2中間容器体を成形する第2の工程と、この第2中間容器体に絞り加工としごき加工とを組み合わせたDI加工を連続的に一挙に行う第3の工程とが必要とされている。特許文献2では、複数の絞り加工を実施した後、最後にしごき加工を実施する製造装置が開示されている。
(パンチとダイスとの組合せ数)
特許文献2に開示の製造方法は、一見すると、第1~第3の工程だけの簡素な技術のようにみえる。しかしながら、絞り加工(第1の工程)のすぐ後にしごき加工を行うことはできず、板厚調整を目的としない再絞り加工(第2の工程)が必要となる。加えて、第2・第3の工程では、一つのパンチに対して多段(添付図面では各工程につき4段)のダイスが設けられている。よって、第1~第3の工程全てに要するパンチとダイスとの組合せ数は合計9段にもなっており、必ずしも簡素といえるものではない。
(調達するブランク)
また、特許文献2に開示の製造方法は、特許文献1と同様に、短辺側壁、長辺側壁のいずれに対する成形においても一工程前の板厚より成形後の板厚を徐々に薄くしながら成形する技術である。従って、ブランクは、最終製品形状において比較的厚くなった側の板厚よりも遥かに大きな元板厚を有したブランクを調達する必要がある。
(先行技術で実現可能な板厚差)
特許文献2に開示の実施例では、合計で9段のダイスを使用しても、最終製品の板厚差は0.02mm(=短辺側板厚0.17mm-長辺側板厚0.15mm)と僅かであり、これを最終的に薄くなった板厚(長辺側板厚0.15mm)と比較してみても約13%程度の割合に留まっている。そして、この僅かな板厚差の電池缶を得るにも、短辺側板厚に対して約2.35倍も大きい0.4mmの元板厚を有したブランクを調達する必要があることが判る。なお、この従来技術では、底部側壁はDI加工を受けないことから、底部の板厚は厚いままとなり、最終製品の重量が大きくなってしまう別の弊害も生じるであろう。
このように、従来技術を用いて、目標とする板厚差を更に増大させようとすれば、短辺側壁の板厚の増加に伴いブランクの元板厚も更に増加することになり、ブランク内の成形に使用されない端材(ロス)部分も元板厚の増加に比例して増加してしまう。これに対し、最終板厚(例えば、厚くすべき側壁の板厚)を、元板厚とほぼ変わらない厚みに維持し、又は、元板厚よりも却って厚くできる新規な角筒容器の成形技術を見出すことができれば、調達すべきブランクは極めて薄い板状素材で済むことになるだろう。
(板厚差の設け方及び必要なダイスの数)
なお、特許文献2に開示の先行技術により側壁毎に板厚差をつけるためには、薄くする側壁に対してしごき率が比較的大きな加工を施し、厚くする側壁に対してしごき率が比較的小さな加工を施す必要がある。より大きなしごき率で加工される一方の側壁には割れや切れが発生しやすくなる一方、より小さなしごき率で加工される他方の側壁では、成形後の板厚のバラツキが大きくなる。このように、一回(一段のダイス)で過剰に大きなしごき率の差を設定することはできないため、板厚差を増加するには、DI加工機にセットするダイス段数を多くするしかなく、上述のブランク材料のロスの他にも、装置に掛かる製造コストも大きくなる。
(課題4に関連した先行技術)
課題4に関連して、中間工程の焼鈍工程を省き、最終工程まで連続工程で再絞り・しごき加工することで、良好な形状性と側壁部板厚が均一なステンレス製角筒容器を成形する方法が特許文献3に開示されている。また、再絞り加工中のシワの抑制のため、被加工物とパンチとの間にパンチ外周を囲繞する筒状板押さえが開示されている。
ところが、特許文献3の技術は温間加工であり、ダイスやパンチをヒータ等で加熱する必要がある。このため製造装置が複雑となりコストアップとなる。さらに、この温間加工技術では加工の間中、被加工物や金型温度を一定に保つ必要があるため、他工程の再絞り・しごき加工を連続的かつ一挙に行わなければならず、工程の合間に成形を中断することはできない。
また、特許文献3の技術も、特許文献1,2と同様に、ブランクの元板厚から徐々に板厚を薄くしていく加工法であり、薄い素材をブランクに使用できないため、課題2を解決することはできない。そればかりか、特許文献3は、課題2の側壁間に大きな板厚差をつける技術については全く触れていない。
このように、いずれの従来の加工技術を使用し、又は、これらを組み合わせてみても、上述の課題1~4の全てを同時に解決することは困難であり、新規な角筒容器の成形技術が望まれている。
特開2019―166527号公報 特許第4119612号公報 特開2009―113059号公報
