JP2023008567A - 蒸気発生器の補強方法及び蒸気発生器 - Google Patents

蒸気発生器の補強方法及び蒸気発生器 Download PDF

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Abstract

【課題】蒸気発生器における補強の作業性を向上して気水分離器の外表面の対象領域を効率よく補強することができる蒸気発生器の補強方法を提供する。【解決手段】蒸気発生器の補強方法は、上下方向に延びる筒状の胴部2と、胴部内に設けられた熱交換部と、胴部内のうち熱交換部の上側に設けられた給水部4と、胴部内のうち熱交換部の上側に設けられた気水分離器5と、を備える蒸気発生器において、気水分離器の外表面51aのうち給水部から供給された二次冷却水が当たる対象領域51aAを補強する蒸気発生器の補強方法であって、胴部の外側で外表面の対象領域に沿う形状に加工した複数の当て板9を用意する準備ステップと、複数の当て板を胴部内に搬入する搬入ステップと、胴部内に搬入された複数の当て板を、それぞれ外表面の対象領域に重ねて溶接し、対象領域に沿って並べる溶接ステップと、を有する。【選択図】図3

Description

本開示は、蒸気発生器の補強方法及び蒸気発生器に関する。
加圧水型原子炉(PWR: Pressurized Water Reactor)等に用いられる蒸気発生器では、筒状の胴部内の下部に原子炉からの高温の一次冷却水を二次冷却水との間で熱交換して冷却するための熱交換部が設けられている。また、胴部内のうち熱交換部の上側には、熱交換部に二次冷却水を給水するための給水部、及び、熱交換部において一次冷却水によって加熱されて上昇する二次冷却水を蒸気と熱水とに分離する気水分離器が設けられている。給水部は、胴部内のうち熱交換部の上側において二次冷却水を流出する。この際、二次冷却水の一部が気水分離器の外表面の対象領域に当たる。二次冷却水が長時間にわたって気水分離器の外表面の対象領域に当たると、当該対象領域はエロ―ジョンやコロージョンによって減肉する。
特許文献1には、蒸気流が通過する湿分分離器の本体胴が、当該蒸気流によって減肉した際に、溶射によって当該減肉部分に耐食性合金の被膜を形成する補修方法が開示されている。
特開2011-219850号公報
しかしながら、二次冷却水が当たる気水分離器の外表面の対象領域がある空間は狭い。このため、気水分離器の外表面の対象領域に対する溶射は、作業性が悪く、気水分離器の対象領域の補修や補強に長い時間をかける必要がある。
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、補強の作業性を向上して気水分離器の外表面の対象領域を効率よく補強することができる蒸気発生器の補強方法及び蒸気発生器を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本開示に係る蒸気発生器の補強方法は、上下方向に延びる筒状の胴部と、前記胴部内の下部に設けられて高温の一次冷却水を二次冷却水との間で熱交換して冷却するための熱交換部と、前記胴部内のうち前記熱交換部の上側に設けられ、前記熱交換部に前記二次冷却水を給水する給水部と、前記胴部内のうち前記熱交換部の上側に設けられ、前記熱交換部において前記一次冷却水によって加熱されて上昇する前記二次冷却水を蒸気と熱水とに分離する気水分離器と、を備える蒸気発生器において、前記気水分離器の外表面のうち前記給水部から供給された前記二次冷却水が当たる対象領域を補強する蒸気発生器の補強方法であって、前記胴部の外側で前記外表面の対象領域に沿う形状に加工した複数の当て板を用意する準備ステップと、複数の前記当て板を前記胴部内に搬入する搬入ステップと、前記胴部内に搬入された複数の前記当て板を、それぞれ前記外表面の対象領域に重ねて溶接し、前記外表面の対象領域に沿って並べる溶接ステップと、を有する。
本開示に係る蒸気発生器は、上下方向に延びる筒状の胴部と、前記胴部内の下部に設けられて高温の一次冷却水を二次冷却水との間で熱交換して冷却するための熱交換部と、前記胴部内のうち前記熱交換部の上側に設けられ、前記熱交換部に前記二次冷却水を給水する給水部と、前記胴部内のうち前記熱交換部の上側に設けられ、前記熱交換部において前記一次冷却水によって加熱されて上昇する前記二次冷却水を蒸気と熱水とに分離する気水分離器と、前記気水分離器の外表面のうち前記給水部から供給された前記二次冷却水が当たる対象領域に重ねて溶接され、前記外表面の対象領域に沿って並ぶ複数の当て板と、を備える。
