JP2023002364A - コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム、金属層一体型コンデンサ用ポリプロピレンフィルム、フィルムコンデンサ、及びフィルムロール - Google Patents

コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム、金属層一体型コンデンサ用ポリプロピレンフィルム、フィルムコンデンサ、及びフィルムロール Download PDF

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Abstract

【課題】高温下における高い耐電圧性と、優れた延伸性及び素子加工性とを備える、コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムを提供する。【解決手段】コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、前記コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、昇温速度30℃/minの条件で示差走査熱量測定(DSC)を行った場合、少なくとも2つ以上の融解ピークが観察され、全体の融解熱量(100%)に対して、前記融解ピークのメインピークよりも低温側のサブピークがなす合計の融解熱量の割合が、60%以上70%以下の範囲であり、前記全体の融解熱量(100%)に対して、150℃以下の融解熱量の割合が、12%以上20%以下の範囲である、コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム、金属層一体型コンデンサ用ポリプロピレンフィルム、フィルムコンデンサ、及びフィルムロールに関する。
ポリプロピレンフィルムは、コンデンサの誘導体に用いることができる。例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車等のパワーコントロールユニットを構成するインバータにおけるコンデンサの誘導体に用いることができる。
特開2019-44171号公報 特開2001-48998号公報 国際公開第2015-012324号
従来、フィルムコンデンサの高温下での耐電圧性の向上には、原料の分子設計やその配合、製膜条件の工夫によって、結晶性を高める技術が知られている。
例えば特許文献1及び特許文献2では、示差走査熱量測定(DSC)のメインピークの融点と全融解熱量に注目し、安定な結晶成分が多く含まれることが高温下での耐電圧性の向上に効果があるとしている。しかしながら、メインピークの高融点化には限界があり、また結晶成分があまりに多く含まれると、延伸性を低下させるとともに、素子加工性が悪化して素子の形状不良が多発する。
また、特許文献3ではかかる課題に対し、低立体規則性のポリプロピレン樹脂を特定量配合することで、延伸性と素子加工性を担保しているとしている。しかしながら、メイン樹脂は高結晶化を図っているために、延伸性は必ずしも十分とは言えない。
このような状況下、本発明は、高温下における高い耐電圧性と、優れた延伸性及び素子加工性とを備える、コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムを提供することを主な目的とする。また、本発明は、当該コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムを利用した、金属層一体型ポリプロピレンフィルム、フィルムコンデンサ、及びフィルムロールを提供することも目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムの示差走査熱量測定(DSC)において、当該フィルム全体の融解熱量を100%とし、2つ以上の融解ピークのうちメインピークよりも低温側のサブピークがなす合計の融解熱量の割合(%)と、150℃以下の融解熱量の割合(%)とを、それぞれ、特定の範囲内に設定することにより、高温下における高い耐電圧性と、優れた延伸性及び素子加工性とを備えるコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムとなることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
すなわち、本発明には、以下のものが含まれる。
項1. コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、
前記コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、昇温速度30℃/minの条件で示差走査熱量測定(DSC)を行った場合、
少なくとも2つ以上の融解ピークが観察され、
全体の融解熱量(100%)に対して、前記融解ピークのメインピークよりも低温側のサブピークがなす合計の融解熱量の割合が、60%以上70%以下の範囲であり、
前記全体の融解熱量(100%)に対して、150℃以下の融解熱量の割合が、12%以上20%以下の範囲である、
コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
項2. 25℃環境における引張試験で測定される、
MD方向の引張破断強度が140MPa以上170MPa以下であり、
MD方向の引張破断伸度が130%以上160%以下であり、
TD方向の引張破断強度が330MPa以上370MPa以下であり、
TD方向の引張破断伸度が50%以上70%以下である、項1に記載のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
項3. 前記コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムを120℃で15分熱処理した場合、MD方向の熱収縮率、TD方向の熱収縮率、及び45°方向の熱収縮率の和が、10%以下である、項1または2に記載のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
項4. 前記コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂は、Z平均分子量Mzが65.0万以上94.5万以下である、項1~3のいずれか1項に記載のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
項5. 厚さが0.8μm以上6μm以下である、項1~4のいずれか1項に記載のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
項6. 項1~5のいずれか1に記載のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムと、
前記コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に積層された金属層とを有する、金属層一体型コンデンサ用ポリプロピレンフィルム。
項7. 巻回された項6に記載の金属層一体型ポリプロピレンフィルムを有するか、又は、項6に記載の金属層一体型コンデンサ用ポリプロピレンフィルムが複数積層された構成を有する、フィルムコンデンサ。
項8. 項1~5のいずれか1に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルムが、ロール状に巻回されている、フィルムロール。
本発明によれば、高温下における高い耐電圧性と、優れた延伸性及び素子加工性とを備える、コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムを提供することができる。また、本発明によれば、当該二軸延伸ポリプロピレンフィルムを利用した、金属層一体型コンデンサ用ポリプロピレンフィルム、フィルムコンデンサ、及びフィルムロールを提供することもできる。
コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムの示差走査熱量測定(DSC)によって取得される融解曲線(縦軸が熱流束(W/g)、横軸が温度(℃))の模式図であって、全体の融解熱量を100%とした場合に、2つ以上の融解ピークのうちメインピークよりも低温側のサブピークがなす合計の融解熱量の割合(%)を説明するための模式図である。 コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムの示差走査熱量測定(DSC)によって取得される融解曲線(縦軸が熱流束(W/g)、横軸が温度(℃))の模式図であって、全体の融解熱量を100%とした場合に、150℃以下の融解熱量の割合(%)を説明するための模式図である。
以下、本発明のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム、金属層一体型コンデンサ用ポリプロピレンフィルム及びフィルムコンデンサ並びにそれらの製造方法について詳細に説明する。
本明細書において、ポリプロピレンをPPと省略する場合があり、ポリプロピレン樹脂をPP樹脂と省略する場合がある。
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現は、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
また、本明細書中において、「コンデンサ」なる表現は、「コンデンサ」、「コンデンサ素子」及び「フィルムコンデンサ」という概念を含む。また、「コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム」を「二軸延伸ポリプロピレンフィルム」、「フィルム」、「ポリプロピレンフィルムロール」を「フィルムロール」、「金属層一体型金属層一体型ポリプロピレンフィルム」を「金属層一体型金属層一体型ポリプロピレンフィルム」、「金属層一体型フィルム」、及び「金属層一体型ポリプロピレンフィルムロール」を「金属層一体型フィルムロール」というように、省略して表記することがある。また、本実施形態に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、微孔性フィルムではないので、多数の空孔を有していない。また、二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、2層以上の複数層で構成されていてもよいが、単層で構成されていることが好ましい。