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、最終製品又は中間成形品において、側壁毎に板厚の異なった角筒容器(例えば、横断面形状の短辺側壁の板厚を長辺側壁の板厚より厚くした角筒容器)の製造方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、薄い板状ブランクからでも成形でき、かつ、成形に必要なパンチとダイスとの組合せを少なくしながら側壁間の板厚差を大きくすることができる角筒容器の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の末、従来の再絞り・しごき加工の際に被加工物のシワ抑制に使用されていた板押さえに着目し、この板押さえに被加工物の側壁を厚くするための機構も追加的に取り入れた上で、各側壁に対するしごき率を所定の範囲に調整すれば、上述の課題全てを一挙に解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
また、本発明者らは、中間成形品において各側壁の板厚に差を付けておいた上で、各側壁の板厚が揃うように更に追加の加工を施せば、従来の加工法よりも工程数を削減しつつ最終製品の板厚が同一の側壁を有した角筒容器を製造できることも見出した。
すなわち、本発明は、例えば、以下の構成・特徴を備えるものである。
(態様1)
板厚が異なる第1・第2側壁を備えた角筒容器の製造方法であって、
板状の金属製ブランクをワークとして用意する工程と、
前記ワークに絞り加工を行い、横断面形状が楕円形の容器体を成形する第1成形工程と、
第1成形工程を完了した前記ワークに再絞り加工及びしごき加工を同時に行い、成形直前の前記ワークの高さよりも大きな高さを有し、かつ、成形直前の前記ワークの前記横断面形状よりも短径/長径の比が小さい横断面形状を有する容器体を成形する第2成形工程と、
を含み、
第2成形工程では、成形された前記ワークに更に再絞り加工及びしごき加工を同時に施す繰り返しの工程を含み、
第2成形工程では、最初又は繰り返しの工程で使用されるパンチと前記ワークとの間に板押さえの本体部を挿入しながら前記パンチとダイスとの間にクリアランスを保持することで成形すべき前記ワークの径方向の移動を規制しつつ、前記板押さえの押込み部を用いて前記ワークの上部開口端に対して軸方向に圧縮力を付与する押圧工程を含み、
第2成形工程では、前記クリアランスのうち比較的厚くすべき第1側壁における第1クリアランスをCとし、比較的薄くすべき第2側壁における第2クリアランスをWとし、
成形直前の第1・第2側壁の板厚t,tとした場合、
(1)C<Cであり、
(2)0.65<C/t≦1.25
(3)0.65≦C/t≦1.00
の全ての条件を満たすよう設定する、
ことを特徴とする角筒容器の製造方法。
(態様2)
前記圧縮力は単位面積当たり使用する材料の降伏応力比で0.25~1.1であることを特徴とする態様1に記載の角筒容器の製造方法。
(態様3)
第2成形工程では、さらに、(4)0.2≦(C―C)/Cを満たすよう第1・第2クリアランスC,Cを設定する、
ことを特徴とする態様1又は2に記載の角筒容器の製造方法。
(態様4)
第2成形工程では、(2’)1.00<C/t≦1.25の範囲に入るよう第1クリアランスCを設定することで、成形直前の第1側壁の板厚tと比較して、成形直後の第1側壁の板厚t’を増加させつつ、
(3’)0.65≦C/t<1.00の範囲に入るよう第2クリアランスCを設定することで、成形直前の第2側壁の板厚tに対して、成形直後の前記板厚t’を減少させる、
ことを特徴とする態様1~3のいずれかに記載の角筒容器の製造方法。
(態様5)
第2成形工程の後に、第1・第2側壁の互いの板厚を揃えるように第1・第2側壁の少なくとも一方に対して再絞り加工及びしごき加工を実行する第3成形工程をさらに含む、
ことを特徴とする態様1~4のいずれかに記載の角筒容器の製造方法。
(態様6)
前記角筒容器の横断面形状が長方形であり、
第1側壁が短辺側壁であり、かつ、第2側壁が長辺側壁である、
ことを特徴とする態様1~5のいずれかに記載の角筒容器の製造方法。
(態様7)
前記角筒容器が電池ケース用である、
ことを特徴とする態様1~6のいずれかに記載の角筒容器の製造方法。
(態様8)
一枚の金属製ブランクから成形された角筒容器であって、
横断面形状が長方形であり、
前記長方形を構成する短辺を有した一対の第1側壁の板厚t’が、前記長方形を構成する長辺を有した一対の第2側壁の板厚t’よりも大きく、かつ、前記ブランクの元板厚tよりも大きく成形されている、
ことを特徴とする角筒容器。
(態様9)
第1・第2側壁の板厚t’,t’間の板厚差割合を(t’―t’)/t’とした場合、0.2≦(t’―t’)/t’である、
ことを特徴とする態様8に記載の角筒容器。
本発明の製造方法によれば、被加工物への再絞り加工及びしごき加工を含み、パンチと被加工物との間に挿入される板押さえが加工中の被加工物の径方向への変形を規制するだけでなく、被加工物の開口端に対して軸方向に圧縮する力を付与し続ける。これにより、一工程で少なくとも一方の側壁側のクリアランスにより多くの材料をより確実に導入できるため、当該側壁の板厚をブランクの元板厚とほぼ変わらない程度に維持できる。
さらに本発明の好適な態様によっては、厚くする側の側壁の板厚を、ブランクの元板厚より大きな寸法にすることも可能である。言い換えれば、最終製品又は中間成形品のうち比較的厚い側壁の板厚よりも小さな元板厚を有した薄板状素材を本発明のブランクとして利用することができる。この点は、当該分野の先行技術で達成されることの無かった画期的なブレークスルーである。
