JP2023006191A - スクアリリウム色材、色材分散液、インキ組成物、光学フィルタ、及び表示装置 - Google Patents

スクアリリウム色材、色材分散液、インキ組成物、光学フィルタ、及び表示装置 Download PDF

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Masato Okada
史泰 村上
Fumiyasu Murakami
翔大 藤本
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Abstract

【課題】耐光性が良好で、最大吸収波長とは異なる別の波長の吸収(副吸収)が低減されたスクアリリウム色材、当該スクアリリウム色材を含有する色材分散液、インキ組成物、光学フィルタ、及び表示装置を提供する。【解決手段】例えば、下式のスクアリリウム色素と、無色有機カチオンと、ヘテロポリ酸の造塩化合物からなる、スクアリリウム色材。JPEG2023006191000019.jpg5289【選択図】なし

Description

本開示は、スクアリリウム色材、色材分散液、インキ組成物、光学フィルタ、及び表示装置に関する。
近年、照明装置や表示装置の光源として、LEDが用いられることが多くなっている。例えば白色LEDを用いる場合の発光方式にはいくつかの種類があり、R(赤)、G(緑)、B(青)のそれぞれの光を発するLEDを並べて白色光を得る方式のものや、青色LEDからの青色光と黄色蛍光体からの黄色発光の組み合わせにより白色光を得る方式のものがある。これらの方式のうち、青色LEDと黄色蛍光体の組み合わせにより白色光を得る方式を使用した場合、得られる白色光のスペクトルには、590nm付近の領域にオレンジ色や490nm付近のシアン色を示す光が含まれており、この領域の光の発光強度が高いと演色性が低下することが知られている。
従来より、表示装置の前面には、不要な発光成分を除去して、表示色を鮮明にするために、光学フィルタが設置されている。
特許文献1及び2においては、表示装置等の光学フィルタに有用な化合物として、スクアリリウム化合物が開示されている。
一方、本発明者らは、不要な波長領域の光を選択的に有効に低減しながら、耐光性に優れた膜を形成可能な色材分散液及び組成物、不要な波長領域の光を選択的に有効に低減しながら、耐光性に優れた膜及び光学フィルタとしてスクアリリウムの造塩化合物を含む場合も開示している。
国際公開2020/022134号公報 国際公開2020/022135号公報 国際公開2019/216282号公報
光源、光学部材、又は外光反射に起因した不要な波長領域の光を抑制するために、不要な波長領域の光を選択的に吸収する色素化合物を用いることが有効と考えられる。
特許文献1~2のようにスクアリリウム色素単体で光学フィルタ等に用いると耐光性が悪いという問題がある。特許文献3のように色素を造塩化合物として光学フィルタ等に用いると耐光性は向上する。しかしながら、スクアリリウム色素を造塩化合物とすると、最大吸収波長とは異なる別の波長に吸収(副吸収)が生じやすく、色再現性(色純度)や明るさを低下させたりする問題があった。
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、耐光性が良好で、最大吸収波長とは異なる別の波長の吸収(副吸収)が低減されたスクアリリウム色材、当該スクアリリウム色材を含有する色材分散液、インキ組成物、光学フィルタ、及び表示装置を提供することを目的とする。
本開示の1実施態様は、スクアリリウム色素と、無色有機カチオンと、ヘテロポリ酸の造塩化合物からなる、スクアリリウム色材を提供する。
本開示の他の実施態様は、スクアリリウム色素と、無色有機カチオンと、ヘテロポリ酸の造塩化合物からなるスクアリリウム色材と、分散剤と、溶媒とを含有する、色材分散液を提供する。
本開示の他の実施態様は、スクアリリウム色素と、無色有機カチオンと、ヘテロポリ酸の造塩化合物からなる、スクアリリウム色材と、バインダー成分とを含有する、インキ組成物を提供する。
本開示の他の実施態様は、スクアリリウム色素と、無色有機カチオンと、ヘテロポリ酸の造塩化合物からなる、スクアリリウム色材を含有する、光学フィルタを提供する。
本開示の他の実施態様は、前記本開示の光学フィルタを備える、表示装置を提供する。
本開示の前記実施態様のスクアリリウム色材、色材分散液、インキ組成物、光学フィルタ及び表示装置において、前記スクアリリウム色材は、前記無色有機カチオンが、ホスホニウム化合物であるスクアリリウム色材であってよい。
本開示の前記実施態様のスクアリリウム色材、色材分散液、インキ組成物、光学フィルタ及び表示装置において、前記スクアリリウム色材は、前記無色有機カチオンが、下記一般式(A)で表されるホスホニウム化合物であるスクアリリウム色材であってよい。
式(A): A―[P
(式(A)中、Aはa価の有機基であり、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基であり、aは2~4の整数である。)
本開示の前記実施態様のスクアリリウム色材、色材分散液、インキ組成物、光学フィルタ及び表示装置において、前記スクアリリウム色材は、前記スクアリリウム色素が下記一般式(3-1)で表されるスクアリリウム色素である、スクアリリウム色材であってよい。
Figure 2023006191000001
(式(3-1)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、-OR、-OCOR、-COOR、-CONHR10、-NHCOR11、又は-NR1213を表し、R、R、R、R10及びR11はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基を表し、R12及びR13はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基を表す。Qはそれぞれ独立に、直接結合又は2価の芳香族環基を表す。Yはそれぞれ独立に、2価の有機基を表し、Zはそれぞれ独立に、有機カチオン基に誘導され得る基又は有機カチオン基を表す。有機カチオン基を表す。Eはそれぞれ独立に、置換基を表し、互いに隣接する置換基Eにより、環形成されていてもよい。m及びnはそれぞれ独立に0~4の整数を表す。)
本開示の実施態様によれば、耐光性が良好で、最大吸収波長とは異なる別の波長の吸収(副吸収)が低減されたスクアリリウム色材、当該スクアリリウム色材を含有する色材分散液、インキ組成物、光学フィルタ、及び表示装置を提供することができる。
図1は、本開示の1実施形態に係る表示装置の一例の概略構成図である。 図2は、本開示の1実施形態に係る表示装置の他の一例の概略構成図である。 図3は、本開示のスクアリリウム色材の一例を示す模式図である 図4は、従来の造塩化合物の一例を示す模式図である。 図5は、一般式(3-2)で表されるスクアリリウム色素の分子骨格の例を示す模式図である。 図6は、スクアリリウム色素AのH-NMRスペクトルである。 図7は、スクアリリウム色素BのH-NMRスペクトルである。
以下、本開示の実施の形態や実施例などを、図面等を参照しながら説明する。但し、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態や実施例等の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明する場合があるが、上下方向が逆転してもよい。
「本明細書において、ある部材又はある領域等のある構成が、他の部材又は他の領域等の他の構成の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限り、これは他の構成の直上(又は直下)にある場合のみでなく、他の構成の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の構成の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
本開示において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタアクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの各々を表す。
また、本明細書において「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではなく、「フィルム面(板面、シート面)」とは、対象となるフィルム状(板状、シート状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるフィルム状部材(板状部材、シート状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
なお、本開示において「有機色素」とは炭素原子を含有する色素化合物であって、可視光線(波長400nm~700nmの光)及び近赤外線(波長700nm~1100nmの光)のうちの少なくとも一部を吸収する化合物をいい、「色材」とは、可視光線(波長400nm~700nmの光)及び近赤外線(波長700nm~1100nmの光)のうちの少なくとも一部を吸収する化合物をいい、近赤外線のみを吸収する化合物も含まれる。
また、「有機基」とは炭素原子を含有する基をいう。「有機カチオン」とは、カチオン部分に炭素原子を含むものをいう。
以下、本開示のスクアリリウム色材、色材分散液、インキ組成物、光学フィルタ、及び、表示装置について順に詳細に説明する。
I.スクアリリウム色材
本開示の1実施態様のスクアリリウム色材は、スクアリリウム色素と、無色有機カチオンと、ヘテロポリ酸の造塩化合物からなる、スクアリリウム色材である。
本開示の1実施態様のスクアリリウム色材は、スクアリリウム色素に対して、無色有機カチオンと、ヘテロポリ酸により造塩化合物としたことにより、耐光性が良好で、最大吸収波長とは異なる別の波長の吸収(副吸収)が低減されたスクアリリウム色材である。
有機色素は溶剤に溶解して膜形成を行うが、膜中で凝集して析出しやすいため、均一な膜を作成することは困難であり、その結果、不要発光波長の光を選択的に吸収する機能も有効に均一に発揮し難い状況であった。また、従来より、有機色素は耐光性が悪く、実使用上問題になっていた。
それに対して、有機色素がヘテロポリ酸との造塩化合物を形成する場合、1個の多価のヘテロポリ酸アニオンに2個以上のカチオン化された所定の有機色素がイオン結合する。そのため、有機色素とヘテロポリ酸との造塩化合物は、ヘテロポリ酸アニオンを中心として複数の有機色素が1つの分子を構成し、更に分子間でのイオン対形成が可能となるため、分子同士の会合が促進されたものとなり、結果として溶剤に難溶の微粒子となる。色材が微粒子の状態で存在すると、光劣化は粒子表面のみで起きやすく、光劣化の進行が抑制されるため、有機色素に比べて耐光性が向上すると推定される。
しかしながら、造塩化合物は、最大吸収波長とは異なる別の波長の吸収(副吸収)が生じやすい傾向がある。図4は、従来の造塩化合物の一例を示す模式図である。図4においては、一例として、2価の有機色素カチオン101と3価のヘテロポリ酸アニオン103とがイオン結合により塩を形成している造塩化合物120を模式的に示している。このように従来の造塩化合物120では、分子同士の会合状態において有機色素カチオン101同士の距離が近く相互作用しやすくなるので、副吸収が生じやすくなると推定される。副吸収は、最大吸収波長と少し離れた波長に現れたり、最大吸収波長に近い波長であれば、最大吸収波長のピークと重なって最大吸収波長のピークがブロードになって現れる。
副吸収が存在すると、不要な波長領域の光を選択的に吸収するだけでなく、必要な波長領域の光も吸収してしまうため、副吸収は低減されることが望まれる。
図3は、本開示のスクアリリウム色材の一例を示す模式図である。図3においては、一例として、2価の有機色素カチオン(スクアリリウム色素カチオン)101と2価の無色有機カチオン102と3価のヘテロポリ酸アニオン103とがイオン結合により塩を形成している造塩化合物(本開示のスクアリリウム色材)110を模式的に示している。このように本開示のスクアリリウム色材の造塩化合物110においては、無色有機カチオン102によって吸収波長に影響を与えることなく、スクアリリウム色素カチオン101同士の距離を遠ざけることが可能となり、スクアリリウム色素同士の相互作用が抑制されて副吸収が生じ難くなると推定される。
スクアリリウム色材の副吸収が低減されると、当該スクアリリウム色材を含有する膜は、必要な波長領域の光の吸収が抑制され、不要な波長領域の光を選択的に吸収することが可能となり、不要な波長領域の光のみを選択的に有効に低減可能になる。
副吸収が低減された本開示のスクアリリウム色材は、波長選択性が向上した色材である。本開示のスクアリリウム色材を用いると、前記副吸収に起因する色純度や明るさの低下が抑制され、色純度や明るさが向上する。
<スクアリリウム系色素>
スクアリリウム系色素は、スクアリン酸由来の4員環を有する色素をいう。
スクアリリウム系色素としては、例えば、下記式(1-1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2023006191000002
(式(1-1)中、A1およびA2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族環基または一般式(1-2)で表される基を表す;
Figure 2023006191000003
式(1-2)中、W1は、含窒素複素環を形成する非金属原子団を表し、R20は、アルキル基、アルケニル基またはアラルキル基を表し、dは、0または1を表し、波線は連結手を表す。)
一般式(1-1)におけるA1およびA2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族環基、または一般式(1-2)で表される基を表す。
芳香族環基としては、芳香族炭化水素基、すなわちアリール基であっても、芳香族複素環基、すなわちヘテロアリール基であっても良い。
1およびA2が表す芳香族炭化水素基の炭素数は、6~48が好ましく、6~24がより好ましく、6~12が特に好ましい。芳香族炭化水素基は、単環または縮合環であってよい。
1およびA2が表す芳香族複素環基としては、5員環または6員環が好ましい。また、芳香族複素環基は、単環または縮合環であってよく、単環または縮合数が2~8の縮合環が好ましく、単環または縮合数が2~4の縮合環がより好ましく、単環または縮合数が2または3の縮合環が更に好ましい。芳香族複素環基に含まれるヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が例示され、窒素原子、硫黄原子が好ましい。ヘテロ原子の数は、1~3が好ましく、1~2がより好ましい。具体的には、窒素原子、酸素原子および硫黄原子の少なくとも1つを含有する5員環または6員環等の単環、多環芳香族環から誘導される芳香族複素環基などが挙げられる。
芳香族環基における芳香族環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インデセン環、ペリレン環、ペンタセン環、アセナフテン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、ピロロ[2,1-b]ベンゾチアゾール環、ピロロ[2,1-a]イソキノリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、および、フェナジン環等が挙げられ、ベンゼン環またはナフタレン環が好ましい。
1およびA2における芳香族環基は、置換基を有していてもよい。芳香族環基が、置換基を2個以上有する場合、複数の置換基は同一であってもよく、異なっていてもよい。