本明細書中において、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの方向は次の通りである。先ず、フィルムの機械方向は、MachineDirection(以下、「MD方向」という。)と同じ方向である。MD方向は、長さ方向、流れ方向と呼ぶことがある。次に、フィルムの横方向は、TransverseDirection(以下、「TD方向」という。)と同じ方向である。TD方向は、幅方向と呼ぶことがある。
二軸延伸ポリプロピレンフィルム
本実施形態に係るコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、昇温速度30℃/minの条件で示差走査熱量測定(DSC)を行った場合、少なくとも2つ以上の融解ピークが観察され、全体の融解熱量(100%)に対して、融解ピークのメインピークよりも低温側のサブピークがなす合計の融解熱量の割合が、60%以上70%以下の範囲であり、全体の融解熱量(100%)に対して、150℃以下の融解熱量の割合が、12%以上20%以下の範囲であることを特徴としている。
本実施形態に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、当該構成を備えることにより、高温下における高い耐電圧性と、優れた延伸性及び素子加工性とを発揮することができる。この機序については、次のように考えることができる。
すなわち、二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおいて、DSCの低温側サブピークは、ラメラ厚が薄く熱的に準安定な微細結晶に由来するとされている。準安定な微細結晶は、結晶をつくる単位格子中の分子鎖パッキングの状態に特徴があると推察され、その高次構造形態が二軸延伸ポリプロピレンフィルムに電圧を印可した際の電流の流れを阻害していると考えられる。本実施形態に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおいては、全体の融解熱量(100%)に対して、融解ピークのメインピークよりも低温側のサブピークがなす合計の融解熱量の割合が、60%以上70%以下という特定範囲に設定されることにより、微小結晶による電流阻害が適切となり、高温下における高い耐電圧性に寄与していると考えられる。さらに、本実施形態に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおいては、150℃以下の融解熱量の全融解熱量に対する割合を制御することにより、延伸時に熱的に準安定な結晶が優先的に融解し、延伸応力がみだりに上昇せず、延伸性が向上していると考えられる。また、前記の微細結晶は、高温での耐電圧性の向上に寄与するだけでなく、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの強度を高めて適度な伸びが与えられることで、素子加工性が良好になっていると考えられる。なお、後述のように、本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおいて、全融解熱量に対するサブピークがなす合計の融解熱量の割合と、150℃以下の融解熱量の割合は、例えば、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造において、延伸処理における横延伸温度、熱固定温度、冷却温度を適切に制御することで、上記所定の範囲に好適に設定し得る。
本実施形態に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、高温下における高い耐電圧性と、優れた延伸性及び素子加工性とを発揮することができることから、フィルムコンデンサ用途の二軸延伸ポリプロピレンフィルムとして好適である。
本実施形態に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、昇温速度30℃/minの条件で示差走査熱量測定(DSC、DSC測定などという)を行った場合、少なくとも2つ以上の融解ピークが観察される。DSCで観察される融解ピークのうち、最も強度の高いピークをメインピークといい、それ以外のピークをサブピークという。
本実施形態に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、昇温速度30℃/minの条件でDSC測定を行った場合、全体の融解熱量(100%)に対して、融解ピークのメインピークよりも低温側のサブピークがなす合計の融解熱量の割合(サブピークの融解熱量分率)が、60%以上70%以下の範囲である。例えば、図1の模式図に示すように、二軸延伸ポリプロピレンフィルムのDSC測定によって取得される融解曲線(縦軸が熱流束(W/g)、横軸が温度(℃))において、2つ以上の融解ピークのうち、メインピーク(最高温側のピーク)よりも低温側のサブピークがなす合計の融解熱量は、斜線を付した領域の面積に対応している。全体の融解熱量は、融解曲線の下の領域の全体の面積に対応しており、全体の面積と斜線を付した領域の面積とを求めることにより、サブピークがなす合計の融解熱量の割合(%)(サブピークの融解熱量分率)を算出することができる。なお、メインピークと、メインピークに隣接する低温側のサブピークとの境界は、融解曲線の谷部に対応しており、境界線を引いて面積を求める。DSC測定は、実施例に記載の方法による。
当該サブピークの融解熱量分率は、好ましくは62%以上、より好ましくは63%以上、さらに好ましくは65%以上、さらにより好ましくは66%以上、特に好ましくは67%以上である。一方、当該サブピークの融解熱量分率は、好ましくは69%以下、より好ましくは68%以下である。
本実施形態に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、昇温速度30℃/minの条件でDSC測定を行った場合、全体の融解熱量(100%)に対して、150℃以下の融解熱量の割合(150℃以下の融解熱量分率)が、12%以上20%以下の範囲である。例えば、図2の模式図に示すように、二軸延伸ポリプロピレンフィルムのDSC測定によって取得される融解曲線において、150℃以下の融解熱量は、斜線を付した領域の面積に対応している。全体の融解熱量は、融解曲線の下の領域の全体の面積に対応しており、全体の面積と斜線を付した領域の面積とを求めることにより、150℃以下の融解熱量の割合(%)(150℃以下の融解熱量分率)を算出することができる。
当該150℃以下の融解熱量分率は、好ましくは13%以上、より好ましくは14%以上、さらに好ましくは15%以上である、一方、当該150℃以下の融解熱量分率は、好ましくは19%以下、より好ましくは18%以下、さらに好ましくは17%以下、さらにより好ましくは16%以下である。
また、本実施形態に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、25℃環境の引張試験によって測定される、MD方向の引張破断強度は、好ましくは140~170MPa、より好ましくは145~168MPa、さらに好ましくは150~165MPaである。また、25℃環境の引張試験によって測定される、MD方向の引張破断伸度は、好ましくは130~160%、より好ましくは135~157%、さらに好ましくは140~155%である。また、25℃環境の引張試験によって測定される、TD方向の引張破断強度は、好ましくは330~370MPa、より好ましくは333~368MPa、さらに好ましくは335~365MPaである。また、25℃環境の引張試験によって測定される、TD方向の引張破断伸度は、好ましくは50~70%、より好ましくは52~70%、さらに好ましくは55~70%である。引張破断強度及び引張破断伸度の測定は、実施例に記載の方法による。
また、本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムを120℃で15分熱処理した場合、MD方向の熱収縮率HSMD、TD方向の熱収縮率HSTD、及び45°方向の熱収縮率HS45°の和(HSMD+HSTD+HS45°)が、好ましくは10%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは7.0%以下である。当該の和の下限は、例えば5.0%である。熱収縮率の測定は、実施例に記載の方法による。
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの両面は、第1面と第2面とで定義できる。第1面は粗面であることができる。第1面が粗面であると、コンデンサ作製における素子巻きでシワが発生し難い。第2面が粗面であることもできる。
前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さは、コンデンサに使用した場合のコンデンサの小型化及び高容量化を担保する観点から、0.8μm以上6.0μm以下が好ましい。具体的には、5.5μm以下が好ましく、3.5μm以下がより好ましく、3.0μm以下が更に好ましく、2.4μm以下が特に好ましい。また、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さは、製造上の観点から、1.0μm以上が好ましく、1.8μm以上がより好ましく、2.2μm以上が更に好ましい。本明細書における二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さの測定方法は、実施例に記載の方法による。
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの密度は限定的ではないが、コンデンサ用途を考慮すると、例えば919g/cm3以上925g/cm3以下に設定することが好ましい。本明細書における二軸延伸ポリプロピレンフィルムの密度の測定方法は、実施例に記載の方法による。
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂(ポリプロピレン樹脂が複数の樹脂の混合から構成される場合には、混合後)の分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が5.0以上6.9以下であることが好ましい。