また、本発明の好適な態様にクリアランス比(C/C)を大きく取れば、一回の再絞り加工及びしごき加工で大きな板厚差を得ることができる。従って、最終目標の板厚差が大きかったとしても、先行技術に比べ、非常に少ない回数(ダイスとパンチの組合せ数)の加工で済む。
また、本発明の製造方法によれば、クリアランスが径方向にも軸方向にも規制されているため、従来技術の能力以上に、成形後の側壁表面上のシワや板厚のバラツキを抑制することができる。
本発明の製造方法の各工程における被加工物の形状の変化を示す。 ブランクの縦断面図及び本発明の各工程後の被加工物の横断面形状の変化を重畳的に示した図である。 本発明の製造方法で成形された角筒容器の断面構造を示した図である。 本発明の製造方法の各工程を示したフローチャートである。 本発明の製造方法に使用可能な第2成形装置(成形金型)を示した概略図である。 第2工程で使用される本発明の板押さえの構造を示した図である。 第2工程での各側壁における加工メカニズムを説明した図である。 (a)(b)ともに、従来技術及び本発明の加工能力(工程回数、各側壁の板厚の変化)の違いを説明するためのイメージ図である。 (a)は従来技術及び本発明の加工能力の違いを説明するためのイメージ図であり、(b)は実施例の成形装置を用いて加工した場合の各側壁における板厚の変化を示した実験結果である。 本発明の製造方法を用いて製造された試作品及び不良品の外観を示した図である。
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づき説明するが、本発明は、下記の具体的な実施態様に何等限定されるものではない。なお、各図において同一又は対応する部材には同一符号を用いる。
図1に、本発明の製造方法の各工程における被加工物W(以下、「ワーク」とも呼ぶ。)の形状を示す。図1の上段(a)の各図はワークWの平面を示したものであり、中段(b)の各図はワークW(の長辺側壁)の縦断面(対応する上段の平面図中のB-B線で破断した断面)であり、下段(c)の各図はワークW(の短辺側壁)の縦断面(対応する上段の平面図中のC-C線で破断した断面)である。
図1の最も左側列の図(図中、n=0)は成形前のワークW(つまり、ブランクBL)を示す。その直ぐ右側列の図(図中、n=1)は絞り加工(後述の第1成形工程S2)を施した後のワークW(W)を示す。左から3列目の図(図中、n=2)は最初の再絞り・しごき加工(後述の第2成形工程S3)を施した後のワークW(W)を示す。最も右側列の図(図中、n=3)は2回目の再絞り・しごき加工を施したワークW(W)を示す。
図2(a)はブランクBLを示した縦断面図であり、図2(b)は本発明の各工程を施した直後のワークWの横断面形状を重畳的に配置した図である。ここでnは工程数を示す。
(成形後の角筒容器)
図3は本発明の製造方法で成形された角筒容器SCの断面構造(より詳しくは、短辺側壁及び長辺側壁の断面)を示した図である。なお、図3(a)は最終成形後の角筒容器SCの内部が見えるように、第1・第2側壁SW,SWの一部を破断した斜視図である。図3(b)は図3(a)を図中矢印B方向から見た図であり、図3(c)は図3(a)を図中矢印C方向から見た図である。これらの図からも判るように、角筒容器SCは異なる板厚t’,t’を有した第1・第2側壁SW,SWを備えており、図示の例では、短辺側壁である第1側壁SWの板厚t’が長辺側壁である第2側壁SWの板厚t’よりも大きい。
(本発明の製造方法)
図4のフローチャートを参照しながら、本発明の製造方法の各工程について説明する。先ず、ワークWとして板状の金属製ブランクBLを用意する(工程S1)。この板状ブランクBLには、例えば、アルミニウムやステンレスなどを使用してもよいが、必ずしもこれらに限定されない。ブランクBLの板厚や形状は、最終製品形状からそれ以前の工程前の成形予定形状を徐々に求めていくことで、逆算的に導出・決定される。
(第1成形工程 絞り加工)
次に、このブランクBLに対して絞り加工を行い、横断面形状が楕円形の第1中間容器体Wを成形する(第1成形工程S2)。成形後の第1中間容器体Wの形状については、図1及び図2(b)中のn=1に示すワークWを参照されたい。この第1成形工程S2は、例えば、公知のプレス成形金型を用いてブランクBLから第1中間容器体Wを成形することができる。
(第2成形工程 再絞り加工及びしごき加工)
その後、第1中間容器体Wに再絞り加工としごき加工とを同時に行い、第1中間容器体Wの高さよりも大きな高さを有し、かつ、第1中間容器体Wの横断面形状よりも短径/長径の比が小さい横断面形状を有する第2中間容器体Wを成形する(第2成形工程S3)。この第2成形工程S3では、例えば、後述する本発明の第2成形装置1を用いてワークW(第1中間容器体W)から第2中間容器体Wに成形することができる。成形後の第2中間容器体Wの形状については、図1及び図2(b)中のn=2に示すワークW2を参照されたい。