置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族環基、アラルキル基、-OR100、-COR101、-COOR102、-OCOR103、-NR104105、-NHCOR106、-CONR107108、-NHCONR109110、-NHCOOR111、-SR112、-SO2113、-SO2OR114、-NHSO2115、-SO2NR116117、-(R118O)119、及びこれらの組み合わせの基等が挙げられる。R100~R117、及びR119は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族環基、またはアラルキル基を表し、R118は、それぞれ独立に2価の炭化水素基を表す。-COOR102のR102が水素原子の場合(すなわち、カルボキシ基)は、水素原子が解離してもよく、塩の状態であってもよい。また、-SO2OR104のR104が水素原子の場合(すなわち、スルホ基)は、水素原子が解離してもよく、塩の状態であってもよい。
溶剤溶解性を向上する点からは、R118の2価の炭化水素基としては、飽和又は不飽和のいずれであっても良く、また、直鎖、分岐、環状、又は、環状と直鎖若しくは分岐との組み合わせ、のいずれであってもよい。溶剤溶解性向上の点からは、R118の2価の炭化水素基は直鎖又は分岐の炭化水素基であることが好ましく、R118の2価の炭化水素基の炭素数としては、2~8が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がより更に好ましい。また、nは1~18が挙げられ、1~12が好ましく、1~6が更に好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~8が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。
アルケニル基の炭素数は、2~20が好ましく、2~12がより好ましく、2~8が特に好ましい。アルケニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。
アルキニル基の炭素数は、2~40が好ましく、2~30がより好ましく、2~25が特に好ましい。アルキニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。
芳香族環基のうち芳香族炭化水素基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12が更に好ましい。
アラルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。アラルキル基のアリール部分は、上記芳香族炭化水素基と同様である。アラルキル基の炭素数は、7~40が好ましく、7~30がより好ましく、7~25が更に好ましい。
芳香族環基のうち芳香族複素環基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2~8の縮合環がより好ましく、単環または縮合数が2~4の縮合環が更に好ましい。芳香族複素環基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。芳香族複素環基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。芳香族複素環基は、5員環または6員環が好ましい。芳香族複素環基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12が更に好ましい。
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、芳香族環基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、上述した置換基が挙げられる。
一方、A1およびA2が表す、一般式(1-2)で表される基において、R20は、アルキル基、アルケニル基またはアラルキル基を表し、アルキル基が好ましい。
アルキル基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~12が更に好ましく、2~8が特に好ましい。
アルケニル基の炭素数は、2~30が好ましく、2~20がより好ましく、2~12が更に好ましい。
アルキル基およびアルケニル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。
アラルキル基の炭素数は7~30が好ましく、7~20がより好ましい。
一般式(1-2)において、W1により形成される含窒素複素環としては、5員環または6員環が好ましい。また、含窒素複素環は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2~8の縮合環がより好ましく、単環または縮合数が2~4の縮合環が更に好ましく、縮合数が2または3の縮合環が特に好ましい。含窒素複素環は、窒素原子の他に、硫黄原子を含んでいてもよい。また、含窒素複素環は置換基を有していてもよい。置換基としては、上述した置換基が挙げられる。例えば、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アシルアミノ基が好ましく、ハロゲン原子およびアルキル基がより好ましい。ハロゲン原子は、塩素原子が好ましい。アルキル基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~12が更に好ましい。アルキル基は、直鎖または分岐が好ましい。
なお、一般式(1-1)においてカチオンは、以下のように非局在化して存在している。
Figure 2023006191000004
前記式(1-1)及び式(1-2)の詳細については、特開2017-181705の段落番号0055~0071、特開2011-208101号公報の段落番号0020~0049の記載も参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
スクアリリウム系色素としては、1分子内にスクアリン酸由来の4員環を2つ以上有する構造であっても良く、例えば、前記式(1-1)で表される化合物のA1およびA2のいずれか一方を、別の前記式(1-1)で表される化合物のA1およびA2のいずれか一方と連結基で結合した構造が挙げられる。1分子内にスクアリン酸由来の4員環を2つ以上有する構造のスクアリリウム系色素としては、特開2009-40860号公報の段落0018~0019、0048~0093に記載の化合物であってもよい。
スクアリリウム系色素の具体例としては、例えば、特開2011-208101号公報の段落番号0044~0049に記載の化合物や、特開2009-40860号公報の段落0018~0019、0048~0110に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
本発明に用いられるスクアリリウム系色素は、後述するヘテロポリ酸と塩を形成しやすいように、置換基として有機カチオン基を含むことが好ましく、下記一般式(2-1)で表される化合物が好ましい。
Figure 2023006191000005
(一般式(2-1)中、X1およびX2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族環基を表し、Yは2価の有機基を表し、Zは、有機カチオン基に誘導され得る基又は有機カチオン基を表す。eは1~4の整数を表し、eが2以上の場合に複数のY、及び複数のZは、それぞれ同一であっても異なっていても良い。)
一般式(2-1)中、X1およびX2における置換基を有していてもよい芳香族環基は、前記一般式(1-1)におけるA1およびA2における置換基を有していてもよい芳香族環基と同様であって良い。
また、溶剤溶解性を向上する点から、X1およびX2は、-(R118O)119、アラルキル基、-OR100、-COR101、-COOR102、-OCOR103、-NR104105、-NHCOR106、-CONR107108、-NHCONR109110、-NHCOOR111、-SR112、-SO2113、-SO2OR114、-NHSO2115、及び-SO2NR116117からなる群から選択される少なくとも1種の置換基を有してもよい。なお、前記-(R118O)119、-OR100、-COR101、-COOR102、-OCOR103、-NR104105、-NHCOR106、-CONR107108、-NHCONR109110、-NHCOOR111、-SR112、-SO2113、-SO2OR114、-NHSO2115または-SO2NR116117は、A1およびA2において説明した置換基と同様であって良い。
可視域(400nm~700nm)に吸収をもつ色素骨格を与えやすい点から、好適なX1およびX2としては、例えば以下の化学式(x-1)~(x-11)及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。化学式(x-1)~(x-11)の組み合わせとしては、例えば、(x-1)と(x-10)との組み合わせ、(x-1)と(x-10)と(x-10)との組み合わせ等が挙げられる。
Figure 2023006191000006
(化学式(x-1)~(x-11)において、R、R’、及びR”は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、-OR100、-COR101、-COOR102、-OCOR103、-NR104105、-NHCOR106、-CONR107108、又は-(CHCHO)n”-R120を表し、n”は2~12であり、R100~R108は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族環基、またはアラルキル基を表し、R120は炭素数1~4の炭化水素基を表す。nは2、n’は3を表す。式中、*は、スクアリン酸由来の4員環、又はYとの結合位置を示すが、(x-1)~(x-11)の2つ以上の組み合わせの場合、*は、スクアリン酸由来の4員環、(x-1)~(x-11)のいずれかとの結合位置、又はYとの結合位置を示す。)
化学式(x-1)~(x-11)におけるR、R’、及びR”の炭素数1~6の炭化水素基としては、炭素数1~6の飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基が挙げられる。
炭素数1~6の飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、又はネオペンチル基等の分岐鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基等の脂環式飽和炭化水素基等が挙げられる。
また、炭素数1~6の不飽和炭化水素基としては、芳香族炭化水素基であるフェニル基;ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、又はペンテニル基等の不飽和脂肪族炭化水素基;シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、又はシクロヘキセニル基等の1価の脂環式不飽和炭化水素基等が挙げられる。
また、当該炭化水素基の置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、スルファモイル基、スルホ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。
また、R、R’、及びR”におけるハロゲン原子は前記と同様であって良く、R100~R108は前記と同様であってよい。
溶剤溶解性を向上する点から、化学式(x-1)~(x-11)におけるR、R’、及びR”の少なくとも1つは、-(CHCHO)n”-R120であってもよい。-(CHCHO)n”-R120において、n”は好ましくは1~8であり、より好ましくは1~6である。R120は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、又はn-ブチル基であってよい。
一般式(2-1)中、Yは2価の有機基を表し、スクアリリウム系色素部分のX1およびX2の少なくとも一方と、カチオン基に誘導され得る基又は有機カチオン基であるZとの連結基として機能する。
Yにおける2価の有機基としては、ヘテロ原子を含んでいても良い2価の炭化水素基が挙げられ、炭素鎖中にO、S、Nが含まれてもよい2価の炭化水素基が挙げられる。Yにおける2価の有機基としては、例えば、2価の炭化水素基、及び、2価の炭化水素基と-CONH-、-COO-、-O-、-S-等との組み合わせの2価の基等が挙げられる。
2価の炭化水素基としては、飽和又は不飽和のいずれであっても良く、また、直鎖、分岐、環状、又は、環状と直鎖若しくは分岐との組み合わせ、のいずれであってもよい。
2価の炭化水素基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~15が更に好ましく、1~12がより更に好ましく、2~8が特に好ましい。
光学安定性の点から、Yにおける2価の有機基としては、2価の炭化水素基であることが好ましい。
発色に関わるスクアリリウム系色素部分とカチオン基とが電子的に独立していた方が、発色に関わる電子分布の広がりを抑制でき、鋭くシャープな半値幅の狭い吸収を与える点から、中でも、Yは、X1又はX2と直接結合する炭素原子がπ結合を有しない炭化水素基であることが好ましく、X1又はX2と直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は、X1又はX2と直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する芳香族炭化水素基が好ましく、中でも脂肪族飽和炭化水素基であることが好ましい。
1又はX2とZを、色素劣化の要因となりうる酸化や還元、又は加水分解反応に対して不活性であり、化学的に安定して連結する点から、好適なYとしては、例えば以下の化学式(y-1)~(y-6)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
中でも、鋭くシャープな半値幅の狭い吸収を与える点から、(y-1)、(y-3)、(y-5)、又は(y-6)であることが好ましく、(y-1)、(y-3)、又は(y-5)であることが好ましい。また、(y-1)と同様に、炭素数3~6の直鎖又は分岐のアルキレン基であってよい。
Figure 2023006191000007
(式中、*は、X1およびX2の一方と、Zとの結合位置を示す。 )
一般式(2-1)中、Zは有機カチオン基(Z)に誘導され得る基又は有機カチオン基である。
のうち、有機カチオン基(Z)に誘導され得る基としては、オニウムになり得る1価の含窒素化合物基、含硫黄化合物基、含リン化合物基等が挙げられる。なお、有機カチオン基(Z)はプロトン化されたオニウムに限られず、プロトンの代わりに炭化水素基によって置換されたオニウムであってもよい。
オニウムになり得る含窒素化合物としては、例えば、3級アミン、ピペリジン、ピロリジン、ピリジン、イミダゾリン、モルホリン等が挙げられる。
オニウムになり得る含硫黄化合物としては、例えば、チオール、チオエーテル等が挙げられる。
オニウムになり得る含リン化合物としては、例えば、ホスフィン等が挙げられる。
のうち、有機カチオン基(Z)としては、前記カチオン基に誘導され得る基(Z)がオニウムになった構造が挙げられ、テトラアルキルアンモニウムカチオン及びトリアルキルアンモニウムカチオン等のアンモニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、モルホリニウム、トリアルキルスルホニウムカチオン等のスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオン等のホスホニウムカチオン等が挙げられる。
中でも、プロトン付加によるカチオン化が容易であり、原料が比較的安価で入手しやすいことから、Zとしては、3級アミノ基、ピリジル基、イミダゾリル基等が好適に用いられる。