分子量分布(Mw/Mn)の下限値は、より好ましくは5.2以上であり、さらに好ましくは6.0以上であり、さらに好ましくは6.2以上であり、さらに好ましくは6.3以上である。また、上限値は、より好ましくは6.8以下であり、さらに好ましくは6.7以下であり、さらに好ましくは6.6以下である。分子量分布(Mw/Mn)がかかる範囲内であることにより、他の要件との組み合わせの効果として、高温下における絶縁破壊強度に優れるとともに、機械方向(MD)の熱収縮が抑制された二軸延伸ポリプロピレンフィルムが好適に得られる。
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂(ポリプロピレン樹脂が複数の樹脂の混合から構成される場合には、混合後)のz平均分子量Mzが、65.0万以上94.5万以下であることが好ましい。
Mzの下限値は、より好ましくは70.0万超過であり、さらに好ましくは71.0万以上であり、さらに好ましくは72.0万以上である。また、上限値は、より好ましくは92.0万以下であり、さらに好ましくは85.0万以下であり、さらに好ましくは79.0万以下である。Mzがかかる範囲内であることにより、他の要件との組み合わせの効果として、高温下における絶縁破壊強度に優れるとともに、特に機械方向(MD)の熱収縮が抑制されている二軸延伸ポリプロピレンフィルムが得られる。なお、Mzが94.5万超過の場合には高温下での二軸延伸ポリプロピレンフィルムの熱収縮性が増大し易い。
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂(ポリプロピレン樹脂が複数の樹脂の混合から構成される場合には、混合後)の積分分子量分布曲線において対数分子量Log(M)=4.0のときの重量分率wが2.6%以上4.2%以下であることが好ましい。
重量分率wの下限値は、より好ましくは2.8%以上であり、より好ましくは3.0%以上であり、更に好ましくは3.2%以上であり、更に一層好ましくは3.4%以上である。また、上限値は、より好ましくは4.1%以下であり、さらに好ましくは4.0%以下であり、さらに好ましくは3.7%以下であり、さらに好ましくは3.6%以下である。重量分率wがかかる範囲内であることにより、他の要件との組み合わせの効果として、高温下における絶縁破壊強度に優れるとともに、機械方向(MD)の熱収縮が抑制されている二軸延伸ポリプロピレンフィルムが得られる。また、重量分率wがかかる範囲内であることにより、二軸延伸ポリプロピレンフィルムをコンデンサ誘導体として用いた本実施形態のフィルムコンデンサは、高温と低温との間の繰り返し使用においてコンデンサの熱締まり(変形)が抑制されている点で優れた耐熱衝撃性を有する。
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、好適な実施態様として、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂(ポリプロピレン樹脂が複数の樹脂の混合から構成される場合には、混合後)について、
・前記分子量分布(Mw/Mn)が5.0以上6.6以下であり、
・前記Mzが72.0万以上79.0万以下であり、
・前記重量分率wが3.5%以上3.7%以下である、
態様とすることができる。このような物性のポリプロピレン樹脂を用いることにより、高温下における絶縁破壊強度に優れるとともに、機械方向(MD)の熱収縮が抑制されている二軸延伸ポリプロピレンフィルムが得られ易くなる。
本明細書の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂のMw、Mn、Mz、分子量分布(Mw/Mn)、及び重量分率w、並びに、前記ポリプロピレン樹脂が複数の樹脂から構成される場合におけるポリプロピレン樹脂A及びポリプロピレン樹脂BのMw、Mn、Mz、分子量分布(Mw/Mn)、分子量分布(Mz/Mn)、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値、対数分子量Log(M)=6.0のときの微分分布値、分子量微分分布値差(DM)、及び重量分率wの測定方法は、実施例に記載の方法による。
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムはポリプロピレン樹脂を含む。ポリプロピレン樹脂の含有量は、二軸延伸ポリプロピレンフィルム全体に対して(二軸延伸ポリプロピレンフィルム全体を100重量%としたときに)、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上である。ポリプロピレン樹脂の含有量の上限は、二軸延伸ポリプロピレンフィルム全体に対して、例えば、100重量%、98重量%などである。
ポリプロピレン樹脂の総灰分は、電気特性のために少ないほど好ましい。総灰分は、ポリプロピレン樹脂を基準として、好ましくは50ppm以下、より好ましくは40ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下である。総灰分の下限は、例えば2ppm、5ppmなどである。総灰分は、少ないほど、重合触媒残渣などの不純物が少ないことを意味する。
ポリプロピレン樹脂は、一種のポリプロピレン樹脂を単独で含むものであってもよく、二種以上のポリプロピレン樹脂を含むものであってもよい。
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに含まれるポリプロピレン樹脂が二種以上である場合、最も含有量が多いポリプロピレン樹脂を本明細書では主成分に位置づけ、本明細書では「主成分のポリプロピレン樹脂」又は「ベース樹脂」という。また、二軸延伸ポリプロピレンフィルムに含まれるポリプロピレン樹脂が一種である場合、当該ポリプロピレン樹脂も、本明細書では主成分に位置づけ、本明細書では、「主成分のポリプロピレン樹脂」という。
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、当該フィルムに含まれるポリプロピレン樹脂が二種以上(特に二種)である場合、例えば、下記ポリプロピレン樹脂A(主成分であるベース樹脂)とともに下記ポリプロピレン樹脂B(ブレンド樹脂)を含むことができる。以下、ポリプロピレン樹脂A(ベース樹脂)とポリプロピレン樹脂B(ブレンド樹脂)の二種を用いる場合について例示的に説明する。
ポリプロピレン樹脂Aの含有量は、ポリプロピレン樹脂100重量%に対して、好ましくは50重量%超過、より好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、更に好ましくは65重量%以上である。ポリプロピレン樹脂Aの含有量は、上限に関しては、ポリプロピレン樹脂100重量%に対して、100重量%未満、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、更に好ましくは80重量%以下、更に一層好ましくは75重量%以下である。ポリプロピレン樹脂Aとして、例えばアイソタクチックポリプロピレンを挙げることができる。
ポリプロピレン樹脂Aの重量平均分子量Mwは、好ましくは25.0万以上35.0万未満、より好ましくは28.0万以上35.0万未満、更に好ましくは28.0万以上34.0万以下である。Mwが25.0万以上35.0万未満であると、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造工程において、キャスト原反シートの厚さの制御が容易であり、厚みムラが発生し難い。
ポリプロピレン樹脂Aの数平均分子量Mnは、好ましくは3.0万以上5.4万以下、より好ましくは3.3万以上5.2万以下、更に好ましくは3.3万以上4.7万以下である。Mnが3.0万以上5.4万以下であると、熱収縮が小さく、良好な耐熱衝撃性を有するコンデンサ素子が得られ易い。
ポリプロピレン樹脂Aのz平均分子量Mzは、好ましくは70万以上155万以下、より好ましくは75万以上150万以下である。Mzが70万以上155万以下であると、高温での絶縁破壊の強さの高いフィルムが得られやすい。
ポリプロピレン樹脂Aの分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは5.0以上、より好ましくは5.5以上、更に好ましくは6.0以上である。ポリプロピレン樹脂AのMw/Mnは、10.0以下が好ましく、9.5以下がより好ましい。Mw/Mnが5.0以上10.0以下であると、延伸性が向上し、薄いフィルムが得られ易い。
ポリプロピレン樹脂Aの分子量分布(Mz/Mn)は、10以上70以下であることが好ましく、15以上60以下であることがより好ましく、15以上50以下であることがさらに好ましい。Mz/Mnが10以上70以下であると、延伸性が向上し、薄いフィルムが得られ易い。
ポリプロピレン樹脂Aの分子量分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値は、好ましくは28.0以上である。上限値は、好ましくは32.0以下である。また、対数分子量Log(M)=6.0のときの微分分布値は、好ましくは17.0以上、より好ましくは20.0以上である。上限値は、好ましくは24.0以下、より好ましくは22.0以下である。更に、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値から対数分子量Log(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差(分子量微分分布値差(DM))は、好ましくは8.0以上18.0以下であり、より好ましくは8.0以上11.0以下であり、更に好ましくは8.2以上10.0以下であり、更に一層好ましくは8.4以上8.8以下である。
ポリプロピレン樹脂Aの有するMwの値(25.0万以上35.0万未満)より、低分子量側の分子量1万から10万の成分(以下、「低分子量成分」ともいう)の代表的な分布値として、対数分子量Log(M)=4.5の成分を、高分子量側の分子量100万前後の成分(以下、「高分子量成分」ともいう)の代表的な分布値として、Log(M)=6.0前後の成分と比較すると、低分子量成分の方が8.0%以上18.0%以下の割合で多いことが理解される。
つまり、分子量分布Mw/Mnが5.0~10.0であるといっても単に分子量分布幅の広さを表しているに過ぎず、その中の高分子量成分、低分子量成分の量的な関係までは分からない。そこで、本実施形態に係るポリプロピレン樹脂Aは、広い分子量分布を有すると同時に、分子量1万から10万の成分を、分子量100万の成分と比較して、8.0%以上18.0%以下の割合で多く含むことが好ましい。これにより、結晶子サイズが小さくなり、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの粗化された表面が得られ易くなり好ましい。