(再絞り加工及びしごき加工の繰り返し)
なお、第2成形工程S3では、成形された第2中間容器体Wの寸法が目標寸法(例えば、後述する第3形成工程S4、リストライク工程S5やトリミング工程S6を開始可能な寸法(深絞り具合))に到達しているかどうかを判断する工程S3Bを含むことが好ましい。この目標寸法に到達していなければ、第2成形工程S3を再度施す繰り返しの工程を行う。一方、目標寸法に到達すれば、第2成形工程S3を終了し、次の工程S4に進む。
(クリアランスの調整・保持)
第2成形工程S3では、本発明独自のユニークな板押さえ2(図5,6も参照)を使用することに留意されたい。この板押さえ2は、最初又は繰り返しの工程で使用されるパンチ3とワークWとの間に挿入する本体部2aを有し、パンチ3(具体的には、パンチ胴部)の外周とダイス4の内周との間に各クリアランスC,Cを調整・保持する(工程S31)。
(径方向の変形の規制及び軸方向の押圧)
そして、この板押さえ2には、本体部2aの他に、図5,6に示すように、この本体部2aの外周側に押込み部2bも形成されている。この本体部2aを用いてワークWである第1中間容器体W(繰り返し工程の場合は、成形直前の第2中間容器体W)の径方向の移動(変形)を規制し、同時に押込み部2bを用いて該ワークWの少なくとも第1側壁SW(図示では双方の側壁SW,SW)の上端開口部Wに対して軸方向に圧縮力Fを付与する(押圧工程S32)。この圧縮力Fの付与により、成形後の各側壁SW,SWの板厚t’,t’は底部(パンチ肩部)から上端開口部Wに亘って均一化される。
(第2成形工程での成形条件)
より具体的には、上述のクリアランスC,Cのうち比較的厚くすべき第1側壁SWにおける第1クリアランスをCとし、比較的薄くすべき第2側壁SWにおける第2クリアランスをCとし、成形直前の第1・第2側壁SW,SWの板厚t,tとした場合、下記の条件(1)~(3)を満たすよう設定することを特徴とする。
(クリアランス差の付与)
(1)C<Cである。
,Cはともに成形後の第1・第2側壁SW,SWの板厚t’,t’となることから、この条件は、第2成形工程S3の各工程の成形後の第1側壁SWの板厚t’が、第2側壁SWの板厚t’より大きくなることを意味する。
(各側壁に対するしごき率の設定)
(2)0.65<C/t≦1.25であり、かつ、
(3)0.65≦C/t≦1.00である。
ここで、C/t(又はC/t)は第1側壁SW(又は第2側壁SW)における成形前の板厚t(又はt)に対する成形後の板厚t’(又はt’)の変形度合(つまり、しごき率)を示す。因みに、しごき率を0.65~1までの範囲に設定した場合は「比較的強いしごき」でワークWを加工することを意味し、しごき率を1~1.25の範囲に設定した場合は「比較的軽いしごき」でワークWを加工することを意味する。
(一方の側壁の板厚を増肉化し、他方の側壁の板厚を薄肉化する場合)
さらに、第1側壁SWの成形後の板厚t’を成形直前の板厚tより増肉化しつつ、他方の側壁SWの成形後の板厚t’を成形前の板厚tより薄肉化することも可能である。この成形加工を希望する場合は、下記の好適条件に設定する。
(2’)1.00<C/t≦1.25であり、かつ、
(3’)0.65≦C/t<1.00である。
この好適条件に設定することで、第1側壁SWでは「比較的軽いしごき」で加工されつつ圧縮力Fが付与されるため、成形後の板厚t’は成形前の板厚tより増加する。一方で、第2側壁SWは「比較的強いしごき」で加工されつつ圧縮力Fが付与されるため、成形後の板厚t’は成形前の板厚tより減少する。この好適条件を一度又は繰り返し実行することにより、第1側壁SWの成形後の板厚t’は、成形直前の板厚tだけでなく、成形開始時点のブランクBLの元板厚tよりも増加させることも可能となる。
(板厚差をつけながら、どちらの側の板厚も薄肉化する場合)
なお、各しごき率を0.65~1.00の範囲に設定した場合(但し、C<C)には、第1・第2側壁SW,SWのどちらにも比較的強いしごき加工が施されるため、どちらの側の板厚t’,t’も減肉化されるが、成形後の第1側壁SWの板厚t’は第2側壁SWの板厚t’に比べて減少割合は低いものとなる。
(板厚差の設定)
また、第2成形工程S3では、さらに、(4)0.2≦(C―C)/Cを満たすよう第1・第2クリアランスC,Cを設定することが好ましい。これにより、第2成形工程S3における1回の成形で、大きな板厚差(第1側壁SWの板厚t’-第2側壁SWの板厚t’)を確保できるようになるため、従来技術に比較して成形回数(つまり、パンチ3とダイス4の組合せ)を大幅に減らすことができる。
(押圧工程での圧縮力)
また、本発明の板押さえ2によりワークWに付与すべき軸方向の圧縮力Fは、ワークWの材料に依存する。従って、単位面積当たり使用する材料の降伏応力比で表現してみると、圧縮力Fは0.25~1.1であり、好ましくは、0.5~0.8である。なお、圧縮力Fが、この好適範囲の下限未満になると増肉の効果が充分に得られなくなり、一方、上限を超えると、図10(b)に示すように、ワークWの側壁SW,SWが座屈変形を起こす等の成形不良が生じるからである。例えば、ワークWの材料がアルミニウム合金の場合、その降伏応力(0.2%耐力)は100N/mであるため、板押さえ2からワークWへの単位面積当たりの実際の圧縮力Fとして25~110N/mを付与すればよいことになる。