本開示によれば、蒸気発生器における補強の作業性を向上して気水分離器の外表面の対象領域を効率よく補強することができる。
本開示の一実施形態に係る蒸気発生器を示す概略構成図である。 図1の給水部と気水分離器のライザー管との相対的な位置関係を給水部の上方から見た図である。 図2のIII-III矢視断面図である。 図2,3のライザー管及びライザー管の外周面に取り付けられた当て板を示す斜視図である。 図4の当て板の第一例を示す斜視図である。 図4の当て板の第二例を示す斜視図である。 本開示の一実施形態に係る蒸気発生器の補強方法において、当て板をライザー管の外周面に取り付ける過程を示す図である。 当て板をライザー管の外周面に取り付ける過程において、当て板をライザー管の外周面に押さえ付ける方法の一例を示す図である。
<実施形態>
(蒸気発生器の構成)
図1に示す本実施形態の蒸気発生器1は、例えば原子力発電設備に適用される。蒸気発生器1では、原子炉(不図示)において加熱された高温の一次冷却水と外部から供給された二次冷却水との間で熱交換し、一次冷却水との熱交換によって二次冷却水から蒸気を発生させる。発生した蒸気を蒸気発生器1からタービン発電機(不図示)に送ることで発電することができる。
図1~4に示すように、蒸気発生器1は、胴部2と、熱交換部3と、給水部4と、気水分離器5と、複数の当て板9と、備える。また、図1に示すように、蒸気発生器1は、水室鏡6と、湿分分離器7と、さらに備える。
(胴部)
胴部2は、上下方向に延びる円筒形状に形成されている。胴部2は、下半部をなす下部胴2a、上半部をなす上部胴2b、下部胴2aと上部胴2bとをつなぐ円錐胴2c、及び、上部胴2bの上端に設けられた上部鏡2dを有する。
上部胴2bは、胴部2の内部に対して出入りするためのマンホール21(出入口)を有する。マンホール21は、上部胴2bの上部に位置しているが、これに限ることはない。マンホール21の大きさは、例えば人間が通れる程度の大きさである。上部胴2bには、マンホール21を開閉する蓋23が設けられている。上部胴2bは、下部胴2aよりも若干小径とされている。円錐胴2cは、下部胴2aと上部胴2bとをつなぐことができるように、ほぼ円錐台形状に形成されている。上部鏡2dには、蒸気排出口22が形成されている。蒸気排出口22には、胴部2から排出される蒸気をタービン発電機に送るための配管(不図示)が接続される。
下部胴2aの下端部には、管板8が配置されている。管板8は、下部胴2aの下端の開口を塞ぐ。管板8には、上下方向に貫通する複数の管穴8aが形成されている。
(熱交換部)
熱交換部3は、下部胴2aの内部(胴部2内の下部)に設けられ、高温の一次冷却水を二次冷却水との間で熱交換して冷却する。熱交換部3は、管群外筒31(ラッパー管)と、伝熱管群32Aと、管支持板33、振止部材34と、を有する。
管群外筒31は、上下方向に延びる円筒形状に形成されている。管群外筒31は、下部胴2aの内周面に対して所定間隔をあけて配置されている。管群外筒31の下端部は、下部胴2aの下端部に配置された管板8の近傍に位置する。管群外筒31の上端は、気水分離器5のライザー管51の下端に接続されている。
伝熱管群32Aは、管群外筒31の内側に設けられている。伝熱管群32Aは、逆U字形状で上下方向に延びる複数の伝熱管32を有する。各伝熱管32は、U字形状の円弧部を上方に向けた状態で下部胴2aの上端から下端まで延びるように配置される。下部胴2aの下端側に位置する各伝熱管32の両端部は、それぞれ管板8の管穴8aに挿通され固定されている。これにより、各伝熱管32の両端部は、管板8の下方に開口する。
管支持板33は、その板厚方向が管群外筒31の上下方向に向くように、管群外筒31に取り付けられている。管支持板33は、上下方向に間隔をあけて複数並んでいる。複数の管支持板33は、伝熱管32をその長手方向の中途部分を支持する。具体的に、管支持板33にはその板厚方向に貫通する多数の伝熱管挿通穴33aが形成されている。管支持板33は、伝熱管挿通穴33aに伝熱管32を挿通させることで伝熱管32を支持する。
振止部材34は、伝熱管32の円弧部が側方に重なる間に挿入されている。振止部材34は、伝熱管32のU字形状の円弧部において、一次冷却水が伝熱管32内を通過する際に発生し得る流体励起振動を抑制する。
以上のように構成される熱交換部3には、流通路35が形成されている。流通路35は、給水部4から下部胴2a内に給水された二次冷却水を、下部胴2aの内側と管群外筒31の外側との間を流下させて管板8にて折り返させ、管群外筒31の内側において伝熱管群32A に沿って上昇させるように形成されている。