ポリプロピレン樹脂Aの重量分率wは、下限値は好ましくは3.8%以上であり、より好ましくは4.0%以上である。また、上限値は好ましくは4.4%以下であり、より好ましくは4.2%以下である。ポリプロピレン樹脂Aの重量分率wがかかる範囲内であり、後述するポリプロピレン樹脂Bの重量分率wとの組み合わせによってポリプロピレン樹脂Aとポリプロピレン樹脂Bとの混合後の重量分率wが2.6%以上4.2%以下となることにより、高温下における絶縁破壊強度に優れるとともに、機械方向(MD)の熱収縮が抑制されている二軸延伸ポリプロピレンフィルムが得られ易くなる。
ポリプロピレン樹脂Aの230℃でのメルトフローレート(MFRA)は、好ましくは4.8g/10分以上、より好ましくは5.0g/10分以上、更に好ましくは5.5g/10分以上である。また、MFRAの上限は、10.0g/10分以下が好ましく、8.0g/10分以下がより好ましく、6.0g/10分以下が更に好ましい。なお、MFRAは、4.8g/10分以上5.5g/10分以下と設定することもできる。本明細書におけるメルトフローレート(MFR)の測定方法は、実施例に記載の方法による。また、前記メルトフローレートの単位g/10分は、dg/minともいう。
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、好適な実施態様として、ポリプロピレン樹脂Aについて、
・前記ポリプロピレン樹脂AのMwが27.5万以上35.0万未満であり、
・前記ポリプロピレン樹脂Aの分子量分布(Mw/Mn)が5.8以上10.0以下であり、
・前記ポリプロピレン樹脂Aのメルトフローレート(MFRA)が4.8g/10分以上5.5g/10分以下である、
態様とすることができる。このような物性のポリプロピレン樹脂Aを用いることにより、押出機によるキャストシート(延伸前駆体)の成形が容易に行い易くなる。
また、本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、より好適な実施態様として、ポリプロピレン樹脂Aについて、
・前記ポリプロピレン樹脂AのMwが28.0万以上30.0万以下であり、
・前記ポリプロピレン樹脂Aの分子量分布(Mw/Mn)が6.0以上6.5以下であり、
・前記ポリプロピレン樹脂Aのメルトフローレート(MFRA)が5.0g/10分以上5.5g/10分以下である、
態様とすることができる。
ポリプロピレン樹脂Aのヘプタン不溶分は、好ましくは97.0%以上である。ヘプタン不溶分は、好ましくは98.5%以下である。ヘプタン不溶分は、多いほど樹脂の立体規則性が高いことを示す。前記ヘプタン不溶分(HI)が、97.0%以上98.5%以下であると、適度に高い立体規則性により、二軸延伸ポリプロピレンフィルム中でのポリプロピレン樹脂の結晶性が適度に向上し、高温下での絶縁破壊強度が向上する。更に、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造工程において、キャスト原反シート成形の際の固化(結晶化)の速度が適度となり、適度の延伸性を有する。本明細書におけるヘプタン不溶分(HI)の測定方法は、実施例に記載の方法による。
ポリプロピレン樹脂Aの総灰分は、電気特性のために少ないほど好ましい。総灰分は、ポリプロピレン樹脂Aを基準として、好ましくは50ppm以下、より好ましくは40ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下である。総灰分の下限は、例えば2ppm、5ppmなどである。
ポリプロピレン樹脂Bの含有量は、ポリプロピレン樹脂100重量%に対して、好ましくは50重量%未満、より好ましくは49重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下、35重量%以下が特に好ましい。また、ポリプロピレン樹脂Bの含有量は、下限に関しては、例えば、ポリプロピレン樹脂100重量%に対して好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、更に好ましくは25重量%以上である。ポリプロピレン樹脂Bとして、例えばアイソタクチックポリプロピレンを挙げることができる。なお、本実施形態では、ポリプロピレン樹脂Aとポリプロピレン樹脂Bの合計質量に対するポリプロピレン樹脂Aの質量の割合が65質量%以上75質量%以下である態様が特に好ましい。
ポリプロピレン樹脂BのMwは好ましくは35.0万以上、より好ましくは39.0万以上である。ポリプロピレン樹脂BにおけるMwは、好ましくは55.0万以下、より好ましくは45.0万以下、更に好ましくは40.0万以下である。Mwが35.0万以上55.0万以下であると、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造工程において、キャスト原反シートの厚さの制御が容易であり、厚みムラが発生し難い。
ポリプロピレン樹脂BのMnは、好ましくは4.0万以上5.4万以下、より好ましくは4.2万以上5.0万以下、更に好ましくは4.4万以上4.8万以下である。Mnが4.0万以上5.4万以下であると、熱収縮が小さく、良好な耐熱衝撃性を有するコンデンサ素子が得られ易い。
ポリプロピレン樹脂BのMzは、好ましくは155万超過200万以下、より好ましくは158万以上170万以下である。Mzが155万超過200万以下であると、高温での絶縁破壊の強さの高いフィルムが得られ易い。
ポリプロピレン樹脂Bの分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは5.0以上、より好ましくは5.5以上、更に好ましくは7.0以上、更に一層好ましくは7.5以上である。ポリプロピレン樹脂BにおけるMw/Mnの上限は、例えば11.0以下、好ましくは10.0以下、より好ましくは8.5以下である。Mw/Mnが5.0以上11.0以下であると、延伸性が向上し、薄いフィルムが得られ易い。
ポリプロピレン樹脂Bの分子量分布(Mz/Mn)は、好ましくは30以上40以下、より好ましくは33以上36以下である。Mz/Mnが30以上40以下であると、延伸性が向上し、薄いフィルムが得られ易い。
ポリプロピレン樹脂Bの分子量分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値は、好ましくは24.0以上、より好ましくは27.0以上である。上限値は、好ましくは35.0以下、より好ましくは32.0以下である。また、対数分子量Log(M)=6.0のときの微分分布値は、好ましくは28.0以上、より好ましくは30.0以上である。上限値は、好ましくは35.0以下、より好ましくは33.0以下である。更に、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値から対数分子量Log(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差(分子量微分分布値差(DM))は、好ましくは-11.0以上7.0以下であり、より好ましくは-6.0以上0.0以下であり、更に好ましくは-4.0以上-2.0以下である。
ポリプロピレン樹脂が、上述のポリプロピレン樹脂A及びBを含む場合、ポリプロピレン樹脂AとBのMw、Mw/Mn、及び微分分布値の差がそれぞれ異なる、つまり、分子量分布の構成に相違があることによって、混合し成形して得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、高分子量成分と低分子量成分の量的な関係が微妙に異なるため、ある種の微細混合(相分離)状態をとり、結晶サイズが微細化し易く好ましいと考えられる。更には、同じ延伸倍率であっても高配向化し易い傾向に有り、表面も微細な粗化を得られ易く好ましいと考えられる。ポリプロピレン樹脂が、ポリプロピン樹脂A及びBを含む場合、前述した理由で本実施形態は優れた効果を奏すると考えられるが、このような理由によって、本実施形態は何ら制限されることはない。
ポリプロピレン樹脂Bの重量分率wは、下限値は好ましくは2.0%以上であり、より好ましくは3.0%以上である。また、上限値は好ましくは5.0%以下であり、より好ましくは4.2%以下である。ポリプロピレン樹脂Bの重量分率wがかかる範囲内であり、前述したポリプロピレン樹脂Aの重量分率wとの組み合わせによってポリプロピレン樹脂Aとポリプロピレン樹脂Bとの混合後の重量分率wが2.6%以上4.2%以下となることにより、高温下における絶縁破壊強度に優れるとともに、機械方向(MD)の熱収縮が抑制されている二軸延伸ポリプロピレンフィルムが得られ易くなる。
ポリプロピレン樹脂Bにおける230℃のメルトフローレート(MFRB)は、好ましくは4.5g/10分以下、より好ましくは4.0g/10分以下、更に好ましくは3.0g/10分以下、更に一層好ましくは2.1g/10分以下である。また、MFRBの下限は、0.1g/10分以上が好ましく、0.5g/10分以上がより好ましく。1.5g/10分以上が更に好ましい。
なお、主成分のベース樹脂としてのポリプロピレン樹脂AのMFRAとブレンド樹脂であるポリプロピレン樹脂BのMFRBの差分MFRA-MFRBは、1.5g/10分以上に設定することが好ましい。つまり、MFRAはMFRBよりも大きい。上記差分MFRA-MFRBは、1.6g/10分以上が好ましく、2.0g/10分以上がより好ましく、3.0g/10分以上が更に好ましい。上記差分MFRA-MFRBが1.5g/10分未満(当該1.5g/10分未満は、マイナスの値も包含する)である場合、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造工程において、キャスト原反シート成形時点での海-島相分離構造が形成されないか、又は形成されるにしても島のサイズが非常に小さいため、最終的に、高温での絶縁破壊強度に優れた二軸延伸ポリプロピレンフィルムが得られ難くなるおそれがある。特に、MFRAとMFRBとの差が大きくても、MFRBの方が大きい場合(上記差分MFRA-MFRBがマイナスとなる場合)、海-島相分離構造の島のサイズが非常に小さいものとなる。
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、好適な実施態様として、ポリプロピレン樹脂Bについて、
・前記ポリプロピレン樹脂BのMwが38.5万以上55.0万以下であり、
・前記ポリプロピレン樹脂Bの分子量分布(Mw/Mn)が8.4以上11.0以下であり、