形成されるオニウムがカチオンとして安定に存在する点から、好適なZとしては、例えば以下の化学式(z-1)~(z-9)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2023006191000008
(化学式(z-1)~(z-9)において、R、及びR’は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、又は-(CHCHO)n”-R120を表し、n”は2~12であり、R120は炭素数1~4の炭化水素基を表す。式中、*は、Yとの結合位置を示す。)
化学式(z-1)~(z-9)における-(CHCHO)n”-R120は、前記(x-1)~(x-11)における-(CHCHO)n”-R120と同様であって良い。
eは1~4の整数を表すが、中でも連続したイオン対を形成し、そのイオン対会合体の分子量を大きくして、熱や光の耐久性を向上する点から2~4であることが好ましく、2~3であることが更に好ましく、2であることがより更に好ましい。
eが2以上の場合に複数のY、及び複数のZは、それぞれ同一であっても異なっていても良い。
スクアリリウム系色素の発色に関わる電子状態の対称性が増し、当該色素が鋭くシャープな半値幅の狭い吸収を与える点からは、X1とX2、複数のY、及び複数のZは、それぞれ同一であることが好ましい。
本発明に用いられる-Y-Zの組み合わせとしては、例えば下記が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
Figure 2023006191000009
前記一般式(2-1)で表される化合物としては、例えば下記一般式(3-1)で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2023006191000010
(式(3-1)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、-OR、-OCOR、-COOR、-CONHR10、-NHCOR11、又は-NR1213を表し、R、R、R、R10及びR11はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基を表し、R12及びR13はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基を表す。Qはそれぞれ独立に、直接結合又は2価の芳香族環基を表す。Yはそれぞれ独立に、2価の有機基を表し、Zはそれぞれ独立に、有機カチオン基に誘導され得る基又は有機カチオン基を表す。Eはそれぞれ独立に、置換基を表し、互いに隣接する置換基Eにより、環形成されていてもよい。m及びnはそれぞれ独立に0~4の整数を表す。)
~Rにおける置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基は、前記式(2-1)のRの置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基と同様であって良い。
また、R、R、R及びRにおける、ハロゲン原子は前記と同様であって良く、R、R、R、R10、R11、R12及びR13における置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基は、前記置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基と同様であって良く、炭素数1~3の炭化水素基であってよく、無置換であってもよい。
Qはそれぞれ独立に、直接結合又は2価の芳香族環基を表す。直接結合とは、介在する原子又は基がない状態で共有結合していることを意味する。
Qにおける2価の芳香族環基としては、前記A1およびA2における芳香族環基における芳香族環と同様のものを用いることができる。Qにおける2価の芳香族環基における芳香族環としては、環構成原子数が5~10であることが好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環等が挙げられる。原料入手で合成が容易である点から、ベンゼン環であってよい。
式(3-1)中のY及びZはそれぞれ、前記式(2-1)のY及びZと同様であって良い。
Eはそれぞれ独立に、置換基を表す。当該置換基としては、前記A1およびA2における芳香族環基が有していてもよい置換基と同様であってよい。
また、互いに隣接する置換基Eにより、環形成されていてもよい。すなわち、隣接置換基E同士が互いに結合して置換基Eが結合するベンゼン環と縮合環が形成されていてもよい。互いに隣接する置換基Eにより、環形成されている場合の縮合環としては例えば、ナフタレン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環等が挙げられる。
m及びnはそれぞれ独立に0~4の整数を表し、0~2の整数であって良く、0又は1であってよい。
前記一般式(3-1)で表される化合物においては、中でも、下記一般式(3-2)で表される化合物が、副吸収を低減しやすい点から好ましい。
Figure 2023006191000011
(式(3-2)中、R~R、Q、Y、Z、E、m及びnはそれぞれ前記式(3-1)と同様である。)
前記式(3-2)で表される化合物のように、-Y-ZがQとの結合位置に対してオルト位に置換されている場合には、ビスピロールスクアリリウム平面に対して、-Y-Zが結合しているベンゼン環の捻れ角が大きくなりやすく、-Y-Zのビスピロールスクアリリウム平面に対する傾斜角度が大きくなりやすい。前記式(3-2)で表される化合物においては、ビスピロールスクアリリウム平面に対して一方の-Y-Zは斜め上側に位置し、もう一方の-Y-Zは斜め下側に位置することになり、図5に示すようなS字状骨格を有する。そのため、前記式(3-2)で表される化合物は後述するポリ酸と塩を形成する際に、ビスピロールスクアリリウム平面同士が近づき難くなり、相互作用が抑制されやすくなり、中でも副吸収が低減されやすいと推定される。
本発明で用いられるスクアリリウム色素は、前述した公報に記載されている公知の製法や、その他文献に記載されている公知の製法を参考にして製造することができる。
一般式(2-1)で表される化合物の製造方法としては特に限定されないが、例えば、グリニャール試薬を用いた反応やパラジウム触媒などを用いたカップリング反応、ウルマン反応、フリーデル・クラフツ反応、アルドール反応、ウィッティヒ反応などの炭素―炭素形成反応を用いて、YとZを導入したX1およびX2を誘導する化合物を、塩基存在下でスクアリン酸と反応させる方法が挙げられる。
<無色有機カチオン>
本発明のスクアリリウム色材に用いられる無色有機カチオンとは、400nm以下の波長領域に吸収極大をもつ有機カチオンであってよい。さらに無色有機カチオンは、400nm超過780nm以下の波長領域に吸収を有しない化合物であってよい。
本発明に用いられる無色有機カチオンは、オニウムになり得る含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物から誘導される。有機カチオンはプロトン化されたオニウムに限られず、プロトンの代わりに炭化水素基によって置換されたオニウムであってもよい。
オニウムになり得る含窒素化合物としては、例えば、3級アミン、ピペリジン、ピロリジン、ピリジン、イミダゾリン、モルホリン等が挙げられる。
オニウムになり得る含硫黄化合物としては、例えば、チオール、チオエーテル等が挙げられる。
オニウムになり得る含リン化合物としては、例えば、ホスフィン等が挙げられる。
本発明に用いられる無色有機カチオンとしては、オニウムになり得る含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物がオニウムになった構造が挙げられ、アンモニウム基、ピリジニウム基、ピペリジニウム基、ピロリジニウム基、ピリジニウム基、イミダゾリウム基、モルホリニウム基、トリアルキルスルホニウムカチオン基等のスルホニウム基、及び、トリアリールアルキルホスホニウム基テトラアルキルホスホニウム基等のホスホニウム基からなる群から選択される少なくとも1種のカチオン基を含む化合物が挙げられる。
本発明に用いられる無色有機カチオンとしては、2価以上のカチオンであることが好ましく、1分子中に2つ以上のカチオン基を含むことが好ましい。
本発明に用いられる無色有機カチオンの価数の上限は、特に制限されるものではないが、4価以下であってよく、3価以下であってよい。
本発明に用いられる無色有機カチオンとしては、中でも可視域に吸収を有しない点から、ホスホニウム化合物であることが好ましく、2価以上のホスホニウム化合物であることがより好ましい。
本発明に用いられる無色有機カチオンとしては、中でも色素カチオンとヘテロポリ酸と無色有機カチオンを塩形成した際の色素カチオン同士の会合や相互作用を抑制するための分子的な嵩高さの点から、下記一般式(A)で表されるホスホニウム化合物であることが好ましい。
式(A): A―[P
(式(A)中、Aはa価の有機基であり、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基であり、aは2~4の整数である。)
式(A)中、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基であり、炭素数1~6の炭化水素基としては、炭素数1~6の飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基が挙げられる。
炭素数1~6の飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、又はネオペンチル基等の分岐鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基等の脂環式飽和炭化水素基等が挙げられる。
また、炭素数1~6の不飽和炭化水素基としては、芳香族炭化水素基であるフェニル基;ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、又はペンテニル基等の不飽和脂肪族炭化水素基;シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、又はシクロヘキセニル基等の脂環式不飽和炭化水素基等が挙げられる。
また、当該炭化水素基の置換基としては、例えばハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、-ORa1、-OCORa2、-COORa3、-CONHRa4、-NHCORa5、又は-NRa6a7(ここで、Ra1、Ra2、Ra3、Ra4及びRa5はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基を表し、Ra6及びRa7はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基)等が挙げられる。Ra1、Ra2、Ra3、Ra4、Ra5、Ra6及びRa7における置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基は前記と同様であってよく、炭素数1~3の炭化水素基であってよく、置換基を有していてなくてもよい。
式(A)中、Aはa価の有機基であり、当該有機基は、脂肪族炭化水素基、芳香族環基、及びこれらの組み合わせであってよく、炭素鎖中にO(酸素原子)、S(硫黄原子)、N(窒素原子)等のヘテロ原子が含まれていてもよいものである。
Aにおいて、脂肪族炭化水素基は、直鎖、分岐又は環状のいずれであってもよく、炭素原子が不飽和結合を有していてもよく、置換基を有していてもよく、炭素鎖中に、O、S、Nが含まれていてもよい。例えば、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、アミド基等が含まれていてもよい。
また、Aにおいて芳香族環基は前記と同様であってよく、中でもPと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基を有する、単環又は多環芳香族基が挙げられ、置換基を有していてもよく、O、S、Nが含まれる複素環であってもよい。
Aにおいて有していてもよい置換基としては、例えば、前記Rにおける置換基と同様であって良い。
中でもAは、a価の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、直鎖、分岐又は環状のいずれであってもよく、炭素原子が不飽和結合を有していてもよい。
<ヘテロポリ酸>
本発明において用いられるヘテロポリ酸は、ポリ酸のうち,構成オキソ酸の中心原子種が2種類以上のものである。ヘテロポリ酸は、造塩化合物において、ヘテロポリ酸アニオンとなる。
ヘテロポリ酸アニオンは、式(La-(aは2以上の数を表す)で表される。当該イオン式中、Lはヘテロ原子、Mはポリ原子、Oは酸素原子、l、m及びnはそれぞれの原子の組成比を表す。ポリ原子Mは、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、V(バナジウム)、Ti(チタン)、Nb(ニオブ)等が挙げられ、ポリ原子Mは2種以上の遷移金属原子が含まれていてもよい。
ヘテロ原子Lとしては、特に限定されないが、例えば、Si、P、As、S、Fe、Co等が挙げられる。また、一部にNaやH等の対カチオンが含まれていてもよい。
中でも、耐熱性に優れる点から、タングステン(W)及びモリブデン(Mo)より選択される1種以上の元素を有するポリ酸であることが好ましい。
このようなヘテロポリ酸としては、例えば、リンタングステン酸イオン[PW12403-、[P18626-、ケイタングステン酸イオン[SiW12404-、リンモリブデン酸イオン[PMo12403-、ケイモリブデン酸イオン[SiMo12404-、リンタングストモリブデン酸イオン[PW12-sMo403-(sは1以上11以下の整数)、[P18-tMo626-(tは1以上17以下の整数)、ケイタングストモリブデン酸イオン[SiW12-uMo404-(uは1以上11以下の整数)等が挙げられる。
耐光性を向上する点から、ヘテロポリ酸は、酸化還元電位が銀/塩化銀電極基準で-0.3Vよりも大きいヘテロポリ酸であることが好ましい。対アニオンとしてこのような酸化還元電位が特定値よりも大きいヘテロポリ酸アニオンを用いることにより、光によって励起された有機色素が基底状態に戻る際に生じるエネルギーを、中でも還元され易い性質を有するヘテロポリ酸が吸収することにより、光照射時の一重項酸素の生成を抑制でき、色材の耐光性はより向上したものとなる。
本開示で用いられる酸化還元電位が銀/塩化銀電極基準で-0.3Vよりも大きいヘテロポリ酸としては、例えば、HSiMo1240(-0.232V)、HPWMo40(-0.197V)、HPWMo40(-0.153V)、HPMo1240(-0.082V)、HPW40(0.045V)、HPW1040(0.050V)、HPMo40(0.168V)、HAsMo1240(0.183V)、HPW1140(0.224V)、HPMo1040(0.233V)、HPMo1140(0.261V)等が挙げられる。
ここで、本開示で特定される酸化還元電位は、白金を作用電極とした銀/塩化銀標準電極(KCl飽和水溶液)でのヘテロポリ酸水溶液の測定値をいい、前記ヘテロポリ酸水溶液としては、0.5M硫酸ナトリウム電解質水溶液に1mMヘテロポリ酸を溶解した水溶液を用いることができる。
前記測定条件によるヘテロポリ酸の酸化還元電位としては、Journal of Moleculer Catalysis A: Chemical 212 (2004) 229-236.のFig.9の酸化還元電位(V)の値を参照することもでき、上記カッコ内の値は当該文献の値である。
<スクアリリウム色材の製造方法>