(水室鏡)
水室鏡6は、管板8の下側に設けられている。水室鏡6の内部は、入口側水室6Aと出口側水室6Bとに区画されている。入口側水室6Aには、各伝熱管32の一端部が連通されている。一方、出口側水室6Bには、各伝熱管32の他端部が連通されている。
水室鏡6には、入口側水室6Aを水室鏡6の外側に開口させる入口ノズル6Aaと、出口側水室6Bを水室鏡6の外側に開口させる出口ノズル6Baと、が形成されている。入口ノズル6Aaには、一次冷却水を原子炉から熱交換部3に送るための配管(不図示)が接続される。出口ノズル6Baには、熱交換部3において熱交換された後の一次冷却水を原子炉に戻すための配管(不図示)が接続される。
(給水部)
図1,2に示すように、給水部4は、上部胴2bの内部(胴部2内のうち熱交換部3の上側)に設けられている。給水部4は、二次冷却水を胴部2の外部から導入して熱交換部3に給水する。給水部4は、環状給水管41と、複数の吐出管42(Jチューブ)と、を有する。
環状給水管41は、円筒状に形成された上部胴2bの内周に沿う環状に形成されている。環状給水管41には、上部胴2bを貫通して二次冷却水を外部から環状給水管41に導入する導入用配管43が接続されている。
図2に示すように、複数の吐出管42は、環状給水管41の周方向に互いに間隔をあけて並ぶように、環状給水管41に設けられている。各吐出管42は、環状給水管41に流れる二次冷却水を、熱交換部3に向けて下方に吐出する。
図3に示すように、各吐出管42の長手方向の一端は、環状給水管41に接続されている。各吐出管42の長手方向の他端は、二次冷却水が吐出する吐出口42bであり、下方に向けられている。具体的に、各吐出管42は、環状給水管41の上端から上方に延びた上で下方に折り返すように、J字状に湾曲している。各吐出管42の吐出口42bは、環状給水管41の径方向内側に位置している。
(気水分離器)
図1に示すように、気水分離器5は、上部胴2bの内部(胴部2内のうち熱交換部3の上側)に設けられている。気水分離器5は、熱交換部3において一次冷却水によって加熱されて上昇する二次冷却水を蒸気と熱水とに分離する。
気水分離器5は、上下方向に延びる円筒形状のライザー管51を有する。ライザー管51の下端は、熱交換部3の管群外筒31の上端に接続されている。これにより、ライザー管51の内側には、熱交換部3の管群外筒31の内側において上昇する二次冷却水が通る。図1,2に示すように、上下方向から見たライザー管51の径寸法は、給水部4の環状給水管41の径寸法よりも小さい。ライザー管51は、環状給水管41の内側を上下方向に通るように配置されている。
上下方向から見て、ライザー管51は環状給水管41の内縁の近くに寄せて位置している。このため、図2,3に示すように、ライザー管51の外周面51a(外表面)の周方向の一部領域は、給水部4の吐出管42の吐出口42bの近くに位置し、吐出口42bから吐出された二次冷却水が当たる対象領域51aAとなっている。周方向におけるライザー管51の対象領域51aAの角度範囲は、例えば170度~180度であってよいが、これに限ることはない。
(当て板)
図2~4に示すように、複数の当て板9は、それぞれライザー管51の対象領域51aAに重ねて溶接されている。各当て板9は、ライザー管51の対象領域51aAに密着(面接触)するように、円筒状に形成されたライザー管51の外周面51aに沿う形状に形成されている。当て板9は、図4~6に示すように、当て板9の面に沿う一方向において円弧状に湾曲した形状に形成されている。具体的に、各当て板9は、ライザー管51の周方向に沿って延びる一対の横辺9aと、ライザー管51の長手方向(上下方向)に沿って延びる一対の縦辺9bとを有する湾曲した長方形状に形成されている。各当て板9の大きさは、ライザー管51の対象領域51aA全体の面積よりも小さい。本実施形態において、各当て板9は、胴部2のマンホール21(図1参照)を通過可能な形状及び大きさに形成されている。
図4に示すように、複数の当て板9は、ライザー管51の対象領域51aA全体を覆うように、ライザー管51の外周面51a(外表面)に沿って並ぶ。ここで、当て板9の縦辺9bの長さは、ライザー管51の長手方向における対象領域51aAの長さ以上に設定されている。また、当て板9の横辺9aの長さは、ライザー管51の周方向における対象領域51aAの長さよりも小さい。このため、複数の当て板9は、ライザー管51の周方向にのみ並んでいる。なお、当て板9の縦辺9bの長さがライザー管51の長手方向における対象領域51aAの長さよりも小さい場合には、複数の当て板9がライザー管51の長手方向(上下方向)にも並んでよい。