・前記ポリプロピレン樹脂Bのメルトフローレート(MFRB)が0.1g/10分以上2.2g/10分以下である、
態様とすることができる。このような物性のポリプロピレン樹脂Bを用いることにより、押出機によるキャストシート(延伸前駆体)の成形が容易に行い易くなる。
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、より好適な実施態様として、ポリプロピレン樹脂Bについて、
・前記ポリプロピレン樹脂BのMwが39.0万以上55.0万以下であり、
・前記ポリプロピレン樹脂Bの分子量分布(Mw/Mn)が8.5以上11.0以下であり、
・前記ポリプロピレン樹脂Bのメルトフローレート(MFRB)が1.0g/10分以上2.1g/10分以下である、
態様とすることができる。
ポリプロピレン樹脂Bのヘプタン不溶分は、好ましくは97.5%以上、より好ましくは98.0%以上、更に好ましくは98.5%超過、特に好ましくは98.6%以上である。また、ヘプタン不溶分は、好ましくは99.5%以下であり、より好ましくは99.0%以下である。
ポリプロピレン樹脂Bの総灰分は、電気特性のために少ないほど好ましい。総灰分は、ポリプロピレン樹脂Bを基準として、好ましくは50ppm以下、より好ましくは40ppm以下、更に好ましくは30ppm以下である。総灰分の下限は、例えば2ppm、5ppmなどである。
以上、ポリプロピレン樹脂A(ベース樹脂)とポリプロピレン樹脂B(ブレンド樹脂)の二種を用いる場合について例示的に説明したが、本実施形態では、二軸延伸ポリプロピレンフィルムはポリプロピレン樹脂以外の樹脂を含有する構成とすることもできる。その場合には、ポリプロピレン樹脂Aとポリプロピレン樹脂Bとの合計量は、樹脂全体を100重量%とした場合、例えば90重量%以上であることができ、95重量%以上であることもでき、100重量%であることもできる。
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、添加剤を更に含むことができる。添加剤として、例えば、酸化防止剤、塩素吸収剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、難燃化剤、帯電防止剤、着色剤などを挙げることができる。
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムはコンデンサ用であり、具体的にはコンデンサの誘電体として好適に適用できる。後述する通り、本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは片面又は両面に積層された金属層とを有する金属層一体型コンデンサ用ポリプロピレンフィルムとすることができ、この金属層一体型ポリプロピレンフィルムを巻回するか、金属層一体型コンデンサ用ポリプロピレンフィルムを複数積層する構成を含むようにすることによりフィルムコンデンサを作製することができる。
上記コンデンサ用の用途を考慮し、本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは下記の絶縁破壊強度及び耐熱収縮性の特性を有することが望ましい。
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの120℃での直流電圧における絶縁破壊強度(VDC120℃)は、好ましくは400V/μm以上、より好ましくは420V/μm以上、さらに更に好ましくは450V/μm以上、特に好ましくは500V/μm以上である。120℃での直流電圧における絶縁破壊強度の上限は、高いほど好ましいが、例えば550V/μm、570V/μmなどである。直流電圧における絶縁破壊強度の測定方法については実施例に記載の方法による。
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの100℃での直流電圧における絶縁破壊強度(VDC100℃)は、好ましくは450V/μm以上、より好ましくは500V/μm以上、さらに更に好ましくは530V/μm以上である。100℃での直流電圧における絶縁破壊強度の上限は、高いほど好ましいが、例えば580V/μm、585V/μmなどである。
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの80℃での直流電圧における絶縁破壊強度(VDC80℃)は、好ましくは500V/μm以上、より好ましくは520V/μm以上、さらに更に好ましくは530V/μm以上、特に好ましくは550V/μm以上である。80℃での直流電圧における絶縁破壊強度の
上限は、高いほど好ましいが、例えば580V/μm、585V/μmなどである。
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの25℃での直流電圧における絶縁破壊強度(VDC25℃)は、好ましくは550V/μm以上、より好ましくは570V/μm以上、さらに更に好ましくは580V/μm以上、特に好ましくは610V/μm以上である。25℃での直流電圧における絶縁破壊強度の
上限は、高いほど好ましいが、例えば635V/μm、640V/μmなどである。
さらに、本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、25℃での直流電圧における絶縁破壊強度(VDC25℃)に対する、120℃での直流電圧における絶縁破壊強度(VDC120℃)の比(VDC120℃/VDC25℃)は、好ましくは0.72以上、より好ましくは0.74以上、さらに好ましくは0.75以上、さらに好ましくは0.80以上である。当該比の上限は、高いほど好ましいが、例えば1.00などである。
さらに、本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、25℃での直流電圧における絶縁破壊強度(VDC25℃)に対する、100℃での直流電圧における絶縁破壊強度(VDC100℃)の比(VDC100℃/VDC25℃)は、好ましくは0.77以上、より好ましくは0.80以上、さらに好ましくは0.85以上である。当該比の上限は、高いほど好ましいが、例えば1.00などである。
さらに、本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、25℃での直流電圧における絶縁破壊強度(VDC25℃)に対する、80℃での直流電圧における絶縁破壊強度(VDC80℃)の比(VDC80℃/VDC25℃)は、好ましくは0.83以上、より好ましくは0.85以上、さらに好ましくは0.88以上、さらに更に好ましくは0.90以上である。当該比の上限は、高いほど好ましいが、例えば1.00などである。
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法
前述の本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法は限定的ではないが、例えば下記の製造方法(以下「本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法」と称する)を採用することにより本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは好適に製造することができる。
本実施形態のポリプロピレンフィルムの製造方法は、前述の本実施形態のポリプロピレンフィルムを製造する方法であって、
コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、昇温速度30℃/minの条件で示差走査熱量測定(DSC)を行った場合、
少なくとも2つ以上の融解ピークが観察され、
全体の融解熱量(100%)に対して、前記融解ピークのメインピークよりも低温側のサブピークがなす合計の融解熱量の割合が、60%以上70%以下の範囲であり、
前記全体の融解熱量(100%)に対して、150℃以下の融解熱量の割合が、12%以上20%以下の範囲である、
ことを特徴とする。
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法では、少なくともポリプロピレン樹脂A及びポリプロピレン樹脂Bを含有するポリプロピレン樹脂組成物を用いることが好ましい。ここで、ポリプロピレン樹脂組成物中のポリプロピレン樹脂Aの含有量が、ポリプロピレン樹脂組成物中のポリプロピレン樹脂Bの含有量よりも多いことは、ポリプロピレン樹脂Aとポリプロピレン樹脂Bとの関係において、ポリプロピレン樹脂Aが主成分のベース樹脂であり、ポリプロピレン樹脂Bがベース樹脂に対するブレンド樹脂であることを意味する。なお、本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法における「ポリプロピレン樹脂A」、「ポリプロピレン樹脂B」の用語は、前述の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの項目における「ポリプロピレン樹脂A」、「ポリプロピレン樹脂B」の用語と対応しており、各樹脂のMw、Mn、Mz、分子量分布(Mw/Mn)、分子量分布(Mz/Mn)、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値、対数分子量Log(M)=6.0のときの微分分布値、分子量微分分布値差(DM)、重量分率w、及びMFRの説明については、前述の通りであるが、本実施形態のポリプロピレン樹脂の製造方法では特にMFRAとMFRBの差分MFRA-MFRBが1.5g/10分以上であるものを用いることが好ましい。
本実施形態の製造方法に適用する樹脂を混合する方法としては、特に制限はないが、ベース樹脂とブレンド樹脂の重合粉、又は、ペレットを、ミキサー等を用いてドライブレンドする方法や、ベース樹脂とブレンド樹脂樹脂の重合粉、又は、ペレットを、混練機に供給し、溶融混練して混練物を得る方法が挙げられる。
前記ミキサーや前記混練機は、特に制限されない。前記混練機は、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプ、それ以上の多軸スクリュータイプの何れでもよい。2軸以上のスクリュータイプの場合、同方向回転、異方向回転のどちらの混練タイプでも構わない。