本開示のスクアリリウム色材(造塩化合物)は、例えば、所望の構造を有するスクアリリウム色素と、無色有機カチオンと、ヘテロポリ酸とを溶媒中で混合し、必要に応じて加熱することにより得ることができる。
スクアリリウム色素と、無色有機カチオンと、ヘテロポリ酸とはそれぞれ、1種単独であっても、2種以上が組み合わされていてもよい。
本開示のスクアリリウム色材(造塩化合物)において、カチオンとなるスクアリリウム色素と無色有機カチオンの含有比率は、所望の色に調整することができればよく、特に限定されるものではない。カチオンの価数にもよるが、色素分子同士を距離を保つことによる副吸収生成の抑制の点から、スクアリリウム色素と無色有機カチオンのモル比は、スクアリリウム色素:無色有機カチオンが6:4~2:8であってよく、5:5~3:7であってよい。
また、本開示のスクアリリウム色材(造塩化合物)が正塩である場合には、酸性塩等を用いた場合に比べて分散性及び分散安定性が高い点から、正塩となるように、スクアリリウム色素と、無色有機カチオンとのカチオン数と、ヘテロポリ酸のアニオン数とを調整することが好ましい。
<スクアリリウム色材の特性>
前記スクアリリウム色材は、表示装置の可視域における色純度向上の点から、吸収スペクトルにおける波長400nm~700nmの範囲内の最大吸収波長(λmax)、すなわち透過スペクトルにおける波長400nm~700nmの範囲内の最小透過波長が、550nm~630nmであってよく、560nm~620nmであってよく、
570nm~610nmであってよい。スクアリリウム色材の波長380nm~750nmの範囲内の最大吸収波長乃至最小透過波長は、スクアリリウム色素の置換基を変更することによって適宜変化させることができる。
また、波長400nm~700nmの範囲内の最大吸収波長乃至最小透過波長の半値幅は表示装置の不要な光のみをカットする点から、85nm以下であってよく、70nm以下であってよい。
II.色材分散液
本開示の1実施態様の色材分散液は、前記本開示のスクアリリウム色材と、分散剤と、溶媒とを含有することを特徴とする。
本開示の色材分散液は、耐光性が良好で、副吸収が低減された前記本開示のスクアリリウム色材を含有することにより、耐光性が良好で、副吸収が低減された、色純度や明るさが向上したフィルム乃至成形体を形成することができる。
本開示の色材分散液は、少なくとも前記本開示のスクアリリウム色材と、分散剤と、溶媒とを含有するものであり、必要に応じて他の成分を含有してもよいものである。
以下、このような本開示の色材分散液の各成分について順に詳細に説明する。
<色材>
本開示の色材分散液において用いられる本開示のスクアリリウム色材は、前述と同様であって良いので、ここでの説明を省略する。
本開示の色材分散液において、本開示のスクアリリウム色材は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
更に他の色材が含まれても良い。他の色材は、色調の制御を目的として必要に応じて配合される。他の色材は、顔料及び染料等、従来公知のものを目的に応じて選択することができ、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。他の色材の配合量は、本開示の効果が損なわれない範囲であれば特に限定されず、後述する組成物で用いる場合と同様とすることができる。
本開示の色材分散液において、色材の含有量は、特に限定されない。色材の含有量は、分散性及び分散安定性の点から、色材分散液全量に対して5~40質量%、更に10~20質量%の範囲内であることが好ましい。
<分散剤>
本開示に係る色材分散液において、前記色材は溶媒中に分散させて用いられる。本開示においては色材を良好に分散させるために、分散剤が用いられる。分散剤としては、従来、顔料分散剤として用いられているものの中から適宜選択して用いることができる。分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、均一に、微細に分散し得る点から、高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。
高分子分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの変性物;ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;ポリシロキサン類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリエチレンイミン誘導体(ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシル基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩基);ポリアリルアミン誘導体(ポリアリルアミンと、遊離のカルボキシル基を有するポリエステル、ポリアミド又はエステルとアミドの共縮合物(ポリエステルアミド)の3種の化合物の中から選ばれる1種以上の化合物とを反応させて得られる反応生成物)等が挙げられる。
高分子分散剤としては、中でも、前記造塩化合物である色材を好適に分散でき、分散安定性が良好である点から、酸性分散剤であることが好ましい。
ここで、酸性分散剤とは、酸性基の量が塩基性基の量よりも多い分散剤をいい、塩基性分散剤は塩基性基の量が酸性基の量よりも多い分散剤をいう。
本開示で用いられる酸性分散剤としては、中でも、酸性基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、酸性基の量が80モル%以上を占める樹脂が好ましく、実質的に酸性基を有し、塩基性基を有しない樹脂がより好ましい。
本開示で用いられる酸性分散剤としては、中でも、酸価を有し、アミン価を有しないことが前記色材の分散安定性の点から好ましい。
酸性分散剤を用いた場合には、前記造塩化合物である色材を良好に分散させるのみならず、前記造塩化合物である色材を、イオン対の状態で、安定して存在させる作用をも有するものと推定される。
本開示で用いられる酸性分散剤の酸価は、好ましくは30mgKOH/g以上であり、より好ましくは60mgKOH/g以上であり、より更に好ましくは90mgKOH/g以上である。
また、本開示で用いられる酸性分散剤のアミン価は、好ましくは0mgKOH/gである。
なお、酸価とは、分散剤の固形分1g中に含まれる酸性成分を中和するために要する水酸化カリウムの質量(mg)を表し、JIS K 0070に記載の方法により測定される値である。
また、アミン価は、分散剤の固形分1gを中和するのに必要な塩酸量に対して当量となる水酸化カリウムの質量(mg)を表し、JIS K 7237に記載の方法により測定される値である。
本開示で用いられる酸性分散剤の酸性基としては、カルボキシ基、リン酸基及びその塩、スルホン酸基及びその塩等が挙げられる。
酸性分散剤としては、例えば、酸性基を有するブロック又はグラフト共重合体、酸性基を有するブロック共重合物のアルキルアンモニウム塩等の有機カチオンとの塩、水酸基含有カルボン酸エステル、高分子量ポリカルボン酸の塩等の脂肪酸塩、ポリエーテルエステル型アニオン性界面活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル等のリン酸エステル及びその塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩やアルキルベンゼンスルホン酸塩等のスルホン酸塩等を挙げることができる。
酸性分散剤の市販品として、例えばDISPERBYKR-103、DISPERBYKR-110、DISPERBYK-118、アジスパーPN411、アジスパーPA111等を挙げることができる。
酸性分散剤の中でも、色材の分散性及び分散安定性の点から、分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位、及び、下記一般式(I’)で表される構成単位から選ばれる1種以上を有する重合体であることがより好ましい。
Figure 2023006191000012
(一般式(I)及び一般式(I’)中、Lは、直接結合又は2価の連結基、R31は、水素原子又はメチル基、R32は、水酸基、炭化水素基、-[CH(R33)-CH(R34)-O]x1-R35、-[(CHy1-O]z1-R35、又は-O-R36で示される1価の基であり、R36は、炭化水素基、-[CH(R33)-CH(R34)-O]x1-R35、-[(CHy1-O]z1-R35、-C(R37)(R38)-C(R39)(R40)-OH、又は、-CH-C(R41)(R42)-CH-OHで示される1価の基である。
33及びR34は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R35は、水素原子、炭化水素基、-CHO、-CHCHO、-CO-CH=CH、-CO-C(CH)=CH又は-CHCOOR43で示される1価の基であり、R43は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。R37、R38、R39、R40、R41及びR42は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、又は、エーテル結合及びエステル結合から選択される1種以上を有する炭化水素基であり、R37及びR39は、互いに結合して環構造を形成してもよい。上記環状構造を形成した場合、当該環状構造が更に置換基R44を有していてもよく、R44は、炭化水素基、又は、エーテル結合及びエステル結合から選択される1種以上を有する炭化水素基である。前記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。一般式(I’)中、Xは有機カチオンを表す。x1は1~18の整数、y1は1~5の整数、z1は1~18の整数を表す。)
一般式(I)及び一般式(I’)において、Lは、直接結合又は2価の連結基である。ここでLが直接結合とは、リン原子が、連結基を介することなく主鎖骨格の炭素原子に直接結合していることを意味する。
における2価の連結基としては、主鎖骨格の炭素原子と、リン原子とを連結可能であれば、特に制限はない。Lにおける2価の連結基としては、例えば、直鎖、分岐又は環状のアルキレン基、水酸基を有する、直鎖、分岐又は環状のアルキレン基、アリーレン基、-CONH-基、-COO-基、-NHCOO-基、エーテル基(-O-基)、チオエーテル基(-S-基)、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。なお、本発明において、2価の連結基の結合の向きは任意である。すなわち、2価の連結基に-CONH-が含まれる場合、-COが主鎖の炭素原子側で-NHが側鎖のリン原子側であっても良いし、反対に、-NHが主鎖の炭素原子側で-COが側鎖のリン原子側であっても良い。
前記一般式(I)で表される構成単位、及び、前記一般式(I’)で表される構成単位から選ばれる1種以上を有する重合体は、特開2017-002191号公報に記載されている一般式(I)で表される構成単位、及び、一般式(I’)で表される構成単位から選ばれる1種以上を有する重合体と同様であってよい。
前記一般式(I)で表される構成単位、及び、前記一般式(I’)で表される構成単位から選ばれる1種以上を有する重合体の各符号の説明は、特開2017-002191号公報に記載されている一般式(I)で表される構成単位、及び、一般式(I’)で表される構成単位から選ばれる1種以上を有する重合体の対応する各符号の説明内容を参照して、この内容は本明細書に組み込まれる。
前記一般式(I)で表される構成単位、及び、前記一般式(I’)で表される構成単位から選ばれる1種以上を有する重合体は、中でも、前記(B)分散剤が、エポキシ基及び環状エーテル基の少なくとも一方を側鎖に有する重合体と、酸性リン化合物との反応生成物であって、酸性リン化合物基の少なくとも一部が塩を形成していてもよい重合体であることが、色材分散性、及び保存安定性に優れ、耐熱性及び耐溶剤性に優れた膜を形成可能な点から好ましい。
前記一般式(I)で表される構成単位、及び、前記一般式(I’)で表される構成単位から選ばれる1種以上を有する重合体は、分散性の点から更に溶剤親和性部位を有することが好ましい。このような分散剤としては、中でも、前記一般式(I)で表される構成単位、及び、前記一般式(I’)で表される構成単位から選ばれる1種以上と、下記一般式(II)で表される構成単位とを有するグラフト共重合体であるか、又は、前記一般式(I)で表される構成単位、及び、前記一般式(I’)で表される構成単位から選ばれる1種以上と、下記一般式(III)で表される構成単位とを有するブロック共重合体であることが、色材分散性、及び保存安定性に優れ、耐熱性及び耐溶剤性に優れた膜を形成可能な点から好ましい。
Figure 2023006191000013
(一般式(II)中、Lは、直接結合又は2価の連結基、R51は、水素原子又はメチル基、Polymerは、下記一般式(IV)で表される構成単位を有するポリマー鎖を表す。
一般式(III)中、R52は、水素原子又はメチル基、R53は、炭化水素基、-[CH(R54)-CH(R55)-O]x2-R56、-[(CHy2-O]z2-R56、-[CO-(CHy2-O]z2-R56、-CO-O-R56’又は-O-CO-R56”で示される1価の基、R54及びR55は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基、R56は、水素原子、炭化水素基、-CHO、-CHCHO又は-CHCOOR57で示される1価の基であり、R56’は、炭化水素基、-[CH(R54)-CH(R55)-O]x2’-R56、-[(CHy2’-O]z2’-R56、-[CO-(CHy2’-O]z2’-R56で示される1価の基であり、R56”は炭素数1~18のアルキル基、R57は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。前記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
x2及びx2’は1~18の整数、y2及びy2’は1~5の整数、z2及びz2’は1~18の整数を示す。)
Figure 2023006191000014
(一般式(IV)中、R61は水素原子又はメチル基であり、R62は炭化水素基、-[CH(R63)-CH(R64)-O]x3-R65、-[(CHy3-O]z3-R65、-[CO-(CHy3-O]z3-R65、-CO-O-R66又は-O-CO-R67で示される1価の基、R63及びR64は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基、R65は、水素原子、炭化水素基、-CHO、-CHCHO又は-CHCOOR68で示される1価の基、R66は、炭化水素基、-[CH(R63)-CH(R64)-O]x4-R65、-[(CHy4-O]z4-R65、-[CO-(CHy4-O]z4-R65で示される1価の基、R67は炭素数1~18のアルキル基、R68は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、前記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
nは5~200の整数を示す。x3及びx4は1~18の整数、y3及びy4は1~5の整数、z3及びz4は1~18の整数を示す。)
このような前記一般式(I)で表される構成単位、及び、前記一般式(I’)で表される構成単位から選ばれる1種以上と、前記一般式(II)で表される構成単位とを有するグラフト共重合体であるか、又は、前記一般式(I)で表される構成単位、及び、前記一般式(I’)で表される構成単位から選ばれる1種以上と、前記一般式(III)で表される構成単位とを有するブロック共重合体の具体例としては、特開2017-002191号公報等に記載のグラフト共重合体、及びブロック共重合体を好適なものとして挙げることができる。