ライザー管51の周方向に並ぶ複数の当て板9は、溶接によってライザー管51に固定されている。各当て板9はうち少なくとも一対の横辺9aは、隅肉溶接によってライザー管51に接合されている。また、ライザー管51の周方向において複数の当て板9の両端をなす当て板9の縦辺9bも隅肉溶接によってライザー管51に接合されている。ただし、4つの辺9a,9b全てを溶接により接合する場合は、内部に残留する空気抜きのために、一部を未溶接状態で完了する。
ライザー管51の周方向において互いに隣り合う当て板9の縦辺9bは、例えば隅肉溶接によってライザー管51に接合されてよい。なお、ライザー管51の周方向に隣り合う当て板9の縦辺9bは、例えばこれら縦辺9b同士を互いに嵌め合わせるだけで溶接しなくてもよい。この場合、周方向に隣り合う当て板9の縦辺9bは、例えば互いに嵌まり合う凹凸形状に形成されてよい。
各当て板9は、二次冷却水に対して高い耐食性能を有する材料によって形成されていることが好ましい。二次冷却水に対して高い耐食性能を有する材料としては、例えばCr-Mo系低合金やNi基合金が挙げられる。
図5は、Cr-Mo系低合金で形成する場合の当て板9Cを示している。図5に示す当て板9Cは、Cr-Mo系低合金からなる本体板部91と、炭素鋼からなり本体板部91の周縁の少なくとも一部に溶接された縁部92と、を有する。炭素鋼からなる縁部92は、当て板9Cのうちライザー管51に対して溶接する部位に設けられていればよい。図5に示す当て板9Cでは、当て板9Cのうち一対の横辺9aをなす部位(当て板9Cの上下の部位)だけが炭素鋼からなる縁部92によって形成されている。なお、一対の横辺9a及び一対の縦辺9bをなす部位(すなわち当て板9Cの周縁全体)が、炭素鋼からなる縁部92によって形成されてもよい。
図6は、Ni基合金で形成する場合の当て板9Nを示している。Ni基合金で形成された当て板9は、単一の材料(すなわちNi基合金のみ)で形成されている。
(湿分分離器)
図1に示すように、湿分分離器7は、上部胴2bの内部において、気水分離器5の上側に配置されている。湿分分離器7は、気水分離器5において分離された蒸気の湿分を除去して乾き蒸気に近い状態とする。
図1に示す蒸気発生器1では、原子炉で加熱された一次冷却水が、入口側水室6Aに送られ、熱交換部3の複数の伝熱管32内を通って循環して出口側水室6Bに至る。一方、二次冷却水は、給水部4から熱交換部3に供給され、熱交換部3の流通路35を通り伝熱管群32Aに沿って上昇する。このとき、熱交換部3では、高温の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換が行われ、冷却された一次冷却水が出口側水室6Bから原子炉に戻される。一方、一次冷却水によって加熱された二次冷却水は、管群外筒31内を上昇し、気水分離器5において蒸気と熱水とに分離される。そして、分離された蒸気は、湿分分離器7で湿分が除去されてから蒸気排出口22を通して胴部2の外側に排出され、タービン発電機に送られる。
(蒸気発生器の補強方法)
次に、本実施形態に係る蒸気発生器の補強方法について説明する。
補強前における蒸気発生器の構成は、複数の当て板9を除いて図1~4に示した蒸気発生器1の構成と同じである。蒸気発生器の補強方法において補強する対象は、給水部4から供給された二次冷却水が当たるライザー管51の外周面51a(気水分離器5の外表面)の対象領域51aAである。
ライザー管51の外周面51aを補強するためには、はじめに、胴部2の外側(例えば蒸気発生器から離れた別の工場)において図5,6に例示した当て板9を複数用意する準備ステップを行う。準備ステップでは、各当て板9をライザー管51の外周面51aの対象領域51aAに沿う形状に加工する。また、準備ステップでは、各当て板9を胴部2のマンホール21(図1参照)を通過可能な形状及び大きさに形成する。本実施形態において、準備ステップで用意される当て板9の縦辺9bの長さは、ライザー管51の長手方向における対象領域51aAの長さ以上である。また、当て板9の横辺9aの長さは、ライザー管51の周方向における対象領域51aAの長さよりも小さい。
準備ステップでは、Cr-Mo低合金からなる当て板9C(図5参照)、あるいは、Ni基合金からなる当て板9N(図6参照)を用意する。準備ステップにおいてCr-Mo低合金からなる当て板9Cを用意する場合、準備ステップでは、図5に示すように、Cr-Mo低合金からなる本体板部91の周縁に炭素鋼からなる縁部92を溶接(例えばバタリング溶接)で接合する。本体板部91と縁部92との溶接に際しては、部材を構成する組成によっては、予後熱処理を行う。