溶融混練による混練の場合は、良好な混練物が得られれば、混練温度は特に制限されない。一般的には、200℃以上300℃以下の範囲であり、樹脂の劣化を抑制する観点から、230℃以上270℃以下が好ましい。また、樹脂の混練混合の際の劣化を抑制するため、混練機に窒素などの不活性ガスをパージしても構わない。溶融混練された樹脂は、一般的に公知の造粒機を用いて、適当な大きさにペレタイズしてもよい。これにより、混合ポリプロピレン原料樹脂ペレットを得ることができる。
ポリプロピレン原料樹脂中に含まれる重合触媒残渣等に起因する総灰分は、電気特性を向上させるために可能な限り少ないことが好ましい。総灰分は、ポリプロピレン樹脂を基準(100重量部)として、50ppm以下であることが好ましく、40ppm以下であることがより好ましく、30ppm以下であることが特に好ましい。
前記ポリプロピレン樹脂は、添加剤を含んでいてもよい。「添加剤」とは、一般的に、ポリプロピレン樹脂に使用される添加剤であって、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることができる限り特に制限されない。前記添加剤としては、例えば、酸化防止剤、塩素吸収剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、難燃化剤、帯電防止剤等が挙げられる。前記ポリプロピレン樹脂は、前記添加剤を、二軸延伸ポリプロピレンフィルムに悪影響を与えない量で含めてもよい。
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法では、先ずポリプロピレン樹脂ペレット、ドライ混合されたポリプロピレン樹脂ペレット、又は、予め溶融混練して作製した混合ポリプロピレン樹脂ペレットを押出機に供給して、加熱溶融する。
前記ポリプロピレン樹脂組成物は、225℃以上270℃以下で溶融させるようにする。具体的には、ポリプロピレン樹脂組成物の加熱溶融時の押出機設定温度を、225℃以上270℃以下とする。これにより、上記特定のポリプロピレン樹脂組成物を使用するという前提で、後述するキャスト原反シート成形時点での海-島相分離構造が形成され、最終的に、高温での絶縁破壊強度に優れた二軸延伸ポリプロピレンフィルムが得られる。
ポリプロピレン樹脂組成物を温度225℃以上270℃以下にした状態で剪断速度2000s-1以上15000s-1以下で溶融させる。これにより、上記特定のポリプロピレン樹脂組成物を使用するという前提で、後述するキャスト原反シート成形時点での海-島相分離構造が形成され、最終的に、高温での絶縁破壊強度に優れた二軸延伸ポリプロピレンフィルムが得られる。剪断速度が2000s-1を下回ると、押出量が一定せず、原反シートの形状や寸法が不規則になったり、又は規則的に変動するようになり、原反シート搬送時の破断や延伸時の破断が発生しやすくなる。
また、剪断速度が15000s-1を上回ると、押出機内でブレークアップと呼ばれる現象により未溶融物が押出され、均一な原反シートが得られなくなることで延伸時の破断が発生しやすくなる、又は、チップクリアランスを通過する際の発熱が過多となり、ポリプロピレン樹脂組成物の劣化が著しくなることで、均一な現反シートが得られたとしても、延伸により得られるフィルムの絶縁破壊強さが低下してしまう。剪断速度は、押出機のシリンダ直径及びスクリュー回転数、スクリューの溝深さで調整できる。
上記剪断速度は2000s-1以上15000s-1以下であればよいが、好ましくは2000s-1以上10000s-1以下、より好ましくは2000s-1以上2300s-1以下である。剪断速度がかかる範囲内であることにより、重量分率wが2.6%以上4.2%以下である二軸延伸ポリプロピレンフィルムが得られ易くなり、他の要件との組み合わせにより、二軸延伸ポリプロピレンフィルムをコンデンサ誘導体として用いたフィルムコンデンサにおいて、高温と低温との間の繰り返し使用においてコンデンサの熱締まり(変形)が抑制されている点で優れた耐熱衝撃性が得られる。
次に、Tダイを用いて溶融された前記樹脂組成物をシート状に押し出し、少なくとも1個以上の金属ドラムで、冷却、固化させることで、未延伸のキャスト原反シートを成形する。また、前記金属ドラムの表面温度(押し出し後、最初に接触する金属ドラムの温度)は、50℃以上105℃以下であることが好ましく、より好ましくは、60℃以上100℃以下である。前記金属ドラムの表面温度は、使用するポリプロピレン樹脂の物性等に応じて決定することができる。金属ドラムの表面温度が50℃を著しく下回ると、原反シートの良好なシート成形性が得られにくいため、延伸製膜時に延伸むらや破断をすることなく二軸延伸ポリプロピレンフィルムを良好に得る、ということが困難となる。
前記キャスト原反シートの厚さは、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることができる限り、特に制限されることはないが、通常、0.05mm以上2mm以下であることが好ましく、0.1mm以上1mm以下であることがより好ましい。
二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、前記ポリプロピレンキャスト原反シートに延伸処理を行って製造することができる。延伸は、縦及び横に二軸に配向させる二軸延伸が好ましく、延伸方法としては逐次二軸延伸方法が好ましい。逐次二軸延伸方法としては、例えば、まず、キャスト原反シートを110℃以上170℃以下の温度(好ましくは135℃以上170℃以下)に保ち、速度差を設けたロール間に通して流れ方向に延伸する。流れ方向の延伸倍率は3.5倍以上5.5倍以下が好ましく、4.2倍以上5.4倍以下がより好ましい。引き続き、当該シートをテンターに導いて、横方向に延伸する。横方向の延伸時の温度は150℃以上165℃以下が好ましく、横方向の延伸倍率は9倍以上11倍以下が好ましい。その後、2倍以上10倍以下に緩和工程、熱固定工程、及び冷却工程を施す。以上により、二軸延伸ポリプロピレンフィルムが得られる。
本開示の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造において、サブピークの融解熱量分率と150℃以下の融解熱量分率を前記特定範囲に好適に設定するために、特に、横延伸温度、熱固定温度冷却温度を適切に制御することが望ましい。より具体的には、横延伸温度については、150℃以上165℃以下の範囲に制御することが好ましく、150℃以上160℃以下の範囲に制御することがより好ましい。熱固定温度については、130℃以上160℃以下の範囲に制御することが好ましく、130℃以上140℃以下の範囲に制御することがより好ましい。また、冷却温度については80℃以上130℃以下の範囲に制御することが好ましく、90℃以上100℃以下の範囲に制御することがより好ましい。また、横延伸温度と熱固定温度の差は、5℃以上35℃以下の範囲に制御することが好ましい。また、熱固定温度と冷却温度との差は30℃以上50℃以下の範囲に制御することが好ましく、30℃以上40℃以下の範囲に制御することが好ましい。この理由は、以下の通りである。すなわち、延伸処理において、縦延伸工程で機械方向に沿って並んだ分子の鎖は、横延伸工程で結晶崩壊をしながら機械方向に直角に規則的に再配列をする。続く熱固定処理と冷却工程では、再配列した分子鎖の再結晶化が進み、同時に非結晶部分の緩和が起こる。横延伸工程と熱固定処理および冷却処理は、結晶の微細化と再結晶化が起こる工程であり、該工程の温度を上述の温度範囲に制御することにより、結晶構造を制御することができる。延伸処理の熱固定工程における熱固定温度が160℃を超えるとポリプロピレンの結晶が粗大化し、耐電圧性の低下に加えて、素子巻き適正が低下しやすい。一方、熱固定温度が130℃未満であると、破断が頻発し延伸し難くなる。さらに、延伸処理の横延伸温度と熱固定温度の差が35℃以上であると、極局所的な未延伸部である延伸ムラが発生しやすい。熱固定温度と冷却温度の差が50℃以上であると、破断が頻発して延伸しにくくなる。これらのことから、本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造においては、特に、熱固定温度、延伸温度、冷却温度、さらにはこれらの差を上記の範囲に設定することが好ましい。
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さは、コンデンサに使用した場合のコンデンサの小型化及び高容量化を担保する観点から、前述の通り0.8μm以上6.0μm以下が好ましい。具体的には、5.5μm以下が好ましく、3.5μm以下がより好ましく、3.0μm以下が更に好ましく、2.4μm以下が特に好ましい。また、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さは、製造上の観点から、1.0μm以上が好ましく、1.8μm以上がより好ましく、2.2μm以上が更に好ましい。
二軸延伸ポリプロピレンフィルムには、金属蒸着加工工程などの後工程において、接着特性を高める目的で、延伸及び熱固定工程終了後に、オンライン又はオフラインにてコロナ放電処理を行ってもよい。コロナ放電処理は、公知の方法を用いて行うことができる。雰囲気ガスとして空気、炭酸ガス、窒素ガス、又は、これらの混合ガスを用いて行うことが好ましい。
このようにして得られた本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、フィルムの厚さが6.0μm以下のように薄い場合でも120℃程度(100℃~120℃)の高温下において電圧を印加させた際の絶縁破壊強度(絶縁破壊強さ)に優れるとともに、延伸性及び素子加工性にも優れている。また、二軸延伸ポリプロピレンフィルムをコンデンサ誘導体として用いた本実施形態のフィルムコンデンサは、120℃程度(100℃~120℃)の高温下において優れた耐熱性を有し、具体的には、上記高温下で長時間使用した場合でもコンデンサの静電容量の低下が抑制されている点で優れたライフ性能を有し、エンジンルーム内を想定した上記高温と低温との間の繰り返し使用においてコンデンサの熱締まり(変形)が抑制されている点で優れた耐熱衝撃性も有している。よって、本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムはフィルムコンデンサ用途として好適であり、好ましくは、ハイブリッド自動車・電気自動車におけるインバータを構成するコンデンサの誘導体に用いることができる。
金属層一体型ポリプロピレンフィルムコンデンサ及びそれらの製造方法
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、コンデンサへの加工を考慮し、二軸延伸ポリプロピレンフィルムと、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に積層された金属層とを有する金属層一体型ポリプロピレンフィルムとしてもよい。