本開示において分散剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。分散剤の含有量は、用いる色材の種類等に応じて適宜選定される。本開示の色材分散液において、分散剤は、色材100質量部に対して、通常、5~200質量部の範囲であり、10~100質量部であることが好ましく、20~80質量部であることがより好ましい。含有量が上記範囲内にあれば、色材を均一に分散させることができる。また、後述する組成物において、相対的にバインダー成分の配合比率が低下することがなく、十分な硬度を持った膜を形成できる。
本開示の色材分散液において、分散剤の含有量は、通常、分散液の全量に対して1~50質量%、更に1~20質量%の範囲内であることが、分散性及び分散安定性の点から好ましい。
<溶媒>
本開示に係る色材分散液は前記スクアリリウム色材を溶媒中で粒子(凝集体)として分散させて用いる。前記色材は前記特定の色素とヘテロポリ酸との造塩化合物であるため、有機溶媒に難溶性である。本開示に用いられる前記造塩化合物である色材は、その凝集状態を保持したまま溶媒中に分散させて用いることにより、耐光性に優れる。本開示に用いられる溶媒は、前記造塩化合物である色材を実質的に溶解しない溶媒又は難溶性の溶媒であり、23℃における前記色材の溶解度が、0.1(mg/10g溶媒)以下の溶媒であることが好ましい。中でも、23℃における前記色材の溶解度が、0.01(mg/10g溶媒)以下である溶媒が好ましく、更に、前記色材を実質的に溶解しない溶媒がより好ましい。
なお、本開示において、前記スクアリリウム色材を23℃における前記色材の溶解度が、0.1(mg/10g溶媒)以下の溶媒は、以下の評価方法により簡易的に判定することができる。
20mLサンプル管瓶に評価する溶媒を10g投入し、更に前記色材0.1gを投入し、ふたをして20秒間よく振った後、23℃のウォーターバス内で10分間静置する。この上澄み液5gをろ過し不溶物を除く。得られたろ液を更に1000倍に希釈した溶液の吸光スペクトルを紫外可視近赤外分光光度計(例えば、島津製作所社製 UV-3100PC)で1cmセルを用いて測定し、最大吸収波長における吸光度を求める。このとき、最大吸収波長における吸光度が2未満であれば当該溶媒は、前記色材を23℃における前記色材の溶解度が、0.1(mg/10g溶媒)以下の溶媒(難溶性の溶媒)であると評価できる。
また、上記の評価方法において、得られたろ液を希釈せずに、上記と同様に吸光スペクトルを測定し、最大吸光波長における吸光度を求める。このとき、最大吸収波長における吸光度が2未満であれば、当該溶媒は、前記造塩化合物である色材を実質的に溶解しない溶媒であると評価できる。
23℃における前記スクアリリウム色材の溶解度が、0.1(mg/10g溶媒)以下の溶媒としては、前記スクアリリウム色材を実質的に溶解しない溶媒又は難溶性の溶媒であれば特に限定されず、色材分散液中の各成分とは反応せず、これらを溶解若しくは分散可能な溶媒から適宜選択して用いればよい。
本開示の色材分散液においては、中でも、エステル系溶媒を用いることが分散安定性の点から好ましい。
エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテート等が挙げられる。
これらの溶媒は単独もしくは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本開示の色材分散液は、以上のような溶媒を、当該溶媒を含む色材分散液の全量に対して、通常は50~95質量%、好ましくは60~85質量%の割合で用いて調製する。溶媒が少なすぎると、粘度が上昇し、分散性が低下しやすい。また、溶媒が多すぎると、色材濃度が低下し、用途によっては特定波長の光の十分な吸収効果が得られない恐れがある。
<その他の成分>
本開示の色材分散液には、更に必要に応じて、分散補助樹脂、その他の成分を配合してもよい。
分散補助樹脂としては、例えばアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂の立体障害によって色材粒子同士が接触しにくくなり、分散安定化することやその分散安定化効果によって分散剤を減らす効果がある場合がある。
また、その他の成分としては、例えば、濡れ性向上のための界面活性剤、密着性向上のためのシランカップリング剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
<色材分散液の製造方法>
本開示の色材分散液は、前記分散剤を前記溶媒に混合、撹拌し、分散剤溶液を調製した後、当該分散剤溶液に、前記本開示に係る色材と必要に応じてその他の化合物を混合し、分散機を用いて分散させることによって調製することができる。また、本開示の色材分散液は、色材と分散剤を溶媒に混合し、公知の分散機を用いて分散させることによって調製してもよい。
分散処理を行うための分散機としては、2本ロール、3本ロール等のロールミル、ボールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントコンディショナー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミルが挙げられる。ビーズミルの好ましい分散条件として、使用するビーズ径は0.03~2.00mmが好ましく、より好ましくは0.10~1.0mmである。
具体的には、ビーズ径が比較的大きめな2mmジルコニアビーズで予備分散を行い、更にビーズ径が比較的小さめな0.1mmジルコニアビーズで本分散することが挙げられる。また、分散後、0.1~0.5μmのメンブランフィルターで濾過することが好ましい。
本開示においては、公知の分散機を用いて分散させる分散時間は、適宜調整され特に限定されないが、例えば、前記色材を微細化して、不要な波長領域の光に対して高い吸収性を実現する点から、5~40時間に設定されることが好ましい。
このようにして、色材粒子の分散性に優れた色材分散液が得られる。
本開示に用いられる色材の色材分散液中の平均分散粒径としては、用途に応じて適宜設定すればよく特に限定されないが、耐光性に優れる点から、10~150nmの範囲内であることが好ましく、20~125nmの範囲内であることがより好ましい。色材の平均分散粒径が上記範囲であることにより、本開示の色材分散液を塗工した面が、不要な波長領域の光に対して均一で優れた吸収性能を発揮する。
色材分散液中の色材の平均分散粒径は、少なくとも溶媒を含有する分散媒体中に分散している色材粒子の分散粒径であって、レーザー光散乱粒度分布計により測定されるものである。レーザー光散乱粒度分布計による粒径の測定としては、色材分散液に用いられている溶媒で、色材分散液をレーザー光散乱粒度分布計で測定可能な濃度に適宜希釈(例えば、1000倍など)し、レーザー光散乱粒度分布計(例えば、日機装社製なのトラック粒度分布測定装置UPA-EX150)を用いて動的光散乱法により23℃にて測定することができる。ここでの平均分散粒径は、体積平均粒径である。
色材分散液は、後述する組成物を調製するための予備調製物として用いることができる。すなわち、色材分散液とは、後述の組成物を調製する前段階において、予備調製される(組成物中の色材分質量)/(組成物中の色材以外の固形分質量)比の高い色材分散液である。具体的には、(組成物中の色材分質量)/(組成物中の色材以外の固形分質量)比は通常1.0以上である。色材分散液と少なくともバインダー成分を混合することにより、分散性に優れた組成物を調製することができる。
III.インキ組成物
本開示の1実施態様のインキ組成物は、前記本開示のスクアリリウム色材と、バインダー成分とを含有することを特徴とする。
本開示のインキ組成物は、耐光性が良好で副吸収が低減された前記本開示のスクアリリウム色材と、バインダー成分とを組み合わせて用いることにより、耐光性が良好で、副吸収が低減された、色純度や明るさが向上したフィルム乃至成形体を形成することができる。
本開示のインキ組成物は、少なくとも本開示のスクアリリウム色材、及びバインダー成分を含有するものであり、必要に応じて他の成分を有してもよいものである。
また、本開示のインキ組成物は、前記色材分散液にバインダー成分を組み合わせて用いてもよい。この場合、本開示のインキ組成物は、本開示のスクアリリウム色材と、バインダー成分と、分散剤と、溶媒とを含有する。
以下、本開示の組成物の各成分について詳細に説明する。なお、前記本開示に係る色材分散液に含まれ得る成分については、上記色材分散液の箇所において説明したものと同様のものを用いることができるので、ここでの説明は省略する。但し、溶媒は、前記好ましい溶媒に限られず、バインダー成分及び必要に応じて添加されるその他の成分の溶解性が高い溶媒を適宜選択して用いることができる。
<バインダー成分>
本開示のインキ組成物は、成膜性や成形性、被塗工面に対する密着性を付与するためにバインダー成分を含有する。
バインダー成分は少なくとも樹脂を含有することが好ましい。当該樹脂としては、粘着剤乃至熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂のいずれであってもよい。ここでの樹脂は、高分子化合物乃至重合体に限定されることなく、低分子化合物乃至モノマーであっても良い。また、樹脂エマルジョンを構成するような合成樹脂の粒子であっても良い。
バインダー成分は、光透過性を有することが好ましく、バインダー成分だけを用いて膜厚3μmのフィルムにした際に可視光線領域における透過率が80%以上であることが好ましく、84%以上であるものがより好ましい。なお、上記透過率は、JISK7361-1(プラスチック-透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルブチラール系粘着剤、エチレン-酢酸ビニル系粘着剤、ポリビニルエーテル、飽和無定形ポリエステル、メラミン樹脂等の粘着剤が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ニトロセルロース、エチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;熱可塑性ウレタン系樹脂;塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の変性オレフィン系樹脂;酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ブチラール樹脂等のビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;環状ポリオレフィン、ポリオレフィン等のオレフィン系樹脂等が挙げられる。
塗膜に充分な硬度を付与する点からは、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を含む硬化性バインダー成分を含有することが好ましい。硬化性バインダー成分としては、特に限定されず、従来公知の硬化性バインダー成分を適宜用いることができる。
硬化性バインダー成分としては、例えば、可視光線、紫外線、電子線等により重合硬化させることができる光硬化性樹脂を含む光硬化性バインダー成分や、加熱により重合硬化させることができる熱硬化性樹脂を含む熱硬化性バインダー成分を含むものを用いることができる。
熱硬化性バインダーとしては、1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物と硬化剤の組み合わせが通常用いられ、更に、熱硬化反応を促進できる触媒を添加しても良い。熱硬化性官能基としては、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、エチレン性不飽和結合等が挙げられる。熱硬化性官能基としてはエポキシ基が好ましく用いられる。熱硬化性バインダー成分の具体例としては、例えば、国際公開第2012/144521号に記載のものを挙げることができる。
一方、光硬化性バインダーとしては、1分子中に光硬化性官能基を1個以上有する化合物と光開始剤の組み合わせが通常用いられる。これらの化合物や光開始剤は従来公知のものを適宜選択して用いることができる。光硬化性官能基としては、ラジカル重合性のエチレン性不飽和結合含有基、カチオン重合性のエポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。光硬化性官能基としてはエチレン性不飽和結合含有基が好ましく用いられ、具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。
光硬化性化合物が1分子中に有する光硬化性官能基の数は、硬度を向上する点から、2つ以上であることが好ましく、更に3つ以上であることが好ましい。
前記ラジカル重合性化合物としては、反応性の高さの点から、中でも(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーと称される化合物や、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリフルオロアルキル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートと称される分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する分子量が数百から数千のオリゴマーを好ましく使用でき、またアクリレートポリマーの側鎖に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートポリマーも好ましく使用できる。中でも、硬度を向上する点から、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーを好ましく使用できる。
また、樹脂エマルジョンとしては、アクリル系エマルジョン、スチレン・アクリル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、エチレン・酢酸ビニル系エマルジョン等が挙げられる。
また、膜がパターンを有し、膜を形成する際にフォトリソグラフィー工程を用いる場合には、アルカリ現像性を有する感光性バインダー成分が好適に用いられる。
感光性バインダー成分としては、ポジ型感光性バインダー成分とネガ型感光性バインダー成分が挙げられる。ポジ型感光性バインダー成分としては、例えば、アルカリ可溶性樹脂及び感光性付与成分としてo-キノンジアジド基含有化合物を含んだ系が挙げられ、アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ポリイミド前駆体等が挙げられる。
ネガ型感光性バインダー成分としては、アルカリ可溶性樹脂と、多官能性モノマーと、光開始剤を少なくとも含有する系が好適に用いられる。アルカリ可溶性樹脂と、多官能性モノマーと、光開始剤の具体例としては、例えば、国際公開第2012/144521号に記載のものを挙げることができる。
<任意添加成分>
本開示のインキ組成物には、本開示の目的が損なわれない範囲で、必要に応じて他の光吸収化合物や各種添加剤を含むものであってもよい。
他の光吸収化合物としては、例えば、可視光域に所望の吸収を有する化合物を挙げることができ、スクアリリウム化合物、アントラキノン化合物、フタロシアニン化合物、メチン化合物、アゾメチン化合物、オキサジン化合物、アゾ化合物、スチリル化合物、クマリン化合物、ポルフィリン化合物、ジベンゾフラノン化合物、ジケトピロロピロール系化合物、ローダミン化合物、キサンテン化合物、ピロメテン化合物などが挙げられる。
添加剤としては、例えば、重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤、帯電防止剤、フィラーなどが挙げられる。添加剤として更に、硬度や屈折率を調整するための無機又は有機微粒子、防眩剤、防汚剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定化剤、表面改質剤等を含んでいても良い。