準備ステップの後には、複数の当て板9を胴部2の内部に搬入する搬入ステップを行う。搬入ステップでは、胴部2のマンホール21を通して複数の当て板9を胴部2内に搬入する。ここで、各当て板9はマンホール21を通過可能な形状及び大きさに形成されているため、各当て板9を簡単かつ確実に胴部2の内部に搬入することができる。
搬入ステップの後には、胴部2内に搬入された複数の当て板9を、それぞれライザー管51の外周面51aの対象領域51aAに重ねて溶接し、対象領域51aAに沿って並べる溶接ステップを行う。以下、溶接ステップについて具体的に説明する。
溶接ステップでは、はじめに図7に示すように、当て板9をライザー管51に対して良好に溶接できるように、ライザー管51のうち外周面のうち当て板9を溶接する領域(以下、溶接領域51aBと呼ぶ。)を磨く。図7における溶接領域51aBは、ライザー管51の周方向に延びる帯状の領域であり、ライザー管51の長手方向(上下方向)に間隔をあけて2つ形成されている。これら2つの溶接領域51aBは、ライザー管51の長手方向において対象領域51aAの両側に位置する。また、2つの溶接領域51aBの位置は、当て板9の一対の横辺9aに対応している。なお、当て板9の縦辺9bをライザー管51に溶接する場合、ライザー管51には、その長手方向に延びて当て板9の縦辺9bに対応する帯状の溶接領域(不図示)が形成されてよい。
次いで、図8に示すように、当て板9をライザー管51の外周面51aの対象領域51aAに重ねて配置し、当て板9がライザー管51の外周面51aに対して隙間なく密着(面接触)しているか否かを確認する。ここで、当て板9とライザー管51の外周面51aとの間に隙間がある場合には、例えば図8に示す押付具10を利用して当て板9をライザー管51の外周面51aに押し付ける。
押付具10は、ベース部材101と楔部材102とを有する。ベース部材101は、L字状に形成され、当該ベース部材101を溶接によりライザー管51に取り付けた状態でライザー管51の外周面51aの対象領域51aAに間隔をあけて対向する対向部位103を有する。楔部材102は、ライザー管51の対象領域51aAに重ねて配置された当て板9とベース部材101の対向部位103との間に挟まれる。楔部材102を当て板9とベース部材101の対向部位103との間に挟むことで、当て板9をライザー管51の外周面51aに押し付けることができる。これにより、当て板9をライザー管51の外周面51aに対して隙間なく密着させることができる。この押付具10は、当て板9を溶接した後に、ライザー管51から取り外される。
当て板9がライザー管51の外周面51aに対して隙間なく密着していることを確認した後には、当て板9を溶接によってライザー管51に仮付けする。ライザー管51に対する当て板9の仮付けは、長さの短い溶接ビード(点状の溶接ビード)が間隔をあけて並ぶように、TIG溶接等を実施することで行われる。当て板9の仮付けは、少なくとも当て板9の一対の横辺9aとライザー管51の溶接領域51aB(図7参照)との間において行われる。なお、当て板9の仮付けは、例えば当て板9の縦辺9bとこれに対応するライザー管51に溶接領域(不図示)との間において行われてもよい。
当て板9の仮付けの後には、当て板9の本溶接を行う。当て板9の本溶接では、仮付けのときよりも溶接ビードが長くなるように、隅肉溶接等によって当て板9をライザー管51に溶接する。本溶接では、例えば、当て板9の横辺9aや縦辺9b全体が溶接される連続溶接によって、当て板9をライザー管51に溶接してもよい。また、本溶接では、例えば、線状の溶接ビードが当て板9の横辺9aや縦辺9bに沿って間隔をあけて複数並ぶ断続溶接(タップ溶接)によって、当て板9をライザー管51に溶接してもよい。
本実施形態では、当て板9の上側の横辺9a、及び、ライザー管51の周方向において複数の当て板9の両端をなす当て板9の縦辺9bが、連続溶接によってライザー管51に溶接される。また、当て板9の下側の横辺9aが、断続溶接によってライザー管51に溶接される。なお、ライザー管51の周方向において互いに隣り合う当て板9の縦辺9bは、例えば互い嵌め合わさることでライザー管51に溶接されなくてもよいし、例えば連続溶接によってライザー管51に溶接されてもよい。
当て板9の上側の横辺9aや縦辺9bが連続溶接によってライザー管51に接合されることで、給水部4から吐出される二次冷却水が、当て板9よりも上側から下方に流れても、ライザー管51と当て板9との間に進入することを防止できる。