(第2成形工程の終了)
第2成形工程S3の加工を一度又は繰り返し実行することにより、成形後の第2中間容器体W2の寸法が判断工程S3Bでの目標範囲内に入れば、第2成形工程S3を終了する。
(第3成形工程)
なお、本発明の方法によれば、必要に応じ、第2成形工程S3の後に、第1・第2側壁SW,SWの最終(成形後)の板厚を揃えるように第1・第2側壁SW,SWの少なくとも一方に対して後述する再絞り加工及びしごき加工を実行してもよい(第3成形工程S4)。例えば、第2成形工程S3にて増肉された第1側壁SWのみを本工程S4にて再絞り加工及びしごき加工を施し、その板厚t’を比較的薄い第2側壁SWの板厚t’と同一となるようしごき(減肉処理)を施しても良い。或いは、本工程S4にて、比較的厚い第1側壁SWに対してその板厚t’を大幅に減肉しつつ、比較的薄い第2側壁SWに対してその板厚t’を僅かに減肉することで、互いの板厚t’,t’が同一となるように再絞り加工及びしごき加工を実行してもよい。
(リストライク工程及びトリミング加工)
第2成形工程S3又は第3成形工程S4の終了後、ワークWの形状を整える工程を実行してもよい(リストライク工程S5)。さらなる仕上げとして、望ましくは、ワークWの端部(余分な部分)を切断除去する(トリミング工程S6)。なお、ワークWの上端開口部Wは、当該加工の間、板押さえ2により延び(変形)が規制され、目標の寸法精度が得られやすいため、トリミングされる材料ロスを極めて少なくできる。
(本発明の角筒容器を製造するための装置)
次に、本発明の角筒容器SCを製造するための装置について説明する。先ず、最初の絞り工程S2については、一対のパンチとダイスとを備えた公知のプレス成形金型(図示せず)を用いて、板状の金属製ブランクBLから横断面形状が略楕円形の有底中空容器体(第1中間容器体W)を成形する。
(第2成形工程又は第3成形工程を実施するための第2成形装置)
上述の第1成形工程(絞り工程)S2の後に実施される再絞り・しごき工程S3は、例えば、図5に示す第2成形装置(成形金型)1を用いて実施される。この成形金型1は、図1~図2で示すワークW,Wを成形する。この装置1の使用により、上述の第2成形工程S3が実行される。例えば、第1中間容器体Wの一方の側壁SWに対して「比較的軽いしごき」の範囲で再絞り・しごき加工が施されるのと同時に、他方の側壁SWに対して「比較的強いしごき」の範囲で再絞り・しごき加工が施される。また、ダイス4とパンチ3と板押さえ2との組合せを変更して該装置1に設置していけば、成形された第2中間容器体Wにその組合せの設置回数だけ、再絞り・しごき加工を繰り返し施すことが可能となる。なお、第2成形装置1を使って第3成形工程S4を実行することも可能である。
(第2成形装置の概略)
第2成形装置1は、大別すると上型10と下型11とから構成されている。上型10には上型板10aが設けられ、この上型板10aから下方に中実筒状のパンチ3が延びている。一方、下型11には下型板11aが設けられ、この下型板11aにはダイス4が設置され、上方に向かって延びている。ダイス4には、パンチ3とワークWとを受け入れる開口部5が中央に形成される。開口部5には、背圧バネ6によって付勢可能な背圧板7が収容されている。ワークWが所定位置まで下降すると背圧板7がワークW下面に当接して、加工中のワークWに上方の押上げ力(背圧力)を付与する。なお、上型10と下型11の構成を入れ替えてもよい。
(板押さえの構造)
上型10には更に、本発明の特徴的な板押さえ2が設置されていることに留意されたい。図5,6に示すように、板押さえ2は、ワークWとパンチ3との間に挿入可能な本体部2aと、本体部2aから外周方向に張り出した押込み部2bと、を備える。押込み部2bは別個独立に本体部2aに設けられてもよい。例えば、図5に示す例では、本体部2aには、上型板10aと本体部2aの上端とを連結した第1押圧バネ8aが設けられ、押込み部2bには上型板10aと押込み部2bの上面とを連結した第2押圧バネ8bが設けられている。
この実施例では、押込み部2bと本体部2aとは別個独立に移動しながら、夫々、ワークWの各部を押圧する。本体部2aは、下側に配置された先端部2aと、上側に配置された基端部2aとに分かれており、その中間付近に押込み部2bが本体部2aに移動可能に設けられている。
本体部2aの少なくとも先端部2aは、パンチ3の外周と、ワークWの内周との間の環状隙間Gに挿入可能な形状・寸法を備えており、第2成形工程S3の間、この本体部2aが環状隙間Gに挿入されることで、ワークWの内周側から該ワークWを確実に支持して、ワークWの各部でのシワや割れの発生を防止する。言い換えれば、本体部2aは、上記工程S3の間、径方向乃至周方向にワークWを支持・補強しているともいえよう。