<組成物における各成分の配合割合>
前記本開示で用いられる特定の色材及び必要に応じて配合される他の色材の合計の含有量は、目的に応じて適宜選択されればよく特に限定されないが、例えば組成物の固形分全量に対して、0.01質量%以上であってよく、0.05質量%以上であってよく、0.1質量%以上であってよく、0.2質量%以上であってよく、20質量%以下であってよく、10質量%以下であってよい。色材が少なすぎると、不要な波長領域の光に対する所望の吸収性を得ることが困難となる恐れがある。また色材等が多すぎると、組成物を基材へ塗布し硬化させた際の基材への密着性、硬化膜の表面荒れ、塗膜硬さ等の塗膜としての特性が不十分となるおそれがある。尚、本開示において固形分は、上述した溶媒以外のもの全てであり、25℃で液状の多官能性モノマー等も含まれる。
また、分散剤を用いる場合、当該分散剤の含有量は、色材を均一に分散できる範囲で適宜調整すればよい。例えば、色材100質量部に対して10~150質量部用いることが好ましく、色材100質量部に対して15~45質量部の割合で配合するのがより好ましく、15~40質量部の割合で配合するのが更により好ましい。また、分散剤の含有量は、組成物の固形分全量に対して、0.01~30質量%の範囲内であることが好ましく、中でも0.03~10質量%の範囲内であることが好ましい。分散剤の含有量が、組成物の固形分全量に対して、0.01質量%未満の場合には、分散剤を用いた効果が十分に発揮されない恐れがあり、30質量%を超える場合には、硬化性、現像性の低下を招く恐れがある。
バインダー成分は、その合計の含有量が、組成物の固形分全量に対して24~94質量%、40~90質量%の割合で配合するのが好ましい。
また、溶媒を用いる場合、その含有量は、色材の分散性や、組成物の塗工性等の点から適宜調整すればよい。溶媒は、該溶媒を含む組成物の全量に対して、通常、65~95質量%の範囲内であることが好ましく、中でも75~88質量%の範囲内であることがより好ましい。
<インキ組成物の製造>
インキ組成物の製造方法は、特に限定されない。
バインダー成分として、粘着剤や熱可塑性樹脂を用いる場合、粘着剤や熱可塑性樹脂に前記本開示で用いられる特定の色材を添加して、混錬して用いてもよい。
あるいは、溶媒中に、バインダー成分と、所望により用いられる各種添加成分とを添加し、混合したのち、これに前記本開示に用いられる色材を加えて混合する方法などが挙げられる。
また、前記本開示に係る色材分散液を用いて組成物を調製する場合、例えば、溶媒中に、前記本開示に係る色材分散液と、バインダー成分と、所望により用いられる各種添加成分とを同時に投入し、混合する方法や、溶媒中に、バインダー成分と、所望により用いられる各種添加成分とを添加し、混合したのち、これに前記本開示に係る色材分散液を加えて混合する方法などが挙げられる。
<フィルム乃至成形体>
本開示の1実施態様のフィルム乃至成形体は、本開示の1実施態様のインキ組成物及びその硬化物の少なくとも一方を含有するフィルム乃至成形体である。
本開示の1実施態様のフィルム乃至成形体は、前記本開示の1実施態様のインキ組成物及びその硬化物の少なくとも一方を含有していることにより、耐光性が良好で、副吸収が低減された、色純度や明るさが向上したフィルム乃至成形体である。
本開示のフィルムは、パターンを有していてもよく、パターンを有しない膜(平坦膜)であってもよい。また、本開示のフィルムは、支持体上に積層した状態で用いてもよく、本開示のフィルムを支持体から剥離して用いてもよい。
本開示のフィルムは、シート、乃至、板と呼称されるものであっても良く、膜厚は、目的に応じて適宜調整できる。膜厚は、200μm以下であって良く、更に150μm以下であって良い。中でも全光線透過率を確保する点からは、本開示のフィルムは100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。
本開示の1実施態様のフィルムの製造方法としては、例えば、前記本開示の1実施態様のインキ組成物を用いて支持体上に組成物層を形成する工程と、必要に応じて、更に前記組成物層を硬化する工程とを含む方法が挙げられる。
支持体としては、特に限定されるものではなく、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、シクロオレフィンポリマー、セルロースアシレート等の材料からなる支持体の他、表示装置に用いられる他の光学部材であってもよい。
支持体へのインキ組成物の適用方法としては、適宜選択して公知の方法を用いることができる。例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法、E型塗布方法等の塗布方法や、インクジェット、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法、金型等を用いた転写法、ナノインプリント法などが挙げられる。
支持体上に適用された組成物層は、適宜必要に応じて溶媒を除去(乾燥)して、フィルムとすることができる。
前記組成物層を硬化する工程としては、組成物に含まれるバインダー成分の硬化性に合わせて、加熱、及び光照射の少なくとも1つを適用するなど、公知の方法を適宜選択して、バインダー成分の硬化を行えばよい。
また、フィルムを製造後、支持体を除去してもよい。
本開示の1実施態様のフィルムがパターンを有する場合の製造方法としては、更に、フォトリソグラフィ法またはドライエッチング法により、組成物層に対してパターンを形成する工程を含む方法が挙げられる。
フォトリソグラフィ法またはドライエッチング法については、特に限定されることなく、組成物に含まれるバインダー成分に合わせて公知の方法を適宜選択して適用することができる。
本開示の1実施態様の成形体の製造方法としては、例えば、前記本開示の1実施態様のインキ組成物を用いて加熱成形する方法が挙げられる。成形方法としては、インキ組成物に含まれるバインダー成分に合わせて公知の方法を適宜選択して適用することができる。
本開示の1実施態様のフィルム乃至成形体は、画像表示装置の他、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子などの各種装置に用いることができる。また、本開示の1実施態様のフィルム乃至成形体は、光線を透過または反射吸収し、様々な効果を与えることを目的とした、後述する光学フィルタに好適に用いられる他、選択的な波長の吸収熱を利用する記録媒体等に用いることができる。
また、本開示の1実施態様のフィルム乃至成形体は、光線を透過または反射吸収し、様々な効果を与えることを目的とした光学材料としても用いることができ、光学材料としては、例えば、プラスチック眼鏡レンズ、サングラスレンズ、ゴーグル等のレンズにも用いることができる。
IV.光学フィルタ
本開示の1実施態様の光学フィルタは、前記本開示のスクアリリウム色材を含有する、光学フィルタである。
本開示の1実施態様の光学フィルタは、前記本開示のスクアリリウム色材を含有する層からなる単層構造であってもよく、前記本開示のスクアリリウム色材を含有する層を含む多層構造を有する積層体であってもよい。
前記本開示のスクアリリウム色材を含有する層としては、前述の本開示の1実施態様のフィルムと同様であってよい。
本開示の1実施態様の光学フィルタにおいて、前記本開示のスクアリリウム色材を含有する層は、1層でも、2層以上であってもよく、2層以上に含まれる前記本開示のスクアリリウム色材は同じであっても異なっていてもよい。
前記本開示のスクアリリウム色材を含有する本開示の1実施態様の光学フィルタは、例えば、不要な波長領域の光を選択的に吸収する特定波長吸収フィルタ、色調を調整する色補正フィルタ等として用いられてよい。
光学フィルタとしては、例えば、表示装置の他、照明装置、窓材等に適用される。
本開示の1実施態様の光学フィルタは、支持体が含まれていても良く、更に、粘着剤層や、剥離可能な剥離フィルムが積層されていても良い。支持体や、粘着剤層や、剥離可能な剥離フィルムとしては、従来公知の構成を適宜選択して適用することができる。粘着剤層や、剥離可能な剥離フィルムの具体例としては、例えば、特開2009-251511号公報に記載のものを挙げることができる。
本開示の1実施態様の光学フィルタは、更に他の機能層を有していても良い。
他の機能層としては、例えば、偏光子、位相差フィルム、保護フィルム、反射防止層、防眩層、防汚層、帯電防止層、ハードコート層、粘着層、接着層等が挙げられる。偏光子、位相差フィルム、保護フィルム、反射防止層、防眩層、防汚層、帯電防止層、ハードコート層、粘着層、接着層としては、各々、従来公知の構成を採用することができる。
また、本開示の1実施態様の光学フィルタにおいて、前記本開示のスクアリリウム色材を含有する層は、更に別の機能が付与されていても良い。別の機能としては、例えば、保護フィルム、反射防止層、防眩層、防汚層、帯電防止層、ハードコート層、粘着層、及び接着層からなる群から選択される1種以上が有する機能が挙げられる。
本開示の1実施態様の光学フィルタは、従来公知の光学フィルタの構成に、本開示のスクアリリウム色材を含有させても良い。例えば、前記機能層の少なくとも1つに本開示のスクアリリウム色材を含有させた光学フィルタが挙げられる。
本開示の1実施態様の光学フィルタは、表示装置における表示パネルの観察者側表面に設置される、ディスプレイ表面フィルムであってもよい。
ディスプレイ表面フィルムは、通常、ディスプレイ表面に必要な表面機能層を有し、更に表面機能層の支持体、及び当該支持体の表面機能層とは反対側の面に、更に表面機能層や粘着層や接着層を有していても良いものである。表面機能層としては、例えば、偏光子、位相差フィルム、保護フィルム、ハードコート層、反射防止層、防眩層、防汚層、及び帯電防止層の少なくとも1種以上が挙げられる。
表面機能層としては、中でも、ディスプレイ表面フィルムの表面硬度を向上する点及び溶液プロセスで塗膜を形成し得る点から、ハードコート層の機能を有する層を含むものであってよく、少なくともハードコート層及び反射防止層の機能を有する層を含むものであってよい。
ハードコート層は、一般に保護フィルムよりも硬度が高く、少なくとも耐擦傷性を付与する層である。ハードコート層は、JIS K5600-5-4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(4.9N荷重)で、「H」以上の硬度を示すことが好ましい。
ハードコート層は、視認性を向上するための反射防止機能や防眩機能を有していることが好ましく、更に防汚機能や帯電防止機能を有していても良いものである。
ハードコート層は、従来公知の表示装置の光学フィルタ乃至光学フィルムに用いられるハードコート層を適宜選択して用いることができる。ハードコート層としては、例えば、国際公開第2012/018087号、国際公開第2011/065531号、特開2018-51918号公報等に記載されているハードコート層を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれるが、これらに限定されるものではない。
表面機能層に採用される、偏光子、位相差フィルム、保護フィルム、反射防止層、防眩層、防汚層、及び帯電防止層の構成としても、従来公知の構成を適宜選択して採用することができ、例えば、特許第6070195号、特許第6040936号、特開2017-21293号、特開2013-142817号、特開2011-90301号等を参照することができる。
図1は、本開示の光学フィルタの一例を示す模式的断面図である。図1に示されるように、光学フィルタ40は、ディスプレイ表面フィルムとして機能し得るものであって、支持体1の一面側に、表面機能層30を有し、支持体1の他の一面側に、粘着層乃至接着層2を有する積層体が挙げられる。支持体1の他の一面側において、支持体1と粘着層乃至接着層2の間に更に表面機能層30を有していても良い(図示せず)。図1は一例にすぎず、本開示の光学フィルタは当該構成に限定されるものではない。
本開示の光学フィルタは、表面機能層30に相当するフィルムのみからなるものであっても良い。
但し、前記表面機能層30は、1層であっても良いし、2層以上からなる積層体であっても良い。表面機能層30が積層体の場合の構成としては、例えば、低屈折率層及び高屈折率層からなる反射防止層、並びに、ハードコート層がこの順に積層されている構成が挙げられる。
図1における本開示の光学フィルタは、本開示のスクアリリウム色材を、表面機能層30、支持体1、及び、粘着層乃至接着層2のいずれに含有していても良く、2層以上に含有していても良い。本開示の光学フィルタは、耐光性をより向上する点から、紫外線吸収剤を含む表面機能層30や紫外線吸収剤を含む支持体1よりも表示素子側に位置する層に、本開示のスクアリリウム色材を含有してよい。
本開示のスクアリリウム色材を含有する、表面機能層30、支持体1、及び、粘着層乃至接着層2は、バインダー成分と、必要に応じて更に必要なその他成分を適宜選択して、前記本開示の1実施態様のフィルムを製造する方法と同様に製造することができる。
支持体1の材料としては、前述の本開示の1実施態様のインキ組成物のバインダー成分のうち熱可塑性樹脂から適宜選択されることが好ましく、また、前述の本開示の1実施態様のフィルムの支持体と同様であって良い。支持体1としては、中でも、光学特性の点から、トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)やシクロオレフィンポリマーフィルム等が好適に用いられる。
また、粘着層乃至接着層2の材料としては、前述の本開示の1実施態様のインキ組成物のバインダー成分のうち、粘着剤又は硬化性バインダー成分の中から可視光線領域における透過率が高いバインダー成分を適宜選択して用いればよい。
本開示のスクアリリウム色材は、表示装置の既存製造工程を使用できる点から、表面機能層30に含有させてもよい。
表面機能層30のうち、例えばハードコート層に本開示のスクアリリウム色材を含有させても良い。ハードコート層の材料としては、前述の本開示の1実施態様のインキ組成物のバインダー成分のうち、光硬化性バインダー成分の中から可視光線領域における透過率が高いバインダー成分を適宜選択して用いればよい。
本開示のディスプレイ表面フィルムとして用いられる光学フィルタにおいて、表面機能層の合計厚みは、適宜選択されれば良く、例えば、10~150μmが挙げられるが、通常は20~100μmとする。
本開示のディスプレイ表面フィルムとして用いられる光学フィルタにおいて、支持体を有する場合の支持体の厚みは、適宜選択されれば良く、例えば、10~150μmが挙げられるが、通常は20~100μmとする。
本開示のディスプレイ表面フィルムとして用いられる光学フィルタにおいて、粘着層乃至接着層を有する場合の粘着層乃至接着層の厚みは、適宜選択されれば良く、例えば、10~150μmが挙げられるが、通常は20~100μmとする。
本開示のディスプレイ表面フィルムとして用いられる光学フィルタは、JISK7361-1に準じて測定される可視光線領域(380nm~750nm)における透過率が80%以上であってよく、90%以上であってよい。
本開示の光学フィルタは、前記本開示のスクアリリウム色材を用いることにより、波長570~590nm付近の波長領域に最大吸収波長(最小透過波長)を有する光学フィルタとすることが可能であり、波長570~590nm付近の波長を選択的に吸収可能である。例えば、このような本開示の光学フィルタを表示装置の表示素子の視認側に配置することにより、光学フィルタに入射した光から波長570~590nm付近の波長を選択的に吸収することができ、光学フィルタを透過した光は、光学フィルタに入射した光と比べて緑色の光及び赤色の光の色純度を向上することができる。
V.表示装置
本開示の1実施態様の表示装置は、前記本開示の1実施態様の光学フィルタを備える表示装置である。
前記本開示の光学フィルタは、表示装置に組み込まれて用いられればよく、組み込まれ方は特に限定されない。表示装置としては、特に限定されず適用可能である。