金属層は、電極として機能する。金属層に用いられる金属としては、例えば、亜鉛、鉛、銀、クロム、アルミニウム、銅、ニッケルなどの金属単体、それらの複数種の混合物、それらの合金などを使用することができるが、環境、経済性及びコンデンサ性能などを考慮すると、亜鉛、アルミニウムが好ましい。
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に金属層を積層する方法としては、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法を例示することができる。生産性及び経済性などの観点から、真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法として、一般的にるつぼ法式やワイヤー方式などを例示することができるが、特に限定されることはなく、適宜最適なものを選択することができる。
蒸着により金属層を積層する際のマージンパターンも特に限定されるものではないが、コンデンサの保安性などの特性を向上させる点から、フィッシュネットパターンないしはTマージンパターンといった、いわゆる特殊マージンを含むパターンを二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片方の面上に施すことが好ましい。保安性が高まり、コンデンサの破壊、ショートの防止、などの点からも効果的である。
マージンを形成する方法はテープ法、オイル法など、一般に公知の方法が、何ら制限無く使用することができる。
また、本実施形態の金属層一体型ポリプロピレンフィルムは、従来公知の方法で積層するか、巻回してフィルムコンデンサとすることができる。
すなわち、本実施形態のフィルムコンデンサは、金属層一体型ポリプロピレンフィルムが複数積層された構成を有していてもよいし、巻回された金属層一体型ポリプロピレンフィルムを有していてもよい。このようなフィルムコンデンサは、電気自動車やハイブリッド自動車などの駆動モーターを制御するインバータ電源機器用コンデンサなどに好適に使用できる。このほか、鉄道車両用、風力発電用、太陽光発電用、一般家電用などにおいても好適に使用できる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り、部及び%はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
≪樹 脂≫
実施例及び比較例で使用した樹脂(PP樹脂A1及びPP樹脂B1)の詳細について、以下表1にまとめるとともに各物性の測定方法について記載する。
Figure 2023002364000001
PP樹脂A1:プライムポリマー株式会社製
PP樹脂B1:大韓油化株式会社製,S802MタイプA
≪ポリプロピレン樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、z平均分子量(Mz)、分子量分布(Mw/Mn)、分子量分布(Mz/Mn)、及び重量分率wの測定≫
まず、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)を用い、以下の条件で、各ポリプロピレン樹脂の平均分子量及び分子量分布を測定した。
装置:HLC-8321GPC/HT(検出器:示差屈折計(RI))(東ソー株式会社製)
カラム:TSKgel guardcolumnHHR(30)HT(7.5mmI.D.×7.5cm)×1本 + TSKgel GMHHR-H(20)HT(7.8mmI.D.×30cm)×3本 (東ソー株式会社製)
溶離液:1,2,4-トリクロロベンゼン(富士フィルム和光純薬製GPC用)+BHT(0.05%)
流速:1.0mL/分
検出条件:polarity-(-)
注入量:0.3mL
カラム温度:140℃
システム温度:40℃
試料濃度:1mg/mL
試料前処理:試料を秤量し、溶媒(0.1%のBHTを添加した1,2,4-トリクロロベンゼン)を加えて140℃で1時間振盪溶解させた。その後0.5μmの焼結フィルターで加熱濾過した。
検量線:東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用いた5次近似曲線の検量線を作成した。但し、分子量はQ-ファクターを用いてポリプロピレンの分子量へ換算した。
得られた検量線及びSECクロマトグラムより、測定装置用の解析ソフトウェアを用いて、横軸に分子量(対数値)、縦軸に濃度分率の積分値をプロットし、積分分子量分布曲線を得た。各分子量における積分分子量分布曲線の微分値(積分分子量分布曲線の傾き)を求め、横軸に分子量(対数値)、縦軸に微分値をプロットし、微分分子量分布曲線を得た。
これらの曲線から、数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、及びZ平均分子量Mzを得た。このMwとMnの値を用いて分子量分布(Mw/Mn)を得た。また、積分分子量分布曲線において対数分子量Log(M)=4.0のときの値を重量分率wとした。この重量分率wは、対数分子量Log(M)=4.0、すなわち分子量10,000以下である分子の重量分率を示す。
≪対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値、対数分子量Log(M)=6.0のときの微分分布値、及び、分子量微分分布値差(DM)の測定≫
また、各ポリプロピレン樹脂について、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値、対数分子量Log(M)=6.0のときの微分分布値を、次のような方法で得た。まず、RI検出計を用いて検出される強度分布の時間曲線(溶出曲線)を、上記標準ポリスチレンを用いて作製した検量線を用いて標準ポリスチレンの分子量M(Log(M))に対する分布曲線に変換した。次に、分布曲線の全面積を100%とした場合のLog(M)に対する積分分布曲線を得た後、この積分分布曲線をLog(M)で、微分することによってLog(M)に対する微分分布曲線を得た。この微分分布曲線から、Log(M)=4.5及びLog(M)=6.0のときの微分分布値を読んだ。また、Log(M)=4.5のときの微分分布値とLog(M)=6.0のときの微分分布値との差を分子量微分分布値差(DM)とした。なお、微分分布曲線を得るまでの一連の操作は、使用したGPC測定装置に内蔵されている解析ソフトウェアを用いて行った。
≪ヘプタン不溶分(HI)の測定≫
各ポリプロピレン樹脂について、10mm×35mm×0.3mmにプレス成形して約3gの測定用サンプルを作製した。次に、ヘプタン約150mLを加えてソックスレー抽出を8時間行った。抽出前後の試料質量よりヘプタン不溶分を算出した。
≪メルトフローレート(MFR)の測定≫
実施例、比較例で使用した原料樹脂ペレットの形態でのメルトフローレート(MFR)を、東洋精機株式会社のメルトインデックスを用いてJIS K 7210の条件Mに準じて測定した。具体的には、まず、試験温度230℃にしたシリンダ内に、4gに秤りとった試料を挿入し、2.16kgの荷重下で3.5分予熱した。その後、30秒間で底穴より押出された試料の重量を測定し、MFR(単位:g/10分又はg/10min)を求めた。上記の測定を3回繰り返し、その平均値をMFRの測定値とした。
[実施例1~6及び比較例1~5]
〔二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造、及びその特性評価〕
ポリプロピレン樹脂A1(75質量部)とポリプロピレン樹脂B1(25質量部)を混合してドライブレンド樹脂組成物を得た。次に、ドライブレンド樹脂組成物を押出機へ供給し、溶融温度250℃及び剪断速度2000s-1で溶融した。この溶融樹脂を、Tダイを用いて押出し、表面温度を95℃に保持した金属ドラムに巻きつけて固化させてキャスト原反シートを作製した。未延伸のキャスト原反シートを140℃の温度に保ち、速度差を設けたロール間に通して流れ方向に4.5倍に延伸し、直ちに室温に冷却した。引き続き、流れ方向に延伸して得られた延伸フィルムをテンターに導いて、それぞれ、表2に記載の横延伸温度で幅方向に10倍に延伸した後、緩和率12%で緩和した。続いて、それぞれ、表2に記載の熱固定温度で熱固定処理後、表2に記載の冷却温度で冷却処理することで、幅約5m、厚み2.3μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムを、直径400mmの鉄芯へ約8万m巻き付けてジャンボロールとして巻き取った。巻き取られた前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、35℃の雰囲気で24時間のエージング処理に供した。
各実施例及び比較例で得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚み、示差走査熱量測定、絶縁破壊強度の測定、延伸性評価、及び素子加工性評価の方法について、それぞれ以下に示す。また、各測定及び評価の結果を表2または表3に示す。
≪延伸性評価≫
所定の厚み(2.3μm)に設定した二軸延伸装置を用いてフィルムの製造を開始し、得られるフィルム厚みが目標とする厚み±2%に到達した時点からフィルムが破断等するまでの連続して製膜可能な時間(以下において、「連続製膜時間」とも称する)を計測した。なお、厚みが目標とする厚み±2%に到達した時点は、フィルムを切り出してマイクロメーター(JIS-B7502)を用いてJIS-C2330に準拠してフィルム厚さを測定し、確認した。得られた連続製膜時間に基づき次の評価基準に従い延伸性を評価した。
(延伸性の評価基準)
〇:8時間を超えても延伸破断なく製膜できた。
×:8時間未満で延伸破断した。
≪ポリプロピレンフィルム厚みの測定≫
温度23±2℃、湿度50±5%RHの環境下で、シチズンセイミツ株式会社製 紙厚測定器 MEI-11(測定圧100kPa、降下速度3mm/秒、測定端子φ=16mm、測定力20.1N)を用いた。サンプルは10枚以上重ねたままロールより切り出し、切り出しの際にフィルムにシワや空気が入らないように取り扱った。10枚重ねのサンプルに対し、5回測定を行い、5回の平均値を10で除して、厚みを算出した。
≪示差走査熱量測定(DSC)≫