これに対し、押込み部2bは、ワークWの上端開口部(上端面)Wに当接して該ワークWを押し込んでいく。つまり、押込み部2bは、上記工程S3の間、ワークWに対して上方向の変形(延び)を規制しながら、下(軸)方向へ圧縮力Fを付与しているのである。
なお、変形例として、押込み部2bが本体部2aに一体的に形成されていてもよい。この場合は、上型板10aと、押込み部2b(本体部2aでも良い)とを連結する押圧バネは別々にする必要は無く、一つでもよい。
このようなユニークな構成の板押さえ2を用いることにより、その本体部2aでもって、ダイス4とパンチ3と間のクリアランスC1,C2を通過するワークWの径方向の変形を確実に規制しつつ、同時に、その押込み部2bでもって、ワークWの上端開口部Wに圧縮力Fを付与することによりワークWを軸方向に押圧することが可能となる。
(加工メカニズム)
図7の各図を用いて、第2成形工程S3中の第1・第2側壁SW,SWへの加工メカニズムについて説明する。この例示では、第1側壁SWの板厚t’を成形前の板厚tより厚くし、第2側壁SWの板厚t’を成形前の板厚tより薄くする場合を説明する。なお、図7の各図に示す一点鎖線はパンチ3の中心線Oであり、パンチ3やその周辺部材は中心線Oに対して軸対称であるため、軸の一方側のみ図示している。
(成形前の第1側壁の状態)
図7(a)は第2成形工程S3での第1側壁SW(厚くする側壁)における加工メカニズムを説明した図である。左側及び右側の図は、夫々、成形前及び成形後のパンチ3及びダイス4を示す。図7(a)中に示す符号tは成形前の第1側壁SWの板厚であり、符号tはパンチ3の肩部で曲げられた成形直前の角部の板厚である。符号Cは、第1側壁SWのためのクリアランスである。なお、符号t’は成形後の第1側壁SWの板厚であり、符号t’は成形直後の角部の板厚である。
この段階では、前工程でもワークW(W)には絞り成形が施されており、その角部は変形度合が大きいため、t<tとなる。しかし、ワークW(第1側壁SW)は押込み部2bから絶えず圧縮力Fが付与され、該クリアランスC1に材料(肉)が集められ厚くなるため、クリアランスCを成形前の角部の板厚t3や成形前の板厚tよりも大きくするよう設定することができる(すなわち、C>t>t)。言い換えれば、「比較的軽いしごき」の範囲(しごき率)で第1側壁SWをしごいているといえる。
(成形後の第1側壁の状態)
上記設定条件で絞り・しごき加工を施せば、t<t<t’となる。クリアランスCは、第1側壁SWの成形後の板厚t’となるからであり(∵C=t’)、板厚t’を成形前の板厚tより厚くすることができる。
(成形前の第2側壁の状態)
図7(b)の第2成形工程S3での第2側壁SW(薄くする側壁)における加工メカニズムを説明した図である。左側及び右側の図は、夫々、成形前及び成形後のパンチ3及びダイス4を示す。図7(b)中に示す符号tは成形前の第2側壁SWの板厚であり、符号tはパンチ3の肩部で曲げられた成形直前の角部の板厚である。符号C2は、第2側壁SWのためのクリアランスである。なお、符号t’は成形後の第2側壁SWの板厚であり、符号t’は成形直後の角部の板厚である。
第2側壁SWについても、前工程で絞り成形が施されているため、t<tとなる。但し、第2側壁SWは、第1側壁SWの場合と異なり、上述した「比較的軽いしごき」で絞り・しごき加工を行うため、第2側壁SWのためのクリアランスCは、例えば、角部の板厚tよりも薄くするように設定することができる(すなわち、C<t<t)。
(成形後の第2側壁の状態)
上記設定条件で絞り・しごき加工を施せば、t’<t<tとなる。クリアランスCは、第2側壁SWの成形後の板厚t’となるからであり(∵C=t’)、板厚t’を成形前の板厚tよりも薄くすることができる。
それだけでなく、成形後の板厚t’を成形後の角部の板厚t’よりも薄くすることができる。これは、押込み部2bによる圧縮力Fを用いれば、第2側壁SWの角部や底部周辺の厚さを所定以上に保ったままにしながら、それより上方の胴体部分の板厚t’を成形前の板厚tに比べて薄くする加工ができることを意味する。
この点は従来技術に比べて大きなアドバンテージといえる。従来技術では厚くする側も薄くする側もパンチ3の肩部周辺は成形中パンチ3より大きな引張応力を受けることから、ワークWの胴体部分より絶えず薄くなるため、最も破断し易い箇所であった。しかしながら、その角部周辺の板厚t’,t’を胴体部分の成形直前の板厚t,tよりも厚くすることができるため、加工中の破断が起きにくくなるのである。
図8(a)は従来技術と本発明(一方の側の板厚tを増肉化し他方の側の板厚tを薄肉化する場合)を実行した場合の工程回数、各側壁の板厚及び板厚差を比較・説明した図である。本発明では板押さえ2の押込み部2bによって上端開口部Wを押し込みながらワークWを成形できるため、例えば、一方の側壁SWを増肉しながら、他方の側壁SWを減肉することができる。