表示装置を構成する表示素子としては、液晶表示素子、EL(無機EL、有機EL)表示素子、プラズマ表示素子、電子ペーパー表示素子、LED表示素子(マイクロLEDなど)、量子ドット発光ダイオード(QLED)を用いた表示素子等が挙げられる。すなわち、表示装置としては、液晶表示装置、EL(無機EL、有機EL)表示装置、プラズマ表示装置、電子ペーパー表示装置、LED表示装置(マイクロLEDなど)、量子ドット発光ダイオード(QLED)を用いた表示装置等が挙げられる。
なお、液晶表示装置の場合、表示素子の成形体とは反対側にバックライトを配置することを要する。
中でも、本開示の1実施態様の表示装置は、前記本開示のスクアリリウム色材を含有する光学フィルタを表示素子の視認側に配置して備える表示装置であることが、表示色の色純度が高い点から好ましい。前記本開示のスクアリリウム色材を含有する光学フィルタをディスプレイ表面フィルムとして備えてよい。
本開示の1実施態様の表示装置の一例について、図面を用いて説明する。
図2に示されるように、画像表示装置100は、主に、画像を表示するための表示パネル10と、表示パネル10の背面側に配置されたバックライト装置20とを備えている。本実施形態においては、表示パネル10が液晶表示パネルであるので、画像表示装置100がバックライト装置20を備えているが、表示パネル(表示素子)の種類によってはバックライト装置20を備えていなくともよい。
(表示パネル)
表示パネル10は、図2に示されるように、バックライト装置20側から観察者側に向けて、保護フィルム11、偏光子12、保護フィルム13、光透過性粘着層14、表示素子15、光透過性粘着層16、保護フィルム17、偏光子18、光透過性粘着層16’、保護フィルム19、表面機能層30の順に積層された構造を有している。図2においては、光透過性粘着層16’、保護フィルム19、及び表面機能層30の積層体が、ディスプレイ表面フィルム40に相当する。本開示の光学フィルタとしては、ディスプレイ表面フィルム40であってもよいし、光透過性粘着層16、保護フィルム17、偏光子18、光透過性粘着層16’、保護フィルム19、表面機能層30の順に積層された積層体であっても良い。
なお、表示パネル10は、表示素子15を備えていればよく、保護フィルム11等は備えていなくともよい。
図2の表示素子15は液晶表示素子である。ただし、表示素子15は液晶表示素子に限られず、例えば、前述のような表示素子であってもよい。液晶表示素子は、2枚のガラス基材間に、液晶層、配向膜、電極層、カラーフィルタ等を配置したものである。
保護フィルム、偏光子、光透過性粘着層は従来公知の物を適宜選択して用いることができる。
保護フィルムとしては、トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)やシクロオレフィンポリマーフィルム等が好適に挙げられる。
光透過性粘着層としては、例えば、OCA(Optical Clear Adhesive)のような粘着シートが好適に挙げられ、OCR(Optically Clear Resin)のような重合性化合物を含む液状の硬化性接着層用組成物の硬化物等であってもよい。
図2の表面機能層30は、表示装置における表示パネルの表面に位置し、様々な機能を付与する層であり、1層であっても良いし、2層以上であっても良い。表面機能層30としては、前述の本開示の1実施態様の光学フィルタにおいて説明した表面機能層と同様であって良く、ハードコート層、反射防止層、防眩層、防汚層、及び帯電防止層の少なくとも1種の機能を有する層であってよい。
(バックライト装置)
バックライト装置20は、表示パネル10の背面側から表示パネル10を照明するものである。バックライト装置20としては、公知のバックライト装置を用いることができ、またバックライト装置20はエッジライト型や直下型のバックライト装置のいずれであってもよい。また、バックライトの光源としては、LED、CCFL(冷陰極蛍光管)等が挙げられ、光源として量子ドットを用いたバックライトは色再現性を高めやすい。
本開示の1実施態様の表示装置は、前記本開示のスクアリリウム色材を含有する、光学フィルタを備えることから、白色LEDや青色LEDを光源とする表示装置に好適に使用できる。前記本開示のスクアリリウム色材を含有する光学フィルタを用いると、570~590nm付近の光を好適に除いて、白色光の色度を好ましいものに補正できる点から、白色LEDが、青色発光LEDの青色光と黄色発光の蛍光体の組合せにより白色光を得る方式や、青色発光LEDと緑色および赤色発光の蛍光体の組合せにより白色光を得る方式の光源を有する表示装置であってよい。また、前記本開示のスクアリリウム色材を含有する光学フィルタを用いると、570~590nm付近の光を好適に除いて、緑色の光及び赤色の光の色純度を向上することができる点から、青色発光LEDの光源を有する表示装置であってよい。
本開示の1実施態様の表示装置において、光学フィルタの設置位置としては、バックライトとしての光源と表示装置の観察者との間に配置されるものであれば良く、特に限定されるものではない。
本開示の1実施態様の表示装置は、例えば図2において、表示素子15と偏光子18との間に存在する、光透過性粘着層16や保護フィルム17が、前記本開示のスクアリリウム色材を含有する光学フィルタであっても良く、保護フィルム11、保護フィルム13、又は光透過性粘着層14が、前記本開示のスクアリリウム色材を含有する、光学フィルタであっても良い。
本開示の1実施態様の表示装置は、前記例示に限られることなく、従来公知の構成を適宜選択して採用されれば良い。
本開示の1実施態様の表示装置は、例えば、図2の表示パネル10よりも観察者側に、例えば光透過性接着層を介して、更にタッチパネルを備えていても良い。
また、前記例示に限られることなく、本開示の1実施態様の表示装置は、従来公知の構成を適宜選択して採用されれば良く、表示装置において、前記本開示の1実施態様の光学フィルタは、例えば、不要な波長領域の光を低減するのに適した位置に備えればよく、適宜設定することができる。
以下、本開示について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本開示の実施形態を制限するものではない。
以下、本開示について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本開示の実施形態を制限するものではない。
下記H-NMR測定は、日本電子製、JEOL JNM-LA400WBを用いて行った。
下記MALDI-MS測定は、BRUKER 製、REFLEX IIを用いて行った。
下記元素分析において、有機微量元素分析は、エグゼター・アナリティカル社製、CE440を用いて行った。
(合成例1:スクアリリウム色素Aの合成)
国際公開2019-216282号公報記載の中間体1におけるトリエチレングリコールモノメチルエーテルを2-メトキシエタノールに変えた以外は、同文献の合成例6の方法に従い、同様の手法にてスクアリリウム色素Aを得た。H-NMRにて、得られたスクアリリウム色素Aが下記構造であることを確認した。得られたH-NMRスペクトルを図6に示す。
Figure 2023006191000015
(合成例2:スクアリリウム色素Bの合成)
(1)工程1
2Lフラスコに2-ブロモベンズアルデヒド(東京化成社製、225g、1.22mol)と酢酸(関東化学社製、650mL)を加えた。その後、10℃まで冷却し、1-ニトロプロパン(東京化成社製、217g、2.43mol)を添加し、ブチルアミン(東京化成社製、102g、1.40mol)を11℃でゆっくり滴下した。その後、80℃まで昇温し、2時間撹拌した。室温まで冷却した反応液を氷水(1300mL)に注ぎ入れ、油状物と固体を分取した。再度水(1300mL)を用いて油状物と固体を洗浄した後、水(2170mL)と酢酸エチル(2170mL)を加え、有機物を抽出した。抽出した有機層を水洗し、減圧下濃縮した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、目的物である中間体1(収量:293g、収率87%)を得た。
(2)工程2
5Lフラスコに中間体1(270g、1.05mol)、イソシアノ酢酸エチル(東京化成社製、119g、1.05mol)、及び脱水テトラヒドロフラン(2700mL)を加え、0℃まで冷却した。その後、カリウムt-ブトキシド(東京化成社製、124g、1.11mol)を分割添加し、室温で17時間撹拌した。反応液にトルエン(2700mL)と水(2700mL)を注ぎ入れ、有機層を分取し、減圧下濃縮した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、目的とする中間体2(収量:295g、収率:87%)を得た。
(3)工程3
3Lフラスコに脱水ジメチルホルムアミド(東京化成社製、1760mL)と中間体2(295g、914mol)を加えた。65℃まで昇温し、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(東京化成社製、52.7g、182mol)とトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(東京化成社製、83.2g、90.8mmol)を添加し、100℃まで昇温し、2時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、トルエン(2100mL)、ヘプタン(200mL)、及び水(4200mL)の混合液中に反応液を注ぎ入れ、析出した固体を吸引ろ過により除去した。ろ液から有機層を分取し、水洗した後、減圧下濃縮した。粗体をシリカゲルクロマトグラフィーに供し、目的とする中間体3(収量:214g、収率:68%)を得た。
(4)工程4
3Lフラスコに中間体3(100g、289mmol)と脱水トルエン(1500mL)を加え、-1℃まで冷却した。その後、3.6M水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(670g、2.31mol)を滴下した。滴下終了後、60℃に昇温し、1時間撹拌した。-20℃まで冷却後、20%ロッシェル塩(200mL)をゆっくり滴下した。その後、残りの20%ロッシェル塩(200mL)中に反応液を注ぎ入れ、室温で10分撹拌した。テトラヒドロフラン(220mL)を加え、中間体4を含む溶液を得た。
(5)工程5
5Lフラスコに中間体4を含む溶液(中間体4として586mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(東京化成社製、3.58g、29.3mmol)、及び脱水テトラヒドロフラン(1000mL)を加え撹拌した後、二炭酸ジ-t-ブチル(140.8g、644mmol)、及びトリエチルアミン(68.2g、674mmol)を添加した。その後、60℃まで昇温し、15時間撹拌後、反応液を室温まで冷却した。反応液の減圧下濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィーに供し、目的物である中間体5(収量:144g、2工程収率:63%)を得た。
(6)工程6
3Lフラスコに中間体5(142g、365mmol)、THF(560mL)、及びメタノール(940mL)を加え、Arガスを30分バブリングした。その後、パラジウム/炭素 (Pd 5%)(14.2g)を添加し、水素ガスを用いて4.5時間バブリングした。反応終了後、Arガスを用いて1時間バブリングし、反応液を濾過し、ろ液を減圧下濃縮した。減圧下濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、目的とする中間体6(収量:38.7g、収率27%)を得た。
(7)工程7
500mLフラスコに中間体6(33.0g、84.5mmol)、及び脱水テトラヒドロフラン(330mL)を加え、0℃に冷却した。その後、2℃以下でナトリウムメトキシド/メタノール溶液(東京化成社製、26.4g、137mmol)を滴下し、室温に昇温して2時間撹拌し、反応液を得た。15%塩化アンモニウム溶液に反応液を注ぎ入れ、酢酸エチルを加えて有機層を分取した。分取物を水洗後に減圧下濃縮することで目的とする中間体7(収量:29.3g、収率:97%)を得た。
(8)工程8
2Lフラスコに中間体7(31.7g、89.1mmol)とトルエン/ブタノール=1/1(いずれも東京化成社製、720mL)を加え、外温125℃まで昇温した。その後、スクアリン酸(東京化成社製、3.45g、30.3mmol)を添加し、3時間撹拌後、内温0℃まで冷却した。反応液をろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。その後、酢酸エチルとヘプタンを用いて晶析した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、目的とするスクアリリウム色素B(収量8.66g、収率:43%)を得た。
H-NMRにて、得られたスクアリリウム色素Bが下記構造であることを確認した。得られたH-NMRスペクトルを図7に示す。
Figure 2023006191000016
(調製例1:分散剤溶液の調製)
(1)ブロック共重合体の調製
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、脱水テトラヒドロフラン(THF)100質量部およびジメチルケテンメチルトリメチルシリルアセタール3.00質量部を仕込み、充分に窒素置換を行った。テトラブチルアンモニウムm-クロロベンゾエートの1Mアセトニトリル溶液0.25質量部をシリンジで注入した後、メタクリル酸メチル50.0質量部、メタクリル酸-n-ブチル30.0質量部、メタクリル酸ベンジル20.0質量部の混合液を60分かけて滴下した。反応器を氷浴で冷却することにより、温度を40℃未満に保った。1時間後、メタクリル酸グリシジル(GMA)50.0質量部を30分かけて滴下した。1時間反応させた後、メタノール1質量部を加えて反応を停止させた。得られたブロック共重合体のTHF溶液にプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)450.0質量部を加えてエバポレーションにより溶媒置換を行うことで、ブロック共重合体の25.0質量%PGMEA溶液を得た。
得られたブロック共重合体は、質量平均分子量(Mw)11320、数平均分子量(Mn)8950、分子量分布(Mw/Mn)は1.26であった。
(2)リン系ブロック共重合体溶液の調製
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA27.80質量部、フェニルホスホン酸(PPA)9.27質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度90℃に加温した。前記ブロック共重合体100.0質量部を30分かけて滴下し、2時間加熱攪拌することで、リン系ブロック共重合体(分散剤)溶液(固形分25質量%)を得た。ブロック共重合体のGMAとPPAのエステル化反応の進行は、酸価測定とH-NMR測定によって確認した。得られたリン系ブロック共重合体の酸価は100mgKOH/gであった。
(調製例2:バインダー組成物の調製)
PGMEA60.0質量部、多官能性モノマー(アロニックスM305、東亜合成社製) 38.40質量部、光開始剤(イルガキュア184、BASF社製) 1.60質量部を混合することでバインダー組成物(固形分40質量%)を調製した。
(実施例1)
(1)スクアリリウム色材1の製造
1バナド11タングストリン酸・n水和物(日本無機化学製)1.88g(0.58mmol)をメタノール100mLに60℃で溶解させ、合成例1で得られたスクアリリウム色素Aを0.50g(0.93mmol)、無色有機カチオンとしてビサコジル(東京化成社製、最大吸収波長220nm)(spa1)を0.29g(0.80mmol)を加え、1時間攪拌した。沈殿物を濾取し、水で洗浄した。得られた沈殿物を減圧乾燥してスクアリリウム色材1を得た(収率96%)。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(MALDI) (m/z):543.3(MH)、362.4(MH)、2747(M3-