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの融解ピーク、及び、融解熱量全体に対する部分融解熱量分率(それぞれ、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの全体の融解熱量(100%)に対する、融解ピークのメインピークよりも低温側のサブピークがなす合計の融解熱量の割合(サブピークの融解熱量分率)と、全体の融解熱量(100%)に対する150℃以下の融解熱量の割合(150℃以下の融解熱量分率))の評価は、パーキン・エルマー社製、入力補償型DSC Diamond DSCを用い、以下の手順により算出した。まず、ポリプロピレンフィルムを約3mg秤りとり、アルミニウム製のサンプルホルダーに詰め、DSC装置にセットし、窒素流下、0℃から260℃まで30℃/minの速度で昇温し、その融解曲線を測定した。DSC測定の結果、100℃から190℃の間には、少なくとも2つ以上の融解ピークが得られた。
全体の総融解熱量は、ベースラインと融解曲線が為す全面積(温度に対する吸熱の積分値)から計算した。さらに、サブピークの融解熱量分率は、図1のように、融解ピークのうちメインピークと、メインピークに隣接する低温側のサブピークとの間に境界線(融解曲線の谷部が境界となる)を設け、その境界線から低温側のピーク曲線とベースラインが為す面積(境界線までの吸熱の積分値)から求めた。全体の融解熱量に対する低温側融解ピークの部分融解熱量の分率を、サブピークの融解熱量分率とし、百分率(%)にて評価した。また、150℃以下の融解熱量分率については、図2のように、全体の融解熱量のうち、150℃以下の領域の融解熱量の割合を算出した。
≪引張破断強度及び引張破断伸度≫
25℃の測定環境において、二軸延伸ポリプロピレンフィルムのMD方向及びTD方向の引張破断強度(引張破壊応力)及び引張破断伸度を以下の手順で測定した。JIS K 7127:1999に準拠し、二軸延伸ポリプロピレンフィルムから、長さ150mm、幅15mmの矩形のサンプルを切り出した。このとき、MD方向について破断強度及び破断伸度を測定するサンプルについては、MD方向が長さ方向となるようにサンプルを切り出し、TD方向について引張破断強度及び引張破断伸度を測定するサンプルについては、TD方向が長さ方向となるようにサンプルを切り出した。次に、サンプルを、オーブン付き引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ製テンシロン万能試験機RTG-1210)のチャックに、チャック間距離100mmでセットした。次に、サンプルを、試験速度200mm/minで引張試験を行った。次いで、同試験機に内蔵されたデータ処理ソフトによる自動解析より、引張破断強度及び引張破断伸度をと求めた。
≪熱収縮率HS(125℃)≫
二軸延伸ポリプロピレンフィルムを幅20mm、長さ130mmの長方形に切り出し、測定用サンプルを作製した。このとき、MD方向について熱収縮率を測定するサンプルについては、サンプルの長さ方向がMD方向と一致するようにサンプルを切り出した。また、TD方向について熱収縮率を測定するサンプルについては、サンプルの長さ方向がTD方向と一致するようにサンプルを切り出した。45°方向(MD方向とTD方向のの中間)について熱収縮率を測定するサンプルについては、サンプルの長さ方向が45°方向と一致するようにサンプルを切り出した。測定用サンプルは、それぞれ、3本ずつ準備した。次に、長さ100mmの箇所を定規で測り、当該箇所に標線を印した。そして、その3本の測定用サンプルを、120℃の熱風循環式恒温槽内に無荷重で吊るして15分間保持した。その後、室温(23℃)で冷却し、標線の間隔を定規で測定し、以下の式を用いて、それぞれ、MD方向の熱収縮率HSMD(%)、TD方向の熱収縮率HSTD(%)、及び45°方向の熱収縮率HS45°(%)の合計HSMD+HSTD+HS45°を算出した。結果を表2に示す。
熱収縮率HS(%)=[(加熱前の標線間隔-加熱後の標線間隔)/(加熱前の標線間隔)]×100
それぞれ3本の測定値の平均値を熱収縮率(%)とした。
なお、ここに記載した以外の測定条件については、JIS C 2151:2019の「25.寸法変化」に準じた。
≪ポリプロピレンフィルムの絶縁破壊強度の測定:直流(DC)≫
JIS C2151(2006)17.2.2(平板電極法)記載の電極構成にて、下記の試験条件で実施例及び比較例に係るポリプロピレンフィルムの絶縁破壊電圧(BDV)を12回測定した。なお、昇圧中に下記の上限基準値の漏れ電流を検知した時点での印加電圧をBDVとした。BDVを、フィルムの厚み(μm)で割り、12回の測定結果中の上位2点および下位2点を除いた8点の平均値を、絶縁破壊の強さES(VDC/μm)とした。結果を表3に示す。
試験片:約150mm×150mm
試験片の状態調節:雰囲気条件にて30分
電源:直流
雰囲気:空気中、80℃、100℃、120℃
試験機:菊水電子工業社製 DC耐電圧/絶縁抵抗試験機TOS9213AS
電圧上昇速度:100V/s
電流検出応答速度:MID
上限基準値:5mA
〔フィルムコンデンサの作製、及びその特性評価〕
各実施例及び比較例で得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いて、下記の手順によりフィルムコンデンサを作製した。
二軸延伸ポリプロピレンフィルムに、フィルムコンデンサ保安性を付与するための特殊蒸着パターンマージン、絶縁マージンを形成し、金属膜の表面抵抗率が20Ω/□になるようにアルミニウム蒸着を施すことにより、金属層一体型ポリプロピレンフィルムを得た。次に、金属層一体型ポリプロピレンフィルムを任意の幅にスリットした後、2枚の金属層一体型ポリプロピレンフィルムを組合せて、皆藤製作所製自動巻取機3KAW-N2型を用い、巻取り速度4m/秒、巻取り張力180g、コンタクトローラー接圧260gにて、素子静電容量が50μFになるようターン数を設定し、金属層一体型ポリプロピレンフィルムの巻回を行った。
素子巻きした素子は、プレス処理を行い扁平化させた後、プレス荷重を加えたまま、素子端面に亜鉛金属を溶射し電極取り出し部を形成、120℃にて15時間の加熱処理を施し、熱硬化させた。
熱硬化後、素子端面にリードをはんだ付けし、エポキシ樹脂で封止を行うことで、扁平型フィルムコンデンサを得た。得られたフィルムコンデンサの静電容量は、全て50μF(±3μF)であった。
各実施例及び比較例で得られたフィルムコンデンサの作製過程での素子巻き加工性の評価方法について以下に示す。また、評価の結果を表3に示す。
≪素子巻き加工性評価≫
蒸着・スリットにより得られた小巻取をのうち、左マージンの巻取リールと右マージンの巻取リールを用い、幅方向に蒸着部分がマージン部よりもはみ出すように2枚重ね合わせて巻回した(素子巻き加工)。巻回は、株式会社皆藤製作所製、自動巻取機 3KAW-N2型を用い、巻き取り張力200gにて、1360ターン行った。その際、巻き始めから巻き終わりまでを目視で観察し、しわやずれが発生したものを不合格とし、不合格となったものの数の製造数全体に対する割合を百分率で示し加工性の指標とした(以下素子巻収率と称する)。素子巻収率は高いほど好ましい。95%以上を良好「○」、95%未満を不良「×」として評価した。結果を表3に示す。
Figure 2023002364000002
Figure 2023002364000003

Claims (8)

  1. コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、
    前記コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、昇温速度30℃/minの条件で示差走査熱量測定(DSC)を行った場合、
    少なくとも2つ以上の融解ピークが観察され、
    全体の融解熱量(100%)に対して、前記融解ピークのメインピークよりも低温側のサブピークがなす合計の融解熱量の割合が、60%以上70%以下の範囲であり、
    前記全体の融解熱量(100%)に対して、150℃以下の融解熱量の割合が、12%以上20%以下の範囲である、
    コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
  2. 25℃環境における引張試験で測定される、
    MD方向の引張破断強度が140MPa以上170MPa以下であり、
    MD方向の引張破断伸度が130%以上160%以下であり、
    TD方向の引張破断強度が330MPa以上370MPa以下であり、
    TD方向の引張破断伸度が50%以上70%以下である、請求項1に記載のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
  3. 前記コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムを120℃で15分熱処理した場合、MD方向の熱収縮率、TD方向の熱収縮率、及び45°方向の熱収縮率の和が、10%以下である、請求項1または2に記載のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
  4. 前記コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂は、Z平均分子量Mzが65.0万以上94.5万以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
  5. 厚さが0.8μm以上6μm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
  6. 請求項1~5のいずれか1に記載のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムと、
    前記コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に積層された金属層とを有する、金属層一体型コンデンサ用ポリプロピレンフィルム。
  7. 巻回された請求項6に記載の金属層一体型ポリプロピレンフィルムを有するか、又は、請求項6に記載の金属層一体型コンデンサ用ポリプロピレンフィルムが複数積層された構成を有する、フィルムコンデンサ。
  8. 請求項1~5のいずれか1に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルムが、ロール状に巻回されている、フィルムロール。
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