ここで、図8(a)にて第1側壁SWの板厚tの変化を追うと、第1成形工程S2ではブランクBLの元板厚tより薄くなるものの、第2成形工程S3以降は、押込み部2b付の板押さえ2を利用するため、成形後の板厚t’は、最初の加工もしくは繰り返しの加工にて元板厚tよりも確実に大きくすることができる。
また、第2成形工程S3では押込み部2bによる圧縮力Fが得られることから、第1側壁SWへの加工と第2側壁SWへの加工との間に大きなしごき率の差を与えることができるため、所望の板厚差を実現するための工程数(パンチ3とダイス4との組合せ数(金型数))を大幅に減らすことができる。図示の例では、従来技術の工程数は合計8回に対し、本発明の工程数は合計3回である。
一方、図8(b)は従来技術と本発明(いずれの側の板厚t,tも薄肉化する場合)を実行した場合の工程回数、各側壁の板厚及び板厚差を比較・説明した図である。こちらの場合でも、図8(a)と同様の理由から、第1側壁SWへの加工と第2側壁SWへの加工との間に大きなしごき率の差を与えることができるため、所望の板厚差を実現するための工程数を大幅に減らすことができる。図8(b)の実施例では、加工全体を通して、第1側壁SWの板厚tはブランクの元板厚tとほぼ同じかやや薄くした状態で推移するのに対し、第2側壁SWの板厚tは、第2成形工程S3以降に急激に薄くなっていくことが判る。上述したとおり、成形の際に、ワークWの角部付近の板厚t3’,t4’を胴体部分の成形直前の厚さt,tよりも大きく確保できるため、一度の工程で極めて薄いクリアランスC2(成形後の板厚t’)に設定していくことができるのである。
また、図9(a)は、本発明(第2成形工程S3後に第3成形工程S4を実施して最終形状の各側壁の板厚を揃える場合)を実行した場合の工程回数、各側壁の板厚及び板厚差を従来技術と比較・説明した図である。この図の例では、第2成形工程S3では第1側壁SWの板厚t’のみが増肉化される一方、第2側壁SWの板厚t’はほぼ一定に維持されているが、第3成形工程S4にて第1側壁SWのみに再絞り・しごき加工して、その板厚t’が板厚t’と同一となるように追加の一工程が施される。このような本発明の好適な実施形態によれば、第3成形工程S4の追加実施により工程数が1つ増えることになるが、同一の板厚を有した側壁を持った最終製品(角筒容器)を製造できるようになるし、従来技術と比べても最終形状に至る工程数が尚少なくて済む。
(試作及び板厚差の検証)
本発明の製造装置1により角筒容器SCを実際に試作した。図9(b)に試作時のワークWの各側壁SW,SWにおける板厚t’,t’の変化を示す。図9(b)に示すように、元板厚t=1.5mmを有したブランクBLを用い、工程数合計3回(第1成形工程S2を1回及び第2成形工程S3を2回)でワークWを加工したところ、第1側壁SWでは、最終板厚がt’=2.0mmとなり、ブランクBLの元板厚tより0.5mmも増加した。一方、第2側壁SWでは、最終板厚がt’=1.1mmとなり、元板厚tより0.4mmも減少した。
つまり、最終製品の板厚差(t’-t’)は0.9mmであり、これを最終的に薄くなった板厚(t’=1.1mm)と比較すると、約82%程度の割合にまで達することが判った。先に述べた特許文献2の実施例での板厚差(約13%)に比べると、第1・第2側壁SW,SWにおける板厚t’,t’に顕著な差を付与できていることが理解できよう。
(試作品の外観)
図10(a)に、本発明の製造方法を用いて実際に成形した角筒容器SC(試作品)を示す。なお、撮影前に角筒容器SCの内部構造を見易くするために一部分を切除している。一方、図10(b)に不良品の一例を示す。具体的には、第2成形工程S3を実施する際に板押さえ2により上述した圧縮力Fの好適範囲の上限を超える力をワークWに与えた場合の成形状態(座屈変形が生じてしまった例)を示す。
本発明の製造方法によれば、被加工物への再絞り加工及びしごき加工を含み、パンチとダイスとの間に挿入される板押さえが加工中の被加工物の径方向への変形を規制するだけでなく、被加工物の開口端に対して軸方向に圧縮する力を付与し続ける。これにより、一工程で少なくとも一方の側壁側のクリアランスにより多くの材料をより確実に導入できるため、当該側壁の板厚をブランクの元板厚とほぼ変わらない程度に維持できる。
さらに本発明の好適な態様によっては、厚くする側の側壁の板厚を、ブランクの元板厚より大きなものにすることも可能である。言い換えれば、最終製品又は中間成形品のうち比較的厚い側壁の板厚よりも小さな元板厚を有した薄板状素材を本発明のブランクとして利用することができる。この点は、当該分野の先行技術で達成されることの無かった画期的なブレークスルーである。
また、本発明の好適な態様にクリアランス比(C/C2)を大きく取れば、一回の再絞り加工及びしごき加工で大きな板厚差を得ることができる。従って、最終目標の板厚差が大きかったとしても、先行技術に比べ、非常に少ない回数(ダイスとパンチの組合せ数)の加工で済む。
また、本発明の製造方法によれば、クリアランスが径方向にも軸方向にも規制されているため、従来技術の能力以上に、成形後の側壁表面上のシワや板厚のバラツキを抑制することができる。