・元素分析値:CHN実測値(45.38%/50.18%/4.44%);理論値(45.42%/50.25%/4.33%)
・蛍光X線分析:V/W/Mo実測比 (8.40%/91.60%/0.00%);理論値(8.33%/91.67%/0.00%)
(2)色材分散液の製造
スクアリリウム色材1を10.00質量部と、調製例1の分散剤溶液20.0質量部(固形分25.0質量%)、PGMEA185質量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工製)にて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで6時間分散し、色材分散液1を得た。
(3)インキ組成物の製造
前記(2)で得られた色材分散液1を3.64質量部、調製例2のバインダー組成物 4.32質量部、PGMEA 2.05質量部、界面活性剤R08MH(DIC製)0.05質量部、シランカップリング剤KBM503(信越シリコーン製)0.05質量部を添加混合し、加圧濾過を行って、実施例1のインキ組成物1を得た。
(実施例2)
(1)スクアリリウム色材2の製造
実施例1のスクアリリウム色材1の製造における無色有機カチオンとしてのビサコジルを、等モル量のエチルビオロゲンジブロミド(東京化成社製、最大吸収波長250nm)(spa2)に変更した以外は、実施例1のスクアリリウム色材1の製造と同様にしてスクアリリウム色材2を得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(MALDI) (m/z):543.3(MH)、214.3(M)、2747(M3-
・元素分析値:CHN実測値 (41.75%、52.77%、5.49%);理論値(41.85%、52.72%、5.44%)
・蛍光X線分析:V/W/Mo実測比 (8.27%/91.72%/0.00%);理論値(8.33%/91.67%/0.00%)
(2)色材分散液の製造
実施例1の色材分散液の製造において、スクアリリウム色材1をスクアリリウム色材2に変更した以外は実施例1の色材分散液の製造と同様にして色材分散液2を得た。
(3)インキ組成物の製造
実施例1のインキ組成物の製造において、色材分散液1を色材分散液2に変更した以外は実施例1のインキ組成物の製造と同様にして、インキ組成物2を得た。
(実施例3)
(1)スクアリリウム色材3の製造
実施例1のスクアリリウム色材1の製造における無色有機カチオンとしてのビサコジルを、等モル量のアリルトリフェニルホスホニウムクロリド(東京化成社製、最大吸収波長304nm)(spa3)に変更した以外は、実施例1のスクアリリウム色材1の製造と同様にしてスクアリリウム色材3を得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(MALDI) (m/z):543.3(MH)、303.3(MH)、2747(M3-
・元素分析値:CHN実測値 (44.90%、51.45%、3.64%);理論値(44.99%、51.41%、3.59%)
・蛍光X線分析:V/W/Mo実測比 (8.25%/91.74%/0.00%);理論値(8.33%/91.67%/0.00%)
(2)色材分散液の製造
実施例1の色材分散液の製造において、スクアリリウム色材1をスクアリリウム色材3に変更した以外は実施例1の色材分散液の製造と同様にして色材分散液3を得た。
(3)インキ組成物の製造
実施例1のインキ組成物の製造において、色材分散液1を色材分散液3に変更した以外は実施例1のインキ組成物の製造と同様にして、インキ組成物3を得た。
(実施例4)
(1)スクアリリウム色材4の製造
実施例1のスクアリリウム色材1の製造における無色有機カチオンとしてのビサコジルを、等モル量のtrans-2-ブテン-1,4-ビス(トリフェニルホスホニウムクロリド)(東京化成社製、最大吸収波長224nm)(spa4)に変更した以外は、実施例1のスクアリリウム色材1の製造と同様にしてスクアリリウム色材4を得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(MALDI) (m/z):543.3(MH)、578.6(MH)、2747(M3-
・元素分析値:CHN実測値 (46.90%、50.25%、2.85%);理論値(46.97%、50.20%、2.83%)
・蛍光X線分析:V/W/Mo実測比 (8.37%/91.63%/0.00%);理論値(8.33%/91.67%/0.00%)
(2)色材分散液の製造
実施例1の色材分散液の製造において、スクアリリウム色材1をスクアリリウム色材4に変更した以外は実施例1の色材分散液の製造と同様にして色材分散液4を得た。
(3)インキ組成物の製造
実施例1のインキ組成物の製造において、色材分散液1を色材分散液4に変更した以外は実施例1のインキ組成物の製造と同様にして、インキ組成物4を得た。
(実施例5)
(1)スクアリリウム色材5の製造
実施例1のスクアリリウム色材1の製造において、スクアリリウム色素Aを、等モル量のスクアリリウム色素Bに変更し、ビサコジルを、等モル量のtrans-2-ブテン-1,4-ビス(トリフェニルホスホニウムクロリド)(spa4)に変更した以外は、実施例1のスクアリリウム色材1の製造と同様にしてスクアリリウム色材5を得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(MALDI) (m/z):663(MH)、578.6(MH)、2747(M3-
・元素分析値:CHN実測値 (48.50%、48.96%、2.54%);理論値(48.59%、48.93%、2.48%)
・蛍光X線分析:V/W/Mo実測比 (8.27%/91.73%/0.00%);理論値(8.33%/91.67%/0.00%)
(2)色材分散液の製造
実施例1の色材分散液の製造において、スクアリリウム色材1をスクアリリウム色材5に変更した以外は実施例1の色材分散液の製造と同様にして色材分散液5を得た。
(3)インキ組成物の製造
実施例1のインキ組成物の製造において、色材分散液1を色材分散液5に変更した以外は実施例1のインキ組成物の製造と同様にして、インキ組成物5を得た。
(実施例6)
(1)スクアリリウム色材6の製造
実施例5のスクアリリウム色材5の製造において、1バナド11タングストリン酸・n水和物(日本無機化学製)を、リンモリブデン酸(日本無機化学社製)2.30gに変更した以外は、実施例5のスクアリリウム色材5の製造と同様にしてスクアリリウム色材6を得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(MALDI) (m/z):663(MH)、578.6(MH)、1824(MH
・元素分析値:CHN実測値(32.90%、34.12%、1.80%);理論値(32.96%、34.08%、1.78%)
・蛍光X線分析:V/W/Mo実測比(0.00%/0.00%/100%);理論値(0.00%/0.00%/100%)
(2)色材分散液の製造
実施例1の色材分散液の製造において、スクアリリウム色材1をスクアリリウム色材6に変更した以外は実施例1の色材分散液の製造と同様にして色材分散液6を得た。
(3)インキ組成物の製造
実施例1のインキ組成物の製造において、色材分散液1を色材分散液6に変更した以外は実施例1のインキ組成物の製造と同様にして、インキ組成物6を得た。
(比較例1)
(1)比較スクアリリウム色材1の製造
1バナド11タングストリン酸・n水和物(日本無機化学製)1.31g(0.41mmol)をメタノール100mLに60℃で溶解させ、合成例1で得られたスクアリリウム色素Aを0.50g(0.93mmol)加え、1時間攪拌した。沈殿物を濾取し、水で洗浄した。得られた沈殿物を減圧乾燥して比較スクアリリウム色材1を得た(収率97%)。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(MALDI) (m/z):543.3(MH)、2747(MH
・元素分析値:CHN実測値 (42.01%、52.68%、5.31%);理論値(42.11%、52.63%、5.26%)
・蛍光X線分析:V/W/Mo実測比(8.43%/91.57%/0.00%);理論値(8.33%/91.67%/0.00%)
(2)色材分散液の製造
比較スクアリリウム色材1を10.00質量部と、調製例1の分散剤溶液20.0質量部(固形分25.0質量%)、PGMEA185質量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工製)にて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで6時間分散し、比較色材分散液1を得た。
(3)インキ組成物の製造
前記(2)で得られた比較色材分散液1を3.64質量部、調製例2のバインダー組成物 4.32質量部、PGMEA 2.05質量部、界面活性剤R08MH(DIC製)0.05質量部、シランカップリング剤KBM503(信越シリコーン製)0.05質量部を添加混合し、加圧濾過を行って、比較例1の比較インキ組成物1を得た。
[評価]
<フィルム作製と初期分光測定>
実施例及び比較例で得られたインキ組成物を、厚み0.7mmのガラス基板(日本電気硝子製、「OA-10G」)上に、スピンコーターを用いて塗布した。その後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行い、塗膜を得た。当該塗膜に、超高圧水銀灯を用いて500mJ/cmの紫外線を照射することによって硬化膜を得た。得られた硬化膜の透過スペクトル、色度(x、y)、輝度(Y)及びL、a、b(L、a,b)をオリンパス製「顕微分光測定装置OSP-SP200」を用いて測定した。
測定した上記透過スペクトルにおいて、可視域(400nm~700nm)の最大吸収波長すなわち最小透過波長(透過率が最小値をとる波長)の透過率が40%となるように膜厚を調整したときの、[最小透過波長(nm)-50nm]の波長における透過率と[最小透過波長(nm)+50nm]の波長における透過率を用いて副吸収を評価した。
(評価基準)
◎:[最小透過波長(nm)-50nm]の波長における透過率と[最小透過波長(nm)+50nm]の波長における透過率のいずれも70%以上である。
〇:[最小透過波長(nm)-50nm]の波長における透過率と[最小透過波長(nm)+50nm]の波長における透過率のいずれも60%超過であり、少なくとも一方が70%未満である。
×:[最小透過波長(nm)-50nm]の波長における透過率と[最小透過波長(nm)+50nm]の波長における透過率の少なくとも一方が60%未満である。
<耐光性試験>
上記で得られた硬化膜に、大気圧下でキセノンランプ(アトラス社製 サンテストXLS+(1.7kW 空冷式キセノンランプ))を用い、300~400nmの波長で、照度を58W/mとして、60時間(11000kJ/m相当)照射した。光照射後の硬化膜の透過スペクトルおよび色座標(L、a,b)を再び測定した。
色材乃至色素の最大吸収波長、すなわち透過スペクトルにおける最小透過波長の透過率の値の保持率を下記式(1)より算出した。
保持率 = (100-試験後の最小透過波長の透過率(%))/(100-試験前の最小透過波長の透過率(%))×100 ...(1)
Figure 2023006191000017
(結果のまとめ)
本発明のスクアリリウム色材1~6を用いた実施例1~6のフィルムは、耐光性が良好で、且つ副吸収が抑制されたフィルムが得られることが明らかにされた。
本発明の無色有機カチオンを含むスクアリリウム色材1~6を用いた実施例1~6のフィルムは、無色有機カチオンを含まない比較スクアリリウム色材1を用いた比較例1のフィルムに比較して、耐光試験前後の最小透過波長の透過率の保持率は同等だが、副吸収がないため特定の光だけをカット(吸収)する光学フィルタとして優れる。これはスクアリリウム色素カチオンとヘテロポリ酸アニオンとが塩形成し、連続したイオン対会合体となって造塩化合物を形成する際に、無色有機カチオンが含まれることで色素カチオン同士の距離が離れることにより、色素カチオン同士の相互作用による副吸収の生成を抑制できたためだと推察された。
また、実施例5のスクアリリウム色材5ではスクアリリウム色素カチオンとしてS字状骨格を有する色素カチオンを用いており、色素平面に垂直な方向にヘテロポリ酸と塩形成するカチオン性基が位置するため、色素同士の会合を防ぐ効果が高く、副吸収をさらに抑制できたと推察された。そして、無色有機カチオンを用いた色素の会合に起因すると考えられる副吸収の低減効果は、実施例6で示すように、異なるヘテロポリ酸であるリンモリブデン酸でも効果を確認でき、耐光性の向上との両立が可能である。
100 画像表示装置
10 表示パネル
11、13、17、19 保護フィルム
12、18 偏光子
14、16、16’ 光透過性粘着層
15 表示素子
20 バックライト装置
30 表面機能層
40 ディスプレイ表面フィルム(光学フィルタの一例)
1 支持体
2 粘着層乃至接着層
101 有機色素カチオン
102 無色有機カチオン
103 ヘテロポリ酸アニオン
110 造塩化合物(本開示のスクアリリウム色材)
120 造塩化合物

Claims (8)

  1. スクアリリウム色素と、無色有機カチオンと、ヘテロポリ酸の造塩化合物からなる、スクアリリウム色材。
  2. 前記無色有機カチオンが、ホスホニウム化合物である、請求項1に記載のスクアリリウム色材。
  3. 前記無色有機カチオンが、下記一般式(A)で表されるホスホニウム化合物である、請求項1又は2に記載のスクアリリウム色材。
    式(A): A―[P
    (式(A)中、Aはa価の有機基であり、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基であり、aは2~4の整数である。)
  4. 前記スクアリリウム色素が、下記一般式(3-1)で表されるスクアリリウム色素である、請求項1~3のいずれか1項に記載のスクアリリウム色材。
    Figure 2023006191000018
    (式(3-1)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、-OR、-OCOR、-COOR、-CONHR10、-NHCOR11、又は-NR1213を表し、R、R、R、R10及びR11はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基を表し、R12及びR13はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基を表す。Qはそれぞれ独立に、直接結合又は2価の芳香族環基を表す。Yはそれぞれ独立に、2価の有機基を表し、Zはそれぞれ独立に、有機カチオン基に誘導され得る基又は有機カチオン基を表す。有機カチオン基を表す。Eはそれぞれ独立に、置換基を表し、互いに隣接する置換基Eにより、環形成されていてもよい。m及びnはそれぞれ独立に0~4の整数を表す。)
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載のスクアリリウム色材と、分散剤と、溶媒とを含有する、色材分散液。
  6. 請求項1~4のいずれか1項に記載のスクアリリウム色材と、バインダー成分とを含有する、インキ組成物。
  7. 請求項1~4のいずれか1項に記載のスクアリリウム色材を含有する、光学フィルタ。
  8. 請求項7に記載の光学フィルタを備える、表示装置。
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