溶接ステップでは、複数の当て板9を溶接することでライザー管51の外周面51aの対象領域51aA全体を覆うことができる。溶接ステップでは、複数の当て板9の溶接に際して、例えば、所定の当て板9の仮付け及び本溶接を実施した後に、別の当て板9の仮付け及び本溶接を実施してもよいし、例えば、複数の当て板9の仮付けを実施した後に、複数の当て板9の本溶接を実施してもよい。
上記した溶接ステップが終了することで、蒸気発生器の補強方法が完了する。
この蒸気発生器の補強方法は、既に使用されている蒸気発生器、及び、使用前(未使用)の蒸気発生器の両方に適用することができる。既に使用されている蒸気発生器では、上記した蒸気発生器の補強方法を適用することで、二次冷却水が当たることで減肉したライザー管51の外周面51aの対象領域51aAを複数の当て板9によって補修することができる。また、使用前(未使用)蒸気発生器では、ライザー管51の外周面51aの対象領域51aAが二次冷却水によって減肉しないように、当該対象領域51aAを当て板9で補強することができる。
本実施形態の蒸気発生器1及び蒸気発生器の補強方法によれば、ライザー管51の外周面51a(気水分離器5の外表面)の対象領域51aAが当て板9によって覆われる。このため、給水部4から供給された二次冷却水がライザー管51の外周面51aの対象領域51aAに当たることを抑制又は防止することができる。すなわち、ライザー管51の外周面51aの対象領域51aAを二次冷却水から保護することができる。これにより、ライザー管51の外周面51aがエロ―ジョンやコロージョンによって減肉することを抑制又は防止することができる。
また、ライザー管51の外周面51aの対象領域51aAに対応する当て板9の数を複数とすることで、各当て板9の大きさを当該対象領域51aAよりも小さく形成することができる。これにより、胴部2内に対する当て板9の搬入を容易に行うことができる。また、各当て板9を小さく形成できることで、ライザー管51の外周面51aの対象領域51aAと給水部4(特に環状給水管41や吐出管42)との間隔が狭くても、各当て板9を簡単にライザー管51の外周面51aに溶接することができる。すなわち、補強の作業性を向上してライザー管51の外周面51aの対象領域51aAを効率よく補強することができる。
また、本実施形態の蒸気発生器1及び蒸気発生器の補強方法では、当て板9が、二次冷却水に対して高い耐食性能を有するCr-Mo低合金あるいはNi基合金によって形成されている。これにより、給水部4から供給された二次冷却水がライザー管51の外周面51aの対象領域51aAを覆う当て板9に長時間当たっても、当て板9がエロ―ジョンやコロージョンによって減肉することを効果的に抑制することができる。
また、本実施形態の蒸気発生器1及び蒸気発生器の補強方法によれば、Cr-Mo低合金によって形成された当て板9は、Cr-Mo系低合金からなる本体板部91の周縁の少なくとも一部に、炭素鋼からなる縁部92を溶接して構成されている。これにより、当て板9の主要部分がCr-Mo低合金によって形成されていても、胴部2内における当て板9のライザー管51の外周面51aへの溶接に際して、当て板9の溶接部分に対する予後熱処理が不要となる。以下、この点について説明する。
Cr-Mo低合金をライザー管51に溶接するためには、胴部2内において溶接部分の予後熱処理を行う必要があるため、胴部2内における作業性が悪く、当て板9の施工が難しい。一方、ライザー管51に対する炭素鋼の溶接に際しては、上記の予後熱処理が不要である。これにより、炭素鋼からなり当て板9の横辺9aや縦辺9bをなす当て板9の縁部92を、ライザー管51の外周面51aに溶接する際には、予後熱処理が不要となるため、胴部2内における作業性が向上し、ライザー管51の外周面51aに対する当て板9の施工を簡単に行うことができる。
また、本実施形態の蒸気発生器1及び蒸気発生器の補強方法において、当て板9がNi基合金によって形成される場合には、当て板9のライザー管51の外周面51aへの溶接に際して、当て板9の溶接部分に対する予後熱処理が不要となる。これは、Ni基合金の溶接においては予後熱処理が不要であることに起因する。これにより、胴部2内における当て板9のライザー管51の外周面51aへの溶接に際して、胴部2内における作業性が向上し、ライザー管51の外周面51aに対する当て板9の施工を簡単に行うことができる。