このように、本発明は、産業上の利用価値及び産業上の利用可能性が非常に高い。
1 第2成形装置(成形金型)
2 板押さえ
2a,2a,2a 板押さえの本体部,本体部の先端部,本体部の基端部
2b 板押さえの押込み部
3 パンチ
4 ダイス
5 開口部
6,7 背圧バネ,背圧板
8a,8b 第1・第2押圧バネ
10,10a 上型,上型板
11,11a 下型,下型板
BL ブランク
,C 第1・第2側壁のためのクリアランス
F 板押さえによる圧縮力
G 環状隙間
O 中心線
SC 角筒容器
SW,SW 第1・第2側壁
ブランクの元板厚
,t’ 成形前及び成形後の第1側壁の板厚
,t’ 成形前及び成形後の第2側壁の板厚
,t’ 成形前及び成形後の第1側壁の角部の板厚
,t’ 成形前及び成形後の第2側壁の角部の板厚
W,W,W,W 各成形工程後のワーク(被加工物),第1・第2中間容器体
ワークの上端開口部

Claims (9)

  1. 板厚が異なる第1・第2側壁を備えた角筒容器の製造方法であって、
    板状の金属製ブランクをワークとして用意する工程と、
    前記ワークに絞り加工を行い、横断面形状が楕円形の容器体を成形する第1成形工程と、
    第1成形工程を完了した前記ワークに再絞り加工及びしごき加工を同時に行い、成形直前の前記ワークの高さよりも大きな高さを有し、かつ、成形直前の前記ワークの前記横断面形状よりも短径/長径の比が小さい横断面形状を有する容器体を成形する第2成形工程と、
    を含み、
    第2成形工程では、成形された前記ワークに更に再絞り加工及びしごき加工を同時に施す繰り返しの工程を含み、
    第2成形工程では、最初又は繰り返しの工程で使用されるパンチと前記ワークとの間に板押さえの本体部を挿入しながら前記パンチとダイスとの間にクリアランスを保持することで成形すべき前記ワークの径方向の移動を規制しつつ、前記板押さえの押込み部を用いて前記ワークの上部開口端に対して軸方向に圧縮力を付与する押圧工程を含み、
    第2成形工程では、前記クリアランスのうち比較的厚くすべき第1側壁における第1クリアランスをCとし、比較的薄くすべき第2側壁における第2クリアランスをWとし、
    成形直前の第1・第2側壁の板厚t,tとした場合、
    (1)C<Cであり、
    (2)0.65<C/t≦1.25
    (3)0.65≦C/t≦1.00
    の全ての条件を満たすよう設定する、
    ことを特徴とする角筒容器の製造方法。
  2. 前記圧縮力は単位面積当たり使用する材料の降伏応力比で0.25~1.1であることを特徴とする請求項1に記載の角筒容器の製造方法。
  3. 第2成形工程では、さらに、(4)0.2≦(C―C)/Cを満たすよう第1・第2クリアランスC,Cを設定する、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の角筒容器の製造方法。
  4. 第2成形工程では、(2’)1.00<C/t≦1.25の範囲に入るよう第1クリアランスCを設定することで、成形直前の第1側壁の板厚tと比較して、成形直後の第1側壁の板厚t’を増加させつつ、
    (3’)0.65≦C/t<1.00の範囲に入るよう第2クリアランスCを設定することで、成形直前の第2側壁の板厚tに対して、成形直後の前記板厚t’を減少させる、
    ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の角筒容器の製造方法。
  5. 第2成形工程の後に、第1・第2側壁の互いの板厚を揃えるように第1・第2側壁の少なくとも一方に対して再絞り加工及びしごき加工を実行する第3成形工程をさらに含む、
    ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の角筒容器の製造方法。
  6. 前記角筒容器の横断面形状が長方形であり、
    第1側壁が短辺側壁であり、かつ、第2側壁が長辺側壁である、
    ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の角筒容器の製造方法。
  7. 前記角筒容器が電池ケース用である、
    ことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の角筒容器の製造方法。
  8. 一枚の金属製ブランクから成形された角筒容器であって、
    横断面形状が長方形であり、
    前記長方形を構成する短辺を有した一対の第1側壁の板厚t’が、前記長方形を構成する長辺を有した一対の第2側壁の板厚t’よりも大きく、かつ、前記ブランクの元板厚tよりも大きく成形されている、
    ことを特徴とする角筒容器。
  9. 第1・第2側壁の板厚t’,t’間の板厚差割合を(t’―t’)/t’とした場合、0.2≦(t’―t’)/t’である、
    ことを特徴とする請求項8に記載の角筒容器。
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