以上、本開示の各実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこれらの実施形態によって限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
<付記>
各実施形態に記載の蒸気発生器の補強方法、蒸気発生器は、例えば以下のように把握される。
(1)第1の態様に係る蒸気発生器の補強方法は、上下方向に延びる筒状の胴部と、前記胴部内の下部に設けられて高温の一次冷却水を二次冷却水との間で熱交換して冷却するための熱交換部と、前記胴部内のうち前記熱交換部の上側に設けられ、前記熱交換部に前記二次冷却水を給水する給水部と、前記胴部内のうち前記熱交換部の上側に設けられ、前記熱交換部において前記一次冷却水によって加熱されて上昇する前記二次冷却水を蒸気と熱水とに分離する気水分離器と、を備える蒸気発生器において、前記気水分離器の外表面のうち前記給水部から供給された前記二次冷却水が当たる対象領域を補強する蒸気発生器の補強方法であって、前記胴部の外側で前記外表面の対象領域に沿う形状に加工した複数の当て板を用意する準備ステップと、複数の前記当て板を前記胴部内に搬入する搬入ステップと、前記胴部内に搬入された複数の前記当て板を、それぞれ前記外表面の対象領域に重ねて溶接し、前記外表面の対象領域に沿って並べる溶接ステップと、を有する。
上記構成によれば、気水分離器の外表面の対象領域が複数の当て板によって覆われることで、給水部から供給された二次冷却水が気水分離器の外表面の対象領域に当たることを抑制又は防止することができる。すなわち、気水分離器の外表面の対象領域を二次冷却水から保護することができる。これにより、気水分離器の外表面がエロ―ジョンやコロージョンによって減肉することを抑制又は防止することができる。
また、気水分離器の外表面の対象領域に対応する当て板の数を複数とすることで、各当て板の大きさを当該対象領域よりも小さく形成することができる。これにより、胴部内に対する当て板の搬入を容易に行うことができる。また、各当て板を小さく形成できることで、気水分離器の外表面の対象領域と給水部との間隔が狭くても、各当て板を簡単に気水分離器の外表面に溶接することができる。すなわち、補強の作業性を向上して気水分離器の外表面の対象領域を効率よく補強することができる。
(2)第2の態様に係る蒸気発生器の補強方法では、前記当て板は、少なくともCr-Mo系低合金によって形成される。
当て板を形成するCr-Mo系低合金は、二次冷却水に対して高い耐食性能を有する。したがって、給水部から供給された二次冷却水が気水分離器の外表面の対象領域を覆う当て板に長時間当たっても、当て板がエロ―ジョンやコロージョンによって減肉することを効果的に抑制することができる。
(3)第3の態様に係る蒸気発生器の補強方法では、前記当て板は、Cr-Mo系低合金からなる本体板部と、炭素鋼からなり前記本体板部の周縁の少なくとも一部に溶接された縁部と、を有する。
上記構成によれば、炭素鋼からなる当て板の縁部を気水分離器の外表面に溶接することで、当て板を気水分離器の外表面の対象領域に取り付けることが可能となる。ここで、Cr-Mo系低合金の溶接に際しては当該溶接部分に対する予後熱処理が必要であるが、炭素鋼の溶接に際しては当該溶接部分に対する予後熱処理が不要である。これにより、胴部内における当て板の気水分離器の外表面への溶接に際して、当該予後熱処理が不要となるため、胴部内における作業性が向上し、気水分離器の外表面に対する当て板の施工を簡単に行うことができる。
(4)第4の態様に係る蒸気発生器の補強方法では、前記当て板は、Ni基合金によって形成される。
当て板を形成するNi基合金は、二次冷却水に対して高い耐食性能を有する。したがって、給水部から供給された二次冷却水が気水分離器の外表面の対象領域を覆う当て板に長時間当たっても、当て板が減肉することを抑制することができる。
また、Ni基合金からなる当て板を気水分離器の外表面に溶接することで、当て板を気水分離器の外表面の対象領域に取り付けることができる。ここで、Ni基合金の溶接に際しては当該溶接部分に対する予後熱処理が不要である。これにより、胴部内における当て板の気水分離器の外表面への溶接に際して、当該予後熱処理が不要となるため、胴部内における作業性が向上し、気水分離器の外表面に対する当て板の施工を簡単に行うことができる。
(5)第5の態様に係る蒸気発生器の補強方法では、前記胴部は、当該胴部内に対して出入りするためのマンホールを有し、前記当て板は、前記マンホールを通過可能な形状及び大きさに形成されている。
当て板がマンホールを通過可能な形状及び大きさに形成されることで、当て板を簡単かつ確実に胴部内に搬入することができる。
(6)第6の態様に係る蒸気発生器は、上下方向に延びる筒状の胴部と、前記胴部内の下部に設けられて高温の一次冷却水を二次冷却水との間で熱交換して冷却するための熱交換部と、前記胴部内のうち前記熱交換部の上側に設けられ、前記熱交換部に前記二次冷却水を給水する給水部と、前記胴部内のうち前記熱交換部の上側に設けられ、前記熱交換部において前記一次冷却水によって加熱されて上昇する前記二次冷却水を蒸気と熱水とに分離する気水分離器と、前記気水分離器の外表面のうち前記給水部から供給された前記二次冷却水が当たる対象領域に重ねて溶接され、前記外表面の対象領域に沿って並ぶ複数の当て板と、を備える。
上記構成によれば、気水分離器の外表面の対象領域が複数の当て板によって覆われることで、給水部から供給された二次冷却水が気水分離器の外表面の対象領域に当たることを抑制又は防止することができる。すなわち、気水分離器の外表面の対象領域を二次冷却水から保護することができる。これにより、気水分離器の外表面がエロ―ジョンやコロージョンによって減肉することを抑制又は防止することができる。
また、気水分離器の外表面の対象領域に対応する当て板の数を複数とすることで、各当て板の大きさを当該対象領域よりも小さく形成することができる。これにより、胴部内に対する当て板の搬入を容易に行うことができる。また、各当て板を小さく形成できることで、気水分離器の外表面の対象領域と給水部との間隔が狭くても、各当て板を簡単に気水分離器の外表面に溶接することができる。すなわち、補強の作業性を向上して気水分離器の外表面の対象領域を効率よく補強することができる。
1 蒸気発生器
2 胴部
3 熱交換部
4 給水部
5 気水分離器
9 当て板
21 マンホール
51a 外周面(外表面)
51aA 対象領域
91 本体板部
92 縁部

Claims (6)

  1. 上下方向に延びる筒状の胴部と、
    前記胴部内の下部に設けられて高温の一次冷却水を二次冷却水との間で熱交換して冷却するための熱交換部と、
    前記胴部内のうち前記熱交換部の上側に設けられ、前記熱交換部に前記二次冷却水を給水する給水部と、
    前記胴部内のうち前記熱交換部の上側に設けられ、前記熱交換部において前記一次冷却水によって加熱されて上昇する前記二次冷却水を蒸気と熱水とに分離する気水分離器と、
    を備える蒸気発生器において、
    前記気水分離器の外表面のうち前記給水部から供給された前記二次冷却水が当たる対象領域を補強する蒸気発生器の補強方法であって、
    前記胴部の外側で前記外表面の対象領域に沿う形状に加工した複数の当て板を用意する準備ステップと、
    複数の前記当て板を前記胴部内に搬入する搬入ステップと、
    前記胴部内に搬入された複数の前記当て板を、それぞれ前記外表面の対象領域に重ねて溶接し、前記外表面の対象領域に沿って並べる溶接ステップと、
    を有する蒸気発生器の補強方法。
  2. 前記当て板は、少なくともCr-Mo系低合金によって形成される請求項1に記載の蒸気発生器の補強方法。
  3. 前記当て板は、Cr-Mo系低合金からなる本体板部と、炭素鋼からなり前記本体板部の周縁の少なくとも一部に溶接された縁部と、を有する請求項1又は請求項2に記載の蒸気発生器の補強方法。
  4. 前記当て板は、Ni基合金によって形成される請求項1に記載の蒸気発生器の補強方法。
  5. 前記胴部は、当該胴部内に対して出入りするためのマンホールを有し、
    前記当て板は、前記マンホールを通過可能な形状及び大きさに形成されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の蒸気発生器の補強方法。
  6. 上下方向に延びる筒状の胴部と、
    前記胴部内の下部に設けられて高温の一次冷却水を二次冷却水との間で熱交換して冷却するための熱交換部と、
    前記胴部内のうち前記熱交換部の上側に設けられ、前記熱交換部に前記二次冷却水を給水する給水部と、
    前記胴部内のうち前記熱交換部の上側に設けられ、前記熱交換部において前記一次冷却水によって加熱されて上昇する前記二次冷却水を蒸気と熱水とに分離する気水分離器と、
    前記気水分離器の外表面のうち前記給水部から供給された前記二次冷却水が当たる対象領域に重ねて溶接され、前記外表面の対象領域に沿って並ぶ複数の当て板と、
    を備える蒸気発生器。
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